説明

タイヤ試験機の精度検査方法

【課題】タイヤ試験機の精度を検査するにつき、作業者の負担を軽減すると共にタイヤ試験機の実体的な精度を知り得る。
【解決手段】タイヤTに代えて、ドラム42とは異なる回転半径とタイヤTよりも高い真円度とを有すると共に、荷重を径方向に受ける場合にも真円度を維持可能な剛性を有するダミータイヤ60をスピンドル軸11に装着し、ダミータイヤ60をドラム42からの荷重を与えた状態で回転させることにより生じる変動荷重を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ試験機の出荷時等に該タイヤ試験機自体の計測精度を検査する精度検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両は、路面上を回転するタイヤに作用する変動荷重(フォースバリエーションという)の影響を受ける。該変動荷重は、タイヤを形成するゴムの硬さ、肉厚の不均一性、タイヤの真円度等に起因して発生する。かかる変動荷重の内、車両に悪影響を及ぼす振動や異音等の原因として特に発生を望まれないものとして、タイヤ径方向の変動荷重(ラジアルフォースバリエーション、以下RFVという)、タイヤの幅方向の変動荷重(ラテラルフォースバリエーション、以下LFVという)、タイヤの接線方向の変動荷重(トラクティブフォースバリエーション、以下TFVという)が挙げられる。
【0003】
タイヤユニフォーミティ測定装置(以下、タイヤ試験機という)は、タイヤを装着可能なスピンドル軸と、該スピンドル軸に平行なドラム軸を有するドラムとを備えている。リム組みしたタイヤをスピンドル軸に装着し、該タイヤにドラムに押し付けることによりタイヤに径方向の荷重を付与し、この状態でスピンドル軸とドラム軸間の距離を固定してタイヤを回転させることにより、上述の如き変動荷重を計測する。該タイヤ試験機においては、装置内の各部品の僅かな取付け角度や位置のずれ等も変動荷重に反映されてしまう。このため、この種のタイヤ試験機には極めて高い計測精度が要求されている。
【0004】
従来、出荷されるタイヤ試験機が要求される計測精度を有しているか否かの確認すべく、多数のタイヤを順次適当な回数、繰り返し計測したデータをもとに、統計的手法をもってデータのばらつきの範囲が所定の値以下であるか否かを確認してタイヤ試験機の精度を検査する検査方法が実施されている。この種の検査方法として、10本のタイヤを順次10回ずつ繰り返し計測を行い、合計100個のデータをもとに、タイヤ間と計測回間との二つの要因による分散解析を行い、残差(実験誤差、測定誤差)の標準偏差が規定値以内であるか否かを確認する10×10(テンバイテン)試験が知られている。
【0005】
ところが、上記10×10試験は、多大な試験時間を要すると共に、試験毎に人為的作業によりタイヤを付け替えなければならず、数多くの試験を行うことによる計測ミスの発生を排除できない。また、タイヤ試験機1台につきタイヤの付替えを100回も行わなければならないため、作業者の肉体的、精神的な疲労は極めて大きい。
そこで、タイヤの付替えに起因する計測ミスや作業者の疲労を軽減すべく、特許文献1においては、1本のタイヤに対して10回の計測を効率的に行うために、スピンドル軸に対してタイヤの取付角度を自動的に変えることができる装置構成が開示されている。
【特許文献1】特開昭64−66536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の装置構成においても10本のタイヤの付替え作業を作業者が行わなければならず、作業者の労力の負担及び検査に時間を要するという課題は完全には解消されない。
また、TFVを計測するために必要な高速ユニフォーミティ(高回転数試験)での計測精度を要求されるタイヤ試験機においては、TFVを計測するためのタイヤ回転数が規定されていないこと、タイヤの回転数とタイヤ試験機の固有振動数との共振関係を検証すること等を理由として10×10試験を複数の回転数下で行う必要がある。このため、1台のタイヤ試験機から得られる計測データは莫大となり、該データの処理にも多大な時間が割かれることとなって極めて効率が悪いという問題があった。
【0007】
さらに、上記10×10試験は統計的手法によりタイヤ試験機の精度の間接的に知り得るものであって、タイヤ試験機の実体的な精度との間には若干のひらきがあることも否めない。
そこで、本発明は、作業者の負担を軽減できると共にタイヤ試験機の実体的な精度を知り得ることができる新たなタイヤ試験機の精度検査方法を提供するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、タイヤを装着可能なスピンドル軸と、該スピンドル軸と平行なドラム軸廻りに回転すると共にタイヤに押し付けられて該タイヤに荷重を付与するドラムと、前記タイヤにドラムを押し付けた状態で回転させることにより生じる変動荷重を計測する計測装置とを備えているタイヤ試験機の精度検査方法において、
前記タイヤに代えて、前記ドラムとは異なる回転半径と前記タイヤよりも高い真円度とを有すると共に、前記荷重を径方向に受ける場合にも前記真円度を維持可能な剛性を有するダミータイヤをスピンドル軸に装着し、該ダミータイヤをドラムからの荷重を与えた状態で回転させることにより生じる変動荷重を前記計測装置により計測することを特徴としている。
【0009】
これによれば、ダミータイヤをドラムからの荷重を与えた状態で回転させると、理論的には計測される変動荷重は0となる。変動荷重が計測されないということは、該タイヤ試験機は極めて高精度に形成され、該タイヤ試験機によって計測される変動荷重にはタイヤ試験機の装置構成に起因する変動荷重が全く含まれないことを示す。実際のタイヤ試験機においては上記試験方法により何らかの値が計測されるものであり、この場合はその計測値そのものがタイヤ試験機の計測精度になる。この様に、上記方法によれば、ダミータイヤによる試験を1回行うことにより、タイヤ試験機の精度を検査することができるのである。
【0010】
また、上記検査方法によれば、ダミータイヤをドラムに接触させて計測された変動荷重をタイヤ試験機の精度とすることができるので、タイヤ試験機に起因する精度を実体的に把握することができることとなる。
また、タイヤの回転数と当該タイヤ試験機の固有振動数との共振関係を検査するために、高速ユニフォーミティ試験を複数の回転数下で行う場合にも、各試験を1回行うだけで該検査を行うことができ、作業時間の短縮化が図られる。
実際上、ドラムにダミータイヤを接触させて計測される変動荷重には、タイヤ試験機に起因する変動荷重に加えて、ダミータイヤをドラムに直接的に接触させることに起因した接触変動荷重が計測されることとなる。該接触変動荷重は、ダミータイヤの半径変動にダミータイヤとドラムの接触部間の剛性を乗じたものに相当し、タイヤ試験機自体の精度検査においては無視されるべきものである。
【0011】
ところで、完全な真円のダミータイヤを製造することは実際上困難であり、また、完全に真円のダミータイヤを用意した場合であっても、該ダミータイヤがスピンドル軸に僅かに芯ずれした状態で取り付けられてしまうことも考えられる。この様な場合、ダミータイヤの半径変動は大きなものとなって接触変動荷重が大きくなる虞がある。また、一般的にドラムは金属等の硬い材料で構成されており、該ドラムに上述の如き剛性を有するダミータイヤを接触させて回転させると、ダミータイヤやドラムの損耗も大きなものとなって好ましくない。
【0012】
かかる点に鑑みれば、前記ダミータイヤとドラムとの間に、前記ダミータイヤよりも低剛性とする緩衝体を介在させた上で、当該ダミータイヤを回転させることが好ましい。
これにより、ダミータイヤとドラム間の接触剛性の低減を図ることができ、ダミータイヤの半径変動に起因した接触変動荷重を極力低減することができるのである。
また、一般的に、タイヤ試験機の計測装置は、スピンドル軸に取り付けられた回転体(例えばタイヤ等)を回転させることにより発生する変動荷重を計測し、その中から該回転体の回転数成分及び高調波成分を周波数分析により抽出する構成を有している。
【0013】
このため、例えばスピンドル軸にダミータイヤを装着し、ダミータイヤに該ダミータイヤと同じ周期で回転する緩衝体を接触させた状態で該ダミータイヤの変動荷重を計測すると、該緩衝体の不均一性や真円誤差に起因する変動荷重もダミータイヤの回転数成分やその近傍に現出し、これによってダミータイヤに起因する変動荷重と緩衝体に起因する変動荷重とが合成されて計測されてしまったり、互いの変動荷重が近接しすぎて何れの変動荷重がダミータイヤによるものであるか判断することが困難となる虞がある。
したがって、本願発明においては、緩衝体をダミータイヤとは異なる周期で回転させることとし、これによって該緩衝体に起因する変動荷重をダミータイヤとは異なる回転数成分に現出させ、該変動荷重がダミータイヤの回転数成分に現れて該変動荷重とダミータイヤに起因する変動荷重が合成されてしまうことを防止しているのである。
【0014】
また、前記緩衝体を、前記ドラムの周囲に巻装して前記ドラムと共に回転させることが好ましい。
これによって、緩衝体をダミータイヤとドラムの間に容易に配備することができ、しかも、該緩衝体をダミータイヤとは異なる周期で回転させることができるのである。
また、前記緩衝体は、前記スピンドル軸と平行な回転軸に枢支され、該回転軸廻りに前記ダミータイヤとは異なる回転半径を有してダミータイヤとは異なる周期で回転する回転体状に形成されており、
前記緩衝体を前記ダミータイヤとドラムに挟んだ状態でこれらダミータイヤとドラムと共に回転させることが好ましい。
【0015】
これによれば、ダミータイヤよりも接触剛性の低い部位を緩衝体の径方向に厚く形成することができ、ダミータイヤとの接触剛性をより低減することができる。
また、緩衝体として例えばタイヤ等を代用することができ、極めて容易にダミータイヤとドラムとの間に緩衝体を配備することができるばかりでなく、緩衝体の交換も容易に行うことができる。
また、前記計測装置は、前記スピンドル軸で前記変動荷重を計測するものであり、
前記ダミータイヤは、前記スピンドル軸に支持される回転中心から径外方向となる1又は複数の位置におもりを取付け可能なおもり取付部を備え、
該おもり取付部におもりを取り付け又は取り外してダミータイヤの重心を回転中心からずらした状態でダミータイヤを回転させ、前記計測装置によりスピンドル側で変動荷重を計測することが好ましい。
【0016】
これによれば、ダミータイヤの回転中心に対して重心を偏心させることができる。また、おもりの重量及び位置を作業者によって設定することができる。このため、重心を偏心させたダミータイヤを回転させることにより生じるアンバランス力を既知とすることができる。これにより、ダミータイヤの回転によって生じ且つ計測装置に備えられたロードセルなどで計測される変動荷重と、アンバランス力とを比較することによるタイヤ試験機の精度検査を行うことができることとなる。
ここで、アンバランス力は、スピンドル軸を支持するロードセルに作用すると共に、ダミータイヤに接触する緩衝体にも作用する。ロードセルの剛性が緩衝体の剛性よりも著しく大きいため、ロードセルには殆ど全てのアンバランス力が作用する。
【0017】
そこで、上述の如く前記計測装置によってスピンドル軸で変動荷重を計測することとし、これによってより正確にアンバランス力を計測することとしている。
また、前記計測装置は、前記スピンドル軸側で前記変動荷重を計測するものであり、
前記緩衝体は、前記ダミータイヤに当接した状態で前記スピンドル軸と平行な回転軸廻りに回転するロールと、該ロールをダミータイヤに弾性的に押しつけ且つ支持する弾性支持装置とを備え、
該ロールをドラム側からダミータイヤに向けて当接させた状態でダミータイヤを回転させ、前記計測装置によりスピンドル側で変動荷重を計測することが好ましい。
【0018】
これによれば、弾性支持装置(緩衝体)の弾性力により、回転に伴うダミータイヤの半径変動にロールを追従させることができ、これによってダミータイヤとロールの間の接触剛性を均一に保つことができる。これにより、上記接触変動荷重の発生を抑えて精度良い計測を行うことができる。
また、前記ロールは、前記回転軸の軸方向に移動可能に支持されていることが好ましい。
これによれば、スピンドル軸とドラム軸の僅かな平行度の誤差によりダミータイヤに対してドラムが僅かに傾いた状態でこれらダミータイヤとドラムが回転する場合にも、緩衝体が回転軸の軸方向に移動することにより、この様な軸の振れに伴うドラムの回転のずれに追従することができるのである。これにより、半径変動が緩衝体によって良好に吸収されて変動荷重の発生が抑制されることとなり、より精度の高い検査を行うことができる。
【0019】
さらに、前記ダミータイヤは、前記スピンドル軸に支持される回転中心から径外方向となる1又は複数の位置におもりを取付け可能なおもり取付部を備え、
該おもり取付部におもりを取付け又は取り外してダミータイヤの重心を回転中心からずらした状態でダミータイヤを回転させることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるタイヤ試験機の精度検査方法によれば、作業者の負担を軽減できると共にタイヤ試験機の実体的な精度を知り得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明していく。
[第1実施形態]
図1に示す如く、本実施の形態のタイヤ試験機1は、タイヤTを装着可能なタイヤ転動装置2と、該タイヤ転動装置2の側方に配備されたドラム装置3と、これらタイヤ転動装置2及びドラム装置3を制御すると共に該両装置2、3から得られるデータを処理する処理制御装置4とを備えている。
タイヤ転動装置2は、上下方向に延びるスピンドル軸11と、該スピンドル軸11を回転自在に支持する支持体12とを備えている。該スピンドル軸11の上端部には、前記タイヤTを装着するためのリム13を配備可能であり、該リム13にタイヤTを装着することにより、タイヤ転動装置2にタイヤTを配備することができる。
【0022】
また、支持体12は、支持台16と、該支持台16に立設された筒状のハウジング17と、該ハウジング17に収容される円筒状の軸受ハウジング18とを備えている。軸受ハウジング18は、上端部をハウジング17から突出させた状態で該ハウジング17に収容されている。
また、スピンドル軸11は、上端部を軸受ハウジング18から突出させた状態で該軸受ハウジング18に収容されている。また、スピンドル軸11は、その軸心を軸受けハウジング18の軸心に一致させた状態で上下一対のベアリングを介して該軸受ハウジング18に支持されている。
【0023】
ドラム装置3は、外周面に代用路面体41を備えてなる円柱状のドラム42と、該ドラム42の軸心に取り付けられたドラム軸43と、該ドラム軸43を枢支するフレーム44と、該ドラム軸43に回転力を付与してドラム42を回転させる駆動装置45とを備えている。ドラム42は、フレーム44と共にサーボモータやスクリュジャッキ(図示省略)等によってスピンドル軸11に近接離間可能とされている。
該駆動装置45としては公知のものが採用されており、例えば、ドラム軸43の一方の端部に配備されたプーリと、フレーム44の端面に装着された駆動モータと、該駆動モータの軸に装着されたプーリと、これら一対のプーリに巻き掛けられたVベルト等により構成されている。
【0024】
処理制御装置4は、タイヤ転動装置2及びドラム装置3を制御する制御手段51と、タイヤTの回転時に発生する変動荷重を計測する計測装置52とを備えている。
該計測装置52は、タイヤ転動装置2に配備されてタイヤTに作用する各変動荷重(RFV、LFV、TFV)を測定する測定器53と、タイヤの回転数を計測する回転数計測手段(図示省略)と、測定器53及び回転数計測手段に接続されてタイヤTの回転時に発生する変動荷重を算出する算出手段54とを備えている。
測定器53は、タイヤ転動装置2のハウジング17と軸受ハウジング18の間に配備された複数のロードセル55と、該複数のロードセル55に接続されて該複数のロードセル55からの信号を増幅するロードセルアンプ56とを備えている。
【0025】
複数のロードセル55は、軸受ハウジング18の上端部側と下端部側に配備されている。該軸受ハウジング18に配備される複数のロードセル55は、スピンドル軸11の軸心を中心とした円周上に互いの間隔を等間隔として複数個(例えば4個)配備されている。
また、軸受ハウジング18の上端部に、該軸受ハウジング18の径外方向に突出してハウジング17の上端部と重なり合う鍔部を形成し、該鍔部とハウジング17の上端部の間に複数のロードセル55を上述の如く配備する構成を採用することも可能である。
複数のロードセル55からの信号は、ロードセルアンプ56に送られて増幅される。該信号は、タイヤTの変動荷重についての直流成分と変動成分が含むものであって、ロードセルアンプ56内又は別個に設けられたハイパスフィルタを通過することにより直流成分と変動成分とに分離され、算出手段54に送られる。
【0026】
該算出手段54においては、測定器53から得られた変動荷重と回転数計測手段から得られたタイヤTの回転数とに基づいて周波数分析やトラッキング分析といった処理が行われる。これによってタイヤTに作用する変動荷重成分の内、タイヤTの回転数成分及びその高調波成分を抽出することができる。
図2(a)及び(b)には、計測器53から得られた変動荷重をFFT変換した結果が示されており、横軸が周波数、縦軸が変動荷重の大きさを示している。
図2(a)に示す如く、タイヤTとドラム42の回転周期の比が十分に異なるものであれば、タイヤTの回転数成分における変動荷重(B1〜B3)とドラム42の回転数成分における変動荷重(A1〜A5)とが十分に離れる。これにより、タイヤTの各周波数成分での変動荷重と他の変動荷重とを容易に判別し、該タイヤTの各周波数成分での変動荷重のみを抽出することができる。
【0027】
一方、図2(b)はドラム42の径とタイヤTの径の比を5:3としたときの結果を示している。この場合、図から明らかなように、タイヤ回転数の5倍成分はドラム回転数の3倍の周波数に一致することとなり、これによって、タイヤ回転数の5倍成分にて観測される変動荷重は、ドラム42の不均一性等に起因した変動荷重の内、ドラム回転数の3倍成分での変動荷重がタイヤTそのもので発生する変動荷重に加算されてしまう(B3+A5)。この様な場合は、タイヤT回転数の5倍成分の誤差成分は正しく評価できない。
したがって、タイヤTとドラム42の回転数の倍次成分が分析対象倍次成分以下で最小公倍数の関係とならないようにこれらタイヤTの径とドラム42の径を設定する必要があり、本実施形態においては、タイヤTとドラム42の径の比を例えば11:17としている。
【0028】
なお、本実施形態においては、ロードセル55をドラム装置3に配備することによりドラム軸43側で変動荷重を計測する構成とすることも可能であり、この場合、タイヤTに駆動を付与する必要がある。
また、処理制御装置4には、外部入力手段57が接続されている。
本発明の検査方法に係るタイヤ試験機1は以上の構成からなるものである。
該タイヤ試験機1を用いたタイヤTの試験においては、スピンドル軸11のリム13にタイヤTを装着し、ドラム装置3をタイヤ転動装置2に近接させてドラム42の代用路面体41をタイヤTのトレッド面に押し付けることによりドラム42からタイヤTに向けて荷重を付与し、スピンドル軸11とドラム軸43の間隔を一定に保持した状態でドラム42を回転させることによりタイヤTを回転させ、これにより発生する変動荷重が計測装置52により計測される。
【0029】
通常、この様に計測される変動荷重のデータにはばらつきがある。例えば、同じタイヤTであってもスピンドル軸11に対する取付角度を変えることにより、得られるデータにばらつきが生じることがある。
また、計測装置52は、試験時の荷重変動を検出してそれを計測するものであるため、
計測される変動荷重には、タイヤTの回転による変動荷重だけでなく、該変動荷重にタイヤ試験機1に起因する変動荷重が含まれて計測される。
かかる点に鑑みれば、変動荷重のデータのばらつきは、タイヤ試験機1に起因する変動荷重が計測される変動荷重に含まれることにより発生することが考えられる。タイヤ試験機1に起因する変動荷重の原因としては、装置内の機械的な誤差や電気的な誤差が挙げられる。機械的な誤差は、スピンドル軸11の精度不良やスピンドル軸11を支えるベアリングから発生する荷重や、タイヤTの回転数やその倍次成分がタイヤ試験機1の固有振動数と近接した場合に発生する振動(荷重)によるものと考えられる。また、電気的な誤差は、変動荷重を計測するロードセル55の計測精度や信号線に混入する電気ノイズなどの影響が考えられる。これらの誤差は試験の実施状況等により微妙に変化し、定量化することが困難である。また、これらタイヤ試験機1に不可避的に内在する誤差を完全に排除することは極めて困難である。
【0030】
本発明は、この様なタイヤ試験機1に内在する誤差により現出する変動荷重の大きさをを把握することにより、タイヤ試験機1自体の精度を検査するものである。該検査は以下の試験を1回又は複数回行うことにより行われる。
先ず、タイヤTに代えてダミータイヤ60をスピンドル軸11に装着する。
ここで、ダミータイヤ60は、ドラム42とは異なる回転半径を有する円形に形成されており、スピンドル軸11を内嵌する支持筒部61と、ドラム42に接触する環状の外周壁部62と、支持筒部61と外周壁部62の上端部を連結する円盤状の上面部63とを備えている。また、ダミータイヤ60は、タイヤTよりも高い真円度を有すると共に、ドラム42からの荷重を径方向に受ける場合にも当該真円度を維持可能な剛性を有する。
【0031】
本実施形態においては、ダミータイヤ60は鋼材によって形成されているが、アルミ等の他の金属や硬質プラスチック等の樹脂によっても形成することが可能である。また、真円度は10μ以上が好ましく、完全な真円であることが最も好ましい。また、ダミータイヤ60は支持筒部61と外周壁部62との間を空隙として形成されており、この様に軽量化を図ることによりタイヤTと同程度の質量とされている。また、支持筒部61から外周壁部62まで延びるリブを複数位置に配備することも好ましい。
また、本実施形態においては、ダミータイヤ60とドラム42の径の比を異なるもの(例えば、11:17)としている。これにより、ドラム42とダミータイヤ60の回転周期が同一又は近接することが回避されると共に、これらの回転数の倍次成分が分析対象倍次成分以下で最小公倍数の関係にならない様に設定されている。これにより、ダミータイヤ60の回転数成分及びその高調波成分のみを抽出する際に、ドラム42の真円度などの不均一性により発生する変動荷重は除去される。
【0032】
次に、ダミータイヤ60にドラム42の代用路面体41を押し付けて該ダミータイヤ60にドラム42からの荷重を付与する。
そして、スピンドル軸11とドラム軸43の間隔を一定に保持した状態でドラム42を回転させることによりタイヤTを回転させ、発生する変動荷重を処理制御装置により計測する。その後、該試験を終了し、得られた計測値からタイヤ試験機1の精度を判断することにより、当該タイヤ試験機1の検査が完了する。
ここで、ダミータイヤ60は真円度を維持した状態で回転するため、理論的には試験中にダミータイヤ60に起因する変動荷重が発生することはなく、これによって、ダミータイヤ60の回転数成分上には、タイヤ試験機1に起因する変動荷重が計測されることとなる。これによってタイヤ試験機1に起因する変動荷重が実体的に把握されることとなる。
【0033】
また、この様に変動荷重によってタイヤ試験機1の精度が示されるため、本実施形態の精度検査方法によれば、ダミータイヤ60による試験を少なくとも1回行うことによってタイヤ試験機1の精度が把握されることとなり、これによって、従来の精度検査方法で作業者が負担していたタイヤTの付け替え等の労力は大幅に軽減されると共に、試験に要する時間の短縮化やデータ量の削減も図られ、極めて効率的にタイヤ試験機1の精度を検査することができるのである。もちろん、上記試験を複数回行うことによりタイヤ試験機1の精度を総合的に検査・判断することとしても構わない。
[第2実施形態]
本実施形態においては、タイヤ試験機1の精度の検査を行うための構成が上記第1実施形態とは異なるが、タイヤ試験機1の構成やダミータイヤ60の構成は上記第1実施形態と同じであるので、これらの構成は上記第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0034】
本実施形態の意図する所は、以下の通りである。
ドラム42にダミータイヤ60を接触させて計測される変動荷重には、タイヤ試験機1に起因する変動荷重に加えて、ダミータイヤ60をドラム42に直接的に接触させることに起因した接触変動荷重が計測されることとなる。該接触変動荷重は、ダミータイヤ60の半径変動にダミータイヤ60とドラム42の接触部間の剛性を乗じたものに相当し、タイヤ試験機1自体の精度検査においては無視されるべきものである。なお、接触剛性は、ドラム42の剛性とドラム42に接触するダミータイヤ60の両者の剛性に基づいて得られる。
【0035】
しかしながら、一般的に、ドラム42は金属等の硬い材料で作られているため、ドラム42と該ドラム42に接触するダミータイヤ60間の接触剛性は、ドラム42と該ドラム42に接触するタイヤTとの間の接触剛性よりも相当大きなものとなりる。このため、仮にダミータイヤ60とタイヤTの半径変動が同一であるとすると、ダミータイヤ60とドラム42間に発生する変動荷重はタイヤTとドラム42間に発生する変動荷重よりも著しく大きなものとなる。
また、完全に真円であるダミータイヤ60を製造することは実際上極めて困難であり、そのようなダミータイヤを製造した場合であっても、該ダミータイヤ60がスピンドル軸11に僅かに芯ずれした状態で取り付けられてしまうことも考えられる。
【0036】
この様な場合、第1実施形態の如く試験を行った場合にも、ダミータイヤ60において半径変動が生じることは避けられない。このため、ドラム42にダミータイヤ60を接触させて変動荷重を計測すると、ダミータイヤ60の半径変動は大きなものとなって接触変動荷重が大きくなる。そこで、本実施形態を考えるに至った。
本実施形態は、図3に示す如く、タイヤ試験機1の試験を行うに際し、ダミータイヤ60とドラム42との間に、少なくともダミータイヤ60とは異なる周期で回転し且つダミータイヤ60との接触部位をダミータイヤ60よりも低剛性とする緩衝体70を介在させることとしている。
【0037】
該緩衝体70は弾性樹脂を環状に形成して構成され、ドラム42に巻装されている。これにより、緩衝体70は、ドラム42とダミータイヤ60の間に介在すると共に、ダミータイヤ60とは異なる周期で回転する。
本実施形態によれば、ドラム42とダミータイヤ60の間に緩衝体70が介在することにより、ドラム42にダミータイヤ60を直接的に接触させることにより生じていた接触剛性が低減され、ダミータイヤ60の半径変動により発生する荷重が小さくなる。これによって、ダミータイヤ60をドラム42に直接的に接触させることによる変動荷重の発生が抑制されることとなる。
【0038】
また、緩衝体70の不均一性(例えば、真円度誤差)等に起因する変動荷重はドラム42の回転数成分上に現出することとなり、ダミータイヤ60の回転数成分上には、上記第1実施形態の試験と同じくタイヤ試験機1に起因する変動荷重が現出することとなる。このため、緩衝体70が介在する状態であってもタイヤ試験機1を精度良く検査することができるのである。
なお、本実施形態においても、ロードセル55をドラム装置3に配備することによりドラム軸43側で変動荷重を計測する構成とすることも可能である。
[第3実施形態]
本実施形態においては、緩衝体70の構成が上記第2実施形態とは異なるが、タイヤ試験機1の構成やダミータイヤ60の構成は上記第2実施形態、即ち第1実施形態と同じであるので、緩衝体70の構成についてのみ説明し、他の構成は上記第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0039】
図4に示す如く、本実施形態の緩衝体70は、スピンドル軸11と平行な回転軸71に枢支され、該回転軸71廻りにダミータイヤ60とは異なる回転半径で介する回転体状に形成されている。これにより、緩衝体70はダミータイヤ60とは異なる周期で回転することとなって、緩衝体70に起因した変動荷重は、図2(a)のDに示す如く、ダミータイヤ60やドラム42とは異なった周波数成分上に現出し、該変動荷重がタイヤ試験機に起因する変動荷重の計測に支障を来す虞はない。
なお、ダミータイヤ60、緩衝体70、ドラム72の回転数の倍次成分を分析対象倍次成分以下で最小公倍数の関係としないことが好ましく、本実施形態においては、これらの比を11:9:17に設定している。
【0040】
また、該緩衝体70は、ダミータイヤ60よりも低剛性とした弾性樹脂製のロール部材72に金属製の内嵌部材73を嵌め込むことにより形成されている。これにより、ダミータイヤ60に接触し且つ該ダミータイヤ60よりも低剛性である部分の厚さが十分に確保される。緩衝体70としてタイヤTを代用することは好ましい。
回転軸71の軸心は、スピンドル軸11の軸心とドラム軸43の軸心を含む平面上を上下方向に延びており、回転軸71の下端部に緩衝体70が枢支されると共に、上端部が前記平面に垂直な揺動軸74廻りに枢支されている。これにより、緩衝体70は、揺動軸74廻りに揺動自在となる。
【0041】
本実施形態は以上の構成からなる。
本実施形態によりタイヤ試験機1の試験を行う場合には、先ず、緩衝体70をダミータイヤ60とドラム42に配備すると共に、これらダミータイヤ60とドラム42に接触させる。
そして、この状態でドラム42からダミータイヤ60に荷重を付与し、スピンドル軸11とドラム軸43の間隔を一定に保持した状態でドラム42を回転させることによりダミータイヤ60を回転させる。そして、ダミータイヤ60の回転時に発生する変動荷重を計測装置52により計測するのである。
【0042】
ところで、本発明に係る検査方法においては、ドラム42からダミータイヤ60に向けて極めて大きな荷重(例えば500kg)を付与した状態で回転させる。このため、上記第2実施形態の如き試験を行うにつき、例えば低剛性の緩衝体70を採用すると、上述の如き高負荷を継続的に受けることにより緩衝体70が容易に破断してしまう虞がある。一方、該高負荷に対する耐性を備えた高剛性の材料により緩衝体70を採用すると、緩衝体70は曲がりにくいものとなり、緩衝体70をドラム42に巻装する作業が極めて困難となる。
【0043】
これに対して、本実施形態によれば、ダミータイヤ60とドラム42の間に独立して回転可能な緩衝体70を設置しているため、緩衝体70の設置や取替え作業を極めて容易に行うことができる。
また、ダミータイヤ60に接触し且つ該ダミータイヤ60よりも接触剛性の低い部位が緩衝体70の径方向に十分に厚く形成され、これによってダミータイヤ60と緩衝体70の接触剛性がより低減されることとなる。
また、本実施の形態によれば、スピンドル軸11とドラム軸43の僅かな平行度の誤差によりダミータイヤ60に対してドラム42が僅かに傾いた状態でこれらダミータイヤ60とドラム42が回転してしまう場合にも、緩衝体70が揺動軸74廻りに揺動することにより、ドラム42の異常回転に追従可能となる。これにより、スピンドル軸11とドラム軸43の僅かな平行度の誤差に起因する半径変動が緩衝体70によって良好に吸収されて変動荷重の発生が抑制されることとなり、より精度の高い検査が行われることとなる。
【0044】
なお、本実施形態においても、ロードセル55をドラム装置3に配備することによりドラム軸43側で変動荷重を計測する構成とすることも可能である。この場合、タイヤTに駆動を付与する必要がある。
[第4実施形態]
本実施形態においては、緩衝体70の構成が上記第2実施形態とは異なるが、タイヤ試験機1の構成やダミータイヤ60の構成は上記第2実施形態、即ち第1実施形態と同じであるので、緩衝体70の構成についてのみ説明し、他の構成は上記第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図5に示す如く、本実施形態の緩衝体70は、スピンドル軸11と平行な回転軸71aに枢支されたロール75aと、該ロール75aを支持する弾性支持装置75とを備えている。ロール75aは、回転軸71a廻りにダミータイヤ60とは異なる径を有する回転体状に形成されており、これによってダミータイヤ60とは異なる周期で回転可能である。
なお、回転軸71aの軸心は、スピンドル軸11の軸心とドラム42の軸心を含む平面上に位置している。
該弾性支持装置75は、静止状態のドラム42に当接するシリンダチューブ76と、該シリンダチューブ76に収容されてロール75aの回転軸71aの両端を支持するピストンロッド77と、ピストンロッド77の基端部とシリンダチューブ76によって形成される部屋Rに空気を圧送/排出可能なポンプ78とを備えている。部屋Rに空気が充填されることにより、シリンダチューブ76とピストンロッド77とはエアシリンダとして機能し、ピストンロッド77をシリンダチューブ76に押し込む外力の付与又は除去により、該エアシリンダは収縮又は伸長することとなる。
【0046】
また、本実施形態においては、ダミータイヤ60に回転力を付与する回転装置80が設けられている。該回転装置80は、スピンドル軸11と平行な回転軸71廻りに回転すると共にダミータイヤ60に接触するタイヤT状の回転部材81と、該回転部材81に回転力を付与する回転モータ82とを備えている。回転部材81はダミータイヤ60に触れる程度に接触しており(スキムタッチ)、これにより、回転部材81からダミータイヤ60に過大な荷重が付与されることが極力回避されている。
なお、本実施形態においては、後述の如くドラム42を作動させないため、ロードセル55はタイヤ転動装置2に配備してスピンドル軸11側で変動荷重を計測する構成とし、ドラム軸43側にロードセル55を配備する構成とはしない。
【0047】
本実施の形態は以上の構成からなる。
本実施形態により試験を行うには、先ず、ロール75aをタイヤに接触させると共にシリンダチューブ76をドラム42に当接させ、ポンプ78により部屋Rに空気を充填する。次に、スピンドル軸11とドラム軸43の間隔を調整することにより、緩衝体70を介してダミータイヤ60にドラム42からの荷重を付与する。そして、スピンドル軸11とドラム軸43の間隔を一定に保持した状態で回転装置80を作動させることによりダミータイヤ60を回転させる。そして、発生する変動荷重を計測装置52により計測するのである。
【0048】
本実施形態によれば、ダミータイヤ60にロール75aを直接的に接触させることにより生じる接触剛性が緩衝体70のエアシリンダの弾性作用により低減され、ダミータイヤ60の半径変動により発生する荷重が小さくなる。この結果、ダミータイヤ60をロール75aに直接的に接触させることによる変動荷重(接触変動荷重)の発生が抑制されることとなる。
[第5実施形態]
本実施形態においては、緩衝体70、特に弾性支持装置75の構成が上記第4実施形態とは異なるが、他の構成は上記第4実施形態、即ち第1実施形態と同じであるので、弾性支持装置75の構成についてのみ説明し、他の構成は上記第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図6に示す如く、本実施形態の弾性支持装置75は、ロール75aの回転軸71aの両端を支持する支持部材85と、支持部材85の端部とドラム42の間に配備されたエアバネ85aと、回転軸71aに回転力を付与する回転装置86と、該回転装置86及びロール75aをドラム軸43とスピンドル軸11の間で移動させる移動装置87とを備えている。
該弾性支持装置75によれば、ロール75aは支持部材85を介してエアバネ85aに支持される。これによって該ロール75aは、軸心に垂直な方向に移動可能となっている。また、該ロール75aの移動は移動装置87によって案内されているのである。
【0050】
なお、本実施形態においてもドラム42を作動させないため、ロードセル55はタイヤ転動装置2に配備してスピンドル軸11側で変動荷重を計測する構成とし、ドラム軸43側にロードセル55を配備する構成とはしない。
本実施の形態は以上の構成からなる。
本実施形態により試験を行うには、先ず、弾性支持装置のエアバネ85aをドラム42に当接させると共にロール75aをダミータイヤ60に当接させた状態でスピンドル軸11とドラム軸43の間隔を調整し、緩衝体70を介してダミータイヤ60にドラム42からの荷重を付与する。そして、スピンドル軸11とドラム軸43の間隔を一定に保持した状態で回転装置86を作動させることによりタイヤTを回転させる。そして、発生する変動荷重を計測装置52により計測するのである。
【0051】
本実施形態においても、ダミータイヤ60にロール75aを直接的に接触させることにより生じる接触剛性が緩衝体70のエアバネ85aの弾性作用により低減され、この結果、ダミータイヤ60をロール75aに直接的に接触させることによる変動荷重(接触変動荷重)の発生が抑制されることとなる。
[第6実施形態]
本実施形態においては、ダミータイヤ60の構成が第2の実施形態とは異なるが、他の構成は同じであるので、ダミータイヤ60の構成についてのみ説明し、他の構成は第2実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図7に示す如く、本実施形態のダミータイヤ60は、上面部63にスピンドル軸11に支持される回転中心から径外方向となる1又は複数の位置におもり67を取付け可能なおもり取付部65を備えている。
該おもり取付部65は、ダミータイヤ60の径方向に複数個(本実施の形態においては3個)のねじ穴66を開設することにより形成されている。隣り合うねじ穴66の間隔は互いに等間隔であることが好ましい。また、隣り合うおもり取付部65の間隔も等間隔であることが好ましく、本実施形態においては上面部63に8つのおもり取付部65が設けられている。
【0053】
図8に示す如く、おもり取付部65の何れかのねじ穴66におもり67を上面部63の上方から螺合することにより、ダミータイヤ60におもり67が取り付けられることとなる。この様におもり67を取り付けることにより、ダミータイヤ60の重心が回転中心からずれ、これによってダミータイヤ60は偏心したアンバランス状態となる。この状態でダミータイヤ60を回転させることにより、ダミータイヤ60にはアンバランスによる変動荷重(以下、アンバランス力という)が作用する。おもり67の質量をm、ダミータイヤ60の回転中心からおもり67を取付対置までの距離をr、ダミータイヤ60の回転角速度をωとすると、アンバランス力fはf=mrω2となる。
【0054】
ここで、アンバランス力は、スピンドル軸11を支持するロードセル55に作用すると共に、ダミータイヤ60に接触する緩衝体70にも作用する。ロードセル55の剛性が緩衝体70の剛性よりも著しく大きいため、ロードセル55には殆ど全てのアンバランス力が作用する。
本実施の形態は以上の構成からなる。
本実施形態により試験を行うには、先ず、ダミータイヤ60のおもり取付部65におもり67を取り付ける。そして、ドラム42を緩衝体70を介してダミータイヤ60に押し付けることによりダミータイヤ60に荷重を付与する。次に、スピンドル軸11とドラム軸43の間隔を一定に保持した状態で駆動装置45を作動させることによりタイヤTを回転させる。そして、発生する変動荷重を計測装置52により計測する。
【0055】
本実施の形態によれば、ダミータイヤ60の回転によって生じる変動荷重とアンバランス力とを比較するタイヤ試験機1の試験を行うことが可能である。また、おもり67の位置を必要に応じて変更することができるため、同一のおもり67により同一回転数で複数の条件を設定することが可能となる。
また、おもり取付部65によりおもり67の位置が定められるため、該おもり67によって重心が偏心した状態となったダミータイヤ60のアンバランス力を予め算出することにより既知とすることができる。
【0056】
また、おもり67の位置だけでなく、ダミータイヤの回転数速度ωやおもり67の質量mや等を変えて複数の実験を行うことにより、ロードセル55等の計測装置52の計測精度をより詳細に検査することができる。
なお、本実施形態においては、全てのねじ穴66におもり67を取り付け、その中の複数のおもり67を取り外すことによりダミータイヤ60の重心を回転中心からずらすことも可能である。また、本実施形態のダミータイヤ60は、第2実施形態はもちろんのこと、第3〜第5の実施形態においても採用することができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、ドラム軸43及びスピンドル軸11を水平とし、ドラム42やダミータイヤ60を縦回転とした構成を採用する場合にも、本実施の形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態を示す側部断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、計測装置により計測される変動荷重を周波数分析した結果を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す側部断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示す側部断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態を示す側部断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態を示す側部断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態のダミータイヤを示す平面図である。
【図8】ダミータイヤをタイヤ転動装置に配備した状態を示す側部断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 タイヤ試験機
2 タイヤ転動装置
3 ドラム装置
4 処理制御装置
11 スピンドル軸
42 ドラム
45 駆動装置
52 計測装置
53 測定器
54 算出手段
60 ダミータイヤ
65 おもり取付部
67 おもり
70 緩衝体
71 回転軸
71a 回転軸
75 弾性支持装置
75a ロール
T タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを装着可能なスピンドル軸と、該スピンドル軸と平行なドラム軸廻りに回転すると共にタイヤに押し付けられて該タイヤに荷重を付与するドラムと、前記タイヤにドラムを押し付けた状態で回転させることにより生じる変動荷重を計測する計測装置とを備えているタイヤ試験機の精度検査方法において、
前記タイヤに代えて、前記ドラムとは異なる回転半径と前記タイヤよりも高い真円度とを有すると共に、前記荷重を径方向に受ける場合にも前記真円度を維持可能な剛性を有するダミータイヤをスピンドル軸に装着し、該ダミータイヤをドラムからの荷重を与えた状態で回転させることにより生じる変動荷重を前記計測装置により計測することを特徴とするタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項2】
前記ダミータイヤとドラムとの間に、前記ダミータイヤよりも低剛性とする緩衝体を介在させた上で、当該ダミータイヤを回転させることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項3】
前記緩衝体を、前記ドラムの周囲に巻装して前記ドラムと共に回転させることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項4】
前記緩衝体は、前記スピンドル軸と平行な回転軸に枢支され、該回転軸廻りに前記ダミータイヤとは異なる回転半径を有してダミータイヤとは異なる周期で回転する回転体状に形成されており、
前記緩衝体を前記ダミータイヤとドラムに挟んだ状態でこれらダミータイヤとドラムと共に回転させることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項5】
前記計測装置は、前記スピンドル軸で前記変動荷重を計測するものであり、
前記ダミータイヤは、前記スピンドル軸に支持される回転中心から径外方向となる1又は複数の位置におもりを取付け可能なおもり取付部を備え、
該おもり取付部におもりを取り付け又は取り外してダミータイヤの重心を回転中心からずらした状態でダミータイヤを回転させ、前記計測装置によりスピンドル側で変動荷重を計測することを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項6】
前記計測装置は、前記スピンドル軸側で前記変動荷重を計測するものであり、
前記緩衝体は、前記ダミータイヤに当接した状態で前記スピンドル軸と平行な回転軸廻りに回転するロールと、該ロールをダミータイヤに弾性的に押しつけ且つ支持する弾性支持装置とを備え、
該ロールをドラム側からダミータイヤに向けて当接させた状態でダミータイヤを回転させ、前記計測装置によりスピンドル側で変動荷重を計測することを特徴とする請求項2に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項7】
前記ロールは、前記回転軸の軸方向に移動可能に支持されていることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項8】
前記ダミータイヤは、前記スピンドル軸に支持される回転中心から径外方向となる1又は複数の位置におもりを取付け可能なおもり取付部を備え、
該おもり取付部におもりを取付け又は取り外してダミータイヤの重心を回転中心からずらした状態でダミータイヤを回転させることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−89467(P2008−89467A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272001(P2006−272001)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】