説明

タンデム空気圧ブレーキブースター

【課題】 ブースターのスラストロッド(4)が最大ストローク位置でブロックしないようにする。
【解決手段】 ブロックは、第1プレートスカート(12)がタンデムブースターのシール(22)に密封状態で付着した後に起る。このシールは、真空を第1前チャンバ(5)内に閉じ込めてしまう。これが起らないようにするため、空気圧ピストン(3)に押し付けられるシールの第1リップ(23)を狭間を備えた城壁の形体に形成する。凸壁状部分により、プレートスカート(12)がシール(22)全体に亘って密封状態で付着することがないようにする。このように付着しないため、空気が第1前チャンバ(5)への漏れ、休止位置に戻すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輛用タンデム空気圧ブレーキブースターに関する。本発明の目的は、ブースターのスラストロッドの最大ストローク後にブレーキペダルを休止位置に戻すことができるようにすることである。本発明は、ブースターの第1前チャンバ内に真空を保持しないようにする。本発明は、更に詳細には、自動車の分野に関し、この他の分野に適用してもよい。
【背景技術】
【0002】
車輛用タンデム空気圧ブレーキブースターは、車輛のブレーキペダルとマスターシリンダとの間に配置される。ブースターは、ドライバーの足がブレーキペダルに及ぼす圧力を、空気圧で増幅した圧力に変換できる。空気圧で増幅したこの圧力は、車輛を制動するように設計されている。従って、ブースターにより、ドライバーがブレーキペダルを押すときにドライバーが及ぼす力を大幅に小さくできる。
【0003】
このようなブースターは、ブースターシェル内に、第2前チャンバ及び第2後チャンバと直列に取り付けられた前チャンバ及び第1後チャンバを備えている。第1前チャンバ及び第2前チャンバは、夫々、第1後チャンバ及び第2後チャンバよりもマスターブレーキシリンダに近い。第2前チャンバ及び第2後チャンバは、第1前チャンバ及び第1後チャンバよりもマスターシリンダに近い。
【0004】
これらのチャンバの各々は、可変の容積を含む。第1及び第2の前チャンバは、夫々、第1及び第2の後チャンバから、第1及び第2のプレートスカートによって密封状態で分離されている。各プレートスカートは、剛性プレートと関連した、シールされた可撓性の膜によって、形成されている。プレートスカートの膜は、剛性プレートに載っている。剛性プレートは、マスターシリンダを作動するスラストロッドを形成する空気圧ピストンに押し付けられている。膜は、一方の側部が、空気圧ピストンに取り付けられており、他方の側部が、空気圧ピストンと向き合ったブースターシェルの壁に取り付けられている。
【0005】
第1前チャンバは、ブースターに固定された剛性隔壁によって、第2後チャンバから密封状態で分離されている。固定隔壁は、空気圧ピストンと向き合ったシェルの壁に固定的に取り付けられている。
【0006】
第1及び第2の前チャンバは、一つ又はそれ以上の連通ダクトによって互いに連通している。このような連通ダクトは、空気圧ピストンの中央中空部分内に開口又は開放している。空気圧ピストンに設けられたダクトの数は、空気圧ピストンの構造を弱めることなく、第1前チャンバと空気圧ピストンの中央中空部分との間を良好に連通できるのに十分でなければならない。ピストンの中央中空部分と第1前チャンバとの間のこのような連通ダクトの一端は、第1プレートスカートの支承面に近い位置で、第1前チャンバに開口又は開放している。これらのダクトの一端は、空気圧ピストンの中央中空部分内に開口又は開放している。マスターシリンダと向き合った空気圧ピストンの中央中空部分は開口又は開放しており、第2前チャンバと連通している。
【0007】
前チャンバの一方、通常は第2前チャンバが、真空源に連結されている。この真空源は、例えば、ブースターのシェルに固定された真空ポンプであってもよい。この真空ポンプは、次いで前チャンバと連通する。真空ポンプは、二つの前チャンバ間の連通ダクトにより、これらの前チャンバ内に真空を維持する。
【0008】
ブースターは、更に、連通バルブを含む。このバルブは、ブースターでの空気圧ピストンの位置に応じて、前チャンバと後チャンバとの間の連通を遮断し、後チャンバと大気との間の連通を遮断する。
【0009】
休止位置では、即ち空気圧ピストンがブースターによって前方に移動されていない場合には、前チャンバは後チャンバと自由に連通している。次いで、これらのチャンバを大気から隔離する。次いで、真空ポンプによって加えられた真空を前チャンバ内及び後チャンバ内に確立する。
【0010】
制動時に、ブースター内での空気圧ピストンの第1移動相中、連通バルブによって、前チャンバと後チャンバとの間の連通を遮断する。そのとき、前チャンバは、後チャンバから隔離される。
【0011】
ピストンの第2移動相中、後チャンバを大気と連通した状態に置く。後チャンバが大気と連通したとき、前チャンバは後チャンバから隔離されたままであり、未だ真空状態にある。
【0012】
後チャンバが大気と連通することにより、後チャンバ内の圧力が大気圧と同じレベルまで上昇する。この場合、前チャンバと後チャンバとの間に圧力差がある。この圧力差により、前チャンバを後チャンバから分離するプレートスカートを、前方に移動し、プレートスカートが載った空気圧ピストンを移動する。
【0013】
通常は、このようなブースターの内側には戻しばねが配置されている。この戻しばねの機能は、制動後に空気圧ピストンを休止位置に戻すことである。このようなばねは、一方の側部が、マスターシリンダに近いブースターの壁を押圧し、他方の側部が空気圧ピストンを押圧する。
【0014】
ブレーキペダルがもはや押されていないと、戻しばねが空気圧ピストンをその休止位置に押し戻す。次いで、後チャンバは、もはや大気と連通していない。後チャンバと前チャンバとの間の連通を再度確立する。前チャンバ内の真空は、後チャンバ内に拡がる。
【0015】
ブースター内での空気圧ピストンの移動を妨げることなく、第1前チャンバを第2後チャンバから分離する剛性隔壁をシールするため、固定された剛性隔壁の内開口部にシールを配置する。このシールは、空気圧ピストンを密封状態に完全に取り囲んでいる。空気圧ピストンは、その移動中、このシールの内側を密封状態で摺動する。シールによる密封により、後チャンバ内の圧力が上昇した場合に前チャンバ内の真空が消失しないようにする。
【0016】
このようなシールは、第1リップを含む。この第1リップは、空気圧ピストンの移動軸線と平行に延びる。この第1リップは、制動中の空気圧ピストンの移動方向とは逆方向に延びる。この第1リップは、空気圧ピストンの壁に密封状態で押し付けられる。この第1リップは、第1前チャンバに収容されている。この第1リップは、第1前チャンバと第2後チャンバとの間にシールを提供する。
【0017】
制動中、スラストロッドによって作動されるマスターシリンダは、ブースターの空気圧ピストンの移動ストロークよりも小さい最大ストロークで移動しなければならない。このようにして、スラストロッドは、第1チャンバのプレートスカートが、固定された剛性隔壁と接触する前に、マスターシリンダ内のストッパーに当たる。従って、マスターシリンダの最大ストロークは、スラストロッドの最大ストロークよりも小さくなければならない。特に、製造許容差や、圧力によるブースターの部品の隙間の変形等の理由により、マスターシリンダとブースターの空気圧ピストンのストローク長が非常に近い場合には、第1プレートスカートが、固定された剛性隔壁に固定されたシールと接触してしまう。
【0018】
第1プレートスカートとシールとの間のこの接触は、空気圧ピストンの壁に押し付けられた第1リップの縁部で生じる。必要であれば、この接触は、第1プレートスカートに面する第2リップの壁で生じる。この接触により、第1プレートスカートはシールに付着してしまう。このような付着が生じた場合には、二つの前チャンバ間はもはや連通しない。詳細には、プレートスカートに付着したシールは、それ自体が、第1前チャンバと、空気圧ピストンに設けられた前チャンバ間の連通ダクトと、の間に密封態様で入り込んでしまう。
【0019】
第1前チャンバ内の真空は、次いで、第1前チャンバ内に維持される。次いで吸引効果が発生し、これにより、空気圧ピストンに作用する圧力が緩められたときに、第1プレートスカートがシールから分離することが阻止される。第1プレートスカートは空気圧ピストンに固定され、ブースター内で空気圧ピストンの休止位置に戻ることができない。このため、ブレーキペダルは、もはや元の位置に戻ることができなくなってしまう。車輛は、動かないままであるか或いは、最も良い場合でも、ゆっくりと解放する。
【0020】
この問題点を解決するため、更に強力な戻しばねを使用してもよい。しかしながらこのようなばねは、真空にもかかわらず、第1リップをプレートスカートのシールから解放するのに十分な力を持っており、チャンバ間の圧力差によるプレートスカートの推進力の有効性を低下してしまう。その場合、プレートスカートは、もはや、空気圧ピストンを、ブースターがその役割を正しく果たすことができる上で十分には移動しない。
【0021】
考えられる別の解決策は、固定隔壁に第1プレートスカートと向き合って固定されたシールの第2リップの壁に突出部を加えることを含む。これらの突出部は、第1前チャンバから真空を解放するための循環空間を形成できるようにするために設けられる。この空間により、第1前チャンバ内に真空を持続できないものと考えられている。しかしながら、このような解決策は、経験によれば、有効でないことがわかっている。詳細には、圧力によるシール及び第1プレートスカートの変形によって、真空が第1前チャンバ内に捕捉されることを防ぐことはできない。この解決策は、前チャンバ間に十分な連通を提供しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、ブースターのスラストロッドの最大ストローク後にブレーキペダルを休止位置に戻すことができるようにすることである。本発明は、ブースターの第1前チャンバ内に真空を保持しないようにする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この問題点を解決するため、本発明は、シールの第1リップの縁部に、突出部を、第1プレートスカートと向き合って配置する。好ましくは、これらの縁部に設けられたこれらの突出部を、シールの第2リップに配置した突出部と関連させる。この場合、シールの第1リップは、狭間を備えた城壁のような形体のリップの形状を有する。
【0024】
第1前チャンバを第2後チャンバから分離する固定隔壁に向かって第1プレートスカートが移動するとき、第1プレートスカートがシールの第1リップの狭間の凸壁部(メルロン部)の頂部に押し付けられる。
【0025】
この場合、シールの第1リップの凸壁部間の間隔に連通漏洩部が形成される。プレートスカートは、この間隔でシールに密封態様で付着できない。同様に、この連通漏洩部は、シールの第2リップの突出部間にも延ばすことができる。この場合、真空は、これらの連通漏洩部によって解放され、もはや第1前チャンバ内に閉じ込められたままにならない。この真空によって発生される吸引効果はもはや存在せず、第1プレートスカート及び空気圧ピストンは休止位置に戻ることができる。
【0026】
従って、本発明の主題は、車輛用タンデム空気圧ブレーキブースターであって、
シェルと、
シェル内で摺動する空気圧ピストンと、
二対のチャンバとを備え、各対は、後チャンバ及び前チャンバを含み、前チャンバは後チャンバよりもブレーキマスターシリンダの近くに配置されており、
車輛用タンデム空気圧ブレーキブースターは、また、
第1前チャンバを第2後チャンバから分離する、ブースターの固定隔壁と、
第1前チャンバを第1後チャンバから離間する第1プレートスカートと、
第2前チャンバを第2後チャンバから離間する第2プレートスカートとを備え、これらのプレートスカートは移動可能又は移動自在であり、シールされており、空気圧ピストンを移動し、
車輛用タンデム空気圧ブレーキブースターは、また、
固定隔壁に固定されたシールであって、空気圧ピストンがこのシール内で密封態様で摺動する、シールを備え、
前記シールは、空気圧ピストンに密封態様で押し付けられる、空気圧ピストンの移動軸線と平行に延びる第1リップを備えており、前記第1リップは、狭間を備えた城壁のような形体を備えている。
【0027】
本発明は、以下の説明を読み、添付図面を検討することにより、更によく理解されるであろう。添付図面は単なる例示であり、いかなる意味でも本発明を限定しようとするもののではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、休止状態のタンデムブースターの一部の断面図である。好ましくは、ブースター1及びこれを構成する部品の多くは円形形状を有する。ブースター1は外シェル2を含む。ブースター1は空気圧ピストン3を含む。空気圧ピストン3は、マスターシリンダに作用する圧力を発生するために設けられたスラストロッド4を含む。
【0029】
ブースター1は、第1前チャンバ5及び第1後チャンバ6を含む。ブースターは、更に、第2前チャンバ7及び第2後チャンバ8を含む。
第1前チャンバ5は、空気圧ピストン3に形成された連通ダクト9を介して、第2前チャンバ7と連通している。この連通ダクト9は、一端35が第1前チャンバ5に開口又は開放しており、一端36がピストン3の中空中央部分37に開口又は開放している。中空中央部分37は、第2前チャンバ7に開口又は開放している。
【0030】
第1後チャンバ6は、連通ダクト10を介して第2後チャンバ8と常に連通している。この連通ダクト10は、例えば、シェル2の壁に形成されている。このダクト10は、シェル2を横切って、通路38を介して第1後チャンバ6に開口又は開放している。このダクト10は、シェル2を横切って、通路39を介して第2後チャンバ8に開口又は開放している。
【0031】
ブースターは、更に、第1プレートスカート12と、第2プレートスカート13と、ブースター1の固定隔壁14とを含む。
第1プレートスカート12は、剛性プレート15と可撓性スカート16とを含む。剛性プレート15及び可撓性スカート16は、ピストン3に固定的に取り付けられている。可撓性スカート16は、更に、ピストン3とは反対側がシェル2の壁に取り付けられている。第1プレートスカート12は、第1前チャンバ5を第1後チャンバ6から密封をなして分離する。
【0032】
第2プレートスカート13は、剛性プレート17と可撓性スカート18とを含む。剛性プレート17及び可撓性スカート18は、空気圧ピストン3に固定的に取り付けられている。可撓性スカート18は、更に、ピストン3とは反対側がシェル2の壁に取り付けられている。第2プレートスカート13は、第2前チャンバ7を第2後チャンバ8から密封をなして分離する。
【0033】
これらのプレートスカート12及び13は移動自在又は移動可能であり、ブースター1にシールされている。プレートスカート12及び13は、それらの移動中、特にピストン3の肩部を押すことによって空気圧ピストン3を移動する。
【0034】
固定隔壁14は、ブースター1のシェル2に固定状態に取り付けられている。この固定隔壁14は、第1前チャンバ5を第2後チャンバ8から密封をなして分離する。固定隔壁14は剛性である。空気圧ピストン3は、固定隔壁14で形成された空間の内部で摺動する。
【0035】
第1前チャンバ5は、第1プレートスカート12と、ピストン3と、隔壁14と、ブースター1のシェル2とによって境界が定められる。第2前チャンバ7は、ピストン3と、ブースター1のシェル2と、第2プレートスカート13によって境界が定められる。第1後チャンバ6は、第1プレートスカート12と、ピストン3と、ブースター1のシェル2とによって境界が定められる。第2後チャンバ8は、ピストン3と、隔壁14と、シェル2と、第2プレートスカート13によって境界が定められる。ブースター1を形成する全てのチャンバは、容積が可変である。
【0036】
第1前チャンバ5及び第2前チャンバ7は、夫々、第1後チャンバ6及び第2後チャンバ8よりもマスターシリンダに近い。更に、第2前チャンバ7及び第2後チャンバ8は、夫々、第1前チャンバ5及び第1後チャンバ6よりもマスターシリンダに近い。
【0037】
休止状態では、第1前チャンバ5及び第2前チャンバ7は、第1後チャンバ6及び第2後チャンバ8と連通している。この連通は、空気圧ピストン3に配置した連通バルブ(ここには図示せず)の存在により提供される。この連通バルブは、ブースター1でのピストン3の移動中、前チャンバと後チャンバとの間の連通を遮断したり許可したりする。この連通バルブは、更に、ブースター1でのピストン3の移動中、後チャンバと大気との間の連通を遮断したり許可したりする。
【0038】
ブースター1には戻しばね19が取り付けられている。この戻しばね19は、一方の端部がピストン3に押し付けられており、他方の端部が、ブースター1の第2前チャンバ7の境界を定めるシェル2の壁20に押し付けられている。この戻しばね19の機能は、ピストン3が前方に移動した後、ピストン3を休止位置に戻すことである。
【0039】
真空ポンプ21が、第2前チャンバ7に連結されている。この真空ポンプ21は、第2前チャンバ7に真空を発生する。この真空は、第1前チャンバ5と第2前チャンバ7との間の連通ダクト9を介して、第1前チャンバ5に作用する。この真空ポンプ21は、車輛のエンジンの燃料供給回路への連結部から構成してもよい。
【0040】
休止状態では、連通バルブによる前チャンバと後チャンバとの間の連通により、真空ポンプ21が発生した真空が、後チャンバに作用する。
固定隔壁14にはシール22が固定されている。このシール22は、ブースター1内でのピストン3の移動を妨げることなく、第1前チャンバ5と第2後チャンバ8との間で固定隔壁14をシールする。このシール22はピストン3を取り囲んでいる。ピストン3は、このシール22の内側を密封状態で摺動する。
【0041】
図2は、周知シールを備えた、ピストン3の最大ストロークと対応する状態の、ブースター1の一部の断面を示す。最大ストローク中、ピストン3の本体が前チャンバ間の連通を遮断する。前チャンバ間の連通の遮断は、第1プレートスカート12が移動して固定隔壁14に近づく方向に移動することによって生じる。ピストン3の最大ストローク時のマスターシリンダ及び空気圧ピストン3の最大ストロークが同じである場合には、第1プレートスカート12がシール22に付着してしまう。
【0042】
このシール22は、ピストン3に密封状態で押し付けられる第1リップ23を含む。この密封圧力により、第1前チャンバ5と第2後チャンバ8との間が、シールされる。
この第1リップ23は、ブースターでのその前方への移動の際の、ピストン3の移動軸線と平行に延びている。この第1リップ23は、制動中のピストン3の移動方向と逆方向に延びている。この第1リップ23は、第1前チャンバ5内に延びている。
【0043】
通常は、シール22は、第1プレートスカート12と向き合った第2リップ24を含む。この第2リップ24は、第1前チャンバ5内でのピストン3の移動軸線に対して垂直な平面上を延びている。シール22には、第1リップ23と第2リップ24との間に溝25が設けられている。シール22を固定隔壁14に固定するため、第2溝26が設けられていてもよい。固定隔壁14は、この第2溝26に嵌まる。
【0044】
第1プレートスカート12とシール22との間の接触中、剛性プレート15が、第1リップ23に押し付けられる。この押し付け力により、剛性プレート15がシール22の第1リップ23に及ぼす圧力によってシールされるようになる。従って、第1前チャンバ5内の真空は遮断され、この第1前チャンバ5内に閉じ込められる。ストロークが最大になるのと対応して、第1リップ23がダクト9のオリフィス35と一直線上に配置されるため、この遮断は益々強くなる。この遮断により吸引効果を生じ、これにより、第1プレートスカート12がその位置で動かないようにし、即ち、ブレーキペダルに作用する圧力を解放したとき、シール22に付着してしまう。空気圧ピストン3は、プレートスカート12に固定状態に取り付けられており、ドライバーがブレーキペダルに及ぼす圧力を緩めたとき、ピストン3は休止位置に戻ることができない。
【0045】
図3は、本発明によるタンデムブースター1用のシール22の一例の一部の概略斜視図である。本発明によれば、このようなシール22の第1リップ23には、狭間を備えた城壁のように、狭間の凸壁部又は銃眼間の凸壁状部分(メルロン部)31が設けられている。
【0046】
第1プレート12がシール22に付着するとき、第1プレートスカート12は、シール22の第1リップ23に押し付けられる。
本発明によれば、第1プレートスカート12は、第1リップ23の凸壁状部分31の頂部に押し付けられる。これらの凸壁状部分31は、第1リップ23の二つの凸壁状部分31を離間する間隔32で、第1プレートスカート12がシール22に密封態様で付着することを阻止する。その場合、第1前チャンバ5と、2つの前チャンバ5及び7間の連通ダクト9との間に、連通漏洩部33が存在する。この連通漏洩部33は、二つの凸壁状部分31と第1プレートスカート12とを分ける間隔32間を通過する。
【0047】
この場合、第1前チャンバ5内の真空は、もはやシール22によって閉じ込められない。この真空は、第1前チャンバ5から連通漏洩部33を介して解放できる。真空がこのように解放されることにより、プレートスカート12及び13と、ピストン3は、もはや、最大ストローク位置でブロックされず、通常通りに休止位置に戻ることができる。
【0048】
第1プレートスカート12がシール22と接触している最中に、第1前チャンバ5とピストン3に設けられた連通ダクト9との間を効果的に連通するため、二つの凸壁状部分31間の間隔32を、前チャンバ間の連通ダクト9の開口部35と向き合うように配置しなければならない。凸壁状部分31は、このような出口35に押し付けられない。第1リップ23の一部は、連通ダクト9を塞がない。
【0049】
この目的のため、リップ23には、幾つかの出口35と対応して幾つかの凸壁状部分が設けられている。必要な場合には、漏れが常に確実に起るようにするため、凸壁状部分の分配の規則性は、オリフィスの分配の規則性と異なる。実際には、凸壁状部分の頂部31の長さは、間隔32の長さよりも大きい。凸壁状部分の形状は、真っ直ぐな縁部状の形状である。正弦波状の輪郭を与えることもできる。
【0050】
更に極端な場合には、第1プレートスカート12が、シール22の第2リップ24に密封状態で付着することがある。このように付着したシールは、同様に、真空を第1前チャンバ5に閉じ込め、休止位置への空気圧ピストン4の戻りを妨げてしまう。こうした場合には、第1前チャンバ5と連通ダクト9との間に有効な連通漏洩部を形成するため、本発明によれば、第1プレートスカート12に面する第2リップ24の壁28に突出部27を設けることができる。このような突出部27により、第1前チャンバ5と、凸壁状部分31間の間隔32によって形成される連通漏洩部33との間に、連通漏洩部30が形成される。これらの連通漏洩部30及び33を組み合わせることにより、上記のような極端な場合でも、真空が第1前チャンバ5内に閉じ込められないようにすることができる。
【0051】
これらの突出部27は、隆起状部27の形態をとってもよい。これらの隆起状部は、リップ24が形成する頂部平面に対して持ち上がっている。
連通漏洩部30と33との間の連通を更に容易にするため、二つの凸壁状部分31間の間隔32のうちの一つを、二つの突出部27間の間隔29と向き合うように配置してもよい。
【0052】
二つの凸壁状部分31間の間隔32を通過する連通が、二つの突出部27を離間する間隔29を通る連通よりも容易であるため、突出部27の数は、凸壁状部分31の数よりも多くてもよい。従って、突出部27の数は、好ましくは、凸壁状部分31の数の二倍であってもよい。
【0053】
凸壁状部分31の数が突出部27の数よりも少ないため、凸壁状部分31を、二つの突出部27間の間隔29と向き合うように配置できる。
凸壁状部分31と同様に、及び同じ理由により、突出部27を、第2リップ24の壁28に一定の間隔をあけて配置できる。
【0054】
凸壁状部分31を離間する間隔32の円弧長さは、二つの突出部27を離間する間隔29の円弧長さと等しい。従って、凸壁状部分31が形成する円弧長さ34は、二つの並んだ突出部27の両端を離間する長さ40と等しい。
【0055】
本発明によれば、凸壁状部分31は、突出部27よりも前に第1プレートスカート12と接触する。この特徴により、第2リップ24と第1プレートスカート12との間が密封状態で付着することが起らないようにするのを補助する。このような場合には、凸壁状部分31は、第2プレートスカート12からの圧力を支持すると同時に、突出部27が過大な圧力を支持することがないようにする。この目的のため、凸壁状部分31は、第1プレートスカート12の方向に突出部27よりも高いレベルまで延びている。
【0056】
最後に、このようなシール22の密封品質を向上するため、シール22はゴム製である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、休止状態のタンデムブースターの一部の断面図である。
【図2】図2は、周知のシールを装着したタンデムブースターの一部の、空気圧ピストンの最大ストローク後の断面図である。
【図3】図3は、本発明によるタンデムブースターの固定隔壁に固定したシールの一部の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ブースター
2 外シェル
3 空気圧ピストン
4 スラストロッド
5 第1前チャンバ
6 第1後チャンバ
7 第2前チャンバ
8 第2後チャンバ
9、10 連通ダクト
12 第1プレートスカート
13 第2プレートスカート
14 固定隔壁
15 剛性プレート
16 可撓性スカート
17 剛性プレート
18 可撓性スカート
19 戻しばね
20 壁
21 真空ポンプ
37 中空中央部分
38、39 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輛用タンデム空気圧ブレーキブースター(1)であって、
シェル(2)と、
前記シェル内で摺動する空気圧ピストン(3)と、
二対のチャンバであって、各対のチャンバは後チャンバ(5、7)と前チャンバ(6、8)とを備え、前記前チャンバは前記後チャンバよりもブレーキマスターシリンダの近くに配置された、二対のチャンバと、
第1前チャンバ(5)を第2後チャンバ(8)から分離する、前記ブースターの固定隔壁(14)と、
前記第1前チャンバ(5)を前記第1後チャンバ(6)から離間する第1プレートスカート(12)と、前記第2前チャンバ(7)を前記第2後チャンバ(8)から離間する第2プレートスカート(13)とであって、これらのプレートスカートは、移動可能であり、シールされており、前記空気圧ピストン(3)を移動する、第1及び第2のプレートスカートと、
前記固定隔壁に固定されたシール(22)であって、前記空気圧ピストン(3)がこのシール(22)内で密封状態で摺動する、シール(22)と、を備え、
前記シールは、前記空気圧ピストン(3)に密封状態で押し付けられる、前記空気圧ピストンの移動軸線と平行に延びる第1リップ(23)を備え、
前記第1リップ(23)は、狭間を備えた城壁のような形体を備えている、ことを特徴とするブースター。
【請求項2】
請求項1に記載のブースターにおいて、
前記狭間を備えた城壁のような形体は、間隔によって離間された凸壁状部分を含み、二つの凸壁状部分(31)間の間隔(32)は、第1前チャンバ(5)と第2前チャンバ(7)との間に連通部(9)が形成されるように、前記空気圧ピストンの本体のダクト(9)の出口(35)と向き合って配置されている、ことを特徴とするブースター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブースターにおいて、
前記第1リップ(23)の前記凸壁状部分(31)は、一定の間隔をあけて設けられている、ことを特徴とするブースター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のブースターにおいて、
前記シールは、前記第1前チャンバ(5)内で、前記空気圧ピストン(3)の移動軸線に対して垂直方向に延びる第2リップ(24)を有し、この第2リップは、前記第1プレートスカート(12)と向き合ったその壁(28)に突出部(27)を有し、二つの凸壁状部分(31)間の間隔(32)は、二つの突出部(27)間の間隔(30)と向き合って配置されている、ことを特徴とするブースター。
【請求項5】
請求項4に記載のブースターにおいて、
前記突出部(27)の数は、前記凸壁状部分(31)の数の2倍である、ことを特徴とするブースター。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のブースターにおいて、
一つの凸壁状部分が、二つの突出部間の間隔と向き合って配置されている、ことを特徴とするブースター。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載のブースターにおいて、
前記第2リップ(24)の前記突出部(27)は、一定の間隔をあけて設けられている、ことを特徴とするブースター。
【請求項8】
請求項4乃至7のうちのいずれか一項に記載のブースターにおいて、
凸壁状部分(31)が形成する円弧(32)の長さは、二つの並んだ突出部(27)の両端を離間する長さと等しい、ことを特徴とするブースター。
【請求項9】
請求項4乃至8のうちのいずれか一項に記載のブースターにおいて、
前記凸壁状部分は、第1プレートスカートの方向で、前記突出部よりも高いレベルまで延びている、ことを特徴とするブースター。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載のブースターにおいて、
前記シール(22)はゴム製である、ことを特徴とするブースター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−114842(P2008−114842A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−285691(P2007−285691)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】