説明

タイヤバフがけ時のバフ半径を求める方法

【課題】タイヤクラウンからトレッドをバフがけして除去するバフ量を修正するための方法、装置およびコンピュータプログラム。
【解決手段】複数の横方向位置の各々でタイヤ・クラウン表面とタイヤベルトとの間の距離を測定し、提案バフ半径でクラウンを横切る複数の横方向位置の各々でクラウン表面とベルトとの間の計画距離を計算し、タイヤの中心線上の一つまたは複数の提案された起点位置からの新しいバフ半径を選択し、新しい位置からのバフ半径を有するバフ半径が描くアークに沿ってタイヤ・クラウンからトレッドをバフがけする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にはタイヤリトレッディングに関するものであり、特に、タイヤクラウンからトレッドをバフがけして除去するバフ機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤはゴムベースの混合物から成る所定厚さのトレッドの外側層を有し、このトレッドは地面に対する車両のグリップを良くするための各種の溝とトレッド・パターンを有している。例えば磨耗したタイヤをリトレッディング(トレッド再生)する必要がある場合のように、タイヤトレッドやタイヤ外側表面層を機械加工したり、除去する必要がある場合がある。
【0003】
タイヤトレッドの除去作業は一般にバフ機械(以下、単にバフ機械という)を用いて行なっている。このバフ機械のヘッドにはラスプ、砥石車、ワイヤーブラシ等の各種磨耗具が取り付けられている。また、タイヤトレッドの除去作業に使用される他の方法は「ピーラー」とよばれている円筒形の切断機を用いた切断法である。
【0004】
このトレッド除去プロセス中にベルト上に残っている材料の量をモニターすることで、除去具がベルトに接触してベルトを損害したり、タイヤを破壊しないようにするのが望ましい。従って、除去具にはトレッド除去プロセス中にベルト上に残っている材料の量をモニターするための各種センサーが使用されている。そうしたセンサーは当業者に種々知られており、その一つの例は特許文献1(米国特許第6,386,024号明細書)に記載されている。この特許の内容は本明細書の一部をなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,386,024号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの具体例は、リトレッディング法でタイヤを製造する際に用いられるタイヤのバフがけ方法と、そのコンピュータープログラムと、バフ機械とにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明方法の一つの具体施例はタイヤクラウンからトレッドをバフがけする際にバフ半径を求める方法にある。
本発明方法ではセンサーから信号を受け、センサーはタイヤクラウンの一部を横方向に走査し、タイヤクラウンの上記部分を横切る複数の位置の各々から信号を受け、センサーからの信号はタイヤクラウン表面とタイヤベルトとの間の距離の関数である。
その他の階段には上記の複数の位置でセンサー信号をタイヤクラウン表面とベルトとの間の測定距離として解釈し、新しいバフ半径のための一つまたは複数の提案された起点位置を選択する段階が含まれる。提案された各起点位置はタイヤの中心線上にある。
【0008】
本発明方法の特定実施例ではクラウンを横切る横方向位置の各々の複数でクラウン表面とベルトとの間の計画距離(projected distance)を計算する階段をさらに含むことができる。各計画距離は一つまたは複数の提案された起点位置を有するバフ半径によって描かれるアークを基にしている。
その他の階段は一つまたは複数の提案された起点位置から新しいバフ半径のための新しい起点位置を選択し、新しいバフ半径によって描かれるアークに沿ってタイヤクラウンからトレッドをバフがけすることがさらに含まれる。
【0009】
本発明のひとつの具体例はタイヤクラウンからのトレッドのバフがけを修正するためのタイヤバフがけ機械にある。このバフがけ機械はタイヤクラウン表面とタイヤベルトとの間の距離を関数とするセンサー出力信号を出力するセンサーと、タイヤをバフがけするためのバフヘッドと、プロセッサおよびこのプロセッサによって実行可能な上記方法を実行するための指令を含む指令を保存する記憶装置を含む制御装置とを有する。本発明の特定実施例ではセンサーは操作可能な状態でバフヘッドに対して固定して取り付けられている。
【0010】
本発明の特定の実施例のタイヤクラウンからトレッドをバフがけするためのバフ機械はタイヤ・クラウン表面とタイヤベルトとの間の距離の関数であるセンサー出力信号を出力するセンサーと、操作可能な状態でバフヘッドに対して固定して取り付けられたタイヤをバフがけするためのバフヘッドとを含む。このバフがけ機械はプロセッサおよびこのプロセッサによって実行可能な指令を保存する記憶装置とを含み、上記の実行可能な指令はタイヤのクラウンとバフヘッドとの間の接触を制御する指令と、バフヘッドに対するセンサーのフィックスした関係に基づいてタイヤの中心線に対するセンサーの位置を決定するためプロセッサによって実行可能な決定指令とを含む制御装置とを含む。
【0011】
上記およびその他の本発明の目的、特徴および利点は添付図面を参照して説明する以下の本発明の特定実施例のより詳細な説明から明らかになるであろう。以下で類似部品には類似の番号を付けた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明実施例のタイヤのバフかけ機械の斜視図。
【図2】図1に示したバフかけ機械の一部の側面図。
【図3】図1のバフかけ機械の制御装置の斜視図。
【図4】図1のタイヤとセンサー部分の断面図。
【図5】本発明実施例での複数の応答信号曲線を示すグラフ。
【図5A】本発明実施例での対応距離を有する複数の応答信号を示すテーブル。
【図6】異なる長さおよび起点位置を有するバフ半径を示す図4のタイヤの一部の断面図。
【図7】図6のタイヤの場合に最初のバフ半径で得られたトレッド厚さとターゲットのトレッド厚さとの差を示すテーブル。
【図8】図6のタイヤに対して反復法のバフ半径で得られたトレッド厚さとターゲットのトレッド厚さとの差を示すテーブル。
【図9】同じ起点位置から始まる互いに異なる長さを有するバフ半径を示す図4のタイヤの一部の断面図。
【図10】図9のタイヤの場合の最初のバフがけ半径で得られたトレッド厚さとターゲットのトレッド厚さとの差を示すテーブル。
【図11】図9に対して反復法のバフ半径で得られたトレッド厚さとターゲットのトレッド厚さとの差を示すテーブル。
【図12】本発明実施例に従ってタイヤトレッドをバフがけするためのバフ半径の決定方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特定実施例はリトレッディング操作のための準備であるタイヤクラウンからトレッドをバフがけするためのバフがけ半径を決定する方法と、コンピュータープログラム製品と、装置とを提供する。上記の準備にはバフがけ機械を使用してタイヤのクラウンからトレッドをバフがけして除去することが含まれる。
【0014】
バフがけ機械(以下、バフ機械)は一般に所定のバフがけ半径(以下、バフ半径)でタイヤからトレッドをバフがけ除去する。このバフ半径は一般にタイヤベルトパッケージの上側輪郭部分に対応する。この「バフ半径」はバフ半径の長さとバフ半径の起点の位置とで定義される。ベルトパッケージはトレッドの下側にあり、タイヤのアンダートレッド(undertread)とケーシングはトップベルト上に材料の所定の薄い層のみが残るようにバフがけされる。バフ半径はバフがけすべきタイヤに対して選択され、例えば広幅タイヤでは幅の狭いタイヤのバフがけよりも大きなバフ半径でバフがけされるように選択される。バフ半径の起点は一般にタイヤの中心線(タイヤクラウンの横方向中央点を垂直に通る線)上に置かれる。
【0015】
一般に、バフがけ機械はタイヤクラウンを横切ってバフヘッドを片側から反対側まで(side-to-side)複数回パス(通過)させてトレッドを除去する。一回のトレッド除去パスで追加のトレッドがタイヤクラウンから除去される。このトレッド除去パスは所望量のゴムがクラウンからバフがけされ、交換タイヤトレッドを受ける外被面が所定クラウン半径までバフがけされるまで続けられる。
【0016】
バフヘッドが一回パスした後にタイヤベルトより上方に残っているゴムの量が同じ場合(所定許容量以内で)、得られた状態はノーマルなバフ状態である。それに対して非対称のバフがけまたは非対称にズレたバフがけとなる状態が起こることがある。この非対称なバフがけはタイヤ中心線の片側のクラウンから除去されたゴム量がタイヤ中心線の反対側よりも多いバフがけと定義できる。非対称なバフがけは対称にズレたバフがけとは異なる。対称にズレたバフがけは中心線について対称であるが、タイヤクラウンの幅方向で残っているゴムの量が同じでないもので、例えば、タイヤの中心線の所よりタイヤの両肩部の方により多くのゴムが残る場合である。
【0017】
対称なバフがけは例えば長過ぎるまたは短過ぎるバフ半径でタイヤをバフがけした時に起こる。長過ぎたバフ半径でタイヤをバフがけした場合には、タイヤの両側肩部に残るゴムの量がクラウン中央部より大きくなる。逆に短過ぎるバフ半径でタイヤをバフがけした場合にはタイヤの両側肩部に残るゴムの量がクラウン中央部より少なくなる。
【0018】
非対称なバフがけは、例えばバフがけ中にバフ機械の構成部品(例えばバフがけ中にタイヤを支持し、タイヤを回転させるシャフト)が曲がって撓んだ結果として起こる。バフがけ中にバフヘッドがタイヤに押圧されると、シャフト、特にシャフトの担持されていない外側端はバフ研摩中にほんのわずかバフヘッドから離れる。この運動が結果的に非対称バフとなり、タイヤの外側側面から除去されるゴム量はタイヤの側面より内側より少なくなる。
【0019】
バフ半径に沿ってタイヤからトレッドを所定量バフがけするのに使用する装置および方法は当業者に周知である。例えば、いくらかのバフがけ機械では回転するタイヤ(位置は固定)を横切って、バフ半径が描くアークに沿って、バフヘッドを移動させてタイヤをバフがけする。別のバフがけ機械では静止したバフヘッドを横切って、バフ半径が描くアークに沿って、タイヤを移動させる。他のバフ機械では例えばバフヘッドをバフ半径が描くアークに沿ってX−Y座標に沿って移動させることでトレッドとバフヘッドとの間の接触を制御している。その他に、例えばバフヘッドをピポット軸上でピポットビさせてヘッドとタイヤとの間の接触を制御しながらバフ半径が描くアークに沿ってタイヤをバフがけする。なお、バフ半径の起点は機械的な点または機械的なピボット点ではなく、バフがけ機械の制御装置が記述するアークのバフ半径の起点であり、このアークに沿ってバフヘッドとタイヤトレッドは接触するという点に留意する必要がある。
【0020】
上記のように、対称にズレたタイヤはタイヤの中央に残るゴムの量よりもタイヤの両側に残る量が大なり小なり等しい場合にできる。本発明の実施例ではバフ半径を短くしてタイヤにより近くにするか、バフ半径をより長くしてタイヤから離すことによって、バフ半径の起点位置をタイヤの中心線に沿って新しい位置へ移すことによって対称にズレたバフ研摩状態を自動的に訂正する。
【0021】
上記したように、非対称なタイヤのバフ状態はタイヤの片側、例えばタイヤの外側面に残るゴム量がタイヤの反対側、例えばタイヤの内側より多い場合に起こる。本発明の実施例ではバフ半径の起点の位置をタイヤ中心線から離れる方向、一般にはタイヤからより多くのゴムを除去する必要のある側へ移すことによって自動的に非対称バフ研摩状態を訂正する。このシフトによってタイヤの片側からより多くのゴムが除去され、タイヤの反対側からはより少ないゴムが除去され、それによって非対称なバフが訂正される。
【0022】
本発明の特定の実施例ではタイヤのベルト上に残ったゴムの量を、一般にはバフヘッドがタイヤクラウン上を一回パスする間またはその後に測定する。この測定はトレッドの一部を横切って所定間隔の位置で行なう。この測定でバフ状態が対称であることが明らかになった場合、すなわち、タイヤの中央に残っている量がタイヤの両側に残っているゴムの量と大なり小なり等しい場合、あるいは、バフ状態が非対称であることが明らかになった場合、すなわち、タイヤ中心線の片側よりタイヤ中心線の反対側のゴムの量が厚い場合には、バフ半径の起点を一つまたは複数の提案された位置へ反復法(iteration)で移動し、移動の効果を計算し、バフがけパス後に得られた厚さの測定値と比較する。統計解析、例えば最小二乗法解析によって、反復法で提案された起点位置から最適位置を選択し、その選択した新しい起点位置を起点とする新しいバフ半径で第2回目のバフがけパスを実行する。
【0023】
本発明の特定実施例にはタイヤクラウンからトレッドをバフがけするためのバフ半径を決定する方法、および/または、非対称バフを訂正するための方法が含まれる。この方法にはバフ半径の起点位置を決定する階段を含む。バフ半径が記述するアークに沿ってタイヤクラウンからトレッドがバフがけされる。バフ半径は長さと起点位置で定義される。
【0024】
この方法の特定実施例にはセンサーから信号を受ける階段が含まれる。センサーはタイヤクラウンの少なくとも一部を横切るパスを走査し、タイヤクラウンの少なくとも一部を横切る複数の横方向位置の各々から信号を受ける。センサーによって発せられた信号はタイヤクラウンとタイヤのベルトとの間の距離の関数である。バフがけ操作中、タイヤは回転し、センサーは回転するタイヤを横切りながら信号を発生する。従って、上記の横方向位置はタイヤの円周上の任意の点に位置でき、または、同じ円周位置にすることもできる。すなわち、タイヤが完全一回転してセンサーを通過するか、タイヤの部分回転、例えば各半回転または各1/4回転でセンサーを通過することができる。
【0025】
信号を受信する横方向位置の数は状況に応じて広範囲に変えることができるが、典型的な用途ではタイヤ中心線の各側面に2〜10の位置をとれば十分である。センサーからの信号はセンサーとタイヤのベルトとの間の距離の関数である。クラウン表面とセンサーとの間の距離が分かり、この距離が測定できれば、センサーとベノトとの間の距離からセンサーと表面までの距離を引くことでクラウン表面とベルトとの間の距離が決定できる。従って、センサーから発生さる信号はクラウン表面とタイヤのベルトとの間の距離の関数である。従って、本発明の特定実施例では複数の横方向位置の各々での信号をクラウン表面とタイヤのベルトとの間の測定距離と解釈する階段を含む。
【0026】
次回のバフがけパスでタイヤをバフがけするためにバフがけ機械が使用するバフ半径の起点の新しい位置を決心するために、本発明方法では新しいバフ半径のために一つまたは複数の提案された起点位置(proposed origin positions、以下、提案起点位置)を選択する階段をさらに含む。対称にズレたバフを訂正する場合の提案起点位置の各々はタイヤの中心線上にある。非対称のバフを訂正するための提案起点位置の各々はタイヤの中心線上にはない。
【0027】
一つまたは複数の提案起点位置を使用する本発明の特定実施例の方法では、クラウンを横切る複数の横方向位置の各々でクラウン表面とベルトとの間の計画された距離(projected distance、以下、計画距離)を計算する階段をさらに含む。各計画距離は一つまたは複数の提案起点位置を有するバフ半径が描くアークを基準にしたものである。
【0028】
本発明方法はさらに、一つまたは複数の提案起点位置からの新しいバフ半径のための新しい位置を選択し、新しいバフ半径が描くアークに沿ってタイヤ・クラウンからトレッドをバフがけする階段を含む。特定実施例では、新しいバフ半径のための新しい位置を選択する階段の一部として、測定距離とターゲット距離との間の計算上の差および計画距離と標的距離との間の計算上の差を統計解析して新しい起点位置を選択する階段を含む。上記の差は複数の横方向位置の各々に対して計算される。
【0029】
本発明の特定実施例では、センサーから受けた信号から決定される一回のバフがけパスの後に残っているゴム厚さの測定値をバフがけされたバフ半径でのタイヤのクラウンからのトレッドのバフがけが非対称のバフがけか、対称のバフがけか、ノーマルなバフがけか、これらの組合せであったかを決定する階段として使用する。複数の横方向位置で測定した厚さが同じか、許容範囲内である場合、バフはノーマルで、バフ半径の起点位置の修正は不用である。測定した厚さがタイヤ中心線の片側の厚さが反対側より大きく、中心線の近くに残ったゴムの量が中心線から極端に離れた位置と異なっている場合、バフは非対称にズレたバフがけである。当然ながらこの決定はクラウンを横切る複数の横方向位置の各々で測定した厚さの値をターゲット値から引くことで決定できる。このターゲット値は例えば中心線上で採るか、特定用途用に定義された他のターゲット値にすることができる。
【0030】
本発明の特定実施例では、ノーマルなバフ、非対称なバフ、対称ズレのバフまたはこれらを組合せたバフであると認識された時に、バフが対称にズレている場合にはバフ半径の起点位置をタイヤの中心線に沿って移動させ、バフが非対称の場合には起点位置を中心線に対して直下に移動させ、および/または、バフが非対称と対称ズレとを組合せたものである場合には、起点位置を中心線に直角な方向へ移動し且つ中心線と平行な線に沿って移動させる階段を含む。
【0031】
本発明の実施例では、ノーマルなバフの場合、そのノーマルなバフがけであった時のバフがけされたバフ半径の起点位置と同一の新しいバフ半径での起点位置を選択する階段を含む。その追加の階段はバフがけされたバフ半径の長さを新しいバフ半径長さに短くする段階である。この新しい半径長さ次回のバフがけパスでより多くのゴムが除去されるように、前回よりも短くする。あるいは、バフ半径の長さを短くするのと同じ効果を有する長さを維持したまま、前回のノーマルなバフがけ時のアークと同心なアークにして起点位置を中心線に沿ってタイヤから遠ざけることができる。
【0032】
本発明の特定実施例には新しいバフ半径起点位置を有するバフ半径の長さに変え、新しい位置と変えたバフ半径長とが描くアークに沿って新しいバフ半径起点を有するバフ半径でタイヤクラウンからトレッドをバフがけする階段を含む。本発明の特定実施例にはアークがタイヤのベルトにより近くより短い長さとなるように新しいバフ半径の長さを短くする階段をさらに含むことができる。
【0033】
本発明の特定実施例は一連の反復操作を繰り返して新しいバフ半径のための提案起点位置を選択する階段をさらに含むことができる。既に述べたように、この提案起点位置の反復繰り返し操作はそのバフ半径でのバフ研摩がノーマルか、非対称か、対称ズレか、これらの組合せであるかを決定するために行なう。
【0034】
以上に記載した方法はタイヤバフがけ機械で使用され、コンピュータソフトウェアで具体化できる。以下、典型的な実施例で使用され、実行される方法および手順をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0035】
[図1]〜[図4]は本発明でタイヤからタイヤトレッドを除去するのに適したバフがけ方法と、コンピュータープログラムと、バフ機械(バフがけ機械)10とを示している。より正確には、本発明のバフ機械10は所定の「バフ半径」(buff radius)でタイヤからトレッドを除去するのに適しており、このバフ半径はその長さとその起点位置(position of its origin)とで定義される。このバフ機械10は一般にトレッド除去ツールまたはバフヘッド(バフヘッド)12と、センサー・アセンブリ14と、センサー出力26と、プログラム学習を実行できるプロセッサを有するプログラムできる論理制御装置、その他のデバイス、例えばパーソナルコンピュータまたはメインフレーム・コンピュータ20と、ユーザー・インタフェース28とを含む。
【0036】
バフヘッド(バフがけヘッド)12はタイヤ30のクラウンからトレッド材料32を除去するもので、タイヤからトレッドを除去することができる任意のデバイスにすることができ、研摩具、例えばラスプ、砥石車、ワイヤーブラシと円筒形切断機または「ピーラー」を含むが、これらに限定されるものではない。さらに、当業界で公知のように、バフ機械10は一つまたは複数のバフヘッド12を含むこともできる。単一のバフヘッド12を有するバフ機械は一般に単一ヘッドバフ機械とよばれ、2つのバフヘッド12を有するバフ機械はダブルヘッドバフ機械とよばれる。トレッド32以外の任意の材料、例えば一般にベルト34とトレッド32との間に位置するエラストマーであるアンダートレッド(undertread)の除去にバフヘッド12を用いてもよい。本発明は上記バフ半径によって記述されるアーク(円弧、arc)に沿ってタイヤ30からトレッド32を除去する任意タイプのバフ機械で使用するようになっている点に注目されたい。
【0037】
センサー・アセンブリ14は一般にタイヤ・ベルト34より上方にある材料の量を測定するのに用いる。そうした材料には一般にタイヤ・トレッド32が含まれるが、その他の材料、例えばアンダートレッドを含むこともできる。本実施例ではセンサー・アセンブリはフレーム16と、一組のローラー17と、センサー18と、フレーム16をシャフト15に接続するためのアーム14aとを含む。図示した実施例ではシャフト15を回転させてセンサー・アセンブリ14をタイヤ30と接触させたり、解放させるようになっている。シャフト15を回転させるために回転アーム19aを有するシリンダ19を用いることができるが、シャフト15をマニュアルで回転させることもでき、また、モーターを含む他の任意の回転手段を用いることもでき、特に限定されない。他の実施例では回転手段19が静止したシャフト15の周りでアーム14aを回転させることができ、アーム14aを1本のアームにすることもできる。
【0038】
[図1]に示した実施例ではセンサー18はバフヘッド12に操作可能な状態で固定して取り付けられている。このセンサーはバフヘッド12でトレッドをバフがけ(すなわち、タイヤが回転され、バフヘッド12でバフがけ)した後にベルト34より上方に残っている材料の量を走査または測定するのに使用される。バフヘッドに「操作可能な状態で固定して取り付けられる」ということは、運転時にセンサーがバフヘッドに対して一定の関係に位置あるということを意味する。すなわち、バフヘッドとタイヤ・クラウンとの間の接触位置がバフ半径によって描かれるアークに沿って移動した時に、センサーはバフヘッドに対して一定の関係位置にある。ピボット点の周りをピボットするバフヘッドを有するバフ機械の場合にはセンサーをピボットする部材に取り付けることで、バフヘッドがピボット運動したときにセンサーの取り付け部をバフヘッドと一緒に運動させることができる。また、バフヘッドがX−Y座標に沿って移動する台座を有するバフ機械の場合にはセンサーを上記台座に取り付けることで、バフヘッドがX−Y座標に沿って移動したときにセンサーの取り付け部をバフヘッドと一緒に運動させることができる。
【0039】
バフ機械10はバフ半径で規定されるアークに沿ってタイヤをバフがけするように制御装置20によって制御される。センサー18はバフヘッドに操作可能な状態で固定して取り付けられているので、当業者はセンサー18の位置を簡単に決定することができる。バフヘッド12とタイヤ30との間の接触面積を制御した場合、バフヘッド12がタイヤ中心線36に対してどのような位置関係にあるかは正確に決定できるので、バフヘッド12に対して操作可能な状態で固定して取り付けられるセンサー18の位置は単純な三角法および/または数学関数を使用して制御装置20で求めることができる。制御装置20はこの方法でセンサー18からの信号を受けて、複数の横方向位置の各々を決定する。
【0040】
本発明の他の実施例では、センサー・アセンブリ14および/またはセンサー18をバフヘッド12から独立させ、および/または、バフ機械10から独立させて、他のデバイスまたは機械に取り付けることもできる。この実施例では例えばサーボ装置を用いてセンサーをタイヤを横切って移動させて、タイヤの中心線36に関連させたセンサー位置に関する入力値を制御装置20へ送ることができる。この種の装置は上記特許文献1(米国特許第6,386,024号明細書)に記載されている。
【0041】
さらに他の実施例では、センサーを回転タイヤに対して機能的に固定して取り付けた一連の検出装置群にする。例えば第1検出装置をクラウン上方の中心線36上に取り付け、第2および第3検出装置を第1検出装置の両側の固定距離に取り付け、これを繰返す。検出装置群を直列に配置する典型的な実施例ではセンサーはタイヤクラウンを横切る横方向軌道を走査し、センサー(検出装置の集合)がタイヤクラウンの一部を横切る複数の横方向位置(各検出装置の位置)の各々からの信号を出す。
【0042】
上記センサー18は一般にトレッド32の放射方向上方かつ外側に位置し、タイヤ・トレッド32の上方へ距離40だけ離れたオフセット位置にあってもよい。センサー18はセンサー18とベルト34との間の距離を測定するための超音波式、磁気式または誘導近接式のセンサーにすることができるが、鉄を含まないコード材料の位置を決めることができる他の任意タイプのセンサーを使用することもできる。単一のバフヘッドを有する機械の場合には単一のバフヘッド12に単一のセンサーを関連付けることができる。ダブルのバフヘッドを有する機械の場合には2つのセンサーを設け、各センサーを一つのバフヘッド12と関連させることができる。
【0043】
単一ヘッドを有するバフ機械10の場合には、バフヘッド12とセンサー18とを用いて先ず最初にタイヤ中心線36でバフがけと走査を開始し、最初のパス(pass,移動)でタイヤの一方の肩部(すなわちタイヤトレッドの片側)へ向かって操作を続ける。最初のパスが終わった後に、ヘッド12とセンサー18をタイヤ中心線36上へ戻し、次のパスを開始してタイヤ・トレッド32の他方の半分のバフがけと走査を行なう。一般に、タイヤ・トレッド32はタイヤ中心線36に対して対称形であるが、新しいバフ半径起点位置を決定する階段を各バフがけパスに対してこの階段を実行することもできる(この階段を含む方法の場合)。バフヘッド12およびセンサー18の最初のパスを肩部またはタイヤの側面で開始し、タイヤ・トレッドの他方の肩部または側面へバフがけを続けることもできる。この場合には単一のパスでタイヤ・トレッドをバフ研摩でき、走査できる。各パス中または各パス後に新しいバフ半径起点位置を決定する実施例を考えることもできる。
【0044】
センサー18はセンサー18とタイヤ・ベルト34との間の距離42を関数とする応答信号(signal response)を発生する。この応答信号は電流値、電圧値、抵抗値または他の任意の特徴を表す値で表すことができる。この信号は入出力(I/O)ケーブル26を介してプログラム可能な論理制御装置20へ送られ、評価され、加工される。
【0045】
一般に、センサー18はトレッド32の放射方向上方かつ外側に位置しており、タイヤ・トレッド32から上方にオフセットした距離40に位置していてもよい。センサー18はセンサー18とベルト34との間の距離を測定するための超音波式、磁気式または近接式のセンサーにすることができるが、鉄を含まないコード材料の位置を測定可能な他の任意タイプのセンサーを使うこともできる。単一ヘッドのバフ機械の場合には単一センサーを単一のバフヘッド12と関連付けることができる。ダブルヘッドを有するバフ機械の場合には2つのセンサーを用い、各センサーをその一つのバフヘッド12と関連付けることができる。
【0046】
単一ヘッドのバフ機械10の場合には、バフヘッド12およびセンサー18はタイヤ中心線36からバフがけ操作と走査を開始し、最初のパスでタイヤの肩部の一方(すなわちタイヤトレッドの片側)へ操作を続ける。この最初のパス終了後に、バフヘッド12およびセンサー18をタイヤ中心線36へ戻し、次のパスを開始してタイヤ・トレッド32の他方の半分のバフ研摩および走査を行なう。一般に、タイヤ・トレッド32はタイヤ中心線36に対して対称形であるが、新しいバフ半径起点位置を決定する階段を各バフがけパスでその階段を実行することもできる。バフヘッド12およびセンサー18の最初のパスを肩部またはタイヤの側面で開始することも考えられる。この場合にはタイヤ・トレッドを横切って他方の肩部または側面までバフがけし、走査することで単一のパスでタイヤ・トレッドをバフ研摩できる。また、各パス中または各パスの後に新しいバフ半径起点位置を決定するような実施例も考えることができる。
【0047】
センサー18はセンサー18とタイヤ・ベルト34との間の距離42を関数とする応答信号を発生する。この応答信号は電流値、電圧値、抵抗値またはその他任意の特徴を表す値を表すことができる。この信号は入出力(I/O)ケーブル26を介してプログラム介して論理制御装置20へ送られ、評価され、加工される。
【0048】
一般に、制御装置20は受信した信号をベルト32とセンサー18との間の距離と解釈する。センサーがトレッド外部表面に実質的に接触している場合、上記信号はベルト34より上方にある材料の厚さを表す。センサーがトレッド32からオフセット距離にある場合には、ベルト34より上方にある材料はセンサーが測定した距離からオフセット距離40を引いたものに等しくなる。信号を赤外線信号または高周波信号で無線通信で制御装置20へ送ることもでき、また、光ファイバー含むケーブル、その他の当業者に公知の任意の方法で送ることができ、これらの手段に限定されるものでもない。
【0049】
プログラム可能な論理制御装置20は一般にセンサー18から応答信号を受けてタイヤ30から除去すべきトレッド32の量の制御をモニターし、その操作を補助する。制御装置20はバフヘッド12および/またはタイヤ30を公知の方法で操作する。バフヘッド12はバフ半径によって規定されるアークに沿ってタイヤ30と接触してバフがけをする。本発明の特定実施例では、制御装置20はセンサー18から受けた信号をトレッド表面32とベルト34との間の測定距離と解釈する。
【0050】
本発明の特定実施例では、制御装置20が信号−応答関数またはテーブルを利用する(例えば2007年3月29日出願の下記特許文献2(この特許の内容は本明細書の一部を成す)に記載の[図5]の信号−応答曲線38のような信号−応答曲線を用いて応答信号を対応する距離に変換する)。
【特許文献2】国際特許出願第WO/US07/65522号公報
【0051】
制御装置20は論理プロセッサ(マイクロプロセッサにすることができる)21と、記憶記憶装置(RAM(ランダム・アクセス・メモリ)、ROM(リード・オンリー・メモリ)、PROM(半固定記憶装置)等にすることができる)22と、バフ機械10と通信可能な少なくとも一つの入出力(I/O)ケーブル26とを含むことができる。制御装置20はさらにI/Oケーブル接続器27を有するI/Oカードを収納するためのI/Oスロット23を備えることができる。オペレータはインターフェース28を用いてセンサーの測定値をモニターし、制御装置20およびバフ機械10の運転をプログラム、制御または指令することができる。これには以下で詳細に説明する各階段での操作や新しいまたは修正したバフ半径起点位置を決める方法が含まれる。ユーザー・インタフェース28と制御装置20との間はI/Oケーブル27で通信できる。また、ユーザー・インタフェース28、バフ機械10および制御装置20の間に無線通信を存在させることもできる。
【0052】
一般に、制御装置20は公知の任意のグラフィック言語またはテキスト言語でプログラムできる。プログラムされた指令、データ、入力値および出力値は記憶記憶装置22に保存し、プロセッサ21からアクセスすることができる。本発明方法に関連したプログラムした指令は記憶装置に記憶し、保存し、プロセッサ21で実行することができる。記憶装置22は商業的に入手可能な公知の任意の記憶装置、例えばハードディスク装置、光学記憶装置、フラッシュメモリ等にすることができる。プロセッサ21はプログラムされた指令を実行し、距離を計算し、測定を実行し、本発明方法に関連する操作およびその他の操作を実行する。記憶装置22は入力値、出力値、その他の情報、例えばプロセッサ19で使用する信号応答曲線38を表す関数およびテーブルを保存する。さらに、制御装置20が距離の変換と測定を行なうこと以外に入力値に基づいて信号応答曲線38を発生するようにプログラムすることもできる(テーブル39として表すこともできる)。
【0053】
[図5]および[図5A]に示すように、制御装置20は信号応答曲線38を用いてセンサー18から受けた応答信号を距離に変換する。一般に、信号応答曲線38は応答信号を距離に関係づけるセンサー18とベルト34との間の距離42の関数である。信号応答曲線38は記憶装置22に関数またはテーブルとして保存できる。プロセッサ21は所望の信号応答曲線を用いて受信した信号に対応する距離を決定する。
【0054】
より正確には、典型的な実施例では信号応答曲線38を表す関数(線形でも非線形でもよい)から距離が決定される。他の実施例では受信した応答信号値に最も近い2つの応答信号をテーブルから求め、2つの応答信号の間の比例関係と対応距離とを求めて信号応答曲線38を表すテーブル39から距離を決定する。比例関係を利用して受信応答信号に対する距離が決定される。この比例関係は線形関数を有するか、受信した信号をテーブルから選択した2点間のレンジに関連付ける百分比または比に基づいたものにすることができる。受信した応答信号がテーブル39中の応答信号に等しい場合には、対応する距離は応答信号の距離を表すことになる。
【0055】
応答信号は各タイヤで変化するので、典型的な実施例では複数の信号応答曲線38を用意する。各応答曲線38はタイヤの共通特性、例えばタイヤ寸法、形状、構造、メーカまたはブランド、トレッド・プロフィルを有する一つのタイヤまたは複数のタイヤを表す。従って、プロセッサ21は測定値とトレッドの除去値をより正確に制御するために、公知のタイヤ特性をベースにするか、一定の情報またはオペレータから受けた指令をベースにして信号応答曲線38を選択する。信号応答曲線38は一般に関数またはテーブル39として記憶装置22に保存され、プロセッサ21で使用されて、上記の方法を反映するプログラムされた指令に従って距離を決定するのに使われる。
【0056】
[図6]〜[図12]に示すように、バフ機械10は一般に一つまたは複数のバフ半径46〜48(図6)でタイヤ30のトレッド32をバフがけする。各バフ半径は長さと起点(オリジン)46a〜48aとで決まる。各起点46a〜48aは中心線36に沿って位置している。タイヤ・トレッドを特定のバフ半径でバフがけすると、トレッドの外部表面はバフ半径48によって規定されている曲線またはアークを形成する。図示した実施例ではバフ半径48は起点48aを有する最初の(前回の)バフ半径を表す。他のバフ半径46、47の各々はそれぞれの起点46a、47aを有し、トライアルのバフ半径すなわち提案バフ半径(proposed buff radii)を表す。これらを用いることで一つの提案半径がバフ研摩後にベルト34の上方に所望の量の材料を与えるのか否かを調べることできる。本発明の特定実施例ではこの提案バフ半径を使用し、提案バフ半径を使用したときにトレッドの計画量が除去されるか否かを計算する。
【0057】
バフヘッド12がバフがけの最初のパスを行なう前または後に、センサー18を使用してタイヤ・クラウンの少なくとも一部を横切る複数の横方向位置でトレッド32をスキャンすることで各位置でのセンサー18とベルト34との間の距離を測定することができる。リトレッディング用にタイヤを製造する場合には、ベルト幅を横切るトレッドの厚さおよび/またはベルト34より上方に残る材料の最少量は実質的に一定であることが望ましい。
【0058】
本発明の一つの実施例では[図6]に示すようにまず最初に中心線36に位置した起点48aを有する最初のバフ半径48でタイヤ30をバフがけする。この最初のバフがけと同時にセンサー18がクラウンのタイヤ・トレッド32を走査してトレッド32の一部を横切る複数の位置1〜5で応答信号を発生する。この複数の位置1〜5はトレッドを横切って一定の間隔で離れていてもよいが、そうでなくてもよい。さらに、センサー18はトレッドを横切る特定の横断パスに沿ってトレッドを走査し(すなわち、信号を発生し)、特定の横断パス上での複数の各位置で単一の信号を発生する。換言すれば、横断パスはタイヤの中心線36に直角なタイヤ横断面に一致する。そうするためにトリガーまたはタイミング関数を用いてタイヤが回転した時にセンサー18がパスに沿って確実に走査するようにすることができる。このトリガーは公知の任意のデバイスまたは方法で構成でき、当業者に公知のエンコーダまたは近接センサーを含むことができるが、これらに限定されるものではない。近接センサーを用いる場合には物体、例えば金属物体(ブロック、ネジ、その他)をタイヤまたはリムに取り付けてから横断パスに沿った走査を開始することがきる。
【0059】
横断パスに沿った走査をする代りにトレッドの円周方向に沿って任意に走査した場合には、センサー18はタイヤ周りの各横断方向位置または横断位置間で複数の信号を発生し、各位置またはタイヤ・トレッドに沿った各レンジで平均測定値を得る。タイヤ・ベルト34は外側エッジ部で変化するので、バフ半径の起点のための新しいバフ半径および/または新しい位置を決定するためにはトレッドの部分だけ、例えばトレッド幅の内側80%だけを走査し、それを用いてタイヤをバフがけするのが望ましい。
【0060】
タイヤ30のクラウンの走査後、制御装置20はセンサー18から受けた信号をセンサー18(従ってトレッド表面)とベルト34との間の測定距離42であると解釈する。次の解析および比較でこの測定距離42をベルト34より上方に残っている材料44の厚さを表すように変換することができるが、変換しなくてもよい。この変換は(オフセットが存在する場合)、測定距離42からセンサー18とクラウン・トレッド36との間のオフセット距離を引くことができる。
【0061】
測定距離を得た後、その測定距離をターゲット(標的)距離と比較する。このターゲット距離は一般にはタイヤ中心線36の位置1のゴムの厚さにすることができるが、このターゲット距離は各々の用途に関連した特定の基準に従って選択できる。ターゲット距離は一般に最初のバフ半径48で目標とした結果を反映するが、ターゲット距離は次のバフがけパスで望まれる距離をも反映している。
【0062】
各エラストマの材料に固有な変化、機械の磨耗、機械部品の変化、タイヤ重量の変化等のために、無計画な任意のバフがけ操作では所望の結果は得られず、要求されたものとは異なるバフがけ表面輪郭が最終的に与えられるような位置に起点を有するバフ半径でタイヤトレッドがバフがけされたことになる。このズレ(変位)はタイヤ中心線36に対して左右対称または非対称である。このズレが左右対称の場合、すなわち、バフがけした輪郭がトレッド幅方向に沿って実質的にセンタリングしている場合にはタイヤ中心線36に沿ってバフ半径の起点位置を移動することによって左右対称にズレたバフ状態を修正することができる。ズレが中心線36に対して非対称の場合には、タイヤまたはタイヤ中心線36に対してバフ半径の起点を横断方向に移動することで非対称なズレを修正することができる。両方の修正を同時に行なうこともできる。すなわち、バフ半径の起点の位置は(1)タイヤ・クラウンに対して垂直に移動する(すなわち、中心線36に沿ってタイヤトレッド32へ近付ける、または、遠ざける)、および/または、(2)タイヤ・クラウンに対して水平または横断方向に移動させる(中心線36に対してタイヤの片側から反対側まで直角に)。
【0063】
バフ半径の起点位置を上記のように調節することによって、平らまたは急勾配なバフがけアークになったり(中心線に沿って起点を一定半径長さで移動させた場合)、中心からズレた(シフトした)アークになる(起点を中心線に対して垂直に一定半径長さで移動した場合)。その後、必要に応じて半径長さを短くし、新しい起点位置にしてバフがけすることで、最初と比べて急勾配、平ら、および/または中心ズレしたアークでタイヤのクラウンを横切って追加のゴムを除去することができる。
【0064】
本発明の特定の実施例では、タイヤのバフがけパスで使用したバフ半径が正しいかったか否か、または、バフ操作が非対称のバフがけ、左右対称のバフがけまたはこの両者の組合せになるか否かを決定する階段を含むことができる。これはタイヤクラウンを横切る複数の横方向位置の各々から受けたセンサーの読取り値から求めた測定値の違いを比較することによって決定できる。この違いは各測定値間の違いでも、測定値とターゲットとの間の違いでもよい。このターゲットは中心線の近くで採った測定値か、特定用途に適した標的値にすることができる。
【0065】
[図6]〜[図11]に示すように、本発明の特定の実施例では、測定距離とターゲット距離との間の差および計画距離(projected distance)とターゲット距離との間の差を計算する。測定距離はセンサーがタイヤ・クラウンを横切る複数の横方向位置の各々で測定した距離である。この種の測定距離は例えばタイヤ中心線36上にある最初の起点位置48aを有する最初のバフ半径48で実行したバフがけ操作で得ることができる。上記の計画距離は提案されたバフがけ起点位置46a、47aを有する提案バフがけ半径(proposed buff radii)46、47で実行した場合に得られるであろう距離である。この提案距離は例えば最初の提案バフ半径46のための第1提案起点位置46aから得ることができる。
【0066】
本発明の特定の実施例は、提案バフ半径46、47に対する複数の提案起点位置46a、47aを選択し、クラウンを横切る複数の横方向位置の各々でクラウン表面とベルトとの間の計画距離を計算する一連の操作を繰り返す。この各計画距離は一つまたは複数の提案起点位置を有するバフ半径が描くアークを基にしている。その結果、測定距離と比較した複数の計画距離が出され、それから新しいバフ半径位置を選ぶことができる。この選択は統計解析、例えば以下で説明する最少二乗法を用いて行なうことができる。従って、本発明の特定実施例には測定距離とターゲット距離との間で計算された差と、計画距離とターゲット距離との間で計算された差とを統計解析して新しい起点位置を選択する階段がさらに含まれる。上記の差は複数の横方向位置の各々で計算される。
【0067】
計画距離の計算はバフ半径によって描かれるアークを通るバフがけ操作の制御で使用するものと同じ方法および計算法で行なうことができる。センサー18によって報告された複数の横方向位置の各々のどこの位置、例えばX−Y座標にバフヘッド12があるかは制御装置20が知っているので、複数の横方向位置の各々で各提案起点位置および/またはバフ半径長さ(提案バフ)に対してバフヘッド12がX−Y座標のどこにいるかを制御装置20は計算できる。バフヘッドが提案バフでいるであろう位置と実際のバフパスでの位置との間の差から提案バフでのベルト上方の材料の厚さの増分(正の差)または減分(負の差)が与えられる。この差に測定距離を加えたものが提案バフに対する各横方向位置での計画距離を与える。
【0068】
[図7]は[図6]に示すタイヤ外側側面を横切る複数の横方向位置の各々で測定した厚さを与えるテーブルである。このテーブルは中心線での厚さ(7mm)が中心線から離れた所の厚さ(6.5mm)より大きいことを示している。従って、タイヤの反対側(図示せず)は対称形であるので、バフがけは左右対称にズレることを示している。ターゲットバフ量は7mmであるので、測定厚さとターゲット値との差が計算され、さらに次のバフ半径を選択する統計法のためにこの差の平方和(1.08)が計算される。
【0069】
[図8]は[図6]に示すタイヤ外側側面を横切る複数の横方向位置の各々での計画距離または厚さを与えるテーブルである。このテーブルは所定の反復法のバフ半径(iterated buff radius)、例えば起点位置47aを有する最初の提案バフ半径47の場合、計算された計画距離は中心線で7mm、中心線から離れた位置5でもほぼ7(6.8mm)であることを示している。ターゲットバフは同じで、差と二乗和(0.06)が計算される。平方和が小さいことから、提案バフは最初のバフより改良されている。
【0070】
バフ半径長さおよび/またはバフ半径起点位置の反復法の選択(iterated selection)は当業者に公知の任意の方法で行なうことができる。反復法のバフ半径は任意に選択するか、制御装置20の記憶装置またはそのコンポーネントに保存された反復法のバフ半径のテーブルから選択することができる。あるいは、最初のバフ半径、ターゲット距離および/または計算された差を基にして制御装置20またはそのコンポーネントで計算することができる。本発明の特定実施例では複数のバフ半径および/またはバフ半径起点位置を選択して上記のような評価をする段階を含んでいる。次のバフがけパスでタイヤをバフがけするために提案されたバフがけの起点位置/バフ半径の最適値を選択する。この選択は上記の最小二乗法で行なうことができる。
【0071】
[図10]と[図11]は[図7]と[図8]と同じ解析をしたものであるが、この実施例はズレが非対称でも左右対称でもないバフがけの実施例である。すなわち、最初のバフ半径が測定したクラウンの横断方向でほぼ一定の差を与えると決定された場合またはトレッド厚さはほぼ均一であるが、予定の厚さまたは要求された厚さではない場合に、バフ半径の長さを修正して、起点位置を変えずに、差すオフセット量を訂正する。または、起点位置を中心線36に沿って移動して差を訂正する。
【0072】
[図12]は本発明の実施例に従ってタイヤからトレッドからのバフがけ量を決定する方法のフロー図である。ここに示した各状況は本発明の特定実施例の各階段を記述したものである。
【0073】
以上、本発明を特定実施例に関して説明したが、上記の説明は単なる例示で、本発明がそれに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(6)から成るタイヤクラウンからトレッドをバフがけ除去するためのバフ半径を決定する方法:
(1)タイヤのクラウンの少なくとも一部を横切る横方向パスに沿ってセンサーで走査して、タイヤ・クラウンの上記部分を横切る複数の横方向位置の各々から信号を受け、センサーが発生した信号はタイヤ・クラウン表面とタイヤベルトとの間の距離の関数であり、
(2)センサーからの上記信号を上記複数の位置の各々の位置でのタイヤ・クラウン表面とベルトとの間の測定距離と解釈し、
(3)次回の新しいバフ半径のために一つまたは複数の提案された起点位置を選択し、提案された起点位置の各々はタイヤの中心線上にあり、
(4)クラウンを横切る複数の横方向位置の各々でクラウン表面とベルトとの間の計画距離を計算し、各計画距離は一つまたは複数の提案された起点位置を有するバフ半径が描くアークをベースにしており、
(5)一つまたは複数の提案された起点位置から新しいバフ半径のための新しい起点位置を選択し、
(6)新しいバフ半径が描くアークに沿ってタイヤ・クラウンからトレッドをバフがけする。
【請求項2】
一つのバフがけしたバフ半径でのタイヤクラウンからのトレッドのバフ状態が非対称なバフがけか、左右対称なバフがけか、ノーマルなバフがけか、これらの組合せであるかを決定する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記バフ半径でのバフがけがノーマルなバフがけである場合、バフがけされたバフ半径起点位置と同一となるように新しい起点位置を選択し、バフがけされたバフ半径の長さを新しいバフ半径長さへ減少させる段階をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記バフ半径でのバフがけがノーマルなバフがけである場合、新しい起点位置を中心線に沿ってタイヤから離れるような位置を選択し、新しいバフがけ半径長さとしてバフがけされたバフ半径長さを維持する段階をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
バフが非対称なズレの場合には、タイヤの中心線に沿ってバフ半径の起点位置を移動するように決め、バフが非対称なズレの場合には、中心線に対して起点をノーマルな位置に移動するように決め、バフが非対称および左右対称の両方のズレの場合には、起点位置を中心線に対してノーマルな方向で且つ中心線に対して平行なラインに沿って移動するように決める段階をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項6】
一連の反復操作を繰り返して新しいバフ半径に対する提案起点位置を選択する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
新しい起点を選択する階段が、測定距離とターゲット距離との間で計算された差および計画距離とターゲット距離の間で計算された差の統計解析によって新しい起点位置を選択し、上記の差を複数の横方向位置の各々で計算することから成る請求項1に記載の方法。
【請求項8】
統計解析が最少二乗和法である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
新しいバフ半径長さを短くし、アークをタイヤベルトへより近くなるように短い長さにする段階をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
下記(1)〜(6)の指令を含む、タイヤクラウンからトレッドをバフがけする際にバフがけ半径を決定するための、コンピュータに読込み可能な記憶媒体に記録されたコンピュータープログラム製品:
(1)センサーがタイヤのクラウンの一部を横切る複数の横方向位置の各々から受けた信号はタイヤのクラウン表面とタイヤのベルトとの間の距離の関数となるように、タイヤのクラウンを横切る横断パスを走査するセンサーから信号を受けるための受信指令、
(2)上記のセンサー信号を複数の位置の各々でのタイヤクラウン表面とベルトとの間の測定距離と解釈する解釈指令、
(3)新しいバフがけ半径のための一つまたは複数の提案起点位置を選択するための指令を選択し、各々の提案された起点位置はタイヤの中心線上にあり、
(4)一つまたは複数の提案起点位置を有するバフ半径が描くアークに基づいたクラウンを横切る複数の横方向位置の各々でクラウン表面とベルトとの間の各計画距離を計算するための計算指令、
(5)一つまたは複数の提案起点位置から新しいバフ半径のための新しい起点位置を選択するための選択指令、
(6)新しいバフ半径によって描かれるアークに沿ってタイヤ・クラウンからトレッドをバフがけするためのバフがけ指令。
【請求項11】
バフがけされたバフ半径でのタイヤクラウンからのトレッドのバフがけが非対称のバフがけか、左右対称のバフがけか、通常のバフがけか、これらの組合せであるかを決定するための決定指令をさらに有する請求項10に記載のコンピュータープログラム。
【請求項12】
バフがけされたバフ半径でのバフが通常のバフである場合、新しい起点位置をバフがけされたバフ半径の起点位置と同一に選択する選択指令と、バフがけされたバフ半径長さを新しいバフがけ半径長さに減少させ減少指令とをさらに有する請求項11に記載のコンピュータープログラム。
【請求項13】
バフがけされたバフ半径でのバフが通常のバフである場合、新しい起点位置をタイヤ中心線に沿ってタイヤから離れる方向へ移動するように選択するための選択指令と、新しいバフがけしている半径長さとしてバフがけされたバフ半径長さを維持するための維持指令とをさらに有する請求項11に記載のコンピュータープログラム。
【請求項14】
バフが左右非対称にズレている場合に、タイヤの中心線に沿ってバフ半径の起点位置を移動することを決める決定指令と、バフが非対称の場合、中心線に対して起点を直角な位置へ移動することを決める決定指令と、バフが非対称および左右対称ズレである場合に、中心線に対して直角な方向かつ中心線と平行なラインに沿った方向へ起点を移動することを決める決定指令とをさらに有する請求項11のコンピュータープログラム。
【請求項15】
一連の反復走査を繰り返して新しいバフ半径のための提案起点位置を選択する進行指令をさらに有する請求項10に記載のコンピュータープログラム。
【請求項16】
新しい起点位置を選択するための上記の選択指令が、測定距離とターゲット距離との間の計算された差と、計画距離とターゲット距離との間の計算された差の統計解析で新しい起点位置を選択する選択指令を含み、上記の計算された差を複数の横方向位置の各々で計算する請求項10に記載のコンピュータープログラム。
【請求項17】
統計解析が最少二乗和法である請求項16に記載のコンピュータープログラム。
【請求項18】
タイヤクラウン表面とタイヤベルトとの間の距離の関数であるセンサー出力信号を出力するセンサーと、プロセッサおよびプロセッサで実行可能な請求項10に記載の指令を含む指令を保存する記憶装置を有する制御装置と、タイヤをバフがけするためのバフヘッドとを有する、タイヤのクラウンからトレッドをバフがけするためのタイヤバフがけ機械。
【請求項19】
センサーがバフがけヘッドに走査可能な状態で固定して取り付けられている請求項18に記載のタイヤのバフがけ機械。
【請求項20】
コンピュータが実行可能な指令が、バフがけヘッドに対するセンサーの固定関係をベースにしたタイヤの中心線に対するセンサー位置を決定する指令のための決定指令をさらに含む請求項19に記載のタイヤのバフがけ機械。
【請求項21】
上記の実行可能な指令を請求項11、12、13、14、15、16または17の中から選択する請求項18に記載のタイヤのバフがけ機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−531253(P2010−531253A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514729(P2010−514729)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/072369
【国際公開番号】WO2009/002342
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(599140471)ソシエテ ドゥ テクノロジー ミシュラン (96)
【出願人】(597011441)ミシュラン ルシェルシェ エ テクニク ソシエテ アノニム (94)
【Fターム(参考)】