説明

タオル・ハンカチ用両面カットパイル織物

【課題】タオル・ハンカチ用途において要求される、短いパイル長で、パイルが抜けず、尚且つ、しなやかであるとの要求品質を満たす両面カットパイル織物を、実現させることを課題とする。
【解決の手段】両面カットパイル織物の織物組織を、パイル糸の左右に配置される2条のタテ糸が、パイル糸がヨコ糸に織り込まれている箇所で、同じ織組織で形成され、2条のタテ糸の間で、1本のヨコ糸に係止されているパイル糸を2本以下とし、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出した部分を除き、2本のパイル糸は同じ織組織で形成され、パイル糸のヨコ糸に対する上下の位置が、タテ糸の位置の逆の配置位置となり、1本のパイル糸を係止するヨコ糸の本数が3から5本で構成され、パイル糸の両端が共に織物の表面又は裏面に突出し、突出部の数が表裏面同じになるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイル糸がタテ糸とヨコ糸が交差した地組織に係止され、織物表面と裏面にパイル糸のカット面が突出し、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出したパイル長が5mm以下である両面カットパイル織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、パイル糸がタテ糸とヨコ糸が交差した地組織に係止され、織物表面と裏面にパイル糸のカット面が突出したパイル糸から成る両面パイル織物の基本的なパイル糸、タテ糸、ヨコ糸の関係が実用新案(特許文献1参照)に公開されており、この両面パイル織物は毛布等パイル糸の長い用途に使用されるための改善がなされて来た。
【0003】
その改善例として、効率的に裏面にパイルを形成させるための方法、パイル長に変化をもたせるための方法が開示されており、特許(例えば、特許文献2参照)には、捨緯糸を用いず、ローラーの針で引きだす方法に伴い、1本のパイル糸の一端が織物表に、もう片方の端が織物の裏面に突出した図、あるいはタテ糸の配置を示す図が開示されており、特許公開公報(例えば、特許文献3参照)には、2本のパイル糸が同じヨコ糸に係止され織物の表裏を構成する図が公開されている。
【0004】
また、高密度な質感とパイル抜けを防止する方法として、特許公開公報(例えば、特許文献4参照)には、パイル糸の左右に配置された2条のタテ糸の間で、1本のパイル糸の一端が織物表に、もう片方の端が織物の裏面に突出した3本のパイル糸が同じヨコ糸に係止された図が公開されている。
【0005】
また、もう一つのパイル抜けを防止する方法として、特許公開公報(例えば、特許文献5参照)には、パイル糸の左右に配置されたタテ糸の間で、パイル糸の両端が、織物の表面に突出したパイル糸と、パイル糸の両端が、織物の裏面に突出したパイル糸の2本のパイル糸が同じヨコ糸に、ヨコ糸に対して上下の配置位置が逆の配置に係止された図が公開されており、パイル密度を増す対策と、パイル糸が係止するヨコ糸本数を5本以上にする方法が開示されている。
【0006】
また、特許公開公報(例えば、特許文献6参照)には、タオル・ハンカチ分野への用途展開としてパイル糸の左右に配置されたタテ糸の間で、1本のパイル糸の一端が織物表に、もう片方の端が織物の裏面に突出したパイル糸が最大3本同じヨコ糸に係止された図が公開され、パイル糸の密度を増やしパイル抜け防止する方法が開示されているものの、タオル・ハンカチ分野への用途展開をするための、タテ糸、ヨコ糸、パイル糸の最適な配置構造に関して研究がなされていなかった。
【特許文献1】実公昭37−021390号公報
【特許文献2】特許第3560578号(図11、図4)
【特許文献3】特開2000−355847号公報(図4)
【特許文献4】特開2000−220059号公報(図3)
【特許文献5】特開平10−37041号公報(請求項1、図3)
【特許文献6】特開平7−243155号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、市場に出回っている立毛タオル・ハンカチは、ループパイルのタオル織組織のタオル織物と、シェニール糸を織り込んだシェニール織物であり、両面ともにカットパイルで構成されている両面カットパイル織物のハンカチ・タオルは市場に出回っていない。
【0008】
この両面カットパイル織物がタオル・ハンカチ市場に出回っていない要因は、両面カットパイル織物は、毛布等のパイル長の長いものに対しては完成度の高い織物であるが、短いパイル長を要求され、パイル糸が抜けず、尚且つ、しなやかさを要求されるタオル・ハンカチ用途においては、実際の市場で、要求品質を満たしていると評価されていなためであり、これが現状である。
【0009】
そこで本発明は、タオル・ハンカチ用途において要求される、短いパイル長で、パイルが抜けず、尚且つ、しなやかであるとの要求品質を満たす両面ともにカットパイルで構成されている両面カットパイル織物を、実現させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る、パイル糸がタテ糸とヨコ糸が交差した地組織に係止され、織物表面と裏面にパイル糸のカット面が突出し、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出したパイル長が5mm以下であるタオルおよびハンカチ用途の両面カットパイル織物は、パイル糸12の左右に配置される2条のタテ糸10aとタテ糸10bが、パイル糸12がヨコ糸11に織り込まれている箇所で、同じ織組織で形成され、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本以下であり、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本の場合は、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出した部分を除き、2本のパイル糸12が同じ織組織で形成され、パイル糸12がヨコ糸11に織り込まれている箇所で、パイル糸12のヨコ糸11に対する上下の配置位置が、タテ糸10a、タテ糸10bの配置位置の逆の配置位置となる織組織で構成され、1本のパイル糸12を係止するヨコ糸11の本数が3から5本で構成され、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間に配置されているパイル糸が、パイル糸の両端が共に織物の表面に突出したパイル糸12aと、パイル糸の両端が共に織物の裏面に突出したパイル糸12bで形成され、織物の表面に突出したパイル糸の突出部20と、織物の裏面に突出したパイル糸の突出部20の数が同じになるよう構成されたことを第1の特徴とする。
【0011】
本発明によれば、パイル糸12がヨコ糸11に織り込まれている箇所で、2条のタテ糸10aとタテ糸10bが同じ織組織で、ヨコ糸11に対しパイル糸12と逆の位置配置となる織組織とする時、パイル糸12とタテ糸10はヨコ糸とヨコ糸の間の交差部21で交差し、パイル糸の左右に配置されたタテ糸10aとタテ糸10bとで、パイル糸12を挟み込む構造となり、パイル糸にタテ糸よる圧力と摩擦抵抗力が加わることに加え、パイル糸12とヨコ糸11の接圧が強固に保たれるため、パイル糸12とヨコ糸11間の摩擦抵抗力が有効に機能し、パイル抜け防止に大きく寄与する。
【0012】
また、1本のパイル糸12を係止するヨコ糸11の本数を3から5本にすることにより、パイル糸12がタテ糸10と交差する交差部21でのパイル糸12に加わる圧力と摩擦抵抗力の総和と、パイル糸12とヨコ糸11との間に発生する摩擦抵抗力の総和により、タオル・ハンカチとして必要なパイル抜け防止と、織物のしなやかさとを実現することができる。
【0013】
また、タオル・ハンカチのように抵抗を受ける面がどちらか一方になる確率の高い商品においては、パイル糸が、パイル糸の両端が織物の表面に突出したパイル糸12aと、パイル糸の両端が織物の裏面に突出したパイル糸12bで形成され、ヨコ糸の係止されたパイル糸12の両端の突出部20が織物の同じ面に突出して配置された構造により、パイル糸の両端の突出部20が同時ないしは時間差で抵抗を受けるため、パイル糸の両端の突出部20にかかるパイルを引き抜く力が差相殺され、パイル抜け防止に大きく寄与する。
【0014】
また、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されるパイル糸の数を、2本以下にし、織物の表面に突出したパイル糸の突出部13と、織物の裏面に突出したパイル糸の突出部13の数が同じになるよう構成することにより、タオル・ハンカチに必要なしなやかさと、両面を表裏と意識せず使える実用性を実現できる。
【0015】
また、本発明に係る両面カットパイル織物の第2の特徴は、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、片面に突出したパイル糸の突出部20が、ヨコ糸11が3本配置される間に、1から2存在する構造である点にある。
【0016】
本発明によれば、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、片面に突出したパイル糸の突出部20が、ヨコ糸11が3本配置される間に、1から2存在する構造にすることにより、タオル・ハンカチとしての織物表面の質感を満足させたタオル・ハンカチ用途に適切な両面カットパイル織物を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、パイル糸12の左右に配置される2条のタテ糸10aとタテ糸10bが、パイル糸12がヨコ糸11に織り込まれている箇所で、同じ織組織で形成され、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本以下で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本の場合は、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出した部分を除き、2本のパイル糸12が同じ織組織で形成され、パイル糸12がヨコ糸11に織り込まれている箇所で、パイル糸12のヨコ糸11に対する上下の配置位置が、タテ糸10a、タテ糸10bの配置位置の逆の配置位置となる織組織で構成され、1本のパイル糸12を係止するヨコ糸11の本数が3から5本で構成され、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間に配置されているパイル糸が、パイル糸の両端が共に織物の表面に突出したパイル糸12aと、パイル糸の両端が共に織物の裏面に突出したパイル糸12bで形成され、織物の表面に突出したパイル糸の突出部13と、織物の裏面に突出したパイル糸の突出部13の数が同じになるよう構成ことにより、タオル・ハンカチとしての性能として要求されるパイル抜け防止と、織物のしなやかさとを持ち合わせたタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物を得ることができる。
【0018】
また、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、片面に突出したパイル糸の突出部20が、ヨコ糸11が3本配置される間に、1から2存在する構造にすることにより、ハンカチとして最適なパイル抜け防止と、織物のしなやかさと、織物表面の質感を両立させたタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に示す実施の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0020】
図1は、パイル糸がタテ糸とヨコ糸が交差した地組織に係止され、織物表面と裏面にパイル糸のカット面が突出し、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出したパイル長が5mm以下であるタオルおよびハンカチ用途の両面カットパイル織物は、パイル糸12の左右に配置される2条のタテ糸10aとタテ糸10bが、パイル糸12がヨコ糸11に織り込まれている箇所で、同じ織組織で形成され、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が1本で、パイル糸12がヨコ糸11に織り込まれている箇所で、パイル糸12のヨコ糸11に対する上下の配置位置が、タテ糸10a、タテ糸10bの配置位置の逆の配置位置となる織組織で構成され、1本のパイル糸12を係止するヨコ糸11の本数が3本で構成され、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間に配置されているパイル糸が、パイル糸の両端が共に織物の表面に突出したパイル糸12aと、パイル糸の両端が共に織物の裏面に突出したパイル糸12bで形成され、織物の表面に突出したパイル糸の突出部20と、織物の裏面に突出したパイル糸の突出部20の数が同じになるよう構成された本発明のタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物のタテ糸、ヨコ糸、パイル糸の構造を示したものである。
【0021】
図2は、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本で構成された本発明のタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物のタテ糸、ヨコ糸、パイル糸の構造を示したものである。
【0022】
図2において、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、ヨコ糸11に対し、パイル糸12b、パイル糸12cの2本のパイル糸が係止され、パイル糸12a、パイル糸12cの両端が織物の表に突出し、パイル糸12b、パイル糸12dの両端が織物の裏に突出し、パイル糸12a・12b・12c・12dともに、ヨコ糸11に対する上下の配置位置が、タテ糸10a、タテ糸10bの配置位置の逆の配置位置となる織組織で構成されている。
【0023】
図3は、本発明における2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が1本であるタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物のタテ糸、ヨコ糸、パイル糸の構造を図示するヨコ糸を切断する方向の断面図であり、パイル糸12a・12bがタテ糸10の配置位置の逆の配置位置となる織組織で構成され、1本のパイル糸12を係止するヨコ糸11の本数が3本で構成され、隣り合うヨコ糸11間の交差部21でパイル糸12とタテ糸10が交差し、パイル糸12bの両端の端部22が共に裏面に突出した状態を示すものであり、本発明におけるパイル長34とは、図3に示したように、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出したパイルの長さのことを言う。
【0024】
なお、本発明における両面カットパイル織物の構造は2条のタテ糸10aとタテ糸10bが同じ織組織であるため、図3において、タテ糸10はヨコ糸とヨコ糸の間の交差部21で、パイル糸の左右に配置されたタテ糸10aとタテ糸10bとで、交差した状態でパイル糸12を挟み込む構造となり、ヨコ糸11とヨコ糸11の間に常に存在する交差部21で、常にパイル糸にタテ糸の交差による圧力と摩擦抵抗力が加わることに加え、パイル糸12とヨコ糸11の接圧が強固に保たれるため、パイル糸12とヨコ糸11間の摩擦抵抗力が有効に機能し、パイル抜け防止に大きく寄与する構造となっている。
【0025】
また、図3においては、1本のパイル糸12を係止するヨコ糸11の本数を3本にした例を示しているが、1本のパイル糸12を係止するヨコ糸11の本数を3から5本にすることにより、パイル糸12がタテ糸10と交差する交差部21でのパイル糸12に加わる圧力と摩擦抵抗力の総和と、パイル糸12とヨコ糸11との間に発生する摩擦抵抗力の総和により、タオル・ハンカチとして必要なパイル抜け防止と、織物のしなやかさとを実現することができる。
【0026】
なお、図4は、本発明と異なるタテ糸、ヨコ糸、パイル糸の構造を図示するものであり、パイル糸12がタテ糸10の配置位置と同じ配置位置となる織組織となる場合、本発明のような交差部21が常に発生する状態でなく、図4に示したように、交差部21が発生しない状態となる可能性があり、パイル糸12を挟み込む構造が発生せず、パイル抜け防止として不十分であるため、従来の対策のようにパイル糸の密度を上げるしかなく、パイル長の短さを要求されるタオル・ハンカチ用途に対しては、本発明の糸配置構造の方が、有効な構造となっていると考えられる。
【0027】
図5は、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本で構成された本発明のタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物の、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間のタテ糸、ヨコ糸、パイル糸の構造を示すものである。
【0028】
なお、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12を3本以上で構成すると、タテ糸10aとタテ糸10bで挟み込んだ3本の配置位置が不安定となり、タテ糸10aとタテ糸10bでの挟み込みによる効果が減少し望ましくない。
【0029】
図6は、本発明における2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が1本であるタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物のタテ糸、ヨコ糸、パイル糸の構造を図示するタテ糸を切断する方向の断面図であり、ヨコ糸11に対し、パイル糸12がタテ糸10a・10bの配置位置の逆の配置位置となる織組織で構成された状態を示すものである。
【0030】
なお、本発明のタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物は、図6のように、パイル糸12を介さず隣り合うタテ糸10bとタテ糸10cがヨコ糸11に対し、逆の配置位置となる織組織で構成される、ヨコ糸11とタテ糸10から成る地組織から成っている。
【0031】
本発明においては、隣り合うヨコ糸間の交差部22で、タテ糸10とパイル糸12が交差し、タテ糸10a・10bで挟み込む構造のため、図6におけるパイル糸12の配置位置が左右にぶれることなく安定した配置構造となる。
【0032】
図7は、本発明における2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本であるタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物のタテ糸、ヨコ糸、パイル糸の構造を図示するタテ糸を切断する方向の断面図である。
【0033】
図8は、本発明におけるタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物に抵抗物35が接触した状態を示すものであり、タオル・ハンカチのように抵抗を受ける面がどちらか一方になる確率の高い商品においては、パイル糸が、パイル糸の両端が織物の表面に突出したパイル糸12aと、パイル糸の両端が織物の裏面に突出したパイル糸12bで形成され、ヨコ糸の係止されたパイル糸12の両端が織物の同じ面に突出して配置された構造により、パイル糸の両端の突出部20が同時ないしは時間差で抵抗を受けるため、パイル糸の両端の突出部20にかかるパイルを引き抜く力が差相殺され、パイル糸の両端が織物の表面に突出したパイル糸12aと、パイル糸の両端が織物の裏面に突出したパイル糸12bで形成され、ヨコ糸の係止されたパイル糸12の両端が織物の同じ面に突出して配置された構造が、パイル抜け防止に大きく寄与する状態を示している。
【0034】
図9は、本発明における2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が1本であるタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物を形成するための原理を図示したものである。
【0035】
本発明の織物は、図9のように、タテ糸10とヨコ糸11が交差してなる上下2面の地組織と、上面の地組織の上と下面の地組織の下に配置されたタテ糸10と交差していない捨てヨコ糸13とをパイル糸12が連結した立体構造の織物を作り、上下2面の地組織の間のパイル糸12を上下2面の中心で切断し、捨てヨコ糸13を矢印の方向に引抜くことにより、上面においては、上下2面の中心で切断されたパイル糸12aの両端が地組織から引きずり出され、下面においては、上下2面の中心で切断されたパイル糸12bの両端が地組織から引きずり出され、形成される。
【0036】
なお、図9の形成原理にて作り出されたタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物は、本発明の構造を有し、タオル・ハンカチ用途としての性能を有するものの、捨てヨコ糸13を矢印の方向に引抜く前の、捨てヨコ糸13を挟むヨコ糸11a・11b間の距離は、捨てヨコ糸13を織組織させるため、捨てヨコ糸13が配置されない隣り合うヨコ糸11間の距離より長くなり、捨てヨコ糸13が存在していた部分のヨコ糸密度が他の部分に対し若干低下し、本発明のタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物の理想的な織物構造となっていない。
【0037】
そこで、本発明のタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物の理想的な織物構造を実現させる方法を図10に示す。
【0038】
図10は、本発明のタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物の理想的な織物構造を実現させる方法を示すものであり、この方法の特徴は、図10のように、固定部32に一端が固定され、タテ糸10とヨコ糸11が交差してなる上下2面の地組織の上下に配置され、捨てヨコ糸13のみを、上面の場合は上に、下面の場合は下に配置させる開口をする捨てヨコ糸用固定タテ糸14を用いる点にあり、捨てヨコ糸用固定タテ糸14として、タテ糸10に比べ曲がりにくいテグスを使用している点にある。
【0039】
なお、本方法は、捨てヨコ糸用固定タテ糸14をテグスに限定するものでなく、タテ糸として開口運動が可能で、タテ糸10とヨコ糸11が交差してなる上下2面の地組織の上下に配置され、捨てヨコ糸13のみを、上面の場合は上に、下面の場合は下に配置させるできる硬度の素材であれば、ワイヤーのような金属素材であってもよい。
【0040】
また、図9においては、地組織に捨てヨコ糸13が食い込んだ状態であったが、本方法においては、この曲がりにくいテグスを捨てヨコ糸用固定タテ糸14として使用することにより、捨てヨコ糸用固定タテ糸14を介し、完全に地組織から分離した位置に捨てヨコ糸13を配置することが可能と成り、この配置に伴い、捨てヨコ糸13を抜き取った後、捨てヨコ糸13を挟む関係にあったヨコ糸11a・11b間のヨコ糸間距離Lを、パイル糸12が組織し捨てヨコ糸13を挟まない関係にあったヨコ糸11a・11b間のヨコ糸間の距離に対し、10%以内の伸びに縮めることができ、本発明のタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物の理想的な織物構造を実現させることができる。
【0041】
なお、ヨコ糸用固定タテ糸14の固定部32に固定されていない方の端部は、織前33から約10cm程度捨てヨコ糸13により織込まれ、織物を織進んでも、固定部32にヨコ糸用固定タテ糸14の一端が固定されているため、ヨコ糸用固定タテ糸14の先端は織前33から約10cm程度の位置で留まるため、織進むにつれ、織前33から約10cm以降の箇所には、織物からヨコ糸用固定タテ糸14が存在しなくなる仕組みになっている。
【0042】
また、パイル糸がタテ糸とヨコ糸が交差した地組織に係止され、織物表面と裏面にパイル糸のカット面が突出し、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出したパイル長が5mm以下であるタオルおよびハンカチ用途の両面カットパイル織物は、パイル糸12の左右に配置される2条のタテ糸10aとタテ糸10bが、パイル糸12がヨコ糸11に織り込まれている箇所で、同じ織組織で形成され、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本以下で、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本の場合は、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出した部分を除き、2本のパイル糸12が同じ織組織で形成され、パイル糸12がヨコ糸11に織り込まれている箇所で、パイル糸12のヨコ糸11に対する上下の配置位置が、タテ糸10a、タテ糸10bの配置位置の逆の配置位置となる織組織で構成され、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間に配置されているパイル糸が、パイル糸の両端が共に織物の表面に突出したパイル糸12aと、パイル糸の両端が共に織物の裏面に突出したパイル糸12bで形成され、1本のパイル糸12を係止するヨコ糸11の本数が3から5本で構成され、織物の表面に突出したパイル糸の突出部20と、織物の裏面に突出したパイル糸の突出部20の数が同じになるよう構成された本発明の両面カットパイル織物を試作した結果、2条のタテ糸10aとタテ糸10bの間で、片面に突出したパイル糸の突出部20が、ヨコ糸11が3本配置される間に、1から2存在する構造にすることにより、タオルおよびハンカチ用途において、最適なパイル抜け防止と、しなやかさと、より最適な織物表面の質感を両立させたタオル・ハンカチ用途の両面カットパイル織物を得ることができることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る織物の斜視図である。
【図2】本発明に係る織物の斜視図である。
【図3】本発明に係る織物の断面図である。
【図4】本発明に係る織物の断面図である。
【図5】本発明に係る織物の斜視図である。
【図6】本発明に係る織物の断面図である。
【図7】本発明に係る織物の断面図である。
【図8】本発明に係る織物の試験時の断面図である。
【図9】本発明に係る織物製造方法を示す斜視図および断面図である。
【図10】本発明に係る織物製造方法を示す斜視図および断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10・10a・10b・10c:タテ糸
11・11a・11b:ヨコ糸
12・12a・12b・12c・12d:パイル糸
13:捨てヨコ糸
14:捨てヨコ糸用固定タテ糸
20:突出部
21:交差部
22:端部
30:筬
31:開口用ソウコウ部
32:固定部
33:織前
34:パイル長
35:抵抗物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイル糸がタテ糸とヨコ糸が交差した地組織に係止され、織物表面と裏面にパイル糸のカット面が突出し、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出したパイル長が5mm以下である両面カットパイル織物において、
(a)パイル糸(12)の左右に配置される2条のタテ糸(10a)とタテ糸(10b)が、パイル糸(12)がヨコ糸(11)に織り込まれている箇所で、同じ織組織で形成され、
(b)2条のタテ糸(10a)とタテ糸(10b)の間で、1本のヨコ糸(11)に係止されているパイル糸(12)が2本以下であり、1本のヨコ糸11に係止されているパイル糸12が2本の場合は、タテ糸とヨコ糸が交差した地組織から突出した部分を除き、2本のパイル糸(12)が同じ織組織で形成され、
(c)パイル糸(12)がヨコ糸(11)に織り込まれている箇所で、パイル糸(12)のヨコ糸(11)に対する上下の配置位置が、タテ糸(10a)、タテ糸(10b)の配置位置の逆の配置位置となる織組織で構成され、
(d)1本のパイル糸(12)を係止するヨコ糸(11)の本数が3から5本で構成され、
(e)2条のタテ糸(10a)とタテ糸(10b)の間に配置されているパイル糸が、パイル糸の両端が共に織物の表面に突出したパイル糸(12a)と、パイル糸の両端が共に織物の裏面に突出したパイル糸(12b)で形成され、
(f)織物の表面に突出したパイル糸の突出部(20)と、織物の裏面に突出したパイル糸の突出部(20)の数が同じになるよう構成されたことを特徴とするタオルおよびハンカチ用途の両面カットパイル織物。
【請求項2】
2条のタテ糸(10a)と(タテ糸10b)の間で、片面に突出したパイル糸の突出部(20)が、ヨコ糸(11)が3本配置される間に、1から2存在する構造であることを特徴とする、請求項1に記載のタオルおよびハンカチ用途の両面カットパイル織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−77550(P2010−77550A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245083(P2008−245083)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(304048551)有限会社K・T・クリエイト (4)
【Fターム(参考)】