説明

タンク補強構造

【課題】タンク内洗浄度を所定以上に維持しつつ、安価で補強効果が高く、組立て性に優れた箱状タンクの補強構造を提供する。
【解決手段】タンク10内に空間的に交差する第1及び第2棒状補強部材51,61を配設して、第1棒状補強部材51によって左右の壁部15a,15b同士を連結するととも、第2棒状補強部材61によって前後の壁部14a,14b同士を連結するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
タンク補強構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、互いに対向する一対の対向壁を複数組有する箱状の燃料タンクは知られている(例えば、特許文献1参照)。この燃料タンクは、例えばコ字状に折り曲げられた複数の金属板を組み合わせてそれらを溶接接合することで形成されている。
【0003】
この種の燃料タンクでは、タンク強度を高めるために、タンク内壁面に補強部材を固着させる場合がある。例えば、特許文献2に示すものでは、燃料タンクの左右の側壁板の内壁面に、補強部材として断面コ字形をなす金属製のチャンネル材を溶接するようにしている。これにより、左右の側壁板の面剛性を向上させて燃料タンクの強度向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−70165号公報
【特許文献2】特開2004−189128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に示す従来のタンク補強構造では、補強部材であるチャンネル材を長さ方向の全体に亘って側壁板に溶接する必要があるため、補強部材を設けない場合に比べて、溶接熱による残留応力が増加したり、溶接歪みが増加したりするという問題がある。また、従来のタンク補強構造では、タンク内壁面に付着した溶接かすに起因してタンク内の洗浄度が低下したり、溶接作業に要する時間が長いためにタンクの組み立て工数が増加したり、側壁板に残った溶接痕が外壁面に浮き出て燃料タンクの外観意匠が損なわれたり、使用する補強部材の重量に比して補強効果が低かったりという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タンク内洗浄度を所定以上に維持しつつ、安価で補強効果が高く、組立て性に優れたタンク補強構造を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、タンク内に空間的に交差する第1及び第2棒状補強部材を配設して、各棒状補強部材によってそれぞれ、相対向する壁部同士を連結するようにした。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、第1壁部と該第1壁部に対向する第1対向壁部と、第2壁部と該第2壁部に対向する第2対向壁部とを有する箱状タンクの補強構造を対象とする。
【0009】
そして、上記第1壁部及び上記第1対向壁部間に跨って配設され、両端部が該各壁部に溶接接合された第1棒状補強部材と、上記第2壁部と上記第2対向壁部間に跨って配設され、上記第1棒状補強部材に対して空間的に交差するとともに両端部が該各壁部に溶接接合された第2棒状補強部材と、を備えているものとする。
【0010】
この補強構造によれば、タンクを構成する壁部の内壁面に大きな荷重が作用したとしても、タンクの相対向する壁部同士が補強部材を介して互いの変形を抑制するように作用するため、単にタンク壁部の内壁面に補強部材を溶接するようにした場合に比べて高い補強効果を得ることができる。しかも、相対向する壁部同士を連結する2つの補強部材(第1棒状補強部材及び第2棒状補強部材)を空間的に交差させるようにしたことで、タンクの補強効果を一方向に偏ることなく少なくとも二方向において高めることができる。よって、タンク強度を可及的に向上させることが可能となる。したがって、使用する補強部材(本発明では第1及び第2棒状補強部材)の量を極力減らしつつ、タンク補強効果を高めることができ、タンクの補強コストを抑制することができる。
【0011】
また、各補強部材の両端部をそれぞれタンクの壁部に溶接するだけでよいため、タンク壁部の内壁面に補強部材を溶接するようにした場合に比べて、補強部材の溶接に必要な時間を短縮することができるとともに、溶接時に補強部材を介してタンク壁部に伝わる溶接熱を低減して、各壁部に生じる溶接歪み及び残留応力を低減することができる。また、タンク内に溶接かすが付着することもないので、タンク内の洗浄度を高めることができる。また、タンク壁部の内壁面に補強部材を溶接しなくてもよいので、タンク壁部の内壁面に残った溶接痕が外壁面に浮き出てタンクの外観意匠が損なわれることもない。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記第1及び第2棒状補強部材の基端部にはそれぞれ、取付用プレートがフランジ状に設けられており、上記第1及び第2棒状補強部材はそれぞれ、その基端部に設けられた取付用プレートと共にサブアセンブリ化されて第1及び第2補強アセンブリを構成しており、上記第1壁部及び第1対向壁部には、第1補強アセンブリをタンクに固定するための固定用孔が形成されており、上記第2壁部及び第2対向壁部には、第2補強アセンブリをタンクに固定するための固定用孔が形成されており、上記第1及び第2補強アセンブリはそれぞれ、上記第1及び第2棒状補強部材をそれぞれ上記第1及び第2壁部の固定用孔に対してタンク外側から挿通して、該第1及び第2棒状補強部材の基端部に設けられた取付用プレートをそれぞれ、該第1及び第2壁部の外壁面に溶接接合するとともに、該第1及び第2棒状補強部材の先端部をそれぞれ、上記第1及び第2対向壁部の固定用孔に挿通した状態で該第1及び第2対向壁部に溶接接合することで、上記タンクに固定されているものとする。
【0013】
この構成によれば、各棒状補強部材を固定用孔に挿通する際に、取付用プレートがタンクの外壁面に当接して各棒状補強部材の軸方向(挿通方向)の位置決め手段として機能するため、各棒状補強部材の位置決め作業に要する時間を短縮して、タンクへの各棒状補強部材の組み付け時間を短縮することができる。また、第1及び第2壁部にそれぞれ溶接接合される取付用プレートによって、比較的強度が低下し易い各壁部の固定用孔周辺の強度を補強することができる。
【0014】
また、第1及び第2棒状補強部材はそれぞれ、取付用プレートと共にサブアセンブリ化されて第1補強アセンブリ及び第2補強アセンブリとされているため、各棒状補強部材及び取付用プレートをそれぞれ別々にタンクに組み付ける場合に比べて、タンクへの補強部材の組付け時間を短縮することができる。
【0015】
また、各補強アセンブリを丸洗い洗浄できるので、例えば各棒状補強部材と取付用プレートとを溶接接合した場合に生じる溶接かすがタンク内に侵入することもない。よって、タンク内の洗浄度を可及的に高めることができる。
【0016】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記第1及び第2対向壁部の外壁面における固定用孔が形成された部分にはそれぞれ、上記各取付用プレートに対向する対向プレートが溶接接合され、上記各対向プレートにおける上記固定用孔に対応する箇所には貫通孔が形成され、上記第1及び第2棒状補強部材の先端部はそれぞれ、上記第1及び第2補強アセンブリをタンクに固定した状態で、上記第1及び第2対向壁部に溶接接合された対向プレートの貫通孔に挿通されて該対向プレートに溶接接合されているものとする。
【0017】
この構成によれば、第1及び第2対向壁部の固定用孔周辺の強度を対向プレートにより補強することができる。よって、タンク補強効果をより一層高めることができる。
【0018】
請求項4の発明では、請求項1乃至3のいずれか一つの発明において、上記第1壁部の内壁面の面積は上記第2壁部の内壁面の面積よりも大きく、上記第1棒状補強部材は、2つ設けられていてそれぞれが互いに平行に延びるように配設されており、上記第2棒状補強部材も同様に、2つ設けられていてそれぞが互いに平行に延びるように配設されており、上記2つの第1棒状補強部材の間隔は、上記2つの第2棒状補強部材の間隔よりも広いものとする。
【0019】
この構成によれば、タンク内の液体や気体の圧力に起因してより大きな荷重が作用する第1壁部及び第1対向壁部間の補強強度を、第2壁部及び第2壁部間の補強強度に比べて高めることができる。よって、タンクの破損を確実に防止することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、請求項1乃至4のいずれか一つの発明において、上記第1棒状補強部材の端部には、上記吊り輪部材又はフック部材を取り付けるための螺子孔が形成されているものとする。
【0021】
この構成によれば、補強部材である第1棒状補強部材を、吊り輪部材又はフック部材の装着部として利用することができるため、部品点数を削減して補強コストを低く抑えることができる。また、タンクの壁部の外壁面に吊り輪部材を取り付けるためのナットを溶接したりする必要もないので、外観意匠が損なわれることもない。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明のタンク補強構造によると、タンク内に空間的に交差する第1及び第2棒状補強部材を配設して、各棒状補強部材によってそれぞれ、相対向する壁部同士を連結するようにしたことで、タンク内洗浄度を所定以上に維持しつつ、安価で補強効果が高く、組立て性に優れたタンク補強構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るタンク補強構造を有する燃料タンクを搭載した建設機械の一例である油圧ショベルを示す、右側から見た側面図である。
【図2】油圧ショベルを示す上側から見た平面図である。
【図3】燃料タンクを示す、油圧ショベルの前方斜め右側から見た斜視図である。
【図4】燃料タンクと補強アセンブリとを示す分解斜視図である。
【図5】図3のV-V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】(a)は、変形例1を示す図6相当図であり、(b)は、変形例1を示す図5相当図である。
【図8】(a)は、変形例2を示す図6相当図であり、(b)は、変形例2を示す図5相当図である。
【図9】(a)は、他の実施形態を示す図6相当図であり、(b)は、他の実施形態を示す図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態)
<全体構成>
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るタンク補強構造を有する燃料タンク10を備えた建設機械の一例である油圧ショベル100を示している。
【0025】
油圧ショベル100は、クローラ式の下部走行体1と、下部走行体1上に旋回可能に支持された上部旋回体2と、上部旋回体2の前端部に起伏可能に取り付けられ、掘削作業等を行う作業機3とを備えている。尚、以下の説明において、「前側」、「後側」、「左側」、及び「右側」はそれぞれ、油圧ショベル100の作業機3が正面を向いた状態(図1及び図2の状態)で、運転席から見た前側、後側、左側、及び右側を意味するものとする。
【0026】
上部旋回体2の前部左側には、運転室を形成するキャブ5が配設され、上部旋回体2の後端部には重量バランスを確保するためのカウンタウェイト4が配設されている。上部旋回体2におけるカウンタウェイト4の前側には、エンジンやエンジンを駆動する油圧ポンプ等を収容する機械室6が配設されている。機械室6の左側前方には、キャブ5と機械室6とに挟まれるように作動油タンク7が配設されている。作動油タンク7には、油圧ポンプにより加圧されて各アクチュエータへと供給される作動油が貯留されている。機械室6の右側前方には、エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンク10が配置されている。
【0027】
<燃料タンクの全体構成>
図3及び図4に示すように、燃料タンク10(以下、単にタンクという)は、前後方向に長い縦長の中空箱状に形成されていて、タンク強度を高めるためのタンク補強構造を有している。この補強構造は、主にタンク10の左右方向の強度を補強する第1補強アセンブリ50と、主にタンク10の前後方向の強度を補強する第2補強アセンブリ60とによって実現されている。
【0028】
タンク10は、本実施形態では、3つの金属板(例えばスチール板)を組み合わせて形成されている。詳しくは、タンク10は、平板9と、断面コ字状に折り曲げられたコ字板11と、L字状に折り曲げられたL字板12とを組み合わせてそれらを互いに溶接接合することにより形成されている。
【0029】
タンク10は、本実施形態では、互いに対向する一対の対向壁部13〜15を3組有する直方体状に形成されている。詳しくは、燃料タンク10は、上下方向において互いに対向する上側壁部13a及び下側壁部13bと、前後方向において互いに対向する前側壁部14a及び後側壁部14bと、左右方向において互いに対向する右側壁部15b及び左側壁部15aとを有している。右側壁部15b、左側壁部15a、前側壁部14a、及び後側壁部14bがそれぞれ、第1壁部、第1対向壁部、第2壁部、及び第2対向壁部に相当する。
【0030】
タンク10の上側壁部13aには、給油孔16が形成されているとともに、その周囲をむように円筒状の給油管17が立設されている。タンク10の下側壁部13bの中央部にはタンク10内を洗浄するための洗浄孔18が形成されており、その周囲にはキャップ装着用の厚肉の環状フランジ部19が形成されている。また、タンク10の下側壁部13bの下面には、前後方向に並ぶ一対の台座部材20が溶接接合されている。
【0031】
タンク10の前側壁部14a及び後側壁部14bにはそれぞれ、第2補強アセンブリ60をタンク10に固定するための固定用孔21(図4参照)が形成されている。この固定用孔21は、前側壁部14a及び後側壁部14bのそれぞれに対して2つずつ上下に並んで設けられている。前側壁部14aに形成された2つの前固定用孔21aと後側壁部14bに形成された2つの後固定用孔21bとは、それぞれ、前後方向から見て同じ位置(同軸になる位置)に形成されている。
【0032】
同様に、タンク10の左側壁部15a及び右側壁部15bにはそれぞれ、第1補強アセンブリ50をタンク10に固定するための固定用孔22が形成されている。この固定用孔22は、左側壁部15a及び右側壁部15bのそれぞれに対して2つずつ上下に並んで設けられている。左側壁部15aに形成された2つの左固定用孔22aと右側壁部15bに形成された2つの右固定用孔22bとは、左右方向から見て同じ位置(同軸になる位置)に形成されている。
【0033】
前後の壁部14a,14bの高さは左右の壁部15a,15bの高さに等しいが、左右の壁部15a,15bの幅は、前後の壁部14a,14bの幅よりも大きい。したがって、左右の壁部15a,15bの内壁面の面積は、前後の壁部14a,14bの内壁面の面積よりも大きく、タンク10内の燃料圧により左右の壁部15a,15bが受ける荷重は、前後の壁部14a,14bが受ける荷重よりも大きい。
【0034】
<補強アセンブリの詳細構成>
次に各補強アセンブリ50,60の詳細について説明する。以下の説明では、特に断らない限り、各補強アセンブリ50,60がタンク10に取付けられた状態にあるものとして説明を行う。
【0035】
図3及び図4に示すように、第1補強アセンブリ50は、左右方向に延びる一対の第1棒状補強部材51と取付用プレート52とをコ字型に連結してサブアセンブリ化(小組)したものであり、右側壁部15b及び左側壁部15a間に跨って配設されている。第1棒状補強部材51及び後述の第2補強部材61は共に断面円形状の丸棒からなる。
【0036】
上記一対の第1棒状補強部材51は、上下方向に間隔を空けて互いに平行に配設されている。取付用プレート52は、一対の第1棒状補強部材51の基端部に跨ってフランジ状に設けられている。取付用プレート52の両端部には貫通孔52aが形成されており、一対の第1棒状補強部材51の基端部は、取付用プレート52の貫通孔52aに嵌合された状態で該取付用プレート52に溶接接合されている。そうして、一対の第1棒状補強部材51の基端部同士はこの取付用プレート52を介して連結されている。
【0037】
第1補強アセンブリ50は、一対の第1棒状補強部材51を右側壁部15bに形成された一対の右固定用孔22bに対してタンク外側から挿通して、該一対の第1棒状補強部材51の基端部に設けられた取付用プレート52を右側壁部15bの外壁面に溶接接合するとともに、該一対の第1棒状補強部材51の先端部を右側壁部15bに対向する左側壁部15aに接合することによりタンク10に固定されている。
【0038】
各第1棒状補強部材51の先端部は、対向プレート54を介して左側壁部15aに接合されている。対向プレート54は、取付用プレート52に対して平行に且つ左右方向において対向するように配設されている。対向プレート54は、取付用プレート52と同様に上下方向に長い金属板で構成されている。対向プレート54は、左側壁部15aの外壁面に形成された一対の左固定用孔22aに跨って配設されている。対向プレート54の上下方向の両端部には、左側壁部15aの一対の左固定用孔22aに対応する一対の貫通孔54aが形成されている。各貫通孔54aは各左固定用孔22aと同軸に形成されている。
【0039】
図5に示すように、各第1棒状補強部材51の先端部は、左側壁部15aの左固定用孔22a及び対向プレート54の貫通孔54aを貫通して、対向プレート54の外側面からタンク外方側に僅かに突出している。そして、この第1棒状補強部材51の突出部の周囲が対向プレート54の貫通孔54aの周囲部に溶接接合されている。この対向プレート54は上述の如く左側壁部15aに溶接接合されており、したがって、第1棒状補強部材51の先端部はこの対向プレート54を介して左側壁部15aに溶接接合されていると言える。尚、本実施形態では、対向プレート54として、取付用プレート52と同一のものを使用するようにしている。これにより、対向プレート54及び取付用プレート52の双方共に、量産効果によるコストダウンが図られる。
【0040】
図3及び図4に戻って、第2補強アセンブリ60は、第1補強アセンブリ50と同様に、2つの棒状補強部材(以下、第2棒状補強部材という)61と取付用プレート62とをコ字型に連結してサブアセンブリ化(小組)したものであり、前側壁部14a及び後側壁部14b間に跨って配設されている。各第2棒状補強部材61は、前後方向に延びるとともに、上下方向に間隔を空けて互いに平行に配設されている。各第2棒状補強部材61は、上記一対の第1棒状補強部材51の間を通って、各第1棒状補強部材51に対して空間的に交差するように延びている。この交差角は、上側から見て略90°である。各第2棒状補強部材61の軸間距離をd2とし、各第1棒状補強部材51の軸間距離をd1としたときに、d1>d2(図5及び図6参照)の関係を満たしている。
【0041】
第2補強アセンブリ60は、各第2棒状補強部材61を前側壁部14a(図4参照)に形成された各前固定用孔21aに対してタンク外側から挿通して、各第2棒状補強部材61の基端部に設けられた取付用プレート62を前側壁部14aの外壁面に溶接接合するとともに、該各第2棒状補強部材61の先端部を、前側壁部14aに対向する後側壁部14bに接合することによりタンク10に固定されている。各第2棒状補強部材61の先端部は、上記第1補強アセンブリ50をタンク10に固定したのと同様に、対向プレート64を介して後側壁部14bに接合されている。
【0042】
すなわち、図6に示すように、各第2棒状補強部材61の先端部は、後側壁部14bの後固定用孔21b及び対向プレート64の貫通孔64aを貫通して、対向プレート64の外側面からタンク外方側に僅かに突出している。そして、この第2棒状補強部材61の突出部の周囲が対向プレート64の貫通孔64aの周囲部に溶接接合されている。この対向プレート64は上述の如く後側壁部14bに溶接接合されており、したがって、第2棒状補強部材61の先端部はこの対向プレート64を介して後側壁部14bに溶接接合されていると言える。この対向プレート64としては、取付用プレート62と同一のものが使用されている。
【0043】
<タンクの製造工程の詳細>
次にタンク10の製造工程について説明する。タンク10の製造工程は、タンク10を箱状に組立てるメイン工程と、メイン工程とは別工程で、予め補強アセンブリ50,60を組み立てておくサブアセンブリ工程と、タンク10に補強アセンブリ50,60を組み付ける完成工程とに大別される。
【0044】
メイン工程では、L字板12及び平板9をコ字型に溶接してなるコ字状体と、予め折り曲げ形成されたコ字板11とを互いに組み合わせて溶接接合することで直方体状のタンク10を形成する。
【0045】
サブアセンブリ工程は、第1補強アセンブリ50を組立てる第1工程と、第2補強アセンブリを組み立てる第2工程とを含んでいる。第1工程では、先ず、作業台の上に取付用プレート52を水平にセットし、セットした取付用プレート52の両端部の貫通孔52aにそれぞれ第1棒状補強部材51の基端部を嵌入して仮固定する。そして、第1棒状補強部材51の基端部を取付用プレート52に溶接接合すれば、第1棒状補強部材と取付用プレート52とが強固に固定されてサブアセンブリ化され、第1補強アセンブリ50が形成される。第1工程と第2工程とは、取付用プレート52に第1棒状補強部材51を取り付けるか第2棒状補強部材61を取り付けるかが異なるだけで工程内容は同じであるため、第2工程の詳細な説明は省略する。完成した第1及び第2補強アセンブリ50,60は、溶接部に付着した溶接かすを除去するために丸洗い洗浄される。
【0046】
完成工程は、メイン工程で組み立てたタンク10にサブアセンブリ工程で組み立てた各補強アセンブリ50,60を組み付ける工程であって、仮付け工程と固定工程とを含んでいる。第1補強アセンブリ50の仮付け工程では、タンク10の左側壁部15aに対向プレート54を溶接しておき、次いで、第1棒状補強部材51を右側壁部15bに形成された右固定用孔22bに対してタンク右側から挿通して行き、その基端部に設けられた取付用プレート52が右側壁部15bの外壁面に当接したところで第1棒状補強部材51の挿通を停止する。これにより、各補強アセンブリ50,60がタンク10に仮付けされて仮付け工程が終了する。第1補強アセンブリ50の固定工程では、仮付けした第1補強アセンブリ50をタンク10に溶接して固定する。具体的には、第1補強アセンブリ50の取付用プレート52を右側壁部15bの外壁面に溶接するとともに、第1棒状補強部材51の先端部を対向プレート54の貫通孔54aの周囲部に全周に亘って溶接する。これにより、第1補強アセンブリ50がタンク10に固定されて、第1補強アセンブリ50の固定工程が終了する。
【0047】
第2補強アセンブリ60の仮付け工程では、タンク10の後側壁部14bに対向プレート64を溶接しておき、次いで、第2棒状補強部材61を前側壁部14aに形成された前固定用孔21aに対してタンク前側から挿通して行き、その基端部に設けられた取付用プレート62が前側壁部14aの外壁面に当接したところで第2棒状補強部材61の挿通を停止する。これにより、第2補強アセンブリ60がタンク10に仮付けされて仮付け工程が終了する。第2補強アセンブリ60の固定工程では、仮付けした第2補強アセンブリ60をタンク10に溶接して固定する。具体的には、第2補強アセンブリ60の取付用プレート62を前側壁部14aの外壁面に溶接するとともに、第2棒状補強部材61の先端部を対向プレート64の貫通孔64aの周囲部に全周に亘って溶接する。これにより、第2補強アセンブリ60がタンク10に固定されて、第2補強アセンブリ60の固定工程が終了する。
【0048】
<まとめ>
上述したタンク補強構造によれば、左側壁部15a及び右側壁部15b間には第1棒状補強部材51が跨って配設されており、その両端部がそれぞれ対向プレート54及び取付用プレート52を介して該各壁部15a,15bに溶接接合されている。また、前側壁部14a及び後側壁部14b間には第2棒状補強部材61が跨って配設されており、その両端部がそれぞれ取付用プレート62及び対向プレート64を介して該各壁部14a,14bに溶接接合されている。
【0049】
したがって、例えば、ショベル100の走行時の揺れ等に起因して、タンク10の前後及び左右の壁部14,15の内壁面に大きな燃料圧が作用した場合でも、各壁部14,15は、第1棒状補強部材51及び第2棒状補強部材61を介して互いの変形を抑制するように作用し合うため、タンク10の変形を抑制して高い補強効果を得ることができる。しかも、この2つの棒状補強部材51,61は略90°の角度をもって前後左右に空間的に交差しているため、タンクの補強効果を、一方向に偏ることなく前後左右の全方向において高めることができる。よって、タンク強度を従来に比べて格段に高めることができる。この結果、使用する補強部材51,61の量を極力減らしつつ、タンク補強効果を高めることができ、タンク10の補強コストを低く抑えることが可能となる。
【0050】
また、従来の補強構造のように梁状の補強部材をその長さ方向の全体に亘ってタンクの内壁面に溶接する必要がないため、補強部材51,61の溶接に必要な時間を短縮して、溶接時に補強部材51,61を介してタンク壁部13〜15に伝わる溶接熱を低減することができる。よって、タンク壁部13〜15に生じる溶接歪み及び残留応力を低減することができる。
【0051】
また、タンク10の内壁面に補強部材51,61を溶接しなくてもよいため、タンク10の内壁面に溶接かすが付着してタンク10内の洗浄度が低下するのを防止することができる。また、タンク10の内壁面に残った溶接痕が外壁面に浮き出てタンク10の外観意匠が損なわれることもない。
【0052】
また、上記実施形態では、上記第1及び第2棒状補強部材51,61の基端部にはそれぞれ、取付用プレート52,62がフランジ状に設けられており、第1及び第2棒状補強部材61はそれぞれ、その基端部に設けられた取付用プレート52,62と共にサブアセンブリ化されて第1及び第2補強アセンブリ50,60を構成している。
【0053】
これによれば、上述したように、各棒状補強部材51,61を固定用孔21,22に挿通する際に、取付用プレート52,62がタンク10の外壁面に当接して各棒状補強部材51,61の軸方向(挿通方向)の位置決め手段として機能するため、各棒状補強部材51,61の位置決め作業に要する時間を短縮して、各棒状補強部材51,61のタンク10への組み付け時間を短縮することができる。また、各補強アセンブリ50,60を丸洗い洗浄できるので、例えば各棒状補強部材51,61と取付用プレート52,62とを溶接接合した際に生じる溶接かすがタンク10内に侵入することもない。よって、タンク10内の洗浄度を可及的に高めることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、第1補強アセンブリ50を構成する一対の第1棒状補強部材51の間隔d1は、第2補強アセンブリ60を構成する一対の第2棒状補強部材61の間隔d2よりも広く設定されている。
【0055】
これによれば、タンク10内の燃料圧により受ける荷重が特に大きい左右の壁部15a,15b間の補強強度を、前後の壁部14a,14b間の補強強度よりも高めることができる。よって、強度不足によるタンク10の破損を確実に防止することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、取付用プレート52,62及び対向プレート54,64がタンク10の外壁面に重合して溶接されている。これにより、取付用プレート52,62及び対向プレート54,64が補強部材としても機能し、タンク10の前後及び左右の壁部14,15に固定用孔21,22を形成したことに起因してタンク10の強度が低下するのを防止することができる。
(変形例1)
図7は、実施形態の変形例1を示し、第1棒状補強部材51の形状を上記実施形態とは異ならせたものである。尚、以下で説明する変形例及び他の実施形態において、図5及び図6と実質的に同じ構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を適宜省略する。
【0057】
すなわち、本変形例では、第1棒状補強部材51の左右方向の中間部は、右側から左側に向かって斜め上方に緩やかに傾斜して湾曲している。右側壁部15bに形成された左固右固定用孔22bは、このように湾曲した第1棒状補強部材51でも挿通できるように上下方向に長い長孔とされている。
【0058】
本変形例によれば、前後の壁部14a,14bに比べて大きな内圧荷重を受ける左右の壁部15a,15bの変形を、湾曲した第1棒状補強部材51によって効率良く吸収することができる。よって、第1棒状補強部材51と左右の壁部15a,15bとの連結部に過度の応力集中が生じるのを回避することができる。
(変形例2)
図8は、実施形態の変形例2を示し、第1棒状補強部材51及び第2棒状補強部材61の構成を上記実施形態及び変形例1とは異ならせたものである。
【0059】
すなわち、本変形例では、上側の第1棒状補強部材51の両端部と、上側の第2棒状補強部材61の両端部とのそれぞれに、Iボルト(吊り輪部材)101を取り付けるための螺子孔70が形成されている。尚、Iボルトに代えてフック部材を取り付けるようにしてもよい。
【0060】
本変形例によれば、第1及び第2棒状補強部材61の両端部にそれぞれIボルト101を螺合して取り付けることで、ホイストクレーン等によりタンク10を合計4カ所で安定して吊り上げることができる。また、タンクの外壁面にIボルト装着用のナットを溶接したりする必要もないので、外観意匠が損なわれることもない。
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。
【0061】
すなわち、上記実施形態及び各変形例では、各棒状補強部材51,61を取付用プレート52,62及び対向プレート54,64を介してタンク壁部に溶接接合するようにしているが、これに限ったものではなく、取付用プレート52,62及び対向プレート54,64を設けずに、各棒状補強部材51,61をタンク壁部に直接溶接するようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態及び各変形例では、各棒材補強部材51,61と各取付用プレート52,62とを溶接接合するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、両者をボルト等により連結するようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態及び各変形例では、一例として燃料タンク10の補強構造について説明したが、これに限ったものではなく、この補強構造は、例えば作動油タンク7等にも適用することができる。
【0064】
また、上記実施形態及び各変形例では、各棒状補強部材51,61は、中実の棒状部材とされているが、これに限ったものではなく、中空の棒状部材であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態及び各変形例では、各棒状補強部材51,61の断面は円形状とされているが、これに限ったものではなく、例えば、三角形状や四角形状であってもよいことは言うまでもない。
【0066】
また、上記実施形態及び各変形例では、第1棒状補強部材51及び第2棒状補強部材61はそれぞれ、2つずつ設けられているが、これに限ったものではなく、例えば、1つであってもよいし、3つ以上であってもよいことは言うまでもない。また、例えば、第1棒状補強部材51の数を3つとし、第2棒状補強部材61の数を2つとする等、第1棒状補強部材51の数を第2棒状補強部材61の数よりも多くすることで、タンク前後方向に比べて高い強度が要求されるタンク左右方向の補強効果を高めることができる。
【0067】
また、上記実施形態及び各変形例では、上記燃料タンク10は矩形箱状に形成されているが、これに限ったものではなく、例えば、図9に示すように、左右方向から見て断面L字状に形成されていてもよい。
【0068】
また、上記変形例2では、上側の第1棒状補強部材51及び上側の棒状補強部材61の両端部にそれぞれ螺子孔70を形成するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、第1棒状補強部材51の基端部だけに螺子孔70を形成するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態及び変形例の任意の組合せが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、タンク補強構造に有用であり、特に、建設機械の燃料タンクの補強構造に有用である。
【符号の説明】
【0071】
10 燃料タンク
13a 上側壁部
13b 下側壁部
14a 前側壁部(第2壁部)
14b 後側壁部(第2対向壁部)
15a 左側壁部(第1対向壁部)
15b 右側壁部(第1壁部)
21 前後の固定用孔
22 左右の固定用孔
50 第1補強アセンブリ
51 第1棒状補強部材
52 取付用プレート
52a 貫通孔
54 対向プレート
54a 貫通孔
60 第2補強アセンブリ
61 第2棒状補強部材
62 取付用プレート
64 対向プレート
70 螺子孔
101 Iボルト(吊り輪部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1壁部と該第1壁部に対向する第1対向壁部と、第2壁部と該第2壁部に対向する第2対向壁部とを有するタンクの補強構造であって、
上記第1壁部及び上記第1対向壁部間に跨って配設され、両端部が該各壁部に溶接接合された第1棒状補強部材と、
上記第2壁部と上記第2対向壁部間に跨って配設され、上記第1棒状補強部材に対して空間的に交差するとともに両端部が該各壁部に溶接接合された第2棒状補強部材と、を備えていることを特徴とするタンク補強構造。
【請求項2】
請求項1記載のタンク補強構造において、
上記第1及び第2棒状補強部材の基端部にはそれぞれ、取付用プレートがフランジ状に設けられており、
上記第1及び第2棒状補強部材はそれぞれ、その基端部に設けられた取付用プレートと共にサブアセンブリ化されて第1及び第2補強アセンブリを構成しており、
上記第1壁部及び第1対向壁部には、第1補強アセンブリをタンクに固定するための固定用孔が形成されており、
上記第2壁部及び第2対向壁部には、第2補強アセンブリをタンクに固定するための固定用孔が形成されており、
上記第1及び第2補強アセンブリはそれぞれ、上記第1及び第2棒状補強部材をそれぞれ上記第1及び第2壁部の固定用孔に対してタンク外側から挿通して、該第1及び第2棒状補強部材の基端部に設けられた取付用プレートをそれぞれ、該第1及び第2壁部の外壁面に溶接接合するとともに、該第1及び第2棒状補強部材の先端部をそれぞれ、上記第1及び第2対向壁部の固定用孔に挿通した状態で該第1及び第2対向壁部に溶接接合することで、上記タンクに固定されていることを特徴とするタンク補強構造。
【請求項3】
請求項2記載のタンク補強構造において、
上記第1及び第2対向壁部の外壁面における固定用孔が形成された部分にはそれぞれ、上記各取付用プレートに対向する対向プレートが溶接接合され、
上記各対向プレートにおける上記固定用孔に対応する箇所には貫通孔が形成され、
上記第1及び第2棒状補強部材の先端部はそれぞれ、上記第1及び第2補強アセンブリをタンクに固定した状態で、上記第1及び第2対向壁部に溶接接合された対向プレートの貫通孔に挿通されて該対向プレートに溶接接合されていることを特徴とするタンク補強構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載のタンク補強構造において、
上記第1壁部の内壁面の面積は上記第2壁部の内壁面の面積よりも大きく、
上記第1棒状補強部材は、2つ設けられていてそれぞれが互いに平行に延びるように配設されており、
上記第2棒状補強部材も同様に、2つ設けられていてそれぞが互いに平行に延びるように配設されており、
上記2つの第1棒状補強部材の間隔は、上記2つの第2棒状補強部材の間隔よりも広いことを特徴とするタンク補強構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のタンク補強構造において、
上記第1棒状補強部材の端部には、上記吊り輪部材又はフック部材を取り付けるための螺子孔が形成されていることを特徴とするタンク補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−75607(P2013−75607A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216498(P2011−216498)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】