説明

タイロッドケーシングを製造するための方法

タイロッドヘッド(1)と、該タイロッドヘッドに固定されるシャフトエレメント(2)とから成るタイロッドケーシングを製造するための方法であって、シャフトエレメント(2)とタイロッドヘッド(1)とから成るタイロッドケーシング素材部分を製造した後に、タイロッドヘッド(1)に機械的な切削プロセスにより最終構成形状を与える方法において、
シャフトエレメント(2)を、抵抗圧接溶接過程によってタイロッドヘッド(1)に結合し、次いで、タイロッドヘッド(1)の外周面とシャフトエレメント(2)の外周面との間に、両構成部分を結合する、溶接過程により生ぜしめられる少なくとも2つの材料集積部(8,9)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイロッドヘッドと、該タイロッドヘッドに固定されるシャフトエレメントとから成るタイロッドケーシングを製造するための方法であって、シャフトエレメントとタイロッドヘッドとから成るタイロッドケーシング素材部分を製造した後に、タイロッドヘッドに機械的な切削プロセスにより最終構成形状を与える方法に関する。
【0002】
冒頭で述べた形式のタイロッドケーシングは、自動車ステアリングの構成部材として使用され、特別の使用目的に基づき安全に関して最も高い限定条件下にある。このような限定条件は、自動車製造業者によって規定され、従来の技術では例えば安全性クラスA,B,C,Dに分けられている。この場合、冒頭で述べたタイロッドケーシングは、最高の安全段階Dが規定されている。
【0003】
所定の負荷の範囲内で安全段階Dの必要なプロセス安全性を保証するために、静的なまたは動的な所定の力および衝撃荷重の伝達性が必要である。
【0004】
上記基準を満たすために、タイロッドヘッドとシャフトエレメントから成るタイロッドケーシング素材部分が、鍛造プロセスの範囲で変形され、引き続き行われる機械的な切削により、自動車製造業者によって規定された最終形状にもたらされ、これによりシール部材及び軸受構成部分のような補助的な構成部分が、タイロッドヘッドに組み付けられる。鍛造プロセスおよび次いで行われる切削プロセスから成る全体の製造は極めてコストがかかる。この場合、最近は冷間鍛造過程により、その後に続く切削過程のための処理時間を減じることが試みられている。製造プロセスとしての冷間鍛造は、他方では比較的手間がかかりコストがかかるので、選択的な製造法により得られる製造コストの利益は全体としてそれほど高いとは言えない。
【0005】
そこで本発明の課題は、先行技術により公知の方法に比べて製造コストに関して極めて良好に実現可能な、タイロッドケーシングを製造するための方法を提供することである。
【0006】
この課題を解決するために本発明の方法では、シャフトエレメントを、抵抗圧接溶接過程によってタイロッドヘッドに結合し、次いで、タイロッドヘッドの外周面とシャフトエレメントの外周面との間に、両構成部分を結合する、溶接過程により生ぜしめられる少なくとも2つの材料集積部を形成するようにした。
【0007】
上記の溶接法の特別な組合せにより、シャフトエレメントとタイロッドヘッドとの間の全体溶接結合が行われる。この全体溶接結合は、これまで通常であった鍛造結合と同様に、静的および動的な力の伝達に関しておよび衝撃力に対する耐性に関して全ての必要な基準を満たす。この場合、シャフトエレメントとタイロッドヘッドの関与する構成部材は、予め行われる切削プロセスの範囲で、安価に提供される適当なロッド材料から製造される。さらにこの新たな製造方法により、タイロッドケーシングのモジュール構造も可能である。モジュール構造では例えば所定のケーシングヘッドを、種々異なる長さのシャフトエレメントに組み合わせることができる。
【0008】
請求項1の特別な構造が記載された技術的な教示はさらに従属請求項の特徴により明らかである。
【0009】
特に有利には、両材料集積部を、タイロッドヘッドもしくはシャフトエレメントの直径上で互いに向かい合う面に配置する。材料集積部が互いに向かい合って配置されていることにより、この場合有利には、タイロッドケーシングの構成寸法に関して有利に作用する。構成寸法は、通常、自動車のステアリング領域には構成スペースが僅かしかないので大きな意味を有している。
【0010】
材料集積部を製造するためにこの場合、MAG溶接法が特に有利である。このような製造法は別の利用分野で公知であって、安価に実行可能である。
【0011】
さらに、タイロッドヘッドとシャフトエレメントとの間の必要な力の伝達は、三角形の構成としての材料集積部の横断面により助成され、この場合、結合すべき構成部分に面した三角形の底辺を越えて突出する制限面が、底辺に対して約45°傾斜されている。
【0012】
例えばシール部材のような、構成寸法制限の際に隣接する構成部分を、タイロッドヘッドに組み付けるために、さらに有利には、抵抗圧接溶接過程により製造される環状の溶接シームを、材料集積部に対して約90°ずらされて配置されている部分領域において、切削処理により、ここでは有利にはブローチプロセスにより取り除く。
【0013】
タイロッドヘッドとシャフトエレメントとの間の結合の、上述したような本発明の特徴により、さらに有利には、シャフトエレメントを、タイロッドケーシングの製造後に曲げ過程により変形することができる。
【0014】
次に添付の図面につき、タイロッケーシングを製造するための方法の経過を詳しく説明する。この場合図1〜図6には、斜視図で個々の方法ステップにおいて、図1のタイロッドヘッドとシャフトエレメントのために使用される素材部分から、図6の完成したタイロッドケーシングまでが示されている。
【0015】
本発明の方法により製造すべきタイロッドケーシングは、図1に斜視図で示したように、素材部分として原則的に1つのタイロッドヘッド1とシャフトエレメント2とから成っている。この場合、シャフトエレメント2は、棒状の円筒状の内実材料であって、タイロッドケーシングは中空円筒状の部材である。
【0016】
図2に示したように、タイロッドヘッド1とシャフトエレメント2とには、第1の製造ステップで面取部3,4,5が設けられる。これらの面取部の特別な構成は、タイロッドケーシングのその後の組み付け状況および取り付け状況に適合される。シャフトエレメント2は、面取部5が設けられていない第2の自由端部に、準備処置の最後に切頭円錐端部6が設けられる。シャフトエレメント2は、切頭円錐端部6の横断面で見て細い方の外側の端部で、タイロッドヘッド1の円筒状の外面にプレス嵌めされて、抵抗圧接溶接法により、構成部分1,2に適当な電圧がかけられながら、かつ相応の押圧力が付与されながらタイロッドヘッド1に結合される。このような抵抗圧接溶接過程により環状の溶接シーム7が生じる。
【0017】
タイロッドケーシングを製造するための次の方法ステップでは、シャフトエレメント2の切頭円錐端部6の領域およびタイロッドヘッド1のこれに隣接する円筒状の外面の領域で直径上で互いに向き合う面にそれぞれ1つの材料集積部8,9を取り付ける。この材料集積部8,9はそれぞれ1つの補強ウエブを形成し、上記個所に溶接される。この場合、有利な構成によれば、MAG溶接法が有効であることがわかっている。材料集積部8,9は横断面で見てほぼ三角形の形状を有している。この場合、傾斜して互いに接近するように延びていて、外部に向かって突出する制限面10,11が、材料集積部の基部面に対して互いに45°の角度を成して傾斜している。
【0018】
補強のために働く材料集積部8,9の製造後、さらなる作業工程で有利にはブローチ工具により、面取部3,4の領域で、抵抗圧接溶接法の際に生じた溶接シーム7が取り除かれる。
【0019】
最終的に図6には、タイロッドヘッド1とシャフトエレメント2との間の結合過程の終了後に引き続き行われる製造ステップで、このシャフトエレメント2が屈曲されることが示されている。これにより組み付けの際に特別な組み込み状況に適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】タイロッドケーシングの製造過程の第1ステップを示した斜視図である。
【図2】タイロッドケーシングの製造過程の第2ステップを示した斜視図である。
【図3】タイロッドケーシングの製造過程の第3ステップを示した斜視図である。
【図4】タイロッドケーシングの製造過程の第4ステップを示した斜視図である。
【図5】タイロッドケーシングの製造過程の第5ステップを示した斜視図である。
【図6】タイロッドケーシングの製造過程の第6ステップを示した斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 タイロッドヘッド、 2 シャフトエレメント、 3,4,5 面取部、 6 切頭円錐端部、 7 溶接シーム、 8,9 材料集積部、 10,11 制限面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイロッドヘッド(1)と、該タイロッドヘッドに固定されるシャフトエレメント(2)とから成るタイロッドケーシングを製造するための方法であって、シャフトエレメント(2)とタイロッドヘッド(1)とから成るタイロッドケーシング素材部分を製造した後に、タイロッドヘッド(1)に機械的な切削プロセスにより最終構成形状を与える方法において、
シャフトエレメント(2)を、抵抗圧接溶接過程によってタイロッドヘッド(1)に結合し、次いで、タイロッドヘッド(1)の外周面とシャフトエレメント(2)の外周面との間に、両構成部分を結合する、溶接過程により生ぜしめられる少なくとも2つの材料集積部(8,9)を形成することを特徴とする、タイロッドケーシングを製造するための方法。
【請求項2】
両材料集積部(8,9)を、タイロッドヘッド(1)もしくはシャフトエレメント(2)の直径上で互いに向かい合う面に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
材料集積部(8,9)をMAG溶接法によって形成する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
材料集積部(8,9)がほぼ三角形の横断面を有しており、三角形の、結合したい構成部分に面した底辺を越えて突出する制限面(10,11)が、底辺に対して約45°の角度を成して傾斜している、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
材料集積部(8,9)に対して約90°すらされてシャフトエレメント(2)の周面に配置されている部分領域における、抵抗圧接溶接過程により形成された環状の溶接シーム(7)を、切削処理により取り除く、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
切削処理がブローチ過程である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
タイロッドケーシング(1)のシャフトエレメント(2)を、完成後に屈曲過程により変形させる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−503712(P2006−503712A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547416(P2004−547416)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003535
【国際公開番号】WO2004/039529
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(390040361)ツェットエフ レムフェルダー メタルヴァーレン アクチエンゲゼルシャフト (8)
【Fターム(参考)】