説明

タッチパネル装置及びその製造方法

【課題】大型化した場合でも強度や取り扱い性を損なうことなくタッチ位置の検出を高精度に行うことができるようにする。
【解決手段】タッチ面11が形成された表面ボード12と、この表面ボードの裏面側に設けられた互いに並走する複数の送信電極2と、この送信電極に交差するようにその裏面側に設けられた互いに並走する複数の受信電極3と、送信電極及び受信電極をそれぞれ保護する第1・第2の保護部13・14と、送信電極及び受信電極並びに第1・第2の保護部を支持する支持シート15とを備え、保護部は、互いに並走する電極間に空隙が形成されるように、表面ボードの裏面側に部分的に設けられたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ面が形成された表面ボードと、この表面ボードの裏面側に設けられた複数の電極と、この電極を保護する保護部とを備えたタッチパネル装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル装置には、静電容量方式や、抵抗膜方式、電磁誘導方式などの種々の方式があるが、特に静電容量方式では、抵抗膜方式に比較してタッチ面の強度を高めることができる利点があり、また電磁誘導方式のように発振器などを内蔵した電子ペンが不要であり、ユーザの指先で直接、あるいは単なる導電性材料からなるスタイラスでタッチ操作を行うことができることから、高い利便性を有している。
【0003】
この静電容量方式では、格子状に配置された第1電極と第2電極との交点(以下、電極交点と呼称する)に形成されるコンデンサの静電容量が、導電性物体(例えば人体)が接近あるいは接触することで変化する原理を利用した、いわゆる投影型静電容量方式が、タッチ位置を高精度に検出することができる点で優れている。
【0004】
この投影型静電容量方式のタッチパネル装置では、タッチ面が形成された表面ボードが電極の前面側に設けられる共に、表面ボードの裏面に全面的に接するように形成された保護層内に埋め込まれた状態で電極が設けられた構成が知られている(特許文献1・2参照)。
【0005】
また、タッチパネル装置は、パソコンや携帯情報端末の分野で広く普及しているが、このタッチパネル装置を、大画面の表示装置と組み合わせることで、多人数を対象にしたプレゼンテーションや講義で使用することができるようにした、いわゆるインタラクティブホワイトボードとして用いる技術が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−342033号公報
【特許文献2】米国特許第4686332号明細書
【特許文献3】特開2009−86855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、タッチパネル装置をインタラクティブホワイトボードとして用いる場合、投影型静電容量方式、特にマルチタッチが可能な相互容量方式を採用すると、利便性を高めることができるが、タッチパネル装置の大型化に伴って第1電極と第2電極との間の全体的な静電容量が大きくなる。例えば77インチクラスでは静電容量が100pFを超える。一方、ユーザの指先やスタイラスによるタッチ操作に応じた静電容量の変化は、高々数百fFにすぎず、微々たるものである。このため、タッチパネル装置の大型化に伴って十分な検出精度を確保することができなくなるという課題があった。
【0008】
また、投影型静電容量方式のタッチパネル装置の表面ボードには、通常、誘電率が高いガラス材料が用いられるが、タッチパネル装置をインタラクティブホワイトボードとして用いる場合、タッチパネル装置の大型化に伴ってガラス製の表面ボードでは強度や取り扱い性を確保することが難しくなる。そこで、表面ボードを合成樹脂材料にて形成することが考えられるが、合成樹脂材料は誘電率が低いため、タッチ操作に応じた静電容量の変化が小さくなるため、タッチ操作の検出感度が低下するという課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、大型化した場合でも強度や取り扱い性を損なうことなくタッチ位置の検出を高精度に行うことができるように構成されたタッチパネル装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のタッチパネル装置は、タッチ面が形成された表面ボードと、この表面ボードの裏面側に設けられた互いに並走する複数の第1の電極と、この第1の電極に交差するようにその裏面側に設けられた互いに並走する複数の第2の電極と、前記第1・第2の電極をそれぞれ保護する第1・第2の保護部と、前記第1・第2の電極及び前記第1・第2の保護部を支持する支持シートとを備え、前記保護部は、互いに並走する前記電極間に空隙が形成されるように、前記表面ボードの裏面側に部分的に設けられた構成とする。
【0011】
また、本発明のタッチパネル装置の製造方法は、タッチ面が形成された表面ボードと、この表面ボードの裏面側に設けられた互いに並走する複数の第1の電極と、この第1の電極に交差するようにその裏面側に設けられた互いに並走する複数の第2の電極と、前記第1・第2の電極をそれぞれ保護する第1・第2の保護部と、前記第1・第2の電極及び前記第1・第2の保護部を支持する支持シートとを備えたタッチパネル装置の製造方法であって、前記支持シートの一面に電極形成材料を線状に付着させて前記第1の電極を形成する工程と、前記支持シートの一面に前記第1の電極を覆うように保護部形成材料を帯状に付着させて前記第1の保護部を形成する工程と、前記支持シートの他面に電極形成材料を線状に付着させて前記第2の電極を形成する工程と、前記支持シートの他面に前記第2の電極を覆うように保護部形成材料を帯状に付着させて前記第2の保護部を形成する工程と、前記の各工程を経て前記支持シートに前記第1・第2の電極及び前記第1・第2の保護部を形成して得られた電極シートと前記表面ボードとを張り合わせる工程とを有する構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空隙により互いに並走する電極間に誘電率が低い空気が介在するため、互いに並走する電極間の静電容量(寄生容量)が減少し、これに伴って非タッチ状態での第1の電極と第2の電極との間の全体的な静電容量が減少するため、タッチ操作時の静電容量変化が相対的に大きくなり、タッチ操作の検出感度を高めることができる。このため、大型化に伴う強度や取り扱い性を確保するために、表面ボードを誘電率が低い合成樹脂材料で所要の板厚に形成しても、タッチ位置の検出を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるタッチパネル装置を示す全体構成図
【図2】図1に示した受信電極及び受信部の概略構成図
【図3】図2に示した受信信号処理部の概略構成図
【図4】図1に示したパネル本体を切断して示す模式的な斜視図
【図5】図4に示したパネル本体に形成される電場の状況を示す模式的な断面図
【図6】図4に示したパネル本体の製造工程を示す斜視図
【図7】図4に示した電極シートの製造装置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、タッチ面が形成された表面ボードと、この表面ボードの裏面側に設けられた互いに並走する複数の第1の電極と、この第1の電極に交差するようにその裏面側に設けられた互いに並走する複数の第2の電極と、前記第1・第2の電極をそれぞれ保護する第1・第2の保護部と、前記第1・第2の電極及び前記第1・第2の保護部を支持する支持シートとを備え、前記保護部は、互いに並走する前記電極間に空隙が形成されるように、前記表面ボードの裏面側に部分的に設けられた構成とする。
【0015】
これによると、空隙により互いに並走する電極間に誘電率が低い空気が介在するため、互いに並走する電極間の静電容量(寄生容量)が減少し、これに伴って非タッチ状態での第1の電極と第2の電極との間の全体的な静電容量が減少するため、タッチ操作時の静電容量変化が相対的に大きくなり、タッチ操作の検出感度を高めることができる。
【0016】
前記課題を解決するためになされた第2の発明は、前記第1の発明において、前記表面ボードは、タッチ操作により撓み変形可能な可撓性を有する合成樹脂材料にて形成され、前記保護部のうちの少なくとも表面側の前記第1の保護部は、タッチ操作により圧縮変形可能な柔軟性を有する合成樹脂材料にて形成された構成とする。
【0017】
これによると、タッチ操作に応じて表面ボードが撓みながら保護部が圧縮変形することで、指示物(ユーザの指先及びスタイラスや指示棒等の導電体)と電極との距離が縮まるため、タッチ操作による静電容量変化が大きくなり、タッチ操作の検出感度をより一層高めることができる。
【0018】
前記課題を解決するためになされた第3の発明は、前記第1・第2の発明において、前記第1・第2の電極が、両者を絶縁する前記支持シートの表裏各面にそれぞれ設けられた構成とする。
【0019】
これによると、第1の電極と第2の電極との間に支持シートが介在し、第1の保護部と第2の保護とが支持シートによって仕切られると共に、第1の電極間に形成される空隙と第2の電極間に形成される空隙とが支持シートによって仕切られた状態となるため、空隙を最適な形態に形成することができる。また、電極交点に形成されるコンデンサの静電容量を支持シートの厚みで管理することができるため、タッチ位置の検出精度を高めることができる。
【0020】
前記課題を解決するためになされた第4の発明は、前記第1〜第3の発明において、前記保護部は、前記電極を全体的に覆うようにその電極に沿って帯状に設けられた構成とする。
【0021】
これによると、保護部により電極が全体的に覆われるため、電極が露出することにより生じるマイグレーションなどの電気的な不具合や、鋭利なものでタッチ面に強い衝撃が加えられた場合に生じる電極の破損を避けることができる。
【0022】
前記課題を解決するためになされた第5の発明は、タッチ面が形成された表面ボードと、この表面ボードの裏面側に設けられた互いに並走する複数の第1の電極と、この第1の電極に交差するようにその裏面側に設けられた互いに並走する複数の第2の電極と、前記第1・第2の電極をそれぞれ保護する第1・第2の保護部と、前記第1・第2の電極及び前記第1・第2の保護部を支持する支持シートとを備えたタッチパネル装置の製造方法であって、前記支持シートの一面に電極形成材料を線状に付着させて前記第1の電極を形成する工程と、前記支持シートの一面に前記第1の電極を覆うように保護部形成材料を帯状に付着させて前記第1の保護部を形成する工程と、前記支持シートの他面に電極形成材料を線状に付着させて前記第2の電極を形成する工程と、前記支持シートの他面に前記第2の電極を覆うように保護部形成材料を帯状に付着させて前記第2の保護部を形成する工程と、前記の各工程を経て前記支持シートに前記第1・第2の電極及び前記第1・第2の保護部を形成して得られた電極シートと前記表面ボードとを張り合わせる工程とを有する構成とする。
【0023】
これによると、非タッチ状態での全体的な静電容量を減少させてタッチ操作の検出感度を高めるために、並走する電極間に空隙が形成されたタッチパネル装置を、効率良く製造することができる。
【0024】
前記課題を解決するためになされた第6の発明は、前記第5の発明において、前記電極形成材料及び前記保護部形成材料の前記支持シートへの付着はスクリーン印刷により行われる構成とする。
【0025】
これによると、大型化への対応が容易である。また生産性を高めることができるため、製造コストを削減することができる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明によるタッチパネル装置を示す全体構成図である。このタッチパネル装置1は、互いに並走する複数(例えば120本)の送信電極(第1の電極)2と互いに並走する複数(例えば186本)の受信電極(第2の電極)3とが格子状に配置されたパネル本体4と、送信電極2に対して駆動信号(パルス信号)を印加する送信部5と、送信電極2に印加された駆動信号に応答した受信電極3の充放電電流信号を受信して、送信電極2と受信電極3とが交差する電極交点ごとのレベル信号を出力する受信部6と、この受信部6から出力されるレベル信号に基づいてタッチ位置を検出すると共に送信部5及び受信部6の動作を制御する制御部7とを備えている。
【0028】
このタッチパネル装置1は、大画面の表示装置と組み合わせることで、プレゼンテーションや講義に用いることができるようにした、いわゆるインタラクティブホワイトボードとして用いられ、特にここでは、プロジェクタ装置と組み合わせて用いられ、タッチパネル装置1のタッチ面がプロジェクタ用のスクリーンとなる。
【0029】
タッチパネル装置1から出力されるタッチ位置情報は、パソコンなどの外部機器8に入力され、外部機器8から出力される表示画面データに基づいてプロジェクタ装置9によりタッチパネル装置1のタッチ面上に投影表示される表示画面上に、タッチパネル装置1のタッチ面上でユーザが指示物(ユーザの指先及びスタイラスや指示棒等の導電体)で行ったタッチ操作に対応した画像が表示され、タッチパネル装置のタッチ面にマーカーで直接描画をするのと同様の感覚で所要の画像を表示させることができ、また表示画面に表示されたボタンなどを操作することができる。さらに、タッチ操作で描かれた画像を消去するイレーサを用いることもできる。
【0030】
送信電極2及び受信電極3は同一の配置ピッチ(例えば10mm)で配置されており、その送信電極2と受信電極3とが交差する電極交点にはコンデンサが形成され、ユーザが指示物でタッチ操作を行うと、これに応じて電極交点の静電容量が実質的に減少することで、タッチ操作の有無を検出することができる。
【0031】
特にここでは、相互容量方式が採用され、送信電極2に駆動信号を印加すると、これに応答して受信電極3に充放電電流が流れ、このとき、ユーザのタッチ操作に応じて電極交点の静電容量が変化すると、受信電極3の充放電電流が変化し、この充放電電流の変化量を受信部6で電極交点ごとのレベル信号(ディジタル信号)に変換して制御部7に出力し、制御部7では、電極交点ごとのレベル信号に基づいてタッチ位置が算出される。この相互容量方式では、同時に複数のタッチ位置を検出する、いわゆるマルチタッチ(多点検出)が可能である。
【0032】
送信部5は、制御部7から出力されるタイミング信号に同期して、送信電極2を1本ずつ選択して駆動信号を印加する。受信部6は、1本の送信電極2に駆動信号を印加する間に、受信電極3を1本ずつ選択して受信電極3の充放電電流を受信する。これにより、全ての電極交点ごとの充放電電流を取り出すことができる。なお、例えば全ての電極交点(186×120(=22320))について充放電電流の受信が終了するフレーム周期が10msとすると、120本の送信電極2の1本あたりの駆動信号出力期間は約83μsとなる。
【0033】
制御部7は、受信部6から出力される電極交点ごとのレベル信号から所定の演算処理によってタッチ位置(タッチ領域の中心座標)を求める。このタッチ位置の演算では、X軸方向(送信電極2の延在方向)とY軸方向(受信電極3の延在方向)とでそれぞれ隣接する複数(例えば4×4)の電極交点ごとのレベル信号から所要の補間法(例えば重心法)を用いてタッチ位置を求める。これにより、送信電極2及び受信電極3の配置ピッチ(10mm)より高い分解能(例えば1mm以下)でタッチ位置を検出することができる。
【0034】
図2は、図1に示した受信電極3及び受信部6の概略構成図である。各受信電極3には、受信電極3の充放電電流信号の受信部6への入力を断続するスイッチング素子(スイッチング手段)SWが接続されている。受信部6は、スイッチング素子SWを介して受信電極3から入力される充放電電流信号に対して所要の信号処理を行う受信信号処理部21とを備えている。各スイッチング素子SWは制御部7からの駆動信号に応じて個別にオン/オフ制御される。
【0035】
受信電極3及びスイッチング素子SWは、所定数(例えば24本)ごとにグループ化され、各グループに属するスイッチング素子SWの互いに対応するもの同士が並行してオン/オフ制御される。また、各グループごとに受信信号処理部21が設けられている。各グループではスイッチング素子SWが1つずつ順にオンとなるように制御され、残りのスイッチング素子SWはオフに制御されており、スイッチング素子SWをオンとすることで選択された1本の受信電極3の充放電電流信号が受信信号処理部21に入力される。
【0036】
このように、スイッチング素子SWのスイッチング動作が複数のグループ間で並行して行われるため、全ての受信電極3の充放電電流信号を受信するのに要する時間を短縮することができる。また、受信部6での充放電電流信号の処理をグループごとに分割して行うことができるため、ハードウエア構成の大型化を抑えることができる。
【0037】
なお、受信電極3のグループ化では、各グループに属する受信電極3の本数を同一とする必要はなく、例えば受信電極3が186本の場合、7つのグループA〜Gを24本とし、最後のグループHを18本とすればよい。
【0038】
図3は、図2に示した受信信号処理部21の概略構成図である。この受信信号処理部21は、IV変換部31と、バンドパスフィルタ32と、絶対値検出部33と、積分部34と、サンプルホールド部35と、AD変換部36とを備えている。
【0039】
IV変換部31では、スイッチング素子SWを介して入力される受信電極3の充放電電流信号(アナログ信号)が電圧信号に変換される。バンドパスフィルタ32では、IV変換部31の出力信号に対して、送信電極2に印加される駆動信号の周波数以外の周波数成分を有する信号を除去する処理が行われる。絶対値検出部(整流部)33では、バンドパスフィルタ32の出力信号に対して全波整流が行われる。積分部34では、絶対値検出部33の出力信号を時間軸方向に積分する処理が行われる。サンプルホールド部35では、積分部34の出力信号を所定のタイミングでサンプリングする処理が行われる。AD変換部36では、サンプルホールド部35の出力信号をAD変換してレベル信号(ディジタル信号)を出力する。
【0040】
図4は、図1に示したパネル本体4を切断して示す模式的な斜視図である。パネル本体4は、タッチ面11が形成された表面ボード12と、送信電極2を保護する第1の保護部13と、受信電極3を保護する第2の保護部14と、送信電極2及び受信電極3並びに第1・第2の保護部13・14を支持する支持シート15とを備えている。
【0041】
送信電極2及び受信電極3は、両者を絶縁する支持シート15の表裏各面にそれぞれ設けられており、送信電極2及び受信電極3と第1・第2の保護部13・14と支持シート15とが一体化されて電極シート16を構成している。電極シート16の背面側には背面ボード17が設けられる。
【0042】
第1の保護部13は、互いに並走する送信電極2間に空隙18が形成されるように、支持シート15の表面側に部分的に設けられている。第2の保護部14も、互いに並走する受信電極3間に空隙19が形成されるように、支持シート15の裏面側に部分的に設けられている。
【0043】
特にここでは、第1の保護部13が、送信電極2を全体的に覆うようにその送信電極2に沿って帯状に設けられており、第2の保護部14も、受信電極3を全体的に覆うようにその受信電極3に沿って帯状に設けられている。これにより、保護部13・14で電極2・3が全体的に覆われるため、電極2・3が露出することにより生じるマイグレーションなどの電気的な不具合や、鋭利なものでタッチ面11に強い衝撃が加えられた場合に生じる電極2・3の破損を避けることができる。
【0044】
また、送信電極2と受信電極3との間に支持シート15が介在し、送信電極2を保護する第1の保護部13と、受信電極3を保護する第2の保護部14とが、支持シート15によって仕切られると共に、送信電極2間に形成される空隙18と、受信電極3間に形成される空隙19とが、支持シート15によって仕切られた状態となり、空隙18・19を最適な形態、すなわち送信電極2及び受信電極3に沿って真直に延在する形態に形成される。
【0045】
表面ボード12は、タッチ操作により撓み変形可能な可撓性を有する合成樹脂材料にて形成される。特にこの表面ボード12の合成樹脂材料には、指示物によるタッチ操作の検出感度を高めるために誘電率の高いもの(例えば比誘電率6程度)が用いられる。また、表面ボード12は例えば1.2mmの厚さに形成される。
【0046】
送信電極2及び受信電極3は例えば10μmの厚さで形成され、第1・第2の各保護部13・14は、送信電極2及び受信電極3を例えば約20μm程度の厚さで被覆するように設けられる。第1の保護部13は、タッチ操作により圧縮変形可能な柔軟性を有する合成樹脂材料にて形成される。第2の保護部14も、第1の保護部13と同様の材料にて形成される。この保護部13・14の合成樹脂材料としてはウレタン樹脂が好適である。
【0047】
また、送信電極2及び受信電極3は例えば0.6mmの幅で形成される。第1・第2の各保護部13・14は例えば6.5mmの幅で形成され、送信電極2及び受信電極3の配置ピッチを例えば10mmとすると、空隙18・19は3.5mmの幅で形成される。
【0048】
支持シート15は、送信電極2と受信電極3との間に介在して両者を絶縁する絶縁層として機能し、絶縁性の高い合成樹脂材料にて形成される。この支持シート15の合成樹脂材料としてはPET(Polyethylene terephthalate)が好適である。また、支持シート15の厚さで、電極交点に形成されるコンデンサの静電容量を管理することができ、この支持シート15の厚さは例えば0.1〜0.2mm程度とすると良い。
【0049】
図5は、図4に示したパネル本体4に形成される電場の状況を示す模式的な断面図である。図5(A)は、初期状態を、図5(B)は、指示物(ユーザの指先及びスタイラスや指示棒等の導電体)Aでタッチ操作を行った際の状態をそれぞれ示す。
【0050】
図5(B)に示すように、指示物Aでタッチ操作を行うと、指示物Aと送信電極2との間に静電結合が生じるために、送信電極2と受信電極3との間の全体的な静電容量CがΔCだけ減少する。前記のように、送信電極2に駆動信号(パルス信号)を印加すると、受信電極3に充放電電流が発生し、この充放電電流の変化量に基づいてタッチ位置が検出されるが、この充放電電流の変化量はタッチ操作時の静電容量変化ΔCに応じて変化し、非タッチ状態での全体的な静電容量Cに対するタッチ操作時の静電容量変化ΔCの比率ΔC/Cが、タッチ操作の検出感度を左右する。
【0051】
ここで、隣り合う送信電極2の間には空隙18が形成されており、この空隙18により隣り合う送信電極2の間に誘電率が低い空気が介在するため、隣り合う送信電極2間の静電容量(寄生容量)が減少する。また、隣り合う受信電極3の間にも空隙19が形成されており、この空隙19により隣り合う受信電極3の間に誘電率が低い空気が介在するため、隣り合う受信電極3間の静電容量(寄生容量)が減少する。このため、非タッチ状態での送信電極2と受信電極3との間の全体的な静電容量Cが減少する。これによりタッチ操作時の静電容量変化ΔCが相対的に大きくなる、すなわちΔC/Cが大きくなるため、タッチ操作の検出感度を高めることができる。
【0052】
また前記のように、表面ボード12は、タッチ操作により撓み変形可能な可撓性を有する合成樹脂材料にて形成され、第1の保護部13は、タッチ操作により圧縮変形可能な柔軟性を有する合成樹脂材料にて形成されている。さらに、表面ボード12の裏面側に第1の保護部13が部分的に設けられて空隙18が存在するため、表面ボード12が撓みやすくなっている。このため、指示物Aでタッチ操作を行うと、表面ボード12が撓みながら第1の保護部13が圧縮変形する。これにより指示物Aと送信電極2との距離が縮まるため、タッチ操作による静電容量変化ΔCが大きくなり、タッチ操作の検出感度をより一層高めることができる。
【0053】
なお、タッチ操作により指示物Aと送信電極2との距離が短くなるようにするには、第1・第2の保護部13・14のうちの少なくとも表面側の第1の保護部13が、タッチ操作により圧縮変形可能な柔軟性を有する合成樹脂材料にて形成されていれば良く、第2の保護部14にはこのような柔軟性は特に必要でない。
【0054】
図6は、図4に示したパネル本体4の製造工程を示す斜視図である。ここでは、図6(A)に示すように、支持シート15の一面に電極形成材料を線状に付着させて送信電極2を形成する工程と、図6(B)に示すように、支持シート15の一面に送信電極2を覆うように保護部形成材料を帯状に付着させて第1の保護部13を形成する工程と、図6(C)に示すように、支持シート15の表裏を反転させる工程と、図6(D)に示すように、支持シート15の他面に電極形成材料を線状に付着させて受信電極3を形成する工程と、図6(E)に示すように、支持シート15の他面に受信電極3を覆うように保護部形成材料を帯状に付着させて第2の保護部14を形成する工程と、図6(F)に示すように、前記の各工程を経て支持シート15に送信電極2及び受信電極3並びに第1・第2の保護部13・14を形成して得られた電極シート16と表面ボード12とを張り合わせる工程とを有している。
【0055】
図6(A)に示す送信電極2を形成する工程、図6(B)に示す第1の保護部13を形成する工程、図6(D)に示す受信電極3を形成する工程、並びに図6(E)に示す第2の保護部14を形成する工程の各工程では、支持シート15に付着させた電極形成材料及び保護部形成材料の硬化を加熱により促進するベイク処理が行われる。なお、ベイク処理によるPET製の支持シート15の寸法変化を抑えるため、図5に示す工程に入る前に、支持シート15を加熱して予め収縮させるプリベイクを行うようにすると良い。
【0056】
電極形成材料及び保護部形成材料の支持シート15への付着はスクリーン印刷により行われる。このスクリーン印刷では、電極2・3及び保護部13・14に対応したパターンのマスキングをメッシュに施した印刷製版が用いられ、その印刷製版上でスキージを摺動させることで、印刷製版上の電極形成材料及び保護部形成材料を、印刷製版の下方に配置された支持シート15上に転写する。このスクリーン印刷によれば、大型化への対応が容易であり、また生産性を高めることができるため、製造コストを削減することができる。
【0057】
電極2・3を形成する電極形成材料は、いわゆる導電性インクであり、金属パウダなどの導電性を付与する導電性フィラー、これを均一に分散させるためのバインダ樹脂、スクリーン印刷に適した流動性を得るための有機溶剤、付着状態を確認するための顔料などからなる。この電極形成材料には、導電性フィラーにAgを用いたAgペーストが好適である。
【0058】
保護部13・14を形成する保護部形成材料は、硬化状態で所要の柔軟性を有する合成樹脂、スクリーン印刷に適した流動性を得るための有機溶剤、付着状態を確認するための顔料などからなる。この保護部形成材料の合成樹脂には、前記のようにウレタン樹脂が好適である。
【0059】
なお、タッチ操作の検出感度を高める上では、保護部13・14の幅を狭くして空隙18・19の幅を大きくした方が良いが、製造工程において電極2・3と保護部13・14との間に位置ずれが発生することが避けられないため、電極2・3が完全に保護部13・14で覆われた状態に製作するには、電極2・3の幅に対して十分に余裕のある幅に保護部13・14を形成する必要があり、このような観点から、前記のように、電極2・3の幅を0.6mmとした場合、保護部13・14の幅を6.5mmとする、すなわち電極2・3の延在方向の中心線から±3.25mmの幅で保護部13・14を形成すると良い。
【0060】
図7は、図4に示した電極シート16の製造装置を示す模式図である。ここでは、支持シート15のロール71から支持シート15を繰り出して電極2・3及び保護部13・14を順次形成して電極シート16としてロール86に巻き取るロール・ツー・ロール方式が採用され、上段には搬送方向に沿って、電極印刷部72と、ヒータ73と、保護部印刷部75と、ヒータ76とが順次設けられ、下段にも搬送方向に沿って、電極印刷部80と、ヒータ81と、保護部印刷部83と、ヒータ84とが順次設けられている。
【0061】
電極印刷部72では、支持シート15の一面に、送信電極2を形成する電極形成材料を線状に付着させる処理が行われる。保護部印刷部75では、支持シート15の一面に送信電極2を覆うように、第1の保護部13を形成する保護部形成材料を帯状に付着させる処理が行われる。電極印刷部80では、支持シート15の他面に、受信電極3を形成する電極形成材料を線状に付着させる処理が行われる。保護部印刷部83では、支持シート15の他面に受信電極3を覆うように、第2の保護部14を形成する保護部形成材料を帯状に付着させる処理が行われる。
【0062】
電極印刷部72・80及び保護部印刷部75・83では、電極形成材料及び保護部形成材料の支持シート15への付着処理がスクリーン印刷により行われる。ヒータ73・76・81・84では、支持シート15に付着させた電極形成材料及び保護部形成材料の硬化を促進するベイク処理が行われる。なお、ベイク処理によるPET製の支持シート15の寸法変化を抑えるため、支持シート15のロール71を加熱して予め収縮させるプリベイクを行うようにすると良い。ヒータ73・76・81・84の後段には加圧ローラ74・77・82・85が設けられており、この加圧ローラ74・77・82・85により、支持シート15に付着させた電極形成材料及び保護部形成材料を締め固める処理が行われる。
【0063】
スクリーン印刷では、印刷製版の下方に支持シート15を配置して印刷製版上の電極形成材料及び保護部形成材料を支持シート15上に転写することになるため、図6(C)に示したように、支持シート15の表裏を反転させる工程が必要となるが、図7に示すロール・ツー・ロール方式では、搬送ローラ78・79により支持シート15を転向して、上段と下段とで逆向きに支持シート15を搬送することで、支持シート15の表裏を反転させることができる。
【0064】
なお、図7に示すロール・ツー・ロール方式で製作された電極シート16は、所要の寸法に裁断した上で表面ボード12と張り合わせられる。この他、所要の大きさの電極シート16を1枚ずつ製作することも可能である。この場合、支持シート15を所定寸法に裁断して外型枠に固定した状態で、図5に示す各工程を実施すれば良い。
【0065】
また、前記の例では、電極2・3を形成する電極形成材料及び保護部13・14を形成する保護部形成材料を所定のパターンで支持シート15に付着させるためにスクリーン印刷を採用したが、この他に、インクジェット工法やノズルプリンティング工法も可能である。
【0066】
また、前記の例では、送信電極2及び受信電極3を支持シート15の表裏各面にそれぞれ設けた構成としたが、送信電極2と受信電極3は互いに絶縁されていればよく、例えば送信電極2及び受信電極3が共に支持シート15の一面に絶縁層を介して配置された構成としてもよい。さらに、特に絶縁材を設けずに、送信電極2及び受信電極3を保護する保護部に絶縁層の機能を与え、送信電極2と受信電極3とを保護部で絶縁する構成としてもよい。
【0067】
また、前記の例では、保護部13・14を、電極2・3を全体的に覆うようにその電極2・3に沿って帯状に設けた構成としたが、保護部が電極を部分的に覆う構成、例えば、帯状の保護部を電極の延在方向に直交する向きに配置した構成も可能であるが、電極が露出することによる不具合を考慮すると、保護部により電極が全体的に覆われた構成が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明にかかるタッチパネル装置及びその製造方法は、大型化した場合でも強度や取り扱い性を損なうことなくタッチ位置の検出を高精度に行うことができる効果を有し、タッチ面が形成された表面ボードと、この表面ボードの裏面側に設けられた複数の電極と、この電極を保護する保護部とを備えたタッチパネル装置及びその製造方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 タッチパネル装置
2 送信電極(第1の電極)
3 受信電極(第2の電極)
4 パネル本体
11 タッチ面
12 表面ボード
13 第1の保護部
14 第2の保護部
15 支持シート
16 電極シート
17 背面ボード
18・19 空隙
A 指示物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ面が形成された表面ボードと、この表面ボードの裏面側に設けられた互いに並走する複数の第1の電極と、この第1の電極に交差するようにその裏面側に設けられた互いに並走する複数の第2の電極と、前記第1・第2の電極をそれぞれ保護する第1・第2の保護部と、前記第1・第2の電極及び前記第1・第2の保護部を支持する支持シートとを備え、
前記保護部は、互いに並走する前記電極間に空隙が形成されるように、前記表面ボードの裏面側に部分的に設けられたことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記表面ボードは、タッチ操作により撓み変形可能な可撓性を有する合成樹脂材料にて形成され、前記保護部のうちの少なくとも表面側の前記第1の保護部は、タッチ操作により圧縮変形可能な柔軟性を有する合成樹脂材料にて形成されたことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記第1・第2の電極が、両者を絶縁する前記支持シートの表裏各面にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記保護部は、前記電極を全体的に覆うようにその電極に沿って帯状に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
タッチ面が形成された表面ボードと、この表面ボードの裏面側に設けられた互いに並走する複数の第1の電極と、この第1の電極に交差するようにその裏面側に設けられた互いに並走する複数の第2の電極と、前記第1・第2の電極をそれぞれ保護する第1・第2の保護部と、前記第1・第2の電極及び前記第1・第2の保護部を支持する支持シートとを備えたタッチパネル装置の製造方法であって、
前記支持シートの一面に電極形成材料を線状に付着させて前記第1の電極を形成する工程と、
前記支持シートの一面に前記第1の電極を覆うように保護部形成材料を帯状に付着させて前記第1の保護部を形成する工程と、
前記支持シートの他面に電極形成材料を線状に付着させて前記第2の電極を形成する工程と、
前記支持シートの他面に前記第2の電極を覆うように保護部形成材料を帯状に付着させて前記第2の保護部を形成する工程と、
前記の各工程を経て前記支持シートに前記第1・第2の電極及び前記第1・第2の保護部を形成して得られた電極シートと前記表面ボードとを張り合わせる工程とを有することを特徴とするタッチパネル装置の製造方法。
【請求項6】
前記電極形成材料及び前記保護部形成材料の前記支持シートへの付着はスクリーン印刷により行われることを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−141650(P2011−141650A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1096(P2010−1096)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】