説明

タンパク強化冷凍デザート

本発明は、栄養バランスのとれた冷凍デザート、詳細には、高タンパク含量を有する低温殺菌冷凍デザート、及びそれらを製造するための方法に関する。ホエータンパクミセル、それらの濃縮液、及び/又はそれらの粉末は、冷凍デザートの製造において使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、冷凍デザート、詳細には、高タンパク含量を有する低温殺菌冷凍デザート、及びそれらを製造するための方法に関する。本発明はまた、冷凍デザートの製造におけるホエータンパクミセル、それらの濃縮液、及び/又はそれらの粉末の使用に関する。
[背景]
【0002】
冷凍ソルベ、特に脂肪含有アイスクリームの栄養価を改良しようとする試みが多数行われてきた。
【0003】
健康によい冷凍菓子を消費者に提供することを目的として、多数の異なる解決策が、今日まで示唆されてきた。こうしたものとして、脂肪低減冷凍菓子の提供、従来の冷凍菓子中に存在する炭水化物量の低減、添加剤の存在の低減などが挙げられる。
【0004】
例えば、米国特許第5308628号明細書は、増粘剤を含まないヨーグルト系冷凍乳製品を調製するための方法に関する。
【0005】
低脂肪アイスクリームは、数十年間市場に出ている。これらのレシピは、一般に、炭水化物含量がより高く、人工甘味料を利用し、又はタンパク含量がより高い。高タンパク冷凍食品は、例えば、米国特許出願公開第2006/0008557号明細書に開示されている。同様に、タンパク系マクロコロイドを含む無脂肪又は低脂肪冷凍デザートは、米国特許第4855156号明細書に開示されている。
【0006】
米国特許第4853246号明細書には、凍結でき、ラクトース及び脂肪含量が低い乳製品が記載されている。
【0007】
国際公開第01/64065号パンフレットは、低カロリーであり、多量のタンパクを含むので、理想的にダイエット向けにふさわしい冷凍菓子組成物をさらに提供する。
【0008】
しかし、しばしば、これらの解決策が、栄養的にバランスのとれた冷凍菓子をもたらさないのは、タンパク、炭水化物、又は脂肪のうちの1つが、適量存在しないか、又は、過剰量存在するからである。実際、現在の解決策は、1つの栄養分(例えば、脂肪)の欠乏を過剰の他のもの(例えば、炭水化物)によって補償する場合が多い。
【0009】
栄養バランスが改良された菓子を提供しようとする試みでは、欧州特許第1676486号明細書は、全エネルギー含量の55〜75%の範囲の炭水化物、全エネルギー含量の10〜15%の範囲のタンパク、及び全エネルギー含量の15〜40%の範囲の脂肪の使用を教示し、全エネルギー含量の15%未満が飽和脂肪酸によって供給される。しかし、存在するタンパクの量が依然として非常に少なく、炭水化物の量が、非常に多い。
【0010】
アイスクリームのタンパク含量は、多様な市販の多様な富タンパク乳成分を選択することによって向上させ得る。しかし、この解決策には、その限界があり、冷凍菓子で使用されるタンパク量を増加させると、アイスクリームミックスを熱加工する際に、多数の問題が随伴される場合が多い。例えば、高タンパク含量は、最終の冷凍菓子製品の望ましくない組織及び安定性の低下をもたらす粘度上昇、不安定化、及びゲル化を誘起する場合がある。
【0011】
実際に、タンパク、詳細にはホエータンパクが、脂肪に対する部分的な代替品として、及び食品用途の乳化剤としても益々使用されつつある。
【0012】
米国特許第6767575B1号明細書には、ホエータンパク凝集化製品の調製が開示され、そこでは、ホエータンパクは、酸性化及び加熱によって変性されている。こうして得られたタンパク凝集体は、食品用途で使用される。
【0013】
独国特許第1079604号明細書には、チーズ製造の改良が記載され、そこでは、その後原料乳に添加される不溶性ホエータンパクを得る目的で、ホエータンパクは、最適pH値で熱処理を受ける。
【0014】
国際公開第93/07761号パンフレットは、脂肪代替物として使用し得る乾燥微粒子化タンパク製品の提供に関する。
【0015】
米国特許第5750183号明細書には、脂肪を含有しない脂肪代替物として有用であるタンパク系微粒子を製造するための方法が開示されている。
【0016】
欧州特許第0412590号明細書ではまた、アイスクリームなどの食品組成物における脂肪置換体として変性ホエータンパクが使用されている。
【0017】
国際公開第91/17665号パンフレットにはまた、タンパク系脂肪代替物が開示され、そこでは、タンパクは、水分散性の微粒子化変性ホエータンパクの形態で存在する。
【0018】
米国特許第4107334号明細書は、ホエータンパクの熱変性が、望ましい特性を備えるアイスクリームを提供するには不十分であることをさらに示唆し、アイスクリーム中に組込む前に、タンパク分解によって変性タンパクを改変することをさらに示唆する。
【0019】
しかし、概括的には球形タンパク、詳細にはホエータンパクを含有する製品を製造する際に遭遇する問題の1つは、それらの加工性における制限である。実際、加熱される場合、又は酸性若しくはアルカリ性環境にさらされる場合、又は塩の存在下で、タンパク分子は、それらの自然の構造を失い、例えば、ゲルなどの多様なランダム構造に再組み立てされる傾向がある。
【0020】
ホエータンパクのゲル化水性組成物の調製は、欧州特許第1281322号明細書の主題である。
【0021】
Elofssonらは、International Dairy Journal、1997、p.601〜608で、ホエータンパク濃縮液の低温ゲル化を記載している。
【0022】
同様に、Kilaraらは、Journal of Agriculture and Food Chemistry、1998、p.1830〜1835で、pHがホエータンパクの凝集及びそのゲル化の及ぼす効果を記載している。
【0023】
このゲル効果は、加工性(例えば、タンパク含有製品の製造で使用される機械の詰まり)の面だけでなく、冷凍デザート用途に対して望ましくない恐れがある、こうして得られる組織の面でも制約事項を提供する。
【0024】
したがって、タンパクの使用を広げるためには、タンパクの変性を制御することが望ましい。
【0025】
International Dairy Federation、1998、189〜196で報告された、Proceedings of the Second International Whey Conference、Chicago、October 1997では、Britten Mは、ホエータンパクの機能性を改良するための熱処理を議論している。ホエータンパク微粒子分散液を95℃で製造するための方法が記載されている。
【0026】
Erdmanは、Journal of American College of Nutrition、1990、p.398〜409で、高せん断及び高熱を使用しても、微粒子化タンパクの性質は影響されないことを記載している。
【0027】
欧州特許第0603981号明細書にはまた、タンパクを含有する熱安定性の水中油エマルジョンが記載されている。
【0028】
米国特許第5882705号明細書で、Satoらは、加水分解されたホエータンパク溶液を熱処理することによってミセル状ホエータンパクを得た。ミセル状ホエータンパクは、不規則形状であることを特徴とする。
【0029】
ホエータンパクを使用することによって遭遇するさらなる問題は、最終製品の味覚プロフィルに対するそれらの影響であり、例えば、それらは、渋み感覚を残す恐れがある。
【0030】
したがって、本発明の目的は、例えば、冷凍デザートの栄養プロフィル及び/又はタンパク含有冷凍デザートの感覚プロフィルの改良などの、消費者に対する冷凍デザートの効果を改良するための技法を提供することである。
[発明の概要]
【0031】
したがって、本目的は、独立クレームの特徴によって実現される。従属クレームは、本発明の中心概念をさらに発展させる。
【0032】
本目的を実現するために、本発明の第1の態様によれば、6%を超える、好ましくは、8%を超える、最も好ましくは、10%を超えるタンパク含量、及び45%基本的に中性のpH値を有し、脂肪カロリー値が45%未満である低温殺菌冷凍デザートが提供される。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも8重量%のタンパクと、15重量%〜28重量%の炭水化物と、3重量%〜7重量%の脂肪とを含む低温殺菌冷凍アイスクリームを提供する。
【0034】
本発明は、添付の図に示される一部の好ましい実施形態を参照して、以降さらに説明される。
【0035】
[発明の詳細な説明]
一態様における本発明は、ホエータンパクミセルを含む冷凍デザートに関する。
【0036】
図1は、本発明の冷凍デザートで使用し得るホエータンパクミセルの概略図であり、ホエータンパクは、タンパクの親水性部分が凝集体の外側部分に向かって配向し、タンパクの疎水性部分がミセルの内部「コア」に向かって配向するような仕方で配置されている。こうしたエネルギー的に有利な立体配置は、親水性環境においてこれらの構造に良好な安定性を与える。
【0037】
特定のミセル構造は、図、特に図3、4、5、及び6から知ることができ、本発明で使用されるミセルは、変性ホエータンパクの球状集合体から本質的になる。本発明のミセルは、特に、それらの規則的な球状の形状を特徴とする。
【0038】
それらの二重性(親水性及び疎水性)のために、タンパクのこの変性状態によって、疎水相、例えば、脂肪滴又は空気、と親水相の相互作用が可能になるように思われる。したがって、ホエータンパクミセルは、完全な乳化及び発泡特性を有する。
【0039】
さらに、ミセルは、80%を超える生成ミセルが、1ミクロン未満、好ましくは、100nmから900nmの間、より好ましくは、100〜770nm、最も好ましくは、200から400nmの間の粒径を有するような鋭い粒径分布を示すような仕方で生成し得る。
【0040】
ミセルの平均直径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して測定し得る。
【0041】
理論に拘束されることを望むものではないが、ミセル形成の間、いかなる追加のタンパク分子もはじくミセルの全体的な静電荷のために、ミセルは「最大」径に到達するので、ミセル径のそれ以上の成長が不可能であると考えられている。これによって、観測される狭い粒径分布を説明し得る。
【0042】
本発明で使用し得るホエータンパクミセルは、例えば、以下で詳細に説明される方法によって取得可能である。
【0043】
ミセル製造で使用されるホエータンパクとして、任意の市販ホエータンパク単離体又は濃縮液、すなわち、ホエータンパクを調製するための当技術分野で知られている任意の方法によって得られるホエータンパク、並びに、それらから調製されるホエータンパク画分、又はβ−ラクトグロブリン(BLG)、α−ラクトアルブミン、及び血清アルブミンなどのタンパクを使用し得る。特に、チーズ製造の副生品として得られるスイートホエー、酸カゼイン製造の副生品として得られる酸ホエー、ミルク精密ろ過によって得られる天然ホエー、又はレンネットカゼイン製造の副生品として得られるレンネットホエーを、ホエータンパクとして使用し得る。ホエータンパクは、単一供給源からでも任意の供給源の混合物からであってもよい。ホエータンパクは、ミセルを形成する前にいずれの加水分解ステップも受けないことが好ましい。したがって、ホエータンパクは、ミセル化の前に、いずれの酵素処理にもかけない。本発明によれば、ホエータンパクをミセル形成過程で使用し、その加水分解物を使用しないことが重要である。
【0044】
ホエータンパクの天然供給源は、ウシ起源のホエー単離体に限定されることはなく、羊、山羊、馬、及びラクダなどの哺乳動物種すべてからのホエー単離体が適合する。また、本明細書で記載の方法は、ミネラル化した、脱ミネラル化した、又はわずかにミネラル化したホエー製剤にも適用し得る。「わずかにミネラル化した」とは、透析可能又は透析ろ過可能である遊離ミネラルを除去した後の任意のホエー製剤であるが、例えば、ホエータンパク濃縮液又は単離体を調製した後、天然のミネラル化によってそれに随伴した鉱物を維持する任意のホエー製剤を意味する。これらの「わずかに鉱物化した」ホエー製剤は、特定のミネラル化がされていない。
【0045】
ホエータンパクは、例えば、カゼイン(PER=100)よりも良好なタンパク効率比(PER=118)を有する。PERは、かかるタンパクが、どの程度体重増加を支持するかを求めることによって評価されるタンパク品質の目安である。それは以下の式によって計算し得る:
PER=体重増加(g)/タンパク摂取重量(g)
例: PER 対カゼイン%
カゼイン 3.2 100
卵 3.8 118
ホエー 3.8 118
全大豆 2.5 78
小麦グルテン 0.3 9
【0046】
ホエータンパクミセルを生成させるために、ホエータンパクは、水溶液中に、溶液の全重量基準で0.1重量%〜12重量%の量で、好ましくは、0.1重量%〜8重量%の量で、より好ましくは、0.2重量%〜7重量%の量で、さらにより好ましくは、0.5重量%〜6重量%の量で、最も好ましくは、1重量%〜4重量%の量で存在し得る。
【0047】
ミセル化ステップの前に存在するホエータンパク製剤の水溶液はまた、それぞれのホエー生成プロセスの副生品、他のタンパク、ガム、又は炭水化物などの追加の化合物を含み得る。溶液はまた、他の食品成分(脂肪、炭水化物、植物抽出体など)を含有し得る。好ましくは、かかる追加の化合物の量は、溶液の全重量の50重量%、好ましくは、20重量%、より好ましくは、10重量%を超えない。
【0048】
ホエータンパク、並びにその画分及び/又はその主タンパクは、精製形態で使用することができるか、又は同様に粗生成物の形態で使用することができる。ホエータンパクミセルを調製するための、ホエータンパク中の二価カチオン含量は、2.5%未満、より好ましくは、2%未満、さらにより好ましくは、0.2%未満であってよい。最も好ましくは、ホエータンパクは、完全に脱ミネラル化されている。
【0049】
ホエータンパクミセルの製造では、pH及びイオン強度が重要な因子である。したがって、Ca、K、Na、Mgなどの遊離カチオンが実質的に含まれない、又は激減した徹底的に透析された試料では、5.4未満のpHで10秒〜2時間熱処理を行う場合、凝乳が得られるが、6.8を超えるpHでは、可溶性ホエータンパクが生成することが分かった。したがって、こうしたかなり狭いpH領域でのみ、直径が1μm未満であるホエータンパクミセルが得られることになる。これらのミセルは、全体として負電荷を持つことになる。同じミセル形態はまた、対称的に等電pH未満、すなわち、3.5〜5.0、より好ましくは、3.8〜4.5で得ることができ、正に帯電したミセルが生成する。
【0050】
したがって、正に帯電したミセルを得ることを目的として、ホエータンパクのミセル化は、タンパク源の鉱物含量に応じて3.8から4.5の間に調整されたpH値で塩を含まない溶液中で行い得る。
【0051】
好ましくは、本発明で使用されるミセルは、全体として負電荷を有することになる。したがって、加熱する前の水溶液のpHは、ホエータンパク粉末中に含まれた0.2%から2.5%の間の二価カチオン含量では、6.3〜9.0の範囲に調整される。
【0052】
より具体的には、負に帯電したミセルを得るために、pHは、低二価カチオン含量では(例えば、最初のホエータンパク粉末の0.2%未満)、5.6〜6.4、より好ましくは、5.8〜6.0の範囲に調整される。pHは、ホエータンパク源(濃縮液又は単離体)の鉱物含量に応じて最高8.4まで上昇させ得る。特に、pHは、大量の遊離ミネラルの存在下で負に帯電したミセルを得るために7.5〜8.4、好ましくは、7.6〜8.0であってよく、pHは、中程度の量の遊離ミネラルの存在下で負に帯電したミセルを得るために6.4〜7.4、好ましくは、6.6〜7.2であってよい。一般規則として、最初のホエータンパク粉末のカルシウム及び/又はマグネシウム含量が高くなるほど、ミセル化のpHは、高くなる。
【0053】
ホエータンパクミセル形成条件の標準化を目的として、任意の知られた脱ミネラル化技法(透析、限外ろ過、逆浸透、イオン交換クロマトグラフィーなど)によって、スイートホエー、乳の精密ろ過ろ液、又は酸ホエーの濃度から(0.9%タンパク含量)、タンパク含量30%の濃縮液までの範囲にあるタンパク濃度を有する任意の天然液体ホエータンパク源を脱ミネラル化することが最も好ましい。透析は、水(蒸留された、脱イオンされた、又は軟らかい)に対して行い得るが、これは、ホエータンパクに弱く結合したイオンの除去が可能になるのみであるので、pH4.0未満の酸(有機又は無機)に対して透析することによってホエータンパクのイオン組成をよりよく制御することがより好ましい。そうすることによって、ホエータンパクミセル形成のpHは、pH7.0未満、より好ましくは、5.8〜6.6となることになる。
【0054】
ホエータンパク水溶液を加熱する前に、pHは、一般に、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、又は乳酸などの好ましくは食品級である酸を添加することによって調整される。鉱物含量が大きい場合、pHは、一般に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化アンモニウムなどの好ましくは食品級であるアルカリ溶液を添加することによって調整される。
【0055】
或いは、いかなるpH調整ステップも望ましくない場合、pHを一定に保持しながら、ホエータンパク製剤のイオン強度を調整することも可能である。次いで、イオン強度は、ミセル化が一定のpH値7で可能になるような仕方で有機又は無機イオンによって調整し得る。
【0056】
ホエータンパクが熱処理されるときにpH値が実質的に変化するのを避けるように、ホエータンパクの水溶液に緩衝液をさらに加え得る。原理的には、緩衝液は、任意の食品級緩衝系、すなわち、例えば酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムなどの酢酸及びその塩、リン酸及びその塩、例えば、NaHPO、NaHPO、KHPO、KHPO、又はクエン酸及びその塩などから選択し得る。
【0057】
水溶液のpH及び/又はイオン強度を調整すると、100nm〜900nm、好ましくは、100〜700nm、最も好ましくは、200〜400nmの粒径を有するミセルが得られる制御されたプロセスがもたらされる。好ましくは、本明細書に記載のミセル化プロセスを行う場合、100〜700nmの寸法を有するミセルの分布は、80%を超える。
【0058】
規則的な形状のミセルを得るために、本発明によれば、ホエータンパクが、ミセル形成の前にいかなる加水分解ステップをも受けないことも重要である。
【0059】
ホエータンパクミセルを形成するための方法の第2のステップでは、次いで、ホエータンパクの出発水溶液を熱処理にかける。この点に関しては、ホエータンパクミセルを得るために、約70から95℃未満、好ましくは、約82〜約89℃、より好ましくは、約84〜約87℃の範囲の温度、最も好ましくは、85℃であることが重要であることが見出された。工業規模では、温度は、好ましくは、95℃未満、より好ましくは、80℃から90℃の間、最も好ましくは、約85℃であることが重要であることも見出された。
【0060】
所望の温度に到達したら、ホエータンパク水溶液は、この温度で、最短10秒間、最長2時間保持される。好ましくは、ホエータンパク水溶液が所望の温度範囲で保持される時間間隔は、12〜25分、より好ましくは、12〜20分の範囲であり、最も好ましくは、約15分である。
【0061】
濁度測定は、ミセル形成の指標である。500nmでの吸収によって測定される濁度は、1%タンパク溶液で、少なくとも3吸収単位であってよく、ミセル化の収率が80%を超える場合、16吸収単位に達する場合もある。
【0062】
物理化学的な視点からミセル形成の効果をさらに例示するために、Bipro(登録商標)の1重量%分散液が、MilliQ 水中pH6.0及び6.8、85℃で15分間加熱された。熱処理をした後に得られた凝集体の流体力学直径は、動的光散乱によって測定された。凝集体の見かけの分子量は、いわゆるデバイプロットを使用して静的光散乱によって求められた。標準アミノ酸としてシステインを用いるDTNB法によって、疎水性ANSプローブ及び遊離のアクセス可能なチオール基を使用して、表面疎水性が調査された。最後に、凝集体の形態は、ネガティブ染色TEMによって調査された。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から、pH6.0で形成されたホエータンパクミセルによって、タンパクがその比ANS表面疎水性を、同じ条件であるがpH6.8で加熱された非ミセル化ホエータンパクに比較して、1/2に減少させることが可能になることは明白である。ミセルが形成されたことは、非ミセル化タンパクの0.64×10g.mol−1に比較して非常に大きい分子量27×10g.mol−1でも分かり、ミセル内の物質状態が非常に凝縮されていることを示している(水の量が少ない)。十分興味あることには、ミセルのζ電位は、非ミセル化タンパクが、ミセルよりも高塩基性pHで形成されたにもかかわらず、それよりもさらに負である。これは、溶媒に曝露されているミセル表面がより親水性であることの結果である。最後に、ミセルのチオール反応性は、熱処理のpHが異なるために非ミセル化タンパクの反応性よりもはるかに低いことに留意されたい。
【0065】
pH調整及び熱処理の前に最初のタンパク濃度が増加すると、天然ホエータンパクのミセルへの転換収率が減少することが見出された。例えば、ホエータンパク単離体Prolacta 90(Lactalisからのロット番号673)から出発した場合、ホエータンパクミセルの形成収率は、85%(タンパク4%から出発した場合)から50%(タンパク12%から出発した場合)まで低下する。ホエータンパクミセルの形成を最大にする目的では(最初のタンパク含量は>85%)、タンパク濃度が12%未満、好ましくは、4%未満のホエータンパク水溶液で出発する方が良い場合がある。所望の最終用途に応じて、タンパク濃度を熱処理の前に調整することによって最適のホエータンパクミセル収率に管理し得る。
【0066】
本明細書に記載の方法によって取得可能なホエータンパクミセルの粒径は、直径1μm未満、好ましくは、100〜990nm、より好ましくは、100〜700nm、最も好ましくは、200〜400nmとなるようにする。
【0067】
所望の用途に応じて、ミセルの収率は、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも80%とすることができ、残りの可溶性凝集体又は可溶性タンパク含量は、好ましくは、20%未満である。ミセルの平均粒径は、多分散性指数が0.200未満であることを特徴とする。ホエータンパクミセルは、pH約4.5で凝集体を形成することができ、4℃で少なくとも12時間後では、巨視的な相分離の兆候がないことが観察された。
【0068】
ホエータンパクミセルの純度は、残留可溶性タンパクの量を求めることによって得ることができる。ミセルは、20℃、26900gで15分間遠心分離することによって除去される。上清を使用することによって、280nmで石英キュベット中(光路長1cm)のタンパク量を求める。値は、熱処理前の初期値の百分率として表される。
ミセルの割合=(最初のタンパク量−可溶性タンパク量)/最初のタンパク量
【0069】
本明細書に記載のミセル化方法によって取得可能なホエータンパクミセルは、形成中の粒径の減少をもたらすいかなる機械的応力の作用も受けていない。本方法は、無せん断下での熱処理中にホエータンパクの自発的なミセル化を誘起する。
【0070】
本発明で使用されたホエータンパクミセルは、本明細書に記載の方法によって生成させ得るが、それに限定されない。
【0071】
ホエータンパクミセルは、本発明の冷凍デザートにおいてそのままで使用し得る。それらは、ホエータンパクミセルの濃縮液、又はそれらの粉末形態でも使用し得る。さらに、ホエータンパクミセルは、活性成分を充填し得る。前記成分は、コーヒー、カフェイン、緑茶抽出体、植物抽出体、ビタミン、ミネラル、生物活性剤、塩、砂糖、甘味剤、芳香剤、脂肪酸、油、タンパク加水分解体、ペプチドなど、及びそれらの混合物から選択し得る。
【0072】
加えて、ホエータンパクミセル(純粋又は活性成分が充填されている)は、例えば、リン脂質などの乳化剤、或いはタンパク、ペプチド、タンパク加水分解物、又はアカシアガムなどのガムなどの他のコーティング剤でコートすることによってホエータンパクミセルの機能性及び味覚を調節し得る。タンパクをコーティング剤として使用する場合、ホエータンパクより有意に高いか又は低い等電点を有する任意のタンパクから選択し得る。これらは、例えば、プロタミン、ラクトフェリン、及びある種の米タンパクである。タンパク加水分解物をコーティング剤として使用する場合、それは、好ましくは、プロタミン、ラクトフェリン、米、カゼイン、ホエー、小麦、大豆タンパク、又はそれらの混合物などのタンパクからの加水分解物である。好ましくは、コーティングは、硫酸化ブチルオレエート、モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリドのクエン酸エステル、ステアロイルラクチレート、及びそれらの混合物から選択される乳化剤である。さらに、本明細書でさらに説明されるのと同様の共スプレー乾燥もホエータンパクミセルのコーティングを生成し得る。
【0073】
したがって、熱処理後に得られるホエータンパクミセル分散液は、濃縮することによってホエータンパクミセル濃縮液を得ることができる。
【0074】
ホエータンパクミセルの濃縮は、例えば、蒸発、遠心分離、沈降、限外ろ過及び/又は精密ろ過によって行い得る。
【0075】
ミセルの蒸発は、熱処理後に得られるホエータンパクミセルを、真空下で50℃から85℃の間の温度を有する蒸発器に供給することによって行い得る。生成物は、一般に、図8に示されるようなゲル又はクリームの態様を有することになる。蒸発によって得られるタンパク濃縮液は、クリーム状の準固体組織を有し、乳酸を使用して酸性化することによって広げられる組織において組織化し得る。この液状でクリーム状のペースト組織を使用することによって酸っぱい、甘い、塩辛い、芳香のある、タンパク強化冷凍デザートを調製し得る。
【0076】
好ましくは、ホエータンパクミセルの濃縮は、ミセル分散液の精密ろ過によって実現し得る。この強化技法によって、溶媒を除去することによってホエータンパクミセルを濃縮することが可能になるだけでなく、非ミセル化タンパク(天然タンパク又は可溶性凝集体など)の除去も可能になる。したがって、最終生成物は、ミセルのみからなる(透過型電子顕微鏡によって調査された場合−図3及び4を参照)。この場合、実現可能な濃度因子は、メンブランからの透過物の最初の流速が、その最初の値の20%に低下した後に得られる。
【0077】
このようにして得られたホエータンパク濃縮液は、少なくとも12%のタンパク濃度を有し得る。さらに、濃縮液は、タンパクの少なくとも50%をミセルの形態で含有し得る。タンパクの少なくとも90%が、ミセルの形態として存在することになるのが好ましい。
【0078】
濃縮液は、所望の冷凍デザートに応じて、そのまま又は希釈して使用し得る。
【0079】
例えば、液体又は乾燥形態のホエータンパクミセル濃縮液は、甘いコンデンスミルクの場合と同様にタンパク含量9%まで希釈し得る。最終生成物が、乳と類似の栄養プロフィルを有することになるが、タンパク源としてはホエータンパクのみであるように、乳ミネラル、ラクトース、及びスクロースを添加し得る。
【0080】
ホエータンパクミセルの乾燥粉末形態は、スプレー乾燥、凍結乾燥、ローラー乾燥などの任意の知られた技法によって取得し得る。したがって、ホエータンパクミセルは、さらなる成分を添加して又は添加しないでスプレー乾燥、又は凍結乾燥をすることができ、本発明の冷凍デザートの製造に用いるために輸送用システム又は構築ブロックとして使用し得る。
【0081】
図2は、スプレー乾燥中に行われるミセルの凝集のために1ミクロンを超える平均粒子直径を有する、さらなる成分を全く添加しないでスプレー乾燥することによって得られた粉末を示す。1ミクロンを超える平均径を有するかかるホエータンパク粉末は、本発明の冷凍デザートで使用し得る。これらの粉末の典型的な体積メジアン直径(D43)は、45から55ミクロンの間、好ましくは、51ミクロンである。ホエータンパクミセル粉末の表面メジアン直径(D32)は、好ましくは、3から4ミクロンの間、より好ましくは、3.8ミクロンである。
【0082】
スプレー乾燥後得られた粉末の水分含量は、好ましくは、10%未満、より好ましくは、4%未満である。
【0083】
さらなる成分を添加して又は添加しないでスプレー乾燥することによって生成したホエータンパクミセル粉末は、少なくとも35%のホエータンパクミセルから、少なくとも80%のホエータンパクミセルまで含み得る。
【0084】
ホエータンパクミセル粉末は、水、グリセリン、エタノール、油などの溶媒に対して大きい結合容量を有する。水に対する粉末の結合容量は、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも100%である。グリセリン及びエタノールなどの溶媒に対しては、結合容量は、少なくとも50%である。油に対しては、それは、少なくとも30%である。この特性によって、粉末がさらなる活性剤をスプレー又は充填され、本発明の冷凍デザートで使用されることが可能になる。
【0085】
かかる活性成分は、ビタミン、ミネラル、酸化防止剤、ポリ不飽和脂肪酸、ペプチド、植物抽出体、タンパク加水分解体、生物活性剤、芳香剤、甘味剤、砂糖、ポリサッカライド、スクロース、サプリメント、医薬品、薬剤、乳、乳タンパク、スキムミルク粉末、ミセル状カゼイン、カゼイン塩、植物性タンパク、アミノ酸、顔料など、及びそれらの任意の可能な混合物、化粧成分、熱、UV放射線、光、酸素、金属、湿度、温度などに敏感な成分から選択し得る。活性成分は、ポリフェノール(コーヒー、緑茶などからの)、リコペン、及び他のカロテノイドなどの不安定な化合物であってもよい。それらとして、カフェイン、ヘスペリジン、可溶性又は不溶性塩、共生細菌、染色剤、マルトデキストリン、脂肪、乳化剤、配位子などの化合物を挙げ得る。
【0086】
活性成分は、粉末中に0.1〜50%の量で含まれていてもよい。したがって、粉末は、それらの機能性成分に対する担体して働くこともできる。これによって、例えば、活性成分としてのカフェインが、ホエータンパクミセル中に充填され、例えば、カフェイン強化冷凍デザートで使用される場合、カフェインの苦味認識が低減されるという利点が提供される。
【0087】
追加の成分は、スプレー乾燥する前に、ホエータンパクミセル濃縮液と混合し得る。これらとして、可溶性又は不溶性塩、共生細菌、染色剤、砂糖、マルトデキストリン、脂肪、乳化剤、甘味剤、芳香剤、植物抽出剤、配位子、又は生物活性剤(カフェイン、ビタミン、ミネラル、薬剤など)、及びそれらの混合物が挙げられる。生成したホエータンパクミセル混合粉末は、ホエータンパクミセルと追加の成分を1:1〜1:1000の範囲である重量比で含む。この場合、得られたホエータンパクミセル粉末は、本発明の冷凍デザートで活性成分の担体としても働き得る。
【0088】
この共スプレー乾燥によって、追加の成分によって凝集化した、又はそれでコートされたホエータンパクミセルからなる粉末が得られる。好ましくは、ホエータンパクミセルと追加の成分の重量比は、1:1である。これは、これらの粉末の可溶化をさらに促進することができ、アイスクリーム製造において特に重要になり得る。
【0089】
本明細書に記載の方法によって取得可能なホエータンパクミセル粉末は、主として中空球からなるが破球からもなる内部構造であることを特徴とする(図9を参照のこと)。この中空球構造は、スプレー乾燥中におけるWPM濃縮液小滴内の蒸気小滴の形成によって容易に説明し得る。100℃を超える温度のために蒸気小滴がWPM小滴から去ると、中空球が残る。「骨形状」は、小滴からの水の蒸発と小滴内の外圧の組合せのためである。
【0090】
球状の中空球の内部構造は、粒子をその直径付近で切断した後のSEMによって調査された(図10左)。粒子の壁厚は、約5μmであり、非常に平滑であるように見えたが、内部の構造は、よりザラザラとしているように見えた。倍率を拡大すると、このザラザラは、実際、融合することによって粉末粒子の内部マトリックスを形成した最初のWPMの存在のためであることが分かった。興味があることには、ミセルの球状形状、並びに均一な粒径分布は、スプレー乾燥中保持された(図10右)。
【0091】
したがって、顕微鏡基準では、ホエータンパクミセル粉末は、原型を保った個別化されたホエータンパクミセルを含有する中空の又は崩壊した球の独特の顆粒状形態を特徴とする。
【0092】
これらのホエータンパクミセル粉末の重要な特徴は、ホエータンパクの基本的なミセル構造が保存されることである。図6は、切断されたホエータンパク粉末粒を示し、個別のホエータンパクミセルが観察可能である。さらに、ミセル構造は、溶媒中で容易に再構成し得る。ホエータンパクミセル濃縮液から得られた粉末は、室温又は50℃で水中に容易に再分散し得ることが分かった。ホエータンパクミセルの粒径及び構造は、最初の濃縮液と比較して、十分保存されている。例えば、図5では、タンパク濃度20%でスプレー乾燥されたホエータンパク濃縮液は、タンパク濃度50%で50℃の脱イオン水中で再分散した。ミセルの構造は、TEMによって調査され、図4と比較することができる。ミセルの類似の形状が得られた。ミセルの直径は、動的光散乱法によって315nmであり、多分散性指数が0.2であることが分かった。図7はまた、凍結乾燥ホエータンパクミセル粉末の分散を示し、ミセルは再構成されている。
【0093】
ホエータンパクミセル及び少量の凝集画分のみが、スプレー乾燥又は凍結乾燥粉末を再構成した後の溶液中に観察されたという事実は、ホエータンパクミセルが、スプレー乾燥、凍結乾燥などに関しては物理的に安定であることを裏付けるものである。
【0094】
本発明で開示の任意の形態で本発明において使用されるホエータンパクミセルは、乳化剤、脂肪代替物、ミセル状カゼインの代替物、又は発泡剤として使用するのに理想的に適していることが分かった。というのは、それらは、水性系で脂肪及び/又は空気を長期間安定化することができるからである。
【0095】
したがって、ホエータンパクミセルは、そのためにこの材料が理想的に適している乳化剤として使用し得る。というのは、それが、中性の味を有し、かかる材料の使用によって異臭が全く創出されないからである。それらは、また、ミセル状カゼインの代替物として使用され得る。
【0096】
加えて、1つの化合物として数種の仕事を実行し得るので、ホエータンパクミセルは、白色化剤として働く条件を有する。濃縮液の白色化力は、天然タンパク粉末と比較して極めて増加している。例えば、ホエータンパクミセルの15%濃縮液4mlの白色化力は、カップの2%コーヒー溶液100ml中の酸化チタン0.3%と等価である。
【0097】
同じタンパク全含量に対する乳系の白色化力の増加はもとより、食品マトリックス中の脂肪含量も低減し得る。この特徴は、そのために低脂肪含量の冷凍デザートを製造することが可能になるので、ホエータンパクミセル使用の特別の利点である。
【0098】
さらに、ホエータンパクミセルを単独、又はポリサッカライド(例えば、アカシアガム若しくはカラギーナン)などの他の活性材料と一緒に使用することによってマトリックス、及び例えば、乳発泡マトリックスを安定化し得る。それらの中性味、白色化力、及び熱処理後の安定性のために、ホエータンパクミセルを使用することによってスキムミルクの白色度及び及び舌ざわりの良さを増加させ得る。
【0099】
ホエーは、豊富に利用可能な材料であるので、その使用によって、同時にその栄養価を高めつつ、乳化、充填、白色化又は発泡剤を必要とする製品のコストが低減する。実際、本発明で使用されるミセルは、出発のホエータンパクに等しい少なくとも100、好ましくは、少なくとも110のタンパク効率比を有し、このために、該ミセルは重要な栄養成分になっている。
【0100】
したがって、ホエータンパクミセルは、例えば、アイスクリーム、ミルクセーキ、スムージー、ソルベ、氷菓子、メロリン、ソフトアイスなどの本発明による任意の種類の冷凍デザートを調製するために本明細書記載の任意の形態で使用し得る。
【0101】
しかし、本発明の冷凍デザートは、ホエータンパクミセル以外の使用を排除するものではない。
【0102】
したがって、6%を超えるタンパク、好ましくは、10%を超えるタンパクを含有する冷凍デザートを取得し得る。さらに、ホエータンパクミセルは、望ましい構造的、組織的、及び感覚刺激的特性を維持しつつ、脂肪代替品として働き得るので、多様な低脂肪製品を取得し得る。
【0103】
したがって、ホエータンパクミセルは、本発明の低温殺菌冷凍デザート中に含ませ得る。天然タンパクに比較して加工に対して非常に安定であるホエータンパクミセルが存在するために、高タンパク低温殺菌冷凍デザートを取得することができる。しかし、タンパク源は、ホエータンパクミセルのみに限定されるものではなく、これらは、他のタンパク源と組み合わせて使用し得る。
【0104】
したがって、一実施形態によれば、6%を超える、好ましくは、8%を超える、最も好ましくは、10%を超えるタンパク含量、及び基本的に中性、好ましくは、6と8の間のpH値を有し、脂肪カロリー値が45%未満である低温殺菌冷凍デザートが提供される。
【0105】
本発明のアイスクリーム中のタンパク含量の少なくとも一部分は、ホエータンパクミセルとして存在し得る。しかし、本発明の冷凍デザート中のタンパク源は、それに限定されるものではなく、ホエータンパク単離体、ホエータンパク濃縮液、ホエータンパクミセル、ミセル状カゼイン、乳タンパク単離体、スキムミルク粉末、及びそれらの任意の組合せから選択し得る。
【0106】
一部の実施形態では、タンパク含有物は、0−100〜80−20の比でカゼインとホエータンパクとを含む。好ましくは、タンパク含有物は、基本的に、ホエータンパクからなる。ホエータンパクは、少なくとも部分的には、ホエータンパクミセルの形態で存在する。好ましい実施形態では、ホエータンパクミセルは、冷凍デザートの全タンパク含量の少なくとも50%を構成する。
【0107】
本発明の冷凍デザートでは、少なくとも15%〜30%のエネルギーが、タンパクによって供給され、0%から45%の間のエネルギーが、脂肪によって供給され、25%から85%の間のエネルギーが、炭水化物によって供給される。好ましくは、脂肪のカロリー値は、35%未満である。一部の実施形態では、脂肪のカロリー値は、25%未満、さらには20%未満、特に10%未満であってもよい。
【0108】
好ましくは、本発明の冷凍デザートの栄養プロフィルは、グラス1杯の乳に匹敵し得る(絶対数値及び/又は百分率で表された場合)。
【0109】
本発明の冷凍デザートで使用される場合、ホエータンパクミセルは、懸濁液、濃縮液、又は粉末の形態で提供することができ、これらの形態はすべて、上記されている。ホエータンパクミセルは、1ミクロン未満、好ましくは、100nm〜900nmの平均径を有し得る。ホエータンパクミセルの粉末が使用される場合、これらは1ミクロンを超える平均径を有し得る。さらに、ホエータンパクミセルは、活性成分に対する担体又は送達ビヒクルとして働き得る。
【0110】
本発明の冷凍デザートは、アイスクリーム、ミルクセーキ、ソルベ、メロリン、スムージー、氷菓子、ソフトアイスなどから選択される任意の冷凍デザートであってよい。それらは空気を含ませ得る。空気を含ませる場合、所望の冷凍デザートに応じて、20%〜200%、好ましくは、70%〜150%のオーバーランを有し得る。
【0111】
冷凍デザートは、乳脂肪、1つ又は複数の植物性脂肪、又はそれらの混合物を含み得る。或いは、それは、脂肪を含有しなくてもよい。好ましくは、それは脂肪を含む。最も好ましくは、その脂肪は、乳脂肪である。
【0112】
本発明の低温殺菌冷凍アイスクリームは、少なくとも8重量%のタンパクと、15重量%〜28重量%の炭水化物と、3重量%〜7重量%の脂肪とを含む。好ましくは、それは、8〜12%のタンパクと、15〜20%の炭水化物と、5〜7重量%の脂肪とを含む。より好ましくは、アイスクリームは、10%を超えるタンパク含量を有する。一部の場合では、それは、さらに12%を超えるタンパク含量を有し得る。或いは、炭水化物含量は、20%〜26%であってもよく、脂肪含量は、4%〜6%であってもよい。
【0113】
炭水化物源は、ラクトース、スクロース、グルコース、マルトースなどから選択し得る。
【0114】
したがって、本発明は、栄養価が高く、日常的に健康スナックとして消費し得る新規な冷凍デザートを提供する。
【0115】
本発明の冷凍デザートは、栄養のバランスをとりつつ、食感の良いクリーム状の質感を有する。それらは、ビタミン、ミネラル、共生細菌、プレバイオティックス、インクルージョンなどの健康に有利な他の剤をさらに含有し得る。
【0116】
好ましい実施形態では、本発明の冷凍菓子は、0.1〜1%、より好ましくは、0.2〜0.5%、最も好ましくは、0.3〜0.4%のカルシウム含量を有する。
【0117】
それらは、0.1〜0.5%、より好ましくは、0.2〜0.4%、最も好ましくは、0.25〜0.35%の量でリンをさらに含み得る。
【0118】
ホエータンパクミセルが、本発明の冷凍デザートの製造で使用される場合、ホエータンパクミセル、その濃縮液、又はその粉末を含む成分のミックスをブレンドする第1のステップが実施される。ホエータンパクミセルは、好ましくは、100nm〜900nmの平均径を有する。ホエータンパクミセル粉末が使用される場合、前記粉末の平均径は、好ましくは、1ミクロンを超える。
【0119】
好ましくは、ブレンド中の乾物基準のホエータンパクミセル含量は、10〜40%、好ましくは、15〜35%、より好ましくは、30%となることになる。このようにして生成した冷凍デザートは、6%を超える、好ましくは、8%を超えるタンパク含量を有し得る。
【0120】
ブレンドの他の成分は、MSNF、乳化剤、糖類、脂肪源、芳香剤、安定剤、インクルージョン、他のタンパク源など、冷凍デザートの製造で使用される任意の成分であってよい。
【0121】
次いで、ブレンドは、80℃から87℃の間の温度で、少なくとも10秒間低温殺菌される。好ましくは、低温殺菌は、本質的に中性pH、例えば、6から8の間で実施される。例えば、天然果実(パルプ又はジュース)がブレンドに添加される場合、低温殺菌は、4から6の間の中程度の酸性pHで実施することもできる。任意選択で、果実系の酸性ブレンドを低温殺菌後に添加し得る。
【0122】
次いで、低温殺菌ブレンドは、冷凍前に、温度50℃でホモゲナイズし得る。ホモゲナイズした後、ブレンドは、冷凍前に、最高24時間熟成又は「エージング」してもよい。
【0123】
次いで、高タンパク冷凍デザートは、2層冷凍デザートでは、フルーツベース層と合体してもよく、又はフルーツベースコーティングを含んでもよい。
【0124】
好ましくは、このようにして生成した冷凍デザートは、6%を超える、より好ましくは、8%を超えるタンパク含量を有することになる。
【0125】
この方法によって、高タンパク含量、優れた食感、及びバランスのとれた栄養プロフィルを有する冷凍デザートを取得し得る。
【0126】
本発明では、成分のリストの任意の開示は、任意の可能な比での前記成分の任意の可能な組合せを開示するものとする。
【0127】
本発明では、冷凍デザートのタンパク、脂肪、又は炭水化物含量及び/又はカロリー値が挙げられる場合、これらの値は、冷凍デザートのマトリックスを対象とするものであって、コーティング、含有物などの、冷凍デザートマトリックス中に存在する場合がある追加の成分を含まない。
【0128】
以下の実施例は、本発明をそれらの実施例に限定することなく例示する。
【0129】
[実施例]
以下の実施例は、本発明の文脈で任意選択で使用し得るミセルの調製を説明する。それらは、栄養バランスのとれた冷凍菓子を製造するために使用される配合表をさらに説明する。
【0130】
実施例1:β−ラクトグロブリンのミセル化
β−ラクトグロブリン(ロット JE002−8−922、13−12−2000)をDavisco(Le Sueur、MN、USA)から得た。限外ろ過及びイオン交換クロマトグラフィーによって、タンパクをスイートホエーから精製した。粉末の組成は、タンパク89.7%、水分8.85%、灰分1.36%(Ca2+0.079%、Mg2+0.013%、K0.097%、Na0.576%、Cl0.050%)である。使用された他の試薬はすべて、分析試薬級(Merck Darmstadt、Germany)であった。
【0131】
MilliQ(登録商標)水(Millipore)中でβ−ラクトグロブリンを溶媒和させ、20℃で2時間撹拌することによって、タンパク溶液を濃度0.2%で調製した。次いで、HCl添加によって、各分取液のpHを5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0に調整した。溶液を20mlガラスバイアル中に充填し(Agilent Technologies)、ケイ素/PTFEシーリングを含有するアルミニウムカプセルでシールした。溶液を85℃で15分間(2.30〜3.00分でこの温度に到達する時間)加熱した。熱処理後、試料を氷水中で20℃まで冷却した。
【0132】
生成物の視感の態様によって、ミセル化の最適pHは5.8であることが示される。
【0133】
実施例2:ホエータンパク単離体のミセル化
ホエータンパク単離体(WPI)(Bipro(登録商標)、バッチJE032−1−420)をDavisco (Le Sueur、MN、USA)から得た。粉末の組成を表2に報告する。
【0134】
MilliQ(登録商標)水(Millipore)中でホエータンパク粉末を溶媒和させ、20℃で2時間撹拌することによって、タンパク溶液を濃度3.4%で調製した。最初のpHは7.2であった。次いで、0.1NHClを添加することによって、分取液のpHを5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、及び6.6に調整した。
【0135】
溶液を20mlガラスバイアル中に充填し(Agilent Technologies)、ケイ素/PTFEシーリングを含有するアルミニウムカプセルでシールした。溶液を85℃で15分間(2.30〜2.50分でこの温度に到達する時間)加熱した。熱処理後、試料を氷水中で20℃まで冷却した。
【0136】
加熱ホエータンパクの濁度を、25℃、500nmで測定した。試料を0.1〜3の範囲の絶対単位で測定できるように希釈した(Spectrophotometer Uvikon 810、Kontron Instrument)。最初のタンパク濃度3.4%に対する値を計算した。
【0137】
ミセル化のpHは、同じ試料を10分間隔内で500nmで測定した吸収が安定(最初の値からの変動が5%未満)するところに到達したとみなされた。この生成物では、ミセル化の最適pHは、6.0〜6.2であった。熱処理前に調整されたこのpHでは、安定な濁度は、21であり、遠心分離後280nmでの吸収によって推定された残留可溶性タンパクは、1.9%であった。最初のタンパクの45%が、pH6.0でミセルに変換されたと結論することができる。
【0138】
【表2】

【0139】
実施例3:ホエータンパク強化低脂肪アイスクリーム
材料
タンパク含量が90%であるホエータンパク単離体(WPI;Lactalis、Retiers、FranceからのProlacta90(登録商標))
タンパク含量が35%であるスキムミルク粉末
スクロース
マルトデキストリンDE39
無水乳脂肪
乳化剤
脱イオン水
食用1M塩酸
【0140】
ホエータンパクミセルのインライン生成を使用する方法
二重ジャケット80Lタンクを使用して、泡が形成されるのを防ぐために静かに撹拌しながら、タンパク濃度11.6重量%で、Prolacta90(登録商標)粉末を脱イオン水中に50℃で分散させた。1時間分散させた後、分散液のpHをHClの添加によってミセル化pHに調整した。分散液の温度を85℃まで上昇させ、15分間維持することによってホエータンパクミセルを生成させた。15分後、温度を50℃まで下降させ、追加の成分を逐次ミセル分散液に加えた(すなわち、スキムミルク粉末、マルトデキストリンDE39、スクロース、乳化剤、及び無水乳脂肪)。混合物の最終量は、50kgであり、全固体含量が39.4%、脂肪含量が5重量%であった。水和の30分後、ミックスを2段階でホモゲナイズし(80/20バール)、低温殺菌してから(86℃/30秒)終夜エージングした。
【0141】
翌日、アイスクリームミックスを、Hoyer MF50装置を使用して100%オーバーランで冷凍し、−40℃で硬化させた後、−20℃で貯蔵した。最終アイスクリームは、アイスクリームミックス基準でタンパク10重量%(カゼイン17%、ホエータンパク83%)及び脂肪5重量%を含有していた。このアイスクリームのカロリー寄与は、砂糖から51.4%、脂肪から27.9%、及びタンパクから20.7%である。
【0142】
粉末化ホエータンパクミセルを使用する方法
二重ジャケット80Lタンクを使用して、泡が形成されるのを防ぐために静かに撹拌しながら、ホエータンパクミセル粉末を脱イオン水中に50℃で分散させた。15分間分散後、追加の成分を逐次、ホエータンパクミセル分散液に加えた(すなわち、スキムミルク粉末、マルトデキストリンDE39、スクロース、乳化剤/安定剤、及び無水乳脂肪)。ミックスの最終量は、50kgであり、全固体含量が37.5%、脂肪含量が5重量%であった。水和の30分後、ミックスを2段階でホモゲナイズし(80/20バール)、低温殺菌してから(86℃/30秒)終夜エージングした。
【0143】
翌日、アイスクリームミックスを、Hoyer MF50装置を使用して100%オーバーランで冷凍し、−40℃で硬化させた後、−20℃で貯蔵した。最終アイスクリームは、アイスクリームミックス基準でタンパク12.8重量%(カゼイン13%、ホエータンパク87%)及び脂肪5重量%を含有していた。このアイスクリームのカロリー寄与は、砂糖から44.9%、脂肪から29.4%、及びタンパクから25.7%である。
【0144】
実施例4:スプレー乾燥によって得られた粉末化ホエータンパクミセル
材料
タンパク含量が90%であるホエータンパク単離体(WPI;Lactalis、Retiers、FranceからのProlacta90(登録商標))
食用ラクトース
マルトデキストリンDE39
脱イオン水
食用1M塩酸
【0145】
方法
二重ジャケット100Lタンクを使用して、泡が形成されるのを防ぐために静かに撹拌しながら、タンパク濃度10重量%、50℃で、Prolacta90(登録商標)粉末を脱イオン水中に分散させた、すなわち、Prolacta90(登録商標)11kgを脱イオン水89kg中に分散させた。1時間分散させた後、分散液のpHをHClの添加によってミセル化pHに調整した(その場合、約6.3)。分散液の温度を85℃まで上昇させ、15分間維持することによってホエータンパクミセルを生成させた。15分後、温度を50℃まで下降させ、10重量%ホエータンパクミセル分散液を50kgの2つのバッチに分割した。第1の試験では、ラクトース20kgを50℃でミセル分散液50kg中に分散させ、30分間撹拌した。同様に、マルトデキストリンDE39の20kgを残りのホエータンパクミセル分散液50kgに加えた。
【0146】
次いで、2つの混合物を流速15L/hでNIRO SD6.3N塔内に送りスプレー乾燥した。送入空気温度は140℃、送出空気温度は80℃であった。得られた粉末の水分含量は、5%未満であった。
【0147】
ホエータンパクミセルの粒径を、スプレー乾燥の前後で動的光散乱を使用して水中のラクトース及びマルトデキストリン(DE39)の存在下で測定した。タンパクの全濃度を、スプレー乾燥前の分散液の希釈、又は粉末の再構成により0.4重量%に設定することによってホエータンパクミセルに対する粘度を低い状態にした。Nanosizer ZS装置(Malvern Instruments)を使用し、ミセル直径を20回の測定から平均した。
【0148】
ラクトース及びマルトデキストリン(DE39)の存在下でホエータンパクミセルについて測定された粒径は、それぞれ、310.4nm及び306.6であった。粉末の再構成後では、それぞれの直径は、それぞれ、265.3nm及び268.5nmであった。これらの測定によって、ホエータンパクミセルは、スプレー乾燥に関しては物理的に安定であることが確認された。pH7の1%リンタングステン酸の存在下でのネガティブ染色を使用してホエータンパクミセルの0.1重量%水分散液をTEM顕微鏡観察することによってこれらの結果が裏付けられた。80kVで操作されるPhilips CM12透過型電子顕微鏡を使用した。スプレー乾燥前、及びスプレー乾燥した粉末の再構成後の溶液中のホエータンパクミセルを観察した。形態及び構造の差異を検出することはできなかった。
実施例5:蒸発による濃縮
【0149】
Lactalis(ロット500648)からのホエータンパク単離体Prolacta90をタンパク濃度4%で15℃で軟水中に再構成することによって最終のバッチの大きさが2500kgに到達した。最終pH値が5.90になるように1M塩酸を添加してpHを調整した。ホエータンパク分散液は、流速500l/hでプレート−プレートAPV−混合熱交換機中をポンプ輸送された。60℃で予熱した後、85℃で15分間熱処理した。動的光散乱、及び500nmでの濁度測定を使用して、粒径を測定することによってホエータンパクミセルの形成を調査した。得られたホエータンパクミセル4%分散液は、粒子の流体力学半径が250nm、多分散性指数が0.13、及び濁度が80であることを特徴とした。次いで、ホエータンパクミセル分散液を使用することによって、流速500l/hでScheffers蒸発器に供給した。タンパク濃度20%を有するホエータンパクミセル濃縮液が約500kg製造され、4℃まで冷却されるように、蒸発器中の温度及び真空を調節した。
【0150】
実施例6:精密ろ過による濃縮
Lactalis(ロット500648)からのホエータンパク単離体Prolacta90をタンパク濃度4%で15℃で軟水中に再構成することによって最終のバッチの大きさが2500kgに到達した。最終pH値が5.90になるように1M塩酸を添加してpHを調整した。ホエータンパク分散液は、流速500l/hでプレート−プレートAPV−混合熱交換機中をポンプ輸送された。60℃で予熱した後、85℃で15分間熱処理した。動的光散乱、及び500nmでの濁度測定を使用して、粒径を測定することによってホエータンパクミセルの形成を調査した。得られたホエータンパクミセル4%分散液は、粒子の流体力学半径が260nm、多分散性指数が0.07、及び濁度が80であることを特徴とした。タンパクのミセル形態もTEMによって調査し、平均直径150〜200nmを有するミセル構造を、明白に見ることが可能であった(図3)。ホエータンパクミセル分散液は、貯蔵するために4℃で冷却することができるか、又は直接使用して、6.8mCarbosep M14メンブランを備えたろ過ユニットに流速180l/hで供給することができた。その場合、ホエータンパクミセルの濃縮は、透過流速が70l/hに到達するまで10〜70℃で行った。その場合、最終のホエータンパク濃縮液は、20%のタンパクを含有した。濃縮液中のミセルの構造をTEMによって調査したが、精密ろ過前のホエータンパク4%分散液に比較して目に見える有意な変化がないことは明白であった(図4)。
【0151】
実施例7:少なくとも90%のホエータンパクを含むホエータンパクミセル粉末
精密ろ過によってタンパク20%(上記の実施例を参照)で得られたホエータンパクミセル濃縮液200kgを、生成物流速25kg/hでアトマイゼーションノズル(φ=0.5mm、スプレー角=65°、圧力=40バール)を使用してNiro SD6.3N塔内に射出した。生成物の入口温度は、150℃、出口温度は、75℃であった。塔中の空気流は、150m/hであった。粉末中の水分含量は、4%未満であり、粉末は、流動性が非常に良好であることを特徴とした。粉末の走査電子顕微鏡では、10〜100μmの範囲の見かけの直径を有する非常に球状の粒子が示された(図2)。
【0152】
実施例8:混合ホエータンパクミセル粉末
最終のホエータンパクミセル/マルトデキストリン比が70/30になるように、ホエータンパクミセル濃縮液20kgをDE39を有するマルトデキストリン1.7kgと混合した。この混合物を、生成物流速25kg/hでアトマイゼーションノズル(φ=0.5mm、スプレー角=65°、圧力=40バール)を使用してNiro SD6.3N塔内に射出した。生成物の入口温度は、150℃、出口温度は、75℃であった。塔中の空気流は、150m/hであった。粉末中の水分含量は、4%未満であり、粉末は、流動性が非常に良好であることを特徴とした。
【0153】
実施例7及び8の粉末は、水中で再構成された場合、ホエータンパクミセル濃縮液と同じ構造及び形態を有するミセルを本質的に含む。
【0154】
実施例9:凍結乾燥によって得られたホエータンパクミセル粉末
材料
タンパク含量90%を有する、実施例6の精密ろ過によって生成したタンパク20%のホエータンパクミセル濃縮液
【0155】
方法
ホエータンパクミセル濃縮液100gをプラスチックビーカー中に導入し、−25℃で1週間冷凍した。次いで、このビーカーを、真空ポンプを備えた実験室規模の凍結乾燥器Virtis内に置いた。試料を7日間放置したら、凍結乾燥器内の圧力が約30ミリバールで一定になった。凍結乾燥ホエータンパクミセル約20gを回収した。
【0156】
実施例10:硫酸化ブチルオレエート(SBO)又は任意の他の負帯電乳化剤を用いてコートされたホエータンパクミセルの水性分散液
材料
タンパク含量90%を有する実施例7からのホエータンパクミセル(WPM)粉末
SBO
塩酸(1M)
【0157】
方法
実施例7で記載のWPM粉末を、MilliQ水中に分散させることによって最終タンパク濃度0.1重量%を実現した。この分散液を0.45μmフィルターでろ過することによって存在する可能性のあるWPM凝集体を除去した。1M塩酸を添加することによってこのWPM分散液のpHを3.0まで下げた。SBOの1重量%分散液をpH3.0で調製した。
【0158】
これらのWPMの流体力学半径及びゼータ電位を、Nanosizer ZS装置(Malvern Instruments Ltd.)を使用して測定した。直径は、250nmであり、電気泳動移動度は、+2.5μm.cm.V−1.s−1.であった。pH3.0でのSBO分散液の流体力学半径及び電気泳動移動度は、それぞれ、4nm及び−1.5/−2.0μm.cm.V−1.s−1であった。
【0159】
この予備的な特性調査を実施した後、混合物の流体力学半径及び電気泳動移動度の前進的変化を追跡しつつ、SBO分散液を使用することによってWPM分散液を滴定した。WPM/SBOの混合重量比が5:1に到達するまでは、流体力学半径は約250〜300nmで一定であることが見出された。この点で、流体力学半径は、20000nmまで劇的に変化し、WPM SBO複合体の沈殿が起こる。SBOをさらに添加し、混合比が5:1を超えると、流体力学半径は、徐々に減少して250nmになり、これは最初のWPMと同じであり、比4:1からは同じ水準が続く。混合物の電気泳動移動度の追跡では、SBOの添加で減少し、混合比5:1ではゼロ値に到達することが分かった。次いで、電気泳動移動度は、SBOの添加で低下を継続し、比4:1から−3.0μm.cm.V−1.s−1での同一水準の維持が開始される。
【0160】
これらの結果に対する説明は、第1のステップで正に帯電したWPMは、SBOの負の頭部で静電的にコートされた後、完全な荷電中和が実現する(混合比5:1)ということである。この点で、SBOの疎水性尾部は、自己会合することが可能であり、非常に大きい流体力学直径を有する過剰凝集及び複合体の沈殿がもたらされる。SBOをさらに添加すると、疎水性尾部がさらに会合することによって二重コーティングを形成し、それらの負の頭部を溶媒に曝露する。これによって、完全タンパクコアリポソームに匹敵する、SBO二重コーティングを有する負帯電WPMがもたらされる。
【0161】
主としてアニオン形態でイオン化されている(_COO化学基)、pH4.2の水溶液のDATEM、CITREM、SSL(Daniscoから)などの他の酸性食品級乳化剤を用いて、類似の結果が得られている。
【0162】
実施例11:栄養バランスのとれたアイスクリームの配合表
以下の実施例では、栄養バランスのとれたアイスクリームの配合表が示される。すべての試料は、アイスクリーム製造の標準手順を使用して加工され、−5℃で冷凍され、オーバーランが100%であった。ミックスの低温殺菌処理は、86℃で30秒間行われた。
【0163】
WPM濃縮液:pH5.9の軟水中で分散された4.4%TS Prolacta 90(天然のホエータンパク)を85℃で15分間加熱処理することによって、ホエータンパクミセル濃縮液を得た。次いで、20%TSタンパクに到達するまで、55℃で精密ろ過ステップを実施した。濃縮液は4〜10℃で貯蔵した。
【0164】
WPM粉末:NIRO塔を使用して液状濃縮物をスプレー乾燥することによって、ホエータンパクミセル粉末を得た。粉末は、3.5%の水分を含有し、密封したアルミニウムバッグ中に10℃で貯蔵した。
【0165】
【表3】

【0166】
タンパク源の多様な組合せを使用して、高タンパクでバランスのとれたアイスクリームを製造することができた。
【0167】
【表4】

【0168】
タンパク源として本発明のホエータンパクミセル粉末をスキムミルク粉末とともに(アイスクリームA及びC)、又はミセル状カゼインをスキムミルク粉末とともに(アイスクリームB)使用してバランスのとれたアイスクリームを製造することが可能であった。
【0169】
【表5】

【0170】
唯一のタンパク源として、又はスキムミルク粉末と組み合わせて、本発明によるホエータンパクミセル粉末を使用すると、高タンパクでバランスのとれたアイスクリームを製造することが可能であった。タンパク源としてスキムミルク粉末を単独で使用する場合、実現することができたアイスクリーム中のタンパク含量はわずか5%であった。
【0171】
【表6】

【0172】
ホエータンパクミセル以外の供給源を使用した高タンパクでバランスのとれたアイスクリームを製造した。かかるアイスクリームを製造する場合、低温殺菌のステップ中にゲル化問題と遭遇することは全くなかった。冷凍ステップ中、ミックスの粘度は大であったが、加工可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】ホエータンパクミセルの高度に簡略化した構造を示す図である。
【図2】精密ろ過後のタンパク含量20%の分散液をスプレー乾燥して得られたホエータンパクミセル粉末のSEM(走査電子顕微鏡法)顕微鏡写真を示す図である。
【図3】タンパク含量4%で得られたホエータンパクミセル分散液のネガティブ染色TEM顕微鏡写真の図である。
【図4】精密ろ過後タンパク含量20%で得られたホエータンパクミセル分散液のネガティブ染色TEM顕微鏡写真の図である。
【図5】脱イオン水中に50℃で分散後、純ホエータンパクミセルをスプレー乾燥した粉末に基づくホエータンパクミセル4%分散液からのネガティブ染色TEM顕微鏡写真の図である。
【図6】図2に示されたスプレー乾燥粉末顆粒を切断後の内部構造を示すSEM顕微鏡写真の図である。
【図7】脱イオン水中に室温で分散後、純ホエータンパクミセルを凍結乾燥した粉末に基づくホエータンパクミセル4%分散液のネガティブ染色TEM顕微鏡写真の図である。スケールバーは0.5マイクロメートルである。
【図8】NaClを4%添加して蒸発させた後に得られた20%のホエータンパクミセル濃縮液の写真の図である。
【図9】トルイジンブルー染色後のホエータンパクミセル粉末の準薄片の明視野光学顕微鏡写真の図である。スケールバーは50ミクロンである。
【図10】切断後の中空ホエータンパクミセル粉末粒子のSEM顕微鏡写真の図である。左:内部構造。右:粉末粒子マトリックスを含むホエータンパクミセルの詳細。スケールバーはそれぞれ、10及び1ミクロンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6重量%を超える、好ましくは、8重量%を超える、最も好ましくは、10重量%を超えるタンパク含量、及び本質的に中性のpHを有し、脂肪のカロリー値が45%未満である、低温殺菌冷凍デザート。
【請求項2】
脂肪のカロリー値が、35%未満である、請求項1に記載の冷凍デザート。
【請求項3】
pH値が6から8の間である、請求項1又は2に記載の冷凍デザート。
【請求項4】
脂肪を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
【請求項5】
少なくとも8重量%のタンパクと、
15重量%〜28重量%の炭水化物と、
3重量%〜7重量%の脂肪と
を含む、低温殺菌冷凍アイスクリーム。
【請求項6】
タンパク含量が、10%を超える、請求項5に記載のアイスクリーム。
【請求項7】
炭水化物含量が、20%〜26%である、請求項5又は6に記載のアイスクリーム。
【請求項8】
脂肪含量が、4%〜6%である、請求項5〜7のいずれか一項に記載のアイスクリーム。
【請求項9】
8〜12重量%のタンパクと、
15〜20重量%の炭水化物と、
5〜7重量%の脂肪と
を含む、請求項5に記載のアイスクリーム。
【請求項10】
タンパク源が、ホエータンパク単離体、ホエータンパク濃縮液、ホエータンパクミセル、ミセル状カゼイン、乳タンパク単離体、スキムミルク粉末、及びそれらの任意の組合せから選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の冷凍菓子。
【請求項11】
ホエータンパクミセルが、変成ホエータンパクの球状凝集体であり、そのホエータンパクは、タンパクの親水性部分が凝集体の外側部分に向かって配向し、タンパクの疎水性部分が前記ミセルの内側コアに向かって配向するようにアレンジされている、請求項10に記載の冷凍菓子。
【請求項12】
炭水化物源が、ラクトース、スクロース、グルコース、マルトースなどから選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の冷凍菓子。
【請求項13】
脂肪源が乳脂肪である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の冷凍菓子。
【請求項14】
カルシウム含量が、0.1〜1%、より好ましくは、0.2〜0.5%、最も好ましくは、0.3〜0.4%である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の冷凍菓子。
【請求項15】
リン含量が、0.1〜0.5%、より好ましくは、0.2〜0.4%、最も好ましくは、0.25〜0.35%である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の冷凍菓子。
【請求項16】
ビタミン、ミネラル、共生細菌、プレバイオティックス、インクルージョンなどから選択される追加の成分を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の冷凍菓子。
【請求項17】
タンパク含有物が、それぞれ0−100〜80−20の比でカゼインとホエータンパクとを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の冷凍菓子。
【請求項18】
20%〜200%、好ましくは、70%〜150%のオーバーランを有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の冷凍菓子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−531039(P2009−531039A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501915(P2009−501915)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002495
【国際公開番号】WO2007/110182
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】