タキシングブレーキ抑制システム
【解決手段】タキシングブレーキ抑制システムは、タキシングブレーキ抑制が作動しているとき所与のブレーキペダル付加に対して2倍のブレーキ力を指令する新たなペダル「フィーリング」ロジックを追加することで、タキシングブレーキ抑制システムの使用によって発生しうるペダル「フィーリング」の不連続問題を解決する。タキシングブレーキ抑制システムは、タキシングブレーキ抑制が作動中か非作動中かに応じて所与のブレーキペダル付加に対して実現される減速度の違いを補償する、二つの異なるブレーキ力−ブレーキペダル付加の曲線に依存している。このようなシステムは、制動中の望ましくない減速バンプ、ヨー効果およびペダルフィーリングの変化を効果的に排除する。前後ブレーキペアのいずれかに任意の非常時タキシングブレーキ抑制条件が存在する場合、前後のブレーキペアの両方でタキシングブレーキ抑制機構が停止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2009年1月29日に出願された米国仮特許出願61/148,248、2009年7月14日に出願された米国仮特許出願61/225,519、および2010年1月27日に出願された非仮出願12/695,121を基礎としこれらの優先権を主張する。その内容の全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は一般に航空機のブレーキシステムに関し、より詳細には、カーボンブレーキの摩耗を軽減するタキシング(地上走行)ブレーキ抑制システムにおける改善に関する。
【背景技術】
【0003】
カーボンブレーキは、大量の乗客または積載貨物を運搬するように設計された最新の航空機に多くに備え付けられている。この種のブレーキは、摩擦材およびヒートシンクとして機能する炭素複合材料の使用に依存している。カーボンロータディスクとカーボンステータディスクのスタックが車軸に沿って交互に同軸配置されている。ロータディスクは車輪に対して車輪に回転可能に固定される一方、ステータディスクは静止車軸に固定される。圧力プレートとバックプレートの間でスタックを圧縮して隣合うディスクの摩擦面を互いにかみ合わせるように構成されたピストンアクチュエータの加圧によって、ブレーキ力が生み出される。カーボンブレーキは、重量および性能の点でスチールブレーキよりも好ましいが、交換から次の交換までの間の着陸サイクルの関数として表されるスタックの交換コストは、スチールブレーキよりも遙かに高い。
【0004】
吸収される総エネルギー量によってブレーキ寿命が主に決定される従来のスチールブレーキとは対照的に、カーボンブレーキは、ブレーキの作用回数の関数として摩耗する。その理由は、ブレーキ温度が低い場合、初期ブレーキ付与時に摩耗が最大になるからである。その結果、滑走路とゲートの間の誘導路を走行するときや、離陸を待機する列で遭遇することがあるのろのろ運転(stop-and-go traffic)の間に、日常的にブレーキが数十回踏まれることがあるので、カーボンブレーキ摩耗の大半は地上走行(タキシング)中に発生する傾向がある。
【0005】
ブレーキシステムは、低エネルギーのブレーキ付与中、すなわち地上走行中に一回以上のブレーキを無効化することによって、ブレーキ付与の回数を減らしてカーボンブレーキの摩耗率を低下させるように工夫されてきた。これにより、個々のブレーキのブレーキ付与回数が少なくなる一方で、各付与の間の増大したブレーキ負荷が摩耗に悪影響を与えることがない。停止性能に妥協することなく、また航空機の安定性に悪影響を与えることなく、種々のブレーキ付与車輪間での摩耗率を均等にするブレーキ無効化のシーケンスを決定するために、このようなシステムに依存することがある。それにも関わらず、この種のシステムは、激しくかつ好ましくない減速率の変動(「減速バンプ」)、逆位相転舵が必要となる望ましくないヨー力、およびタキシングブレーキ抑制しきい値を越えるときのブレーキ「フィーリング」の変化を含む、いくらかの欠点を有することがある。
【0006】
図1に戻り、動作時のタキシングブレーキ抑制を持たない、現在のボーイング787航空機のタキシングブレーキ抑制システム(taxi brake inhibit system)では、全てのタキシングブレーキが動作し、タキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)が着陸装置の航空機ブレーキの全てに同時に分布しており、通常のブレーキペダル「フィーリング」になる。しかしながら、図2に示すように、動作時に従来のタキシングブレーキ抑制モードを有する従来のボーイング787航空機のタキシングブレーキシステムの動作中には、以下のようになる。第1のブレーキ設定(1)では、ブレーキの第1の半分がタキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)で動作し、ブレーキの第2の半分がタキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力)ゼロで動作する。第2のブレーキ設定(2)では、ブレーキの第2の半分がタキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)で動作し、ブレーキの第1の半分がタキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)がゼロで動作する。通常のタキシングブレーキ付与毎にこのような態様で交互にブレーキがかかりカーボンブレーキ寿命を改善する。その結果、半分の時間に二倍のトルクが付与される。こうして、タキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)が全てのブレーキに等しく分配される。
【0007】
しかしながら、タキシングブレーキ抑制モードの従来の実装を有さない航空機ブレーキと、有する航空機ブレーキの動作における、ブレーキ力(FB)−対応ブレーキペダル変位(Xp)の関係を表す図3および図4に示すように、通常のタキシングブレーキ動作中の半分のブレーキの付与は、ブレーキ力指令(FB)−ブレーキペダル付加(Xp)の関係を表す特定の曲線にしたがって通常は実施される。その結果、タキシングブレーキ抑制が作動しているとき、単位ペダル力当たりの航空機減速度がわずか半分であるブレーキペダル「フィーリング」が生じる。このため、タキシングブレーキ抑制が「オン」のときと「オフ」のときとでブレーキペダル「フィーリング」の変化が二倍になる。また、航空機の一方の側でタキシングブレーキ抑制が「オン」であり他方の側で「オフ」のとき、ブレーキペダル「フィーリング」における非対称差が二倍になる。加えて、ペダル変位(Xp)−経過時間(t)のグラフと、ブレーキ力(FB)−経過時間(t)のグラフを表す図7に示すように、タキシングブレーキ抑制機構は、その値を超えると抑制されたブレーキが付与される調節可能な45%のブレーキ力指令しきい値を含むので、「45%のしきい値」を超えるたびに減速「バンプ」が二倍になる。これらの「フィーリング」の変化は非常に大きく、好ましくない場合がある。
【0008】
あらゆるタキシングブレーキ抑制実装に対して、その値を超えるとタキシングブレーキ抑制が停止されるブレーキ力指令しきい値を設定する必要がある。これにより、非常停止中の全てのブレーキの作動が保証される。そのしきい値を設定する際、タキシングブレーキの稼働中にしきい値を超えないように十分高く設定されなければならない。なぜなら、抑制されたブレーキが突然アクティブになると、非常に激しくかつ不都合である「減速バンプ」が発生するからである。しかしながら、「抑制されている」他のブレーキを補償するために「アクティブな」ブレーキで二倍高くなるブレーキ力に起因して、タキシングブレーキの稼働中にスリップ(skid)が発生しないように、しきい値は十分に小さく設定されなければならない。なぜなら、こうしたスリップは激しく不都合である「減速バンプ」の原因となるからである。特定のタキシングブレーキ抑制機構は一度にブレーキの1/3を抑制するに過ぎず、したがって両方の基準を満たすようにしきい値を設定することができる。すなわち、通常のタキシングブレーキ中のしきい値超過を防止するほど大きく、アンチスキッド挙動を防止するほど小さくしきい値を設定することができる。別のタキシングブレーキ抑制機構は一度にブレーキの半分を抑制するので、両方の基準を満たすようにしきい値を設定することができない。結果として、アイドルブレーキの突然の付与に起因して(しきい値が高すぎることによる)、あるいはアンチスキッド挙動に起因して(しきい値が低すぎることによる)、またはその両方に起因して、タキシングブレーキ抑制機構は、通常のタキシングブレーキ中の激しくかつ好ましくない減速バンプの原因となる。
【0009】
特定の航空機は二つのブレーキシステム制御ユニットを備える。一つは航空機の右側のブレーキ用であり、もう一つは左側のブレーキ用である。ブレーキシステム制御ユニット(BSCU)のいずれも、他方の側のブレーキに対するブレーキペダル付加、ブレーキ解除ステータス(Brake Deactivated status)、またはアンチスキッド欠陥ステータス(Antiskid Fault status)が何であるかを知らない。これは、タキシングブレーキ抑制機構の欠点となる。なぜなら、航空機の一方の側がタキシングブレーキ抑制を作動しつつ他方の側が作動させないことが可能になるからである。航空機の一方の側でのみタキシングブレーキ抑制が作動するとき、航空機の二つの側の間でのブレーキ「フィーリング」に顕著な差が生じ、タキシングブレーキ中に航空機が一方の側に(全てのブレーキがアクティブである側に向けて)引っ張られる原因となる。これは、パイロットにとって非常に不都合であり、またパイロットがノーズステアリング(nose steering)の釣り合いを取ろうとするとき、航空機の二つの側の間で顕著なエネルギー不平衡を生じさせる。
【0010】
タキシングブレーキ抑制の作動時、パイロットは、所与のブレーキペダル付加に対してブレーキ力の二倍の減少を感じとる。これは、ブレーキペダルの著しく「柔らかな(mushy)」フィーリングを生み出す。したがって、タキシングブレーキ付与毎にペダルを二倍強く踏まなければならず、これがパイロットにとって不都合であることを以前の経験が示している。加えて、タキシングブレーキ抑制モードから通常ブレーキモードに変わるときのペダル「フィーリング」の違いは非常に明白である。このこともパイロットにとって不都合であることを以前の経験が示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フォワードピッチオーバー(forward pitch-over)保護にも潜在的な問題がある。これは、現在、ブレーキ力−ブレーキペダル付加曲線に関する時間ベースのアルゴリズムによって処理されており、タキシングブレーキ抑制を組み込むときにその実装が書き直される必要がある。なぜなら、二つの機能は相互に関連しているからである。加えて、最大で10日間一つのブレーキが非作動(「BRAKE DEACTIVATED」)、一つのブレーキのアンチスキッド機能の喪失(「ANTISKID FWD」または「ANTISKID AFT」)、一つのブレーキの制動の喪失(「BRAKE FWD」または「BRAKE AFT」)、両方のブレーキのアンチスキッドの喪失(「ANTISKID STATUS」)、または両方のブレーキの制動の喪失(「BRAKE CONTROLS」)の間などの、タキシングブレーキ抑制機構の非常動作中に、過度のブレーキ摩耗が起こる可能性がある。二つの非常時条件は、50%の通常の航空機減速で車輪のロックアップの原因となる。ブレーキシステム制御ユニット(BSCU)が通常は監視しておらず、これらの故障効果の一つ以上の原因となる別の電子ブレーキ故障条件が起こることもある。ボーイング787航空機に対して、既存のタキシングブレーキシステムのこのような欠点を克服する改善されたタキシングブレーキシステムを提供することが望ましい。本発明はこれらの要望および他の要望を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
簡潔にかつ一般的に述べると、本発明は、新たなペダル「フィーリング」ロジックを追加することで、タキシングブレーキ抑制機構を適用することによるペダル「フィーリング」の不連続問題を解決するタキシングブレーキ抑制システムおよび方法を提供する。より詳細には、本発明は、タキシングブレーキ抑制の作動時に、所与のブレーキペダル付加に対して二倍のブレーキ力が指令される新たなペダル「フィーリング」ロジックを追加するタキシングブレーキ抑制システムおよび方法を提供する。そのときに半分のブレーキが抑制されるので、ブレーキペダルの全体の「フィーリング」は全てのブレーキがアクティブであるときと同じになる。
【0013】
本発明は、航空機の制動時に使用される二つの異なるブレーキ力−ブレーキペダル付与曲線を採用する。「通常時」曲線は、タキシングブレーキ抑制の非作動時に使用され、タキシングブレーキ抑制の作動時には「タキシング抑制」曲線が使用される。後者の曲線は、所与のブレーキペダル付与に対して追加のブレーキ力を与えて非作動にされたブレーキを補償する働きをする。結果として、航空機は、タキシングブレーキ抑制の作動時であるか非作動時であるかにかかわらず、所与のブレーキペダル付与に対して同じ割合で減速する。さらに、航空機の片側でのみタキシングブレーキ抑制が作動している場合に、望ましくないヨー力が排除される。最後に、いずれの動作モードにおいても、ブレーキペダルの「フィーリング」が等しくなる。
【0014】
カーボンブレーキに対するブレーキトルク−ブレーキ力指令の間の関係における任意の非線形性を考慮して、「タキシング抑制」曲線と「通常時(ノーマル)」曲線との差の倍率を調整することができる。「通常時」曲線から「タキシング抑制」曲線への遷移は、ブレーキが付与されていないときに生じるので、瞬時に行うことができる。他方、「タキシングブレーキ抑制」曲線から「通常時」曲線への遷移は、アクティブなブレーキがブレーキ力を低下させるのと同時に抑制されたブレーキが付与される過渡条件の間に、ブレーキ力全体の変化を最小化するように調整された伝達関数(transfer function)を介して達成される。
【0015】
本発明はまた、タキシングブレーキ抑制機構の非常動作中に遭遇する問題を解決するシステムおよび方法を提供する。ブレーキ非作動(Brake Deactivated)に対してはタキシングブレーキ抑制が停止され、BSCUの分割(partitioning)の要件のために、影響を受ける前後のブレーキペアに対してのみタキシングブレーキ抑制が停止される。任意の他の非常条件に対しては、タキシングブレーキ抑制はオンのままである。本発明によると、非常条件の間、50%の通常の航空機減速における車輪のロックアップに対する推奨される解決策は、任意の非常条件がいずれかのペアに存在する場合、隣接する前後のブレーキペアの両方に対してタキシングブレーキ抑制を停止することである。
【0016】
加えて、本発明によると、ブレーキシステム制御ユニット(BSCU)は、電子ブレーキ駆動コントローラ(EBAC)の非常動作を表すEBACステータスメッセージを読み取り、着陸装置の二つの前後ブレーキペアの間で非常ステータスを共有するように改良される。さらに、任意の非常条件がいずれかのペアに存在する場合、前後両方のブレーキペアについてタキシングブレーキ抑制機構が停止される。
【0017】
したがって、本発明は、航空機ブレーキシステム動作のタキシングブレーキ抑制モードを制御するシステムを提供する。航空機ブレーキシステムは少なくとも一つの着陸装置を備え、各着陸装置は車輪ブレーキの前輪ペアと車輪ブレーキの後輪ペアとを備える。車輪ブレーキの少なくとも一部は、タキシングブレーキ抑制モードの間、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令にもかかわらず、ブレーキを非作動状態にされる。タキシングブレーキ抑制モードを制御するシステムは、少なくとも一つの着陸装置に動作可能に接続されるとともに、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの動作を制御するように構成された、少なくとも一つの電子ブレーキ作動コントローラと、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令を受け取るように動作するブレーキシステム制御ユニットとを備える。ブレーキシステム制御ユニットは、電子ブレーキ駆動コントローラと接続され電子ブレーキ駆動コントローラを制御して、ブレーキペダル指令で指令されたブレーキ力よりも大きなブレーキ力を発生させるように動作する。好ましい態様では、タキシングブレーキ抑制モードの間、車輪ブレーキの半分が非作動にされ、ブレーキシステム制御ユニットは、電子ブレーキ駆動コントローラを制御して、タキシングブレーキ抑制モードの間、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力の二倍を発生させるように動作する。
【0018】
本発明の別の好適な態様では、電子ブレーキ駆動コントローラは、電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージを生成するように動作し、ブレーキシステム制御ユニットは、電子ブレーキ駆動コントローラに接続され、電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージを受け取る。別の好適な態様では、ブレーキシステム制御ユニットは、電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージに応答して、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対してタキシングブレーキ抑制モードを停止するように動作する。
【0019】
本発明はまた、航空機ブレーキシステムのタキシングブレーキ抑制動作モードを制御する方法を提供する。この方法は、少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対して、指令されたブレーキ力のブレーキペダル指令を生成し、ブレーキペダル指令を受け取り、ブレーキペダル指令に応答して、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力よりも大きなブレーキ力を発生させて、タキシングブレーキ抑制モードの間に非作動にされた少なくとも一部の車輪ブレーキを補償することを含む。好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、タキシングブレーキ抑制モードが非作動のとき、第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線にしたがって指令されたブレーキ力を発生させ、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線にしたがったタキシングブレーキ抑制モードの間、ブレーキペダル指令よりも大きな指令されたブレーキ力を発生させることを含む。
【0020】
別の好適な態様では、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線は、所与のブレーキペダル付加に対して二倍のブレーキ力を与える。別の好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、車輪ブレーキが付加されていないとき、第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む。別の好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、アクティブなブレーキがブレーキ力を低下させるのと同時に抑制されたブレーキが付加されている間に、ブレーキ力全体の変化を最小化するように調整された伝達関数を介して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む。別の好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、非作動にされたブレーキが再び付加される遅延、例えば約0.3秒である遅延を近似した時間遅延を経由して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む。別の好適な態様では、タキシングブレーキ抑制モードの間、車輪ブレーキの半分が非作動にされ、別の好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、タキシングブレーキ抑制モードの間、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力の二倍を発生させることを含む。
【0021】
別の好適な態様では、本発明の方法は、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動の非常動作を示すステータスメッセージを生成し、非常動作を示すステータスメッセージを受け取り、非常動作を示すステータスメッセージに応答して、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対するタキシングブレーキ抑制モードを停止することを含む。
【0022】
本発明のこれらのおよび他の特徴と利点は、本発明の原理を例示的に表す添付の図面とともになされる好適な実施形態の詳細な説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用されない、ボーイング787航空機タキシングブレーキシステムの動作を示す図である。
【図2】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用された、ボーイング787航空機タキシングブレーキシステムの動作を示す図である。
【図3】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用されない、ボーイング787航空機タキシングブレーキシステムのペダル「フィーリング」を示す図である。
【図4】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用された、ボーイング787航空機タキシングブレーキシステムのペダル「フィーリング」を示す図である。
【図5】本発明にしたがった、航空機ブレーキシステムのタキシングブレーキ抑制動作モードを制御するシステムの模式図である。
【図6】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムが適用されたボーイング787航空機タキシングブレーキシステムと、本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムが適用されないボーイング787航空機タキシングブレーキシステムのペダル「フィーリング」を比較した図である。
【図7】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用されたボーイング787航空機タキシングブレーキシステムの減速「バンプ」を比較した図である。
【図8】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムが適用されたボーイング787航空機タキシングブレーキシステムの減速「バンプ」を比較した図である。
【図9】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して非作動にされたブレーキを有するボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図10】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して非作動にされたブレーキを有するボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図11】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して一つのブレーキに対するアンチスキッドを喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図12】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して一つのブレーキに対するアンチスキッドを喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図13】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して一つのブレーキに対する制動を喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図14】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して一つのブレーキに対する制動を喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図15】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して前後ブレーキペアに対するアンチスキッドを喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図16】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して前後ブレーキペアに対するアンチスキッドを喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図17】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して前後ブレーキペアに対する制動を喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図18】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して前後ブレーキペアに対する制動を喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図19】ボーイング787航空機タキシングブレーキ抑制システムの従来の動作と、本発明のシステムおよび方法にしたがったボーイング787航空機タキシングブレーキ抑制システムの動作との比較の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
限定ではなく例示を目的として提供される図面を参照して、本発明は、航空機ブレーキのタキシングブレーキ抑制モードを制御するシステムおよび方法を提供する。図5を参照して、航空機ブレーキの動作中のタキシングブレーキ抑制モードを制御するシステム30は、電子ブレーキ駆動コントローラ(EBAC)34を制御するように構成されたブレーキシステム制御ユニット(BSCU)32を備える。ブレーキシステム制御ユニットは、システムバス36によって電子ブレーキ駆動コントローラに電気的に接続される。電子ブレーキ駆動コントローラは、着陸装置38などの着陸装置の動作を制御するように構成される。着陸装置38は、電子ブレーキ駆動コントローラが接続される車輪ブレーキの前輪ペア40a、40bと、電子ブレーキ駆動コントローラが接続される車輪ブレーキの後輪ペア42a、42bとを含む。車輪ブレーキの前後輪ペアは、左側車輪ブレーキ前後ペア44と、右側車輪ブレーキ前後ペア46のグループを形成している。パイロットによって操作される航空機ブレーキペダル48の位置は、通常、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令信号52を生成するマイクロコントローラ50によって読み取られ、ペダル指令信号はブレーキシステム制御ユニットによって受け取られる。電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージ54は、システムバス56を介してブレーキシステム制御ユニットによって受け取られる。
【0025】
本発明のシステムおよび方法は、タキシングブレーキ抑制の作動時に、所与のブレーキペダル付加に対して二倍のブレーキ力が指令される新たなペダル「フィーリング」ロジックを追加することで、タキシングブレーキ抑制機構の適用に起因するペダル「フィーリング」の不連続問題を解決する。そのときには半分のブレーキが抑制されるので、全体のブレーキペダル「フィーリング」は、全てのブレーキが作動しているときと同一になる。
【0026】
以下の簡単なロジックでこの特徴が実装される。
【0027】
航空機の各側に対するタキシングブレーキ抑制(TBI)ロジック:
ロジック:
「TBIイネーブル(TBI Enable)」は、航空機のその側の前後ブレーキペアの両方に対するTBIを可能にする IF:
・ブレーキ力指令が<50%、AND
・速度<45ノット、AND
・着陸時自動ブレーキが付与されていない、AND
・RTO自動ブレーキが付与されていない、AND
・いずれのブレーキも「非作動(Deactivated)」ではない、AND
・いずれのブレーキも「アンチスキッド喪失(Antiskid Fault)」を示していない、AND
・Either:ブレーキペダル付加<10% OR 「TBIイネーブル」指令が存在
・「Fwd TBI On」が前輪ブレーキペアのブレーキ付加を抑制する(すなわち、前輪ブレーキペアに対するTBIをイネーブルする) IF:
・「TBIイネーブル」指令が存在、AND
・「ブレーキペアセレクト(Brake Pair Select)」が「オン」(すなわち、前輪ブレーキペアが選択される)、AND
・「Aft TBI On」指令が存在しない、AND
・Either:ブレーキペダル付与>20% OR 「Fwd TBI On」指令が存在。
・「Aft TBI On」が後輪ブレーキペアの付加を抑制する(すなわち、後輪ブレーキペアに対するTBIを可能にする)IF
・「TBIイネーブル」指令が存在する、AND
・「ブレーキペアセレクト」が「オフ」(すなわち、後輪ブレーキペアが選択される)、AND
・「Fwd TBI On」指令が存在しない、AND
・Either:ブレーキペダル付加>20% OR 「Aft TBI On」指令が存在
・「ブレーキペアセレクト」 BSCUの電源がオンにされるたび、前輪ブレーキペアまたは後輪ブレーキペアが選択されるか、または両方とも選択されない:
「ブレーキペアセレクト」が「オン」のとき、前輪ブレーキペアが選択される。「ブレーキペアセレクト」が「オフ」のとき、後輪ブレーキペアが選択される。「ブレーキペアセレクト」は、BSCUの電源オン時に「オン」に初期設定される(これは、開始する前輪ブレーキペアを任意に選択する)。
・「ブレーキペアセレクト」は「オフ」に指令される(すなわち、後輪ブレーキペアが選択される) when:「Fwd TBI On」指令が最初に存在する THEN ブレーキペダル付加<10%
・「ブレーキペアセレクト」が「オン」に指令される(すなわち、前輪ブレーキペアが選択される) when:「Aft TBI On」指令が最初に存在する THEN ブレーキペダル付加<10%
・デバウンス(Debounce):上記ロジック信号のそれぞれは、瞬間的な偽信号がロジックを実行するのを防止するために「デバウンス」されるべきである。例えば、「ブレーキペダル付加>50%」の信号は、5フレームまたは10フレームの間存在した後、有効であると認識される。
【0028】
特徴:
・「TBIイネーブル」ロジックにより、通常のタキシングブレーキング中にのみタキシングブレーキ抑制が作動することが保証される。「TBIイネーブル」指令が存在しない場合、タキシングブレーキ抑制特徴は動作しない(すなわち、全てのブレーキが完全に稼働している)。「TBIイネーブル」指令は、以下の条件のいずれかが発生するときには存在しない。
【0029】
1)ブレーキペダルからのブレーキ力指令が50%を超えるときは常に(これにより、非常停止時には全てのブレーキが作動していることが保証される)
【0030】
2)航空機の速度が45ノットを超えるとき(これにより、高エネルギーの停止中に全てのブレーキが作動し、高いエネルギーが全てのブレーキに分配されることが保証される)
【0031】
3)着陸時自動ブレーキまたはRTO自動ブレーキが付与される(これにより、高エネルギーの停止中に全てのブレーキが作動し、高いエネルギーが全てのブレーキに分配されることが保証される)
【0032】
4)いずれかのブレーキが非作動である(Deactivated)(これにより、連続する滝深部ブレーキ付加のそれぞれでブレーキ「フィーリング」が変化することがなくなる。また、非作動である軸の片方のブレーキを補償するために、同軸上の他のブレーキが、タキシングエネルギーが2倍になること、および一方のブレーキのブレーキ力が「非抑制時」の値の4倍になることを見ることがなくなる。非作動のブレーキを用いた動作は滅多に起こらない事象なので、ブレーキ非作動(Brake Deactivation)中にタキシングブレーキ抑制を停止しても全体のブレーキ摩耗に顕著に影響を与えることはないことに注意する。)
【0033】
5)いずれかのブレーキがアンチスキッド喪失(Antiskid Fault)を有する(これにより、二つの「アクティブな」ブレーキのブレーキ力を「非抑制時」の値よりも2倍大きくして、抑制中の他の二つのブレーキを補償した結果として、車輪のロックアップが生じなくなる。たとえアンチスキッド喪失(Antiskid Fault)が一つのブレーキのみで発生した場合でも、一方の側の4つのブレーキ全てでタキシングブレーキ抑制を停止することで、連続するタキシングブレーキ付加のそれぞれでブレーキ「フィーリング」が変化しなくなる。アンチスキッド喪失での動作は滅多に起こらない事象なので、アンチスキッド喪失が存在するときにタキシング抑制を停止しても全体のブレーキ摩耗に顕著な影響を与えることはないことに注意する。)
【0034】
6)ブレーキペダル付加が10%未満に低下 OR 「TBIイネーブル」指令が存在(これにより、45ノットを超えてマニュアル制動が付与されたときに、航空機が45ノットを通過して減速するときタキシングブレーキ抑制が突然作動して1/2のブレーキを解放するようなことがなくなる。一旦航空機が45ノット未満になりブレーキペダルが解放されると、後続の「通常時」タキシングブレーキ付加のそれぞれに対してタキシングブレーキ抑制がアクティブになる。このロジックにより、全てのブレーキがアクティブである「非常時の」マニュアルブレーキ付加の後、ブレーキペダルが解放されるまで全てのブレーキがアクティブのままになることが保証される。後続の「通常時」タキシングブレーキ付加に対してタキシングブレーキ抑制が再開されてもよい。)
【0035】
7)「Fwd TBI On」および「Aft TBI On」ロジックは、全ての「TBIイネーブル」条件が満足するとき、航空機の一方の側の前後に並んだブレーキペアを交互に抑制する。これは、典型的なタキシングブレーキ付加の間アクティブであるブレーキの数を削減し、したがってブレーキ摩耗を低減する。選択された場合、ブレーキ付加を指令するのに十分にブレーキペダルが踏まれたときに、二つのブレーキペアのうち一方(および一つのみ)が抑制される。一旦抑制されると、「TBIイネーブル」が存在しなくなる(例えば、アンチスキッド喪失、非常制動の付加など)まで、あるいはブレーキペダルが解放される(この結果、「ブレーキペアセレクト(Brake Pair Select)」ロジックがそのブレーキペアの選択を解除し、次回のタキシング付加で抑制されるべき他のブレーキペアを選択する)まで、ブレーキペアは「抑制」状態でラッチされたままになる。ブレーキの付加はペダルの角度が20%を超えることとして定義され、ブレーキの解放はペダル角度が10%を下回ることとして定義される。当然、これらの値は調節可能であるが、ブレーキペダルがブレーキ解放の近辺でうろつくときの「ロジックのふらつき(fluttering logic)」を防止するように適度に離れている必要がある。
【0036】
8)「ブレーキペアセレクト(Brake Pair Select)」ロジックは、TBIに対して常に前輪ブレーキペアか後輪ブレーキペアのいずれかを選択するが、両方を選択することはない。ロジックは、BSCUの電源オン時に前輪ブレーキペアを任意に選択し、一つのブレーキペアに対してタキシングブレーキ抑制が適用される毎に他のペアに切り替え、続いてブレーキペダルを解放する。これにより、連続するタキシングブレーキ付加のそれぞれで抑制されている前輪ブレーキペアと後輪ブレーキペアとの間でタキシングブレーキ抑制が交互に動作して、エネルギーバランスが促進される。
【0037】
図3−4および6を参照して、本発明は:
・二つのブレーキ力−ブレーキペダル付加の曲線を含む。
・曲線の一つは、現在組み込まれている「通常時」曲線である。この曲線は、タキシングブレーキ抑制が作動していないときに使用される。
・もう一つの曲線は「タキシング抑制」曲線である。この曲線は、所与のブレーキペダル付加に対して2倍のブレーキ力を与え、タキシングブレーキ抑制が作動しているときに使用される。「タキシング抑制」曲線と「通常時」曲線との差の倍率は、カーボンブレーキに対するブレーキトルク−ブレーキ力指令の間の関係における任意の非線形性を考慮して調整することができる。
・「通常時」曲線から「タキシング抑制」曲線への遷移は、ブレーキが付与されていないときに生じるので、瞬時に行うことができる。
・「タキシング抑制」曲線から「通常時」曲線への遷移は、二つのアクティブなブレーキがブレーキ力を低下させるのと同時に二つの抑制されたブレーキが付与される過渡条件の間に、ブレーキ力全体の変化を最小化するように調整された「伝達関数」を介して行われるべきである。「伝達関数」は、「タキシング抑制」曲線を介してかけられてきた二つのブレーキのブレーキ力が、解放された二つのブレーキにかけられているブレーキ力と同じ割合でブレーキ力を低下させるように、曲線と時間の関係を介して、「タキシング抑制」曲線を「通常時」曲線に戻す。
【0038】
特徴:
・ブレーキペダル付加がブレーキ力「しきい値」を超え、以前に抑制されたブレーキが突然アクティブになるとき、顕著な減速バンプが存在しないはずである。全体のブレーキ力とブレーキペダル付加との間の関係は、しきい値を超える前後で同一であり、「伝達関数」は、遷移中に生じうるあらゆる減速バンプを最小化するかまたは事実上排除する。これは、しきい値を超えたときに減速バンプを導くことなく、ブレーキ力しきい値をより低く設定し、通常タキシングブレーキ中のスリップの脅威を最小化することが可能になるという追加の利点を有する。そのため、しきい値に対する両方の基準を満たす単一の「しきい値(Threshold)」を設定することができる。
・その結果、乗員は、スリップ動作に起因する、またはより強い制動をかけるときの、不都合な「減速バンプ」なしで遙かに滑らかなタキシングブレーキを体験する。
・航空機の一方の側で作動し、他方の側で作動していないタキシングブレーキ抑制と関連する問題がもはや存在しない。航空機の各側に対してペダルフィーリング−全体のブレーキ力の関係が同じままであるので、乗員は、そのような時間中に航空機を扱う際の変化を感じることがなく、また、航空機の二つの側の間のエネルギーバランス問題が排除される。
・その結果、一方のBSCUがタキシングブレーキ抑制モードであり、他方がそのモードでないときに、乗員は、航空機の二つの側の間で顕著かつ不都合なブレーキフィーリングの違いを経験することがない。
・「通常時」の制動と「タキシング抑制」の制動の間で、ブレーキペダル「フィーリング」の違いが無視できる程度になる。
・その結果、乗員はタキシングブレーキ中に「柔らかい」フィーリングを経験することがなく、また「通常時」モードと「タキシングブレーキ抑制」モードの両方で単一の最適なペダルフィーリングを提供することができる。
【0039】
タキシングブレーキ抑制が「オン」に指令されると、「通常時」ブレーキ力が2倍にされる。これが減速「バンプ」を引き起こすことはない。なぜなら、この遷移は、ブレーキが付与されていないときにのみ起こるからである。結果として、ペダル変位(Xp)−経過時間(t)とブレーキ力(FB)−経過時間(t)のグラフを表す図8に示すように、「45%しきい値」を超えるたびにタキシングブレーキ抑制が「オフ」に指令されるときに、減速「バンプ」の問題を緩和する一つの方法は、抑制されたブレーキが再び付加される遅延(0.3秒のオーダー)を近似した時間遅延を経由して、ブレーキ力指令の倍化を「通常時」に戻して遷移することである。時間遅延がない場合、この遷移は、アンチスキッドサイクルに匹敵する減速「バンプ」を引き起こす。時間遅延は、知覚できないほど小さいレベルまで減速「バンプ」を減少させる。
【0040】
図3、4および6に示すように、提案された新たなペダル「フィーリング」ロジックはこの問題を完全に解決する。タキシングブレーキ抑制が「オン」であろうと「オフ」であろうと、ブレーキペダル「フィーリング」は常に同じである。もはや、タキシングブレーキ抑制が「オン」であるときと「オフ」であるときの間でブレーキペダル「フィーリング」の大きな変化はない。また、航空機の一方の側でタキシングブレーキ抑制が「オン」であり、他方の側でタキシングブレーキ抑制が「オフ」であるときに、ブレーキペダル「フィーリング」の非対称差は大きくない。また、「45%しきい値」を超えるたびに大きな減速「バンプ」は生じない。
【0041】
以下のようなタキシングブレーキ抑制機能の非常動作中には、過度のブレーキ摩耗が発生しうる。すなわち、最大で10日間一つのブレーキが非作動(「BRAKE DEACTIVATED」)、一つのブレーキのアンチスキッド機能の喪失(「ANTISKID FWD」または「ANTISKID AFT」)、一つのブレーキの制動の喪失(「BRAKE FWD」または「BRAKE AFT」)、両方のブレーキのアンチスキッドの喪失(「ANTISKID STATUS」)、または両方のブレーキの制動の喪失(「BRAKE CONTROLS」)の間である。図9に示すように、最大で10日間一つのブレーキが非作動(「BRAKE DEACTIVATED」)である間、タキシングブレーキ中の継続使用に起因して、一つのブレーキが2倍熱くなることがある。図11に示すように、一つのブレーキのアンチスキッド機能の喪失(「ANTISKID FWD」または「ANTISKID AFT」)の間、一つのブレーキが2倍熱くなることがあり、25ノットと45ノットの間で、一つのブレーキが通常の4倍のトルクを与えることがあり、また25ノット未満では、一つのブレーキが通常の減速度の半分でロックアップすることがある。図13に示すように、一つのブレーキの制動の喪失(「BRAKE FWD」または「BRAKE AFT」)の間、タキシングブレーキ中の継続使用のために一つのブレーキが2倍熱くなることがあり、また一つのブレーキが通常の4倍のトルクを与えることがある。図15に示すように、両方のブレーキのアンチスキッドの喪失(「ANTISKID STATUS」)の間、二つのブレーキが通常の減速度の半分でロックアップすることがある。図17に示すように、前後ペアのブレーキの両方の制動の喪失(「BRAKE CONTROLS」)の間、二つのブレーキが2倍熱くなることがあり、また二つのブレーキが通常の4倍のトルクを与えることがある。これらの故障効果の一つまたは複数を生じさせる、ブレーキシステム制御ユニット(BSCU)が通常は監視をしないような別の電子ブレーキ故障条件も起こり得る。
【0042】
非常タキシングブレーキ抑制条件 Brake Deactivated に対しては、タキシングブレーキ抑制が停止され、BSCU分割の要件のために、影響を受けた前後ブレーキペアに対してのみタキシングブレーキ抑制が停止される。任意の他の非常条件に対しては、タキシングブレーキ抑制はオンのままである。これにより、ボーイング787航空機の非常時タキシングブレーキ抑制動作が任意の他のモデルよりも安全性が小さくなる。図19に概要が記載された図9、11、13、15、17を参照すると、非常タキシングブレーキ抑制条件のうち一つを除く全てが、タキシングブレーキ中のブレーキ過熱を2倍にする(すなわち、タキシングブレーキ抑制が同じブレーキを常に抑制する場合に生じるブレーキ過熱も同じく2倍になる)。非常タキシングブレーキ抑制条件のうち二つを除く全ては、一つのブレーキのみが着陸装置に作用し、そのブレーキは通常の4倍のトルクを与える。二つの非常タキシングブレーキ抑制条件は、通常の航空機の減速度の50%で車輪がロックアップする。本発明によると、非常タキシングブレーキ抑制条件の間に推奨される解決策は、任意の非常ブレーキ抑制条件がいずれかのペアに存在する場合、隣接する前後ブレーキペアの両方に対してタキシングブレーキ抑制を停止することである。
【0043】
本発明のタキシングブレーキシステムでは、上述の非常タキシングブレーキ抑制動作の問題を、図5に示すように、非常EBAC動作を表す電子ブレーキ駆動コントローラ(EBAC)ステータスメッセージをBSCUに読ませることによって解決することができる。なぜなら、これらのメッセージは通常はバス上で利用可能であるからである。着陸装置上の二つの前後ブレーキペアの間で非常タキシングブレーキ抑制ステータスを共有するように、BSCU分割が改良されるべきであり、また、任意の非常条件がいずれかのペアに存在する場合、前後ブレーキペアの両方に対してタキシングブレーキ抑制機能が停止されるべきである。
【0044】
図10に示すように、最大で10日間一つのブレーキが非作動(「BRAKE DEACTIVATED」)である間、三つのブレーキが33%熱くなることがある。図12に示すように、一つのブレーキのアンチスキッド機能の喪失(「ANTISKID FWD」または「ANTISKID AFT」)の間、25ノット未満で一つのブレーキが通常の減速でロックアップすることがある。図14に示すように、一つのブレーキの制動の喪失(「BRAKE FWD」または「BRAKE AFT」)の間、三つのブレーキが33%熱くなることがある。図16に示すように、両方のブレーキのアンチスキッドの喪失(「ANTISKID STATUS」)の間、二つのブレーキが通常の減速でロックアップすることがある。図18に示すように、前後ブレーキペアの両方の制動の喪失(「BRAKE CONTROLS」)の間、二つのブレーキが2倍熱くなり、二つのブレーキが通常の2倍のトルクを与えることがある。
【0045】
これらの改良がタキシングブレーキ抑制機能の非常動作に関連する問題を解決する。また、これらの改良を用いると、非常タキシングブレーキ抑制動作の結果が安全になる。加えて、「非常」動作中のタキシングブレーキ抑制を停止することで、カーボンブレーキ寿命の延長に物質的な影響を与えることはない。なぜなら、「非常」動作は通常、時間のわずかな部分でのみ発生するからである。
【0046】
上述の観点から、本発明に係るシステムおよび方法の実装によって、タキシングブレーキ抑制が「オン」であろうと「オフ」であろうとブレーキペダル「フィーリング」が常に等しくなるので、提案された新たなペダル「フィーリング」ロジックがブレーキペダル「フィーリング」の不連続問題を解決することが理解されるだろう。タキシングブレーキ抑制が「オン」であるときと「オフ」であるときの間でブレーキペダル「フィーリング」の大きな変化はもはや存在しない。また、航空機の一方の側でタキシングブレーキ抑制が「オン」であり、他方の側で「オフ」であるときに、ブレーキペダル「フィーリング」における大きな非対称差はもやは存在しない。また、「45%しきい値」を超えるたびに大きな減速「バンプ」は発生しない。本発明に係るシステムおよび方法の実装によって、非常タキシングブレーキ抑制動作の間、タキシングブレーキ中のブレーキ過熱が2倍になることに起因するブレーキ過熱の重大な問題が排除され、着陸装置の一つのブレーキのみが付加されるときのように通常のブレーキトルクの4倍がかかることが排除され、車輪ロックアップの脅威が排除される。
【0047】
本発明の特定の形態について説明し図解してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正をなし得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、添付の請求項によるもの以外、本発明を限定する意図はない。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2009年1月29日に出願された米国仮特許出願61/148,248、2009年7月14日に出願された米国仮特許出願61/225,519、および2010年1月27日に出願された非仮出願12/695,121を基礎としこれらの優先権を主張する。その内容の全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は一般に航空機のブレーキシステムに関し、より詳細には、カーボンブレーキの摩耗を軽減するタキシング(地上走行)ブレーキ抑制システムにおける改善に関する。
【背景技術】
【0003】
カーボンブレーキは、大量の乗客または積載貨物を運搬するように設計された最新の航空機に多くに備え付けられている。この種のブレーキは、摩擦材およびヒートシンクとして機能する炭素複合材料の使用に依存している。カーボンロータディスクとカーボンステータディスクのスタックが車軸に沿って交互に同軸配置されている。ロータディスクは車輪に対して車輪に回転可能に固定される一方、ステータディスクは静止車軸に固定される。圧力プレートとバックプレートの間でスタックを圧縮して隣合うディスクの摩擦面を互いにかみ合わせるように構成されたピストンアクチュエータの加圧によって、ブレーキ力が生み出される。カーボンブレーキは、重量および性能の点でスチールブレーキよりも好ましいが、交換から次の交換までの間の着陸サイクルの関数として表されるスタックの交換コストは、スチールブレーキよりも遙かに高い。
【0004】
吸収される総エネルギー量によってブレーキ寿命が主に決定される従来のスチールブレーキとは対照的に、カーボンブレーキは、ブレーキの作用回数の関数として摩耗する。その理由は、ブレーキ温度が低い場合、初期ブレーキ付与時に摩耗が最大になるからである。その結果、滑走路とゲートの間の誘導路を走行するときや、離陸を待機する列で遭遇することがあるのろのろ運転(stop-and-go traffic)の間に、日常的にブレーキが数十回踏まれることがあるので、カーボンブレーキ摩耗の大半は地上走行(タキシング)中に発生する傾向がある。
【0005】
ブレーキシステムは、低エネルギーのブレーキ付与中、すなわち地上走行中に一回以上のブレーキを無効化することによって、ブレーキ付与の回数を減らしてカーボンブレーキの摩耗率を低下させるように工夫されてきた。これにより、個々のブレーキのブレーキ付与回数が少なくなる一方で、各付与の間の増大したブレーキ負荷が摩耗に悪影響を与えることがない。停止性能に妥協することなく、また航空機の安定性に悪影響を与えることなく、種々のブレーキ付与車輪間での摩耗率を均等にするブレーキ無効化のシーケンスを決定するために、このようなシステムに依存することがある。それにも関わらず、この種のシステムは、激しくかつ好ましくない減速率の変動(「減速バンプ」)、逆位相転舵が必要となる望ましくないヨー力、およびタキシングブレーキ抑制しきい値を越えるときのブレーキ「フィーリング」の変化を含む、いくらかの欠点を有することがある。
【0006】
図1に戻り、動作時のタキシングブレーキ抑制を持たない、現在のボーイング787航空機のタキシングブレーキ抑制システム(taxi brake inhibit system)では、全てのタキシングブレーキが動作し、タキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)が着陸装置の航空機ブレーキの全てに同時に分布しており、通常のブレーキペダル「フィーリング」になる。しかしながら、図2に示すように、動作時に従来のタキシングブレーキ抑制モードを有する従来のボーイング787航空機のタキシングブレーキシステムの動作中には、以下のようになる。第1のブレーキ設定(1)では、ブレーキの第1の半分がタキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)で動作し、ブレーキの第2の半分がタキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力)ゼロで動作する。第2のブレーキ設定(2)では、ブレーキの第2の半分がタキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)で動作し、ブレーキの第1の半分がタキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)がゼロで動作する。通常のタキシングブレーキ付与毎にこのような態様で交互にブレーキがかかりカーボンブレーキ寿命を改善する。その結果、半分の時間に二倍のトルクが付与される。こうして、タキシングブレーキエネルギーまたはブレーキ力(FB)が全てのブレーキに等しく分配される。
【0007】
しかしながら、タキシングブレーキ抑制モードの従来の実装を有さない航空機ブレーキと、有する航空機ブレーキの動作における、ブレーキ力(FB)−対応ブレーキペダル変位(Xp)の関係を表す図3および図4に示すように、通常のタキシングブレーキ動作中の半分のブレーキの付与は、ブレーキ力指令(FB)−ブレーキペダル付加(Xp)の関係を表す特定の曲線にしたがって通常は実施される。その結果、タキシングブレーキ抑制が作動しているとき、単位ペダル力当たりの航空機減速度がわずか半分であるブレーキペダル「フィーリング」が生じる。このため、タキシングブレーキ抑制が「オン」のときと「オフ」のときとでブレーキペダル「フィーリング」の変化が二倍になる。また、航空機の一方の側でタキシングブレーキ抑制が「オン」であり他方の側で「オフ」のとき、ブレーキペダル「フィーリング」における非対称差が二倍になる。加えて、ペダル変位(Xp)−経過時間(t)のグラフと、ブレーキ力(FB)−経過時間(t)のグラフを表す図7に示すように、タキシングブレーキ抑制機構は、その値を超えると抑制されたブレーキが付与される調節可能な45%のブレーキ力指令しきい値を含むので、「45%のしきい値」を超えるたびに減速「バンプ」が二倍になる。これらの「フィーリング」の変化は非常に大きく、好ましくない場合がある。
【0008】
あらゆるタキシングブレーキ抑制実装に対して、その値を超えるとタキシングブレーキ抑制が停止されるブレーキ力指令しきい値を設定する必要がある。これにより、非常停止中の全てのブレーキの作動が保証される。そのしきい値を設定する際、タキシングブレーキの稼働中にしきい値を超えないように十分高く設定されなければならない。なぜなら、抑制されたブレーキが突然アクティブになると、非常に激しくかつ不都合である「減速バンプ」が発生するからである。しかしながら、「抑制されている」他のブレーキを補償するために「アクティブな」ブレーキで二倍高くなるブレーキ力に起因して、タキシングブレーキの稼働中にスリップ(skid)が発生しないように、しきい値は十分に小さく設定されなければならない。なぜなら、こうしたスリップは激しく不都合である「減速バンプ」の原因となるからである。特定のタキシングブレーキ抑制機構は一度にブレーキの1/3を抑制するに過ぎず、したがって両方の基準を満たすようにしきい値を設定することができる。すなわち、通常のタキシングブレーキ中のしきい値超過を防止するほど大きく、アンチスキッド挙動を防止するほど小さくしきい値を設定することができる。別のタキシングブレーキ抑制機構は一度にブレーキの半分を抑制するので、両方の基準を満たすようにしきい値を設定することができない。結果として、アイドルブレーキの突然の付与に起因して(しきい値が高すぎることによる)、あるいはアンチスキッド挙動に起因して(しきい値が低すぎることによる)、またはその両方に起因して、タキシングブレーキ抑制機構は、通常のタキシングブレーキ中の激しくかつ好ましくない減速バンプの原因となる。
【0009】
特定の航空機は二つのブレーキシステム制御ユニットを備える。一つは航空機の右側のブレーキ用であり、もう一つは左側のブレーキ用である。ブレーキシステム制御ユニット(BSCU)のいずれも、他方の側のブレーキに対するブレーキペダル付加、ブレーキ解除ステータス(Brake Deactivated status)、またはアンチスキッド欠陥ステータス(Antiskid Fault status)が何であるかを知らない。これは、タキシングブレーキ抑制機構の欠点となる。なぜなら、航空機の一方の側がタキシングブレーキ抑制を作動しつつ他方の側が作動させないことが可能になるからである。航空機の一方の側でのみタキシングブレーキ抑制が作動するとき、航空機の二つの側の間でのブレーキ「フィーリング」に顕著な差が生じ、タキシングブレーキ中に航空機が一方の側に(全てのブレーキがアクティブである側に向けて)引っ張られる原因となる。これは、パイロットにとって非常に不都合であり、またパイロットがノーズステアリング(nose steering)の釣り合いを取ろうとするとき、航空機の二つの側の間で顕著なエネルギー不平衡を生じさせる。
【0010】
タキシングブレーキ抑制の作動時、パイロットは、所与のブレーキペダル付加に対してブレーキ力の二倍の減少を感じとる。これは、ブレーキペダルの著しく「柔らかな(mushy)」フィーリングを生み出す。したがって、タキシングブレーキ付与毎にペダルを二倍強く踏まなければならず、これがパイロットにとって不都合であることを以前の経験が示している。加えて、タキシングブレーキ抑制モードから通常ブレーキモードに変わるときのペダル「フィーリング」の違いは非常に明白である。このこともパイロットにとって不都合であることを以前の経験が示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フォワードピッチオーバー(forward pitch-over)保護にも潜在的な問題がある。これは、現在、ブレーキ力−ブレーキペダル付加曲線に関する時間ベースのアルゴリズムによって処理されており、タキシングブレーキ抑制を組み込むときにその実装が書き直される必要がある。なぜなら、二つの機能は相互に関連しているからである。加えて、最大で10日間一つのブレーキが非作動(「BRAKE DEACTIVATED」)、一つのブレーキのアンチスキッド機能の喪失(「ANTISKID FWD」または「ANTISKID AFT」)、一つのブレーキの制動の喪失(「BRAKE FWD」または「BRAKE AFT」)、両方のブレーキのアンチスキッドの喪失(「ANTISKID STATUS」)、または両方のブレーキの制動の喪失(「BRAKE CONTROLS」)の間などの、タキシングブレーキ抑制機構の非常動作中に、過度のブレーキ摩耗が起こる可能性がある。二つの非常時条件は、50%の通常の航空機減速で車輪のロックアップの原因となる。ブレーキシステム制御ユニット(BSCU)が通常は監視しておらず、これらの故障効果の一つ以上の原因となる別の電子ブレーキ故障条件が起こることもある。ボーイング787航空機に対して、既存のタキシングブレーキシステムのこのような欠点を克服する改善されたタキシングブレーキシステムを提供することが望ましい。本発明はこれらの要望および他の要望を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
簡潔にかつ一般的に述べると、本発明は、新たなペダル「フィーリング」ロジックを追加することで、タキシングブレーキ抑制機構を適用することによるペダル「フィーリング」の不連続問題を解決するタキシングブレーキ抑制システムおよび方法を提供する。より詳細には、本発明は、タキシングブレーキ抑制の作動時に、所与のブレーキペダル付加に対して二倍のブレーキ力が指令される新たなペダル「フィーリング」ロジックを追加するタキシングブレーキ抑制システムおよび方法を提供する。そのときに半分のブレーキが抑制されるので、ブレーキペダルの全体の「フィーリング」は全てのブレーキがアクティブであるときと同じになる。
【0013】
本発明は、航空機の制動時に使用される二つの異なるブレーキ力−ブレーキペダル付与曲線を採用する。「通常時」曲線は、タキシングブレーキ抑制の非作動時に使用され、タキシングブレーキ抑制の作動時には「タキシング抑制」曲線が使用される。後者の曲線は、所与のブレーキペダル付与に対して追加のブレーキ力を与えて非作動にされたブレーキを補償する働きをする。結果として、航空機は、タキシングブレーキ抑制の作動時であるか非作動時であるかにかかわらず、所与のブレーキペダル付与に対して同じ割合で減速する。さらに、航空機の片側でのみタキシングブレーキ抑制が作動している場合に、望ましくないヨー力が排除される。最後に、いずれの動作モードにおいても、ブレーキペダルの「フィーリング」が等しくなる。
【0014】
カーボンブレーキに対するブレーキトルク−ブレーキ力指令の間の関係における任意の非線形性を考慮して、「タキシング抑制」曲線と「通常時(ノーマル)」曲線との差の倍率を調整することができる。「通常時」曲線から「タキシング抑制」曲線への遷移は、ブレーキが付与されていないときに生じるので、瞬時に行うことができる。他方、「タキシングブレーキ抑制」曲線から「通常時」曲線への遷移は、アクティブなブレーキがブレーキ力を低下させるのと同時に抑制されたブレーキが付与される過渡条件の間に、ブレーキ力全体の変化を最小化するように調整された伝達関数(transfer function)を介して達成される。
【0015】
本発明はまた、タキシングブレーキ抑制機構の非常動作中に遭遇する問題を解決するシステムおよび方法を提供する。ブレーキ非作動(Brake Deactivated)に対してはタキシングブレーキ抑制が停止され、BSCUの分割(partitioning)の要件のために、影響を受ける前後のブレーキペアに対してのみタキシングブレーキ抑制が停止される。任意の他の非常条件に対しては、タキシングブレーキ抑制はオンのままである。本発明によると、非常条件の間、50%の通常の航空機減速における車輪のロックアップに対する推奨される解決策は、任意の非常条件がいずれかのペアに存在する場合、隣接する前後のブレーキペアの両方に対してタキシングブレーキ抑制を停止することである。
【0016】
加えて、本発明によると、ブレーキシステム制御ユニット(BSCU)は、電子ブレーキ駆動コントローラ(EBAC)の非常動作を表すEBACステータスメッセージを読み取り、着陸装置の二つの前後ブレーキペアの間で非常ステータスを共有するように改良される。さらに、任意の非常条件がいずれかのペアに存在する場合、前後両方のブレーキペアについてタキシングブレーキ抑制機構が停止される。
【0017】
したがって、本発明は、航空機ブレーキシステム動作のタキシングブレーキ抑制モードを制御するシステムを提供する。航空機ブレーキシステムは少なくとも一つの着陸装置を備え、各着陸装置は車輪ブレーキの前輪ペアと車輪ブレーキの後輪ペアとを備える。車輪ブレーキの少なくとも一部は、タキシングブレーキ抑制モードの間、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令にもかかわらず、ブレーキを非作動状態にされる。タキシングブレーキ抑制モードを制御するシステムは、少なくとも一つの着陸装置に動作可能に接続されるとともに、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの動作を制御するように構成された、少なくとも一つの電子ブレーキ作動コントローラと、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令を受け取るように動作するブレーキシステム制御ユニットとを備える。ブレーキシステム制御ユニットは、電子ブレーキ駆動コントローラと接続され電子ブレーキ駆動コントローラを制御して、ブレーキペダル指令で指令されたブレーキ力よりも大きなブレーキ力を発生させるように動作する。好ましい態様では、タキシングブレーキ抑制モードの間、車輪ブレーキの半分が非作動にされ、ブレーキシステム制御ユニットは、電子ブレーキ駆動コントローラを制御して、タキシングブレーキ抑制モードの間、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力の二倍を発生させるように動作する。
【0018】
本発明の別の好適な態様では、電子ブレーキ駆動コントローラは、電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージを生成するように動作し、ブレーキシステム制御ユニットは、電子ブレーキ駆動コントローラに接続され、電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージを受け取る。別の好適な態様では、ブレーキシステム制御ユニットは、電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージに応答して、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対してタキシングブレーキ抑制モードを停止するように動作する。
【0019】
本発明はまた、航空機ブレーキシステムのタキシングブレーキ抑制動作モードを制御する方法を提供する。この方法は、少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対して、指令されたブレーキ力のブレーキペダル指令を生成し、ブレーキペダル指令を受け取り、ブレーキペダル指令に応答して、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力よりも大きなブレーキ力を発生させて、タキシングブレーキ抑制モードの間に非作動にされた少なくとも一部の車輪ブレーキを補償することを含む。好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、タキシングブレーキ抑制モードが非作動のとき、第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線にしたがって指令されたブレーキ力を発生させ、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線にしたがったタキシングブレーキ抑制モードの間、ブレーキペダル指令よりも大きな指令されたブレーキ力を発生させることを含む。
【0020】
別の好適な態様では、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線は、所与のブレーキペダル付加に対して二倍のブレーキ力を与える。別の好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、車輪ブレーキが付加されていないとき、第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む。別の好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、アクティブなブレーキがブレーキ力を低下させるのと同時に抑制されたブレーキが付加されている間に、ブレーキ力全体の変化を最小化するように調整された伝達関数を介して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む。別の好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、非作動にされたブレーキが再び付加される遅延、例えば約0.3秒である遅延を近似した時間遅延を経由して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む。別の好適な態様では、タキシングブレーキ抑制モードの間、車輪ブレーキの半分が非作動にされ、別の好適な態様では、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、タキシングブレーキ抑制モードの間、車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力の二倍を発生させることを含む。
【0021】
別の好適な態様では、本発明の方法は、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動の非常動作を示すステータスメッセージを生成し、非常動作を示すステータスメッセージを受け取り、非常動作を示すステータスメッセージに応答して、着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対するタキシングブレーキ抑制モードを停止することを含む。
【0022】
本発明のこれらのおよび他の特徴と利点は、本発明の原理を例示的に表す添付の図面とともになされる好適な実施形態の詳細な説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用されない、ボーイング787航空機タキシングブレーキシステムの動作を示す図である。
【図2】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用された、ボーイング787航空機タキシングブレーキシステムの動作を示す図である。
【図3】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用されない、ボーイング787航空機タキシングブレーキシステムのペダル「フィーリング」を示す図である。
【図4】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用された、ボーイング787航空機タキシングブレーキシステムのペダル「フィーリング」を示す図である。
【図5】本発明にしたがった、航空機ブレーキシステムのタキシングブレーキ抑制動作モードを制御するシステムの模式図である。
【図6】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムが適用されたボーイング787航空機タキシングブレーキシステムと、本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムが適用されないボーイング787航空機タキシングブレーキシステムのペダル「フィーリング」を比較した図である。
【図7】従来のタキシングブレーキ抑制システムが適用されたボーイング787航空機タキシングブレーキシステムの減速「バンプ」を比較した図である。
【図8】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムが適用されたボーイング787航空機タキシングブレーキシステムの減速「バンプ」を比較した図である。
【図9】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して非作動にされたブレーキを有するボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図10】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して非作動にされたブレーキを有するボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図11】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して一つのブレーキに対するアンチスキッドを喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図12】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して一つのブレーキに対するアンチスキッドを喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図13】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して一つのブレーキに対する制動を喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図14】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して一つのブレーキに対する制動を喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図15】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して前後ブレーキペアに対するアンチスキッドを喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図16】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して前後ブレーキペアに対するアンチスキッドを喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図17】従来のタキシングブレーキ抑制システムを適用して前後ブレーキペアに対する制動を喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図18】本発明のシステムおよび方法にしたがったタキシングブレーキ抑制システムを適用して前後ブレーキペアに対する制動を喪失したボーイング787航空機タキシングブレーキの動作を示す図である。
【図19】ボーイング787航空機タキシングブレーキ抑制システムの従来の動作と、本発明のシステムおよび方法にしたがったボーイング787航空機タキシングブレーキ抑制システムの動作との比較の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
限定ではなく例示を目的として提供される図面を参照して、本発明は、航空機ブレーキのタキシングブレーキ抑制モードを制御するシステムおよび方法を提供する。図5を参照して、航空機ブレーキの動作中のタキシングブレーキ抑制モードを制御するシステム30は、電子ブレーキ駆動コントローラ(EBAC)34を制御するように構成されたブレーキシステム制御ユニット(BSCU)32を備える。ブレーキシステム制御ユニットは、システムバス36によって電子ブレーキ駆動コントローラに電気的に接続される。電子ブレーキ駆動コントローラは、着陸装置38などの着陸装置の動作を制御するように構成される。着陸装置38は、電子ブレーキ駆動コントローラが接続される車輪ブレーキの前輪ペア40a、40bと、電子ブレーキ駆動コントローラが接続される車輪ブレーキの後輪ペア42a、42bとを含む。車輪ブレーキの前後輪ペアは、左側車輪ブレーキ前後ペア44と、右側車輪ブレーキ前後ペア46のグループを形成している。パイロットによって操作される航空機ブレーキペダル48の位置は、通常、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令信号52を生成するマイクロコントローラ50によって読み取られ、ペダル指令信号はブレーキシステム制御ユニットによって受け取られる。電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージ54は、システムバス56を介してブレーキシステム制御ユニットによって受け取られる。
【0025】
本発明のシステムおよび方法は、タキシングブレーキ抑制の作動時に、所与のブレーキペダル付加に対して二倍のブレーキ力が指令される新たなペダル「フィーリング」ロジックを追加することで、タキシングブレーキ抑制機構の適用に起因するペダル「フィーリング」の不連続問題を解決する。そのときには半分のブレーキが抑制されるので、全体のブレーキペダル「フィーリング」は、全てのブレーキが作動しているときと同一になる。
【0026】
以下の簡単なロジックでこの特徴が実装される。
【0027】
航空機の各側に対するタキシングブレーキ抑制(TBI)ロジック:
ロジック:
「TBIイネーブル(TBI Enable)」は、航空機のその側の前後ブレーキペアの両方に対するTBIを可能にする IF:
・ブレーキ力指令が<50%、AND
・速度<45ノット、AND
・着陸時自動ブレーキが付与されていない、AND
・RTO自動ブレーキが付与されていない、AND
・いずれのブレーキも「非作動(Deactivated)」ではない、AND
・いずれのブレーキも「アンチスキッド喪失(Antiskid Fault)」を示していない、AND
・Either:ブレーキペダル付加<10% OR 「TBIイネーブル」指令が存在
・「Fwd TBI On」が前輪ブレーキペアのブレーキ付加を抑制する(すなわち、前輪ブレーキペアに対するTBIをイネーブルする) IF:
・「TBIイネーブル」指令が存在、AND
・「ブレーキペアセレクト(Brake Pair Select)」が「オン」(すなわち、前輪ブレーキペアが選択される)、AND
・「Aft TBI On」指令が存在しない、AND
・Either:ブレーキペダル付与>20% OR 「Fwd TBI On」指令が存在。
・「Aft TBI On」が後輪ブレーキペアの付加を抑制する(すなわち、後輪ブレーキペアに対するTBIを可能にする)IF
・「TBIイネーブル」指令が存在する、AND
・「ブレーキペアセレクト」が「オフ」(すなわち、後輪ブレーキペアが選択される)、AND
・「Fwd TBI On」指令が存在しない、AND
・Either:ブレーキペダル付加>20% OR 「Aft TBI On」指令が存在
・「ブレーキペアセレクト」 BSCUの電源がオンにされるたび、前輪ブレーキペアまたは後輪ブレーキペアが選択されるか、または両方とも選択されない:
「ブレーキペアセレクト」が「オン」のとき、前輪ブレーキペアが選択される。「ブレーキペアセレクト」が「オフ」のとき、後輪ブレーキペアが選択される。「ブレーキペアセレクト」は、BSCUの電源オン時に「オン」に初期設定される(これは、開始する前輪ブレーキペアを任意に選択する)。
・「ブレーキペアセレクト」は「オフ」に指令される(すなわち、後輪ブレーキペアが選択される) when:「Fwd TBI On」指令が最初に存在する THEN ブレーキペダル付加<10%
・「ブレーキペアセレクト」が「オン」に指令される(すなわち、前輪ブレーキペアが選択される) when:「Aft TBI On」指令が最初に存在する THEN ブレーキペダル付加<10%
・デバウンス(Debounce):上記ロジック信号のそれぞれは、瞬間的な偽信号がロジックを実行するのを防止するために「デバウンス」されるべきである。例えば、「ブレーキペダル付加>50%」の信号は、5フレームまたは10フレームの間存在した後、有効であると認識される。
【0028】
特徴:
・「TBIイネーブル」ロジックにより、通常のタキシングブレーキング中にのみタキシングブレーキ抑制が作動することが保証される。「TBIイネーブル」指令が存在しない場合、タキシングブレーキ抑制特徴は動作しない(すなわち、全てのブレーキが完全に稼働している)。「TBIイネーブル」指令は、以下の条件のいずれかが発生するときには存在しない。
【0029】
1)ブレーキペダルからのブレーキ力指令が50%を超えるときは常に(これにより、非常停止時には全てのブレーキが作動していることが保証される)
【0030】
2)航空機の速度が45ノットを超えるとき(これにより、高エネルギーの停止中に全てのブレーキが作動し、高いエネルギーが全てのブレーキに分配されることが保証される)
【0031】
3)着陸時自動ブレーキまたはRTO自動ブレーキが付与される(これにより、高エネルギーの停止中に全てのブレーキが作動し、高いエネルギーが全てのブレーキに分配されることが保証される)
【0032】
4)いずれかのブレーキが非作動である(Deactivated)(これにより、連続する滝深部ブレーキ付加のそれぞれでブレーキ「フィーリング」が変化することがなくなる。また、非作動である軸の片方のブレーキを補償するために、同軸上の他のブレーキが、タキシングエネルギーが2倍になること、および一方のブレーキのブレーキ力が「非抑制時」の値の4倍になることを見ることがなくなる。非作動のブレーキを用いた動作は滅多に起こらない事象なので、ブレーキ非作動(Brake Deactivation)中にタキシングブレーキ抑制を停止しても全体のブレーキ摩耗に顕著に影響を与えることはないことに注意する。)
【0033】
5)いずれかのブレーキがアンチスキッド喪失(Antiskid Fault)を有する(これにより、二つの「アクティブな」ブレーキのブレーキ力を「非抑制時」の値よりも2倍大きくして、抑制中の他の二つのブレーキを補償した結果として、車輪のロックアップが生じなくなる。たとえアンチスキッド喪失(Antiskid Fault)が一つのブレーキのみで発生した場合でも、一方の側の4つのブレーキ全てでタキシングブレーキ抑制を停止することで、連続するタキシングブレーキ付加のそれぞれでブレーキ「フィーリング」が変化しなくなる。アンチスキッド喪失での動作は滅多に起こらない事象なので、アンチスキッド喪失が存在するときにタキシング抑制を停止しても全体のブレーキ摩耗に顕著な影響を与えることはないことに注意する。)
【0034】
6)ブレーキペダル付加が10%未満に低下 OR 「TBIイネーブル」指令が存在(これにより、45ノットを超えてマニュアル制動が付与されたときに、航空機が45ノットを通過して減速するときタキシングブレーキ抑制が突然作動して1/2のブレーキを解放するようなことがなくなる。一旦航空機が45ノット未満になりブレーキペダルが解放されると、後続の「通常時」タキシングブレーキ付加のそれぞれに対してタキシングブレーキ抑制がアクティブになる。このロジックにより、全てのブレーキがアクティブである「非常時の」マニュアルブレーキ付加の後、ブレーキペダルが解放されるまで全てのブレーキがアクティブのままになることが保証される。後続の「通常時」タキシングブレーキ付加に対してタキシングブレーキ抑制が再開されてもよい。)
【0035】
7)「Fwd TBI On」および「Aft TBI On」ロジックは、全ての「TBIイネーブル」条件が満足するとき、航空機の一方の側の前後に並んだブレーキペアを交互に抑制する。これは、典型的なタキシングブレーキ付加の間アクティブであるブレーキの数を削減し、したがってブレーキ摩耗を低減する。選択された場合、ブレーキ付加を指令するのに十分にブレーキペダルが踏まれたときに、二つのブレーキペアのうち一方(および一つのみ)が抑制される。一旦抑制されると、「TBIイネーブル」が存在しなくなる(例えば、アンチスキッド喪失、非常制動の付加など)まで、あるいはブレーキペダルが解放される(この結果、「ブレーキペアセレクト(Brake Pair Select)」ロジックがそのブレーキペアの選択を解除し、次回のタキシング付加で抑制されるべき他のブレーキペアを選択する)まで、ブレーキペアは「抑制」状態でラッチされたままになる。ブレーキの付加はペダルの角度が20%を超えることとして定義され、ブレーキの解放はペダル角度が10%を下回ることとして定義される。当然、これらの値は調節可能であるが、ブレーキペダルがブレーキ解放の近辺でうろつくときの「ロジックのふらつき(fluttering logic)」を防止するように適度に離れている必要がある。
【0036】
8)「ブレーキペアセレクト(Brake Pair Select)」ロジックは、TBIに対して常に前輪ブレーキペアか後輪ブレーキペアのいずれかを選択するが、両方を選択することはない。ロジックは、BSCUの電源オン時に前輪ブレーキペアを任意に選択し、一つのブレーキペアに対してタキシングブレーキ抑制が適用される毎に他のペアに切り替え、続いてブレーキペダルを解放する。これにより、連続するタキシングブレーキ付加のそれぞれで抑制されている前輪ブレーキペアと後輪ブレーキペアとの間でタキシングブレーキ抑制が交互に動作して、エネルギーバランスが促進される。
【0037】
図3−4および6を参照して、本発明は:
・二つのブレーキ力−ブレーキペダル付加の曲線を含む。
・曲線の一つは、現在組み込まれている「通常時」曲線である。この曲線は、タキシングブレーキ抑制が作動していないときに使用される。
・もう一つの曲線は「タキシング抑制」曲線である。この曲線は、所与のブレーキペダル付加に対して2倍のブレーキ力を与え、タキシングブレーキ抑制が作動しているときに使用される。「タキシング抑制」曲線と「通常時」曲線との差の倍率は、カーボンブレーキに対するブレーキトルク−ブレーキ力指令の間の関係における任意の非線形性を考慮して調整することができる。
・「通常時」曲線から「タキシング抑制」曲線への遷移は、ブレーキが付与されていないときに生じるので、瞬時に行うことができる。
・「タキシング抑制」曲線から「通常時」曲線への遷移は、二つのアクティブなブレーキがブレーキ力を低下させるのと同時に二つの抑制されたブレーキが付与される過渡条件の間に、ブレーキ力全体の変化を最小化するように調整された「伝達関数」を介して行われるべきである。「伝達関数」は、「タキシング抑制」曲線を介してかけられてきた二つのブレーキのブレーキ力が、解放された二つのブレーキにかけられているブレーキ力と同じ割合でブレーキ力を低下させるように、曲線と時間の関係を介して、「タキシング抑制」曲線を「通常時」曲線に戻す。
【0038】
特徴:
・ブレーキペダル付加がブレーキ力「しきい値」を超え、以前に抑制されたブレーキが突然アクティブになるとき、顕著な減速バンプが存在しないはずである。全体のブレーキ力とブレーキペダル付加との間の関係は、しきい値を超える前後で同一であり、「伝達関数」は、遷移中に生じうるあらゆる減速バンプを最小化するかまたは事実上排除する。これは、しきい値を超えたときに減速バンプを導くことなく、ブレーキ力しきい値をより低く設定し、通常タキシングブレーキ中のスリップの脅威を最小化することが可能になるという追加の利点を有する。そのため、しきい値に対する両方の基準を満たす単一の「しきい値(Threshold)」を設定することができる。
・その結果、乗員は、スリップ動作に起因する、またはより強い制動をかけるときの、不都合な「減速バンプ」なしで遙かに滑らかなタキシングブレーキを体験する。
・航空機の一方の側で作動し、他方の側で作動していないタキシングブレーキ抑制と関連する問題がもはや存在しない。航空機の各側に対してペダルフィーリング−全体のブレーキ力の関係が同じままであるので、乗員は、そのような時間中に航空機を扱う際の変化を感じることがなく、また、航空機の二つの側の間のエネルギーバランス問題が排除される。
・その結果、一方のBSCUがタキシングブレーキ抑制モードであり、他方がそのモードでないときに、乗員は、航空機の二つの側の間で顕著かつ不都合なブレーキフィーリングの違いを経験することがない。
・「通常時」の制動と「タキシング抑制」の制動の間で、ブレーキペダル「フィーリング」の違いが無視できる程度になる。
・その結果、乗員はタキシングブレーキ中に「柔らかい」フィーリングを経験することがなく、また「通常時」モードと「タキシングブレーキ抑制」モードの両方で単一の最適なペダルフィーリングを提供することができる。
【0039】
タキシングブレーキ抑制が「オン」に指令されると、「通常時」ブレーキ力が2倍にされる。これが減速「バンプ」を引き起こすことはない。なぜなら、この遷移は、ブレーキが付与されていないときにのみ起こるからである。結果として、ペダル変位(Xp)−経過時間(t)とブレーキ力(FB)−経過時間(t)のグラフを表す図8に示すように、「45%しきい値」を超えるたびにタキシングブレーキ抑制が「オフ」に指令されるときに、減速「バンプ」の問題を緩和する一つの方法は、抑制されたブレーキが再び付加される遅延(0.3秒のオーダー)を近似した時間遅延を経由して、ブレーキ力指令の倍化を「通常時」に戻して遷移することである。時間遅延がない場合、この遷移は、アンチスキッドサイクルに匹敵する減速「バンプ」を引き起こす。時間遅延は、知覚できないほど小さいレベルまで減速「バンプ」を減少させる。
【0040】
図3、4および6に示すように、提案された新たなペダル「フィーリング」ロジックはこの問題を完全に解決する。タキシングブレーキ抑制が「オン」であろうと「オフ」であろうと、ブレーキペダル「フィーリング」は常に同じである。もはや、タキシングブレーキ抑制が「オン」であるときと「オフ」であるときの間でブレーキペダル「フィーリング」の大きな変化はない。また、航空機の一方の側でタキシングブレーキ抑制が「オン」であり、他方の側でタキシングブレーキ抑制が「オフ」であるときに、ブレーキペダル「フィーリング」の非対称差は大きくない。また、「45%しきい値」を超えるたびに大きな減速「バンプ」は生じない。
【0041】
以下のようなタキシングブレーキ抑制機能の非常動作中には、過度のブレーキ摩耗が発生しうる。すなわち、最大で10日間一つのブレーキが非作動(「BRAKE DEACTIVATED」)、一つのブレーキのアンチスキッド機能の喪失(「ANTISKID FWD」または「ANTISKID AFT」)、一つのブレーキの制動の喪失(「BRAKE FWD」または「BRAKE AFT」)、両方のブレーキのアンチスキッドの喪失(「ANTISKID STATUS」)、または両方のブレーキの制動の喪失(「BRAKE CONTROLS」)の間である。図9に示すように、最大で10日間一つのブレーキが非作動(「BRAKE DEACTIVATED」)である間、タキシングブレーキ中の継続使用に起因して、一つのブレーキが2倍熱くなることがある。図11に示すように、一つのブレーキのアンチスキッド機能の喪失(「ANTISKID FWD」または「ANTISKID AFT」)の間、一つのブレーキが2倍熱くなることがあり、25ノットと45ノットの間で、一つのブレーキが通常の4倍のトルクを与えることがあり、また25ノット未満では、一つのブレーキが通常の減速度の半分でロックアップすることがある。図13に示すように、一つのブレーキの制動の喪失(「BRAKE FWD」または「BRAKE AFT」)の間、タキシングブレーキ中の継続使用のために一つのブレーキが2倍熱くなることがあり、また一つのブレーキが通常の4倍のトルクを与えることがある。図15に示すように、両方のブレーキのアンチスキッドの喪失(「ANTISKID STATUS」)の間、二つのブレーキが通常の減速度の半分でロックアップすることがある。図17に示すように、前後ペアのブレーキの両方の制動の喪失(「BRAKE CONTROLS」)の間、二つのブレーキが2倍熱くなることがあり、また二つのブレーキが通常の4倍のトルクを与えることがある。これらの故障効果の一つまたは複数を生じさせる、ブレーキシステム制御ユニット(BSCU)が通常は監視をしないような別の電子ブレーキ故障条件も起こり得る。
【0042】
非常タキシングブレーキ抑制条件 Brake Deactivated に対しては、タキシングブレーキ抑制が停止され、BSCU分割の要件のために、影響を受けた前後ブレーキペアに対してのみタキシングブレーキ抑制が停止される。任意の他の非常条件に対しては、タキシングブレーキ抑制はオンのままである。これにより、ボーイング787航空機の非常時タキシングブレーキ抑制動作が任意の他のモデルよりも安全性が小さくなる。図19に概要が記載された図9、11、13、15、17を参照すると、非常タキシングブレーキ抑制条件のうち一つを除く全てが、タキシングブレーキ中のブレーキ過熱を2倍にする(すなわち、タキシングブレーキ抑制が同じブレーキを常に抑制する場合に生じるブレーキ過熱も同じく2倍になる)。非常タキシングブレーキ抑制条件のうち二つを除く全ては、一つのブレーキのみが着陸装置に作用し、そのブレーキは通常の4倍のトルクを与える。二つの非常タキシングブレーキ抑制条件は、通常の航空機の減速度の50%で車輪がロックアップする。本発明によると、非常タキシングブレーキ抑制条件の間に推奨される解決策は、任意の非常ブレーキ抑制条件がいずれかのペアに存在する場合、隣接する前後ブレーキペアの両方に対してタキシングブレーキ抑制を停止することである。
【0043】
本発明のタキシングブレーキシステムでは、上述の非常タキシングブレーキ抑制動作の問題を、図5に示すように、非常EBAC動作を表す電子ブレーキ駆動コントローラ(EBAC)ステータスメッセージをBSCUに読ませることによって解決することができる。なぜなら、これらのメッセージは通常はバス上で利用可能であるからである。着陸装置上の二つの前後ブレーキペアの間で非常タキシングブレーキ抑制ステータスを共有するように、BSCU分割が改良されるべきであり、また、任意の非常条件がいずれかのペアに存在する場合、前後ブレーキペアの両方に対してタキシングブレーキ抑制機能が停止されるべきである。
【0044】
図10に示すように、最大で10日間一つのブレーキが非作動(「BRAKE DEACTIVATED」)である間、三つのブレーキが33%熱くなることがある。図12に示すように、一つのブレーキのアンチスキッド機能の喪失(「ANTISKID FWD」または「ANTISKID AFT」)の間、25ノット未満で一つのブレーキが通常の減速でロックアップすることがある。図14に示すように、一つのブレーキの制動の喪失(「BRAKE FWD」または「BRAKE AFT」)の間、三つのブレーキが33%熱くなることがある。図16に示すように、両方のブレーキのアンチスキッドの喪失(「ANTISKID STATUS」)の間、二つのブレーキが通常の減速でロックアップすることがある。図18に示すように、前後ブレーキペアの両方の制動の喪失(「BRAKE CONTROLS」)の間、二つのブレーキが2倍熱くなり、二つのブレーキが通常の2倍のトルクを与えることがある。
【0045】
これらの改良がタキシングブレーキ抑制機能の非常動作に関連する問題を解決する。また、これらの改良を用いると、非常タキシングブレーキ抑制動作の結果が安全になる。加えて、「非常」動作中のタキシングブレーキ抑制を停止することで、カーボンブレーキ寿命の延長に物質的な影響を与えることはない。なぜなら、「非常」動作は通常、時間のわずかな部分でのみ発生するからである。
【0046】
上述の観点から、本発明に係るシステムおよび方法の実装によって、タキシングブレーキ抑制が「オン」であろうと「オフ」であろうとブレーキペダル「フィーリング」が常に等しくなるので、提案された新たなペダル「フィーリング」ロジックがブレーキペダル「フィーリング」の不連続問題を解決することが理解されるだろう。タキシングブレーキ抑制が「オン」であるときと「オフ」であるときの間でブレーキペダル「フィーリング」の大きな変化はもはや存在しない。また、航空機の一方の側でタキシングブレーキ抑制が「オン」であり、他方の側で「オフ」であるときに、ブレーキペダル「フィーリング」における大きな非対称差はもやは存在しない。また、「45%しきい値」を超えるたびに大きな減速「バンプ」は発生しない。本発明に係るシステムおよび方法の実装によって、非常タキシングブレーキ抑制動作の間、タキシングブレーキ中のブレーキ過熱が2倍になることに起因するブレーキ過熱の重大な問題が排除され、着陸装置の一つのブレーキのみが付加されるときのように通常のブレーキトルクの4倍がかかることが排除され、車輪ロックアップの脅威が排除される。
【0047】
本発明の特定の形態について説明し図解してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正をなし得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、添付の請求項によるもの以外、本発明を限定する意図はない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機ブレーキシステムのタキシングブレーキ抑制動作モードを制御するシステムであって、前記航空機ブレーキシステムは少なくとも一つの着陸装置を備え、前記少なくとも一つの着陸装置はそれぞれ車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアを備え、前記車輪ブレーキの少なくとも一部は、前記タキシングブレーキ抑制モードの間、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令にかかわらず、ブレーキを非作動状態にされ、
前記少なくとも一つの着陸装置に動作可能に接続され、前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの動作を制御するように構成された、少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラと、
指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令を受け取るように動作するブレーキシステム制御ユニットであって、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラに接続され、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラを制御してブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力よりも大きなブレーキ力を発生させるように動作する、ブレーキシステム制御ユニットと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記タキシングブレーキ抑制モードの間、前記車輪ブレーキの半分が非作動にされ、前記ブレーキシステム制御ユニットは、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラを制御して、前記タキシングブレーキ抑制モードの間、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力の2倍を発生させるよう動作することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラは、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージを生成するように動作し、前記ブレーキシステム制御ユニットは、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラと接続され、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表す前記ステータスメッセージを受け取ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ブレーキシステム制御ユニットは、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表す前記ステータスメッセージに応答して、前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対してタキシングブレーキ抑制モードを停止するように動作することを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
航空機ブレーキシステムのタキシングブレーキ抑制動作モードを制御するシステムであって、前記航空機ブレーキシステムは少なくとも一つの着陸装置を備え、前記少なくとも一つの着陸装置はそれぞれ車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアを備え、前記車輪ブレーキの少なくとも一部は、前記タキシングブレーキ抑制モードの間、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令にかかわらず、ブレーキを非作動状態にされ、
少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対して、指令されたブレーキ力のブレーキペダル指令を生成し、
前記ブレーキペダル指令を受け取り、
前記ブレーキペダル指令に応答して、前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力よりも大きなブレーキ力を発生させて、前記タキシングブレーキ抑制モードの間に非作動にされた少なくとも一部の前記車輪ブレーキを補償することを含む方法。
【請求項6】
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、タキシングブレーキ抑制モードが非作動のとき、第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線にしたがって指令されたブレーキ力を発生させ、前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線にしたがった前記タキシングブレーキ抑制モードの間、前記ブレーキペダル指令よりも大きな指令されたブレーキ力を発生させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線は、所与のブレーキペダル付加に対して2倍のブレーキ力を与えることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、車輪ブレーキが付加されていないとき、第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、アクティブなブレーキがブレーキ力を低下させるのと同時に抑制されたブレーキが付加される間に、ブレーキ力全体の変化を最小化するように調整された伝達関数を介して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、非作動にされたブレーキが再び付加される遅延を近似した時間遅延を経由して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記遅延が約0.3秒であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記タキシングブレーキ抑制モードの間、前記車輪ブレーキの半分が非作動にされ、
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、前記タキシングブレーキ抑制モードの間、前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御してブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力の2倍を発生させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動の非常動作を表すステータスメッセージを生成し、
非常動作を表す前記ステータスメッセージを受け取り、
非常動作を表す前記ステータスメッセージに応答して、前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対してタキシングブレーキ抑制モードを停止することをさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項1】
航空機ブレーキシステムのタキシングブレーキ抑制動作モードを制御するシステムであって、前記航空機ブレーキシステムは少なくとも一つの着陸装置を備え、前記少なくとも一つの着陸装置はそれぞれ車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアを備え、前記車輪ブレーキの少なくとも一部は、前記タキシングブレーキ抑制モードの間、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令にかかわらず、ブレーキを非作動状態にされ、
前記少なくとも一つの着陸装置に動作可能に接続され、前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの動作を制御するように構成された、少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラと、
指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令を受け取るように動作するブレーキシステム制御ユニットであって、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラに接続され、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラを制御してブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力よりも大きなブレーキ力を発生させるように動作する、ブレーキシステム制御ユニットと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記タキシングブレーキ抑制モードの間、前記車輪ブレーキの半分が非作動にされ、前記ブレーキシステム制御ユニットは、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラを制御して、前記タキシングブレーキ抑制モードの間、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力の2倍を発生させるよう動作することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラは、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表すステータスメッセージを生成するように動作し、前記ブレーキシステム制御ユニットは、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラと接続され、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表す前記ステータスメッセージを受け取ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ブレーキシステム制御ユニットは、前記少なくとも一つの電子ブレーキ駆動コントローラの非常動作を表す前記ステータスメッセージに応答して、前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対してタキシングブレーキ抑制モードを停止するように動作することを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
航空機ブレーキシステムのタキシングブレーキ抑制動作モードを制御するシステムであって、前記航空機ブレーキシステムは少なくとも一つの着陸装置を備え、前記少なくとも一つの着陸装置はそれぞれ車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアを備え、前記車輪ブレーキの少なくとも一部は、前記タキシングブレーキ抑制モードの間、指令されたブレーキ力に対するブレーキペダル指令にかかわらず、ブレーキを非作動状態にされ、
少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対して、指令されたブレーキ力のブレーキペダル指令を生成し、
前記ブレーキペダル指令を受け取り、
前記ブレーキペダル指令に応答して、前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、ブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力よりも大きなブレーキ力を発生させて、前記タキシングブレーキ抑制モードの間に非作動にされた少なくとも一部の前記車輪ブレーキを補償することを含む方法。
【請求項6】
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、タキシングブレーキ抑制モードが非作動のとき、第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線にしたがって指令されたブレーキ力を発生させ、前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線にしたがった前記タキシングブレーキ抑制モードの間、前記ブレーキペダル指令よりも大きな指令されたブレーキ力を発生させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線は、所与のブレーキペダル付加に対して2倍のブレーキ力を与えることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、車輪ブレーキが付加されていないとき、第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、アクティブなブレーキがブレーキ力を低下させるのと同時に抑制されたブレーキが付加される間に、ブレーキ力全体の変化を最小化するように調整された伝達関数を介して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、非作動にされたブレーキが再び付加される遅延を近似した時間遅延を経由して、第2のペダル指令−ブレーキ力の曲線から第1のペダル指令−ブレーキ力の曲線に遷移することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記遅延が約0.3秒であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記タキシングブレーキ抑制モードの間、前記車輪ブレーキの半分が非作動にされ、
前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御するステップは、前記タキシングブレーキ抑制モードの間、前記車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動を制御してブレーキペダル指令の指令されたブレーキ力の2倍を発生させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアの駆動の非常動作を表すステータスメッセージを生成し、
非常動作を表す前記ステータスメッセージを受け取り、
非常動作を表す前記ステータスメッセージに応答して、前記少なくとも一つの着陸装置の車輪ブレーキの前輪ペアと後輪ペアに対してタキシングブレーキ抑制モードを停止することをさらに含む請求項5に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図8】
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【図10】
【図11】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2012−516266(P2012−516266A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548301(P2011−548301)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022417
【国際公開番号】WO2010/088396
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(597034336)ハイドロ エアー インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022417
【国際公開番号】WO2010/088396
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(597034336)ハイドロ エアー インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
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