説明

タクシー用装飾灯

【課題】少ないLED使用量であっても遠方からの視認性にすぐれた意匠性の高い光を出光することができ、夜間における集客効果を向上させることが可能なタクシー用の装飾灯を提供する。
【解決手段】透明な合成樹脂からなる板状の本体20に複数のLED22がアーチ状に配設されてなる発光部14と、透明な合成樹脂を薄板状で且つLED22の配設形状に対応するアーチ状に成形し、その表面がLED22の出光面を向くように設置されると共にLED22の光軸方向にて互いに間隔を置いて複数設置された導光部材18とで構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシーの屋根上に取り付けて使用するタクシー用の装飾灯に関する。
【背景技術】
【0002】
タクシーの屋根上には、社標などが表示された半透明合成樹脂ケースの内部に光源を配設した屋根上表示灯(すなわち行灯)が取り付けられている。
【0003】
この屋根上表示灯は、タクシーの利用客が路上のタクシーを認識できるようにするだけでなく、各タクシー会社の広告も兼ねていることから、タクシー会社毎にそれぞれ固有の形状に成形され、利用客に対して自社をアピールできるようになっている。
【0004】
ここで、従来、タクシー用屋根上表示灯の光源としてフィラメントを用いたランプが使用されていたが、ランプはフィラメントが切れ易く、頻繁に交換をしなければならないと云った問題があった。このため、このランプに代わる光源として低消費電力で長寿命のLED(発光ダイオード)を用いたタクシー用屋根上表示灯が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−114366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように各タクシー会社は、利用客に自社のタクシーをアピールすべく、各社固有の形状に成形したタクシー用屋根上表示灯を使用しているが、夜間に当該表示灯の光源を点灯させたとしてもその明るさはタクシーのヘッドライトの明るさに比べて暗いため、タクシー用屋根上表示灯の形状の差異が埋没し、利用客へのアピール効果が薄れてしまうと云う問題があった。
【0006】
ここで、タクシー用屋根上表示灯にLEDのような小型の光源を取り付けて電飾することにより、利用客へのアピール効果を向上させることはできるが、ヘッドライトの明るさに勝り集客力を向上できるような意匠性の高い電飾を行なうためには、タクシー用屋根上表示灯の表面全体に多数のLEDを配置しなければならず、装置が複雑で大掛かりなものになると云う問題があった。
【0007】
また、上述のLEDを用いたタクシー用屋根上表示灯は、単に光源を従来のランプからLEDに置き換えただけのものであり、夜間における集客効果を向上できるものではなかった。
【0008】
それゆえに、本発明の主たる課題は、少ないLED使用量であるにもかかわらず、遠方からの視認性に優れた意匠性の高い光を出光することができ、夜間における集客効果を向上させることが可能なタクシー用の装飾灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明は、「透明な合成樹脂からなる板状の本体(20)に複数のLED(22)がアーチ状に配設されてなる発光部(14)と、透明な合成樹脂を薄板状で且つLED(22)の配設形状に対応するアーチ状に成形し、その表面がLED(22)の出光面を向くように設置されると共にLED(22)の光軸方向にて間隔を置いて1又は複数設置された導光部材(18)とで構成されている」ことを特徴とするタクシー用装飾灯(10)である。
【0010】
この発明では、アーチ状に配設されたLED(22)より出光した光が、当該LED(22)の光軸方向に1又は複数設置された透明な導光部材(18)を通過して行くが、その際、導光部材(18)を通過する光の一部が散乱するようになる。ここで、この導光部材(18)はLED(22)の出光面又は隣設する導光部材(18)から間隔を置いて設置されているので、LED(22)を点灯させたタクシー用装飾灯(10)をLED(22)の光軸方向側(タクシーの屋上に設置した際のタクシー前後方向)から観察すると、あたかも導光部材(18)のそれぞれにLED(22)が設けられているように視認することができる。つまり、LED(22)を点灯させたタクシー用装飾灯(10)を光軸方向側から見た場合、LED(22)より出光したアーチ状の光が幾重にも重なって光のトンネルが現れるようになる。
【0011】
また、特に、請求項2に記載したように、「LED(22)が砲弾型のLEDである」場合、この砲弾型のLEDは指向性の高い(つまり、光の照射角度が狭く、光軸方向により強い光を照射できる)ため、より遠方からでもタクシー用装飾灯(10)が放つ光のトンネルを視認することができるようになる。
【0012】
なお、光源としてLED(22)を使用することにより、点灯の際にインバーターなどが不要であり装置を簡単に構成できると共に、消費電力も低く経済的である。
【0013】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載のタクシー用装飾灯(10)において、「LED(22)が実装される基板(24)に、LED(22)の点滅パターン或いは色調を制御する制御手段が組み込まれている」ことを特徴とするもので、かかる制御手段を組み込むことにより、例えばタクシー用装飾灯(10)を既存のタクシー用屋根上表示灯(12)に取り付け、当該表示灯(12)のリード線にタクシー用装飾灯(10)のリード線(26)を接続した場合であっても、タクシー用装飾灯(10)の点灯パターンや色調をタクシー用屋根上表示灯(12)の点灯パターン等から独立して制御することができる。このため、タクシー用装飾灯(10)からより意匠性の高い光を出光させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少ないLED使用量であるにもかかわらず、遠方からの視認性に優れた意匠性の高い光を出光することができ、夜間における集客効果を向上させることが可能なタクシー用の装飾灯を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。図1は、本発明における一実施例のタクシー用装飾灯(10)の使用状態を示す斜視図である。この図が示すように、本実施例のタクシー用装飾灯(10)は、タクシーの屋上表示灯(12)に取り付けて使用される。又、図2は、本実施例のタクシー用装飾灯(10)の詳細を示すもので、図中(a)が正面図、(b)が右側面図、(c)が平面図である。
【0016】
これらの図が示すように、本実施例のタクシー用装飾灯(10)は、大略、発光部(14),出光パネル(16)及び複数の導光部材(18)等で構成されている。
【0017】
発光部(14)は、アクリル樹脂などの透明な合成樹脂を切欠円板状に成形した本体(20)を有する。この本体(20)の周縁部には、内部にLED(22)を収容するためのLED収容部(20a)が設けられている。
【0018】
ここで、LED収容部(20a)に収容されるLED(22)は、タクシー用装飾灯(10)の光源となるものであり、具体的には以下のように構成されている。すなわち、細幅テープ状に成形したフレキシブル基板(24)の長手方向に、光軸が互いに略平行するように複数の砲弾型LED(22)が一列に実装されている。したがって、かかる構成のLED(22)を前述のLED収容部(20a)に収容すると、LED(22)がアーチ状に配設されるようになる。
【0019】
また、複数のLED(22)が実装されたフレキシブル基板(24)にはリード線(26)が接続されており、このリード線(26)を介してLED(22)に電力が供給されるようになっている。
【0020】
出光パネル(16)は、LED(22)の発した光の多くが最終的にタクシー用装飾灯(10)から出光して行く部分であり、発光部(14)の本体(20)と同様にアクリル樹脂などの透明な合成樹脂を本体(20)と略同等の外形形状(すなわち切欠円板状)に成形した板状の部材である。
【0021】
なお、この出光パネル(16)は、タクシー用装飾灯(10)をタクシー用屋根上表示灯(12)に取り付ける際、本体(20)と協働して屋根上表示灯(12)の上部突出部(12a)を挟持する(図1参照)。
【0022】
導光部材(18)は、アクリル樹脂などの透明な合成樹脂からなり、LED(22)の配設形状に対応するアーチ状(本実施例の場合、馬蹄形状)に形成された薄板部材である(図2及び3参照)。この導光部材(18)は、その表面がLED(22)の出光面を向くように配置され、且つLED(22)の光軸方向にて間隔を置いて1又は複数設置される。本実施例では、本体(20)と出光パネル(16)との間にスペーサー(28)を介して互いに略等間隔となるように7枚の導光部材(18)が設置されている。
【0023】
なお、本実施例のタクシー用装飾灯(10)では、図2(b)における右側部分を構成する本体(20)とスペーサー(28)と3枚の導光部材(18)とが射出成形などの公知の樹脂成形方法を用いて一体的に成形されており、又、図2(b)における左側部分を構成する出光パネル(16)とスペーサー(28)と4枚の導光部材(18)とが同じく射出成形などの公知の樹脂成形方法を用いて一体的に成形されている。そして、それぞれ別体で構成された左右両側部分をネジ(30)で連結してタクシー用装飾灯(10)が構成されている。
【0024】
次に、本実施例のタクシー用装飾灯(10)を使用する際には、既存のタクシー用屋根上表示灯(12)に当該タクシー用装飾灯(10)を固定する。ここで、図1に示すように、タクシー用屋根上表示灯(12)に上部突出部(12a)があり、且つ本体(20)と出光パネル(16)とでこの上部突出部(12a)を挟持することによりタクシー用屋根上表示灯(12)にタクシー用装飾灯(10)を固定できる場合にはそのままでよいが、このような上部突出部(12a)がない場合等には、接着剤などの固定手段を用いてタクシー用屋根上表示灯(12)にタクシー用装飾灯(10)を固定する。なお、このタクシー用装飾灯(10)をタクシー用屋根上表示灯として使用することも可能である。
【0025】
そして、タクシー用装飾灯(10)のリード線(26)と、タクシー用屋根上表示灯(12)のリード線(図示せず)とを電気的に接続する。こうすることにより、タクシー用屋根上表示灯(12)の点灯に連動してタクシー用装飾灯(10)のLED(22)が発光するようになる。
【0026】
本実施例のタクシー用装飾灯(10)によれば、アーチ状に配設されたLED(22)より出光した光が、当該LED(22)の光軸方向に複数設置された透明な導光部材(18)を次々に通過して行くが、その際、導光部材(18)を通過する光の一部が散乱するようになる。ここで、この導光部材(18)はLED(22)の出光面又は隣設する導光部材(18)から間隔を置いて設置されているので、LED(22)を点灯させたタクシー用装飾灯(10)をLED(22)の光軸方向側(タクシーの屋上に設置した際のタクシー前後方向)から観察すると、あたかも導光部材(18)のそれぞれにLED(22)が設けられているように視認することができる。つまり、LED(22)を点灯させたタクシー用装飾灯(10)を光軸方向側から見た場合、LED(22)より出光したアーチ状の光が幾重にも重なって光のトンネルが現れるようになる。
【0027】
また、本実施例のタクシー用装飾灯(10)では、LED(22)として指向性の高い砲弾型のLED(22)を使用しているので、より遠方からでもタクシー用装飾灯(10)が放つ光のトンネルを視認することができる。
【0028】
したがって、少ないLED使用量であるにもかかわらず、遠方からの視認性に優れた意匠性の高い光を出光することができ、夜間における集客効果を向上させることが可能なタクシー用装飾灯(10)を提供することができる。
【0029】
なお、本実施例のタクシー用装飾灯(10)では、LED(22)を切欠き円弧状に配設する場合を示したが、このLED(22)はアーチ状に配設されたものであればこのような切欠き円弧状に限定されるものではなく、例えば、略コ字状に配設するようにしてもよい。
【0030】
また、LED(22)が発する光の色は如何なるものであってもよく、単一色のLED(22)を用いるようにしてもよいし、複数の色のLED(22)を用いるようにしてもよい。
【0031】
また、LED(22)が実装されるフレキシブル基板(24)に、LED(22)の点滅パターン或いは色調を制御する制御回路やタイマーなどの制御手段(図示せず)を組み込むようにしてもよい。このような制御手段を組み込むことにより、例えばタクシー用装飾灯(10)を既存のタクシー用屋根上表示灯(12)に取り付け、当該表示灯(12)のリード線にタクシー用装飾灯(10)のリード線(26)を接続した場合であっても、タクシー用装飾灯(10)の点灯パターンや色調をタクシー用屋根上表示灯(12)の点灯パターン等から独立して制御することができ、タクシー用装飾灯(10)からより意匠性の高い光を出光させることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明における一実施例のタクシー用装飾灯の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本実施例のタクシー用装飾灯の詳細を示すもので、(a)が正面図、(b)が右側面図、(c)が平面図である。
【図3】図2(c)におけるA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0033】
(10)…タクシー用装飾灯
(12)…タクシー用屋上表示灯
(14)…発光部
(16)…出光パネル
(18)…導光部材
(20)…本体
(20a)…LED収容部
(22)…LED
(24)…フレキシブル基板
(26)…リード線
(28)…スペーサー
(30)…ネジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な合成樹脂からなる板状の本体に複数のLEDがアーチ状に配設されてなる発光部と、
透明な合成樹脂を薄板状で且つ前記LEDの配設形状に対応するアーチ状に成形し、その表面が前記LEDの出光面を向くように設置されると共に前記LEDの光軸方向にて間隔を置いて1又は複数設置された導光部材とで構成されていることを特徴とするタクシー用装飾灯。
【請求項2】
前記LEDが砲弾型のLEDであることを特徴とする請求項1に記載のタクシー用装飾灯。
【請求項3】
前記LEDが実装される基板に、前記LEDの点滅パターン或いは色調を制御する制御手段が組み込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタクシー用装飾灯。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−86179(P2009−86179A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254384(P2007−254384)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000114709)ヤック株式会社 (22)
【出願人】(507321004)甲三堂造花有限会社 (1)
【Fターム(参考)】