説明

タッチパネル表示器のタッチ位置検出装置

【課題】温度特性の影響を受けずに射影変換が行えるようにする。
【解決手段】射影変換Tを温度に対して線形に変化する荷重センサS1〜S4の出力電圧(もしくはアンプA1〜A4の出力電圧)に基づいて求める。t℃において任意の4箇所(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を所定の荷重F1で押したときの力の比から求められる検出位置(X’i,Y’i)は、荷重センサS1〜S4の出力に相当する出力電圧に基づいて次式のように求められる(ただし、i=1〜4)。X’i=(Fi1+Fi2)/(Fi1+Fi2+Fi3+Fi4)、Y’i=(Fi2+Fi3)/(Fi1+Fi2+Fi3+Fi4)。そして、(X’1,Y’1),(X’2,Y’2),(X’3,Y’3),(X’4,Y’4)を(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)へ変換する射影変換Tを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばナビゲーション装置の表示画面などに使用されているタッチパネル表示器のタッチ位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネル表示器において、タッチ面を構成するタッチパッド(オーナメント)に荷重センサを設置し、ユーザがタッチ面を触ったときに加えられる荷重を荷重センサで検出することで、ユーザが触った位置(以下、タッチ位置という)の検出を行う接触感知表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような接触感知表示装置では、タッチパッドの四隅に荷重センサを設置し、四隅に設置した荷重センサそれぞれで荷重を検出すると共に、そのときの荷重に応じた各荷重センサの出力に基づいてタッチ位置を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−116220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したタッチパッドの四隅に荷重センサを設置した形態とされる場合、タッチパネル表示器のタッチ位置検出装置では、各荷重センサに印加される荷重を電圧に変換した出力電圧を発生させ、その出力電圧の和を求めることにより、タッチ位置を検出することができる。
【0006】
例えば、荷重センサに加えられる荷重に対する出力電圧の特性は、図15に示されるような一次直線として表され、荷重に対して出力電圧が増加する関係となる。この特性を用いて、タッチパッドの四隅のうち一つの位置を座標(0,0)と見立てたXY座標平面を想定し、各荷重センサの出力の比率に基づいてタッチ位置をXY座標として把握することができる。タッチパッドの四隅の座標をそれぞれ左下隅(0,0)、右下隅(1,0)、左上隅(0,1)、右上隅(1,1)とし、これら各隅に配置した各荷重センサにて検出される荷重をF1〜F4とすると、タッチパッドの任意の位置を押下したときのタッチ位置のXY座標は、((F3+F4)/F,(F1+F4)/F)で表される。ただし、F=F1+F2+F3+F4である。
【0007】
このように、X座標については荷重の総和Fのx成分を荷重の総和Fで割った値、Y座標についてはFのy成分を荷重の総和Fで割った値となり、荷重F1〜F4に基づいて、タッチパッドのタッチ位置を計算により求めることができる(以下、この計算により求められるタッチ位置を計算点と呼ぶ)。
【0008】
しかしながら、例えば各荷重センサの取り付け位置に位置ズレがあると、計算点と実際のタッチ場所とがずれる。このため、例えば四隅を順番に所定の荷重F0で押したときの計算点を四隅それぞれと一致させるように、射影変換を行うことにより計算点を補正して、四隅のXY座標に合わせ込む処理を行う必要がある。
【0009】
ところが、本発明者らの検討により、四隅を順番に所定の荷重F0で押したときに、計算点のXY座標は、図9に示す計算点の温度依存性に示されるように、温度と共に移動することが判った。
【0010】
この図から判るように、計算点が温度に応じて直線的に移動していない。このため、ある温度で四隅を押したときの計算点から四隅への射影変換を精度良く求めるためには、例えば1℃毎にこの計算点を求めなければならない。また、個体のバラツキを考慮すると、タッチパネル個々において使用する全温度範囲で1℃毎に計算点を予め測定、計算して記憶しておかなければならない。このような作業は負担が大きいため、より効率よく温度特性の影響を受けずに射影変換が行えるようにすることが望まれる。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、温度特性の影響を受けずに射影変換を行うことができるタッチパネル表示器のタッチ位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明では、第1温度t1で、タッチパネル上の凸四角形をなす座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)の4点それぞれに順番に所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧((A11(t1),A21(t1),A31(t1),A41(t1))、(A12(t1),A22(t1),A32(t1),A42(t1))、(A13(t1),A23(t1),A33(t1),A43(t1)),(A14(t1),A24(t1),A34(t1),A44(t1))と、第2温度t2で、前記4点(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)それぞれに順番に前記所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧((A11(t2),A21(t2),A31(t2),A41(t2))、(A12(t2),A22(t2),A32(t2),A42(t2))、(A13(t2),A23(t2),A33(t2),A43(t2))、(A14(t2),A24(t2),A34(t2),A44(t2))とを記憶装置(20)に記憶する。
【0013】
また、第1温度t1で、タッチパネル上の凸四角形をなす座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)の4点それぞれに順番に所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧,第2温度t2で、前記4点(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)それぞれに順番に前記所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧,第3温度t3,および,温度tでの印加される荷重Fに対する出力電圧Vの関係より,第3温度t3でタッチパネル上の(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)の4点それぞれに順番に所定の荷重(F1)を加えたときの計算点(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4, Y’4)と当該4点(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4,Y’4)から(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)への射影変換Tを演算する。
【0014】
そして、前記温度t3で前記タッチパネルの任意の点に荷重を印加したときに得られるそれぞれの前記歪みセンサの出力電圧V1〜Vmから
Fi=(Vi−bi(t3))/ai(t3)
の関係式を用いて、
X’=(F3+F4)/(F1+F2+F3+F4)
Y’=(F1+F4)/(F1+F2+F3+F4)
として計算した(X’, Y’)を前記射影変換Tによって変換した位置を検出位置とすることを特徴としている。
【0015】
このように、射影変換Tについて、温度に対して線形に変化する歪みセンサ(S1〜S4)の出力に対応する出力電圧(例えばアンプ(A1〜A4)の出力電圧)に基づいて求めるようにしている。具体的には、第3温度t3の(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4, Y’4)と当該4点(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4,Y’4)から(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)への射影変換Tを求める際に、第1温度t1,第2温度t2で凸四角形頂点を押したときのセンサの出力電圧から第3温度t3での凸四角形頂点を押したときのセンサ出力電圧を補間演算している。このため、温度特性の影響を受けない射影変換を行うことが可能となる。
【0016】
例えば、請求項2に記載したように、第1温度t1で、タッチパネル上の凸四角形をなす座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)の4点それぞれに順番に所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサに出力に相当する出力電圧((A11(t1),A21(t1),A31(t1),A41(t1))、(A12(t1),A22(t1),A32(t1),A42(t1))、(A13(t1),A23(t1),A33(t1),A43(t1)),(A14(t1),A24(t1),A34(t1),A44(t1))と、第2温度t2で、前記4点(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)それぞれに順番に前記所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧((A11(t2),A21(t2),A31(t2),A41(t2))、(A12(t2),A22(t2),A32(t2),A42(t2))、(A13(t2),A23(t2),A33(t2),A43(t2))、(A14(t2),A24(t2),A34(t2),A44(t2))とを記憶装置(20)に記憶する。
【0017】
また、タッチパネルに備えられた温度検出装置から出力される温度t3から、後述する数式にて表される4点(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4, Y’4)、および、当該4点(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4,Y’4)から(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)への射影変換Tを演算する。
【0018】
そして、温度t3でタッチパネルの任意の点に荷重を印加したときに得られるそれぞれの歪みセンサの出力電圧V1〜Vmから
Fi=(Vi−bi(t3))/ai(t3)
の関係式を用いて、
X’=(F3+F4)/(F1+F2+F3+F4)
Y’=(F1+F4)/(F1+F2+F3+F4)
として計算した(X’, Y’)を射影変換Tによって変換した位置を検出位置とすることを特徴としている。
【0019】
ただし、
X’1={F31(t3)+F41(t3)}/{F11(t3)+F21(t3)+F31(t3)+F41(t3)}
Y’1={F11(t3)+F41(t3)}/{F11(t3)+F21(t3)+F31(t3)+F41(t3)}
X’2={F32(t3)+F42(t3)}/{F12(t3)+F22(t3)+F32(t3)+F42(t3)}
Y’2={F12(t3)+F42(t3)}/{F12(t3)+F22(t3)+F32(t3)+F42(t3)}
X’3={F33(t3)+F43(t3)}/{F13(t3)+F23(t3)+F33(t3)+F43(t3)}
Y’3={F13(t3)+F43(t3)}/{F13(t3)+F23(t3)+F33(t3)+F43(t3)}
X’4={F34(t3)+F44(t3)}/{F14(t3)+F24(t3)+F34(t3)+F44(t3)}
Y’4={F14(t3)+F44(t3)}/{F14(t3)+F24(t3)+F34(t3)+F44(t3)}
また、i=1〜4として、Fi1(t3)、Fi1(t3)、Fi1(t3)、Fi1(t3)は、次式で表される。
【0020】
Fi1(t3)=〔[Ai1(t1)+{Ai1(t2)−Ai1(t1)}/(t2−t1)×(t3−t1)]−bi(t3)〕/ai(t3)
Fi2(t3)=〔[Ai2(t1)+{Ai2(t2)−Ai2(t1)}/(t2−t1)×(t3−t1)]−bi(t3)〕/ai(t3)
Fi3(t3)=〔[Ai3(t1)+{Ai3(t2)−Ai3(t1)}/(t2−t1)×(t3−t1))−bi(t3)〕/ai(t3)
Fi4(t3)=〔[Ai4(t1)+{Ai4(t2)−Ai4(t1)}/(t2−t1)×(t3−t1)]−bi(t3)〕/ai(t3)
このように、射影変換Tについて、温度に対して線形に変化する歪みセンサ(S1〜S4)の出力に対応する出力電圧(例えばアンプ(A1〜A4)の出力電圧)に基づいて求めるようにしている。このため、温度特性の影響を受けない射影変換を行うことが可能となる。
【0021】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるタッチパネル表示器の斜視図である。
【図2】図1に示すタッチパネル表示器のタッチ位置検出装置の回路図である。
【図3】サーミスタ10aの電位とサーミスタ10aの検出温度との関係を示した図である。
【図4】荷重位置を示すX,Y座標のタッチパッド上の位置を示した図である。
【図5(a)】荷重と出力電圧との関係を示した特性図である。
【図5(b)】荷重と出力電圧との関係を示した特性図である。
【図5(c)】荷重と出力電圧との関係を示した特性図である。
【図5(d)】荷重と出力電圧との関係を示した特性図である。
【図6】温度と傾きaiの関係を示したマップである。
【図7】温度と切片biの関係を示したマップである。
【図8】射影変換のイメージを示した模式図である。
【図9】計算点の温度依存性を示した図である。
【図10】タッチパッド2の左下隅(座標(0,0)の位置)を所定の荷重F0で押したときの各荷重センサS1〜S4に対応するアンプA1〜A4の出力電圧を示した図である。
【図11】本発明の第2実施形態で説明するVi=ai×Fi+biの変化の様子を示すマップである。
【図12】温度と傾きaiの関係を示したマップである。
【図13】温度と切片biの関係を示したマップである。
【図14】本発明の第3実施形態にかかるタッチパネル表示器のタッチ位置検出回路の回路図である。
【図15】荷重センサに加えられる荷重に対する出力電圧の特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図に基づいて説明する。図1は、本実施形態にかかるタッチパネル表示器の斜視図である。また、図2は、図1に示すタッチパネル表示器のタッチ位置検出装置の回路図である。以下、これらの図を参照して、タッチパネル表示器およびそのタッチ位置検出装置について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態にかかるタッチパネル表示器は、表示画面が備えられるベース1の上に、タッチパッド2を配置することで構成されている。ベース1およびタッチパッド2は、例えば長方形とされており、タッチパッド2を透明部材等で構成することで、ベース1に備えられた表示画面がタッチパッド2を透過して視認できるように構成される。そして、タッチパッド2とベース1の間におけるタッチパッド2の四隅(4箇所)には、荷重センサS1〜S4が備えられている。このため、ユーザがタッチパッド2の所望位置をタッチした時に、荷重センサS1〜S4にて荷重を検出できるようになっている。荷重センサS1からS4は、タッチパッド2、ベース1それぞれに対して、ねじで締め付けられる、あるいは、接着剤で貼り付けられるなどの方法で固定されている。
【0025】
図2に示すように、タッチ位置検出装置は、荷重センサS1〜S4と、アンプA1〜A4と温度検出部10とマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)20とを有した構成とされている。
【0026】
荷重センサS1〜S4は、例えば半導体式の歪みゲージ(ゲージ抵抗)などの歪みセンサで構成される。各荷重センサS1〜S4は、例えば図2に示すように、ゲージ抵抗をホイートストンブリッジ状に配置した構成とされ、ホイートストンブリッジに対して5V電源等から駆動電圧Vccが印加されることで、ホイートストンブリッジの2つの中間点の電圧(以下、中間電圧という)を出力として発生させる。すなわち、中間電圧が荷重センサS1〜S4に加わる荷重に応じて変化するため、この中間電圧を出力として発生させている。例えば、一方の中間電位は、上流側のゲージ抵抗が引張応力を受けると共に下流側のゲージ抵抗が圧縮応力を受けることで変化し、他方の中間電圧は、上流側のゲージ抵抗が圧縮応力を受けると共に下流側のゲージ抵抗が引張応力を受けることで変化する。このため、2つの中間電圧を出力することでそれらの差、すなわち、荷重に応じた出力をアンプA1〜A4に入力させている。
【0027】
アンプA1〜A4は、各荷重センサS1〜S4の2つの中間電圧を入力し、2つの中間電圧の電位差を差動増幅した出力を発生させる。より詳しくは、アンプA1〜A4では、予め記憶させられたゲイン調整値およびオフセット補正値(ゼロ点補正値)のデータに基づいて、各荷重センサS1〜S4の2つの中間電圧のゲイン調整およびオフセット補正を行い、それらを行ったのち出力電圧としてマイコン20に出力している。
【0028】
温度検出部10は、タッチパネル表示器の温度、つまり荷重センサS1〜S4の温度に応じた検出信号をマイコン20に伝えるものである。温度検出部10は、例えばサーミスタ10aと抵抗10bにて構成され、サーミスタ10aの抵抗値が温度に応じて変化することから、サーミスタ10aと抵抗10bの間の電位を温度検出信号としてマイコン20に入力することで、マイコン20に荷重センサS1〜S4の温度を伝えている。つまり、サーミスタ10aの電位から温度に変換する変換マップ(図3のようなサーミスタ10aの電位が低いほど検出温度が高い値となるような相関を有するマップ)をマイコン20に持たせておけば、サーミスタ10aの電位から温度をマイコンが認識できる。
【0029】
マイコン20は、各荷重センサS1〜S4の出力をアンプA1〜A4で差動増幅した出力電圧および温度検出部10の温度検出信号に基づいて、タッチ位置の検出を行う。このマイコン20には、後述するようなタッチパッド2をベース1に組付けた後の温度特性の変化に応じた荷重と出力電圧との関係を表したマップ(もしくは関係式)が記憶されている。このため、マイコン20は、温度検出部10の温度検出信号に基づいて荷重センサS1〜S4の温度を検出し、予め記憶しておいたマップなどに基づいて、検出した温度におけるアンプA1〜A4の出力電圧と対応するタッチ位置を求めている。
【0030】
このような構成のタッチ位置検出装置では、上述したように、アンプA1〜A4のゲイン調整値やオフセット補正値を求め、それを予めアンプA1〜A4にデータとして記憶しておくことで、各荷重センサS1〜S4の2つの中間電圧のゲイン調整およびオフセット補正を行っている。また、タッチ位置検出装置では、タッチパッド2をベース1に組付けた後の温度特性の変化に応じた荷重と出力電圧との関係を表したマップ(もしくは関係式)をマイコン20に記憶しておき、その記憶したマップなどに基づいて、タッチ位置の検出を行うようにしている。これらの具体的な手法について、以下に説明する。
【0031】
まず、上記の説明に先立ち、タッチパネル表示器におけるタッチ位置検出装置での基本的なタッチ位置検出手法について説明する。
タッチ位置検出装置では、荷重センサS1〜S4の出力する2つの中間電圧をアンプA1〜A4で差動増幅し、それをセンサ出力に相当する出力電圧として発生させている。ここで、タッチパッド2の所定位置をユーザがタッチした場合に各荷重センサS1〜S4の出力に応じて発生させられた出力電圧A〜Dが、α[V]、β[V]、γ[V]、δ[V]であったとする。いま、一般に荷重センサS1〜S4に加えられた荷重をF1[N]〜F4[N]とすると、F1とα、F2とβ、F3とγ、F4とδの関係はそれぞれ1次関数で表される。
【0032】
(数1) α = a1×F1+b1
(数2) β = a2×F2+b2
(数3) γ = a3×F3+b3
(数4) δ = a4×F4+b4
ただし、a1〜a4、b1〜b4は温度によって変化する。
【0033】
さらに、例えば図1中におけるタッチパッド2の左下の荷重センサS2の配置場所をXY座標の原点(0,0)とし、X座標、Y座標を図4のように想定した場合に、タッチ位置のXY座標は、数式5のように表される。
【0034】
(数5) ((F3+F4)/F,(F1+F4)/F)
ただし、Fは、数式6のように、各荷重F1〜F4の総和を意味している。
【0035】
(数6) F=F1+F2+F3+F4
数式1〜4をそれぞれF1,F2,F3,F4について解いた式を数式5に代入することによって、タッチ位置のXY座標がα,β,γ,δ,a1〜a4,b1〜b4を用いて表される。
【0036】
以上のことより、ある温度における上の数式1〜4の一次関数がわかっていれば、数式5、6により、タッチ位置を検出することが可能となる。このように、出力電圧A〜Dに基づいて、タッチ位置の検出を行っているため、タッチ位置を検出する上で、出力電圧A〜Dを増幅するアンプA1〜A4でのゲイン調整やオフセット補正が的確に行えるようにすることは重要である。
【0037】
続いて、アンプA1〜A4のゲイン調整やオフセット補正の手法やタッチパッド2をベース1に組付けた後の温度特性の変化に応じた荷重F1〜F4の演算手法について説明する。
【0038】
上述したように、タッチパッド2をベース1に組付ける際に、タッチパッド2に対して締め付け力などが作用し、タッチパッド2がタッチされていないにも拘わらず、荷重センサS1〜S4に荷重が掛かった状態となる。この荷重が組付け歪みとなって、組付け歪みに基づく特性変動が発生する。また、タッチパッド2やベース1が温度によって伸縮することによって、タッチパッド2がタッチされていないにも拘わらず、荷重センサS1〜S4に掛かった荷重は温度が変化することによって変化する。これを組付け後温度歪みと呼ぶことにする。温度変化に伴って、この組付け後温度歪みも変化する。すなわち、これら組付け歪みや組付け後温度歪みにより、タッチパッド2に印加される荷重の大きさに対する出力電圧の関係、換言すればセンサ特性がセンサ単体でタッチパッド2に組み付けられる前の特性からずれてしまう。このセンサ特性のずれについて、図5(a)から図5(d)に示す荷重と出力電圧との関係を示した特性図を参照して説明する。
【0039】
まず、図5(a)に示すように、タッチパッド2をベース1に組付ける前のSi(i=1〜4)の荷重−アンプAi(i=1〜4)の出力電圧(以下、F−Vという)特性は、XY座標軸を基準とした特性として表される。そして、室温(ここでは25℃としている)時において荷重が0[N]のときに出力電圧が1.5[V]となり、所定の荷重F0[N]を加えたときに出力電圧が3.5[V]となるような、アンプAi(i=1〜4)のゲイン調整値やオフセット補正値のデータを求める。ゲイン調整やオフセット補正については、外部に備えられた調整装置(図示せず)によって行い、各荷重センサS1〜S4に対して個々に無荷重のときと荷重F0を掛けたとき、それぞれの出力電圧A〜Dをモニタすることで行っている。このときのゲイン調整値やオフセット補正値は、室温において、荷重センサS1〜S4の製造誤差等の影響を無くすことができる値となる。
【0040】
次に、高温(ここでは85℃としている)時において荷重が0[N]のときのアンプAi(i=1〜4)の出力電圧Vi2と、所定の荷重がF0[N]のときのアンプAi(i=1〜4)の出力電圧Vi3を測定しておく。タッチパッド2をベース1に組付ける前における高温時のF−V特性はFi=0[N]、Vi=Vi2[V]とFi=F0[N]、Vi=Vi3[V]を通る。
【0041】
次に、タッチパッド2を組付けた後、室温(25℃)時においてタッチパッドへの荷重が0[N]のときのアンプAi(i=1〜4)の出力電圧Vi4[V]を測定する。このとき、タッチパッド2を組付けるための締め付け力により、タッチパッド2がタッチされていない状態であっても締め付け力によって荷重センサS1〜S4に荷重が掛かった状態となる。
【0042】
このため、組付け後室温時にセンサSiにかかるタッチ荷重FiとアンプAiからの出力電圧ViのF−V特性は、図5(b)に示すように、組付け後室温時のF−V特性のXY座標軸(図中で一点鎖線で示された軸)で、組付け前のセンサSiのF−V特性を見た状態となる。組付け後室温時のF−V特性のXY軸は、組付け前のF−V特性のXY座標軸(図5(b)中の実線で示された軸)よりも、組付けによる歪み分、紙面右側(X軸方向)にずれた状態となる。
【0043】
続いて、タッチパッド2を組付けた後、高温(85℃)時において荷重が0[N]のときのアンプAi(i=1〜4)の出力電圧Vi5[V]を測定する。図5(c)に示すように、組付け後高温時のF−V特性のXY軸を、組付け前高温時のF−V特性のVi=Vi5[V]のところを通るように紙面右側(X軸方向)にずらした状態とする。すると、組付け後高温時のSiにかかるタッチ荷重FiとアンプAiの出力電圧の特性は、この組付け後高温時のV−F特性のXY軸から組付け前高温時のF−V特性を見た特性となる。
【0044】
これまでの測定により、タッチパッド2をベース1に組付けた後にSiにかかるタッチ荷重Fi[N]とアンプAiからの出力電圧Vi[V]は、室温のときには、Fi=0[N]でVi=Vi4[V]を通り、傾きが(3.5−1.5)/F0[V/N]である直線になり、高温のときには、Fi=0[N]でVi=Vi5[N]をとおり、傾きが(Vi3−Vi2)/F0[V/N]である直線になる(図5(d))。
【0045】
すなわち、アンプA1〜A4の出力電圧ViがセンサSiへのタッチ荷重Fiを変数として、傾きai、切片(ゼロ点)biの次の数式7のような一次関数にて表せ、かつ、傾きaiおよび切片biが荷重センサS1〜S4の温度に基づいて変化するという関係がある。なお、添え字のiは、荷重センサS1〜S4やアンプA1〜A4のいずれかと対応した値であることを総括的に表した記号であって1〜4のいずれかの数字を表しており、ViはV1〜V4、aiはa1〜a4、biはb1〜b4を表している。以下の説明においても、添え字のiは、同様の意味を表しているものとする。
【0046】
(数7) Vi=aiFi+bi
そして、上記のようにタッチパッド2の組付け後のF−V特性の変化が温度によって生じることを踏まえて、温度検出部10にて検出される荷重センサS1〜S4の温度に基づいて、その温度に応じた傾きaiおよび切片biを計算することができる。このため、次式で表すような数式7をFiに基づく式に変換した数式8に対して傾きaiおよび切片biと出力電圧Viを代入すれば、各荷重センサS1〜S4に加えられている荷重を正確に検出することができる。
【0047】
(数8) Fi=(Vi−bi)/ai
傾きaiは室温で(3.5−1.5)/F0[V/N]、高温で(Vi3−Vi2)/F0[V/N]になるが、その間の温度で、aiが温度に対して直線的に変わっていくとすると、傾きaiと温度の関係は、図6のようになる。また、切片biが室温でVi4[V]、高温でVi5[V]になるが、その間の温度で、biが温度に対して直線的に変わっていくとすると、切片biと温度の関係は図7のようになる。
【0048】
上記のような知見に基づいて、アンプA1〜A4のゲイン調整やオフセット調整、および、タッチパッド2をベース1に組付けた後の温度特性の変化に応じた荷重F1〜F4の演算の手順を次に記述する。
【0049】
最初に、荷重センサS1〜S4をベース1に設置し、荷重センサS1〜S4に対してアンプA1〜A4をそれぞれ接続する。また、調整装置をアンプA1〜A4およびマイコン20に接続しておき、アンプA1〜A4のゲイン調整値やオフセット調整値の設定が行えるようにすると共に出力電圧V1〜V4がモニタできるようにし、かつ、マイコン20に対して荷重Fの演算に用いるデータの記憶が行えるようにしておく。
【0050】
次に、アンプA1〜A4それぞれのゲイン調整値、オフセット調整値をG10、Vz10に設定する。これらゲイン調整値、オフセット調整値G10、Vz10は、調整初期の値として任意に定められる値である。
【0051】
そして、室温(25℃)において、各荷重センサS1〜S4に対して荷重を0とした状態(以下、無荷重という)でのアンプA1〜A4の出力電圧Vi0(V10、V20、V30、V40)を調整装置にてモニタする。また、室温(25℃)において、各荷重センサS1〜S4に所定の荷重F0を加えたときの各アンプA1〜A4の出力電圧Vi1(V11、V21、V31、V41)を調整装置にて計測する。そして、調整装置にて、このときの各出力電圧Vi0(V10〜V40)、Vi1(V11〜V41)を記憶しておく。
【0052】
この後、アンプA1〜A4のゲイン調整値、オフセット調整値を変化させて、無荷重のときの出力電圧Vi0が1.5[V]となり、各荷重センサS1〜S4に対して所定の荷重F0を加えたときの出力電圧Vi1が3.5[V]となるようにする。そして、調整装置にて、このときのこれらゲイン調整値、オフセット調整値をGi1、Vzi1として記憶しておく。
【0053】
続いて、高温(85℃)において、各荷重センサS1〜S4に対して無荷重の状態でのアンプA1〜A4の出力電圧Vi2(V12、V22、V32、V42)を調整装置にてモニタする。また、高温(85℃)において、各荷重センサS1〜S4に所定の荷重F0を加えたときの各アンプA1〜A4の出力電圧Vi3(V13、V23、V33、V43)を調整装置にて計測する。そして、調整装置にて、このときの各出力電圧Vi2(V12〜V42)、および、Vi3(V13〜V43)を記憶しておく。
【0054】
今度は、タッチパッド2をベース1に組付けたのち、室温(25℃)において、各荷重センサS1〜S4に対して無荷でのアンプA1〜A4の出力電圧Vi4(V14、V24、V34、V44)を調整装置にてモニタする。このとき、実際にはタッチパッド2をベース1に組付けたときの組付け歪みが発生しているため、出力電圧Vi4はその組付け歪みに応じた値となる。
【0055】
次に、高温(85℃)において、各荷重センサS1〜S4に対して無荷重の状態でのアンプA1〜A4の出力電圧Vi5(V15、V25、V35、V45)を調整装置にてモニタする。
【0056】
このようにして、図5(b)に示したような組付け前の室温時、および、高温時のF−V特性、図5(d)に示したような組付け後室温時のF−V特性および組付け後高温時のF−V特性を得ることが可能となる。そして、上記した数式7のように、出力電圧Viが荷重Fを変数として傾きai、切片biが数式7のような一次関数にて表せることから、次のようにして各荷重センサS1〜S4および各アンプA1〜A4に対応する出力電圧Viと荷重Fiの関係を表す一次関数を演算する。
【0057】
すなわち、図5(d)に示すように、室温(25℃)のときの一次関数の傾きaiは、無荷重のときから荷重F0を加えた時の出力電圧Viの変化であるため、(3.5−1.5)/F0となる。同様に、高温(85℃)のときの一次関数の傾きaiも、無荷重のときから荷重F0を加えた時の出力電圧Viの変化であるため、(Vi3−Vi2)/F1となる。また、室温(25℃)および高温(85℃)のときの切片biは、組付け後のF−V特性の室温時の切片biがVi4となり、組付け後のF−V特性の高温時の切片biはVi5となる。
【0058】
これらをまとめると、傾きaiと切片biについて、図6や図7に表すマップとすることができる。つまり、X軸を温度、Y軸を傾きaiとして、室温時と高温時の傾きaiを直線で結んだマップおよび、X軸を温度、Y軸を切片biとして、組付け後の室温時と高温時の切片biを直線で結んだマップを得ることができる。
【0059】
したがって、図6や図7で示されるマップ、もしくは、その関係を示した関数式を利用することで荷重センサS1〜S4の温度tに応じた傾きaiおよび切片biを求めることができ、その温度tのときの荷重センサS1〜S4の荷重Fiに対する出力電圧Viの一次関数を求めることができる。このため、数式7を荷重Fiの式に変換した数式8に対して出力電圧Viと傾きaiおよび切片biを代入することにより、各荷重センサS1〜S4に加えられている荷重Fiを演算することができる。
【0060】
そして、上述の基本的なタッチ位置検出手法として説明したように、各荷重センサS1〜S4に加えられている荷重Fiの総和ΣFiがタッチパッド2に加えられた荷重Fとなり、さらに、各荷重センサS1〜S4に加えられた荷重F1〜F4に基づいて、タッチ位置のXY座標(X’、Y’)は、((F3+F4)/F,(F1+F4)/F)で表すことができる。ここで、F=F1+F2+F3+F4である。このようにして求められたタッチ位置のXY座標(X’、Y’)は、組付け後のタッチ位置の計算点に相当する。
【0061】
続いて、射影変換を行うための処理を行う。図8は、射影変換のイメージを示した模式図である。この図に示されるように、タッチパッド2の平面上における任意の4箇所のXY座標を(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)として、これら各所を順番に所定の荷重F0で押すと、センサS1〜S4が意図した取り付け位置から誤差なく、取り付けられていれば、図8(a)に示すように、荷重F0で押したときの出力電圧から求められるタッチ場所が上記4箇所のXY座標通りとなる。
【0062】
しかしながら、たとえばセンサS1〜S4の取り付け位置に位置ズレがあると、図8(b)に示すように、荷重F0で押したときの出力電圧から求められるタッチ場所が上記4箇所のXY座標通りにならない。このため、本処理で、図8(b)のように求められた4箇所のXY座標を図8(a)に示した4箇所のXY座標に合わせ込む必要がある。これをこの実施形態では射影変換によって行う。
【0063】
つまり、組付け位置ズレなどの何らかの歪みの影響により、図8(b)のようにタッチ場所が実際のタッチ場所である図8(a)の状態からずれることになる。このため、歪が無い場合とある場合それぞれの場合の各格子の対応付けを行っておけば、例えば、タッチ場所が図8(b)においてXY座標における最も左下側の格子(図中ハッチングを示した場所)と検出された場合に、実際のタッチ場所が図8(a)中のXY座標における最も左下側の格子(図中ハッチングを示した場所)であるとマッピングすることができる。
【0064】
ただし、上述したように、射影変換を行うに際し、任意の4箇所を順番に所定の荷重F0で押したときに、計算点のXY座標が温度と共に移動する。例えば、タッチパッド2の四隅を任意の4箇所とした場合には、図9に示す計算点の温度依存性に示されるように、
計算点のXY座標が温度と共に移動した。計算点が温度に応じて直線的に移動していないことから、単なる射影変換を行ったのでは、温度に応じた射影変換を行うことができない。
【0065】
そこで、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、荷重センサS1〜S4を組み込んだ後に任意の4箇所を押したときの荷重センサS1〜S4に対応するアンプA1〜A4の出力電圧は、温度に対して線形に変化することを見出した。図10は、タッチパッド2の左下隅(座標(0,0)の位置)を所定の荷重F0で押したときの各荷重センサS1〜S4に対応するアンプA1〜A4の出力電圧を示した図である。この図に示されるように、出力電圧については温度に対して線形に変化することから、出力電圧に基づいて射影変換を行えば、計算点が温度と共に移動しても、精度良く実際のタッチ位置を求めることが可能となる。これに基づいて、本実施形態では、以下のような手法によって射影変換を行っている。
【0066】
25℃において荷重F1で各箇所を押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧は、(X1,Y1)については(A11(25),A21(25),A31(25),A41(25))、(X2,Y2)については(A12(25),A22(25),A32(25),A42(25))、(X3,Y3)については(A13(25),A23(25),A33(25),A43(25))、(X4,Y4)については(A14(25),A24(25),A34(25),A44(25))で表される。
【0067】
また、85℃において荷重F1で各箇所を押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧は、(X1,Y1)については(A11(85),A21(85),A31(85),A41(85))、(X2,Y2)については(A12(85),A22(85),A32(85),A42(85))、(X3,Y3)については(A13(85),A23(85),A33(85),A43(85))、(X4,Y4)については(A14(85),A24(85),A34(85),A44(85))で表される。
【0068】
上述したように、任意の4箇所を押したときの荷重センサS1〜S4に対応するアンプA1〜A4の出力電圧は、温度に対して線形に変化するから、t℃において(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)を荷重F1で押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧(A11(t),A21(t),A31(t),A41(t))、(A12(t),A22(t),A32(t),A42(t))、(A13(t),A23(t),A33(t),A43(t))、(A14(t),A24(t),A34(t),A44(t))は、温度による線形補間を行うことにより、次式のように表される。
【0069】
(数9) Ai1(t)=Ai1(25)+{Ai1(85)−Ai1(25)}/(85−25)×(t−25)
(数10) Ai2(t)=Ai2(25)+{Ai2(85)−Ai2(25)}/(85−25)×(t−25)
(数11) Ai3(t)=Ai3(25)+{Ai3(85)−Ai3(25)}/(85−25)×(t−25)
(数12) Ai4(t)=Ai4(25)+{Ai4(85)−Ai4(25)}/(85−25)×(t−25)
そして、上記数式9〜12のように示される各値より、t℃において任意の4箇所(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)をF1で押したときの荷重センサS1〜S4の受ける力は、それぞれ、(F11(t),F12 (t) ,F13 (t) ,F14 (t) )、(F21 (t) ,F22 (t) ,F23 (t) ,F24 (t) )、
(F31 (t) ,F32 (t) ,F33 (t) ,F34 (t) )、(F41 (t) ,F42 (t) ,F43 (t) ,F44 (t) )で表される。また、これを添え字iを用いて総括的に表すと、数式13〜16のように表すことができる。
【0070】
(数13) Fi1(t)=(Ai1(t)−bi(t))/ai(t)
(数14) Fi2(t)=(Ai2(t)−bi(t))/ai(t)
(数15) Fi3(t)=(Ai3(t)−bi(t))/ai(t)
(数16) Fi4(t)=(Ai4(t)−bi(t))/ai(t)
これらの値からt℃において任意の4箇所(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を所定の荷重F1で押したときの力の比から求められる検出位置(X’1,Y’1), (X’2,Y’2), (X’3,Y’3), (X’4,Y’4)は、次の数式で表される。
【0071】
X’1={F31(t3)+F41(t3)}/{F11(t3)+F21(t3)+F31(t3)+F41(t3)}
Y’1={F11(t3)+F41(t3)}/{F11(t3)+F21(t3)+F31(t3)+F41(t3)}
X’2={F32(t3)+F42(t3)}/{F12(t3)+F22(t3)+F32(t3)+F42(t3)}
Y’2={F12(t3)+F42(t3)}/{F12(t3)+F22(t3)+F32(t3)+F42(t3)}
X’3={F33(t3)+F43(t3)}/{F13(t3)+F23(t3)+F33(t3)+F43(t3)}
Y’3={F13(t3)+F43(t3)}/{F13(t3)+F23(t3)+F33(t3)+F43(t3)}
X’4={F34(t3)+F44(t3)}/{F14(t3)+F24(t3)+F34(t3)+F44(t3)}
Y’4={F14(t3)+F44(t3)}/{F14(t3)+F24(t3)+F34(t3)+F44(t3)}
そして、この(X’1,Y’1), (X’2,Y’2), (X’3,Y’3), (X’4,Y’4)を(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)へ変換する射影変換Tを求める。以上により、温度t℃における位置ズレを補正するための射影変換Tが求められる。
【0072】
この射影変換に関するデータ、4箇所の座標、(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)、および、25℃において荷重F1で各箇所を押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧、(X1,Y1)については(A11(25),A21(25),A31(25),A41(25))、(X2,Y2)については(A12(25),A22(25),A32(25),A42(25))、(X3,Y3)については(A13(25),A23(25),A33(25),A43(25))、(X4,Y4)については(A14(25),A24(25),A34(25),A44(25))、85℃において荷重F1で各箇所を押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧、(X1,Y1)については(A11(85),A21(85),A31(85),A41(85))、(X2,Y2)については(A12(85),A22(85),A32(85),A42(85))、(X3,Y3)については(A13(85),A23(85),A33(85),A43(85))、(X4,Y4)については(A14(85),A24(85),A34(85),A44(85))をマイコン20に記憶しておく。これにより、温度t℃を温度センサによって計測することによって、マイコン20にて、組付け位置ズレなどの歪みを加味した補正を行うことが可能となる。
【0073】
射影変換は、
X=(C1×X’+D1×Y’+E1)/(C0×X’+D0×Y’+E0)
Y=(C2×X’+D2×Y’+E2)/(C0×X’+D0×Y’+E0)
により表される.(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を順番に所定の荷重F0で押したとき、センサS1〜S4への荷重F1〜F4から計算されたタッチ位置のXY座標が(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4,Y’4)である。これらの対応する4点の射影変換の係数C0〜C2,D0〜D2,E0〜E2を求めればよい。
【0074】
以上のようにして求められたXY座標(X’、Y’)は、組付け位置ズレなど歪みの影響を受けた図8(b)に示される座標であるが、これを射影変換することにより、図8(a)に示される座標(X,Y)に変換される。これにより、正確なタッチ位置を検出することができる。
【0075】
この実施形態では、(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を任意の4点としたが、この4点を(0,1)、(0,0)、(1,0)、(1,1)としてもよい。
【0076】
したがって、調整装置で室温時と高温時の傾きaiや図6に示したマップもしくはこのマップを示す関数式や、組付け後の室温時と高温時の切片biや図7に示したマップもしくはこのマップを示す関数式を演算し、それをマイコン20に記憶させている。このため、マイコン20は、温度検出部10の温度検出信号(この例では、サーミスタ10aの電位)に基づいて荷重センサS1〜S4の温度tを検出すると、その温度tに対応する傾きai(t)や切片bi(t)を図6や図7に示したマップもしくはそのマップを示す関数式から求める。また、求めた傾きai(t)や切片bi(t)と出力電圧Viを数式7に代入することで、各荷重センサS1〜S4に加えられている荷重Fiを演算し、その荷重Fiに基づいてタッチ位置の座標(X’,Y’)を演算する。そして、その座標(X’,Y’)を射影変換することで正確なタッチ位置の座標(X,Y)を求めることができる。
【0077】
以上説明した本実施形態のタッチ位置検出装置により、タッチパッド2から荷重センサS1〜S4への組付け歪みなどの影響や温度変化によるセンサ特性への影響があっても、正確なタッチ位置を検出することが可能となる。したがって、組み付け歪みに基づいてタッチパネル表示器に備えられる荷重センサS1〜S4のセンサ特性が所望の特性からずれることで、タッチ位置が正確に検出できなくなることを防止することが可能となる。
【0078】
そして、射影変換について、温度に対して線形に変化する荷重センサS1〜S4の出力電圧(もしくはアンプA1〜A4の出力電圧)に基づいて求めるようにしているため、温度特性の影響を受けない射影変換を行うことが可能となる。
【0079】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、荷重センサSiをベース1に取り付けた状態で、常温(25℃)において、荷重センサSiが無負荷のときと所定の荷重F0印加のとき、アンプAiの出力電圧が1.5V、3.5Vとなるように設定し、高温(85℃)において、荷重センサSiが無負荷の状態と所定の荷重F0印加の状態で、アンプAiの出力電圧Vi2、Vi3を測定していた。また、荷重センサSiをベース1に取り付け、タッチパッド2を取り付けた状態で、常温(25℃)において、無負荷のときのアンプAiの出力電圧Vi4を測定し、高温(85℃)において、無負荷のときのアンプAiの出力電圧Vi5を測定していた。これにより、荷重センサSiにベース1とタッチパッド2を取り付けた状態で、荷重センサSiにかかる荷重FiとアンプAiの出力電圧Viの関係、Vi=ai(t)×Fi+bi(t)の変化の様子、図5(d)、および、ai(t)、bi(t)の温度に対する変化の様子、図6、図7を得ていた。
【0080】
これに代わり、次のような方法をとり、Vi=ai×Fi+biの変化の様子、図11、ai、biの温度に対する変化の様子、図12、図13(図6、図7と同じ)を得る。
【0081】
荷重センサSiをベース1に取り付け、さらにタッチパッド2を取り付けて、タッチパッド2上に荷重をかけたときに荷重センサSiへの荷重比がわかっている点をPとする.(この例では、タッチパッドが長方形なので、荷重センサS1〜S4が長方形の頂点を長方形の2本の対角線の交点に対して縦横を均等に縮小した4点に取り付けてあるとし、タッチパッドの長方形の2本の対角線の交点をPとすれば、この点を押した時には荷重センサSiに均等に力がかかる。)長方形の荷重センサSiをベース1に取り付け、さらにタッチパッド2を取り付けた状態で、常温と高温における、Pに4×F0の荷重をかけたときのアンプAiの出力電圧Vi6V、i7、および、無負荷のときのアンプAiの出力電圧Vi4、Vi5を測定する.これにより、荷重センサSiにベース1とタッチパッド2を取り付けた状態で、荷重センサSiにかかる荷重FiとアンプAiの出力電圧Viの関係、Vi=ai(t)×Fi+bi(t)のai(t)、bi(t)の温度に対する変化の様子は図12、図13のようになる。
ここで、アンプA1〜A4のゲイン調整やオフセット調整、および、タッチパッド2をベース1に組付けた後の温度特性の変化に応じた荷重F1〜F4の演算の手順を次に記述する。
【0082】
最初に、荷重センサS1〜S4をベース1に設置し、荷重センサS1〜S4に対してアンプA1〜A4をそれぞれ接続する。また、調整装置をアンプA1〜A4およびマイコン20に接続しておき、アンプA1〜A4のゲイン調整値やオフセット調整値の設定が行えるようにすると共に出力電圧V1〜V4がモニタできるようにし、かつ、マイコン20に対して荷重Fの演算に用いるデータの記憶が行えるようにしておく。
【0083】
次に、アンプA1〜A4それぞれのゲイン調整値、オフセット調整値をG10、Vz10に設定する。これらゲイン調整値、オフセット調整値G10、Vz10は、調整初期の値として任意に定められる値である。
【0084】
そして、室温(25℃)において、各荷重センサS1〜S4に対して荷重を0とした状態(以下、無荷重という)でのアンプA1〜A4の出力電圧Vi0(V10、V20、V30、V40)を調整装置にてモニタする。また、室温(25℃)において、各荷重センサS1〜S4に所定の荷重F0を加えたときの各アンプA1〜A4の出力電圧Vi1(V11、V21、V31、V41)を調整装置にて計測する。そして、調整装置にて、このときの各出力電圧Vi0(V10〜V40)、Vi1(V11〜V41)を記憶しておく。
【0085】
この後、アンプA1〜A4のゲイン調整値、オフセット調整値を変化させて、無荷重のときの出力電圧Vi0が1.5[V]となり、各荷重センサS1〜S4に対して所定の荷重F1を加えたときの出力電圧Vi1が3.5[V]となるようにする。そして、調整装置にて、このときのこれらゲイン調整値、オフセット調整値をGi1、Vzi1として記憶しておく。
【0086】
今度は、タッチパッド2をベース1に組付けたのち、室温(25℃)において、各荷重センサS1〜S4に対して無負荷でのアンプA1〜A4の出力電圧Vi4(V14、V24、V34、V44)を調整装置にてモニタする。このとき、実際にはタッチパッド2をベース1に組付けたときの組付け歪みが発生しているため、出力電圧Vi4はその組付け歪みに応じた値となる。
次に、タッチパッド上に荷重をかけたときにセンサSiに均等に力がかかる点Pに4×F0(N)の荷重を印加したときの、アンプA1〜A4の出力電圧Vi6(i=1〜4)を調整装置にてモニタする。このとき、実際にはタッチパッド2をベース1に組み付けたときの組み付けひずみが発生しているため、出力電圧Vi6はその組み付け歪みとF0の和に応じた値となる。
【0087】
次に、高温(85℃)において、各荷重センサS1〜S4に対して無荷重の状態でのアンプA1〜A4の出力電圧Vi5(V15、V25、V35、V45)を調整装置にてモニタする。
【0088】
次に、タッチパッド上に荷重をかけたときにセンサSiに均等に力がかかる点Pに4×F0(N)の荷重を印加したときの、アンプA1〜A4の出力電圧Vi7(i=1〜4)を調整装置にてモニタする。このとき、実際にはタッチパッド2をベース1に組み付けたときの組み付けひずみが発生しているため、出力電圧Vi7はその組み付け歪みとF0の和に応じた値となる。
【0089】
このようにして、図11に示したような組付け後の室温時、および、高温時のF−V特性を得ることが可能となる。そして、上記したように、出力電圧Viが荷重Fを変数として傾きai、切片biが数式1のような一次関数にて表せることから、次のようにして各荷重センサS1〜S4および各アンプA1〜A4に対応する出力電圧Viと荷重Fiの関係を表す一次関数を演算する。
【0090】
すなわち、図11に示すように、室温(25℃)のときの一次関数の傾きaiは、無荷重のときから荷重F0を加えた時の出力電圧Viの変化であるため、(Vi6−Vi4)/F0となる。同様に、高温(85℃)のときの一次関数の傾きaiも、無荷重のときから荷重F0を加えた時の出力電圧Viの変化であるため、(Vi7−Vi5)/F0となる。また、室温(25℃)および高温(85℃)のときの切片biは、組付け後のF−V特性の室温時の切片biがVi4となり、組付け後のF−V特性の高温時の切片biはVi5となる。
【0091】
これらをまとめると、傾きaiと切片biについて、図12や図13に表すマップとすることができる。つまり、X軸を温度、Y軸を傾きaiとして、室温時と高温時の傾きaiを直線で結んだマップおよび、X軸を温度、Y軸を切片biとして、組付け後の室温時と高温時の切片biを直線で結んだマップを得ることができる。
【0092】
したがって、図12や図13で示されるマップ、もしくは、その関係を示した関数式を利用することで荷重センサS1〜S4の温度tに応じた傾きaiおよび切片biを求めることができ、その温度tのときの荷重センサS1〜S4の荷重Fiに対する出力電圧Viの一次関数を求めることができる。このため、数式1を荷重Fiの式に変換した数式2に対して出力電圧Viと傾きaiおよび切片biを代入することにより、各荷重センサS1〜S4に加えられている荷重Fiを演算することができる。
そして、上述の基本的なタッチ位置検出手法として説明したように、各荷重センサS1〜S4に加えられている荷重Fiの総和ΣFiがタッチパッド2に加えられた荷重Fとなり、さらに、各荷重センサS1〜S4に加えられた荷重F1〜F4に基づいて、タッチ位置のXY座標(X’、Y’)は、((F3+F4)/F,(F1+F4)/F)で表すことができる。ここで、F=F1+F2+F3+F4である。
【0093】
続いて、射影変換を行うための処理を行う。射影変換を行うための処理については、第1実施形態と同様の手法によって行う。
【0094】
室温(25℃)のときと高温(85℃)のときの任意の4箇所(座標(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4))を所定の荷重F1で押したときの各荷重センサS1〜S4と対応するアンプA1〜A4の出力電圧について、例えば以下のように表すことができる。
【0095】
25℃において荷重F1で各箇所を押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧は、(X1,Y1)については(A11(25),A21(25),A31(25),A41(25))、(X2,Y2)については(A12(25),A22(25),A32(25),A42(25))、(X3,Y3)については(A13(25),A23(25),A33(25),A43(25))、(X4,Y4)については(A14(25),A24(25),A34(25),A44(25))で表される。
【0096】
また、85℃において荷重F1で各箇所を押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧は、(X1,Y1)については(A11(85),A21(85),A31(85),A41(85))、(X2,Y2)については(A12(85),A22(85),A32(85),A42(85))、(X3,Y3)については(A13(85),A23(85),A33(85),A43(85))、(X4,Y4)については(A14(85),A24(85),A34(85),A44(85))で表される。
【0097】
第1実施形態で述べたように、任意の4箇所を押したときの荷重センサS1〜S4に対応するアンプA1〜A4の出力電圧は、温度に対して線形に変化するから、t℃において(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)を荷重F1で押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧(A11(t),A21(t),A31(t),A41(t))、(A12(t),A22(t),A32(t),A42(t))、(A13(t),A23(t),A33(t),A43(t))、(A14(t),A24(t),A34(t),A44(t))は、次式のように表される。
【0098】
(数9) Ai1(t)=Ai1(25)+{Ai1(85)−Ai1(25)}/(85−25)×(t−25)
(数10) Ai2(t)=Ai2(25)+{Ai2(85)−Ai2(25)}/(85−25)×(t−25)
(数11) Ai3(t)=Ai3(25)+{Ai3(85)−Ai3(25)}/(85−25)×(t−25)
(数12) Ai4(t)=Ai4(25)+{Ai4(85)−Ai4(25)}/(85−25)×(t−25)
そして、上記数式9〜12のように示される各値より、t℃において任意の4箇所(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)をF1で押したときの荷重センサS1〜S4の受ける力は、それぞれ、(F11(t),F12 (t) ,F13 (t) ,F14 (t) )、(F21 (t) ,F22 (t) ,F23 (t) ,F24 (t) )、
(F31 (t) ,F32 (t) ,F33 (t) ,F34 (t) )、(F41 (t) ,F42 (t) ,F43 (t) ,F44 (t) )で表される。また、これを添え字iを用いて総括的に表すと、数式13〜16のように表すことができる。
【0099】
(数13) Fi1=(Ai1(t)−bi(t))/ai(t)
(数14) Fi2=(Ai2(t)−bi(t))/ai(t)
(数15) Fi3=(Ai3(t)−bi(t))/ai(t)
(数16) Fi4=(Ai4(t)−bi(t))/ai(t)
これらの値からt℃において任意の4箇所(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を所定の荷重F1で押したときの力の比から求められる検出位置(X’1,Y’1), (X’2,Y’2), (X’3,Y’3), (X’4,Y’4)は、次の数式で表される。
【0100】
X’1={F31(t3)+F41(t3)}/{F11(t3)+F21(t3)+F31(t3)+F41(t3)}
Y’1={F11(t3)+F41(t3)}/{F11(t3)+F21(t3)+F31(t3)+F41(t3)}
X’2={F32(t3)+F42(t3)}/{F12(t3)+F22(t3)+F32(t3)+F42(t3)}
Y’2={F12(t3)+F42(t3)}/{F12(t3)+F22(t3)+F32(t3)+F42(t3)}
X’3={F33(t3)+F43(t3)}/{F13(t3)+F23(t3)+F33(t3)+F43(t3)}
Y’3={F13(t3)+F43(t3)}/{F13(t3)+F23(t3)+F33(t3)+F43(t3)}
X’4={F34(t3)+F44(t3)}/{F14(t3)+F24(t3)+F34(t3)+F44(t3)}
Y’4={F14(t3)+F44(t3)}/{F14(t3)+F24(t3)+F34(t3)+F44(t3)}
そして、(X’1,Y’1), (X’2,Y’2), (X’3,Y’3), (X’4,Y’4)を(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)へ変換する射影変換Tを求める。以上により、温度t℃における位置ズレを補正するための射影変換Tが求められる。
【0101】
この射影変換に関するデータ、4箇所の座標、(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)、および、25℃において荷重F1で各箇所を押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧、(X1,Y1)については(A11(25),A21(25),A31(25),A41(25))、(X2,Y2)については(A12(25),A22(25),A32(25),A42(25))、(X3,Y3)については(A13(25),A23(25),A33(25),A43(25))、(X4,Y4)については(A14(25),A24(25),A34(25),A44(25))、85℃において荷重F1で各箇所を押したときの各アンプA1〜A4の出力電圧、(X1,Y1)については(A11(85),A21(85),A31(85),A41(85))、(X2,Y2)については(A12(85),A22(85),A32(85),A42(85))、(X3,Y3)については(A13(85),A23(85),A33(85),A43(85))、(X4,Y4)については(A14(85),A24(85),A34(85),A44(85))をマイコン20に記憶しておく。これにより、温度t℃を温度センサによって計測することによって、マイコン20にて、組付け位置ズレなどの歪みを加味した補正を行うことが可能となる。
【0102】
射影変換は、
X=(C1×X’+D1×Y’+E1)/(C0×X’+D0×Y’+E0)
Y=(C2×X’+D2×Y’+E2)/(C0×X’+D0×Y’+E0)
により表される.(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を順番に所定の荷重F0で押したとき、センサS1〜S4への荷重F1〜F4から計算されたタッチ位置のXY座標が(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4,Y’4)である。これらの対応する4点の射影変換の係数C0〜C2,D0〜D2,E0〜E2を求めればよい。
【0103】
以上のようにして求められたXY座標(X’、Y’)は、組付け位置ズレなど歪みの影響を受けた図8(b)に示される座標であるが、これを射影変換することにより、図8(a)に示される座標(X,Y)に変換される。これにより、正確なタッチ位置を検出することができる。
【0104】
この実施形態では、(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を任意の4点としたが、この4点を(0,1)、(0,0)、(1,0)、(1,1)としてもよい。
【0105】
したがって、調整装置で室温時と高温時の傾きaiや図12に示したマップもしくはこのマップを示す関数式や、組付け後の室温時と高温時の切片biや図13に示したマップもしくはこのマップを示す関数式を演算し、それをマイコン20に記憶させている。このため、マイコン20は、温度検出部10の温度検出信号(この例では、サーミスタ10aの電位)に基づいて荷重センサS1〜S4の温度tを検出すると、その温度tに対応する傾きai(t)や切片bi(t)を図12や図13に示したマップもしくはそのマップを示す関数式から求める。また、求めた傾きaiや切片biと出力電圧Viを数式7に代入することで、各荷重センサS1〜S4に加えられている荷重Fiを演算し、その荷重Fiに基づいてタッチ位置の座標(X’,Y’)を演算する。そして、その座標(X’,Y’)を射影変換することで正確なタッチ位置の座標(X,Y)を求めることができる。
【0106】
以上説明した本実施形態のタッチ位置検出装置により、タッチパッド2から荷重センサS1〜S4への組付け歪みなどの影響や温度変化によるセンサ特性への影響があっても、正確なタッチ位置を検出することが可能となる。したがって、組み付け歪みに基づいてタッチパネル表示器に備えられる荷重センサS1〜S4のセンサ特性が所望の特性からずれることで、タッチ位置が正確に検出できなくなることを防止することが可能となる。
【0107】
そして、射影変換について、温度に対して線形に変化する荷重センサS1〜S4の出力電圧(もしくはアンプA1〜A4の出力電圧)に基づいて求めるようにしているため、温度特性の影響を受けない射影変換を行うことが可能となる。
【0108】
(第3の実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態、あるいは、第2実施形態に対して、各荷重センサS1〜S4それぞれの温度を検出できるようにしたものであり、その他に関しては第1実施形態、あるいは、第2実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0109】
図14は、本実施形態にかかるタッチパネル表示器のタッチ位置検出装置の回路図である。本実施形態では、第1実施形態の図2に示したタッチ位置検出装置の回路構成を図14のように変更する。その他の構成は第1実施形態と同様である。図14において、温度検出部10は、抵抗10b、10d、10f、10hとサーミスタ10a、10c、10e、10gからなる。それぞれ、サーミスタ10aおよび抵抗10bはセンサS1の温度を、サーミスタ10cおよび抵抗10dはセンサS2の温度を、サーミスタ10eおよび抵抗10fはセンサS3の温度を、サーミスタ10gおよび抵抗10hはセンサS4の温度を検出するように配置されている。たとえば、サーミスタ10aは荷重センサS1に、サーミスタ10cは荷重センサS2に、サーミスタ10eは荷重センサS3に、サーミスタ10gは荷重センサS4に接するように配置されている。各サーミスタ10a、10c、10e、10gは同じ温度特性のものを抵抗10b、10d、10f、10hは同じ抵抗値のものを用いるとすると、それぞれのサーミスタ10a、10c、10e、10gから出力される電位をVa、Vc、Ve、Vgとすると、Vaと荷重センサS1の温度ts1、Vcと荷重センサS2の温度ts2、Veと荷重センサS3の温度ts3、Vgと荷重センサS4の温度ts4の関係は、すべて図3の曲線を描く。第1実施形態で説明した温度tを検出する代わりに、本実施形態では各荷重センサS1〜S4の温度ts1〜ts4を検出する。
【0110】
調整装置では、室温時と高温時の傾きaiや図6に示したマップもしくはこのマップを示す関数式や、組付け後の室温時と高温時の切片biや図7に示したマップもしくはこのマップを示す関数式を演算し、それをマイコン20に記憶させている。このため、マイコン20は、温度検出部10の温度検出信号(この例では、サーミスタ10a、10c、10e、10gの電位)に基づいて荷重センサS1〜S4の温度ts1〜ts4を検出すると、その温度tiに対応する傾きaiや切片biを図6や図7に示したマップもしくはそのマップを示す関数式から求める。また、求めた傾きaiや切片biと出力電圧Viを数式2に代入することで、各荷重センサS1〜S4に加えられている荷重Fiを演算し、その荷重Fiに基づいてタッチ位置の座標(X’,Y’)を演算する。そして、その座標(X’,Y’)を射影変換することで正確なタッチ位置の座標(X,Y)を求めることができる。
【0111】
以上により、第1実施形態と同様に、組み付け歪みに基づいてタッチパネル表示器に備えられる荷重センサS1〜S4のセンサ特性が所望の特性からずれることで、タッチ位置が正確に検出できなくなることを防止できるのに加えて、荷重センサS1〜S4の温度が異なっても正確なタッチ位置を検出することができるようになる。
【0112】
(他の実施形態)
上記実施形態では、第1温度として室温(25℃)、第2温度として高温(85℃)を例に挙げて説明したが、これらの温度以外であっても構わない。また、第1所定電圧を1.5V、第2所定電圧を3.5Vとしたが、これらの電圧以外であっても構わない。さらに、演算装置としてマイコン20を例に挙げて説明したが、各種データの記憶やそのデータを用いた演算やタッチ位置の検出が行える演算装置であれば、他のものであっても構わない。
【符号の説明】
【0113】
1 ベース
2 タッチパッド(オーナメント)
10 温度検出部
20 マイコン
S1〜S4 荷重センサ
A1〜A4 アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度tでの印加される荷重Fに対する出力電圧Vの関係が、温度tでの傾きa(t)とゼロ点b(t)を用いてV=ai(t)F+bi(t)(ただし、i=1〜m)と表せるF−V特性を有する歪みセンサ(S1〜Sm)をタッチパネルにm個固定したタッチパネルにおいて、
第1温度t1で、タッチパネル上の凸四角形をなす座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)の4点それぞれに順番に所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧((A11(t1),A21(t1),A31(t1),A41(t1))、(A12(t1),A22(t1),A32(t1),A42(t1))、(A13(t1),A23(t1),A33(t1),A43(t1)),(A14(t1),A24(t1),A34(t1),A44(t1))と、
第2温度t2で、前記4点(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)それぞれに順番に前記所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧((A11(t2),A21(t2),A31(t2),A41(t2))、(A12(t2),A22(t2),A32(t2),A42(t2))、(A13(t2),A23(t2),A33(t2),A43(t2))、(A14(t2),A24(t2),A34(t2),A44(t2))とを記憶装置(20)に記憶して、
第1温度t1で、タッチパネル上の凸四角形をなす座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)の4点それぞれに順番に所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧,第2温度t2で、前記4点(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)それぞれに順番に前記所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧,第3温度t3,および,温度tでの印加される荷重Fに対する出力電圧Vの関係より,第3温度t3でタッチパネル上の(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)の4点それぞれに順番に所定の荷重(F1)を加えたときの計算点(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4, Y’4)と当該4点(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4,Y’4)から(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)への射影変換Tを演算し
前記温度t3で前記タッチパネルの任意の点に荷重を印加したときに得られるそれぞれの前記歪みセンサの出力電圧V1〜Vmから
Fi=(Vi−bi(t3))/ai(t3)
の関係式を用いて、
X’=(F3+F4)/(F1+F2+F3+F4)
Y’=(F1+F4)/(F1+F2+F3+F4)
として計算した(X’, Y’)を前記射影変換Tによって変換した位置を検出位置とするタッチパネルのタッチ位置検出装置。
【請求項2】
温度tでの印加される荷重Fに対する出力電圧Vの関係が、温度tでの傾きa(t)とゼロ点b(t)を用いてV=ai(t)F+bi(t)(ただし、i=1〜m)と表せるF−V特性を有する歪みセンサ(S1〜Sm)をタッチパネルにm個固定したタッチパネルにおいて、
第1温度t1で、タッチパネル上の凸四角形をなす座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)の4点それぞれに順番に所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧((A11(t1),A21(t1),A31(t1),A41(t1))、(A12(t1),A22(t1),A32(t1),A42(t1))、(A13(t1),A23(t1),A33(t1),A43(t1)),(A14(t1),A24(t1),A34(t1),A44(t1))と、
第2温度t2で、前記4点(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)それぞれに順番に前記所定の荷重(F1)を加えたときの前記歪みセンサの出力に相当する出力電圧((A11(t2),A21(t2),A31(t2),A41(t2))、(A12(t2),A22(t2),A32(t2),A42(t2))、(A13(t2),A23(t2),A33(t2),A43(t2))、(A14(t2),A24(t2),A34(t2),A44(t2))とを記憶装置(20)に記憶して、
前記タッチパネルに備えられた温度検出装置から出力される温度t3から、数式1にて表される4点(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4, Y’4)、および、当該4点(X’1,Y’1)、(X’2,Y’2)、(X’3,Y’3)、(X’4,Y’4)から(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)への射影変換Tを演算し、
(数1)
X’1={F31(t3)+F41(t3)}/{F11(t3)+F21(t3)+F31(t3)+F41(t3)}
Y’1={F11(t3)+F41(t3)}/{F11(t3)+F21(t3)+F31(t3)+F41(t3)}
X’2={F32(t3)+F42(t3)}/{F12(t3)+F22(t3)+F32(t3)+F42(t3)}
Y’2={F12(t3)+F42(t3)}/{F12(t3)+F22(t3)+F32(t3)+F42(t3)}
X’3={F33(t3)+F43(t3)}/{F13(t3)+F23(t3)+F33(t3)+F43(t3)}
Y’3={F13(t3)+F43(t3)}/{F13(t3)+F23(t3)+F33(t3)+F43(t3)}
X’4={F34(t3)+F44(t3)}/{F14(t3)+F24(t3)+F34(t3)+F44(t3)}
Y’4={F14(t3)+F44(t3)}/{F14(t3)+F24(t3)+F34(t3)+F44(t3)}
(ただし、i=1〜4として、Fi1(t3)、Fi1(t3)、Fi1(t3)、Fi1(t3)は、
Fi1(t3)=〔[Ai1(t1)+{Ai1(t2)−Ai1(t1)}/(t2−t1)×(t3−t1)]−bi(t3)〕/ai(t3)
Fi2(t3)=〔[Ai2(t1)+{Ai2(t2)−Ai2(t1)}/(t2−t1)×(t3−t1)]−bi(t3)〕/ai(t3)
Fi3(t3)=〔[Ai3(t1)+{Ai3(t2)−Ai3(t1)}/(t2−t1)×(t3−t1))−bi(t3)〕/ai(t3)
Fi4(t3)=〔[Ai4(t1)+{Ai4(t2)−Ai4(t1)}/(t2−t1)×(t3−t1)]−bi(t3)〕/ai(t3)で表される)
前記温度t3で前記タッチパネルの任意の点に荷重を印加したときに得られるそれぞれの前記歪みセンサの出力電圧V1〜Vmから
Fi=(Vi−bi(t3))/ai(t3)
の関係式を用いて、
X’=(F3+F4)/(F1+F2+F3+F4)
Y’=(F1+F4)/(F1+F2+F3+F4)
として計算した(X’, Y’)を前記射影変換Tによって変換した位置を検出位置とするタッチパネルのタッチ位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−108606(P2012−108606A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255087(P2010−255087)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】