説明

タバコ中のノルニコチン合成を最小限にするための組成物および方法

タバコ植物およびその植物部分におけるノルニコチンおよびN’−ニトロソノルニコチン(NNN)のレベルを低減するための組成物および方法が提供される。組成物は、これらの植物におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与する根特異的ニコチン脱メチル化酵素CYP82E10およびそのバリアントについての単離ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含む。本発明の組成物は、CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子において変異を含むタバコ植物またはその植物部分も含み、該変異は、CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらす。これらのタバコ植物の種子またはその子孫、および本発明のタバコ植物またはその植物部分もしくは子孫から調製されるタバコ製品も提供される。タバコ植物またはその植物部分におけるノルニコチンのレベルを低減するかまたはニコチンからノルニコチンへの変換率を低減する方法も提供される。これらの方法は、タバコ植物のゲノムに、少なくとも3つのニコチン脱メチル化酵素遺伝子のそれぞれの少なくとも1つの対立遺伝子内の変異を導入することを含み、前記変異は、ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の発現を低減し、これらのニコチン脱メチル化酵素遺伝子の第1のものは、タバコ植物またはその植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与する根特異的ニコチン脱メチル化酵素をコードする。これらの方法は、ノルニコチンおよびその発癌性代謝産物NNNのレベルが低減され、よってこれらのタバコ製品を消費するかまたはこれらの製品に由来する二次的な煙に曝露される個体についての発癌可能性が低減されたタバコ製品の製造において用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[配列表の組込み]
配列表の正式な写しを、2011年1月12日に作成した149KBのサイズの「400712SequenceListing.txt」というファイル名を有するASCIIフォーマットされた配列表として、EFS−Webを通じて電子的に提出し、本明細書と同時に出願する。このASCIIフォーマットされた文書に含まれる配列表は、明細書の一部分であり、参照することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、タバコ植物およびその植物部分におけるノルニコチン合成、よって、その代謝産物であるN’−ニトロソノルニコチンを最小限にするための組成物および方法、特に根特異的ニコチン脱メチル化酵素と緑葉および老化誘導性ニコチン脱メチル化酵素との組合せの発現または機能を阻害するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
商業的なタバコ品種で見出される主なアルカロイドはニコチンであり、典型的に、全アルカロイドプールの90〜95%を占める。残りのアルカロイド画分は、3つのさらなるピリジンアルカロイド、すなわちノルニコチン、アナバシンおよびアナタビンで主に構成される。ノルニコチンは、ニコチンN脱メチル化酵素の酵素活性により、ニコチンから直接産生される。ノルニコチンは、通常、全ピリジンアルカロイドプールの5%未満であるが、「変換」と呼ばれるプロセスにより、最初は非常に少量のノルニコチンを生成するタバコ植物が、大きいパーセンテージの葉ニコチンをノルニコチンに代謝的に「変換」する子孫を生じさせる。遺伝的に変換されたタバコ植物(「コンバータ」と称する)において、ノルニコチン生成の大部分は、成熟葉の老化および乾燥の間に起こる(WernsmanおよびMatzinger(1968)Tob.Sci.12:226〜228頁)。バーレータバコ(Burley tobacco)は、特に遺伝子変換を受けやすく、いくつかの栽培変種では世代あたり20%という高い割合である。
【0004】
タバコの葉の乾燥および加工の間に、ノルニコチンの一部は、実験動物において発癌性が主張されているタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)であるN−ニトロソノルニコチン(NNN)という化合物に代謝される(HechtおよびHoffmann(1990)Cancer Surveys 8:273〜294頁;Hoffmannら(1994)J.Toxicol.Environ.Health 41:1〜52頁;Hecht(1998)Chem.Res.Toxicol.11:559〜603頁)。熱風乾燥タバコでは、TSNAは、伝統的な乾燥小屋で見られる直火加熱システムにより形成される燃焼ガス中に存在する微量の窒素酸化物とのアルカロイドの反応により主に形成されることが見出されている(PeeleおよびGentry(1999)「Formation of Tobacco−specific Nitrosamines in Flue−cured Tobacco」、CORESTA Meeting、Agro−Phyto Groups、Suzhou、China)。これらの乾燥小屋を改造して熱交換器を設置することにより、燃焼ガスと乾燥空気との混合を実質的に排除し、この様式で乾燥させたタバコ中のTSNAの形成を劇的に低減させた(BoyetteおよびHamm(2001)Rec.Adv.Tob.Sci.27:17〜22頁)。これとは対照的に、空気乾燥バーレータバコでは、TSNA形成は、葉媒介微生物により触媒されるプロセスであるタバコアルカロイドと亜硝酸塩との反応により主に進行する(Bushら(2001)Rec.Adv.Tob.Sci.27:23〜46頁)。これまで、許容できる品質基準を維持しながら乾燥条件を改変することによりTSNAを低減するための試みは、空気乾燥タバコについて成功していない。
【0005】
NNNの前駆体として機能することに加え、最近の研究は、タバコ製品で見られるノルニコチンが、さらなる望ましくない健康上の結果を有し得ることを示唆している。DickersonおよびJanda(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:15084〜15088頁は、ノルニコチンが、細胞内の異常なタンパク質グリケーションの原因となることを証明した。ノルニコチンで修飾されたタンパク質の濃度は、非喫煙者と比較して、喫煙者の血漿中でより高いことが見出された。また、これと同じ研究により、ノルニコチンが、プレドニゾンのような一般的なステロイド処方薬を共有結合的に修飾し得ることが示された。このような修飾は、これらの薬物の効力および毒性の両方を変更する可能性を有する。さらに、タバコ製品で見られるノルニコチンと、加齢黄斑変性、先天異常および歯周疾患との関連が、研究で報告されている(Broganら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:10433〜10438頁;Katzら(2005)J.Periodontol.76:1171〜1174頁)。
【0006】
バーレータバコでは、葉のノルニコチン含量と、乾燥させた生成物中に蓄積されるNNNの量との間に正の相関が見出されている(Bushら(2001)Rec.Adv.Tob.Sci、27:23〜46頁;Shiら(2000)Tob.Chem.Res.Conf.54:要約27)。よって、葉のノルニコチン含量を効果的に低減できる方策は、上記のようなノルニコチン自体の潜在的な負の健康上の結果を改善するのに役立つだけでなく、NNNレベルも付随して低減させるはずである。この相関は、Lewisら(2008)Plant Biotech.J.6:346〜354頁による最近の研究でさらに強固にされ、彼らは、老化誘導性ニコチン脱メチル化酵素をコードするCYP82E4v2遺伝子を対象とするRNAi導入遺伝子構築物を用いてノルニコチンのレベルを低下することにより、乾燥させた葉のNNN含量が付随して低減されたことを証明した。この研究は、トランスジェニック技術を用いて、タバコのノルニコチンおよびNNNの含量を大きく低減できることを証明したが、公共認識と知的財産の問題との組合せにより、トランスジェニック植物から得られる製品を商業化することが非常に困難になっている。
【0007】
よって、トランスジェニックの使用に依存しない、タバコ中のノルニコチン蓄積を効果的に最小限にするための手段への大きな必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
タバコ植物およびその植物部分におけるノルニコチン含量を最小限にするための組成物および方法が提供される。組成物は、配列番号1に示すCYP82E10ポリヌクレオチドと称する単離根特異的シトクロムP450ポリヌクレオチド、および、それによりコードされる、配列番号2に示すCYP82E10ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチド、ならびに配列番号5、6、7、8、9、10、11、12または13に示す配列を含むポリペプチド、および配列番号5、6、7、8、9、10、11、12または13に示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むがこれらに限定されないそれらのバリアントおよび断片を含む。本発明のCYP82E10ポリペプチドは、タバコ植物の根におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与するニコチン脱メチル化酵素である。本発明の単離ポリヌクレオチドは、配列番号3または4に示す配列を含むポリヌクレオチド、ならびにそれらのバリアントおよび断片も含む。本発明の組成物は、CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子において変異を含むタバコ植物またはその植物部分も含み、該変異は、CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、本発明のタバコ植物は、CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子における変異および/またはCYP82E5ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子における変異をさらに含み、これらの遺伝子における変異は、CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素またはCYP82E5ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらす。これらのタバコ植物の種子またはその子孫、および、本発明のタバコ植物またはその植物部分もしくは子孫から調製されたタバコ製品も提供される。
【0009】
タバコ植物またはその植物部分におけるノルニコチンのレベルを低減するかまたはニコチンからノルニコチンへの変換率を低減するための方法も提供される。これらの方法は、タバコ植物のゲノムに、少なくとも3つのニコチン脱メチル化酵素遺伝子の各々の少なくとも1つの対立遺伝子内の変異を導入するステップを含み、該変異は、ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の発現を低減させ、これらのニコチン脱メチル化酵素遺伝子の第1のものは、タバコ植物またはその植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与する根特異的ニコチン脱メチル化酵素をコードする。いくつかの実施形態では、根特異的ニコチン脱メチル化酵素は、CYP82E10またはそのバリアントである。他の実施形態では、これらの方法は、タバコ植物のゲノムに、CYP82E10またはそのバリアントをコードするニコチン脱メチル化酵素遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子内の変異と、CYP82E4もしくはそのバリアントをコードするニコチン脱メチル化酵素および/またはCYP82E5もしくはそのバリアントをコードするニコチン脱メチル化酵素の少なくとも1つの対立遺伝子内の変異とを導入するステップを含む。ノルニコチンのレベルが低いタバコ植物を同定する方法も提供され、植物またはその植物部分を、CYP82E10もしくはそのバリアントをコードする遺伝子における変異の存在について単独でスクリーニングするか、あるいはCYP82E4もしくはそのバリアントをコードする遺伝子における変異の存在、および/またはCYP82E5もしくはそのバリアントをコードする遺伝子における変異の存在についてスクリーニングすることと組み合わせる。
【0010】
以下の実施形態は、本発明に包含される。
【0011】
1.CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子において変異を含むタバコ植物またはその植物部分であって、前記変異が、前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらすタバコ植物またはその植物部分。
【0012】
2.前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素が、配列番号2、5、6、7、8および9に示す配列からなる群より選択される実施形態1に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0013】
3.前記変異が、アミノ酸残基79、107、382、419およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される位置にて生じる前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素の改変をもたらし、前記番号付けが配列番号2に従う実施形態1または2に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0014】
4.前記変異が、
a)79位のグリシン残基のセリンによる置換、
b)107位のプロリン残基のセリンによる置換、
c)382位のプロリン残基のセリンによる置換、
d)419位のプロリン残基のセリンによる置換、および
e)それらの任意の組合せ
からなる群より選択される実施形態3に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0015】
5.CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子において変異をさらに含み、前記変異が、前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらす実施形態1〜4のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0016】
6.前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素が、配列番号14、15、16、17、18、19および20に示す配列から選択される実施形態5に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0017】
7.前記変異が、アミノ酸残基329、364、376、382および458からなる群より選択される位置にて生じる前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素の改変をもたらし、前記番号付けが配列番号14に従う実施形態5または6に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0018】
8.前記変異が、
a)329位のトリプトファン残基の停止コドンによる置換、
b)364位のリシン残基のアスパラギンによる置換、
c)376位のバリン残基のメチオニンによる置換、
d)382位のプロリン残基のセリンによる置換、
d)458位のプロリン残基のセリンによる置換、および
e)それらの任意の組合せ
からなる群より選択される実施形態7に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0019】
9.CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子において変異をさらに含み、前記変異が、前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらす実施形態1〜8のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0020】
10.前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素が、配列番号26、27、28、29、30、31および32に示す配列から選択される実施形態9に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0021】
11.前記変異が、アミノ酸残基422および449からなる群より選択される位置にて生じる前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素の改変をもたらし、前記番号付けが配列番号26に従う実施形態9または10に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0022】
12.前記変異が、
a)422位でトリプトファン残基と置換した停止コドン、
b)449位でプロリン残基と置換したロイシン、および
c)それらの任意の組合せ
からなる群より選択される実施形態11に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0023】
13.前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素遺伝子および前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素遺伝子において変異を含む実施形態9〜12のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0024】
14.前記変異についてホモ接合型である実施形態1〜13のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0025】
15.前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素が382位に変異を含み、前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素が329位に変異を含み、前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素が422位に変異を含み、前記番号付けがそれぞれ配列番号2、14および26に従う実施形態14に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0026】
16.前記変異が、
a)382位のプロリン残基のセリンによる置換、
b)329位のトリプトファン残基の停止コドンによる置換、
c)422位のトリプトファン残基の停止コドンによる置換、および
d)それらの任意の組合せ
からなる群より選択される実施形態15に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0027】
17.前記植物またはその部分が、1.5%未満の、ニコチンからノルニコチンへの変換を有する実施形態13〜16のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0028】
18.前記植物またはその部分が、0.5%以下の、ニコチンからノルニコチンへの変換を有する実施形態17に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0029】
19.実施形態1〜18のいずれかに記載のタバコ植物の種子またはその子孫。
【0030】
20.実施形態1〜19のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分もしくは子孫から調製されるタバコ製品。
【0031】
21.タバコ製品の発癌可能性を低減する方法であって、前記タバコ製品を、実施形態1〜18のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分もしくは子孫から調製するステップを含む方法。
【0032】
22.タバコ植物またはその植物部分におけるノルニコチンのレベルを低減するかまたはニコチンからノルニコチンへの変換率を低減する方法であって、前記植物のゲノムに、少なくとも3つのニコチン脱メチル化酵素遺伝子の各々の少なくとも1つの対立遺伝子内の変異を導入するステップを含み、前記変異が、前記ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の発現を低減し、前記ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の第1のものが、タバコ植物またはその植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与する根特異的ニコチン脱メチル化酵素をコードする方法。
【0033】
23.前記根特異的ニコチン脱メチル化酵素が、
a)配列番号2、5、6、7、8、9または10に示すアミノ酸配列、および
b)配列番号2、5、6、7、8、9または10に示すアミノ酸配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCYP82E10ニコチン脱メチル化酵素である実施形態22に記載の方法。
【0034】
24.前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素についての前記アミノ酸配列が、残基79、107、382、419およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される位置のアミノ酸残基での置換を有し、前記番号付けが配列番号2に従う実施形態23に記載の方法。
【0035】
25.79位、107位、382位または419位での前記置換が、セリン残基である実施形態24に記載の方法。
【0036】
26.前記ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の第2のものが、CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素をコードする実施形態22〜25のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
27.前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素が、
a)配列番号14、15、16、17、18、19、20または21に示すアミノ酸配列、および
b)配列番号14、15、16、17、18、19、20または21に示す配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む実施形態26に記載の方法。
【0038】
28.前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素についての前記アミノ酸配列が、残基329、364、382、458およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される位置のアミノ酸残基での置換を有し、前記番号付けが配列番号14に従う実施形態27に記載の方法。
【0039】
29.329位での前記置換が停止コドンであるか、364位での前記置換がアスパラギン残基であるか、382位での前記置換がセリン残基であるか、458位での前記置換がセリン残基であるか、またはそれらの任意の組合せである実施形態28に記載の方法。
【0040】
30.前記ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の第3のものが、CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素をコードする実施形態22〜29のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
31.前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素が、
a)配列番号26、27、28、29、30、31または32に示すアミノ酸配列、および
b)配列番号26、27、28、29、30、31または32に示す配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態30に記載の方法。
【0042】
32.前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素についての前記アミノ酸配列が、残基422および449ならびにそれらの任意の組合せからなる群より選択される位置のアミノ酸残基での置換を有し、番号付けが配列番号26に従う実施形態31に記載の方法。
【0043】
33.422位での前記置換が停止コドンであるか、449位での前記置換がロイシン残基であるか、またはそれらの任意の組合せである実施形態32に記載の方法。
【0044】
34.前記植物またはその植物部分が、前記変異についてホモ接合型である実施形態22〜33のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
35.前記導入するステップが、育種手順を含む実施形態22〜34のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
36.前記植物が、バーレー(Burley)タバコ植物、バージニア(Virginia)タバコ植物、熱風乾燥(flue−cured)タバコ植物、空気乾燥(air−cured)タバコ植物、火力乾燥(fire−cured)タバコ植物、オリエンタル(Oriental)タバコ植物またはダーク(dark)タバコ植物である実施形態22〜35のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
37.前記タバコ植物が、バーレータバコ植物、バージニアタバコ植物、熱風乾燥タバコ植物、空気乾燥タバコ植物、火力乾燥タバコ植物、オリエンタルタバコ植物またはダークタバコ植物である実施形態1〜18のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【0048】
38.ノルニコチンのレベルが低いタバコ植物を同定する方法であって、配列番号1または3中の変異の存在について、対象のタバコ植物からのDNA試料をスクリーニングするステップを含む方法。
【0049】
39.前記タバコ植物が、非コンバータである実施形態38に記載の方法。
【0050】
40.前記スクリーニングが、配列番号1、3、35、36、37および38からなる群より選択される配列を用いて行われる実施形態38または39に記載の方法。
【0051】
41.配列番号14中の変異の存在、配列番号26中の変異の存在または配列番号14および配列番号26中の変異の存在について、前記DNA試料または前記対象のタバコ植物からの別のDNA試料をスクリーニングするステップをさらに含む実施形態38〜40のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
42.a)配列番号1、3または4を含むヌクレオチド配列、
b)配列番号1、3または4の少なくとも20の連続するヌクレオチドの断片を含むヌクレオチド配列、
c)配列番号1に示す配列全体と少なくとも97%の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、前記ポリヌクレオチドが、植物におけるニコチンからノルニコチンへの前記代謝変換に関与するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
d)配列番号2および5〜13からなる群より選択されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列または少なくとも115の連続する残基を含むその断片、
e)配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13に示す配列と少なくとも98%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、ならびに
f)前記項目(a)から(e)のいずれかによる前記配列と相補的なヌクレオチド配列
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド。
【0053】
43.a)配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13に示すアミノ酸配列、
b)配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13に示すアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列、および
c)配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13に示すアミノ酸配列の断片であるアミノ酸配列であって、前記断片が、配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13のアミノ酸配列の少なくとも115の連続する残基を含むアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【0054】
44.CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子、CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子、およびCYP82E5ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子における変異についてホモ接合型であるタバコ植物またはその植物部分であって、前記変異が、前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素、CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素およびCYP82E5ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらし、前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素が382位に変異を含み、前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素が329位に変異を含み、前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素が422位に変異を含み、前記番号付けがそれぞれ配列番号2、14および26に従うタバコ植物またはその植物部分。
【0055】
45.CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子における変異であって、前記CYPe2E10ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらす変異。
【0056】
46.根におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E10遺伝子における変異、老化した葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E4v2遺伝子における変異、および緑葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP83E5遺伝子における変異を有する植物。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A−C】CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素遺伝子のDNA(配列番号4)および予測タンパク質配列を示す図である。タンパク質コード配列は大文字であり、5’および3’フランキング配列は小文字である。イントロン配列(配列番号3)は、小文字の斜体である。ヌクレオチド配列についての番号は左に示し、タンパク質配列についての番号は右に表示する。変異スクリーニングのためにエキソン1を特異的に増幅するために用いたPCRプライマーに相当するヌクレオチド配列に下線を付し(太字で示さない)、一方、太字で下線を付した配列は、エキソン2特異的プライマー部位を表す。変異スクリーニングにおいて変更されていることが見出された個別のヌクレオチドおよびアミノ酸残基(表2)は、太字で下線を付す。
【図2A−C】CYP82E10(配列番号4)、CYP82E5v2(配列番号38)およびCYP82E4v2(配列番号37)についてのゲノム配列のアラインメントを示す図である。タンパク質コード配列は、大文字のタイプであり、5’および3’非翻訳領域は、小文字のタイプで示し、イントロン配列は、小文字の斜体のタイプで示す。配列同一性を共有する位置は、影のついた箱で囲む。
【図3】CYP82E10、および植物1041由来のSer382Pro(S382P)変異を有するCYP82E10を発現する酵母由来のミクロソーム膜のニコチン脱メチル化酵素活性の薄層クロマトグラフィーデータを示す図である。CPM、カウント毎分。
【図4】図4および図4Bは、CYP82E4v2、CYP82E5v2およびCYP82E10遺伝子座での様々な変異組合せを有するバーレータバコ植物についての平均ニコチン変換率を示す図である。異なる文字を有する平均は、P<0.05レベルで有意に異なる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
[配列表の配列についての記載]
以下の列挙は、配列表についての配列情報を示す。アミノ酸置換についての標準的な表記を用いる。つまり、例えば、CYP82E10 P419Sは、バリアントタンパク質が、419位でのプロリン残基のセリンによる置換を有する(番号付けは、野生型配列、この場合は配列番号2に示すCYP82E10配列に関する)ことを示す。別の例として、CYP82E4 P38Lは、バリアントタンパク質が、38位のプロリン残基のロイシンによる置換を有する(番号付けは、野生型配列、この場合は配列番号14に示すCYP82E4配列に関する)ことを示す。なお別の例として、CYP82E5 P72Lは、バリアントタンパク質が、72位のプロリン残基のロイシンによる置換を有する(番号付けは、野生型配列、この場合は配列番号26に示すCYP82E5配列に関する)ことを示す。
【0059】
配列番号1は、CYP82E10についてのコード配列を示す。
配列番号2は、CYP82E10についてのアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、CYP82E10遺伝子のイントロンのヌクレオチド配列を示す。
配列番号4は、CYP82E10についてのゲノム配列を示す。
配列番号5は、CYP82E10 L148Fについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号6は、CYP82E10 G172Rについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、CYP82E10 A344Tについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、CYP82E10 A410Tについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、CYP82E10 R417Hについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号10は、CYP82E10 P419Sについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号11は、CYP82E10 G79Sについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号12は、CYP82E10 P107Sについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号13は、CYP82E10 P382Sについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号14は、CYP82E4についてのアミノ酸配列を示す。
配列番号15は、CYP82E4 P38Lについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号16は、CYP82E4 D171Nについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号17は、CYP82E4 E201Kについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号18は、CYP82E4 R169Qについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号19は、CYP82E4 G459Rについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号20は、CYP82E4 T427Iについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号21は、CYP82E4 V376Mについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号22は、CYP82E4 W329Stopについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号23は、CYP82E4 K364Nについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号24は、CYP82E4 P382Sについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号25は、CYP82E4 P458Sについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号26は、CYP82E5についてのアミノ酸配列を示す。
配列番号27は、CYP82E5 P72Lについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号28は、CYP82E5 L143Fについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号29は、CYP82E5 S174Lについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号30は、CYP82E5 M224Iについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号31は、CYP82E5 P235Sについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号32は、CYP82E5 A410Vについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号33は、CYP82E5 W422Stopについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号34は、CYP82E5 P449Lについてのアミノ酸配列を示す。
配列番号35は、CYP82E10のエキソン1についてのフォワードプライマー配列を示す。
配列番号36は、CYP82E10のエキソン1についてのリバースプライマー配列を示す。
配列番号37は、CYP82E10のエキソン2についてのフォワードプライマー配列を示す。
配列番号37は、CYP82E10のエキソン2についてのリバースプライマー配列を示す。
配列番号38は、CYP82E4v2についてのゲノム配列を示す。
配列番号39は、CYP82E5v2についてのゲノム配列を示す。
【0060】
[定義]
本発明は、植物、特に様々な商業的な品種のタバコ植物を含むタバコ(Nicotiana)属の植物の根におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与する根特異的ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの発現または機能を阻害するための組成物および方法を含む。
【0061】
本明細書で用いる場合、「阻害する(inhibit)」、「阻害」および「阻害する(inhibiting)」は、対象の遺伝子産物(すなわち標的遺伝子産物)、この場合は本発明の根特異的ニコチン脱メチル化酵素のようなニコチン脱メチル化酵素の発現または機能を減少させる、当技術分野において既知のまたは本明細書に記載される任意の方法として定義される。ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドは、センスおよびアンチセンス抑制、RNAi抑制、突然変異誘発のようなノックアウトアプローチなどを含む当技術分野において既知の任意の適切な方法により阻害できることが認識される。特に興味があるものは、これらの根特異的ニコチン脱メチル化酵素の発現および/もしくは機能をノックアウトまたはノックダウンする方法、特にCYP82E10ニコチン脱メチル化酵素遺伝子における好ましい変異を選択することを可能にする突然変異誘発アプローチである。
【0062】
「好ましい変異」により意図されるのは、そのニコチン脱メチル化酵素活性が阻害されるようにCYP82E10ポリペプチドの置換、挿入、欠失または切断をもたらす変異である。いくつかの実施形態では、ニコチン脱メチル化酵素活性は、同じ試験条件下で野生型CYP82E10ポリペプチドの活性と比較した場合に、少なくとも25%、30%、35、40%、45、50%、55%または60%阻害される。他の実施形態では、ニコチン脱メチル化酵素活性は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%阻害される。好ましい実施形態では、好ましい変異は、完全阻害(すなわち100%阻害)をもたらし、ニコチン脱メチル化酵素活性は、ノックアウトされる(すなわちその活性を測定できない)。
【0063】
「阻害する」は、2つの植物の間、例えば遺伝子改変植物および野生型植物の比較との関連であり得る。比較は、植物の間、例えば野生型植物と、ニコチンをノルニコチンに変換する根特異的ニコチン脱メチル化酵素を生成できるDNA配列を欠くものの1つとの間であり得る。標的遺伝子産物の発現または機能の阻害も、同じ植物のうちもしくは異なる植物間の植物細胞、オルガネラ、器官、組織または植物部分の間の比較との関連であり得、同じ植物もしくは植物部分のうちの発達段階または経時的段階の間の比較あるいは植物もしくは植物部分の間の比較を含む。
【0064】
「阻害する」は、その遺伝子産物の機能または生成の完全な消去までまたはそれを含む、対象の遺伝子産物、この場合は根特異的ニコチン脱メチル化酵素の機能または生成の任意の相対的な減少を含み得る。遺伝子産物のレベルを比較する場合に、そのような比較は、好ましくは、類似の遺伝子背景を有する生物間で行われる。好ましくは、類似の遺伝子背景は、比較される生物が、核酸遺伝物質の50%以上、より好ましくは75%以上、さらにより好ましくは90%以上の配列同一性を共有する背景である。類似の遺伝子背景は、比較される生物が植物であり、これらの植物が、植物形質転換技術を用いて元来導入された任意の遺伝物質または人間の介在により作製された変異以外は同質遺伝子的である背景である。遺伝子産物のレベルまたは量の測定は、任意の適切な方法により行ってよく、非限定的なその例は、mRNA転写産物レベル、タンパク質もしくはペプチドレベルおよび/または表現型、特にニコチンからノルニコチンへの変換の比較を含むが、それらに限定されない。本明細書で用いる場合、mRNA転写産物は、プロセシングされたおよびプロセシングされていないmRNA転写産物を含むことができ、ポリペプチドまたはペプチドは、任意の翻訳後修飾が行われたかもしくは行われていないポリペプチドまたはペプチドを含み得る。
【0065】
本明細書で用いる場合、「バリアント」は、実質的に同様の配列を意味する。バリアントは、対象の野生型ポリペプチドと異なる機能または実質的に同様の機能を有し得る。ニコチン脱メチル化酵素について、実質的に同様の機能は、同じ条件下でまたは近同質遺伝子系統においてニコチンをノルニコチンに変換する野生型酵素機能の少なくとも99%、98%、97%、95%、90%、85%、80%、75%、60%、50%、25%または15%である。野生型CYP82E10を、配列番号2に示す。野生型CYP82E4を、配列番号14に示す。野生型CYP82E5を、配列番号26に示す。本発明の野生型CYP82E10の例示的なバリアントは、配列番号5、6、7、8、9、10、11、12または13に示す配列を含むポリペプチドを含む。配列番号10に示すバリアント(CYP82E10 P419S)は、野生型CYP82E10ポリペプチドのニコチン脱メチル化酵素活性の約25%だけを有する酵素をもたらす好ましい変異を有利に有する。配列番号11(CYP82E10 G79S)、配列番号12(P107Sを有するCYP82E10)および配列番号13(P382Sを有するCYP82E10)に示すバリアントは、それらのニコチン脱メチル化酵素活性のノックアウト(すなわち100%阻害、よって非機能的ポリペプチド)をもたらす好ましい変異を有利に有する。同様に、野生型CYP82E4の例示的なバリアントは、配列番号15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25に示す配列を含むポリペプチドを含む。配列番号21に示すバリアント(CYP82E4 V376M)は、野生型CYP82E4ポリペプチドのニコチン脱メチル化酵素活性の約50%だけを有する酵素をもたらす好ましい変異を有利に有する。配列番号22(CYP82E4 W329Stop)、配列番号23(CYP82E4 K364N)、配列番号24(CYP82E4 P382S)および配列番号25(CYP82E4 P458S)に示すバリアントは、それらのニコチン脱メチル化酵素活性のノックアウト(すなわち100%阻害)をもたらす好ましい変異を有利に有する。同様に、野生型CYP82E4の例示的なバリアントは、配列番号27、28、29、30、31、32、33または34に示す配列を含むポリペプチドを含む。配列番号34に示すバリアント(CYP82E5 P449L)は、そのニコチン脱メチル化酵素活性の阻害をもたらす好ましい変異を有利に有し、配列番号33に示すバリアントは、そのニコチン脱メチル化酵素活性のノックアウト(すなわち100%阻害)をもたらす好ましい変異を有利に有する。
【0066】
本明細書で用いる場合、「バリアントポリヌクレオチド」または「バリアントポリペプチド」は、野生型でない核酸またはアミノ酸配列を意味する。
【0067】
バリアントは、1つの付加、欠失もしくは置換、2つ以下の付加、欠失もしくは置換、3つ以下の付加、欠失もしくは置換、4つ以下の付加、欠失もしくは置換、または5つ以下の付加、欠失もしくは置換を有することができる。変異は、付加、欠失および置換を含む。このような欠失または付加は、C末端、N末端、またはC末端およびN末端の両方であり得る。融合ポリペプチドまたはエピトープタグ付加ポリペプチドも、本発明に含まれる。「サイレント」ヌクレオチド変異は、所定の位置でのコードされるアミノ酸を変化させない。アミノ酸置換は、保存的であり得る。保存置換は、変化が、元のアミノ酸と同じファミリー内のアミノ酸へのものであるアミノ酸の変化である。ファミリーは、個別のアミノ酸の側鎖により定義される。アミノ酸のファミリーは、塩基性、酸性、非荷電極性または非極性側鎖を有することができる。参照することによりその全体が示されるかの如く本明細書の一部をなすものとするAlbertsら、(1994)Molecular biology of the cell(第3版、56〜57頁、Garland Publishing Inc.,New York、New York)を参照されたい。欠失、置換または付加は、その同じ位置での別のCYP82Eファミリーメンバーのアミノ酸へのものであり得る。本明細書で用いる場合、「断片」は、ポリヌクレオチドの一部分またはそれによりコードされるポリペプチド、よってタンパク質の一部分を意味する。
【0068】
本明細書で用いる場合、「植物部分」は、植物細胞、植物プロトプラスト、それから植物全体を再生できる植物細胞組織培養物、植物カルス、植物凝集塊、および胚、花粉、葯、胚珠、種子、葉、花、茎、枝、果実、根、根尖などのような植物または植物部分においてインタクトな植物細胞を意味する。再生された植物の子孫、バリアントおよび変異体も、それらが本発明の導入されたポリヌクレオチドを含むことを条件として、本発明の範囲に含まれる。本明細書で用いる場合、「タバコ植物材料」は、植物部分の任意の一部分または植物部分の任意の組合せを意味する。
【0069】
[発明の詳細な説明]
本発明は、タバコ植物の根におけるニコチンからノルニコチンへの根特異的変換に関与する新規なニコチン脱メチル化酵素遺伝子、CYP82E10(ゲノム配列は配列番号4に示す)、およびそれによりコードされるCYP82E10ニコチン脱メチル化酵素(配列番号2)、ならびにニコチンからノルニコチンへの変換を低減または最小限にすること、すなわちタバコ植物およびその植物部分においてノルニコチンのレベルを低減することにおけるその使用を対象とする。「根特異的」により、それが、葉または種子のようなその他の植物器官に反して、タバコ植物の根の中で優先的に発現されることを意図する。選択された好ましい変異を、緑葉ニコチン脱メチル化酵素(例えば配列番号26に示すCYP82E5)もしくはニコチン脱メチル化酵素活性を有するそのバリアントをコードする遺伝子内の1つ以上の選択された好ましい変異と組み合わせて、そしてさらに老化誘導性ニコチン脱メチル化酵素(例えば配列番号14に示すCYP82E4)もしくはニコチン脱メチル化酵素活性を有するそのバリアントをコードする遺伝子内の1つ以上の選択された好ましい変異と組み合わせて、この根特異的ニコチン脱メチル化酵素またはニコチン脱メチル化酵素活性を有するそのバリアントに導入することにより、変換率が約1.5%未満、好ましくは約1%未満である最小限のニコチンからノルニコチンへの変換を有する非トランスジェニックタバコ植物を生成できる。
【0070】
タバコにおけるノルニコチンのレベルを低下することは、このアルカロイドが、十分に立証されている発癌物質であるN’−ニトロソノルニコチン(NNN)の前駆体として働くので、非常に望ましい。タバコにおけるニコチン脱メチル化酵素活性を有するタンパク質をコードする2つの遺伝子は、以前に同定され、CYP82E4v2およびCYP82E5v2と称する。CYP82E4ポリペプチド(配列番号14)は、老化誘導性ニコチン脱メチル化酵素である。CYP82E4v2遺伝子(コードおよびイントロン領域を含む)、タバコ植物中のノルニコチン生成におけるその役割、ならびにその発現および機能を阻害するための方法は、米国特許出願第11/580,765号(米国特許出願公開第2008/0202541A1として公開された)に記載されている。CYP82E5ポリペプチド(配列番号26)は、緑葉ニコチン脱メチル化酵素である(すなわち、その主な発現は緑葉におけるものである)。CYP82E4遺伝子(コード領域およびイントロン領域を含む)、タバコ植物中のノルニコチン生成におけるその役割、ならびにその発現および機能を阻害するための方法は、米国特許出願第12/269,531号(米国特許出願公開第2009/0205072A1号として公開された)に記載されている。これらの2つの米国特許出願およびそれらのそれぞれの公報の内容は、それらの全体が参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0071】
好ましい変異cyp82e4v2およびcyp82e5v2対立遺伝子(すなわちこれらのそれぞれのニコチン脱メチル化酵素遺伝子の発現がノックダウンまたはノックアウトされた変異対立遺伝子)についてホモ接合型の植物は、しかし、それらのニコチンの2%より多くをノルニコチンに代謝でき、これは、実質的なNNN形成を依然として導くことができるノルニコチンのレベルを表す。CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の発見は、タバコ植物におけるニコチンからノルニコチンへの変換率を最小限にし、よって、タバコ植物およびそれに由来する植物物質中のノルニコチンのレベル、よってNNNのレベルをさらに低減するためのさらなる道を開く。好ましい変異cyp82e10対立遺伝子を、好ましい変異cyp82e4v2およびcyp82e5v2対立遺伝子と組み合わせることにより、cyp82e4v2変異を単独で有するかまたはcyp82e5v2変異を一緒に有するタバコ植物について観察されるものと比較した場合に、ノルニコチンが3倍を超えて低減したタバコ植物が得られる。一実施形態では、本発明は、米国特許出願公開第2008/0202541A1号および第2009/0205072A1号に記載されるもののようなトランスジェニック遺伝子抑制アプローチによってのみ以前に達成されたものに匹敵する非常に低レベルのノルニコチンを生成する非トランスジェニックタバコ植物をもたらすニコチン脱メチル化酵素遺伝子cyp82e4v2、cyp82e5v2およびcyp82e10のホモ接合型三重変異体の組合せを提供する。
【0072】
<ニコチン脱メチル化酵素ポリヌクレオチドおよびポリペプチド、ならびにそれらのバリアントおよび断片>
本発明の組成物は、CYP82E10ポリペプチドならびにそれらのバリアントおよび断片を含む。このようなニコチン脱メチル化酵素ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、タバコ植物の商業的な品種を含む植物におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与する。特に、本発明の組成物は、配列番号2、および5〜13に示すアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド、配列番号1、3および4に示すヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド、ならびに配列番号2および5〜13のアミノ酸配列をコードする単離ポリヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチドは、植物、特にタバコ植物におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与するニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドまたはそのバリアントの発現の阻害において用いることができる。本発明のポリヌクレオチドのいくつかは、野生型ニコチン脱メチル化酵素のニコチン脱メチル化酵素活性の阻害をもたらす変異を有する。本発明のポリペプチドの阻害は、熱風乾燥タバコのような、集団の30%、50%、70%、90%未満で遺伝子変換が発生するタバコ系統におけるノルニコチンレベルの低下において効果的である。本発明のポリペプチドの阻害は、植物集団の少なくとも90%、80%、70%、60%、50%において遺伝子変換が発生するタバコ集団におけるノルニコチンレベルの低下において効果的である。集団は、好ましくは、約25、50、100、500、1,000、5,000または25,000植物より多くを含有し、ここで、より好ましくは、植物の少なくとも約10%、25%、50%、75%、95%または100%が、本発明のポリペプチドを含む。
【0073】
本発明のニコチン脱メチル化酵素ポリヌクレオチドおよびコードされるポリペプチドは、タバコ植物の根におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換における役割を有するとして新しく同定された、CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素遺伝子と称する新規なシトクロムP450遺伝子を含む。センス、アンチセンスおよびRNAi抑制のようなトランスジェニックアプローチを用いて、米国特許出願公開第2008/0202541A1号および第2009/0205072A1号(これらの開示は、それらの全体が参照することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されるようなCYP82E4およびCYP82E5ニコチン脱メチル化酵素について記載したのと同様に、このニコチン脱メチル化酵素の発現をノックダウンすることができる。好ましいアプローチは、この遺伝子において1つ以上の好ましい変異を導入するものである。なぜなら、このアプローチは、ニコチンからノルニコチンへの変換率が低減され、よってノルニコチンおよびNNNのレベルが低減された非トランスジェニックタバコ植物を有利にもたらすからである。このようなアプローチは、本明細書において以下の他の箇所で記載するような突然変異誘発などを含むが、それらに限定されない。
【0074】
本発明は、本発明の単離または実質的に精製されたポリヌクレオチドまたはタンパク質の組成物を包含する。「単離」もしくは「精製」ポリヌクレオチドまたはタンパク質あるいはその生物学的に活性な部分は、その天然に存在する環境において見出される、ポリヌクレオチドまたはタンパク質と通常付随しているかまたは相互作用している成分を実質的または本質的に含まない。つまり、単離もしくは精製ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、組換え技術により生成される場合に、他の細胞性物質もしくは培養培地を実質的に含まないか、または化学的に合成される場合に、化学的前駆体もしくはその他の化学物質を実質的に含まない。最適には、「単離」ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが由来する生物のゲノムDNAにおいて天然にポリヌクレオチドを挟む(すなわちポリヌクレオチドの5’ 端および3’端にある)配列(最適にはタンパク質をコードする配列)を含まない。例えば、様々な実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが由来する細胞のゲノムDNAにおいて天然にポリヌクレオチドを挟むヌクレオチド配列の約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満を含有できる。細胞性物質を実質的に含まないタンパク質は、約30%、20%、10%、5%または1%(乾燥重量)未満の混入タンパク質を有するタンパク質の調製物を含む。本発明のタンパク質またはその生物学的に活性な部分が組換え生成される場合、最適には、培養培地は、約30%、20%、10%、5%または1%(乾燥重量)未満の化学的前駆体、または対象タンパク質ではない化学物質を表す。
【0075】
開示するポリヌクレオチドおよびそれによりコードされるポリペプチドの断片も、本発明に包含される。ポリヌクレオチドの断片は、天然タンパク質の生物活性を保持するタンパク質断片をコードし、よって、植物におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与する。代わりに、ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして有用なポリヌクレオチドの断片は、全般的に、生物活性を保持する断片タンパク質をコードしない。さらに、開示されるヌクレオチド配列の断片は、それらに限定されないが、当技術分野においておよび本明細書で以下に記載するようなセンス抑制/同時抑制、アンチセンス抑制、2本鎖RNA(dsRNA)干渉、ヘアピンRNA干渉およびイントロン含有ヘアピンRNA干渉、アンプリコン媒介干渉、リボザイムならびに小型干渉RNAまたはマイクロRNAを含む、当技術分野において既知の任意の方法を用いる遺伝子サイレンシング用の組換え構築物内で組み立てることができるものを含む。つまり、ヌクレオチド配列の断片は、所望の結果に依存して、少なくとも約20ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約150ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、250ヌクレオチド、300ヌクレオチドから、本発明のタンパク質をコードする全長ポリヌクレオチドまでの範囲であってよい。一態様では、ヌクレオチド配列の断片は、100から約350の間のヌクレオチド、100から約325の間のヌクレオチド、100から約300の間のヌクレオチド、約125から約300の間のヌクレオチド、約125から約275の間のヌクレオチドの長さ、約200から約320の間の連続ヌクレオチド、約200から約420の間の連続ヌクレオチドの長さ、約250から約450の間の連続ヌクレオチドの長さの断片であり得る。別の実施形態は、約300から約450の間の連続ヌクレオチドの長さを有する組換え核酸分子を含む。
【0076】
本発明のCYP82E10ポリペプチドの生物活性部分をコードする本発明のニコチン脱メチル化酵素ポリヌクレオチドの断片は、少なくとも15、25、30、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450もしくは500連続アミノ酸、または本発明の全長ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドに存在するアミノ酸の総数(例えば配列番号2および5〜13について517アミノ酸)までをコードする。ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの生物活性部分は、本発明のCYP82E10ポリヌクレオチドの1つの一部分を単離し、CYP82E10ポリペプチドのコードされる一部分を発現し(例えばin vitro組換え発現により)、CYP82E10ポリペプチドのコードされる一部分の活性、すなわちニコチンからノルニコチンへの変換を促進する能力を、当技術分野において既知の、本明細書で以下に示すアッセイを用いて評価することにより調製できる。
【0077】
本発明のCYP82E10ヌクレオチド配列の断片であるポリヌクレオチドは、少なくとも16、20、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、800、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650もしくは1700の連続するヌクレオチド、または本明細書で開示する全長CYP82E10ポリヌクレオチドに存在するヌクレオチドの数(例えば配列番号1について1551;配列番号4について2636)までを含む。本発明のCYP82E10ヌクレオチド配列の断片であるポリヌクレオチドは、本明細書で開示するCYP82E10ポリヌクレオチドからの約20から約1700までの連続ヌクレオチド、約50から約1600までの連続ヌクレオチド、約75から約1500までの連続ヌクレオチド、約100から約1400までのヌクレオチド、約150から約1300までの連続ヌクレオチド、約150から約1200までの連続ヌクレオチド、約175から約1100までの連続ヌクレオチド、約200から約1000までの連続ヌクレオチド、約225から約900までの連続ヌクレオチド、約500から約1600までの連続ヌクレオチド、約775から約1700までの連続ヌクレオチド、約1000から約1700までの連続ヌクレオチド、または約300から約800までの連続ヌクレオチドを含む。一態様では、断片ポリヌクレオチドは、CYP82E10コード配列の約700位〜約1250位、CYP82E10ゲノム配列の約700位〜約1250位、CYP82E10イントロン配列の約10位〜約900位、またはCYP82E10イントロン配列の約100位〜約800位のヌクレオチドからのポリヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチド配列を含む。
【0078】
開示するポリヌクレオチドおよびそれによりコードされるポリペプチドのバリアントも、本発明に包含される。天然に存在するバリアントは、本明細書で以下に定義するように本明細書で開示するCYP82E10ポリヌクレオチドおよびポリペプチドと実質的な配列同一性を共有するバリアントを含む。別の実施形態では、天然に存在するバリアントは、本明細書で開示するCYP82E10ポリヌクレオチドと実質的な機能的同一性も共有する。本発明の組成物および方法は、開示するCYP82E10ポリペプチドと実質的な配列同一性を共有する任意の天然に存在するCYP82E10の発現または機能を標的にするために用いることができる。このようなCYP82E10ポリペプチドは、関連するニコチン脱メチル化酵素活性、すなわち植物におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換への関与を有するか、または有さないことができる。このようなバリアントは、例えば、遺伝子多形または突然変異誘発アプローチを含む育種および選択を用いて発生するようなヒト操作に起因してよい。本発明のCYP82E10タンパク質の生物活性バリアント、例えば配列番号2および5〜13に示すポリペプチドのバリアントは、本明細書の他の箇所で記載する配列アラインメントプログラムおよびパラメータにより決定されるように、野生型タンパク質についてのアミノ酸配列と少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれら以上の配列同一性を有し、植物におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換におけるそれらの機能的関与またはその欠如を特徴とすることができる。本発明のあるタンパク質の生物活性バリアントは、そのタンパク質から1〜15ほど少ないアミノ酸残基、10ほど少なく、9ほど少なく、8ほど少なく、7ほど少なく、6ほど少なく、5ほど少なく、4ほど少なく、3ほど少なく、2ほど少なく、または1ほど少ないアミノ酸残基が異なってよい。本発明のあるタンパク質の生物学的に不活性なバリアントは、そのタンパク質から1〜15ほど少ないアミノ酸残基、10ほど少ないアミノ酸残基、9ほど少ないアミノ酸残基、8ほど少ないアミノ酸残基、7ほど少ないアミノ酸残基、6ほど少ないアミノ酸残基、5ほど少ないアミノ酸残基、4ほど少ないアミノ酸残基、3ほど少ないアミノ酸残基、2ほど少ないアミノ酸残基、または1ほど少ないアミノ酸残基が異なってよい。
【0079】
本発明の特定のポリヌクレオチドのバリアントは、植物の根におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与するCYP82E10ポリペプチドをコードする天然に存在するポリヌクレオチドを含む。このようなポリヌクレオチドバリアントは、1つ以上のヌクレオチドの欠失および/または付加を、本明細書で開示する天然ポリヌクレオチド内の1つ以上の部位にて含み、かつ/あるいは天然ポリヌクレオチド中の1つ以上の部位にて1つ以上のヌクレオチドの置換を含み得る。遺伝子コードの縮重性により、ポリヌクレオチドの保存バリアントは、本発明のCYP82E10ポリペプチドの1つのアミノ酸配列をコードする配列を含む。これらのような天然に存在するバリアントは、当技術分野において既知であり本明細書で開示する例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション技術のような公知の分子生物学的技術を用いて同定できる。バリアントポリヌクレオチドは、例えば、部位特異的突然変異誘発により作製されるが、本明細書で開示する天然に存在する配列と実質的な配列同一性を依然として共有し、よって、本発明の方法において、配列番号2、5、6、7、8、9および10に示すニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドを含むニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与するニコチン脱メチル化酵素の発現または機能を阻害するために用いることができるもののような合成により導かれるポリヌクレオチドも含む。一般的に、本発明の特定のポリヌクレオチドのバリアント、例えば配列番号3のポリヌクレオチド配列または配列番号2および5〜13に示すアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書の他の箇所で記載する配列アラインメントプログラムおよびパラメータにより決定して、その特定のポリヌクレオチドと少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有する。
【0080】
本発明の特定のポリヌクレオチド(参照ポリヌクレオチドともいう)のバリアントは、参照ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと、バリアントポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドとの間のパーセント配列同一性を比較することによっても評価できる。任意の2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、本明細書の他の箇所で記載する配列アラインメントプログラムおよびパラメータを用いて計算できる。本発明のポリヌクレオチドの任意の所定の対を、それらがコードする2つのポリペプチドが共有するパーセント配列同一性の比較により評価する場合、2つのコードされるポリペプチド間のパーセント配列同一性は、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性である。
【0081】
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、対応する根特異的ニコチン脱メチル化酵素配列、特にCYP82E10配列を、タバコ属の他のメンバーから単離するために用いることができる。PCR、ハイブリダイゼーションおよびその他の同様の方法を用いて、このような配列を、本明細書で示す配列とのそれらの配列相同性に基づいて同定できる。本明細書に示すヌクレオチド配列またはそのバリアントおよび断片に対するそれらの配列同一性に基づいて単離される配列は、本発明に包含される。このような配列は、開示する配列のオルソログである配列を含む。
【0082】
本発明によると、「オルソログ」は、共通の祖先の遺伝子に由来し、種分化の結果として異なる種において見出される遺伝子である。異なる種で見出される遺伝子は、それらのヌクレオチド配列および/またはそれらがコードするタンパク質配列が、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を共有する場合に、オルソログであるとみなされる。オルソログの機能は、頻繁に、種のうちで高く保存される。つまり、ニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与するニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドをコードし、本明細書で開示するCYP82E10配列またはそのバリアントもしくは断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離ポリヌクレオチドは、本発明に包含される。このような配列は、本発明の方法において、植物においてニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与するニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの発現を阻害するために用いることができる。
【0083】
PCRを用いて、オリゴヌクレオチドプライマーを、任意の対象の植物から抽出したcDNAまたはゲノムDNAから対応するDNA配列を増幅するためのPCR反応において用いるために設計できる。PCRプライマーを設計するためおよびPCRクローニングの方法は、全般的に当技術分野において既知であり、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、New York)、Innisら編(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press、New York);InnisおよびGelfand編(1995)PCR Strategies(Academic Press、New York);ならびにInnisおよびGelfand編(1999)PCR Methods Manual(Academic Press、New York)に開示されている。PCRの既知の方法は、対プライマー、ネステッドプライマー、単一特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的ミスマッチプライマーなどを用いる方法を含むが、それらに限定されない。
【0084】
ハイブリダイゼーション技術は、既知のポリヌクレオチドの全部または一部分を、選択した生物からのクローニングしたゲノムDNA断片またはcDNA断片の集団(すなわちゲノムまたはcDNAライブラリー)中に存在する他の対応するポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするためのプローブとして用いることを含む。
【0085】
ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件下で行ってよい。「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」により、プローブが、他の配列に対するよりも検出可能に大きい程度(例えばバックグラウンドより少なくとも2倍大きい)でその標的配列とハイブリダイズする条件を意図する。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況の下で異なる。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、プローブと100%相補的な標的配列を同定できる(相同的探索)。代わりに、ストリンジェンシー条件は、より低い程度の類似性を検出するように、配列中にいくらかのミスマッチを許容するように調整できる(異種的探索)。一般的に、プローブは、約1000ヌクレオチド未満の長さ、最適には500ヌクレオチド未満の長さである。
【0086】
典型的に、ストリンジェントな条件は、塩濃度がpH7.0〜8.3にて約1.5M未満のNaイオン、典型的に約0.01〜1.0MのNaイオン濃度(またはその他の塩)、かつ温度が少なくとも約30℃のものである。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成してもよい。例示的な低ストリンジェンシー条件は、30〜35%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝液を37℃にて用いるハイブリダイゼーションと、1×〜2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)中で50〜55℃での洗浄を含む。例示的な中程度のストリンジェンシー条件は、40〜45%ホルムアミド、1.0MのNaCl、1%SDS中で37℃でのハイブリダイゼーションと、0.5×〜1×SSC中で55〜60℃での洗浄を含む。例示的な高ストリンジェンシー条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中で37℃でのハイブリダイゼーションと、0.1×SSC中で60〜65℃での洗浄を含む。場合によって、洗浄緩衝液は、約0.1%〜約1%のSDSを含んでよい。ハイブリダイゼーションの期間は、一般的に約24時間未満、通常、約4〜約12時間である。洗浄時間の期間は、少なくとも、平衡に達するために十分な長さの時間である。
【0087】
具体的な実施形態では、ストリンジェンシー条件は、5×SSC、0.5%SDS、5×デンハルト、0.45ug/ulポリA RNA、0.45ug/ulウシ胸腺DNAおよび50%ホルムアミドを含有する溶液中で42℃でのハイブリダイゼーションと、約0.01×SSCから約1×SSCまでを含む溶液中での少なくとも1回のハイブリダイゼーション後の洗浄とを含む。ハイブリダイゼーションの期間は、約14時間から約16時間までである。
【0088】
特異性は、典型的に、ハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、重要な因子は、最終洗浄溶液のイオン強度および温度である。DNA−DNAハイブリッドについて、Tは、MeinkothおよびWahl(1984)Anal.Biochem.138:267〜284頁の等式:T=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/L(式中、Mは、1価カチオンのモル濃度であり、%GCは、DNA中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%formは、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、Lは、ハイブリッドの長さ(塩基対)である)から見積もることができる。Tは、50%の相補的標的配列が、完全にマッチするプローブとハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度およびpHの下で)である。Tは、1%のミスマッチごとについて約1℃下がる。よって、T、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件は、所望の同一性の配列とハイブリダイズするように調整できる。例えば、90%以上の同一性を有する配列を探す場合、Tは、10℃低くできる。全般的に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにて特定の配列とその相補体とについての熱的融点よりも約5℃低いように選択される。しかし、厳しいストリンジェント条件は、熱的融点(T)より1、2、3または4℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用できる。中程度にストリンジェントな条件は、熱的融点(T)より6、7、8、9または10℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用できる。低ストリンジェンシー条件は、熱的融点(T)より11、12、13、14、15または20℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用できる。この等式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成、ならびに所望のTを用いて、当業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーの変動が固有に記載されることを理解する。所望の程度のミスマッチが45℃(水性溶液)または32℃(ホルムアミド)未満のTをもたらすならば、より高い温度を用いることができるようにSSC濃度を増加することが最適である。核酸のハイブリダイゼーションについての網羅的な手引きは、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes、第I部、第2章(Elsevier、New York);およびAusubelら編(1995)Current Protocols in Molecular Biology、第2章(Greene Publishing and Wiley−Interscience、New York)で見出される。Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、New York)を参照されたい。
【0089】
ハイブリダイゼーションプローブは、ゲノムDNA断片、cDNA断片、RNA断片またはその他のオリゴヌクレオチドであってよく、32Pのような検出可能な基または任意のその他の検出可能なマーカーで標識されてよい。例えば、ハイブリダイゼーション用のプローブは、本発明のCYP82E10ポリヌクレオチド配列に基づく合成オリゴヌクレオチドを標識することにより作製できる。ハイブリダイゼーション用ならびにcDNAおよびゲノムライブラリーの構築用のプローブの調製方法は、当技術分野において一般的に既知であり、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、New York)に開示されている。
【0090】
例えば、本明細書で開示するCYP82E10ポリヌクレオチド配列または1つ以上のその部分は、対応する根特異的ニコチン脱メチル化酵素ポリヌクレオチドおよびメッセンジャーRNAと特異的にハイブリダイズできるプローブとして用いてよい。様々な条件下で特異的ハイブリダイゼーションを達成するために、このようなプローブは、コード配列に対して5’の上流領域およびコード配列に対して3’の下流領域およびイントロン領域(例えば、配列番号3)を含むCYP82E10ポリヌクレオチド配列のうちでユニークなまたはCYP82E10ポリヌクレオチド配列の1つにユニークな配列を含み、最適には、少なくとも約10連続ヌクレオチドの長さ、より最適には少なくとも約20連続ヌクレオチドの長さ、より最適には少なくとも約50連続ヌクレオチドの長さ、より最適には少なくとも約75連続ヌクレオチドの長さ、およびより最適には少なくとも約100連続ヌクレオチドの長さである。このようなプローブは、対応するCYP82E10ポリヌクレオチドを増幅するために用いてよい。この技術は、追加のコード配列または所望の植物からの変異を単離するため、または植物におけるコード配列の存在を決定するための診断アッセイとして用いてよい。ハイブリダイゼーション技術は、プレーティングしたDNAライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニングを含む(プラークまたはコロニーのいずれか;例えばSambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、New Yorkを参照されたい)。
【0091】
本明細書で用いる場合、2以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列の関係に関して、「参照配列」という用語は、配列比較のための基礎として用いる規定された配列である。参照配列は、例えば全長cDNAもしくは遺伝子配列のセグメント、または完全cDNAもしくは遺伝子配列のような、特定の配列のサブセットまたは全体であってよい。
【0092】
本明細書で用いる場合、「比較ウィンドウ」という用語は、ポリヌクレオチド配列の連続する特定のセグメントに言及し、ここで、比較ウィンドウ中のこのポリヌクレオチド配列は、2つのポリヌクレオチドの最適アラインメントのための服従(deference)配列(これは、付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含むことがある。全般的に、比較ウィンドウは、少なくとも20の連続するヌクレオチドの長さであり、場合によって30、40、50、100以上であり得る。当業者は、ポリヌクレオチド配列中にギャップを含めることによる参照配列に対する高い類似性を回避するために、ギャップペナルティを典型的に導入し、マッチの数から減じることを理解している。
【0093】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野において公知である。よって、任意の2つの配列間のパーセント配列同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成できる。このような数学的アルゴリズムの非限定的な例は、MyersおよびMiller(1988)CABIOS4:11〜17頁のアルゴリズム;Smithら(1981)Adv.Appl.Math.2:482頁の局所アラインメントアルゴリズム;NeedlemanおよびWunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443〜453頁のグローバルアラインメントアルゴリズム;PearsonおよびLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444〜2448頁の局所検索アラインメント法;KarlinおよびAltschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 872264頁のアルゴリズム(KarlinおよびAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873〜5877頁において改変)である。
【0094】
Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403頁のBLASTプログラムは、既出のKarlinおよびAltschul(1990)のアルゴリズムに基づく。BLASTヌクレオチド検索は、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列を得るために、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行うことができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質またはポリペプチドに相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTXプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行うことができる。比較の目的のためにギャップを有するアラインメントを得るために、ギャップドBLAST(BLAST2.0中)を、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389頁に記載されるように利用できる。代わりに、PSI−BLAST(BLAST2.0中)を用いて、分子間の離れた関係を検出するための反復検索を行うことができる。既出のAltschulら(1997)を参照されたい。BLAST、ギャップドBLAST、PSI−BLASTを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、ヌクレオチド配列についてBLASTN、タンパク質についてBLASTX)を用いることができる(www.ncbi.nlna.nih.govを参照されたい)。アラインメントは、観察により手動で行ってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書で示す配列同一性/類似性の値は、デフォルトパラメータを用いるBLASTX(Altschulら(1997)、既出)、Clustal W(Higginsら(1994)Nucleic Acids Res.22:4673〜4680頁)およびGAP(University of WisconsinGenetic Computing Groupソフトウェアパッケージ)アルゴリズムを用いて計算する。本発明は、核酸およびタンパク質の配列の分析および比較のためにそれらの任意の等価なプログラムを用いることも包含する。「等価なプログラム」により、問題の任意の2つの配列について、BLASTX、Clustal WまたはGAPにより得られた対応するアラインメントと比較した場合に、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のマッチおよび同一のパーセント配列同一性を有するアラインメントが得られる任意の配列比較プログラムを意図する。
【0096】
本発明に包含されるバリアントヌクレオチドおよびポリペプチド配列の上記の議論の目的のために、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の関係における「配列同一性」または「同一性」という用語は、特定の比較ウィンドウにわたって最大限に対応するようにアラインメントした場合に同じである2つの配列中の残基について言及する。配列同一性のパーセンテージがタンパク質について言及する場合に用いられる場合、同一でない残基の位置は、保存アミノ酸置換により頻繁に異なることが認識され、ここでは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば電荷または疎水性)を有する別のアミノ酸残基で置換され、よって、分子の機能的特性を変化させない。配列が保存置換により異なる場合、パーセント配列同一性は、置換の保存的性質を修正するために上方に調整してよい。このような保存置換により異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有するという。この調整をモルトする(malting)ための手段は、当業者に公知である。典型的に、これは、保存置換を、完全ミスマッチよりもむしろ部分的ミスマッチとして評点し、そのことによりパーセンテージ配列同一性を増加することを含む。よって、例えば、同一アミノ酸が1のスコアを与えられ、非保存置換がゼロのスコアを与えられる場合、保存置換は、ゼロと1の間のスコアを与えられる。保存置換の評点は、例えばプログラムPC/GENE(Intelligenetics、Mountain View、California)中に実装されるようにして計算される。
【0097】
「配列同一性のパーセンテージ」という用語は、本明細書で用いる場合、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することにより決定される値を意味し、ここで、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのための参照配列(これは、付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含むことがある。パーセンテージは、両方の配列中で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定してマッチした位置の数を得て、マッチした位置の数を、比較ウィンドウ中の位置の総数で除し、解に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。
【0098】
よって、CYP82E10ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、本明細書で示す配列を用いて同定できる。このような方法は、配列番号1、3もしくは4のポリヌクレオチド配列またはその相補体もしくは断片、あるいは配列番号2もしくは5〜13のポリペプチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%の配列同一性のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を得ることを含む。好ましい実施形態は、CYP82E10ポリペプチドの79位、107位または382位(番号付けは、配列番号2に対応する)にてセリンを有する配列番号2に対応するポリペプチドを含む。
【0099】
<ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能を阻害する方法>
タバコ属植物もしくは植物部分、特に根の組織において本発明のCYP82E10ポリペプチドの濃度、含量および/または活性を低減する方法が提供される。本発明のCYP82E10ポリペプチド(配列番号2)およびニコチン脱メチル化酵素活性を保持するそのバリアント(例えば配列番号7、8、9および10)の活性を低減または消去するために多くの方法を単独または組み合わせて用いてよい。さらに、2以上の異なるニコチン脱メチル化酵素、より具体的には根特異的CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素と、緑葉CYP82E5および老化誘導性CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素の一方または両方との活性を低減または消去するために方法の組合せを採用してよい。ある特定の実施形態では、CYP82E5は、緑葉における変換に対して負に影響する配列番号26の配列中の少なくとも1つのアミノ酸変異を有するポリペプチドであり、CYP82E4は、老化した葉における変換に対して負に影響する少なくとも1つのアミノ酸変異を有する配列番号14に示す配列を有する。
【0100】
本発明によると、本発明のCYP82E10ニコチン脱メチル化酵素の発現は、CYP82E10ポリペプチドのタンパク質レベルが、そのCYP82E10ポリペプチドの発現を阻害するために遺伝子改変または突然変異誘発されていない植物における同じCYP82E10ポリペプチドのタンパク質レベルよりも統計学的に低いならば、阻害されている(ここで、これらの植物は、同じ手順を用いて栽培および採集されている)。本発明のある特定の実施形態では、本発明による改変植物におけるCYP82E10ポリペプチドのタンパク質レベルは、変異体ではないかまたはCYP82E10ポリペプチドの発現を阻害するために遺伝子改変されておらず、同じ手順を用いて栽培および採集された植物における同じCYP82E10ポリペプチドのタンパク質レベルの95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、または5%未満である。CYP82E10ポリペプチドの発現レベルは、例えば、タバコ植物もしくは植物部分において発現されたCYP82E10転写産物またはCYP82E10ポリペプチドのレベルをアッセイすることにより直接的に、あるいは例えばタバコ植物もしくは植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの変換を測定することにより間接的に測定してよい。タンパク質の発現レベルをモニタリングするための方法は、当技術分野において既知であり、それらに限定されないが、ノザンブロット分析およびRNA識別アッセイを含む。ニコチンからノルニコチンへの変換における標的にしたCYP82E10ポリペプチドの活性を決定する方法は、当技術分野において既知であり、本明細書において以下に他の場所で記載し、それらに限定されないが、ガスクロマトグラフィーを用いるアルカロイド分析を含む。
【0101】
本発明は、タバコ植物またはその植物部分におけるノルニコチンのレベルを低減するかまたはニコチンからノルニコチンへの変換率を低減する方法を提供する。これらの方法は、タバコ植物のゲノムに、少なくとも3つのニコチン脱メチル化酵素遺伝子のそれぞれの少なくとも1つの対立遺伝子内の変異を導入することを含み、ここで、この変異は、ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の発現を低減し、これらのニコチン脱メチル化酵素遺伝子の第1のものは、タバコ植物またはその植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与する根特異的ニコチン脱メチル化酵素をコードする。いくつかの実施形態では、根特異的ニコチン脱メチル化酵素は、CYP82E10またはそのバリアントである。他の実施形態では、これらの方法は、タバコ植物のゲノムに、CYP82E10もしくはそのバリアントをコードするニコチン脱メチル化酵素遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子内の変異と、CYP82E4もしくはそのバリアントをコードするニコチン脱メチル化酵素および/またはCYP82E5もしくはそのバリアントをコードするニコチン脱メチル化酵素の少なくとも1つの対立遺伝子内の変異とを導入することを含む。
【0102】
1つの植物において変異を組み合わせるために、有性交雑を含むいくつかのアプローチが用いられている。根におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E10遺伝子における好ましい変異を有する植物を、老化した葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E4v2遺伝子における好ましい変異を有する植物と交雑させるか、または緑葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP83E5v2遺伝子における好ましい変異を有する植物と交雑させて、ニコチンからノルニコチンへの変換が低減された植物を生成できる。好ましい実施形態では、同じ植物内でCYP82E10、CYP82E4v2およびCYP82E5v2遺伝子内に好ましい変異を導入するために、交雑種を作製する。この様式では、根におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E10遺伝子における好ましい変異を有する植物を、老化した葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E4v2遺伝子における好ましい変異と、緑葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP83E5v2遺伝子における好ましい変異とを有する植物と交雑させる。代わりに、老化した葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E4v2遺伝子における好ましい変異を有する植物を、根におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E10遺伝子における好ましい変異と、緑葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP83E5v2遺伝子における好ましい変異とを有する植物と交雑させる。なお別の実施形態では、緑葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E5v2遺伝子における好ましい変異を有する植物を、根におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E10遺伝子における好ましい変異と、老化した葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP83E4v2遺伝子における好ましい変異とを有する植物と交雑させる。これらのニコチン脱メチル化酵素遺伝子のそれぞれに好ましい変異を導入することにより、約0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%または0.7%未満の変換レベルでニコチンからノルニコチンへの変換率が低減された植物を生成することができる。
【0103】
より好ましい実施形態では、79位、107位、382位または419位(番号付けは、配列番号2に従う)でのCYP82E10ポリペプチドの改変をもたらす1つ以上の好ましい変異を有する植物を、329位、364位、376位、382位もしくは458位でのCYP82E4ポリペプチドの改変をもたらす1つ以上の好ましい変異および/あるいは422位もしくは449位でのCYP82E5ポリペプチドの改変をもたらす1つ以上の好ましい変異を有する植物と交雑させて、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%または0.7%未満の変換レベルを有する植物を生成できる。ニコチンからノルニコチンへの特に好ましい変換レベルは、0.05%〜0.4%の間、0.1〜0.6%の間、0.1%〜0.3%の間、0.1%〜0.5%の間、0.1%〜0.4%の間、0.1%〜0.7%の間、0.1%〜1.0%の間、0.1%〜1.1%の間、0.1%〜1.2%の間、0.1%〜1.3%の間、0.1%〜1.4%の間または0.1%〜1.5%の間であり得る。保存ヘム結合モチーフの前のCYP82E10、CYP83E4またはCYP83E5ポリペプチドの切断をもたらす本発明のポリヌクレオチドの任意の変異は、酵素を阻害し、上記の交雑種において用いることができる。シトクロムP450タンパク質のドメインは、当技術分野において既知である。例えば、Xuら(2007)Physiologia Plantarum129:307〜319頁(参照することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい。非機能的または阻害されたCYP82E10遺伝子を有する植物を、非機能的もしくは阻害されたCYP82E4v2遺伝子、非機能的もしくは阻害されたCYP82E5v2遺伝子、または非機能的もしくは阻害されたCYP82E4v2およびCYP82E5v2遺伝子を有する植物と交雑させることにより、ノルニコチンレベルをタバコ植物において低減できる。
【0104】
タバコ植物または植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの変換におけるCYP82E10、CYP82E4またはCYP82E5ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの活性は、その変換活性が、そのニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの変換活性を阻害するために遺伝子改変されておらず、同じ手順を用いて栽培および採集されたタバコ植物または植物部分における同じニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの変換活性よりも統計学的に低いならば、本発明に従って阻害されている。特定の実施形態では、本発明による改変タバコ植物または植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの変換におけるニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの活性は、その活性が、そのニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの発現を阻害するために遺伝子改変されておらず、同じ手順を用いて栽培および採集されたタバコ植物における同じニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの変換活性の95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満または1%未満であるならば、阻害されている。タバコ植物または植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの変換におけるニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの活性は、本明細書の他の箇所で記載するアッセイ方法により検出可能でない場合に、本発明に従って消去されている。ガスクロマトグラフィーを用いて、タバコ植物におけるニコチンからノルニコチンへの変換におけるニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの活性を決定する方法を、本明細書の以下において実施例で開示する。
【0105】
いくつかの実施形態では、好ましい変異は、タバコ植物または植物部分に突然変異誘発アプローチを用いて導入され、導入された変異は、それらに限定されないが、サザンブロット分析、DNA配列決定、PCR分析または表現型分析のような当業者に既知の方法を用いて選択される。上記の実施形態により変更または改変された植物または植物部分は、植物形成条件下で、植物中の本発明のポリペプチドの濃度および/または活性を調節するのに十分な時間生育させる。植物形成条件は当技術分野において公知であり、本明細書の他の箇所で簡単に論じる。
【0106】
本明細書で記載するニコチン脱メチル化酵素中に好ましい変異を含有する改変タバコ植物は、ニコチンからノルニコチンへの変換レベルが低減されている。特定の実施形態では、本発明による改変タバコ植物または植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの変換は、そのニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの発現を阻害するために遺伝子改変されておらず、同じ手順を用いて栽培および採集されたタバコ植物における変換の95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満または1%未満である。いくつかの実施形態では、改変タバコ植物は、コンバータタバコ植物である。他の実施形態では、改変タバコ植物は、非コンバータタバコ植物である。いくつかの実施形態では、改変タバコ植物は、商業的な非コンバータタバコ植物において観察される率よりも低い変換率を有する。
【0107】
本発明によると、本発明のCYP82E10ポリペプチドのレベル、比、活性もしくは分布の変化、またはタバコ植物もしくは植物部分の表現型の変化、特にノルニコチンおよびその発癌性代謝産物であるNNNの蓄積の低減は、対象植物または対象植物部分を、対照植物または対照植物部分と比較することにより測定でき、ここで、対象植物または対象植物部分および対照植物または対照植物部分は、同じ手順を用いて栽培および/または採集されている。本明細書で用いる場合、対象植物または対象植物部分は、例えば突然変異誘発による遺伝子変更が、対象のニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドについて影響しているものであるか、あるいはそのように変更されたタバコ植物もしくは植物部分の子孫であり、その変更を含むタバコ植物または植物部分である。対照植物または対照植物部分は、対象植物または対象植物部分の表現型の変化を測定するための参照点を提供する。表現型の変化の測定は、植物の発達、老化の間または乾燥後を含む、植物または植物部分において任意の時間に測定できる。他の実施形態では、表現型の変化の測定は、生育チャンバ、温室または野外で生育した植物からを含む任意の条件下で生育した植物で測定できる。一実施形態では、表現型の変化は、ニコチンからノルニコチンへの変換率を決定することにより測定できる。ある好ましい実施形態では、変換は、ノルニコチンのパーセンテージ(全組織重量のパーセンテージとして)を、パーセンテージニコチンおよびノルニコチンの合計(全組織重量のパーセンテージとして)で除し、100を乗じることにより測定できる。
【0108】
本発明によると、対照植物または対照植物部分は、野生型、すなわち対象植物または対象植物部分をもたらした遺伝子変更のための出発材料と同じ遺伝子型のタバコ植物または植物部分を含んでよい。対照植物または対照植物部分は、出発材料と同じ遺伝子型のタバコ植物または植物部分であるが、ヌル構築物(すなわち、選択可能なマーカー遺伝子を含む構築物のような、対象の形質に対して既知の影響を有さない構築物)で形質転換されたものも含んでよい。このような全ての場合では、対象植物または対象植物部分および対照植物または対照植物部分は、同じ手順を用いて栽培および採集される。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明のニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの活性は、ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドをコードする遺伝子を破壊することにより低減または消去してよい。本発明は、ニコチン脱メチル化酵素遺伝子における変異を有する突然変異誘発植物を包含し、この変異は、ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の発現を低減するか、または本発明のコードされるニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの活性を阻害する。
【0110】
他の実施形態では、本発明のニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの活性は、ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドをコードする遺伝子を破壊することにより低減または消去される。ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドをコードする遺伝子は、当技術分野において既知の任意の方法により、例えば、トランスポゾンタギングにより、あるいはランダムもしくは標的突然変異誘発を用いて植物に突然変異を誘発し、ニコチン脱メチル化酵素活性が低減されているかあるいはCYP82E10中の変異を単独でまたはCYP82E4もしくはCYP82E5中の変異との組合せで有する植物について選択することにより破壊してよい。
【0111】
トランスポゾンタギングは、本発明の1つ以上のCYP82E10ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの活性を低減または消去するために用いてよい。トランスポゾンタギングは、トランスポゾンを、内因性ニコチン脱メチル化酵素遺伝子内に導入して、ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの発現を低減または消去することを含む。
【0112】
植物における特定の遺伝子のトランスポゾンタギングの方法は、当技術分野において公知である。例えばMaesら(1999)Trends Plant Sci.4:90〜96頁;DharmapuriおよびSonti(1999)FEMS Micerobiol.Lett.179:53〜59頁;Meissnerら(2000)Plant J.22:265〜274頁;Phogatら(2000)J.Biosci.25:57〜63頁;Walbot(2000)Curr.Opin.Plant Biol.2:103〜107頁;Gaiら(2000)Nucleic Acids Res.28:94〜9b頁;Fitzmauriceら(1999)Genetics 153:1919〜1928頁を参照されたい。
【0113】
植物における内因性遺伝子の発現を低減または消去するためのさらなる方法も、当技術分野において既知であり、本発明に同様に用いることができる。これらの方法は、エチルメタンスルホネート誘導性突然変異誘発、欠失突然変異誘発および内因性遺伝子が欠失された植物系統を同定するために逆遺伝学の意味において(PCRを用いて)用いられる高速中性子欠失突然変異誘発を含む突然変異誘発性または発癌性化合物を用いるその他の形態の突然変異誘発を含む。これらの方法の例について、Ohshimaら(1998)Virology 213:472〜481頁;Okubaraら(1994)Genetics 137:867〜874頁;およびQuesadaら(2000)Genetics 154:421〜4315頁(これらのそれぞれは、参照することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい。さらに、変性HPLCまたは選択されたPCR産物の選択的エンドヌクレアーゼ消化を用いる、化学誘発変異をスクリーニングするための迅速で自動化できる方法であるTILLING(ゲノム中の標的化誘発局所損傷)も、本発明に用いることができる。McCallumら(2000)Nat.Biotechnol.18:455〜457(参照することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい。
【0114】
遺伝子発現に影響するかまたはコードされるニコチン脱メチル化酵素タンパク質の機能に干渉する変異は、当技術分野において公知である方法を用いて決定できる。遺伝子エキソン中の挿入変異は、通常、ヌル変異体をもたらす。保存残基中の変異は、コードされるタンパク質の代謝機能の阻害において特に効果的であり得る。タバコ植物または植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの変換におけるニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの活性を消去するという目標を有する突然変異誘発のために適切な植物ニコチン脱メチル化酵素ポリペプチドの保存残基は、記載されている。他のP450ポリペプチドから異なる残基に灰色で影がつけてある米国特許出願公開第2009/0205072A1号(参照することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする)の図1A〜Cを参照されたい。保存残基は、それぞれの位置にて灰色で影が付いていないものである。このような変異体は、公知の手順に従って単離できる。
【0115】
本発明の別の実施形態では、ドミナント変異体を用いて、重複遺伝子座の遺伝子逆位および組換えによるRNAサイレンシングを誘引できる。例えば、Kusabaら(2003)Plant Cell 15:1455〜1467頁を参照されたい。
【0116】
本発明の別の実施形態では、本発明の組成物は、育種プログラムで用いるための非コンバータ植物を同定するためのスクリーニング方法において用いられる。この様式で、本発明のヌクレオチド配列を用いて、本明細書で同定されるCYP82E10遺伝子において適切な変異を有する非コンバータ植物について、天然の生殖質をスクリーニングできる。本発明の方法により同定されるこれらの非コンバータ植物を用いて、育種系統を開発できる。
【0117】
本明細書で記載するCYP82E10ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に加えて、本発明の組成物は、スクリーニング方法で用いることができるCYP82E10遺伝子配列中のイントロン配列を含む。いずれの作用機序にも結び付けられることはないが、CYP82E10遺伝子(複数可)は、タバコの根におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与するシトクロムP450ファミリーの唯一のメンバー(複数可)であり得る。ある応用のために、シトクロムP450遺伝子ファミリーのこの特定のメンバーを、このファミリー内の残りの密接に関係する配列から診断的に区別するための手段を有することが有用である。例えば、天然に存在するタバコ生殖質内で(または突然変異を誘発した集団において)、この遺伝子が天然に機能不全であり、よって永続的に非コンバータである資源として価値を有し得るものが存在することがある。このような機能不全配列は、配列番号11、12または13に示すポリペプチドをコードするものを含んでよい。このような遺伝子型(例えば欠失変異、再編成など)について特異的にアッセイする方法は、強力なツールとして働くことができる。本発明は、CYP82E10のエキソン1およびエキソン2を特異的に増幅するように設計されたプライマーを含み、これらの2つのプライマー対のうちの一方は、エキソン間のイントロンに対応する。CYP82E10のエキソンを増幅するために有用なプライマーの例は、配列番号35と配列番号36および配列番号37と配列番号38を含む。これらの同じプライマーは、生成物の配列分析のために用いることができる。
【0118】
遺伝子のイントロン領域は、典型的に、エキソンよりも保存されていないので、イントロン特異的プローブを使用することにより、CYP82E10遺伝子に相当する遺伝子(複数可)を、CYP82Eファミリーのその他のメンバーから区別しやすくなると予測される。生成物を作製するために用いたCYP82E10イントロン特異的プローブおよび/またはPCRプライマーの使用により、任意の天然に存在するかまたは突然変異誘発されたタバコ植物が、遺伝子を不活性化させ得る欠失または再編成を有するかを決定するアッセイにおける強力なツールが提供される。このような植物は、次いで、育種プログラムにおいて用いて、変換できないタバコ系統を創出できる。
【0119】
<ノルニコチンおよびNNNの含量が低減したタバコ植物、植物部分および生成物>
本発明のCYP82E10ポリヌクレオチド、ならびにそれらのバリアントおよび断片は、本発明の方法において用いて、植物におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与するCYP82E10ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能を阻害することができる。この様式で、好ましい変異を対象のCYP82E10遺伝子に導入できる。本発明の方法は、好ましい変異をCYP82E10ニコチン脱メチル化酵素遺伝子に導入するための特定の方法に依存しない。
【0120】
本発明の組成物および方法は、それらに限定されないが、以下の種を含むタバコ属の任意の植物の、特に葉および茎におけるノルニコチン含量を低減するために用いることができる。acuminata、affinis、alata、attenuate、bigelovii、clevelandii、excelsior、forgetiana、glauca、glutinosa、langsdorffii、longiflora、obtusifolia、palmeri、paniculata、plumbaginifolia、qudrivalvis、repanda、rustica、suaveolens、sylvestris、tabacum、tomentosa、trigonophyllaおよびx sanderae。本発明は、それらに限定されないが、Nicotiana acuminata multiflora、Nicotiana alata grandiflora、Nicotiana bigelovii quadrivalvis、Nicotiana bigelovii wallacei、Nicotiana obtusifolia obtusifolia、Nicotiana obtusifolia plameri、Nicotiana quadrivalvis bigelovii、Nicotiana quadrivalvis quadrivalvis、Nicotiana quadrivalvis wallaceiおよびNicotiana trigonophylla palmeriを含むタバコ属の植物の任意の品種、ならびに煙管またはブライト品種、バーレー品種、ダーク品種およびオリエンタル/トルコ(Turkish)品種として一般的に既知の品種を用いても行うことができる。いくつかの実施形態では、対象のタバコ植物は、バーレー、バージニア、熱風乾燥、空気乾燥、火力乾燥、オリエンタルまたはダークタバコ植物である。
【0121】
本明細書で記載するタバコ植物および品種は、肥料が豊富な土壌もしくは肥料なしの土壌での栽培、花への袋掛けもしくは袋掛けなし、または摘心ありもしくは摘心なしのような従来の生育および採集技術に適切である。採集された葉および茎は、それらに限定されないが、キセル、葉巻および巻きタバコ、ならびに葉タバコ、刻み(shredded)タバコまたは刻み(cut)タバコを含む任意の形態の噛みタバコを含む任意の伝統的なタバコ製品で用いてよい。
【0122】
よって、本発明は、CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子において変異を含むタバコ植物またはその植物部分であって、前記変異が、前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減、ならびにノルニコチンおよびN’−ニトロソノルニコチンの量の低減をもたらすタバコ植物またはその植物部分を提供する。本明細書で用いる場合、「量の低減」または「レベルの低減」の用語は、ノルニコチンおよび/またはN’−ニトロソノルニコチンを低減するために遺伝子改変されていない、同じ様式で加工した(すなわち栽培して採集した)タバコ属の植物または同じ品種のタバコからの植物部分もしくはタバコ製品で見出されるものよりも少ない、本発明の植物またはその植物部分もしくはタバコ製品中のノルニコチンおよび/またはN’−ニトロソノルニコチンの量に言及することを意図する。ノルニコチンの量は、約10%から約90%より多く、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%および約80%より多くなど、低減されることがある。ニコチンからノルニコチンへの変換は、本発明の植物、植物部分および製品において、より具体的にはCYP82E10、CYP82E4v2およびCYP825v2に変異を有する植物、植物部分において、0.3%未満、0.5%未満、0.7%未満、0.1%〜0.5%の間、0.1%〜0.4%の間、0.1%〜0.7%の間または0.1%〜1.0%の間であり得る。
【0123】
「タバコ製品」という用語は、本明細書で用いる場合、それらに限定されないが、発煙材料(例えばシガリロ、非換気または排気凹型フィルタ巻きタバコを含む任意の巻きタバコ、葉巻、キセルタバコ)、無煙製品(例えばかぎタバコ、噛みタバコ、生分解性インサート(例えばガム、ロゼンジ、溶解ストリップ))を含む。例えば米国特許第2005/0019448号(参照することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい。本発明は、従来のタバコを、異なる量の本明細書で記載する低ノルニコチンおよび/またはN’−ニトロソノルニコチンタバコと組み合わせることにより作製できる、一連のタバコ製品ブレンドも包含する。さらなる実施形態では、上記のタバコ属の植物または植物部分は、乾燥タバコである。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態では、タバコ製品は、葉巻、巻きタバコもしくはキセルタバコのようなタバコ製品を消費することにより直接吸入されるか、または二次的な煙として吸入される(すなわち、葉巻、巻きタバコもしくはキセルタバコのようなタバコ製品を消費している個体から発生するタバコの煙を吸入する個体による)タバコの煙の発癌可能性を低減する。本明細書で記載する乾燥タバコは、タバコ製品、特に、直接吸入されるかまたは二次的な煙として吸入される煙流中のノルニコチンおよび/またはN’−ニトロソノルニコチンの量の低減を含む、熱による化学変化を受けたものを調製するために用いることができる。同じ様式で、本発明のタバコ製品は、噛みタバコ、かぎタバコなどのような無煙タバコ製品の調製において有用であり得る。
【0125】
本発明のタバコ植物に由来するタバコ製品は、よって、これらのタバコ製品の発癌可能性を低減し、発癌性ニトロソアミンNNNへの人、特にこれらのタバコ製品の使用者である個体の曝露を低減するための方法で用いられる。以下の実施例は、例示のために示され、限定するためではない。
【実施例】
【0126】
[実験]
以下の議論で述べる引用は、実験部の終わりに示す。
【0127】
[背景]
CYP82E4v2が、コンバータ植物において観察される高いノルニコチン蓄積を担うニコチン脱メチル化酵素遺伝子座を表すという知見(Siminszkyら、2005)は、変換の問題を克服し、老化しかつ乾燥させた葉のノルニコチン含量を低下させることに向けての非トランスジェニックおよびトランスジェニックのアプローチへの扉を開いた。具体的に、研究者は、化学変異原に曝露されたタバコ集団を作製し、CYP82E4v2遺伝子座にて非機能的対立遺伝子を有する個体を選択することが可能になった。実際に、3つの独立したグループが、この方策に基づいて非変換タバコ系統を既に作製している(Deweyら、2007;Xuら、2007b;Julioら、2008)。
【0128】
以前に報告されたように、775と称するタバコ植物が、バーレー系統DH98−325−6のEMS突然変異誘発集団から同定され、CYP82E4v2遺伝子においてノックアウト変異を有することが示された(Deweyら、2007)。2008年の夏に、775変異についてホモ接合型の植物を、Rocky Mount、NCのUpper Coastal Plains研究所で生育させ、標準的な産業的手続に従って空気乾燥させた。これらの物質のアルカロイド分析を、Jackら(2007)により記載される「LC手順」を用いて行った。表1に示すように、775変異を有する植物は、平均で2.6%のニコチンからノルニコチンへの変換を示した。これとは対照的に、60%超の変換が、強いコンバータ遺伝子型である親の系統DH98−325−6で観察された。ほぼ同一の結果がJulioら(2008)により報告され、彼らは、強いコンバータバーレー遺伝子型BB16NN内のcyp82e4v2ノックアウト変異体についてホモ接合型の植物について2.82から3.37までの範囲の変換パーセンテージを記録した(親の変換率は、68〜98%の間の範囲であった)。よって、CYP82E4v2単独における衰弱性変異は、コンバータ植物の作製と関連する不安定な遺伝的現象から生じる問題を消去することにおいて効果的であるとみられる。
【0129】
【表1】

【0130】
775または匹敵する変異をCYP82E4v2中に有するタバコ植物の利用は、タバコ集団中へのコンバータ植物の導入を消去するために有効な手段であり得るが、これらの植物において、低いが著しい量のノルニコチンが残存する。0.45%ほど低いニコチンからノルニコチンへの変換率がCYP82E4v2を対象とするRNAiに基づく構築物を発現するトランスジェニック植物で観察されたことに鑑みて(Lewisら、2008)、CYP82E4v2に対する高いDNA配列相同性を有する少なくとも1つの他の遺伝子が、非コンバータ植物および不活性化されたCYP82E4v2遺伝子を有するコンバータ植物の両方で観察されるノルニコチン合成の大部分を担うはずであることが明らかであった。この可能性は、これもまた機能的ニコチン脱メチル化酵素をコードすることが示されたCYP82E4v2と92.7%のDNA配列同一性を共有する遺伝子であるCYP82E5v2の発見によりさらに支持された(Deweyら、2007;GavilanoおよびSiminszky、2007)。CYP82E5v2ニコチン脱メチル化酵素遺伝子は、コンバータ植物および非コンバータ植物において一様にタバコの緑葉において低レベルで発現されるが(非常に高いレベルで発現されるCYP82E4v2とは対照的に)、老化および空気乾燥の間にはコンバータ植物の葉においてのみ発現される。
【0131】
Deweyら(2007)に概説されるように、EMS突然変異誘発DH98−325−6タバコ集団のスクリーニングにより、CYP82E5v2中にノックアウト変異を有する個体(植物1013)が同定される。ノルニコチン蓄積に対する非機能的cyp82e5v2対立遺伝子の影響を決定するために、植物775および1013からの変異を組み合わせた交雑種を作製した。最初の交雑種のF子孫に由来する多数のF個体の分子的遺伝子型決定により、両方の変異についてホモ接合型(e4e4/e5e5)の9つの個体が同定された。これらの9つの植物も、2008年野外試験に含めた。CYP82E5v2は機能的ニコチン脱メチル化酵素をコードすることが示されているという事実にもかかわらず(Deweyら、2007;GavilanoおよびSiminszky、2007)、機能不全cyp82e5v2変異をノックアウトcyp82e4v2変異と組み合わせることは、葉のノルニコチンレベルに著しくほとんど影響しなかった。表1に示すように、二重変異についてホモ接合型の植物(e4e4/e5e5)は、cyp82e4v2変異だけを有する植物(e4e4)についての平均2.6%の変換と比較して、平均で2.3%のニコチン変換を示した。2つの遺伝子型の間での平均変換の控えめな違いは、統計学的に有意でなかった(P=0.118)。これとは対照的に、本研究に含めたCYP82E4v2をRNAiでサイレンシングしたトランスジェニック系統の1つは、平均で0.7%の変換を示し、この量は、e4e4またはe4e4/e5e5遺伝子型のいずれから得られたものよりも有意に低かった(P<0.001)。よって、植物におけるノルニコチン生成に貢献する、CYP82E4v2に対する高い相同性を有する別の遺伝子が、タバコゲノム内に存在するはずである。
【0132】
[実施例1: cyp82e10ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の単離および特徴決定]
ニコチン脱メチル化酵素をコードする可能性があるタバコゲノム中のその他の遺伝子を同定するために、BLASTNおよびBLASTXアルゴリズム(Altschulら、1990、1997)を用いる相同性検索を、CYP82E4v2のDNAおよびタンパク質配列をそれぞれのクエリ配列として用いて、GenBank中のN.tabacum発現遺伝子配列断片(EST)データベースに対して行った。CYP82Eスーパーファミリーの以前の特徴決定したメンバー(例えばCYP82E2、CYP82E3およびCYP82E5v2)に対応するcDNA配列を同定することに加えて、この遺伝子ファミリーの以前に特徴決定されたいずれのメンバーとも完全にアラインメントされない7つのESTを発見した。興味深いことに、7つのESTは全て、根特異的cDNAライブラリーまたは根を含む混合組織で構成されるcDNAライブラリーのいずれかを起源とした。この観察結果は、新しいCYP82E遺伝子が、根組織に特異的に発現されることを示唆し、これは、CYP82E P450スーパーファミリーのこの特定のメンバーが、なぜ以前に検出から逃れたかを説明する特性である(以前の努力は、葉組織で発現されたCYP82E遺伝子の特徴決定に焦点を当てていたからである)。いずれの個別のEST配列も、この新規な遺伝子の全体のコード領域をカバーするのに十分長くなかったので、PCRプライマーを設計し、これは、タバコの根組織から単離したRNAから作製された第1鎖cDNAからのcDNA配列全体の増幅を可能にした。さらに、プライマーを用いて、中央の大きいイントロンを含む遺伝子の対応するゲノム領域を増幅した。この新規なCYP82E cDNAは、タバコCYP82E4v2 cDNAと92.4%のヌクレオチド同一性およびアミノ酸レベルでの91.1%の予測される同一性を共有する。P450遺伝子命名法についての手引きを守って、この新しい遺伝子は、CYP82E10と命名された。CYP82Eスーパーファミリーの特徴決定された全てのメンバーのうち、CYP82E10は、CYP82E5v2と最高の配列類似性を示し、cDNAレベルで96.5%のヌクレオチド同一性、および95.7%の予測アミノ酸配列同一性を共有する。CYP82E10のDNA配列およびその予測タンパク質配列を、図1に示す。
【0133】
様々なCYP82EファミリーメンバーのcDNAは高度に保存される傾向にあるが、これらの遺伝子のゲノムバージョンは、より大きい配列多様性を示す。これは、主に、大きい中央のイントロン内で観察される実質的な配列の相違による。CYP82E4v2、CYP82E5v2およびCYP82E10ゲノム配列のアラインメントを、図2に示す。EMBOSSペアワイズアラインメントアルゴリズム(www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/align/index.html)を用いて計算されるように、CYP82E4v2およびCYP82E10遺伝子は、78.3%のヌクレオチド同一性を共有し、CYP82E10は、CYP82E5v2遺伝子と、タバコゲノム内に存在する場合に、84.9%同一である(CYP82E4v2およびCYP82E5v2ゲノム配列は、75%の同一性を共有する)。
【0134】
いくつかの出版物において詳述されるように、タバコゲノムで見出されるCYP82Eスーパーファミリーの遺伝子のほとんどは、機能的ニコチン脱メチル化酵素をコードしない(Siminszkyら、2005;Chakrabartiら、2007;Deweyら、2007;Gavilanoら、2007;Xuら、2007a)。よって、配列相同性単独は、CYP82Eファミリーについての遺伝子機能の非常に正確な指標ではない。代わりに、トランスジェニック植物(Siminszkyら、2005)または酵母(GavilanoおよびSiminszky、2007;Xuら、2007a)のいずれかにおける発現解析が、この遺伝子ファミリーの個別のメンバーがニコチン脱メチル化酵素活性をコードするかを決定するための確立された手段になっている。
【0135】
CYP82E10がニコチン脱メチル化酵素遺伝子として機能するかを決定するために、そのcDNAを、酵母発現ベクターpYeDP60にクローニングして、酵母株W(R)を形質転換した。株W(R)は、P450への直接の電子供与体として働く酵素である酵母NADPH依存性P450還元酵素を過剰発現するように工学的に改変された酵母細胞株である。この系は、酵母で発現される外来P450酵素活性の検出を大きく増進する(Pomponら、1995)。ニコチン脱メチル化酵素アッセイを、酵母ミクロソーム膜調製物を[14C]−ニコチンとインキュベートし、Siminszkyら(2005)に記載されるようにして生成物を薄層クロマトグラフィーで分割することにより行った。
【0136】
図3に示すように、pYeDP60ベクターのみを発現するW(R)株からの酵母ミクロソームを用いて、ニコチン脱メチル化酵素活性は検出できなかった。これとは対照的に、非常に堅固なニコチン脱メチル化酵素活性が、CYP82E10 cDNAを発現する酵母細胞に由来するミクロソームから測定できた。CYP82E10酵素活性を広範囲の[14C]−ニコチン濃度にわたって測定することにより、基質飽和曲線を確立し、3.9μMのニコチンの見かけのKを、ミクロソームアッセイを用いて計算した。CYP82E10についてのこの動力学的パラメータは、同様に酵母で発現させた場合にCYP82E4v2およびCYP82E5v2酵素について報告されたKと非常に類似する(Gavilanoら、2007;GavilanoおよびSiminszky、2007;Xuら、2007a)。
【0137】
[実施例2: CYP82E10の変異対立遺伝子を有する植物の同定]
タバコ植物のノルニコチン総含量に対するCYP82E10の特異的な貢献を正確に評価するために、(1)この遺伝子内にノックアウト変異を有するタバコ植物を同定し、(2)この変異を、それぞれ植物775および1013を起源とするcyp82e4v2およびcyp82e5v2変異と組み合わせることが必要であった。CYP82E10中の潜在的な衰弱性変異を同定するために、EMS突然変異誘発DH98−325−6集団を、CYP82E10の部分を特異的に増幅する(CYP82Eスーパーファミリーのその他のメンバーを同時に増幅することなく)プライマーを用いるハイスループットDNA配列分析によりスクリーニングした。CYP82E10のエキソン1を特異的に増幅するために、以下のPCRプライマーを用いた:5’−GTGATAGTTTGATTCCCAAGTGC−3’(フォワード)および5’−CTCCCAAAGTTAGATTAGTCCG−3’(リバース)。エキソン2の特異的増幅は、プライマー5’−AGGTCGCGCTGATTCTTG−3’(フォワード)および5’−AGATGAATACCCATCTATCTAGGAGT−3’(リバース)を用いて達成した。最大限の特異性を確実にするために、エキソン1についてのリバースプライマーおよびエキソン2についてのフォワードプライマーは、CYP82E10イントロン内の配列に対応する(図1)。突然変異誘発植物のPCR増幅および配列分析は、Deweyら(2007)に記載されるようにして96ウェルフォーマットを用いて行った。
【0138】
突然変異誘発タバコ集団からの1,200を超える個体のハイスループット配列分析は、CYP82E10中に変異を有する15の個体の同定をもたらした。これらのうちの最も著しいものを、表2に示す。これらの植物において変異されたヌクレオチドおよびアミノ酸残基も、図1に強調する。これらの個体のうちで切断変異は観察されなかったが、いくつかの場合において、酵素の高度に保存された領域内のアミノ酸残基が変更された変異が同定された。CYP82E10酵素活性に対する特定の変異の影響を決定するために、部位特異的突然変異誘発を用いて、表2に示す9つの変異のうちの7つに相当する特定の変異を、pYeDP60酵母発現ベクター内のCYP82E10 cDNA中に導入した。7つのCYP82E10バリアントのそれぞれを発現する酵母株からのミクロソーム調製物を、in vitroにてニコチン脱メチル化酵素活性について、非飽和(2.45μM)および飽和(50μM)濃度の両方の[14C]−ニコチンを用いてアッセイした。酵母発現アッセイからの結果は、植物693、817および1035で見出された変異は酵素活性を変更しなかったが、植物1041、1512および2476で見出された変異は完全な酵素不活性化を導いたことを示した。植物1442において観察された変異は、野生型CYP82E10酵素と比較して、75%の活性の低減をもたらした。
【0139】
植物1041変異に相当するin vitro酵母発現アッセイについての薄層クロマトグラフィーデータを、図3に示す。この特定の変異を、より網羅的な調査のために選択した。植物1041変異を規定するアミノ酸382位でのProからSerへの置換がニコチン脱メチル化機能と両立しないことについてさらに確認するために、この同じ変異を、同様にpYeDP60ベクターにクローニングされたCYP82E4v2 cDNAに導入した。これらの酵母アッセイの結果を、表3に表示する。CYP82E10またはCYP82E4v2酵素のいずれに導入されても、382位でのProについてのSer置換は、このアッセイにおいてニコチン脱メチル化酵素活性の完全な除去を導く。興味深いことに、野生型CYP82E10およびCYP82E4v2酵素の活性は、非飽和[14C]−ニコチン濃度(2.45μM)にて25μMの基質レベルで同等であったが、[14C]−ノルニコチン合成の率は、CYP82E10酵素を有するミクロソーム調製物において、CYP82E4v2を含有する調製物よりも3倍近く大きかった。
【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
野生型および1041変異CYP82E10発現酵母細胞のニコチン脱メチル化酵素活性も、in vivoでアッセイした。酵母培養物を一晩、55μMの[14C]−ニコチンの存在下で振とうし、メタノールで抽出し、薄層クロマトグラフィーにより分析した。[14C]−ノルニコチンは、野生型CYP82E10を発現する酵母の抽出物において検出できたが、遺伝子の1041変異バーションでは検出できなかった(データは示さず)。累積的に、酵母発現アッセイは、CYP82E10酵素機能が1041変異の導入により完全に消失することを強く示唆する。
【0143】
[実施例3: cyp82e10、cyp82e4v2およびcyp82e5v2の変異対立遺伝子の組合せ]
元の1041変異は、強いコンバータCYP82E4v2対立遺伝子と、野生型CYP82E5v2遺伝子との両方を含有する遺伝子背景(DH98−325−6)にあることに鑑みて、植物ノルニコチン総含量に向かうCYP82E10の特異的貢献を正確に評価するための唯一の方法は、1041変異を、ノックアウトCYP82E4v2およびCYP82E5v2変異も有するタバコ植物に導入することである。このことを遂行するために、1041変異についてヘテロ接合型の植物(e10E10)を、上記の775および1013変異の両方についてヘテロ接合型の植物(e4E4/e5E5)と交雑させた。後者の植物は、交雑種775/1013//TN90/3/TN90/4/TN90からの子孫である。3つ全てのニコチン脱メチル化酵素変異についてヘテロ接合型のF植物(e4E4/e5E5/e10E10)を、分子的遺伝子型決定により同定し、自家受粉させた。分子的遺伝子型決定は、400を超えるF子孫をスクリーニングし、その後、それらを以下の遺伝子型クラスに分類するためにも用いた。E4E4/E5E5/e10e10(合計3つの植物)、e4e4/E5E5/e10e10(合計4つの植物)、E4E4/e5e5/e10e10(合計5つの植物)、およびe4e4/e5e5/e10e10(合計5つの植物)。
【0144】
上記の全ての植物を、移植して、2009年の夏にRocky Mount、NCのUpper Coastal Plains研究所にて野外で生育させた。この研究には、表1に示す2008年の野外試験で試験した2つの遺伝子型も含めた。具体的に、cyp82e4v2変異についてのみホモ接合型(e4e4/E5E5/E10E10)の10のDH98−325−6植物、および二重ホモ接合型e4e4/e5e5/E10E10遺伝子型を有する11のDH98−325−6植物を、比較のために含めた。対照として、商業的な「低コンバータ」種子ロット(TN90LC)から無作為に選択した個別の植物、野生型DH98−325−6個体および最良のCYP82E4v2 RNAi抑制トランスジェニック系統の1つからの植物も、研究に含めた。植物が平均で約30cmの高さになった後に(移植の35日後)、類似の茎の位置から葉を回収し、エテホンで処理し、Jackら(2007)により確立された手順に従って空気乾燥させた。乾燥させた葉材料のアルカロイド含量を、同じ手順に記載されるようにしてガスクロマトグラフィーにより決定した。
【0145】
表4および図4は、2009年野外試験についてのアルカロイド分析の結果を示す。以前の観察と一貫して、cyp82e4v2ノックアウト変異単独は、系統DH98−325−6の強いコンバータ表現型を打ち消し、商業的なTN90LC種子からの植物よりも実質的に低いノルニコチン蓄積表現型も授けた(それぞれ2.2%の変換対7.1%)。2008年野外試験で観察されたように(表1)、cyp82e5v2変異をcyp82e4v2と組み合わせることにより、ノルニコチン含量はさらに低減されなかった。実際に、e4e4/E5E5/E10E10植物についての平均ニコチン変換は、e4e4/e5e5/E10E10個体について観察されたものより実際に低かった(2.2%対2.3%)が、このわずかな差は統計学的に有意でなかった。予期されたように、cyp82e10変異は、単独(E4E4/E5E5/e10e10遺伝子型)または変異cyp82e5v2対立遺伝子と組み合わせた場合(E4E4/e5e5/e10e10遺伝子型)のいずれでも、活性CYP82E4v2遺伝子により授けられた高いノルニコチンレベルに影響しなかった(図4A)。cyp82e4v2およびcyp82e5v2二重変異体の結果と同様に(表1および4)、cyp82e10をcyp82e4v2背景に導入することは、cyp82e4v2変異単独により達成できるレベル未満にノルニコチンレベルを低減させることにおいて効果的でなかった(図4B)。e4e4/E5E5/e10e10遺伝子型は、平均で1.85%の変換を示し、これは、e4e4/E5E5/E10E10個体について観察された2.2%の平均変換レベルと有意な差がなかった(P=0.235)。
【0146】
【表4】

【0147】
cyp82e5v2およびcyp82e10変異は、個別に組み合わせた場合にcyp82e4v2植物のノルニコチン含量を著しく減少するために働かなかったが、3つ全てのニコチン脱メチル化酵素変異をピラミッド状にすることは、非常に著しい効果があった。三重変異植物(e4e4/e5e5/e10e10)におけるニコチンからノルニコチンへの変換は、RNAi抑制トランスジェニック系統で観察された0.54%と実質的に同一のパーセンテージである、平均で0.55%だけであった(P=0.893;図4B)。このことは、cyp82e4v2変異単独により媒介されたものを超えてニコチン変換の3倍を超える低減を表す。統計学的に、e4e4/E5E5/E10E10遺伝子型とe4e4/e5e5/e10e10遺伝子型との間のパーセントニコチン変換(および全乾燥重量のパーセンテージとしてのノルニコチン蓄積)における差は、高度に有意であった(P<0.0001)。ニコチン変換のRNAi媒介抑制の調査と同様に(Lewisら、2008)、タバコ植物におけるニコチン脱メチル化酵素活性のこの非トランスジェニック変更は、マイナーなアルカロイド種であるアナタビンおよびアナバシンの含量を著しく変更しないとみられた。
【0148】
3つの独立したニコチン脱メチル化酵素遺伝子変異をピラミッド状にすることの効果を、2010年の生育時季の間に行った野外試験においても試験した。この研究のために、交雑を、完全にDH98−325−6遺伝子背景内で行った(TN90親も用いた2009年研究とは対照的に)。分子的遺伝子型決定を再び用いて、ノルニコチン表現型に対するそれぞれのCYP82E遺伝子座のそれぞれの貢献を決定するために必要な全ての可能な組合せを創出した。アルカロイドデータを、成熟まで生育させ、標準的な産業的手続に従って乾燥させたタバコ植物について収集した。表5に示すように、高いレベルのニコチン変換(52.4〜65.59%の範囲)が、野生型CYP82E4v2遺伝子についてホモ接合型の全ての遺伝子型(遺伝子型E4E4/E5E5/E10E10、E4E4/e5e5/E10E10、E4E4/E5E5/e10e10およびE4E4/e5e5/e10e10)において観察された。cyp82e4v2変異についてのみホモ接合型の植物(e4e4/E5E5/E10E10)は、平均で2.91%のニコチンからノルニコチンへの変換を示した。2009年の結果と同様に、cyp82E5v2およびcyp82E10変異の効果は相加的でなく、3つ全ての変異遺伝子座が一緒にピラミッド状になった場合にのみ現れた。DH98−325−6(e4e4/E5E5/e10e10)植物は、平均で2.89%の変換を示し、DH98−325−6(e4e4/e5e5/E10E10)個体は、平均で2.52%であり、これらの値は、cyp82e4v2変異単独で観察されたものと統計学的に差がなかった。これとは対照的に、三重変異DH98−325−6(e4e4/e5e5/e10e10)遺伝子型で観察されたノルニコチンの低減(1.11%ニコチン変換)は、cyp82e4v2変異単独により到達されたものより2.6倍低かった。三重変異組合せに帰することができるニコチン変換の低減は、cyp82e4v2単独またはいずれの二重変異組合せのいずれと比較しても、高度に有意であった(P<0.001)。
【0149】
【表5】

【0150】
[結論]
今回の発見および新しいニコチン脱メチル化酵素遺伝子CYP82E10の特徴決定により、商用グレードの空気乾燥タバコ植物におけるニコチン変換率(およびそれによりノルニコチンレベル)を、トランスジェニックアプローチを用いることによってのみ以前は可能であったレベルまで低減するための方策を開発することができた。この非GMOベースの技術は、ノルニコチンのレベルを、トランスジェニック方策を用いて達成されていたものと同様の程度まで低減でき、それでもなお、(1)トランスジェニック植物を作製するために要求されるいくつかの機能付加技術について交渉し、ライセンス料を支払うこと、(2)トランスジェニック事象の規制緩和に関連する冗長な時間および面倒な費用を回避すること、ならびに(3)GMOに対して哲学的に反対する最終使用者により製品が拒絶される可能性に遭遇することのようなトランスジェニック作物の商業化に関連する実質的な障害を迂回しながら、超少量ノルニコチンタバコ品種を開発するための手段として働くおびただしい利点を提供する。本明細書で報告する発見は、CYP82E4v2ニコチン脱メチル化酵素遺伝子における変異だけ(Julioら、2008;Xuら、2007b)、またはCYP82E4v2変異とCYP82E5v2変異との組合せ(Deweyら、2007)を標的にした以前に記載された非GMO方策と比較して、タバコ製品において見出される、文書で最も十分に立証されている強い発癌物質の1つのレベルを低下させる我々の能力の主要な前進である。トランスジェニック技術を用いて、乾燥させた葉において約2.6%から約0.5%までニコチン変換レベルを低下させることが、葉のNNN含量における相応の低減も導くことが以前に証明された(Lewisら、2008)。本報告で記載する三重変異組合せ(e4e4/e5e5/e10e10)を含有するタバコの葉からのNNN含量の同様の低減が観察されることが予期される。空気乾燥タバコを元来は標的にしたが、この技術は、熱風乾燥品種にも利益を与える。熱交換器は老化するので、熱風乾燥中にNOガスを除去するそれらの能力は減少し得る。さらに、最近の研究は、かなりの量のTSNA形成が乾燥させた葉の貯蔵の間に発生し得ることを示している。熱風乾燥品種に三重変異組合せを導入することによりノルニコチンレベルを最小限にすることは、貯蔵の間または乾燥プロセス中の非効率な熱交換の結果としてのいずれかのNNN形成に対する防衛手段として作用できる。
【0151】
[参考文献]
【表6A】

【表6B】

【表6C】

【0152】
本明細書で示す本発明の多くの改変およびその他の実施形態は、上記の記載および付随する図面に示した教示の利益を享受した、これらの発明が属する当技術分野における当業者が思い浮かべられる。よって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、改変およびその他の実施形態は、実施形態のリストおよび添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図することが理解される。特定の用語を本明細書で採用したが、これらは、包括的および説明のための意味でのみ用い、限定する目的のために用いていない。
【0153】
本明細書で述べる全ての出版物および特許出願は、本発明が属する当技術分野における当業者のレベルを示す。全ての出版物および特許出願は、それぞれ個別の出版物および特許出願が参照することにより本明細書の一部をなすように具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子において変異を含むタバコ植物またはその植物部分であって、前記変異が、前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらすタバコ植物またはその植物部分。
【請求項2】
前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素が、配列番号2、5、6、7、8および9に示す配列からなる群より選択される請求項1に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項3】
前記変異が、アミノ酸残基79、107、382、419およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される位置にて生じる前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素の改変をもたらし、前記番号付けが配列番号2に従う請求項1または2に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項4】
前記変異が、
a)79位のグリシン残基のセリンによる置換、
b)107位のプロリン残基のセリンによる置換、
c)382位のプロリン残基のセリンによる置換、
d)419位のプロリン残基のセリンによる置換、および
e)それらの任意の組合せ
からなる群より選択される請求項3に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項5】
CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子において変異をさらに含み、前記変異が、前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらす請求項1〜4のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項6】
前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素が、配列番号14、15、16、17、18、19および20に示す配列から選択される請求項5に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項7】
前記変異が、アミノ酸残基329、364、376、382および458からなる群より選択される位置にて生じる前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素の改変をもたらし、前記番号付けが配列番号14に従う請求項5または6に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項8】
前記変異が、
a)329位のトリプトファン残基の停止コドンによる置換、
b)364位のリシン残基のアスパラギンによる置換、
c)376位のバリン残基のメチオニンによる置換、
d)382位のプロリン残基のセリンによる置換、
d)458位のプロリン残基のセリンによる置換、および
e)それらの任意の組合せ
からなる群より選択される請求項7に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項9】
CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子における変異をさらに含み、前記変異が、前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらす請求項1〜8のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項10】
前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素が、配列番号26、27、28、29、30、31および32に示す配列から選択される請求項9に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項11】
前記変異が、アミノ酸残基422および449からなる群より選択される位置にて生じる前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素の改変をもたらし、前記番号付けが配列番号26に従う請求項9または10に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項12】
前記変異が、
a)422位でトリプトファン残基と置換された停止コドン、
b)449位でプロリン残基と置換されたロイシン、および
c)それらの任意の組合せ
からなる群より選択される請求項11に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項13】
前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素遺伝子および前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素遺伝子において変異を含む請求項9〜12のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項14】
前記タバコ植物またはその植物部分が、前記変異についてホモ接合型である請求項1〜13のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項15】
前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素が382位に変異を含み、前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素が329位に変異を含み、前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素が422位に変異を含み、前記番号付けがそれぞれ配列番号2、14および26に従う請求項14に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項16】
前記変異が、
a)382位のプロリン残基のセリンによる置換、
b)329位のトリプトファン残基の停止コドンによる置換、
c)422位のトリプトファン残基の停止コドンによる置換、および
d)それらの任意の組合せ
からなる群より選択される請求項15に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項17】
前記植物またはその部分が、1.5%未満の、ニコチンからノルニコチンへの変換を有する請求項13〜16のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項18】
前記植物またはその部分が、0.5%以下の、ニコチンからノルニコチンへの変換を有する請求項17に記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載のタバコ植物の種子またはその子孫。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分もしくは子孫から調製されるタバコ製品。
【請求項21】
タバコ製品の発癌可能性を低減する方法であって、前記タバコ製品を、請求項1〜18のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分もしくは子孫から調製することを含む方法。
【請求項22】
タバコ植物またはその植物部分におけるノルニコチンのレベルを低減するかまたはニコチンからノルニコチンへの変換率を低減する方法であって、少なくとも3つのニコチン脱メチル化酵素遺伝子の各々の少なくとも1つの対立遺伝子内の変異を、前記植物のゲノムに導入するステップを含み、前記変異が、前記ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の発現を低減させ、前記ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の第1のものが、タバコ植物またはその植物部分におけるニコチンからノルニコチンへの前記代謝変換に関与する根特異的ニコチン脱メチル化酵素をコードする方法。
【請求項23】
前記根特異的ニコチン脱メチル化酵素が、
a)配列番号2、5、6、7、8、9または10に示すアミノ酸配列、および
b)配列番号2、5、6、7、8、9または10に示すアミノ酸配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCYP82E10ニコチン脱メチル化酵素である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素についての前記アミノ酸配列が、残基79、107、382、419およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される位置でのアミノ酸残基の置換を有し、前記番号付けが配列番号2に従う請求項23に記載の方法。
【請求項25】
79位、107位、382位または419位での前記置換がセリン残基である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の第2のものが、CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素をコードする請求項22〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素が、
a)配列番号14、15、16、17、18、19、20または21に示すアミノ酸配列、および
b)配列番号14、15、16、17、18、19、20または21に示す配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素についての前記アミノ酸配列が、残基329、364、382、458およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される位置のアミノ酸残基での置換を有し、前記番号付けが配列番号14に従う請求項27に記載の方法。
【請求項29】
329位での前記置換が停止コドンであるか、364位での前記置換がアスパラギン残基であるか、382位での前記置換がセリン残基であるか、458位での前記置換がセリン残基であるか、またはそれらの任意の組合せである請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ニコチン脱メチル化酵素遺伝子の第3のものが、CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素をコードする請求項22〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素が、
a)配列番号26、27、28、29、30、31または32に示すアミノ酸配列、および
b)配列番号26、27、28、29、30、31または32に示す配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素についての前記アミノ酸配列が、残基422および449ならびにそれらの任意の組合せからなる群より選択される位置のアミノ酸残基での置換を有し、前記番号付けが配列番号26に従う請求項31に記載の方法。
【請求項33】
422位での前記置換が停止コドンであるか、449位での前記置換がロイシン残基であるか、またはそれらの任意の組合せである請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記植物またはその植物部分が、前記変異についてホモ接合型である請求項22〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記導入するステップが、育種手順を含む請求項22〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記植物が、バーレータバコ植物、バージニアタバコ植物、熱風乾燥タバコ植物、空気乾燥タバコ植物、火力乾燥タバコ植物、オリエンタルタバコ植物またはダークタバコ植物である、請求項22〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記タバコ植物が、バーレータバコ植物、バージニアタバコ植物、熱風乾燥タバコ植物、空気乾燥タバコ植物、火力乾燥タバコ植物、オリエンタルタバコ植物またはダークタバコ植物である請求項1〜19のいずれかに記載のタバコ植物またはその植物部分。
【請求項38】
ノルニコチンのレベルが低いタバコ植物を同定する方法であって、配列番号1または3における変異の存在について、対象のタバコ植物からのDNA試料をスクリーニングするステップを含む方法。
【請求項39】
前記タバコ植物が、非コンバータである請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記スクリーニングが、配列番号1、3、35、36、37および38からなる群より選択される配列を用いて行われる請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
配列番号14中の変異の存在、配列番号26中の変異の存在または配列番号14および配列番号26中の変異の存在について、前記DNA試料または前記対象のタバコ植物からの別のDNA試料をスクリーニングするステップをさらに含む請求項38〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
a)配列番号1、3または4を含むヌクレオチド配列、
b)配列番号1、3または4の少なくとも20の連続するヌクレオチドの断片を含むヌクレオチド配列、
c)配列番号1に示す配列全体と少なくとも97%の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、前記ポリヌクレオチドが、植物におけるニコチンからノルニコチンへの前記代謝変換に関与するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
d)配列番号2および5〜13からなる群より選択されるポリペプチドまたは少なくとも115の連続する残基を含むそれらの断片をコードするヌクレオチド配列、
e)配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13に示す配列と少なくとも98%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、ならびに
f)前記項目(a)から(e)のいずれかによる前記配列と相補的なヌクレオチド配列
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項43】
a)配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13に示すアミノ酸配列、
b)配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13に示すアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列、および
c)配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13に示すアミノ酸配列の断片であるアミノ酸配列であって、前記断片が、配列番号2、5、6、7、8、9、10、11、12または13のアミノ酸配列の少なくとも115の連続する残基を含むアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項44】
CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子、CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子およびCYP82E5ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子における変異についてホモ接合型であるタバコ植物またはその植物部分であって、前記変異が、前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素、CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素およびCYP82E5ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらし、前記CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素が382位における変異を含み、前記CYP82E4ニコチン脱メチル化酵素が329位における変異を含み、前記CYP82E5ニコチン脱メチル化酵素が422位における変異を含み、前記番号付けが、それぞれ配列番号2、14および26に従うタバコ植物またはその植物部分。
【請求項45】
CYP82E10ニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子における変異であって、前記CYPe2E10ニコチン脱メチル化酵素の発現または機能の低減をもたらす変異。
【請求項46】
根におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E10遺伝子における変異、老化した葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP82E4v2遺伝子における変異、および緑葉におけるニコチン脱メチル化酵素活性を阻害するCYP83E5v2遺伝子における変異を有する植物。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate


【公表番号】特表2013−516990(P2013−516990A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549063(P2012−549063)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2011/021088
【国際公開番号】WO2011/088180
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(507334381)ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ (5)
【Fターム(参考)】