説明

タキサンおよびヘッジホッグ阻害剤のナノ粒子組成物を使用する併用療法

本発明は、個体に、ナノ粒子組成物の状態の有効量のタキサンと、ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害するヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、増殖性疾患(癌など)を処置する併用療法を提供する。具体的な一実施携帯において、本発明は、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、増殖性疾患(癌など)を処置する併用療法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、米国特許法§119(e)の下、2009年8月25日に出願された米国仮出願第61/236,813号(この完全な内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、タキサン、詳しくはタキサンのナノ粒子組成物と、増殖性疾患の処置のための別の治療用薬剤とを投与することを含む、増殖性疾患の処置のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景 2005年には、米国では新たに約140万例の癌が診断され、550,000人を超える人がこの疾患で死亡する。American Cancer Society,Inc.Cancer Facts and Figures 2005.Atlanta:American Cancer Society,Inc.,2005。癌は、世界規模で主要な死亡原因である。本国では、癌は主要な死亡原因の第2位である。癌と診断された人すべての約64パーセントは、診断の5年後も生存している。癌の最も一般的な型(American Cancer Society:Cancer Facts and Figures 2010.Atlanta,Ga:American Cancer Society,2010の報告による、2010年には年間40,000例以上の推定発生数により規定)は、膀胱癌、肺癌、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、非ホジキンリンパ腫、子宮内膜癌、膵臓癌、腎臓(腎細胞)癌、前立腺癌、白血病、および甲状腺癌である。化学療法の分野における相当な進歩にもかかわらず、最も広くみられる癌の形態の多くは、依然として化学療法的介入に抵抗性である。
【0004】
すべての癌のうち、膵臓癌は、米国では主要な死亡原因の第4位にランキングされている。2009年だけで、米国において約42,470人が膵臓癌と診断されるであろうと推定された。この癌は、通常、進行した段階で診断されるため、生存率は、他の型の癌と比べて不良である。膵臓癌と診断された人で、診断の5年後もなお生存しているのは5パーセント未満である。該疾患の完全寛解は極めて稀である。膵臓癌の治療薬の開発が取り組まれているにもかかわらず、全膵臓癌の発生率および死亡率は、過去30年間で、ほとんど変化していない。
【0005】
タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセルなど)は、多種多様な癌において、有意な抗新生物効果および抗癌効果を有することが示されている。例えば、パクリタキセル(paclitxel)は、微小管分解という通常の機能を妨げることにより作用する。パクリタキセルは、微小管の基礎単位であるチューブリンのβサブユニットに結合し、微小管構造の過剰安定化を引き起こす。得られたパクリタキセル/微小管構造は分解不可能であり、それにより、有糸分裂が停止され、血管新生が抑止される。しかしながら、タキサンは水溶性が不充分なため、有効なタキサン系の癌治療薬の開発には相当な難題が提示される。さらに、併用療法の状況における種々のタキサン製剤と他の治療用薬剤との相互作用には試験する余地がある。
【0006】
アルブミン系ナノ粒子組成物が、タキサンなどの実質的に水不溶性の薬物の送達用の薬物送達系として開発されている。例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3、および特許文献4、また、特許文献5および特許文献6も参照のこと。アルブミン系ナノ粒子技術は、タンパク質アルブミンが実質的に水不溶性の薬物を疾患部位に輸送および送達するという天然の性質を利用するものである。このようなナノ粒子は、身体自身の輸送プロセスに容易に組み込まれ、アルブミンへの腫瘍の誘引を利用することができ、ナノ粒子内に封入された高濃度の活性薬物が標的部位に送達されることが可能になる。また、アルブミン系ナノ粒子技術により、投与プロセスでの毒性化学薬品(溶媒など)の必要性が回避されることにより、薬物の可溶性の改善の可能性がもたらされ、したがって、溶媒関連副作用の解消により安全性が改善される可能性がある。
【0007】
膵臓癌などの癌に対するより有効な処置が必要とされている。
【0008】
本明細書において言及するすべての刊行物、特許、特許出願および公開特許出願の開示は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,916,596号明細書
【特許文献2】米国特許第6,506,405号明細書
【特許文献3】米国特許第6,749,868号明細書
【特許文献4】米国特許第6,537,579号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0004002号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0082838号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の簡単な概要
本発明は、癌などの増殖性疾患の処置のための方法を提供する。本発明は、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、増殖性疾患(癌など)を処置する併用療法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。
【0011】
本明細書に記載の方法は、癌、例えば、以下の癌:基底細胞癌、髄芽腫、グリア芽腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄球性白血病(CML)、急性骨髄球性白血病、膵臓癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、食道癌、胃癌(stomach cancer)、胆道(billary)癌、前立腺癌、肝臓癌、肝細胞癌、胃腸の癌、胃癌(gastric cancer)、ならびに卵巣および膀胱の癌のいずれか1つなどを有する個体に特に有用である。一部の実施形態において、癌は、膵管腺癌腫、結腸腺癌腫および卵巣嚢胞腺癌腫からなる群より選択される。
【0012】
一部の実施形態において、癌は膵臓癌、例えば、膵臓腺癌腫、膵臓腺扁平上皮癌腫、膵臓扁平上皮細胞癌腫および膵臓巨細胞癌腫などである。したがって、例えば、一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、膵臓癌は膵外分泌癌である。一部の実施形態では、膵臓癌は膵内分泌癌(島細胞癌腫など)である。一部の実施形態では、膵臓癌は転移性の進行膵臓癌である。
【0013】
本明細書に記載の方法は、一般的に、ヘッジホッグ阻害剤の投与を必要とする。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はスムーズンド(Smoothened)を直接標的化するものである。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、イソキノリンまたはキナゾリン化合物(一般式(I)、(Ia)、(Ib)または(Ic)のいずれかによる化合物など)である。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は表1に示す化合物から選択される。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は表4に示す化合物から選択される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はテトラジン化合物(一般式(II)、(IIa)、(IIb)または(IIc)のいずれかによる化合物など)である。一部の実施形態では、該阻害剤は表2に示す化合物から選択される。一部の実施形態では、該阻害剤は表5に示す化合物から選択される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は表3に示す化合物から選択される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はジェルビン、GANT61、プルモルファミン、SAG、SANT−2、トマチジン、ゼルンボン、またはその誘導体である。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はGDC−0449、XL139、IPI926、IPI609(IPI269609)またはLDE225である。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はシクロパミン(cyclopamine)またはその誘導体である。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、ナノ粒子(ヘッジホッグ阻害剤と担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子など)の形態で提供される。
【0014】
タキサンのナノ粒子を含む組成物(「ナノ粒子タキサン組成物」とも称する)とヘッジホッグ阻害剤は、同じ組成物または別々の組成物のいずれかで同時投与され得る。あるいはまた、ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤は逐次投与される、すなわち、ナノ粒子タキサン組成物は、ヘッジホッグ阻害剤の投与の前または後のいずれかに投与される。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物はヘッジホッグ阻害剤の投与前に投与される。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物はヘッジホッグ阻害剤の投与後に投与される。
【0015】
一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤の投与は並行的である、すなわち、ナノ粒子タキサン組成物の投与期間とヘッジホッグ阻害剤の投与期間が互いに重複する。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物は、ヘッジホッグ阻害剤の投与前に少なくとも1サイクル(例えば、少なくとも2、3または4サイクルのいずれかで)投与される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は少なくと1、2、3または4週間のいずれかで投与される。
【0016】
一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤の投与は非並行的である。例えば、一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物の投与は、ヘッジホッグ阻害剤を投与する前に終了させる。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤の投与は、ナノ粒子タキサン組成物を投与する前に終了させる。
【0017】
一部の実施形態において、該方法は、さらに、有効量の代謝拮抗薬(ゲムシタビンなど)を投与することを含む。したがって、例えば、一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤;およびc)有効量の代謝拮抗薬(ゲムシタビンなど)を投与することを含む、増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。
【0018】
一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤;およびc)有効量の代謝拮抗薬(ゲムシタビンなど)を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。
【0019】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のイソキノリンまたはキナゾリン化合物(一般式(I)、(Ia)、(Ib)または(Ic)のいずれかの化合物、あるいは表1に示す化合物、あるいは表4に示す化合物など)、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のテトラジン化合物(一般式(II)、(IIa)、(IIb)もしくは(IIc)のいずれかの化合物、または表2に示す化合物、または表5に示す化合物など)、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量の表3に示す化合物、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)ジェルビン、GANT61、プルモルファミン、SAG、SANT−2、トマチジン、ゼルンボン、およびその誘導体から選択される有効量の化合物、ならびにc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)GDC−0449、XL139、IPI926、IPI609(IPI269609)およびLDE225から選択される有効量の化合物、ならびにc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のシクロパミンまたはその誘導体(IPI926など)、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。
【0020】
本明細書に記載の方法は、一般的に、タキサンを含むナノ粒子を含む組成物と担体タンパク質の投与を含む。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物は、パクリタキセルを含むナノ粒子とアルブミンを含む。一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物中のナノ粒子は、約200nm以下、例えば、約190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmなどのいずれか1つの長さ以下の平均直径を有する。一部の実施形態では、該組成物中のすべてのナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合)が、約200nm以下、例えば、約190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmなどのいずれか1つの長さ以下の直径を有する。一部の実施形態では、該組成物中のすべてのナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合)が、約20〜約200nm、例えば、約30〜約180nm、約40〜約150、約50〜約120および約60〜約100nmなどのいずれか1つの範囲内に含まれる。
【0021】
一部の実施形態において、担体タンパク質は、ジスルフィド結合を形成し得るスルフヒドリル基を有する。一部の実施形態において、該組成物のナノ粒子部分中の担体タンパク質の少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%などのいずれか1つの割合)は架橋されている(例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって架橋されている)。
【0022】
一部の実施形態において、該ナノ粒子は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)などの担体タンパク質でコーティングされたタキサン(パクリタキセルなど)を含むものである。一部の実施形態において、該組成物は、ナノ粒子形態と非ナノ粒子形態の両方のタキサンを含むものであり、ここで、該組成物中の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合のタキサンはナノ粒子の形態である。一部の実施形態において、該ナノ粒子中のタキサンは、重量基準で、該ナノ粒子の約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合より多くを構成している。一部の実施形態において、該ナノ粒子は非ポリマーマトリックスを有する。一部の実施形態において、該ナノ粒子は、実質的にポリマー物質(ポリマーマトリックスなど)を含有していないタキサンコアを含む。
【0023】
一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物は、実質的に、界面活性剤(Cremophor(登録商標)、Tween 80、またはタキサンの投与に使用される他の有機溶媒など)を含有していない(例えば、無含有)。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物に含まれる有機溶媒は約20%、15%、10%、7.5%、5%、2.5%または1%のいずれか1つの割合未満である。一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物中の担体タンパク質(アルブミンなど)とタキサンの重量比は、約18:1またはそれより小さい(約15:1またはそれより小さい(例えば、約10:1またはそれより小さい)など)。一部の実施形態において、該組成物中の担体タンパク質(アルブミンなど)とタキサンの重量比は、約1:1〜約18:1、約1:1〜9:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約13:1、約4:1〜約12:1、約5:1〜約10:1のいずれか1つの範囲に含まれる。一部の実施形態において、該組成物のナノ粒子部分中の担体タンパク質とタキサンの重量比は、大体、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15のいずれか1つ、またはそれより小さい比率である。
【0024】
一部の実施形態において、該粒子組成物は上記の特徴の1つ以上を含むものである。
【0025】
一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物はAbraxane(登録商標)である。また、他のタキサン(ドセタキセルおよびオルタタキセルなど)を含むナノ粒子タキサン組成物も上記の特徴の1つ以上を含むものであり得る。
【0026】
また、本明細書に記載の方法に有用なキットおよび組成物も提供する。
【0027】
本発明のこれらおよび他の態様および利点は、以下の詳細説明および添付の特許請求の範囲から明らかとなろう。また、本明細書に記載の種々の実施形態の性質の1つ、いくつか、または全部を組み合わせると本発明の他の実施形態が形成され得ることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、L3.6plおよびASPC−1の膵臓癌異種移植片モデルにおけるマウスGli1 mRNA発現に対するヘッジホッグ阻害剤IPI−926の効果を示す。
【図2A】図2Aは、L3.6pl膵臓異種移植片モデルにおいてビヒクル単独(N=8)、IPI−926(N=8)、Abraxane(登録商標)(「nab−パクリタキセル」としても知られている)(N=8)およびAbraxane(登録商標)+IPI−926(N=8)で処置した場合の腫瘍体積(mm)を示す。
【図2B】図2Bは、ビヒクル単独、IPI−926、Abraxane(登録商標)およびAbraxane(登録商標)+IPI−926での処置の試験が続行されたL3.6pl膵臓異種移植片を有するマウスの%を示す。腫瘍が1000mmに達したら、マウスを試験から外した。
【図3】図3は、IPI−926およびnab−パクリタキセル処置腫瘍における高パクリタキセルレベルおよび後期G2/M停止の増大を示す。図3Aは、ビヒクル、Abraxane(登録商標)単独、およびIPI−926とAbraxane(登録商標)の併用で処置したL3.6pl腫瘍におけるパクリタキセルレベルを示す。図3Bは、ビヒクル、Abraxane(登録商標)単独、およびIPI−926とAbraxane(登録商標)の併用で処置したリン酸化ヒストンH3(「PH3」)陽性腫瘍細胞の%を示す。図3Cは、ビヒクル、Abraxane(登録商標)単独、およびIPI−926とAbraxane(登録商標)の併用で処置した腫瘍細胞のPH3免疫染色を示す(200倍)。
【図4】図4は、ASPC−1膵臓腫瘍モデルにおいてビヒクル単独(N=8)、IPI−926(N=8)、Abraxane(登録商標)(N=8)およびAbraxane(登録商標)+IPI−926(N=8)で処置した場合の腫瘍体積(mm)を示す。
【図5−1】図5Aおよび5Bは、DMSO、ABI1914(75mg/kg,qdx12)、ABI2012(75mg/kg,qdx12)、ABI2088(75mg/kg,qdx12)およびABI2099(75mg/kg,qdx12)で処置した場合の腫瘍体積(mm)(図5A)および体重変化%(図5B)を示す。
【図5−2】図5Cおよび5Dは、HT29異種移植片モデルにおいて、DMSO、ABI1914(100mg/kg,qdx12)、ABI2012(100mg/kg,qdx12)、ABI2088(100mg/kg,qdx12)およびABI2099(100mg/kg,qdx12)で処置した場合の腫瘍体積(mm)(図5C)および体重変化%(図5D)を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、HT29異種移植片モデルにおいて、生理食塩水(q4dx3)、Abraxane(登録商標)(10mg/kg,q4dx3)、ABI1914(75mg/kg,qdx12)+Abraxane(登録商標)(10mg/kg,q4dx3)、ABI2012(75mg/kg,qdx12)+Abraxane(登録商標)(10mg/kg,q4dx3)、ABI2088(75mg/kg,qdx12)+Abraxane(登録商標)(10mg/kg,q4dx3)およびABI2099(75mg/kg,qdx12)+Abraxane(登録商標)(10mg/kg,q4dx3)で処置した場合の腫瘍体積(mm)(図6A)および体重変化%(図6B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を、ヘッジホッグ阻害剤、および任意選択で代謝拮抗薬(ゲムシタビンなど)と併用して投与することを含む併用療法を提供する。本明細書に記載の方法は、一般的に、増殖性疾患、特に癌の処置に有用である。
【0030】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、該態様および実施形態「からなる」および/または「から本質的になる」を包含していることは理解されよう。
【0031】
定義
本明細書で用いる場合、「処置」は、有益な臨床結果または所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の解釈上、有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、限定されないが:1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の拡延(例えば、転移、例えば、肺またはリンパ節への転移)の予防または遅延、疾患の再発の予防または遅延、疾患進行の遅延または遅滞、疾患状態の改善、および寛解(一部または完全のいずれであれ)のいずれか1つ以上が挙げられる。また、「処置」には、増殖性疾患の病的帰結の低減も包含される。本発明の方法では、このような処置態様のいずれか1つ以上が想定される。
【0032】
本明細書で用いる場合、「増殖性疾患」は、腫瘍疾患(良性もしくは癌性を含む)および/または任意の転移を包含する。増殖性疾患としては、過剰増殖性の病状、例えば、過形成、線維症(特に肺のものだが、腎臓線維症などの他の型の線維症も)、血管新生、乾癬、アテローム性動脈硬化および血管の平滑筋増殖(血管形成術後の狭窄もしくは再狭窄など)が挙げられ得る。一部の実施形態において、増殖性疾患は癌である。一部の実施形態では、増殖性疾患は非癌性疾患である。一部の実施形態では、増殖性疾患は良性または悪性の腫瘍である。
【0033】
用語「有効量」は、本明細書で用いる場合、特定の障害、病状または疾患が処置される(例えば、その症状の1つ以上が改善、緩和、低減および/または遅延される)のに充分な化合物または組成物の量をいう。癌または他の望まない細胞増殖に関して、有効量は、腫瘍の退縮および/または腫瘍の増殖速度の減少(腫瘍増殖の抑制など)あるいは他の望まない細胞増殖の抑制もしくは遅延が引き起こされるのに充分な量を含む。一部の実施形態では、有効量は進展の遅延に充分な量である。一部の実施形態では、有効量は、再発の予防または遅延に充分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与されてもよい。
【0034】
用語「個体」は、ヒトを含む哺乳動物をいう。個体としては、限定されないが、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類または霊長類が挙げられる。
【0035】
「補助療法的場面」は、個体が増殖性疾患(特に癌)の病歴を有したことがあり、一般的に(必ずしもそうとは限らないが)治療に対して応答性になっている臨床場面をいい、該場面としては、限定されないが、外科処置(外科的切除など)、放射線療法および化学療法が挙げられる。しかしながら、このような個体は、増殖性疾患(癌など)の病歴のため、疾患の進展のリスクがあるとみなす。「補助療法的場面」における処置または投与は、後続的な処置様式をいう。リスクの度合(すなわち、補助療法的場面の個体が「高いリスク」とみなされる場合、または「低リスク」とみなされる場合)は、いくつかの要素、たいていは最初に処置されたときの疾患の程度に依存する。
【0036】
「新補助療法的場面」は、該方法が一次/根治療法の前に行なわれる臨床場面をいう。
【0037】
「ヘッジホッグ阻害剤」は、本明細書で用いる場合、例えば、ヘッジホッグシグナル伝達経路の1種類以上の成分の活性に対して直接または間接的のいずれかで影響を及ぼすことによりヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する薬剤をいう。
【0038】
本明細書で用いる場合、「ヘッジホッグ」は、一般的に、ショウジョウバエのヘッジホッグタンパク質の任意の哺乳動物ホモログをいい、少なくともソニック・ヘッジホッグ(Shh)、デザート・ヘッジホッグ(Dhh)およびインディアン・ヘッジホッグ(Ihh)が挙げられる。
【0039】
用語「ヘッジホッグシグナル伝達経路」は、本明細書で用いる場合、ヘッジホッグおよびその受容体(またはその下流)によって媒介されるシグナル伝達カスケードであって、遺伝子発現の変化およびヘッジホッグ活性に典型的な他の表現型の変化をもたらすものをいう。
【0040】
用語「ヘッジホッグシグナル伝達経路の成分」または「ヘッジホッグシグナル伝達成分」は、互換的に使用し、ヘッジホッグシグナル伝達経路に関与する分子をいう。ヘッジホッグシグナル伝達成分は、多くの場合、細胞または組織内でヘッジホッグシグナルの伝達に影響を及ぼし、それにより、下流の遺伝子発現レベルおよび/またはヘッジホッグ経路の活性化と関連している他の表現型の変化に影響している。
【0041】
用語「タンパク質」は、任意の長さの(例えば、完全長または断片)のポリペプチドまたはアミノ酸のポリマーをいい、これは、線状であっても分枝鎖であってもよい、修飾アミノ酸を含むものであってもよい、および/または非アミノ酸が割り込んでいてもよい。また、該用語は、天然に修飾された、または介入;例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾によって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。また、この用語には、例えば、アミノ酸の1種類以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸など)、ならびに当該技術分野で知られた他の修飾を含むポリペプチドも含まれる。
【0042】
ナノ粒子組成物が個体に投与されたとき、該組成物中のCremophorまたは界面活性剤の量が個体において1つ以上の副作用を引き起こすのに充分でない場合、該組成物は実質的にCremophorを含有していない」または「実質的に界面活性剤を含有していない」。
【0043】
「〜と併用して」は、本明細書で用いる場合、ある処置モダリティの施与に加えて別の処置モダリティが行なわれること、例えば、本明細書に記載のナノ粒子組成物の投与に加えて、同じ個体に他の薬剤の投与が行なわれることをいう。したがって、「〜と併用して」は、ある処置モダリティの施与が、個体に対する他方の処置モダリティの送達前、送達時または送達後に行なわれることをいう。
【0044】
本明細書における「約」の値またはパラメータに対する言及は、該値またはパラメータそのものに関する実施形態を包含(および記載)するものである。例えば、「約X」に関する記載は「X」の記載を含む。
【0045】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「or」および「the」は、文脈において、そうでないと明白に記載されていない限り、複数に対する言及を含む。本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、該態様および実施形態「からなる」および/または「から本質的になる」を包含していることは理解されよう。
【0046】
本発明の方法
本発明は、個体に:a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態において、タキサンはパクリタキセルである(例えば、一部の実施形態において、ナノ粒子組成物はAbraxane(登録商標)である)。一部の実施形態において、増殖性疾患は癌である。一部の実施形態において、灌流が不充分な腫瘍および/または血管新生が不充分な腫瘍の処置方法を提供する。一部の実施形態において、癌は膵臓癌である。
【0047】
本発明は、癌などの増殖性疾患の処置のための方法を提供する。本発明は、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、増殖性疾患(癌など)を処置する併用療法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。
【0048】
一部の実施形態において、個体に、a)担体タンパク質(アルブミンなど)でコーティングされたタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、個体に、a)アルブミンでコーティングされたパクリタキセルを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態において、該ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有する。一部の実施形態では、該組成物中のすべてのナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%のいずれか1つ、またはそれ以上)が、約200nm以下の直径を有する。
【0049】
本明細書に記載の方法は、癌、例えば、以下の癌:膵臓癌、結腸癌、基底細胞癌、髄芽腫、グリア芽腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄球性白血病(CML)、急性骨髄球性白血病、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、食道癌、胃癌、胆道癌、前立腺癌、肝臓癌、肝細胞癌、胃腸の癌、胃癌、ならびに卵巣および膀胱の癌のいずれか1つなどを有する個体に特に有用である。一部の実施形態において、癌は、膵管腺癌腫、結腸腺癌腫および卵巣嚢胞腺癌腫からなる群より選択される。一部の実施形態において、癌は、髄芽腫、横紋筋肉腫、黒色腫、基底細胞癌、乳癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌、結腸癌および膵臓癌からなる群より選択される。一部の実施形態において、癌は膵臓癌である。一部の実施形態において、癌は結腸癌である。一部の実施形態において、癌は、灌流が不充分な腫瘍および/または血管新生が不充分な腫瘍である。
【0050】
一部の実施形態において、癌は膵臓癌、例えば、膵臓腺癌腫、膵臓腺扁平上皮癌腫、膵臓扁平上皮細胞癌腫または膵臓巨細胞癌腫などである。したがって、例えば、一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、膵臓癌は膵外分泌癌である。一部の実施形態では、膵臓癌は膵内分泌癌(島細胞癌腫など)である。一部の実施形態では、膵臓癌は転移性の進行膵臓癌である。
【0051】
一部の実施形態において、個体に、a)担体タンパク質(アルブミンなど)でコーティングされたタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンでコーティングされたパクリタキセルを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、該ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有する。一部の実施形態では、該組成物中のすべてのナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%のいずれか1つ、またはそれ以上)が、約200nm以下の直径を有する。
【0052】
一部の実施形態において、癌は結腸癌、例えば、結腸腺癌腫、結腸黒色腫、結腸リンパ腫または結腸カルチノイドなどである。一部の実施形態において、結腸癌は病期I、病期II、病期IIIまたは病期IVである。一部の実施形態において、結腸癌は局所進行型または転移性である。したがって、例えば、一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、結腸癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、結腸癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、結腸癌は結腸腺癌腫である。一部の実施形態において、結腸癌は転移性の進行結腸癌である。
【0053】
一部の実施形態において、個体に、a)担体タンパク質(アルブミンなど)でコーティングされたタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、結腸癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、個体に、a)アルブミンでコーティングされたパクリタキセルを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、結腸癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、該ナノ粒子は約200nm以下の平均直径を有する。一部の実施形態では、該組成物中のすべてのナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%のいずれか1つ、またはそれ以上)が、約200nm以下の直径を有する。
【0054】
一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のイソキノリンまたはキナゾリン化合物(一般式(I)、(Ia)、(Ib)または(Ic)のいずれかによる化合物など)を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がテトラジン化合物(一般式(II)、(IIa)、(IIb)または(IIc)のいずれかによる化合物など)である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、ならびにb)表1および/または表4に示す化合物から選択される有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、ならびにb)表2および/または表5に示す化合物から選択される有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)表3に示す化合物から選択される有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。
【0055】
一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がシクロパミンまたはその誘導体(IPI926など)である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がピリジンまたはその誘導体(GDC−0449もしくはNVP−LDE225など)である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がジェルビン、GANT61、プルモルファミン、SAG、SANT−2、トマチジン、ゼルンボンまたはその誘導体である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がGDC−0449、XL139、IPI926、IPI609(IPI269609)またはLDE225である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がGDC−0449、IPI926、NVP−LDE225またはBMS−833923/XL139である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のIPI926を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。
【0056】
一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C4を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C5を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C6を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C7を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C4を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C5を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C6を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C7を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2012を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1914を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2088を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2099を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、ナノ粒子(ヘッジホッグ阻害剤と担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子など)の形態で提供される。
【0057】
一部の実施形態において、本発明は、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のイソキノリンまたはキナゾリン化合物(一般式(I)、(Ia)、(Ib)または(Ic)のいずれかによる化合物など)を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がテトラジン化合物(一般式(II)、(IIa)、(IIb)または(IIc)のいずれかによる化合物など)である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、ならびにb)表1および/または表4に示す化合物から選択される有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、ならびにb)表2および/または表5に示す化合物から選択される有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)表3に示す化合物から選択される有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。
【0058】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がシクロパミンまたはその誘導体(IPI926など)である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がピリジンまたはその誘導体(GDC−0449もしくはNVP−LDE225など)である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がジェルビン、GANT61、プルモルファミン、SAG、SANT−2、トマチジン、ゼルンボンまたはその誘導体である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がGDC−0449、XL139、IPI926、IPI609(IPI269609)またはLDE225である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該ヘッジホッグ阻害剤がGDC−0449、IPI926、NVP−LDE225またはBMS−833923/XL139である、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のIPI926を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。
【0059】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C4を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C5を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C6を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C7を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C4を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C5を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C6を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C7を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2012を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1914を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2088を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2099を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、ナノ粒子(ヘッジホッグ阻害剤と担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子など)の形態で提供される。
【0060】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のイソキノリンまたはキナゾリン化合物(一般式(I)、(Ia)、(Ib)または(Ic)のいずれかの化合物、あるいは表1に示す化合物、あるいは表4に示す化合物など)を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のテトラジン化合物(一般式(II)、(IIa)、(IIb)もしくは(IIc)のいずれかの化合物、または表2に示す化合物、または表5に示す化合物など)を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量の表3に示す化合物を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、ならびにb)ジェルビン、GANT61、プルモルファミン、SAG、SANT−2、トマチジン、ゼルンボン、およびその誘導体から選択される有効量の化合物を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)GDC−0449、XL139、IPI926、IPI609(IPI269609)およびLDE225から選択される有効量の化合物を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、ならびにb)GDC−0449、IPI926、NVP−LDE225、およびBMS−833923/XL139から選択される有効量の化合物を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のシクロパミンまたはその誘導体(IPI926など)を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のIPI926を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。
【0061】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C4を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C5を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C6を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1C7を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C4を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C5を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C6を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2C7を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2012を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI1914を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2088を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のABI2099を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、ナノ粒子(ヘッジホッグ阻害剤と担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子など)の形態で提供される。
【0062】
タキサンのナノ粒子を含む組成物(「ナノ粒子タキサン組成物」とも称する)とヘッジホッグ阻害剤は、同じ組成物または別々の組成物のいずれかで同時投与され得る。あるいはまた、ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤は逐次投与される、すなわち、ナノ粒子タキサン組成物は、ヘッジホッグ阻害剤の投与の前または後のいずれかに投与される。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物はヘッジホッグ阻害剤の投与前に投与される。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物はヘッジホッグ阻害剤の投与後に投与される。
【0063】
一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤の投与は並行的である、すなわち、ナノ粒子タキサン組成物の投与期間とヘッジホッグ阻害剤の投与期間が互いに重複する。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物は、ヘッジホッグ阻害剤の投与前に少なくとも1サイクル(例えば、少なくとも2、3または4サイクルのいずれかで)投与される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は少なくと1、2、3または4週間のいずれかで投与される。
【0064】
一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤の投与は非並行的である。例えば、一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物の投与は、ヘッジホッグ阻害剤を投与する前に終了させる。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤の投与は、ナノ粒子タキサン組成物を投与する前に終了させる。
【0065】
一部の実施形態において、該方法は、さらに、有効量の代謝拮抗薬(ゲムシタビンなど)を投与することを含む。したがって、例えば、一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤;およびc)有効量の代謝拮抗薬(ゲムシタビンなど)を投与することを含む、増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。
【0066】
一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤;およびc)有効量の代謝拮抗薬(ゲムシタビンなど)を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。
【0067】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のイソキノリンまたはキナゾリン化合物(一般式(I)、(Ia)、(Ib)または(Ic)のいずれかの化合物、あるいは表1に示す化合物、あるいは表4に示す化合物など)、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のテトラジン化合物(一般式(II)、(IIa)、(IIb)もしくは(IIc)のいずれかの化合物、または表2に示す化合物、または表5に示す化合物など)、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量の表3に示す化合物、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。
【0068】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)ジェルビン、GANT61、プルモルファミン、SAG、SANT−2、トマチジン、ゼルンボン、およびその誘導体から選択される有効量の化合物、ならびにc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)GDC−0449、XL139、IPI926、IPI609(IPI269609)およびLDE225から選択される有効量の化合物、ならびにc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)GDC−0449、IPI926、NVP−LDE225、およびBMS−833923/XL139から選択される有効量の化合物、ならびにc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のシクロパミンまたはその誘導体(IPI926など)、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のIPI926、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。
【0069】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI1C4、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI1C5、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI1C6、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI1C7、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI2C4、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI2C5、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI2C6、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI2C7、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI2012、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI1914、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI2088、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、b)有効量のABI2099、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、癌(膵臓癌または結腸癌など)の処置方法を提供する。
【0070】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のGDC−0449を投与することを含み、癌が局所進行充実性腫瘍または転移性充実性腫瘍である、癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のGDC−0449を投与することを含み、癌が進行基底細胞癌、転移性直腸結腸癌または進行卵巣癌である、癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のIPI926を投与することを含む、進行型および/または転移性の充実性腫瘍の処置方法を提供する。
【0071】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のNVP−LDE225を投与することを含む、局所進行型または転移性の充実性腫瘍の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のBMS−833923/XL139を投与することを含む、局所進行型または転移性の充実性腫瘍の処置方法を提供する。
【0072】
また、本明細書において、個体に有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む腫瘍へのタキサンの送達を向上させる(あるいはその逆の)方法を提供する。一部の実施形態では、個体にa)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む組成物、およびb)ヘッジホッグ阻害剤を投与することにより、腫瘍へのタキサンの送達を向上させる方法を提供する。一部の実施形態では、個体にa)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む組成物、およびb)ヘッジホッグ阻害剤を投与することにより、腫瘍へのパクリタキセルの送達を向上させる方法を提供する。一部の実施形態において、個体にa)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む組成物、およびb)ヘッジホッグ阻害剤を投与することにより、腫瘍へのヘッジホッグ阻害剤の送達を向上させる方法を提供する。一部の実施形態では、個体にa)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む組成物、およびb)ヘッジホッグ阻害剤を投与することにより、腫瘍へのヘッジホッグ阻害剤の送達を向上させる方法を提供する。一部の実施形態において、個体にa)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む組成物、b)ヘッジホッグ阻害剤およびc)有効量の該化合物を投与することにより、腫瘍への化合物の送達を向上させる方法を提供する。一部の実施形態では、個体にa)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤、およびc)該化合物を投与することにより、腫瘍への化合物の送達を向上させる方法を提供する。
【0073】
一部の実施形態において、腫瘍は広範な間質を伴うものである。一部の実施形態において、腫瘍は膵臓、肺、結腸のもの、または黒色腫である。一部の実施形態では、腫瘍は、灌流が不充分および/または血管新生が不充分なものである。
【0074】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の腫瘍転移を抑止する方法を提供する。一部の実施形態において、タキサンナノ粒子組成物とヘッジホッグ阻害剤の有効量により、腫瘍転移が相乗的に抑止される。一部の実施形態において、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%などのいずれかの割合)転移が抑止される。一部の実施形態において、リンパ節への転移の抑止方法を提供する。一部の実施形態において、肺への転移の抑止方法を提供する。一部の実施形態において、タキサンはパクリタキセルである。
【0075】
一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、癌を有する個体の生存期間(無病生存期間など)を長くする方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、癌を有する個体の生存期間(無病生存期間など)を長くする方法を提供する。一部の実施形態において、生存期間は少なくとも約2、3、4、5、6、12または24ヶ月長くなる。
【0076】
一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、癌を有する個体において疾患の寛解(一部または完全)をもたらす方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、癌を有する個体において疾患の寛解(一部または完全)をもたらす方法を提供する。
【0077】
一部の実施形態において、個体に、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、増殖性疾患(癌など)を有する個体の生活の質を改善する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、増殖性疾患(癌など)を有する個体の生活の質を改善する方法を提供する。一部の実施形態において、生存期間は少なくとも約2、3、4、5、6、12または24ヶ月長くなる。
【0078】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の間質線維化を抑止する方法を提供する。
【0079】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の癌幹細胞の増殖を抑止する方法を提供する。
【0080】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、Gli(Gli−1など)の発現が、未処置の対照個体と比べて(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%のいずれか1つの割合)低減される、個体の癌の処置方法を提供する。
【0081】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該個体が、処置の結果、増大した腫瘍内血管密度を有する、個体の癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該個体が、処置の結果、低減された腫瘍内血管密度を有する、個体の癌の処置方法を提供する。
【0082】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該個体が、処置の結果、増大した血管新生を有する、個体の癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該個体が、処置の結果、低減された血管新生を有する、個体の癌の処置方法を提供する。
【0083】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該個体が、処置の結果、間質の崩壊を有する、個体の癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該個体が、処置の結果、腫瘍において(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%のいずれか1つの割合)増大した微小血管密度を有する、個体の癌の処置方法を提供する。
【0084】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該個体が、有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与されていない個体と比べて腫瘍部位において増大したタキサン濃度を有する、個体の癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含み、該個体が、有効量のタキサンを投与されていない個体と比べて腫瘍部位において増大したヘッジホッグ阻害剤濃度を有する、個体の癌の処置方法を提供する。
【0085】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤、およびc)有効量の第3の抗癌化合物(ゲムシタビンなど)を投与することを含み、該個体が、タキサンと担体タンパク質を含むナノ粒子を含む有効量(around)組成物および有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与されていない個体と比べて、腫瘍部位において増大した抗癌化合物濃度を有する、個体の癌の処置方法を提供する。
【0086】
一部の実施形態において、薬物(ヘッジホッグ阻害剤またはナノ粒子タキサン組成物など)の量は、一部の実施形態において:(i)癌細胞の数が低減される;(ii)腫瘍サイズが低減される;(iii)末梢器官への癌細胞の浸潤が抑止、遅延、ある程度遅滞、好ましくは停止される;(iv)腫瘍転移が抑止(すなわち、ある程度遅滞、好ましくは停止)される;(v)腫瘍増殖が抑止される;(vi)腫瘍の発生および/または再発が予防または遅延される;(vii)癌と関連している1つ以上の症状がある程度軽減される;(viii)全体的な生存期間が長くなる;(ix)無病生存期間が長くなる;(x)疾患の一部(particle)寛解が引き起こされる;および/または(xi)疾患の完全寛解が引き起こされるのに充分な量であり得る。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤の量は:(i)間質線維化が抑止される;(ii)癌幹細胞の増殖が抑止される;(iii)ヘッジホッグオートクリンシグナル伝達が抑止される;(iv)ヘッジホッグ パラクリンシグナル伝達が抑止される;および/または(v)未処置の対照個体と比べてGli(Gli−1など)の発現レベルが(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%のいずれか1つの割合)減少するのに充分な量である。
【0087】
一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤またはナノ粒子タキサン組成物の量は:(i)間質の崩壊を引き起こす、(ii)ゲムシタビンまたは別の抗癌化合物と併用して投与した場合、腫瘍内のゲムシタビンもしくは該別の抗癌化合物の濃度が(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%のいずれか1つの割合)増大する、および/または(iii)腫瘍内の微小血管密度が(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%のいずれか1つの割合)増大するのに有効な量である。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤とナノ粒子タキサン組成物の合わせた量が:(i)間質の崩壊を引き起こす、(ii)ゲムシタビンまたは別の抗癌化合物と併用して投与した場合、腫瘍内のゲムシタビンもしくは該別の抗癌化合物の濃度が(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%のいずれか1つの割合)増大する、および/または(iii)腫瘍内の微小血管密度が(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%のいずれか1つの割合)増大するのに有効な量である。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤とナノ粒子タキサン組成物の量は:(i)間質の崩壊を引き起こす、(ii)ゲムシタビンまたは別の抗癌化合物と併用して投与した場合、腫瘍内のゲムシタビンもしくは該別の抗癌化合物の濃度が(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%のいずれか1つの割合)増大する、および/または(iii)腫瘍内の微小血管密度が(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%のいずれか1つの割合)増大するのに相乗的に有効な量である。
【0088】
一部の実施形態において、タキサンナノ粒子組成物とヘッジホッグ阻害剤の有効量により、腫瘍増殖が相乗的に抑止される。一部の実施形態において、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%などのいずれかの割合)の腫瘍増殖が阻害される。一部の実施形態において、タキサンはパクリタキセルである。一部の実施形態において、該組成物中のナノ粒子中のタキサンは静脈内投与によって投与される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は腹腔内投与によって投与される。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は経口投与によって投与される。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物は静脈内投与によって投与され、ヘッジホッグ阻害剤は経口投与によって投与される。
【0089】
一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンの有効量は約45mg/m〜約350mg/mであり、ヘッジホッグ阻害剤の有効量は、約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンの有効量は約80mg/m〜約150mg/mであり、ヘッジホッグ阻害剤の有効量は、約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は約100mg/mである。一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンの有効量は約170mg/m〜約200mg/mであり、ヘッジホッグ阻害剤の有効量は、約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンの有効量は約200mg/m〜約350mg/mであり、ヘッジホッグ阻害剤の有効量は、約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は約260mg/mである。上記のいずれかの方法の一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤の有効量は、約1〜5mg/kg、5〜10mg/kg、10〜15mg/kg、15〜20mg/kg、20〜30mg/kg、約30〜40mg/kg、約40〜50mg/kg、約50〜60mg/kg、約60〜70mg/kg、約70〜80mg/kg、約80〜100mg/kg、または約100〜120mg/kgである。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンは毎週投与される。一部の実施形態では、該ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンは2週間毎に投与される。一部の実施形態では、該ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンは3週間毎に投与される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、週に1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回投与される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は毎日投与される。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は2、3、4、5、6回/週で投与される。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は2週間毎または3週間で2回投与される。
【0090】
一部の実施形態において、該方法は、さらに、1種類以上のさらなる薬剤の投与を含む。該さらなる薬剤は、ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する本明細書に記載の薬剤などの別の薬剤であり得る。あるいはまた、該さらなる薬剤は化学療法剤である(米国特許出願公開公報番号2006/0263434(その全体が本明細書に組み込まれる)に記載の化学療法剤など)。一部の実施形態において、さらなる薬剤は、デキサメタゾン、ボルテゾミブ、イマチニブ、ソラフェニブ、ゲムシタビン、レナリドマイド、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセルおよびドセタキセルのいずれか1つである。
【0091】
例えば、一部の実施形態において、a)タキサン(パクリタキセルなど)と担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤、およびc)デキサメタゾン、ボルテゾミブ、イマチニブ、ソラフェニブ、ゲムシタビン、レナリドマイド、スニチニブ、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択される有効量のさらなる薬剤を含む、増殖性疾患の処置方法を提供する。
【0092】
一部の実施形態において、a)タキサン(パクリタキセルなど)と担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤、およびc)有効量の代謝拮抗薬を含む、増殖性疾患の処置方法を提供する。一部の実施形態では、a)タキサン(パクリタキセルなど)と担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のヘッジホッグ阻害剤、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、増殖性疾患の処置方法を提供する。
【0093】
一部の実施形態において、ゲムシタビンは、約500〜5000mg/m、例えば、約1000〜2000mg/mの間のいずれかなど(例えば、大体、1000〜1200mg/m、1200〜1400mg/m、1400〜1600mg/m、1600〜1800mg/m、および1800〜2000mg/mなどのいずれか)の用量で投与される。一部の実施形態において、ゲムシタビンは、約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)の用量で投与される。一部の実施形態において、ゲムシタビンは、毎週、隔週、3週間毎、4週間毎、3週間に2回、4週間に3回投与される。
【0094】
一部の実施形態において、a)約100〜約150mg/mのAbraxane(登録商標)を毎週、b)約1000〜約2000mg/mのゲムシタビンを4週間に1回、およびc)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、増殖性疾患を有する患者の処置方法を提供する。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、例えば、約4〜120mg/kg(例えば、4〜40mg/kg、40〜75mg/kg、または75〜100mg/kg)の日用量で経口投与される。ゲムシタビンの投与は、ナノ粒子タキサン組成物の投与と同時であってもよく、ナノ粒子タキサン組成物の投与に逐次的であってもよい。例えば、ゲムシタビンの投与はナノ粒子タキサン組成物の投与の直後または直前であり得る。
【0095】
一部の実施形態において、a)約10〜約200mg/kgのAbraxane(登録商標)を毎週(または約10〜約180mg/kgを4日に1回、約10〜約30mg/kgを毎日、もしくは約30mg/kgを3週間に1回)、およびb)約30〜100mg/kg(例えば、約30〜約50mg/kgまたは約75〜100mg/kg)のヘッジホッグ阻害剤を毎日投与することを含む、増殖性疾患を有する患者の処置方法を提供する。一部の実施形態において、Abraxane(登録商標)は静脈内注射によって投与される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は経口投与される。一部の実施形態において、該方法は、さらに、約80〜約120mg/kgのゲムシタビンを週2回、腹腔内注射によって投与することを含む。ゲムシタビンの投与は、ナノ粒子タキサン組成物の投与と同時であってもよく、ナノ粒子タキサン組成物の投与に逐次的であってもよい。例えば、ゲムシタビンの投与は、ナノ粒子タキサン組成物の投与の投与の直後または直前であり得る。
【0096】
ゲムシタビンの投与は、ヘッジホッグ阻害剤の投与と同時であってもよく、ヘッジホッグ阻害剤の投与に逐次的であってもよい。例えば、ゲムシタビンの投与は、ヘッジホッグ阻害剤の投与の投与の直後または直前であり得る。
【0097】
一部の実施形態において、方法(ゲムシタビンあり、またはなし)は、さらに、エルロチニブの投与を含む。エルロチニブは、約20〜200mg/kg/日(例えば、大体、50mg/kg/日、80mg/kg/日、100mg/kg/日、120mg/kg/日、140mg/kg/日、180mg/kg/日などのいずれか1つ)で投与される(例えば、腹腔内投与により)。
【0098】
一部の実施形態において、本発明は、増殖性疾患(癌など)の処置における使用のための、タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む医薬組成物を提供し、ここで、前記使用は、ヘッジホッグ阻害剤の同時および/または逐次投与を含む。一部の実施形態において、本発明は、増殖性疾患(癌など)の処置における使用のための、ヘッジホッグ阻害剤を含む医薬組成物を提供し、ここで、前記使用は、タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む組成物の同時および/または逐次投与を含む。一部の実施形態において、本発明は、増殖性疾患(癌など)の処置のための同時および/または逐次使用のための、タキサン含有ナノ粒子タキサン組成物およびヘッジホッグ阻害剤を含む組成物を提供する。
【0099】
一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミン(Abraxane(登録商標)など)を含むパクリタキセル含有ナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)ヘッジホッグ阻害剤(IPI926など)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物を投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、個体に、a)パクリタキセルとアルブミン(Abraxane(登録商標)など)を含むパクリタキセル含有ナノ粒子を含む有効量の組成物、b)ヘッジホッグ阻害剤(IPI926など)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびc)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌の処置方法を提供する。
【0100】
一部の実施形態において、個体に:a)タキサンとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)有効量のヘッジホッグ阻害剤を投与することを含む、個体の癌の処置方法を提供する。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はスムーズンドの活性を阻害するものである。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はシクロパミンまたはその誘導体である。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、GDC−0449、XL139、IPI926、IPI609およびLDE225からなる群より選択される。上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、該方法は、さらに、有効量のゲムシタビンを投与することを含む。上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、処置対象の癌は、基底細胞癌、髄芽腫、グリア芽腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄球性白血病(CML)、急性骨髄球性白血病、膵臓癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、食道癌、胃癌、胆道癌、前立腺癌、肝臓癌、肝細胞癌、胃腸の癌、胃癌、ならびに卵巣および膀胱の癌からなる群より選択される。一部の実施形態において、癌は膵臓癌である。一部の実施形態において、癌は基底細胞癌である。
【0101】
上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、タキサンとアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物とヘッジホッグ阻害剤は同時投与される。一部の実施形態において、アルブミンを含むタキサンのナノ粒子を含む組成物とヘッジホッグ阻害剤が逐次投与される。
【0102】
上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、タキサンはパクリタキセルである。一部の実施形態では、タキサンはドセタキセルである。
【0103】
上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、該組成物中のナノ粒子の平均直径は約200nm以下である。上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、ナノ粒子組成物中のアルブミンとタキサンの重量比は約1:1未満〜9:1である。上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、該ナノ粒子組成物は実質的にCremophorを含有していない。上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、個体はヒトである。上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は経口投与される。上記のいずれかの方法による一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はナノ粒子組成物の投与前に投与される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はナノ粒子組成物の投与後に投与される。
【0104】
処置対象の個体の増殖性疾患
本明細書に記載の方法は、増殖性疾患処置に有用であり、一般的に、ナノ粒子タキサン(taxame)組成物とヘッジホッグ阻害剤の組合せを個体に投与することを含む。
【0105】
一部の実施形態において、個体はヒトである。一部の実施形態では、個体は男性である。一部の実施形態では、個体は女性である。一部の実施形態では、個体は、約50歳より上(大体、約55、60、65、70歳のいずれかより上の歳など)である。一部の実施形態では、個体は、以前に糖尿病と診断されたことがある個体である。
【0106】
個体(ヒトなど)は、進行した疾患を有する個体であっても、疾患の程度が低い(例えば、全身腫瘍組織量が少ない)個体であってもよい。一部の実施形態において、個体は、増殖性疾患(癌など)が初期段階である。一部の実施形態では、個体は、増殖性疾患が進行段階(進行癌など)である。一部の実施形態において、個体はHER2陽性である。一部の実施形態では、個体はHER2陰性である。一部の実施形態では、個体はSPARC陽性である。一部の実施形態では、個体はSPARC陰性である。一部の実施形態では、個体は、ヘッジホッグシグナル伝達経路の構成的活性化をもたらす変異を有する個体である(例えば、パッチトまたはスムーズンドに)。一部の実施形態では、個体は、Gliタンパク質(Gli−1など)の発現が増大している個体である。
【0107】
一部の実施形態において、個体は、タキサン単独のナノ粒子組成物および/またはタキサンのナノ粒子組成物とヘッジホッグ阻害剤以外の薬剤の併用での処置に不応性の疾患を有する個体である。一部の実施形態では、個体は、ヘッジホッグ阻害剤単独および/またはヘッジホッグ阻害剤とタキサンのナノ粒子組成物以外の薬剤(タキサンの非ナノ粒子組成物、例えば、Taxol(登録商標)など)の併用での処置に不応性の疾患を有する個体である。一部の実施形態では、個体は、ゲムシタビン単独および/またはゲムシタビンとヘッジホッグ阻害剤もしくはタキサンのナノ粒子組成物以外の薬剤の併用での処置に不応性の疾患を有する個体である。
【0108】
一部の実施形態において、個体は、タキサン単独のナノ粒子組成物および/またはタキサンのナノ粒子組成物とヘッジホッグ阻害剤以外の薬剤の併用での処置に対して応答性でない(または一部応答性である)。一部の実施形態において、個体は、ヘッジホッグ阻害剤単独および/またはヘッジホッグ阻害剤とタキサンのナノ粒子組成物以外の薬剤の併用での処置に対して応答性でない(または一部応答性である)。一部の実施形態において、ゲムシタビンおよび/またはゲムシタビンとヘッジホッグ阻害剤もしくはタキサンのナノ粒子組成物以外の薬剤(タキサンの非ナノ粒子組成物、例えば、Taxol(登録商標)など)の併用での処置に対して応答性でない疾患を有する個体の処置方法を提供する。
【0109】
該方法は補助療法的場面において実施され得る。また、本明細書において提供する方法は、新補助療法的場面において実施されてもよい。一部の実施形態において、個体は、以前に処置を受けたことがある個体である。一部の実施形態では、個体は、以前に処置を受けたことがない個体である。一部の実施形態において、該処置はファーストライン治療である。
【0110】
本明細書に記載の方法は、増殖性(prolifertative)疾患の処置に有用である。一部の実施形態において、細胞増殖および/または細胞遊走の低減方法を提供する。一部の実施形態では、以下のいずれかの疾患:再狭窄、狭窄、線維症、血管新生、乾癬、アテローム性動脈硬化、および平滑筋細胞の増殖の処置方法を提供する。また、本発明は、本明細書に記載のいずれかの増殖性疾患の進展の遅延方法を提供する。
【0111】
一部の実施形態において、原発腫瘍の処置方法を提供する。一部の実施形態では、転移性癌(すなわち、原発腫瘍から転移した癌)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、進行段階(1つまたは複数)の増殖性疾患(癌など)の処置方法(および、より広い態様において増殖性疾患の処置方法)を提供する。
【0112】
一部の実施形態において、疾患は、以下:基底細胞癌、髄芽腫、グリア芽腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄球性白血病(CML)、急性骨髄球性白血病、膵臓癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、食道癌、胃癌、胆道癌、前立腺癌、肝臓癌、肝細胞癌、胃腸の癌、胃癌、ならびに卵巣および膀胱の癌のいずれか1つの癌である。一部の実施形態において、癌は、膵管腺癌腫、結腸腺癌腫および卵巣嚢胞腺癌腫からなる群より選択される。一部の実施形態では、癌は膵管腺癌腫である。一部の実施形態では、癌は、灌流が不充分な腫瘍および/または血管新生が不充分な腫瘍である。
【0113】
一部の実施形態において、癌は膵臓癌、例えば、膵臓腺癌腫、膵臓腺扁平上皮癌腫、膵臓扁平上皮細胞癌腫および膵臓巨細胞癌腫などである。一部の実施形態では、膵臓癌は膵外分泌癌である。一部の実施形態では、膵臓癌は膵内分泌癌(島細胞癌腫など)である。一部の実施形態では、膵臓癌は転移性の進行膵臓癌である。
【0114】
一部の実施形態において、癌は乳癌(これは、HER2陽性であってもHER2陰性であってもよい)、例えば、進行乳癌、病期IVの乳癌、局所進行乳癌、および転移性乳癌などである。
【0115】
一部の実施形態において、癌は肺癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC、例えば、進行NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC、例えば、進行SCLC)、および肺の進行充実性悪性腫瘍などである。
【0116】
一部の実施形態において、癌は、髄芽腫、横紋筋肉腫、黒色腫、基底細胞癌、結腸癌、乳癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌または膵臓癌である。
【0117】
本発明の方法によって処置され得る癌の他の例としては、限定されないが、副腎皮質癌腫、原因不明骨髄様化生、AIDS関連癌(例えば、AIDS関連リンパ腫)、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫(例えば、小脳および大脳)、基底細胞癌、胆管癌(例えば、肝外)、膀胱癌、骨の癌(骨肉腫および悪性線維性組織球腫)、脳腫瘍(例えば、神経膠腫、脳幹神経膠腫、小脳または大脳星状細胞腫(例えば、毛様細胞性星状細胞腫、びまん性星状細胞腫、未分化(悪性)星状細胞腫)、悪性神経膠腫、上衣細胞腫、希乏突起神経膠腫(oligodenglioma)、髄膜腫、頭蓋咽頭腫、血管芽細胞腫、髄芽腫、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、視路および視床下部性神経膠腫、およびグリア芽腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍(例えば、消化管カルチノイド腫瘍)、未知の原発性の中枢神経系のリンパ腫である癌腫、子宮頚癌、結腸癌、直腸結腸癌、慢性骨髄増殖性障害、子宮内膜癌(例えば、子宮癌)、上衣細胞腫、食道癌、家族性ユーイング腫瘍、目の癌(例えば、眼内黒色腫および網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば、頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性トロホブラスト腫瘍、頭頚部癌、肝細胞(肝臓)の癌(例えば、肝癌腫およびヘパトーム(heptoma))、下咽頭癌、島細胞癌腫(内分泌膵)、喉頭癌、喉頭癌、白血病、唇および口腔の癌、口腔癌、肝臓癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌腫、および肺の扁平上皮癌腫)、リンパ系新生物(例えば、リンパ腫)、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、転移性扁平上皮頚部癌、口内癌、多発性内分泌腫瘍症候群、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、鼻腔および副鼻腔の癌、鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、神経内分泌癌、口腔咽頭癌、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣の低悪性度腫瘍)、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、腹膜の癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫(小グリア細胞腫)、肺リンパ管筋腫症、直腸癌、腎臓癌、腎盂および尿管の癌(移行上皮癌)、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌(例えば、非黒色腫(例えば、扁平上皮細胞癌腫)、黒色腫、およびメルケル細胞癌腫)、小腸の癌、扁平上皮細胞癌、精巣癌、喉の癌、胸腺腫および胸腺の癌腫、甲状腺癌、結節硬化症、尿道癌、膣癌、外陰癌、ウィルムス腫瘍、ならびに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、母斑症と関連している異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍と関連しているもの)、ならびにメイグス症候群が挙げられる。
【0118】
一部の実施形態において、癌は充実性腫瘍(進行充実性腫瘍など)である。充実性腫瘍としては、限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫性滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌腫、基底細胞癌、腺癌腫、汗腺癌腫、皮脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭腺癌腫、嚢胞腺癌腫、髄様癌腫、気管支原性癌、腎細胞癌腫(例えば、腺癌腫、明細胞腎細胞癌腫、乳頭腎細胞癌腫、色素嫌性腎細胞癌腫、集合管腎細胞癌腫、腎顆粒細胞癌腫、混合型腎顆粒細胞癌腫、腎臓血管筋脂肪腫、または腎紡錘細胞癌腫など)、ヘパトーム、胆管癌腫、絨毛癌腫、精上皮腫、胎生期癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌腫、小細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、希乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫などの肉腫および癌腫が挙げられる。
【0119】
一部の実施形態において、リンパ系新生物(例えば、リンパ腫)はB細胞新生物である。B細胞新生物の例としては、限定されないが、前駆B細胞新生物(例えば、前駆B−リンパ芽球性白血病/リンパ腫)および末梢B細胞新生物(例えば、B細胞慢性リンパ球性白血病/前リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫(小リンパ球性(SL)NHL)、リンパ形質細胞性リンパ腫/免疫細胞腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心リンパ腫、濾胞性リンパ腫(例えば、細胞学的悪性度:I(小細胞)、II(小細胞と大細胞の混合型)、III(大細胞)および/または亜型:びまん性および主に小細胞型)、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、中悪性度/濾胞性NHL、辺縁層B細胞リンパ腫(例えば、リンパ節外(例えば、MALT−型+/−単球様B細胞)および/または節性(例えば、+/−単球様B細胞))、膵性辺縁層リンパ腫(例えば、+/−絨毛リンパ球)、ヘアリーセル白血病、形質細胞腫/形質細胞骨髄腫(例えば、骨髄腫および多発性骨髄腫)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(例えば、原発性縦隔(胸腺)B細胞リンパ腫)、中悪性度びまん性NHL、バーキットリンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、バーキット様高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小細胞型非分割細胞NHL、巨大腫瘤病変NHL、AIDS関連リンパ腫、ならびにワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症)が挙げられる。
【0120】
一部の実施形態において、リンパ系新生物(例えば、リンパ腫)は、T細胞および/または推定NK細胞新生物である。T細胞および/または推定NK細胞新生物の例としては、限定されないが、前駆T細胞新生物(前駆T−リンパ芽球性リンパ腫/白血病)ならびに末梢T細胞およびNK細胞新生物(例えば、T細胞慢性リンパ球性白血病/前リンパ球性白血病、および大細胞型顆粒リンパ球白血病(LGL)(例えば、T細胞型および/またはNK細胞型)、皮膚T細胞リンパ腫(例えば、菌状息肉腫/セザリー症候群)、原発性T細胞リンパ腫(分類されない)(例えば、細胞学的分類(例えば、中型細胞、中型と大細胞の混合型)、大細胞、リンパ類上皮(lymphoepitheloid)細胞、亜型肝脾γdT細胞リンパ腫、ならびに皮下脂肪織(panniculitic)T細胞リンパ腫)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AILD)、血管中心性リンパ腫、腸T細胞リンパ腫(例えば、+/−腸症関連)、成人T細胞リンパ腫/白血病(ATL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)(例えば、CD30+、T−およびヌル細胞型)、未分化大細胞型リンパ腫、およびホジキン様)が挙げられる。
【0121】
一部の実施形態において、リンパ系新生物(例えば、リンパ腫)はホジキン病である。例えば、ホジキン病は、リンパ球優位型、結節性硬化症、混合型細胞型、リンパ球減少型、および/またはリンパ球豊富型であり得る。
【0122】
一部の実施形態において、癌は白血病である。一部の実施形態において、白血病は慢性白血病である。慢性白血病の例としては、限定されないが、慢性骨髄球性I(顆粒球性)白血病、慢性骨髄球性、および慢性リンパ球性白血病(CLL)が挙げられる。一部の実施形態において、白血病は急性白血病である。急性白血病の例としては、限定されないが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、ならびに急性骨髄球性白血病(例えば、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病)が挙げられる。
【0123】
一部の実施形態において、癌は液性腫瘍または形質細胞腫である。形質細胞腫としては、限定されないが、骨髄腫が挙げられる。骨髄腫としては、限定されないが、髄外性形質細胞腫、孤立性骨髄腫、および多発性骨髄腫が挙げられる。一部の実施形態では、形質細胞腫は多発性骨髄腫である。
【0124】
一部の実施形態において、癌は多発性骨髄腫である。多発性骨髄腫の例としては、限定されないが、IgG多発性骨髄腫、IgA多発性骨髄腫、IgD多発性骨髄腫、IgE多発性骨髄腫、および非分泌性多発性骨髄腫が挙げられる。一部の実施形態において、多発性骨髄腫はIgG多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫はIgA多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、くすぶり型または無痛性型の多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は進行性多発性骨髄腫である。一部の実施形態において、多発性骨髄腫は、限定されないが、ボルテゾミブ、デキサメタゾン(Dex−)、ドキソルビシン(Dox−)、およびメルファラン(LR)などの薬物に抵抗性のものであり得る。
【0125】
ヘッジホッグ阻害剤
本明細書に記載の方法は、ヘッジホッグ阻害剤、すなわち、例えばヘッジホッグシグナル伝達経路の1種類以上の成分の活性に対して直接または間接的のいずれかで影響を及ぼすことによりヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する薬剤の投与を含む。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、ナノ粒子組成物(本明細書に記載のナノ粒子組成物など)中に存在させる。
【0126】
一般的に、ヘッジホッグシグナル伝達は、ヘッジホッグタンパク質と、ヘッジホッグ受容体パッチトおよびその共受容体スムーズンドとの相互作用を介して行なわれる。パッチトには、少なくとも2種類の哺乳動物ホモログPtch−1とPtch−2が存在し、これらはどちらも、ステロール感受性ドメインを含む12回膜貫通タンパク質である。ヘッジホッグとパッチトが結合すると、7回膜貫通G共役型タンパク質であるスムーズンドが活性化され、これにより、Gliファミリーのジンクフィンガー転写因子(Gli−1、Gli−2およびGli−3)による転写の調節がもたらされるシグナル伝達カスケードが誘発される。
【0127】
癌の状況では、ヘッジホッグシグナル伝達経路は、例えば、ヘッジホッグの非存在下でヘッジホッグシグナル伝達の構成的活性化がもたらされるような、スムーズンドの過剰発現/活性化および/またはパッチトにおける機能喪失変異により、ヘッジホッグの非存在下で、下流成分の活性化によって活性化されることがあり得る。
【0128】
一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、ソニック・ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害するものである。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、インディアン・ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害するものである。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、デザート・ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害するものである。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、ソニック・ヘッジホッグシグナル伝達経路、インディアン・ヘッジホッグシグナル伝達経路、およびデザート・ヘッジホッグシグナル伝達経路のうち2つ以上を阻害するものである。
【0129】
各ヘッジホッグシグナル伝達成分は、その生物学的機能および下流の遺伝子の活性化または発現の最終結果に対する効果に応じて、正または負の調節因子のいずれかに分類され得る。正の調節因子は、ヘッジホッグシグナルの伝達にプラスの影響を及ぼす、すなわち、ヘッジホッグが存在する場合の下流の生物学的事象を刺激するヘッジホッグシグナル伝達成分である。負の調節因子は、ヘッジホッグシグナルの伝達にマイナスの影響を及ぼす、すなわち、ヘッジホッグが存在する場合の下流の生物学的事象を阻害するヘッジホッグシグナル伝達成分である。本明細書に記載のヘッジホッグ阻害剤は、ヘッジホッグシグナル伝達経路の正の調節因子を抑制すること、またはヘッジホッグシグナル伝達経路の負の調節因子を活性化もしくは増強することのいずれかによって作用し得るものである。
【0130】
したがって、例えば、ヘッジホッグ阻害剤は、ヘッジホッグシグナル伝達経路を、以下:1)例えば、天然ヘッジホッグリガンド(例えば、Shh、Dhh、Ihh)が受容体に結合するのをブロックすることにより、ヘッジホッグがシグナルを変換する能力をブロックすること;2)ヘッジホッグ受容体(例えば、Ptc−1、Ptc−2、Smoなど)がシグナルをヘッジホッグシグナル伝達経路の下流成分に伝達するのをブロックすること、3)正調節性ヘッジホッグシグナル伝達成分の増強活性もしくは刺激活性をブロックすること、または4)負調節性ヘッジホッグシグナル伝達成分の抑制活性を活性化もしくは増強することのいずれか1つ以上によって阻害するものであり得る。
【0131】
一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、ヘッジホッグとその受容体(Ptc−1またはPtc−2など)との相互作用をブロックするものである。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤はスムーズンドの活性を阻害するものである。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、ヘッジホッグシグナル伝達経路の成分、例えば、パッチト(Ptc−1またはPct−2など)、スムーズンド、Gli(例えば、Gli−1、Gli−2およびGli−3)、Bmi−1、Fused、Fusedの抑制因子、Costal2(Cos2)、HIP1(ヘッジホッグ相互作用タンパク質)、ならびにRab23などの活性に影響を及ぼすものである。
【0132】
一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、スムーズンドの活性化によって誘導されるシグナル伝達事象を阻害するものである。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤はスムーズンドを直接標的化するものである。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、スムーズンドの下流の1種類以上のシグナル伝達成分を阻害するものである。例えば、一部の実施形態において、個体に:a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)スムーズンドの活性を阻害する有効量の薬剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)スムーズンドを直接標的化する有効量の薬剤を投与することを含む、個体の増殖性疾患(癌など)の処置方法を提供する。
【0133】
ヘッジホッグ阻害剤は、PCT特許出願番号PCT/US2010/037986およびPCT/US2010/037717に開示されており、これらの各々の内容は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0134】
本発明のヘッジホッグ阻害剤としては、式(I):
【0135】
【化1】

(式中:
Bは、NまたはCHであり;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、シクロアルキルまたはヘテロシクリルを表し;
Lは、酸素、NR、NRCO、NRSO、NRSO、SONR;NRCONH、NRCSNH、CONR、CSNR、NRCHR、NRPOまたはNRPO(OH)であり;
環Aは、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリールであり;
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイルまたはスルホンアミドを表すか;
またはRは、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アルキル、アルカノイル、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイルおよびスルホンアミドで任意選択的に置換されたアリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり;
およびRは、独立して、水素または任意選択的に置換されたC〜Cアルキル基から選択され;
mは、0〜4である)
のイソキノリン化合物およびキナゾリン化合物、またはその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0136】
一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、式(Ia):
【0137】
【化2】

(式中、L、R、R、R、R、およびmは、式(I)で規定したとおりである)
のイソキノリン化合物、または薬学的に許容され得る塩である。
【0138】
一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、式(Ib):
【0139】
【化3】

(式中、L、R、R、R、R、およびmは、式(I)で規定したとおりである)
のキナゾリン化合物、または薬学的に許容され得る塩である。
【0140】
一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、式(Ic):
【0141】
【化4】

(式中:
Kは、NRC(O)、C(O)NR、NRS(O)、S(O)NR、およびNRC(O)NRから選択され;
は、アリール、ヘテロシクリル、およびヘテロアリールから選択され;
は、H、ハロ、ニトロ、−OR、C〜Cアルキル、C〜Cアルキルスルホニル、およびC〜Cハロアルキルから選択され;
m=0〜4;
、RおよびRは各々、独立して、HおよびC〜Cアルキルから選択され;
Wは、CHおよびNから選択され;
Zは、H、ハロ、ならびにC〜Cアルキル、C〜Cアルキルチオ、−NR、−OR、およびシアノから選択される)
のイソキノリンまたはキナゾリン化合物、またはその薬学的に許容され得る塩である。
【0142】
式(IIc)の一部の実施形態において、
Kは、NRC(O)、C(O)NR、NRS(O)、S(O)NR、およびNRC(O)NRから選択され;
は、フェニルおよびピリジルから選択され;
は、H、ハロ、ニトロ、C〜Cアルキルスルホニル、およびC〜Cアルキルから選択され;
m=0〜4;
、RおよびRは各々、独立して、HおよびC〜Cアルキルから選択され;
Wは、CHおよびNから選択され;
Zは、H、ハロ、およびC〜Cアルキルから選択される。
【0143】
一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、表1に示すイソキノリン化合物およびキナゾリン化合物から選択される。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、表4に示すイソキノリン化合物およびキナゾリン化合物から選択される。表4に、ヘッジホッグ阻害剤である例示的なイソキノリン化合物およびキナゾリン化合物を示す。
【0144】
【表1】

本発明のヘッジホッグ阻害剤としては、式(II):
【0145】
【化5】

(式中:
Lは、NRCO、NRSO、NRCONH、NRCSNHまたはNRCHRであり;
は:
(i)アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ;
(ii)アルキルチオ、スルフィニル、スルホニル、スルファモイル;
(iii)アルキルオキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル;
(iv)水素、C〜Cアルキル、シクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル;
(v)アリール、複素環式、ヘテロアリール;
(vi)C〜Cトリフルオロアルキル、シアノおよび
(vii)式(a):
【0146】
【化6】

(式中:
は、水素、C〜Cアルキル、オキソを表し;
Zは、Rが水素のときCHである;またはZ−RはOである;またはZはNであり、Rは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C10アリールまたはヘテロアリール、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルカノイル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルカノイルオキシ、モノ−およびジ−(C−Cシクロアルキル)アミノC〜Cアルキル、(4〜7員のヘテロシクリル)C〜Cアルキル、C〜Cアルキルスルホニル、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)スルホンアミド、ならびにモノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノカルボニル(これらは各々、独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、−COOHおよびオキソから選択される0〜4個の置換基で置換される)
の基を表す)
の基
から選択され;
環Aは、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリールであり;
は、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカノイル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイルもしくはスルホンアミドであるか;
またはRは、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アルキル、アシル、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイルおよびスルホンアミドで任意選択的に置換されたアリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり;
およびRは、独立して、水素または任意選択的に置換されたCアルキル基から選択され;
mは、0〜4である)
のトリアジン化合物またはその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0147】
一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、式(IIa):
【0148】
【化7】

(式中、A、R、R、R、R、およびmは、式(II)で規定したとおりであり、
Xは、非存在、O、CRまたはNRであり;
は、水素または任意選択的に置換されたC〜Cアルキル基である)
のトリアジン化合物である。
【0149】
一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、式(IIb):
【0150】
【化8】

(式中、A、R、R、Rおよびmは、式(II)で規定したとおりであり、
Yは、非存在またはCRであり;
およびRは、式(II)および(IIa)で規定したとおりである)
のトリアジン化合物である。
【0151】
一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、式(IIc):
【0152】
【化9】

(式中:
Yは、−K−A−Rから選択され;
Kは、NRC(O)およびNRC(O)NRから選択され;
は、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択され;
は、独立して、H、ハロ、ニトロ、C〜Cアルキルスルホニル、−OR、C〜Cアルキル、およびC〜Cハロアルキルから選択される1つ以上の置換基であり;
は、H、C〜Cアルキル、および−C(O)−A−Rから選択され;
およびRは各々、独立して、HおよびC〜Cアルキルから選択され;
Xは、ピリジニルであり;
Zは、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、−NR、およびシアノから選択される)
のトリアジン化合物、またはその薬学的に許容され得る塩である。
【0153】
式(IIc)の一部の実施形態において、
Yは、−K−A−Rであり;
Kは、NRC(O)およびNRC(O)NRから選択され;
は、フェニルおよびフラニルから選択され;
は、独立して、H、ハロ、ニトロ、C〜Cアルキルスルホニル、−OR、C〜Cアルキル、およびC〜Cハロアルキルから選択される1つ以上の置換基であり;
は、H、C〜Cアルキル、および−C(O)−A−Rから選択され;
およびRは各々、独立して、HおよびC〜Cアルキルから選択され;
Xは、ピリジニルであり;
Zは、C〜Cアルキル、C〜Cアルキルチオ、および−NRから選択される。
【0154】
一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、表2に示すトリアジン化合物から選択される。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、表5に示すトリアジン化合物から選択される。表5に、ヘッジホッグ阻害剤である例示的なテトラジン化合物を示す。
【0155】
【表2】

他にもヘッジホッグ阻害剤は当該技術分野で知られており、例えば、低分子化合物、小分子ペプチド、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAsなどが挙げられる。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は低分子化合物である。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤はシクロパミンまたはその誘導体である。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤はジェルビン、GANT61、プルモルファミン、SAG、SANT−2、トマチジン、ゼルンボン、またはその誘導体である。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、以下の化合物:GDC−0449(Genentechおよび/またはCuris製);XL139、IPI926(Infinity Pharmaceuticals製)、IPI609(IPI269609)またはLDE225のいずれかである。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は表3に示す化合物から選択される。
【0156】
【表3−1】

【0157】
【表3−2】

一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はNVP−LDE225(Novartis製)またはBMS−833923/XL139(Bristol−Myers Squibbおよび/またはExelixis製)である。
【0158】
さらなるヘッジホッグ阻害剤は、Rubinら,Nature Reviews Drug Discovery 5,1026−1033(2006);Bruntonら,J.Medicinal Chemistry,51(5):1108−1110(2008);Romerら,Cancer Research 65:4975−4978(2005);Chenら,Proc.Nat.Acad.Sci.99(22):14071−14076(2002);Taipaleら,Nature 418:892−897(2002);Taipaleら,Nature 406:1005−1009(2000);WO2009/086416,米国特許出願公開公報番号US20080019961,US20050112125;US20050222087;US20050085519;US20040038876;US20040127474;US20040110663,およびUS20030166543(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に示されている。
【0159】
本明細書に記載のヘッジホッグ阻害剤は、薬剤そのもの、その薬学的に許容され得る塩、その薬学的に許容され得るエステル、ならびに立体異性体、エナンチオマー、ラセミ混合物などであり得る。上記において論考したように、一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、本明細書に記載のナノ粒子組成物などの、ヘッジホッグ阻害剤および担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子の形態で提供される。
【0160】
本明細書における薬剤に対する言及は、当該薬剤またはその誘導体に同様に適用され、したがって、本発明では、このような実施形態(薬剤;薬剤または誘導体(1種類もしくは複数種))のいずれもが想定され、包含される。薬剤または他の化学物質部分の「誘導体」または「類似体」としては、限定されないが、ヘッジホッグ阻害剤もしくは部分と構造的に類似している化合物、またはヘッジホッグ阻害剤もしくは部分と同じ一般的な化学物質類型の化合物が挙げられる。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤または部分の誘導体または類似体は、ヘッジホッグ阻害剤または部分と類似した化学的および/または物理的特性(例えば、機能など)を保持しているものである。
【0161】
ナノ粒子組成物
本明細書に記載の方法は、タキサンのナノ粒子組成物と、一部の実施形態においてヘッジホッグ阻害剤(inhibor)のナノ粒子組成物を投与することを含む。水難溶性の薬物(タキサンなど)のナノ粒子は、例えば、米国特許第5,916,596号;同第6,506,405号;同第6,749,868号および同第6,537,579号、ならびに米国特許出願公開公報番号2005/0004002および2007/0082838にも開示されている。以下に示す記載はタキサンに対して具体的なことであるが、同じことが本明細書に記載のヘッジホッグ阻害剤にも適用されることを理解されたい。例えば、一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤(例えば、本明細書に記載のヘッジホッグ阻害剤のいずれか1種類)および担体タンパク質(アルブミンなど)を含む(種々の実施形態において、本質的に、該阻害剤と該タンパク質からなる)ナノ粒子を含む組成物を提供する。上記において論考したように、ヘッジホッグ阻害剤のナノ粒子組成物は、タキサンのナノ粒子組成物と併用して使用され得る。
【0162】
一部の実施形態において、該組成物は、約1000ナノメートル(nm)以下(大体、900、800、700、600、500、400、300、200および100nmなどのいずれかの長さ以下)の平均直径を有するナノ粒子を含むものである。一部の実施形態において、該ナノ粒子の平均直径は約200nm以下である。一部の実施形態では、該ナノ粒子の平均直径は約150nm以下である。一部の実施形態では、該ナノ粒子の平均直径は約100nm以下である。一部の実施形態では、該ナノ粒子の平均直径は約20〜約400nmである。一部の実施形態では、該ナノ粒子の平均直径は約40〜約200nmである。一部の実施形態では、該ナノ粒子は滅菌濾過可能なものである。
【0163】
一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物中のナノ粒子は、約200nm以下、例えば、約190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmなどのいずれか1つの長さ以下の平均直径を有する。一部の実施形態では、該組成物中のすべてのナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合)が、約200nm以下、例えば、約190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmなどのいずれか1つの長さ以下の直径を有する。一部の実施形態では、該組成物中のすべてのナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合)が、約20〜約200nm、例えば、約30〜約180nmのいずれか1つ、および約40〜約150、約50〜約120および約60〜約100nmなどのいずれか1つの範囲内に含まれる。
【0164】
粒径は当該技術分野で知られた方法によって測定され得、例えば、粒子径は、光子相関分光法または動的光散乱を用いて測定され得る。サブミクロン粒子径の測定に使用される機器は、当該技術分野で知られており、例えば、Malvernゼータサイザー、Malvernオートサイザー、Coutler N4、およびAmtecが挙げられる。一部の実施形態では、本明細書において使用する平均粒径はZ−平均(例えば、調和Z−平均)をいう。
【0165】
一部の実施形態において、担体タンパク質は、ジスルフィド結合を形成し得るスルフヒドリル基を有する。一部の実施形態において、該組成物のナノ粒子部分中の担体タンパク質の少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%などのいずれか1つの割合)は架橋されている(例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって架橋されている)。
【0166】
一部の実施形態において、該ナノ粒子は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)などの担体タンパク質でコーティングされたタキサン(パクリタキセルなど)を含むものである。一部の実施形態において、該組成物は、非ナノ粒子形態のタキサンを含むものであり、該組成物中の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合のタキサンはナノ粒子の形態である。一部の実施形態において、該ナノ粒子中のタキサンは、重量基準で、該ナノ粒子の約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合より多くを構成している。一部の実施形態において、該ナノ粒子は非ポリマーマトリックスを有する。一部の実施形態において、該ナノ粒子は、実質的にポリマー物質(ポリマーマトリックスなど)を含有していないタキサンコアを含む。
【0167】
一部の実施形態において、該ナノ粒子組成物は、実質的に界面活性剤(Cremophor(登録商標)、Tween 80、またはタキサンの投与に使用される他の有機溶媒など)を含有していない(例えば、無含有)。一部の実施形態において、該ナノ粒子組成物に含まれる有機溶媒は約20%、15%、10%、7.5%、5%、2.5%または1%のいずれか1つの割合未満である。一部の実施形態において、ナノ粒子組成物中の担体タンパク質(アルブミンなど)とタキサンの重量比は、約18:1またはそれより小さい(約15:1またはそれより小さい(例えば、約10:1またはそれより小さい)など)。一部の実施形態において、該組成物中の担体タンパク質(アルブミンなど)とタキサンの重量比は、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約13:1、約4:1〜約12:1、約5:1〜約10:1のいずれか1つの範囲に含まれる。一部の実施形態において、該組成物のナノ粒子部分中の担体タンパク質とタキサンの重量比は、大体、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:15のいずれか1つ、またはそれより小さい比率である。
【0168】
一部の実施形態において、該ナノ粒子組成物は上記の特徴の1つ以上を含むものである。
【0169】
本明細書に記載のナノ粒子は、乾燥製剤(凍結乾燥組成物など)で存在させてもよく、生体適合性の媒体中に懸濁させてもよい。好適な生体適合性の媒体としては、限定されないが、水、緩衝水性媒体、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アミノ酸の任意選択的緩衝液、タンパク質の任意選択的緩衝液、糖類の任意選択的緩衝液、ビタミン類の任意選択的緩衝液、合成ポリマーの任意選択的緩衝液、脂質含有乳濁液などが挙げられる。
【0170】
本明細書に記載のタンパク質は、天然に存在するものであってもよく(すなわち、天然供給源(血液など)から取得または誘導)、合成されたものであってもよい(化学的合成または組換えDNA手法による合成など)。
【0171】
好適な担体タンパク質の例としては血液または血漿中に通常見られるタンパク質が挙げられ、該タンパク質としては、限定されないが、アルブミン、免疫グロブリン(例えば、IgA、リポタンパク質、アポリポタンパク質B、アルファ酸糖タンパク質、β−2−マクログロブリン、サイログロブリン、トランスフェリン、フィブロネクチン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子などが挙げられる。一部の実施形態において、担体タンパク質は、カゼイン、α−ラクトアルブミンおよびβ−ラクトグロブリンなどの非血液タンパク質である。担体タンパク質は起源が天然のもの、または合成により調製されたもののいずれかであり得る。一部の実施形態において、薬学的に許容され得る担体は、ヒト血清アルブミンなどのアルブミンを含む。ヒト血清アルブミン(HSA)は、M 65Kの高度に可溶性の球状タンパク質であり、585個のアミノ酸からなる。HSAは、血漿中に最も多く存在するタンパク質であり、ヒト血漿のコロイド浸透圧の70〜80%を占める。HSAのアミノ酸配列には、合計17個のジスルフィド結合、1個の遊離チオール(Cys 34)、および1個のトリプトファン(Trp 214)が含まれる。HSA液の静脈内使用は、血液量減少性ショックの予防および処置のため(例えば、Tullis,JAMA,237,355−360,460−463,(1977))およびHouserら,Surgery,Gynecology and Obstetrics,150,811−816(1980)参照)ならびに新生児高ビリルビン血症の処置における交換輸血と併用して(例えば、Finlayson,Seminars in Thrombosis and Hemostasis,6,85−120,(1980)参照)指示されている。ウシ血清アルブミンなどの他のアルブミンも想定される。かかる非ヒトアルブミンの使用は、例えば、獣医学的など、このような組成物を非ヒト哺乳動物に使用する状況(例えば、飼育ペットおよび農業場面)において適切であり得る。
【0172】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、多数の疎水性結合部位(HSAの内在性リガンドである脂肪酸に対しては合計8個)を有し、多様なタキサン群(特に、中性および負電荷の疎水性化合物)に結合する(Goodmanら,The Pharmacological Basis of Therapeutics,第9版,McGraw−Hill New York(1996))。HSAのサブドメインIIAおよびIIIAにおいて、2つの高親和性結合部位が提案されており、これらは、高度に伸長された疎水性ポケットであり、表面付近に荷電リシンおよびアルギニン残基を有し、極性リガンド特徴体に対する結合点しての機能を果たす(例えば、Fehskeら,Biochem.Pharmcol.,30,687−92(198a),Vorum,Dan.Med.Bull.,46,379−99(1999)、Kragh−Hansen,Dan.Med.Bull.,1441,131−40(1990)、Curryら,Nat.Struct.Biol.,5,827−35(1998)、Sugioら,Protein.Eng.,12,439−46(1999)、Heら,Nature,358,209−15(199b)、およびCarterら,Adv.Protein.Chem.,45,153−203(1994)参照)。パクリタキセルおよびプロポフォールはHSAに結合することが示されている(例えば、Paalら,Eur.J.Biochem.,268(7),2187−91(200a)、Purcellら,Biochim.Biophys.Acta,1478(a),61−8(2000)、Altmayerら,Arzneimittelforschung,45,1053−6(1995)、およびGarridoら,Rev.Esp.Anestestiol.Reanim.,41,308−12(1994)参照)。また、ドセタキセルは、ヒト血漿タンパク質に結合することが示されている(例えば、Urienら,Invest.New Drugs,14(b),147−51(1996)参照)。
【0173】
該組成物中の担体タンパク質(アルブミンなど)は、一般的に、タキサンの担体としての機能を果たす、すなわち、組成物中の担体タンパク質により、担体タンパク質を含まない組成物と比べて、タキサンが水性媒体中に、より容易に懸濁可能となるか、または懸濁液の維持が補助される。これにより、タキサンを可溶化させるための毒性溶媒(または界面活性剤)の使用が回避され、それにより、個体(ヒトなど)におけるタキサン投与の1つ以上の副作用が低減され得る。したがって、一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、実質的に、Cremophor(例えば、Cremophor EL(登録商標)(BASF))などの界面活性剤を含有していない(例えば、無含有)。一部の実施形態において、該ナノ粒子組成物は、実質的に界面活性剤を含有していない(例えば、無含有)。
【0174】
本明細書に記載の組成物中の担体タンパク質の量は、該組成物中の他の成分に応じて異なる。一部の実施形態において、該組成物は担体タンパク質を、タキサンが水性懸濁液中に、例えば、安定なコロイド状懸濁液(安定なナノ粒子懸濁液など)の形態で安定化されるのに充分な量で含む。一部の実施形態において、担体タンパク質は、水性媒体中でのタキサンの沈降速度が低減される量である。また、粒子含有組成物では、担体タンパク質の量はタキサンのナノ粒子の粒径と密度にも依存する。
【0175】
タキサンは、長時間(少なくとも、大体、0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、60または72時間などのいずれかの時間)、水性媒体中に懸濁されたままである(例えば、目に見える析出または沈降がない)場合、水性懸濁液中に「安定化されて」いる。該懸濁液は、一般的に(必ずしもそうとは限らないが)、個体に(ヒトなど)への投与に好適なものである。該懸濁液の安定性は、一般的に(必ずしもそうとは限らないが)、保存温度(例えば、室温(20〜25℃など)または冷蔵条件(4℃など))で評価される。例えば、懸濁液は、該懸濁液の調製の約15分後、裸眼で目視したとき、または光学顕微鏡下で1000倍にて観察したとき、綿状沈殿または粒子凝集が示されない場合、保存温度で安定である。また、安定性は、加速試験条件下(約40℃より高い温度下など)においても評価され得る。
【0176】
一部の実施形態において、担体タンパク質は、タキサンを水性懸濁液中に特定の濃度で安定化させるのに充分な量で存在させる。例えば、組成物中のタキサンの濃度は約0.1〜約100mg/ml、例えば、約0.1〜約50mg/ml、約0.1〜約20mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2mg/ml〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、約5mg/mlなどのいずれかの濃度である。一部の実施形態では、タキサン濃度は、大体、少なくとも1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、および50mg/mlのいずれかの濃度である。一部の実施形態において、担体タンパク質は、界面活性剤(Cremophorなど)の使用が回避される量で存在させ、そのため、該組成物は、界面活性剤(Cremophorなど)を含有していないか、または実質的に含有していない。
【0177】
一部の実施形態において、該組成物は、液状形態では、約0.1%〜約50%(w/v)(例えば、約0.5%(w/v)、約5%(w/v)、約10%(w/v)、約15%(w/v)、約20%(w/v)、約30%(w/v)、約40%(w/v)、または約50%(w/v))の担体タンパク質を含む。一部の実施形態において、該組成物は、液状形態では、約0.5%〜約5%(w/v)の担体タンパク質を含む。
【0178】
一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンに対する担体タンパク質(例えば、アルブミン)の重量比は、充分な量のタキサンが細胞に結合するか、または細胞によって輸送されるようなものである。タキサンに対する担体タンパク質の重量比は、種々の担体タンパク質とタキサンの組合せに対して最適化されるべきであるが、一般的に、タキサンに対する担体タンパク質(例えば、アルブミン)の重量比(w/w)は、約0.01:1〜約100:1、約0.02:1〜約50:1、約0.05:1〜約20:1、約0.1:1〜約20:1、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約12:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、約1:1〜約9:1、または約9:1である。一部の実施形態では、タキサンに対する担体タンパク質の重量比は、大体、18:1またはそれより小さい、15:1またはそれより小さい、14:1またはそれより小さい、13:1またはそれより小さい、12:1またはそれより小さい、11:1またはそれより小さい、10:1またはそれより小さい、9:1またはそれより小さい、8:1またはそれより小さい、7:1またはそれより小さい、6:1またはそれより小さい、5:1またはそれより小さい、4:1またはそれより小さい、および3:1またはそれより小さい重量比のいずれかである。
【0179】
一部の実施形態において、担体タンパク質により、該組成物が個体(ヒトなど)に重度の副作用なく投与されることが可能になる。一部の実施形態において、担体タンパク質(アルブミンなど)は、ヒトへのタキサン投与の1つ以上の副作用が低減されるのに有効な量である。用語「タキサン投与の1つ以上の副作用の低減」は、タキサンによって引き起こされる1つ以上の望ましくない効果、ならびにタキサンを送達するために使用される送達ビヒクル(タキサンを注射に適するようにする溶媒など)によって引き起こされる副作用の低減、軽減、解消または回避をいう。かかる副作用としては、例えば、骨髄抑制、神経毒性、過敏性、炎症、静脈刺激、静脈炎、疼痛、皮膚への刺激、末梢神経障害、好中球減少性発熱、アナフィラキシー反応、静脈血栓症、血管外遊出、およびその組合せが挙げられる。しかしながら、これらの副作用は例示的にすぎず、タキサンと関連する他の副作用または副作用の合併症も低減され得る。
【0180】
一部の実施形態において、該組成物はAbraxane(登録商標)を含むものである。Abraxane(登録商標)は、ヒトアルブミンUSPで安定化させたパクリタキセルの製剤であり、これは、注射用生理学的溶液中に直接分散させることができる。適当な水性媒体(例えば、0.9%塩化ナトリウム注射液または5%デキストロース注射液)中に分散させると、Abraxane(登録商標)はパクリタキセルの安定なコロイド状懸濁液を形成する。コロイド状懸濁液中のナノ粒子の平均粒径は約130ナノメートルである。HSAは水に溶けやすいため、Abraxane(登録商標)は、希薄系(0.1mg/mlのパクリタキセル)から濃厚系(20mg/mlのパクリタキセル)にわたる広範な濃度(例えば、約2mg/ml〜約8mg/ml、約5mg/mlなど)に再構成させることができる。
【0181】
ナノ粒子組成物の作製方法は当該技術分野で知られている。例えば、タキサン(パクリタキセルなど)と担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子は、高剪断力条件下(例えば、超音波処理、高圧ホモジネーションなど)で調製され得る。このような方法は、例えば、米国特許第5,916,596号;同第6,506,405号;同第6,749,868号、および同第6,537,579号、ならびに米国特許出願公開公報番号2005/0004002、2007/0082838、2006/0263434ならびにPCT出願公開公報WO08/137148にも開示されている。
【0182】
簡単には、タキサン(パクリタキセルなど)を有機溶媒に溶解させ、その溶液がヒト血清アルブミン溶液に添加され得る。この混合物を高圧ホモジネーションに供する。次いで、有機溶媒がエバポレーションによって除去され得る。得られた分散液は、さらに凍結乾燥され得る。好適な有機溶媒としては、例えば、ケトン、エステル、エーテル、塩素化溶媒、および当該技術分野で知られた他の溶媒が挙げられる。例えば、有機溶媒は、例えば、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、または9:1の比率の塩化メチレンまたはクロロホルム/アルコール(エタノールなど)であり得る。
【0183】
投与様式
上記において論考したように、タキサンを含むナノ粒子を含む組成物(「ナノ粒子タキサン組成物」とも称する)とヘッジホッグ阻害剤は、同時に(すなわち、同時投与)、および/または逐次(すなわち、逐次投与)投与され得る。種々の成分での投与様式を以下に、より詳細にさらに論考する。このように本明細書において論考する投与様式は、本明細書に記載のすべての方法に適用され得る。
【0184】
一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤(例えば、本明細書に記載の具体的な薬剤)は同時投与される。用語「同時投与」は、本明細書で用いる場合、ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤が、約15分以内(大体、10、5または1分などのいずれかの時間以内)の時間的隔離で投与されること意味する。薬物を同時投与する場合、該ナノ粒子中のタキサンとヘッジホッグ阻害剤を同じ組成物(例えば、該ナノ粒子とヘッジホッグ阻害剤の両方を含む組成物)中に含めてもよく、別々の組成物中に含めてもよい(例えば、該ナノ粒子をある組成物に含め、ヘッジホッグ阻害剤を別の組成物中に含める)。
【0185】
一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤は逐次投与される。用語「逐次投与」は、本明細書で用いる場合、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンとヘッジホッグ阻害剤が、約15分より長い(大体、20、30、40、50、60分のいずれかより長い、またはそれより長い)時間的隔離で投与されること意味する。ナノ粒子タキサン組成物またはヘッジホッグ阻害剤のいずれかが最初に投与され得る。ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤は別々の組成物中に含められ、これらは同じまたは異なるパッケージ内に収容され得る。
【0186】
一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤の投与は並行的である、すなわち、ナノ粒子タキサン組成物の投与期間とヘッジホッグ阻害剤の投与期間が互いに重複する。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤の投与は非並行的である。例えば、一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物の投与は、ヘッジホッグ阻害剤を投与する前に終了させる。一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤の投与は、ナノ粒子タキサン組成物を投与する前に終了させる。これらの2つの非並行投与間の時間間隔は、約2〜8週間の範囲(約4週間など)であり得る。
【0187】
薬物含有ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤の投与頻度は、処置過程において投与担当医師の判断に基づいて調整され得る。別々に投与する場合、薬物含有ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤は、異なる投与頻度または投与間隔で投与され得る。例えば、薬物含有ナノ粒子タキサン組成物は毎週投与され得、一方、ヘッジホッグ阻害剤は、より高いまたは低い頻度で投与され得る。一部の実施形態では、タキサン含有ナノ粒子および/またはヘッジホッグ阻害剤の連続徐放製剤が使用され得る。徐放を行なうための種々の製剤およびデバイスが当該技術分野で知られている。
【0188】
ナノ粒子タキサン組成物とヘッジホッグ阻害剤は、同じ投与経路を用いて投与してもよく、異なる投与経路を用いて投与してもよい。一部の実施形態では(同時投与および逐次投与どちらも)、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンとヘッジホッグ阻害剤は、所定の比率で投与される。例えば、一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンとヘッジホッグ阻害剤の重量基準の比率は約1対1である。一部の実施形態では、該重量比は約0.001対約1〜約1000対約1、または約0.01対約1〜100対約1であり得る。一部の実施形態では、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンとヘッジホッグ阻害剤の重量基準の比率は、大体、100:1、50:1、30:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、および1:1のいずれかより小さい比率である。一部の実施形態では、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンとヘッジホッグ阻害剤の重量基準の比率は、大体、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、30:1、50:1、100:1のいずれかより大きい比率である。他の比率も想定される。
【0189】
タキサンおよび/またはヘッジホッグ阻害剤に必要とされる用量は(必ずしもそうとは限らないが)、各薬剤が単独で投与される場合に通常必要とされる用量より少ない用量であり得る。したがって、一部の実施形態において、治療量下域量のナノ粒子タキサン組成物中のタキサンおよび/またはヘッジホッグ阻害剤が投与される。「治療量下域量」または「治療量下域レベル」は、治療量よりも少ない、すなわち、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンおよび/またはヘッジホッグ阻害剤が単独で投与される場合に通常使用される量よりも少ない量をいう。この低減は、所与の投与で投与される量、および/または所与の期間にわたって投与される量(頻度の低減)の点において反映され得る。
【0190】
一部の実施形態において、同じ度合の処置を行なうのに必要とされるナノ粒子タキサン組成物中のタキサンの通常の用量が、大体、少なくとも5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%のいずれか、またはそれより多くの割合で低減されることが可能であるような充分なヘッジホッグ阻害剤が投与される。一部の実施形態では、同じ度合の処置を行なうのに必要とされるヘッジホッグ阻害剤の通常の用量が、大体、少なくとも5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%のいずれか、またはそれより多くの割合で低減されることが可能であるような充分なナノ粒子タキサン組成物中のタキサンが投与される。
【0191】
一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンとヘッジホッグ阻害剤の両方の用量が、単独投与される場合の各々の対応する通常用量と比べて低減される。一部の実施形態では、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサンとヘッジホッグ阻害剤の両方が治療量下域で、すなわち低減されたレベルで投与される。一部の実施形態では、ナノ粒子タキサン組成物および/またはヘッジホッグ阻害剤の用量が、単独投与される場合の対応する薬剤の確立された最大毒性用量(MTD)よりも実質的に少ない。例えば、ナノ粒子タキサン組成物および/またはヘッジホッグ阻害剤の用量は、単独投与される場合の対応する薬剤のMTDよりも約50%、40%、30%、20%または10%少ない。
【0192】
一部の実施形態において、タキサンの用量および/またはヘッジホッグ阻害剤の用量は、各薬剤が単独で投与される場合に通常必要とされる用量より多い。例えば、一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物および/またはヘッジホッグ阻害剤の用量は、単独投与される場合の対応する薬剤の確立された最大毒性用量(MTD)よりも実質的に多い。例えば、ナノ粒子タキサン組成物および/またはヘッジホッグ阻害剤の用量は、単独投与される場合の対応する薬剤のMTDよりも約50%、40%、30%、20%または10%多い。
【0193】
一部の実施形態において、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、以下の範囲:約0.5〜約5mg、約5〜約10mg、約10〜約15mg、約15〜約20mg、約20〜約25mg、約20〜約50mg、約25〜約50mg、約50〜約75mg、約50〜約100mg、約75〜約100mg、約100〜約125mg、約125〜約150mg、約150〜約175mg、約175〜約200mg、約200〜約225mg、約225〜約250mg、約250〜約300mg、約300〜約350mg、約350〜約400mg、約400〜約450mg、または約450〜約500mgのいずれかに含まれる。一部の実施形態では、有効量の該組成物(例えば、単位投薬形態)中のタキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体の量は、約5mg〜約500mg(約30mg〜約300mgまたは約50mg〜約200mgなど)の範囲である。一部の実施形態では、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の濃度は、希薄系(約0.1mg/ml)または濃厚系(約100mg/ml)、例えば、約0.1〜約50mg/ml、約0.1〜約20mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2mg/ml〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、約5mg/mlなどのいずれかである。一部の実施形態において、タキサン(例えば、パクリタキセル)の濃度は、大体、少なくとも、0.5mg/ml、1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、または50mg/mlのいずれかである。
【0194】
ナノ粒子タキサン組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の例示的な有効量としては、限定されないが、大体、25mg/m、30mg/m、50mg/m、60mg/m、75mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、120mg/m、125mg/m、150mg/m、160mg/m、175mg/m、180mg/m、200mg/m、210mg/m、220mg/m、250mg/m、260mg/m、300mg/m、350mg/m、400mg/m、500mg/m、540mg/m、750mg/m、1000mg/m、または1080mg/mのいずれかのタキサン(例えば、パクリタキセル)が挙げられる。種々の実施形態において、該組成物には、大体、350mg/m、300mg/m、250mg/m、200mg/m、150mg/m、120mg/m、100mg/m、90mg/m、50mg/m、または30mg/mのいずれかより少ないタキサン(例えば、パクリタキセル)が含まれる。一部の実施形態において、投与1回あたりのタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、大体、25mg/m、22mg/m、20mg/m、18mg/m、15mg/m、14mg/m、13mg/m、12mg/m、11mg/m、10mg/m、9mg/m、8mg/m、7mg/m、6mg/m、5mg/m、4mg/m、3mg/m、2mg/m、または1mg/mのいずれかよりも少ない。一部の実施形態において、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は、以下の範囲:約1〜約5mg/m、約5〜約10mg/m、約10〜約25mg/m、約25〜約50mg/m、約50〜約75mg/m、約75〜約100mg/m、約100〜約125mg/m、約125〜約150mg/m、約150〜約175mg/m、約175〜約200mg/m、約200〜約225mg/m、約225〜約250mg/m、約250〜約300mg/m、約300〜約350mg/m、または約350〜約400mg/mのいずれかに含まれる。好ましくは、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は、約5〜約300mg/m(約100〜約150mg/m、約120mg/m、約130mg/m、または約140mg/mなど)である。
【0195】
上記のいずれかの態様一部の実施形態において、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量としては、大体、少なくとも1mg/kg、2.5mg/kg、3.5mg/kg、5mg/kg、6.5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、または20mg/kgのいずれかが挙げられる。種々の実施形態において、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量としては、大体、350mg/kg、300mg/kg、250mg/kg、200mg/kg、150mg/kg、100mg/kg、50mg/kg、25mg/kg、20mg/kg、10mg/kg、7.5mg/kg、6.5mg/kg、5mg/kg、3.5mg/kg、2.5mg/kg、または1mg/kgのいずれかより少ないタキサン(例えば、パクリタキセル)が挙げられる。
【0196】
ナノ粒子タキサン組成物(および以下に示すとおりヘッジホッグ阻害剤)の例示的な投与頻度としては、限定されないが、中断なしで毎週;毎週、4週間に3回;3週間に1回;2週間に1回;毎週、3週間に2回が挙げられる。一部の実施形態において、該組成物は、大体、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、6週間に1回、または8週間に1回投与される。一部の実施形態において、該組成物は、大体、少なくとも週に1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回(すなわち、毎日)のいずれかで投与される。一部の実施形態において、各投与間の間隔は、大体、6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月、20日間、15日間、12日間、10日間、9日間、8日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、または1日のいずれかより短い。一部の実施形態では、各投与間の間隔は、大体、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、または12ヶ月のいずれかより長い。一部の実施形態では、投与スケジュールは中断なしである。一部の実施形態では、各投与間の間隔は約1週間以下である。
【0197】
ナノ粒子タキサン組成物(およびヘッジホッグ阻害剤)の投与は、長期間(約1ヶ月から約7年間までなど)にわたって延長され得る。一部の実施形態において、該組成物は、大体、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、48、60、72または84ヶ月のいずれかの期間にわたって投与される。一部の実施形態において、タキサン(例えば、パクリタキセル)は少なくとも1ヶ月の期間にわたって投与され、このとき、各投与間の間隔は約1週間以下であり、各投与でのタキサンの用量(例えば、パクリタキセル)は約0.25mg/m〜約75mg/m(約0.25mg/m〜約25mg/mまたは約25mg/m〜約50mg/mなど)である。
【0198】
一部の実施形態において、ナノ粒子タキサン組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の投薬量は、3週間スケジュールで投与する場合は5〜400mg/m、または毎週のスケジュールで投与する場合は5〜250mg/mの範囲であり得る。例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル)の量は約60〜約300mg/m(例えば、約260mg/m)である。
【0199】
ナノ粒子タキサン組成物の投与(例えば、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子タキサン組成物)他の例示的な投与スケジュールとしては、限定されないが、100mg/mを中断なしで毎週;75mg/mを毎週、4週間に3回;100mg/mを毎週、4週間に3回;125mg/mを毎週、4週間に3回;125mg/mを毎週、3週間に2回;130mg/mを中断なしで毎週;175mg/mを2週間に1回;260mg/mを2週間に1回;260mg/mを3週間に1回;180〜300mg/mを3週間毎;60〜175mg/mを中断なしで毎週;20〜150mg/mを週に2回;および150〜250mg/mを週に2回が挙げられる。該組成物の投与頻度は、処置過程において投与担当医師の判断に基づいて調整され得る。
【0200】
一部の実施形態において、個体は、大体、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10回のいずれかの処置サイクルで処置される。本明細書に記載の組成物では、該組成物を個体に、約24時間より短い注入期間にわたって注入することが可能である。例えば、一部の実施形態において、該組成物は、大体、24時間、12時間、8時間、5時間、3時間、2時間、1時間、30分間、20分間、または10分間のいずれかより短い注入期間にわたって投与される。一部の実施形態では、該組成物は約30分間の注入期間にわたって投与される。
【0201】
ナノ粒子タキサン組成物中の他の例示的なタキサンの用量(一部の実施形態では、パクリタキセル)としては、限定されないが、大体、50mg/m、60mg/m、75mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、120mg/m、160mg/m、175mg/m、200mg/m、210mg/m、220mg/m、260mg/m、および300mg/mのいずれかが挙げられる。例えば、ナノ粒子タキサン組成物中のパクリタキセルの投薬量は、3週間スケジュールで投与する場合は100〜400mg/m、または毎週のスケジュールで投与する場合は50〜250mg/mの範囲であり得る。
【0202】
ナノ粒子タキサン組成物の投与(パクリタキセル/アルブミンナノ粒子タキサン組成物、例えば、Abraxane(登録商標)など)の他の例示的な投与スケジュールとしては、限定されないが、100mg/mを中断なしで毎週;75mg/mを毎週、4週間に3回;100mg/mを毎週、4週間に3回;125mg/mを毎週、4週間に3回;125mg/mを毎週、3週間に2回;130mg/mを中断なしで毎週;175mg/mを2週間に1回;260mg/mを2週間に1回;260mg/mを3週間に1回;180〜300mg/mを3週間毎;60〜175mg/mを中断なしで毎週が挙げられる。また、タキサンは(単独または併用療法で)、本明細書に記載のメトロノーム式投与レジメン(regime)に従って投与され得る。一部の実施形態において、該ナノ粒子タキサン組成物(例えば、Abraxane(登録商標))は、投与1回あたり約10〜200mg/kg(例えば、約10〜40mg/kg、40〜60mg/kg、60〜80mg/kg、80〜100mg/kg、100〜120mg/kg、120〜140mg/kg、140〜160mg/kg、160〜180mg/kg、および180〜200mg/kgなどのいずれか)の用量で毎週投与される。一部の実施形態では、該ナノ粒子タキサン組成物(例えば、Abraxane(登録商標))は、投与1回あたり約10〜200mg/kg(例えば、約10〜40mg/kg、40〜60mg/kg、60〜80mg/kg、80〜100mg/kg、100〜120mg/kg、120〜140mg/kg、140〜160mg/kg、160〜180mg/kg、および180〜200mg/kgなどのいずれか)の用量で4日に1回投与される。一部の実施形態では、該ナノ粒子タキサン組成物(例えば、Abraxane(登録商標))は、投与1回あたり約10〜30mg/kgの用量で(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10日間のいずれかで)毎日投与される。一部の実施形態では、該ナノ粒子タキサン組成物(例えば、Abraxane(登録商標))は、投与1回あたり約50〜150mg/m(例えば、約50〜100mg/mおよび100〜150mg/mなどのいずれか)の用量で毎週投与される。一部の実施形態では、該ナノ粒子タキサン組成物(例えば、Abraxane(登録商標))は、投与1回あたり約50〜300mg/m(例えば、約50〜100mg/m、100〜150mg/m、150〜200mg/m、200〜250mg/m、および250〜300mg/mなどのいずれか)の用量で3週間に1回投与される。
【0203】
ヘッジホッグ阻害剤の投与頻度は、ナノ粒子タキサン組成物のものと同じであっても異なっていてもよい。例えば、ヘッジホッグ阻害剤は、毎日、週6回、週5回、週4回、週3回、週2回または毎週投与され得る。ヘッジホッグ阻害剤の例示的な量としては、限定されないが、以下の範囲:約0.5〜約5mg、約5〜約10mg、約10〜約15mg、約15〜約20mg、約20〜約25mg、約20〜約50mg、約25〜約50mg、約50〜約75mg、約50〜約100mg、約75〜約100mg、約100〜約125mg、約125〜約150mg、約150〜約175mg、約175〜約200mg、約200〜約225mg、約225〜約250mg、約250〜約300mg、約300〜約350mg、約350〜約400mg、約400〜約450mg、または約450〜約500mgのいずれかが挙げられる。例えば、ヘッジホッグ阻害剤は、約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)の用量で投与され得る。例えば、一部の実施形態において、シクロパミンが、大体、1〜20mg/kg、20〜40mg/kg、40〜60mg/kg、60〜80mg/kg、80〜100mg/kg、100〜120mgのいずれかで毎日投与される(例えば、経口投与により)。
【0204】
本明細書に記載のナノ粒子タキサン組成物(およびヘッジホッグ阻害剤)は個体(ヒトなど)に、種々の経路、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、経口、吸入、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内、経粘膜、および経皮などによって投与され得る。一部の実施形態では、該組成物の連続徐放製剤が使用され得る。本発明の一異型形態では、本発明の化合物のナノ粒子(アルブミンナノ粒子など)は、許容され得る任意の経路、例えば限定されないが、経口、筋肉内、経皮、静脈内、吸入器または他の空気媒介性送達系などによって投与され得る。
【0205】
本明細書に記載の投与形態の組合せを使用してもよい。本明細書に記載の併用療法は、単独で行なってもよく、別の治療法(外科処置、放射線、化学療法、免疫療法、遺伝子療法など)と併用して行なってもよい。さらに、増殖性疾患が進展するリスクが高い人は、該疾患の進展を抑止および/または遅延させるために処置を受けるのがよい。
【0206】
当業者には理解されるように、ヘッジホッグ阻害剤の適切な用量は、ほぼ、臨床治療で既に使用されている用量であり、この場合、ヘッジホッグ阻害剤は、単独またはヘッジホッグ阻害剤と併用して投与される。投薬量の変動は、処置対象の病状に応じて起こり得る。上記のように、一部の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、低減されたレベルで投与され得る。
【0207】
ナノ粒子組成物中の他の成分
本明細書に記載のナノ粒子は、他の薬剤、賦形剤または安定剤を含む組成物にて存在させ得る。例えば、ナノ粒子の負のゼータ電位を増大させることにより安定性を増大させるため、特定の負電荷成分が添加され得る。かかる負電荷成分としては、限定されないが、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸などからなる胆汁酸の胆汁酸塩;リン脂質、例えば、レシチン(卵黄)系リン脂質(以下のもの:ホスファチジルコリン:パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルコリン ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドイルホスファチジルコリン、およびジパルミトイルホスファチジルコリンが挙げられる)が挙げられる。他のリン脂質としては、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearyolphosphatidylcholine)(DSPC)、水添ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、および他の関連化合物が挙げられる。また、負電荷の界面活性剤または乳化剤も、添加剤として適している(例えば、硫酸コレステリルナトリウムなど)。
【0208】
一部の実施形態において、該組成物はヒトへの投与に適したものである。一部の実施形態では、該組成物は、獣医学的状況において、飼育ペットおよび農業用動物などの哺乳動物への投与に適したものである。ナノ粒子組成物には多種多様な適当な製剤がある(例えば、米国特許第5,916,596号および同第6,096,331号参照)。以下の製剤および方法は例示的に過ぎず、なんら限定するものでない。経口投与に適した製剤は、(a)液状の液剤、例えば、希釈剤(水、生理食塩水またはオレンジジュースなど)に溶解させた有効量の該化合物(b)カプセル剤、サシェ剤または錠剤、各々は、所定の量の活性成分を固形物または顆粒として含有している、(c)適切な液体中の懸濁剤、および(d)適当な乳剤からなるものであり得る。錠剤形態には、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、イモデンプン、微晶質セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、保存料、フレーバー剤、ならびに薬理学的に適合性のある賦形剤のうち1種類以上が含まれ得る。ロゼンジ剤形態では、活性成分はフレーバー(通常、スクロースとアカシアまたはトラガカント)中に含まれ得、また、トローチ剤では、活性成分は不活性基剤(例えば、ゼラチンとグリセリン、またはスクロースとアカシア)中に含まれ、乳剤、ゲル剤などでは、活性成分に加えて、当該技術分野で知られているものなどの賦形剤が含まれる。
【0209】
好適な担体、賦形剤および希釈剤の例としては、限定されないが、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、ガムアカシア、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水液、シロップ、メチルセルロース、メチル−およびプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油が挙げられる。製剤に、さらに、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、保存剤、甘味剤またはフレーバー剤を含めてもよい。
【0210】
非経口投与に適した製剤としては、水性および非水性の等張性滅菌注射用液剤(これには、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を対象のレシピエントの血液に適合性にする溶質が含有され得る)、ならびに水性および非水性の滅菌懸濁剤(これには、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存料が含められ得る)が挙げられる。製剤は、単位用量または反復用量の密封容器(アンプルおよびバイアルなど)にて提示され得、フリーズドライ(凍結乾燥)状態(使用直前に滅菌液状賦形剤(例えば、注射用水)を添加するだけでよい)にて保存され得る。即時注射用の液剤および懸濁剤は、前述した種類の滅菌粉末剤、顆粒剤および錠剤から調製され得る。注射用製剤が好ましい。
【0211】
一部の実施形態において、該組成物は、約4.5〜約9.0のpH範囲(例えば、約5.0〜約8.0、約6.5〜約7.5、および約6.5〜約7.0などのいずれかのpH範囲)を有するように製剤化される。一部の実施形態において、該組成物のpHは、約6以上(例えば、大体、6.5、7または8のいずれか以上(約8など)など)に設定される。また、該組成物は、適当な張度改良剤(グリセロールなど)を添加することにより、血液と等張性となるように作製され得る。
【0212】
組成物およびキット
本明細書において、タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む、増殖性疾患(例えば、膵臓癌または結腸癌などの癌)の処置における使用のための組成物であって、ヘッジホッグ阻害剤と併用して使用する組成物を提供する。一部の実施形態では、パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む、増殖性疾患(例えば、膵臓癌または結腸癌などの癌)の処置における使用のための組成物であって、ヘッジホッグ阻害剤と併用して使用する組成物を提供する。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤を含む、増殖性疾患(例えば、膵臓癌または結腸癌などの癌)の処置における使用のための組成物であって、ヘッジホッグ阻害剤がタキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む組成物、例えば、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む組成物と併用して使用される組成物を提供する。また、本明細書において、(a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子、および(b)ヘッジホッグ阻害剤を含む、増殖性疾患(例えば、膵臓癌または結腸癌などの癌)の処置における使用のための組成物を提供する。一部の実施形態では、(a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)、および(b)ヘッジホッグ阻害剤を含む、増殖性疾患(例えば、膵臓癌または結腸癌などの癌)の処置における使用のための組成物を提供する。
【0213】
一部の実施形態において、増殖性疾患(例えば、膵臓癌または結腸癌などの癌)の処置のための医薬の製造のための、タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む組成物の使用であって、該ナノ粒子がヘッジホッグ阻害剤と併用して使用される使用を提供する。一部の実施形態では、増殖性疾患(例えば、膵臓癌または結腸癌などの癌)の処置のための医薬の製造のためのヘッジホッグ阻害剤の使用であって、ヘッジホッグ阻害剤がタキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む組成物、例えば、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む組成物と併用して使用される使用を提供する。また、本明細書において、増殖性疾患(例えば、膵臓癌または結腸癌などの癌)の処置のための医薬の製造のための、1)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子および2)ヘッジホッグ阻害剤を含む組成物の使用を提供する。
【0214】
また、本発明は、本発明の方法における使用のためのキットおよび/または本明細書に記載の組成物を含むキットを提供する。本発明のキットは、タキサン含有ナノ粒子組成物(あるいは単位投薬形態および/または製造物品)および/またはヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する薬剤を内包する1つ以上の容器を含み、一部の実施形態では、さらに、本明細書に記載のいずれかの方法による使用のための使用説明書を備えるものである。キットは、さらに、処置に適した個体の選択の記述を含むものであってもよい。本発明のキットにおいて供給される使用説明書は、典型的には、ラベル表示または添付文書(例えば、キットに内包される書面)による文書の使用説明書であるが、機械可読使用説明書(例えば、磁気または光学保存ディスクに担持された使用説明書)も許容され得る。
【0215】
一部の実施形態において、キットは、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む組成物、b)ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する有効量の薬剤ならびにc)増殖性疾患(癌など)の処置のための、該ナノ粒子およびヘッジホッグ阻害剤を同時におよび/または逐次投与するための使用説明書を含むものである。一部の実施形態において、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセルおよびオルタタキセルのいずれかである。一部の実施形態において、キットは、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む組成物、b)ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する有効量の薬剤、ならびにc)増殖性疾患(癌など)の有効な処置のための、該ナノ粒子およびヘッジホッグ阻害剤を同時におよび/または逐次投与するための使用説明書を含むナノ粒子を含むものである。
【0216】
一部の実施形態において、キットは、さらに、有効量のさらなる治療用薬剤(ゲムシタビンなど)を含むものである。例えば、一部の実施形態において、キットは、a)タキサンと担体タンパク質(アルブミンなど)を含むナノ粒子を含む組成物、b)ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する有効量の薬剤、c)有効量のゲムシタビン、ならびにd)増殖性疾患(例えば、膵臓癌などの癌)の処置のための、該ナノ粒子、ヘッジホッグ阻害剤およびゲムシタビンを投与するための使用説明書を含むものである。一部の実施形態において、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセルおよびオルタタキセルのいずれかである。一部の実施形態において、キットは、a)パクリタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標)など)を含む組成物、b)ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する有効量の薬剤、c)有効量のゲムシタビン、ならびにd)増殖性疾患(例えば、膵臓癌などの癌)の有効な処置のための、該ナノ粒子、ヘッジホッグ阻害剤およびゲムシタビンを投与するための使用説明書を含むナノ粒子を含むものである。
【0217】
該ナノ粒子とヘッジホッグ阻害剤は、別々の容器に存在させてもよく、単一の容器に存在させてもよい。キットは、1種類の明確な組成物を含むものであってもよく、2種類以上の組成物を含み、組成物の1つがナノ粒子を含み、組成物の1つがヘッジホッグ阻害剤を含むものであってもよいことは理解されよう。
【0218】
本発明のキットは、適当なパッケージ材内に存在させる。好適なパッケージ材としては、限定されないが、バイアル、ボトル、ビン、可撓性パッケージ材(例えば、密封(seled)Mylarまたはプラスチック袋)などが挙げられる。キットは、任意選択で、緩衝剤および解釈的情報などのさらなる成分を備えていてもよい。
【0219】
ナノ粒子タキサン組成物の使用に関する使用説明書には、一般的に、目的の処置のための投薬量、投与スケジュールおよび投与経路に関する情報が含まれている。容器は、単位用量、大量パッケージ(例えば、反復用量パッケージ)または下位単位用量であり得る。例えば、有効な個体の処置が長期間(1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月などのいずれかの期間、またはそれ以上)もたらされるように、本明細書に開示しているような充分な投薬量のタキサン(タキサンなど)を含むキットが提供され得る。また、キットは、多数回の単位用量のタキサンおよび医薬組成物ならびに使用のための使用説明書を含み、薬局(例えば、病院薬剤部および調剤薬局)での保存および使用に充分な量でパッケージングされるものであり得る。
【0220】
当業者には、本発明の範囲および精神の範囲内で、いくつかの実施形態が考えられ得ることが認識されよう。次に、以下の非限定的な実施例を参照することにより、本発明を、さらに詳細に説明する。以下の実施例により本発明をさらに例示するが、もちろん、本発明の範囲をなんら限定するものであると解釈されるべきでない。
【実施例】
【0221】
実施例1.Abraxane(登録商標)とヘッジホッグ経路阻害剤での膵臓癌の処置
この実施例では、Abraxaneをヘッジホッグ経路阻害剤(化合物X)と併用し、任意選択でゲムシタビンと併用して使用し、膵臓癌の処置をKPCマウスにおいて試験することについて記載する(KPCマウスについては、S.R.Hingoraniら,Cancer Cell 7,469(2005)参照)。KPCマウスは、膵臓細胞において内因性変異型Krasおよびp53対立遺伝子を条件付きで発現し、その病態生理学的および分子的特徴がヒト膵臓管腺癌腫(PDA)のものと類似した膵臓腫瘍が発生する。
【0222】
ヘッジホッグ経路阻害剤(化合物X)を、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)の5%水溶液に5mg/mLの濃度まで溶解させ(超音波処理およびボルテックスを伴う)、次いで、滅菌濾過する。この溶液を4℃で1週間まで保存する。化合物Xを、表示した用量で経口強制投与によって毎日投与する。ゲムシタビン粉末を、通常の滅菌生理食塩水中に5mg/mLで再懸濁させる。ゲムシタビンは、腹腔内注射によって週2回、表示した用量で投与する。Abraxane(登録商標)は、5mg/mL懸濁液として調製し、表示した用量で静脈内投与する。
【0223】
マウスを、以下のとおりの5つの処置群:1)ビヒクル;2)Abr−Abraxane(10〜200mg/kgを毎週、10〜180mg/kgを4日に1回、10〜30mg/kgを毎日、または30mg/kgを3週間に1回);3)X/gem−40mg/kgの化合物X+100mg/kgのゲムシタビン;4)X/Abr−40mg/kgの化合物X+Abraxane(10〜200mg/kgを毎週、10〜180mg/kgを4日に1回、10〜30mg/kgを毎日、または30mg/kgを3週間に1回);5)X/Abr/gem−40mg/kgの化合物X+100mg/kgのゲムシタビン+Abraxane(10〜200mg/kgを毎週、10〜180mg/kgを4日に1回、10〜30mg/kgを毎日、または30mg/kgを3週間に1回)に分ける。
【0224】
腫瘍の組織病理および灌流に対する効果を、8〜12日間の処置後に高分解能超音波、造影超音波、MRI、および19フッ素核磁気共鳴によって調べる。さらに、組織試料を種々の時点で採取し、液体窒素中でスナップ凍結させ、−80℃で保存する。組織試料をLC/MS、免疫蛍光、ホスホ−ヒストンH3(PH3)増殖解析、および切断カスパーゼ3(CC3)アポトーシス解析によって解析する。組織試料の平均血管密度および血管−腫瘍距離を測定する。また、生存試験も行ない、この間、腫瘍増殖および腫瘍体積を超音波によって週2回、エンドポイント基準が満たされるまで測定する。エンドポイント基準としては、腹水の発生、重度の悪液質(cachaxia)、初期体重の20%を超える有意な体重減少、または極度の衰弱もしくは不活発が挙げられる。
【0225】
実施例2.Abraxane(登録商標)とゲムシタビンでの膵臓癌の処置
外科的に切除したヒトゲムシタビン抵抗性膵臓腫瘍をヌードマウスに異種移植し、かくして、ヒト膵臓癌の生物学と非常に類似している組織学および薬物レベルを評価するためのインビボプラットフォームを作製する。
【0226】
ゲムシタビン粉末を、通常の滅菌生理食塩水中に5mg/mLで再懸濁させる。ゲムシタビンは、腹腔内注射によって週2回、表示した用量で投与する。Abraxane(登録商標)は、5mg/mL懸濁液として調製し、表示した用量で投与する。
【0227】
マウスを、以下のとおりの4つの処置群:1)ビヒクル−20μL/gの0.85%NaCl+8μL/gの5%HPBCD;2)gem−100mg/kgのゲムシタビン+8μL/gの5%HPBCD;3)Abr−Abraxane(10〜200mg/kgを毎週、10〜180mg/kgを4日に1回、10〜30mg/kgを毎日、または30mg/kgを3週間に1回)+20μL/gの0.85%NaCl;4)Abr/gem−100mg/kgのゲムシタビン+Abraxane(10〜200mg/kgを毎週、10〜180mg/kgを4日に1回、10〜30mg/kgを毎日、または30mg/kgを3週間に1回)に分ける。
【0228】
腫瘍の組織病理および灌流に対する効果を、8〜12日間の処置後に高分解能超音波、造影超音波、MRI、および19フッ素核磁気共鳴によって調べる。また、組織試料を収集し、LC/MSによって解析し、腫瘍内のAbraxane(登録商標)および/またはゲムシタビンレベルを調べる。
【0229】
Abraxane(登録商標)は腫瘍内に浸透し、間質の崩壊およびCD31+血管構造の増大を引き起こし、それにより、腫瘍内の微小血管密度を増大させる。さらに、Abraxane(登録商標)とゲムシタビンは相乗作用を示し、このとき、Abraxane(登録商標)処置により腫瘍内のゲムシタビン濃度が増大し、それにより、Abraxane(登録商標)処置以外の場合ではゲムシタビン抵抗性腫瘍のゲムシタビンによるより有効な処置が可能になる。
【0230】
実施例3.IPI−926とAbraxane(登録商標)の併用での膵臓異種移植片モデルの処置
IPI−926は、強力で選択的なスムーズンド(「Smo」)阻害剤である。IPI−926とAbraxane(登録商標)の組合せ(本明細書において「nab−パクリタキセル」とも称する)の効果を、膵臓癌異種移植片モデルにおいて試験した。
【0231】
IPI−926がGli1発現を調節する能力を、L3.6plおよびASPC−1の膵臓癌異種移植片モデルにおいて調べた。L3.6plおよびASPC−1ヒト膵臓細胞株をマウスに皮下移植した。IPI−926を40mg/kgで経口投与し、腫瘍を24時間後に収集した。Q−RT−PCR解析により、IPI−926処置によりマウスGli1 mRNAの発現が阻害されたことが示された(p<0.005,スチューデントのT検定)。図1参照。ヒトHhリガンド発現が検出され、ヒトGli1 mRNAレベルは該処置によってモジュレートされなかった(データ表示せず)。このデータは、膵臓異種移植片モデルではヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達がパラクリン様式で行なわれ得、その場合、ヒト腫瘍細胞がヘッジホッグリガンドを提供し、間質細胞においてマウスGli1を活性化させることを示す。IPI−926処置では、間質細胞においてマウスGli1発現が阻害された。
【0232】
腫瘍灌流に対するIPI−926の効果をL3.6pl膵臓癌異種移植片モデルにおいて調べた。L3.6pl腫瘍細胞株を皮下注射し、IPI−926での処置を開始した。IPI−926またはビヒクルを40mg/kgで連続7日間経口投与した。マウスを超音波画像解析に供した(イメージング手順中、灌流コントラスト増強(微粒気泡)を使用)。超音波によってイメージングを行なったIPI−926処置動物では、腫瘍内に、ビヒクル処置動物よりも多くの造影剤が示された。造影ピークに達するまでの時間を測定すると、ビヒクル処置動物と比べ、IPI−926処置動物において減少が見られた。以下の表は、ビヒクルまたはIPI−926で処置した場合のピークまでの時間の結果を示す。
【0233】
【表4】

平均すると、造影剤レベルのピーク時間は、それぞれ、ビヒクル処置動物とIPI−926処置動物(対比)において、11.0秒から4.75秒まで減少した(p=0.0321)。したがって、このデータは、皮下L3.6pl膵臓癌異種移植片モデルにおいて、腫瘍間質のヘッジホッグ経路をIPI−926で阻害すると、腫瘍灌流の増大がもたらされたことを示す。
【0234】
Abraxane(登録商標)と組み合わせたIPI−926の腫瘍増殖に対する効果を、L3.6pl膵臓異種移植片モデルにおいて調べた。L3.6plヒト膵臓細胞株をマウスに皮下移植し、移植後、10日目に処置を開始した。IPI−926を40mg/kgで1日おきに(「QOD」)経口投与し、Abraxane(登録商標)を20mg/kgで週1回(QW1)i.v.投与した。26日目、ビヒクル対照と比較すると、Abraxane(登録商標)単独群では61%の腫瘍増殖阻害が示され、一方、IPI−926とAbraxane(登録商標)の併用では83%の腫瘍増殖阻害がもたらされた(p=0.0048)。図2A参照。マウスの処置を続行し、1000mmに達するまでの時間を記録した。腫瘍が1000mmに達したら、マウスを試験から外した。図2Bは、試験が続行されたマウスのパーセンテージを移植後の日数の関数として示す。図2Bに示されるように、併用処置群では試験続行マウスのメジアン%の増大が示されたのに対し(54日目)(Abraxane(登録商標)単独(35日目))(p<0.001)、IPI−926は、単独薬剤では効果はなかった。したがって、このデータは、Abraxane(登録商標)と組み合わせたIPI−926での処置により、腫瘍増殖阻害の増大がもたらされ、この2種類の薬物の効果が相乗的であることを示す。
【0235】
また、IPI−926のL3.6pl腫瘍内のパクリタキセルレベルに対する効果、および細胞周期に対する効果も試験した。27日目、IPI−926およびAbraxane(登録商標)の最後の用量の24時間後、薬物動態解析およびリン酸化ヒストンH3(「PH3」)免疫染色のために腫瘍を収集した。図3Aに示されるように、IPI−926とAbraxane(登録商標)の併用処置では、腫瘍において、Abraxane(登録商標)単独で処置した腫瘍と比べて28%高いパクリタキセルレベルがもたらされた(p<0.001)。切片全体のPH3定量的解析では、併用処置群では、Abraxane(登録商標)単独群と対比すると、後期G/M期において33%の腫瘍細胞蓄積の増大が示された(p=0.0014)。図3Bおよび3C参照。したがって、IPI−926とAbraxane(登録商標)の併用により、パクリタキセル腫瘍レベルが増大し、後期G/M腫瘍細胞蓄積が増大した。このデータは、IPI−926による腫瘍灌流の増大に関するデータと合わせると、皮下膵臓腫瘍モデルにおいて、IPI−926により腫瘍への薬物送達が向上したことを示す。
【0236】
また、IPI−926とAbraxane(登録商標)の併用の効果を、ASPC−1ヒト膵臓腫瘍モデルにおいても試験した。ASPC−1ヒト膵臓細胞株を皮下移植し、移植後、20日目に処置を開始した。IPI−926を40mg/kgでQODにて経口投与し、Abraxane(登録商標)を20mg/kgでQW1にてi.v.投与した。最終i.v.用量のAbraxane(登録商標)を34日目に投与し、最終用量のIPI−926は41日目に投与した。処置が終了した後、再増殖をモニタリングした。図4は、IPI−926とAbraxane(登録商標)の併用により、ASPC−1腫瘍を有するマウスにおいて、腫瘍増殖阻害の増大および腫瘍再増殖の遅延がもたらされたことを示す。41日目、ビヒクル対照と比較すると、IPI−926およびAbraxane(登録商標)では、ともに、それぞれ、38%および34%の腫瘍増殖阻害をもたらす単独薬剤での活性が示された。IPI−926とAbraxane(登録商標)を併用すると、77%の腫瘍増殖阻害がもたらされた(p=0.0048)。図4参照。
【0237】
実施例4.Abraxane(登録商標)と種々のヘッジホッグ阻害剤の併用での結腸癌の処置
種々のヘッジホッグ(「Hh」)阻害剤、すなわち、GDC−0449(ABI2012としても知られている)、ABI1914、ABI2088およびABI2099の構造を以下に示す。Gli−Bla細胞系アッセイにおいてABI2012、ABI1914、ABI2088およびABI2099の効果を試験した。EC50値を以下に示す。EC50は応答の指標である。
【0238】
【化10】

キナーゼ阻害に対する種々のヘッジホッグ阻害剤(ABI2012、ABI1914、ABI2008およびABI1915)の活性を試験した。以下の表は、細胞を1μMの各化合物で処置した場合のキナーゼ阻害%を示す。いずれの被験化合物でも、有意なキナーゼ阻害は示されなかった。したがって、ヘッジホッグ阻害剤はキナーゼ活性を阻害しない。これらの化合物はミクロソーム内で安定であった。
【0239】
【表5】

腫瘍増殖に対するABI2012、ABI1914、ABI2088およびABI2099の各々の効果を、ヒト結腸腺癌腫HT29異種移植片モデルにおいて試験した。マウスにHT29細胞を移植し、ABI2012、ABI1914、ABI2088およびABI209をマウスに、腹腔内経路(「i.p.」)によって、2種類の投薬量:75mg/kgをqdx12および100mg/kgをqdx12で投与した。図5Aおよび5Cに示されるように、ABI2012、ABI1914、ABI2088およびABI2099はいずれも、単独薬剤では、HT29異種移植片モデルにおいて有意な腫瘍阻害効果を示さなかった。ABI2012、ABI1914、ABI2088またはABI2099で処置したHT29異種移植片を有するマウスの体重をモニタリングした(図5Bおよび5Dに示す)。
【0240】
種々のヘッジホッグ経路阻害剤(ABI2012、ABI1914、ABI2088またはABI2099)とAbraxane(登録商標)の併用の効果を、HT29異種移植片モデルにおいて試験した。ABI2012、ABI1914、ABI2088およびABI2099の各々を、75mg/kgをqdx12でi.p.投与し、Abraxane(登録商標)は、10mg/kgをq4dx3でi.v.投与した。腫瘍体積を測定した。図6Aに示されるように、試験した各化合物は、Abraxane(登録商標)と併用すると腫瘍増殖に対する阻害を示した。ABI2088およびABI2099では、いずれも、Abraxane(登録商標)の抗腫瘍活性が有意に増強された。図6A参照。ABI2088は、Abraxane(登録商標)と併用すると、HT29異種移植片モデルにおいて22日目に約100%の腫瘍増殖阻害(「TGI」)を示した。Abraxane(登録商標)と併用したABI2012、ABI1914、ABI2088およびABI2099の各々で処置したHT29異種移植片を有するマウスの体重をモニタリングした(図6Bに示す)。
【0241】
ABI2012(GDC−0449)およびABI2088の薬物代謝および薬物動態を試験した。以下の表に示す。
【0242】
【表6】

実施例5.Abraxane(登録商標)と種々のヘッジホッグ阻害剤の併用での結腸癌の処置
種々のヘッジホッグ(「Hh」)阻害剤、すなわち、ABI1C4、ABI1C5、ABI1C6およびABI1C7の構造を以下に示す。Gli−Bla細胞系アッセイにおけるこれらの化合物の効果を試験する。
【0243】
【化11】

キナーゼ阻害に対する化合物ABI1C4、ABI1C5、ABI1C6およびABI1C7の活性を試験する。腫瘍増殖に対する各化合物の効果は、ヒト結腸腺癌腫HT29異種移植片モデルにおいて試験する。マウスにHT29細胞を移植し、ABI1C4、ABI1C5、ABI1C6およびABI1C7をマウスに、腹腔内経路(「i.p.」)によって2種類の投薬量:75mg/kgをqdx12および100mg/kgのqdx12で、単独薬剤として、またはAbraxane(登録商標)(10mg/kgをq4dx3でi.v.投与)との併用のいずれかで投与する。腫瘍体積を測定する。
【0244】
実施例6.Abraxane(登録商標)と種々のヘッジホッグ阻害剤の併用での結腸癌の処置
種々のヘッジホッグ(「Hh」)阻害剤、すなわち、ABI2C4、ABI2C5、ABI2C6およびABI2C7の構造を以下に示す。Gli−Bla細胞系アッセイにおけるこれらの化合物の効果を試験する。
【0245】
【化12】

キナーゼ阻害に対する化合物ABI2C4、ABI2C5、ABI2C6およびABI2C7の活性を試験する。腫瘍増殖に対する各化合物の効果は、ヒト結腸腺癌腫HT29異種移植片モデルにおいて試験する。マウスにHT29細胞を移植し、ABI1C4、ABI2C5、ABI2C6およびABI2C7をマウスに、腹腔内経路(「i.p.」)によって2種類の投薬量:75mg/kgをqdx12および100mg/kgのqdx12で、単独薬剤として、またはAbraxane(登録商標)(10mg/kgをq4dx3でi.v.投与)との併用のいずれかで投与する。腫瘍体積を測定する。
【0246】
前述の本発明は、明瞭な理解の目的のための実例および実施例としてある程度詳細に記載しているが、当業者には、一定の軽微な変更および修正が行なわれ得ることは自明であろう。したがって、本記載および実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【0247】
本明細書に挙げた刊行物、特許出願および特許などの参考文献はすべて、引用により、各参考文献が、あたかも具体的に個々に引用により組み込まれて示されており、その全体が本明細書に示されているのと同程度に、本明細書に組み込まれる。
【0248】
【化13】

【0249】
【化14】

【0250】
【化15】

【0251】
【化16】

【0252】
【化17】

【0253】
【化18】

【0254】
【化19】

【0255】
【化20】

【0256】
【化21】

【0257】
【化22】

【0258】
【化23】

【0259】
【化24】

【0260】
【化25】

【0261】
【化26】

【0262】
【化27】

【0263】
【化28】

【0264】
【化29】

【0265】
【化30】

【0266】
【化31】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体に:
a) タキサンとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、および
b)有効量のヘッジホッグ阻害剤
を投与することを含む、該個体の癌の処置方法。
【請求項2】
前記ヘッジホッグ阻害剤がスムーズンドの活性を阻害するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヘッジホッグ阻害剤がシクロパミンまたはその誘導体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘッジホッグ阻害剤が、GDC−0449、XL139、IPI926、IPI609およびLDE225からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、有効量のゲムシタビンを投与することを含む、請求項1〜4いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、基底細胞癌、髄芽腫、グリア芽腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄球性白血病(CML)、急性骨髄球性白血病、膵臓癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、食道癌、胃癌、胆道癌、前立腺癌、肝臓癌、肝細胞癌、胃腸の癌、胃癌、卵巣癌、ならびに膀胱癌からなる群より選択される、請求項1〜5いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が膵臓癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が基底細胞癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
タキサンとアルブミンを含むナノ粒子を含む前記組成物と前記ヘッジホッグ阻害剤が同時投与される、請求項1〜8いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
アルブミンを含むタキサンのナノ粒子を含む前記組成物と前記ヘッジホッグ阻害剤が逐次投与される、請求項1〜8いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記タキサンがパクリタキセルである、請求項1〜10いずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記タキサンがドセタキセルである、請求項1〜10いずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物中の前記ナノ粒子の平均直径が約200nm以下である、請求項1〜12いずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子組成物中の前記アルブミンと前記タキサンの重量比が1:1より小さく9:1までである、請求項1〜13いずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子組成物が実質的にCremophorを含有していない、請求項1〜14いずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記個体がヒトである、請求項1〜15いずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ヘッジホッグ阻害剤は、経口投与される、請求項1〜16いずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ヘッジホッグ阻害剤が前記ナノ粒子組成物の投与前に投与される、請求項1〜17いずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヘッジホッグ阻害剤が前記ナノ粒子組成物の投与後に投与される、請求項1〜17いずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−503174(P2013−503174A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526948(P2012−526948)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/046684
【国際公開番号】WO2011/025838
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(508061974)アブラクシス バイオサイエンス, エルエルシー (18)
【Fターム(参考)】