説明

タッチパネル入力装置

【目的】 本発明の目的は、所望のセンサ電極の隣のセンサ電極の静電容量の変化に基づく誤入力の発生を抑制することができるタッチパネル入力装置を提供する。
【構成】 このタッチパネル入力装置は、平面状に間隔を空けて配置されており且つ指の接近に応じて静電容量が各々変化する複数のセンサ電極200と、センサ電極200上にセットされるスペーサ300とを備えており、スペーサ300は、複数のセンサ電極200に当接する部分である複数の第1のブロック310と、第1のブロック310の間の部分である複数の第2のブロック320とを有し、第2のブロック320の誘電率が、第1のブロック310の誘電率よりも低くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器の操作入力用の入力装置等として用いられるタッチパネル入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のタッチパネル入力装置は、指の接近に応じて、静電容量が変化する複数のセンサ電極を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−165223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記センサ電極の感度を十分に得るためには、当該センサ電極の面積をできるだけ大きくすることが好ましい。
【0005】
しかしながら、前記センサ電極の配置領域が小さい場合、各センサ電極の面積を大きくすると、前記センサ電極の間のピッチ間隔が狭くなる。前記センサ電極の間のピッチ間隔が狭くなると、指の接近に応じて、当該指の接近を検出すべきセンサ電極の静電容量が変化するだけでなく、当該センサ電極の隣のセンサ電極の静電容量が変化する場合がある。即ち、所望のセンサ電極の隣のセンサ電極の静電容量の変化に基いて誤入力が起きる可能性があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、所望のセンサ電極の隣のセンサ電極の静電容量の変化に基づく誤入力の発生を抑制することができるタッチパネル入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のタッチパネル入力装置は、平面状に間隔を空けて配置されており且つ指の接近に応じて静電容量が各々変化する複数のセンサ電極を備えるタッチパネル入力装置であって、前記センサ電極上にセットされる非電導部材とを備えており、非電導部材は、少なくとも複数のセンサ電極の中央部に当接する部分である複数の第1のブロックと、この第1のブロックの間の部分である複数の第2のブロックとを有しており、第2のブロックの誘電率が第1のブロックの誘電率よりも低いことを特徴としている。
【0008】
このようなタッチパネル入力装置荷よる場合、指が第1のブロックに接近すると、当該第1のブロックに当接するセンサ電極の静電容量が大きく変化する。その一方で、前記センサ電極の隣のセンサ電極の静電容量は、当該隣のセンサ電極と指との間に前記第1のブロックの隣の誘電率の低い第2のブロックが存在するため、その変化が小さくなる。このため、静電容量の所定以上の変化のみを検知するようにすれば、隣のセンサ電極の静電容量の変化に基づく誤入力の発生を抑制することができる。
【0009】
本発明の別のタッチパネル入力装置は、平面状に間隔を空けて配置されており且つ指の接近に応じて静電容量が各々変化する複数のセンサ電極を備えるタッチパネル入力装置であって、少なくとも複数のセンサ電極の中央部上に各々セットされる複数の非電導部材を備えている
【0010】
このようなタッチパネル入力装置による場合、複数のセンサ電極上に複数の非電導部材がセットされると、当該非電導部材の間にエアギャップが形成される。このエアギャップの誘電率は、非導電部材よりも小さい。このため、指が非導電部材に接近すると、当該非導電部材に当接するセンサ電極の静電容量が大きく変化する。その一方で、前記センサ電極の隣のセンサ電極の静電容量は、当該隣のセンサ電極と指との間に前記エアギャップが存在するため、その変化が小さくなる。よって、静電容量の所定以上の変化のみを検知するようにすれば、隣のセンサ電極の静電容量の変化に基づく誤入力の発生を抑制することができる。
【0011】
前記第2のブロックにはスリットが設けられていることが好ましい。この場合、第2のブロックに設けられたスリットにより、第1のブロックの間にエアギャップが形成される。このエアギャップの誘電率は、非導電部材よりも小さい。このため、指が第1のブロックに接近すると、当該第1のブロックに当接するセンサ電極の静電容量が大きく変化する。その一方で、前記センサ電極の隣のセンサ電極の静電容量は、当該隣のセンサ電極と指との間に前記エアギャップが存在するため、その変化が小さくなる。このため、静電容量の所定以上の変化のみを検知するようにすれば、隣のセンサ電極の静電容量の変化に基づく誤入力の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の別のタッチパネル入力装置は、平面状に間隔を空けて配置されており且つ指の接近に応じて静電容量が各々変化する複数のセンサ電極を備えるタッチパネル入力装置であって、前記センサ電極上にセットされる非電導部材とを備えており、非電導部材は、少なくとも複数のセンサ電極の中央部に当接する部分である複数の第1のブロックと、この第1のブロックの間の部分である複数の第2のブロックとを有しており、第2のブロックにはグランド接続される導電部材が埋設されている。
【0013】
このようなタッチパネル入力装置による場合、指が第1のブロックに接近すると、当該第1のブロックに当接するセンサ電極の静電容量が大きく変化する。その一方で、前記センサ電極の隣のセンサ電極の静電容量は、当該隣のセンサ電極と指との間のグランド接続された導電部材にシールドされることにより、その変化が小さくなる。このため、静電容量の所定以上の変化のみを検知するようにすれば、隣のセンサ電極の静電容量の変化に基づく誤入力の発生を抑制することができる。
【0014】
非電導部材は操作パネル又は筐体とすることができる。
【0015】
前記タッチパネル入力装置が、非導電部材上にセットされる操作パネル又は筐体を更に備えている場合、非電導部材は操作パネル又は筐体と前記センサ電極との間に設けられるスペーサとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るタッチパネル入力装置について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係るタッチパネル入力装置の概略的分解平面図、図2は同入力装置の概略的断面図、図3は同入力装置の設計変更例を示す概略的断面図、図4は同入力装置の別の設計変更例を示す概略的断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すタッチパネル入力装置は、基板100と、この基板100上にマトリックス状間隔を空けて配設されており且つ指の接近に応じて静電容量が各々変化する9個のセンサ電極200と、このセンサ電極200上にセットされる非電導性を有するスペーサ300と、このスペーサ300上にセットされる操作パネル400とを備えている。以下、各部を詳しく説明する。
【0018】
基板100としてはリジット基板又はフレキシブル基板を用いる。
【0019】
スペーサ300は、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ABS樹脂樹脂等で構成される板状の樹脂成形品である。この樹脂の比誘電率は3〜4である。
【0020】
このスペーサ300は、9個のセンサ電極200の中央部に各々当接する部位である略矩形状の9つの第1のブロック310と、この第1のブロック310の間の部位である略矩形状の12つの第2のブロック320とを有する。
【0021】
各第2のブロック320には、第1のブロック310の端部に沿って延びる長孔状のスリット321が設けられている。このスリット321により第1のブロック310の間にエアギャップが形成される。このエアギャップの空気の比誘電率は1である。
【0022】
操作パネル400は、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ABS樹脂樹脂等で構成される板状の樹脂成形品である。この樹脂の比誘電率も3〜4である。
【0023】
この操作パネル400の上面の中心部には、略長方形状の第1の操作突起410が設けられている。操作パネル400の第1の操作突起410の周囲には、略三角形状の4つの第2の操作突起420と、略円形状の4つの第3の操作突起430とが交互に設けられている。第1、第2、第3の操作突起410、420、430は、各センサ電極200の上方に位置するように配置されている。
【0024】
各センサ電極200は、基板100上に実装される銅箔あって、操作パネル400の第1の操作突起410、第2の操作突起420又は第3の操作突起430が指でタッチされる(即ち、指が接近する)と、前記指との間の静電容量が変化するようになっている。
【0025】
このセンサ電極200は、基板100上に設けられる図示しない信号処理回路に接続される。同回路により、指とセンサ電極200との間の静電容量の変化量を各々測定し、所定以上の静電容量の変化があった場合、操作パネル400の第1、第2、第3の操作突起410、420、430に指がタッチされたと検知するようになっている。
【0026】
各センサ電極200の静電容量は次の数式から求められる。
【0027】
【数1】

【0028】
例えば、図2に示すように、操作パネル400の第1の操作突起410が指でタッチされると、指と第1の操作突起410の下方に位置するセンサ電極200(即ち、図示中央のセンサ電極200)は、指と対向する面積(S)が大きく、指との距離(D)が近く且つ指との間の第1の操作突起410及びその下方の第1のブロック320の誘電率(ε)が3〜4であるため、指と中央のセンサ電極200との間の静電容量が大きく変化する。これに対し、前記センサ電極200の両隣のセンサ電極200(即ち、図示両端のセンサ電極200)は、指と対向する面積(S)が小さく、指との距離が遠く且つ指との間の前記エアギャップの誘電率(ε)が1であるため、指と両隣のセンサ電極200との間の静電容量の変化が小さくなる。
【0029】
この点、従来のタッチパネル入力装置による場合、複数のセンサ電極上に板状の操作パネルが存在していることから、前記操作パネルの指がタッチされた部位の下方に位置するセンサ電極と、その両隣のセンサ電極とは、指と対向する面積(S)及び指との距離(D)が異なるものの、指との間に存在する前記操作パネルの誘電率(ε)が同じになる。このため、センサ電極のピッチ間隔が狭くなると、前記センサ電極と指との間の静電容量の変化と同程度に、両隣のセンサ電極と指との間の静電容量が変化し、隣のセンサ電極の静電容量の変化に基づく誤入力の原因となっていた。
【0030】
これに対して、本タッチパネル入力装置による場合、センサ電極200のピッチ間隔が狭くなったとしても、操作パネル400の操作突起の下方のセンサ電極200の隣のセンサ電極200の静電容量の変化が、前記エアギャップにより、抑制される。このため、前記信号処理回路により、前記操作突起の下方のセンサ電極200の静電容量の大きな変化が測定され、センサ電極200上の操作突起がタッチされたと検知される一方、隣のセンサ電極200の静電容量の小さな変化が測定されても、隣のセンサ電極200上の操作突起がタッチされたと検知されない。このため、隣のセンサ電極200の静電容量の変化に基づく誤入力の発生を防止することができる。
【0031】
なお、上記実施例では、第2のブロック320にスリット321を設けてエアギャップを形成し、このエアギャップの空気の誘電体が第1のブロックの誘電率よりも低くなっているとしたが、これに限定されるものではない。即ち、第2のブロックは、第1のブロックの誘電率よりも低い素材で構成する限り任意に設計変更可能である。
【0032】
また、第2のブロックを第1のブロックの誘電率よりも低い素材で構成するのに代えて、第2のブロックに導電部材(例えば、銅、鉄、ステンレス等の金属)を埋設(具体的には、インサート成型)し、当該金属をグランド接続するようにしても良い。この場合、指との間の静電容量の変化が隣のセンサ電極200に影響しないようにシールドすることができるため、前記エアギャップと同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、前記エアギャップは、第1のブロック310間の第2のブロック320にスリット321を設けることにより形成されるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、非導電部材である複数のスペーサ300’を複数のセンサ電極200の中央部上に各々セットし、当該スペーサ300’の間にエアギャップを形成するようにしても良い。
【0034】
上記実施例では、前記非導電部材はスペーサ300であるとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、操作パネル400’の下面に第1、第2のブロックを設け、第2のブロックにスリットを形成するようにしても良い。また、操作パネルがタッチパネル入力装置の筐体と一体化されている場合、当該筐体に第1、第2のブロックを設け、第2のブロックにスリットを形成するようにしても良い。これらの場合であっても、スリットを設ける代わりに、前述のように、第2のブロックを誘電率が第1のブロックよりも低い素材で構成することができる。勿論、図3に示すスペーサ300’の代わりに前記操作パネル又は筐体を用いるようにしても良いが、センサ電極上にセットされる部分をテープ等で前記操作パネル本体又は筐体本体に取り付ける必要がある。なお、前記非導電部材として、操作パネルや筐体を用いる場合、スペーサ300は不要になる。
【0035】
操作パネル400、400’については、第1、第2、第3の操作突起410、420、430が設けられているとしたが、これに限定されるものではない。例えば、前記操作パネルの操作面をフラット面とすることも可能である。操作パネルを筐体と一体化する場合も同様である。
【0036】
第1のブロック310は、少なくともセンサ電極200の中央部に当接していれば良いが、センサ電極200の全面に当接するものを排除するものではない。なお、ここでいうセンサ電極200の中央部とは、センサ電極200の面上の周縁部を除く部分のことを言う。
【0037】
スリット321は、スペーサ、操作パネル又は筐体の成型時にもうけるようにしても良いし、成型後にスリット加工するようにしても良い。この点は、前記スリットを操作パネル又は筐体に設ける場合も同様である。
【0038】
また、センサ電極200については、指の接近に応じて静電容量が各々変化するものである限り任意に選択設定することが可能である。例えば、指の接近により、一対のセンサ電極の間の静電容量が変化するものであっても良い。この場合、前記非導電部材の第1のブロック又は前記非導電部材を一対のセンサ電極に各々当接させ、第2のブロック又は前記非導電部材の間のエアギャップを第1のブロックの間(即ち、一対の電極の周囲の上方又は下方位置)に配置するようにすれば良い。
【0039】
センサ電極200としては、上述した銅箔に限定されるものでない。例えば、操作パネルの面上に設けられる透明電極等とすることもできる。この場合も、前記透明電極に当接する部分を前記第1のブロックとし、第1のブロックの間の部分を前記第2のブロックとすれば良い。前記第2のブロックに前記スリットを設けるか、前記第2のブロックを第1のブロックより誘電率が低い素材とするかは任意に選択することが可能である。前述のように、操作パネルを透明電極に当接する複数のパーツに分割し、その間にエアギャップを形成する一方、前記パーツをテープ等で接続するようにしても構わない。なお、センサ電極として透明電極を設ける場合、基板100は不要になる。
【0040】
センサ電極200の配列については、平面状に間隔を空けて並べられていれば良い。例えば、センサ電極200を一列に並べることも可能である。
【0041】
なお、本発明に係るタッチパネル入力装置は、携帯通信端末のタッチパネル、カーナビゲーション用のタッチパネル、現金自動預け払い機用のタッチパネル、音楽携帯プレーヤ用のタッチパネル等に適応可能である。また、各部材の材質、個数、形状等については、上記実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係るタッチパネル入力装置の概略的分解平面図である。
【図2】同入力装置の概略的断面図である。
【図3】同入力装置の設計変更例を示す概略的断面図である。
【図4】同入力装置の別の設計変更例を示す概略的断面図である。
【符号の説明】
【0043】
100 基板
200 センサ電極
300 スペーサ(非導電部材)
310 第1のブロック
320 第2のブロック
321 スリット
400 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状に間隔を空けて配置されており且つ指の接近に応じて静電容量が各々変化する複数のセンサ電極を備えるタッチパネル入力装置において、
前記センサ電極上にセットされる非電導部材とを備えており、
非電導部材は、
少なくとも複数のセンサ電極の中央部に当接する部分である複数の第1のブロックと、
この第1のブロックの間の部分である複数の第2のブロックとを有しており、
第2のブロックの誘電率が、第1のブロックの誘電率よりも低いことを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項2】
平面状に間隔を空けて配置されており且つ指の接近に応じて静電容量が各々変化する複数のセンサ電極を備えるタッチパネル入力装置において、
少なくとも複数のセンサ電極の中央部上に各々セットされる複数の非電導部材を備えていることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項3】
平面状に間隔を空けて配置されており且つ指の接近に応じて静電容量が各々変化する複数のセンサ電極を備えるタッチパネル入力装置において、
前記センサ電極上にセットされる非電導部材とを備えており、
非電導部材は、
少なくとも複数のセンサ電極の中央部に当接する部分である複数の第1のブロックと、
この第1のブロックの間の部分である複数の第2のブロックとを有しており、
第2のブロックにはグランド接続される導電部材が埋設されていることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項4】
請求項1記載のタッチパネル入力装置において、
第2のブロックにはスリットが設けられていることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載のタッチパネル入力装置において、
非電導部材は操作パネル又は筐体であることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項6】
請求項1、2又は3記載のタッチパネル入力装置において、
非導電部材上にセットされる操作パネル又は筐体を更に備えており、
非電導部材は操作パネル又は筐体と前記センサ電極との間に設けられるスペーサであることを特徴とするタッチパネル入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−37373(P2009−37373A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200344(P2007−200344)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】