説明

タッチパネル

【課題】 上基板の4箇所の隅部の有効エリアの拡大を図ると共に、ニュートンリング環の発生を防止できるタッチパネルを提供する。
【解決手段】 可撓性を有する透明絶縁基板の下面に透明電極と引き回し電極とを設けた方形形状の上基板と、透明絶縁基板の上面に透明電極と引き回し電極とを設けた方形形状の下基板とを所定の隙間を持たせて対向配置し、絶縁性のシール材で上下基板の外周域を周回して接合し、上下基板の引き回し電極の厚みがシール材の厚みより僅かに厚く、上基板が外側に向かって湾曲して上基板が傾斜を有するタッチパネルにおいて、シール材と該シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極との縦方向に対向する間隔と、横方向に対向する間隔とがほぼ同一で、かつシール材と引き回し電極との互いの隅部を結ぶ方向に対向する間隔が縦方向又は横方向に対向する間隔より大きい値に設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置の画面上に配置し使用者が情報の表示画面を指やペン等で直接押してデータを入力するタッチパネルに関し、特にニュートンリング環が発生せず入力エリアも確保されるタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の入力スイッチとしてのタッチパネルは、液晶表示装置の表示面上に配置されて使用される。このタッチパネルは可撓性を有する透明基板とその下面に形成された透明電極とからなる上基板と、透明基板とその上面に形成された透明電極とからなる下基板とが、所定の空間を隔てて透明電極同士が対面するように配置されシール剤で貼着されている。更に、下基板の透明電極上には、マトリックス状にドットスペーサが配置されている。
【0003】
このタッチパネルは、手、或いは入力ペン等の入力手段により上基板を押圧し、上基板の透明電極の何れか1点が下基板の透明電極に接触することにより、両透明電極が相互通電される。これにより、制御装置が、その位置の抵抗値によって変化された電圧値を読みとり、電位差の変化に応じて位置座標を読み込む構成となっている。このためタッチパネルの入力側の上基板は、常に下基板側に押し付けられる力が働くので長期間の使用では上基板が下基板に接触する方向に変形し、絶縁性が徐々に低下し誤動作の原因となって耐久性を低下させることが問題となっていた。
【0004】
また、これに伴って、上基板の撓んだ部分を中心にして同心円状の干渉縞、いわゆるニュートンリング環が発生する。このニュートンリング環は、見栄えが悪く、感覚的にも不快で入力動作を遅らせたり誤入力したりすることが問題となっていた。従って上基板 入力側 は外側に対してわずかに凸状に膨らんでいるか、または入力基板中央エリアが凹状にへたらないような引っ張り力、或いは外側に湾曲させようとするわずかな力が常時加わっていることが好ましい。入力側基板が樹脂フィルムの場合、撓みやすく、垂れやすいので特にこの様な状態が好ましい。また入力側が撓みにくいガラスの場合にも、撓みやすい中央付近と撓みにくい周辺部との押圧荷重を均一にする意味でも、やはり中央近辺がわずかに凸状に膨らんでいるいることが望ましい。
【0005】
このような入力側基板を凸状に湾曲させるか、或いは凹状に変形しないようにした第1の従来技術としてシール材 粘着材塗布堤 を二重に周回させ、内側のシール材をやや厚く形成することで凸状湾曲を実現している例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。図6は、この第1の従来技術におけるタッチパネルを説明するための模式図であり、図6(a)は上基板側から透視した平面図、図6(b)は図6(a)のA−A断面図、図6(c)は図6(a)のB−B断面図を示す。
【0006】
図6に示すように第1の従来技術におけるタッチパネルは上基板1と下基板6の内面には、それぞれ透明電極1A、6Aが被着形成されている。これらの透明電極1A、6Aの周囲はシール領域であり、このシール領域の内側に入力領域ARが形成されている。各透明電極1A、6Aのそれぞれは、タッチパネルの最外周に位置するシール領域において引き回し電極2と引き回し電極5Aに電気的に接続されている。引き回し電極2は上下接続給電電極5Bに接続される。この上下接続電極5Bは上下接続電極用配線5Cで基板の所定の辺に引き回される。
【0007】
上基板1の透明電極1A、下基板の引き回し電極5Aおよび上下接続電極用配線5Cのそれぞれは、図6(b)に示したように、シール領域において上絶縁層9Aと下絶縁層9Bで被覆される。これらの上絶縁層9Aと下絶縁層9Bの間を粘着層を構成する2列のシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bで粘着固定される。また、図6(c)に示したように、上基板の引き回し電極2と上下接続電極5Bはシール領域において2列のシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bで粘着固定される。シール材(粘着材塗布堤)11A、11Bは入力領域を周回して下基板6側に印刷塗布され、それぞれが頂上を持ち、各頂上が上基板1に当接して貼り付けられる。
【0008】
長辺側と短辺側に上記2列のシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bを印刷塗布する際、外側を周回するシール材(粘着材塗布堤)11Aの頂上高さが内側を周回するシール材(粘着材塗布堤)11Bの頂上高さより低くなるようにする。このようなシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bを用いて上基板1の周縁を下基板6の周縁に粘着固定することにより、上基板1は下基板6に対して入力領域AR方向に開いた傾きで粘着固定される。その結果、上基板1は全体として上に凸となる形状で下基板6に粘着されて一体化される。これによって上基板1の撓みを防止して、ニュートンリングの発生を回避しようとするものである。
【0009】
また、第2の従来例として引き回し電極の高さを、最外周のシール材よりわずかに高く形成し、同じく上基板全体の断面が略台形状に変形するような構成とした例がある(例えば、非特許文献1参照。)。図7は、この第2の従来技術におけるタッチパネルを説明するための模式図であり、図7(a)は上基板側から透視した平面図、図7(b)は図7(a)のX−X断面図である。図7に示すようにこのタッチパネル50は、方形形状をなす下基板41と可撓性を有する上基板51と対向配置し、シール材17で外縁を周回して貼合わせ一体化されている。下基板41の上面には透明電極3と、この透明電極3の対向する両辺に沿って接続形成されFPC9の取付部まで延設した一対の引き回し電極44及び45とが形成されている。また、透明電極3上にマトリツクス状に配置したドットスペーサ48が設けられている。さらに、基板41のFPC19の取付部付近には後述する上基板51の引き回し電極54、55に導通接続を行うため接続電極46、47が形成されている。
【0010】
上基板51には下面に透明電極13と、この透明電極13の対向する両辺に沿って接続形成されFPC19の取付部方向に向かって延設した一対の引き回し電極54、55とが形成されている。この上下基板51、41の引き回し電極54、55及び44、45が方形配置となるように対向配置し、上下基板51、41とに10μm前後の隙間を持たせてスペーサボール17cを分散したシール材17で上下基板51、41とを接着固定している。この上基板51に設けた引き回し電極54、55、及び下基板41に設けた引き回し電極44、45はシール材17の厚みより僅かに厚く形成している。このため、上下基板51、41を貼合わせたときに、図7(b)に示すように、上基板51は外側に膨らんで湾曲した形状になる。これによって上基板1の内側への撓みを防止して、ニュートンリング環の発生を回避しようとするものである。
【0011】
【特許文献1】特開2002−196886号公報(第2−3頁、図1)
【非特許文献1】特願2003−075098号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、タッチパネルにおけるニュートンリング環の発生防止対策として開示されている第1の従来例において下基板に対して上基板が凸状に湾曲するように構成する技術は、シール材を二重に周回させているため入力可能エリアが減少する。また、上下基板にガラス材料を使用するタッチパネルにおいては上下基板の間隙が10μm前後と、小さく設定する必要があり、第1の従来例のように引き回し電極とシール材を重ね合わせることは困難であり、二重構造のシール材の内側に電極を這わせる必要があり、入力エリアは減少せざるを得ないという問題があった。
【0013】
このような第1の従来例の問題点を解決するために、第2の従来例では引き回し電極の高さを、最外周のシール材よりわずかに高く形成し、同じく上基板全体の断面が略台形状に湾曲するような構成としている。しかしながら、図11に示すよう上基板51の湾曲面の傾斜角Qの値はシール材17の内周とシール材17の内周に沿って隣接配置されている引き回し配線45の外周との間隔bと、シール材17の高さと引き回し配線45の高さの差tとの関係によって決まる。したがって、シール材17と引き回し配線45との間隔bやシール材17と引き回し配線45との高さの差tがばらつくと上基板51の湾曲形状に歪みが生じ未接触不良または押圧荷重が上昇するおそれがある。また、図12に示すように入力点Bと接触点Pとが一致せず直線性(リニアリティ)の誤差が大きくなるおそれがある。
【0014】
さらに、第2の従来例におけるシール材17はスクリーン印刷等でエポキシインクを印刷形成した後、加圧焼成で硬化させるので、スクリーン版の4隅が略直角の状態であっても加圧で潰れてRが付いて略円弧状の形状なる。一方シール材17の内周に沿って隣接配置されている引き回し配線45、54は印刷形成した後、加圧されないため隅部が略直角の状態を保っている。図8は図7におけるA部の部分拡大平面図である。また、図9(a)は図8のC−C断面図、図9(b)は図8のD−D断面図である。図8に示すように、シール材17と引き回し配線45との互いの隅部を結ぶ方向に対向する間隔、即ち、隅部におけるシール材17の内周とシール材17の内周に沿って隣接配置されている引き回し配線45の外周との間隔aの値が、シール材17と引き回し配線45との横方向に対向する間隔bの値より小さくなる。
【0015】
この結果、図9(a)に示す基板51の隅部における傾斜角Pの値が図9(b)に示す基板51の横方向における斜面の傾斜角Qの値より大きくなる。他の隅部においても同様であり、この結果、図10に示すように略角錐台形状の上基板51の4辺に対応する斜面51a、51b、51c、51dが交差する4箇所の隅部に直線上の角部16a、16b、16c、16dが出現する。図10(b)は図10(a)におけるE−E断面を示す。このような角部16a、16b、16c、16dでは内側への変形強度が上昇し、上基板51の可撓性が低下するため、この4隅の角部16a、16b、16c、16d付近がタッチパネルとして機能しなくなり、有効エリアが減少するという問題があった。
【0016】
(発明の目的)
本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、略角錐台形状の上基板の4辺に対応する斜面が交差する4箇所の隅部に発生する直線上の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することによって、上基板の4箇所の隅部の押圧荷重の上昇を緩和し、隅部における有効エリアの拡大を図ることにある。
また、凸状に湾曲した上基板の頂点をほぼ直線状に保ち、直線性(リニアリティ)や押圧荷重の均一化を図ると共に、ニュートンリング環の発生を防止し耐久性に優れるタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するための本発明のタッチパネルは、可撓性を有する透明絶縁基板の下面に透明電極と引き回し電極とを設けた方形形状の上基板と、透明絶縁基板の上面に透明電極と引き回し電極とを設けた方形形状の下基板とを所定の隙間を持たせて対向配置し、絶縁性のシール材で上下基板の外周域を周回して接合し、上下基板の引き回し電極の厚みがシール材の厚みより僅かに厚く、上基板が外側に向かって湾曲して上基板が傾斜を有するタッチパネルにおいて、シール材と該シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極との縦方向に対向する間隔と、横方向に対向する間隔とがほぼ同一で、かつシール材と引き回し電極との互いの隅部を結ぶ方向に対向する間隔が縦方向又は横方向に対向する間隔より大きい値に設定されていることを特徴とする。
【0018】
また、シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極の端部または隅部が略円弧状の形状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、シール材は内周の4隅が略直角に形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、シール材は内周の4隅に凹部を有することを特徴とする。。
【0021】
また、上基板の傾斜は1mm当たり0.0015〜0.006mmの傾斜であることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。
【0022】
また、上基板はガラス板からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明のタッチパネルはシール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極の端部または隅部を略円弧状の形状に形成し、シール材の内周の4隅を略直角に形成することによって、上基板の4辺に対応する斜面が交差する4箇所の隅部に発生する直線状の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することができる。これによって、上基板の4箇所の隅部の押圧荷重の上昇を緩和し、隅部の有効エリアを拡大することができる。
【0024】
また、シール材と該シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極との縦方向に対向する間隔と、横方向に対向する間隔とがほぼ同一となるように構成することで、凸状に湾曲した上基板の頂点がほぼ直線状になり、直線性(リニアリティ)の誤差を小さくすると共に押圧荷重を均一化することができる。この結果、ニュートンリング環の発生を防止し、耐久性に優れたタッチパネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図1から図5に基づいて本発明の実施形態におけるタッチパネルについて説明する。図1は本実施形態におけるタッチパネルを示す模式図で、図1(a)は上基板側から透視した平面図、図1(b)は図1(a)のF−F断面図である。また、図2は図1におけるA部の部分拡大図、図3は図1おけるB部、C部の部分拡大図である。また、図4は本実施形態におけるシール材の隅部の形状を示す図である。図5は図1におけるG−G断面図である。本実施形態におけるタッチパネルはシール材と引き回し電極の形状、配置に特徴があり、その他の基本的な構成は従来技術と類似している。したがって従来技術と同様の構成要素については同一番号を付与し説明を省略する。
【0026】
図1に示すように、タッチパネル40は、上基板31と下基板41とを透明電極3、13同士が互いに対向するようにシール剤27を介して配置し、上下基板31、41の周辺部が一定間隔を保つように、シール剤27で貼着され一体化されている。
【0027】
下基板41は厚みが1.1mmのソーダガラス板からなり、このソーダガラス板に透明電極3と、透明電極3の対向する両辺にそれぞれ電気的に接続される引き回し電極24、25とが形成されている。引き回し電極24、25はシール剤27の内周に沿うように配置され、その一端が下基板41の一辺においてまとめられ、FPC19の端部と接続されている。透明電極3は、厚みが50〜4000オングストローム程度のITO膜をスパッタリング或いはCVD等により成膜し、エッチング加工によりパターン形成される。又、引き回し電極24、25は銀粉等の導電性金属粉を熱硬化性のエポキシ樹脂に混入したインクからなる銀ペースト膜をスクリーン印刷法等により印刷し、130℃で約60分焼成して厚さ12μmに形成される。さらに、基板41のFPC19の取付部付近には後述する上基板31の引き回し電極34、35に導通接続を行うため接続電極46、47が形成されている。
【0028】
更に、透明電極3の表面上には、ドットスペーサ48がマトリックス状に配列されている。ドットスペーサ48は、大きさが30〜40μm程度の円形の形状で、基板からの高さが3〜5μm程度に設定されている。更に、ドットスペーサ48同士の中心間距離は4〜5mm程度に設定されている。また、ドットスペーサ48はエポキシ樹脂系の紫外線硬化型樹脂をマトリックス状に印刷し、紫外線を照射して硬化させ形成される。
【0029】
上基板31は、厚みが0.2mmのマイクロガラス板からなり、下基板41と同様に透明電極13が形成されており、この透明電極13の対向する両辺のそれぞれに接続する引き回し電極34、35が前述の下基板41の引き回し電極24、25と同様に厚さ12μmで形成されている。この引き回し電極34、35は下基板41のFPC19の取付部付近に設ける接続電極46、47に導通接続されるように延長配置されている。上基板31として使用されるマイクロガラスの材質としては、ホウケイ酸ガラス等が例としてあげられる。
【0030】
この上下基板31、41の引き回し電極34、35及び24、25が方形配置となるように対向配置し、上下基板31、41の周辺部が10μm程度の一定間隔を保つように、シール剤27で貼着されている。シール剤27は、エポキシ樹脂接着剤等が選択され、スクリーン印刷等の方法で幅0.5mm、厚さ30μmで印刷され、上下基板の張り合わせ工程において焼成され幅1.5mm、厚さ10μmに形成される。又、このシール剤27には、スペーサ部材27cとして粒径が10μmの大きさのプラスチックボールが分散されており、このスペーサ部材27cもって上基板31と下基板41との周辺部を10μmの間隔に保持する役目を成している。上基板31に設けた引き回し電極34、35、及び下基板41に設けた引き回し電極24、25の厚みはシール材17の厚み10μmより厚く12μmに形成されている。このため、上下基板31、41を貼合わせたときに、図1(b)に示すように、上基板31は外側に膨らんで略角錐台形状に湾曲した形状になる。この上下基板の貼り合わせ方法は、上基板31の上面外周部に額縁状の合い紙を載置して押圧する。これは合い紙の弾力性を利用するものであるが従来技術と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0031】
シール材27は内周の4隅が略直角に形成されている。このように内周の隅部27aを略直角に形成するには、エポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷等の方法で下基板41の周囲に沿って印刷形成する時、図4(a)に示すようにエポキシ樹脂接着剤の印刷パターン26の内周の隅部26aに凹部28Aを設ける。この凹部28Aの大きさを適正に設定することにより、上下基板31、41を貼合わせる工程において加熱、加圧することによってエポキシ樹脂接着剤が押しつぶされ凹部28Aにエポキシ樹脂接着剤が流れ込む。これによって図4(b)に示すようにシール材27の内周の隅部27aが略直角に形成される。
【0032】
また、シール材27の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極25、34は、シール材27との縦方向に対向する間隔bと、横方向に対向する間隔bとがほぼ同一となるように配置される。さらに引き回し電極25、34の端部または隅部が略円弧状の形状に形成されている。このように、シール材27の内周の隅部27aを略直角に形成し、引き回し電極25、34の端部または隅部が略円弧状の形状に形成することによって、隅部におけるシール材27の内周と引き回し配線25、34の外周との間隔の値をシール材27と引き回し電極25、34との縦方向または横方向に対向する間隔bより大きくすることができる。以下、この点について詳細に説明する。
【0033】
貼り合わされた上下基板の隅部におけるシール材、引き回し配線の配置について図2、図3、図5を用いて説明する。図2(a)は図1におけるA部の部分拡大平面図、図2(b)は図2(a)のH−H断面図、図2(c)は図2(a)のJ−J断面図である。また、図3(a)は図1におけるB部の部分拡大図、図3(b)は図1におけるC部の部分拡大図である。図5は図1におけるG−G断面図である。
【0034】
図1におけるA部においては図2(a)に示すようにシール材27の内周の隅部27aが略直角に形成され、シール材27の内周に沿って隣接配置されている引き回し電極25の隅部が略円弧状に形成されている。これによって、シール材27と引き回し配線25との互いの隅部を結ぶ方向に対向する間隔、即ち、シール材27の内周の隅部27aと引き回し配線25の外周との間隔aの値が、シール材27と引き回し配線25との横方向に対向する間隔b、及び縦方向に対向する間隔bの値より大きくなる。このため図2(b)に示す基板31の隅部における傾斜角Pの値が図2(c)に示す基板31の横方向における斜面の傾斜角Qの値より小さくなる。尚、縦方向における斜面も同様に傾斜角Qとなっている。この結果、図5に示すように略角錐台形状の上基板31の2辺に対応する斜面31aと31bとが交差する斜辺隅部32に発生する直線上の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することができる。
【0035】
尚、印刷するエポキシ樹脂接着剤の印刷パターン26の内周の隅部26aに設ける凹部28Aの大きさを大きく設定して、図4(c)に示すように、シール材27の内周の隅部27aに凹部28を設けても良い。これによって、上基板31の2辺に対応する斜面31aと31bとが交差する斜辺隅部32に発生する直線上の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することが、より確実となる。
【0036】
また、基板31の隅部における傾斜角P及び基板31の横方向、縦方向における斜面の傾斜角Qの値は、1mm当たり0.0015〜0.006mmの傾斜の範囲に設定することが好ましい。この傾斜角P、Qの値が0.0015mmより小さいと、ニュートンリング環が視認されるようになり好ましくない。また、0.006mmより大きいと上基板31の湾曲の高さが大きくなり強い押圧力が必要となる。従って傾斜角P、Qの値を上記範囲とすることで、指に殆ど力の負担を欠けずタッチパネルを操作することができる。
【0037】
図1のB部においては図3(a)に示すようにシール材27の内周の隅部27aが略直角に形成され、シール材27の内周に沿って隣接配置されている引き回し配線25、34のそれぞれの端部が円弧状に形成されている。これによってシール材27の内周の隅部27aと引き回し配線25、34の端部外周との間隔aの値が、シール材27と引き回し配線34との横方向に対向する間隔b、及びシール材27と引き回し配線25との縦方向に対向する間隔bの値より大きくなる。このため前述のA部と同様に基板31の隅部における傾斜角の値が基板31の横方向及び縦方向における斜面の傾斜角の値より小さくなる。この結果、略角錐台形状の上基板31の2辺に対応する斜面が交差する隅部に発生する直線上の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することができる。
【0038】
図1におけるA部と対角に位置する隅部においては、A部の引き回し電極25に対して引き回し電極34が配置されている点が異なるだけで他は同様であり説明を省略するが、A部と同様に上基板31の2辺に対応する斜面が交差する隅部をなだらかな曲面に形成することができる。
【0039】
図1のC部においては図3(b)に示すようにシール材27の内周の隅部27aが略直角に形成され、シール材27の内周に沿って隣接配置されている引き回し配線25の隅部が略円弧状に形成されている。また、引き回し配線25の内周に沿って引き回し配線35が配置され隅部が略円弧状に形成されている。さらに引き回し配線35の内周に沿って引き回し配線24が配置され端部が略円弧状に形成されている。これらの引き回し配線25、35の隅部、引き回し配線24の端部の円弧状の形状は同心円状に形成するのが好ましい。これによってシール材27の内周の隅部27aと引き回し配線25の外周との間隔aの値が、シール材27と引き回し配線25との横方向及び縦方向に対向する間隔bの値より大きくなる。このため前述のA部と同様に基板31の隅部における傾斜角の値が基板31の横方向及び縦方向における斜面の傾斜角Qの値より小さくなる。この結果、前述のA部と同様に上基板31の2辺に対応する斜面が交差する隅部をなだらかな曲面に形成することができる。
【0040】
以上のように本実施形態におけるタッチパネル40はシール材27の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極の端部または隅部を略円弧状の形状に形成し、シール材27の内周の4隅を略直角に形成することによって、上基板31の4辺に対応する斜面が交差する4箇所の隅部に発生する直線上の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することができる。これによって、上基板31の4箇所の隅部の押圧荷重の上昇を緩和し、4隅の有効エリアを拡大することができる。また、シール材27とシール材27の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極との縦方向に対向する間隔bと、横方向に対向する間隔bとがほぼ同一となるように構成することで、凸状に湾曲した上基板31の頂点がほぼ直線状になり、直線性(リニアリティ)の誤差を小さくすると共に押圧荷重を均一化することができる。この結果、ニュートンリング環が発生せず、耐久性に優れたタッチパネル40を提供することができる。
【0041】
尚、本実施形態においては上基板にマイクロガラス板を使用した例で説明したが、これに限定されるものではなく他のガラス板、透明樹脂板を使用する場合においても適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態におけるタッチパネルを示す模式図で、図1(a)は上基板側から透視した平面図、図1(b)は図1(a)のF−F断面図である。
【図2】図1におけるA部の部分拡大図で、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のH−H断面図、図2(c)は図2(a)のJ−J断面図である。
【図3】図1の部分拡大図で、図3(a)は図1におけるB部の部分拡大図、図3(b)は図1におけるC部の部分拡大図である。
【図4】本発明の実施形態におけるシール材の隅部の形状を示す図である。
【図5】図1におけるG−G断面図である。
【図6】第1の従来技術におけるタッチパネルを示す模式図で、図6(a)は上基板側から透視した平面図、図6(b)は図6(a)のA−A断面図、図6(c)は図6(a)のB−B断面図である。
【図7】第2の従来技術におけるタッチパネルを示す模式図で、図7(a)は上基板側から透視した平面図、図7(b)は図7(a)のX−X断面図である。
【図8】図7におけるA部を示す部分拡大平面図である。
【図9】図8におけるの断面図を示し、図9(a)は図8のC−C断面図、図9(b)は図8のD−D断面図である。
【図10】第2の従来技術におけるタッチパネルを示す模式図で、図10(a)は平面図、図10(b)は図10(a)のE−E断面図である。
【図11】第2の従来技術における上基板の湾曲形状の傾斜角を説明するための図である。
【図12】第2の従来技術におけるタッチパネルのデータ入力時の上基板の変形状態を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
3、13 透明電極
19 FPC
24、25 引き回し電極
26 印刷パターン
26a 印刷パターンの隅部
27 シール剤
27A シール材
27a シール材内周の隅部
27c スペーサ部材
28 凹部
28A 印刷パターンの凹部
31 上基板
31a、31b 斜面
32 斜面隅部
34、35 引き回し電極
40、50 タッチパネル
41 下基板
46、47 接続電極
48 ドットスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する透明絶縁基板の下面に透明電極と引き回し電極とを設けた方形形状の上基板と、透明絶縁基板の上面に透明電極と引き回し電極とを設けた方形形状の下基板とを所定の隙間を持たせて対向配置し、絶縁性のシール材で前記上下基板の外周域を周回して接合し、前記上下基板の引き回し電極の厚みが前記シール材の厚みより僅かに厚く、前記上基板が外側に向かって湾曲して上基板が傾斜を有するタッチパネルにおいて、
前記シール材と該シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極との縦方向に対向する間隔と、横方向に対向する間隔とがほぼ同一で、かつ前記シール材と前記引き回し電極との互いの隅部を結ぶ方向に対向する間隔が前記縦方向又は横方向に対向する間隔より大きい値に設定されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極の端部または隅部が略円弧状の形状に形成されていることを特徴とする請求項lに記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記シール材は内周の4隅が略直角に形成されていることを特徴とする請求項lまたは請求項2記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記シール材は内周の4隅に凹部を有することを特徴とする請求項lまたは請求項2記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記上基板の傾斜は1mm当たり0.0015〜0.006mmの傾斜であることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記上基板はガラス板からなることを特徴とする請求項1または請求項5記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−31256(P2006−31256A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207373(P2004−207373)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】