説明

タッチ検出機能付きスイッチ装置

【課題】部品点数および組み付け工数を少なくできて、コストの低減化を図ることができるタッチ検出機能付きスイッチ装置を提供する。
【解決手段】操作部材5によって押圧操作されるスイッチ用弾性部8は、非導電性の弾性材により形成し、配線基板1の上面1aに弾性変形可能に設ける。操作部材5と配線基板1の上面1aとの間に、タッチ検出用導電部15を設ける。タッチ検出用導電部15は、導電性の弾性材により形成し、操作部材5の裏面5dに接触する操作部材側導電部16と、配線基板1に設けられた基板側接続部7に接触する基板側導電部17を一体に有する。スイッチ用弾性部8とタッチ検出用導電部15とを一体成形した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材に手指が接触した際にこれを検出する機能を備えたタッチ検出機能付きスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のタッチ検出機能付きスイッチ装置は種々提案されている。例えば特許文献1には、次のような構成のものが開示されている。配線基板(プリント配線板)の一面である上面に、非導電性の弾性材、例えばシリコンゴム製のカバーが設けられていて、このカバーに、弾性変形可能なドーム状をなすスイッチ用弾性部が設けられている。このスイッチ用弾性部の内面には、配線基板の一面に設けられた固定接点に接離する可動接点が設けられていて、これら固定接点と可動接点とによって、対向式のスイッチ要素が構成されている。前記カバーの上方には、操作部材を構成する操作ボタンが押圧操作可能に設けられていて、この操作ボタンの下部が、前記スイッチ用弾性部の上面に当接している。
【0003】
そして、操作ボタンの表面には薄膜状のタッチ検出用電極が設けられ、このタッチ検出用電極に対向して静電結合するように操作ボタンに結合用電極が埋設されている。その結合用電極には接続線の一端部が半田付けにより接続され、接続線の他端部は、配線基板の一面に設けられた基板側接続部に半田付けにより接続されている。したがって、結合用電極は、接続線を介して配線基板側の基板側接続部に電気的に接続されている。なお、基板側接続部は、配線基板に設けられたタッチ検出回路に接続され、そのタッチ検出回路の信号は制御装置に出力される。制御装置には、前記スイッチ要素の信号も入力される。
【0004】
上記構成のものの場合、操作ボタンが押圧操作されていない状態では、スイッチ用弾性部の可動接点は固定接点から離間していて、スイッチ要素はオフ状態を呈している。この状態で、操作ボタンのタッチ検出用電極に使用者の手指が接触すると、手指が接触していない場合に比べて、タッチ検出回路が検出する静電容量が変化する。制御装置は、その信号の変化により操作ボタンに手指が接触したことを検出し、例えば図示しない表示装置の画面において、その操作ボタンに対応する選択部を暫定的な表示状態にする。
【0005】
この後、使用者によって操作ボタンが押圧操作されて下方へ移動し、その操作ボタンによってスイッチ用弾性部が押圧されると、可動接点が固定接点に接触し、スイッチ要素がオン状態となり、そのオン信号が制御装置に入力される。すると、制御装置は、操作ボタンに対応する選択部を固定的な表示状態に変化させ、その選択部の選択を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−41484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来構成のものでは、次のような問題がある。タッチ検出のために、操作ボタン側の結合用電極と配線基板側の基板側接続部との間を電気的に接続する必要があり、それらに接続線を半田付けする必要がある。このため、部品点数が多く、また組み付け工数も多く、コストが高くなる。
【0008】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数および組み付け工数を少なくできて、コストの低減化を図ることができるタッチ検出機能付きスイッチ装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明のタッチ検出機能付きスイッチ装置は、
一面に固定接点および基板側接続部を有した配線基板と、
押圧操作されることに伴い前記配線基板の一面に近接する方向へ押圧移動される操作部材と、
非導電性の弾性材により形成されて前記配線基板の一面に弾性変形可能に設けられ、内面に前記固定接点に接離する可動接点を有し、前記操作部材が押圧操作されていない状態では前記可動接点が前記固定接点から離間し、前記操作部材が押圧操作されて当該操作部材が前記配線基板の一面に近接する方向へ移動することに伴いその操作部材により押圧されて前記可動接点が前記固定接点に接触するスイッチ用弾性部と、
導電性の弾性材により形成されて前記操作部材と前記配線基板の一面との間に設けられ、前記操作部材の裏面に接触する操作部材側導電部と前記配線基板の前記基板側接続部に接触する基板側導電部とを有し、前記操作部材に手指が接触したことを検出するためのタッチ検出用導電部と、を備え、
前記スイッチ用弾性部と前記タッチ検出用導電部とを一体成形したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電性の弾性材により形成されたタッチ検出用導電部は、操作部材の裏面に接触する操作部材側導電部と配線基板の基板側接続部に接触する基板側導電部とを有していて、基板側接続部に電気的に接続されているので、操作部材と配線基板とを電気的に接続する部材を別途必要としない。しかも、導電性の弾性材により形成されたタッチ検出用導電部と、非導電性の弾性材により形成されたスイッチ用弾性部とを一体成形したことにより、部品数を一層少なくできるとともに、組み付け工数を一層少なくできる。よって、コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態によるスイッチ装置を示すもので、非操作状態での縦断面図
【図2】図1中A−A線に沿う横断面図
【図3】押圧操作状態での縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
まず図1において、配線基板1は、例えばプリント配線基板からなるもので、裏カバー2とインナーボデー3との間に固定状態に設けられている。インナーボデー3には例えば円筒状をなす筒状部4(図2参照)が、図1において上方へ向けて突設されている。この筒状部4には、操作部材5が図1中、上下方向(配線基板1の一面である上面1aに対して離間する方向と近接する方向)に往復移動可能に設けられている。この操作部材5は、筒状部4を上方から覆うように配置された円板状の上板部5aと、この上板部5aの外周部に前記筒状部4を囲繞するように下向きに設けられた円筒状をなす筒状部5bとを有したキャップ状をなしていて、上板部5aの下面中央部に円柱状をなす押圧部5cが突設されている。
前記配線基板1の一面である上面1aには、押圧部5cの下方に位置させて一対の固定接点6が設けられているとともに、この固定接点6の周りに基板側接続部7が設けられている。
【0013】
そして、配線基板1の上面1aには、固定接点6を上方から覆うようにしてスイッチ用弾性部8が設けられている。このスイッチ用弾性部8は、非導電性の弾性材、例えばシリコンゴムにより形成されたもので、段付き円柱状の可動部9と、配線基板1の上面1aに固定された固定部10と、これら可動部9と固定部10との間を接続するように設けられた弾性変形可能な薄肉部11とを一体に有していて、可動部9が薄肉部11により上方に付勢された状態で弾性変形可能に支持されている。可動部9の内面となる下面には可動接点12が設けられていて、この可動接点12は、前記固定接点6に対して上方から対向するように位置していて、可動部9の上下動に伴い固定接点6に対して接離する。これら固定接点6と可動接点12とにより、対向式のスイッチ要素13を構成している。可動部9の上面は、前記操作部材5における押圧部5cの下面に当接している。
【0014】
操作部材5の非押圧状態では、スイッチ用弾性部8の付勢力により操作部材5は図1に示す原位置に保持されている。この状態では、可動接点12は固定接点6に対して上方へ離間していて、スイッチ要素13はオフ状態を呈している。
【0015】
操作部材5と配線基板1の上面1aとの間には、タッチ検出用導電部15が設けられている。このタッチ検出用導電部15は、導電性の弾性材、この場合、カーボンの粉が混合された導電ゴムにより形成されたもので、操作部材側導電部16と、基板側導電部17とを一体に有している。このうち操作部材側導電部16は、図2にも示すように円柱状の押圧部5cと筒状部4との間に配置され、筒状、この場合円筒状をなしていて、上端部が操作部材5における上板部5aの裏面5dに環状に接触している。基板側導電部17は、配線基板1における基板側接続部7に上方から接触して固定されている。
【0016】
操作部材側導電部16の下端部と基板側導電部17とは、弾性変形可能な薄肉部18により接続されていて、操作部材側導電部16の下端部と配線基板1の上面1aとの間には、操作部材側導電部16の下方への移動を許容する空間部19が形成されている。薄肉部18と空間部19は、操作部材側導電部16の下方への移動、ひいては操作部材5の下方への移動を許容するストローク吸収部20を構成している。ストローク吸収部20は、操作部材側導電部16の下方に環状に設けられている。導電性の弾性材で形成された操作部材側導電部16は、薄肉部18および基板側導電部17を介して配線基板1の基板側接続部7に電気的に接続されている。操作部材5は、タッチ検出用導電部15の操作部材側導電部16によっても原位置に保持されている。
【0017】
ここで、非導電性の弾性材にて形成された前記スイッチ用弾性部8と、導電性の弾性材により形成された前記タッチ検出用導電部15とは、いわゆる2色成形により一体成形されている。
なお、配線基板1には、図示はしないがタッチ検出回路が設けられていて、前記基板側接続部7は、そのタッチ検出回路に接続されている。また、そのタッチ検出回路と、前記スイッチ要素13の固定接点6は、図示しない制御装置に接続されている。制御装置はマイクロコンピュータを主体に構成されていて、図示しない表示装置を制御する機能を有している。
【0018】
上記構成の作用を説明する。操作部材5が押圧操作されていない状態では、図1に示すように、操作部材5は原位置に保持されていて、可動接点12は固定接点6から離間し、スイッチ要素13はオフ状態を呈している。
【0019】
この状態で、使用者の手指21(図1の二点鎖線参照)が操作部材5の上面に接触すると、手指が接触していない場合に比べて、タッチ検出回路が検出する静電容量が変化する。制御装置は、そのタッチ検出回路からの出力信号の変化により操作部材5に手指が接触したことを検出し、例えば図示しない表示装置の画面において、その操作部材に対応する選択部を暫定的な表示状態にする。
【0020】
この後、使用者の手指21によって操作部材5が押圧操作されて配線基板1の上面1aに近接する方向である下方へ移動し、その操作部材5の押圧部5cによってスイッチ用弾性部8の可動部9が下方へ押圧されると、図3に示すように、可動接点12が固定接点6に接触し、スイッチ要素13がオン状態となり、そのオン信号が制御装置に入力される。このとき、タッチ検出用導電部15の操作部材側導電部16も操作部材5における上板部5aの裏面によって下方へ押圧されるので、操作部材側導電部16も下方へ移動する。その操作部材側導電部16の下方への移動は、ストローク吸収部20にて許容され、ひいては操作部材5の下方への移動も許容される。制御装置にスイッチ要素13のオン信号が入力すると、制御装置は、操作部材5に対応する選択部を固定的な表示状態に変化させ、その選択部の選択を決定する。
【0021】
なお、使用者の手指21が操作部材5から離れ、操作部材5に対する押圧操作が解除されると、スイッチ用弾性部8の弾性復帰力およびストローク吸収部20における薄肉部18の弾性復帰力により操作部材5は図1の原位置に戻され、スイッチ要素13はオフ状態となる。
【0022】
上記した実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。導電性の弾性材により形成されたタッチ検出用導電部15は、操作部材5の裏面5dに接触する操作部材側導電部16と配線基板1の基板側接続部7に接触する基板側導電部17とを有していて、基板側接続部7に電気的に接続されているので、操作部材5と配線基板1とを電気的に接続する部材を別途必要としない。しかも、導電性の弾性材により形成されたタッチ検出用導電部15と、非導電性の弾性材により形成されたスイッチ用弾性部8とを一体成形したことにより、部品数を一層少なくできるとともに、組み付け工数を一層少なくできる。よって、コストの低減化を図ることができる。
【0023】
タッチ検出用導電部15は、操作部材5が押圧操作された際にその操作部材5の下方への移動を許容するストローク吸収部20を有しているので、操作部材5と配線基板1との間にタッチ検出用導電部15を配置しながらも、操作部材5の移動を容易に確保することができる。
【0024】
タッチ検出用導電部15における操作部材側導電部16は、操作部材5の上板部5aの裏面5dに環状に接触するように筒状をなしているので、操作部材側導電部16と操作部材5の裏面5dとの接触面積および接触領域を大きく確保することができ、操作部材5に対するタッチ検出感度を向上させることが可能となる。
【0025】
本発明は上記した実施形態にのみ限られず、次のように変形または拡張することができる。
タッチ検出用導電部15において、操作部材5の移動を許容するストローク吸収部20は、操作部材側導電部16の下端部に設けたが、例えば操作部材側導電部16の延び方向(軸方向)の中間部に、弾性変形が容易な薄肉部を設けることでも可能である。また、操作部材側導電部16は、筒状であれば、円筒状に限られず、角筒状としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
図面中、1は配線基板、1aは上面(一面)、5は操作部材、5dは裏面、6は固定接点、7は基板側接続部、8はスイッチ用弾性部、12は可動接点、13はスイッチ要素、15はタッチ検出用導電部、16は操作部材側導電部、17は基板側導電部、20はストローク吸収部、21は手指を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に固定接点および基板側接続部を有した配線基板と、
押圧操作されることに伴い前記配線基板の一面に近接する方向へ押圧移動される操作部材と、
非導電性の弾性材により形成されて前記配線基板の一面に弾性変形可能に設けられ、内面に前記固定接点に接離する可動接点を有し、前記操作部材が押圧操作されていない状態では前記可動接点が前記固定接点から離間し、前記操作部材が押圧操作されて当該操作部材が前記配線基板の一面に近接する方向へ移動することに伴いその操作部材により押圧されて前記可動接点が前記固定接点に接触するスイッチ用弾性部と、
導電性の弾性材により形成されて前記操作部材と前記配線基板の一面との間に設けられ、前記操作部材の裏面に接触する操作部材側導電部と前記配線基板の前記基板側接続部に接触する基板側導電部とを有し、前記操作部材に手指が接触したことを検出するためのタッチ検出用導電部と、を備え、
前記スイッチ用弾性部と前記タッチ検出用導電部とを一体成形したことを特徴とするタッチ検出機能付きスイッチ装置。
【請求項2】
前記タッチ検出用導電部は、前記操作部材が押圧操作された際にその操作部材の移動を許容するストローク吸収部を有していることを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記タッチ検出用導電部における前記操作部材側導電部は、前記操作部材の裏面に環状に接触するように筒状をなしていることを特徴とする請求項1または2記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−195148(P2012−195148A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58012(P2011−58012)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】