説明

タイヤパンクシール材

【課題】タイヤのショルダー溝部における孔に対するシール性能を有し、貯蔵安定性にも優れるタイヤパンクシール材の提供。
【解決手段】天然ゴムラテックス、合成樹脂エマルジョン、粘着付与剤および凍結防止剤を含有し、
前記天然ゴムラテックスおよび前記合成樹脂エマルジョンの固形分配合比率(天然ゴムラテックス/合成樹脂エマルジョン)が、80/20〜30/70であるタイヤパンクシール材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤパンクシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンクしたタイヤを修理するタイヤパンクシール材として、天然ゴムラテックスに、粘着付与樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを配合したものが多用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「天然ゴムラテックスと粘着付与樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを少なくとも含むタイヤのパンクシーリング剤であって、前記天然ゴムラテックスの固形分Aと粘着付与樹脂エマルジョンの固形分Bと凍結防止剤Cとの和A+B+Cである総固形分100重量部に対し、前記天然ゴムラテックスの固形分Aの含有量を30〜60重量部、前記粘着付与樹脂エマルジョンの固形分Bの含有量を10〜30重量部、かつ前記凍結防止剤Cの含有量を20〜50重量部とするとともに、前記粘着付与樹脂エマルジョンの粘着付与樹脂として芳香族変性テルペン樹脂を用いたことを特徴とするタイヤのパンクシーリング剤」が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、「少なくとも、ゴムラテックス溶液と短繊維とを含有するパンクシーリング剤であって、さらに、クレイ系増粘剤を含有してなり、該クレイ系増粘剤を添加した前記ゴムラテックス溶液の+50℃〜−20℃の範囲における粘度が、3〜6000mPa・sであることを特徴とするパンクシーリング剤。」が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の天然ゴムラテックス系のパンクシーリング剤は、貯蔵安定性(保管性能)が低く、例えば、自動車のトランク内に放置された場合の寿命が約1年程度で、それを過ぎると固化またはゲル化して流動性が著しく低下し、パンクしたタイヤ内に注入できなくなる等の問題がある。
【0006】
この問題を解決すべく、本出願人により、「合成樹脂エマルジョンと、凍結防止剤とを含有し、水素イオン指数が5.5〜8.5であるタイヤパンクシール材。」が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−035867号公報
【特許文献2】特開2005−170973号公報
【特許文献3】特開2007−224246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1および2に記載のパンクシーリング剤や、特許文献3に記載タイヤパンクシール材を用いた場合、タイヤのセンター溝部における孔(直径4mm程度)についてはシールすることが可能であるものの、タイヤのショルダー溝部における孔(直径4mm程度)についてはシールすることが困難であることが分かった。これは、タイヤのショルダー溝部の穴においては、パンクシーリング剤(タイヤパンクシール材)が供給され難く、車の走行開始時や停止時にわずかに供給される程度に留まるためと考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、タイヤのショルダー溝部における孔に対するシール性能(以下、単に「ショルダー溝部シール性能」という。)を有し、貯蔵安定性にも優れるタイヤパンクシール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、天然ゴムラテックス、合成樹脂エマルジョン、粘着付与剤および凍結防止剤を含有し、この天然ゴムラテックスおよび合成樹脂エマルジョンを特定割合で含有するタイヤパンクシール材が、ショルダー溝部シール性能を有し、貯蔵安定性にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記(1)〜(13)を提供する。
【0011】
(1)天然ゴムラテックス、合成樹脂エマルジョン、粘着付与剤および凍結防止剤を含有し、
上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの固形分配合比率(天然ゴムラテックス/合成樹脂エマルジョン)が、80/20〜30/70であるタイヤパンクシール材。
【0012】
(2)上記合成樹脂エマルジョンが、エチレン酢酸ビニル系エマルジョンである上記(1)に記載のタイヤパンクシール材。
【0013】
(3)更に、ヒドラジド基を有するモノマー(以下、「ヒドラジド基含有モノマー」ともいう。)を含有する上記(1)または(2)に記載のタイヤパンクシール材。
【0014】
(4)上記合成樹脂エマルジョンが、カルボニル基を有する上記(3)に記載のタイヤパンクシール材。
【0015】
(5)上記ヒドラジド基含有モノマーの含有量が、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して1〜10質量部である上記(3)または(4)に記載のタイヤパンクシール材。
【0016】
(6)更に、ゲル化剤を含有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【0017】
(7)上記ゲル化剤が、アルギン酸誘導体および/またはセルロース誘導体である上記(6)に記載のタイヤパンクシール材。
【0018】
(8)上記ゲル化剤の含有量が、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して1〜5質量部である上記(6)または(7)に記載のタイヤパンクシール材。
【0019】
(9)上記粘着付与剤が、樹脂を乳化して得られるエマルジョンである上記(1)〜(8)のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【0020】
(10)上記粘着付与剤が、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および水添テルペン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む上記(1)〜(9)のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【0021】
(11)上記粘着付与剤の含有量が、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して10〜100質量部である上記(1)〜(10)のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【0022】
(12)上記凍結防止剤が、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む上記(1)〜(11)のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【0023】
(13)上記凍結防止剤の含有量が、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して100〜300質量部である上記(1)〜(12)のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【発明の効果】
【0024】
以下に説明するように、本発明によれば、ショルダー溝部シール性能を有し、貯蔵安定性にも優れるタイヤパンクシール材を提供することができるため有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のタイヤパンクシール材は、天然ゴムラテックス、合成樹脂エマルジョン、粘着付与剤および凍結防止剤を含有し、この天然ゴムラテックスおよび合成樹脂エマルジョンの固形分配合比率(天然ゴムラテックス/合成樹脂エマルジョン)が80/20〜30/70である、タイヤパンクシール材である。
次に、本発明のタイヤパンクシール材の各成分について詳述する。
【0026】
<天然ゴムラテックス>
本発明のタイヤパンクシール材に用いられる天然ゴムラテックスは、特に限定されず、ヘベア・ブラジリエンシス樹をタッピングして採取されるものを用いることができる。
本発明においては、天然ゴムラテックスから蛋白質を除去した所謂「脱蛋白天然ゴムラテックス」が、より少ないアンモニアで腐敗を抑えることができ、アンモニアに起因するスチールコードへの腐食損傷および刺激臭の発生を防止するという理由から好適に用いることができる。
【0027】
<合成樹脂エマルジョン>
本発明のタイヤパンクシール材に用いられる合成樹脂エマルジョンは、特に限定されず、従来公知の合成樹脂エマルジョンを用いることができる。
上記合成樹脂エマルジョンとしては、具体的には、例えば、ウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン、エチレン酢酸ビニル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、ポリ塩化ビニル系エマルジョン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明においては、得られる本発明のタイヤパンクシール材の貯蔵安定性がより向上し、特に、後述するヒドラジド基を有するモノマーを含有する場合には、そのモノマーと架橋反応が生起してショルダー溝部シール性能もより向上するという理由から、エチレン酢酸ビニル系エマルジョンが好ましい。
以下に、エチレン酢酸ビニル系エマルジョンについて、詳述する。
【0029】
(エチレン酢酸ビニル系エマルジョン)
上記エチレン酢酸ビニル系エマルジョン(以下、「EVAエマルジョン」という。)は、特に限定されず、従来公知のEVAエマルジョンを用いることができる。
上記EVAエマルジョンとしては、エチレンと酢酸ビニルモノマーを、乳化分散剤を用いて共重合(乳化重合)して得られる水性エマルジョン等が好適に挙げられる。
共重合する際に配合されるエチレンと酢酸ビニルモノマーとの質量比は、10/90〜40/60が好ましい。
【0030】
本発明においては、上記共重合において、必要に応じて、他のモノマーを共重合させてもよい。他のモノマーとしては、具体的には、例えば、アクリル酸2─エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステル;塩化ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル;等が挙げられる。また、他のモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸のようにカルボキシル基を含有するモノマーの他、スルホン酸基、ヒドロキシ基、エポキシ基、メチロール基、アミノ基、アミド基等の官能基を含有する各種モノマーも使用することができる。
【0031】
上記乳化分散剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、ノニオン性界面活性剤が、中性であり、臭気が少ない点から好ましい。特に、水溶性高分子を用いることが好ましく、ポリビニルアルコール(PVA)を用いることがより好ましい。
【0032】
上記EVAエマルジョンの重量平均分子量は、10000〜500000であるのが好ましく、50000〜200000であるのがより好ましい。
また、上記EVAエマルジョンは、固形分が40〜70質量%であるのが好ましく、50〜65質量%であるのがより好ましい。
【0033】
上記EVAエマルジョンとして市販品を用いてもよく、その具体例としては、住化ケムテックス社製のエチレン酢酸ビニルエマルジョン(スミカフレックスS7400、S400HQ、S467、510HQ、1010、410HQ、408HQE、950HQ、951HQ)等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの固形分配合比率(天然ゴムラテックス/合成樹脂エマルジョン)が、80/20〜30/70であり、70/30〜30/70であるのが好ましく、60/40〜40/60であるのがより好ましい。
上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの固形分配合比率が上記範囲であると、得られる本発明のタイヤパンクシール材が、ショルダー溝部シール性能を有し、貯蔵安定性も良好となる。これは、天然ゴムラテックスの粒子間に合成樹脂エマルジョンの粒子が浮遊することにより、天然ゴムラテックス粒子の凝集を抑制できるためであると考えられる。
ここで、天然ゴムラテックスの固形分とは、天然ゴムラテックスに含有される各成分から水および溶剤を除いたものの合計を意味する。同様に、合成樹脂エマルジョンの固形分とは、合成樹脂エマルジョンに含有される各成分から水および溶剤を除いたものの合計を意味する。
【0035】
<粘着付与剤>
本発明のタイヤパンクシール材に用いられる粘着付与剤は、特に限定されず、従来公知の粘着付与剤を用いることができる。
上記粘着付与剤としては、具体的には、例えば、ロジンエステル、重合ロジンエステル、変性ロジンなどのロジン系樹脂;テルペンフェノール、芳香族テルペンなどのテルペン系樹脂;テルペン系樹脂を水素添加した水添テルペン系樹脂;フェノール樹脂;キシレン樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特に、これらの樹脂を乳化して得られるエマルジョンであるのが、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンとの相溶性に優れる理由から好ましい。
また、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および水添テルペン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む粘着付与剤であるのが、得られる本発明のタイヤパンクシール材のショルダー溝部シール性能がより向上する理由から好ましい。
【0036】
本発明においては、上記粘着付与剤の固形分の含有量は、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して10〜100質量部であるのが好ましく、10〜50質量部であるのがより好ましく、10〜30質量部であるのが更に好ましい。
上記粘着付与剤の固形分の含有量が上記範囲であると、得られる本発明のタイヤパンクシール材のショルダー溝部シール性能が更に向上する。
ここで、粘着付与剤の固形分とは、粘着付与剤に含有される各成分から水および溶剤を除いたものの合計を意味する。
【0037】
<凍結防止剤>
本発明のタイヤパンクシール材に用いられる凍結防止剤は、特に限定されず、従来公知の凍結防止剤を用いることができる。
上記凍結防止剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明においては、上記凍結防止剤の固形分の含有量は、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して100〜300質量部であるのが好ましく、100〜200質量部であるのがより好ましく、100〜150質量部であるのが更に好ましい。
上記凍結防止剤の固形分の含有量が上記範囲であると、得られる本発明のタイヤパンクシール材の凍結を防止する性能に優れる。
ここで、凍結防止剤の固形分とは、凍結防止剤に含有される各成分から水および溶剤を除いたものの合計を意味する。
【0039】
<ヒドラジド基含有モノマー>
本発明のタイヤパンクシール材は、ヒドラジド基を有するモノマーを含有するのが好ましい。
上記ヒドラジド基含有モノマーとしては、具体的には、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
このようなヒドラジド基含有モノマーを含有することにより、本発明のタイヤパンクシール材のショルダー溝部シール性能がより向上する。
これは、上記ヒドラジド基含有モノマーと、上記合成樹脂エマルジョン、特に、カルボニル基を有する合成樹脂エマルジョン(例えば、EVAエマルジョン)との架橋反応により、シール時の孔を塞ぐ凝集物の強度が向上するためと考えられる。
また、この架橋反応は、水の揮発と同時に進行し、水の存在下では進行しないため、本発明のパンクシール材の良好な貯蔵安定性を維持することができる。
【0041】
本発明においては、上記ヒドラジド基含有モノマーの含有量は、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して1〜10質量部であるのが好ましく、1〜5質量部であるのがより好ましい。
【0042】
<ゲル化剤>
本発明のタイヤパンクシール材は、ゲル化剤を含有するのが好ましい。
上記ゲル化剤としては、具体的には、例えば、アルギン酸誘導体、セルロース誘導体等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
このようなゲル化剤を含有することにより、本発明のタイヤパンクシール材のショルダー溝部シール性能がより向上する。
これは、ゲル化剤が水、凍結防止剤を吸収し、粒子をわずかに不安定化させる働きがあり、シール時により凝集しやすくなるためと考えられる。
【0044】
本発明においては、上記ゲル化剤の含有量が、上記天然ゴムラテックスおよび上記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して1〜5質量部であるのが好ましく、1〜3質量部であるのがより好ましい。
【0045】
本発明のタイヤパンクシール材は、上述した各成分以外に、所望により、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、帯電防止剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0046】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物等が挙げられる。
【0047】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0048】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0049】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0050】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
【0051】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
【0052】
界面活性化剤としては、ロジンのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルフホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシモノおよびジスチリルフェニルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、アルキルフェノキシボリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤;テトラアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルアミン、モノオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどのカチオン性界面活性剤;等が挙げられる。
本発明においては、上記ヒドラジド基含有モノマーを含有する場合、上記合成樹脂エマルジョンと同様、これらの界面活性化剤のうち、カルボニル基を有するものが好ましい。
【0053】
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0054】
本発明のタイヤパンクシール材の製造方法は、特に限定されないが、例えば、反応容器に上述した天然ゴムラテックス、合成樹脂エマルジョン、粘着付与剤および凍結防止剤ならびに所望によりヒドラジド基含有モノマー、ゲル化剤および各種添加剤を入れ、減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混練する方法が挙げられる。
【0055】
以下、本発明のタイヤパンクシール材の使用方法について説明する。ただし、本発明のタイヤパンクシール材の使用方法は下記の方法に限定されない。
まず、本発明のタイヤパンクシール材をタイヤの空気充填部からタイヤ内に注入する。本発明のタイヤパンクシール材をタイヤ内に注入する方法は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができ、例えば、シリンジ、スプレー缶等を用いる方法が挙げられる。タイヤ内に注入されるタイヤパンクシール材の量は、特に限定されず、パンク穴の大きさ等に応じて適宜選択される。
次に、所定の空気圧まで空気を充填する。
その後、車を走行させる。タイヤが回転接地する際に受ける圧縮力や剪断力によって合成樹脂粒子等の凝集体を形成し、パンク穴をシールすることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1〜51、比較例1〜18)
下記第1表の各成分を、第1表に示す組成で、かくはん機を用いて混合し、第1表に示される各タイヤパンクシール材を得た。なお、第1表に示す数値は、固形分換算した質量部である。
得られた各タイヤパンクシール材について、下記に示す方法により、シール性能および貯蔵安定性の評価を行った。その結果を第1表に示す。
【0058】
<シール性能>
(1)タイヤのセンター溝部における孔
まず、タイヤのトレッドのセンター溝部にパンク孔(直径4mm)を空けた。
次いで、パンク孔を空けたタイヤをドラム試験機に装着し、上記で得られたタイヤパンクシール材をタイヤのバルブ口から注入し、タイヤ内圧が250kPaになるように空気を充填した。
その後、荷重350kg、時速30kmの条件下で上記タイヤを8分間走行させ、走行後に、空気漏れの有無を目視および石鹸水をパンク孔付近に吹き付けることで確認した。
空気漏れがないものをタイヤのセンター溝部における孔に対するシール性能(以下、「センター溝部シール性能」)を有するものとして「○」と評価し、空気漏れがあるものをセンター溝部シール性能がないものとして「×」と評価した。
【0059】
(2)タイヤのショルダー溝部における孔
まず、タイヤのトレッドのショルダー溝部にパンク孔(直径4mm)を空けた。
次いで、パンク孔を空けたタイヤをドラム試験機に装着し、上記で得られたタイヤパンクシール材をタイヤのバルブ口から注入し、タイヤ内圧が150kPaになるように空気を充填した。
その後、荷重350kg、時速30kmの条件下で上記タイヤを1分間走行させて停止する間欠運転を繰り返し、上記と同様の評価で空気漏れがなくなるまで行った。
その結果、間欠運転を1〜5回繰り返した段階で空気漏れがなくなるものをショルダー溝部シール性能に非常に優れるものとして「◎」と評価し、間欠運転を6〜10回繰り返した段階で空気漏れがなくなるものをショルダー溝部シール性能に優れるものとして「○」と評価し、間欠運転を11〜15回繰り返した段階で空気漏れがなくなるものを実用上問題がない程度にショルダー溝部シール性能を有するものとして「△」と評価し、間欠運転を15回以上繰り返しても空気漏れがなくならないものをショルダー溝部シール性能がないものとして「×」と評価した。
【0060】
(貯蔵安定性)
得られたタイヤパンクシール材を容器に入れ、窒素置換した後密閉し、80℃で30日間放置した。その後、タイヤパンクシール材の状態を観察し、分散状態を目視で観察し、沈殿・分離がないもの貯蔵安定性に優れるものとして「○」と評価し、凝集物やフィルムが存在したものを貯蔵安定性に劣るものとして「×」と評価した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
【表7】

【0068】
【表8】

【0069】
上記第1表に示す各成分は、下記のとおりである。
・天然ゴムラテックス:HA、フェルフェックス社製、固形分60質量%、pH11.5
・合成樹脂エマルジョン:EVAエマルジョン(スミカフレックス408HQE、住化ケムテックス社製、固形分52質量%)
・粘着付与剤1:ロジン系樹脂エマルジョン(ハリエスターSK508、ハリマ化成社製、固形分55質量%)
・粘着付与剤2:テルペン系樹脂エマルジョン(R1050、ヤスハラケミカル社製、固形分55質量%)
・凍結防止剤1:プロピレングリコール(三協化学社製、固形分100質量%)
・凍結防止剤2:エチレングリコール(和光純薬工業社製、固形分100質量%)
・凍結防止剤3:ジエチレングリコール(和光純薬工業社製、固形分100質量%)
・ヒドラジド基含有モノマー:アジピン酸ジヒドラジド(日本化成社製、固形分100質量%)
・ゲル化剤:アルギン酸プロピレングリコール(和光純薬工業社製、固形分100質量%)
【0070】
上記第1表に示す結果から明らかなように、天然ゴムラテックスおよび合成樹脂エマルジョンを特定の固定分配合比率で併用せずに調製したタイヤパンクシール材(比較例1〜18)は、シール性能(特に、ショルダー溝部シール性能)および貯蔵安定性がいずれも良好となる結果は得られなかった。
これに対し、天然ゴムラテックスおよび合成樹脂エマルジョンを特定の固定分配合比率で併用して調製したタイヤパンクシール材(実施例1〜51)は、シール性能(特に、ショルダー溝部シール性能)および貯蔵安定性がいずれも良好となることが分かった。
特に、ヒドラジド基含有モノマーを併用して調製したタイヤパンクシール材(実施例31〜41)は、シール部分の皮膜物性(モジュラス、引張強度、伸び等)が向上するため、いずれもショルダー溝部シール性能が非常に優れることが分かった。また、ゲル化剤を併用して調製したタイヤパンクシール材(実施例42〜51)も、ショルダー溝部シール性能が非常に優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックス、合成樹脂エマルジョン、粘着付与剤および凍結防止剤を含有し、
前記天然ゴムラテックスおよび前記合成樹脂エマルジョンの固形分配合比率(天然ゴムラテックス/合成樹脂エマルジョン)が、80/20〜30/70であるタイヤパンクシール材。
【請求項2】
前記合成樹脂エマルジョンが、エチレン酢酸ビニル系エマルジョンである請求項1に記載のタイヤパンクシール材。
【請求項3】
更に、ヒドラジド基を有するモノマーを含有する請求項1または2に記載のタイヤパンクシール材。
【請求項4】
前記合成樹脂エマルジョンが、カルボニル基を有する請求項3に記載のタイヤパンクシール材。
【請求項5】
前記モノマーの含有量が、前記天然ゴムラテックスおよび前記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して1〜10質量部である請求項3または4に記載のタイヤパンクシール材。
【請求項6】
更に、ゲル化剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【請求項7】
前記ゲル化剤が、アルギン酸誘導体および/またはセルロース誘導体である請求項6に記載のタイヤパンクシール材。
【請求項8】
前記ゲル化剤の含有量が、前記天然ゴムラテックスおよび前記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して1〜5質量部である請求項6または7に記載のタイヤパンクシール材。
【請求項9】
前記粘着付与剤が、樹脂を乳化して得られるエマルジョンである請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【請求項10】
前記粘着付与剤が、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および水添テルペン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜9のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【請求項11】
前記粘着付与剤の含有量が、前記天然ゴムラテックスおよび前記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して10〜100質量部である請求項1〜10のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【請求項12】
前記凍結防止剤が、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜11のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【請求項13】
前記凍結防止剤の含有量が、前記天然ゴムラテックスおよび前記合成樹脂エマルジョンの合計固形分100質量部に対して100〜300質量部である請求項1〜12のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。

【公開番号】特開2010−43155(P2010−43155A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206770(P2008−206770)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】