説明

タッチパネル用透明導電性フィルム

【課題】密着性に優れた引出し電極形成用の金属層を有するタッチパネル用透明導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】透明フィルム基材の少なくとも一方の面に、直接又は一以上の機能層を介して透明導電層が設けられていると共に、引出し電極形成用の金属層が最外層として設けられてなるタッチパネル用透明導電性フィルムにおいて、前記透明導電層と前記金属層との間に、酸化アルミニウムを5重量%以下の割合にて含有する酸化亜鉛、又は酸化ガリウムを10重量%以下の割合にて含有する酸化亜鉛からなる密着層を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル用透明導電性フィルムに係り、特に、静電容量方式のタッチパネルに有利に用いられ得る透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネル等の表示装置の表面にタブレット型の位置入力装置が配置され、液晶パネルにおける画像表示領域に表示された指示画像を参照しながら、この指示画像が表示されている箇所を指などで触れることにより、指示画像に対応する情報の入力が行える機器が増えてきている。このような、表示装置(液晶パネル等)と位置入力装置とを組み合わせた電子部品は、タッチパネルと称されて、携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、各種券売機や銀行の端末等において幅広く採用されている。
【0003】
ここで、タッチパネルは、その動作原理より、抵抗膜方式や静電容量方式等に分類される。抵抗膜式のタッチパネルは、例えば、フィルム及びガラスの二層構造からなる基板を2枚、所定間隔を隔てて組み付け、上側の基板を押下してショートさせる構造のため、動作温度範囲の狭さや、経時変化に弱いという欠点を有している。
【0004】
これに対して、静電容量方式のタッチパネルは、例えば、互いに交差する方向に電極を延在させて、指等が接触した際、電極間の静電容量が変化することを検知して入力位置を検出するタイプのものがある。
【0005】
ところで、タッチパネルを製造する際には、一般に、ガラスや樹脂フィルム等からなる基材の表面に少なくとも透明導電性層が設けられてなる透明導電膜が用いられ、かかる透明導電膜の上面に、制御回路を接続するための金属製の引出し回線(以下、引出し電極ともいう)が形成される(特許文献1を参照)。
【0006】
そこにおいて用いられる透明導電膜の透明導電層は、従来より、酸化錫を含有する酸化インジウム(ITO)を始めとする酸化インジウムを主成分とする金属酸化物にて構成されている(以下、透明導電層をITO層ともいう)ところ、かかるITO層の表面に引出し電極を設ける技術としては、様々なものが提案されている。
【0007】
具体的には、特許文献2及び特許文献3においては、透明基板上にITO層を設け、その上にCu等の金属膜(層)を、スパッタリングやメッキ法にてコーティングする技術が提案されている。
【0008】
また、特許文献4においては、透明基板上にITO膜を設け、その上に箔状の導線を導電性ペーストで配置する技術が提案されている。
【0009】
さらに、特許文献5〜8には、透明基板上にITO膜を設け、その上に金属箔を接着剤で配置し、かかる金属箔とITO膜とを導電性インクで接続する技術が提案されている。
【0010】
その他にも、タッチパネル用の透明導電性フィルムにおける引出し電極は、一般に、銀ペースト等の導電性ペーストや導電性インクを、インクジェットやその他の印刷方法で印刷することにより形成されている。
【0011】
しかしながら、純銀又は銀合金からなる配線は、ガラスや樹脂等との密着性が悪く、また、外部装置との接続部分において基板上で凝集することにより、電気抵抗の増加や断線等による不良を招く、といった問題がある。
【0012】
なお、銀ペーストによる引出し配線の信頼性を向上させた技術として、配線の一部をメッキ又は金属箔で形成する方法が知られている。しかしながら、かかる方法では、メッキ又は金属箔で形成された配線と外部装置との接続部分に銀ペーストを使用することに変わりないため、配線と外部装置の接続部分の強度をより高めることが困難である。
【0013】
また、耐久性に優れる導電性ペーストとして、銀粉、有機樹脂及び溶剤からなるものが知られている。しかしながら、かかる導電性ペーストを用いて得られる引出し電極は、電気抵抗率が1×10-4Ω・cm程度と、アルミニウムのバルクの電気抵抗率の約30倍であることから、電気抵抗の十分に低い配線とは言い難いものである。
【0014】
上述したように、純銀又は銀合金からなる導電性ペーストを用いて形成された引出し電極は、耐久性が十分であるとは言い難く、タッチパネル使用中に引出し電極が損傷し易いという問題がある。引出し電極が損傷すると、かかる電極の電気抵抗が大きくなって電圧降下が生じ、タッチパネルセンサーの位置検出の精度が低下する。また、ペンタッチ方式を採用する場合には、引出し電極の狭ピッチ化が必要であるが、一般に、導電性ペーストを用いる場合には、引出し電極を塗布法で形成するため、狭ピッチ化が難しい。
【0015】
このように、従来の、プラスチックフィルム上の透明導電層の表面に引出し電極用の金属層が設けられてなる透明導電性フィルムにあっては、各種のタッチパネルに採用した場合、透明導電層と金属層との密着性が不十分であるという問題点があったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−259203号公報
【特許文献2】米国特許第4838656号明細書
【特許文献3】特開平6−283261号公報
【特許文献4】特開2002−270863号公報
【特許文献5】米国特許第5679176号明細書
【特許文献6】特開平5−127153号公報
【特許文献7】特開平6−260265号公報
【特許文献8】特開平11−52408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ここにおいて、本発明はかかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、密着性に優れた引出し電極形成用の金属層を有するタッチパネル用透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そして、本発明は、そのような課題を有利に解決するために、透明フィルム基材の少なくとも一方の面に、直接又は一以上の機能層を介して透明導電層が設けられていると共に、引出し電極形成用の金属層が最外層として設けられてなるタッチパネル用透明導電性フィルムにおいて、前記透明導電層と前記金属層との間に、酸化アルミニウムを5重量%以下の割合にて含有する酸化亜鉛、又は酸化ガリウムを10重量%以下の割合にて含有する酸化亜鉛からなる密着層が設けられていることを特徴とするタッチパネル用透明導電性フィルムを、その要旨とするものである。
【0019】
なお、そのような本発明に従うタッチパネル用透明導電性フィルムの好ましい第一の態様においては、前記密着層の厚さが1〜20nmである。
【0020】
また、本発明に係るタッチパネル用透明導電性フィルムの好ましい第二の態様においては、前記金属層がAg又はAg合金にて構成されている。
【0021】
さらに、本発明のタッチパネル用透明導電性フィルムにおける好ましい第三の態様においては、前記金属層の厚さが50〜500nmである。
【0022】
加えて、本発明のタッチパネル用透明導電性フィルムにおける好ましい第四の態様においては、前記金属層が、Mo又はMo合金からなる保護金属層と、Al又はAl合金からなる主金属層と、Mo又はMo合金からなる保護金属層とが順次、積層形成されてなる三層構造を呈している。
【0023】
また、上記した、本発明のタッチパネル用透明導電性フィルムにおける好ましい第四の態様においては、有利には、前記主金属層の厚さが50〜500nmであり、また、前記保護金属層の厚さが10〜50nmである。
【0024】
さらに、上述した本発明に従うタッチパネル用透明導電性フィルムにおける好ましい各態様においては、前記透明導電層が酸化インジウムを主成分とするものである。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明に従うタッチパネル用透明導電性フィルムにあっては、最外層たる引出し電極形成用の金属層と、透明導電層との間に、酸化アルミニウム又は酸化ガリウムを各々、所定割合にて含有する酸化亜鉛からなる密着層が設けられているところから、金属層の密着性が十分に確保され、以て、優れた耐久性を発揮するのである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従うタッチパネル用透明導電性フィルムの一例を示す、厚さ方向の部分断面図である。
【図2】本発明に従うタッチパネル用透明導電性フィルムの他の一例を示す、厚さ方向の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を適宜、参酌しながら、本発明を具体的に説明する。
【0028】
図1には、本発明に従うタッチパネル用透明導電性フィルムの代表的な実施形態の一例が、また、図2には他の一例が、それぞれ、厚さ方向の断面において概略的に示されている。先ず、図1及び図2において、10は基材フィルムであり、かかる基材フィルム10は、透明性基材12と、二層のハードコート層14と、アンダーコート層16と、透明導電層18とから構成されている。
【0029】
ここで、透明性基材12は、一般に、透明性を有する各種のプラスチックにて構成されている。透明性基材12を構成するプラスチックとしては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等を、例示することが出来る。それらの中でも、特に、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が有利に用いられる。
【0030】
透明性基材12の厚さは、2〜300μmの範囲内にあることが好ましく、20〜200μmの範囲内にあることがより好ましい。この範囲内であれば、透明導電性フィルム全体の機械的強度を確保しつつ、フィルムの薄膜化が可能ならしめられるからである。
【0031】
また、透明性基材12の両面に設けられているハードコート層14は、無機物、有機物、又は無機物と有機物との混合物により構成されている。ハードコート層14を構成する無機物としては、LaF3 、CeF3 、Al23、TiO2 等を、また、有機物としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物等を、それぞれ、例示することが出来る。
【0032】
さらに、二層のハードコート層14における一方の層(図1及び図2においては上側の層)の表面に設けられているアンダーコート層16は、一般に、ハードコート層14を構成する材料より屈折率が低い材料にて構成されている。かかるハードコート層14を構成する材料としては、SiO2 等を挙げることが出来る。
【0033】
加えて、アンダーコート層16の表面には、透明導電層18が設けられている。透明導電層18は、通常、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム又はタングステン等の酸化物にて構成される。それらの中でも、酸化インジウムや、酸化錫を含有する酸化インジウム(ITO)等の酸化インジウムを主成分とするものが、特に有利に用いられる。
【0034】
なお、上述したハードコート層14、アンダーコート層16及び透明導電層18は、従来より公知の各種手法に従って、最終的に目的とする透明導電性フィルムの特性に応じた厚さとなるように、各々、設けられる。また、本発明において用いられる基材フィルム10としては、上述したハードコート層14、アンダーコート層16及び透明導電層18に加えて、他の機能層、例えば、フィルムの色相を調整するための色相調整層等を有するものであっても、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、使用することが出来る。
【0035】
そして、本発明に従うタッチパネル用透明導電性フィルム20(30)においては、透明導電層18と、引出し電極形成用の金属層22(26)との間に、酸化アルミニウム又は酸化ガリウムを所定の割合にて含有する酸化亜鉛からなる密着層24が設けられているところに、大きな特徴が存するのである。即ち、そのような所定の酸化亜鉛からなる密着層24が設けられていることによって、金属層22(26)の密着性が向上し、以て、本発明のタッチパネル用透明導電性フィルム20(30)は、優れた耐久性を発揮するのである。
【0036】
ここで、密着層24は、(A)酸化アルミニウムを含有する酸化亜鉛(以下、AZOともいう)であって、酸化アルミニウムの含有割合が5重量%以下、好ましくは2〜3重量%であるもの、又は、(B)酸化ガリウムを含有する酸化亜鉛(以下、GZOともいう)であって、酸化ガリウムの含有割合が10重量%以下、好ましくは4〜6重量%であるものにて、構成されている。酸化アルミニウムや酸化ガリウムの含有割合が多すぎても、後述する金属層22(26)の密着性において大きな変化はなく、経済性等の点で不利益となる。
【0037】
また、本発明において、密着層24の厚さは、1〜20nmの範囲内とされる。密着層24の厚さが1nm未満では、金属層22(26)の密着性を向上させることが出来ない恐れがあり、その一方、20nmを超える密着層24を設けても、金属層22(26)の密着性に格段の向上が認められず、不経済である。密着層24の厚さ、及び後述する金属層22(26)の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた透明導電性フィルム20(30)の断面観察によって測定されるものである。
【0038】
さらに、上述した密着層24の表面には、最外層として、引出し電極形成用の金属層22(26)が設けられている。
【0039】
かかる金属層22(26)を構成する材料としては、従来より公知の各種金属材料の何れをも用いることが可能であり、具体的には、Ag、Ag合金、Al、Al合金、Cu、Cu合金等を例示することが出来る。
【0040】
本発明における金属層を構成する材料として、Ag、Ag合金、Cu又はCu合金を用いる場合には、通常、図1に示される如き構成、より具体的には、透明導電層20の表面に、密着層24を介して、金属層22が設けられる。この場合、金属層22の厚さは、50〜500nmの範囲内、好ましくは100〜400nmの範囲内とされる。金属層22を構成するAg合金としては、Pd及びCuが添加されてなる合金(Ag−Pd−Cu)等を、また、金属層22を構成するCu合金としては、Caが添加された合金(Cu−Ca)やMgが添加された合金(Cu−Mg)等を、それぞれ例示することが出来る。
【0041】
一方、密着層の表面にAl又はAl合金を用いて金属層を形成すると、それらの層の界面が酸化し、導通しなくなる恐れがあるため、Al又はAl合金を用いる場合には、通常、図2に示される如き構成が採用される。具体的には、金属層26を、Mo又はMo合金からなる保護金属層26aと、Al又はAl合金からなる主金属層26bと、Mo又はMo合金からなる保護金属層26cとからなる三層構造とし、これら三層からなる金属層26が密着層24の表面に設けられる。
【0042】
保護金属層26a、26cを構成するMo合金としては、MoにNbが添加された合金(Mo−Nb)やTaが添加された合金(Mo−Ta)等を、例示することが出来る。保護金属層26a、26cは、同じ組成のMo又はMo合金を用いて形成可能であることは勿論のこと、両者を異なる組成とすること、例えば、26aをMoにて形成する一方、26cをMo合金にて形成することも、可能である。
【0043】
図2に示されるように、金属層26を三層構造とする場合、保護金属層26a、26cの厚さは10〜50nmの範囲内、好ましくは20〜40nmの範囲内であり、一方、主金属層26bの厚さは50〜500nmの範囲内、好ましくは100〜400nmの範囲内とされる。
【0044】
上述した密着層24、金属層22(保護金属層26a、26c及び主金属層26bからなる金属層26)の形成は、例えば、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法等のスパッタリング法、電子ビーム蒸着等の真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って、実施される。それらの中でも、得られる各層の耐久性に優れるという観点から、スパッタリング法が特に有利に用いられる。
【0045】
なお、スパッタリング法に従う密着層24等の形成は、バッチ方式、或いはロール・ツー・ロール方式の何れにおいても可能であるが、生産性に優れ、製造コストを低く抑えることが出来るロール・ツー・ロール方式が有利に採用される。
【0046】
そして、以上の如くして得られたタッチパネル用透明導電性フィルム20(30)にあっては、透明導電性18と金属層22(26)との間に、所定の酸化亜鉛合金からなる密着層24が設けられているところから、金属層22(26)の密着性が十分に確保されることとなる。従って、本発明に従うタッチパネル用透明導電性フィルム20(30)の金属層22(26)に対して、例えばエッチング処理等を施すことによって、金属層22(26)の一部を引出し電極とすると、かかる引出し電極は、優れた耐久性を発揮することとなるのである。そのようにして引出し電極が形成されたフィルム(引出し電極フィルム)は、特に、静電容量方式のタッチパネルに有利に用いられるのである。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上述の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0048】
なお、基材フィルムとして、図1及び図2に示す基材フィルム10と同様の構成を有するもの(透明性基材:厚さが125μmのPET フィルム、透明導電層はITO層)を用いた。また、以下の実施例及び比較例において得られた透明導電性フィルムについては、各々、以下に述べる手法によって密着層の厚さを測定し、特性を測定乃至は評価した。測定結果及び評価結果を、下記表1に示す。
【0049】
−密着層の厚さの測定−
株式会社日立ハイテクノロジーズ製の透過型電子顕微鏡(型番:H-9000UHR )を用いて、得られたフィルムの断面を観察し、測定した。
【0050】
−表面抵抗の測定−
MITSUBISHI CHEMICAL ANALYTECH 社製の表面抵抗計(商品名:Loresta-EP)を用いて、4探針法により測定した。
【0051】
−密着性の評価−
3M社製の粘着テープ(商品番号:610 )をフィルムに貼り付け、その後、粘着テープをフィルムから引き剥がすことにより、金属層の剥離の程度を目視で観察した。粘着テープを貼り付けた部分の金属層が全く剥がれない場合を○と、一部が剥がれる場合を△と、全てが剥がれる場合を×と、それぞれ評価した。
【0052】
−実施例1−
基材フィルムの透明導電層(ITO層)の表面に、酸化アルミニウムを3重量%(wt%)の割合において含有する酸化亜鉛(AZO)をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、密着層(AZO層)を設けた。具体的には、チャンバー内を5×10-4Pa以下となるまで真空排気した後に、Arガス(濃度:99.9%。以下、同じ。)を導入し、チャンバー内の圧力を0.2〜0.3Paとし、密着層(AZO層)の厚さが4nmとなるように実施した。
【0053】
引き続いて、チャンバー内を大気開放することなく、密着層(AZO層)の表面に、銀合金(Ag合金)をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚さが150nmの金属層(Ag合金層)を形成した。尚、スパッタガスとしてはArガスを使用し、チャンバー内の圧力は0.2〜0.3Paとした。
【0054】
−実施例2−
密着層(AZO層)の厚さが2nmとなるように条件を変更した以外は実施例1と同様の条件に従い、密着層(AZO層)を形成し、更にその表面に金属層(Ag合金層)を形成した。
【0055】
−実施例3−
密着層(AZO層)の厚さが1.3nmとなるように条件を変更した以外は実施例1と同様の条件に従い、密着層(AZO層)を形成し、更にその表面に金属層(Ag合金層)を形成した。
【0056】
−実施例4−
密着層(AZO層)の厚さが0.5nmとなるように条件を変更した以外は実施例1と同様の条件に従い、密着層(AZO層)を形成し、更にその表面に金属層(Ag合金層)を形成した。
【0057】
−実施例5−
密着層(AZO層)の厚さが25nmとなるように条件を変更した以外は実施例1と同様の条件に従い、密着層(AZO層)を形成し、更にその表面に金属層(Ag合金層)を形成した。
【0058】
−実施例6−
密着層(AZO層)の厚さが15nmとなるように条件を変更した以外は実施例1と同様の条件に従い、密着層(AZO層)を形成し、更にその表面に金属層(Ag合金層)を形成した。
【0059】
−実施例7−
密着層(AZO層)の厚さが10nmとなるように条件を変更した以外は実施例1と同様の条件に従い、密着層(AZO層)を形成し、更にその表面に金属層(Ag合金層)を形成した。
【0060】
−実施例8−
基材フィルムの透明導電層(ITO層)の表面に、酸化ガリウムを5重量%(wt%)の割合において含有する酸化亜鉛(GZO)をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、密着層(GZO層)を設けた。具体的には、チャンバー内を5×10-4Pa以下となるまで真空排気した後に、Arガスを導入し、チャンバー内の圧力を0.2〜0.3Paとし、密着層(GZO層)の厚さが4nmとなるように実施した。
【0061】
引き続いて、チャンバー内を大気開放することなく、密着層(GZO層)の表面に、銀合金(Ag合金)をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚さが160nmの金属層(Ag合金層)を形成した。尚、スパッタガスとしてはArガスを使用し、チャンバー内の圧力は0.2〜0.3Paとした。
【0062】
−実施例9−
密着層(GZO層)の厚さが2nmとなるように条件を変更した以外は実施例8と同様の条件に従い、密着層(GZO層)を形成し、更にその表面に金属層(Ag合金層)を形成した。
【0063】
−実施例10−
密着層(GZO層)の厚さが1.3nmとなるように条件を変更した以外は実施例8と同様の条件に従い、密着層(GZO層)を形成し、更にその表面に金属層(Ag合金層)を形成した。
【0064】
−実施例11−
基材フィルムの透明導電層(ITO層)の表面に、酸化アルミニウムを3重量%(wt%)の割合において含有する酸化亜鉛(AZO)をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、密着層(AZO層)を設けた。具体的には、チャンバー内を5×10-4Pa以下となるまで真空排気した後に、Arガスを導入し、チャンバー内の圧力を0.2〜0.3Paとし、密着層(AZO層)の厚さが4nmとなるように実施した。
【0065】
引き続いて、チャンバー内を大気開放することなく、密着層(AZO層)の表面に、Mo合金をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚さが30nmの保護金属層(Mo合金層)を形成した。尚、スパッタガスとしてはArガスを使用し、チャンバー内の圧力は0.2〜0.3Paとした。
【0066】
さらに、チャンバー内を大気開放することなく、保護金属層(Mo合金層)の表面に、Al合金をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚さが160nmの主金属層(Al合金層)を形成した。尚、スパッタガスとしてはArガスを使用し、チャンバー内の圧力は0.2〜0.3Paとした。
【0067】
加えて、チャンバー内を大気開放することなく、主金属層(Al合金層)の表面に、Mo合金をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚さが30nmの保護金属層(Mo合金層)を形成した。尚、スパッタガスとしてはArガスを使用し、チャンバー内の圧力は0.2〜0.3Paとした。
【0068】
−実施例12−
密着層(AZO層)の厚さが2nmとなるように条件を変更した以外は実施例11と同様の条件に従い、密着層(AZO層)、保護金属層(Mo合金層)、主金属層(Al合金層)及び保護金属層(Mo合金層)を、順次、積層形成した。
【0069】
−実施例13−
密着層(AZO層)の厚さが1.3nmとなるように条件を変更した以外は実施例11と同様の条件に従い、密着層(AZO層)、保護金属層(Mo合金層)、主金属層(Al合金層)及び保護金属層(Mo合金層)を、順次、積層形成した。
【0070】
−実施例14−
基材フィルムの透明導電層(ITO層)の表面に、酸化ガリウムを5重量%(wt%)の割合において含有する酸化亜鉛(GZO)をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、密着層(GZO層)を設けた。具体的には、チャンバー内を5×10-4Pa以下となるまで真空排気した後に、Arガスを導入し、チャンバー内の圧力を0.2〜0.3Paとし、密着層(GZO層)の厚さが4nmとなるように実施した。
【0071】
引き続いて、チャンバー内を大気開放することなく、密着層(GZO層)の表面に、Mo合金をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚さが30nmの保護金属層(Mo合金層)を形成した。尚、スパッタガスとしてはArガスを使用し、チャンバー内の圧力は0.2〜0.3Paとした。
【0072】
さらに、チャンバー内を大気開放することなく、保護金属層(Mo合金層)の表面に、Al合金をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚さが160nmの主金属層(Al合金層)を形成した。尚、スパッタガスとしてはArガスを使用し、チャンバー内の圧力は0.2〜0.3Paとした。
【0073】
加えて、チャンバー内を大気開放することなく、主金属層(Al合金層)の表面に、Mo合金をターゲット材料として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚さが30nmの保護金属層(Mo合金層)を形成した。尚、スパッタガスとしてはArガスを使用し、チャンバー内の圧力は0.2〜0.3Paとした。
【0074】
−実施例15−
密着層(GZO層)の厚さが2nmとなるように条件を変更した以外は実施例14と同様の条件に従い、密着層(GZO層)、保護金属層(Mo合金層)、主金属層(Al合金層)及び保護金属層(Mo合金層)を、順次、積層形成した。
【0075】
−実施例16−
密着層(GZO層)の厚さが1.3nmとなるように条件を変更した以外は実施例14と同様の条件に従い、密着層(GZO層)、保護金属層(Mo合金層)、主金属層(Al合金層)及び保護金属層(Mo合金層)を、順次、積層形成した。
【0076】
−比較例1−
密着層(AZO層)を形成しなかった点以外は実施例1と同様の条件に従い、透明導電性フィルムを作製した。
【0077】
−比較例2−
密着層を形成する際に、酸化アルミニウムを3重量%(wt%)の割合において含有する酸化亜鉛(AZO)に代えて、酸化錫を5重量%の割合において含有する酸化インジウムをターゲット材料として用いた以外は実施例1と同様の条件に従い、透明導電性フィルムを作製した。
【0078】
−比較例3−
密着層(AZO層)を形成しなかった点以外は実施例11と同様の条件に従い、透明導電性フィルムを作製した。
【0079】
−比較例4−
密着層を形成する際に、酸化アルミニウムを3重量%(wt%)の割合において含有する酸化亜鉛(AZO)に代えて、酸化錫を5重量%の割合において含有する酸化インジウムをターゲット材料として用いた以外は実施例11と同様の条件に従い、透明導電性フィルムを作製した。
【0080】
【表1】

【0081】
かかる表1の結果からも明らかなように、透明導電層(ITO層)と金属層(Ag合金層、又は、Mo合金層/Al合金層/Mo合金層)との間に、密着層(AZO層、GZO層)が設けられてなる本発明の透明導電性フィルムにあっては、金属層の密着性が良好であることが認められる。特に、密着層の厚さが1.3nm以上の場合に、より優れた密着性を発揮することが認められる。これに対して、密着層を設けない場合(比較例1、3)や、透明導電層と金属層との間に本発明の範囲外に係る材料からなる層を設けても、金属層の密着性の向上を図り得ないことが認められる。
【符号の説明】
【0082】
10 基材フィルム 12 透明性基材
14 ハードコート層 16 アンダーコート層
18 透明導電層 20 タッチパネル用透明導電性フィルム
22 金属層 24 密着層
26 金属層 26a 保護金属層
26b 主金属層 26c 保護金属層
30 タッチパネル用透明導電性フィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材の少なくとも一方の面に、直接又は一以上の機能層を介して透明導電層が設けられていると共に、引出し電極形成用の金属層が最外層として設けられてなるタッチパネル用透明導電性フィルムにおいて、
前記透明導電層と前記金属層との間に、酸化アルミニウムを5重量%以下の割合にて含有する酸化亜鉛、又は酸化ガリウムを10重量%以下の割合にて含有する酸化亜鉛からなる密着層が設けられていることを特徴とするタッチパネル用透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記密着層の厚さが1〜20nmである請求項1に記載のタッチパネル用透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記金属層がAg又はAg合金にて構成されている請求項1又は請求項2に記載のタッチパネル用透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記金属層の厚さが50〜500nmである請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のタッチパネル用透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記金属層が、Mo又はMo合金からなる保護金属層と、Al又はAl合金からなる主金属層と、Mo又はMo合金からなる保護金属層とが順次、積層形成されてなる三層構造を呈している請求項1又は請求項2に記載のタッチパネル用透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記主金属層の厚さが50〜500nmである請求項5に記載のタッチパネル用透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記保護金属層の厚さが10〜50nmである請求項5又は請求項6に記載のタッチパネル用透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記透明導電層が酸化インジウムを主成分とするものである請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のタッチパネル用透明導電性フィルム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−53594(P2012−53594A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194692(P2010−194692)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(591158335)積水ナノコートテクノロジー株式会社 (20)
【Fターム(参考)】