説明

タッチパネル用光導波路モジュールおよびその製法

【課題】薄形化を可能とするタッチパネル用光導波路モジュールおよびその製法を提供する。
【解決手段】タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置される光導波路ユニットW1 と、この光導波路ユニットW1 の外縁部に、その光導波路ユニットW1 と直交した状態で結合された基板ユニットE1 とからなり、基板ユニットE1 の基板5が、光導波路ユニットW1 側に折り曲げられた状態で、その折り曲げ部分の先端が、電気配線8との接続部分となっており、オーバークラッド層4の表面に、ディスプレイの画面周縁部に沿う方向に長溝部4aが形成されており、その長溝部4a内に、上記電気配線8が収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルにおいて、指等の触れ位置を検知する検知手段として用いられるタッチパネル用光導波路モジュールおよびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、指や専用のペン等で液晶ディスプレイ等の画面に直接触れることにより、機器を操作等する入力装置である。そのタッチパネルの構成は、操作内容等を表示するディスプレイと、このディスプレイの画面上での上記指等の触れ位置(座標)を検知する検知手段とを備えている。そして、その検知手段で検知した触れ位置を示す情報が信号として送られ、その触れ位置に表示された操作等が行われるようになっている。このようなタッチパネルを用いた機器としては、金融機関のATM,駅の券売機,携帯ゲーム機等があげられる。
【0003】
上記タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段として、光導波路モジュールを用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、そのタッチパネルでは、図12の側断面図に示すように、平面視四角形のディスプレイ51の画面の一側部に、光出射側の光導波路ユニットA0 が設置され、上記ディスプレイ51の画面の他側部に、光入射側の光導波路ユニットB0 が設置されている。また、光出射側の上記光導波路ユニットA0 の外縁部には、発光素子71が実装された基板ユニットCが、上記光導波路ユニットA0 と直交した状態で結合され、光入射側の上記光導波路ユニットB0 の外縁部には、受光素子72が実装された基板ユニットDが、上記光導波路ユニットB0 と直交した状態で結合されている。そして、上記発光素子71から発光された光が、光出射側の上記光導波路ユニットA0 で多数の光に分岐され、その光導波路ユニットA0 の出射部から、上記多数の光Sが、ディスプレイ51の画面と平行に、かつ他側部に向かって出射され、それらの出射光Sが、光入射側の上記光導波路ユニットB0 の入射部に入射するようになっている。このように上記光導波路ユニットA0 ,B0 と基板ユニットC,Dとからなるタッチパネル用光導波路モジュールにより、ディスプレイ51の画面上において、出射光Sが格子状に走っている状態になる。この状態で、指でディスプレイ51の画面に触れると、その指が出射光Sの一部を遮断するため、その遮断された部分を、光入射側の上記光導波路ユニットB0 の受光素子72で感知することにより、上記指が触れた部分の位置(座標)を検知することができる。なお、図12において、符号61は基台、符号62はアンダークラッド層、符号63はコア、符号64はオーバークラッド層である。
【0004】
上記各基板ユニットC,Dにおいて、上記発光素子71,受光素子72は、それぞれ基板73に実装されており、その各基板73の下端部には、上記発光素子用の電気配線74,上記受光素子用の電気配線75が接続されている。その各電気配線74,75は、上記ディスプレイ51の画面の向きと反対側(図12では下側)に延び、上記発光素子71に信号を送信するとともに上記受光素子72から信号を受信して処理するためのマザーボード(図示せず)等に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−15247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記タッチパネル用光導波路モジュールに対し、薄形化の要求がある。しかしながら、そのタッチパネル用光導波路モジュールは、上記のように、上記基板ユニットC,Dが上記光導波路ユニットA0 ,B0 に直交した状態で結合されており、しかも、上記基板ユニットC,Dは、下側に延びる電気配線74,75を備えているとともに、その電気配線74,75との接続部分を基板73に形成する必要性から、高く(厚く)なっている。そのため、上記タッチパネル用光導波路モジュールは、全体的に厚くなっている。上記タッチパネル用光導波路モジュールでは、この点で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、薄形化を可能とするタッチパネル用光導波路モジュールおよびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置される光導波路ユニットと、この光導波路ユニットの外縁部に、その光導波路ユニットと直交した状態で結合された基板ユニットとからなり、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成されたコアと、このコアを被覆した状態で形成されたオーバークラッド層とを備え、上記基板ユニットが、基板と、この基板の表面に実装された光学素子と、上記基板に接続された光学素子用の電気配線とを備えているタッチパネル用光導波路モジュールであって、上記基板ユニットの基板が、上記光導波路ユニット側に折り曲げられた状態で、その折り曲げ部分の先端が、上記電気配線との接続部分となっており、上記オーバークラッド層の表面に、上記ディスプレイの画面周縁部に沿う方向に長溝部が形成されており、上記電気配線が、上記オーバークラッド層の表面に形成されている上記長溝部内に収納されているタッチパネル用光導波路モジュールを第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、光導波路ユニットと基板ユニットとを個別に作製した後、上記光導波路ユニットの外縁部に上記基板ユニットを結合する上記第1の要旨のタッチパネル用光導波路モジュールの製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層の表面にコアを形成した後、型成形法により、上記コアを被覆するオーバークラッド層の形成と同時に、そのオーバークラッド層の表面に、上記基板ユニットの電気配線収納用の長溝部を形成することにより行われ、上記光導波路ユニットへの上記基板ユニットの結合が、上記基板ユニットの基板を上記光導波路ユニット側に折り曲げ、その先端に接続されている電気配線を上記オーバークラッド層の表面に形成した上記長溝部内に収納した状態で行われるタッチパネル用光導波路モジュールの製法を第2の要旨とする。
【0010】
さらに、本発明は、光導波路ユニットと基板ユニットとを個別に作製した後、上記光導波路ユニットの外縁部に上記基板ユニットを結合する上記第1の要旨のタッチパネル用光導波路モジュールの製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層の表面にコアを形成し、そのコアを被覆するオーバークラッド層を形成した後、そのオーバークラッド層の表面の一部分を除去し、上記基板ユニットの電気配線収納用の長溝部を形成することにより行われ、上記光導波路ユニットへの上記基板ユニットの結合が、上記基板ユニットの基板を上記光導波路ユニット側に折り曲げ、その先端に接続されている電気配線を上記オーバークラッド層の表面に形成した上記長溝部内に収納した状態で行われるタッチパネル用光導波路モジュールの製法を第3の要旨とする。
【0011】
なお、本発明において「長溝部」とは、その長手方向に沿って左右の両側壁が形成されたものだけではなく、その左右の両側壁の一方が形成されていないものも含む意味である。本発明では、その形成されていない一方の側壁は、タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置される光導波路ユニットにおいて、外周側(ディスプレイの画面が無い側)に対応する側壁である。
【0012】
本発明者らは、タッチパネル用光導波路モジュールを薄形化すべく、研究を重ねた。その過程で、光導波路ユニットのオーバークラッド層の上面の所定部分を利用することに着想した。その部分を利用することは、光導波路ユニットの光伝播に悪影響を与えるおそれがあるため、その部分に加工を施さないことが技術常識であった。本発明者らは、そのような技術常識を打破し、オーバークラッド層の表面に、上記長溝部を形成し、その長溝部内に、基板ユニットの電気配線を収納することにより、光伝播に悪影響を与えることなく、タッチパネル用光導波路モジュールの薄形化が可能となることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタッチパネル用光導波路モジュール(第1の要旨)は、光導波路ユニットに基板ユニットが結合された状態において、基板ユニットの基板が上記光導波路ユニット側に折り曲げられているため、薄形化されたものとなっている。さらに、光導波路ユニットのオーバークラッド層の表面に長溝部が形成され、その長溝部に、上記基板ユニットの電気配線が収納されているため、従来のタッチパネル用光導波路モジュールと異なり、上記電気配線が下側に延びた状態になっておらず、従来のものと比較して、大幅に薄形化されたものとなっている。
【0014】
また、本発明のタッチパネル用光導波路モジュールの製法(第2および第3の要旨)によれば、オーバークラッド層の表面に、基板ユニットの電気配線収納用の長溝部を形成し、光導波路ユニットに基板ユニットを結合する際に、基板ユニットの基板を光導波路ユニット側に折り曲げるとともに、上記長溝部に、基板ユニットの電気配線を収納するため、上記のように大幅に薄形化された本発明のタッチパネル用光導波路モジュールを製造することができる。
【0015】
特に、上記長溝部の深さが、0.1mm以上である場合には、上記電気配線を収納する容積が大きくなるため、上記長溝部からの電気配線の突出量を減少ないし無くすことができ、本発明のタッチパネル用光導波路モジュールをより一層薄形化することができる。
【0016】
また、上記ディスプレイの画面周縁部に位置決めされるオーバークラッド層の内縁部が、外側に向かって反る縦断面円弧状曲面を有するレンズ部に形成されている場合には、高さを要するレンズ部が形成されていても、基板ユニットの基板を光導波路ユニット側に折り曲げるとともに、上記長溝部に、基板ユニットの電気配線を収納することにより、本発明のタッチパネル用光導波路モジュールを薄形化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のタッチパネル用光導波路モジュールの一実施の形態を模式的に示し、(a)はその平面図であり、(b)は(a)のX1−X1断面の要部の拡大図であり、(c)は(a)のY1−Y1断面の拡大図である。
【図2】上記タッチパネル用光導波路モジュールを構成する光導波路ユニットを模式的に示し、(a)はその平面図であり、(b)は(a)のX2−X2断面の要部の拡大図であり、(c)は(a)のY2−Y2断面の拡大図である。
【図3】上記タッチパネル用光導波路モジュールを構成する基板ユニットを模式的に示す正面図である。
【図4】図1の矢印Z方向から見た要部の側面図である。
【図5】(a)〜(d)は、上記光導波路ユニットの作製方法を模式的に示す説明図である。
【図6】(a)〜(c)は、上記光導波路ユニットの作製方法の続きを模式的に示す説明図である。
【図7】(a)〜(c)は、上記基板ユニットの作製方法を模式的に示す説明図である。
【図8】(a)〜(b)は、上記基板ユニットの作製方法の続きを模式的に示す説明図である。
【図9】上記光導波路ユニットと上記基板ユニットとの結合方法を模式的に示す説明図である。
【図10】(a)〜(k)は、上記光導波路ユニットの変形例を模式的に示す断面図である。
【図11】(a),(b)は、上記光導波路ユニットの実施例を模式的に示す断面図である。
【図12】従来の光導波路モジュールを用いたタッチパネルを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0019】
図1(a)〜(c)は、本発明のタッチパネル用光導波路モジュールの一実施の形態を示している。この実施の形態のタッチパネル用光導波路モジュールは、図1(a)に示すように、平面視四角形の枠状に形成されている光導波路ユニットW1 と、この光導波路ユニットW1 の外縁部の対角する2箇所に、上記光導波路ユニットW1 と直交した状態で結合された基板ユニットE1 ,E1 とからなっている。上記基板ユニットE1 は、X1−X1断面図である図1(b)に示すように、上記光導波路ユニットW1 側に折り曲げられた状態で、その折り曲げ部分の先端から、電気配線8が延びている。また、上記光導波路ユニットW1 のオーバークラッド層4の表面のうち、上記電気配線8が位置する部分には、上記枠状の辺に沿って、長溝部4a,4aが形成されている。そして、上記電気配線8は、Y1−Y1断面図である図1(c)に示すように、上記長溝部4a内に収納されている。このような構造にすることにより、タッチパネル用光導波路モジュールの薄形化を実現している。
【0020】
より詳しく各部について説明すると、上記光導波路ユニットW1 は、図2(a)〜(c)に示すように、基台1の表面に接着されている。その光導波路ユニットW1 の四角形の枠状を構成する一方のL字形部分が、光出射側の光導波路部分Aであり、他方のL字形部分が、光入射側の光導波路部分Bである。上記光導波路ユニットW1 は、四角形の枠状に形成されたアンダークラッド層2の表面の所定部分に、光の通路である複数のコア3A,3Bが、上記基板ユニットE1 〔図1(a)〜(c)参照〕の結合部分から、そのL字形部分の内側端縁部に、等間隔に並列状態で延びたパターンに形成されている。さらに、上記コア3A,3Bを被覆するように、上記アンダークラッド層2の表面に、オーバークラッド層4が形成されている。この実施の形態では、上記L字形部分の内側端縁部に位置する、光出射側および光入射側のコア3A,3Bの端面を被覆するようにオーバークラッド層4の端部を延設し、その延設された端部をレンズ部40A,40Bに形成している。上記レンズ部40A,40Bのレンズ面は、Y2−Y2断面図である図2(c)に示すように、縦断面円弧状曲面になっている。
【0021】
なお、図2(a)では、コア3A,3Bを鎖線で示しており、鎖線の太さがコア3A,3Bの太さを示している。また、この図2(a)では、コア3A,3Bの数を略して図示している。さらに、図2(b),(c)では、光出射側と光入射側とを、構造が同一であるため、同一図面に記載している。また、図2(a),(b)において、符号1aは、基板ユニットE1 〔図1(a),(b)参照〕を結合する際に、その基板ユニットE1 の下端部分N(図4参照)を挿入するための、上記基台1に形成された切欠き部である。
【0022】
そして、上記電気配線収納用の上記長溝部4aは、図2(c)に示すように、上記レンズ部40A,40Bを避けて形成されている。この実施の形態では、上記長溝部4aの横断面形状は、底面が平面に形成され、その底面の両側に、その底面と直角に、壁面が形成された略U字状に形成されている。上記長溝部4aの底面は、光導波路機能を発現する観点から、コア3A,3Bの頂面から0.01mm以上高い位置に形成されていることが好ましい。上記長溝部4aの深さは、電気配線8を収納する容積を大きくする観点から、0.1mm以上とすることが好ましい。なお、上記レンズ部40A,40Bの高さ(アンダークラッド層2の表面からの高さ)は、レンズ機能を発現する観点から、0.5mm以上とすることが好ましく、さらに薄形化の観点から、0.5mm以上2.0mm以下とすることが好ましい。
【0023】
一方、上記基板ユニットE1 は、上記光導波路ユニットW1 に結合される前の状態は、図3に示すように、平板状の(折り曲げられていない)基板5と、この基板5の表面の所定領域に形成された絶縁層(図示せず)と、この絶縁層の表面の所定領域に形成された電気回路(図示せず)および光学素子実装用パッド6と、この光学素子実装用パッド6に実装された光学素子7と、この光学素子7を封止する封止樹脂(図示せず)と、上記基板5の上端部に接続された光学素子用の電気配線8とを備えている。また、この実施の形態では、上記基板5の両側に、上記基台1の表面に位置決めするための位置決め板部5a,5aが、基板5の幅方向(図3の左右方向)に突出した状態で形成されている。上記電気回路は、上記電気配線8の接続部分と光学素子7とを電通するために形成されている。上記電気配線8としては、フレキシブルプリント基板,リード線等があげられる。上記光導波路ユニットW1 の2箇所に結合される2個の基板ユニットE1 のうち、光出射側の光導波路部分Aに結合される基板ユニットE1 の光学素子7は、発光素子であり、光入射側の光導波路部分Bに結合される基板ユニットE1 の光学素子7は、受光素子である。
【0024】
そして、上記タッチパネル用光導波路モジュールでは、図3に示す上記基板ユニットE1 の基板5が、光学素子7よりも上側の鎖線5bの部分で折り曲げられ、図2(a),(b)に示す光導波路ユニットW1 の基台1の上記切欠き部1aに、上記基板ユニットE1 の下端部分Nを挿入する〔図2(a)において紙面の裏面方向に挿入する〕とともに、その基台1において上記切欠き部1aの左右の部分の表面に、位置決め板部5aの下端縁を当接させ、上記折り曲げ部Mをそれぞれ、長溝部4a内に収納し、図1(a)に示すように構成される。図4は、その状態の要部を図1(a)の矢印Z方向から見た側面図である。そして、上記基板ユニットE1 の、上記切欠き部1への挿入部分、および基台1の表面との当接部分は、接着剤により固定される。
【0025】
さらに、この実施の形態では、図1(a)に示すように、上記2個の基板ユニットE1 の電気配線8は、オーバークラッド層4の表面において、1箇所に集められ、そこから上記光導波路ユニットW1 の外側に取り出している。そのため、その取り出し部分では、上記長溝部4aの、光導波路ユニットW1 の外周側(レンズ部40A,40Bと反対側)に対応する側壁の一部が部分的に除かれている。
【0026】
上記タッチパネル用光導波路モジュールは、下記の(1)〜(3)の工程を経て製造される。
(1)上記光導波路ユニットW1 を作製する工程〔図5(a)〜(d),図6(a)〜(c)参照〕。なお、この工程を説明する図5(a)〜(d),図6(a)〜(c)は、図2(c)に示す断面図に相当する部分の図面である。
(2)上記基板ユニットE1 を作製する工程〔図7(a)〜(c),図8(a)〜(b)参照〕。
(3)上記基板ユニットE1 を上記光導波路ユニットW1 に結合する工程。
【0027】
上記(1)の光導波路ユニットW1 の作製工程について説明する。まず、上記タッチパネル用光導波路モジュールを製造する際に用いる平板状の基台10〔図5(a)参照〕を準備する。この基台10の形成材料としては、例えば、ガラス,ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等の樹脂,ステンレス等の金属,石英,シリコン等があげられる。また、基台10の厚みは、例えば、20μm〜5mmの範囲内に設定される。
【0028】
ついで、図5(a)に示すように、上記基台10の表面に、アンダークラッド層2を形成する。このアンダークラッド層2の形成材料としては、熱硬化性樹脂または感光性樹脂があげられる。上記熱硬化性樹脂を用いる場合は、その熱硬化性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを、スピンコート法,ディッピング法等により塗布した後、それを加熱することにより、アンダークラッド層2に形成する。一方、上記感光性樹脂を用いる場合は、その感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを、上記と同様にして塗布した後、それを紫外線等の照射線で露光することにより、アンダークラッド層2に形成する。アンダークラッド層2の厚みは、例えば、5〜300μmの範囲内に設定される。
【0029】
つぎに、図5(b)に示すように、上記アンダークラッド層2の表面に、フォトリソグラフィ法により所定パターンのコア3A,3Bを形成する。このコア3A,3Bの形成材料としては、好ましくは、パターニング性に優れた感光性樹脂が用いられる。その感光性樹脂としては、例えば、アクリル系紫外線硬化樹脂,エポキシ系紫外線硬化樹脂等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、コア3A,3Bの断面形状は、例えば、パターニング性に優れた台形または長方形である。コア3A,3Bの幅は、例えば、10〜100μmの範囲内に設定される。コア3A,3Bの厚み(高さ)は、例えば、25〜100μmの範囲内に設定される。
【0030】
なお、このコア3A,3Bの形成材料は、上記アンダークラッド層2および後記のオーバークラッド層4〔図2(c)参照〕の形成材料よりも屈折率が大きい材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、上記アンダークラッド層2,コア3A,3B,オーバークラッド層4の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。
【0031】
そして、図5(c)に示すように、そのコア3A,3Bを被覆するように、上記アンダークラッド層2の表面に、オーバークラッド層4に形成される感光性樹脂を塗布し、感光性樹脂層(未硬化)4Aを形成する。このオーバークラッド層4に形成される感光性樹脂としては、例えば、上記アンダークラッド層2と同様の感光性樹脂があげられる。
【0032】
ついで、図5(d)に示すように、オーバークラッド層4を四角形の枠状にプレス成形するための成形型20を準備する。この成形型20は、紫外線等の照射線を透過させる材料(例えば石英)からなり、上記オーバークラッド層4の表面形状と同形状の型面を有する凹部21が形成されている。この凹部21は、前記長溝部4a〔図2(c)参照〕を形成するための突条部分21aと、レンズ部40A,40B〔図2(c)参照〕を形成するための曲面部分21bとを有している。
【0033】
そして、図6(a)に示すように、上記成形型20の凹部21が上記コア3A,3Bに対して所定位置に位置決めされるよう、上記感光性樹脂層4Aに対して成形型20をプレスし、その感光性樹脂層4Aをオーバークラッド層4の形状に成形する。つぎに、その状態で、上記成形型20を通して紫外線等の照射線を露光した後に加熱処理を行う。
【0034】
その後、図6(b)に示すように、脱型する。これにより、長溝部4aおよびレンズ部40A,40Bが形成された、四角形の枠状のオーバークラッド層4を得る。オーバークラッド層4の厚み(アンダークラッド層2の表面からの厚み)は、通常、0.5mm以上に設定され、好ましくは、0.5〜2.0mmの範囲内である。また、上記長溝部4aの深さは、先にも述べたが、0.1mm以上とすることが好ましい。
【0035】
その後、図6(c)に示すように、刃型を用いた打ち抜き等により、基台10とともにアンダークラッド層2を四角形の枠状に切断する。そして、上記基台10をアンダークラッド層2から剥離し、アンダークラッド層2,コア3A,3Bおよびオーバークラッド層4からなる、四角形の枠状の光導波路ユニットW1 を得、上記(1)の光導波路ユニットW1 の作製工程が完了する。
【0036】
その後、図2(a)〜(c)に示すように、上記光導波路ユニットW1 をアクリル板等の他の基台1の表面に、接着剤により接着する。このとき、アンダークラッド層1を上記基台1に接着する。その後、基板ユニットE1 〔図1(a),(b)参照〕の結合位置に対応する、基台1の部分に、基板ユニットE1 の下端部分を挿入するための切欠き部1aをパンチャー等で形成する。上記基台1としては、表面に凹凸のないものが用いられ、例えば、上記アクリル板以外に、ポリプロピレン(PP)板,金属板,セラミック板等があげられる。また、上記基台1の厚みは、例えば、500μm〜5mmの範囲内に設定される。
【0037】
つぎに、上記(2)の基板ユニットE1 の作製工程について説明する。まず、上記基板5の基材となる原板5A〔図7(a)参照〕を準備する。この原板5Aの形成材料としては、例えば、金属,樹脂等があげられる。なかでも、加工容易性および寸法安定性の観点から、ステンレス製が好ましい。また、上記原板5Aの厚みは、例えば、0.02〜0.1mmの範囲内に設定される。
【0038】
ついで、上記原板5Aの表面の所定領域に、絶縁層(図示せず)を形成する。この絶縁層の形成方法としては、例えば、感光性ポリイミド樹脂等の感光性樹脂を材料とし、その感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布した後、紫外線等の照射線で露光することにより行う方法等があげられる。絶縁層の厚みは、通常、5〜15μmの範囲内に設定される。
【0039】
つぎに、図7(b)に示すように、上記絶縁層の表面に、光学素子用の電気配線8との接続端子9,光学素子実装用パッド6および電気回路(図示せず)を形成する。これらの形成は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、まず、上記絶縁層の表面に、スパッタリングまたは無電解めっき等により金属層(厚み60〜260nm程度)を形成する。この金属層は、後の電解めっきを行う際のシード層(電解めっき層形成の素地となる層)となる。ついで、上記原板5A,絶縁層およびシード層からなる積層体の両面に、ドライフィルムレジストを貼着した後、上記シード層が形成されている側のドライフィルムレジストに、フォトリソグラフィ法により上記接続端子9,光学素子実装用パッド6および電気回路のパターンの孔部を同時に形成し、その孔部の底に上記シード層の表面部分を露呈させる。つぎに、電解めっきにより、上記孔部の底に露呈した上記シード層の表面部分に、電解めっき層(厚み5〜20μm程度)を積層形成する。そして、上記ドライフィルムレジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。その後、上記電解めっき層が形成されていないシード層部分をソフトエッチングにより除去し、残存した電解めっき層とその下のシード層とからなる積層部分を上記接続端子9,光学素子実装用パッド6および電気回路に形成する。
【0040】
ついで、図7(c)に示すように、上記原板5Aをエッチングすることにより、不要部分を除去し、幅方向に突出する位置決め板部5aを有する基板5に形成する。
【0041】
そして、図8(a)に示すように、実装用パッド6に、光学素子7を実装した後、上記光学素子およびその周辺部を、透明樹脂によりポッティング封止(図示せず)する。
【0042】
その後、図8(b)に示すように、上記接続端子9〔図8(a)参照〕に、光学素子用の電気配線8を接続する。これにより、基板ユニットE1 を得、上記(2)の基板ユニットE1 の作製工程が完了する。
【0043】
つぎに、前記(3)の光導波路ユニットW1 と基板ユニットE1 との結合工程について説明する。すなわち、まず、図9に示すように、基板ユニットE1 を、光導波路ユニットW1 の外縁部の所定位置に位置決めする。このとき、基板ユニットE1 の下端部分Nを、上記基台1の切欠き部1aに挿入するとともに、基板ユニットE1 に形成した位置決め板部5aの下端縁を、上記基台1の表面に当接させる。ついで、上記挿入部分および当接部分を接着剤で固定する。そして、基板ユニットE1 の基板5のうち、光学素子7よりも上側部分を上記光導波路ユニットW1 側に折り曲げ、その先端から延びる電気配線8を、オーバークラッド層4の表面に形成した長溝部4a内に収納する〔図1(b),(c)参照〕。このようにして、目的とするタッチパネル用光導波路モジュールが完成する。そして、そのタッチパネル用光導波路モジュールは、タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置される。
【0044】
なお、上記実施の形態では、オーバークラッド層4の表面に形成した長溝部4aの横断面形状を、底面が平面に形成され、その底面の両側に、その底面と直角に、壁面が形成された略U字状としたが、他の形状でもよい。その例を図10(a)〜(k)に示す。これらの例は、長溝部4aの底面は、上記実施の形態と同様、平面であり、両側の壁面4b,4cの少なくとも一方が傾斜しているもの〔図10(a)〜(h)参照〕、または光導波路ユニットW1 の外周側(レンズ部40A,40Bと反対側)に対応する側壁が形成されていないもの〔図10(i)〜(k)参照〕である。なお、図10(a)〜(k)では、コア3A,3Bとオーバークラッド層4(レンズ部40A,40Bを含む)のみを示し、アンダークラッド層2および基台10〔図6(c)参照〕は省略している。
【0045】
すなわち、図10(a)では、レンズ部40A,40B側の壁面4bが、長溝部4aの開口幅が広がるような傾斜面に形成されており、図10(b)では、レンズ部40A,40Bと反対側の壁面4cが、長溝部4aの開口幅が広がるような傾斜面に形成されており、図10(c)では、両側の壁面4b,4cが、長溝部4aの開口幅が広がるような傾斜面に形成されている。このような形状の長溝部4aでは、電気配線8〔図1(c)参照〕が収納し易くなっている。
【0046】
また、図10(d)では、レンズ部40A,40B側の壁面4aが、長溝部4aの開口幅が狭まるような傾斜面に形成されており、図10(e)では、レンズ部40A,40Bと反対側の壁面4cが、長溝部4aの開口幅が狭まるような傾斜面に形成されており、図10(f)では、両側の壁面4b,4cが、長溝部4aの開口幅が狭まるような傾斜面に形成されている。このような形状の長溝部4aでは、収納した電気配線8が外に出難くなっている。
【0047】
さらに、図10(g)では、両側の壁面4b,4cが、レンズ部40A,40Bと反対側の上方に向かう、平行な傾斜面に形成されており、図10(h)では、両側の壁面4b,4cが、その反対方向に傾斜した傾斜面に形成されている。このような形状の長溝部4aでは、電気配線8を斜め方向から収納することができるようになっている。
【0048】
そして、図10(i)〜(k)は、いずれも、レンズ部40A,40Bと反対側に対応する側壁が形成されておらず、そのうち、図10(i)では、レンズ部40A,40B側の壁面4bが、底面と直角に形成されており、図10(j)では、レンズ部40A,40B側の壁面4bが、レンズ部40A,40B側の上方に向かう傾斜面に形成されており、図10(k)では、レンズ部40A,40B側の壁面4bが、レンズ部40A,40Bと反対側の上方に向かう傾斜面に形成されている。このような形状の長溝部4aでは、レンズ部40A,40Bと反対側の横方向から、電気配線8を収納することができるようになっている。
【0049】
また、上記実施の形態では、オーバークラッド層4の長溝部4aを、型成形により、オーバークラッド層4と同時に形成したが、オーバークラッド層4を形成した後、オーバークラッド層4の表面の一部分を除去することにより、上記長溝部4aを形成するようにしてもよい。上記除去方法としては、例えば、研磨,切削,レーザ処理,エッチング等があげられる。
【0050】
さらに、上記実施の形態では、光導波路ユニットW1 のオーバークラッド層4にレンズ部40A,40Bを形成したが、レンズ部40A,40Bを形成することなく、平面状の端面に形成してもよい。その場合、別体としてレンズ体を設けることが好ましい。
【0051】
つぎに、実施例について従来例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0052】
〔実施例1〜12〕
〔光導波路ユニット〕
オーバークラッド層4の横断面形状が、図11(a)または図11(b)に示すものとなる光導波路ユニットを作製した。実施例1〜12は、全て、オーバークラッド層4の厚み(アンダークラッド層の表面からの厚み)を1mm、長溝部4aの深さを0.3mm、レンズ部40Aの曲率半径を1.5mmに設定した。そして、下記の表1に示すように、長溝部4aの壁面の角度(θ1,θ2,θ3)が異なるものを作製した。
【0053】
〔基板ユニット〕
基板の上端部から電気配線(厚み0.2mm)が延びる基板ユニットを作製した。
【0054】
〔タッチパネル用光導波路モジュール〕
上記光導波路ユニットに上記基板ユニットを結合させ、基板ユニットの基板を折り曲げるとともに、電気配線を光導波路ユニットの長溝部内に収納した。
【0055】
〔従来例〕
〔光導波路ユニット〕
オーバークラッド層に上記長溝部が形成されていない光導波路ユニットを作製した。それ以外は、上記実施例1〜12と同様とした。
【0056】
〔基板ユニット〕
基板の下端部から電気配線が延びる基板ユニットを作製した。
【0057】
〔タッチパネル用光導波路モジュール〕
上記光導波路ユニットに上記基板ユニットを結合させた。基板ユニットの電気配線を収納する場所はなく、その電気配線は、下方に垂らした状態とした(図12参照)。
【0058】
〔厚みの測定〕
実施例1〜12については、タッチパネル用光導波路モジュールのアンダークラッド層の表面から上側部分の厚みを、接触式厚みゲージを用いて測定し、その結果を下記の表1に示した。また、従来例については、一見して明らかに、実施例1〜12よりも厚くなっており、厚みの測定は行わなかった。
【0059】
【表1】

【0060】
上記表1の結果から、実施例1〜12では、いずれも、厚みの測定値がオーバークラッド層の厚みを超えておらず、省スペース効果があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のタッチパネル用光導波路モジュールは、タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段(位置センサ)等に用いられる光導波路に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 光導波路ユニット
1 基板ユニット
4 オーバークラッド層
4a 長溝部
5 基板
8 電気配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置される光導波路ユニットと、この光導波路ユニットの外縁部に、その光導波路ユニットと直交した状態で結合された基板ユニットとからなり、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成されたコアと、このコアを被覆した状態で形成されたオーバークラッド層とを備え、上記基板ユニットが、基板と、この基板の表面に実装された光学素子と、上記基板に接続された光学素子用の電気配線とを備えているタッチパネル用光導波路モジュールであって、上記基板ユニットの基板が、上記光導波路ユニット側に折り曲げられた状態で、その折り曲げ部分の先端が、上記電気配線との接続部分となっており、上記オーバークラッド層の表面に、上記ディスプレイの画面周縁部に沿う方向に長溝部が形成されており、上記電気配線が、上記オーバークラッド層の表面に形成されている上記長溝部内に収納されていることを特徴とするタッチパネル用光導波路モジュール。
【請求項2】
上記長溝部の深さが、0.1mm以上である請求項1記載のタッチパネル用光導波路モジュール。
【請求項3】
上記ディスプレイの画面周縁部に位置決めされるオーバークラッド層の内縁部が、外側に向かって反る縦断面円弧状曲面を有するレンズ部に形成されている請求項1または2記載のタッチパネル用光導波路モジュール。
【請求項4】
光導波路ユニットと基板ユニットとを個別に作製した後、上記光導波路ユニットの外縁部に上記基板ユニットを結合する請求項1記載のタッチパネル用光導波路モジュールの製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層の表面にコアを形成した後、型成形法により、上記コアを被覆するオーバークラッド層の形成と同時に、そのオーバークラッド層の表面に、上記基板ユニットの電気配線収納用の長溝部を形成することにより行われ、上記光導波路ユニットへの上記基板ユニットの結合が、上記基板ユニットの基板を上記光導波路ユニット側に折り曲げ、その先端に接続されている電気配線を上記オーバークラッド層の表面に形成した上記長溝部内に収納した状態で行われることを特徴とするタッチパネル用光導波路モジュールの製法。
【請求項5】
光導波路ユニットと基板ユニットとを個別に作製した後、上記光導波路ユニットの外縁部に上記基板ユニットを結合する請求項1記載のタッチパネル用光導波路モジュールの製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層の表面にコアを形成し、そのコアを被覆するオーバークラッド層を形成した後、そのオーバークラッド層の表面の一部分を除去し、上記基板ユニットの電気配線収納用の長溝部を形成することにより行われ、上記光導波路ユニットへの上記基板ユニットの結合が、上記基板ユニットの基板を上記光導波路ユニット側に折り曲げ、その先端に接続されている電気配線を上記オーバークラッド層の表面に形成した上記長溝部内に収納した状態で行われることを特徴とするタッチパネル用光導波路モジュールの製法。
【請求項6】
上記長溝部の深さを、0.1mm以上にする請求項4または5記載のタッチパネル用光導波路モジュールの製法。
【請求項7】
上記オーバークラッド層の形成の際に、ディスプレイの画面周縁部に位置決めされるオーバークラッド層の内縁部を、外側に向かって反る縦断面円弧状曲面を有するレンズ部に形成する請求項4〜6のいずれか一項に記載のタッチパネル用光導波路モジュールの製法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−48470(P2012−48470A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189566(P2010−189566)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】