説明

タスク用照明器具による照明方法及びタスク用照明器具

【課題】タスク用照明器具において、省エネルギーとサーカディアンリズムの調整を両立させる。
【解決手段】タスク用照明器具1が照明をする時間帯は、少なくとも第1の作業時間帯と第2の作業時間帯とに分けられる。タスク用照明器具1は、第1の作業時間帯では、作業をする人の顔面に直射光を照射し、その直射光は、顔面鉛直面の単位面積当たりのメラトニン作用放射束が700以上とされる。第2の作業時間帯では、顔面に直射光を照射せず、作業面に照射する照明光は、色温度が5000K以下とされる。これにより、タスク用照明器具1によって省エネルギーのタスクアンドアンビエント照明を行い、第1の作業時間帯ではサーカディアンリズム調整効果を得て、第2の作業時間帯ではサーカディアンリズムへの影響を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タスク用照明器具によるサーカディアンリズムを整えるための照明方法及びそれに用いられるタスク用照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、約24時間周期の生体リズムであるサーカディアンリズムを整えるために、日中、特に午前中に顔面に高照度の光を浴び、夕刻から夜間にかけて、特に遅い時間帯になるにつれ、できるだけ顔面に光を浴びないようにすることが人にとって重要であるとされている。
【0003】
夜間に分泌され、サーカディアンリズムに関連すると考えられているホルモン、メラトニンは、光を浴びることでその分泌が抑制されることが従前から知られていたが、非特許文献1によれば、その作用に波長特性があり、波長の短い光でメラトニンの分泌がより抑制されると報告されている。一般に光は、相関色温度が高い程、短波長成分を多く含むので、夜間には、目に入射する光をできるだけ低い色温度の光にすることによって、メラトニン分泌の抑制が防止され、サーカディアンリズムの乱れが防がれる。逆に、日中に短波長の光を目に浴びることは、よりサーカディアンリズムを整える作用があることがわかってきている。従って、日中はできるだけ高い色温度の光をできるだけ高照度で目に浴びるようにし、夜間はできるだけ目に光を浴びないように、もし浴びるとしても、できるだけ低い色温度の光をできるだけ低照度で浴びるようにすることが望ましい。
【0004】
サーカディアンリズムを考慮した照明装置として、照明器具を室内の高所と低所に設置し、高所に設置した照明器具を高色温度で点灯し、低所に設置した照明器具を低色温度で点灯する制御をする室内照明装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上述した室内照明装置においては、夜間のできるだけ光を浴びたくない時間帯において、低所すなわち顔面に近い位置の照明器具が点灯するため、目が必要以上に光を浴び、サーカディアンリズムが乱れる。また、日中に点灯する高色温度の照明器具が高所に設置されており、顔面からの距離が遠いために光のロスが大きく、省エネルギーでない。また、高所と低所の2箇所に設置した照明器具を制御する必要があり、高コストである。
【0006】
一方、室内空間全体を均一照度で照明する全般照明と異なり、空間全体を照明するアンビエント照明と、机上面等の作業面を照明するタスク照明とに分けたタスクアンドアンビエント照明が知られている。例えば、図23に示されるように、アンビエント照明のためのアンビエント用照明器具102が天井101に配設され、タスク照明のためのタスク用照明器具103が机上に立設される。タスクアンドアンビエント照明は、アンビエント照明の照度を抑え、タスク照明で視作業に必要な照度を作業面に確保することにより、省エネルギーを図っている。
【0007】
上述したタスクアンドアンビエント照明は、全体として省エネルギーに寄与するが、空間全体の照度を低下して作業面に光を集中するため、日中において顔面への光が不足する傾向があり、サーカディアンリズムを乱す虞がある。一方、夕刻と夜間において、作業面からの反射光により顔面へ不要な量の光が供給され、サーカディアンリズムが乱れる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−260580号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】G. C. Brainer著「Action Spectrum for Melatonin Regulation in Humans: Evidence for a Novel Circadian Photoreceptor」The Journal of Neuroscience、2001年8月15日、21(16)、pp6405−6412
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を解決するものであり、タスクアンドアンビエント照明に用いられるタスク用照明器具において、省エネルギーとサーカディアンリズムの調整を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、作業面を照明するタスク用照明器具による照明方法であって、前記タスク用照明器具が照明をする時間帯は、少なくとも第1の作業時間帯と第2の作業時間帯とに分けられ、前記タスク用照明器具は、前記第1の作業時間帯では、作業をする人の顔面に直射光を照射し、その直射光は、顔面鉛直面の単位面積当たりのメラトニン作用放射束が700以上とされ、前記第2の作業時間帯では、顔面に直射光を照射せず、作業面に照射する照明光は、色温度が5000K以下とされるものである。
【0012】
ここで、前記第1の作業時間帯は、例えば、日中の時間帯であり、前記第2の作業時間帯は、例えば、夕刻から夜間にかけての時間帯である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載のタスク用照明器具による照明方法において、前記タスク用照明器具は、顔面に直射光を照射する発光部を備え、前記発光部は、平均輝度が20000cd/m以下とされるものである。
【0014】
請求項3の発明は、作業面を照明するタスク用照明器具であって、前記タスク用照明器具は、作業をする人の顔面に直射光を照射する顔面向け発光部と、作業面に照明光を照射する作業面向け発光部と、を備え、前記直射光は、顔面鉛直面の単位面積当たりのメラトニン作用放射束が700以上とされ、前記照明光は、色温度が5000K以下とされるものである。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3に記載のタスク用照明器具において、前記顔面向け発光部は、特定の波長域の光を透過させるフィルタを備え、該フィルタを介して顔面に直射光を照射するものである。
【0016】
請求項5の発明は、請求項3に記載のタスク用照明器具において、前記顔面向け発光部及び前記作業面向け発光部は、一体の発光部であって、前記発光部は、作業面に対する位置を変化させることによって、顔面に対する直射光の照射の有無を切り替えるものである。
【0017】
請求項6の発明は、請求項3に記載のタスク用照明器具において、複数の前記タスク用照明器具が同一系統のダクトから給電されるものである。
【0018】
請求項7の発明は、請求項3に記載のタスク用照明器具において、照明光の平均演色評価指数(Ra)が80以上とされるものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、タスク用照明器具によって省エネルギーのタスクアンドアンビエント照明を行い、タスク用照明器具が照射する光の照射を時間帯に応じて変えることによって、第1の作業時間帯ではサーカディアンリズムの調整効果を得て、第2の作業時間帯ではサーカディアンリズムへの影響を小さくするので、省エネルギーとサーカディアンリズムの調整を両立させることができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、直射光によるグレアを抑制することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同じ効果を得ることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、可視光の波長域のうち、比較的短い波長域の透過率が高く、長い波長域の透過率が低いフィルタを選択することによって、短波長の直射光でサーカディアンリズム調整効果を維持すると共に、短波長以外の直射光をカットして平均輝度を下げ、グレアを抑制することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、顔面に対する直射光の照射と作業面に対する照明光の照射を一体の発光部で兼用するので、器具構成が簡易化される。
【0024】
請求項6の発明によれば、複数のタスク用照明器具を一括して点灯、消灯等することができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、作業面の視認性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明方法に用いられるタスク用照明器具の側面図。
【図2】アクションスペクトルを示す図。
【図3】メラトニン作用放射束、作業面色温度及び発光面輝度による、生体リズム調整効果、生体リズムへの影響及びグレア感を評価した実験結果を示す表。
【図4】第1の実施形態の変形例に係るタスク用照明器具における発光部の断面図。
【図5】第1の実施形態の別の変形例に係るタスク用照明器具における発光部の断面図。
【図6】同器具におけるフィルタの分光透過率を示す図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るタスク用照明器具のブロック構成図。
【図8】同照明器具の斜視図。
【図9】同照明器具の側面図。
【図10】同照明器具における光源の色温度を変更する例を説明する斜視図。
【図11】同照明器具における光源の色温度の変更する例を説明する側面図。
【図12】同照明器具における光源の色温度を変更する別の例を説明する斜視図。
【図13】同照明器具における光源の色温度を変更するさらに別の例を説明する斜視図。
【図14】同光源の拡大図。
【図15】第2の実施形態の変形例に係るタスク用照明器具の側面図。
【図16】第2の実施形態の別の変形例に係るタスク用照明器具の側面図。
【図17】本発明の第3の実施形態に係るタスク用照明器具の正面図。
【図18】同照明器具の側面図。
【図19】(a)は同照明器具におけるダクトの平面図、(b)は同照明器具における光源モジュールの平面図、(c)は同照明器具における人センサモジュールの平面図、(d)は同照明器具における明るさセンサモジュールの平面図。
【図20】第3の実施形態の変形例に係るタスク用照明器具の正面図。
【図21】同照明器具の側面図。
【図22】同照明器具における第1の照明ダクトの斜視図。
【図23】従来のタスクアンドアンビエント照明の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るタスク用照明器具(以下、照明器具という)による照明方法を図1乃至図6を参照して説明する。図1に示されるように、照明器具1は、作業面2の近傍に立設された支持部3に取り付けられ、作業面2を照明する。照明器具1による照明時間帯は、少なくとも第1の作業時間帯と第2の作業時間帯とに分けられている。第1の作業時間帯は、日中、特に午前中の時間帯であり、第2の作業時間帯は、夕刻から夜間にかけての時間帯である。
【0028】
照明器具1は、作業をする人すなわち使用者4の顔面に直射光51Lを照射する顔面向け発光部51と、作業面2に照明光52Lを照射する作業面向け発光部52とを備える。顔面向け発光部51と作業面向け発光部52とは、一体であっても、別体として構成してもよい(総称して発光部5という)。発光部5は、蛍光灯又はLED等の光源を有する。なお、51Lと52Lの閉曲線は、それぞれ、顔面向け発光部51と作業面向け発光部52の配光曲線を示す。
【0029】
照明器具1は、第1の作業時間帯、例えば日中では、使用者4の顔面に直射光を照射する。その直射光は、顔面鉛直面の単位面積当たりのメラトニン作用放射束が700以上とされる。第2の作業時間帯、例えば夕刻〜夜間では、顔面への直射光は、消灯又は減光される。特に夜間は、顔面への直射光が消灯されることが望ましい。第2の作業時間帯における作業面2に照射する照明光は、相関色温度が5000K以下とされ、照明光の作業面からの反射光が目に反射することもあり得るため、3000K以下が望ましい。
【0030】
メラトニン作用放射束Mは、光束をΦ、相対メラトニン作用係数をmとすると、下記の数式1により求められる。
【0031】
【数1】

【0032】
この相対メラトニン作用係数mは、k、kを定数、λを波長、B(λ)をアクションスペクトル、V(λ)を標準視感効率、S(λ)を照明器具1からの分光放射束、Swhite(λ)を蛍光灯等の任意の一般的な白色光源の分光放射束とすると、下記の数式2により求められる。
【0033】
【数2】

【0034】
図2に示されるように、メラトニン抑制に関するアクションスペクトルB(λ)は、400nm乃至600nmの波長域において、波長λに対して上に凸の曲線となり、波長λが464nmにピークを有する(非特許文献1参照)。この曲線は、実験結果を4次関数で近似したものであり、決定係数Rすなわち相関係数Rの自乗が0.91である。
【0035】
顔面に直射光を照射する顔面向け発光部51は、その平均輝度が20000cd/m以下とされ、10000cd/m以下が望ましく、5000cd/m以下がさらに望ましい。
【0036】
図3は、上記照明器具1による実験結果を示す。ここに、メラトニン作用放射束、作業面色温度及び発光面輝度に対する、日中の生体リズム(サーカディアンリズム)調整効果、夜間の生体リズムへの影響及び被験者グレア感を示す。被験者の顔面に対する直射光のメラトニン作用放射束は、400から900まで100刻みに変化させ、作業面に対する照明光の色温度は、3000Kから7000Kまで1000K刻みに変化させ、発光部の発光面輝度は、照明光の色温度に応じて変化させた。
【0037】
日中の生体リズム調整効果は、「効果大」(◎)、「効果中程度」(○)、「効果小」(△)、「効果なし」(×)の4段階で評価した。実験結果によれば、メラトニン作用放射束が700と800のときに評価が「効果中程度」(○)となり、メラトニン作用放射束が900のときに評価が「効果大」(◎)となった。すなわち、メラトニン作用放射束を700以上にすれは、日中の生体リズム調整効果が得られる。
【0038】
夜間の生体リズムへの影響は、「影響なし」(◎)、「影響小」(○)、「影響中程度」(△)、「影響大」(×)の4段階で評価した。実験結果によれば、作業面色温度が5000Kと4000Kのときに評価が「影響小」(○)となり、作業面色温度が3000Kのときに評価が「影響なし」(◎)となった。すなわち、作業面色温度を5000K以下にすれば、夜間の生体リズムへの影響が小さい。
【0039】
被験者のグレア感は、「グレア感なし」(○)、「グレア感中程度」(△)、「グレア感大」(×)の3段階で評価した。実験結果によれば、発光面輝度が18000cd/mと20000cd/mのときに評価が「グレア感なし」(○)となった。すなわち、発光面輝度を20000cd/m以下にすれば、照明器具によるグレアが抑制される。
【0040】
上述したように、照明器具1によって省エネルギーのタスクアンドアンビエント照明を行い、照明器具1が照射する光の照射を時間帯に応じて変えることによって、第1の作業時間帯ではサーカディアンリズムの調整効果を得て、第2の作業時間帯ではサーカディアンリズムへの影響を小さくするので、省エネルギーとサーカディアンリズムの調整を両立させることができる。また、作業をする人の顔面に直射光を照射する発光部の平均輝度を所定値(20000cd/m)以下にするので、直射光によるグレアを抑制することができる。
【0041】
作業をする人の顔面に直射光を照射する発光部は、光源の光出力を制限することによって平均輝度を20000cd/m以下にしてもよいが、フィルタによって特定波長域以外の直射光を減衰させることによって平均輝度を20000cd/m以下にしてもよい。
【0042】
例えば、図4に示されるように、発光部5は、使用者4の顔面に対する直射光51Lと作業面2に対する照明光52Lを照射する光源6と、特定の波長域の光を透過させるフィルタ7とを備え、フィルタ7を介して顔面に直射光51Lを照射する。
【0043】
また、図5に示されるように、発光部5は、使用者4の顔面に直射光51Lを照射する光源61を有する顔面向け発光部51と、作業面2に照明光52Lを照射する光源62を有する作業面向け発光部52とを備え、特定の波長域の光を透過させるフィルタ7が顔面向け発光部51に設けられ、フィルタ7を介して顔面に直射光51Lを照射するようにしてもよい。
【0044】
フィルタ7は、図6に示されるように、可視光の波長域のうち、比較的短い波長域の透過率が高く、それよりも長い波長域の透過率が低いものが選択される。これにより、短波長の直射光によるサーカディアンリズム調整効果を維持すると共に、短波長以外の直射光をカットして平均輝度を下げ、グレアを抑制することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る照明器具を図7乃至図16を参照して説明する。図7に示されるように、本実施形態の照明器具10は、使用者の顔面への直射光及び作業面への照明光を照射する発光部5と、発光部5を調光制御する第1の制御部54と、発光部5を上下動自在に支持する支持部3と、発光部5を可動させる可動部8と、発光部5の可動を制御する第2の制御部81と、発光部の作業面に対する高さを検知する高さ検知部9とを備える。
【0046】
図8及び図9に示されるように、発光部5は、使用者4に向かって左右に長い長尺状の灯具53と、灯具53に取り付けられた蛍光灯、LED又は有機EL等から成る光源6とを有し、使用者4の顔面に直射光を照射する顔面向け発光部と、作業面2に照明光を照射する作業面向け発光部とを兼ねた一体のものとして構成される。第1の制御部54は、インバータ等を有し、光源6の光出力を調整して発光部5を調光制御する。
【0047】
支持部3は、例えば、作業面2の奥位置に立設されたパーティション34に上下方向に取り付けられたガイドレールであり、発光部5を上下に可動自在に支持する。灯具53は、ロープ又はワイヤ等の索体82によってパーティション34の上部に取り付けられたドラム83から吊り下げられる。ドラム83は、モータ84によって回転され、索体82を巻き取って灯具53を支持部3に沿って上昇させ、逆回転されることによって灯具53を下降させる。このドラム83は、パーティション34の左右に一対として設けられており、両ドラム83を連結する回転軸85によって回転が同期される。これらのモータ84、ドラム83、回転軸85及び索体82が、可動部8を構成する。第2の制御部81は、モータ84の回転及び停止を制御して、発光部5の作業面2に対する位置を制御する。
【0048】
高さ検知部9は、例えばリミットスイッチであり、支持部3の上端及び下端の近傍に取り付けられ、発光部5が上位置又は下位置にあることを検知する。この上位置は、着席した使用者4の目線よりも高い位置に設定され、下位置は、使用者4の目線よりも低く作業面2よりも高い位置に設定される。
【0049】
上記のように構成された照明器具10は、作業面2に対する発光部5の位置を変化させることによって、使用者4の顔面に対する直射光の照射の有無を切り替える。第1の作業時間帯、例えば日中では、発光部5(実線で示す)は、着席した使用者4の目線よりも高い位置(上位置)に上昇され、使用者4の顔面と作業面2に光を照射する。第2の作業時間帯、例えば夕刻〜夜間では、発光部5(2点鎖線で示す)は、着席した使用者4の目線よりも低い位置(下位置)に下降され、使用者4の顔面に光を照射せず、作業面2のみに光を照射する。発光部5は、下位置にあるとき、作業面2との距離が近いので、第1の制御部54によって光源6の光出力を下げてもよい。発光部5の高さを変化させることにより、作業面2の照度を確保しつつ、顔面への直射光の有無を切り替え、顔面への照度が可変とされる。発光部5の上昇と下降は、タイマー等により自動制御してもよいし、手動で操作してもよい。
【0050】
このように、顔面に対する直射光の照射と作業面2に対する照明光の照射を一体の発光部5で兼用するので、器具構成が簡易化される。
【0051】
次に、発光部5が照射する光のメラトニン作用放射束及び色温度の切替について説明する。図10に示されるように、発光部5の光源6は、高色温度の光源61と低色温度又は白色の光源62とから成り、例えば、複数の高色温度の光源61と低色温度又は白色の光源62とが交互に配列されている。
【0052】
第1の作業時間帯では、発光部5は、第1の制御部54によって高色温度の光源61を点灯すると共に低色温度又は白色の光源62を消灯し、高色温度の光を照射する。第2の作業時間帯では、発光部5は、低色温度又は白色の光源62を点灯すると共に高色温度の光源61を消灯し、低色温度又は白色の光を照射する。高色温度の光源61と低色温度又は白色の光源62の光源の点灯及び消灯は、発光部5の位置を高さ検知部9によって検知して自動で切り替えてもよいし、手動で切り替えてもよい。
【0053】
図11に示されるように、第1の作業時間帯では、発光部5は、着席した使用者4の目線よりも高い位置から、使用者4の顔面と作業面2に高色温度の光を照射する。このときに顔面に照射される直射光は、顔面鉛直面の単位面積当たりのメラトニン作用放射束が700以上とされる。第2の作業時間帯では、発光部5は、着席した使用者4の目線よりも低い位置から、作業面2のみに低色温度又は白色の光を照射する。このときに作業面2に照射される照明光は、色温度が5000K以下とされる。
【0054】
この照明光は、平均演色評価指数(Ra)を80以上とすることが望ましい。これにより、作業面の視認性を維持することができる。
【0055】
また、図12に示されるように、第1の作業時間帯では、発光部5は、高色温度の光源61と低色温度又は白色の光源62を共に点灯し、高色温度かつ高照度の光を照射するようにしてもよい。第2の作業時間帯では、発光部5は、高色温度の光源61を消灯して低色温度又は白色の光源62を点灯し、低色温度又は白色の光を照射する。
【0056】
また、図13に示されるように、発光部5に色温度が可変の光源63を用い、第1の制御部54で光源63の光出力と色温度を制御するように構成してもよい。第1の作業時間帯では、発光部5は、光源63が、高色温度の光を照射する。第2の作業時間帯では、同じ光源63が、低色温度又は白色の光を照射する。光源63の光出力は、第1の作業時間帯よりも第2の作業時間帯のほうが低くされる。
【0057】
色温度が可変の光源63は、例えば、図14に示されるように、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の発光ダイオード(LED)を組み合わせたものであり、各LEDからの光が混色された光を照射する。このRGBの各LEDの光出力の調整により、光源63の色温度が可変とされる。
【0058】
図15に示されるように、発光部5は、作業面2からの高さに応じて光源6の照射範囲を変えるように構成してもよい。灯具53は、光源6からの光を反射する反射板55を備える。発光部5は、その位置が下がると、灯具53又は反射板55を使用者4側に向けて回動させる。この回動は、発光部5の上下可動機構に連動して行われる。例えば、支持部3にラック・ギア、発光部5にピニオン・ギアを設け(図示せず)、発光部5の支持部3に沿った上下動によって、ピニオン・ギアを回転させ、その回転により減速ギアを介して反射板55を回動させる。これにより、作業面2の明るさのムラが低減される。なお、このラック・アンド・ピニオンを発光部5の上下可動機構として用いてもよい。
【0059】
また、図16に示されるように、発光部5を上下に動かすことに替えて、灯具53又は反射板55を回動することによって、使用者4の顔面に対する直射光の照射の有無を切り替えるように構成してもよい。例えば、第1の作業時間帯では、発光部5は、着席した使用者4の目線よりも高い位置から、使用者4の顔面と作業面2に光を照射する。第2の作業時間帯では、発光部5は、モータ等によって反射板55を作業面2の方向に回動し、同じ位置から作業面2のみに光を照射する。なお、本変形例の制御では、高さ検知部に替えて、反射板の角度を検知する角度検知部が用いられる。また、発光部5は、反射板55を回動することに替えて、反射板55を使用者4の顔面方向にせり出すように構成してもよい。
【0060】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る照明器具を図17乃至図19を参照して説明する。図17及び図18に示されるように、室内に複数の机41が配置されており、第1の照明ダクト56と、第2の照明ダクト57が、自立可能な支持部35によって机41の上方に略水平に支持される。各机41の机上面が作業面である。第1の照明ダクト56は、着席した使用者の目線よりも高い位置に支持され、第2の照明ダクト57は、着席した使用者の目線よりも低い位置に支持される。
【0061】
第1及び第2の照明ダクト56、57は、図19(a)に示されるダクトに、図19(b)で示される光源モジュール58が着脱自在に取り付けられたものである。光源モジュール58は、LED等から成る光源6を有し、本実施形態では照明器具11の発光部として機能する。第1及び第2の照明ダクト56、57には、複数の照明器具11が各机41に対応して配置される。同一系統のダクトに配置された照明器具11は、その系統のダクトから給電される。なお、ダクトには、図19(c)に示される人センサモジュール91及び図19(d)に示される明るさセンサモジュール92を取り付けてもよい。人センサモジュール91は、使用者の有無を検知し、明るさセンサモジュール92は、作業面の明るさを検知し、それらの検知結果は、光源モジュール58の点灯、調光、消灯の制御に用いられる。
【0062】
上記のように構成された照明器具11の動作について説明する。第1の作業時間帯では、第1の照明ダクト56に配置された光源モジュール58は、使用者の顔面と作業面に高色温度の光を照射する。このときに照射される光は、顔面鉛直面の単位面積当たりのメラトニン作用放射束が700以上とされる。第2の作業時間帯では、第1の照明ダクト56に配置された光源モジュール58は消灯し、第2の照明ダクト57に配置された光源モジュール58は、着席した使用者の目線よりも低い位置から、作業面のみに低色温度の光を照射する。このときに照射される光は、色温度が5000K以下とされる。光源モジュール58は、例えばPLC(電力線通信)によりアドレッシングを行って、点灯を自動制御してもよい。
【0063】
これにより、光源モジュール58の着脱によって照明器具11の増減が容易となり、また、複数の照明器具11を一括して点灯、消灯等することができる。
【0064】
本実施形態の変形例に係る照明器具を図20乃至図22を参照して説明する。図20及び図21に示されるように、複数の第1の照明ダクト59を支持する支持バー36と、第2の照明ダクト57が、自立可能な支持部35によって机41の上方に略水平に支持される。第1の照明ダクト59は、各机41毎に配置され、着席した使用者の目線よりも高い位置に略水平に支持される。第2の照明ダクト57は、複数の机41に共通に設けられ、着席した使用者の目線よりも低い位置に支持される。
【0065】
図22に示されるように、各々の第1の照明ダクト59は、アーム38を介して支持バー36に枢設される。アーム38の一端は、支持バー36に着脱自在に取り付けられ、回動機構37によって支持バー36の周りを回動自在とされる。アーム38の他端には、第1の照明ダクト59が取り付けられ、第1の照明ダクト59は、支持バー36に対して平行保って回動自在である。第1の照明ダクト59は、アーム38及び支持バー36を介して給電される。これにより、第1の照明ダクト59は、作業面からの高さが個別に調整される。
【0066】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第2の実施形態において、発光部5を上下動させる機構は、クロスリンク等のリンク機構又はボールねじを用いたものであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1、10、11 タスク用照明器具
5 発光部
51 顔面向け発光部
52 作業面向け発光部
7 フィルタ
56、57、59 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業面を照明するタスク用照明器具による照明方法であって、
前記タスク用照明器具が照明をする時間帯は、少なくとも第1の作業時間帯と第2の作業時間帯とに分けられ、
前記タスク用照明器具は、前記第1の作業時間帯では、作業をする人の顔面に直射光を照射し、その直射光は、顔面鉛直面の単位面積当たりのメラトニン作用放射束が700以上とされ、
前記第2の作業時間帯では、顔面に直射光を照射せず、作業面に照射する照明光は、色温度が5000K以下とされることを特徴とするタスク用照明器具による照明方法。
【請求項2】
前記タスク用照明器具は、顔面に直射光を照射する発光部を備え、
前記発光部は、平均輝度が20000cd/m以下とされることを特徴とする請求項1に記載のタスク用照明器具による照明方法。
【請求項3】
作業面を照明するタスク用照明器具であって、
前記タスク用照明器具は、作業をする人の顔面に直射光を照射する顔面向け発光部と、作業面に照明光を照射する作業面向け発光部と、を備え、
前記直射光は、顔面鉛直面の単位面積当たりのメラトニン作用放射束が700以上とされ、
前記照明光は、色温度が5000K以下とされることを特徴とするタスク用照明器具。
【請求項4】
前記顔面向け発光部は、特定の波長域の光を透過させるフィルタを備え、該フィルタを介して顔面に直射光を照射することを特徴とする請求項3に記載のタスク用照明器具。
【請求項5】
前記顔面向け発光部及び前記作業面向け発光部は、一体の発光部であって、
前記発光部は、作業面に対する位置を変化させることによって、顔面に対する直射光の照射の有無を切り替えることを特徴とする請求項3に記載のタスク用照明器具。
【請求項6】
複数の前記タスク用照明器具が同一系統のダクトから給電されることを特徴とする請求項3に記載のタスク用照明器具。
【請求項7】
照明光の平均演色評価指数が80以上とされることを特徴とする請求項3に記載のタスク用照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−231924(P2010−231924A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75796(P2009−75796)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】