説明

タッチ描画表示装置及びその操作方法

【課題】描画モード中に描画以外のタッチ操作がなされた場合でも、正しい描画を維持できるタッチ描画表示装置及びその操作方法を提供する。
【解決手段】画像を表示するための表示パネルと、表示パネルに重畳して配置され、タッチされた位置を検出するためのタッチパネルとを備えたタッチ描画表示装置において、検出されたタッチ位置の移動によって形成される軌跡に対応する線500を、表示されている画像上に描画し、軌跡によって描画以外の操作が特定された場合、その操作を特定した軌跡の開始点から終了点までに誤って描画された線502を消去する。これにより、描画モード中に描画以外のタッチ操作がなされた場合、誤った描画を残さずに、ユーザが意図した描画のみを保存することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置と入力装置とを含むタッチ描画表示装置に関し、特に、タッチ操作について描画と描画以外の操作機能とが可能なタッチ描画表示装置及びその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチ描画表示装置の1つである、会議等で用いられる電子黒板として、様々な構成のものが実用化されている。特に、大型の表示画面を有する表示装置と、タッチパネル等の2次元における位置座標を検知する入力装置とを組合せ、コンピュータシステムとして構成された電子黒板装置が利用されている。
【0003】
一般的に、電子黒板装置は、ペン等によって指定される位置座標及び移動量の情報を逐次読取り、読取った情報を元に入力の軌跡を表示装置に表示する。これによって、電子黒板装置は手書き入力等の、電子黒板としての動作を実現している。
【0004】
また、下記特許文献1には、タッチ操作を採用し、表示された画面上に描画可能な投射型のプレゼンテーション装置が開示されている。繰返し同じ画面に書込みされると元画像の認識が難しくなる問題を解決するために、本装置においては、作図領域において連続してタッチ操作される間描画し、作図領域でのタッチ操作が一旦終わった後、次に作図領域でタッチ操作が検出されると、先の図形を自動的に削除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−175776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような電子黒板装置において、描画を行なう単純なタッチ操作とは異なるタッチ操作に、描画以外の特定の機能が割当てられている場合、描画モードで描画中にその特定の機能を実行すべきタッチ操作であることを判定するまでにはしばらく時間がかかる。通常、電子黒板装置では、タッチ操作と描画との間に時間的な遅れ(タイムラグ)を生じないように、タッチされると直ちに描画される。タイムラグがあると、ユーザはストレスを感じる。このために、ユーザが意図しない誤った描画が行なわれる問題がある。例えば、マルチタッチ(複数点への同時タッチ)した状態でフリックする操作(弾くようにタッチ点をスライドさせる操作)に、画面のスクロール操作が割当てられている場合がある。この場合、ユーザが、シングルタッチ(1点のタッチ)で描画していた状態から、画面をスクロールさせるためにマルチタッチでフリック操作を行なった場合、フリック操作であることを判定するためには、所定の時間タッチされた点の軌跡を観察することが必要である。そして、上記したように、ユーザにストレスを感じさせないように、タッチに応じて速やかに描画されるので、マルチタッチのフリック操作であると判定されるまでに、ユーザが意図しない誤った描画がなされることになる。さらに、スクロールが行なわれると、誤った描画がなされた画像は画面から消えるが、描画情報は、誤った描画を含んだまま記憶される。したがって、元に戻すスクロールが実行された場合、再び誤った描画が画面に表示されることになる。印刷された場合にも、同様に誤った描画も印刷されてしまう。
【0007】
これは、電子黒板装置に限らず、タブレット型の端末装置等、タッチによる描画を表示可能な表示装置において生じる問題である。上記の特許文献1によっても、この問題は解決されない。
【0008】
したがって、本発明は、描画モード中に描画以外のタッチ操作がなされた場合でも、正しい描画を維持できるタッチ描画表示装置及びその操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、下記によって達成することができる。
【0010】
即ち、本発明に係るタッチ描画表示装置は、画像を表示するための表示部と、表示部に重畳して配置され、タッチされた位置を検出するための検出部とを備え、検出された位置の移動によって形成される軌跡に対応する線を、表示部に表示されている画像上に描画し、軌跡によって描画以外の操作が特定された場合、この操作を特定した軌跡の開始点から終了点までに描画された線を消去する。
【0011】
好ましくは、描画以外の操作を特定するための軌跡は、検出部を同時に複数の位置でタッチするマルチタッチ操作によって形成される軌跡である。
【0012】
より好ましくは、マルチタッチ操作によって形成される複数の軌跡のうち何れか1つの軌跡にのみ対応する線が描画される。
【0013】
本発明に係るタッチ描画表示装置の操作方法は、画像を表示するための表示部と、表示部に重畳して配置され、タッチされた位置を検出するための検出部とを備えたタッチ描画表示装置の操作方法であって、検出された位置の移動によって形成される軌跡に対応する線を、表示部に表示されている画像上に描画する描画ステップと、描画ステップを実行中に、軌跡によって描画以外の操作が特定されたか否かを判定するステップと、軌跡によって描画以外の操作が特定された場合、この操作を特定した軌跡の開始点から終了点までに描画された線を消去するステップとを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、描画モード中に描画以外のタッチ操作がなされた場合、描画以外のタッチ操作の判定中になされた誤った描画を残さずに、ユーザが意図した描画を記憶することができる。したがって、再度対象の画像が表示された場合にも、誤った描画が表示されず、意図した描画を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子黒板装置の構成の概要を示すブロック図である。
【図2】タッチ入力の検出方法の一例を示す図である。
【図3】表示画面の一例を示す図である。
【図4】図1に示した電子黒板装置において誤った描画の消去を実現するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図5】マルチタッチ操作の場合に記憶される座標データの構造を示す図である。
【図6】マルチタッチ操作によるスクロール操作を示す図である。
【図7】画面のスクロールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0017】
また、以下において、「タッチ」とは入力位置の検出装置が位置を検出可能な状態になることを意味し、検出装置に接触して押圧する場合、押圧せずに接触する場合、及び、接触せずに近接する場合を含む。後述するように、入力位置の検出装置には、接触型に限らず非接触型の装置を用いることもできる。非接触型の検出装置の場合には「タッチ」とは、入力位置を検出可能な距離まで検出装置に近接した状態を意味する。
【0018】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る電子黒板装置100は、演算処理部(以下、CPUと記す)102、読出専用メモリ(以下、ROMと記す)104、書換可能メモリ(以下、RAMと記す)106、記録部108、インターフェイス部(以下、IF部と記す)110、タッチ検出部112、表示部114、表示制御部116、ビデオメモリ(以下、VRAMと記す)118、及びバス120を備えている。CPU102は、電子黒板装置100全体を制御する。
【0019】
ROM104は不揮発性の記憶装置であり、電子黒板装置100の動作を制御するために必要なプログラム及びデータを記憶している。RAM106は、揮発性の記憶装置である。記録部108は、通電が遮断された場合にもデータを保持する不揮発性記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等である。記録部108は着脱可能に構成されていてもよい。CPU102は、バス120を介してROM104からプログラムをRAM106上に読出して、RAM106の一部を作業領域としてプログラムを実行する。CPU102は、ROM104に格納されているプログラムにしたがって電子黒板装置100を構成する各部の制御を行なう。
【0020】
バス120には、CPU102、ROM104、RAM106、記録部108、IF部110、タッチ検出部112、表示制御部116、及びVRAM118が接続されている。各部間のデータ(制御情報を含む)交換は、バス120を介して行なわれる。
【0021】
IF部110は、ネットワーク等の外部との接続を行ない、ネットワークに接続されたコンピュータ等との間で画像データを送受信する。IF部110を介して外部から受信した画像データは、記録部108に記録される。
【0022】
表示部114は、画像を表示するための表示パネル(液晶パネル等)である。表示制御部116は、表示部114を駆動するための駆動部を備え、VRAM118に記憶された画像データを所定のタイミングで読出し、表示部114に画像として表示するための信号を生成して、表示部114に出力する。表示される画像データは、CPU102が記録部108から読出して、VRAM118に伝送する。
【0023】
タッチ検出部112は、例えばタッチパネルであり、ユーザによるタッチ操作を検出する。タッチ検出部112にタッチパネルを用いる場合のタッチ操作の検出について、図2を参照して説明する。
【0024】
図2は、赤外線遮断検出方式のタッチパネル(タッチ検出部112)を示す。タッチパネルは、長方形の書込面の隣接する2辺にそれぞれ一列に配置された発光ダイオード列(以下、LED列と記す)200、202と、それぞれのLED列200、202に対向させて一列に配置された2つのフォトダイオード列(以下、PD列と記す)210、212とを備えている。LED列200、202の各LEDから赤外線を発光し、この赤外線を対向するPD列210、212の各PDが検出する。図2において、LED列200、202の各LEDから赤外線を上向き及び左向きの矢印で示す。
【0025】
タッチパネルは、例えばマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)(CPU、メモリ、入出力回路等を含む素子)を備え、各LEDの発光を制御する。各PDは、受光した光の強度に応じた電圧を出力する。PDの出力電圧は、アンプによって増幅される。また、各PD列210、212の複数のPDからは同時に信号が出力されるので、出力信号は一旦バッファに保存された後、PDの配列順序に応じたシリアル信号として出力され、マイコンに伝送される。PD列210から出力されるシリアル信号の順序は、X座標を表す。PD列212から出力されるシリアル信号の順序は、Y座標を表す。
【0026】
ユーザがタッチペン220でタッチパネル上の1点にタッチすると、タッチペン220のペン先によって赤外線が遮断される。したがって、遮断される前まで、その赤外線を受光していたPDの出力電圧は減少する。タッチされた位置(XY座標)に対応するPDからの信号部分が減少するので、マイコンは、受信した2つのシリアル信号の信号レベルが低下している部分を検出し、タッチされた位置座標を求める。マイコンは、決定した位置座標をCPU102に伝送する。このタッチ位置を検出する処理は、所定の検出周期で繰返されるので、同じ点が検出周期よりも長い時間タッチされていると、同じ座標データが繰返し出力される。タッチペン220を使用せずに、指でタッチ検出部112にタッチしても、同様にタッチされた位置を検出することができる。
【0027】
上記したタッチされた位置の検出技術は公知であるので、これ以上の説明は繰返さない。また、タッチ検出部112には、赤外線遮断方式以外のタッチパネル(静電容量方式、表面弾性波方式、抵抗膜方式等)を用いてもよい。なお、静電容量方式では、センサに近接していれば非接触でも位置を検出することができる。
【0028】
表示部114には、図3に示すような画面が表示される。表示部114の表示画面は、描画領域230と機能ボタン領域240とに区分されている。描画領域230は、ユーザがタッチ操作によって描画できる領域である。即ち、タッチされた点及びその移動軌跡のXY座標が、上記したようにタッチ検出部112からCPU102に伝送される。CPU102は、受信した座標データに応じて、VRAM118上の対応するメモリアドレスに所定値を書込む。VRAM118上の画像データの画素値を変更してもよいが、ここでは、VRAM118は、画像データを記憶する領域とは別に、描画データを記憶する領域(以下、オーバレイ領域とも記す)を備えているとする。この場合、例えば、オーバレイ領域の描画されていないメモリアドレスのデータを“0”として、CPU102は、描画位置に対応するメモリアドレスに“1”を書込む。表示制御部116は、画像データと描画データ(オーバレイ領域のデータ)とをスーパーインポーズして表示部114に表示する。即ち、描画データがある点(例えばオーバレイ領域に“1”が記録されている画素)では描画データを表示(予め設定された色を表示)し、描画データがない点(例えばオーバレイ領域に“0”が記録されている画素)では画像データを表示する。
【0029】
機能ボタン領域240には、各々特定の機能が割当てられた機能ボタン242が表示される。描画領域230の下部には、ページ操作領域250が表示される。この領域には、ページ送りボタン252、ページ戻しボタン254、及びページ番号表示欄256が表示される。ページ送りボタン252は、タッチされると、表示されているページ(画像データ)を右側に送り、次のページを表示するためのボタンである。ページ戻しボタン254は、タッチされると、表示されているページを左側に送り、前のページを表示するためのボタンである。ページ番号表示欄256には、表示対象の複数のページのうち、現在表示されているページの番号が表示される。ページ操作領域250は、位置が固定されており、スクロール中にも移動しない。例えば、ページ操作領域250を表示部114に表示するためのデータは、描画用のオーバレイ領域とは別のオーバレイ領域に記憶しておけばよい。
【0030】
ユーザが、ページ送りボタン252をタッチすると、タッチされた位置の座標データがタッチ検出部112からCPU102に伝送され、CPU102は、受信し座標データが、ページ送りボタン252が表示された領域内の位置であると判定する。そして、CPU102は、VRAM118に次のページの画像データを伝送し、表示制御部116に、ページ送りのコマンドを伝送する。これを受けて、表示制御部116は、VRAM118上の現在表示されているページに対応する画像データと、次ページに対応する画像データとから、ページ送りの途中の画像を表示するための信号を生成し、表示部114に出力する。これによって、表示部114に、ページ送りされている途中の画像が表示される。なお、ページ送りの途中では、現在表示されている画像の枠だけが表示部114の表示画面上で移動するような表示であってもよい。
【0031】
機能ボタン242に割当てられる機能は、例えば、タッチ操作による描画機能(ペンの種類を選択可能)、記録部108に保存されているファイル(画像データ)を開く機能、所定領域の描画を削除する消しゴム機能、表示されている画像データを記録部108に保存する機能、表示されている画像データを印刷する機能等である。各機能ボタン242は、アイコンとして表示される。
【0032】
以下に、電子黒板装置100の操作方法について、即ち、特殊なタッチ操作に描画以外の機能が割当てられている場合に、誤った描画が残らないようにする処理を実現するプログラムの制御構造に関して説明する。以下の説明では、電子黒板装置100は、図3に示した画面において、描画を行なう機能ボタンが選択され、タッチ検出部112の描画領域230がタッチされると描画されるモードになっているとする。また、特殊なタッチ操作は、2点以上でマルチタッチした状態で左右にフリックする操作であり、右にフリックする操作に右スクロールが割当てられており、左にフリックする操作に左スクロールが割当てられているとする。これら以外のマルチタッチ操作には、描画以外の処理は割当てられていないとする。
【0033】
ステップ300において、CPU102はタッチ検出部112がタッチされたか否かを判定する。上記したように、CPU102は、タッチ検出部112から座標データを受信したか否かを判定する。タッチ検出部112からは、タッチされた点の位置座標(X座標,Y座標)が、タッチされた順に出力される。タッチされたと判定された場合、ステップ302に移行し、タッチされたと判定されなかった場合、ステップ306に移行する。
【0034】
ステップ302において、CPU102は、所定の時間受信した座標データ(タッチされた点の座標データ)を、受信した順序が分かるようにRAM106に記憶する。ステップ306において、CPU102は終了するか否かを判定する。CPU102は、機能ボタン242の1つに割当てられた終了ボタンが押された場合、プログラムを終了する。そうでなければ処理はステップ300に戻り、タッチされるのを待つ。
【0035】
ステップ304において、CPU102は、ステップ302で検出されたタッチがマルチタッチ(複数点に同時にタッチされている状態)であるか否かを判定する。具体的には、CPU102は、ステップ302で記憶した複数の座標データのうち、最初に受信した座標データとその後に受信した座標データとの距離を計算する。距離が所定値以上であればマルチタッチであると判定し、所定値未満であればシングルタッチであると判定する。
【0036】
タッチ検出周期は短く、また、各点へのタッチは若干の時間差があるので、マルチタッチであってもタッチされた順にタッチ検出部112から座標データが出力される。したがって、最初に受信した座標データと、2番目以降に受信した数個の座標データの距離を計算すれば、シングルタッチであるかマルチタッチであるかを判定することができる。マルチタッチで同時にタッチされている点は2点に限らず、3点以上である場合があるので、連続する複数の点について距離が計算される。マルチタッチか否を判定する基準となる距離は、適宜設定することができ、ユーザが検出周期の間にタッチ点を通常移動させる距離よりも大きければよい。マルチタッチであると判定された場合、ステップ320に移行し、マルチタッチでないと判定された場合、ステップ310に移行する。
【0037】
ステップ310において、CPU102は、タッチされた点の移動軌跡にしたがって、表示部114に表示されている画像上に描画する。具体的には、CPU102は、ステップ302で記憶した複数の座標データをRAM106から読出し、それらに対応するVRAM118のオーバレイ領域上の点、及びそれらの点を順に結ぶ線分上の各点に、所定のデータを書込む。これによって、上記したように、画像データと描画データ(オーバレイ領域のデータ)とが合成されて表示部114に表示され、画像上に描画されたように表示される。なお、後述するようにステップ312の処理は繰返されるので、オーバレイ領域は、既存の描画データを残したまま上書きされる。
【0038】
ステップ312において、CPU102は描画内容をRAM106に一時記憶する。描画を再現できればよく、記憶する方法は任意である。例えば、ステップ302で順序を保持したままRAM106に記憶された座標データをそのまま保持する。また、VRAM118のオーバレイ領域のデータを2次元画像データとして、RAM106に記憶してもよい。
【0039】
ステップ314において、CPU102は、タッチが維持されているか否かを判定する。即ち、CPU102は、タッチ検出部112から継続して座標データを受信しているか否かを判定する。例えばタッチペン220又はユーザの指が離れた場合、タッチ検出部112から座標データを受信しなくなる。タッチが維持されていると判定された場合、ステップ302に戻り、ステップ302以降の処理を繰返す。タッチが維持されていると判定されなかった場合、ステップ300に戻り、再びタッチされるのを待つ。
【0040】
ステップ320において、CPU102は、ステップ302でRAM106に記憶した座標データを、マルチタッチ位置、即ち軌跡毎の座標データとしてRAM106上で記憶し直す。ステップ304の処理によって、同時にタッチされている複数点の各々について、最初にタッチされた点(以下、開始点とも記す)の座標データが決定されている。したがって、RAM106に記憶されている、開始点以外の複数の座標データの各々が、複数の開始点のうちどの開始点の軌跡に該当するかを、開始点からの距離によって判定することができる。判定した結果に応じて、開始点の座標データと、その開始点が移動した軌跡上の点の座標データとを、配列データとして検出された順に記憶する。例えば、同時に2点でタッチされている場合、ステップ302によって図5の左側に示す配列データ400がRAM106に記憶される。これらのうち、(x0,y0)、(x1,y1)の座標が最初にタッチされた2点であるとする。点(x0,y0)は点(x1,y1)よりも若干早くタッチされた。この場合、第1開始点の座標データ410及び第2開始点の座標データ420をそれぞれ先頭として、図5の右側に示すような2つのデータ配列を、RAM106に記憶する。開始点の座標データ410及びこれに続くデータ配列412は、1つの軌跡を表す。開始点の座標データ420及びこれに続くデータ配列422は、別の軌跡を表す。3点以上のマルチタッチの場合にも同様に記憶される。
【0041】
ステップ322において、CPU102は、ステップ310と同様にタッチされた点の軌跡にしたがって、表示部114に表示されている画像上に描画する。例えば、図5に示したように、RAM106上で記憶し直された座標データを用いて描画する。なお、同時にタッチされている各点の軌跡を全て描画しても、そのうちの一部の軌跡(例えば、最も早くタッチされた点の軌跡)のみを描画してもよい。図6は、描画500がなされた後に、ユーザ510が2本の指でマルチタッチしたまま右にフリック操作した場合を示す。この操作によって画像上に、誤った描画502が表示されている。図6では、2本の軌跡のうち一方の軌跡に対応する描画のみが表示されている。既にステップ312が実行され、シングルタッチで描画がなされていれば、その描画内容にマルチタッチによる描画内容が追加される。
【0042】
ステップ324において、CPU102は、ステップ322で描画された内容をRAM106に一時記憶する。具体的な方法は、ステップ312と同様である。なお、ステップ320で記憶し直した座標データをそのまま保持する場合、ステップ312とは異なり、ステップ322で描画された軌跡を表す座標データのみを保持すればよい。
【0043】
ステップ326において、CPU102は、マルチタッチが維持されているか否かを判定する。即ち、CPU102は、タッチ検出部112から継続して複数の座標データを受信し、且つ、それらがステップ320で決定された複数の開始点の軌跡に該当するか否かを判定する。例えばユーザが2本の指でタッチしていた状態から1本の指を離した場合、離された指による軌跡は途絶えて、タッチ検出部112から受信する座標データは一方の軌跡を表す座標データのみになる。最初に3点以上が同時にタッチされていた場合も含めて、少なくとも2点の同時タッチが維持されていればマルチタッチが維持されていると判定する。マルチタッチが維持されていると判定された場合、ステップ328に移行する。マルチタッチが維持されていないと判定された場合、ステップ314に移行して、上記したようにシングルタッチが維持されているか否かを判定する。
【0044】
ステップ328において、CPU102は、検出されたマルチタッチ操作がスクロールに割当てられた操作(スクロールを指定する操作)であるか否かを判定する。具体的には、ステップ320で記憶した複数のタッチ点の軌跡に対応する座標データ配列毎に、開始点の座標データから最後の座標データに向かうベクトルを決定し、そのベクトルが所定の長さ以上であり、X軸の正方向を向いている(X成分が正)か否かを判定する。X軸の正方向を向いたベクトルである場合、検出されたマルチタッチ操作は右へのスクロールに割当てられた操作であると判定される。所定の長さ以上であり、X軸の負方向を向いたベクトル(X成分が負)である場合、検出されたマルチタッチ操作は左へのスクロールに割当てられた操作であると判定される。スクロールに割当てられた操作であると判定された場合、ステップ330に移行する。スクロールに割当てられた操作であると判定されなかった場合、ステップ320に戻る。ベクトルが所定の長さになるまで、ステップ320以降の処理が繰返される。
【0045】
ステップ330において、CPU102は、ステップ324でRAM106に記憶したタッチ点の軌跡を表す座標データを削除する。具体的には、オーバレイ領域上でマルチタッチと判定される前に書込まれた描画データ(例えばシングルタッチによる描画データ)を保持したまま、マルチタッチと判定された後に書込まれた描画データを削除する(例えばデータ“0”を書込む)。したがって、表示部114の画面上で、マルチタッチ操作によって描画された誤った線が消去される。図7は、スクロール中の表示部114の表示画面を示す図である。矢印520は、右方向のスクロールを表す。図7においては、図6で表示されていた、ユーザが作成した描画500が維持されたまま、誤った描画502が消えている。なお、図7は、右へのスクロールが少し行なわれた状況を示すので、右上の描画部分は一部表示されていない。
【0046】
ステップ332において、CPU102は、ステップ328での判定結果に応じて、右又は左へのスクロールを実行する。CPU102は、スクロールを実行する前に、ステップ312及び324でRAM106に一時記憶された描画内容(誤った描画は消去されている)を記録部108に保存し、処理はステップ300に戻る。オーバレイ領域の描画内容を記録部108に保存することよって、後に左スクロールが指示された場合、再度、ユーザが意図した描画500がなされた画像を表示することができる。
【0047】
以上によって、電子黒板装置100は、ユーザによってマルチタッチされた状態で左右のフリック操作が行なわれた場合、スクロールが開始されるまでにマルチタッチによって描画された誤った線を残すことなく、ユーザが意図した描画のみを保存した後、スクロールを実行することができる。
【0048】
上記では、背景に記録部108から読出した画像が表示されている場合を説明したが、これに限定されない。タッチ検出部112へのタッチ操作によって描画する機能を備えていれば、背景画像は一様な色(例えば、白、黒、灰色等)の画像であってもよい。
【0049】
上記では、タッチによる特殊な操作が左右のスクロール操作である場合を説明したが、これに限定されない。描画以外の操作であればよく、例えば、上下方向のスクロール、斜め方向のスクロール、スクロール表示を伴わないページ切換等であってもよい。また、機能ボタンに割当てられた描画以外の機能(操作)であってもよい。左右以外の方向へのスクロールを割当てられた操作を検出する場合には、例えば、図4のステップ328において、スクロール方向をベクトルのX成分だけで判定せず、Y成分をも考慮して判定すればよい。
【0050】
また、電子黒板装置100において、複数のユーザの各々が1本のタッチペン又は指でタッチして、同時に複数の描画を行なうことも可能である。この操作を、上記したスクロールに割当てられた操作と区別するためには、少なくとも同時タッチしている点の間の距離が人の指の間隔程度(例えば数cm以下)であるか否かを判定すればよい。
【0051】
また、マルチタッチ操作に限らず、通常行なわれる描画のためのタッチ操作と区別できる操作であれば、シングルタッチ操作であってもよい。例えば、シングルタッチ操作の開始点から終了点までの軌跡(一筆書きの図形)が、所定の図形である場合に、割当てられた描画以外の操作を実行してもよい。
【0052】
上記では、マルチタッチ操作か否かをCPU102が判定する場合を示したが、これに限定されない。例えば、タッチ検出部112のマイコンがマルチタッチ操作であるか否かを判定して、その結果をCPU102に伝送してもよい。
【0053】
上記では、電子黒板装置について説明したが、これに限定されず、本発明は、タブレット型の端末装置等、タッチによって描画及び画面操作を行なうことができる表示装置全般に適用することができる。
【0054】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 電子黒板装置
102 演算処理部(CPU)
104 読出専用メモリ(ROM)
106 書換可能メモリ(RAM)
108 記録部
110 インターフェイス部(IF部)
112 タッチ検出部
114 表示部
116 表示制御部
118 ビデオメモリ(VRAM)
120 バス
200、202 LED列
210、212 PD列
220 タッチペン
230 描画領域
240 機能ボタン領域
242 機能ボタン
250 ページ操作領域
252 ページ送りボタン
254 ページ戻しボタン
256 ページ番号表示欄


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するための表示手段と、
前記表示手段に重畳して配置され、タッチされた位置を検出するための検出手段とを備え、
検出された前記位置の移動によって形成される軌跡に対応する線を、前記表示手段に表示されている画像上に描画し、
前記軌跡によって描画以外の操作が特定された場合、該操作を特定した前記軌跡の開始点から終了点までに描画された線を消去することを特徴とするタッチ描画表示装置。
【請求項2】
描画以外の前記操作を特定するための前記軌跡は、前記検出手段を同時に複数の位置でタッチするマルチタッチ操作によって形成される軌跡であることを特徴とする請求項1に記載のタッチ描画表示装置。
【請求項3】
前記マルチタッチ操作によって形成される複数の軌跡のうち何れか1つの軌跡にのみ対応する線が描画されることを特徴とする請求項2に記載のタッチ描画表示装置。
【請求項4】
画像を表示するための表示手段と、前記表示手段に重畳して配置され、タッチされた位置を検出するための検出手段とを備えたタッチ描画表示装置の操作方法であって、
検出された前記位置の移動によって形成される軌跡に対応する線を、前記表示手段に表示されている画像上に描画する描画ステップと、
前記描画ステップを実行中に、前記軌跡によって描画以外の操作が特定されたか否かを判定するステップと、
前記軌跡によって描画以外の操作が特定された場合、該操作を特定した前記軌跡の開始点から終了点までに描画された線を消去するステップとを含むことを特徴とするタッチ描画表示装置の操作方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−168619(P2012−168619A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27236(P2011−27236)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】