説明

タオル地

【課題】繰り返し洗濯しても、洗濯後のゴワゴワ感、硬い感じ、厚さが薄くなったような感じを感じることの少ない、タオル地の提供
【解決手段】縦糸(2)及び横糸(3)からなる地織り(5)を有し、地織り(5)から、縦糸又は横糸を用いてタオル地の表面又は裏面に複数のループ(7,9)を互いに隣接する形で形成したタオル地(1)において、あるループと当該あるループに隣接するループにおいて、あるループに隣接する少なくとも一つのループの形成高さ(L1,L2)を、当該あるループと異なる形に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯を繰り返してもゴワゴワ感や硬さを感じる程度が少ないタオル地に関する。
【0002】
【背景技術】
【0003】
従来、タオルを構成するタオル地のループ状に形成されたパイルは、その長さが一定に形成されたものが殆どであり、中には、タオル地の表裏で、そのパイル長を変化させたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−261365号公報
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のタオル地は、洗濯の際に、繊維同士のこすり合いや繊維の引っ張り合い、更には、乾燥及び湿潤の繰り返し等により、繊維のキューティクルの損傷及び破壊、繊維に付着していた油脂などの保護成分の漏出、繊維の剛性・弾力性の低下が生じる。
【0007】
この繊維のキューティクルの損傷及び破壊は、パイルのループのよじれ、繊維の脱落、即ち毛羽の発生、更には、発生したよじれに毛羽が巻き込まれるなどにより生じ、洗濯後のタオルのゴワゴワ感、硬い感じ、厚さが薄くなったような感じに繋がっている。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑み、繰り返し洗濯しても、洗濯後のゴワゴワ感、硬い感じ、厚さが薄くなったような感じを感じることの少ない、タオル地を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、縦糸(2)及び横糸(3)からなる地織り(5)を有し、
該地織り(5)から、前記縦糸又は横糸を用いてタオル地の表面又は裏面に複数のループ(7,9)を互いに隣接する形で形成したタオル地(1)において、
あるループと当該あるループに隣接するループにおいて、前記あるループに隣接する少なくとも一つのループの形成高さ(L1,L2)を、当該あるループと異なる形に設定して構成される。
【0010】
請求項2の発明は、前記ループは、形成高さの高い大ループ(9)と、形成高さの低い小ループ(7)の2種類からなり、
小ループの形成高さは、大ループの形成高さの約1/2で構成される。
【0011】
請求項3の発明は、前記ループは、形成高さの高い大ループと、形成高さの低い小ループの2種類からなり、
前記大ループの前記地織り(5)に対する形成ピッチ(P)と、前記小ループの前記地織りに対する形成ピッチ(P/2)は異なることを特徴として構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、タオル地の互いに隣接するループの高さが異なるので、高いループの間に低いループが存在することとなり、洗濯時に高いループ同士が互いに接触する頻度及び程度を少なくすることが出来、それに伴う繊維同士のこすり合いや引っ張り合いの発生などの発生を少なくして、繰り返し洗濯しても、洗濯後のゴワゴワ感、硬い感じ、厚さが薄くなったような感じを感じることの少ない、タオル地を提供することができる。
【0013】
また、大ループの地織り(5)に対する形成ピッチ(P)と、小ループの前記地織りに対する形成ピッチ(P/2)を異なるように構成することにより、小ループと大ループが洗濯時に互いに接触する頻度をより低めることが出来、より効果的である。
【0014】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0016】
図1は、本発明によるタオル地の1実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図、図2は、図1のタオル地のパイル部分の斜視図、図3は、本発明によるタオル地の別の実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図、図4は、本発明によるタオル地の更に別の実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図、図5は、図3及び図4のタオル地を組み合わせて作ったタオルの一例を示す図で、(a)はタオルの表面、(b)はタオルの裏面、(c)及び(d)は、それぞれタオル面の一部分を示す図、図6は、本発明によるタオル地を用いて作成したタオルの1例を示す図で、(a)は表面、(b)は裏面を示す図、図7は、本発明によるタオル地の更に別の実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図、(c)はタオル地の斜視図、図8は、本発明によるタオル地の更に別の実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図、(c)はタオル地の斜視図、図9は、洗濯回数による、本発明のタオル地と従来のタオル地を比較したグラフである。
【0017】
タオルの少なくとも一部分を構成する本発明によるタオル地1は、図1(a)に示すように、図中紙面と直角方向に並行に伸延する多数の横糸2(丸で囲んだ数字の1〜3で表示)を有しており、横糸2は、図1(b)のタオル地を織る際の組織図FMに示すように、互いに図中上下方向に隣接する3本の横糸2が1組となって構成されている。横糸2には、4本の縦糸3(丸で囲んだアルファベットa〜dで表示)が組織図FM上で一組となる形で、編み込まれている。3本の横糸2と4本の縦糸3との織りの状態、即ち組織図FMは、図1(b)で示すように構成されている。なお、図中の縦糸と横糸の関係は、逆に構成しても良い。即ち、後述するパイル10を、横糸を用いて形成しても良い。
【0018】
4本の縦糸3の内、2本の縦糸(丸で囲んだアルファベットb及びd)は、横糸2と共に、平織りとなっており、タオル地1の地織り5部分を構成している。また、4本の縦糸3の内、残りの2本の縦糸(丸で囲んだアルファベットa及びc)は、横糸2と共に、テリー織りとなっており、タオル地1の地織り5部分から図中両側に突出して形成されたループ7,9からなるパイル10を形成している。
【0019】
なお、図(a)の地織り5の図中左側を便宜上、「表」と称し、図中右側を「裏」と称する。テリー織りを構成する2本の縦糸3、3の内、丸で囲んだaの縦糸3は、タオル地1の表側に、地織り5の厚さの中心CLから高さL1なる小ループ7と高さL2なる大ループ9を1個置きに上下方向に形成しており、更に、丸で囲んだcの縦糸3は、タオル地1の裏側に、地織り5の厚さの中心CLから高さL1なる小ループ7と高さL2なる大ループ9を1個置きに上下方向に形成している。なお、高さL1は、高さL2のほぼ半分の高さである。これにより、タオル地1は、図2に示すように、地織り5から表裏に異なる高さL1,L2だけ突出して形成されたループ7,9からなるパイル10を有する形で形成されている。
【0020】
このように、タオル地1に形成されるパイル10を、異なる高さL1,L2で形成することにより、当該タオル地1から作られたタオルを洗濯した場合と、従来の均一な高さを有するループからなるタオル地からなるタオルを洗濯した場合の、ループのねじれ、毛羽の発生を洗濯回数を変数として、実験してみた結果、図9に示すような結果となった。
【0021】
図9(a)は、洗濯回数によるループの捩れの程度を、相対的に示したグラフであるが、従来の均一な高さを有するループからなるタオル地のほうが、本発明のタオル地1に比して、全般的に大きな捩れ生じていることが分かる。ループの捩れは、ループ全体の硬さを増大させ、その結果タオル地1のゴワゴワ感、硬さ、薄っぺらさが増すので、この点で、本発明によるタオル地1の方が優れていることが分かる。
【0022】
また、図9(b)は、洗濯回数による毛羽の発生程度を、相対的に示したグラフであるが、従来の均一な高さを有するループからなるタオル地のほうが、本発明のタオル地1に比して、全般的に大きな毛羽が生じていることが分かる。ループの毛羽が大きくなると、近接する他のループと絡まってループを地織り5に対して固定するので、全体的なゴワゴワ感、硬さ、薄っぺらさが増すので、この点で、本発明によるタオル地1の方が優れていることが分かる。
【0023】
これらのことは、洗濯に際して、タオル地の互いに隣接するループの高さが異なるので、高いループの間に低いループが存在することとなり、洗濯時に高いループ同士が互いに接触する頻度及び程度が少なくなり、それに伴う繊維同士のこすり合いや引っ張り合いの発生が少なくなるからと考えられる。
【0024】
図3に、本発明によるタオル地1の他の実施例を示すが、図1において既に説明した部分は、同一の符号を付して当該部分の説明を省略する。図3(a)の場合、縦糸3の内、パイル10を構成する2本の縦糸a,cの各ループ7,9は、タオル地1の裏側にのみ突出している。図3(b)にその組織図FMを示す。同様に、図4(a)に、図3とは逆に、縦糸3の内、パイル10を構成する2本の縦糸a,cの各ループ7,9が、タオル地1の表側にのみ突出している例を示す。図4(b)にその組織図FMを示す。
【0025】
こうした、タオル地1のパイル10の各ループ7,9の形成態様は全くの任意であることから、図3及び図4に示したタオル地1を組み合わせて、図5に示すタオル11を形成することも可能である。図5のタオル11は、(a)がタオル11の表面であり、(b)がタオル11の裏面である。図5(a)のa−e−i−h及びi−f−c−gで囲まれた領域Aは、図4に示すタオル地1で形成され、タオル11の表面側にパイル10の高いループ9と低いループ7が形成されている。また、図5(b)のe−b−f−i及びh−i−g−dで囲まれた領域Bは、図3に示すタオル地1で形成され、タオル11の裏面側にパイル10の高いループ9と低いループ7が形成されている。このように、複数の任意のタオル地1を組み合わせて所望のデザインを有するタオル11を製造することが出来る。
【0026】
図6も同様であり、図3及び図4に示したタオル地1を用いて、花柄CAのタオル11を形成した例である。図6(a)は表面であり、図6(b)は裏面である。タオル11の花柄CA以外の部分であるグランドGLは、図3に示したタオル地1であり、タオル地1の裏側に高さの異なるループ7,9が出ている。花柄CA部分は、図4に示したタオル地1であり、タオル地1の表側に高さの異なるループ7,9が出ている。
【0027】
更に、本発明によるタオル地1としては、図7(a)に示すように、縦糸3の内、パイル10を構成する2本の縦糸a,cの、縦糸aで大ループ9のみを形成し、縦糸cで小ループ7を形成するようにすることも可能である。この際の組織図FMを、図7(b)に示す。この場合、タオル地1は、図7(c)に示すように、大ループ9からなる長パイルと、小ループ7からなる短パイルが図中左右方向に交互に配列される形となる。
【0028】
また、本発明によるタオル地1としては、図8(a)に示すように、縦糸3の内、パイル10を構成する2本の縦糸a,cの、縦糸aの大ループ9の地織り5に対する形成ピッチPを、縦糸cの小ループ7の地織り5に対する形成ピッチP/2の2倍(2倍以上でも可)に設定して構成することも可能である。この際の組織図を、図8(b)に示す。この場合、タオル地1は、図8(c)に示すように、地織り5に対する形成ピッチの異なる、大きな大ループ9からなる長パイルと、小ループ7からなる短パイルが図中左右方向に交互に配列される形となる。この場合、大ループ9と小ループ7が地織り5部分で接触する部分が大ループ9の形成ピッチP毎(又は、大ループ9と小ループ7の形成ピッチの最小公倍数毎)となるので、それだけ大ループ9と小ループ7が接触する面積を少なくすることが出来、洗濯に伴うゴワつき感や硬さの発生を緩和する効果をより多く期待することが出来る。
【0029】
なお、本発明は、タオル地1の互いに隣接するループを、あるループに隣接するループの内少なくとも一つのループの形成高さL1,L2を、当該あるループと該あるループに隣接するループの間で異なる形に設定する限り、ループの高さは2種類以上何種類でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、タオルを製造するためのタオル地として利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明によるタオル地の1実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図。
【図2】図2は、図1のタオル地のパイル部分の斜視図。
【図3】図3は、本発明によるタオル地の別の実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図。
【図4】図4は、本発明によるタオル地の更に別の実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図。
【図5】図5は、図3及び図4のタオル地を組み合わせて作ったタオルの一例を示す図で、(a)はタオルの表面、(b)はタオルの裏面、(c)及び(d)は、それぞれタオル面の一部分を示す図。
【図6】図6は、本発明によるタオル地を用いて作成したタオルの1例を示す図で、(a)は表面、(b)は裏面を示す図。
【図7】図7は、本発明によるタオル地の更に別の実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図、(c)はタオル地の斜視図。
【図8】図8は、本発明によるタオル地の更に別の実施例を示すものであり、(a)はタオル地の断面図、(b)はその組織図、(c)はタオル地の斜視図。
【図9】図9は、洗濯回数による、本発明のタオル地と従来のタオル地を比較したグラフ。
【符号の説明】
【0032】
1……タオル地
2……横糸
3……縦糸
5……地織り
7,9……ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦糸及び横糸からなる地織りを有し、
該地織りから、前記縦糸又は横糸を用いてタオル地の表面又は裏面に複数のループを互いに隣接する形で形成したタオル地において、
あるループと当該あるループに隣接するループにおいて、前記あるループに隣接する少なくとも一つのループの形成高さを、当該あるループと異なる形に設定して構成した、タオル地。
【請求項2】
前記ループは、形成高さの高い大ループと、形成高さの低い小ループの2種類からなり、
小ループの形成高さは、大ループの形成高さの約1/2である、請求項1記載のタオル地。
【請求項3】
前記ループは、形成高さの高い大ループと、形成高さの低い小ループの2種類からなり、
前記大ループの前記地織りに対する形成ピッチと、前記小ループの前記地織りに対する形成ピッチは異なることを特徴とする、請求項1記載のタオル地。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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