説明

タッチパネルおよびこれを備える表示装置

【課題】 コストアップすることなく、干渉縞が発生しないタッチパネルを提供する。
【解決手段】 上透明電極が形成された上透明基板2と、下透明電極が形成された下透明基板3が、タッチパネル1の外周に設けられたシール材7によって接着される。シール材7よりパネルの内側に、シール材7より厚い構造体が設けられる。これにより、上透明基板2が端部から内側に向けて膨らむ傾斜を持つようになる。このように、パネル外周のシール材7からパネル中央部に向けて、構造体の高さに応じた傾斜をつくることができる。構造体をパネル内部に形成されたドットスペーサ5で構成できる。あるいは、構造体を、ドットスペーサ5と同一の材料で同時に作製された段差6と、シール材7と同一の材料とを積層させて構成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指や入力ペン等で押圧入力を行うタッチパネル、及びタッチパネルを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは液晶パネル等の表示装置上面に配置され、指や入力ペン等を用いて表示された情報の選択入力、あるいは文字や図形等の入力が行われる。その動作原理には、押圧により生じる抵抗分圧から入力された座標を検出するアナログ抵抗膜方式や、マトリクス状に配置した上下電極の押圧により生じる導通位置を検出するデジタル抵抗膜方式等がある。これら抵抗膜方式のタッチパネルでは、可撓性を有した透明基板の下面に所望のパターンで形成された透明電極を有する上側基板と、透明基板の上面に所望のパターンで形成された透明電極およびドットスペーサを有する下側基板とが、互いに所定の間隙を持って対向配置され、周囲をシール材によって接着固定されている。このタッチパネルを液晶パネル等の表示装置上面に配置して使用される。
【0003】
上述のように、抵抗膜方式タッチパネルは上側基板と下側基板を、周囲に設けたシール材によって接着固定された構成をとる。操作性の観点から、軽い押圧においても上下基板を接触させることが必要となるため、上下基板の間隙は最も大きい箇所においても数十から数百μmでなければならない。したがって、タッチパネル面内において、上側基板と下側基板が接近することによって、干渉縞が発生してしまうという問題があった。特にタッチパネルのコーナー部分は、縦横両方向のシール材により接着固定されているため自由度が低く、間隙が大きくならずに、より顕著に干渉縞が発生するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、シール材を上下基板の外周域を周回して接着しているタッチパネルにおいて、引廻し配線をシール材より僅かに厚くして隣接させることにより、上基板が外側に向かって湾曲するようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、下側基板のシール材形成領域に予め傾斜、あるいは段差を設けることにより、上側基板を凸状にする手法も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−280759号公報
【特許文献2】特開2011−14024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、外周域を周回するシール材とは別に、Agペースト等によって引廻し配線を設ける工程が必要である。その上、別途、ドットスペーサ形成も必要となるため、工数すなわちコストの増加を伴うという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の手法では、予め下側基板に傾斜、あるいは段差を設ける加工工程が必要となる。合わせて、下側基板を薄く加工することによる強度低下が生じるという問題があった。そこで、本発明は、新たな工程を加えることなく、安価に干渉縞の改善が可能なタッチパネルに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような構成とした。すなわち、間隙を有して対向配置された一対の透明基板と、透明基板上に形成される透明電極と、透明基板のいずれかに形成されるドットスペーサと、透明基板の周囲に形成され、一対の透明基板を接着固定するシール材を備えたタッチパルにおいて、シール材よりもパネルの内側に、ドットスペーサ材料により、ドットスペーサと同一の膜厚で段差を設け、端部から内側に向けて傾斜を有することとした。ここで、段差上にシール材を設けても良い。なお、透明基板の周囲に形成されるシール材と段差上に形成されるシール材を共通のものとすることで、一度に形成することができる。また、ドットスペーサと段差の形成は、同時に行われることで製造工程を簡素化できる。ドットスペーサと段差は、感光性レジストを用いたフォトリソグラフィ法等により形成できる。感光性レジストは、透明電極が形成された透明基板上に直接塗布しても良いし、フィルム状のものを透明電極が形成された透明基板にラミネートすることで設けても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明基板の周囲に形成されたシール材からパネル中心部に向けて、構造体の高さに応じた傾斜をつくることができるため、干渉縞が発生しない。また、工程の追加なく構造体を形成できるのでコストの増加もない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1に係るタッチパネルの概略構成を示す断面図である。
【図2】実施例1に係るタッチパネルを備えた液晶表示装置の断面模式図である。
【図3】実施例2に係るタッチパネルの概略構成を示す断面図である。
【図4】実施例2に係るタッチパネルを備えた液晶表示装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタッチパネルは、上透明電極が形成された上透明基板と、下透明電極が形成された下透明基板が、間隙を持って対向した構成である。上透明基板と下透明基板はパネルの外周に設けられたシール材によって接着される。上透明基板と下透明基板の一方の基板の内面に、ドットスペーサが形成されている。このとき、パネルの外周に設けられるシール材よりパネルの内側に、シール材より厚い構造体が設けられる。これにより、上透明基板が端部から内側に向けて膨らむ傾斜を持つようになる。このように、本発明によれば、パネル外周のシール材からパネル中央部に向けて、構造体の高さに応じた傾斜をつくることができるため、干渉縞が発生しない。
【0013】
ここで、上透明基板と下透明基板の一方の基板に段差を形成し、この段差上にシール材と同一の材料を設け、この同一材料と段差の積層構造を構造体とした。さらに、この段差を、ドットスペーサと同じ厚みを持つ同一の材料で形成する。このような構成によれば、ドットスペーサと段差が同時に作製でき、シール材と積層構造も同時に形成できるため、工数すなわちコストの増加を伴うことなく、表示品質の良いタッチパネルが提供できる。また、ドットスペーサと段差の高さを20μm以下とすることで、押圧時の操作性が良好となる。
【0014】
あるいは、構造体を、ドットスペーサと同じ厚みを持つ同一の材料で構成してもよい。これにより、ドットスペーサと構造体が同時に作製でき、工数すなわちコスト増加を伴うことなく、表示品質の良いタッチパネルが提供できる。
【0015】
以下、実施例を用いて詳細に説明する。実施例で挙げたタッチパネルの方式や材料、形成手法等は一例であり、これに限定されるものではない。
【0016】
(実施例1)
図1は、本実施例のタッチパネルの断面構成を部分的に示す模式図である。上透明基板2と下透明基板3には、透明電極4がそれぞれ所望のパターンで形成される。上透明基板2と側透明基板3はパネルの外周に設けられたシール材7によって接着固定されている。シール材7の中には、スペーサ8と導通材料9が混合分散されている。スペーサ8は上透明基板2と下透明基板3を所望の間隙に保つために設けられ、導通材料9は上透明基板2と下透明基板3にそれぞれ形成された透明電極4を電気的に接続するために設けられている。シール材7よりもパネル中央寄りの位置に段差6が形成されている。段差6は、パネル端部から中央部に向けて、上透明基板2に傾斜を持たせるために設けられている。この段差6の上にも、上透明基板2と下透明基板3を接着固定するためのシール材7が設けられている。パネル外周、あるいは段差6に形成されるシール材7には、貼り合わせ時にパネル内の空気が逃げられるように開口を設けておく。また、下透明基板3の透明電極4の表面に、ドットスペーサ5が形成されている。本実施例では、段差6はドットスペーサ5と同一材料、同一膜厚で形成されている。
【0017】
本実施例では、上透明基板2には厚さ0.2mmのガラス基板を、下透明基板3には厚さ1.1mmのガラス基板を用いた。透明電極4は、フォトリソグラフィ法により所望のパターンで形成される。透明電極4は、スズを含有したインジウムを酸化させたITOと呼ばれる透明導電膜で形成されており、所望の抵抗値が設定できる。ITOは低抵抗の半導体物質であるので、その抵抗値はシート抵抗で10Ω/□から100Ω/□のものが最も汎用レベルである。通常ITOはスパッタリング法や蒸着法と呼ばれる真空成膜法で形成される。必要に応じて、透明電極4と図示しない金属配線を積層させても良い。
【0018】
また、感光性レジストを用いたフォトリソグラフィ法により、ドットスペーサ5を所望の形状で形成する。ドットスペーサ5と同時に同一材料、同一膜厚で、段差6が形成される。続いて、パネルの外周と段差6上に、上透明基板2と下透明基板3を接着するためのシール材7をスクリーン印刷する。シール材7には、スペーサ8と導通材料9が混合分散されている。シール材7は、熱硬化性接着材料でもUV硬化性接着剤でも良い。また、下透明基板3と上透明基板2のどちらにシール材7を印刷しても良い。なお、パネルの外周に形成されるシール材7と段差6上に形成されるシール材とを、それぞれ別の透明基板に印刷しても良い。ここで、シール材7はスクリーン印刷ではなく、ディスペンサによる塗布等によって設けても良い。
【0019】
次に、上透明基板2と下透明基板3を重ね合わせた後、圧力を加え所定の間隙に保ちながら、パネルの外周と段差6上に形成されたシール材を硬化させる。一対の大判透明基板に複数のタッチパネル1をレイアウトして作製する場合には、個々のタッチパネル1に分離する。次に、パネル外周に形成されたシール材7の開口部をUV硬化樹脂等により封口する。続いて、下透明基板3上の端子部にFPC10等を接続して、外部との導通を行えるようにする。上透明基板2の表面には、必要に応じて反射防止フィルム11が貼り付けられる。
【0020】
図2に、このようにして得られたタッチパネル1を備えた液晶表示装置14の断面構成を模式的に示す。タッチパネル1は、液晶パネル13の前面に光学接着剤12で接着されている。
【0021】
(実施例2)
本実施例のタッチパネルの断面構成を部分的に図3に示す。また、タッチパネルを備えた液晶表示装置の断面構成を図4に模式的に示す。本実施例は、シール材7よりもタッチパネル15の中央寄りの位置に形成された構造体の構成が実施例1とは異なっている。その他は実施例1と同様なので、重複する説明は適宜省略する。
【0022】
図示するように、透明電極4が形成された上透明基板2と、透明電極4が形成された下透明基板3が、外周に設けられたシール材7によって接着固定されている。下透明基板3の透明電極4には、ドットスペーサ5が形成されている。ドットスペーサ5は、感光性レジストを用いたフォトリソグラフィ法により所望の形状で設けることができる。シール材7よりもタッチパネル15の中央寄りの位置に段差6が形成されている。
【0023】
この段差6が、上透明基板2に端部から内側に向けて膨らむ傾斜を持たせるための構造体として機能する。この段差6は、ドットスペーサ5と同時に同一材料、同一膜厚で形成される。段差6は、パネル端部から中心部に向けて、上透明基板2に傾斜を持たせるために設けられる。したがって、段差6はシール材7の中に混合分散されるスペーサ8の粒径よりも高い。段差6をパネルの全外周に形成する場合には、貼り合わせ時にパネル内の空気が逃げられるように、段差にも開口を設けることが好ましい。
【0024】
このようなタッチパネル15を、例えば液晶パネル13の前面に光学接着剤12等で接着して液晶表示装置16が得られる。
【0025】
なお、上述の各実施例では、下透明基板3にドットスペーサ5や段差6を設けたが、これらを上透明基板2に設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、一対の基板が間隙を持って接合されたタッチパネルに適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1、 15 タッチパネル
2 上透明基板
3 下透明基板
4 透明電極
5 ドットスペーサ
6 段差
7 シール材
8 スペーサ
9 導通材料
10 FPC
11 反射防止フィルム
12 光学接着剤
13 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上透明電極が形成された上透明基板と、
前記上透明基板に間隙を持って対向するとともに、下透明電極が形成された下透明基板と、
前記上透明基板と前記下透明基板を接着するシール材と、
前記上透明基板と前記下透明基板の一方の基板の内面に形成されたドットスペーサと、を備え、
前記上透明基板が端部から内側に向けて膨らむ傾斜を持つように、前記シール材より内側の位置に、前記シール材より厚い構造体が設けられたことを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記構造体は、前記上透明基板と前記下透明基板の一方の基板に形成された段差と、前記シール材と同一の材料が積層した構造であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記段差が、前記ドットスペーサと同じ厚みを持つ同一の材料で構成されたことを特徴とする請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記ドットスペーサと前記段差が、20μm以下の高さで形成されたことを特徴とする請求項2または3に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記構造体は、前記ドットスペーサと同じ厚みを持つ同一の材料で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記シール材には前記間隙を調整するスペーサが分散されるとともに、前記構造体の厚みが前記スペーサの粒径より大きいことを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された構成のタッチパネルが、光学接着剤により表示パネルに接着されたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−226395(P2012−226395A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90427(P2011−90427)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】