説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】グリップ性能を充分に向上できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される五員複素環式化合物を含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
[化1]


(式(I)中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。N及びNは、窒素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高性能化、高馬力化が進む一方、安全性に対する意識も高まっており、タイヤに対するグリップ性能の要求も強まってきている。
【0003】
グリップ性能は、ゴム組成物のヒステリシスロス特性に依存しており、従来、ゴム組成物のグリップ性能を高める手法としては、例えば、スチレンブタジエンゴムのスチレン量およびビニル量を多くしてガラス転移温度をより高くする手法が知られている。しかし、この場合、耐摩耗性が低下する傾向にあるだけでなく、低温時のグリップ性能も低下するおそれがある。また、オイルを多量に使用してグリップ性能を向上させる手法も知られている。しかし、この場合、破壊特性の低下により耐摩耗性が低下してしまう。
【0004】
上記問題を解決するために、特許文献1には、イミダゾール類と、有機酸塩を配合したタイヤ用ゴム組成物が開示されている。しかし、イミダゾール類について詳細に検討されておらず、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−138101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、グリップ性能を充分に向上できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(I)で表される五員複素環式化合物を含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式(I)中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。N及びNは、窒素原子を表す。)
【0008】
上記タイヤ用ゴム組成物は、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体を含むことが好ましい。
【0009】
上記式(I)で表される五員複素環式化合物と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の質量基準の配合比が0.1〜10であることが好ましい。
【0010】
上記式(I)で表される五員複素環式化合物において、Nの電荷密度が正の値となることが好ましい。
【0011】
窒素吸着比表面積が80〜280m/gのカーボンブラックを含むことが好ましい。
【0012】
上記タイヤ用ゴム組成物が、トレッドに使用されることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。上記空気入りタイヤが高性能タイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記式(I)で表される五員複素環式化合物を含むタイヤ用ゴム組成物であるので、グリップ性能を充分に向上でき、さらに操縦安定性も向上でき、グリップ性能、操縦安定性に優れた空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記式(I)で表される五員複素環式化合物を含む。
【0016】
本発明で使用できるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムを使用してもよい。これらジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、グリップ性能と耐摩耗性をバランスよく両立できるという理由から、SBRが好ましい。
【0017】
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。
【0018】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは35質量%以上である。10質量%未満であると、tanδが低く、高いグリップ性能が得られないおそれがある。また、上記スチレン含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。50質量%を超えると、常温でのゴム硬度が高すぎるため、グリップ性能を発揮できないおそれがある。
【0019】
本発明のゴム組成物がSBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは100質量%である。50質量%未満であると、充分なグリップ性能及び操縦安定性が得られないおそれがある。
【0020】
本発明では、下記式(I)で表される五員複素環式化合物が使用される。これにより、五員複素環式化合物間に働く相互作用に伴いエネルギーロスが発生し、グリップ性能、操縦安定性が向上する。
【0021】
【化2】

(式(I)中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。N及びNは、窒素原子を表す。)
【0022】
の炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、アラルキル基、アシル基、シアノアルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
【0023】
上記アラルキル基は、環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基などが挙げられる。なかでも、性能改善効果が大きいという理由から、ベンジル基、メチルベンジル基が好ましい。
【0024】
上記アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。なかでも、性能改善効果が大きいという理由から、アセチル基、プロパノイル基が好ましい。
【0025】
上記シアノアルキル基(式−C2uCNで表される基(ただし、uは1〜9の整数))としては、例えば、シアノメチル基、シアノエチル基、シアノプロピル基、シアノブチル基、シアノペンチル基、シアノヘキシル基などの直鎖状シアノアルキル基や、1−シアノエチル基、1−メチルシアノエチル基、2−メチルシアノエチル基、1,1−ジメチルシアノエチル基などの分岐状シアノアルキル基等が挙げられる。なかでも、性能改善効果が大きく、入手が容易であるという理由から、直鎖状シアノアルキル基が好ましく、2−シアノエチル基、シアノメチル基がより好ましい。
【0026】
〜Rの炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0027】
上記アリール基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。なかでも、性能改善効果が大きく、入手が容易であるという理由から、フェニル基、トリル基が好ましい。
【0028】
〜Rのアラルキル基としては、例えば、上記Rのアラルキル基と同様の基が挙げられる。
【0029】
より効果的にタイヤ走行により発生する歪みや熱などのエネルギーロスが生じ、高いグリップ性能が得られるという理由から、上記式(I)で表される五員複素環式化合物において、Nの電荷密度が正の値となることが好ましい。Nの電荷密度は、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.02以上である。
電荷密度は、GAUSSIAN(Gaussian社製)、GAMESSなどの量子化学計算ソフトを用い、静電ポテンシャルの誘導電荷から求めることができる。この際に用いる基底関数としては精度と計算速度のバランスから6−31+G(d)以上のものが好ましい。なお、本明細書の電荷密度は、後述の実施例に記載の方法により計算した値である。
【0030】
上記式(I)で表される五員複素環式化合物としては、例えば、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−クロロエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−ブロモエチル)−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロメチルイミダゾール、1−(2−クロロエチル)−2−(2−クロロエチル)イミダゾールなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良く、二種以上を組み合わせても良い。
【0031】
上記式(I)で表される五員複素環式化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。0.1質量部未満であると、性能改善効果が小さく、充分なグリップ性能及び操縦安定性が得られないおそれがある。上記式(I)で表される五員複素環式化合物の含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。30質量部を超えると、高コストになってしまうおそれがある。
【0032】
本発明のゴム組成物は、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体を含むことが好ましい。これにより、五員複素環式化合物との間に働く相互作用に伴いエネルギーロスが生じ、グリップ性能が向上する。
【0033】
上記プロトン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸、コハク酸、マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸、安息香酸、安息香酸誘導体、ケイ皮酸、ナフトエ酸などの芳香族モノカルボン酸、フタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を組み合わせても良い。なかでも、より効果的にタイヤ走行により発生する歪みや熱などのエネルギーロスが生じ、高いグリップ性能が得られるという理由から、芳香族カルボン酸が好ましく、芳香族モノカルボン酸がより好ましく、安息香酸及び安息香酸誘導体が更に好ましい。安息香酸誘導体としては、例えば、安息香酸に炭化水素基(アルキル基、アルコキシ基等)、水酸基等の官能基が導入されたものが挙げられ、具体的には、p−メチル安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
【0034】
上記フェノール誘導体としては、下記式(II)〜(V)に示す化合物等が挙げられる。なかでも、五員複素環式化合物に対して、少量でもより効果的に作用し、高いグリップ性能および操縦安定性が得られることから、ビスフェノール誘導体である下記式(V)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
上記式(II)〜(V)において、R〜R11は、同一又は異なって、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)の炭化水素基である。該炭化水素基としては、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)のアルキル基、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)のアルケニル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基等を挙げることができる。
【0040】
nおよびn’は、同一又は異なって、0または1〜3の整数である。nおよびn’は、1〜2であることが好ましい。
mおよびm’は、同一又は異なって、1または2の整数である。mおよびm’は、1であることが好ましい。
sは、1〜3の整数である。sは、1〜2であることが好ましい。
tは、0または1〜3の整数である。tは、1〜2であることが好ましい。
【0041】
Xは、酸素原子、硫黄原子およびハロゲン原子からなる群より選択される原子または該原子を含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基またはそれらの不飽和基を挙げることができる。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基等を、また、不飽和基としてビニレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、エステル結合含有基、芳香族基等を挙げることができる。Xの好ましい具体例は、次の(1)〜(3)である。また、エステル結合含有基は、−CO−O−を含むグループであり、具体例として下記の(4)〜(7)で表されるものを例示することができる。
【0042】
【化7】

【0043】
上記式(II)〜(V)で表されるフェノール誘導体の具体例としては、例えば、2−tert−ブチルフェノール;2−エチル−6−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;3−メチル−2,6−ビス(1−メチルエチル)フェノール;4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;3−メチル−2,6−ビス(1−メチルプロピル)フェノール;2−ブチル−6−エチルフェノール;4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェノール;6−tert−ブチル−2,3−ジメチルフェノール;2−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−シクロヘキシル−6−tert−ブチルフェノール;2−シクロヘキシル−6−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール;4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−チオビスフェノール;ヒドロキノン;1,5−ヒドロキシナフタレン;4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−エチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−プロピリデンビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)等を挙げることができる。これらは単独で用いても良く、二種以上を組み合わせても良い。なかでも、五員複素環式化合物との相互作用が大きいという理由から、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が好ましい。
【0044】
上記プロトン酸及び/又はフェノール誘導体は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。0.1質量部未満であると、グリップ性能向上効果が充分に得られないおそれがある。プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。30質量部を超えると、耐摩耗性の低下を招くおそれがある。
なお、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の含有量とは、プロトン酸とフェノール誘導体を併用する場合はその合計含有量を意味する。
【0046】
上記式(I)で表される五員複素環式化合物と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の質量基準の配合比(「上記式(I)で表される五員複素環式化合物の含有量(質量部)」/「プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の含有量(質量部)」)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上である。該比は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。上限を超える場合や下限未満の場合は、グリップ性能の向上効果が充分に得られないおそれがある。
【0047】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。カーボンブラックを配合することにより、補強性を高めることができるとともに、グリップ性能を改善できる。
【0048】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は80m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましく、120m/g以上が更に好ましく、135m/g以上が特に好ましい。80m/g未満では、グリップ性能、耐摩耗性がともに低下する傾向がある。また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は280m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましく、160m/g以下が更に好ましい。280m/gを超えると、カーボンブラックの良好な分散が得られにくく耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0049】
上記ゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上である。10質量部未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは140質量部以下、特に好ましくは120質量部以下である。200質量部を超えると、ゴム組成物の加工性が低下する傾向がある。
【0050】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、シリカ等の補強用充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オゾン劣化防止剤、オイル、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0051】
本発明のゴム組成物は、オイルを配合してもよい。オイルを配合することにより、ゴムが軟化して加工性が良くなり、さらにはグリップ性能も向上する。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物を用いることができる。
プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。パラフィン系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のPW−32、PW−90、PW−150、PS−32などが挙げられる。また、アロマ系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のAC−12、AC−460、AH−16、AH−24、AH−58、ジャパンエナジー社製のプロセスX−260などが挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。
【0052】
上記ゴム組成物がオイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、ゴムへの軟化作用が不充分で、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、オイルの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下である。150質量部を超えると、加工性が悪くなり、またゴムの破壊特性が低下するおそれがある。
【0053】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。該ゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッド(キャップトレッド、ベーストレッド)に好適に使用できる。
【0054】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0055】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として好適に用いられ、特に高性能タイヤとして好適に用いられる。
なお、本明細書における高性能タイヤとは、ドライグリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
【実施例】
【0056】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0057】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:旭化成(株)製のタフデン4350(スチレン含有量:39質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分50質量部含有)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN110(NSA:145m/g)
アロマオイル:ジャパンエナジー社製のダイアナプロセスX140(アロマ系プロセスオイル)
化合物1:アルドリッチ社製の1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(Nの電荷密度:0.155)(上記式(I)中、R:ベンジル基、R:フェニル基、R:水素原子、R:水素原子)
化合物2:アルドリッチ社製の1−アセチルイミダゾール(Nの電荷密度:0.0477)(上記式(I)中、R:アセチル基、R:水素原子、R:水素原子、R:水素原子)
化合物3:アルドリッチ社製の1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール(Nの電荷密度:0.065)(上記式(I)中、R:2−シアノエチル基、R:フェニル基、R:水素原子、R:水素原子)
プロトン酸:アルドリッチ社製の安息香酸
フェノール誘導体:川口化学(株)製のアンテージW300(4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール))
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属工業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
【0058】
なお、上記化合物1〜3の電荷密度は、以下の条件により計算した。
計算ソフト:GAUSSIAN03
基底関数:6−31+G(d)
解析法:CHelpG
【0059】
実施例1〜7及び比較例1
表1に示す配合内容に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、硫黄、加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫することで加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で12分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を製造した。
【0060】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1に示す。
【0061】
(グリップ性能)
グリップ性能は、上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いて評価した。幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片(加硫ゴム組成物)を用い、速度20km/h、荷重4kgf、路面温度50℃で路面に対するサンプルのスリップ率を0〜70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の中の最大値を読みとった。結果は、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、グリップ性能に優れることを示す。
【0062】
(操縦安定性)
試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、アスファルト路面のテストコースにて実車走行を行い、操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが5点満点で評価した。数値が大きいほど操縦安定性に優れることを示す。(5:良い、4:やや良い、3:普通、2:やや悪い、1:悪い)
【0063】
【表1】

【0064】
上記式(I)で表される五員複素環式化合物(化合物1〜3)を含む実施例では、グリップ性能、操縦安定性を向上できた。一方、上記式(I)で表される五員複素環式化合物(化合物1〜3)を含まない比較例では、実施例に比べて、グリップ性能、操縦安定性が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される五員複素環式化合物を含むタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式(I)中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。N及びNは、窒素原子を表す。)
【請求項2】
プロトン酸及び/又はフェノール誘導体を含む請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記式(I)で表される五員複素環式化合物と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の質量基準の配合比が0.1〜10である請求項2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記式(I)で表される五員複素環式化合物において、Nの電荷密度が正の値となる請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
窒素吸着比表面積が80〜280m/gのカーボンブラックを含む請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
トレッドに使用される請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【請求項8】
高性能タイヤである請求項7記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−148905(P2011−148905A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11268(P2010−11268)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】