説明

タッチセンシティブディスプレイを用いてオブジェクトを複写する方法およびシステム

【課題】タッチセンシティブディスプレイ上のオブジェクトを複写するための改善された方法を提供する。
【解決手段】本発明は、タッチセンシティブディスプレイを使用してオブジェクトを複写するコンピュータ実施の方法に関する。タッチセンシティブディスプレイ上の、選択された第1のオブジェクトを表示するステップ(10)と、選択された第1のオブジェクト上の第1のユーザ対話および第2のユーザ対話を検出するステップ(14)と、選択された第1のオブジェクトの外への第1のユーザ対話の移動を検出するステップ(16)と、第1のユーザ対話の移動を追跡する第2のオブジェクトであって、第1のオブジェクトの複写である、第2のオブジェクトを表示するステップ(20)と、タッチセンシティブディスプレイ上の第1のユーザ対話が最後に検出されたロケーションに従って第2のオブジェクトを位置付けるステップ(26)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してコンピュータプログラムおよびコンピュータシステムの分野に関し、より具体的には、タッチセンシティブディスプレイを使用してオブジェクトを複写する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの分野では、ユーザと、例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、音楽プレーヤ、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタントなどのデバイスとの間の対話の効率に関してはGUI(グラフィカルユーザインターフェース)が重要な役割を果たす。これらのデバイスは、機能を実施する様々なアプリケーションおよびプログラムを実行する。
【0003】
通常、ユーザは、GUIに表示されるメニュー、ツールバー、アイコンおよび他の図形を介してアプリケーションおよびプログラムと対話する。例えば、コンピュータ支援手法の分野では、オブジェクト(またはパーツ)の設計またはオブジェクトのアセンブリ用に、CATIAという商標でDassault Systemesによって提供されるような製品を形成する多数のシステムおよびプログラムが市場投入されている。これらのCADシステムでは、ユーザは、GUIを介してオブジェクトの複雑な3D(3次元)モデルまたはオブジェクトのアセンブリを構築および操作することができる。
【0004】
従来、操作は、ユーザが操作するカーソルによってグラフィカルに行われる。カーソルはデバイスのGUIに表示され、マウス、トラックボール、図形タブレットなどのポインティングデバイスによって操作される。キーボード上の物理的ボタン(例えば、プッシュボタン)などの入力周辺デバイスによって操作を行うことも可能である。とりわけ最近では、タッチセンシティブディスプレイが開発されている。タッチセンシティブディスプレイは、ユーザとデバイスとの間の新しいタイプの対話を可能にしている。タッチセンシティブディスプレイは、表示エリア上の対話の存在とロケーション(場所)、例えば、ディスプレイ上のユーザの指の接触を検出することができる。タッチセンシティブディスプレイは、このように、従来のポインティングデバイスに代わる入力インターフェースを提供する。さらに、出力インターフェースも提供する。
【0005】
タッチセンシティブディスプレイはタッチセンシティブ表面を有し、この表面によって、ユーザと、この表面との対話を検出することができる。いくつかのタイプのタッチセンシティブディスプレイ技術が開発されており、限定ではないが、抵抗型、表面音波型、赤外線型、および容量型の技術がある。対話は、例えば、オブジェクト(例えば、スタイラス)および/または突起物(例えば、ユーザの手の指)によって行うことができる。したがって、表示されている物と直接に対話することが可能である。
【0006】
一般的に、タッチセンシティブディスプレイを有するデバイスは、それ以外にポインティングデバイスおよび/または入力周辺デバイスを有さない。しかし、これにより、ユーザは、従来的にはポインティングデバイスおよび/または入力周辺デバイスによって行われる一部の操作を実行できなくなる可能性がある。例えば、一部の操作は、情報をデバイスに入力するキーボードの一連の英数字キーの組み合わせによって実行されており、そのような組み合わせは、タッチセンシティブディスプレイで再現することは困難である。
【0007】
特許文献1は、グラフィカルユーザインターフェース内で使用するワンタッチ回転方法を開示している。ワンタッチ回転方法では、ユーザは、仮想ワークスペース内で仮想オブジェクトを回転、および時には移動させることができる。仮想オブジェクトの回転は、1本指ジェスチャなどのワンタッチユーザ入力を用いて行うことができる。ワンタッチ回転方法は、ワンタッチユーザ入力を認識して追跡するステップと、ワンタッチユーザ入力の追跡された移動に応答して仮想オブジェクトを回転させるステップとを含む。
【0008】
特許文献2は、2つ以上のユーザ対話を用いてタッチセンシティブ画面と直接に対話することにより、タッチセンシティブ画面に表示された1つまたは複数のグラフィカルオブジェクトの位置、サイズおよび/または方向を操作する方法を開示している。操作されるグラフィカルオブジェクトに関するユーザ対話の相対的ロケーションは、操作全体にわたって維持される。この操作は、軌跡の分析、および/またはユーザ対話の移動経路の明示は必要なく、そのため、この操作は比較的低い処理コストで行うことができる。
【0009】
特許文献3は、地理的マップを表示し、地理的マップが表示されている間に、タッチセンシティブディスプレイ上にユーザが生成するジェスチャ入力であって、地理的マップ上の選択される地理的エリアを定義するジェスチャ入力を受信するように構成されたタッチセンシティブディスプレイ表面を開示している。ユーザの親指と人差し指で作られる指ピンチは、指ピンチで描画される境界ボックスのジェスチャ入力を生成し、その入力は、スペース内に親指と人差し指間の長方形の地理的境界を含み、その地理的境界は、選択される地理的エリアを画定する。
【0010】
コピーアンドペーストコマンド(複写コマンドとも呼ばれる)は、非常に一般的な機能である。このコマンドは、例えば、キーボードのCtrl+CおよびCtrl+Vというキーの組み合わせによって実行できる。しかし、そのようなキーの組み合わせは、タッチセンシティブディスプレイでは実行不可能、または少なくとも達成するのは困難である。上述の制限を回避するために、グラフィカルコピー/ペーストコマンドが開発されている。
【0011】
第1の方法は、コピー/ペーストコマンドの実行が、コピーするオブジェクトをポインティングデバイスで選択し、次いで、ユーザがコピーしたいオブジェクト上でアクション(例えば、マウスの右ボタンで右クリックする)を実行し、右クリックに引き続いて現れる「Copy」メニューを選択することにより行われる。次に、ユーザは、そのオブジェクトをコピーしたいロケーションで別のアクション(例えば、右クリック)を実行し、「Paste」メニュー(例えば、左クリック)を選択する。しかし、この方法は少なくとも2つのボタンが付いたポインティングデバイスを必要とするが、そのようなポインティングデバイスがタッチセンシティブディスプレイで常に使用可能なわけではない。
【0012】
特許文献4は、ユーザが、ウィンドウ上において、選択した2つのポイントで定義される距離と方向に基づいて選択された項目をコピーできるようにするコピーツールを開示している。ユーザがコピーツールを選択すると、そのユーザは、コピーされる項目の位置に対応する距離と方向を定義するための2つのポイントを入力することができる。コピーコマンドを実行する場合、第1の選択されるポイントは、オブジェクトをコピーするための基本基準ポイントとして機能し、第2の選択されるポイントは、コピーされる項目のための距離と方向を定義する。
【0013】
別の公知の方法は、選択するオブジェクトをダブルタップし、次いで、指を押し下げたまま選択を行うことである。次いで、ユーザは、前述のジェスチャにより、選択されるオブジェクトの近くに現れる「Copy」メニューを選択する。次に、ユーザは、コピーしたい位置を2回タップする。最後に、ユーザは、選択される位置の近くに現れる「Paste」メニューをクリックする。
【0014】
この方法は、コピーツールを選択するという欠点があり、コピーツールを選択することは、ユーザがいくつかのコピー/ペースト操作を行う必要がある場合、面倒な作業であり、時間の浪費になる。この理由のため、ジェスチャに基づいた方法が提案された。
【0015】
公知の方法は、コピーするオブジェクトを選択し、次に、その選択されたオブジェクト上でコピージェスチャを行うことにある。例えば、そのジェスチャは、タッチセンシティブ表面上で親指と中指を同時にタップすることであってよい。ペーストジェスチャは、ユーザがオブジェクトをペーストしたい場所で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0079700号Al明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0184939号Al明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0153492号Al明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0228842号Al明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
コピー/ペースト操作を実行するためのこれら様々な方法はいくつかの欠点がある。例えば、これらの方法を達成するには時間がかかる。例えば、コピー/ペースト機能を起動するためには「Copy」メニューを呼び出す必要があり、それには、「Copy」メニューを呼び出すための固有のジェスチャを実行する必要がある。その上、コピー/ペーストを起動するために必要なジェスチャは、ユーザにとって自然でなく、使い勝手が良くない。加えて、ユーザが、複写されるオブジェクトを正確な位置に位置付けることはかなり難しく、注目すべきは、これは、使い勝手が良くないジェスチャの結果である。
【0018】
したがって、簡潔に説明した上述の公知のソリューションの限界により、タッチセンシティブディスプレイ上のオブジェクトを複写するための改善された方法が必要である。好ましくは、この方法は、ジェスチャの正確さを改善しなければならない。つまり、ジェスチャは、ユーザにとって直感的でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、したがって、タッチセンシティブディスプレイを使用してオブジェクトを複写するコンピュータ実施の方法を提供する。その方法は、タッチセンシティブディスプレイ上の、選択された第1のオブジェクトを表示するステップと、選択された第1のオブジェクト上の第1のユーザ対話および第2のユーザ対話を検出するステップと、選択された第1のオブジェクトの外への第1のユーザ対話の移動を検出するステップと、タッチセンシティブディスプレイ上の第1のユーザ対話の移動を追跡する第2のオブジェクトであって、第1のオブジェクトの複写である、第2のオブジェクトを表示するステップと、タッチセンシティブディスプレイ上の第1のユーザ対話が最後に検出されたロケーションに従って第2のオブジェクトを位置付けるステップとを含む。
【0020】
本発明による方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有することができる。すなわち、第1のユーザ対話の移動を検出するステップの後、選択されるオブジェクト上の第2のユーザ対話の終わりを検出するステップ。第1のユーザ対話および第2のユーザ対話は、選択された第1のオブジェクト上の対話の検出の順序に関係なく、同時にまたは連続して実行される。第1のユーザ対話が最後に検出されたロケーションとは、タッチセンシティブディスプレイ上の第1のユーザ対話の終わりが検出されたロケーションである。選択された第1のオブジェクトを表示するステップおよび第2のオブジェクトを位置付けるステップは、グラフィカルユーザインターフェースの同じウィンドウ内で行われる。第2のオブジェクトを表示するステップで、第2のオブジェクトのレンダリングは、第1のオブジェクトのレンダリングと比較して修正される。第1のユーザ対話および第2のユーザ対話は、スタイラス、指のうちの少なくとも1つ、または以下の組み合わせによってタッチセンシティブディスプレイに接触することによって行われる。第1のユーザ対話および第2のユーザ対話は、ユーザの2つの手のそれぞれの指をタッチセンシティブディスプレイに接触させることによって行われる。
【0021】
本発明は、コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶され、タッチセンシティブディスプレイを使用してオブジェクトを複写するための、コンピュータに本方法のステップを実行させるコード手段を有するコンピュータプログラムをさらに提案する。
【0022】
本発明は、タッチセンシティブディスプレイを使用してオブジェクトを複写するための装置であって、本方法のステップを実行するための手段を有する、装置にもさらに関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】タッチセンシティブディスプレイに表示されるグラフィカルユーザインターフェースの例である。
【図2】本発明によるオブジェクトの複写を説明したフローチャートである。
【図3】本発明によるオブジェクトの複写の概略図である。
【図4】本発明によるオブジェクトの複写の概略図である。
【図5】本発明によるオブジェクトの複写の概略図である。
【図6】本発明によるオブジェクトの複写の概略図である。
【図7】本発明によるオブジェクトの複写の概略図である。
【図8】本発明によるオブジェクトの複写の概略図である。
【図9】本発明を実施するようになされたクライアントデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するシステムを、限定ではない例を挙げ、添付の図面を参照して説明する。
【0025】
本発明は、タッチセンシティブディスプレイを使用して、オブジェクトを複写するためのコンピュータ実施の方法に関する。この方法は、タッチセンシティブディスプレイ上の、選択された第1のオブジェクトを表示するステップを含む。オブジェクトは、ユーザが部分的に、または全体を選択することができるグラフィカルな構成要素である。用語「オブジェクト」には、限定ではないが、アイコン、モデル化オブジェクト、メニュー、および他の図形がある。以下の説明において、選択されるオブジェクトは、オブジェクトのアセンブリ(製品)、オブジェクトのパーツ(または要素)であってよい。次に、この方法は、選択された第1のオブジェクト上の第1のユーザ対話および第2のユーザ対話を検出するステップを含む。次いで、選択された第1のオブジェクトの外で、第1のユーザ対話の移動が検出される。その後、タッチセンシティブディスプレイ上の第1のユーザ対話の移動を追跡する第2のオブジェクトが表示される。第2のオブジェクトは、第1のオブジェクトの複写である。複写とは、第2のオブジェクトが第1のオブジェクトと同じであること、すなわち、第2のオブジェクトは、選択されたオブジェクトのコピーであることを意味する。次いで、第2のオブジェクトは、タッチセンシティブディスプレイ上で、第1のユーザ対話が最後に検出されたロケーションに応じて位置付けられる。したがって、複写されるオブジェクトは、最後に検出されたロケーションにペーストされる。有利なことには、本発明による複写はユーザにとって自然なユーザ対話を行う。例えば、選択された第1のオブジェクトの外で検出された第1のユーザ対話の移動は、第1のユーザ対話が継続していることである。したがって、複写ジェスチャは、ユーザにとって単純かつ滑らかであり、タッチセンシティブディスプレイ上で補足的な対話によって妨げられることがない。さらに、GUIに表示されるオブジェクト(複数可)上におけるユーザの閲覧では、閲覧を妨げるメニューがないので、改善される。加えて、ユーザは、任意の時に、複写されたオブジェクトのロケーションを見ることができ、そのため、複写ジェスチャの正確さを改善することができる。
【0026】
図1を参照すると、例示のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)100は、標準のメニューバー110、120、ならびにボトムツールバーおよびサイドツールバー140、150を有する一般的なCAD仕様のインターフェースでよい。そのようなメニューバーおよびツールバーは、ユーザが選択可能な1組のアイコンを有し、各アイコンは、当業界で知られているように、1つまたは複数の操作または機能に関連付けられている。そのため、ユーザは、GUIに表示されるメニュー、ツールバー、アイコンおよび他の図形を介してアプリケーションおよびプログラムと対話することができる。本発明は、CAD仕様のインターフェースに限定されず、どのようなグラフィカルインターフェースにも適用できることを理解されたい。
【0027】
これらのアイコンのいくつかは、ソフトウェアツールに関連付けられており、また、GUI 100に表示されているような、モデル化製品200またはモデル化製品200のパーツを編集または作業するように適合されている。以下の説明において、「製品」「パーツ」、「アセンブリ」などは、「オブジェクト」と称されることがある。「オブジェクト」の概念は実際には一般化することができて、ユーザが部分的に、または全体を選択することができるすべてのグラフィカルな構成要素がオブジェクトである。
【0028】
ソフトウェアツールは、ワークベンチ別にグループ化できる。各ワークベンチは、ソフトウェアツールのサブセットを有する。特に、ワークベンチの1つに、モデル化製品200の幾何学的特徴を編集するのに適した編集ワークベンチがある。動作時、設計者は、例えば、オブジェクトのモデル化製品200のパーツを事前に選択し、その後で、操作(例えば、寸法、カラーなどを変更する)を開始する、または適切なアイコンを選択することにより、幾何学的制約を編集することができる。例えば、一般的なCAD操作は、パンチングのモデル化、または画面に表示された3Dモデル化オブジェクトのフォールディングである。
【0029】
GUIは、例えば、表示されるモデル化製品200に関連したデータ250を表示する。図1の例では、「特徴ツリー」として表示されたデータ250およびそれらの3Dで表現されるモデル化製品200は、ブレーキキャリパーおよびブレーキディスクを含むブレーキアセンブリに関する。GUIは、例えば、オブジェクトの3D方向付けを促進するため、編集された製品の動作のシミュレーションを起動するため、または表示された製品200の様々な属性をレンダリングするための様々なタイプの図形ツール130をさらに表示することができる。
【0030】
図2は、本発明の実施形態を説明したフローチャートを示している。本方法はステップ10から始まる。すなわち、まず、第1のオブジェクトが表示される。オブジェクトの表示は、当業界で知られているように実行される。通常、オブジェクトは、ユーザが部分的に、または全体を選択することができるグラフィカルな構成要素(図形とも呼ばれる)である。用語「オブジェクト」には、限定ではないが、アイコン、モデル化オブジェクト、メニュー、および他の図形がある。以下の説明において、選択されるオブジェクトは、オブジェクトのアセンブリ(製品)、オブジェクトのパーツ(または要素)であってよい。
【0031】
ステップ12で、表示された第1のオブジェクトがユーザによって選択される。言い換えれば、ユーザは、操作(複数可)を実行したい対象のオブジェクトを決定する。第1のオブジェクトの選択は、ユーザのアクション(動作)に基づいて、またはシステムによって自動的に行うことができる。選択は、限定ではないが、ポインティングデバイス、周辺デバイスで、またはタッチセンシティブディスプレイにより、直接に(例えば、タッチセンシティブディスプレイに接触して)行うことができる。ところで、選択された第1のオブジェクトは、選択したオブジェクトがどれであるかをユーザが容易に分かるように強調表示することができる。例えば、選択された第1のオブジェクトの強調表示は、選択された第1のオブジェクトをハイライトすることによって行うことができる。ハイライトは、位置の表現に、発光する明るい色を使用することである。強調表示は、選択された第1のオブジェクトを明滅させる、強調表示されて選択された第1のオブジェクトの輪郭を太くする、または強調されて、選択された第1のオブジェクトの輪郭を形成するポイントの密度を上げるなど、視覚効果によって行うこともできる。ところで、選択された第1のオブジェクトを他の中から設計者が見分けられるようになる任意の手段が使用できる。
【0032】
この段階で、選択された第1のオブジェクト(12)がタッチセンシティブディスプレイに表示される(10)。実際には、選択された第1のオブジェクトは、複写することとなるオブジェクトである。
【0033】
ステップ14で、選択された第1のオブジェクト上で2つのユーザ対話、それぞれ、第1のユーザ対話および第2のユーザ対話が検出される。ユーザ対話とは、タッチセンシティブディスプレイ上で、ユーザにより与えられる入力である。この入力により、タッチセンシティブディスプレイによってデバイスに送信される信号が生成される。デバイス、例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、音楽プレーヤ、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタントは、送信された信号に従って起動することとなる機能を計算し、かつ実行する。タッチセンシティブディスプレイは、すべての入力あるいは移動、またはディスプレイに適用される入力の中断を検出することができる。
【0034】
実際には、第1のユーザ対話および第2のユーザ対話は、オブジェクト(例えば、スタイラス)または突起物(例えば、ユーザの手の指)をタッチセンシティブディスプレイに接触させることによって実施できる。多様なオブジェクトまたは突起物が可能で、本発明の範囲内に含まれる。
【0035】
次に、図3を参照すると、第1の選択されたオブジェクト30が、図1を参照して説明されているように、GUI 100に表示される。このオブジェクトは単純な図形、すなわち、アイコンである。ユーザの手の指40がオブジェクト30上にあり、指40は、タッチセンシティブディスプレイに接触しており、その結果、第1のユーザ対話がオブジェクト30上で検出される。
【0036】
次に、図4を参照すると、ユーザの第2の手の指42がオブジェクト30上にあり、したがって、第2のユーザ対話がこのようにオブジェクト30上で検出される。
【0037】
実際には、第1のユーザ対話および第2のユーザ対話は、2本の指40、42をタッチセンシティブディスプレイに接触させることにより行われ、個々の指は、図3〜図7に示すように、ユーザの各手の1つの指である。逆に、ユーザは、片手の指のみを使用することもできる。あるいは、例えば、モデル化オブジェクトの設計中に2人のユーザが同じGUIで一緒に作業し、協働することができる。すなわち、一方のユーザが第1のユーザ対話を行い、第2のユーザが第2のユーザ対話を行うことができる。
【0038】
ところで、第1のユーザ対話および第2のユーザ対話は、選択された第1のオブジェクト上の対話の検出の順序に関係なく、同時にまたは連続して実行できる。ユーザは、したがって、第1のユーザ対話および第2のユーザ対話を自分の必要性に応じて自由に実行する。有利なことには、本発明の複写の方法はユーザにとって直感的であり、複写を取得することは、より容易である。
【0039】
図2に戻り、再び図2を参照すると、ステップ16では、選択された第1のオブジェクトの外へのユーザ対話の移動が検出される。実際には、検出される移動は、2つのユーザ対話のうちの一方のスライドに合わせて連続し、検出は、選択された第1のオブジェクトの輪郭の外への移動に関して行われる。選択されたオブジェクトの輪郭は、タッチセンシティブディスプレイ上の、選択されたオブジェクトの投影のシルエットである。したがって、2つのユーザ対話のうちの一方のスライドが、選択された第1のオブジェクトの境界内で行われている間は、移動が「検出された」とは見なされない。なお、境界は、選択された第1のオブジェクトの輪郭によって表される。
【0040】
なお、第1のユーザ対話の移動が、選択された第1のオブジェクトの外および内で連続して検出される場合、移動が「検出された」と見なされないことがある。したがって、ユーザは、選択された第1のオブジェクトが複写される前に複写プロセスを停止することができる。有利なことには、ユーザは、誤って作成されるであろうオブジェクトの複写を削除する必要がない。あるいは、外側および内側で連続して検出される移動は、「検出された」と見なすこともでき、複写プロセスは、選択された第1のオブジェクトの上で続行される。このように、ユーザは、選択された第1のオブジェクトの複写を、選択された第1のオブジェクト上にドロップすることができる。
【0041】
次に、ステップ20で、第1のオブジェクトの複写である第2のオブジェクトがタッチセンシティブディスプレイに表示される。この第2のオブジェクトは、第1のユーザ対話の移動を追跡している。すなわち、第2のオブジェクトは、第1のユーザ対話がタッチセンシティブディスプレイを移動する間、第1のユーザ対話のロケーションを追う。ロケーションとは、ユーザ対話を引き起こす入力が行われる、タッチセンシティブディスプレイ上の位置である。一般的には、タッチセンシティブディスプレイは、ユーザと、選択された第1のオブジェクトが置かれるスペースとの間の2D(二次元)インターフェースである。スペースは、2Dまたは3Dスペースであってもよい。ユーザ対話を引き起こす入力は、したがって、2Dまたは3Dスペースに対する2Dスペースで行われる。2Dスペースでは、第1のユーザ対話のロケーションは、例えば、タッチセンシティブディスプレイ上の座標系に従って決定できる。3Dスペースでは、3Dスペース内の第1のユーザ対話の3Dロケーションが計算できる。3Dスペース内の、この3Dロケーションの計算は、例えば、当業界で知られているピッキングの手法、例えば、レイトレーシングによって行うことができる。
【0042】
図5を参照すると、指42は、第1のオブジェクト30の外へ移動している。すなわち、指42が第1のオブジェクト30の境界を横切っている。したがって、指42の移動が検出され、その結果、第2のオブジェクト32が表示される。図を明瞭にするために、第2のオブジェクト32は、第1のオブジェクト30と同じカラーで表されていない。指42によって作成されるユーザ対話は、矢印50で示される指のスライド中もタッチセンシティブディスプレイと接触したままである。指42が第1のオブジェクト30の輪郭を離れると、第1のオブジェクト30の複写である第2のオブジェクト32が表示される。
【0043】
次に図6を参照すると、指42の移動52が続いており、第2のオブジェクト32は、まだ指42の移動52を追跡している。第2のオブジェクト32は、タッチセンシティブディスプレイ上の指42のロケーションに何らか固定されている。したがって、本発明の別の利点が理解できよう。すなわち、ユーザは、タッチセンシティブディスプレイ上の、複写されるオブジェクトの正確なロケーションの可視フィードバックを得ることができる。ユーザとデバイス間の対話性は、このように大幅に改善される。
【0044】
人は、検出される移動が、第1のユーザ対話の移動または第2のユーザ対話の移動によって引き起こされ得ることに気付くことができる。実際、前述されているように、第1のユーザ対話および第2のユーザ対話は、選択された第1のオブジェクト上の移動の検出の順序とは関係ない。例えば、図3〜図7では、第1のユーザ対話は指40によって引き起こされ、第2のユーザ対話および検出される移動は、第1のユーザ対話が指40によって引き起こされる事実とは関係なく指42によって引き起こされる。有利なことには、ユーザは、第1のユーザ対話と第2のユーザ対話のどちらが検出される移動を引き起こすかを選択することができる。その結果、本発明による方法は、タッチセンシティブ上の選択された第1のオブジェクトのロケーションがどこであっても実行することができる。例えば、図5において、選択された第1のオブジェクト30がタッチセンシティブの左境界線上にある場合、選択された第1のオブジェクトの外への移動は、ユーザの右手の指42によって行うことができる。反対に、選択された第1のオブジェクト30がタッチセンシティブディスプレイの右境界線上にある場合、選択された第1のオブジェクトの外への移動は、ユーザの左手の指40によって行うことができる。
【0045】
第2のユーザ対話の終わりの検出は、選択された第1のオブジェクトの外へのユーザ対話の移動の検出後の各ステップで行うことができる。好ましくは、第2のユーザ対話の終わりは、図2のステップ18に示されているように、選択された第1のオブジェクトの外へのユーザ対話の移動の検出後に検出される。実際には、第2のユーザ対話の終わりは、ユーザが、タッチセンシティブディスプレイからオブジェクト、または選択された第1のオブジェクトへの第2の接触を引き起こす突起物を除去すると、検出される。実際、第2のオブジェクトの複写のプロセスが開始されている。すなわち、タッチセンシティブディスプレイと関係があるデバイスは、第1のオブジェクトが複写されようとしていることを認識する。したがって、第2のユーザ対話は、それ以上は不要である。これは、オブジェクトをGUIと同じウィンドウで複写することが可能なので、以前から知られているソリューションに比べると有利である。実際、第1のユーザ対話の検出される移動は、第1の選択されるオブジェクトの複写に関係していて、さらに、例えば、ウィンドウ内のオブジェクトの単純な変位に関係していないデバイスによって認識される。ウィンドウとは、何らかのユーザインターフェースを含む可視エリアであって、ウィンドウには、アプリケーションの出力または入力、例えば、アイコンを表示できる。ステップ14および16の結果、デバイスは、第1のオブジェクトが複写されようとしていることを認識し、そのため、選択された第1のオブジェクトは移動しない。ステップ14および16のジェスチャは、したがって、選択された第1のオブジェクトの複写を開始する。
【0046】
これらのジェスチャの別の利点は、複写される第2のオブジェクトが第1のユーザ対話の移動を追跡している間、ユーザは新しいユーザ対話を行う可能性を有することである。例えば、図5および図6に戻って参照すると、ユーザは、指42のスライド50、52が継続している間、指40によって行われるユーザ対話を解放することができる。したがって、ユーザの第1の手40は、第1のオブジェクトの複写中、別の操作を自由に実行できる。例えば、ユーザは、第2のオブジェクトを配置したいウィンドウを開くことができる。
【0047】
第2のオブジェクトのレンダリングは、第2のオブジェクトの表示中、第1のオブジェクトのレンダリングとの比較で変更することができる。通常、レンダリングは、複写されたオブジェクトを表示するためのデバイスの計算用リソースの消費を減らすために修正される。例えば、第2のオブジェクトの詳細のレベルを下げる、または第2のオブジェクトの輪郭を表示することができる。
【0048】
ステップ22および24で、第1のユーザ対話の終わりが、対話の最後のロケーションとともに検出される。検出される最後のロケーションは、タッチセンシティブディスプレイ上の第1のユーザ対話の終わりが検出されるロケーションである。上述のように、第1のユーザ対話のロケーションは、タッチセンシティブディスプレイ上の、ユーザ対話を引き起こす入力が行われる位置である。
【0049】
最後に、ステップ26で、第2のオブジェクトが、第1のユーザ対話の最後に検出されたロケーションに応じてタッチセンシティブディスプレイ上で位置付けられる。第2のオブジェクトのこの位置付けが本発明の方法の終わりである。ユーザが選択した位置にオブジェクトが複写される。言い換えれば、第1のオブジェクトのコピー/ペーストの実行が完了する。
【0050】
次に、図7を参照すると、ユーザは、タッチセンシティブディスプレイから指42を放している。その結果、第2のオブジェクト32は、図6に示す、指42の最後に検出された位置に位置付けられる。このステップで、オブジェクトを複写する方法は終了する。
【0051】
最後に、ユーザは、まだ行われていなければ、指40をタッチセンシティブディスプレイから放すことができる。図8では、2つのオブジェクト30および32がGUI上に表示される。
【0052】
前述の方法は、オブジェクトを表示できる任意の構成の任意のオブジェクト、またはオブジェクトを表示するために使用される任意のデバイスに適用できることを理解されたい。本発明は、デジタル電子回路で、またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで実施することができる。本発明の装置は、プログラマブルプロセッサによる実行用に機械読み取り可能なストレージデバイスに有形で具体化されるコンピュータプログラム製品として実装することができ、本発明の方法ステップは、入力データに影響を与えて出力を生成することにより本発明の機能を実行する命令からなるプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行できる。
【0053】
本発明は、有利なことには、データおよび命令をデータストレージシステムから受信し、データおよび命令をデータストレージシステムに送信するために結合される少なくとも1つプログラマブルプロセッサ、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとの1つの出力デバイスを含むプログラマブルシステム上で実行可能な1つまたは複数のコンピュータプログラムとして実装することができる。アプリケーションプログラムは、ハイレベルな手順型またはオブジェクト指向のプログラミング言語、または希望する場合、アセンブリ言語あるいは機械言語で実装できる。いずれの場合にも、言語はコンパイル型または解釈型の言語でよい。
【0054】
図9は、本発明を実施するようになされたクライアントデバイス、例えば、コンピュータシステムを示している。クライアントデバイスは、内部通信バス800に接続されたCPU(中央処理ユニット)801、および同様にバスに接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)807を含んでいる。クライアントデバイスは、バスに接続されたビデオランダムアクセスメモリ810に関連付けられたGPU(グラフィカル処理ユニット)811をさらに備えている。ビデオRAM 810は、当業界ではフレームバッファとしても知られている。大容量ストレージデバイスコントローラ802は、ハードドライブ803などの大容量メモリデバイスへのアクセスを管理する。コンピュータプログラムの命令およびデータを有形で具体化するのに適した大容量メモリデバイスには、全形式の不揮発性メモリを挙げることができる。例であるが、EPROM、EEPROMおよびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内部ハードディスクおよび取り外し可能ディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、およびCD−ROMディスク804などがある。前述のデバイスはいずれも、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補足することもできるし、またはASICの中に組み込むこともできる。ネットワークアダプタ805は、ネットワーク806へのアクセスを管理する。タッチセンシティブディスプレイ808は、クライアントコンピュータ内で、ユーザがディスプレイ808上の任意の所望のロケーションで対話を行うために使用される。さらに、ユーザは、タッチセンシティブディスプレイで各種コマンドを選択し、制御信号を入力することができる。タッチセンシティブディスプレイは、システムへの入力制御信号を表す信号を生成することができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態が説明された。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更を行えることが理解できよう。したがって、他の実施態様は、添付の「特許請求の範囲」の範囲内である。例えば、本発明の方法は、ユーザがワイヤードグローブなどのマルチモーダルデバイスを用いてコンピュータがシミュレートした環境と対話できるバーチャルリアリティ技術で適用することができる。したがって、本発明による複写は、ユーザに表示されるバーチャルオブジェクト上で実行することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータで実施される、タッチセンシティブディスプレイを使用してオブジェクトを複写するための方法であって、
前記タッチセンシティブディスプレイ上で、選択された第1のオブジェクト(12)を表示するステップ(10)と、
前記選択された第1のオブジェクト上で、第1のユーザ対話および第2のユーザ対話(14)を検出するステップと、
前記選択された第1のオブジェクトの外への前記第1のユーザ対話の移動を検出するステップ(16)と、
前記第1のオブジェクトの複写であり、前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記第1のユーザ対話の前記移動を追跡する第2のオブジェクトを表示するステップ(20)と、
前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記第1のユーザ対話が最後に検出されたロケーションに従って前記第2のオブジェクトを配置するステップ(26)と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のユーザ対話の移動を検出するステップの後、
前記選択されたオブジェクト上の前記第2のユーザ対話の終了を検出するステップ(18)
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のユーザ対話および前記第2のユーザ対話は、前記選択された第1のオブジェクト上でのそれぞれの対話の検出の順序に関係なく、同時にまたは連続して実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のユーザ対話が最後に検出されたロケーション(24)は、前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記第1のユーザ対話の終了が検出されたロケーションであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記選択された第1のオブジェクトを表示するステップおよび前記第2のオブジェクトを配置するステップは、グラフィカルユーザインターフェースの同じウィンドウ内で行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第2のオブジェクトを表示するステップで、第2のオブジェクトのレンダリングは、第1のオブジェクトのレンダリングと比較して修正されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のユーザ対話および前記第2のユーザ対話は、スタイラスおよび指のうちの少なくとも1つまたは組み合わせて、前記タッチセンシティブディスプレイへの接触により実行されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のユーザ対話および前記第2のユーザ対話は、前記ユーザの2つの手のそれぞれの指を前記タッチセンシティブディスプレイに接触させることによって行われることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶され、タッチセンシティブディスプレイを使用してオブジェクトを複写するための、コンピュータに請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法のステップを実行させるコード手段を有することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
タッチセンシティブディスプレイを使用してオブジェクトを複写するための装置であって、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するための手段を有することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−123896(P2011−123896A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−276194(P2010−276194)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(500102435)ダッソー システムズ (52)
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
【Fターム(参考)】