説明

タンパク質、それをコードする核酸および関連する使用方法

新規ポリペプチドをコードする核酸配列が本明細書に開示される。これらの核酸配列によってコードされるポリペプチド、該ポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体、および上記ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体の誘導体、変異形、突然変異体、またはフラグメントも開示される。本発明はさらに、これらの新規ヒト核酸およびタンパク質のいずれか1つが関与する障害の診断、処置、および予防のための治療、診断および研究の方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
米国特許法第119条(e)の下で、本出願は、2006年7月11日に出願された米国仮特許出願第60/830,013号;および2006年12月22日に出願された第60/876,871号(これらの両方をすべての目的のためにその全体を本明細書に参照により組み入れる)の恩典を主張する。
【0002】
参照による組み入れ
米国特許法施行規則第1.52条(e)(5)に応じて、コンパクトディスクに含まれる配列情報、ファイル名Ma_2007utility SEQ List_ST25.txt;サイズ61KB;作成:2007年6月29日;PatentIn−3.4およびChecker 4.4.0使用、の全体を本明細書に参照により組み入れる。コンピュータ読み取り可能形態(CRF)で記録された配列表情報は、本明細書とともに提供される書面の配列表と同一である。配列表の紙の写しおよび本明細書とともに提出される配列表のコンピュータ読み取り可能形態のデータは、新規事項を含んでおらず、米国仮特許出願第60/830,013号;および第60/876,871号の優先権出願によって完全に支持されている。
【0003】
連邦支援研究についての陳述
米国政府は、米国国立衛生研究所(NIH)によるJianjie Ma博士に対して授与された以下の助成金:RO1−CA095739;RO1−AG015556;RO1−HL069000に従って本発明における特定の権利を有する。
【0004】
発明の分野
本発明は、ポリペプチド、それをコードする核酸、前記ポリペプチドに免疫特異的に(immunospecifically)結合する抗体、および関連する使用方法に関する。
【0005】
背景
外部の損傷および内部の変性に応答して、身体の細胞は、その機能および生物の健康を維持するために、各々個々の細胞を取り囲む膜を修復しなければならない。外部の膜を修復する細胞の能力の欠損は、多くの疾患および病理学的状態、例えば、神経変性疾患(例えば、パーキンソン病)、心臓発作、心不全、筋ジストロフィー、褥瘡、糖尿病性潰瘍、酸化障害、ならびに化学療法薬の投与に由来する副作用として生じる副鼻腔炎等の組織損傷と結び付けられている。また、種々の疾患および正常な加齢過程と関連した筋力低下および萎縮が、変化した膜の修復と関連付けられている。これらの細胞が、急性損傷に応答してその膜を修復するために、それらは、小胞と呼ばれる細胞の内側にある膜の小さな包みを利用する。これらの小胞は、通常、細胞内に見出されるが、細胞膜への損傷に際して、これらの小胞は、損傷部位へ移動し、細胞の完全性を維持するためにパッチを形成する。この必須の機能がなければ、細胞は死滅し得、この細胞傷害の累積的な効果は、最終的には組織または器官の機能障害を生じ得る。
【0006】
多くの企業が、種々の組織の再生能を改良するためのアプローチに関心を抱いている。例えば、創傷修復市場は、単独で、2009年までに110億ドルを上回ると予想されている。それゆえ、急性および慢性の細胞および組織の損傷に関連する状態の処置のための細胞膜修復過程の医薬的なモジュレーターの開発に対する必要性が継続して存在している。
【0007】
概要
本発明は、細胞膜損傷の修復に関与するタンパク質の驚くべきかつ予想外の発見に関する。本発明は一般的に、核酸に関し、そして本発明の核酸からコードされるポリペプチドを含む。より具体的には、本発明は、組成物、例えば、標的核酸の転写または翻訳を阻害するのに有用な核酸;細胞質、核、膜結合および分泌ポリペプチドをコードする核酸;およびベクター、宿主細胞、抗体、組換えタンパク質、シュードペプチド、融合タンパク質、化合物、およびそれらを産生するための方法に関する。
【0008】
特定の局面において、本発明は、疾患および障害の処置および予防のための治療薬として有用な組成物にも関する。本発明の治療組成物は、干渉核酸を含む核酸、および配列番号1のタンパク質(本明細書において、「MG53」)に対応するポリペプチドをコードする核酸、MG53ポリペプチド、それらのホモログおよび部分、MG53シュードペプチド、M53ペプチドアナログおよびMG53ペプチド模倣薬;ならびにMG53の活性またはMG53が関与する分子間相互作用を調節できる化合物、例えば、カベオリン3(配列番号8)を含む。本明細書に記載されるように、MG53は、細胞膜に対する損傷の修復を媒介し、それゆえ、MG53の遺伝子発現、ポリペプチド合成、活性またはタンパク質−タンパク質相互作用を標的化および調節することは、組織修復のための新規の治療介入を表す。
【0009】
特定のさらなる局面において、本発明は、組織損傷の処置に関連する組成物および方法に関する。特定の例示的な実施態様において、本発明は、例えば、創傷治癒の促進のための;外科的外傷を寛解するための、加齢過程の自然な副作用として生じる組織修復における加齢関連欠損の処置および/または予防のための;心血管疾患および/またはスポーツ関連傷害を罹患する対象において生じるもののような筋組織の任意の型に対する傷害の処置および/または予防のための;ならびに化粧またはパーソナルケアの使用を通じての身体組織の修復および再生のための、本発明の治療組成物の有効量の投与を包含する。
【0010】
さらに、本発明は、干渉核酸を含む核酸、およびMG53と相互作用するタンパク質をコードするポリペプチド、例えば、カベオリン3(配列番号8)ポリペプチドおよびそのホモログ;シュードペプチドおよびペプチド模倣薬;ならびにカベオリン3の活性またはそのMG53との分子間相互作用を調節できる化合物に関する。それゆえ、さらなる局面において、本発明は、対象における疾患または障害の処置および/または予防のための、例えば、上記のような組織修復の促進のための、カベオリン3の遺伝子発現、活性、および/または分子間相互作用を標的化するための方法を包含する。
【0011】
先行する有用性の一般的な領域は、例としてのみ与えられ、本開示の範囲および添付の特許請求の範囲を限定することは意図されない。本発明のさらなる目的および利点は、特許請求の範囲、記載、および例を考慮して当業者によって理解される。これらのさらなる目的および利点は、本発明の範囲内に明示的に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1−1】MG53は、TRIMタンパク質ファミリーの筋特異的なメンバーである。種々の生物由来のMG53のタンパク質配列(配列番号1、3、5、9〜16参照)の整列によって、このタンパク質が、TRIMファミリーのメンバーであることが明らかとなる。機能的ドメインを灰色の四角で示し、矢印は前記ドメインが配列の別の行に続くことを示す。
【図1−2】MG53は、TRIMタンパク質ファミリーの筋特異的なメンバーである。種々の生物由来のMG53のタンパク質配列(配列番号1、3、5、9〜16参照)の整列によって、このタンパク質が、TRIMファミリーのメンバーであることが明らかとなる。機能的ドメインを灰色の四角で示し、矢印は前記ドメインが配列の別の行に続くことを示す。
【図2】MG53中に存在する保存された三者(tripartite)モチーフの1つ以上を含むいくつかの相同タンパク質の例示的なドメイン比較を示す。MG53は、複数の形態の侵襲後に細胞膜の傷害部位へ移行し、損傷を受けた膜の修復を媒介するその能力 − 列挙された他のTRIMファミリータンパク質によって示されない機能である − において特有である。
【図3】MG53は、特有のTRIMおよびSPRYモチーフを含み、筋細胞において優勢に発現する。A.MG53のモチーフ構造のダイアグラム。cDNAクローニングおよび相同性検索の結果から、いくつかのモチーフ配列が、示されるように、MG53において検出される。ウサギおよびマウスMG53 cDNAの配列は、それぞれアクセッション番号AB231473およびAB231474の下でデータベース中に寄託されている。B.ウェスタンブロット分析は、骨格筋および心筋におけるMG53の特異的発現を示す。抗マウスMG53ポリクローナル抗体を使用して、マウスの組織(肺、腎臓、骨格筋、肝臓、心臓、脳)由来の溶解液(レーンあたり20μgの全タンパク質)を分析した。C.マウス骨格筋細胞由来の長軸方向横断面の免疫蛍光染色。スケールバーは、125μmである。
【図4】筋細胞および非筋細胞の両方におけるM53の過剰発現での糸状仮足様構造の誘導。A.ウェスタンブロット分析は、C2C12筋芽細胞(左パネル)およびCHO細胞(中央パネル)におけるMG53の、およびまたC2C12筋芽細胞におけるGFP−MG53およびMG53−GFP(右パネル)の過剰発現レベルを示す(レーンあたり20μgの全タンパク質)。B.MG53の過剰発現後の糸状仮足様構造を明らかにする、GFP(左パネル)またはGFP+MG53(右パネル)でトランスフェクトしたCHO(上パネル)およびC2C12筋芽細胞(下パネル)の典型的な共焦点画像。スケールバーは、5μmである。C.MG53の膜標的化および細胞内小胞分布ならびに糸状仮足様構造の出現を明らかにする、CHO細胞(上パネル)およびC2C12筋芽細胞(下パネル)で発現されるGFP−MG53(左パネル)およびMG53−GFP(右パネル)の共焦点画像。スケールバーは、5μmである。D.形質膜上の細胞内小胞、出芽小胞(左パネル)および細胞外小胞(右パネル)を示す拡大された共焦点画像。スケールバーは、1μmである。
【図5】MG53は、筋芽細胞の分化を調節することによって骨格筋形成に寄与する。A.ウェスタンブロット分析は、CHO細胞におけるMG53のshRNA媒介性ダウンレギュレーションを示す。MG53発現ベクターおよび、MG53を標的化するshRNAまたはスクランブルされたshRNAのいずれかのプラスミドでトランスフェクトしたCHO細胞から溶解液を調製した。MG53に対するポリクローナル抗マウス抗体(上パネル)またはαアクチンに対するモノクローナル抗体(下パネル)を用いてイムノブロッティングを実施した。B.コントロールとしてのスクランブルされたshRNA(左パネル)と比較してのMG53に対するshRNA(右パネル)でトランスフェクトした細胞における筋管形成の非存在を示すための、異なる分化の日(第0日目、上パネル;第5日目、中央パネル;第10日目、下パネル)のC2C12細胞の代表的な蛍光顕微鏡画像。スケールバーは、50μmである。C.コントロールと比較しての5日間または10日間での筋管形成を阻害するMG53のダウンレギュレーションの統計分析(t検定によりp<0.01および**p<0.001)。すべての緑色細胞に対する緑色筋管の比率を、筋管の百分率として定義した。データをSEMを伴う平均として表す。
【図6】MG53とカベオリン3との間の機能的な相互作用は、骨格筋における動的膜出芽過程を調節する。A.分化誘導後の示された時間(第0、2、5、8、10日目)におけるC2C12細胞分化の間のMG53(上パネル)、カベオリン3(中央パネル)およびカベオリン1(下パネル)の発現レベルのウェスタンブロット分析。B.マウス腓腹筋骨格筋由来の全細胞溶解液を、抗MG53(ウサギポリクローナル抗体)、抗カベオリン3(マウスモノクローナル抗体)、ネガティブコントロールとしての正常ウサギIgGおよびポジティブコントロールとしての細胞溶解液を用いるco−IPに供した。C.筋芽細胞(左パネル)と比較してのC2C12筋管形成(右パネル)の過程の間の糸状仮足様構造の消失を示す共焦点画像。GFP−MG53について陽性の細胞内小胞が、トランスフェクトしたC2C12筋管中になお存在することに留意されたい。D.C2C12筋芽細胞におけるカベオリン3の過剰発現は、MG53誘発性糸状仮足様構造が形成されるのを防止する。CHO細胞(上パネル)またはC2C12筋芽細胞(下パネル)を、pCDNA−Cav−3およびGFP−MG53(10:1)と同時トランスフェクトするか(右パネル)、またはコントロールとしてpcDNAベクターおよびGFP−MG53(10:1)で同時トランスフェクトした(左パネル)。トランスフェクションの48時間後に、共焦点画像を撮影した。スケールバーは、10μmである。EおよびF.CおよびDについての統計分析。すべての緑色細胞に対する、糸状仮足様構造を示す細胞の比率を、糸状仮足様構造の百分率として定義した。データをSEMを伴う平均として表す。(t検定によりp<0.01)。
【図7】カベオリン3発現のshRNA媒介性抑制は、筋管形成に影響を及ぼす。A.カベオリン3のダウンレギュレーションレベルを、C2C12筋管におけるカベオリン3についてのshRNAプラスミドでのトランスフェクションの後にウェスタンブロットによって分析した(分化の6日後)。スクランブルされたshRNAプラスミドでトランスフェクトした細胞をコントロールとして作用させた。B.shRNAによるカベオリン3のダウンレギュレーション(右パネル)は、コントロールshRNA(左パネル)と比較して筋管形成を阻害する。赤色蛍光は、トランスフェクトされた細胞を示す。分化誘導の6日後に、蛍光顕微鏡画像を撮影した。スケールバーは、20μmである。C.統計分析は、カベオリン3のダウンレギュレーションが、コントロールと比較して6日間で筋管形成を有意に阻害することを示す(t検定によりp<0.001)。すべての赤色蛍光細胞に対する赤色蛍光筋管の比率を、筋管の百分率として作用させた。データをSEMを伴う平均として表す。D.GFP−MG53およびカベオリン3についてのshRNAの両方の同時発現を有するC2C12筋管の共焦点画像(右パネル)によって、コントロールshRNA(左パネル)と比較して、GFP−MG53によって誘導される糸状仮足様構造にも、GFP−MG53の分布にも影響を及ぼさないことが明らかとなる。スケールバーは、5μmである。
【図8】メチル−β−シクロデキストリンでの細胞の処理によって、C2C12筋芽細胞におけるGFP−MG53の可溶化およびエキソサイトーシスの増加が導かれる。A.示される時点(0分、左パネル;15分、右パネル)での自発的な小胞融合および膜からの出芽を示す代表的な共焦点画像。スケールバーは、5μmである。B.示される時点(0秒、左パネル;16秒、中央パネル;32秒、右パネル)での10mM M−βCDでの処理直後に膜から出芽するGFP−MG53により誘発される小胞を示す共焦点画像。C.処理前の同じ細胞(左パネル)と比較しての、室温での1時間の10mM M−βCDでの長時間の処理後のGFP−MG53の可溶化(右パネル)を示す共焦点画像。スケールバーは、5μmである。
【図9】MG53ノックアウトマウスは、心損傷に感受性である。運動していない野生型マウス由来の心筋のパラフィン包埋切片は、正常な形態を示し(左)、エバンスブルー染色を示さない(右)。対照的に、mg53−/−マウスは、筋細胞へのエバンスブルーの浸潤を示し、このことはmg53−/−心臓において膜の完全性に有意な欠損が存在することを示す。
【図10】進行性の病理が、細胞膜の損傷の増加に起因して、mg53−/−骨格筋において見られる。A.ヘマトキシリンおよびエオシン(H/E)染色は、加齢mg53−/−筋(10ヶ月齢)対若齢(3ヶ月齢)野生型(wt)またはmg53−/−マウスにおける、中心核(矢印)の数の増加を示す。B.加齢(8〜10ヶ月齢)mg53−/−マウス(青色、n=541)における筋線維の直径は、加齢(8〜10ヶ月齢)野生型コントロール(黒色、n=562)と比較して減少したのに対し、若齢(3〜5ヶ月齢)wt筋(n=765)対mg53−/−筋(n=673)では差がない。mg53−/−骨格筋において中心核を示す筋線維の百分率は、wtと比較した場合、加齢とともに増加する。データは、平均±s.e.m.であり、は、ANOVAによりp<0.05である。C.記載の手順に従ってインビトロ電位刺激プロトコールを使用して30分間の下り坂運動走に供したマウスから得られたインタクトなヒラメ筋の収縮性能のトレース記録を評価した。黒色トレースは、wt筋を表し、青色トレースは、mg53−/−筋に対応する。D.疲労刺激の前に(前、白棒)、g/全タンパク質mgで標準化した最大強縮力は、wt(黒色)に対して加齢mg53−/−筋(青色)において有意に低かった(n=4)。疲労刺激の6分後(後、黒棒)、wt筋は、mg53−/−筋よりも有意に大きく回復した。は、ANOVAによりp<0.05である。E.広範なエバンスブルー染色によって、wt筋における最小の染色と比較した場合、下り坂走に供したmg53−/−骨格筋において重篤な損傷が明らかとなる。F.運動後の加齢mg53−/−(青色)およびwt(黒色)の骨格筋からホルムアミドによって抽出されたエバンスブルー色素の量のチャート。データは、筋1gあたりのエバンスブルー(ng)の平均値±s.e.m.を表す。n=8〜12、は、スチューデントt検定によりp<0.005である。
【図11】MG53の除去は、欠損した筋膜修復機能を導く。(a)傷害部位でのその共存を示すための単離されたwtFDB線維中のMG53の免疫染色。これらは、単離の間の損傷を示す>20の異なる筋線維に由来する代表的な画像である。(b)筋細胞膜のレーザー誘発性損傷後にwtマウスから単離されたFDBの筋線維中の膜不透過性FM−143蛍光色素の排除。(c)レーザー誘発性損傷後にmg53−/−マウスから単離されたFDBの筋線維中へのFM−143蛍光色素の流入。レーザー損傷後の時間を示した。(d)筋細胞膜のレーザー損傷によって誘発されるFDB筋線維の内側のFM−143の時間依存性蓄積。データは、wtマウスから得られたn=30の線維およびmg53−/−マウス由来のn=18の線維についての平均±s.e.m.である。
【図12】MG53含有小胞は、物理的侵襲後の形質膜においてパッチを形成する。A.マイクロピペットを使用したC2C12筋芽細胞膜の損傷は、傷害部位(矢印)でのGFP−MG53の迅速な蓄積を導く。画像は、n=40個の分離した細胞の代表であった。B.重篤な損傷、例えば、細胞膜の分離に応答しての成熟C2C12筋管の回復は、治癒部位に向けてのGFP−MG53の動員と関連する(n=28)。
【図13】筋細胞の細胞表面膜へのMG53の標的化におけるTRIMおよびSPRYドメインの役割。A.N末端またはC末端へ融合したGFPを有するMG53欠失融合タンパク質構築物のスキーム。配列番号1を参照して、「TRIM」は、a.a.1〜287を表し、「SPRY」は、a.a.288〜477を表し、PRYモチーフおよびSPRYモチーフの両方を含む。B.C2C12細胞における各欠失構築物の細胞内局在を示す代表的な共焦点画像。スケールバーは、5μmである。C.MG53は、TRIMモチーフを通じてカベオリン3と相互作用する。GFP−MG53またはGFP−TRIMおよびpcDNA−Cav−3で同時にトランスフェクトしたCHO細胞由来の細胞溶解液を、抗カベオリン3(マウスモノクローナル抗体)を用いるIPに供した。(レーン1、ポジティブコントロールとしての混合細胞溶解液;レーン2、ネガティブコントロールとしての正常マウスIgG;レーン3、GFP−MG53を過剰発現する細胞由来の溶解液;レーン4、GFP−TRIMを過剰発現する細胞由来の溶解液)。
【図14】非筋CHO細胞における細胞表面膜へのMG53の標的化におけるTRIMおよびSPRYドメインの役割。GFP−MG53は細胞内小胞、膜標的化および出芽を示すが、しかしMG53−GFPは天然で主に可溶性であり(上パネル);SPRY−GFPおよびGFP−SPRYは、サイトゾル性であり(中央パネル);TRIM−GFPおよびGFP−TRIMは、主に細胞内小胞であり、形質膜を標的化しない(下パネル)ことを示す代表的な共焦点画像。「TRIM」は、a.a.1〜287を表し、「SPRY」はa.a.288〜477を表し、PRYモチーフとSPRYモチーフの両方を含む。スケールバーは、5μmである。
【図15】組換えTAT−MG53および変異体構築物の精製。(a)TAT−MG53組換えタンパク質構築物および関連する欠失構築物の描写。(b)TAT−MG53についての精製工程を示す変性ゲルのクーマシーブルー染色。ゲルレーンに、分子量マーカー(M)、E.coli上清(Sup)、イムアフィニティカラム素通り(FT)、洗浄素通り(W1、2)および溶出画分(E1〜5)を負荷した。(c)E.coliから単離された組換え変異体TAT−MG53タンパク質のクーマシー染色変性ゲル。
【図16】RFP−MG53を発現する安定HEK293(ヒト胎児腎臓)細胞株を生成した。(a)サイトゾル発現パターンを示すRFP(赤色蛍光タンパク質)コントロールタンパク質を安定に発現する細胞株。(b)RFPのみを発現するHEK293細胞の微小電極を用いる傷害は、傷害部位(矢印)へのRFPの移行を生じない。RFP蛍光のいくらかの退色が、細胞外バッファーの過剰な流入から生じる()。(c)RFP−MG53を安定に発現するHEK293細胞は、細胞内小胞への局在化を示す。(d)RFP−MG53を発現するHEK293細胞の傷害は、90秒未満のうちに、傷害部位(矢印)へのMG53の多量の移行を生じる。形質膜の迅速な修復による細胞中への制限されたバッファー流入は、RFP−MG53蛍光の退色を防止する。
【図17】組換えヒトTAT−MG53(HIV−1 TATタンパク質、配列番号17参照)は、異なる起源の細胞を透過することができる。HL−1心筋細胞および3T3線維芽細胞を、4または8μg/mLの組換えヒトTAT−MG53とともに37℃で15分間インキュベートした。緩衝塩類溶液中で細胞を3回洗浄し、次いでウェスタンブロット分析用に溶解した。ウェスタンブロットは、コントロール細胞(コントロール)は内因性MG53を含有しないが、しかしTAT−MG53とともにインキュベートした細胞は豊富な細胞内TAT−MG53を含有することを示す。TAT−MG53が、タンパク質へのTAT細胞透過ペプチドの付加に起因して、骨格筋抽出物(筋)から可視化されるMG53よりもわずかに大きいことに留意されたい。
【図18】MG53の組換え発現。(a)Ni−NTAカラムを用いてSf9細胞から単離された組換えヒトMG53タンパク質(矢印)画分のクーマシーブルー染色ゲル。入力=細胞抽出物、FT=素通り、M=マーカー、E=溶出番号。(b)Sf9細胞から単離された組換えヒトTAT−MG53(矢印)のクーマシーブルー染色ゲル。(c)E.coliから単離された組換えマウスTAT−MG53(矢印)のクーマシーブルー染色ゲル。
【図19】MG53は、ホスファチジルセリンとの会合を通じて細胞膜と相互作用して、小胞輸送を媒介する。(A)PIP−除去(PIP2-Strip)脂質ドットブロット分析によって、組換えMG53(1μg/ml)が、ホスファチジルセリン(PS)には特異的に結合し、スフィンゴシン−1−P、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよび種々のホスファイノシトール代謝産物を含む他の膜脂質には結合しないことが明らかとなる。(B)C2C12筋芽細胞中へトランスフェクトしたアネキシンV−GFP(PSを結合する十分に規定された能力を有する分子)(左)は、微小電極を用いる細胞創傷後の最小の移行を示し(矢印)、アネキシンV−GFPとRFP−MG53との同時発現(右)はアネキシンV−GFPの促進された蓄積を生じる。データは、平均±s.e.m.を表す(n=10)。は、スチューデントt検定によりp<0.01である。
【図20】MG53によって媒介される膜修復のメカニズムについての本発明者らの現在の仮説を示す図。いかなる特定の理論にも限定されないが、実験的な証拠は、MG53が、ホスファチジルセリン含有小胞とのその会合に起因して、形質膜の内側表面へ局在するようであることを示す。正常な条件下で、MG53は、モノマーであり、カベオリン3との結合に起因して膜表面近くに隔離されるようである。細胞膜への損傷後、通常その還元形態にあるMG53は、ジスルフィド架橋の形成および分子間MG53オリゴマー化をトリガーする局在化された酸化的環境へ曝露される。MG53のオリゴマー化は、損傷部位でホスファチジルセリン含有小胞を一緒にする。脂質小胞は、次いで損傷を受けた膜を継ぎ合わせることができる − これは、単純な疎水力によって媒介されるようである。
【0013】
詳細な説明
本発明は、新規ヌクレオチドおよびそれによってコードされるポリペプチドを提供する。本発明には、新規核酸配列およびそのコードされるポリペプチドが含まれる。配列を、本明細書で「MG53核酸」または「MG53ポリヌクレオチド」と総称し、対応するコードされるポリペプチドを、「MG53ポリペプチド」または「MG53タンパク質」という。別段の記載がなければ、「MG53」は、本明細書に開示される新規配列のいずれかを指すことを意味する。
【0014】
動的膜修復は、細胞の完全性の長期維持だけでなく、急性細胞傷害からの回復にも必須である。膜修復の欠損は、筋ジストロフィー、心不全および神経変性を含む多数の疾患状態と関連付けられている。細胞膜の修復には、形質膜での小胞の蓄積と関連した細胞内小胞輸送が必要とされる。
【0015】
本発明は、急性膜修復の間の小胞融合が、新規筋特異的三者モチーフ(TRIM)ファミリータンパク質であるミツグミン53(MG53)(配列番号1)によって駆動されるという発見に関する。MG53発現は、形質膜への細胞内小胞輸送および形質膜との融合を可能にするのに必要である。細胞膜の急性傷害によって、傷害部位で膜を継ぎ合わせるためにMG53含有小胞の動員が導かれる。MG53についてヌルの細胞は、レーザー誘発性損傷、運動によって誘発される筋損傷、および疲労後の筋収縮機能の回復不全を含む複数のストレスに応答しての膜修復における欠損を示す。したがって、MG53は、細胞膜の急性修復およびリモデリングの基礎をなす小胞輸送事象の重要な成分である。
【0016】
本発明は、新規ポリペプチドをコードする核酸配列の発見に部分的に基づいている。この新規核酸およびポリペプチドを本明細書でMG53核酸およびポリペプチドという。
【0017】
一つの局面において、本発明は、配列番号2、4、および6に開示される核酸と少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の同一性を有する核酸配列を含む、MG53ポリペプチドをコードする単離されたMG53核酸分子を提供する。特定の実施態様において、単離されたMG53核酸分子は、ストリンジェントな条件下で、MG53核酸配列のタンパク質コード配列を含む核酸分子と相補的な核酸配列とハイブリダイズする。本発明は、MG53ポリペプチド、またはそのフラグメント、ホモログ、アナログ、融合タンパク質、シュードペプチド、ペプチド模倣薬もしくは誘導体をコードする単離された核酸も含む。例えば、核酸は、配列番号1、3、5、および7のアミノ酸配列を含むポリペプチドと少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の同一性のポリペプチドをコードし得る。例えば、核酸は、配列番号2、4、および6のいずれかの核酸配列を含むゲノムDNAフラグメントまたはcDNA分子であり得る。
【0018】
オリゴヌクレオチド、例えば、MG53核酸(例えば、配列番号2、4、および6)の少なくとも6個の連続したヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチドの相補体も、本発明に含まれる。
【0019】
実質的に精製されたMG53ポリペプチド(配列番号1、3、5、および7)も、本発明に含まれる。特定の実施態様において、MG53ポリペプチドには、ヒトMG53ポリペプチドのアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列が含まれる。
【0020】
本発明は、MG53ポリペプチド、またはそのフラグメント、ホモログ、アナログ、シュードペプチド、ペプチド模倣薬もしくは誘導体と免疫選択的に結合する抗体も特徴とする。
【0021】
別の局面において、本発明は、治療有効量または予防有効量の治療薬および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を含む。治療薬は、例えば、MG53核酸、例えば、ペプチド核酸、cDNA、またはRNA、例えば低分子阻害RNA;MG53ポリペプチド;またはMG53ポリペプチドに特異的な抗体であり得る。さらなる局面において、本発明は、1つ以上の容器中に治療有効量または予防有効量のこの医薬組成物を含む。
【0022】
さらなる局面において、本発明は、DNAによってコードされるMG53ポリペプチドの発現を可能にする条件下で、内因性のまたは外因的に発現されるMG53核酸を含む細胞を培養することによってポリペプチドを産生する方法を含む。所望の場合、MG53ポリペプチドは、その後回収され得る。
【0023】
なお別の局面において、本発明は、外因性プロモーターの上流または下流に配置された内因性MG53核酸を含む細胞を培養することによってポリペプチドを産生する方法を含む。特定の実施態様において、外因性プロモーターは、相同組換え、鎖破壊またはミスマッチ修復メカニズムを通じて、宿主細胞のゲノム中に組み込まれる。
【0024】
別の局面において、本発明は、試料におけるMG53ポリペプチドの存在を検出する方法を含む。前記方法において、ポリペプチドと化合物との間の複合体の形成を可能にする条件下で、試料を、ポリペプチドと選択的に結合する化合物と接触させる。複合体は、存在する場合、検出され、それにより、試料内でのMG53ポリペプチドが同定される。
【0025】
本発明は、MG53核酸、ポリペプチドまたはMG53融合ポリペプチドのその発現に基づいて特定の細胞または組織の型を同定する方法も含む。例えば、特定の実施態様において、本発明は、「タグ」または指標部分およびMG53部分を含む融合タンパク質を含む。特定の局面において、タグまたは指標部分は、精製目的に適合したペプチド、例えば、FLAGタグ、6×Hisタグなどであり得る。他の局面において、タグペプチドは、抗体エピトープまたは蛍光ペプチド等のシグナルの提供に適合したペプチドを含む。さらに他の局面は、細胞内局在または細胞膜を横切る移行を媒介するのに適合したペプチド、例えば、HIVウイルス由来のTAT融合タンパク質とのMG53の融合を含む。
【0026】
試料をMG53核酸プローブまたはプライマーと接触させ、そして核酸プローブまたはプライマーが、試料中のMG53核酸分子へ結合したかどうかを検出することによって、試料におけるMG53核酸分子の存在を検出する方法も、本発明に含まれる。
【0027】
さらなる局面において、本発明は、MG53ポリペプチドを含む細胞試料を、該ポリペプチドの活性を調節するのに十分な量のMG53ポリペプチドへ結合する化合物と接触させることによって、MG53ポリペプチドの活性を調節するための方法を提供する。化合物は、例えば、本明細書にさらに記載されるような、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬、炭水化物、脂質または他の有機(炭素含有)または無機分子等の小分子であり得る。
【0028】
例えば、心血管疾患、心筋症、粥状硬化、高血圧症、先天性心欠損、大動脈狭窄、心房中隔欠損症(ASD)、共通房室(A−V)弁口欠損、動脈管、肺動脈狭窄、大動脈下狭窄、心室中隔欠損症(VSD)、弁膜症、凝固亢進、血友病、潰瘍、創傷、病変、切創、擦過、酸化障害、加齢性組織変性、外科関連病変、熱傷、筋力低下、筋萎縮、結合組織障害、特発性血小板減少性紫斑病、心不全、心不全および高血圧症によって引き起こされる二次的病理、低血圧症、狭心症、心筋梗塞、結節性硬化症、強皮症、移植、自己免疫疾患、エリテマトーデス、ウイルス/細菌/寄生虫感染、多発性硬化症、自己免疫疾患、アレルギー、免疫不全症、移植片対宿主病、喘息、肺気腫、ARDS、炎症および免疫応答の調節、ウイルス性病理、加齢性障害、関節リウマチ等のTh1型炎症疾患、多発性硬化症、炎症性腸疾患、エイズ、創傷修復、心臓発作、心不全、筋ジストロフィー、褥瘡、糖尿病性潰瘍、酸化障害、および副鼻腔炎または粘膜炎等の組織損傷、皺、湿疹または皮膚炎、皮膚乾燥、肥満、糖尿病、内分泌障害、食欲不振、過食症、腎動脈狭窄、間質性腎炎、糸球体腎炎、多発性嚢胞腎疾患、全身性、尿細管性アシドーシス、IgA腎症、腎臓病、高カルシウム血症、レッシュ・ナイハン症候群、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)症候群、外傷、再生(インビトロおよびインビボ)、ヒルシュスプルング病、クローン病、虫垂炎、子宮内膜症、喉頭炎、乾癬、光線性角化症、ざ瘡、発毛/脱毛、脱毛症、色素沈着障害、重症筋無力症、αマンノシドーシス、βマンノシドーシス、他の蓄積障害、ツェルヴェガー症候群等のペルオキシソーム病、乳児レフスム病、肢根軟骨異形成症(肢根点状軟骨異形成症)、および高ピペコリン酸血症、骨粗鬆症、筋障害、尿閉、オールブライト遺伝性骨形成異常症、潰瘍、アルツハイマー病、脳卒中、パーキンソン病、ハンチントン病、脳性麻痺、癲癇、レッシュ・ナイハン症候群、多発性硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、行動障害、嗜癖、不安、疼痛、神経保護、脳卒中、無水晶体眼、神経変性障害、神経障害、発達障害、脳におけるおよびケモカイン受容体の調節におけるGRK2の役割と関連した状態、脳脊髄炎、不安、統合失調症、躁鬱病、譫妄、認知症、重症精神遅滞およびジスキネジア、ジルドラツレット症候群、白質萎縮、癌、乳癌、CNS癌、結腸癌、胃癌、肺癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、結腸癌、前立腺癌、神経芽腫、および子宮頸癌、腫瘍;腺癌、リンパ腫;子宮癌、良性前立腺肥大、受胎能、発育および発達/分化関連機能の制御、例えば、限定されるわけではないが成熟、乳汁分泌および思春期、生殖機能不全、および/または他の類似の病理および障害を含む障害または症候群を処置または予防するための医薬の製造における治療薬の使用も、本発明の範囲内である。
【0029】
本発明の治療組成物は、特定の実施態様において、例えば、MG53核酸;MG53コード核酸と結合する核酸;MG53ポリペプチド、ペプチドアナログ、シュードペプチドまたはそれらに基づくペプチド模倣薬;MG53またはMG53タンパク質−タンパク質相互作用の小分子モジュレーター;またはMG53特異的抗体またはその生物的に活性な誘導体もしくはフラグメントを含む。本明細書に記載されるように、MG53は、細胞膜に対する損傷の修復を媒介する。それゆえ、これらの核酸、ポリペプチド、およびそれらのホモログの発現および/または活性を標的化することによって、組織修復と関連した種々の急性および慢性の疾患および状態の新規の処置が可能となる。
【0030】
特定の他の局面において、本発明は、組織損傷および/または組織損傷に関連する障害の処置または寛解のための方法であって、それを必要とする対象へ、本発明の組成物の有効量を投与することを含む方法を含む。特定の実施態様において、本発明は、組織損傷または創傷、例えば、切創、擦過、病変、潰瘍、熱傷、褥瘡、歯肉疾患、粘膜炎などを処置するための方法であって、それを必要とする対象へ、本発明の治療組成物の有効量を投与することを含む方法を含む。
【0031】
さらに他の実施態様において、本発明は、外科アジュバントとして有用な治療組成物を含む。本明細書に記載される任意の実施態様において、本発明の外科アジュバント組成物は、独立型の治療薬として外科部位へ直接的に使用または適用されることができるか、または外科もしくは医用具と全体を構成するように結合することができ、例えば、本発明の治療薬は、ポリマーベースのステント、チューブまたは他の埋め込み型デバイスへ結合され得、それにより、治療薬は管理された様式で作用部位へ拡散して、治癒を促進しそして/または侵襲的外科手順に由来する外傷を最小化し得る。別の実施態様において、本発明の治療組成物は、例えば、医用具に対するフィルムまたはコーティングとして適用され、それにより、治療薬は血流または周囲の組織中に拡散し、そして/または磨耗し、それにより、組織損傷の部位へ直接的に送達され;外科用具の使用に起因して生じる細胞損傷の量を最小化または改善する。
【0032】
さらに他の実施態様において、本発明は、加齢過程の自然な副作用として生じる組織修復における不全の処置および/または予防のための方法を含む(例えば、皮膚の若返り法、歯肉の後退、骨変性、関節炎、アルツハイマー病、パーキンソン病など)。この実施態様の特定の局面において、本発明は、組織修復能、組織完全性、および/または組織弾性における加齢性欠乏を罹患する対象へ、本発明の治療組成物の有効量を投与することを含む。特定の実施態様において、加齢性欠乏は、皺、目尻の皺、顔の皺、ポットマーク(pot mark)、瘢痕、類線維腫、そばかすなどの少なくとも1つ、またはそれらの組み合わせである。
【0033】
さらに、内因性MG53遺伝子の発現の筋特異的性質に起因して、本発明は、任意の型の筋または血管細胞/組織傷害、例えば、心血管疾患、例えば心筋梗塞;またはきびしい身体活動、例えばスポーツ関連傷害の結果として生じる組織傷害の処置および/または予防のための方法であって、それを必要とする対象へ、本発明の治療薬の有効量を投与することを含む方法を包含する。
【0034】
さらに他の実施態様において、本発明は、本発明の治療薬および美容的に適した担体または賦形剤を含む、身体組織の修復、再生、または回復に有用な化粧組成物を含む。本実施態様の一つの局面において、本発明は、化粧品中の本発明の治療組成物の有効量を対象へ投与することを含む、皮膚の外観を高める方法を包含する。
【0035】
本発明の任意の局面において、本発明の治療組成物は、任意の医薬的に許容される形態にあることができ、任意の医薬的に許容される経路によって投与されることができ、例えば、治療組成物を、心筋梗塞、硬化性病変、またはスポーツ関連活動に起因する筋断裂に起因する筋損傷の処置のために、経口薬用量(単回一日用量または単位薬用量形態のいずれか)として投与して、損傷を受けた筋組織の再生および修復を促進することができる。このような医薬的に許容される担体および賦形剤ならびに投与方法は、当業者に容易に明らかとなる。
【0036】
さらに、本発明は、干渉核酸を含む核酸、およびMG53相互作用タンパク質をコードするポリペプチド、例えば、カベオリン3(配列番号)ポリペプチドおよびそのホモログ;シュードペプチドおよびペプチド模倣薬;ならびにカベオリン3の活性またはそのMG53との分子間相互作用を調節できる化合物に関する。それゆえ、さらなる局面において、本発明は、対象における疾患または障害の処置および/または予防のための、例えば、上記のような組織修復の促進のための、カベオリン3遺伝子発現、活性、および/または分子間相互作用の標的化のための方法を包含する。
【0037】
例えば、本発明の組成物は、上記で開示する疾患および障害および/または類似の他の病理および障害を罹患する患者の処置のための有効性を有する。ポリペプチドを、本発明に特異的な抗体を産生するための免疫原として、そしてワクチンとして使用することができる。それらは、潜在的なアゴニストおよびアンタゴニスト化合物についてスクリーニングするために使用することもできる。さらに、MG53をコードするcDNAは、遺伝子治療において有用であり得、MG53は、それを必要とする対象へ投与される場合に有用であり得る。非限定的な例として、本発明の組成物は、上記で開示する疾患および障害および/または類似の他の病理および障害を罹患する患者の治療のための有効性を有する。
【0038】
本発明はさらに、例えば、上記で開示する疾患および障害および/または類似の他の病理および障害を含む障害または症候群のモジュレーターについてのスクリーニングのための方法を含む。前記方法は、試験化合物をMG53ポリペプチドと接触させること、および試験化合物が、該MG53ポリペプチドと結合するかどうかを決定することを含む。試験化合物のMG53ポリペプチドとの結合は、試験化合物が、活性の、または上記の障害または症候群の潜在性または素因のモジュレーターであることを示す。
【0039】
試験化合物を、上記の障害または症候群についての危険性が増加した試験動物へ投与することによって、活性の、または例えば、上記で開示する疾患および障害および/または類似の他の病理および障害を含む障害または症候群の潜在性または素因のモジュレーターについてスクリーニングするための方法も、本発明の範囲内である。試験動物は、MG53核酸によってコードされる組換えポリペプチドを発現する。次いで、MG53ポリペプチドを組換え発現し、そして障害または症候群の危険性が増加していないコントロール動物におけるタンパク質の発現または活性と同様に、MG53ポリペプチドの発現または活性を試験動物において測定する。次に、試験動物およびコントロール動物の両方におけるMG53ポリペプチドの発現を比較する。コントロール動物と比較しての試験動物におけるMG53ポリペプチドの活性の変化は、試験化合物が、障害または症候群の潜在性のモジュレーターであることを示す。
【0040】
さらに別の局面において、本発明は、対象(例えば、ヒト対象)における、MG53ポリペプチド、MG53核酸、またはその両方のレベルの変化と関連した疾患の存在または素因を決定するための方法を含む。この方法は、対象由来の試験試料中のMG53ポリペプチドの量を測定すること、および試験試料中のポリペプチドの量を、コントロール試料中に存在するMG53ポリペプチドの量と比較することを含む。コントロール試料と比較しての試験試料中のMG53ポリペプチドのレベルの変化は、対象における疾患の存在または素因を示す。好ましくは、素因は、例えば、上記で開示する疾患および障害および/または類似の他の病理および障害を含む。また、本発明の新たなポリペプチドの発現レベルを、種々の障害についてスクリーニングするための、および、特定の障害のステージを決定するための方法において使用することができる。
【0041】
さらなる局面において、本発明は、病理学的状態を緩和または予防するのに十分な量の、MG53ポリペプチド、MG53核酸、またはMG53特異的抗体を対象(例えば、ヒト対象)へ投与することによって、哺乳動物における障害と関連した病理学的状態を処置または予防する方法を含む。好ましい実施態様において、障害は、例えば、上記で開示する疾患および障害および/または類似の他の病理および障害を含む。
【0042】
さらに別の局面において、本発明を、当技術分野において一般的に用いられるいくつかの技術のいずれかによって、本発明の細胞の受容体および下流エフェクターを同定する方法において使用することができる。これらには、ツーハイブリッドシステム、アフィニティ精製、抗体または他の特異的相互作用分子を用いる共沈が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0043】
別段の定義がなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは等価な方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書おいて言及するすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献の全体を参照により組み入れる。矛盾する場合には、本明細書(定義を含む)が支配する。さらに、材料、方法、および例は、説明目的のためのみであり、限定を意図するものではない。
【0044】
本明細書で使用する「MG53アンタゴニスト」または「MG53のアンタゴニスト」という用語は、MG53の発現、翻訳、および/または活性を直接的または間接的に阻害できる薬剤を指すものとして一般的に使用される。また、本明細書で使用する「MG53受容体」は一般的に、MG53タンパク質への結合を受けることのできる任意のタンパク質またはそのフラグメントに関する。
【0045】
本明細書で使用する「カベオリンアンタゴニスト」または「カベオリンのアンタゴニスト」という用語は、カベオリンの発現、翻訳、および/または活性を直接的または間接的に阻害できる薬剤を指すものとして一般的に使用される。また、本明細書で使用する「カベオリン受容体」は一般的に、カベオリンタンパク質への結合を受けることのできる任意のタンパク質またはそのフラグメントに関する。
【0046】
特定の局面において、MG53活性の調節は、例えば、MG53結合パートナー、すなわち、中和抗MG53、MG53受容体(例えば、またはカベオリン3)、MG53受容体フラグメント、およびMG53受容体アナログ等の、MG53と結合しそしてその生物活性を中和する因子、の使用またはその調節;結合しそしてMG53受容体相互作用を破壊する抗カベオリン3抗体、シュードペプチド、ペプチドアナログまたはペプチド模倣薬等のMG53受容体アンタゴニストの使用;MG53活性もしくは分子間相互作用を阻害するか、またはMG53の正常な立体配置を変化させるか、または生産的なMG53/MG53受容体結合を阻害する小分子;または、例えばアンチセンス、リボザイム、および/または三重らせんアプローチによってMG53の発現を防止または低下させる、コード配列、非コード配列、および/または調節配列を含む、MG53遺伝子および/またはMG53受容体遺伝子由来のヌクレオチド配列の使用によって達成される。
【0047】
別の局面において、本発明は、MG53またはMG53受容体、例えばカベオリン3をコードする配列の発現をダウンレギュレートするデコイRNA、dsRNA、siRNA、shRNA、ミクロRNA、アプタマー、アンチセンス核酸分子等の核酸分子を特徴とする。一つの実施態様において、本発明の核酸分子は、組織損傷を処置および/または予防し、組織修復を促進するのに適合される。別の実施態様において、本発明の核酸分子は、エンドヌクレアーゼ活性を有するか、またはヌクレアーゼ複合体の成分であり、そしてMG53またはMG53受容体の核酸配列を有するRNAを切断する。
【0048】
一つの実施態様において、本発明の核酸分子は、MG53またはMG53受容体の核酸配列を有するRNAと相補的な12〜100個の塩基を含む。別の実施態様において、本発明の核酸分子は、MG53またはMG53受容体の核酸配列を有するRNAと相補的な14〜24個の塩基を含む。本明細書に記載される任意の実施態様において、核酸分子は、当技術分野で周知の方法に従って化学的に合成され得る。
【0049】
別の局面において、本発明は、適切な容器、そこに配置される医薬的に許容される形態の、MG53の活性、発現または結合を阻害できる活性薬剤、およびその使用のための説明書を含むキットを提供する。
【0050】
別の局面において、本発明は、MG53またはMG53受容体遺伝子またはタンパク質またはその両方の発現レベルの検出を通じて、疾患と関連したMG53またはMG53受容体構造遺伝子におけるヌクレオチド多型の存在について検出することを含む、障害または疾患または進行を診断またはモニターするための方法に関する。疾患の重篤度と相関する多型が同定されている。(Zhong et al., Simultaneous detection of microsatellite repeats and SNPs in the macrophage migration inhibitory factor (MG53) gene by thin-film biosensor chips and application to rural field studies. Nucleic Acids Res. 2005 Aug 2;33(13):e121;Donn et al., A functional promoter haplotype of macrophage migration inhibitory factor is linked and associated with juvenile idiopathic arthritis. Arthritis Rheum. 2004 May;50(5):1604-10参照;そのすべての全体をすべての目的のために本明細書に参照により組み入れる)。本明細書で使用する「MG53またはMG53受容体遺伝子」または「MG53またはMG53受容体構造遺伝子」は、MG53またはMG53受容体の遺伝子の5’UTR、3’UTR、プロモーター配列、エンハンサー配列、イントロンおよびエキソンDNA、およびMG53またはMG53受容体遺伝子のmRNAまたはcDNA配列を含む。
【0051】
当業者には理解されるように、組織修復障害と関連した、従って本発明の方法に従った診断マーカーとして有用なMG53またはMG53受容体遺伝子多型は、任意の以前に命名された核酸領域において出現し得る。多型の同定およびモニタリングのための技術は、当技術分野で公知であり、Wohlgemuthに対する米国特許第6,905,827号(すべての目的のためにその全体を本明細書に参照により組み入れる)において詳細に考察されている。
【0052】
本発明の特定の局面は、1つ以上のDNA分子を用いて遺伝子発現または多型を検出する方法を包含し、ここで、1つ以上のDNA分子が、配列表に示されるオリゴヌクレオチドに対応する遺伝子の発現を検出するヌクレオチド配列を有する。1つの形式において、オリゴヌクレオチドは、ディファレンシャルに発現する遺伝子の発現を検出する。遺伝子発現系は、候補ライブラリー、診断用薬剤、診断用オリゴヌクレオチドセットまたは診断用プローブセットであり得る。DNA分子は、ゲノムDNA、RNA、タンパク質核酸(PNA)、cDNAまたは合成オリゴヌクレオチドであり得る。本明細書で教示される手順に従って、遺伝子発現または多型を分析するために、目的の配列を同定することができる。このような配列は、疾患状態の予測となり得る。
【0053】
本発明の診断用オリゴヌクレオチド
本明細書で使用する「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチドアナログを使用して生成されるDNAまたはRNAのアナログ、ならびにそれらの誘導体、フラグメントおよびホモログを含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得るが、好ましくは、二本鎖DNAを含む。
【0054】
特定の局面において、本発明は、個体の健康状態と、ヌクレオチド配列に対応するRNAまたはタンパク質産物の個体の発現との間に相関が存在する、診断用オリゴヌクレオチドおよび診断用オリゴヌクレオチドセットに関する。いくつか場合で、1つのみのオリゴヌクレオチドが、このような検出に必要である。診断用オリゴヌクレオチドセットのメンバーは、本明細書でさらに記載されるような、ディファレンシャル発現スクリーニング、PCR、RT−PCR、SAGE分析、ハイスループット配列決定、マイクロアレイ、液体または他のアレイ、タンパク質ベースの方法(例えば、ウェスタンブロッティング、プロテオミクス、質量分析、および本明細書に記載される他の方法)、およびデータマイニング法を含むがそれらには限定されない、RNAまたはタンパク質産物の発現または多型を検出できる任意の手段によって同定され得る。
【0055】
本発明の関連で、核酸および/またはタンパク質は、周知の分子生物学技術に従って操作される。多数のこのような手順のための詳細なプロトコールは、例えば、Ausubel et al. Current Protocols in Molecular Biology (supplemented through 2000) John Wiley & Sons, New York ("Ausubel");Sambrook et al. Molecular Cloning-A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989 ("Sambrook")、およびBerger and Kimmel Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, Calif. ("Berger")に記載される。
【0056】
遺伝子型解析
発現プロファイルと臨床データとの相関に加えて、またはそれと共同して、発現パターンを1つ以上の遺伝子座での対象の遺伝子型と相関させるか、または発現プロファイルおよび遺伝子座データの両方を臨床データと相関させることはしばしば望ましい。選択された遺伝子座は、例えば、疾患(または疾患の診断基準)であるかまたは疾患と推定上関連することが知られている候補ライブラリー、マーカー遺伝子座のための多型アレル、または代替的な疾患関連遺伝子座(候補ライブラリーに寄与しない)の1つ以上のメンバーに対応する染色体遺伝子座であり得る。実際、遺伝子座における(多型)アレルが、疾患(または疾患に対する素因)と関連付けられる場合、アレルの存在がそれ自体、疾患の診断基準であり得ることが理解される。
【0057】
多くの他の有用な方法のうち、サザン分析、制限フラグメント長多型(RFLP)分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、増幅長多型(AFLP)分析、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、単一ヌクレオチド多型(SNP)分析(例えば、PCR Taqmanまたは分子ビーコンを介する)を含む多数の個体の遺伝子型を評価するための周知の方法が存在する。多くのこのような手順は、ハイスループットおよび/または自動(もしくは半自動)試料調製および分析方法に容易に適応可能である。大部分を、発現プロファイリングのための材料をもたらすのと同じ試料から、単純な手順を介して回収される核酸試料に対して実施することができる。例示的な技術は、例えば、上記のSambrookおよびAusubelに記載される。
【0058】
本発明は、核酸分子、例えば、酵素核酸分子、アンチセンス核酸分子、デコイ、二本鎖RNA、三重鎖オリゴヌクレオチド、および/またはアプタマー、ならびに例えば、MG53タンパク質、MG53タンパク質もしくはMG53受容体結合タンパク質またはMG53受容体タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子発現を調節する方法も特徴とする。特に、本発明は、MG53タンパク質またはMG53受容体タンパク質の発現を調節するための、核酸ベースの分子および方法を特徴とする。
【0059】
本発明は、MG53タンパク質、MG53タンパク質もしくはMG53受容体結合タンパク質、および/またはMG53受容体タンパク質、例えばカベオリン3をコードする遺伝子の発現を独立してまたは組み合わせで調節する1つ以上の酵素核酸ベースの分子および方法を特徴とする。
【0060】
種々の局面および実施態様の以下の記載は、例示的なMG53およびMG53受容体遺伝子について与えられる。しかし、種々の局面および実施態様は、他のMG53タンパク質、MG53結合タンパク質、およびMMG53受容体遺伝子のホモログ、オルソログ、およびパラログをコードする遺伝子にも関するものであり、すべてのアイソフォーム、スプライスバリアント、および多型を含む。それらのさらなる遺伝子は、MG53タンパク質、MG53結合タンパク質、およびMG53受容体遺伝子について記載される方法を使用して、標的部位について分析され得る。したがって、他の遺伝子の阻害およびこのような阻害の効果を、本明細書に記載するように実施することができる。
【0061】
「ダウンレギュレートする」によって、MG53およびMG53受容体遺伝子などの、遺伝子の発現、または1つ以上のタンパク質をコードするRNAもしくは等価のRNAのレベル、または1つ以上のタンパク質の活性が、本発明の核酸分子の非存在下で観察されるものを下回って低下されることが意味される。一つの実施態様において、酵素核酸分子での阻害またはダウンレギュレーションは好ましくは、標的RNA上の同じ部位へ結合できるが、そのRNAを切断できない酵素的に不活性のまたは減弱された分子の存在下で観察されるレベルを下回る。別の実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドでの阻害またはダウンレギュレーションは好ましくは、例えば、スクランブルされた配列を有するかまたはミスマッチを有するオリゴヌクレオチドの存在下で観察されるレベルを下回る。別の実施態様において、本発明の核酸分子でのMG53タンパク質、MG53結合タンパク質、およびMG53受容体遺伝子の阻害またはダウンレギュレーションは、その非存在下よりも核酸分子の存在下で大きい。
【0062】
「アップレギュレートする」によって、MG53タンパク質、MG53結合タンパク質、およびMG53受容体遺伝子などの、遺伝子の発現、または1つ以上のタンパク質サブユニットをコードするRNAもしくは等価のRNAのレベル、または1つ以上のタンパク質サブユニットの活性が、本発明の核酸分子の非存在下で観察されるものよりも大きいことが意味される。例えば、MG53タンパク質、MG53結合タンパク質、およびMG53受容体遺伝子等の遺伝子の発現は、遺伝子発現の非存在または低レベルによって引き起こされるかまたは悪化させられる病理学的状態を処置、予防、寛解、または調節するために増加させられ得る。一つの実施態様において、本発明は、MG53タンパク質、MG53結合タンパク質、およびMG53受容体遺伝子の発現、放出、および/または活性をアップレギュレートすることによって、膀胱過活動を処置または予防するための方法に関する。
【0063】
「調節する」によって、遺伝子の発現、または1つ以上のタンパク質をコードするRNAもしくは等価のRNAのレベル、または1つ以上のタンパク質の活性が、アップレギュレートまたはダウンレギュレートされ、それにより、発現、レベル、または活性が、本発明の核酸分子の非存在下で観察されるものよりも大きいかまたは小さいことが意味される。
【0064】
「遺伝子」によって、RNAをコードする核酸、例えば、ポリペプチドをコードするセグメントを含むがそれに限定されない核酸が意味される。
【0065】
「相補性」は、伝統的なワトソン・クリック型または他の非伝統的な型のいずれかによって、別のRNA配列とともに水素結合を形成する核酸の能力を指す。
【0066】
「RNA」によって、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子が意味される。「リボヌクレオチド」または「2’−OH」によって、D−リボ−フラノース部分の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドが意味される。
【0067】
「ヌクレオチド」によって、リン酸化された糖とN−グリコシド結合した複素環式窒素性塩基が意味される。ヌクレオチドは、天然の塩基(標準)、および当技術分野で周知の修飾塩基を含むものとして、当技術分野で認識される。このような塩基は一般的に、ヌクレオチド糖部分の1’位に位置する。ヌクレオチドは一般的に、塩基、糖およびリン酸基を含む。ヌクレオチドは、未修飾であるか、または糖、リン酸および/または塩基部分で修飾され得る(ヌクレオチドアナログ、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、非標準ヌクレオチドおよびその他とも互換的に呼ばれる;例えば、Usman and McSwiggen, 上記;Eckstein et al., 国際PCT公開WO 92/07065;Usman et al., 国際PCT公開WO 93/15187; Uhlman & Peyman, 上記参照(すべてを参照により本明細書に組み入れる))。Limbach et al., 1994, Nucleic Acids Res. 22, 2183によって要約されるように、当技術分野で公知の修飾核酸塩基のいくつかの例がある。核酸中に導入され得る化学的に修飾された核酸塩基および他の天然の核酸塩基の非限定的な例のいくつかは、例えば、イノシン、プリン、ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、フェニル、プソイドウラシル、2,4,6−トリメトキシベンゼン、3−メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5−アルキルシチジン(例えば、5’−メチルシチジン)、5−アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5−ハロウリジン(例えば、5−ブロモウリジン)または6−アザピリミジンまたは6−アルキルピリミジン(例えば、6−メチルウリジン)、プロピン、キューオシン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、ワイブトシン、ワイブトキソシン、4−アセチルチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5’−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、β−D−ガラクトシルキューオシン、1−メチルアデノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、3−メチルシチジン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メチルカルボニルメチルウリジン、5−メチルオキシウリジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、β−D−マンノシルキューオシン、ウリジン−5−オキシ酢酸、2−チオシチジン、スレオニン誘導体およびその他を含む(Burgin et al., 1996, Biochemistry, 35, 14090;Uhlman & Peyman, 上記)。
【0068】
この局面において「修飾塩基」によって、1’位でのアデノシン、グアニン、シトシンおよびウラシル以外のヌクレオチド塩基またはそれらの等価物が意味され;このような塩基は、例えば、酵素核酸分子の触媒コア内のおよび/または核酸分子の基質結合領域中の任意の位置で使用され得る。
【0069】
「酵素核酸分子」によって、特定の遺伝子標的に対する基質結合領域中での相補性を有し、そして標的RNAを特異的に切断する活性のある酵素活性も有するかまたはそれを媒介する核酸分子が意味される。すなわち、酵素核酸分子は、RNAを単独でまたは酵素複合体の成分として、分子間で切断でき、それにより、標的RNA分子を不活性化する。これらの相補性領域によって、酵素核酸分子の標的RNAとの十分なハイブリダイズが可能になり、したがって切断が可能になる。100%の相補性が好ましいが、50〜75%程度に低い相補性も、本発明において有用であり得る(例えば、Werner and Uhlenbeck, 1995, Nucleic Acids Research, 23, 2092 2096;Hammann et al., 1999, Antisense and Nucleic Acid Drug Dev., 9, 25 31参照)。核酸は、塩基、糖、および/またはリン酸基において修飾され得る。「酵素核酸」という用語は、リボザイム、触媒RNA、酵素RNA、触媒DNA、アプタザイム(aptazyme)またはアプタマー結合リボザイム、調節可能リボザイム、触媒オリゴヌクレオチド、ヌクレオザイム(nucleozyme)、DNAザイム(DNAzyme)、RNA酵素、siRNA、ミクロRNA、低分子ヘアピン型RNA、エンドリボヌクレアーゼ、RNA誘導サイレンシング複合体、エンドヌクレアーゼ、ミニザイム(minizyme)、リードザイム(leadzyme)、オリゴザイム(oligozyme)またはDNA酵素等の語句と互換的に使用される。これらの用語はすべて、酵素活性を有する核酸分子を示す。
【0070】
本出願に記載される具体的な酵素核酸分子は、本発明において限定するものではなく、本発明の酵素核酸分子において重要なことが、標的核酸領域の1つ以上と相補的な特異的基質結合部位を有し、そして核酸切断および/または連結活性を分子へ付与するその基質結合部位内のまたはその周囲のヌクレオチド配列を有することのみであることを当業者は認識する(Cech et al., 米国特許第4,987,071号;Cech et al., 1988, 260 JAMA 3030)。
【0071】
酵素RNAのいくつかの種類が現在知られている。各々は、生理学的条件下でトランスにRNAホスホジエステル結合の加水分解を触媒することができる(したがって、他のRNA分子を切断することができる)。一般的に、酵素核酸は、まず標的RNAと結合することによって作用する。このような結合は、標的RNAを切断するよう作用する分子の酵素部分に近接して保持される酵素核酸の標的結合部分を通じて生じる。したがって、酵素核酸は、相補的塩基対形成を通じて標的RNAをまず認識し、次いでそれに結合し、一旦正しい位置に結合すると、標的RNAを切断するように酵素的に作用する。このような標的RNAの戦略的切断は、コードされたタンパク質の合成を指示するその能力を破壊する。酵素核酸は、そのRNA標的に結合しそれを切断した後、別の標的を捜すためにそのRNAから遊離し、新たな標的を反復して結合および切断することができる。したがって、単一リボザイム分子は、標的RNAの多くの分子を切断することができる。さらに、リボザイムは、遺伝子発現の高度に特異的な阻害剤であり、阻害の特異性は標的RNAへの結合の塩基対形成メカニズムだけでなく、標的RNA切断のメカニズムにも依存する。切断部位付近の単一ミスマッチまたは塩基置換は、リボザイムの触媒活性を完全に除去し得る。
【0072】
本明細書で使用する「核酸分子」によって、ヌクレオチドを有する分子が意味される。核酸は、一本鎖、二本鎖、または多重鎖であり得、修飾または非修飾のヌクレオチドまたは非ヌクレオチドまたはそれらの種々の混合物および組み合わせを含むことができる。
【0073】
MG53タンパク質、MG53結合タンパク質、およびMG53受容体遺伝子と「等価の」または「関連した」RNAによって、ヒト、齧歯類、霊長類、ウサギ、ブタ、原生動物、真菌、植物、ならびに他の微生物及び寄生体を含む種々の生物において、MG53タンパク質、MG53結合タンパク質、およびMG53受容体タンパク質と類似の機能を有するタンパク質をコードするMG53タンパク質、MG53結合タンパク質、およびMG53受容体の遺伝子との相同性(部分的なまたは完全な)を有する天然のRNA分子を含むことが意味される。等価のRNA配列は、コード領域に加えて、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、イントロン、イントロン−エキソン接合部などの領域も含む。「相同性」によって、2つ以上の核酸分子のヌクレオチド配列が、部分的にまたは完全に同一であることが意味される。特定の実施態様において、相同的核酸は、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体遺伝子との30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%の相同性を有する。
【0074】
「アンチセンス核酸」によって、RNA−RNAまたはRNA−DNAまたはRNA−PNA(タンパク質核酸;Egholm et al., 1993 Nature 365, 566)相互作用によって標的RNAと結合し、そして標的RNAの活性を変化させる非酵素的核酸分子が意味される(総説については、Stein and Cheng, 1993 Science 261, 1004およびWoolf et al., 米国特許第5,849,902号参照)。典型的には、アンチセンス分子は、アンチセンス分子の単一の連続した配列に沿って標的配列と相補的である。しかし、特定の実施態様において、アンチセンス分子は、基質分子がループまたはヘアピンを形成するよう基質と結合することができ、そして/またはアンチセンス分子は、アンチセンス分子がループまたはヘアピンを形成するように結合することができる。したがって、アンチセンス分子が2つの(またはそれより多くの)非連続基質配列と相補的であり得るか、またはアンチセンス分子が2つの(またはそれより多くの)非連続配列部分が標的配列と相補的であり得るか、またはその両方であり得る。現在のアンチセンスストラテジーの総説については、Schmajuk et al., 1999, J. Biol. Chem., 274, 21783-21789、Delihas et al., 1997, Nature, 15, 751-753、Stein et al., 1997, Antisense N. A. Drug Dev., 7, 151、Crooke, 2000, Methods Enzymol., 313, 3-45;Crooke, 1998, Biotech. Genet. Eng. Rev., 15, 121-157、Crooke, 1997, Ad. Pharmacol, 40, 1-49を参照されたい(その全体を本明細書に参照により組み入れる)。さらに、アンチセンスDNAを、DNA−RNA相互作用によってRNAを標的化し、それにより、二本鎖中の標的RNAを消化するRNaseHを活性化するために使用することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAのRNaseH切断を活性化できる1つ以上のRNaseH活性化領域を含み得る。アンチセンスDNAは、化学的に合成され得るか、または一本鎖DNA発現ベクターまたはその等価物の使用を介して発現され得る。
【0075】
長二本鎖RNA(dsRNA;典型的には>200nt)を、種々の生物および細胞型(例えば、虫、ショウジョウバエ、および植物)において標的遺伝子の発現をサイレンシングするのに使用することができる。導入に際して、長dsRNAは、RNA干渉(RNAi)経路と一般的にいわれる細胞経路に進入する。まず、dsRNAは、20〜25ヌクレオチド(nt)の低分子干渉RNA(siRNA)に、Dicerと呼ばれるRNaseIII様酵素によってプロセシングされる(開始工程)。次いで、siRNAは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)として知られるエンドリボヌクレアーゼ含有複合体中へ集合し、そのプロセス中に巻き戻される。siRNA鎖はその後、相補的RNA分子へRISCを誘導し、そこでそれは、同族RNAを切断および破壊する(エフェクター工程)。同族RNAの切断は、siRNA鎖によって結合した領域の中央近くで起こる。哺乳動物細胞において、長dsRNA(>30nt)の導入は、タンパク質合成の非特異的阻害およびRNA分解によって例示される、強力な抗ウイルス応答を開始する。しかし、哺乳動物抗ウイルス応答は、siRNAの導入または発現によって迂回され得る。
【0076】
細胞および生物中へのdsRNAの注入およびトランスフェクションは、siRNAの送達の主な方法であった。サイレンシング効果は、数日間持続し、娘細胞へ移入されるようであるが、最終的には減衰する。しかし、近年、いくつかのグループが、一過性および安定トランスフェクト哺乳動物細胞においてsiRNAを持続的に発現させるための発現ベクターを開発した。(例えば、Brummelkamp TR, Bernards R, and Agami R. (2002). A system for stable expression of short interfering RNAs in mammalian cells. Science 296:550-553;Lee NS, Dohjima T, Bauer G, Li H, Li M-J, Ehsani A, Salvaterra P, and Rossi J. (2002). Expression of small interfering RNAs targeted against HIV-1 rev transcripts in human cells. Nature Biotechnol. 20:500-505;Miyagishi M, and Taira K. (2002). U6-promoter-driven siRNAs with four uridine 3’ overhangs efficiently suppress targeted gene expression in mammalian cells. Nature Biotechnol. 20:497-500;Paddison PJ, Caudy AA, Bernstein E, Hannon GJ, and Conklin DS. (2002). Short hairpin RNAs (shRNAs) induce sequence-specific silencing in mammalian cells. Genes & Dev. 16:948-958;Paul CP, Good PD, Winer I, and Engelke DR. (2002). Effective expression of small interfering RNA in human cells. Nature Biotechnol. 20:505-508;Sui G, Soohoo C, Affar E-B, Gay F, Shi Y, Forrester WC, and Shi Y. (2002). A DNA vector-based RNAi technology to suppress gene expression in mammalian cells. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(6):5515-5520;Yu J-Y, DeRuiter SL, and Turner DL. (2002). RNA interference by expression of short-interfering RNAs and hairpin RNAs in mammalian cells. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(9):6047-6052を参照されたい(その全体を本明細書に参照により組み入れる))。
【0077】
いくつかのベクターが、遺伝子特異的サイレンシングを実施できるsiRNA様分子へインビボでプロセシングされる低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を発現させるように操作されている。ベクターは、ポリメラーゼIII(polIII)プロモーター(例えば、U6またはH1プロモーター)と4−5チミジン転写終結部位との間にshRNA配列を含む。転写産物は、終結部位の2位で終結され(polIII転写産物は天然にポリ(A)テールを欠いている)、次いで3’UUオーバーハングを有するステムループ構造へ折り畳まれる。shRNAの末端はインビボでプロセシングされ、shRNAを約21ntのsiRNA様分子へ変換し、それが今度はRNAiを開始する。この後者の知見は、線虫、ショウジョウバエ、植物およびトリパノソーマにおける近年の実験と相関しており、ここで、RNAiは、ステムループ構造へ折り畳まれるRNA分子によって誘導されている。siRNAベクターおよび発現系の使用は公知であり、Ambion, Inc.(登録商標)(Austin, TX)、Lentigen, Inc.(Baltimore, MD)、Panomics(Fremont, CA)、およびSigma−Aldrich(ST. Louis, MO)から市販されている。
【0078】
本発明の別の局面において、標的RNA分子と相互作用し、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体遺伝子活性をダウンレギュレートする酵素核酸分子またはアンチセンス分子は、DNAベクターまたはRNAベクター中に挿入された転写単位から発現される。組換えベクターは好ましくは、DNAプラスミドまたはウイルスベクターである。酵素核酸分子またはアンチセンス発現ウイルスベクターは、レンチウイルス、サイトメガロウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、またはアルファウイルスに基づいて構築され得るが、それらに限定されるわけではない。好ましくは、酵素核酸分子またはアンチセンスを発現できる組換えベクターは、標的細胞中に送達され、そこに存続する。あるいは、酵素核酸分子またはアンチセンスの発現を提供するウイルスベクターを使用することができる。このようなベクターを、必要に応じて反復して投与することができる。一旦発現されると、酵素核酸分子またはアンチセンスは、標的RNAへ結合し、その機能または発現をダウンレギュレートする。酵素核酸分子またはアンチセンスを発現するベクターの送達は、例えば静脈内または筋肉内投与によって、患者または対象から外植された標的細胞への投与およびそれに続く患者または対象への再導入によって、または所望の標的細胞中への導入を可能にする任意の他の手段によって、全身性であり得る。アンチセンスDNAは、一本鎖DNA細胞内発現ベクターの使用を介して発現され得る。
【0079】
「ベクター」によって、所望の核酸、例えば、細菌プラスミド、ウイルス核酸、HAC、BACなどを送達するのに使用される任意の核酸ベースの技術が意味される。
【0080】
個々に、または他の薬物との組み合わせでもしくは他の薬物と共同して、本発明の核酸分子を、上記で考察する疾患または状態を処置するのに使用することができる。例えば、当業者には明らかなように、処置に適した条件下で、個々に、または1つ以上の薬物との組み合わせで、対象を処置し得るか、または他の適切な細胞を処理し得る。
【0081】
RNA干渉を誘導するために特別に設計されたベクター構築物の使用は、オリゴヌクレオチドベースの技術を上回る多数の利点を有する。最も重要な利点は、安定性、および誘導性プロモーターを介する転写の誘導である。ベクター中のプロモーター領域は、shRNA転写産物が定常的に発現され、すべての時点で細胞レベルを維持することを確実にする。したがって、効果の持続時間は、通常数日以下持続する注入されたRNAほど一過性ではない。そして、オリゴ注入の代わりに発現構築物を使用することによって、ベクターが細胞株において持続的固定物となりうるので、遺伝子ノックダウンの多世代研究を実施することが可能である。
【0082】
「三重鎖形成オリゴヌクレオチド」または「三重鎖オリゴヌクレオチド」によって、配列特異的に二本鎖DNAに結合して、三重鎖らせんを形成することができるオリゴヌクレオチドが意味される。このような三重らせん構造の形成は、標的化する遺伝子の転写を阻害することが示されている(Duval-Valentin et al., 1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 504; Fox, 2000, Curr. Med. Chem., 7, 17-37; Praseuth et. al., 2000, Biochim. Biophys. Acta, 1489, 181-206)。
【0083】
「二本鎖RNA」または「dsRNA」によって、遺伝子の対応するメッセンジャーRNA転写産物を分解する細胞酵素を活性化できる予め決定された遺伝子配列とマッチする二本鎖RNAが意味される。これらのdsRNAは、低分子干渉RNA(siRNA)といわれ、遺伝子発現を阻害するのに使用され得る(例えば、Elbashir et al., 2001, Nature, 411, 494-498;およびBass, 2001, Nature, 411, 428-429参照)。本明細書で使用する「二本鎖RNA」または「dsRNA」という用語は、低分子干渉RNA「siRNA」を含むRNA干渉「RNAi」のできる二本鎖RNA分子を指す。例えば、Bass, 2001, Nature, 411, 428-429;Elbashir et al., 2001, Nature, 411, 494-498;およびKreutzer et al., 国際PCT公開WO 00/44895;Zernicka-Goetz et al., 国際PCT公開WO 01/36646;Fire, 国際PCT公開WO 99/32619;Plaetinck et al., 国際PCT公開WO 00/01846;Mello and Fire, 国際PCT公開WO 01/29058;Deschamps-Depaillette, 国際PCT公開WO 99/07409;およびLi et al., 国際PCT公開WO 00/44914を参照されたい。
【0084】
MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体遺伝子発現をダウンレギュレートする本発明の酵素核酸分子、アンチセンス核酸または他の核酸分子は、DU、DHIC、およびMG53およびMG53受容体遺伝子機能の調節に応答する任意の他の状態を含むがそれらには限定されない種々の膀胱障害および状態を処置するための治療アプローチを表す。阻害RNA分子の使用および技術は、当技術分野において公知であり、米国特許第7,022,828号(その教示を全体としてすべての目的のために本明細書に参照により組み入れる)に詳細に記載される。
【0085】
本発明の一つの実施態様において、本発明の核酸分子は、長さ約10〜100ヌクレオチドであり得る。例えば、本発明の酵素核酸分子は、好ましくは長さ約15〜50ヌクレオチド、より好ましくは長さ約25〜40ヌクレオチドである(例えば、Jarvis et al., 1996, J. Biol. Chem., 271, 29107 29112参照)。本発明の例示的なアンチセンス分子は、好ましくは長さ約15〜75ヌクレオチド、より好ましくは長さ約20〜35ヌクレオチドである(例えば、Woolf et al., 1992, PNAS., 89, 7305 7309;Milner et al., 1997, Nature Biotechnology, 15, 537 541参照)。本発明の例示的な三重鎖形成オリゴヌクレオチド分子は、好ましくは長さ約10〜40ヌクレオチド、より好ましくは長さ約12〜25ヌクレオチドである(例えば、Maher et al, 1990, Biochemistry, 29, 8820 8826;Strobel and Dervan, 1990, Science, 249, 73 75参照)。当業者は、必要とされるのが、核酸分子がその標的と相互作用しそして/または本明細書で意図される反応を触媒するために十分な長さおよび適切な高次構造に核酸分子があることのみであることを認識する。本発明の核酸分子の長さは、記載される一般的な限定内に限定されない。好ましくは、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体遺伝子発現を調節する、例えばダウンレギュレートする核酸分子は、MG53遺伝子、MG53結合タンパク質遺伝子、および/またはMG53受容体遺伝子のRNA分子と相補的な12〜100塩基を含む。
【0086】
本発明は、所望の標的のRNAに対して高度の特異性を示す核酸ベースの遺伝子調節薬剤のクラスを産生するための方法を提供する。例えば、酵素核酸分子は好ましくは、疾患または状態の特定の処置が、本発明の1つまたはいくつかの核酸分子を用いて提供され得るように、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体遺伝子をコードする標的RNAの高度に保存された配列領域を標的化する。このような核酸分子は、必要に応じて特異的な組織または細胞標的へ外因的に送達され得る。あるいは、核酸分子(例えば、リボザイムおよびアンチセンス)を、特異的細胞へ送達されるDNAおよび/またはRNAベクターから発現させることができる。
【0087】
本明細書で使用する「細胞」は、その通常の生物学的意味で使用され、多細胞生物全体を指すものではない。細胞は、例えば、インビボ、インビトロまたはエキソビボであり得、例えば細胞培養物中であり得、または例えば、鳥類、植物ならびにヒト、雌ウシ、ヒツジ、類人猿、サル、ブタ、イヌ、およびネコ等の哺乳動物を含む多細胞生物体中に存在し得る。細胞は、原核細胞(例えば、細菌細胞)または真核細胞(例えば、哺乳動物細胞または植物細胞)であり得る。
【0088】
「MG53」、「MG53結合タンパク質」、および「MG53受容体」タンパク質によって、全長のMG53、MG53結合タンパク質またはMG53受容体タンパク質、それらのドメイン、融合タンパク質、キメラ、またはフラグメントを含むペプチドまたはタンパク質が意味される。
【0089】
本発明の核酸ベースの阻害剤は、標的細胞または組織へ、直接添加されるか、またはカチオン性脂質と複合体形成されるか、リポソーム内に被包されるか、もしくは他の方法で送達され得る。核酸または核酸複合体は、関連組織へ、インビトロ、エキソビボ、またはインビボで、注射または注入ポンプを通じて、バイオポリマー中へのその組み込み有りまたは無しで、局所的に投与され得る。
【0090】
別の実施態様において、本発明は、1つ以上の非ヌクレオチド部分を有し、そしてRNA分子またはDNA分子を切断する酵素活性を有する酵素核酸分子を特徴とする。
【0091】
さらなる実施態様において、アンチセンスまたはリボザイム等の記載する核酸分子を、上記で考察する状態または疾患を処置するために他の公知の処置と組み合わせて使用することができる。例えば、記載する分子を、1つ以上の公知の治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0092】
アンチセンス分子は、修飾または非修飾RNA、DNA、または混合ポリマーオリゴヌクレオチドであり得、主に、マッチする配列に特異的に結合することによって機能し、ペプチド合成の阻害を生じることができる(Wu-Pong, November 1994, BioPharm, 20-33)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ワトソン・クリック塩基対形成によって標的RNAへ結合し、立体的遮断によってまたはRNaseH酵素を活性化することによってのいずれかで、結合した配列のリボソーム翻訳を防止することによって、遺伝子発現を遮断する。アンチセンス分子は、RNAプロセシングまたは核から細胞質への輸送を干渉することによって、タンパク質合成を変化させることもできる(Mukhopadhyay & Roth, 1996, Crit. Rev. in Oncogenesis 7, 151-190)。
【0093】
さらに、一本鎖DNAをRNAへ結合させることによって、ヘテロ二重鎖のヌクレアーゼ分解が生じ得る(Wu-Pong, 上記; Crooke, 上記)。今日までに、RNaseHのための基質として作用する骨格修飾DNA化学は、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、およびボロントリフルオリダートのみである。近年、2’−アラビノおよび2’−フルオロ−アラビノ含有オリゴもRNaseH活性を活性化できることが報告されている。
【0094】
化学的に修飾されたヌクレオチドの新規の立体配置、二次構造、および/またはRNaseH基質ドメインを利用するいくつかのアンチセンス分子が記載されている(Woolf et al., 国際PCT公開WO 98/13526;Thompson et al., 国際PCT公開WO 99/54459;1998年9月21日に出願されたHartmann et al., 米国出願番号第60/101,174号)(これらのすべての全体を本明細書に参照により組み入れる)。
【0095】
酵素RNAのいくつかの種類が現在知られている。さらに、いくつかのインビトロ選択(進化)ストラテジー(Orgel, 1979, Proc. R. Soc. London, B 205, 435)が、ホスホジエステル結合の切断および連結を触媒できる新たな核酸触媒を進化させるために使用されている(Joyce, 1989, Gene, 82, 83 87;Beaudry et al., 1992, Science 257, 635-641;Joyce, 1992, Scientific American 267, 90-97;Breaker et al., 1994, TIBTECH 12, 268;Bartel et al.,1993, Science 261:1411-1418;Szostak, 1993, TIBS 17, 89-93;Kumar et al., 1995, FASEB J., 9, 1183;Breaker, 1996, Curr. Op. Biotech., 7, 442;Santoro et al., 1997, Proc. Natl. Acad. Sci., 94, 4262;Tang et al., 1997, RNA 3, 914;Nakacane & Eckstein, 1994, 上記;Long & Uhlenbeck, 1994, 上記;Ishizaka et al., 1995, 上記;Vaish et al., 1997, Biochemistry 36, 6495;これらのすべてを本明細書に参照により組み入れる)。各々は、生理学的条件下でトランスにホスホジエステル結合の加水分解を含む一連の反応を触媒することができる(そしてしたがって、他のRNA分子を切断することができる)。
【0096】
酵素核酸分子の酵素的性質によって、治療処置に影響を及ぼすのに必要な酵素核酸分子の濃度をより低くさせることができる。このことは、酵素的に作用する酵素核酸分子の能力を反映する。したがって、単一の酵素核酸分子が、標的RNAの多くの分子を切断することができる。さらに、酵素核酸分子は、高度に特異的な阻害剤であり、阻害の特異性は標的RNAへの結合の塩基対形成メカニズムだけでなく、標的RNA切断のメカニズムにも依存する。切断部位付近の単一のミスマッチまたは塩基置換を選択して、酵素核酸分子の触媒活性を大いに減弱させることができる。
【0097】
エンドヌクレアーゼ酵素活性を有する核酸分子は、ヌクレオチド塩基配列特異的に他の別個のRNA分子を反復して切断することができる。このような酵素核酸分子は、実質的にいずれものRNA転写産物を標的化し、インビトロで効率的な切断を達成することができる(Zaug et al., 324, Nature 429 1986;Uhlenbeck, 1987 Nature 328, 596;Kim et al., 84 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8788, 1987;Dreyfus, 1988, Einstein Quart. J. Bio. Med., 6, 92;Haseloff and Gerlach, 334 Nature 585, 1988;Cech, 260 JAMA 3030, 1988;およびJefferies et al., 17 Nucleic Acids Research 1371, 1989;Santoro et al., 1997 上記)。
【0098】
その配列特異性の故に、トランス切断酵素核酸分子は、ヒト疾患のための治療薬として使用され得る(Usman & McSwiggen, 1995 Ann. Rep. Med. Chem. 30, 285-294;Christoffersen and Marr, 1995 J. Med. Chem. 38, 2023-2037)。酵素核酸分子を、細胞RNAのバックグラウンド内で特異的RNA標的を切断するように設計することができる。このような切断事象は、RNAを非機能的にし、そのRNAからのタンパク質発現を抑止する。このようにして、疾患状態と関連したタンパク質の合成を、選択的に阻害することができる(Warashina et al., 1999, Chemistry and Biology, 6, 237-250)。
【0099】
アロステリックに調節される本発明の酵素核酸分子(「アロザイム(allozyme)」)を使用して、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体遺伝子発現を調節することができる。これらのアロステリック酵素核酸またはアロザイム(例えば、George et al, 米国特許第5,834,186号および第5,741,679号、Shih et al., 米国特許第5,589,332号、Nathan et al., 米国特許第5,871,914号、Nathan and Ellington, 国際PCT公開WO 00/24931、Breaker et al., 国際PCT公開WO 00/26226および98/27104、ならびにSullenger et al., 国際PCT公開WO 99/29842参照)を、シグナル伝達物質に応答するよう設計し、これは今度は、酵素核酸分子の活性を調節し、そしてMG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体遺伝子の発現を調節する。あらかじめ決定されたシグナル伝達物質との相互作用に応答して、アロステリック酵素核酸分子の活性は、特定の標的の発現が選択的にダウンレギュレートされるように活性化または阻害される。標的は、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体遺伝子を含み得る。
【0100】
オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンス, GeneBloc)は、Caruthers et al., 1992, Methods in Enzymology 211, 3 19、Thompson et al., 国際PCT公開WO 99/54459、Wincott et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23, 2677 2684、Wincott et al., 1997, Methods Mol. Bio., 74, 59、Brennan et al, 1998, Biotechnol Bioeng., 61, 33 45、およびBrennan, 米国特許第6,001,311号に記載されるような当技術分野において公知のプロトコールを使用して合成される。これらの参考文献のすべてを本明細書に参照により組み入れる。非限定的な例において、小規模の合成を、394 Applied Biosystems,Inc.の合成装置において実施する。あるいは、本発明の核酸分子を、個別に合成し、そして合成後に、例えば連結によって一緒に結合することができる(Moore et al., 1992, Science 256, 9923;Draper et al., 国際PCT公開WO 93/23569;Shabarova et al., 1991, Nucleic Acids Research 19, 4247;Bellon et al., 1997, Nucleosides & Nucleotides, 16, 951;Bellon et al., 1997, Bioconjugate Chem. 8, 204)。
【0101】
本発明の核酸分子を、ヌクレアーゼ耐性基、例えば、2’−アミノ、2’−C−アリル、2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−Hでの修飾によって、安定性を増強するために、十分に修飾することができる(総説については、Usman and Cedergren, 1992, TIBS 17, 34;Usman et al., 1994, Nucleic Acids Symp. Ser. 31, 163参照)。
【0102】
ホスホロチオアート、ホスホロチオアート、および/または5’−メチルホスホナート結合でのオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間結合の化学的修飾は安定性を改善するが、多すぎるこれらの修飾はいくらかの毒性を引き起こし得る。それゆえ、核酸分子を設計する場合、これらのヌクレオチド間結合の量を最小化すべきである。これらの結合の濃度の低下は毒性を低下させるはずであり、その結果これらの分子の増加した有効性およびより高い特異性が生じる。
【0103】
活性を維持または増強する化学的修飾を有する核酸分子が提供される。このような核酸も、一般的に、非修飾核酸よりもヌクレアーゼに対して耐性性である。核酸分子は好ましくは、有効な細胞内治療薬として機能するために、ヌクレアーゼに対して耐性である。RNAおよびDNAの化学合成における改善(Wincott et al., 1995 Nucleic Acids Res. 23, 2677;Caruthers et al., 1992, Methods in Enzymology 211, 3-19(本明細書に参照により組み入れる))は、上記のようにそのヌクレアーゼ安定性を増強するためにヌクレオチド修飾を導入することによって、核酸分子を修飾する能力を拡大した。本発明の核酸ベースの分子の使用は、併用療法(例えば、異なる遺伝子を標的化した複数のアンチセンスまたは酵素核酸分子、公知の小分子阻害剤と結合した核酸分子、または分子および/または他の化学的もしくは生物学的分子の組み合わせを用いる断続的な処置)の可能性をもたらすことによって、疾患の進行のより良好な処置を導き得る。核酸分子での対象の処置は、異なる型の核酸分子の組み合わせも含み得る。
【0104】
一つの実施態様において、酵素活性を維持または増強する化学的修飾を有する核酸触媒が提供される。このような核酸も、一般的に、非修飾核酸よりもヌクレアーゼに対して耐性である。
【0105】
一つの実施態様において、本発明は、1つ以上のホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、メチルホスホナート、モルホリノ、アミダート、カルバマート、カルボキシメチル、アセトアミダート、ポリアミド、スルホナート、スルホンアミド、スルファマート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル、置換を含むリン酸骨格修飾を有する修飾酵素核酸分子を特徴とする。オリゴヌクレオチド骨格修飾の総説については、Hunziker and Leumann, 1995, Nucleic Acid Analogues: Synthesis and Properties, in Modern Synthetic Methods, VCH, 331 417、およびMesmaeker et al., 1994, Novel Backbone Replacements for Oligonucleotides, in Carbohydrate Modifications in Antisense Research, ACS, 24 39を参照されたい。これらの参考文献を本明細書に参照により組み入れる。核酸(例えば、アンチセンスおよびリボザイム)構造に対する種々の修飾を、これらの分子の有用性を増強するために行うことができる。例えば、このような修飾は、有効期間、インビトロでの半減期、生物学的利用率、安定性、ならびにこのようなオリゴヌクレオチドの標的部位への導入の容易さ(例えば、細胞膜の透過の増強、および標的化細胞を認識し、それに結合する能力の付与を含む)を増強することができる。
【0106】
核酸分子の投与。核酸分子の送達のための方法は、Akhtar et al., 1992, Trends Cell Bio., 2, 139;およびDelivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics, ed. Akhtar, 1995(これらの両方を本明細書に参照により組み入れる)に記載される。Sullivan et al., PCT WO 94/02595はさらに、酵素RNA分子の送達のための一般的な方法を記載する。これらのプロトコールを、実質的にいずれもの核酸分子の送達のために利用することができる。核酸分子を、リポソーム中への被包、イオン泳動、またはヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生物接着性ミクロスフェア等の他のビヒクル中への組込みを含むがそれらに限定されない当業者に公知の種々の方法によって、細胞へ投与することができる。あるいは、核酸/ビヒクルの組み合わせを、直接的な注射によってかまたは注入ポンプの使用によって局所的に送達する。他の送達経路は、経口送達(錠剤またはピルの形態)および/またはくも膜下腔内送達を含むが、それらに限定されるわけではない(Gold, 1997, Neuroscience, 76, 1153-1158)。他のアプローチには、例えば、抱合体および生分解性ポリマーの使用を通じての種々の輸送および担体システムの使用が含まれる。CNS送達を含む薬物送達ストラテジーについての包括的な総説については、Ho et al., 1999, Curr. Opin. Mol. Ther., 1, 336-343およびJain, Drug Delivery Systems: Technologies and Commercial Opportunities, Decision Resources, 1998およびGroothuis et al., 1997, J. NeuroVirol., 3, 387-400を参照されたい。
【0107】
本発明の分子を、医薬剤として使用することができる。医薬剤は、対象における疾患状態を予防する、その発症を阻害する、またはそれを処置する(ある程度まで症状を緩和する、好ましくは症状のすべてを緩和する)。
【0108】
本発明の負に荷電したポリヌクレオチドを、医薬組成物を形成するための安定化剤、バッファーなどとともにまたはそれらなしで、任意の標準的な手段によって対象中に投与(例えば、RNA、DNAまたはタンパク質)および導入することができる。リポソーム送達メカニズムを使用することが望ましい場合、リポソームの形成のための標準的なプロトコールに従うことができる。本発明の組成物を、経口投与のための錠剤、カプセルまたはエリキシル;直腸投与のための坐薬;滅菌溶液;注射投与のための懸濁液;および当技術分野で公知の他の組成物として製剤および使用することもできる。
【0109】
本発明は、記載する化合物の医薬的に許容される製剤も含む。これらの製剤には、上記の化合物の塩、例えば、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、酢酸、およびベンゼンスルホン酸の塩が含まれる。
【0110】
薬理学的組成物または製剤は、細胞または対象、好ましくはヒトへの投与、例えば、全身投与に適した形態の組成物または製剤を指す。「全身投与」によって、血流中への薬物のインビボでの全身的な吸収または蓄積およびそれに続く身体全体にわたる分布が意味される。適切な形態は、用途または侵入の経路(例えば、経口、経皮、または注射による)に部分的に依存する。このような形態は、組成物または製剤が標的細胞(すなわち、負に荷電したポリマーの送達が所望される細胞)に到達するのを妨げるべきではない。例えば、血流中へ注射される薬理学的組成物は、可溶性であるべきである。他の因子は、当技術分野で公知であり、毒性および組成物または製剤がその効果を発揮するのを妨げる形態等の考慮を含む。
【0111】
全身吸収を導く投与経路には、静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内および筋肉内が含まれるが、それらに限定されるわけではない。薬物の循環中への侵入の速度は、分子量またはサイズに応じて決まることが示されている。本発明の化合物を含むリポソームまたは他の薬物担体の使用は、例えば、網膜内皮系(RES)の組織等の特定の組織型において薬物を潜在的に局在化させることができる。リンパ球およびマクロファージ等の細胞の表面との薬物の会合を促進できるリポソーム製剤も有用である。
【0112】
医薬的に許容される製剤によって、その所望の活性に最も適した身体的位置における本発明の核酸分子の効果的な分布を可能にする組成物または製剤が意味される。本発明の核酸分子を用いる製剤に適した薬剤の非限定的な例には、PEG抱合核酸、リン脂質抱合核酸、親油性部分を含有する核酸、ホスホロチオアート、種々の組織、例えば、CNS中への薬物の侵入を増強することができるP−糖タンパク質阻害剤(例えば、プルロニックP85)(Jolliet-Riant and Tillement, 1999, Fundam. Clin. Pharmacol., 13, 16-26);移植後の徐放性送達のためのポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)ミクロスフェア等の生分解性ポリマー(Emerich, DF et al, 1999, Cell Transplant, 8, 47-58)Alkermes, Inc. Cambridge, Mass.;および血液脳関門を横切って薬物を送達することができ、そしてニューロン取り込みメカニズムを変化させることができるポリブチルシアノアクリラートから作製されるものなどの負荷されたナノ粒子(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry, 23, 941-949, 1999)が含まれる。核酸分子のCNS送達を含む送達ストラテジーの非限定的な他の例には、Boado et al., 1998, J. Pharm. Sci., 87, 1308-1315;Tyler et al, 1999, FEBS Lett., 421, 280-284;Pardridge et al., 1995, PNAS USA., 92, 5592-5596;Boado, 1995, Adv. Drug Delivery Rev., 15, 73-107;Aldrian-Herrada et al., 1998, Nucleic Acids Res., 26, 4910-4916;およびTyler et al., 1999, PNAS USA., 96, 7053-7058に記載される材料が含まれる。これらの参考文献のすべてを本明細書に参照により組み入れる。
【0113】
本発明は、ポリ(エチレングリコール)脂質を含有する表面修飾リポソーム(PEG修飾、または長期循環リポソームまたはステルスリポソーム)を含む組成物の使用も特徴とする。本発明の核酸分子は、種々の分子量の共有結合したPEG分子も含み得る。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増加させるための方法を与える。このクラスの薬物担体は、単核食細胞系(MPSまたはRES)によるオプソニン作用および除去に抵抗し、それにより、被包された薬物についてより長い血液循環時間および増強された組織曝露を可能にする(Lasic et al. Chem. Rev. 1995, 95, 2601-2627;Ishiwata et al., Chem. Pharm. Bull. 1995, 43, 1005-1011)。長期循環リポソームはまた、肝臓および脾臓等の代謝上活動的なMPS組織における蓄積を回避するその能力に基づいて、カチオン性リポソームと比較してより大きな程度までヌクレアーゼ分解から薬物を保護しそうである。これらの参考文献のすべてを本明細書に参照により組み入れる。
【0114】
本発明は、医薬的に許容される担体または希釈剤中に所望の化合物の医薬的有効量を含む、保存または投与用に調製された組成物も含む。治療用途のために許容される担体または希釈剤は、医薬分野において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)(本明細書に参照により組み入れる)に記載される。例えば、保存料、安定化剤、色素および香料が提供され得る。これらには、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。さらに、抗酸化剤および懸濁剤が使用され得る。
【0115】
医薬的有効用量または医薬的有効量は、疾患状態を予防する、その発症を阻害する、またはそれを処置する(ある程度まで症状を緩和する、好ましくは症状のすべてを緩和する)のに必要な用量である。医薬的有効用量は、疾患の型、使用される組成物、投与の経路、処置されている哺乳動物の型、考慮下にある特定の哺乳動物の身体的特徴、併用薬物、および医学分野の当業者が認識する他の因子に依存する。一般的に、0.1mg/kg〜1000mg/kg体重/日の活性成分の量が、負に荷電したポリマーの作用強度に応じて投与される。
【0116】
製剤を、従来の非毒性の医薬的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルを含有する薬用量単位製剤において、経口的に、局所的に、非経口的に、吸入またはスプレーによってまたは直腸的に投与することができる。本明細書で使用する非経口的という用語は、経皮、皮下、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内またはくも膜下腔内の注射または注入技術などを含む。さらに、本発明の核酸分子および医薬的に許容される担体を含む医薬製剤が提供される。本発明の核酸分子の1つ以上は、1つ以上の非毒性の医薬的に許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバント、ならびに所望の場合、他の活性成分と共同して存在し得る。本発明の医薬組成物は、経口使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ(lozenge)、水性または油性懸濁液、分散可能な粉末または顆粒、乳濁液、硬または軟カプセル、またはシロップもしくはエリキシルであり得る。
【0117】
経口使用のために意図される組成物を、医薬組成物の製造のための当技術分野で公知の任意の方法に従って調製することができ、このような組成物に、医薬的に洗練されかつ口当たりのよい調製物を提供するために、1つ以上の甘味料、香料、着色料または保存料を含めることができる。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の医薬的に許容される賦形剤と混合して活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤;造粒および崩壊剤、例えば、コーンスターチ、またはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシア、および潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤は、非コーティングであり得るか、または公知の技術によってコーティングされ得る。いくつかの場合において、このようなコーティングを、胃腸管中での崩壊および吸収を遅延させるための公知の技術によって調製することができ、それにより、より長時間にわたって持続した作用が提供される。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリン等の時間遅延材料を用いることができる。
【0118】
経口使用のための製剤を、硬ゼラチンカプセルとして提示することもでき、ここで、活性成分は、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合され、または軟ゼラチンカプセルとして提示することもでき、ここで、活性成分は、水または油媒体、例えば、ピーナツ油、流動パラフィンまたはオリーブ油と混合される。
【0119】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して活性材料を含有する。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピル−メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴムおよびアカシアゴムであり;分散または湿潤剤は、天然のホスファチド、例えば、レシチン、または脂肪酸とのアルキレンオキシドの縮合産物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪族アルコールとのエチレンオキシドの縮合産物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート等の脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとのエチレンオキシドの縮合産物、または脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとのエチレンオキシドの縮合産物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレアートであり得る。水性懸濁液は、1つ以上の保存料、例えば、エチル、またはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾアート、1つ以上の着色料、1つ以上の香料、およびショ糖またはサッカリン等の1つ以上の甘味料も含有し得る。
【0120】
油性懸濁液を、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナツ油、またはミネラルオイル、例えば、流動パラフィン中に活性成分を懸濁することによって製剤することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。甘味料および香料を、口当たりのよい経口調製物を提供するために添加することができる。これらの組成物を、アスコルビン酸等の抗酸化剤の添加によって保存することができる。
【0121】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散可能粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁剤および1つ以上の保存料と混合した活性成分を提供する。適切な分散もしくは湿潤剤または懸濁剤は、既に上記したものによって例示される。さらなる賦形剤、例えば、甘味料、香料および着色料も存在し得る。
【0122】
本発明の医薬組成物は、水中油乳濁液の形態にもあり得る。油相は、植物油またはミネラルオイルまたはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然ゴム、例えば、アカシアゴムまたはトラガントゴム、天然ホスファチド、例えば、ダイズレシチン、および脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレアート、およびエチレンオキシドとの該部分エステルの縮合産物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであり得る。乳濁液は、甘味料および香料も含有することができる。
【0123】
シロップおよびエリキシルを、甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコースまたはショ糖とともに製剤することができる。このような製剤は、粘滑薬、保存料、香料、着色料も含有することができる。医薬組成物は、滅菌注射用水性懸濁液または油性懸濁液の形態であり得る。この懸濁液を、上記した適切な分散または湿潤剤および懸濁剤を使用して公知の技術に従って製剤することができる。滅菌注射用調製物は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液でもあり得る。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁媒体として慣習的に用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の刺激のない固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸等の脂肪酸の、注射剤の調製における使用が見出される。
【0124】
本発明の核酸分子を、坐薬の形態で、例えば、薬物の直腸投与のために、または膀胱自体へ直接的にカテーテルを介して投与することもできる。これらの組成物を、常温では固体であるが、直腸温度では液体であり、それゆえ、直腸中で融解して、薬物を放出する適切な無刺激性の賦形剤とともに薬物を混合することによって調製することができる。このような材料には、ココアバターおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0125】
本発明の核酸分子を、滅菌媒体中で非経口的に投与することができる。使用されるビヒクルおよび濃度に応じて、薬物は、ビヒクル中で懸濁されるかまたは溶解されるかいずれかであり得る。有利には、局所麻酔薬、保存料および緩衝剤等のアジュバントを、ビヒクル中に溶解することができる。
【0126】
単回薬用量形態を産生するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、処置される宿主および特定の投与様式に応じて変動する。薬用量単位形態は一般的に、約1mg〜約1000mgの活性成分を含有する。
【0127】
任意の特定の患者または対象のための特定の用量レベルが、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与の時間、投与の経路、および排泄の速度、薬物の組み合わせおよび治療を受けている特定の疾患の重篤度を含む種々の因子に依存することが理解される。
【0128】
非ヒト動物への投与のために、組成物を、動物の食餌または飲料水へ添加することもできる。それにより動物が組成物の治療的に適切な量をその食餌と一緒に摂取するように動物の食餌および飲料水組成物を処方することは好都合であり得る。食餌またくは飲料水への添加のためのプレミックスとして組成物を提示することも好都合であり得る。
【0129】
組成物を全体的な治療効果を増加させるために、他の治療化合物との組み合わせで対象へ投与することもできる。徴候を処置するための複数の化合物の使用は、副作用の存在を低下させながら、有益な効果を増加させることができる。
【0130】
あるいは、本発明の特定の核酸分子を、真核生物プロモーターから細胞内で発現させることができる(例えば、Izant and Weintraub, 1985, Science, 229, 345;McGarry and Lindquist, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 83, 399;Scanlon et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 10591 5;Kashani-Sabet et al., 1992, Antisense Res. Dev., 2, 3 15;Dropulic et al., 1992, J. Virol., 66, 1432 41;Weerasinghe et al., 1991, J. Virol., 65, 5531 4;Ojwang et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 10802 6;Chen et al., 1992, Nucleic Acids Res., 20, 4581 9;Sarver et al., 1990 Science, 247, 1222 1225;Thompson et al, 1995, Nucleic Acids Res., 23, 2259;Good et al., 1997, Gene Therapy, 4, 45;これらの参考文献のすべての全体を本明細書に参照により組み入れる)。当業者は、任意の核酸を、適切なDNA/RNAベクターから真核細胞において発現させ得ることを理解する。
【0131】
一つの局面において、本発明は、本発明の核酸分子の少なくとも1つをコードする核酸配列を含む発現ベクターを特徴とする。本発明の核酸分子をコードする核酸配列は、核酸分子の発現を可能にする様式で作動可能に連結される。
【0132】
核酸分子配列の転写は、真核生物RNAポリメラーゼI(polI)、RNAポリメラーゼII(polII)、またはRNAポリメラーゼIII(polIII)のためのプロモーターから駆動される。polIIまたはpolIIIプロモーターからの転写産物は、すべての細胞において高レベルで発現し;所定の細胞型における所定のpolIIプロモーターのレベルは、付近に存在する遺伝子調節配列(エンハンサー、サイレンサー等)の性質に依存する。原核生物RNAポリメラーゼ酵素が適切な細胞中で発現されるのであれば、原核生物RNAポリメラーゼプロモーターも使用される(Elroy-Stein and Moss, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 6743 7;Gao and Huang 1993, Nucleic Acids Res., 21, 2867 72;Lieber et al., 1993, Methods Enzymol., 217, 47 66;Zhou et al., 1990, Mol. Cell. Biol., 10, 4529 37)。これらの参考文献のすべてを本明細書に参照により組み入れる。何名かの研究者が、このようなプロモーターから発現されるリボザイム等の核酸分子が哺乳動物細胞中で機能できることを実証している(例えば、Kashani-Sabet et al., 1992, Antisense Res. Dev., 2, 3 15;Ojwang et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 10802 6;Chen et al, 1992, Nucleic Acids Res., 20, 4581 9;Yu et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 6340 4;L’Huillier et al., 1992, EMBO J., 11, 4411 8;Lisziewicz et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 90, 8000 4;Thompson et al., 1995, Nucleic Acids Res., 23, 2259;Sullenger & Cech, 1993, Science, 262, 1566)。
【0133】
別の局面において、本発明は、本発明の核酸分子の発現を可能にする様式で、本発明の核酸分子の少なくとも1つをコードする核酸配列を含む発現ベクターを特徴とする。一つの実施態様において、発現ベクターは、a)転写開始領域;b)転写終結領域;c)少なくとも1つの該核酸分子をコードする核酸配列を含み;ここで、該配列は、該核酸分子の発現および/または送達を可能にする様式で、該開始領域および該終結領域へ作動可能に連結される。
【0134】
本発明のさらなる目的は、適切な容器、その中に配置される医薬的に許容される形態の本発明の治療薬、およびその使用のための説明書を含むキットを提供することである。
【0135】
別の実施態様において、本発明の単離された核酸分子は、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体のヌクレオチド配列の相補体である核酸分子を含む。本明細書で使用する「相補的」という用語は、核酸分子のヌクレオチド単位間のワトソン・クリックまたはフーグスティーン塩基対形成を指し、「結合」という用語は、2つのポリペプチドもしくは化合物または会合したポリペプチドもしくは化合物またはそれらの組み合わせの間の物理的または化学的相互作用を意味する。結合には、イオン性、非イオン性、ファンデルワールス、疎水性相互作用などが含まれる。物理的な相互作用は、直接的または間接的のいずれかであり得る。
【0136】
本明細書で使用する「フラグメント」は、核酸の場合には特異的なハイブリダイゼーションを、またはアミノ酸の場合にはエピトープの特異的認識を可能にするのに十分な長さである、少なくとも6個の(連続した)核酸または少なくとも4個の(連続した)アミノ酸の配列として定義され、多くとも全長未満のいくらかの部分である。
【0137】
「宿主細胞」という用語には、異種核酸を保有させるのに使用され得るか、または異種核酸によってコードされるペプチドもしくはタンパク質を発現する細胞が含まれる。宿主細胞は、細胞のネイティブな(非組換え)形態内では見出されない遺伝子、遺伝子が改変され、人工的な手段によって細胞中へ再導入される場合の細胞のネイティブな形態において見出される遺伝子、または細胞から核酸を取り出すことなしに人工的に改変された細胞に対して内因性の核酸を含むことができる。宿主細胞は、真核細胞または原核細胞であり得る。細菌の培養に必要な一般的な生育条件は、BERGEY’S MANUAL OF SYSTEMATIC BACTERIOLOGY, Vol. 1, N. R. Krieg, ed., Williams and Wilkins, Baltimore/London (1984)等のテキストにおいて見出され得る。「宿主細胞」は、内因性の遺伝子もしくはプロモーターまたはその両方が、本発明の複合体のポリペプチド成分の1つ以上を産生するように改変されているものでもあり得る。
【0138】
「誘導体」は、直接的にか、改変によるか、または部分的置換によるかのいずれかでネイティブな化合物から形成される組成物である。
【0139】
「アナログ」は、ネイティブな化合物と類似しているが同一ではない構造を有する核酸配列またはアミノ酸配列である。
【0140】
本発明の核酸またはタンパク質の誘導体またはアナログには、同一のサイズの核酸またはアミノ酸配列にわたって、または整列された配列と比較した場合に(ここで整列が当技術分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによって実施されるか、もしくはそのコードする核酸がストリンジェントな、中程度にストリンジェントな、または低度にストリンジェントな条件下で本発明のタンパク質をコードする配列の相補体とハイブリダイズできる)、本発明の核酸またはタンパク質と、種々の実施態様において、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%の同一性(好ましい同一性は80〜95%である)で実質的に相同である領域を含む分子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、Ausubel, et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, N.Y., 1993を参照されたい。核酸の誘導体および改変体には、遺伝子置換、部位特異的変異、欠失、挿入、組換え、修復、シャッフリング、エンドヌクレアーゼ消化、PCR、サブクローニング、および関連技術によって得られるものが含まれる。
【0141】
「ホモログ」は、天然であり得るか、または関連した配列を有する1つ以上の核酸の人工的な合成によって、もしくは関連した核酸を生成するための1つ以上の核酸の改変によって作製され得る。核酸は、天然でまたは人工的に、共通の祖先配列に由来する場合、相同的である(例えば、オルソログまたはパラログ)。2つの核酸間の相同性が明確に記載されていない場合、相同性を、2つ以上の配列間の核酸比較によって推定することができる。配列が、ある程度の配列類似性、例えば、一次アミノ酸構造レベルで約30%超を示す場合、それらは、共通の祖先を共有すると結論付けられる。本発明の目的のために、核酸配列が、低ストリンジェンシー条件下で組換えおよび/またはハイブリダイゼーションを可能にするのに十分に類似している場合、遺伝子は相同的である。
【0142】
本明細書で使用する「ハイブリダイゼーション」は、配列が複雑な混合物(例えば、全細胞)のDNAまたはRNA中に存在する場合を含む、低度に、中程度に、または高度にストリンジェントな条件下で、特定のヌクレオチド配列のみと分子が結合、二本鎖形成、またはハイブリダイズすることを指す。
【0143】
さらに、当業者は、核酸の変化が化学的に類似のアミノ酸の置換を生じる、コード配列において単一のアミノ酸または少数のアミノ酸を変化、付加または欠失する、核酸の置換、欠失または付加も、「保存的変異」に含まれることを認識する。互いに保存的置換として作用し得るアミノ酸は、以下を含む:塩基性:アルギニン(R)、リジン(K)、ヒスチジン(H);酸性:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q);親水性:グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I);疎水性:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);含硫:メチオニン(M)、システイン(C)。さらに、保存的変化によって異なる配列は、一般的に相同的である。
【0144】
変異誘発、PCR、クローニングなどを含む本発明の実施に有用な分子生物学的技術の記載は、Berger and Kimmel, GUIDE TO MOLECULAR CLONING TECHNIQUES, METHODS IN ENZYMOLOGY, volume 152, Academic Press, Inc., San Diego, Calif. (Berger);Sambrook et al., MOLECULAR CLONING--A LABORATORY MANUAL (2nd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989、およびCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc.;Berger、Sambrook、およびAusubelならびにMullis et al., 米国特許第4,683,202号 (1987);PCR PROTOCOLS A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS (Innis et al. eds), Academic Press, Inc., San Diego, Calif. (1990) (Innis);Arnheim & Levinson (Oct. 1, 1990) C&EN 36-47;Lueng, et al.,を含む。
【0145】
さらに別の実施態様において、本発明の核酸を、哺乳動物発現ベクターを使用して、哺乳動物細胞中で発現させる。原核細胞および真核細胞の両方に適した発現系については、例えば、Sambrook, et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989の第16章および第17章を参照されたい。
【0146】
ポリヌクレオチドは、DNA分子、cDNA分子、ゲノムDNA分子、またはRNA分子であり得る。DNAまたはRNAとしてのポリヌクレオチドは、T(チミジン)が、U(ウラシル)でもあり得る配列を含み得る。ポリヌクレオチドの特定の位置にあるヌクレオチドが、逆平行DNAまたはRNA鎖における同じ位置のヌクレオチドとともにワトソン・クリック対合を形成できる場合、ポリヌクレオチドおよびDNA分子またはRNA分子は、その位置で互いに相補的である。ポリヌクレオチドおよびDNA分子またはRNA分子は、各分子における対応する位置の十分な数が、所望のプロセスをもたらすために互いにハイブリダイズできるヌクレオチドによって占有される場合、互いに実質的に相補的である。
【0147】
組換えDNAでの宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来の技術によって実施され得る。「形質転換」によって、新たなDNA(すなわち、細胞に対して外因性のDNA)の組み込み後の細胞中で誘導される持続的なまたは一過性の遺伝子変化が意味される。
【0148】
別の実施態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指示できる(例えば、組織特異的調節エレメントが、核酸を発現させるために使用される)。組織特異的調節エレメントは、当技術分野において公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert, et al., 1987. Genes Dev. 1: 268-277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame and Eaton, 1988. Adv. Immunol. 43: 235-275)、特にT細胞受容体のプロモーター(Winoto and Baltimore, 1989. EMBO J. 8: 729-733)および免疫グロブリン(Banerji, et al., 1983. Cell 33: 729-740;Queen and Baltimore, 1983. Cell 33: 741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle, 1989. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund, et al., 1985. Science 230: 912-916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開第264,166号)が含まれる。発達調節されるプロモーター、例えば、マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss, 1990. Science 249: 374-379)およびαフェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman, 1989. Genes Dev. 3: 537-546)も包含される。
【0149】
任意の実施態様において、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体をコードする核酸は、1つ以上の裸のDNA;適切な発現ベクター中に配置されそしてエピソームで維持される1つ以上の核酸;宿主細胞のゲノム中へ組込まれた1つ以上の核酸;複合体の成分をコードする内因性遺伝子の改変型;1つ以上の調節核酸配列と組み合わされた1つ以上の核酸;またはそれらの組み合わせとして存在し得る。核酸は、リンカーペプチドまたは融合タンパク質成分、例えば、Hisタグ、FLAGタグ、蛍光タンパク質、GST、TAT、抗体部分、シグナルペプチドなどを、5’末端に、3’末端に、またはORF内の任意の位置で所望により含み得る。
【0150】
好ましい実施態様において、本発明の核酸は、MG53受容体の可溶性(すなわち、細胞外)部分をコードするポリヌクレオチドを含む。本明細書に記載される任意の実施態様を、当業者に周知の標準的な分子生物学的および遺伝学的アプローチを使用して達成することができる。
【0151】
宿主がE.coli等の原核生物である場合、DNA取り込みのできるコンピテント細胞を、対数増殖期後に回収され、その後当技術分野で周知の手順によりCaCl法によって処理された細胞から調製することができる。あるいは、MgCl、RbCl、リポソーム、またはリポソーム−タンパク質抱合体を使用することができる。形質転換を、宿主細胞のプロトプラストを形成した後に、または電気穿孔法によって実施することもできる。これらの例は、本発明を限定するものではなく;当業者に周知であり、そして本発明の範囲内にあることが意図される宿主細胞をトランスフェクトするための多数の技術が存在する。
【0152】
宿主が真核生物の場合、DNAでのトランスフェクションの方法は、リン酸カルシウム共沈、マイクロインジェクション等の従来の機械的手順、電気穿孔法、リポソーム中に封入したプラスミドの挿入、またはウイルスベクターを含み、そして当技術分野で公知のその他の方法が使用され得る。真核細胞は、酵母細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae)であり得るか、またはヒト細胞を含む哺乳動物細胞であり得る。組換えタンパク質の長期間で高収量の産生のためには、安定発現が好ましい。
【0153】
ポリペプチド
他の実施態様において、本発明は、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体ポリペプチド、抗体ポリペプチド、またはそれらの生物的に活性な部分をコードする単離された核酸分子に関する。複合体のポリペプチドを、例えば、標準的な方法に従ってペプチド合成装置を使用して;または細胞もしくは細胞抽出物中で個別に各ポリペプチドを発現させ、次いでこのポリペプチドを単離および精製することによって形成することができる。
【0154】
抗体
本明細書で使用する「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、少なくとも1つの、好ましくは2つの重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)および少なくとも1つの、好ましくは2つの軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)を含む抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指す。このような抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fab、Fab’およびF(ab’)2フラグメント、およびFab発現ライブラリーが含まれるが、それらに限定されるわけではない。VH領域およびVL領域をさらに、より保存された「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる領域によって分散された「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変性の領域へ細分することができる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、厳密に規定されている(Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242、およびChothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917(本明細書に参照により組み入れる)参照)。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される3つのCDRおよび4つのFRから構成される。一般的に、ヒトから得られた抗体分子は、分子中に存在する重鎖の性質によって互いに異なるIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのクラスのいずれかと関連する。特定のクラスはさらにIgG、IgG、およびその他のようなサブクラスを有する。さらに、ヒトにおいて、軽鎖は、κ鎖またはλ鎖であり得る。抗体に対する本明細書における言及には、このようなクラス、サブクラスおよびヒト抗体種の型のすべてに対する言及が含まれる。
【0155】
抗体を、免疫化物質として目的のペプチドを含有するインタクトなポリペプチドまたはフラグメントから調製し得る。好ましい抗原性ポリペプチドフラグメントは、MG53、MG53結合タンパク質、またはMG53受容体タンパク質の15〜100個の連続したアミノ酸である。一つの実施態様において、ペプチドは、ポリペプチドの非膜貫通ドメイン中に、例えば、細胞外または細胞内ドメイン中に位置する。例示的な抗体または抗体フラグメントは、細胞外環境から接近可能でありそしてタンパク質の機能性を変化させるエピトープへ結合する。特定の実施態様において、本発明は、MG53タンパク質、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体タンパク質、それらの変異形、部分および/または組み合わせの1つ以上のエピトープを認識しそしてそれに特異的である抗体を含む。別の実施態様において、本発明の抗体は、MG53/MG53受容体相互作用を標的化しそしてそれに干渉してシグナル伝達を阻害し得る。
【0156】
モノクローナル抗体の調製は、当技術分野において周知である;例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, page 726 (Cold Spring Harbor Pub. 1988)を参照されたい。モノクローナル抗体を、マウスまたはウサギに抗原を含む組成物を注射し、血清試料を取り出すことによって抗体産生の存在を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を得、リンパ球をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを産生し、ハイブリドーマをクローニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、そしてハイブリドーマ培養物から抗体を単離することによって得ることができる。モノクローナル抗体を、当技術分野で周知の技術によってハイブリドーマ培養物から単離および精製することができる。
【0157】
他の実施態様において、抗体を、組換え産生することができ、例えば、ファージディスプレイによってまたはコンビナトリアル法によって産生することができる。ファージディスプレイおよびコンビナトリアル法を使用して、MG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体タンパク質またはそれらのフラグメントへ結合する組換え抗体を単離することができる(例えば、Ladner et al. 米国特許第5,223,409号;Fuchs et al. (1991) Bio/Technology 9:1370-1372;Hay et al. (1992) Hum Antibod Hybridomas 3:81-85;Huse et al. (1989) Science 246:1275-1281;Clackson et al. (1991) Nature 352:624-628;Gram et al. (1992) PNAS 89:3576-3580に記載されるように)。
【0158】
ヒトモノクローナル抗体を、マウスの系ではなくヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを使用して生成することもできる。目的の抗原で免疫化されたこれらのトランスジェニックマウス由来の脾細胞は、ヒトタンパク質由来のエピトープに対する特異的親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを産生するために使用される(例えば、Wood et al. 国際出願WO 91/00906;Lonberg, N. et al. 1994 Nature 368:856-859;Green, L. L. et al. 1994 Nature Genet. 7:13-21;Morrison, S. L. et al. 1994 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855参照)。
【0159】
本発明の複合体の成分または複合体自体に対する治療上有用な抗体は、「ヒト化」モノクローナル抗体に由来し得る。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重および軽可変鎖からヒト可変ドメインへマウス相補性決定領域を移し、次いでヒト残基をマウスの対応物のフレームワーク領域へ置換することによって産生される。ヒト化モノクローナル抗体由来の抗体成分の使用は、マウス定常領域の免疫原性と関連した潜在的な問題を除去する。ヒト化モノクローナル抗体を産生するための技術は、Jones et al., Nature 321: 522, 1986およびSinger et al., J. Immunol. 150: 2844, 1993において見出され得る。抗体は、コンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーから単離されたヒト抗体フラグメントにも由来し得る;例えば、Barbas et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2, 119, 1991を参照されたい。さらに、キメラ抗体を、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的特異性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にスプライスすることによって得ることができる;例えば、Takeda et al., Nature 314: 544-546, 1985を参照されたい。キメラ抗体は、異なる部分が、異なる動物種由来であるものである。
【0160】
抗イディオタイプ技術を、エピトープを模倣するモノクローナル抗体を産生するために使用することができる。第一のモノクローナル抗体に対して作製された抗イディオタイプモノクローナル抗体は、第一のモノクローナル抗体によって結合されるエピトープの「イメージ」である超可変領域における結合ドメインを有する。あるいは、単鎖抗体を産生するために使用される技術を、単鎖抗体を産生するために使用することができる。単鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖および軽鎖フラグメントを連結して、単鎖ポリペプチドを生じさせることによって形成される。特異的エピトープ、例えば細胞外エピトープを認識する抗体フラグメントを、当技術分野で周知の技術によって生成することができる。このようなフラグメントは、タンパク質分解性消化によって産生されるFabフラグメント、およびジスルフィド架橋を還元することによって生成されるFabフラグメントを含む。免疫療法のために使用される場合、モノクローナル抗体、そのフラグメント、またはそれらの両方は、標識されていなくてもよく、または治療薬で標識されてもよい。これらの薬剤は、当技術分野で周知の技術によって、モノクローナル抗体へ直接的にまたは間接的に連結されることができ、薬物、放射性同位体、レクチンおよび毒素等の薬剤を含む。
【0161】
モノクローナル抗体の投与のための薬用量範囲は、所望の効果を生じるのに十分に大きく、年齢、状態、体重、性別、年齢および処置しようとする状態の程度で変動し、当業者によって容易に決定され得る。薬用量は、約0.1mg/kg〜約2000mg/kgであり得る。モノクローナル抗体を、静脈内、腹腔内、筋肉内、および/または皮下に投与することができる。
【0162】
本発明の特定の実施態様において、抗原性ペプチドによって包含される少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の表面上に位置するMG53、MG53結合タンパク質、および/またはMG53受容体の領域、例えば親水性領域である。タンパク質配列の疎水性分析は、ポリペプチドのどの領域が特に疎水性であり、それゆえ、抗体産生の標的化に有用な表面残基をコードしそうであることを示す。抗体産生を標的化するための手段として、親水性および疎水性の領域を示すヒドロパシープロットが、例えば、フーリエ変換を伴うかまたは伴わないKyte Doolittle法またはHopp Woods法を含む当技術分野で周知の任意の方法によって生成され得る。例えば、Hopp and Woods, 1981, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 78: 3824-3828;Kyte and Doolittle 1982, J. Mol. Biol. 157: 105-142を参照されたい(各々の全体を本明細書に参照により組み入れる)。抗原性タンパク質、またはその誘導体、フラグメント、アナログまたはホモログ内の1つ以上のドメインに特異的な抗体も本明細書で提供される。本発明のタンパク質、またはその誘導体、フラグメント、アナログ、ホモログまたはオルソログは、これらのタンパク質成分と免疫特異的に結合する抗体の生成における免疫原として利用され得る。
【0163】
ヒト抗体
完全ヒト抗体は本質的に、CDRを含む軽鎖および重鎖の両方の配列全体が、ヒト遺伝子から生じる抗体分子に関する。このような抗体は、本明細書において「ヒト抗体」、または「完全ヒト抗体」と呼ばれる。ヒトモノクローナル抗体を、トリオーマ(trioma)技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, et al., 1983 Immunol Today 4: 72参照)およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96参照)によって調製することができる。ヒトモノクローナル抗体は、本発明の実施において利用され得、ヒトハイブリドーマを使用することによって(Cote, et al., 1983. Proc Natl Acad Sci USA 80: 2026-2030参照)、またはヒトB細胞をエプスタイン・バーウイルスでインビトロでトランスフォームすることによって(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)産生され得る。
【0164】
さらに、ヒト抗体を、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol. 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991))を含むさらなる技術を使用して産生することもできる。同様に、ヒト抗体を、トランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が、部分的にまたは完全に不活性されているマウスにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作製することができる。チャレンジに際して、ヒト抗体産生が観察され、これは遺伝子再編成、構築、および抗体レパートリーを含むすべての点において、ヒトで見られるものと密接に類似している。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号;およびMarks et al.(Bio/Technology, 10:779-783 (1992));Lonberg et al.(Nature, 368:856-859 (1994));Morrison (Nature, 368:812-13 (1994));Fishwild et al,(Nature Biotechnology, 14:845-51 (1996));Neuberger (Nature Biotechnology, 14:826 (1996));およびLonberg and Huszar(Intern. Rev. Immunol., 13:65-93 (1995))に記載される。
【0165】
ヒト抗体はさらに、抗原によるチャレンジに応答して動物の内因性抗体ではなく完全ヒト抗体を産生するように改変されたトランスジェニック非ヒト動物を使用して産生され得る。非ヒト宿主において重および軽免疫グロブリン鎖をコードする内因性遺伝子は、無能力化されており、ヒト重および軽鎖免疫グロブリンをコードする活性な遺伝子座が、宿主のゲノム中へ挿入される。ヒトの遺伝子は、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含有する酵母人工染色体を使用して組み込まれる。すべての所望の改変を提供する動物は、次いで、改変の完全よりも少ない相補体を含有する中間トランスジェニック動物を交雑させることによって子孫として得られる。このような非ヒト動物の好ましい実施態様は、マウスであり、PCT公開WO 96/33735およびWO 96/34096に開示されるようにXenomouse(商標)と呼ばれる。
【0166】
Fabフラグメントおよび単鎖抗体
本発明によれば、技術を、本発明の抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生のために適応させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号参照)。さらに、方法を、タンパク質またはその誘導体、フラグメント、アナログもしくはホモログに対する所望される特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ効果的な同定を可能にするように、Fab発現ライブラリーの構築(例えば、Huse, et al., Science 246:1275-1281 (1989)参照)に適応させることができる。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含有する抗体フラグメントは、(i)抗体分子のペプシン消化によって産生されるF(ab’)2フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成されるFabフラグメント;(iii)パパインおよび還元剤での抗体分子の処理によって生成されるFabフラグメント、ならびに(iv)Fvフラグメントを含むが、それらに限定されない当技術分野で公知の技術によって産生され得る。
【0167】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体である。本発明の場合、結合特異性のうちの1つは、本発明の抗原性タンパク質に対するものである。第二の結合標的は、いずれかの他の抗原であり、有利には、細胞表面タンパク質または受容体または受容体サブユニットである。二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である。従来、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいており、ここで、2つの重鎖は、異なる特異性を有する(Milstein and Cuello, Nature, 305:537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為な取り合わせの故に、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、そのうち、1つのみが、適正な二重特異性構造を有する。同様の手順は、1993年5月13日に発行されたWO 93/08829およびTraunecker et al., EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示される。
【0168】
所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列へ融合することができる。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121:210 (1986);およびBrennan et al., Science 229:81 (1985)を参照されたい。
【0169】
さらに、Fab’フラグメントを、E.coliから直接的に回収し、化学的に結合して、二重特異性抗体を形成させることができる。Shalaby et al., J. Exp. Med. 175:217-225 (1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生を記載する。各Fab’フラグメントは、E.coliから個別に分泌され、二重特異性抗体を形成するためにインビトロでの定方向の化学的結合に供された。このように形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞および正常ヒトT細胞へ結合でき、そしてヒト乳腺腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性をトリガーすることができた。
【0170】
組換え細胞培養物から直接的に二重特異性抗体フラグメントを作製しそして単離するための種々の技術も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されている。Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)によって記載される「ディアボディ(diabody)」技術は、二重特異性抗体フラグメントを作製するための代替的なメカニズムを提供している。単鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体フラグメントを作製するための別のストラテジーも報告されている。Gruber et al., J. Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。2個を超える結合価を有する抗体が意図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt et al., J. Immunol. 147:60 (1991)。二重特異性抗体を、特定の抗原を発現する細胞へ細胞傷害性薬剤を方向付けるのにも使用できる。これらの抗体は、抗原結合アームおよび細胞傷害性薬剤または放射性核種キレート剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETAを結合するアームを有する。
【0171】
ヘテロ抱合抗体
ヘテロ抱合抗体も、本発明の範囲内である。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合した抗体から構成される。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的化するため(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の処置のため(WO 91/00360;WO 92/200373;EP 03089)に提唱されている。抗体が、架橋剤を包含するものを含む、合成タンパク質化学における公知の方法を使用して、インビトロで調製され得ることが意図される。例えば、免疫毒素を、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することによって構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオラートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミダート、ならびに例えば、米国特許第4,676,980号に開示されるものが含まれる。
【0172】
免疫抱合体
本発明は、化学薬剤または放射性同位体(すなわち、放射性抱合体)へ抱合した抗体を含む免疫抱合体にも関する。抗体および細胞傷害性薬物の抱合体は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミダートHCL等)、活性型エステル(ジスクシンイミジルスベラート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン等)、(トリレン2,6−ジイソシアナート等の)ジイソシアナート塩、およびビス活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン等)等の種々の二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta et al., Science, 238: 1098 (1987)に記載されるように調製することができる。炭素14標識1−イソチオシアナ−トベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、抗体への放射性核種の抱合のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。
【0173】
イムノリポソーム
本明細書に開示する抗体を、イムノリポソーム(immunoliposome)として製剤することもできる。抗体を含有するリポソームは、Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985);Hwang et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980);ならびに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号に記載されるような当技術分野で公知の方法によって調製される。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示される。
【0174】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法によって生成され得る。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを生じさせるように規定された孔サイズのフィルターを通して押し出される。本発明の抗体のFab’フラグメントは、ジスルフィド交換反応を介して、Martin et al ., J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されるようにして、リポソームへ抱合され得る。
【0175】
本発明の抗体の治療有効量は一般的に、治療目的を達成するのに必要な量に関する。上記のように、これは、特定の場合には、標的の機能性に干渉し、他の場合には、生理学的応答を促進する、抗体とその標的抗原との間の結合相互作用であり得る。投与する必要がある量はさらに、その特異的抗原に対する抗体の結合親和性に依存し、投与される抗体が、それが投与される自由容積の他の対象から枯渇する速度にも依存する。本発明の抗体または抗体フラグメントの治療有効用量についての一般的な範囲は、非限定的な例として、約0.1mg/kg体重〜約500mg/kg体重であり得る。一般的な投与頻度は、例えば、1日2回から1週間に1回の範囲であり得る。
【0176】
本発明のタンパク質に特異的に結合する抗体、および本明細書に開示されるスクリーニングアッセイによって同定される他の分子を、医薬組成物の形態で種々の障害の処置のために投与することができる。このような組成物の調製に関与する原理および考慮、ならびに成分の選択におけるガイダンスは、例えば、Remington: The Science And Practice Of Pharmacy 19th ed. (Alfonso R. Gennaro, et al., editors) Mack Pub. Co., Easton, Pa.: 1995;Drug Absorption Enhancement: Concepts, Possibilities, Limitations, And Trends, Harwood Academic Publishers, Langhorne, Pa., 1994;およびPeptide And Protein Drug Delivery (Advances In Parenteral Sciences, Vol. 4), 1991, M. Dekker, New Yorkにおいて提供される。活性成分は、例えば、コアセルベーション技術によってかまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、コロイド薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンにおける、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中にも封入され得る。インビボでの投与に使用されるべき製剤は、滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過メンブレンを通しての濾過によって容易に達成される。
【0177】
徐放性調製物を調製することができる。徐放性調製物の適切な例には、マトリクスが成形された物体、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれる。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタミン酸とのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドとから構成される注射用ミクロスフェア)等の分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸等のポリマーは、100日間を超える分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルは、より短い期間タンパク質を放出する。
【0178】
ELISAアッセイ
分析物タンパク質を検出するための薬物は、分析物タンパク質へ結合できる抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体は、ポリクローナルであり得るか、またはより好ましくはモノクローナルであり得る。インタクトな抗体、またはそのフラグメント(例えば、FabまたはF(ab)2)を、使用することができる。プローブまたは抗体に関する「標識」という用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体へ結合させる(すなわち、物理的に連結させる)ことによるプローブまたは抗体の直接的な標識、および直接標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識を包含することが意図される。間接的標識の例には、蛍光標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出、および、それにより蛍光標識されたストレプトアビジンを用いて検出することができる、ビオチンでのDNAプローブの末端標識が含まれる。「生物学的試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞および生物学的液体、ならびに対象内に存在する組織、細胞および液体を含むことが意図される。それゆえ、「生物学的試料」という用語の使用には、血液ならびに、血清、血漿、またはリンパ液を含む血液の画分または成分が含まれる。すなわち、本発明の検出方法を、生物学的試料中の分析物mRNA、タンパク質、またはゲノムDNAをインビトロおよびインビボで検出するために使用することができる。例えば、分析物mRNAの検出のためのインビトロ技術には、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションが含まれる。分析物タンパク質の検出のためのインビトロ技術には、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、および免疫蛍光が含まれる。分析物ゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術には、サザンハイブリダイゼーションが含まれる。イムノアッセイを実施するための手順は、例えば、"ELISA: Theory and Practice: Methods in Molecular Biology", Vol. 42, J. R. Crowther (Ed.) Human Press, Totowa, N.J., 1995;"Immunoassay", E. Diamandis and T. Christopoulus, Academic Press, Inc., San Diego, Calif., 1996;および"Practice and Thory of Enzyme Immunoassays", P. Tijssen, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1985に記載される。さらに、分析物タンパク質の検出のためのインビボ技術には、標識抗分析物タンパク質抗体の対象への導入が含まれる。例えば、抗体を、対象中でのその存在および位置が、標準的な画像処理技術によって、腔内、または経皮的に、単独でまたはエフェクター細胞を用いて検出され得る放射性マーカーで標識することができる。
【0179】
本発明の治療薬の投与のための調製物には、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、および乳濁液が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、およびオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルである。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、乳濁液または懸濁液(生理食塩水および緩衝化媒体を含む)が含まれる。ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、液体および栄養補充剤を含む乳酸リンゲル静脈内ビヒクル、電解質補充剤などが含まれる。保存料および他の添加物、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなどを添加し得る。
【0180】
本発明の化合物、核酸分子、ポリペプチド、および抗体(本明細書で「活性化合物」ともいう)、ならびにそれらの誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログを、投与に適した医薬組成物中へ組み込むことができる。このような組成物は典型的には、核酸分子、タンパク質、または抗体、および医薬的に許容される担体を含む。本明細書で使用する「医薬的に許容される担体」は、医薬投与に適合性の、任意のそしてすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。適切な担体は、この分野の標準的な参考図書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版(本明細書に参照により組み入れる)に記載されている。このような担体または希釈剤の好ましい例には、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。リポソームおよび非水性ビヒクル、例えば固定油も使用され得る。医薬的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬物が、活性化合物と不適合でない限り、組成物におけるその使用が意図される。補足的な活性化合物を組成物中に組み込むこともできる。
【0181】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤される。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜、腹腔内、および直腸投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌薬、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);バッファー、例えば酢酸、クエン酸またはリン酸、および浸透圧調整剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHを、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調整することができる。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量バイアル中に封入することができる。
【0182】
注射用途に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与については、適切な担体には、生理食塩水、静菌性水、Cremophor(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、組成物は、滅菌されていなければならず、容易な注射可能性が存在する程度まで流動性であるべきである。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌等の微生物の混入作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適正な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散の場合は必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌薬および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトール等のポリアルコール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0183】
滅菌注射用溶液を、適切な溶媒中の必要な量の活性化合物(例えば、本発明の治療複合体)を、必要に応じて上記に列挙する成分の1つまたは組み合わせとともに組み入れ、その後濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒および上記で列挙するものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中へ組み入れることによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、以前に濾過滅菌したその溶液から活性成分+任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥である。
【0184】
経口組成物には一般的に、不活性希釈剤または食用担体が含まれる。それらを、ゼラチンカプセル中に封入するか、または錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤とともに組み入れられ、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用され得る。経口組成物はまた、口腔洗浄薬として使用するために液体担体を使用して調製され得、ここで、液体担体中の化合物は、経口的に適用され、音を立てられ(swish)、そして吐き出されるかまたは飲み込まれる。医薬的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれか、または同様の性質の化合物を含有することができる:結合剤、例えば微結晶性セルロース、トラガントガムまたはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンまたは乳糖、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel、またはコーンスターチ;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはSterotes;流動促進剤、例えばコロイド性二酸化ケイ素;甘味料、例えばショ糖またはサッカリン;または香料、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料。
【0185】
経口投与のために、医薬組成物は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)等の医薬的に許容される賦形剤を用いる従来の手段によって調製された、例えば、錠剤またはカプセルの形態を取り得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングされ得る。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の形態を取り得るか、またはそれらは、使用前の水または他の適切なビヒクルを用いる構成のための乾燥産物として提示され得る。このような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別植物油);および保存料(例えば、メチルもしくはプロピルp−ヒドロキシベンゾアートまたはソルビン酸)等の医薬的に許容される添加物を用いる従来の手段によって調製され得る。調製物は、バッファー塩、香料、着色料、および甘味料も適宜含有し得る。
【0186】
経口投与のための調製物は、活性化合物の制御放出を与えるように適切に製剤され得る。頬側投与のためには、組成物は、従来の様式で製剤された錠剤またはロゼンジの形態を取り得る。吸入による投与のためには、本発明による使用のための化合物は、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体を使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレー提示の形態で簡便に送達される。加圧エアロゾルの場合、薬用量単位は、測量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。例えば、吸入器または注入器における使用のためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物の粉末混合物および乳糖またはデンプン等の適切な粉末基材を含有して製剤され得る。化合物は、注射による、例えば、ボーラス投与または連続注入による非経口投与のために製剤され得る。注射のための製剤は、単位薬用量形態で、例えば、アンプル中でまたは多用量容器中で、保存料を添加して、提示され得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳濁液のような形態を取り得、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤等の処方剤を含有し得る。あるいは、活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、滅菌発熱物質非含有水を用いる構成のための粉末形態であり得る。化合物は、例えばココアバターまたは他のグリセリド等の従来の坐薬基材を含有する、坐薬または停留浣腸等の直腸組成物中でも製剤され得る。以前に記載された製剤に加えて、化合物は、デポー調製物としても製剤され得る。このような長時間作用製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内)によってまたは筋肉内注射によって投与され得る。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容される油中の乳濁液として)またはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤され得る。
【0187】
吸入による投与のために、化合物は、適切な噴霧剤、例えば二酸化炭素等の気体を含有する加圧容器または分配器、または噴霧器から、エアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0188】
全身投与はまた、経粘膜または経皮的手段により得る。経粘膜投与または経皮投与のために、透過すべきバリアに適した浸透剤が製剤中で使用される。このような浸透剤は、一般的に当技術分野で公知であり、例えば経粘膜投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻内スプレーまたは坐薬の使用を通じて達成され得る。経皮投与のために、活性化合物は、当技術分野で一般的に公知のように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤される。
【0189】
一つの実施態様において、活性化合物は、移植物およびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出などの、身体からの迅速な除去に対して化合物を保護する担体を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製のための方法は、当業者に明らかである。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incからも商業的に入手され得る。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞を標的化したリポソームを含む)もまた、医薬的に許容される担体として使用できる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0190】
投与の容易さおよび薬用量の均一性のために薬用量単位形態で経口または非経口組成物を製剤することは、特に有利である。本明細書で使用する薬用量単位形態は、処置されるべき対象のための単位薬用量として適した物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要とされる医薬担体と共同して所望される治療効果を生じるよう計算された活性化合物のあらかじめ決定された量を含有する。本発明の薬用量単位形態についての仕様は、活性化合物の特有な特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のためにこのような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限によって左右され、それらに直接的に依存する。
【0191】
本発明の核酸分子は、ベクター中に挿入され、遺伝子治療ベクターとして使用され得る。遺伝子治療ベクターは、対象へ、例えば、静脈内注射、局所投与(例えば、米国特許第5,328,470号参照)または定位的注射(例えば、Chen, et al., 1994. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 3054-3057参照)によって送達され得る。遺伝子治療ベクターの医薬調製物は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができるか、または遺伝子送達ビヒクルが包埋された徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターが、組換え細胞からインタクトに産生され得る場合(例えば、レトロウイルスベクター)、医薬調製物は、遺伝子送達システムを産生する1つ以上の細胞を含むことができる。医薬組成物は、容器、パック、または分散器中に、投与のための説明書と一緒に含まれ得る。
【0192】
治療有効用量は、症状の寛解または遅延を生じるのに十分な治療薬の量を指す。このような化合物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な医薬手順によって測定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指標であり、LD50/ED50比として表され得る。大きな治療指標を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を使用し得るが、非感染細胞に対する潜在的な損傷を最小化し、それにより副作用を低下させるために、患部組織の部位にこのような化合物を標的化する送達システムを設計することに注意すべきである。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータを、ヒトにおける使用のための薬用量の範囲の処方において使用することができる。このような化合物の薬用量は好ましくは、毒性がほとんどないかまたはまったくないED50を含む循環濃度の範囲内にある。薬用量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療有効用量を、細胞培養アッセイから最初に評価することができる。用量を、細胞培養物において決定されるIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて処方し得る。このような情報を、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0193】
また、本発明によれば、、本明細書に記載の方法、選択ストラテジー、材料、または成分のいずれか1つを利用するキットまたはシステムが開示される。本開示による例示的なキットは、所望により、方法またはアッセイを実施するための説明書、梱包材料、アッセイ、デバイスまたはシステム成分を含有する1つ以上の容器などをさらに含む。
【0194】
本発明のさらなる目的および利点は、本記載および好ましい実施態様の例を考慮して当業者によって理解され、そして本発明の範囲内に明示的に含まれる。
【0195】
実施例
筋特異的TRIMファミリータンパク質であるMG53の発見
横紋筋細胞における筋形成、Ca2+シグナル伝達および膜の完全性の維持に関与する新規タンパク質の同定を可能にする以前に確立されたイムノプロテオミクス(immuno-proteomic)アプローチを使用して、MG53を単離した。簡潔には、このアプローチは、ウサギ骨格筋由来の三つ組富化膜で免疫化されたマウスから生成された約6500個のクローンを含有するモノクローナル抗体ライブラリーを使用する。免疫蛍光顕微鏡下で観察される横紋筋切片のZ線染色パターンに基づいて、目的の抗体を選択した。抗体アフィニティカラムを通して標的タンパク質を精製し、精製されたタンパク質の部分アミノ酸配列を得た。部分アミノ酸配列に基づいて、標的遺伝子をコードする完全cDNAを骨格筋cDNAライブラリーから単離した。次いで、相同遺伝子スクリーニングを使用して、他の興奮性組織における同定された遺伝子の異なるアイソフォームの存在について検索した。最後に、トランスジェニックまたはノックアウトマウスモデルを生成して、目的の遺伝子のインビボでの生理学的機能を研究した。
【0196】
筋特異的タンパク質についてのこのイムノプロテオミクスライブラリーのスクリーニングによって、横紋筋組織に特異的な53キロダルトン(kDa)の分子サイズのmAb5259によって認識される抗原の同定が導かれた(図3B)。mAb5259イムアフィニティカラムによって、タンパク質「MG53」をウサギ骨格筋から部分精製し、アミノ酸配列決定に供した。骨格筋cDNAライブラリースクリーニングおよびゲノムデータベース検索によって、MG53の推定アミノ酸配列およびヒト16p11.2遺伝子座における対応するmg53遺伝子が同定された。mg53 mRNAについてのノーザンブロッティングによって、骨格筋および心筋に特異的な発現が確認された(図3C)。ドメイン相同性分析によって、MG53が、リング(Ring)、Bボックス(B-box)およびコイルドコイル(Coiled-Coil)(RBCC)部分を含むプロトタイプの三者モチーフ、ならびにカルボキシ末端にあるSPRYドメインを含有することが明らかとなった(図1、2、および3A)。SPRYドメインは、興奮性細胞の筋小胞体におけるリアノジン受容体Ca2+放出チャネルにおいて最初に観察された保存配列である。種々の哺乳動物ゲノムにおいてこれまで同定された約60個のTRIMファミリーメンバーのうち、15個のメンバーが、RBCCドメインの後に類似のSPRYドメインを保有し、MG53は、これらのTRIMサブファミリータンパク質とともに保存された一次構造を示す。
【0197】
MG53は、筋細胞中での小胞輸送を媒介する。その一次構造中に膜貫通セグメントも脂質修飾モチーフも存在しないが、MG53は、骨格筋において主に膜構造に拘束されているようである。免疫組織化学的分析によって、筋細胞膜および細胞内小胞におけるMG53に対する特異的標識が明らかとなった(図3D)。C2C12筋原細胞株におけるMG53の過剰発現によって、劇的な形態変化が導かれる。MG53およびGFPで一過性にトランスフェクトした細胞は、GFP単独を発現する細胞においては存在しない明瞭な糸状仮足様構造を有する形質膜の伸張を示した(図4A〜D)。GFP−MG53融合構築物を使用して、MG53が、C2C12筋芽細胞の細胞内小胞および形質膜の両方に局在することが見出された(図4B)。生細胞蛍光画像処理によって、GFP−MG53を過剰発現するC2C12細胞における動的細胞内輸送および融合事象が明らかとなった。細胞表面膜でのこのGFP−MG53媒介小胞融合は、細胞膜からのGFP−MG53小胞の出芽を生じる(図4D)。これは、全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡を使用した、形質膜における小胞融合事象の画像処理によって確認され、これは、小胞融合事象が、MG53の同時発現によって大いに増強されることを示した(データは示さず)。全体として、これらの実験は、内因性MG53が、筋細胞膜への細胞内小胞の輸送を媒介する筋特異的TRIMファミリータンパク質であることを示す。
【0198】
MG53はTRIMおよびSPRYモチーフを含有する筋特異的タンパク質である。以前の研究において、本発明者らは、骨格筋における三つ組接合部に関連するタンパク質を標的化するモノクローナル抗体(mAb)ライブラリーを確立した。筋特異的タンパク質についてのこのイムノプロテオミクスライブラリーのスクリーニングによって、mAb5259によって認識される53キロダルトン(kDa)の分子サイズを有するMG53と命名された抗原の同定が導かれた。mAb5259と抱合したイムアフィニティカラムによって、MG53をウサギ骨格筋から部分精製し、アミノ酸配列決定に供した。得られた部分アミノ酸配列に基づいて、MG53をコードするcDNAをウサギおよびマウスの骨格筋ライブラリーから単離した。ゲノムライブラリー検索によって、ヒト16p11.2遺伝子座上の対応するMG53遺伝子が同定された。いくつかの種におけるMG53についての推定アミノ酸配列を図1に示す。
【0199】
ドメイン相同性分析によって、MG53が、カルボキシ末端にRBCC+SPRYドメインのプロトタイプのTRIMサイン配列を含み、したがって、TRIM/RBCCファミリーに属することが明らかとなった(図1)。哺乳動物ゲノムにおいてこれまで同定された約60個のTRIMファミリーメンバーのうち、15個のメンバーが、RBCCドメインの後に類似のSPRYドメインを保有し、MG53は、これらのTRIMサブファミリータンパク質とともに保存された一次構造を示す(図2)。しかし、驚くべきことにそして予想外なことに、本発明者らの研究は、MG53が、膜修復機能を示す図2におけるもので唯一のTRIMファミリータンパク質であることを示す。
【0200】
ウェスタンブロットアッセイによって、マウス組織におけるMG53の筋特異的発現が確認される(図3B)。その一次構造中に膜貫通セグメントも脂質修飾モチーフも存在しないが、MG53は、骨格筋において主に膜構造に拘束されているようである。mAb5259を用いる免疫組織化学的分析によって、骨格筋線維の横断切片中の筋細胞膜およびTT膜におけるMG53に対する特異的標識が示された(図3C)。さらに、横断切片によって、筋細胞膜付近のMG53の局在化された濃縮が明らかとなり、より広い染色パターンが、筋細胞膜の膜内在性タンパク質について典型的に観察される。したがって、MG53は、TRIMファミリータンパク質について特有の細胞内分布パターンを示す筋特異的TRIMファミリータンパク質である。
【0201】
MG53の過剰発現は興奮性および非興奮性の両方の細胞において糸状仮足様構造を生じる。MG53の細胞生物学的機能を解明するために、C2C12筋原細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において、マウスMG53cDNAを発現させた。筋芽細胞期のC2C12細胞は、内因性MG53タンパク質を発現しないが、しかし分化したC2C12筋管は、MG53を発現する。CHO細胞は、内因性MG53タンパク質を含有しない非興奮性上皮細胞である。図4A(左パネル)に示されるように、MG53 cDNAのC2C12筋芽細胞またはCHO細胞中への一過性トランスフェクションによって、mAb5259によって認識され得る53kDaの組換えタンパク質の発現が生じた。組換えタンパク質の分子サイズは、ウサギおよびマウスの両方の筋に存在する内因性MG53と同一であり、したがって、単離されたcDNAクローンのMG53としての同一性が確認された。10:1の比でのEGFPまたはMG53のいずれかをコードするcDNAを含有する2つのプラスミドでの細胞の同時トランスフェクションによって、トランスフェクトされた細胞を蛍光顕微鏡によって同定するための簡便な方法が提供された。共焦点顕微鏡画像処理を用いて、本発明者らは、MG53を一過性にトランスフェクトした細胞の形態における劇的な変化を観察した(図4B)。具体的には、細胞表面膜の伸張が、MG53を一過性に過剰発現するCHO細胞およびC2C12筋芽細胞の両方において明瞭な糸状仮足様構造を形成した。
【0202】
MG53により誘導される細胞の形態変化をさらに検討するために、以下の2つのMG53のGFP融合構築物を生成した:それぞれMG53のアミノ末端およびカルボキシ末端へGFPが付着したGFP−MG53およびMG53−GFP。両方の融合タンパク質をCHO細胞およびC2C12筋芽細胞において発現させることができるが(図4C、右パネル)、GFP−MG53およびMG53−GFPの細胞内分布および機能的効果は、劇的にかつ驚くべきことに異なっていた。共焦点顕微鏡を使用して、GFP−MG53融合タンパク質が、CHO細胞およびC2C12細胞の両方において、細胞内小胞および細胞表面膜の両方に局在することが見出された(図4C、左パネル)。この結果は、骨格筋線維おけるMG53の免疫染色局在と一致し(図3C)、そして筋細胞における膜輸送事象にMG53が関与することを示唆する。
【0203】
予想外なことに、MG53−GFP融合タンパク質の分布パターンは、CHO細胞およびC2C12細胞の両方において大部分がサイトゾルであり(図4C、右パネル)、これはGFP−MG53の膜付着分布ときわめて対照的である。さらに、MG53またはGFP−MG53の過剰発現によって誘導される広範な糸状仮足様膜伸張は、MG53−GFPをトランスフェクトした細胞において完全に存在しなかった。GFPとの融合によるMG53のカルボキシ末端の遮蔽はMG53の細胞内分布を変化させるので、MG53のカルボキシ末端にあるSPRYモチーフは、異なる膜区画へのMG53のアンカリングにおける役割を担っており、MG53の機能に必須であるようである(図13および14参照)。
【0204】
生細胞蛍光画像処理によって、GFP−MG53を過剰発現する細胞において、細胞内小胞の動的輸送、ならびに細胞表面膜での活発な開口分泌融合および小胞出芽が同定された(図4D)。厳密な検討によって、表面膜での小胞融合事象の発生が明らかとなった(図4D、左パネル)。GFP−MG53を含有する小胞の出芽を明確に同定することができ、そして放出された細胞外小胞がトランスフェクトされた細胞の近傍で観察された(図4D、右パネル)。
【0205】
総合すると、細胞画像処理研究によって、MG53が、両方の細胞内小胞に局在化しそして細胞表面膜を標的化できること、およびそれが膜融合および小胞出芽の鍵となるメディエーターであることが示唆される。
【0206】
MG53は細胞傷害後の骨格筋線維における急性膜修復を媒介する。形質膜との小胞融合は、膜修復に必要であり、以前の研究は、骨格筋膜の完全性の維持におけるジスフェリンの役割を示す。本発明者の知見によって、MG53が、小胞の形質膜への輸送を駆動して、おそらく膜破壊後の修復過程を媒介することができることが示される。微小電極を用いる形質膜の物理的透過によって生成される急性細胞傷害によって、傷害部位へ向けてのGFP−MG53小胞の迅速な動員が導かれる(図12A)。細胞の破砕を生じるより重篤な損傷が起こる場合、修復部位は、GFP−MG53で濃く標識される(図12B)。さらに、この急性膜修復は、成熟C2C12筋管においても観察された(動画2および3参照)。このデータは、MG53によって媒介される小胞輸送が、細胞膜の急性修復において積極的な役割を担うことを示す。
【0207】
筋膜修復におけるMG53の生理学的機能をさらに規定するために、MG53についてヌルのマウスモデルを生成した(図9〜11)。mg53−/−マウスは、ストレス無負荷条件下で11ヶ月齢まで生存できる。インビボストレス試験によって、mg53−/−筋の膜修復機能における重篤な欠損が明らかとなった。図10Cにおいて示されるように、下り坂走運動によって誘発される膜傷害は、mg53−/−マウス由来のヒラメ筋の収縮機能が重篤に損なわれることを明らかにした。きびしい運動なしで、mg53−/−ヒラメ筋は、野生型(wt)コントロールと比較して、エクスビボでの疲労刺激後の収縮機能の回復のいくらかの困難性を呈した(示さず)。これらの差異は、8〜10ヶ月齢に運動誘発性損傷後に劇的に誇張され得る。明らかに、より重篤な損傷が、mg53−/−筋について見出され得、ここで、wtの筋と比較して、より弱くかつ変動する収縮機能が観察された(図10D)。
【0208】
マウスの腹腔内空間へのエバンスブルー色素の注射によって、下り坂運動誘発性筋損傷後の筋細胞膜の完全性が直接的にモニターされる。図10Eに示されるように、mg53−/−マウスから単離された筋線維は、wtの筋よりも有意に多いエバンスブルー染色を示し、広範な程度の運動誘発性筋損傷を明らかにした。これは、若齢mg53−/−マウスと比較して加齢mg53−/−マウスにおいて増加したmg53−/−筋におけるジストロフィーの増加を示すH/E染色によって確認された(図10A)。筋束から抽出されたエバンスブルーの全吸光度の定量的なアッセイは、下り坂走後のmg−/−マウスにおける増加した筋損傷についての直接的な支持を提供した(図10F)。
【0209】
膜修復におけるMG53の役割と一致して、MG53の濃度の上昇は、単離の間に損傷を受けた個々の短趾屈筋(FDB)筋線維の免疫染色を用いて、傷害部位で観察された(図11A)。これらの膜パッチは、ジスフェリンについての染色と頻繁に共存する。本発明者らは、個々のFDB筋線維に対するレーザー誘発性膜損傷後のFM−143蛍光色素の流入の測定を通じて、MG53媒介性膜修復機能を直接的に評価した。wt筋繊維は、FM−143蛍光色素の効果的な排除を示したので、固有の膜修復機能を有しており、筋細胞膜のレーザー誘発性損傷に対してかなり耐性であった(図11B)。mg53−/−FDB筋線維中へのFM−143蛍光色素の有意な流入が、レーザー誘発性損傷後に観察され得た(図11C)。筋細胞膜のレーザー損傷後のFDB筋線維の内側でのFM−143の時間依存的蓄積は、mg53−/−筋の欠損した膜修復機能についての直接的な支持を提供する(図11D)。
【0210】
MG53の発現は正常な心筋膜の完全性を維持するのに必須である。mg53−/−マウスにおける欠損は、骨格筋線維に限定されるものではない。エバンスブルー色素の注射の間に、注射された野生型動物がいずれも死滅しなかったことと比較して、mg53−/−マウスの約50%が、注射の16時間以内に死滅した。mg53−/−心臓の死後検討によって、運動ストレスの非存在下でさえ、エバンスブルーによる心筋線維の広範な標識が明らかとなった(図9)。本発明者らは、運動が、mg53−/−心臓におけるエバンスブルー染色の程度を大いに悪化させることも見出した。
【0211】
筋発達の間の筋管形成におけるMG53の役割。膜修復は、細胞膜の再編成を可能にするために細胞内小胞の動的輸送を必要とする細胞過程の1つにすぎない。骨格筋における1つのこのような過程は、筋形成の間に生じる。筋芽細胞から筋管への分化の間、単核筋芽細胞は、多核筋管を形成するために一緒に融合しなければならない。骨格筋の筋形成におけるMG53媒介性膜融合の役割を直接的に検討するために、特異的RNA干渉プローブを使用して、分化しているC2C12筋管における内因性MG53の発現をノックダウンした。マウスMG53 cDNAのヌクレオチド配列632〜652を認識する低分子ヘアピン型(sh)RNAプローブは、MG53標的配列のスクランブルされた型のための非特異的shRNAプローブでトランスフェクトした細胞と比較して、shRNA−MG53でトランスフェクトした細胞において、MG53発現の80%超を抑制した(図5A)。MG53の急性の抑制は、C2C12筋管分化の顕著な減少を生じた(図5B)。shRNA−MG53プローブでトランスフェクトしたC2C12筋芽細胞は、血清欠乏誘発性分化後の第5日目および第10日目の両方で、有意により少数の筋管を形成した(図5C)。これらの結果は、MG53の正常な発現が、C2C12筋芽細胞の筋管への分化に必要であることを示唆する。
【0212】
カベオリン3は、発達調節され(図6A)、そしてMG53と相互作用できるので(図6A)、本発明者らは、C2C12筋芽細胞におけるMG53誘発性糸状仮足様構造が、カベオリン3の過剰発現によって影響され得るかどうかを試験した。図6Dに示されるように、いずれかのC2C12筋芽細胞におけるカベオリン3およびMG53の同時過剰発現によって、GFP−MG53過剰発現と関連した糸状仮足様構造の出現の顕著な阻害が導かれる。平均して、カベオリン3およびGFP−MG53(10:1の比)でトランスフェクトしたC2C12筋芽細胞はそれぞれ、糸状仮足様構造の出現の82±6%の低下を示した(図6EおよびF)。これらの結果は、カベオリン3が、MG53媒介性膜融合事象の分子レベルのレギュレーターの1つを表すことを示唆する。
【0213】
MG53の細胞内分布および糸状仮足様構造の形成におけるカベオリン3の役割をさらに研究するために、shRNAトランスフェクト細胞のためのマーカーを提供するための独立した赤色蛍光タンパク質発現カセットを含むカベオリン3shRNAプラスミド(表1)を構築した。図7Aに示されるウェスタンブロット分析によって、shRNA−cav3プローブが、カベオリン1の発現に影響を及ぼすことなしにカベオリン3 cDNAを一過性にトランスフェクトしたCHO細胞においてカベオリン3の発現を抑制することにおいて非常に効率的であることが明らかとなる。
【0214】
【表1】

【0215】
非特異的shRNAでトランスフェクトしたC2C12筋芽細胞は、図7Bの左パネルにおいて、豊富な赤色蛍光標識された筋管によって示されるように正常な分化パターンを示すのに対し、カベオリン3の急性抑制は、C2C12筋芽細胞の筋管への分化を有意に阻害することができた(図7B、右パネル)。平均して、赤色蛍光によって標識されたshRNA−cav3トランスフェクト筋芽細胞の10%未満が、分化培地の適用後の第6日目で、成熟筋管へ分化することができた(図7C)。この結果は、カベオリン3の発現が、C2C12筋管の分化に必須であることを示す他の研究者による以前の研究と一致する。
【0216】
共焦点顕微鏡画像処理によって、C2C12筋芽細胞へのshRNA−cav3のトランスフェクションが、これらの細胞において発現するGFP−MG53の細胞内分布に影響を及ぼさないようであることが示された(図7D)。特に、糸状仮足様膜構造およびGFP−MG53の小胞分布の明瞭なパターンは、shRNA−cav3または非特異的shRNAのいずれでの一過性のトランスフェクションによっても影響されないままであった。この結果は、C2C12細胞の筋芽細胞期におけるカベオリン3の発現の欠如と一致する。
【0217】
筋管分化におけるカベオリン3の必須の性質に起因して、GFP−MG53を過剰発現するC2C12筋芽細胞に対するメチル−β−シクロデキストリン(M−βCD)の効果を試験して、膜のリサイクルに対するMG53−カベオリン相互作用の機能的インパクトをさらにアッセイした。M−βCDは、細胞膜からコレステロールを抽出することができ、カベオラ構造を破壊する薬剤として広く使用されている。図8Aにおいて示されるように、GFP−MG53を過剰発現する筋芽細胞は、細胞内および筋細胞膜の両方で小胞の自発的融合を示した。これらの自発的融合事象は、緩慢であり、分のオーダーで生じる。M−βCDでの処理の後、開口分泌事象が大いに増強されるようになり、その結果膜融合が促進され、そして膜小胞の大量の出芽を生じた(図8B)。これらの初期的な変化は迅速に誘導され、M−βCDとの延長したインキュベーションは筋芽細胞内でのGFP−MG53の可溶化を生じる(図8C)。
【0218】
膜小胞のカベオリン媒介性インターナリゼーションは、MG53の過剰発現によって生じる過剰な開口分泌事象の抑制において調節的な役割を担っているようである。さらに、MG53とカベオリンとの相互作用は、MG53の細胞内局在を維持するのに必要である。この結論は、カベオリン3(配列番号8)の変異形態を使用するさらなる実験からの結果によって支持される。
【0219】
MG53の機能におけるTRIMおよびSPRYモチーフの役割。MG53のドメインの構造/機能評価(図13)によって、MG53の細胞内分布におけるMG53へのGFP融合物の顕著な極性が明らかとなった。特に、MG53のカルボキシル末端へのGFPの融合は、小胞区画へ分配し筋細胞膜を標的化するMG53の能力を変化させる。MG53の膜融合機能の促進におけるTRIMおよびSPRYドメインの機能をさらに試験するために、GFPに結合させた一連の欠失変異体(図13A)を生成した。
【0220】
これらのMG53の変異体構築物の細胞内局在を分析するために、共焦点顕微鏡画像処理を、一過性発現後のC2C12筋芽細胞へ適用した。図13B(右パネル)に示されるように、GFP−TRIMまたはTRIM−GFPは、筋細胞膜の見かけ上の標識なしに優勢に細胞内小胞に局在した。この結果は、MG53を筋細胞膜に標的化するためには、GFP−TRIMまたはTRIM−GFPに存在しないSPRYドメインが必要であることを示唆する。MG53−GFPが優勢にサイトゾル分布を示すという事実(図13B、左パネル)は、MG53の細胞表面膜への標的化におけるSPRYの役割をさらに支持する。
【0221】
興味深いことに、GFP−SPRYまたはSPRY−GFPは優勢にサイトゾルの分布のパターンを示したが、それらは、細胞内小胞から明らかに排除される(図13B、中央パネル)。GFP−SPRYおよびSPRY−GFPの細胞内小胞における局在の排除と共役したサイトゾル分布パターンは、TRIMの役割を反映するようである。おそらく、TRIMモチーフは、MG53の細胞内小胞への付着を媒介することができる(図13B、右パネル)。SPRYドメインは、単独で筋細胞膜を標的化するには不十分であり、それゆえ、TRIMドメインは、筋細胞膜へのMG53の適正な輸送のために、SPRYドメインと直列に存在しなければならない。さらに、本発明者らの免疫共沈降データは、カベオリン3が、MG53のTRIMモチーフと相互作用することを示す(図13C)。したがって、MG53とカベオリン3との間の機能的相互作用が、C2C12筋芽細胞におけるGFP−SPRYおよびSPRY−GFPの拡散パターンに寄与する細胞性因子のいくつかの基礎をなし得る。全体として、細胞表面および細胞内区画へのMG53の調節された分布は、TRIMおよびSPRYドメインの間の協調作用から生じるようである。適正なMG53の細胞内局在のためのTRIMおよびSPRYの両方のこの要求もまた見かけ上の機能的有意性も有する。なぜなら、これらの欠失変異体のいずれもが、全長MG53の過剰発現から観察される糸状仮足様構造も頑強な小胞出芽事象も示さないからである。
【0222】
MG53は非筋細胞型において完全に機能することができる。筋原C2C12細胞におけるおよび単離された骨格筋線維におけるMG53の機能の分析によって、横紋筋における小胞輸送および膜修復におけるMG53の本質的な役割が明らかとなる。膜修復が、細胞ホメオスタシスを維持するのに必須であることを考慮すると、他の非筋細胞型における同様の修復メカニズムが、この過程を促進するために同様の分子装置を使用し得ることがありそうである。この可能性を試験するために、C2C12筋原細胞を用いて実施された以前の実験のいくつかを、非筋チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いて反復した。これらの細胞において、C2C12細胞において見られたものと非常に類似した表現型が見出された。第一に、GFP−MG53は、形質膜の糸状仮足様突起を生じ、そして細胞内小胞および形質膜の両方に局在することができた(図6および14)。第二に、MG53欠失タンパク質は、C2C12細胞において見られるのと同一の様式で挙動した。最後に、カベオリン3は、CHO細胞において発現するMG53の活性を制御することもできる(図14)。結果として、これらの研究は、MG53が、筋以外の他の細胞型において存在する保存された分子メカニズムを通じて作用することを示す。
【0223】
組換えMG53およびTAT−MG53の精製。改良された細胞再生を促進するように、標的細胞へMG53を供給するために、HIVにおけるTAT遺伝子由来の細胞透過ペプチド配列を、全長のMG53(TAT−MG53)およびいくつかのMG53欠失変異体と結合させる(図15A)。これらの融合タンパク質を、E.coli細菌中で発現させ、そしてアフィニティクロマトグラフィーを使用して効率的に精製することができる(図15Bおよび15C)。本発明者らは、このような融合タンパク質の細胞単層への適用が、哺乳動物細胞中への組換えタンパク質の効果的な移行を生じることを以前に示している。これらの融合タンパク質の生成は本発明者らが標的細胞内でのMG53の量を増加させることを可能にするはずであり、それにより、本発明者らは、皮膚組織に対するMG53の治療効果を決定することができる。
【0224】
組換えMG53の発現を真核細胞または原核細胞において実施することができる。図18は、組換えMG53が、真核生物系または原核生物系のいずれでも発現され得ることを示す。簡潔には、組換えMG53を、TATペプチド部分および6ヒスチジンタグ(6−HISタグ)の両方を含有する融合タンパク質としてSf9細胞中で発現させる。このヒスチジンタグは、当技術分野で周知の濾過クロマトグラフィー技術を使用して組換えタンパク質を単離および精製するのに使用され得る。パネル(A)は、Ni−NTAカラムを用いてSf9細胞から単離された組換えヒトMG53タンパク質(矢印)画分のクーマシーブルー染色したゲルを示す。入力=細胞抽出物、FT=素通り、M=マーカー、E=溶出番号。(B)Sf9細胞から単離された組換えヒトTAT−MG53(矢印)のクーマシーブルー染色したゲル。(C)におけるクーマシーブルー染色したゲルは、E.coliから発現および単離された組換えマウスTAT−MG53(矢印)を表す。
【0225】
組換えヒトTAT−MG53は異なる起源の細胞に透過することができる。MG53が機能するためには、それは細胞内に存在しなければならない。組換えMG53が、治療的に意義のある量で細胞膜を横切って移行され得ることを実証するために、HL−1心筋細胞および3T3線維芽細胞を、約4または8μg/mLの組換えヒトTAT−MG53とともに、37℃で15分間インキュベートした(図17)。緩衝塩溶液中で細胞を3回洗浄し、次いでウェスタンブロット分析のために溶解した。ウェスタンブロットは、コントロール細胞(コントロール)は内因性MG53を含有しないが、しかしTAT−MG53とともにインキュベートした細胞は豊富な細胞内TAT−MG53を含有することを示す。TAT−MG53が、タンパク質へのTAT細胞透過ペプチドの付加に起因して、骨格筋抽出物(筋)から可視化されたMG53よりもわずかに大きいことに留意されたい。複数のバンドはTAT−MG53融合タンパク質の細胞内プロセシングによって生じ得る。それゆえ、MG53ポリペプチド治療薬の好ましい実施態様において、本発明は、TATポリペプチド部分およびMG53ポリペプチド部分を含む組換えポリペプチドを含み、ここで、TATおよびMG53ポリペプチド部分は、単一の連続したポリペプチド鎖中に存在する。
【0226】
ヒト細胞株におけるMG53の異種発現は急性傷害に応答して膜修復を生じる。図16は、組換えMG53が、異種発現系において発現され得、そしてさらなるタンパク質の発現なしに細胞膜損傷を修復するその能力を保持し得ることを示す。具体的には、MG53を発現ベクター中に赤色蛍光タンパク質(RFP)との融合タンパク質としてクローニングした。ヒト胎児由来腎臓細胞株(HEK293線維芽細胞株)において融合タンパク質を発現させ、膜損傷を修復する細胞の能力を、RFPのみを発現する細胞と比較した。パネル(a)は、RFP(赤色蛍光タンパク質)コントロールタンパク質を安定に発現する細胞株が、サイトゾル発現パターンを示すことを示す。しかし、RFPのみを発現するHEK293細胞において(図16A)、微小電極を用いる傷害は、傷害部位へのRFPの移行を生じない(矢印)。RFP蛍光のいくらかの退色が、細胞外バッファーの過剰な流入から生じる()。対照的に、RFP−MG53を安定に発現するHEK293細胞(c)は、細胞内小胞への局在を示す。RFP−MG53を発現するHEK293細胞の微小電極傷害(d)は、90秒未満のうちに傷害部位(矢印)へのMG53の多量の移行を生じる。この結果は、組換えMG53が、任意の細胞環境における細胞および/または組織の損傷を修復するのに有用であり得ることを示す。異種系において発現させた場合に組換えMG53は細胞膜に対する傷害を修復できるが、本発明は、それに限定されるわけではない。特定の実施態様において、本発明は、組織損傷を処置または予防するために膜修復を促進するために、MG53およびカベオリン3を同時に発現させる方法を包含する。別の実施態様において、本発明は、TAT−MG53ポリペプチドおよびTAT−カベオリン3ポリペプチドを含む治療組成物に関する。
【0227】
MG53の膜との会合および膜修復はホスファチジルセリンとの相互作用に依存する。脂質プロファイリング(図19)によって、精製組換えMG53が、形質膜の内側葉状部および細胞内小胞の細胞質面に優先的に出現する脂質であるホスファチジルセリン(PS)と特異的に相互作用し得ることが明らかになった(図19A)。この相互作用が、MG53の細胞内膜への繋留を可能にするのであれば、膜破壊後の小胞蓄積は、PSと相互作用することが知られているタンパク質であるアネキシンVの移動によってモニターされ得る。アネキシンV−GFPを使用して、本発明者らは、C2C12筋芽細胞傷害部位でのアネキシンV−GFPの迅速な標識を観察した(図19B)。アネキシンV−GFPの蓄積は、RFP−MG53の同時発現によって促進され、これは急性膜修復過程の媒介におけるMG53の役割と一致する。生細胞画像処理は、傷害部位に向けてのRFP−MG53およびアネキシンV−GFPの協調した移動を示した。
【0228】
例示的な方法
MG53の同定およびクローニング − ウサギ骨格筋のミクロソームタンパク質についてのmAbライブラリーの調製およびスクリーニングは以前に記載されている(21)。mAb5259(IgG1サブクラス)の調製およびイムアフィニティ精製を、以前に記載されるように実施した(21)。精製MG53をアミノ酸配列分析に供し、決定されたすべての配列はウサギMG53 cDNAにおいてコードされていた(データは示さず)。ウサギ部分アミノ酸配列を使用したデータベースにおける相同性検索によって、マウスおよびヒトMG53が見出された。マウスMG53遺伝子のエキソン領域をマウスゲノムDNAから増幅し、32P標識したエキソンフラグメントを使用してウサギおよびマウス骨格筋ライブラリーをスクリーニングして、全長cDNAを得た。
【0229】
免疫組織化学および免疫染色分析 − mAb5259を使用する免疫化学分析を、以前に記載されるように実施した(21)。15nmの金粒子と抱合した二次抗体を使用した免疫電子顕微鏡観察を、以前に記載されるように実施した(17)。
【0230】
細胞培養 − すべての研究に使用したC2C12マウス筋芽細胞株を、American Type Culture Collection(Manassas, VA)から購入した。10%ウシ胎仔血清、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補充した、C2C12についてはDMEM培地中で、またはCHO細胞についてはHam’s F12培地中で、37℃および5%COの加湿環境中で細胞を増殖させた。筋管分化を誘導するために、C2C12筋芽細胞をコンフルエンスまで増殖させ、2%ウマ血清、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)を含有するDMEMへ培地を切り替えた。一過性トランスフェクションのために、C2C12筋芽細胞またはCHO細胞を、ガラス底ディッシュ中で70%コンフルエンスでプレーティングした。24時間後、GeneJammer試薬(Stratagene)を使用して、上記のプラスミドで細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24〜48時間後に、または個々の実験について示された時間に、生細胞共焦点画像処理によって細胞を可視化した。いくつかの実験において、C2C12筋芽細胞を、観察前の示された時間、筋管へ分化させた。
【0231】
プラスミド構築 − 全長マウスMG53 cDNAおよび関連する切断変異体を、補足表1に記載のプロイマーを使用するPCRによって生成した。pCMS−MG53の構築のために、適切な制限酵素によって消化した後、PCR増幅したcDNAをNheI/XbaI部位でpCMS−EGFPベクター(Invitrogen)中に挿入した。GFP−MG53、GFP−TRIM、GFP−SPRY、MG53−GFP、TRIM−GFPおよびSPRY−GFPを構築するために、PCR産物をXhoI/XbaI部位でpEGFP−C1中に、またはXhoI/KpnI部位でpEGFP−N1中に挿入した。
【0232】
生細胞画像処理 − GFP−MG53の細胞内輸送をモニターするために、CHO細胞またはC2C12細胞のいずれかをガラス底ディッシュ(Bioptechs Inc.)中で培養し、上記のプラスミドでトランスフェクトした。63×1.3NA油浸対物レンズを備えたBioRad 2100 Radianceレーザー走査共焦点顕微鏡を使用して、蛍光画像(512×512)を3.18s/フレームで捕捉した。
【0233】
RNAiアッセイ − MG53のshRNAノックダウンのための標的配列は、マウスMG53 cDNAにおける622〜642位(GAG CTG TCA AGC CTG AAC TCT)にある。カベオリン3については、標的配列は、363〜380位(GAC ATT CAC TGC AAG GAG ATA)にある。相補的なセンスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成した。MG53 shRNAおよびコントロールプラスミドを構築するために、アニールさせたオリゴヌクレオチドをAcc 65I/Hind III制限酵素部位でpsiRNA−hH1GFPzeo G2(InvivoGene)中へ挿入した。カベオリン3shRNAおよびコントロールプラスミドについては、アニールさせたオリゴヌクレオチオをEcoR I/BamH I制限酵素部位でpRNAiDsRedベクター(BD Biosciences)中へ挿入した。各ベクターは、細胞トランスフェクションのマーカーとして作用する独立した蛍光タンパク質発現カセット(緑色または赤色)を有する。隣接するプライマーを用いる直接配列決定によってすべてのプラスミドを確認し、MG53およびカベオリン3タンパク質発現のダウンレギュレーションをウェスタンブロット分析によって検討した。
【0234】
ウェスタンブロットおよび免疫共沈降 − イムノブロットには、標準的な技術を使用した。簡潔には、C2C12細胞またはCHO細胞を回収し、プロテアーゼ阻害剤のカクテル(Sigma)の存在下で氷冷改変RIPAバッファー(150mM NaCl、5mM EDTA、1% NP40、20mMトリスHCl、pH 7.5)を用いて溶解した。総タンパク質20μgを4〜12%SDS−ポリアクリルアミドゲルで分離した。MG53およびカベオリン3の免疫共沈降研究のために標準的なプロトコールを使用した。簡潔には、骨格筋組織またはC2C12筋管を0.5mlの改変RIPAバッファー中で溶解した。全細胞溶解液(500μg)を5μgポリクローナル抗MG53(ポリクローナル抗体)または抗カベオリン3抗体(mAb)とともに一晩インキュベートした。ネガティブコントロールとして、500μgの全細胞溶解液を5μgの正常ウサギおよびマウスIgGとともにインキュベートし、上記のように処理した。2時間インキュベートすることによって、免疫複合体をプロテインGセファロースビーズ上に回収し、RIPAバッファーで4回洗浄した。
【0235】
本明細書に記載される詳細な例および実施態様が、説明目的のみのために例として与えられ、そしていかにしても本発明を限定するとはみなされないことが理解される。それを考慮しての種々の改変または変更は、当業者に示唆され、そして本出願の精神および範囲内に含まれ、そして添付の特許請求の範囲内にあるとみなされる。例えば、成分の相対的な量は、所望の効果を最適化するために変動させられ得、さらなる成分を添加し得、そして/または類似の成分を、記載される成分の1つ以上と置換し得る。本発明のシステム、方法、およびプロセスと関連するさらなる有利な特徴および機能は、添付の特許請求の範囲から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2、4、または6の少なくとも1つとの少なくとも30%の配列相同性を有する核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
核酸配列が、配列番号2、4または6の少なくとも1つの少なくとも一部と連続したポリヌクレオチド成分をさらに含み、該ポリヌクレオチドが、核酸の5’末端または3’末端に配置される、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
核酸配列が、スプライスバリアント、点変異、置換、挿入、欠失、または単一ヌクレオチド多型の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項4】
少なくとも1つの転写調節配列、および配列番号2、4、または6の少なくとも1つとの少なくとも30%の相同性を有する核酸分子を含む、ベクター。
【請求項5】
核酸分子へ作動可能に連結されたプロモーターをさらに含む、請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のベクターを含む、単離された細胞。
【請求項7】
細胞が真核細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
細胞が原核細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の核酸分子および担体を含む、組成物。
【請求項10】
1つ以上の容器中に請求項7に記載の組成物を含む、キット。
【請求項11】
核酸配列が、配列番号1、3、5、または7の少なくとも1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項12】
配列番号1、3、5、または7の少なくとも1つとの少なくとも30%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項13】
医薬的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントの少なくとも1つをさらに含む、請求項12に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項14】
医薬的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントの少なくとも1つと一緒に、配列番号1、3、5または7の少なくとも1つとの少なくとも30%の相同性を有するポリペプチドの治療有効量または予防有効量を含む組成物を投与することを含む、細胞損傷の処置または予防のための方法。
【請求項15】
配列番号1、3、5、または7の少なくとも1つとの少なくとも30%の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を発現する細胞を提供する工程;試験化合物のライブラリーを提供する工程;細胞を試験化合物で処理する工程;細胞の膜へ損傷を誘導する工程;膜に対する損傷を修復する細胞の能力を測定する工程;および処理された細胞の修復能力を未処理の細胞に対して比較する工程を含む、細胞損傷を処置または予防するのに有用な化合物についてスクリーニングする方法。
【請求項16】
配列番号1、3、5または7との少なくとも30%の相同性を有する少なくとも1つのポリペプチドの治療有効量または予防有効量を投与することを含む、筋細胞損傷を処置または予防する方法。
【請求項17】
美容的に許容される担体と一緒に、配列番号1、3、5または7の少なくとも1つとの少なくとも30%の相同性を有するポリペプチドを含む、化粧組成物。
【請求項18】
医薬的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントと一緒に、配列番号1、3、5または7の少なくとも1つとの少なくとも30%の相同性を有するポリペプチドの有効量を、それを必要とする個人に投与することを含む、熱傷を罹患している対象を処置する方法。
【請求項19】
低分子阻害RNAを形成しそしてRNA干渉を介して配列番号2、4または6の少なくとも1つの核酸の発現をダウンレギュレートする核酸分子を含む組成物であって、該核酸分子が、長さ約10〜約100ヌクレオチドであり;阻害核酸分子がRNA干渉を介して該RNAの切断を直接的にまたは間接的に引き起こすのに十分なMG53遺伝子から転写されるRNAとの相補性を有するヌクレオチド配列を阻害核酸分子が含む、組成物。
【請求項20】
対象における細胞修復機能障害を診断またはモニターする方法であって、該対象において遺伝子中の多型、遺伝子の発現レベルまたはその両方を検出して、該対象における機能障害を診断またはモニターすることを含み、該遺伝子が、配列番号2、4または6の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、方法。
【請求項21】
遺伝子によって発現されるRNAレベルを測定することによって、発現レベルが検出される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
遺伝子によって発現されるRNAレベルを検出する前に対象からRNAを単離することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
多型または発現レベルが、PCRによってまたはオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって検出される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
発現が、遺伝子のタンパク質レベルを測定することによって検出される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
配列番号1、3、5、または7の少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドに免疫特異的に結合できる、抗体。
【請求項26】
抗体が、キメラ抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体である、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
化合物が、MG53ポリペプチドのアゴニストである、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
化合物が、カベオリン3のアゴニストである、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
化合物が、MG53ポリペプチドリン脂質相互作用のアンタゴニストである、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
化合物が、カベオリン3ポリペプチドのアンタゴニストである、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
化合物が、カベオリン3/MG53相互作用のアンタゴニストである、請求項15に記載の方法。
【請求項32】
ペプチド、ペプチドアナログ、シュードペプチド、およびペプチド模倣薬からなる群より選択される少なくとも1つのメンバーを含むMG53アゴニストまたはアンタゴニストであって、該MG53アゴニストまたはアンタゴニストが、約10〜約200アミノ酸残基を有し、そして該MG53アゴニストまたはアンタゴニストが、配列番号1または配列番号8の一部との少なくとも30%の相同性を有する、MG53アゴニストまたはアンタゴニスト。
【請求項33】
配列番号1、3、5、7、8またはそのフラグメントの少なくとも1つの配列を有するポリペプチド部分、およびアミノ末端、カルボキシ末端、またはその両方のいずれかに位置する少なくとも1つの他のポリペプチド部分を含む融合タンパク質であって、ポリペプチド部分が単一の連続したポリペプチド鎖中に配置される、融合タンパク質。
【請求項34】
少なくとも1つの他のポリペプチド部分が、蛍光タンパク質を含む、請求項33に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
少なくとも1つの他のポリペプチド部分が、TATポリペプチドまたはその一部を含む、請求項33に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
少なくとも1つの他のポリペプチド部分が、TATポリペプチドまたはその一部およびHISタグを含む、請求項35に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
少なくとも配列番号8またはその一部を有する第二のポリペプチドとの配列番号1またはその一部を有するポリペプチドの組み合わせ、および医薬的に許容される賦形剤または担体を含む、治療組成物。
【請求項38】
ポリペプチドの少なくとも1つが、アミノ末端、カルボキシ末端、またはその両方のいずれかに位置する少なくとも1つの他のポリペプチド部分を含む融合タンパク質であり、そして該ポリペプチド部分が単一の連続したポリペプチド鎖中に配置される、請求項37に記載の治療組成物。
【請求項39】
融合タンパク質の少なくとも1つの他のポリペプチド部分が、TATポリペプチドまたはその一部である、請求項38に記載の治療組成物。
【請求項40】
方法が、配列番号8またはその一部を含む別のポリペプチドを同時に投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項41】
細胞損傷が、心血管障害に起因する、請求項14に記載の方法。
【請求項42】
細胞損傷が、運動またはきびしい身体活動に起因する、請求項14に記載の方法。
【請求項43】
細胞損傷が、外科手順またはデバイスに起因する、請求項14に記載の方法。
【請求項44】
美容的に適した担体をさらに含む、請求項12に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項45】
請求項12に記載のポリペプチドを含む、外科手順またはデバイスに起因する組織損傷の寛解のための、外科アジュバント。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図12a】
image rotate

【図12b】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate

【図14】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公表番号】特表2009−543551(P2009−543551A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519512(P2009−519512)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/015815
【国際公開番号】WO2008/054561
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(509011466)ユニバーシティ・オブ・メディシン・アンド・デンティストリー・オブ・ニュージャージー (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MEDICINE AND DENTISTRY OF NEW JERSEY
【Fターム(参考)】