説明

タンクの補強構造

【課題】パネルの接合用リブ及びその溶接部の金属疲労による損傷を防止することができるタンクの補強構造を提供する。
【解決手段】パネル12,12の接合用リブ12a,12aの間に第1中間プレート14を介在して、リブ12a,12aの内端縁と、前記第1中間プレート14の外表面とを溶接部M1によって連結する。前記第1中間プレート14の外側突出板部14aに対して第1及び第2弾性変形阻止部材31,32の帯状基板31a,32aをボルト33及びナット34によって締め付け固定する。弾性変形阻止板31b,32bを前記パネル12の外周寄り外表面12d,12dに接触する。これによって、タンク内の圧力が大きくなってパネル12が外(左)方向に変位されたとき、外周寄り外表面12dの変位を阻止し、リブ12aが第1中間プレート14から離れる方向に弾性変形するのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯留された流体圧が繰り返し変動しても耐久性を向上することができるタンクの補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、貯水タンクとして、図9に示すものが提案されている。この貯水タンクは、正方形又は長方形の多数のパネル12〜12を互いに接合して溶接された箱型のタンク本体122を備えている。タンク本体122の内部には補強機構Kが設けられている。この内部補強機構Kは、パネル12の外周四辺に対し内方に向かって折り曲げ形成された接合用リブ12aに対し水平方向縦横に走る上下二段の水平補強バー17,18,19,20の端部を溶接部により連結するとともに、底板11とタンク本体122の上部の蓋板との間に支柱21を介在して構成されている。又、前記水平補強バー17,18には傾斜補強バー41,42の一端が溶接部43によって連結され、傾斜補強バー41,42の他端はパネル12の接合用リブ12aの中間に溶接部43によって連結されている。図10(a)に示すように、接合用リブ12aは溶接部44によって連結されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−139091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来のタンクの補強構造には、次のような問題があった。すなわち、タンク内の水位が繰り返し変動すると、パネル12の膨出部12bが水平方向に繰り返し変位する。このため、傾斜補強バー41,42と接合用リブ12aを連結する上下二つの溶接部43,43の間の接合用リブ12a,12aが図9において、水圧により左方向に変位されると、図10(b)に示すように、パネル12のリブ12a,12aがその溶接部44を中心に互いに離隔する方向に弾性変形される。この動作が繰り返し行われると、溶接部44及びその近傍のリブ12aが金属疲労を生じ、亀裂が発生する恐れがあるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、パネルの接合用リブ及びその溶接部の金属疲労による損傷を防止することができるタンクの補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、四角形状をなす複数のパネルを接合固定して流体を貯留するようにしたタンク本体の内部に対し、流体圧によりタンク本体の外方への変形を防止する内部補強機構を設けたタンクにおいて、前記各パネルの四辺にタンクの内側に向かって折り曲げ形成された接合用リブのうち隣接するパネルの接合用リブの間にタンクの内外を貫通するように中間プレートを介在し、該中間プレートと接合用リブの内端縁を溶接により連結し、前記中間プレートの外端部にパネルの外周寄り外表面に接触して、前記接合用リブが前記溶接された部分を中心として中間プレートから離隔する方向に弾性変形するのを阻止する弾性変形阻止手段を設けたことを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記弾性変形阻止手段は、前記中間プレートの外端部の両側面にボルトとナットにより締め付け固定された帯板状の基板と、この基板に一体形成され、かつ前記パネルの外周寄り外表面に接触される弾性変形阻止板とにより構成されていることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記弾性変形阻止手段は、前記中間プレートの外端縁に該中間プレートと直交するように、かつ両側方に張り出し形成された弾性変形阻止板であることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記中間プレートの内端縁には補強リブが折り曲げ形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パネルの四辺にタンクの内側に向かって折り曲げ形成された接合用リブのうち隣接する接合用リブの間にタンクの内外を貫通するように中間プレートを介在し、該中間プレートと接合用リブの内端縁を溶接により連結した。前記中間プレートの外端部にパネルの外周寄り外表面に接触して、前記接合用リブが前記溶接された部分を中心として中間プレートから離隔する方向に弾性変形するのを阻止する弾性変形阻止手段を設けた。このため、前記接合用リブが溶接された部分を中心として、弾性変形するのを阻止することができ、溶接された部分及びその近傍の接合用リブの耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図2に示すように支持枠体10の上面には底板11が水平に設置され、底板11の外周上面には多数の扁平状のパネル12及びコーナー用の円弧板状のパネル13を互いに溶接して全体として隅丸四角箱状に構築されたタンク本体122が装設されている。前記偏平状のパネル12は図2〜図5に示すように外周四辺部に一体に折り曲げ形成した接合用リブ12aを有し、隣接するパネル12,12の二つの縦方向に指向する接合用リブ12a,12aの間には、第1中間プレート14が介在されている。又、隣接するパネル12,12の二つの水平方向に指向する接合用リブ12a,12aの間には、第2中間プレート15が介在されている。前記リブ12a,12aの内端縁と、前記第1中間プレート14及び第2中間プレート15の中間部表面は、溶接部M1,M2によってそれぞれ連結されている。前記第2中間プレート15の両端部は前記第1中間プレート14に連結されている。前記パネル12の中央部には膨出部12bがタンクの外方に向かって形成され、外周寄りには四角環状に溝部12cが形成されている。
【0011】
図6に示すように、この実施形態では、タンク本体122の前側壁には、上下方向に三枚、水平方向に三枚、合計9枚のパネル12が用いられている。又、図示しないが残り三つの他側壁にも同様にそれぞれ9枚のパネル12が用いられている。そして、タンク本体122の四つのコーナー部には、それぞれ前記円弧板状をなす三枚のコーナー用の前記パネル13が上下方向に接合されている。このパネル13は図3に示すように、四半円弧板状の本体13aと、この本体13aの4辺にタンクの内側に一体に折曲げ形成された接合用リブ13bとによって構成されている。さらに、前記パネル12及びパネル13の縦方向に指向する二枚の接合用リブ12a,13bの間には、前記第1中間プレート14と同様のプレート14が介在され、水平方向に指向する円弧状の接合用リブ13b,13bの間には円弧状の第2中間プレート15Aが介在されている。そして、前記接合用リブ12a,13bの内端縁と第1中間プレート14及び接合用リブ13b,13bの内端縁と第2中間プレート15Aは溶接部(図示略)によってそれぞれ連結されている。
【0012】
図2及び図4に示すように、左側のパネル12群の第1中間プレート14と下から一段目の第2中間プレート15が交差する複数(四箇所;一箇所のみ図示)の交差部には、アングル材よりなる複数の水平補強バー17の一端部が溶接部M3によってそれぞれ連結されている。各水平補強バー17の他端部は図示しないが右側のパネル12群の第1中間プレート14と第2中間プレート15の交差部(四箇所;図示略)に溶接部によってそれぞれ連結されている。同様に左側のパネル12群の第1中間プレート14と下からニ段目の第2中間プレート15が交差する複数(四箇所;一箇所のみ図示)の交差部にもアングル材よりなる複数の水平補強バー18の一端部が溶接部によってそれぞれ連結されている。各水平補強バー18の他端部は図示しないが右側のパネル12群の第1中間プレート14と第2中間プレート15の交差部(四箇所;図示略)に溶接部によってそれぞれ連結されている。
【0013】
又、前記四本の水平補強バー17とそれぞれ直交するように前側のパネル12群と後側のパネル12群との間には下側に位置する四本(図2に二本のみ図示)の水平補強バー19がそれそぞれ互いに平行に架設連結されている。同様に、前記水平補強バー18とそれぞれ直交するように前側のパネル12群と後側のパネル12群との間には上側に位置する四本(図2に二本のみ図示)の水平補強バー20がそれそぞれ互いに平行に架設連結されている。さらに、水平補強バー17,(19)と水平補強バー18(20)との交差部には支柱21〜21が溶接され、各支柱21の下端部は底板11に溶接され、上端部は水平に装着された最上部のパネル12群の接合部に溶接されている。
【0014】
この実施形態では、前記第1中間プレート14、第2中間プレート15,15A、水平補強バー17〜20、支柱21等により内部補強機構Kが構成されている。
図1に示すように、前記第1中間プレート14の外(左)端部は前記パネル12の外表面から所定長さだけ突出され、この外側突出板部14a片側には帯状基板31aと弾性変形阻止板31bとを互いに直交するように一体に連結したアングル材よりなる第1弾性変形阻止部材31が取り付けられている。同様に、前記外側突出板部14aの他側には、帯状基板32aと弾性変形阻止板32bとを互いに直交するように一体に連結したアングル材よりなる第2弾性変形阻止部材32が取り付けられている。前記外側突出板部14aにはボルト挿通孔14bが形成され、これと対応するように前記帯状基板31a,32aにはボルト挿通孔31c,32cが形成されている。そして、前記ボルト挿通孔14b,31c,32cに貫通されたボルト33にナット34を螺合することにより、外側突出板部14aに第1及び第2弾性変形阻止部材31,32の帯状基板31a,32aを締め付け固定している。これによって、前記弾性変形阻止板31b,32bを前記パネル12の外周寄りの外表面12dに接触させている。
【0015】
前記第2中間プレート15の外側突出板部15aにも図1に示すように前記第1及び第2弾性変形阻止部材31,32と同様の弾性変形阻止部材がボルト33及びナット34によって装着されている。前記第1及び第2中間プレート14,15の内端縁には補強リブ14c,15cが折曲げ形成されている。
【0016】
この実施形態では、前記第1中間プレート14、第1及び第2弾性変形阻止部材31,32、ボルト33及びナット34等によって接合用リブ12aの弾性変形を阻止する弾性変形阻止手段35が構成されている。
【0017】
次に、前記のように構成したタンクの補強構造についてその動作を説明する。
図2において図示しない給水口からタンク内に流体としての水が供給されると、タンク本体122を構成する多数のパネル12,13は水圧により側方へ押圧される。この水平方向への水圧は主として水平補強バー17,18、19,20によって分担される。
【0018】
上記実施形態のタンクの補強構造によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、パネル12の接合用リブ12a,12aの間に第1中間プレート14を介在して、溶接部M1によって、リブ12a,12aの内端縁と第1中間プレート14の中間部外表面とを連結した。又、前記第1中間プレート14の外側突出板部14aに対して、第1及び第2弾性変形阻止部材31,32の帯状基板31a,32aをボルト33及びナット34によって締め付け固定し、弾性変形阻止板31b,32bをパネル12の外周寄り外表面12dに接触させた。このため、タンク本体122内の水圧が水位の変動により繰り返し変動して、パネル12の膨出部12bにタンク外方向への外力が作用した場合に外周寄り外表面12dが弾性変形阻止板31b,32bによって位置規制される。従って、リブ12a,12aが溶接部M1を中心に第1中間プレート14から離れる方向に弾性変形するのを阻止することができ、リブ12a及び溶接部M1の耐久性を向上することができる。
【0019】
(2)前記実施形態では、前記第1中間プレート14及び第2中間プレート15の内端縁に補強リブ14c,15cが折り曲げ形成されているので、両中間プレート14,15の剛性を高めることができる。
【0020】
なお、前記実施形態はさらに次のように具体化してもよい。
・図7に示すように、前記第1中間プレート14の外側突出板部14aに対し前記外周寄り外表面12d,12dに接触される弾性変形阻止板40を溶接部M4によって連結するようにしてもよい。
【0021】
・図8に示すように、前記パネル12のリブ12a,12aに対して、外周寄り外表面12d,12dを交差する角度が90°以下になるように形成し、第1及び第2弾性変形阻止部材31,32の弾性変形阻止板31b,32bを外周寄り外表面12d,12dに面接触させるようにしてもよい。
【0022】
・ 前記実施形態では、四角箱状のタンクに具体化したが、五角筒状又は六角筒状のタンクや円筒状や楕円筒状のタンクに具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明のタンクの補強構造を示す要部の拡大断面図。
【図2】タンクを示す一部省略縦断面図。
【図3】タンクを示す一部省略平断面図。
【図4】タンクのパネルを内側から見た斜視図。
【図5】タンクのパネルを外側から見た斜視図。
【図6】タンク全体を示す正面図。
【図7】この発明の別例を示す要部の平断面図。
【図8】この発明の別例を示す要部の平断面図。
【図9】従来のタンクの側壁の構成を示す縦断面図。
【図10】(a)及び(b)は、図9の1−1線拡大断面図。
【符号の説明】
【0024】
K…内部補強機構、M1,M2,M3,M4…溶接部、12,13…パネル、12a,13b…接合用リブ、12c…溝部、12d…パネルの外周寄り外表面、14,15…中間プレート、14c,15c…補強リブ、31…第1弾性変形阻止部材、32…第2弾性変形阻止部材、31a,32a…帯状基板、31b,32b…弾性変形阻止板、33…ボルト、34…ナット、35…弾性変形阻止手段、122…タンク本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形状をなす複数のパネルを接合固定して流体を貯留するようにしたタンク本体の内部に対し、流体圧によりタンク本体の外方への変形を防止する内部補強機構を設けたタンクにおいて、
前記各パネルの四辺にタンクの内側に向かって折り曲げ形成された接合用リブのうち隣接するパネルの接合用リブの間にタンクの内外を貫通するように中間プレートを介在し、該中間プレートと接合用リブの内端縁を溶接により連結し、前記中間プレートの外端部にパネルの外周寄り外表面に接触して、前記接合用リブが前記溶接された部分を中心として中間プレートから離隔する方向に弾性変形するのを阻止する弾性変形阻止手段を設けたタンクの補強構造。
【請求項2】
請求項1において、前記弾性変形阻止手段は、前記中間プレートの外端部の両側面にボルトとナットにより締め付け固定された帯板状の基板と、この基板に一体形成され、かつ前記パネルの外周寄り外表面に接触される弾性変形阻止板とにより構成されているタンクの補強構造。
【請求項3】
請求項1において、前記弾性変形阻止手段は、前記中間プレートの外端縁に該中間プレートと直交するように、かつ両側方に張り出し形成された弾性変形阻止板であるタンクの補強構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記中間プレートの内端縁には補強リブが折り曲げ形成されているタンクの補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−36245(P2006−36245A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216456(P2004−216456)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(396003434)株式会社森松総合研究所 (11)
【Fターム(参考)】