タンクキャップ
【課題】連通孔の開閉操作を容易に行わせることができるとともに、当該連通孔の開閉状態を目視にて容易に確認させることができるタンクキャップを提供する。
【解決手段】燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体1と、キャップ本体1に形成され、当該キャップ本体1が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔aと、キャップ本体1に配設され、第1位置と第2位置との間で回動操作可能な操作ノブ2と、操作ノブ2の回動操作に伴って上下動し、当該操作ノブ2が第1位置にあるとき連通孔aを閉塞状態とするとともに当該操作ノブ2が第2位置にあるとき当該連通孔aを開放状態とする手動開閉弁3とを備えたものである。
【解決手段】燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体1と、キャップ本体1に形成され、当該キャップ本体1が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔aと、キャップ本体1に配設され、第1位置と第2位置との間で回動操作可能な操作ノブ2と、操作ノブ2の回動操作に伴って上下動し、当該操作ノブ2が第1位置にあるとき連通孔aを閉塞状態とするとともに当該操作ノブ2が第2位置にあるとき当該連通孔aを開放状態とする手動開閉弁3とを備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶における燃料タンク(特に小型船舶における燃料タンク)は、持ち運びが容易な可搬式とされていることが多く、その可搬式の燃料タンクの給油口に取り付けられるタンクキャップには、通常、キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させる連通孔と、使用者が操作手段(操作ノブ)を操作することにより当該連通孔を閉塞状態又は開放状態とし得る手動開閉弁とが配設されている。
【0003】
従来の操作手段(操作ノブ)には、連通孔の開口縁部に形成された雌ネジ形状に噛み合う雄ネジ形状が形成されており、当該操作手段の雄ネジ形状を連通孔の雌ネジ形状に螺合させていた。そして、燃料タンクの持ち運び時には、手動開閉弁にて連通孔が閉塞状態となるまで操作手段を回動させるとともに、船舶に取り付けられた後にエンジンを駆動させる際には、手動開閉弁にて連通孔が開放状態となるまで操作ノブを逆方向に回動させていた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のタンクキャップにおいては、操作手段が連通孔の開口縁部に形成されたネジ形状と螺合するものであったため、連通孔を閉止状態又は開放状態とするには、当該操作手段を何回も回動させる必要があり、操作が煩わしいという問題があるとともに、操作手段を目視しただけでは連通孔が閉塞状態であるのか或いは開放状態であるのかを確認するのが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、連通孔の開閉操作を容易に行わせることができるとともに、当該連通孔の開閉状態を目視にて容易に確認させることができるタンクキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、前記給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体と、該キャップ本体に形成され、当該キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔と、前記キャップ本体に配設され、第1位置と第2位置との間で操作可能な操作手段と、該操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が前記第1位置にあるとき前記連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が前記第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする手動開閉弁とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のタンクキャップにおいて、前記操作手段は、前記キャップ本体に形成された傾斜面上を摺動して上下動しつつ前記第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされた操作ノブから成るとともに、当該操作ノブが前記傾斜面上を摺動して上下動する過程で前記手動開閉弁を連動させて上下動させ得ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のタンクキャップにおいて、前記連通孔を閉塞状態にて維持するとともに、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して前記連通孔を自動的に開放状態とし得る自動開閉弁を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のタンクキャップにおいて、前記自動開閉弁は、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合に前記連通孔を開放状態とし得る第1自動開閉弁と、当該燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合に前記連通孔を開放状態とし得る第2自動開閉弁とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のタンクキャップにおいて、前記手動開閉弁、第1自動開閉弁及び第2自動開閉弁は、前記連通孔と略同軸状に配設されたことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項3〜5の何れか1つに記載のタンクキャップにおいて、前記手動開閉弁の開放圧力は、前記自動開閉弁の開放圧力よりも大きく設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、操作手段が第1位置と第2位置との間で操作されると手動開閉弁が上下動して連通孔を開閉(開放状態又は閉塞状態)し得るので、当該連通孔の開閉操作を容易に行わせることができるとともに、当該連通孔の開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、操作手段は、キャップ本体に形成された傾斜面上を摺動して上下動しつつ第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされた操作ノブから成るとともに、当該操作ノブが傾斜面上を摺動して上下動する過程で手動開閉弁を連動させて上下動させ得るので、簡易な構成で連通孔の開閉操作を容易に行わせることができ、当該連通孔の開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、連通孔を閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して連通孔を自動的に開放状態とし得る自動開閉弁を具備したので、通常時(燃料タンク内部が設定値より高い場合及び設定値より低い場合以外)においては、操作手段を第2位置(連通孔を開放状態とする位置)として燃料タンクを使用する際、連通孔を閉塞状態として燃料の揮発を抑制することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、自動開閉弁は、燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合に連通孔を開放状態とし得る第1自動開閉弁と、当該燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合に連通孔を開放状態とし得る第2自動開閉弁とを具備したので、燃料タンク内部の圧力が高い場合と低い場合とで、連通孔を開放状態とするそれぞれの設定値を容易に設定できる。
【0016】
請求項5の発明によれば、手動開閉弁、第1自動開閉弁及び第2自動開閉弁は、連通孔と略同軸状に配設されたので、当該連通孔の開閉動作をよりスムーズ且つ確実に行わせることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、手動開閉弁の開放圧力は、自動開閉弁の開放圧力よりも大きく設定されたので、操作手段を第1位置(連通孔を閉塞状態とする位置)として燃料タンクを持ち運びする際、燃料タンク内部の圧力が設定値を超えてしまった場合でも連通孔が意図せず開放してしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るタンクキャップを示す平面図であって、(a)操作ノブが第2位置にある状態(b)操作ノブが第1位置にある状態を示す図
【図2】同タンクキャップを示す正面図
【図3】同タンクキャップを示す側面図
【図4】図2におけるIV−IV線断面図(操作手段が第1位置にある状態)
【図5】図2におけるIV−IV線断面図(操作手段が第2位置にある状態)
【図6】図1におけるVI−VI線断面図
【図7】同タンクキャップにおける自動開閉弁(連通孔を閉塞状態に維持した状態)を示す断面図
【図8】同タンクキャップにおける自動開閉弁(燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合)を示す断面図
【図9】同タンクキャップにおける自動開閉弁(燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合)を示す断面図
【図10】同タンクキャップを示す分解斜視図
【図11】同タンクキャップが適用される燃料タンクを示す模式図
【図12】同燃料タンクの給油口に本タンクキャップを取り付けた状態を示す模式図
【図13】本発明の他の実施形態に係るタンクキャップを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るタンクキャップは、図11に示す如き船舶における可搬式の燃料タンクTの給油口Taに取り付け可能なものである。かかる燃料タンクTは、内部に所定容量の燃料を収容可能とされており、持ち運ぶ際に把持可能な把持部Tcと、船舶から延設されたホース等と接続されて内部の燃料を排出してエンジン側に供給可能な排出部Tbとが形成されている。
【0020】
本タンクキャップは、図12に示すように、燃料タンクTの給油口Taに螺合にて取り付けられて当該給油口Taを開閉し得るもので、図1〜10に示すように、キャップ本体1と、連通孔aと、操作手段としての操作ノブ2と、手動開閉弁3と、自動開閉弁としての第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7とから主に構成されている。キャップ本体1は、給油口Taを覆いつつ取り付け可能なもので、アウタ1aと、ボディ1bと、ケース1cとを組み付けて一体形成して成るものである。
【0021】
アウタ1aは、例えば傘状に形成された樹脂成形品から成るもので、その中央頂部には操作ノブ2が取り付けられる突出部1aaが一体的に形成されている。この突出部1aaには、後述する連通孔aと通じる開口部1aeが形成されているとともに、操作ノブ2が回動する際に摺動する傾斜面1abが形成されている。ボディ1bは、図6に示すように、ボルトBにてケース1cと一体的に組み付けられるとともに、アウタ1aに形成された爪部1adと係止可能な切欠部1baを有して成るものである。
【0022】
而して、ボルトBにて一体的に組み付けられたボディ1b及びケース1cは、爪部1adを切欠部1baに係止させて組み付けられており、アウタ1aに対して所定寸法の回転を許容しつつ抜け止めが図られている。尚、符号P1〜P3は、パッキン部材を示しており、これらパッキン部材P1〜P3にて所望部位をシールしている。また、符号1bbは、ボディ1bに形成されたネジ部を示しており、図12に示すように、このネジ部1bbを給油口Taの外縁部に形成されたネジ部Taaに螺合させることにより、本タンクキャップ全体が当該給油口Taに取り付け可能とされている。
【0023】
また、キャップ本体1には、紐やチェーン等から成る紐状部材Wの一端が取り付けられた取付プレート9が組み付けられている。この取付プレート9は、所定部位に鍔部を有する板状部材から成り、キャップ本体1に対して相対的な回動が許容されて組み付けられており、当該鍔部に紐状部材Wの一端が固定されている。かかる紐状部材Wの他端は、例えば燃料タンクTの把持部Tcに結び付けられて固定可能とされており、当該燃料タンクTの給油口Taから本タンクキャップを取り外した際、当該タンクキャップを燃料タンクTに連結させておくことができるようになっている。
【0024】
更に、ボディ1bにおける所定部位には、コイルバネS4及びロックピン8を収容した収容部C2が複数形成されており、それぞれのロックピン8がコイルバネS4によって上方に付勢されつつ配設されている。一方、アウタ1aにおけるロックピン8の先端(上端)に対応する位置には、下方に突出した複数の凸部1acが平面視で環状に一体形成されており、当該ロックピン8の先端が回転方向に係止し得るようになっている。尚、ロックピン8の先端が凸部1acと当接して係止した状態にて組み付けられている。
【0025】
そして、アウタ1aを手で掴みながら回転させて本タンクキャップを燃料タンクTの給油口Taに取り付ける際、ロックピン8の先端が凸部1acと係止しているため、当該アウタ1aと共にボディ1b及びケース1c(即ち、タンクキャップ全体)が連れ回しされるよう設定されているとともに、連れ回しの過程で過大な荷重が加わる(設定荷重以上が付与される)と、ロックピン8がコイルバネS4の付勢力に抗して下降し、凸部1acとの係止が解かれるようになっている。これにより、アウタ1aがボディ1b及びケース1cに対して空回りすることとなり、過大な荷重の付与による破損等が防止されることとなる。
【0026】
連通孔aは、キャップ本体1のボディ1bに形成された孔から成り、キャップ本体1が給油口Taに取り付けられた状態で燃料タンクT内部と外部とを連通させ得る(具体的には、後述の手動開閉弁3及び自動開閉弁6、7が開状態のとき燃料タンクT内部と外部とを連通させ得る)ものである。この連通孔aは、本タンクキャップの略中心軸に沿って形成されており、その開口縁部近傍には、シール手段としてのOリング4が配設されている。
【0027】
操作ノブ2(操作手段)は、キャップ本体1の上部に配設され、第1位置(図1(b)で示す「CLOSE位置」)と第2位置(同図(a)で示す「OPEN位置」)との間で回動操作可能なものである。この操作ノブ2には、傾斜面1ab(図10参照)と対峙する摺動面2aが形成されており、回動操作される際、傾斜面1ab上を摺動して突出部1aaに対して上下動し得るよう構成されている。即ち、操作ノブ2は、傾斜面1ab上を摺動して上下動しつつ第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされているのである。
【0028】
更に、操作ノブ2には、開口部1aeに挿通した挿通部2cが形成されており、この挿通部2cに切欠2bが形成されている。かかる切欠2bには、手動開閉弁3に形成された爪部3aが係止されており、操作ノブ2の回動操作と連動して手動開閉弁3が動作し得るようになっている。この手動開閉弁3は、操作ノブ2の回動操作に伴って上下動し、当該操作ノブ2が第1位置(「CLOSE位置」)にあるとき連通孔aを閉塞状態とするとともに当該操作ノブ2が第2位置(「OPEN位置」)にあるとき当該連通孔aを開放状態とするものである。
【0029】
具体的には、手動開閉弁3には、Oリング4と当接又は離間可能とされるとともにキャップ本体1内に配設されたコイルバネS1と当接した弁部3bが形成されており、当該コイルバネS1にて手動開閉弁3及び操作ノブ2が常時下方へ付勢されて組み付けられている。そして、弁部3bがOリング4と当接(コイルバネS1にてOリング4を押圧)した状態となると、連通孔aが閉塞状態となり、当該弁部3bがOリング4から離間した状態となると、連通孔aが開放状態となるよう構成されている。尚、コイルバネS1の上端には、プレート5が介装されており、操作ノブ2の回動操作時、当該操作ノブ2がプレート5上を摺動し得るようになっている。
【0030】
即ち、操作ノブ2が第1位置(「CLOSE位置」)にあるとき、弁部3bがコイルバネS1の付勢力にてOリング4を押圧した状態となって連通孔aを閉塞状態とするとともに、操作ノブ2を第2位置(「OPEN位置」)に向かって回動操作すると、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上昇する過程で手動開閉弁3が連動して上昇し、弁部3bがコイルバネS1の付勢力に抗してOリング4から離間した状態となって連通孔aを開放状態とするのである。
【0031】
反対に、第2位置(「OPEN位置」)にある操作ノブ2を第1位置(「CLOSE位置」)に向かって回動操作すると、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して下降する過程で手動開閉弁3が連動して下降し、弁部3bがコイルバネS1の付勢力にてOリング4を押圧した状態となって連通孔aを閉塞状態とする。このようにして、操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上下動する過程で手動開閉弁3を連動させて上下動させ、連通孔aを任意に開閉し得るようになっているのである。
【0032】
自動開閉弁(6、7)は、連通孔aを閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合及び設定値(下限値β)より低い場合、その圧力を利用して連通孔aを自動的に開放状態とし得るものであり、第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7で構成されている。これら第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7は、ケース1cに形成された収容部C1内に収容されており、当該収容部C1の下端部には開口C1aが形成されている。
【0033】
第1自動開閉弁6は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合に連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)とし得るもので、コイルバネS2で下方に常時付勢された部品6aと、該部品6aに付与された付勢力で下方に常時付勢されるとともに中央の軸方向に貫通孔6baが形成された部品6bとで主に構成されている。
【0034】
部品6bの下面は、通常時、図7に示すように、収容部C1の段部及び第2自動開閉弁7の上面にそれぞれ当接され、その当接部位においてシールし得るようになっている。第2自動開閉弁7は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(下限値β)より低い場合に連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第1自動開閉弁6が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)とし得るもので、コイルバネS3で上方に常時付勢された部品から成る。而して、燃料タンクT内部の圧力が上限値α以下であり且つ下限値β以上である場合、図7に示すように、第2自動開閉弁7が第1自動開閉弁6の部品6bの下端と当接してシールされるため、開口C1aと連通孔aとが連通しない状態とされる。
【0035】
そして、燃料タンクT内部の圧力が上限値αより高くなると、図8に示すように、その圧力によって第1自動開閉弁6が第2自動開閉弁7にて下方から押圧されて上昇し、部品6bの下面と段部Dとの間に隙間を形成する。これにより、開口C1aと連通孔aとが連通した状態となり、連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)として、内部の過大な圧力を外部に逃がすことができる。
【0036】
また、燃料タンクT内部の圧力が下限値βより高くなると、図9に示すように、その圧力によって第2自動開閉弁7がコイルバネS3の付勢力に抗して下降し、部品6bの下面と第2自動開閉弁7との間に隙間を形成する。これにより、開口C1aと連通孔aとが貫通孔6baを介して連通した状態となり、連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)として、内部の負圧を解消することができる。
【0037】
上記実施形態によれば、連通孔aを閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンクT内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して連通孔aを自動的に開放状態とし得る自動開閉弁(6、7)を具備したので、通常時(燃料タンク内部が設定値(上限値α)より高い場合及び設定値(下限値β)より低い場合以外)においては、操作ノブ2を第2位置(連通孔aを開放状態とする位置)として燃料タンクTを使用する際、連通孔aを閉塞状態として燃料の揮発を抑制することができる。
【0038】
また、自動開閉弁は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合に連通孔aを開放状態とし得る第1自動開閉弁6と、当該燃料タンクT内部の圧力が設定値(下限値β)より低い場合に連通孔aを開放状態とし得る第2自動開閉弁7とを具備したので、燃料タンクT内部の圧力が高い場合と低い場合とで、連通孔aを開放状態とするそれぞれの設定値(即ち、上限値α及び下限値β)を容易に設定できる。
【0039】
ここで、本実施形態においては、手動開閉弁3、第1自動開閉弁6(部品6a及び部品6b)及び第2自動開閉弁7は、連通孔aと略同軸状に配設されている。これにより、連通孔の開閉動作をよりスムーズ且つ確実に行わせることができる。また、手動開閉弁3の開放圧力は、自動開閉弁(6、7)の開放圧力(弁が強制的に開状態とされる圧力)よりも大きく設定されている。これにより、操作ノブ2を第1位置(連通孔aを閉塞状態とする位置)として燃料タンクTを持ち運びする際、燃料タンクT内部の圧力が設定値を超えてしまった場合でも連通孔aが意図せず開放してしまうのを防止することができる。
【0040】
本実施形態によれば、操作ノブ2(操作手段)が第1位置と第2位置との間で操作されると手動開閉弁3が上下動して連通孔aを開閉(開放状態又は閉塞状態)し得るので、従来の如くネジ形状同士を噛み合わせて両者を螺合させて手動開閉弁を開閉するものに比べ、当該連通孔aの開閉操作を容易に行わせることができるとともに、当該連通孔aの開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0041】
また、操作手段は、キャップ本体1に形成された傾斜面1ab上を摺動して上下動しつつ第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされた操作ノブ2から成るとともに、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上下動する過程で手動開閉弁3を連動させて上下動させ得るので、簡易な構成で連通孔aの開閉操作を容易に行わせることができ、当該連通孔aの開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0042】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば回動操作可能な操作ノブ2に代えて、図13に示すように、キャップ本体1の上端部に形成された揺動軸Lを中心に揺動操作可能な揺動ノブ2’としてもよい。この場合、揺動ノブ2’が第1位置のとき(同図中「OFF位置」)、手動開閉弁を下降させて連通孔を閉塞状態とするとともに、揺動ノブ2’が第2位置のとき(同図中「ON位置」)、揺動軸Lと共に当該揺動ノブ2’を上昇させ、手動開閉弁を上昇させて連通孔を開放状態とするよう構成することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、手動開閉弁3と共に自動開閉弁6、7が配設されているが、手動開閉弁3のみ(操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が第1位置にあるとき連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする他の形態の手動開閉弁のみであってもよい)を配設するようにしてもよい。更に、本実施形態においては、可搬式の燃料タンクの給油口に取り付けられるものに適用されているが、船舶(車両などの他の乗り物であってもよい)に固定式の燃料タンクの給油口に取り付けるものに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体と、キャップ本体に形成され、当該キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔と、キャップ本体に配設され、第1位置と第2位置との間で操作可能な操作手段と、操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が前記第1位置にあるとき連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする手動開閉弁とを備えたタンクキャップであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 キャップ本体
1ab 傾斜面
2 操作ノブ(操作手段)
3 手動開閉弁
4 Oリング
5 プレート
6 第1自動開閉弁
7 第2自動開閉弁
8 ロックピン
9 取付プレート
a 連通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶における燃料タンク(特に小型船舶における燃料タンク)は、持ち運びが容易な可搬式とされていることが多く、その可搬式の燃料タンクの給油口に取り付けられるタンクキャップには、通常、キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させる連通孔と、使用者が操作手段(操作ノブ)を操作することにより当該連通孔を閉塞状態又は開放状態とし得る手動開閉弁とが配設されている。
【0003】
従来の操作手段(操作ノブ)には、連通孔の開口縁部に形成された雌ネジ形状に噛み合う雄ネジ形状が形成されており、当該操作手段の雄ネジ形状を連通孔の雌ネジ形状に螺合させていた。そして、燃料タンクの持ち運び時には、手動開閉弁にて連通孔が閉塞状態となるまで操作手段を回動させるとともに、船舶に取り付けられた後にエンジンを駆動させる際には、手動開閉弁にて連通孔が開放状態となるまで操作ノブを逆方向に回動させていた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のタンクキャップにおいては、操作手段が連通孔の開口縁部に形成されたネジ形状と螺合するものであったため、連通孔を閉止状態又は開放状態とするには、当該操作手段を何回も回動させる必要があり、操作が煩わしいという問題があるとともに、操作手段を目視しただけでは連通孔が閉塞状態であるのか或いは開放状態であるのかを確認するのが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、連通孔の開閉操作を容易に行わせることができるとともに、当該連通孔の開閉状態を目視にて容易に確認させることができるタンクキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、前記給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体と、該キャップ本体に形成され、当該キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔と、前記キャップ本体に配設され、第1位置と第2位置との間で操作可能な操作手段と、該操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が前記第1位置にあるとき前記連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が前記第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする手動開閉弁とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のタンクキャップにおいて、前記操作手段は、前記キャップ本体に形成された傾斜面上を摺動して上下動しつつ前記第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされた操作ノブから成るとともに、当該操作ノブが前記傾斜面上を摺動して上下動する過程で前記手動開閉弁を連動させて上下動させ得ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のタンクキャップにおいて、前記連通孔を閉塞状態にて維持するとともに、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して前記連通孔を自動的に開放状態とし得る自動開閉弁を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のタンクキャップにおいて、前記自動開閉弁は、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合に前記連通孔を開放状態とし得る第1自動開閉弁と、当該燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合に前記連通孔を開放状態とし得る第2自動開閉弁とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のタンクキャップにおいて、前記手動開閉弁、第1自動開閉弁及び第2自動開閉弁は、前記連通孔と略同軸状に配設されたことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項3〜5の何れか1つに記載のタンクキャップにおいて、前記手動開閉弁の開放圧力は、前記自動開閉弁の開放圧力よりも大きく設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、操作手段が第1位置と第2位置との間で操作されると手動開閉弁が上下動して連通孔を開閉(開放状態又は閉塞状態)し得るので、当該連通孔の開閉操作を容易に行わせることができるとともに、当該連通孔の開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、操作手段は、キャップ本体に形成された傾斜面上を摺動して上下動しつつ第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされた操作ノブから成るとともに、当該操作ノブが傾斜面上を摺動して上下動する過程で手動開閉弁を連動させて上下動させ得るので、簡易な構成で連通孔の開閉操作を容易に行わせることができ、当該連通孔の開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、連通孔を閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して連通孔を自動的に開放状態とし得る自動開閉弁を具備したので、通常時(燃料タンク内部が設定値より高い場合及び設定値より低い場合以外)においては、操作手段を第2位置(連通孔を開放状態とする位置)として燃料タンクを使用する際、連通孔を閉塞状態として燃料の揮発を抑制することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、自動開閉弁は、燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合に連通孔を開放状態とし得る第1自動開閉弁と、当該燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合に連通孔を開放状態とし得る第2自動開閉弁とを具備したので、燃料タンク内部の圧力が高い場合と低い場合とで、連通孔を開放状態とするそれぞれの設定値を容易に設定できる。
【0016】
請求項5の発明によれば、手動開閉弁、第1自動開閉弁及び第2自動開閉弁は、連通孔と略同軸状に配設されたので、当該連通孔の開閉動作をよりスムーズ且つ確実に行わせることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、手動開閉弁の開放圧力は、自動開閉弁の開放圧力よりも大きく設定されたので、操作手段を第1位置(連通孔を閉塞状態とする位置)として燃料タンクを持ち運びする際、燃料タンク内部の圧力が設定値を超えてしまった場合でも連通孔が意図せず開放してしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るタンクキャップを示す平面図であって、(a)操作ノブが第2位置にある状態(b)操作ノブが第1位置にある状態を示す図
【図2】同タンクキャップを示す正面図
【図3】同タンクキャップを示す側面図
【図4】図2におけるIV−IV線断面図(操作手段が第1位置にある状態)
【図5】図2におけるIV−IV線断面図(操作手段が第2位置にある状態)
【図6】図1におけるVI−VI線断面図
【図7】同タンクキャップにおける自動開閉弁(連通孔を閉塞状態に維持した状態)を示す断面図
【図8】同タンクキャップにおける自動開閉弁(燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合)を示す断面図
【図9】同タンクキャップにおける自動開閉弁(燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合)を示す断面図
【図10】同タンクキャップを示す分解斜視図
【図11】同タンクキャップが適用される燃料タンクを示す模式図
【図12】同燃料タンクの給油口に本タンクキャップを取り付けた状態を示す模式図
【図13】本発明の他の実施形態に係るタンクキャップを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るタンクキャップは、図11に示す如き船舶における可搬式の燃料タンクTの給油口Taに取り付け可能なものである。かかる燃料タンクTは、内部に所定容量の燃料を収容可能とされており、持ち運ぶ際に把持可能な把持部Tcと、船舶から延設されたホース等と接続されて内部の燃料を排出してエンジン側に供給可能な排出部Tbとが形成されている。
【0020】
本タンクキャップは、図12に示すように、燃料タンクTの給油口Taに螺合にて取り付けられて当該給油口Taを開閉し得るもので、図1〜10に示すように、キャップ本体1と、連通孔aと、操作手段としての操作ノブ2と、手動開閉弁3と、自動開閉弁としての第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7とから主に構成されている。キャップ本体1は、給油口Taを覆いつつ取り付け可能なもので、アウタ1aと、ボディ1bと、ケース1cとを組み付けて一体形成して成るものである。
【0021】
アウタ1aは、例えば傘状に形成された樹脂成形品から成るもので、その中央頂部には操作ノブ2が取り付けられる突出部1aaが一体的に形成されている。この突出部1aaには、後述する連通孔aと通じる開口部1aeが形成されているとともに、操作ノブ2が回動する際に摺動する傾斜面1abが形成されている。ボディ1bは、図6に示すように、ボルトBにてケース1cと一体的に組み付けられるとともに、アウタ1aに形成された爪部1adと係止可能な切欠部1baを有して成るものである。
【0022】
而して、ボルトBにて一体的に組み付けられたボディ1b及びケース1cは、爪部1adを切欠部1baに係止させて組み付けられており、アウタ1aに対して所定寸法の回転を許容しつつ抜け止めが図られている。尚、符号P1〜P3は、パッキン部材を示しており、これらパッキン部材P1〜P3にて所望部位をシールしている。また、符号1bbは、ボディ1bに形成されたネジ部を示しており、図12に示すように、このネジ部1bbを給油口Taの外縁部に形成されたネジ部Taaに螺合させることにより、本タンクキャップ全体が当該給油口Taに取り付け可能とされている。
【0023】
また、キャップ本体1には、紐やチェーン等から成る紐状部材Wの一端が取り付けられた取付プレート9が組み付けられている。この取付プレート9は、所定部位に鍔部を有する板状部材から成り、キャップ本体1に対して相対的な回動が許容されて組み付けられており、当該鍔部に紐状部材Wの一端が固定されている。かかる紐状部材Wの他端は、例えば燃料タンクTの把持部Tcに結び付けられて固定可能とされており、当該燃料タンクTの給油口Taから本タンクキャップを取り外した際、当該タンクキャップを燃料タンクTに連結させておくことができるようになっている。
【0024】
更に、ボディ1bにおける所定部位には、コイルバネS4及びロックピン8を収容した収容部C2が複数形成されており、それぞれのロックピン8がコイルバネS4によって上方に付勢されつつ配設されている。一方、アウタ1aにおけるロックピン8の先端(上端)に対応する位置には、下方に突出した複数の凸部1acが平面視で環状に一体形成されており、当該ロックピン8の先端が回転方向に係止し得るようになっている。尚、ロックピン8の先端が凸部1acと当接して係止した状態にて組み付けられている。
【0025】
そして、アウタ1aを手で掴みながら回転させて本タンクキャップを燃料タンクTの給油口Taに取り付ける際、ロックピン8の先端が凸部1acと係止しているため、当該アウタ1aと共にボディ1b及びケース1c(即ち、タンクキャップ全体)が連れ回しされるよう設定されているとともに、連れ回しの過程で過大な荷重が加わる(設定荷重以上が付与される)と、ロックピン8がコイルバネS4の付勢力に抗して下降し、凸部1acとの係止が解かれるようになっている。これにより、アウタ1aがボディ1b及びケース1cに対して空回りすることとなり、過大な荷重の付与による破損等が防止されることとなる。
【0026】
連通孔aは、キャップ本体1のボディ1bに形成された孔から成り、キャップ本体1が給油口Taに取り付けられた状態で燃料タンクT内部と外部とを連通させ得る(具体的には、後述の手動開閉弁3及び自動開閉弁6、7が開状態のとき燃料タンクT内部と外部とを連通させ得る)ものである。この連通孔aは、本タンクキャップの略中心軸に沿って形成されており、その開口縁部近傍には、シール手段としてのOリング4が配設されている。
【0027】
操作ノブ2(操作手段)は、キャップ本体1の上部に配設され、第1位置(図1(b)で示す「CLOSE位置」)と第2位置(同図(a)で示す「OPEN位置」)との間で回動操作可能なものである。この操作ノブ2には、傾斜面1ab(図10参照)と対峙する摺動面2aが形成されており、回動操作される際、傾斜面1ab上を摺動して突出部1aaに対して上下動し得るよう構成されている。即ち、操作ノブ2は、傾斜面1ab上を摺動して上下動しつつ第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされているのである。
【0028】
更に、操作ノブ2には、開口部1aeに挿通した挿通部2cが形成されており、この挿通部2cに切欠2bが形成されている。かかる切欠2bには、手動開閉弁3に形成された爪部3aが係止されており、操作ノブ2の回動操作と連動して手動開閉弁3が動作し得るようになっている。この手動開閉弁3は、操作ノブ2の回動操作に伴って上下動し、当該操作ノブ2が第1位置(「CLOSE位置」)にあるとき連通孔aを閉塞状態とするとともに当該操作ノブ2が第2位置(「OPEN位置」)にあるとき当該連通孔aを開放状態とするものである。
【0029】
具体的には、手動開閉弁3には、Oリング4と当接又は離間可能とされるとともにキャップ本体1内に配設されたコイルバネS1と当接した弁部3bが形成されており、当該コイルバネS1にて手動開閉弁3及び操作ノブ2が常時下方へ付勢されて組み付けられている。そして、弁部3bがOリング4と当接(コイルバネS1にてOリング4を押圧)した状態となると、連通孔aが閉塞状態となり、当該弁部3bがOリング4から離間した状態となると、連通孔aが開放状態となるよう構成されている。尚、コイルバネS1の上端には、プレート5が介装されており、操作ノブ2の回動操作時、当該操作ノブ2がプレート5上を摺動し得るようになっている。
【0030】
即ち、操作ノブ2が第1位置(「CLOSE位置」)にあるとき、弁部3bがコイルバネS1の付勢力にてOリング4を押圧した状態となって連通孔aを閉塞状態とするとともに、操作ノブ2を第2位置(「OPEN位置」)に向かって回動操作すると、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上昇する過程で手動開閉弁3が連動して上昇し、弁部3bがコイルバネS1の付勢力に抗してOリング4から離間した状態となって連通孔aを開放状態とするのである。
【0031】
反対に、第2位置(「OPEN位置」)にある操作ノブ2を第1位置(「CLOSE位置」)に向かって回動操作すると、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して下降する過程で手動開閉弁3が連動して下降し、弁部3bがコイルバネS1の付勢力にてOリング4を押圧した状態となって連通孔aを閉塞状態とする。このようにして、操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上下動する過程で手動開閉弁3を連動させて上下動させ、連通孔aを任意に開閉し得るようになっているのである。
【0032】
自動開閉弁(6、7)は、連通孔aを閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合及び設定値(下限値β)より低い場合、その圧力を利用して連通孔aを自動的に開放状態とし得るものであり、第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7で構成されている。これら第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7は、ケース1cに形成された収容部C1内に収容されており、当該収容部C1の下端部には開口C1aが形成されている。
【0033】
第1自動開閉弁6は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合に連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)とし得るもので、コイルバネS2で下方に常時付勢された部品6aと、該部品6aに付与された付勢力で下方に常時付勢されるとともに中央の軸方向に貫通孔6baが形成された部品6bとで主に構成されている。
【0034】
部品6bの下面は、通常時、図7に示すように、収容部C1の段部及び第2自動開閉弁7の上面にそれぞれ当接され、その当接部位においてシールし得るようになっている。第2自動開閉弁7は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(下限値β)より低い場合に連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第1自動開閉弁6が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)とし得るもので、コイルバネS3で上方に常時付勢された部品から成る。而して、燃料タンクT内部の圧力が上限値α以下であり且つ下限値β以上である場合、図7に示すように、第2自動開閉弁7が第1自動開閉弁6の部品6bの下端と当接してシールされるため、開口C1aと連通孔aとが連通しない状態とされる。
【0035】
そして、燃料タンクT内部の圧力が上限値αより高くなると、図8に示すように、その圧力によって第1自動開閉弁6が第2自動開閉弁7にて下方から押圧されて上昇し、部品6bの下面と段部Dとの間に隙間を形成する。これにより、開口C1aと連通孔aとが連通した状態となり、連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)として、内部の過大な圧力を外部に逃がすことができる。
【0036】
また、燃料タンクT内部の圧力が下限値βより高くなると、図9に示すように、その圧力によって第2自動開閉弁7がコイルバネS3の付勢力に抗して下降し、部品6bの下面と第2自動開閉弁7との間に隙間を形成する。これにより、開口C1aと連通孔aとが貫通孔6baを介して連通した状態となり、連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)として、内部の負圧を解消することができる。
【0037】
上記実施形態によれば、連通孔aを閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンクT内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して連通孔aを自動的に開放状態とし得る自動開閉弁(6、7)を具備したので、通常時(燃料タンク内部が設定値(上限値α)より高い場合及び設定値(下限値β)より低い場合以外)においては、操作ノブ2を第2位置(連通孔aを開放状態とする位置)として燃料タンクTを使用する際、連通孔aを閉塞状態として燃料の揮発を抑制することができる。
【0038】
また、自動開閉弁は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合に連通孔aを開放状態とし得る第1自動開閉弁6と、当該燃料タンクT内部の圧力が設定値(下限値β)より低い場合に連通孔aを開放状態とし得る第2自動開閉弁7とを具備したので、燃料タンクT内部の圧力が高い場合と低い場合とで、連通孔aを開放状態とするそれぞれの設定値(即ち、上限値α及び下限値β)を容易に設定できる。
【0039】
ここで、本実施形態においては、手動開閉弁3、第1自動開閉弁6(部品6a及び部品6b)及び第2自動開閉弁7は、連通孔aと略同軸状に配設されている。これにより、連通孔の開閉動作をよりスムーズ且つ確実に行わせることができる。また、手動開閉弁3の開放圧力は、自動開閉弁(6、7)の開放圧力(弁が強制的に開状態とされる圧力)よりも大きく設定されている。これにより、操作ノブ2を第1位置(連通孔aを閉塞状態とする位置)として燃料タンクTを持ち運びする際、燃料タンクT内部の圧力が設定値を超えてしまった場合でも連通孔aが意図せず開放してしまうのを防止することができる。
【0040】
本実施形態によれば、操作ノブ2(操作手段)が第1位置と第2位置との間で操作されると手動開閉弁3が上下動して連通孔aを開閉(開放状態又は閉塞状態)し得るので、従来の如くネジ形状同士を噛み合わせて両者を螺合させて手動開閉弁を開閉するものに比べ、当該連通孔aの開閉操作を容易に行わせることができるとともに、当該連通孔aの開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0041】
また、操作手段は、キャップ本体1に形成された傾斜面1ab上を摺動して上下動しつつ第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされた操作ノブ2から成るとともに、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上下動する過程で手動開閉弁3を連動させて上下動させ得るので、簡易な構成で連通孔aの開閉操作を容易に行わせることができ、当該連通孔aの開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0042】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば回動操作可能な操作ノブ2に代えて、図13に示すように、キャップ本体1の上端部に形成された揺動軸Lを中心に揺動操作可能な揺動ノブ2’としてもよい。この場合、揺動ノブ2’が第1位置のとき(同図中「OFF位置」)、手動開閉弁を下降させて連通孔を閉塞状態とするとともに、揺動ノブ2’が第2位置のとき(同図中「ON位置」)、揺動軸Lと共に当該揺動ノブ2’を上昇させ、手動開閉弁を上昇させて連通孔を開放状態とするよう構成することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、手動開閉弁3と共に自動開閉弁6、7が配設されているが、手動開閉弁3のみ(操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が第1位置にあるとき連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする他の形態の手動開閉弁のみであってもよい)を配設するようにしてもよい。更に、本実施形態においては、可搬式の燃料タンクの給油口に取り付けられるものに適用されているが、船舶(車両などの他の乗り物であってもよい)に固定式の燃料タンクの給油口に取り付けるものに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体と、キャップ本体に形成され、当該キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔と、キャップ本体に配設され、第1位置と第2位置との間で操作可能な操作手段と、操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が前記第1位置にあるとき連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする手動開閉弁とを備えたタンクキャップであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 キャップ本体
1ab 傾斜面
2 操作ノブ(操作手段)
3 手動開閉弁
4 Oリング
5 プレート
6 第1自動開閉弁
7 第2自動開閉弁
8 ロックピン
9 取付プレート
a 連通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、
前記給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体と、
該キャップ本体に形成され、当該キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔と、
前記キャップ本体に配設され、第1位置と第2位置との間で操作可能な操作手段と、
該操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が前記第1位置にあるとき前記連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が前記第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする手動開閉弁と、
を備えたことを特徴とするタンクキャップ。
【請求項2】
前記操作手段は、前記キャップ本体に形成された傾斜面上を摺動して上下動しつつ前記第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされた操作ノブから成るとともに、当該操作ノブが前記傾斜面上を摺動して上下動する過程で前記手動開閉弁を連動させて上下動させ得ることを特徴とする請求項1記載のタンクキャップ。
【請求項3】
前記連通孔を閉塞状態にて維持するとともに、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して前記連通孔を自動的に開放状態とし得る自動開閉弁を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタンクキャップ。
【請求項4】
前記自動開閉弁は、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合に前記連通孔を開放状態とし得る第1自動開閉弁と、当該燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合に前記連通孔を開放状態とし得る第2自動開閉弁とを具備したことを特徴とする請求項3記載のタンクキャップ。
【請求項5】
前記手動開閉弁、第1自動開閉弁及び第2自動開閉弁は、前記連通孔と略同軸状に配設されたことを特徴とする請求項4記載のタンクキャップ。
【請求項6】
前記手動開閉弁の開放圧力は、前記自動開閉弁の開放圧力よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項3〜5の何れか1つに記載のタンクキャップ。
【請求項1】
燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、
前記給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体と、
該キャップ本体に形成され、当該キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔と、
前記キャップ本体に配設され、第1位置と第2位置との間で操作可能な操作手段と、
該操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が前記第1位置にあるとき前記連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が前記第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする手動開閉弁と、
を備えたことを特徴とするタンクキャップ。
【請求項2】
前記操作手段は、前記キャップ本体に形成された傾斜面上を摺動して上下動しつつ前記第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされた操作ノブから成るとともに、当該操作ノブが前記傾斜面上を摺動して上下動する過程で前記手動開閉弁を連動させて上下動させ得ることを特徴とする請求項1記載のタンクキャップ。
【請求項3】
前記連通孔を閉塞状態にて維持するとともに、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して前記連通孔を自動的に開放状態とし得る自動開閉弁を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタンクキャップ。
【請求項4】
前記自動開閉弁は、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合に前記連通孔を開放状態とし得る第1自動開閉弁と、当該燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合に前記連通孔を開放状態とし得る第2自動開閉弁とを具備したことを特徴とする請求項3記載のタンクキャップ。
【請求項5】
前記手動開閉弁、第1自動開閉弁及び第2自動開閉弁は、前記連通孔と略同軸状に配設されたことを特徴とする請求項4記載のタンクキャップ。
【請求項6】
前記手動開閉弁の開放圧力は、前記自動開閉弁の開放圧力よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項3〜5の何れか1つに記載のタンクキャップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−219141(P2011−219141A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91848(P2010−91848)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]