説明

タッチスクリーン、タッチパネル及び表示装置

【課題】検出用配線に金属配線を用いた大型のPCT方式タッチパネルに於いて、検出用配線間の寄生容量を増大させずに配線密度を高めて容量検出感度を向上させる。
【解決手段】各検出用列配線2は、列方向yに対して傾斜角度45°で斜めに傾斜した第1傾斜部分2aSと、列方向yに平行で且つ第1傾斜部分2aSに繋がった第1平行部分2aPとが、列方向yに沿ってジグザグ状に繰り返されて配設されて成るジグザグパターンの第1金属配線2aと、列方向yを軸として第1金属配線2aに線対称な構成を有する第2金属配線2bとの一組から成る。各検出用行配線3も同様な構造を有する。第1金属配線2aの第1傾斜部分2aSの内で傾斜部分2aS1は、その中点に於いて第3金属配線3aの第2傾斜部3aSの傾斜部分3aS1と、その中点に於いて、常に立体的に直交する。その他の部分も同様な直交関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに於けるタッチスクリーンの大型化に関する。
【背景技術】
【0002】
指等の指示体によるタッチを検出して、その位置座標を特定するタッチパネルは、優れたユーザーインターフェース手段の一つとして注目されており、抵抗膜方式又は静電容量方式等の種々の方式によるタッチパネルが製品化されている。
【0003】
それらの方式の内で、静電容量方式の一つとして、タッチセンサが内蔵されるタッチスクリーンの前面側を数mm程度の厚みのガラス板等の保護膜で覆った場合でも指示体のタッチの検出が可能なPCT(Projected Capacitive Touchscreen)方式がある。このPCT方式は、保護板を前面に配置できるので堅牢性に優れている点、手袋装着時でもタッチ検出が可能である点、及び、稼働部が無いため長寿命である点等の利点を有している。
【0004】
例えば、PCT方式による従来のタッチパネルに於けるタッチスクリーンは、静電容量を検出するための検出導体として、薄い誘電膜上に形成された第1シリーズの導体エレメントと、絶縁膜を介して第1シリーズの導体エレメントと隔てて形成された第2シリーズの導体エレメントとを備えており、各導体エレメント間に電気的接触をもたらすこと無く立体的に複数の交点を形成している(例えば特許文献1を参照。)。導体エレメントとして最適な材料は、例えば銀等の金属材料である。又、表示上、導体エレメントの可視性が問題となり、その可視性を低くする場合には、酸化インジウム等の透明導電膜が、導体エレメントとして用いられる。或いは、導体エレメントに変えて、細い導線を、タッチパネルの検出配線として、使用可能である。
【0005】
又、静電容量を検出する導体エレメントは、出力線及びマルチプレクサを介して、容量制御オシレータに接続される。その出力は、除算器でカウントされて、容量検出データとされる。
【0006】
【特許文献1】特表平9−511086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この様なタッチパネルの検出配線を透明導電膜で形成する場合には、タッチパネルが装備される表示装置の表示品質を損なうことは少ないが、検出配線を成す透明導電膜の抵抗が高いために、タッチパネルの大型化が難しいと言う問題点がある。
【0008】
そこで、検出配線の抵抗を低くしてタッチパネルの大型化を実現するために、検出配線として金属膜を用いることが、考えられる。しかし、この場合に於いては、検出配線が反射光により視認され、表示品質が低下すると言う問題点がある。
【0009】
そこで、検出配線の抵抗を低くし且つ検出配線が反射光により視認されない様に反射光を低減化してタッチパネルの大型化を実現するために、細い金属導線が検出配線として使用されることとなる。しかしながら、この場合に於いて、大面積を検出するために、細い金属導線より成る検出配線の配線密度を高めた構造にすると、却って、列用金属導線と行用金属導線間に生じる寄生容量が大きくなり、配線遅延が発生すると言う問題点がある。
【0010】
本発明は、これらの問題点を解決するために成されたものであり、金属導線より成る検出配線を用いてタッチパネルの大型化を図る際に、寄生容量を小さくして静電容量の検出感度を高めることが出来、しかも、検出用配線がより一層視認されにくくすることが出来る、大型なタッチパネルの実現化、及び、当該タッチパネルを備えた表示装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主題は、透明なベース基板の裏面側に絶縁膜を介して立体的に交差する様に配設された、その各々が列方向に延在した複数の検出用列配線及びその各々が行方向に延在した複数の検出用行配線を有するタッチスクリーンであり、しかも、前記複数の検出用列配線の内で所定本数毎の検出用列配線は、各々の両端で電気的に共通に接続されて一束の列方向束配線を構成しており、各列方向束配線は、当該列方向束配線内に属する検出用列配線が所定のピッチで行方向に繰り返し配列されることで構成されており、且つ、前記複数の検出用行配線の内で所定本数毎の検出用行配線は、各々の両端で電気的に共通に接続されて一束の行方向束配線を構成しており、各行方向束配線は、当該行方向束配線内に属する検出用行配線が所定のピッチで列方向に繰り返し配列されることで構成されているタッチスクリーンであって、前記検出用列配線は、前記列方向に対して傾斜角度45°で斜めに傾斜した第1傾斜部分と、前記列方向に平行で且つ前記第1傾斜部分に繋がった第1平行部分とが前記列方向に沿って繰り返し配設されて構成されるジグザグパターンの第1金属配線と、前記列方向を軸として前記第1金属配線に線対称な構成を有する第2金属配線との一組から成り、前記検出用行配線は、前記行方向に対して傾斜角度45°で斜めに傾斜した第2傾斜部分と、前記行方向に平行で且つ前記第2傾斜部分に繋がった第2平行部分とが前記行方向に沿って繰り返し配設されて構成されるジグザグパターンの第3金属配線と、前記行方向を軸として前記第3金属配線に線対称な構成を有する第4金属配線との一組から成り、前記複数の検出用列配線の内の任意の1本の検出用列配線と前記複数の検出用行配線の内の任意の1本の検出用列配線とが立体的に交差して成る各エリアに於いて、前記エリア内に属する前記第1金属配線の2つの第1傾斜部分の内で一方の傾斜部分はその中点に於いて前記エリア内に属する前記第3金属配線の2つの第2傾斜部の内の一方の傾斜部分とその中点に於いて立体的に直交しており、前記エリア内に属する前記第1金属配線の2つの第1傾斜部分の内で他方の傾斜部分はその中点に於いて前記エリア内に属する前記第4金属配線の2つの第2傾斜部の内の一方の傾斜部分とその中点に於いて立体的に直交しており、前記エリア内に属する前記第2金属配線の2つの第1傾斜部分の内で一方の傾斜部分はその中点に於いて前記エリア内に属する前記第3金属配線の2つの第2傾斜部の内の他方の傾斜部分とその中点に於いて立体的に直交しており、前記エリア内に属する前記第2金属配線の2つの第1傾斜部分の内で他方の傾斜部分はその中点に於いて前記エリア内に属する前記第4金属配線の2つの第2傾斜部の内の他方の傾斜部分とその中点に於いて立体的に直交していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の主題によれば、金属配線を用いた検出用配線のパターン形状を最適化している結果、検出用列配線と検出用行配線間の寄生容量をより小さくして検出用配線の配線密度をより高めることが出来るので、より高い容量検出感度を確保した大型のPCT方式タッチスクリーンを得ることが出来る。
【0013】
以下、この発明の主題の様々な具体化を、添付図面を基に、その効果・利点と共に、詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係るタッチパネルが有するタッチスクリーン1の構成を模式的に示す平面図である。又、図2は、検出用列配線2及び検出用行配線3の構成をより理解し易くするために検出用配線を拡大化して模式的に示したタッチスクリーン1の一部分の透視横断面図である。以下、図1及び図2を参照して、タッチスクリーン1の構成について記載する。尚、後述する実施の形態2及び3の場合をも含めて、以下の各図面に於いて、各図中で用いられている同一参照符号は、同一又は相当の構成要素を示す。
【0015】
図1に例示する様に、タッチスクリーン1は、(1)列方向(図1中のy方向に相当)に伸在し且つ所定の第1ピッチで行方向(図1中のx方向に相当)に繰り返し配列された、複数の検出用列配線2と、(2)行方向xに伸在し且つ所定の第2ピッチで列方向yに繰り返し配列された、複数の検出用行配線3とを、備えている。そして、所定本数の検出用列配線2は、その各々の上端及び下端に於いて、接続用配線4により、共通に電気的に接続されて、一束の列方向束配線6を構成している。同様に、所定本数の検出用行配線3は、それぞれ、その左端及び右端に於いて、接続用配線5により、共通に電気的に接続されて、一束の行方向束配線7を構成している。更に、所定本数の列方向束配線6が行方向xに平行配列されており、同様に、所定本数の行方向束配線7も列方向yに平行配列されている。従って、所定本数の列方向束配線6及び所定本数の行方向束配線7の立体的交差によって、タッチスクリーン1は、所定数のエリアに立体的に分割されている。この様な構成を採用するときには、検出用列配線及び検出用行配線の配線密度は大きくなるため、後述するタッチ容量の値を大きな値として確保することが出来る。
【0016】
そして、図2に例示する様に、各検出用列配線2は、(1)列方向yに対して傾斜角度45°で斜めに傾斜した第1傾斜部分2aSと、列方向yに平行で且つ第1傾斜部分2aSに繋がった第1平行部分2aPとが、列方向yに沿ってジグザグ状に繰り返されて配設されて成るジグザグパターンの第1金属配線2aと、(2)列方向yを軸として第1金属配線2aに線対称な構成を有する第2金属配線2bとの一組から成る。
【0017】
同様に、各検出用行配線3は、(3)行方向xに対して傾斜角度45°で斜めに傾斜した第2傾斜部分3aSと、行方向xに平行で且つ第2傾斜部分3aSに繋がった第2平行部分3aPとが、行方向xに沿ってジグザグ状に繰り返されて配設されて成るジグザグパターンの第3金属配線3aと、(4)行方向xを軸として第3金属配線3aに線対称な構成を有する第4金属配線3bとの一組から成る。
【0018】
しかも、複数の検出用列配線2の内の任意の1本の検出用列配線と、複数の検出用行配線3の内の任意の1本の検出用列配線とが立体的に交差して成る各エリアに於いて、以下の様な位置関係が成立する。
【0019】
即ち、各エリア内に属する第1金属配線2aの2つの第1傾斜部分2aSの内で一方の傾斜部分2aS1は、その中点(中心部)に於いて、当該エリア内に属する第3金属配線3aの2つの第2傾斜部3aSの内の一方の傾斜部分3aS1と、その中点(中心部)に於いて、常に立体的に直交している。更に、当該エリア内に属する第1金属配線2aの2つの第1傾斜部分2aSの内で他方の傾斜部分2aS2は、その中点(中心部)に於いて、当該エリア内に属する第4金属配線3bの2つの第2傾斜部3bSの内の一方の傾斜部分3bS1と、その中点(中心部)に於いて、常に立体的に直交している。加えて、当該エリア内に属する第2金属配線2bの2つの第1傾斜部分2bSの内で一方の傾斜部分2bS1は、その中点(中心部)に於いて、当該エリア内に属する第3金属配線3aの2つの第2傾斜部3aSの内の他方の傾斜部分3aS2と、その中点(中心部)に於いて常に立体的に直交している。更に、当該エリア内に属する第2金属配線2bの2つの第1傾斜部分2bSの内で他方の傾斜部分2bS2は、その中点(中心部)に於いて、当該エリア内に属する第4金属配線3bの2つの第2傾斜部3bSの内の他方の傾斜部分3bS2と、その中点(中心部)に於いて立体的に常に直交している。この様な傾斜部分同士の直交関係の設定により、当該エリア内の各平行部分2aP,2bP,3aP及び3bPの行方向xに沿っての寸法は、最小値化される。
【0020】
図2に示した以上の構成の採用により、検出用列配線2と検出用行配線3の配線間で発生する線間容量(寄生容量)の値を最小化することが可能となる。更に、本構成によって、検出用列配線2及び検出用行配線3が存在しない箇所を平面視したときの当該箇所の全面積を、本構成を採用しない場合よりも格段に少なくすることが出来るため、指等の指示体と検出用列配線2との間の静電容量及び指示体と検出用行配線3との間の静電容量から成るタッチ容量を各エリアで均一に検出することが可能となる。
【0021】
そして、本構成のタッチスクリーン1の行方向x及び列方向yの各々が、タッチスクリーン1に装着される表示パネル(例えばLCDパネル)の画素パターンの行方向及び列方向と平行となる様に、上記表示パネルをタッチスクリーン1に装着するときには、検出用列配線2及び検出用行配線3の各ジグザグパターン2a,2b,3a,3bが、画素パターンの行方向及び列方向の各々の配列方向に対して45°の角度で傾斜した斜め方向に、各画素に対して配置されることとなり、各画素の一部を均一に覆うこととなる結果、表示パネルが出射した表示光がタッチスクリーン1を通り抜ける際の透過率を均一化することが出来、モワレ現象の発生を少なくすることが可能となる。
【0022】
図1に示す様に、列方向束配線6及び行方向束配線7は、それぞれ、引き出し配線8,9によって、端子10に接続されている。但し、ここでは、図示の便宜上、引き出し配線8,9はそれぞれ1本の配線として描かれているが、実際には、各束配線6,7を構成する検出用列配線2毎に及び検出用行配線3毎に、1本の引き出し配線が配設されている。
【0023】
図1に於いては、指等の指示体がタッチスクリーン1の後述する透明なベース基板の表面にタッチしたときに、検出用配線群を構成する検出用列配線2及び検出用行配線3(以下、検出用列配線2及び検出用行配線3を、「検出用配線」と総称する。)の各々と指示体との間に、タッチ容量が形成される。
【0024】
尚、各束配線6,7の本数、及び、各束配線6,7を構成する検出用配線の本数は、タッチパネルへの指示体のタッチ位置(タッチ座標値)の要求分解能から、適宜に選択・設定される。
【0025】
次に、図3を参照して、タッチスクリーン1の層構成を記載する。タッチスクリーン1の上面層は、透明なガラス材料又は透明な樹脂から成る透明基板12(以下「ベース基板12」と記載する。)であり、ベース基板12の裏面上には、アルミニウム等の金属配線材料から成る複数本の検出用列配線2が形成される。ここでは、図示の便宜上、各検出用列配線2は、既述したジグザグパターンの構造を有する様に、図示されてはいない。更に、ベース基板12の裏面上には、全検出用列配線2を被覆する様に、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜等の透明な層間絶縁膜13が形成され、層間絶縁膜13の裏面上に、アルミニウム等の金属配線材料から成る複数本の検出用行配線3が形成される。ここでも、図示の便宜上、各検出用行配線3は、既述したジグザグパターンの構造を有する様に、図示されてはいない。尚、検出用列配線2と検出用行配線3との配設位置を逆に設定して、ベース基板12の裏面上に検出用行配線3を形成し、層間絶縁膜13の裏面上に検出用列配線2を形成しても良い。
【0026】
図4は、本実施の形態に係るタッチパネルの全体構成を模式的に示した図である。タッチスクリーン1の各端子10(図4には図示せず。図1を参照。)に、FPC(Flexible Printed Circuit)17の対応する端子が、ACF(Anisotropic Conductive Film)等を用いることにより、実装される。このFPC17を介して、タッチスクリーン1の検出用配線群の端部とコントローラ基板18とが電気的に接続されることにより、図1〜図3に例示したタッチスクリーン1は、タッチパネルの主要構成要素として機能する。又、コントローラ基板18には、(1)複数の検出用列配線2の各々及び複数の検出用行配線3の各々を順次に選択するスイッチ回路(図示せず。)と、(2)上記スイッチ回路により選択された検出用列配線2と指示体との間に形成される静電容量及び上記選択スイッチ回路により選択された検出用行配線と指示体との間に形成される静電容量から成るタッチ容量の検出結果に基づいて、指示体のタッチ位置のタッチスクリーン1上に於けるタッチ座標の算出処理を行う検出処理回路19とが、搭載されている。そして、検出処理回路19によって算出された指示体のタッチ位置のタッチスクリーン1上に於けるタッチ座標の値は、検出座標データとして、外部のコンピュータ(図示せず。)等に出力される。
【0027】
以上に記載した本実施の形態の構造を採用することによって、寄生容量を増加させずに配線密度を大きくすることが出来るため、容量検出感度を低下させること無く大型化が可能なタッチパネル、及び、それを備えた表示装置を提供することが出来る。
【0028】
(実施の形態2)
本実施の形態の特徴点は、実施の形態1に係るタッチスクリーン1の構成を採用した上で、検出用配線2,3の繰り返しピッチ(第1ピッチ及び第2ピッチ)を、1mm以下の寸法値に設定し、且つ、タッチスクリーン1に装着される表示パネルの画素パターンの配列ピッチよりも大きな値に設定する点にある。
【0029】
図5は、既述した実施の形態1によって構成されたタッチスクリーン1の検出用配線2,3の繰り返しピッチと、ガラス等のベース基板12の厚みが1mm程である場合のタッチ容量との関係を、検出用配線2,3の配線幅が3μm、6μm及び10μmの各場合について、電磁界ソルバーを用いた計算によって算出した結果を示す図である。図5に示す様に、検出用配線2,3の繰り返しピッチが1mmを上回ると、配線密度の低下に起因してタッチ容量が小さくなり、容量検出感度が不十分となる。他方、検出用配線2,3の繰り返しピッチが1mm以下であるときには、検出用配線2,3の配線幅の値に拘わらず、タッチ容量が顕著に増大しており、十分な容量検出感度が得られる。しかし、実施の形態2に係るタッチスクリーンの検出用配線の繰り返しピッチが、装着される表示パネルの画素パターンの配列ピッチよりも小さくなるときには、常に複数本の配線が画素上を覆うために、タッチスクリーンの透過率が減少してしまう。従って、本実施の形態に係るタッチスクリーン1の検出用配線2,3の繰り返しピッチは、1mm以下であり、且つ、装着される表示パネルの画素パターンの配列ピッチよりも大きな値に設定されることが、望ましい。
【0030】
ここで、検出用配線2,3の繰り返しピッチを1mm以下の小さな値に設定すると、タッチスクリーン1を通り抜ける表示光の透過率が減少してしまうが、この点は、検出用配線2,3の配線幅を狭くすることにより改善することが出来る。この点を示す結果が図6である。即ち、図6は、実施の形態1によって構成されたタッチスクリーン1の検出用配線2,3の配線幅とタッチスクリーン1を通り抜ける表示光の透過率との関係の計算結果を示す図であり、検出用配線2,3の繰り返しピッチが0.1mm及び1mmの各々である場合を表している。尚、検出用配線2,3の反射率は100%であるものとしている。図6に明示される様に、検出用配線2,3の繰り返しピッチがより小さくなると透過率が減少するが、検出用配線2,3の配線幅をより小さくすることによって、この点を改善することが出来る。
【0031】
図7は、実施の形態1によって構成されたタッチスクリーン1の検出用配線2,3の配線幅と視認限界ピッチとの関係を表した計算結果を示す図である。ここで、「視認限界ピッチ」とは、目視によって、タッチスクリーン1の配線領域と背景領域とを判別することが可能な、検出用配線2,3の繰り返しピッチの下限値である。視認限界ピッチの算出には、次の計算式(1)を用いた。
【0032】
【数1】

【0033】
ここで、式(1)のパラメータの値に関しては、視距離をそれぞれ20cm、50cm、100cm及び200cmの場合とし、更に、σ=0.138、A=0.472、γ=1.06に設定した(視認者の年齢は20歳・昼間に視認の場合。)。尚、計算に際して前提である検出用配線2,3の繰り返しピッチの値(1mm以下の値。)は、式(1)中の配線領域の反射明度L*mの中に反映されている。
【0034】
検出用配線2,3の繰り返しピッチの値を大きく設定すると、目視によって視認者はタッチスクリーン1の配線領域と背景領域とを見分け易くなるため、視認限界ピッチの値は大きくなる。他方、検出用配線2,3の繰り返しピッチの値を小さく設定すると、タッチスクリーン1の配線領域と背景領域とが細かくなることにより、目視によって配線領域と背景領域とを見分けづらくなるため、視認限界ピッチの値は小さくなる。又、検出用配線2,3の配線幅の増加に応じて、検出用配線2,3の面積増大による反射明度の上昇のために、視認限界ピッチの値は減少する。
【0035】
図7に示す様に、検出用配線2,3の配線幅をある程度まで小さくすると、視認限界ピッチの値が急激に増加することが理解される。検出用配線2,3の繰り返しピッチの値を1mm以下の値に設定する場合に於いて、検出用配線2,3の配線幅を5μm以下に設定するときには、視認限界ピッチは1mm以上の大きな値となって、検出用配線2,3の繰り返しピッチの値を視認限界ピッチ以下に設定することが出来るので、目視で検出用配線2,3の配線パターンを視認出来ない様にすることが出来る。
【0036】
従って、本実施の形態の構成に於いては、検出用配線2,3の繰り返しピッチの値が1mm以下の場合に於いて、検出用配線2,3の配線幅を5μm以下に設定することが、検出用配線2,3のパターンの視認を防止して、表示装置の表示品質を損なうことを防ぎ得る点で、望ましいと、言える。
【0037】
(実施の形態3)
本実施の形態の特徴点は、(1)検出用列配線2及び検出用列配線3の各々を、Al系合金とその窒化層との多層構造で以って構成すると共に、(2)検出用配線2,3の繰り返しピッチの値が1mm以下の場合に於いて、検出用配線2,3の配線幅を10μm以下に設定する点にある。
【0038】
図8は、実施の形態1によって構成されたタッチスクリーン1の検出用配線2,3を、Al系合金と、Al系合金の窒化層との多層構造として構成した場合に於ける、検出用配線2,3の配線幅とタッチスクリーン1の透過率との関係を与える計算結果を示す図である。図8は、検出用配線2,3の繰り返しピッチが、0.1mmである場合の結果と、1mmである場合の結果とを、表している。併せて、図8は、検出用配線2,3の反射率が100%の場合の結果を破線で以って表している。図8の結果より、検出用配線2,3を、Al等の単一金属の配線(導線)のみで構成する場合よりも反射率が小さい、Al系合金とその窒化層との多層構造で構成することにより、検出用配線2,3の反射率の低下に伴い、大きな透過率が得られることが理解される。しかも、検出用配線2,3の配線幅を小さく設定することによって、更に透過率の向上を図ることが出来る。
【0039】
図9は、実施の形態3によって構成されたタッチスクリーンの検出用配線の配線幅と視認限界ピッチとの関係を表した計算結果を示す図である。ここで、式(1)のパラメータの値については、視距離がそれぞれ20cm、50cm及び100cmである場合に関して、σ=0.138、A=0.472、及びγ=1.06に設定されている(視認者の年齢が20歳・昼間の場合。)。図9に示す様に、検出用配線の配線幅を小さくすると、実施の形態2の場合よりも大きな値の配線幅に於いて、視認限界ピッチが急激に増加することが理解される。図9の結果に基づけば、検出用配線の繰り返しピッチを1mm以下に設定する場合に於いて、検出用配線の配線幅を10μm以下に設定するときには、視認限界ピッチは1mm以上の急激に大きな値となるので、検出用配線の繰り返しピッチを視認限界ピッチ以下にすることが出来る結果、目視により検出用配線の配線パターンを視認出来ない様にすることが出来る。
【0040】
以上の通り、本実施の形態に記載した構造を採用することによって、検出用配線の存在を認識されにくく出来るので、表示装置としての表示品質を損なうこと無く、容量検出感度を低下させずに、大型化を促進可能なタッチパネル、及び、同パネルを備えた表示装置を提供することが出来る。
【0041】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態1に係るタッチパネルが有するタッチスクリーンの構成を模式的に示す平面図である。
【図2】検出用列配線及び検出用行配線の構成を理解し易くするために検出用配線を拡大化して模式的に示したタッチスクリーンの一部分の横断面図である。
【図3】実施の形態1に係るタッチパネルが有するタッチスクリーンの層構成の一部分を模式的に示す斜視断面図である。
【図4】実施の形態1に係るタッチパネルの全体構成を模式的に示した図である。
【図5】実施の形態2に於ける検出用配線の配線幅とタッチ容量との関係を示す図である。
【図6】実施の形態2に於ける検出用配線の配線幅と透過率との関係を示す図である。
【図7】実施の形態2に於ける検出用配線の配線幅と視認限界ピッチとの関係を示す図である。
【図8】実施の形態3に於ける検出用配線の配線幅と透過率との関係を示す図である。
【図9】実施の形態3に於ける検出用配線の配線幅と視認限界ピッチとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 タッチスクリーン、2 検出用列配線、3 検出用行配線、6 列方向束配線、7 行方向束配線、2a,2b,3a,3b ジグザグパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なベース基板の裏面側に絶縁膜を介して立体的に交差する様に配設された、その各々が列方向に延在した複数の検出用列配線及びその各々が行方向に延在した複数の検出用行配線を有するタッチスクリーンであり、しかも、
前記複数の検出用列配線の内で所定本数毎の検出用列配線は、各々の両端で電気的に共通に接続されて一束の列方向束配線を構成しており、各列方向束配線は、当該列方向束配線内に属する検出用列配線が所定のピッチで行方向に繰り返し配列されることで構成されており、且つ、
前記複数の検出用行配線の内で所定本数毎の検出用行配線は、各々の両端で電気的に共通に接続されて一束の行方向束配線を構成しており、各行方向束配線は、当該行方向束配線内に属する検出用行配線が所定のピッチで列方向に繰り返し配列されることで構成されているタッチスクリーンであって、
前記検出用列配線は、前記列方向に対して傾斜角度45°で斜めに傾斜した第1傾斜部分と、前記列方向に平行で且つ前記第1傾斜部分に繋がった第1平行部分とが前記列方向に沿って繰り返し配設されて構成されるジグザグパターンの第1金属配線と、前記列方向を軸として前記第1金属配線に線対称な構成を有する第2金属配線との一組から成り、
前記検出用行配線は、前記行方向に対して傾斜角度45°で斜めに傾斜した第2傾斜部分と、前記行方向に平行で且つ前記第2傾斜部分に繋がった第2平行部分とが前記行方向に沿って繰り返し配設されて構成されるジグザグパターンの第3金属配線と、前記行方向を軸として前記第3金属配線に線対称な構成を有する第4金属配線との一組から成り、
前記複数の検出用列配線の内の任意の1本の検出用列配線と前記複数の検出用行配線の内の任意の1本の検出用列配線とが立体的に交差して成る各エリアに於いて、
前記エリア内に属する前記第1金属配線の2つの第1傾斜部分の内で一方の傾斜部分はその中点に於いて前記エリア内に属する前記第3金属配線の2つの第2傾斜部の内の一方の傾斜部分とその中点に於いて立体的に直交しており、前記エリア内に属する前記第1金属配線の2つの第1傾斜部分の内で他方の傾斜部分はその中点に於いて前記エリア内に属する前記第4金属配線の2つの第2傾斜部の内の一方の傾斜部分とその中点に於いて立体的に直交しており、
前記エリア内に属する前記第2金属配線の2つの第1傾斜部分の内で一方の傾斜部分はその中点に於いて前記エリア内に属する前記第3金属配線の2つの第2傾斜部の内の他方の傾斜部分とその中点に於いて立体的に直交しており、前記エリア内に属する前記第2金属配線の2つの第1傾斜部分の内で他方の傾斜部分はその中点に於いて前記エリア内に属する前記第4金属配線の2つの第2傾斜部の内の他方の傾斜部分とその中点に於いて立体的に直交していることを特徴とする、
タッチスクリーン。
【請求項2】
請求項1記載のタッチスクリーンであって、
前記検出用列配線の前記所定のピッチ及び前記検出用行配線の前記所定のピッチは、共に、1mm以下であり、且つ、前記タッチスクリーンに装着されるべき表示パネル内の画素パターンの対応する方向に於ける繰り返しピッチよりも大きいことを特徴とする、
タッチスクリーン。
【請求項3】
請求項2記載のタッチスクリーンであって、
前記検出用列配線及び前記検出用行配線は、共に、Al系合金と前記Al系合金の窒化層との多層構造から成り、
前記検出用列配線の配線幅及び前記検出用行配線の配線幅は、共に、10μm以下であることを特徴とする、
タッチスクリーン。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の前記タッチスクリーンと、
前記複数の検出用列配線の各々及び前記複数の検出用行配線の各々を順次に選択するスイッチ回路と、
前記スイッチ回路により選択された検出用列配線と前記タッチスクリーンの前記ベース基板の表面にタッチした指示体との間に形成される静電容量及び前記選択スイッチ回路により選択された検出用行配線と前記指示体との間に形成される静電容量から成るタッチ容量の検出結果に基づいて、前記指示体のタッチ位置の前記タッチスクリーンに於けるタッチ座標の算出処理を行う検出処理回路とを備えることを特徴とする、
タッチパネル。
【請求項5】
請求項4記載の前記タッチパネルと、
前記タッチパネルの前記タッチスクリーンに装着された表示パネルとを備え、
前記タッチスクリーンの前記列方向と前記表示パネル内の画素パターンの列方向とは互いに平行であり、
前記タッチスクリーンの前記行方向と前記表示パネル内の前記画素パターンの行方向とは互いに平行であることを特徴とする、
表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−61502(P2010−61502A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227885(P2008−227885)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】