説明

タッチパネルの電極構造、その方法およびタッチパネル

【課題】タッチパネルの厚さを減少させる、および、製造プロセスを簡単化させる電極構造を提供すること。
【解決手段】電極構造300は、基板上に配置されて互いに離されている複数の第1の導電セル311および第2の導電セル321と、隣接した第1の導電セル311に接続する複数の第1の導電線312および隣接した第2の導電セル311に接続する複数の第2の導電線322と、を備える。各第2の導電線322は、導電要素324と、導電要素324の両側に配置されて隣接した第2の導電セル321に導電要素324を接続する、第2の導電枝(conductive branch)323の対と、を備える。第1の導電線312および第2の導電線322は、絶縁されて交差される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチデバイスに関し、特に、タッチパネルの電極構造、その方法およびタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子デバイスにおいてタッチパネルが幅広く利用されている。タッチパネルは、従来のキーボードやマウスに置き換わって、電子デバイスを制御し得る。
【0003】
従来のタッチパネルは、基板上に配置されたアクティブ領域を含む。アクティブ領域は、通常、透明導電フィルムを用いて覆われる。指またはタッチペンがアクティブ領域をタッチした時に、後続の操作のためのタッチ信号が生成される。
【0004】
例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、音響方式、光学方式のような、多くのタイプのタッチ感知手法がある。静電容量方式の感知手法としては、金属や指などの導電物体が近接することに起因する静電容量の変化を検知することで、タッチパネルがタッチ位置を感知する手法がある。高い剛性、正確性、長寿性、正確な応答時間、作動温度、初期化フォース(force)などのアドバンテージのために、静電容量方式のタッチパネルが幅広く採用されている。
【0005】
指または導電物体のタッチ表面上のタッチ位置を検知する、異なった電極パターンを備えた種々のタッチパネルが新たに開発されている。例えば、特許文献1は、タッチ感知面上のタッチ位置を検知する格子型のタッチ感知システムを開示する。格子型のタッチ感知システムは、絶縁材料によって離されている静電容量方式の2つの感知層を含み、各層は実質的に平行な導電要素から構成されている。2つの感知層の導電要素は互いに実質的に直交するようにしてもよい。各要素は、細い導電性の長方形状の帯を用いて一緒に接続される、一連のダイヤモンド形状のパッチ(patch)を備えてもよい。任意の感知層の各導電要素は、1もしくは両方の端部において、リード線の対応するセットのうちのリード線に電気的に接続される。制御回路もまた追加されて、リード線の対応するセットを通して導電要素の両方のセットに励起信号を提供し、表面上にタッチが現れた時に感知要素によって生成された感知信号を受信し、感知信号からタッチ位置を決定するようにしてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6970160号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第101488066号明細書
【特許文献3】米国特許第6137427号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に、タッチ感知システムの一連のダイヤモンド形状のパッチ(patch)が開示されているが、格子型のタッチ感知システムは静電容量方式の2つの感知層を含み、絶縁材料によって離されている。従って、格子型のタッチ感知システムは余りに厚く、静電容量方式のタッチパネルの厚さを減少させるという要求に答えることができない。さらに、従来の静電容量方式のタッチパネルは、基板の両側の上に静電容量方式の2つの感知層を形成し、各一連のダイヤモンド形状のパッチ(patch)を基板上のホールを通して接続することで、製造される。従って、製造プロセスが複雑である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した問題を考慮してなされたものであり、タッチパネルの厚さを減少させる、および、製造プロセスを簡単化させる電極構造を提供することである。
【0009】
電極構造は、互いに離されて基板上に配置される複数の第1の導電セルおよび第2の導電セルと、隣接した前記第1の導電セルを接続する複数の第1の導電線および隣接した前記第2の導電セルを接続する複数の第2の導電線と、を備える。前記第2の導電線は、少なくとも1つの導電要素と、前記導電要素の両側に配置されて、隣接した前記第2の導電セルに前記導電要素を接続する、少なくとも1つの対の第2の導電枝(conductive branch)と、を備える。前記第1の導電線および前記第2の導電線は絶縁されて交差される。
【0010】
本発明の他の目的は、電極構造を形成する方法を提供することである。
【0011】
電極構造を形成する方法は、a)複数の第1の導電セルと、隣接した前記第1の導電セルに接続する複数の第1の導電線と、複数の第2の導電セルと、を形成するステップと、b)前記第1の導電線から絶縁される複数の導電要素を形成するステップと、c)前記第1の導電線を横切って前記導電要素を備える前記第2の導電セルに接続する、複数の対の第2の導電枝(conductive branch)を形成するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タッチパネルの厚さを減少させる、および、製造プロセスを簡単化させる電極構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の電極構造の概略図である。
【図2】図1の部分Aの概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
当業者は、以下で参照する図面が説明の目的のみのためのものであるということを理解する。図面は、本出願の教示のスコープを限定することを決して意図するものではない。同様の符号は、複数の図面を通して、対応する部分を指定する。
【0015】
図1は、電極構造を示す。静電容量方式の電極構造300は、ガラスなどの基板(不図示)上に配置されている。電極構造300は、複数の第1の導電セル311および複数の第2の導電セル321を備えており、複数の第1の導電セル311および複数の第2の導電セル321は、互いに離されている。第1の導電セル311は、第1の電極グループ310の少なくとも1つのグループを構成し、第2の導電セル321は、第2の電極グループ320の少なくとも1つのグループを構成する。第1の電極グループ310は、第2の電極グループ320から絶縁される。
【0016】
第1の電極グループ310の任意の1つにおける2つの隣接した第1の導電セル311が、複数の第1の導電線312によって接続される。第2の電極グループ320任意の1つにおける2つの隣接した第2の導電セル321が、複数の第2の導電線322によって接続される。電極構造300の輪郭上に配置されている複数の信号線(不図示)は、第1の導電セル311および第2の導電セル321を、タッチ感知信号を伝送するコントローラ(不図示)に接続する。
【0017】
図1と図2を参照して説明すると、各第2の導電線322は、導電要素324および1対の第2の導電枝(conductive branch)323を含む。ウィンドウ(window)341は、各第1の導電線312において形成され、導電要素324が各ウィンドウ(window)341において配置される。第1の導電線312を導電要素324から離して絶縁することに関連して、閉じられた隙間(closed gap)342が各第1の導電線312および導電要素324の間に形成される。各1対の第2の導電枝(conductive branch)323のうちの2つの第2の導電枝(conductive branch)323が、導電要素324の両側に配置されて、導電要素324を2つの隣接した第2の導電セル321に接続する。言い換えると、第2の導電枝(conductive branch)323の各個別の1つの端部が1つの導電要素324に接続し、その他の端部が1つの第2の導電セル321に接続する。従って、第2の電極グループ320のうちの1つの第2の導電セル321が、一連の対の第2の導電枝(conductive branch)323および導電要素324によって接続されて、タッチ感知信号をコントローラに伝送する。
【0018】
各第2の導電枝(conductive branch)323は、第1の導電線312と交差され、絶縁層330によって第1の導電線312から絶縁される。絶縁層330は、各第2の導電枝(conductive branch)323および第1の導電線312の交差において配置される複数の絶縁要素331を含む透明材料で作られており、各第2の導電枝(conductive branch)323は、第1の導電線312から絶縁される。
【0019】
第1の導電セル311および第2の導電セル321は、基板(不図示)の同一の面上に全て配置される。このため、第1の電極グループ310および第2の電極グループ320が基板の面上に配置される。従って、電極構造330を含むタッチパネルの厚さが減少され、製造プロセスが簡単化され得る。
【0020】
本発明の電極構造330を備えるタッチパネルがタッチされた時に、タッチ位置が、第1の電極グループ310の少なくとも1つの第1の導電セル311と、第2の電極グループ320の少なくとも1つの第2の導電セル321と、を覆う。覆われた第1の導電セル311および覆われた第2の導電セル321の間に生成される相互キャパシタンスがタッチ信号を示し、タッチ信号が信号線によってコントローラに伝送される。従って、タッチ位置がコントローラによって計算されて決定される。
【0021】
第1の導電セル311、第2の導電セル321、第1の導電線312、導電要素324、個別の第2の導電線323は、酸化インヂウム・スズ(ITO)、酸化インヂウム・亜鉛(IZO)、酸化アルミニウム・亜鉛(AZO)のグループから選択され得る透明導電材料で作られる。さらに、導電要素324は、金属で作られ得る。
【0022】
第1の導電セル311および第2の導電セル321の幾何学的形状は、ダイヤモンド、六角形、八角形、長方形、三角形などにされ得る。
【0023】
本発明の他の実施の形態が提供され、上述した実施の形態と比較して異なる点は、第1の導電線321と第2の導電枝(conductive branch)323の対とが逆の順序で配置されることである。第2の導電枝(conductive branch)323が、基板の面上に配置される。絶縁要素331が、第2の導電枝(conductive branch)323の対の上に配置される。第1の導電線312が、絶縁要素331の上に配置される。
【0024】
第2の導電枝(conductive branch)323の対は、好ましくは銅、銀、アルミニウムなどの金属で作られる。ITOのそれよりも優れた金属の伝導性のために、第2の導電枝(conductive branch)323の対の伝導性が向上されて、第2の導電枝(conductive branch)323および絶縁要素331の接点でのそれらの亀裂を防止する。さらに、金属の伝導性はまた、ITOのそれよりも優れている。第2の導電枝(conductive branch)323の各対が導電要素324によって接続される。このため、2つの第2の導電枝(conductive branch)323の距離D1+D2は、2つの隣接した第2の導電セル321の間の距離Lよりも小さい。このことは、第2の導電枝(conductive branch)323の視認性を減少させる。
【0025】
種々の設計要件によれば、各対の第2の導電線322に属している第2の導電枝(conductive branch)323は、互いに一列に真っ直ぐに並べられるか、または、互いに真っ直ぐにならないように交互に並べられ得る。さらに、第2の導電枝(conductive branch)323の位置およびサイズは調整され得る。各第2の導電線322に対して、第2の導電枝(conductive branch)323の対の個数は、1以上になり得る。第2の導電枝(conductive branch)323の対が多くなるほど、第2の導電線323の伝導性はより良くなる。第2の導電枝(conductive branch)323の1つが壊れた場合、他の1つが、第2の電極グループ320を通常の通り動作させ続け得る。
【0026】
本発明によって提供される電極構造300は、エッチング法、スパッタリング法、プリンティング法などによって基板上に形成され得る。電極構造300のエッチングを例として、基板上に電極構造300を形成する方法を説明する。方法は、以下のステップを含む。
【0027】
第1に、洗浄済みの(ガラスのような)基板上に(ITOのような)導電フィルムがコーティングされ、スクリーン印刷法によってマスクがプリントされて導電フィルムの部分を覆うとともに、導電フィルムの覆われていない部分をエッチングする。エッチングの後、第1の導電セル311と、第2の導電セル321と、隣接した第1の導電セル311に接続する第1の導電線312とが基板上に形成される。さらに、ウィンドウ(window)341が、各第1の導電線312において形成される。
【0028】
第2に、各導電要素324が各ウィンドウ(window)341において形成され、閉じられた隙間(closed gap)が形成されて、各関連する第1の導電線312から各導電要素342を絶縁する。好ましい実施の形態では、導電要素324の材料が、第1の導電セル311と、第2の導電セル321と、第1の導電線312と同一である時には、導電要素324は、前のステップにおいて第1の導電セル311と、第2の導電セル321と、第1の導電線312とが形成される時と同時に、エッチングによって形成され得る。従って、電極構造300を形成するステップが減少され得る。
【0029】
第3に、複数の絶縁要素331を含む絶縁層330が、エッチングされた導電フィルム上に形成される。各絶縁要素331は、第1の導電線312上に配置される。絶縁要素331は、透明絶縁材料で作られる。
【0030】
最後に、第2の導電枝(conductive branch)323が、絶縁要素323上に配置される。第2の導電枝(conductive branch)323の1つの端部が第2の導電セル321に接続し、他の端部が導電要素324に接続する、このため、第2の導電セル321が一連に接続される。
【0031】
さらには、電極構造300を形成する方法は、電極構造300の輪郭上に信号線を形成するステップを含む。第1の導電セル311および第2の導電セル321は、周辺部の信号線にそれぞれ接続する(不図示)。
【0032】
他の実施の形態の電極構造300を形成する方法は、逆の順序で実行される。第1に、第2の導電枝(conductive branch)323が基板上に形成される。第2に、絶縁層330の複数の絶縁要素331が、第2の導電枝(conductive branch)323上に形成される。第3に、第1の導電セル311、第2の導電セル321、第1の導電線312、導電要素324が、基板上に形成され、第1の導電線312が絶縁要素331上に配置される。
【0033】
さらに、本発明はまた、電極構造300を含むタッチパネルを提供する。タッチパネルは、ガラスのような基板(不図示)と、タッチ感知信号を生成する電極構造300と、タッチ感知信号を受信および処理するコントローラ(不図示)と、を含む。
【0034】
本発明によれば、第1の導電セルおよび第2の導電セルが基板の同一の面上に配置されるために、電極構造を含むタッチパネルの厚さが減少される。さらに、各第2の導電線は導電要素および1対の第2の導電枝(conductive branch)に分割され、1対の第2の導電枝(conductive branch)の長さは、2つの隣接した第2の導電セルの間の距離よりも小さい。従って、第2の導電線の視認性が減少されて、電極構造を含むタッチパネルの外観が改善される。
【0035】
特定の実施の形態を示して説明したが、本発明の精神およびスコープを離れることなくして、これに対する種々の変更および取り換えを行ってもよい。従って、本発明は説明として説明されたものであり、限定されるものでないことが理解される。
【符号の説明】
【0036】
300 電極構造、
310 第1の電極グループ、
311 第1の導電セル、
322 第1の導電線、
320 第2の電極グループ、
321 第2の導電セル、
322 第2の導電線、
323 第2の導電枝(conductive branch)、
324 導電要素、
330 絶縁層、
331 絶縁要素、
341 ウィンドウ(window)、
342 閉じられた隙間(closed gap)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離されて基板上に配置される複数の第1の導電セルおよび第2の導電セルと、
隣接した前記第1の導電セルを接続する複数の第1の導電線および隣接した前記第2の導電セルを接続する複数の第2の導電線と、を備え、
前記第2の導電線は、
少なくとも1つの導電要素と、
前記導電要素の両側に配置されて、隣接した前記第2の導電セルに前記導電要素を接続する、少なくとも1つの対の第2の導電枝(conductive branch)と、を備え、
前記第1の導電線および前記第2の導電線は絶縁されて交差される、
電極構造。
【請求項2】
前記導電要素は、前記第1の導電線から離されて絶縁される、
請求項1に記載の電極構造。
【請求項3】
ウィンドウ(window)が各前記第1の導電線に形成され、前記ウィンドウ(window)は、前記導電要素および前記第1の導電線の間に形成される閉じられた隙間(closed gap)を備え、
各前記導電要素が前記ウィンドウ(window)に配置される、
請求項1または2に記載の電極構造。
【請求項4】
絶縁層が、前記第1の導電線および前記第2の導電枝(conductive branch)の間に配置される、
請求項1〜3いずれか1項に記載の電極構造。
【請求項5】
前記絶縁層は、複数の絶縁要素を備える、
請求項4に記載の電極構造。
【請求項6】
前記第1の導電セルおよび前記第2の導電セルに接続する複数の信号線をさらに備える、
請求項1〜5いずれか1項に記載の電極構造。
【請求項7】
前記第1の導電線は、前記基板上に配置されている、
請求項1〜6いずれか1項に記載の電極構造。
【請求項8】
前記第2の導電枝(conductive branch)は、前記基板上に配置されている、
請求項1〜6いずれか1項に記載の電極構造。
【請求項9】
各前記対の第2の導電枝(conductive branch)の長さは、2つの隣接した前記第2の導電セルの間の距離よりも小さい、
請求項1〜8いずれか1項に記載の電極構造。
【請求項10】
a)複数の第1の導電セルと、隣接した前記第1の導電セルに接続する複数の第1の導電線と、複数の第2の導電セルと、を形成するステップと、
b)前記第1の導電線から絶縁される複数の導電要素を形成するステップと、
c)前記第1の導電線を横切って前記導電要素を備える前記第2の導電セルに接続する、複数の対の第2の導電枝(conductive branch)を形成するステップと、を備える、
電極構造の形成方法。
【請求項11】
前記第1の導電線および前記第2の導電枝(conductive branch)の間に絶縁層を形成するステップをさらに備える、
請求項10に記載の電極構造の形成方法。
【請求項12】
前記絶縁層は、複数の絶縁要素を備える、
請求項10または11に記載の電極構造の形成方法。
【請求項13】
前記ステップa)および前記ステップb)は、同時に実行される、
請求項10〜12いずれか1項に記載の電極構造の形成方法。
【請求項14】
前記複数の第1の導電セルおよび前記複数の第2の導電セルに接続する複数の信号線を、前記電極構造の輪郭上に形成するステップをさらに備える、
請求項10〜13いずれか1項に記載の電極構造の形成方法。
【請求項15】
前記ステップa)において、ウィンドウ(window)が各前記第1の導電線に形成され、
前記ステップb)において、各前記導電要素が、前記導電要素および前記第1の導電線の間に形成される閉じられた隙間(closed gap)を持つ前記ウィンドウ(window)に配置される、
請求項10〜14いずれか1項に記載の電極構造の形成方法。
【請求項16】
タッチ感知信号を生成する請求項1に記載の電極構造と、
前記タッチ感知信号を受信及び処理するコントローラと、を備える、
タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−248181(P2012−248181A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83712(P2012−83712)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【出願人】(509205375)宸鴻科技(廈門)有限公司 (17)
【Fターム(参考)】