説明

タンパク質の折り畳みに影響する薬剤の酵母スクリーニング

【課題】タンパク質の誤った折り畳みに関連る種々の疾患に対して治療的価値を提供する物質を同定するためのスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】上記課題は遺伝子的スクリーニング方法および化学的スクリーニング方法は、酵母系を用いて解決される。本発明の方法は、多くの神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンティングトン病)、および非神経疾患(例えば、2型糖尿病を含む)を含む、タンパク質の誤った折り畳みおよび/またはタンパク質の原線維形成および/またはタンパク質の凝集を防止する化合物をスクリーニングするための迅速かつコスト効果の高い方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年2月15日に提出されたUS仮特許申請番号第60/269,157号に対して優先権を主張し、それは全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。National Institutes of Healthからの補助金番号第R37GM25874号により、政府が本発明における権利を有し得る。Howard Hughes Medical Instituteからの資金提供にも感謝する。
【0002】
(1.本発明の分野)
本発明は一般的に、遺伝的および化学的スクリーニングの分野およびタンパク質の誤った折り畳みに関連する疾患に関連する。より具体的には、タンパク質の誤った折り畳みに関連する様々な疾患に治療的価値を提供する物質をスクリーニングするために使用し得る、酵母に基づくシステムの開発に関する。本発明の酵母システムを使用して遺伝的および化学的スクリーニングを行なう方法も提供される。本発明の方法によって利益を受ける1つの大きな疾患の種類は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンティングトン病等を含む神経変性疾患である。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
(2.関連する技術の説明)
タンパク質の正しい折り畳みは、適当な生物学的機能を達成するために重要な出来事である。正しい折り畳みは、タンパク質の特徴的なコンフォメーションを導き、それはタンパク質の活性、凝集、分解、および機能を決定する。いくつかのタンパク質が、特にパーキンソン病(PD)、伝染性海綿状脳症(TSE)、アルツハイマー病(AD)、家族性アミロイド多発性神経障害(FAP)、プリオン病、およびハンティングトン病(HD)のような神経変性疾患に関係している。これらのタンパク質は、別の折り畳みメカニズムによって異常な凝集を形成する。これらの誤って折り畳まれたタンパク質の凝集物は、不溶性の原線維を形成し、それは次いで組織に沈着する。原線維発生は、神経変性に関与する様々な病理の原因である。組織における不溶性原線維の沈着は、病状が進行するにつれて、斑およびもつれの形成、そして最終的に細胞変性を引き起こす。原線維形成タンパク質にアミノ酸配列相同性は無いにもかかわらず、原線維はいくつかの共通する形態学的特徴を有する。例えば、アミロイド線維(アミロイドタンパク質によって形成される)のいくつかの共通する形態学的特徴は、交差するβ構造、同様の大きさ、偏光下で観察した場合コンゴレッドで染色時に緑色複屈折の提示、チオフラビンT結合等を含む。
【0004】
原線維発生に基づく疾患の1つの例は、組織に対するアミロイド原線維の沈着によって定義され、そしてアルツハイマー病(AD)によって典型的に表される、アミロイドーシスの病状である。全身性アミロイドーシスは、内臓全体のアミロイド沈着によって特徴付けられる。動物アミロイドは、部分的にタンパク質原線維からなる複雑な物質である。これらの原線維を構成するタンパク質は、疾患によって異なる。β−アミロイドは、ADの病状進行に関与するこれらのタンパク質の1つである。
【0005】
パーキンソン病(PD)の場合、脳内のドーパミン作用性ニューロンが選択的神経変性をうける。未知の機能を有する、高度に保存された前シナプス性タンパク質、アルファシヌクレインが、PDに関与している。アルファシヌクレインにおける2つの異なる点突然変異、A53TおよびA30Pが、常染色体優性家族性PDに関与している。アルファシヌクレインのコンフォメーション変化が、典型的なタンパク質様の蓄積、およびそのような疾患に特徴的な原線維発生を引き起こすようである。精製全長アルファシヌクレインは、PDのレーヴィ小体(細胞質ゾル含有物)において見られるものと同様の原線維を形成し得る。原線維発生のメカニズムは記載されていないが、最近のデータは、アルファシヌクレインの凝集は、他の疾患関連タンパク質で示唆されたように、核形成−延長メカニズムに従うことを示す。
【0006】
一旦、原線維沈着が形成すると、インサイチュでそのような沈着を有意に溶解する既知の治療または処理は存在しないことが、当該分野においてよく認識されている(米国特許第5,643,562号)。従って、タンパク質凝集および原線維形成の予防に基づく戦略が、神経変性疾患および2型糖尿病のようなタンパク質の誤った折り畳みに関連する疾患の治療または予防の主要な目標である。従って、タンパク質折り畳みの調節剤、および/またはタンパク質凝集の阻害剤、および/または原線維発生過程の予防剤および/または阻害剤であることによって治療的効果を有する、または完全に異なる、およびもしかしたら未知の作用メカニズムを有し得る、タンパク質の誤った折り畳みに関連する疾患の治療薬を同定し得るシステムの必要性が当該分野に存在する。さらに、タンパク質の誤った折り畳みに関連する疾患の治療、予防、および治癒に有用な薬剤の同定を可能にする、迅速および経済的なスクリーニング法を提供するようなシステムの必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(本発明の概要)
誤って折り畳まれたタンパク質に関与する疾患が、哺乳類で同定された(「誤って折り畳まれたタンパク質疾患」)。これらの疾患は、パーキンソン病;プリオン病(クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、致死性家族性不眠症(FFI)、ゲルストマン−シュトロイスラー−Scheinker病(GSS)、狂牛病、スクレイピーおよびクールーを含む);家族性アミロイド多発性神経障害、タウオパシー(ピック病、肺葉萎縮症、および前頭側頭痴呆を含む);トリヌクレオチド疾患(ハンティングトン病、脊髄小脳性運動失調(SCA)、歯状核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ぜい弱X症候群、筋緊張性ジストロフィー、Haw River症候群、遺伝性運動失調、マチャドジョセフ病、およびケネディ病(脊髄延髄筋萎縮症、SBMA)を含む)を含む。
【0008】
したがって、本発明は、以下を含む。
(1) ハンティングトン病に対する治療剤をスクリーニングする方法であって:
a)酵母細胞と候補化合物とを接触させる工程であって、該酵母細胞は、ハンティングトンポリペプチドを含むポリペプチドを発現し、野生型Hsp−40を発現しない、工程;
b)該酵母細胞の生存率を評価する工程であって、生存率は、該候補化合物が候補治療剤であることを示す、工程、
を包含する、方法。
(2) 前記ハンティングトンポリペプチドが、N末端領域を含む、項目1に記載の方法。
(3) 前記N末端領域が、ポリQ反復を含む、項目2に記載の方法。
(4) 前記ポリQ反復が、70残基を含む、項目3に記載の方法。
(5) 前記ポリQ反復が、100残基を含む、項目4に記載の方法。
(6) 前記ポリペプチドが、融合タンパク質である、項目1に記載の方法。
(7) 前記ポリペプチドが、レポーターポリペプチドをさらに含む、項目6に記載の方法。
(8) 前記レポーターポリペプチドが、緑色蛍光タンパク質である、項目7に記載の方法。
(9) 前記レポーターポリペプチドが、Sup35である、項目7に記載の方法。
(10) 前記酵母細胞が、短縮型Hsp40ポリペプチドを発現する、項目1に記載の方法。
(11) 前記Hsp40ポリペプチドが、C末端欠失を有する、項目10に記載の方法。
(12) 前記C末端欠失が、配列番号8のアミノ酸173〜352を含む、項目10に記載の方法。
(13) 前記C末端欠失が、配列番号8のアミノ酸122〜352を含む、項目12に記載の方法。
(14) 前記Hsp40ポリペプチドが、少なくとも1つの内部欠失を有する、項目10に記載の方法。
(15) 前記酵母細胞が、Saccharomyces cerevisiae細胞である、項目1に記載の方法。
(16) 前記酵母の染色体Hsp40遺伝子が、変異を含む、項目1に記載の方法。
(17) 前記変異が欠失である、項目16に記載の方法。
(18) 前記酵母細胞と毒性誘導薬剤とを接触させる工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(19) 前記毒性誘導薬剤が、炭素源、窒素源、塩、金属、リポソーム、抗生物質、アニソマイシン、ブレオマイシン、カフェイン、カンプトテシン、カルボニル−シアニド、ダウノマイシン、エタノール、ホルムアミド、GuHCL、またはNEMである、項目18に記載の方法。
(20) 前記毒性誘導薬剤が炭素源である、項目18に記載の方法。
(21) 前記炭素源が、アラビノースまたは酢酸カリウムである、項目20に記載の方法。
(22) 前記毒性誘導薬剤が、塩または金属である、項目18に記載の方法。
(23) 前記塩または金属が、CdCl2、CoCl2、CsCl、FeCl2、LiCl、NH4Cl、RbCl、またはZnCl2である、項目22に記載の方法。
(24) 前記候補化合物が低分子である、項目1に記載の方法。
(25) 前記候補化合物が核酸である、項目1に記載の方法。
(26) 生存率が、候補化合物との接触の48時間後より後で評価される、項目1に記載の方法。
(27) 前記a)からの酵母細胞の生存率と、前記候補化合物と接触されそして野生型Hsp−40を発現する酵母細胞の生存率とを比較する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(28) 前記a)からの酵母細胞の生存率と、前記候補化合物に曝されておらずそして野生型Hsp40を発現しない酵母細胞の生存率とを比較する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(29) ハンティングトン病に対する治療剤をスクリーニングする方法であって:
a)酵母細胞と候補化合物とを接触させる工程であって、該酵母細胞は、少なくとも70残基のポリQ領域を有するハンティングトンポリペプチド含むポリペプチドを発現し、そして野生型Hsp−40を発現しない、工程;
b)該酵母細胞の生存率を評価する工程であって、生存率は、該候補化合物が候補治療剤であることを示す、工程、
を包含する、方法。
(30) パーキンソン病に対する治療剤をスクリーニングする方法であって:
a)アルファシヌクレインポリペプチドを含むポリペプチドを発現する酵母細胞と、毒性誘導薬剤を含む組成物とを接触させる工程;
b)該酵母細胞と候補化合物とを接触させる工程;および
c)該酵母細胞の生存率を評価する工程であって、生存率は、該候補化合物が候補治療剤であることを示す、工程、
を包含する、方法。
(31) 前記アルファシヌクレインポリペプチドが野生型である、項目30に記載の方法。
(32) 前記アルファシヌクレインポリペプチドが変異している、項目30に記載の方法。
(33) 前記アルファシヌクレインポリペプチドが、A53T変異を含む、項目32に記載の方法。
(34) 前記アルファシヌクレインポリペプチドが、A30P変異を含む、項目32に記載の方法。
(35) 前記ポリペプチドが融合タンパク質である、項目30に記載の方法。
(36) 前記ポリペプチドが、レポーターポリペプチドをさらに含む、項目35に記載の方法。
(37) 前記レポーターポリペプチドが、緑色蛍光タンパク質である、項目36に記載の方法。
(38) 前記レポーターポリペプチドがSup35である、項目36に記載の方法。
(39) 前記酵母細胞が、Saccharomyces cerevisiae細胞である、項目30に記載の方法。
(40) 前記毒性誘導薬剤が、炭素源、窒素源、塩、金属、アザウラシル、アウリントリカルボン酸、ブレフェルジンA、カンプトテシン、クロラムブシル、エチジウムブロミド、ホルムアミド、GuHCl、ヒドロキシ尿素、メナジオン、パラコート、またはバナデートである、項目30に記載の方法。
(41) 前記毒性誘導薬剤が炭素源である、項目40に記載の方法。
(42) 前記炭素源が、アラビノース、エタノール、またはグリセロールである、項目41に記載の方法。
(43) 前記毒性誘導薬剤が窒素源である、項目40に記載の方法。
(44) 前記窒素源が尿素である、項目43に記載の方法。
(45) 前記毒性誘導薬剤が、塩または金属である、項目40に記載の方法。
(46) 前記塩または金属が、CaCl2、CoCl2、CsCl、または鉄、マグネシウム、RbCl、もしくはSrCl2である、項目45に記載の方法。
(47) 前記候補化合物が低分子である、項目30に記載の方法。
(48) 前記候補化合物が核酸である、項目30に記載の方法。
(49) 生存率が、候補化合物との接触の48時間後より後で評価される、項目30に記載の方法。
(50) ハンティングトン病患者を処置する方法であって、該患者に有効量の治療剤を投与する工程を包含し、該治療剤は、以下:
a)酵母細胞と候補化合物とを接触させる工程であって、該酵母細胞は、ハンティングトンポリペプチドを含むポリペプチドを発現し、野生型Hsp−40を発現しない、工程;
b)該酵母細胞の生存率を評価する工程であって、生存率は、該候補化合物が候補治療剤であることを示す、工程、
を包含するプロセスにより同定された、方法。
(51) パーキンソン病患者を処置する方法であって、該患者に有効量の治療剤を投与する工程を包含し、該治療剤は、以下:
a)アルファシヌクレインポリペプチドを含むポリペプチドを発現する酵母細胞と、毒性誘導薬剤を含む組成物とを接触させる工程;
b)該酵母細胞と候補化合物とを接触させる工程;および
c)該酵母細胞の生存率を評価する工程であって、生存率は、該候補化合物が候補治療剤であることを示す、工程、
を包含するプロセスにより同定された、方法。
(52) ハンティングトン病に対する治療剤をスクリーニングする方法であって:
a)酵母細胞と候補化合物を接触させる工程であって、該酵母細胞は、ハンティングトンポリペプチドを含むポリペプチドを発現する、工程;
b)該ポリペプチドの凝集を可能にする条件下で該酵母細胞をインキュベートする工程;
c)該ポリペプチドの凝集を測定する工程;および該凝集レベルと、該候補化合物と接触させていない酵母細胞における凝集レベルとを比較する工程、
を包含する、方法。
(53) パーキンソン病に対する治療剤をスクリーニングする方法であって:
a)酵母細胞と候補化合物を接触させる工程であって、該酵母細胞が、アルファシヌクレインポリペプチドを含むポリペプチドを発現する、工程;
b)該ポリペプチドの凝集を可能にする条件下で該酵母細胞をインキュベートする工程;
c)該ポリペプチドの凝集を測定する工程;および
d)該凝集レベルと、該候補化合物と接触させていない酵母細胞における凝集レベルとを比較する工程であって、該候補化合物と接触させた該酵母細胞における凝集レベルの相対的な減少は、該候補化合物が候補治療剤であることを示す、工程、
を包含する、方法。
(54) タンパク質の誤った折り畳みによる疾患に対する治療剤をスクリーニングする方法であって:
a)酵母細胞と候補化合物とを接触させる工程であって、該酵母細胞が、誤って折り畳まれた疾患タンパク質を含むポリペプチドを発現する、工程;
b)該酵母細胞と毒性誘導薬剤とを接触させる工程;
c)該酵母細胞の生存率を評価する工程であって、ここで生存率は、該候補化合物が候補治療剤であることを示す、工程、
を包含する、方法。
(55) 前記タンパク質の誤った折り畳みによる疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン疾患、家族性アミロイドポリニューロパシー、タウオパシー、またはトリヌクレオチド疾患である、項目54に記載の方法。
(56) 前記タンパク質の誤った折り畳みによる疾患が、トリヌクレオチド疾患である、項目54に記載の方法。
(57) 前記トリヌクレオチド疾患が、ハンティングトン病である、項目56に記載の方法。
(58) 前記誤って折り畳まれた疾患タンパク質が、ハンティングトン、β−アミロイド、PrP、アルファシヌクレイン、シンフィリン、トランスチレチン、タウ、アタキシン1、アタキシン3、アトロフィン、またはアンドロゲン受容体である、項目54に記載の方法。
(59) 前記誤って折り畳まれた疾患タンパク質が、ハンティングトンまたはアルファシヌクレインである、項目58に記載の方法。
(60) 前記毒性誘導薬剤が、炭素源、窒素源、塩、金属、化学療法剤、アルコール、翻訳阻害剤、NSAID、DNAインターカレーター、キレート化剤、リポソーム、抗生物質、ビタミン、プロテオソーム阻害剤、抗酸化剤、または還元剤である、項目54に記載の方法。
(61) 前記毒性誘導薬剤が、金属または塩である、項目60に記載の方法。
(62) 以下:
項目1に記載の治療剤についてスクリーニングする工程であって、前記候補化合物が候補治療剤である、工程、および
該候補治療剤を生成する工程、
を包含するプロセスにより生成される、ハンティングトン病に対する治療剤。
(63) 以下:
項目30に記載の治療剤についてスクリーニングする工程であって、前記候補化合物が候補治療剤である、工程、および
該候補治療剤を生成する工程、
を包含するプロセスにより生成される、パーキンソン病に対する治療剤。
(64) ハンティングトン病患者を処置する方法であって:
a)項目1に記載の治療剤についてスクリーニングする工程であって、前記候補化合物が候補治療剤である、工程;および
b)治療的利益を達成するのに有効な量の該治療剤を該患者に投与する工程、
を包含する、方法。
(65) 前記スクリーニング方法が、前記酵母細胞と毒性誘導薬剤とを接触させる工程をさらに包含する、項目64に記載の方法。
(66) ハンティングトン病患者を処置する方法であって:
a)項目29に記載の治療剤についてスクリーニングする工程であって、前記候補化合物が候補治療剤である、工程;および
b)治療的利益を達成するのに有効な量の該治療剤を該患者に投与する工程、
を包含する、方法。
(67) パーキンソン病患者を処置する方法であって:
a)項目30に記載の治療剤についてスクリーニングする工程であって、前記候補化合物が候補治療剤である、工程;および
b)治療的利益を達成するのに有効な量の該治療剤を該患者に投与する工程、
を包含する、方法。
(68) ハンティングトン病患者を処置する方法であって:
b)治療的利益を達成するのに有効な量の項目62に記載の治療剤を該患者に投与する工程、
を包含する、方法。
【0009】
本発明は、誤って折り畳まれ、そして疾患に関連するタンパク質(「誤って折り畳まれた疾患タンパク質」)を、そのような疾患を治療する治療薬をスクリーニングする基礎として酵母中に発現し得るという観察に基づく。それぞれハンティングトン病およびパーキンソン病に関連する、ハンティングトン(huntingtin)またはアルファシヌクレインのような、誤って折り畳まれた疾患タンパク質を発現する酵母細胞において、毒性を誘導する条件および/または薬剤(「毒性誘導薬剤」)が同定された。さらに、特定の誤って折り畳まれた疾患タンパク質を発現する酵母細胞において毒性を誘導する条件および/または薬剤を、本発明の方法によって同定し得る。同定された条件および/または薬剤を、特定の誤って折り畳まれた疾患タンパク質を発現する酵母細胞で実施して、その誤って折り畳まれた疾患タンパク質に関連する疾患に使用し得る治療薬を同定し得る。そのスクリーニングは、誤って折り畳まれた疾患タンパク質に関連する疾患の治療に治療可能性を有する化合物を同定するために、誤って折り畳まれた疾患タンパク質を発現し、そして毒性が誘導された酵母の生存能力を使用する。そのスクリーニング法の利点は、候補治療化合物を同定するために、誤って折り畳まれた疾患タンパク質の生理学および/または細胞生物学、または誤って折り畳まれたタンパク質疾患の病因論の理解を必要としないことである。
【0010】
本発明は、ハンティングトン病の治療薬のスクリーニング方法を含む。そのような方法は、ハンティングトンポリペプチドの全てまたは一部分を発現し、そして酵母細胞がもはや生存可能でないように酵母における毒性を誘導する条件を有する、またはそのような薬剤と接触させた酵母細胞を含む。毒性の誘導は、酵母細胞における生存能力の喪失を引き起こす。従って、候補化合物存在下における酵母細胞の生存能力は、その候補化合物が候補治療薬であることを示す。生存能力は、その通常の意味で使用される。それは絶対的に、またはコントロールと比較して相対的に評価し得る。いくつかの実施形態において、酵母細胞は野生型Hsp−40または機能的Hsp−40を発現せず、それは酵母細胞において毒性を誘導する条件である。本明細書中で使用する場合、酵母細胞を化合物と「接触させること」は、酵母細胞を化合物に曝露する、インキュベートする、触れさせる、会合させる、接近可能にすることを指す。
【0011】
いくつかの実施形態において、ハンティングトンポリペプチドは、全長ハンティングトンポリペプチドのN末端領域を含む。ハンティングトンポリペプチドのN末端領域は、ポリQ反復領域を含むエキソン1のN末端領域またはエキソン1の全てを含み得ることが企図される。ポリQ反復領域は、配列番号4(HtQ103タンパク質)、配列番号6(HtQ25タンパク質)、および配列番号9(ポリQ反復を有さないHtエキソン1タンパク質)の位置18から始まる、変動する数のグルタミン残基反復によって特徴付けられる、ハンティングトンポリペプチドの領域を指す。本発明のいくつかの実施形態において、ポリQ領域は10、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、またはそれ以上のグルタミン残基を含む;特定の実施形態において、ポリQ領域は72または103グルタミン残基を有する。エキソン1は、全長ハンティングトンタンパク質のアミノ酸1−68を含むが、このエキソンは位置18から始まる変動する数のグルタミン残基を含み得、ここでいくつかの実施形態において、グルタミン(CAG)反復は25、47、72、または103グルタミン残基長であり得、残りの51アミノ酸がそれに続く。全長ハンティングトンポリペプチドのヒト遺伝子配列を、GenBank登録番号第NT_006081に見出すことができ、それはハンティングトン遺伝子が位置する第4染色体の配列であり、本明細書中で参考文献に組み込まれる。本出願において、変動する数のグルタミン残基によって特徴付けられるエキソン1の領域である、ポリQ領域におけるグルタミン残基の数は、ポリQ領域の下流にある残基のアミノ酸位置を変化させない。例えば「HtQ25」という用語は、25グルタミン残基のポリQ領域を有するハンティングトンポリペプチドを指し、それは一般的に野生型と考えられる。
【0012】
スクリーニング方法のいくつかの局面において、酵母細胞はハンティングトンポリペプチドを含むポリペプチドを発現する。ポリペプチドはまた、非ハンティングトンポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ハンティングトンポリペプチドおよびリポーターポリペプチドのような別のポリペプチドを含む融合タンパク質である。リポーターポリペプチドは、酵母細胞においてポリペプチドの検出または同定を可能にするあらゆるポリペプチドである。いくつかの実施形態において、リポーターポリペプチドはグリーン蛍光タンパク質(GFP)またはSup35(Mおよび/またはC領域を含む)である。
【0013】
いくつかの実施形態において、酵母細胞は変異Hsp40ポリペプチドを発現し、それは外来性または内因性であり得る。Hsp40ポリペプチドをC末端またはN末端のいずれかで短縮し得る、または挿入、置換、または内部欠失を有し得る。特定の実施形態において、Hsp40ポリペプチドは、C末端欠失を有する。C末端欠失は、配列番号8のアミノ酸352を含む。それおよび他の欠失は、配列番号8のアミノ酸352またはアミノ酸1、またはあらゆる他のアミノ酸に隣接する、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、231、240、250、またはそれ以上のアミノ酸を含み得る。Hsp40ポリペプチドは、複数の変異を含み得ることもさらに企図される。内因性ポリペプチドは、染色体(非組換え)核酸分子から発現するポリペプチドを指し、一方外来性ポリペプチドは、細胞外で発現する、または組換え核酸分子から発現するものを指す。
【0014】
さらなる実施形態において、野生型Hsp40を発現する、または発現しない酵母細胞を、毒性誘導薬剤と接触させる。酵母を、毒性誘導薬剤との接触前、後、またはその間に、候補化合物と接触させ得る。毒性誘導薬剤は、炭素源、窒素源、塩、金属、リポソーム、抗生物質、アニソマイシン、ブレオマイシン、カフェイン、カンプトテシン、カルボニルシアニド、ダウノルビシン、エタノール、ホルムアミド、GuHCL、またはNEM、または表3で同定される他の化合物を含む。ハンティングトンポリペプチドを発現する酵母細胞に関して、いくつかの実施形態において、毒性誘導薬剤はアラビノースまたは酢酸カリウムのような炭素源、またはCdCl、CoCl、CsCl、FeCl、LiCl、NHCl、RbCl、またはZnClのような塩または金属である。
【0015】
特許請求される方法はまた、候補化合物と接触させ、そして野生型Hsp40を発現しない酵母細胞の生存能力と、同じ候補化合物と接触させるが野生型Hsp40を発現する酵母細胞の生存能力を比較することを含み得る。あるいは、候補化合物と接触させ、そして野生型Hsp40を発現しない酵母細胞の生存能力を、野生型Hsp40を発現しないが候補化合物と接触させない酵母細胞の生存能力と比較し得る。候補化合物と接触させない酵母細胞と比較して、候補化合物と接触させた酵母細胞による生存能力の増加は、その候補化合物が候補治療薬であることを示す。言い換えると、本発明の他の実施形態と同様、候補化合物の存在下における、(増加した)、絶対的または相対的な生存能力は、その候補化合物が候補治療化合物であることを示す。
【0016】
本発明はまた、酵母を含む、パーキンソン病の治療薬のスクリーニング方法に関する。本発明のいくつかの実施形態において、酵母細胞は、パーキンソン病に関連する誤って折り畳まれた疾患タンパク質である、アルファシヌクレインポリペプチドの全てまたは一部を含むポリペプチドを発現する。酵母を毒性誘導薬剤または毒性誘導薬剤を含む組成物と接触させる。酵母を、毒性誘導薬剤との接触前、後、またはその間に候補化合物と接触させ得る。候補化合物の存在下における絶対的または相対的生存能力が、その候補化合物が候補治療化合物であることを示す。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、アルファシヌクレインポリペプチドは野生型(配列番号2)であり、一方他の実施形態においてそれは変異している。その変異は、ポリペプチドにおける欠失、挿入または置換であり得る。本発明の特定の局面において、アルファシヌクレインポリペプチドは、位置53においてアラニンがスレオニンに置換されたA53T変異体を含む。他の局面において、アルファシヌクレインポリペプチドは、位置30においてアラニンがプロリンで置換されたA30P変異体を含む。
【0018】
さらなる実施形態において、アルファシヌクレインポリペプチドは、少なくとももう1つのポリペプチドを含み得る融合タンパク質に含まれる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、アルファシヌクレインポリペプチドおよびリポーターポリペプチドのような別のポリペプチドを含む融合タンパク質である。リポーターポリペプチドは、酵母細胞においてポリペプチドの検出または同定を可能にするあらゆるポリペプチドである。いくつかの実施形態において、リポーターポリペプチドは、グリーン蛍光タンパク質(GFP)またはSup35(M領域および/またはC領域を含む)である。
【0019】
本発明の方法においてアルファシヌクレインを発現する酵母は、毒性誘導条件を有し得る、または毒性誘導薬剤と接触し得る。毒性誘導薬剤は、炭素源、窒素源、塩、金属、アザウラシル(azauracil)、アウリントリカルボン酸ブレオマイシン、ブレフェルジンA、カンプトテシン、クロラムブシル、臭化エチジウム、ホルムアミド、GuHCl、ヒドロキシ尿素、メナジオン、パラコート、またはバナジン酸塩または表3に列挙した他の任意の化合物であり得る。いくつかの実施形態において、炭素源はアラビノース、エタノール、またはグリセロールであり、一方他の実施形態において、窒素源は尿素である。さらなる実施形態において、毒性誘導薬剤はCaCl、CoCl、CsCl、または鉄、マグネシウム、RbCl、またはSrClのような塩または金属である。
【0020】
一般的に、本発明の全ての方法は、候補化合物存在下または非存在下での酵母細胞、および毒性誘導薬剤または毒性誘導条件の存在下または非存在下での酵母細胞を比較することを含む、コントロールを含み得る。そのような比較を、上記のHsp−40を発現する酵母に関して議論し、そして誤って折り畳まれた疾患タンパク質が関与するあらゆるスクリーニングに関して採用し得る。1つの実施形態に関して議論されたあらゆる組成物または方法を、他の実施形態の関係で採用し得ることが企図される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、またはそれ以上の後に、しかし酵母細胞が条件または薬剤に曝露されない場合よりは短い時間で、生存能力が失われる。
【0022】
本発明のあらゆる方法の候補化合物は、小分子または核酸であり得る。候補化合物は、ライブラリーに含まれ得る、または大規模スループットスクリーニングのために処理され得る。採用し得る酵母は、Saccharomyces cerevisiaeまたはSaccharomycetalesの他のあらゆるメンバーを含む。
【0023】
本発明はさらに、以下のものを含むタンパク質の誤った折り畳みの疾患の治療薬をスクリーニングする方法をさらに含む:a)酵母細胞を候補化合物と接触させること、ここで酵母細胞は誤って折り畳まれた疾患タンパク質を含むポリペプチドを発現する;b)酵母細胞を毒性誘導薬剤と接触させること;c)酵母細胞を生存能力に関して評価し、候補化合物が候補治療薬であることを示すこと。いくつかの実施形態において、タンパク質の誤った折り畳みの疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、家族性アミロイド多発性神経障害、タウオパシー、またはトリヌクレオチド疾患である。タンパク質の誤った折り畳みの疾患が、ハンティングトン病のようなトリヌクレオチド疾患であり得ることが特に企図される。他の実施形態において、誤って折り畳まれた疾患タンパク質は、ハンティングトン、β−アミロイド、PrP、アルファシヌクレイン、シンフィリン(synphilin)、トランスサイレチン、タウ(Tau)、アタキシン(ataxin)1、アタキシン3、アトロフィン、またはアンドロゲン受容体である。毒性誘導薬剤が炭素源、窒素源、塩、金属、化学療法剤、アルコール、翻訳阻害剤、NSAID、DNAインターカレーター、キレート化剤、リポソーム、抗生物質、ビタミン、プロテアソーム阻害剤、抗酸化剤、または還元剤であり得ることも企図される。さらに、酵母細胞を毒性誘導薬剤と接触させるかわりに、酵母がシャペロンタンパク質における変異のような毒性誘導条件を含み得ることが企図される。上記で議論されたように、ハンティングトン病またはパーキンソン病の治療薬のスクリーニングに関して議論された実施形態を、他の誤って折り畳まれたタンパク質疾患に関して採用し得る。
【0024】
本発明の他の方法は、以下のものを含むハンティングトン病の治療薬をスクリーニングする方法を含む:a)酵母細胞を候補化合物と接触させること、ここで酵母細胞はハンティングトンポリペプチドを含むポリペプチドを発現する;b)ポリペプチドの凝集を可能にする条件下で酵母細胞をインキュベートすること;c)ポリペプチドの凝集を測定すること;および凝集レベルを候補化合物と接触させなかった酵母細胞における凝集レベルと比較すること。いくつかの実施形態において、酵母細胞は毒性誘導条件を有する、および/または毒性誘導薬剤と接触する。
【0025】
本発明はまた、以下のものを含むパーキンソン病の治療薬をスクリーニングする方法を企図する:a)酵母細胞を候補化合物と接触させること、ここで酵母細胞はアルファシヌクレインポリペプチドを含むポリペプチドを発現する;b)ポリペプチドの凝集を可能にする条件下で酵母細胞をインキュベートすること;c)ポリペプチドの凝集を測定すること;および凝集レベルを候補化合物と接触させなかった酵母細胞における凝集レベルと比較すること。いくつかの実施形態において、酵母細胞は毒性誘導条件を有する、そして/または毒性誘導薬剤と接触する。
【0026】
スクリーニング方法に加えて、本発明のスクリーニング方法の結果から生ずる組成物および治療方法も含まれる。パーキンソン病およびハンティングトン病を含む、原線維発生が関与する疾患および状態を治療する治療薬。本発明のいくつかの実施形態において、スクリーニングされる候補化合物を、本発明の治療方法および組成物で採用し得る。さらなる実施形態において、候補化合物を、スクリーニングアッセイにおける能力に基づいて、候補治療薬であると決定する。候補化合物とインキュベートした細胞が、候補化合物とインキュベートしなかった細胞よりも生存能力があるなら(細胞形態学、数、増殖速度、継代能力、ならびに/または凍結能力および/または解凍能力を含み得る特徴に基づく)、本発明のいくつかの実施形態において、候補化合物は候補治療薬である。候補治療薬は、産生または製造し得る、または薬剤学的に許容できる組成物中に含み得る。本明細書中で記載されたあらゆるスクリーニング方法を、治療方法および組成物に関して採用し得ることが企図される。
【0027】
治療方法は、治療の必要がある患者に、治療的有用性を達成するのに有効な量で治療薬を投与することを含む。本発明の文脈における「治療的有用性」は、患者の状態の医学的治療に関して、ハンティングトン病およびパーキンソン病のような原線維発生疾患の治療を含む、患者の安寧を促進または増強するあらゆるものを指す。この網羅的でない例の列挙としては、患者の生命のあらゆる時間による延長、疾患の発達における減少または遅延、斑または原線維の数の減少、原線維成長の抑制、誤って折り畳まれたタンパク質の数の抑制、知的能力衰退の発症の遅延、および患者の状態に寄与し得る患者に対する萎縮症または痴呆の減少が挙げられる。
【0028】
ある実施形態の関係において議論された組成物および工程を、本明細書中で議論される他の実施形態に関して採用し得ることが企図される。
【0029】
本明細書中で使用する場合、「凝集」は、少なくとも3つの別々のポリペプチドの密集または蓄積を指して使用する。そのような「凝集」は、酵母ツーハイブリッドアッセイで観察されるような、異なる配列のポリペプチド間の特異的なタンパク質:タンパク質相互作用を除外する。
【0030】
本明細書または特許請求の範囲で使用される場合、「含む」という用語と組み合せて使用された場合には「a」または「an」という用語は1つまたは1つ以上を意味し得る。本明細書中で使用される場合「別の」は、少なくとも2番目またはそれ以上を意味し得る。
【0031】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な記載から明らかになる。しかし、本発明の意図および範囲内の様々な変化および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な記載および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、説明のためにのみ提供されることが理解されなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(例示的実施形態の説明)
組織における不溶性の原線維タンパク質の沈着は、タンパク質の誤った折り畳みに関連する疾患に特徴的である。これらの最もよくあるものは、神経変性疾患および同様に2型糖尿病のような疾患である(タンパク質の誤った折り畳みに関連する疾患のリストについては表1を参照のこと)。現在までに、これらのタンパク質沈着を溶解し得る治療または処置は知られていない。従って、タンパク質凝集および原線維形成を予防し得る薬剤が活発に探索されている。しかし、可能性のある候補物質を同定する方法は、当該分野に存在しない。
【0033】
本発明者らは、原線維発生およびタンパク質沈着を引き起こすタンパク質凝集の過程を予防および/または阻害する候補治療薬の迅速な同定を可能にする系を開発した。その系は酵母に基づいた系であり、ここで酵母細胞は、原線維形成に関与するタンパク質またはポリペプチドを発現するように操作され、例えば酵母細胞は、ハンティングトン病の場合にはハンティングトンポリペプチドを発現し得るか、またはパーキンソン病の場合にはアルファシヌクレインポリペプチドを発現し得るか、またはアミロイドーシスが関与する疾患の場合にはアミロイドタンパク質を発現し得る(原線維形成に関連するタンパク質のリストに関して表1もまた参照のこと)。これに加えて、1つの実施形態において、酵母細胞はまた、その遺伝的背景と組み合せて組換えポリペプチドを発現する結果として、酵母細胞の増殖速度を抑制するかまたは増殖させない遺伝的背景を有し得る。1つの例において、酵母細胞は変異Hsp40遺伝子を有する。増殖の減少または阻害は、遺伝的背景の変化に起因する組換え原線維ポリペプチドと相互作用する他のタンパク質または細胞因子の発現または活性のいくらかの変化の結果として、酵母細胞における組換え原線維形成ポリペプチドの毒性を示す。この毒性プロファイルは、ヒトおよび/または他の哺乳動物の神経変性状態と相関する。従って、もしそのような酵母細胞を候補物質に曝露すれば、細胞毒性を逆転させる薬剤の能力に関してスクリーニングし得、それはその薬剤の細胞毒性および/または神経毒性タンパク質の凝集ならびに原線維形成を予防する能力に相関する。
【0034】
(表1.異常なタンパク質沈着を伴う障害)
【0035】
【表1】

【0036】
【表1B】

【0037】
代替の実施形態において、組換え原線維形成タンパク質またはポリペプチドを発現する酵母細胞を、酵母細胞の増殖を抑制するかまたは増殖させない増殖条件のセットに曝露する。例えば、酵母細胞を、鉄または細胞に対して酸化ストレスを引き起こすフリーラジカル産生体と接触させ得る。再び、候補物質をこの酵母細胞と接触させて、酵母の細胞毒性を逆転し得る可能性のある薬剤をスクリーニングし得、これはまた、薬剤が細胞毒性タンパク質の凝集および原線維形成を防止する能力と相関する。
【0038】
しかし、そのように同定された薬剤の作用メカニズムは関連性がなく、いくつかの可能性のあるメカニズムとしては、タンパク質折り畳みの調節、タンパク質凝集の阻害、原線維または凝集の可溶化等が挙げられる。本発明の酵母に基づくスクリーニング系は、いくつかの神経変性病理を含む、タンパク質の誤った折り畳みおよび/または凝集、ならびに/あるいは原線維発生に起因して引き起こされる疾患の治療、予防、および治癒に有用な薬剤の同定を可能にする、ハイスループットかつ経済的なスクリーニング方法を提供する。
【0039】
(A.酵母細胞)
酵母細胞は、タンパク質の誤った折り畳みに関連する疾患の分子的基礎を研究するために強力な系を提供する。この生物は操作が容易であるので、酵母において遺伝的スクリーニングおよび化学的スクリーニングを容易に行ない得ることが周知である。酵母細胞をうまく使用して、いくつかの他の疾患関連ヒトタンパク質、例えば酵母において対応するホモログを有するCFTRおよびフラタキシンが研究された。フラタキシンは、神経変性疾患に関与するタンパク質である。従って、酵母は、対応するヒトホモログの存在に起因して、ヒト疾患に関与するタンパク質および遺伝子を研究する理想的な系を提供する。従って、タンパク質の誤った折り畳みの疾患の主要なクラスを構成するアミロイドおよびアミロイド様の増殖および特異性に関連する疾患を、酵母細胞で研究し得る。さらに、酵母細胞は、広範囲に研究された現象である、プリオン様メカニズムによって増殖する非メンデル遺伝因子[PSI]を有する。
【0040】
本発明の関係においてあらゆる酵母系統を使用し得る。本方法において使用し得る酵母細胞系統のいくつかの例としては、Saccharomyces uvae、Saccharomyces kluyveri、Schizosaccharomyces pombe、Saccharomyces uvarum、Kluyveromyces lactis、Hansenula polymorpha、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Pichia kluyveri、Yarrowia lipolytica、Candida sp.、Candida utilis、Candida cacaoi、Geotrichum sp.、およびGeotrichum fermentansが挙げられる。好ましい酵母系統は、Saccharomyces cerevisiaeである。
【0041】
本発明は広く多様な薬学的、化学的、および遺伝的薬剤のスクリーニング方法に関するので、1つの懸念は、候補物質のいくつかは酵母細胞に透過可能でないかもしれない、または酵母細胞によって取り込まれないかもしれない、または一旦酵母細胞に入ったら迅速に代謝されるかもしれない、または酵母細胞からくみ出されるかもしれないということである。本発明者らは、これらの問題を排除するように設計された酵母系統の適当な変異を使用することを企図する。1つの例において、膜流出ポンプに影響を与え、そして薬剤の透過性を増加させる、3つの遺伝子、erg6、pdr1、およびpdr3に変異を有する酵母系統の使用が企図される。この特定の系統を癌研究においてうまく使用して、増殖調節剤を同定した(詳細に関してはウェブサイト:http://dtp.nci.nih.govを参照のこと)。
【0042】
(B.熱ショックタンパク質)
いくつかの進化的に保存されたタンパク質ファミリーを構成する熱ショックタンパク質(HSP)が、温度の急激な上昇、または重金属、酸化ストレス、毒素およびアミノ酸アナログを含む、様々な他の代謝傷害に対する曝露に対する生理学的応答および生化学的応答において誘導される。この応答は全ての原核生物細胞および真核生物細胞において起こり、そして正常タンパク質合成の抑制およびHSPをコードする遺伝子の転写開始によって特徴付けられる。HSPは、分子シャペロンの1つのクラスであり、そして正常な条件下では、構成的に発現したHSPが適切なタンパク質折り畳みおよび成熟を促進し、膜を越えるタンパク質の移動を促進し、そしてホルモン受容体およびタンパク質キナーゼ活性を調節する。HSPは、細胞タンパク質と結合し、そしてそのコンフォメーションを調節することによってこれを達成する。
【0043】
構成的に発現されるもの、ならびに熱および他のストレスに応答して非常に高レベルで発現されるものを含む、全ての主要なHSPは、関連する機能を有する;これらはタンパク質の誤った折り畳みおよび凝集によって引き起こされる問題を改善する。しかし、主要なHSPファミリーはそれぞれ、独特の作用メカニズムを有する。いくつかのものは、誤って折り畳まれたタンパク質の分解を促進する(例えばLon、ユビキチン、および様々なユビキチン−結合体化酵素);別のものは様々な型の折り畳み中間体に結合し、そしてそれらが凝集するのを防止する(例えば、HSP70は、タンパク質を非折り畳みコンフォメーションに維持することによって作用し、一方HSP60/GroEL複合体は、タンパク質折り畳みを促進することによって作用する)、さらに別のものはステロイドホルモン受容体を含む分子に対して成熟能力または調節能力を有する(例えばHSP90s)、そしてさらに別のHSPは、既に凝集したタンパク質の再活性化を促進する(Hsp100)(ParsellおよびLindquist、1993;ParsellおよびLindquist、1994b)。
【0044】
より小さいHSPは、アクチンを含む様々なタンパク質の凝集および熱不活性化を抑制し得る。細菌DnaJ熱ショックタンパク質の哺乳動物ホモログであるHsp40は、新しいポリペプチドに、それらがリボソームで合成されているときに結合し、そしてそれらの正しい折り畳みを媒介する。ポリグルタミン−延長短縮ハンティングトンタンパク質は、ポリグルタミン長依存性の様式で、シャペロンのHsp40ファミリーおよびHsp70ファミリーのメンバーと相互作用することが最近示された(KrobitschおよびLindquist、2000;Janaら、2000)。
【0045】
酵母において少なくとも16個のタンパク質、および動物細胞において10個より多いタンパク質を含む、多くのHsp40タンパク質が、原核生物細胞および真核生物細胞の両方で発見された(表2を参照のこと)。これらのタンパク質は、多様な細胞局在および機能を発達させ、そしてJドメイン中の特定の保存されたアミノ酸の存在および様々な他のドメインの存在に依存して、3つのサブグループに分けられる。異なる酵母Hsp40ホモログの哺乳動物Hsp40タンパク質、HDJ−1に対する配列整列は、Sis1が40%のアミノ酸同一性で最も相同であることを示す。酵母Sis1および哺乳動物HDJ−1はどちらも、クラスIIのメンバーである。それらはN末端Jドメイン、続いてグリシン−フェニルアラニンリッチ領域(GF−領域)およびC末端領域を含む。HDJ−1およびSis1はどちらも、GF−領域とC末端ドメインとの間のジンクフィンガーモチーフを欠く。どちらも熱誘導性であり、そして核および細胞質で見出される。
【0046】
(表2.熱ショックタンパク質)
【0047】
【表2】

【0048】
本発明において、モデル酵母系、Saccharomyces cerevisiaeを、異なるシャペロン活性を有する複数の同系酵母系統が入手可能であるので、使用した。しかし、当業者によって認識されるように、あらゆる他の酵母系統も使用し得る。本発明の1つの実施例において、野生型酵母系統を、グリーン蛍光タンパク質(GFP)に融合した、25、47、72または103残基を含む様々なポリグルタミン(poly−Q)長を有するタンパク質であるハンティングトン(Ht)のN末端領域を産生するように操作した。HtのN末端フラグメントの産生は、ハンティングトン病(HD)の中心的な出来事であり、これは次いでヒトおよびトランスジェニック動物モデルの両方において疾患の自然な進行の間に、罹患したニューロンにおいてHt凝集の形成を引き起こす。Htタンパク質の発現を、当該分野で周知の方法を用いて、GFP蛍光分析によってモニターした。25グルタミンを有するタンパク質(HtQ25)は、拡散した蛍光を示したが、より長いグルタミンの領域を有するタンパク質(HtQ47、HtQ72、またはHtQ103)は、比例してより高い凝集傾向を示した。細胞溶解物の差次的沈降分析は、HtQ25およびHtQ47は完全に可溶性であるが、HtQ72およびHtQ103はほとんど不溶性であることを明らかにした。これらの発見は、酵母細胞において、哺乳動物細胞と同様に、Htフラグメントの凝集はポリグルタミン領域の長さに依存することを示した。
【0049】
本発明者らは次いで、ポリグルタミン依存性凝集に対する、タンパク質分解の調節剤の効果を調査した。このために、プロテアソーム/ユビキチン化経路中の3つの異なる部分的機能損失変異(ユビキチン活性化酵素;20Sプロテアソームの触媒サブユニット;または19Sプロテアソーム調節複合体のサブユニット)を有する系統を利用し、そして蛍光および沈降パターンに違いは観察されなかった。
【0050】
ほとんどのシャペロンの発現レベルを変化させることも、凝集の形成に影響を与えなかった。しかし、過剰発現したSis1(哺乳動物Hdj−1の酵母ホモログ)、Hsp70またはHsp104は、HtQ72およびHtQ103の凝集を調節した。Hsp104欠損酵母細胞において、HtQ72またはHtQ103は完全に可溶性のままであった。凝集しても凝集しなくても、これらのいずれのフラグメントでも毒性は観察されなかったが、本発明者らは、酵母細胞におけるハンティングトンの凝集は、細胞におけるシャペロン活性のバランスに依存することを示した。
【0051】
Hsp40の酵母ホモログであるSis1は、ハンティングトンの凝集状態に影響を与え、そして様々なモデル系においてポリQ誘導毒性に重要であることが公知であるので、本発明者らは、Sis1の詳しい分析を行なった。Sis1タンパク質の異なる領域を発現するように操作した酵母系統を、ハンティングトン−GFP融合構築物で形質転換した。HtQ72およびHtQ103の凝集パターンは、変異Sis1タンパク質の産生によって著しく変化した。少数の大きな凝集の代わりに、多数の小さな凝集が存在していた。最も著しいことは、1つのSis1構築物において、凝集の変化は、酵母細胞の生存能力の減少を伴った。本発明者らは、このSis1誘導毒性が、Hsp104の同時発現によって低減されることを発見した。Hsp104はまた、ハンティングトン毒性の哺乳動物細胞モデル、および単純なポリQ−GFP融合物を使用するC.elegansモデルにおいて、凝集の形成および細胞死をどちらも低減する。従って、酵母におけるSis1の変化によって誘導されるハンティングトンの毒性は、ヒトにおけるHtの毒性と相関する。
【0052】
従って、本発明者らは、ハンティングトンのようなタンパク質によって例示される、原線維の形成に関与するタンパク質および/または凝集して不溶性の沈着を形成するタンパク質を分析するためのモデル系として酵母を利用する系を開発した。当業者は、ハンティングトンは単なる非限定的な例であることを認識する。本明細書中で開発された系および方法は、潜在的な毒性の合併(ストレス応答の誘導、サプレッサー変異の出現等のような)なく、生きた細胞においてそのようなタンパク質のコンフォメーション状態に影響を与える薬剤の同定を可能にする。
【0053】
原線維の形成に関与するタンパク質および/または凝集して不溶性の沈着を形成するタンパク質に影響を与える、潜在的な薬学的薬剤または治療的薬剤を同定するために、本発明者らは、短縮Sis1タンパク質およびHtQ103のような毒性を引き起こす凝集タンパク質または原線維形成タンパク質を発現する酵母系統を使用する実験を企図する。Htタンパク質の実施例において、本発明者らは、HtQ25(コントロール、無毒性)、HtQ47またはHtQ72(無毒性であるが潜在的に毒性である)、あるいはHtQ103(毒性)を発現する、変異Sis1バックグラウンドを有する酵母系統の使用を企図する。これらの酵母細胞を、試験薬剤ありまたは無しで、連続的な希釈で選択培地上にスポットする。コントロールプレートと比較して試験プレートにおける増加した増殖速度が、毒性を低減する可能性を有する化合物を同定する;減少した増殖は、毒性を増加させ得る化合物を同定する。顕微鏡分析は、これらの薬剤が凝集の形成にも影響を与えるかどうか決定し、そしてGFP融合タンパク質を使用する。このスクリーニングを、GFPに融合していないHtのN末端領域のみを発現する酵母系統でも実施する。それに加えて、本発明者らは、異常なタンパク質沈着、および/または原線維発生、および/またはアミロイドーシス、および/または不溶性の沈着を形成するタンパク質凝集に関与する疾患の治療薬を同定するために、ヒトの使用に関してFDAが認可した化合物のライブラリーのスクリーニングを企図する。発明者らはまた、治療的利益を提供し得る化学的薬剤および遺伝的薬剤を同定するために、大規模コンビナトリアルケミストリーライブラリーならびにゲノムライブラリーおよびcDNAライブラリーのスクリーニングを企図する。表1に列挙したような他の原線維形成/凝集形成タンパク質を用いた同様の実験が企図される。
【0054】
従って、HSPの変異は、タンパク質の誤った折り畳み、特にタンパク質凝集の結果として起こる疾患を引き起こし得る。本発明において、HSP遺伝子に変異を有する酵母細胞を使用して、タンパク質の誤った折り畳みが関与する疾患に関係する組換えタンパク質を発現した。これは、より低い増殖速度を有するか、または増殖しない酵母細胞を生じ、誤った折り畳みを修正する能力を欠く細胞における組換えタンパク質の誤った折り畳みに起因する細胞毒性効果を示す。これらの酵母細胞を使用して、タンパク質折り畳みを修正し得る薬剤を同定し、それによってタンパク質の誤った折り畳みに関与する疾患の治療的利益または予防的利益を提供するスクリーニング方法を開発した。
【0055】
(C.他の毒性誘導薬剤)
本発明の他の実施形態において、酵母細胞を他の毒性誘導薬剤に供した場合に、いくつかの原線維形成/凝集形成タンパク質が、毒性効果を有することが示された。毒性誘導薬剤は、炭素源、窒素源、塩、金属、化学療法剤、アルコール、翻訳阻害剤、NSAID、DNAインターカレーター、キレート化剤、リポソーム、抗生物質、ビタミン、プロテアソーム阻害剤、抗酸化剤、または還元剤であり得る(表3に列挙したいくつかの非限定的な例を参照のこと)。従って、例えば上記で列挙した薬剤の1つに曝露することによる、増殖条件の変化は、酵母細胞において毒性を引き起こす。その毒性は、酸化ストレスまたは酵母細胞における他のストレス応答経路を変化させる条件に起因するものであり得る。酸化ストレスは、本明細書中で、細胞の酸化/呼吸メカニズムに影響を与えるあらゆるプロセスとして定義される。これは、フリーラジカルまたは呼吸酵素毒の産生の結果であり得る。
【0056】
(表3.推定の毒性誘導薬剤)
【0057】
【表3】

【0058】
【表3B】

【0059】
【表3C】

【0060】
【表3D】

【0061】
【表3E】

【0062】
【表3F】

【0063】
【表3G】

【0064】
(D.核酸)
本発明の1つの実施態様は、誤って折り畳まれた疾患タンパク質のような、タンパク質凝集および/または原線維形成に関与するタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸を、酵母細胞へ輸送して、その酵母細胞にそのタンパク質を発現させることである。例えば、アルファシヌクレイン(synuclein)、ハンティングトン、トランスサイレチン、β2−ミクログロブリン、またはβ−アミロイド、αミロイド、ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド等のような任意のアミロイドタンパク質(他の制限しない例に関して表1を参照のこと)を発現し得る。1つの実施態様において、核酸は全長の、実質的に全長の、または機能的に等価な形式のそのようなタンパク質またはポリペプチドをコードする。さらなる実施態様において、短縮ポリペプチドまたは内部欠失を有するポリペプチドが、酵母細胞に提供される。他の実施態様において、ポリペプチドはヒトまたは他の哺乳動物ホモログである。
【0065】
他の実施態様において、酵母細胞をまた熱ショックタンパク質でトランスフェクトし得る。さらに他の局面において、本発明は酵母細胞を、他の細胞タンパク質との相互作用、およびタンパク質折り畳み、タンパク質凝集などを助けることに関与する任意のタンパク質と同時トランスフェクトすることを企図する。
【0066】
従って、本発明のいくつかの実施態様において、酵母に基づくスクリーニングシステムの開発は、酵母細胞を、タンパク質凝集および/または原線維形成に関与するタンパク質またはポリペプチドをコードする発現構築物でトランスフェクトすることを含む。
【0067】
本発明のある局面は、タンパク質凝集および/もしくは原線維形成分子に関与するタンパク質またはポリペプチド、あるいは熱ショックタンパク質、あるいは他のタンパク質との相互作用に関与するタンパク質をコードする、少なくとも1つの核酸に関する。ある局面において、その核酸は野生型または変異核酸を含む。特定の局面において、その核酸は少なくとも1つの転写核酸をコードする。特定の局面において、タンパク質凝集および/または原線維形成に関与するタンパク質またはポリペプチド、あるいは熱ショックタンパク質、あるいは他のタンパク質との相互作用に関与するタンパク質をコードするその核酸は、少なくとも1つのタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド、またはそれと生物学的に機能が等価なものをコードする。他の局面において、タンパク質凝集および/または原線維形成に関与するタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸は、配列番号第1番(アルファシヌクレイン)、配列番号第3番(HtQ103)、配列番号第5番(HtQ25)、配列番号第9番(少しもポリグルタミン反復のないHtエキソン1)の少なくとも1つの核酸フラグメント、あるいは少なくとも1つのそれと生物学的に機能が等価なものをコードする。別の局面において、熱ショックタンパク質をコードする核酸は、配列番号第7番(酵母のHSP40ホモログ、酵母細胞においてSis1とも呼ばれる)の少なくとも1つの核酸フラグメント、または少なくとも1つのそれと生物学的に機能が等価なものをコードする。
【0068】
本発明はまた、当業者に公知の、または本明細書中で記載されたような組換え核酸技術の適用による、少なくとも1つの組換え構築物、または少なくとも1つの組換え宿主細胞の単離または作製に関する。組換え構築物または宿主細胞は、タンパク質凝集および/または原線維形成に関与するタンパク質またはポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含み得、そしてタンパク質凝集および/もしくは原線維形成に関与する少なくとも1つのタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド、あるいは少なくとも1つのそれと生物学的に機能が等価なものを発現し得る。
【0069】
いくつかの実施態様において、本発明はデータベース受託番号:Genbank NC_001146によって同定されたDNA配列を参照し、これはSIS1遺伝子が位置する染色体の受託番号であり、そしてSIS1はSGD ID S0004952によって参照される;アルファシヌクレインに関してはGenbank NM_000345;およびハンティングトン遺伝子が位置する第4染色体の受託番号はGenbank NT_006081である。
【0070】
本明細書中で使用される「野生型」は、生物のゲノム中で遺伝子座において核酸の天然に存在する配列、およびそのような核酸から転写または翻訳された配列を指す。従って、「野生型」という用語はまた、核酸によってコードされるアミノ酸配列も指し得る。個体の集団において遺伝子座は1つより多い配列または対立遺伝子を有し得るので、「野生型」という用語はそのような天然に存在する全ての対立遺伝子を含む。本明細書中で使用される「多型」という用語は、集団の個体における遺伝子座においてバリエーションが存在する(すなわち、2つまたはそれ以上の対立遺伝子が存在する)ことを意味する。本明細書中で使用される「変異体」は、組換えDNA技術の結果である、核酸の配列あるいはそのコードされるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの配列における変化を指す。
【0071】
核酸を当業者に公知の任意の技術によって作製し得る。合成核酸、特に合成オリゴヌクレオチドの制限しない例としては、本明細書中に参考として援用されるEP 266,032で記載されたような、ホスホトリエステル、亜リン酸塩またはホスホロアミダイト化学および固相技術を用いた、あるいはそれぞれ本明細書中に参考として援用されるFroehlerら、1986および米国特許番号第5,705,629号によって記載されたような、デオキシヌクレオシドH−ホスホン酸塩中間体による、インビトロ化学合成によって作製された核酸が挙げられる。酵素的に産生された核酸の制限しない例としては、PCRTM(例えばそれぞれ本明細書中に参考として援用される、米国特許第4,683,202号および同第4,682,195号を参照のこと)のような増幅反応、または本明細書中に参考として援用される米国特許第5,645,897号に記載されたオリゴヌクレオチドの合成において、酵素によって産生されたものが挙げられる。生物学的に産生された核酸の制限しない例としては、細菌における組換えDNAベクターの産生のような、生きた細胞における組換え核酸の産生が挙げられる(例えば、本明細書中に参考として援用されるSambrookら、1989を参照のこと)。
【0072】
核酸は、ポリアクリルアミドゲル、塩化セシウム勾配遠心分離、または当業者に公知の任意の他の手段によって精製され得る(例えば、本明細書中に参考として援用されるSambrookら、1989を参照のこと)。
【0073】
「核酸」という用語は一般的に、例えばDNA(例えばアデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」、およびシトシン「C」)またはRNA(例えばA、G、ウラシル「U」、およびC)で見出される天然に存在するプリン塩基またはピリミジン塩基のような、少なくとも1つの核酸塩基を含む、DNA、RNA、またはその誘導体または模倣物の少なくとも1つの分子または鎖を指す。「核酸」という用語は、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語を含む。「オリゴヌクレオチド」という用語は、長さが約3と約100との間の核酸塩基の少なくとも1つの分子を指す。「ポリヌクレオチド」という用語は、長さが約100核塩基より長い、少なくとも1つの分子を指す。これらの定義は一般的に、少なくとも1つの一本鎖分子を指すが、特定の実施態様において、少なくとも1つの一本鎖分子に部分的に、実質的に、または完全に相補的な、少なくとも1つのさらなる鎖も含む。従って、核酸は、分子鎖を含む特定の配列の1つまたはそれ以上の相補鎖または「相補物」を含む、少なくとも1つの二本鎖分子または少なくとも1つの三本鎖分子を含み得る。
【0074】
ある実施態様において、「遺伝子」は転写される核酸を指す。本明細書中で使用される場合、「遺伝子フラグメント」は、遺伝子の核酸フラグメントである。ある局面において、遺伝子は、転写、またはメッセージの産生もしくは構成に関わる調節配列を含む。特定の実施態様において、遺伝子はタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする転写配列を含む。本明細書中で記載する用語と一致して、「単離遺伝子」は、他の天然に存在する遺伝子、調節配列、ポリペプチドまたはペプチドコード配列等のような、他のそのような配列から実質的に単離された、転写された核酸、調節配列、コード配列等を含み得る。この点に関して、「遺伝子」という用語は、単純性のために、転写されるヌクレオチド配列およびその相補鎖を含む核酸を指すために使用される。特定の局面において、転写されたヌクレオチド配列は、少なくとも1つの機能的なタンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドのコードユニットを含む。当業者によって理解されるように、この「遺伝子」という機能的用語は、ゲノム配列、RNAまたはcDNA配列、または遺伝子の非転写プロモーターまたはエンハンサー領域を含むがこれに限らない、遺伝子の非転写部分の核酸フラグメントを含む、より小さな操作された核酸フラグメントの両方を含む。より小さな操作された遺伝子核酸フラグメントは、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、変異体および/またはそのようなものを発現し得る、あるいは核酸操作技術を用いて発現するように適合させ得る。従って、「短縮遺伝子」は、タンパク質凝集および/または原線維形成に関与する全長のタンパク質またはポリペプチドの一部をコードする、連続的な核酸残基の伸長を欠く核酸配列を指す。例えば、短縮遺伝子は、タンパク質凝集および/または原線維形成に関与するタンパク質またはポリペプチド、あるいは熱ショックタンパク質遺伝子のN−末端領域の核酸配列を含まないかもしれない。
【0075】
「他のコード配列から実質的に単離された」は、目的のある遺伝子、この場合はタンパク質凝集および/もしくは原線維形成に関与するタンパク質またはポリペプチド;または熱ショックタンパク質;または任意の分子シャペロンタンパク質のいずれかをコードする遺伝子が、核酸のコード領域の重要な部分を形成すること、あるいは核酸が、大きな染色体フラグメント、他の機能的遺伝子、RNAまたはcDNAのコード領域のような、天然に存在するコード核酸の大きな部分を含まないことを意味する。もちろん、これはもともと単離された核酸を指し、そして組換え核酸技術によって後で核酸に加えられた遺伝子またはコード領域を除外しない。
【0076】
ある実施態様において、核酸は核酸フラグメントである。本明細書中で使用される「核酸フラグメント」という用語は、制限しない例のために、タンパク質凝集および/または原線維形成に関与するペプチド配列またはポリペプチド配列の一部のみをコードするもののような、核酸のより小さなフラグメントである。従って、「核酸フラグメント」は、約2ヌクレオチドからコード領域の全長までの、遺伝子配列の任意の部分を含み得る。ある実施態様において、「核酸フラグメント」は全長遺伝子配列を含む。
【0077】
様々な核酸フラグメントを、特定の核酸配列に基づいて設計し得、そしてそれは任意の長さであり得る。配列に数値を割り当てることによって、例えば最初の残基は1、2番目の残基は2、等、全ての核酸フラグメントを定義するアルゴリズムを以下のように作製し得る:
nからn+y
ここでnは1から配列の最後の番号までの整数、そしてyは核酸フラグメントの長さ−(マイナス)1であり、ここでn+yは配列の最後の番号を超えない。従って、10マーについては、核酸フラグメントは、塩基1〜10、2〜11、3〜12…等に対応する。15マーについては、核酸フラグメントは塩基1〜15、2〜16、3〜17…等に対応する。20マーについては、核酸フラグメントは塩基1〜20、2〜21、3〜22…等に対応する。ある実施態様において、核酸フラグメントはプローブまたはプライマーであり得る。
【0078】
タンパク質凝集および/または原線維形成に関与するタンパク質またはポリペプチド、あるいは熱ショックタンパク質、あるいは任意の分子シャペロンタンパク質のいずれかをコードする、本発明の核酸は、配列自身の長さに関係なく、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、制限酵素部位、複数のクローニング部位、コードフラグメント等を含むがこれに限らない他の核酸配列と組み合せて、1つまたはそれ以上の核酸構築物を作製し得る。全体の長さは、核酸構築物の間でかなり変動し得る。従って、ほとんど任意の長さの核酸フラグメントを採用し得、全体の長さは、好ましくは調製の容易さ、または意図する組換え核酸プロトコールにおける使用によって制限される。
【0079】
(a)酵母細胞におけるスクリーニング方法の成分を発現する核酸ベクター
誤って折り畳まれた疾患タンパク質;または熱ショックタンパク質;または任意の他の分子シャペロン;またはさらに、タンパク質の誤った折り畳みの疾患に対する治療的価値を有する候補物質のような、本発明のアッセイシステムの成分をコードする遺伝子を、プラスミド、直線状核酸分子、人工染色体、およびエピソームベクターを含むがこれに限らない核酸ベクターを用いて酵母細胞にトランスフェクトし得る。当然酵母プラスミドが好ましく、そして酵母における組換えプラスミドの発現および複製に使用される3つのシステムは以下のものを含む:
1.組込みプラスミド:そのようなプラスミドの例はYIpであり、それはハプロイドゲノムあたり1コピーが維持され、そしてメンデルの様式で遺伝する。目的のある遺伝子、細菌の複製起点、および選択可能な遺伝子(典型的には抗生物質耐性マーカー)を含むそのようなプラスミドを、細菌で産生する。精製したベクターを選択可能な遺伝子内で直線状にし、そしてコンピテントな酵母細胞を形質転換するのに使用する。使用するプラスミドの型にかかわらず、酵母細胞を典型的には化学的方法によって形質転換する(例えば、Roseら、1990、Methods in Yeast Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.によって記載されているように)。細胞を典型的には酢酸リチウムで処理して、DNA 1μgあたり約10コロニー形成ユニット(形質転換細胞)の形質転換効率を達成する。酵母は、相同的組換えを起こし、その結果、切断、選択マーカーが変異(通常、点突然変異または小さな欠失)宿主遺伝子と組換えして機能を回復する。次いで形質転換した細胞を選択培地で単離する。
【0080】
2.低コピー数ARS−CEN:1つの例はYCpであり、そのようなプラスミドは、プラスミドで保持される場合、酵母におけるその複製を可能にする約700bpの配列である自律複製配列(ARS1)、およびセントロメア配列(CEN4)を含み、後者は有糸分裂の安定性を可能にする。これらは、通常、1細胞あたり1〜2コピー存在する。CEN配列の除去は、YRpプラスミドを産生し、それは典型的には細胞あたり100〜200コピー存在する;しかしこのプラスミドは有糸分裂および減数分裂がいずれも不安定である。
【0081】
3.高コピー数2pサークル:これらのプラスミドは、長さが約1kbの配列、2μ配列を含み、それは酵母レプリコンとして作用してより高いプラスミドコピー数を生ずる;しかしこれらのプラスミドは不安定であり、そして維持のために選択が必要である。コピー数は、プラスミド中に能力の劣るプロモーター(crippled promoter)に作動可能に連結した選択遺伝子を有することによって増加する。これは通常、短縮プロモーター(LEU2−d)を有するLEU2遺伝子であり、低レベルのLeu2pタンパク質が産生される。従って、ロイシン涸渇培地での選択が、細胞増殖に十分なLeu2pの量を産生するために、コピー数を増加させる。
【0082】
本発明で有用な酵母プラスミドの例は、YRpプラスミド(自律複製配列、すなわちARSに基づく)およびYEpプラスミド(2μサークルに基づく)を含み、その例はYEp24およびプラスミドのYEplacシリーズである(GietzおよびSugino、1988)。(Sikorski、「Saccharomyces cerevisiaeの染色体外クローニングベクター」、Plasmid, A Practical Approach、K.G.Hardy編、IRL Press、1993;およびYeast Cloning Vectors and Genes、Current Protocols in Molecular Biology、第2項、単元13.4、Ausubelら編、1994を参照のこと)。
【0083】
酵母複製起点に加えて、酵母プラスミド配列は典型的には抗生物質耐性遺伝子、細菌複製起点(細菌細胞における増殖のために)、および酵母細胞における維持のための酵母栄養遺伝子を含む。栄養遺伝子(または「栄養要求マーカー」)は、最も多くの場合以下の1つである:TRP1(トリプトファン生合成経路の成分である、ホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼ);URA43(ウラシル生合成経路に関与するオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ);LEU2(ロイシン生合成経路に関与する3−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ);HIS3(イミダゾールグリセロールリン酸デヒドラターゼ、すなわちIGPデヒドラターゼ);またはLYS2(リシン生合成経路の一部である、α−アミノアジピン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ)。
【0084】
(b)プロモーターおよびエンハンサー
「プロモーター」は、転写の開始および速度が制御される、核酸配列の領域である制御配列である。それは、核酸配列の特異的な転写を開始するために、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子のような調節タンパク質および分子が結合し得る遺伝エレメントを含み得る。「作動可能に位置する」「作動可能に連結する」「制御下」および「転写制御下」という語句は、その配列の転写開始および/または発現を制御するために、その核酸配列と関連して、プロモーターが正しい機能的位置および/または方向であることを意味する。
【0085】
プロモーターは一般的に、RNA合成の開始位置を配置するために機能する配列を含む。この最もよく知られた例は、TATAボックスであるが、例えば哺乳類末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーターおよびSV40後期遺伝子のプロモーターのような、TATAボックスを欠くいくつかのプロモーターにおいては、開始部位自体を覆う不連続なエレメントが、開始位置を固定するのを助ける。さらなるプロモーターエレメントが転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の30−110bp上流の領域に位置するが、多くのプロモーターが開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが示された。コード配列をプロモーターの「制御下」にするために、転写リーディングフレームの転写開始部位の5’末端を、選択したプロモーターの「下流」(すなわち3’側)に配置する。「上流」プロモーターがDNAの転写を刺激し、そしてコードされたRNAの発現を促進する。
【0086】
プロモーターエレメント間の間隔は、多くの場合融通がきき、エレメントを逆にして、またはお互い相対的に移動させてもプロモーター機能は保存される。tkプロモーターにおいて、活性が減少し始めるまでに、プロモーターエレメント間の間隔を、50bp離れるまで増加させ得る。プロモーターに依存して、個々のエレメントは協同的または独立に機能して転写を活性化し得るようである。プロモーターを、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用調節配列を指す「エンハンサー」と組み合せて使用してもよいし、使用しなくてもよい。
【0087】
プロモーターは、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得られるように、核酸配列と天然で関連するものであり得る。そのようなプロモーターを「内因性」と呼び得る。同様に、エンハンサーは、その配列の下流または上流のいずれかに位置する、核酸配列と天然で関連するものであり得る。あるいは、コード核酸セグメントを、天然の環境において通常核酸配列と関連しないプロモーターを指す、組換えまたは異種プロモーターの制御下に配置することによって、ある利点が得られる。組換えまたは異種エンハンサーはまた、天然の環境において通常核酸配列と関連しないエンハンサーを指す。そのようなプロモーターまたはエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、およびあらゆる他のウイルス、または原核生物細胞または真核生物細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、および「天然に存在しない」、すなわち異なる転写調節領域の異なるエレメント、および/あるいは発現を変化させる変異を含むプロモーターまたはエンハンサーを含み得る。例えば、組換えDNA構築物で最もよく使用されるプロモーターは、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースおよびトリプトファン(trp)プロモーターシステムを含む。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に産生することに加えて、配列を組換えクローニングおよび/またはPCRTMを含む核酸増幅技術を用いて、本明細書中で開示される組成物とともに産生し得る(米国特許第4,683,202号および第5,928,906号を参照のこと、それぞれ本明細書中で参考として援用される)。さらに、ミトコンドリア、葉緑体等のような非核小器官内で配列の転写および/または発現を指示する制御配列も同様に採用し得ることが企図される。プロモーター、エンハンサー、および他の座、または転写制御/調節エレメントを含む調節配列を、「転写カセット」とも呼ぶ。
【0088】
当然、発現のために選択された小器官、細胞型、組織、器官、または生物においてDNAセグメントの発現を効率的に指示するプロモーターおよび/またはエンハンサーを採用することが重要である。分子生物学の当業者は一般的に、タンパク質発現のプロモーター、エンハンサー、および細胞型の組み合せの使用を知っている(例えば、本明細書中で参考として援用されるSambrookら、1989を参照のこと)。採用されるプロモーターは、構成的、組織特異的、誘導的、および/または遺伝子治療もしくは組換えタンパク質および/またはペプチドの大規模産生のような適用に有利であるような、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を指示するために適切な条件下で有用であり得る。プロモーターは、異種由来または内因性であり得る。
【0089】
T3、T7、またはSP6細胞質発現システムの使用は、別の可能な実施形態である。真核生物細胞は、もし適切な細菌ポリメラーゼが伝達複合体の一部として、またはさらなる遺伝的発現構築物としてのいずれかで提供されるなら、特定の細菌プロモーターからの細胞質転写を支持し得る。
【0090】
様々な誘導性エレメント/プロモーター/エンハンサーを、RNAの発現を調節するために、本発明の状況において採用し得る。誘導性エレメントは、特定の刺激に応答して活性化され得る核酸配列の領域である。酵母特異的プロモーターのいくつかの例は、Gal1−10、Gal1、GalL、GalSのような誘導性プロモーター、抑制プロモーターMet25、およびグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(GPD)、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(ADH)、翻訳伸長因子−1−アルファプロモーター(TEF)、シトクロムc−オキシダーゼプロモーター(CYC1)、MRP7等のような構成的プロモーターを含む。グルココルチコイドホルモンによって誘導されるプロモーターを含む酵母の自律複製発現ベクターも記載され(Picardら、1990)、これらはグルココルチコイド応答エレメント(GRE)を含む。これらおよび他の例が、Mumberら、1995;Ronickeら、1997;Pinkhaus、2000に記載され、これらは全て本明細書中で参考として援用される。アルファ因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHのような構成的または誘導性プロモーターを含むさらに他の酵母ベクターを使用し得る。概説については、AusubelらおよびGrantら、1987を参照のこと。さらに、遺伝子を発現させるために、あらゆるプロモーター/エンハンサーの組み合せも使用し得る(Eukaryotic Promoter Data Base EPDBによって)。
【0091】
組織特異的プロモーターまたはエレメントの正体、およびそれらの活性を特徴付けるアッセイは、当業者に周知である。そのような領域の制限しない例は、ヒトLIMK2遺伝子(Nomotoら、1999)、ソマトスタチン受容体2遺伝子(Krausら、1998)、マウス精巣上体レチン酸結合遺伝子(Lareyreら、1999)、ヒトCD4(Zhao−Emonetら、1998)、マウスアルファ2(XI)コラーゲン(Tsumakiら、1998)、D1Aドパミン受容体遺伝子(Leeら、1997)、インスリン様成長因子II(Wuら、1997)、およびヒト血小板内皮細胞接着分子−1(Almendroら、1996)を含む。
【0092】
典型的には、真核生物細胞においてタンパク質コード遺伝子の転写を制御するプロモーターおよびエンハンサーは、複数の遺伝エレメントから構成される。細胞の機構は、各エレメントによって伝達される調節情報を集めそして統合することができ、異なる遺伝子が、独特な、多くの場合複雑な転写調節パターンを発展させることを可能にする。
【0093】
エンハンサーはもともと、DNAの同じ分子における離れた場所に位置する、プロモーターからの転写を増加させる遺伝エレメントとして検出された。遠い距離を越えて作用するこの能力は、原核生物細胞の転写調節の古典的研究においてほとんど先例がなかった。続く研究により、エンハンサー活性を有するDNAの領域が、プロモーターのように組織されることが示された。すなわち、それらは多くの個々のエレメントから構成され、それらはそれぞれ1以上の転写タンパク質に結合する。
【0094】
エンハンサーとプロモーターとの間の基本的な違いは、操作上のものである。エンハンサー領域は全体として、ある距離をおいて転写を刺激できなければならない;これはプロモーター領域またはその成分エレメントには当てはまる必要がない。他方、プロモーターは特定の部位において、そして特定の方向でRNA合成の開始を指示する1以上のエレメントを有していなければならないが、エンハンサーはこれらの特殊性を有さない。この操作上の違いの他は、エンハンサーおよびプロモーターは非常に類似した存在である。
【0095】
プロモーターおよびエンハンサーは、細胞において転写を活性化する、同じ一般的な機能を有する。それらは多くの場合部分的に重なり、そして連続しており、多くの場合非常に類似したモジュラー構成を有するようである。あわせると、これらの事項は、エンハンサーおよびプロモーターが相同的な存在であること、およびこれらの配列に結合する転写活性化タンパク質は、基本的に同じ方法で細胞転写機構と相互作用し得ることを示唆する。
【0096】
有用であることが判明し得るシグナルは、ポリアデニル化シグナルである(hGH、BGH、SV40)。内部リボソーム結合部位(IRES)エレメントを使用して、多重遺伝子、またはポリシストロン性メッセージを作製する。IRESエレメントは、5’−メチル化キャップ依存性翻訳のリボソーム走査モデルを回避し、そして内部部位で翻訳を開始し得る(PelletierおよびSonenberg、1988)。ピコルナウイルス科の2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎)由来のIRESエレメント(PelletierおよびSonenberg、1988)、および哺乳類メッセージ由来のIRES(MacejakおよびSarnow、1991)が記載された。IRESエレメントを、異種オープンリーディングフレームに連結し得る。それぞれIRESによって分けられた、複数のオープンリーディングフレームを一緒に転写して、ポリシストロン性メッセージを作製し得る。IRESエレメントによって、各オープンリーディングフレームは効率的な転写のためにリボソームが接近可能である。単一のメッセージを転写する単一のプロモーター/エンハンサーを用いて、複数の遺伝子を効率的に発現し得る。
【0097】
コード配列の効率的な翻訳のためには、特異的開始シグナルも必要であり得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンまたは隣接する配列を含む。ATG開始コドンを含む、外来性翻訳制御シグナルを提供する必要があり得る。当業者は、これを容易に決定し、必要なシグナルを提供する。挿入物全体の翻訳を保証するために、開始コドンは望ましいコード配列のリーディングフレームと「インフレーム」でなければならないことが周知である。外来性翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、天然または合成のいずれかであり得る。発現の効率を、適切な転写エンハンサーエレメントを含むことによって増強し得る。
【0098】
(c)マルチクローニング部位
本発明において酵母細胞を形質転換するのに使用するベクターは、マルチクローニング部位(MCS)を含み得、それは複数の制限酵素部位を含む核酸領域であり、それらのいずれもベクターを消化する標準的組換え技術と組み合せて使用し得る(例えば、本明細書中で参考として援用される、Carbonelliら、1999、Levensonら、1998、およびCocea、1997を参照のこと)。「制限酵素消化」は、核酸分子の特定の部位でのみ機能する酵素による、核酸分子の触媒的切断を指す。これら制限酵素の多くは市販されている。そのような酵素の使用は、当業者によって広く理解されている。多くの場合、外来性配列のベクターへのライゲーションを可能にするために、MCS内で切断する制限酵素を用いてベクターを直線化またはフラグメント化する。「ライゲーション」は、お互いに連続的であってもよいし、そうでなくてもよい2つの核酸フラグメントの間にホスホジエステル結合を形成する過程を差す。制限酵素およびライゲーション反応を含む技術は、組換え技術の当業者に周知である。
【0099】
(d)スプライシング部位
ほとんどの転写された真核生物細胞RNA分子は、一次転写物からイントロンを除去するRNAスプライシングを受ける。ゲノム真核生物細胞配列を含むベクターは、タンパク質発現のための転写物の適切なプロセシングを保証するために、ドナースプライシング部位および/またはアクセプタースプライシング部位を必要とし得る(例えば、本明細書中で参考として援用される、Chandlerら、1997を参照のこと)。
【0100】
(e)終止シグナル
本発明のベクターまたは構築物は一般的に、少なくとも1つの終止シグナルを含む。「終止シグナル」または「ターミネーター」は、RNAポリメラーゼによるRNA転写の特異的終止に関与するDNAから構成される。従って、特定の実施形態において、RNA転写物の産生を終了する終止シグナルが企図される。インビボにおいて望ましいメッセージレベルを達成するために、ターミネーターが必要であり得る。
【0101】
真核生物細胞システムにおいて、ターミネーター領域はまた、ポリアデニル化部位を外に出すように、新規転写物の部位特異的切断を可能にする、特異的DNA配列を含み得る。これは約200個のA残基(ポリA)ストレッチを転写物の3’末端に付与する、特殊な内因性ポリメラーゼにシグナルを送る。このポリAテイルで修飾されたRNA分子は、より安定であるようであり、そしてより効率的に翻訳される。従って、真核生物細胞を含む他の実施形態において、ターミネーターがRNAの切断のためのシグナルを含むことが好ましく、そしてターミネーターシグナルがメッセージのポリアデニル化を促進することがより好ましい。ターミネーターおよび/またはポリアデニル化部位エレメントは、メッセージレベルを増強し、そしてそのカセットから他の配列への読みとりを最小限にするために役立ち得る。
【0102】
本発明における使用が企図されるターミネーターは、本明細書中で記載された、または当業者に公知の、あらゆる公知の転写ターミネーターを含み、例えば、例えばウシ成長ホルモンターミネーターのような遺伝子の終止配列、または例えばSV40ターミネーターのようなウイルス終止配列を含むがこれに限らない。特定の実施形態において、終止シグナルは、配列短縮によるような、転写可能なまたは翻訳可能な配列の欠如であり得る。
【0103】
(f)ポリアデニル化シグナル
真核生物細胞遺伝子発現において、典型的には、転写物の適切なポリアデニル化を実行するために、ポリアデニル化シグナルを含む。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施の成功に決定的ではないと考えられ、そしてあらゆるそのような配列を採用し得る。いくつかの例は、簡便であり、そして様々な標的細胞においてよく機能することが知られている、SV40ポリアデニル化シグナル、またはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。ポリアデニル化は、転写物の安定性を増加させ得る、または細胞質輸送を促進し得る。
【0104】
(g)複製起点
宿主細胞において本発明のベクターを増殖させるために、複製が開始される特異的核酸配列である、1以上の複製起点(多くの場合「ori」と呼ばれる)を含み得る。あるいは、宿主細胞が酵母であるなら、自律複製配列(ARS)を採用し得る。
【0105】
(h)選択マーカーおよびスクリーニングマーカー
本発明の特定の実施形態において、本発明の構築物で形質導入した酵母細胞を、発現ベクター中にマーカーを含めることによって、インビトロまたはインビボで同定し得る。そのようなマーカーは、形質導入細胞に同定可能な変化を与え、発現ベクターを含む細胞の容易な同定を可能にする。一般的に、選択マーカーは、選択を可能にする特性を与えるマーカーである。ポジティブ選択マーカーは、マーカーの存在がその選択を可能にするものであるが、ネガティブ選択マーカーは、その存在が選択を防止するものである。ポジティブ選択マーカーの例は、薬物耐性マーカーである。
【0106】
通常、薬剤選択マーカーを含むことは、形質転換体のクローニングおよび同定を助ける、例えばカナマイシン、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、zeocin、およびヒスチジノールに対する抵抗性を与える遺伝的構築物は、有用な選択マーカーである。条件の実行に基づいて形質転換体の識別を可能にする表現型を与えるマーカーに加えて、蛍光分析に基づくGFPのようなスクリーニングマーカーを含む他の型のマーカーも企図される。本発明で使用される他のリポーターポリペプチドは、Sup35pまたは他の酵母プリオンを含む。さらに、異なる培地における選択のために、leu、ura、trp、his、等のような栄養要求マーカー。あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)のようなスクリーニング可能な酵素を利用し得る。当業者はまた、おそらくFACS分析と組み合せて、免疫学的マーカーをどのように使用するか知っている。遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現され得る限り、使用されるマーカーは重要であるとは考えられない。選択マーカーおよびスクリーニングマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
【0107】
(i)オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー
当然、本発明はまた、タンパク質凝集および/もしくは原線維形成に関与するタンパク質もしくはポリペプチドをコードする配列、または熱ショックタンパク質をコードする配列、例えば配列番号1、配列番号3、配列番号5、および配列番号7で記載されたものに相補的な、または実質的に相補的なDNAセグメントを含む。「相補的な」核酸配列は、標準的なワトソン−クリック相補性ルールによって、塩基対を形成し得るものである。本明細書中で使用される「相補配列」という用語は、上記で述べた同じヌクレオチド比較によって評価し得るように、または本明細書中で記載したような比較的ストリンジェントな条件下で、タンパク質凝集および/もしくは原線維形成に関与するタンパク質もしくはポリペプチドをコードする核酸セグメントまたは熱ショックタンパク質をコードする核酸セグメントにハイブリダイズし得ることで定義されるように、実質的に相補的で特定の核酸配列を意味する。そのような配列は、タンパク質凝集および/もしくは原線維形成に関与するタンパク質または熱ショックタンパク質全体をコードし得るか、またはそのフラグメントであり得る。
【0108】
本明細書中で記載された核酸検出技術および条件は、上記で構造的に概略を述べたように、本発明の機能的に等価な核酸を定義するため、ならびにタンパク質凝集および/もしくは原線維形成に関与するタンパク質もしくはポリペプチドまたは熱ショックタンパク質配列で形質転換した酵母細胞をスクリーニング、選択、および特徴づけし得る特定の方法を記載するためのいずれにも役立つ。
【0109】
ハイブリダイズするフラグメントは、RNAまたはDNA組織サンプルに対する特異的なハイブリダイゼーションを提供するために十分な長さでなければならない。長さが約10−14または15−20および100ヌクレオチドの間のハイブリダイゼーションプローブを用いることは、安定かつ選択的である二本鎖分子の形成を可能にする。ハイブリッドの安定性および選択性を増加させ、そしてそれによって得られる特定のハイブリッド分子の質および程度を改善するために、長さが20塩基を超える領域にわたって相補的配列を有する分子が一般的に好ましい。
【0110】
17塩基長の配列は、ヒトゲノム中で1回しか起こらないので、独特の標的配列を指定するのに十分である。より短いオリゴマーは作製が容易であり、そしてインビボでの接近しやすさを増加させるが、多くの他の因子がハイブリダイゼーションの特異性を決定するのに関与している。オリゴヌクレオチドのその相補的標的に対する結合親和性および配列特異性はいずれも、長さの増加と共に増加する。8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上の塩基対の典型的なオリゴヌクレオチドの使用が企図されるが、他のものも企図される。250、300、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、およびより長いものをコードするより長いポリヌクレオチドも企図される。そのようなオリゴヌクレオチドを、例えばサザンブロットおよびノーザンブロットのプローブとして、および増幅反応のプライマーとしての使用が見出される。
【0111】
よって、本発明のヌクレオチド配列を、遺伝子またはRNAの相補的ストレッチとの二本鎖分子を選択的に形成する、または組織からのDNAまたはRNAの増幅のプライマーを提供するそれらの能力のために使用し得る。想定される適用に依存して、標的配列に対するプローブの様々な程度の選択性を達成するために、様々なハイブリダイゼーション条件を採用することが望ましい。
【0112】
高い選択性を必要とする適用のためには、典型的にはハイブリッドを形成するために比較的ストリンジェントな条件を採用することが望ましく、例えば約50℃から約70℃の温度で約0.02Mから約0.10MのNaClによって提供されるような、比較的低い塩および/または高温条件を選択する。そのような高いストリンジェンシーの条件は、プローブおよび鋳型または標的鎖の間にもしあるとしても少しのミスマッチしか許容せず、そして特定な遺伝子の単離または特定のmRNA転写物の検出に特に適切である。一般的に、条件は増加する量のホルムアミドの添加によってよりストリンジェントにされ得ることが認識される。
【0113】
特定の適用、例えば部位特異的変異誘発によるアミノ酸の置換のために、より低いストリンジェンシーの条件が必要であることが認識される。これらの条件下で、プローブおよび標的鎖の配列が完全に相補的でなく、1以上の位置でミスマッチがあったとしてもハイブリダイゼーションが起こり得る。条件を、塩濃度を増加させること、および温度を低下させることによってより低いストリンジェンシーにされ得る。例えば、中程度のストリンジェンシーの条件を、約37℃から約55℃の温度で約0.1から0.25MのNaClによって提供し得、一方低いストリンジェンシーの条件を、約20℃から約55℃の温度で約0.15Mから約0.9Mの塩によって提供し得る。従って、ハイブリダイゼーション条件は容易に操作され得、従って一般的に望ましい結果に依存して選択される方法である。
【0114】
他の実施形態において、例えば約20℃から約37℃の温度で、50mMのTris−HCl(pH8.3)、75mMのKCl、3mMのMgCl、10mMのジチオスレイトールの条件下でハイブリダイゼーションを達成し得る。利用される他のハイブリダイゼーション条件は、約40℃から約72℃の温度で、約10mMのTris−HCl(pH8.3)、50mMのKCl、1.5μMのMgClを含み得る。
【0115】
本発明のプローブおよびプライマーを使用する1つの方法は、誤って折り畳まれた疾患タンパク質に関連する遺伝子、より具体的には他の種由来の誤って折り畳まれた疾患タンパク質のホモログの探索である。通常、標的DNAはゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーであるが、スクリーニングはRNA分子の分析を含み得る。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーおよびプローブの領域を変動させることによって、異なる程度の相同性を発見し得る。
【0116】
本発明のプローブおよびプライマーを活用する別の方法は、部位特異的(site−directed)または部位特異的(site−specific)変異誘発である。部位特異的変異誘発は、基礎となるDNAの特異的変異誘発を介する、個々のペプチド、または生物学的に機能が等価なタンパク質もしくはペプチドの調製に有用な技術である。その技術はさらに、1つ以上の前述の考察を組み込んで、1つ以上のヌクレオチド配列変化をDNAに導入することによって、配列改変体を容易に調製および試験する能力を提供する。部位特異的変異誘発は、望ましい変異および十分な数の隣接するヌクレオチドのDNA配列をコードする特異的オリゴヌクレオチド配列の使用によって、改変体の産生を可能にし、横断される欠失連結部の両側で安定な二本鎖を形成するのに十分な大きさおよび配列複雑性のプライマー配列を提供する。典型的には、変化した配列の連結部の両側に約5から10残基を有する、長さが約17から25ヌクレオチドのプライマーが好ましい。
【0117】
典型的にはその技術は、一本鎖形態および二本鎖形態の両方で存在するバクテリオファージベクターを使用する。部位特異的変異誘発に有用な典型的なベクターとしては、M13ファージのようなベクターが挙げられる。これらのファージベクターは市販されており、そしてその使用は一般的に当業者に周知である。二本鎖プラスミドも部位特異的変異誘発で日常的に使用され、それは目的の遺伝子をファージからプラスミドへ移動させる工程を排除する。
【0118】
一般的に、部位特異的変異誘発を、まず一本鎖ベクターを得ること、またはその配列内に望ましいタンパク質をコードするDNA配列を含む二本鎖ベクターの2つの鎖を融解することによって行なう。望ましい変異配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを合成的に調製する。次いでこのプライマーを、ハイブリダイゼーション条件を選択するときにミスマッチの程度を考慮して、一本鎖DNA調製物とアニーリングし、そして変異を有する鎖の合成を完了するために、E.coliポリメラーゼIクレノーフラグメントのようなDNAポリメラーゼ酵素に供する。従って、ヘテロ二重鎖が形成され、ここで1本の鎖はもとの変異していない配列をコードし、そして2本目の鎖は望ましい変異を有する。このヘテロ二重鎖ベクターを次いで、E.coli細胞のような適切な細胞を形質転換するために使用し、そして変異配列配置を有する組換えベクターを含むクローンを選択する。
【0119】
部位特異的変異誘発を用いた選択された遺伝子の配列改変体の調製が、潜在的に有用な種を産生する手段として提供される。そしてこの調製は、遺伝子の配列改変体を得ることができる他の方法が存在するので、制限することを意味しない。例えば、望ましい遺伝子をコードする組換えベクターを、ヒドロキシルアミンのような変異誘発性薬剤で処理して、配列改変体を入手し得る。
【0120】
ある実施形態において、ハイブリダイゼーションを決定するために、標識のような適切な手段と組み合せて、本発明の核酸配列を使用することが有利である。広く多様な適切なインジケーター手段が当該分野で公知であり、検出することができる蛍光リガンド、放射性リガンド、酵素リガンドまたはアビジン/ビオチンのような他のリガンドが挙げられる。
【0121】
ある実施形態において、放射性試薬または他の環境的に望ましくない試薬の代わりに、蛍光標識、エレクトロルミネセンス、またはウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、もしくはペルオキシダーゼのような酵素タグを使用することが望ましくあり得る。酵素タグの場合、相補的な核酸を含むサンプルとの特異的なハイブリダイゼーションを同定するために、ヒトの目に見えるかまたは分光測光的に見える検出手段を提供するために使用し得る、比色定量インジケーター基質が公知である。
【0122】
一般的に、本明細書中で記載されたハイブリダイゼーションプローブは、対応する遺伝子発現の検出のために、PCRTMにおけるような溶液ハイブリダイゼーションにおける試薬としておよび固相を使用する実施形態においての両方で有用である。固相を含む実施形態において、試験DNA(またはRNA)を、選択されたマトリックスまたは表面に吸着するかまたは他の方法で固定する。次いで、この固定された一本鎖核酸を、望ましい条件下で、選択されたプローブとハイブリダイゼーションさせる。
【0123】
選択される条件は、必要な特定の基準に基づいて、特定の状況に依存する(例えばG+C含量、標的核酸の型、核酸の供給源、ハイブリダイゼーションプローブの大きさ等に依存する)。ハイブリダイズした表面を洗浄して非特異的に結合したプローブ分子を除去した後、標識によってハイブリダイゼーションを検出、または定量さえもする。
【0124】
(E.タンパク質、ポリペプチド、およびペプチド)
本発明は、誤って折り畳まれた疾患タンパク質または熱ショックタンパク質をコードする、ポリペプチドまたはタンパク質の使用を企図する。いくつかの実施形態において、全長または実質的に全長の誤って折り畳まれた疾患タンパク質/ポリペプチドまたは熱ショックタンパク質を使用し得る。「全長」という用語は、誤って折り畳まれた疾患タンパク質cDNAまたは熱ショックタンパク質cDNAによってコードされる少なくとも全てのアミノ酸を含む、誤って折り畳まれた疾患ポリペプチドまたは熱ショックタンパク質を指す。誤って折り畳まれた疾患タンパク質の文脈で「実質的に全長」という用語は、全長誤って折り畳まれた疾患タンパク質/ポリペプチドの連続的なアミノ酸のうちの少なくとも80%を含む誤って折り畳まれた疾患タンパク質/ポリペプチドを指す。しかし、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号9の少なくとも約85%、90%、および95%を含む、誤って折り畳まれた疾患タンパク質/ポリペプチドまたは熱ショックタンパク質が、「実質的に全長の」誤って折り畳まれた疾患タンパク質/ポリペプチドとして本発明の範囲内であることもまた企図される。
【0125】
様々な実施形態において、異なる長さの本発明のタンパク質/ポリペプチドを使用し得る。例えば、本発明のタンパク質の機能的に活性なドメインのみを使用し得る。従って、ほとんどあらゆる長さのタンパク質/ポリペプチドフラグメントを使用し得る。
【0126】
制限しない例において、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号9と同一または相補的な、連続的なアミノ酸ストレッチを含む、1つ以上のタンパク質またはポリペプチドを調製し得る。そのようなアミノ酸ストレッチ囲は、約3アミノ酸長、約4アミノ酸長、約5アミノ酸長、約6アミノ酸長、約7アミノ酸長、約8アミノ酸長、約9アミノ酸長、約10アミノ酸長、約15アミノ酸長、約20アミノ酸長、約25アミノ酸長、約30アミノ酸長、約35アミノ酸長、約40アミノ酸長、約45アミノ酸長、約50アミノ酸長、約55アミノ酸長、約60アミノ酸長、約65アミノ酸長、約70アミノ酸長、約75アミノ酸長、約80アミノ酸長、約85アミノ酸長、約90アミノ酸長、約95アミノ酸長、約100アミノ酸長、約105アミノ酸長、約110アミノ酸長、約115アミノ酸長、約120アミノ酸長、約125アミノ酸長、約130アミノ酸長、約135アミノ酸長、約140アミノ酸長、約145アミノ酸長、約150アミノ酸長、約155アミノ酸長、約160アミノ酸長、約165アミノ酸長、約170アミノ酸長、約175アミノ酸長、約180アミノ酸長、約185アミノ酸長、約190アミノ酸長、約195アミノ酸長、約200アミノ酸長、約210アミノ酸長、約220アミノ酸長、約230アミノ酸長、約240アミノ酸長、約250アミノ酸長、約260アミノ酸長、約270アミノ酸長、約280アミノ酸長、約290アミノ酸長、約300アミノ酸長、約310アミノ酸長、約320アミノ酸長、約330アミノ酸長、約340アミノ酸長、約350アミノ酸長、約360アミノ酸長、約370アミノ酸長、約380アミノ酸長、約390アミノ酸長、約400アミノ酸長、約410アミノ酸長、約420アミノ酸長、約430アミノ酸長、約440アミノ酸長、約450アミノ酸長、約460アミノ酸長、約470アミノ酸長、約480アミノ酸長、約490アミノ酸長、約500アミノ酸長、約510アミノ酸長、約520アミノ酸長、約530アミノ酸長、約540アミノ酸長、約550アミノ酸長、約560アミノ酸長、約570アミノ酸長、約580アミノ酸長、約590アミノ酸長、約600アミノ酸長、約610アミノ酸長、約620アミノ酸長、約630アミノ酸長、約640アミノ酸長、約650アミノ酸長、約660アミノ酸長、約670アミノ酸長、約680アミノ酸長、約690アミノ酸長〜約700アミノ酸長またはそれ以上であり得、全ての中間の長さおよび中間の範囲を含む。本明細書中で使用される「中間の長さ」および「中間の範囲」は、与えられた値を含むあらゆる長さもしくは範囲、またはその間のあらゆる長さもしくは範囲を意味する(すなわち、そのような値を含む全ての整数およびその間の全ての整数)ことが容易に理解される。
【0127】
ポリグルタミン(pQ)を含むポリペプチド配列の場合、アミノ酸の数の順序はpQ反復の数によって変化しないことも企図される。エキソン1によってコードされるハンティングトンポリペプチドの場合において、pQ反復を除いて、そのポリペプチドは68アミノ酸から構成される。pQ反復は、典型的には18位から始まる。配列番号9は、pQ反復が存在しない例である。しかし、他の例において様々な数のpQ反復が存在し、例えば配列番号4は103個のpQ反復を有し、そして配列番号6は25個のpQ反復を有する。しかし、エキソン1のアミノ酸1〜68の数の順序は、pQ反復の数によって変化しない。さらに、本発明のこれらのpQおよび他のpQを含むポリペプチドは、10個から150個のpQ反復を有することが企図される。これは、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、100個、101個、102個、103個、104個、105個、106個、107個、108個、109個、110個、111個、112個、113個、114個、115個、116個、117個、118個、119個、120個、121個、122個、123個、124個、125個、126個、127個、128個、129個、130個、131個、132個、133個、134個、135個、136個、137個、138個、139個、140個、141個、142個、143個、144個、145個、146個、147個、148個、149個、150個のpQ反復を含む。
【0128】
(F.生物学的に機能が等価なもの)
原線維形成および/またはタンパク質凝集に関与するあらゆるタンパク質;または熱ショックタンパク質;または分子シャペロンタンパク質の配列を、アミノ酸の置換(substitution)、置換(replacement)、挿入、欠失、短縮および他の変異によって改変して、原線維阻害特性および/または分解特性を得ることもできる。これらの改変は、機能的に等価なポリペプチドを産生し得る。以下は、タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸を変化させて、等価または改善さえした、第2世代分子を作製することに基づく議論である。例えば、例えば抗体の抗原結合領域または基質分子の結合部位のような、構造との相互作用結合能力の測定できる損失なしに、タンパク質構造においてあるアミノ酸を他のアミノ酸と置換し得る。タンパク質の生物学的機能的活性を定義するのは、タンパク質の相互作用能力および性質であるので、タンパク質配列において、およびその基礎となるDNAコード配列において、あるアミノ酸置換を行ない、そしてそれにも関わらず同様の性質を有するタンパク質を産生し得る(表4を参照のこと)。従って、ポリペプチドの通常の活性に変化なく、原線維形成および/またはタンパク質凝集に関与するタンパク質;または熱ショックタンパク質;または分子シャペロンタンパク質のポリペプチド配列において、様々な変化を起こし得ることが、本発明者らによって企図される。
【0129】
そのような変化を起こすことにおいて、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮し得る。タンパク質に相互作用生物学的機能を与えることにおける疎水性親水性アミノ酸指標の重要性は、一般的に当該分野で理解される(KyteおよびDoolittle、1982)。アミノ酸の相対的疎水性親水性特徴は、できたタンパク質の2次構造に寄与し、それが今度はタンパク質と、他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定することが受け入れられる。
【0130】
同様のアミノ酸の置換を、親水性に基づいて有効に行ない得ることもまた、当該分野で理解される。本明細書中で参考として援用される、米国特許第4,554,101号は、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配される、タンパク質の最も高い局所平均親水性が、タンパク質の生物学的性質と相関することを述べている。米国特許第4,554,101号において詳述されるように、以下の親水性の値がアミノ酸残基に割り当てられた:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。
【0131】
アミノ酸を、同様の親水性の値を有する別のアミノ酸と置換し、そして依然として生物学的に等価でかつ免疫学的に等価なタンパク質を産生し得ることが理解される。そのような変化において、親水性の値が±2以内であるアミノ酸置換が好ましく、±1以内のアミノ酸置換が特に好ましく、そして±0.5以内のアミノ酸置換がさらにより特に好ましい。
【0132】
上記で概略を述べたように、アミノ酸置換は一般的に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば疎水性、親水性、電荷、大きさ等に基づく。様々な前述の特徴を考慮した例示的な置換は、当業者に周知であり、そして以下のものが挙げられる:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシン。
【0133】
【表4】

【0134】
原線維形成および/またはタンパク質凝集に関与するポリペプチドまたはタンパク質;または熱ショックタンパク質;または分子シャペロンタンパク質を調製する別の実施形態は、ペプチド模倣物の使用である。模倣物は、タンパク質2次構造のエレメントを模倣する、ペプチドを含む分子である。ペプチド模倣物使用の基礎にある原理は、タンパク質のペプチド骨格は、主に、アミノ酸側鎖を、分子相互作用(例えば、抗体および抗原の分子相互作用)を促進するような方法で方向付けるために存在するということである。ペプチド模倣物は、天然分子のものと同様の分子相互作用を可能にすることが期待される。
【0135】
(G.融合タンパク質)
融合タンパク質またはキメラタンパク質は、挿入改変体である、特殊化した種類のタンパク質改変体である。この分子は一般的に、2番目のポリペプチドの全てまたは一部分に、タンパク質のN末端もしくはC末端または他の部分でも連結した、天然分子の全てまたはかなりの部分を有する。本発明において、原線維形成および/またはタンパク質凝集に関与するタンパク質;または熱ショックタンパク質;または分子シャペロンタンパク質の領域/部分を含み、蛍光測定法、スクリーニングアッセイ、または機能的アッセイのいずれかを用いて同定し得る、融合タンパク質を産生した。例えば、グリーン蛍光タンパク質(GFP)に連結した、アルファシヌクレインタンパク質、ハンティングトンタンパク質などの領域を含む、融合物を記載する。いくつかのGFPキメラはN末端キメラである。GFP領域を目的のタンパク質の他の部分に連結し得る、ほとんどあらゆる型の融合タンパク質を調製し得る。他の有用なキメラは、酵素の活性部位、または抗体によって認識/キメラタンパク質を調製し得る。他の有用なキメラは、機能的ドメイン(例えば、酵素の活性部位、または抗体によって認識され得るエピトープ)の連結を含む。これらの融合タンパク質は、本明細書中で酵母細胞によって例示される、組換え宿主細胞の迅速および容易な検出および同定方法を提供する。
【0136】
(H.本発明のスクリーニング方法)
本発明は、誤って折り畳まれたタンパク質疾患および/またはタンパク質原線維発生および/または組織におけるタンパク質沈着の蓄積を防止する、候補物質のスクリーニング方法を提供する。いくつかの実施形態において、これらの薬剤はタンパク質の誤った折り畳みを防止する。正確な作用メカニズムに関係なく、本発明のスクリーニング方法によって同定された薬剤は、タンパク質の誤った折り畳みまたは異常なタンパク質沈着が関与する疾患に対する、治療的利益を提供する。これらの疾患のいくつかが、表1に列挙され、そしてそれらとしては、制限しない例として、神経変性疾患(例えば、ハンティングトン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病など)および他の非神経疾患(例えば2型糖尿病)が挙げられる。
【0137】
本発明のスクリーニング方法は、原線維形成および/またはタンパク質凝集に関与するタンパク質を発現するように操作した酵母細胞を使用する。その酵母細胞はまた、スクリーニング方法に関して下記で記載する2つの条件のうち1つを必要とする。1つのモジュールにおいて、酵母細胞は、変異遺伝バックグラウンド(例えば、HSP遺伝子または他の分子シャペロンをコードする遺伝子における変異(例えば、HSP40遺伝子における変異))を有する。あるいは、原線維形成および/またはタンパク質凝集に関与するタンパク質を発現する酵母細胞を、例えば細胞をフリーラジカル産生体または鉄などにさらすことによって、ストレス(例えば、酸化ストレス)を引き起こす増殖条件の変化に供し得る。これらの条件のいずれかが、原線維形成および/またはタンパク質凝集に関与するタンパク質を発現する酵母細胞に毒性表現型を与える。そのような酵母細胞を候補物質に接触させることは、酵母細胞の毒性表現型を救済し得る薬剤の同定を可能にする。毒性表現型は、細胞傷害性または増殖阻害として現れる。酵母における毒性は、タンパク質の蓄積によって引き起こされる疾患と関連する病理を引き起こす、ヒト細胞におけるタンパク質の細胞傷害性効果と関連する。例えば、さらに変異HSP40バックグラウンドを有する酵母細胞におけるハンティングトンタンパク質の発現は、酵母細胞の増殖を非常に遅らせる。そのような酵母細胞を候補物質と接触させることは、酵母細胞の増殖遅延を逆転させ得る薬剤の同定を可能にし、そして従ってその薬剤はまたヒト細胞におけるハンティングトンの蓄積を予防する。ハンティングトンの凝集がハンティングトン病に関与しているので、このスクリーニング方法は、ハンティングトン病を予防する治療薬を提供する。
【0138】
((a)候補物質)
本明細書中で使用される「候補物質」は、組織におけるタンパク質様沈着物の蓄積/凝集を低減、改善、予防、または逆転する可能性のある、あらゆる物質である。様々な型の候補物質を、本発明の方法によってスクリーニングし得る。酵母細胞を、遺伝子をコードする核酸構築物と接触させることによって、遺伝的薬剤をスクリーニングし得る。例えば、様々な遺伝子を発現するcDNAライブラリーをスクリーニングして、本明細書中で記載された疾患の治療的遺伝子を同定し得る。他の例において、酵母細胞を、治療的効果を与え得る他のタンパク質またはポリペプチドと接触させ得る。
【0139】
従って、本発明の方法によってスクリーニングし得る候補物質としては、シャペロン分子をコードするもの、熱ショックタンパク質をコードするもの、受容体をコードするもの、酵素をコードするもの、リガンドをコードするもの、調節因子をコードするもの、および構造タンパク質をコードするものが挙げられる。候補物質としてはまた、核タンパク質、細胞質タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、分泌タンパク質、細胞膜結合タンパク質、血清タンパク質、ウイルス抗原、細菌抗原、原生動物抗原、および寄生体抗原が挙げられる。候補物質はさらに、タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質、リンタンパク質、および核酸(例えばリボザイムのようなRNA、またはアンチセンス核酸)を包含する。本発明の方法を用いてスクリーニングし得るタンパク質またはポリペプチドとしては、シャペロンタンパク質、ホルモン、増殖因子、神経伝達物質、酵素、凝固因子、アポリポタンパク質、受容体、薬剤、癌遺伝子、腫瘍抗原、腫瘍サプレッサー、構造タンパク質、ウイルス抗原、寄生体抗原、および細菌抗原が挙げられる。それに加えて、ペプチドに基づく化合物および核酸に基づく化合物の無作為合成および/または特異的合成のために、多くの方法が現在使用されている。核酸配列およびタンパク質配列は、それらをコードするDNA発現構築物の送達を含む。
【0140】
それに加えて、候補物質を、合成化合物または天然化合物の大きなライブラリーからスクリーニングし得る。1つの例は、FDAに認可された、ヒトによって使用し得る化合物のライブラリーである。それに加えて、合成化合物のライブラリーが、Maybridge Chemical Co.(Trevillet、Cornwall、UK)、Comgenex(Princeton、N.J.)、Brandon Associates(Merrimack、N.H.)、およびMicrosource(New Milford、Conn.)を含む多くの会社から市販されており、そして稀な化学ライブラリーはAldrich(Milwaukee、Wis)から入手可能である。コンビナトリアルライブラリーが入手可能であり、そして調製し得る。あるいは、細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物、動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーもまた、例えばPan Laboratories(Bothell、Wash.)またはMycoSearch(N.C.)から入手可能であり、または当該分野で周知の方法によって容易に調製し得る。天然の供給源(例えば、動物、細菌、真菌、植物供給源(葉および樹皮を含む)、ならびに海洋サンプル)から単離された化合物を、潜在的に有用な薬剤の存在に関して候補としてアッセイし得ることが提案される。スクリーニングされる薬剤もまた、化学的組成物または人工化合物から誘導または合成し得ることが理解される。
【0141】
他の適切な調節剤としては、アンチセンス分子、リボザイム、および抗体(一本鎖抗体を含む)が挙げられ、それらはそれぞれ標的分子に特異的である。そのような化合物を、この文書の他の場所でより詳しく記載する。例えば、翻訳開始部位もしくは転写開始部位、またはスプライシング連結部に結合したアンチセンス分子は、理想的な候補阻害剤である。さらに、天然および合成的に産生された、ライブラリーおよび化合物を、伝統的な化学的手段、物理的手段、および生化学的手段によって容易に改変する。
【0142】
コンビナトリアル生成ライブラリー(例えばペプチドライブラリー)を含むそのようなライブラリーのスクリーニングは、数多くの関連する(および関連しない)化合物を活性に関してスクリーニングする迅速および効率的な方法である。コンビナトリアルアプローチはまた、活性であるが他の点で望ましくない化合物をモデルとした第2、第3、および第4世代の化合物を生成することによって、潜在的な薬剤の迅速な発展に役立つ。
【0143】
有用な化合物を多くの化学的クラスで見出し得るが、典型的には、それらは小さい有機化合物を含む有機化合物である。小さい有機化合物は、50ダルトンより大きいが約2,500ダルトンより小さい、好ましくは約750ダルトンより小さい、より好ましくは約350ダルトンより小さい分子量を有する。典型的な種類は、ヘテロ環、ペプチド、サッカライド、ステロイド、トリテルペノイド化合物等を含む。薬剤の構造的同定を、さらなる薬剤を同定、産生、またはスクリーニングするために使用し得る。例えば、ペプチド薬剤が同定された場合、例えばD−アミノ酸、特にD−アラニンのような非天然アミノ酸を使用して、アミノ末端またはカルボキシル末端に官能性を持たせる、例えばアミノ基に関してはアシル化またはアルキル化、そしてカルボキシル基に関してはエステル化またはアミド化等することによって、それらを様々な方法で修飾して、その安定性を増強し得る。
【0144】
((b)FRETおよびFACSを用いたスクリーニング)
1つの実施形態において、本発明は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を用いたスクリーニングアッセイを企図する。1つの例において、アルファシヌクレインをシアン蛍光タンパク質(CFP)および黄色蛍光タンパク質(YFP)に融合し、そしてGal1−10プロモーターの調節下で酵母ゲノムに組み込む。細胞をガラクトース中で増殖させて発現を誘導する。誘導時に、細胞は融合タンパク質を産生し、それは凝集してCFPおよびYFPを互いに近づける。凝集物中のタンパク質はきつく固まっているので、CFPおよびYFP間の距離は、エネルギー転移(FRET)が起こるのに必要な100Aの臨界値より低い。この場合、CFPの発光によって放出されたエネルギーがYFPを励起し、それが今度はその特徴的な波長で発光する。本発明者は、タンパク質を、凝集を起こさない状態に維持することによって、CFPおよびYFPの相互作用を妨害し得る薬物、遺伝子、または他の因子を含む候補化合物を同定するために、FRETに基づくスクリーニングを利用することを企図する。
【0145】
細胞を、当業者に周知の技術である、蛍光細胞分析分離(FACS)分析によって分類する。本発明者は、このスクリーニング方法はまた、凝集経路で形成される毒性中間体の調査を可能にし、そして最終的には、どのように中間体が、しばしば、斑およびもつれによって特徴付けられる不溶性のタンパク質に凝集するかをよりよく理解することを可能にすることを想定する。
【0146】
FACS、フローサイトメトリーまたは流動微小蛍光測定は、蛍光標識/タグ部分の存在に関して個々の細胞を走査する手段を提供する。その方法は、液体媒体中で標識細胞を活性化、および励起発光を検出することができる機器を用いる。FACSは、生きたまたは固定細胞のいずれかにおいて、迅速で、信頼でき、定量的で、かつ多パラメーターの分析を提供する能力において独特である。適切に標識された、本発明の誤って折り畳まれた疾患タンパク質は、上記で記載したような個々の酵母細胞の、他の遺伝的または増殖条件の結果としての、タンパク質凝集および原線維および/または凝集形成の分析および定量の有用なツールを提供する。
【0147】
((c)RNAアプタマースクリーニング)
別の実施形態において、本発明はRNAアプタマーを使用するスクリーニングアッセイを企図する。RNAは、その1次配列に依存して非常に多くの2次構造をとり得る核酸である。従って、特定の長さのRNA分子を、他の分子に非常に特異的な様式で、かつ非常に高い親和性で結合する性質を持つように、操作することが可能である。これは、抗原−抗体結合の現象に類似する。
【0148】
本発明者は、RNA分子のこれらの性質を、神経変性疾患のようなタンパク質の誤った折り畳みの疾患の候補治療薬であるRNA分子を同定するために利用することを企図する。これは、RNA分子の、誤って折り畳まれた疾患タンパク質、例えばアミロイド線維または凝集/原線維形成の経路における他の中間体種を認識および結合する能力に基づく。
【0149】
本明細書中で開発された酵母に基づくスクリーニングシステムは、そのようなスクリーニングに敏感に反応し、そして折り畳まれた疾患タンパク質の毒性を減少させる化合物を直接同定し得る。それに加えて、そのようなタンパク質の凝集を引き起こす、形成される中間体間の相互作用を妨害する化合物を同定し得る。毒性を悪化させるか、またはタンパク質凝集を促進する化合物をスクリーニングし得ることも企図される。
【0150】
((d)処置)
本発明のスクリーニングによって同定された試験化合物を用いた、動物モデルの最初の試験および処置も企図される。タンパク質の誤った折り畳みの疾患の適切な動物モデルを選択し、そして処置は、動物への適切な薬剤学的処方における化合物の投与を含む。投与は、経口、鼻腔内、バッカル、または局所さえ含むがこれに限らない、臨床目的または非臨床目的のために利用し得る任意の経路による。あるいは、投与は気管内滴注、気管支滴注、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または静脈内注射によるものであり得る。特に企図される経路は、全身性静脈内注射、血液またはリンパ液供給を介するか、または影響される部位に対して直接的な局所投与である。インビボで化合物の有効性を決定することは、様々な異なる基準を含み得る。また、毒性および用量反応性の測定を、動物において、インビトロアッセイまたはインサイト(in cyto)アッセイよりもより意味のある様式で行ない得る。
【0151】
(I.免疫学的検出)
適切な抗誤った折り畳み疾患タンパク質抗体を用いた免疫学的方法によって、操作された酵母細胞における誤って折り畳まれた疾患タンパク質の発現を検出し得ることも企図される。酵母細胞に存在する遺伝的変異の特定の型を検出するために、抗熱ショックタンパク質抗体または他の抗シャペロン抗体も使用し得る。検出し得るタンパク質および/またはポリペプチドは変異したバージョンを含む。
【0152】
なおさらなる実施形態において、このように、本発明は、生物学的成分を結合、精製、除去、定量、または一般的に検出する免疫検出方法に関する。様々な有用な免疫検出方法の工程が、例えばNakamuraら(1987;本明細書中で参考として援用される)のような科学的文献において記載されている。イムノアッセイは、その最も単純および直接的な意味において、結合アッセイである。特定の好ましいイムノアッセイは、様々な型の酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、およびイムノビーズ捕捉アッセイである。組織切片を用いた免疫組織化学的検出もまた、特に有用である。しかし、検出はそのような技術に限らないことが容易に認識され、そしてウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS分析等もまた、本発明と関連して使用し得る。
【0153】
一般的に、免疫結合方法は、タンパク質またはペプチドを発現する発現構築物で形質転換した酵母細胞を得ること、およびサンプルを本発明によるタンパク質またはペプチドに対する抗体と、場合によっては、免疫複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で接触させることを含む。
【0154】
本発明の免疫結合方法は、サンプル中の反応成分の量を検出または定量する方法を含み、その方法は結合プロセスの間に形成された任意の免疫複合体の検出または定量を必要とする。ここで、本発明のタンパク質またはペプチドを発現する発現構築物で形質転換した酵母細胞を得て、そしてサンプルを抗体と接触させ、次いで特定の条件下で形成された免疫複合体の量を検出または定量する。
【0155】
選択した生物学的サンプルを、タンパク質、ペプチド、または抗体と、免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするのに有効な条件下で、かつ十分な時間で接触させることは、一般的に、単純に組成物をサンプルに加えて、そして抗体が誤って折り畳まれた疾患タンパク質に対応する抗原のような、存在する任意の抗原と免疫複合体を形成する、すなわち結合するのに十分長い時間で混合物をインキュベートすることである。この時間の後、組織切片、ELISAプレート、ドットブロットまたはウェスタンブロットのような、サンプル−抗体組成物を一般的に洗浄して任意の非特異的に結合した抗体種を除去して、一次免疫複合体中で特異的に結合した抗体のみを検出することを可能にする。
【0156】
一般的に、免疫複合体形成の検出は、当該分野で周知であり、多くのアプローチを適用することによって達成され得る。これらの方法は一般的に、当該分野で標準的に使用される、放射活性、蛍光、生物学的または酵素的なタグまたは標識のような、標識またはマーカーの検出に基づく。そのような標識の使用に関する米国特許としては、第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号および第4,366,241号が挙げられ、これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される。もちろん、当該分野で公知であるように、2次抗体のような2次結合リガンドまたはビオチン/アビジンリガンド結合アレンジメントの使用によってさらなる利点を見出し得る。
【0157】
検出において採用されるコードされたタンパク質、ペプチド、または対応する抗体は、それ自身が検出可能な標識に連結され得、ここで次いで単純にこの標識を検出し、それによって組成物中の一次免疫複合体の量を検出することを可能にする。
【0158】
あるいは、一次免疫複合体中で結合した最初に加えた成分を、コードされたタンパク質、ペプチド、または対応する抗体に対する結合親和性を有する2番目の結合リガンドによって検出され得る。これらの場合には、2番目の結合リガンドを検出可能な標識に連結し得る。2番目の結合リガンドは、しばしば、それ自身抗体であり、従ってそれは「二次」抗体と呼ばれ得る。一次免疫複合体を、標識した二次結合リガンド、または抗体と、二次免疫複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で、かつ十分な時間で接触させる。次いで二次免疫複合体を一般的に洗浄して任意の非特異的に結合した標識二次抗体またはリガンドを除去し、そして次いで二次免疫複合体中に残った標識を検出する。
【0159】
さらなる方法は、2工程アプローチによる一次免疫複合体の検出を含む。コードされたタンパク質、ペプチド、または対応する抗体に結合親和性を有する抗体のような2番目の結合リガンドを使用して、上記で記載したように二次免疫複合体を形成する。洗浄の後、二次免疫複合体を、2番目の抗体に対する結合親和性を有する3番目の結合リガンドまたは抗体と、再度、免疫複合体(3次免疫複合体)の形成を可能にするのに有効な条件下で、かつ十分な時間で接触させる。3番目のリガンドまたは抗体を、検出可能な標識と連結し、このように、形成された3次免疫複合体の検出を可能にする。この系は、もしこれが望ましいなら、シグナル増幅を提供し得る。
【実施例】
【0160】
(J.実施例)
以下の実施例を、本発明の好ましい実施形態を示すために挙げる。以下の実施例で開示される技術は、発明者によって、本発明の実施においてよく機能することが発見された技術を表し、そして従って、その実施のために好ましいモードを構成すると考えられ得ることが、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、開示された特定の実施形態において多くの変化がなされ得、そして依然として本発明の意図および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似の結果を得ることを認識する。
【0161】
(実施例1)
(酵母におけるHt発現の材料および方法)
(プラスミドの構築)
GFPとHtのN−末端領域との間の融合物をコードするプラスミドは、Hereditary Disease Foundationから寄贈された。HtQ25またはHtQ103の酵母発現プラスミドを産生するために、DNAをXhoIおよびXbaIで消化し、そして得られたXhoI/XbaIフラグメントを、ベクターpYES(Invitrogen)にライゲーションし、それぞれプラスミドpYES/PQ25またはpYES/PQ103を得た。これらのDNAをSalIで消化し、そして末端をクレノウ酵素で埋めた。その後DNAをEcoRIで消化し、そして得られたフラグメントを、構成的発現のために高コピー(2μ)発現ベクターp426に、またはガラクトース誘導のためにp426GALにそれぞれサブクローニングした(Mumbergら、1994;Mumbergら、1995)。
【0162】
構成的(GPD)誘導プロモーターまたはガラクトース(GAL)誘導プロモーターのいずれかを有する低コピー(CEN)発現プラスミドを作成するために、DNA、p426/PQ25またはp426/PQ103をXhoIで消化した。得られたXhoIフラグメントを、それぞれp416またはp416GALにサブクローニングした(Mumbergら、1994;Mumbergら、1995)。
【0163】
HtQ47またはHtQ72に関して同じセットの酵母発現プラスミドを産生するために、DNAをAcc65IおよびXbaIで二重消化し、フラグメントをクレノウ酵素で平滑末端にし、そして構成的発現のために、ClaI−平滑末端ベクターp426にサブクローニングした。構成的発現(GPD)を有する低コピー発現プラスミドを産生するために、DNA、p426/PQ47またはp426/PQ72をSpeIおよびXhoIで消化し、そして得られたフラグメントをp416にサブクローニングした。
【0164】
この研究で使用した発現プラスミドを、表5に列挙する(Kimuraら、1995;Nathanら、1995;Vogelら、1995)。
【0165】
(表5.使用したプラスミド)
【0166】
【表5】

【0167】
標準的なリチウム/PEG方法を用いて、酵母の形質転換を行なった(Itoら、1983)。
【0168】
(酵母株、形質転換、および培養)
本研究において、本発明者らは5つの同系シリーズの酵母株を使用した、バックグラウンドは以下のようであった:W303(MATa can1−100 ade2−1 his3−11、15 trp1−1 ura3−1 leu2−3、112)、YPH499(MATa ade2−101ochre his3−△200 leu2−△1 lys2−801amber trp−△63 ura3−52)、MHY810(MATa his3−△200 leu2−△1 lys1−1 met14 ura3−△1::TRP1 trp1−△1)、MHY501(MATa his3−△200 leu2−3、112 ura3−52 lys2−801 trp1−1)およびMHY803(MHY501誘導体:MATa his3−△200 leu2−3、112 ura3−52 lys2−801 trp1−1(doa3::HIS3+)(Ycplac22−Doa3−His))。MHY株は、Mark Hochstrasserから寄贈された。使用した酵母株を表6に列挙する。
【0169】
(表6.異なる酵母株における変異Huntingtinの凝集)
【0170】
【表6】

【0171】
空白 形質転換されなかった
− 蛍光の焦点がない
−/+ 少数の細胞が1つの小さな焦点を有する
+ 1つまたはそれ以上の焦点、かなりのバックグラウンド蛍光を伴う
++ 1つまたは2つの濃い蛍光焦点、低いバックグラウンド蛍光を伴う
標準的なリチウム/PEG方法を用いて、酵母の形質転換を行なった(Itoら、1983)。
【0172】
酵母細胞を、富化培地(rich media)(YPD)または、プラスミド選択のために必要とされるアミノ酸を欠く最少グルコース/ラフィノース/ガラクトース培地(Adamsら、1997)中で増殖させた。実験目的のために、細胞を対数期、対数後期、または初期定常期まで、25℃で一晩増殖させた。
【0173】
(沈降分析)
酵母細胞を、室温、1500×gで5分間遠心することによって回収し、そして10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)で1回洗浄した。細胞をスフェロプラスト緩衝液(1Mのソルビトール、0.1MのEDTA、0.5mg/mlのザイモリアーゼ100T(Seikagaku Corporation)、50mMのジチオトレイトール、pH7.5)に再懸濁し、そして30℃で2時間インキュベートした。その後、スフェロプラストを4℃、325×gで5分間のおだやかな遠心によって回収し、そしてプロテアーゼ阻害剤カクテル(完全Mini−tablets、Boehringer Mannheim)を含む1×TNE中で溶解した。1×TNE+2%のサルコシル中で、氷上で5分間インキュベートした後、サンプルを5%(w/v)のスクロースクッション(sucrose cushion)(1Mのスクロース、100mMのNaCl、0.5%のスルホベタイン(sulfobetaine))にロードし、そして4℃、315,000×gで1時間遠心を行なった。その後、上清およびペレット画分を8%のSDS−PAGE(Novex)に供し、そしてポリビニリデンジフルオリド膜(Millipore Corporation)に転写した。膜アウリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中5%の脱脂粉乳で1時間ブロックした。一次抗体とのインキュベーションを、4℃で一晩行なった。プロテインA−ペルオキシダーゼ(1:5000、Boehringer Mannheim)と共にインキュベートした後、膜をECL試薬(Amersham)で処理することによって、免疫複合体を視覚化した。抗体αGFPを1:100で使用した(Clontech)。
【0174】
(顕微鏡検査)
酵母細胞を、ポリリシン処理スライドに10分間接着させた。核染色のために、細胞を1%のホルムアルデヒドで5分間固定し、そしてPBSで3回洗浄した。4’,6−ジアミジン−2−フェニルインドール−ジヒドロクロリド(DAPI、Sigma)で5分間処理した後、細胞をPBSで3回洗浄した。Axioplan2顕微鏡(Zeiss)で顕微鏡検査を行い、そして顕微鏡写真を100×の倍率で撮った。
【0175】
(実施例2)
(酵母における変異体Htの融合)
酵母においてHtを調査するために、25残基の反復長の野生型ポリQ(ポリグルタミン)を有する、または47、72、または103残基の反復長の変異体を有するN−末端領域(野生型タンパク質のアミノ酸1−68)を、GFPに融合した。それぞれ、単一コピープラスミドにおいて強力な構成的酵母プロモーターであるGPDの調節下においた(図1)。Htにおいて天然に存在するグルタミンコドンであるCAGのホモポリマー領域は、遺伝的に不安定であり、そして酵母において特にそうである(Mooreら、1999;Schweitzerら、1997)。この問題は、グルタミンはCAGおよびCAAの両方によってコードされ、そして混合コドン反復はかなりより安定である(Kazantsevら、1999)という事実によって減少した。不安定性の問題を最小限にするために、本明細書中で報告する全ての実験は、混合コドンポリQ反復を用いて行い、そして全ての研究は、各場合に少なくとも2つの独立したコロニーを使用して、新規の形質転換体を用いて行い、そして少なくとも2回繰り返した。
【0176】
野生型ポリグルタミン領域(25残基;HtQ25)を含むGFP−融合タンパク質からの蛍光は、常に細胞全体に拡散して分布していた(図1、中央)。HtQ47の蛍光も拡散して分布していたが、融合焦点が、少ない割合の細胞(2%以下)で観察された。HtQ72を発現する細胞の半分以上が、拡散した蛍光バックグラウンドに対して単一の濃い蛍光の点を示した。HtQ103を発現する実質的に全ての細胞が、他の改変体で見られるよりかなり低いバックグラウンド蛍光で、単一の濃い蛍光の点を示した。同じ構築物を高コピープラスミド(p426シリーズ、表5)で発現した場合、蛍光強度はより強かったが、蛍光のパターンは非常に類似していた。全細胞タンパク質のイムノブロッティングは、4つの改変体は全て同様のレベルで発現していることを示した。従って、HtのN−末端フラグメントによって示される融合の程度は、発現されたタンパク質のレベルよりもポリグルタミン領域の長さにより依存する。
【0177】
(実施例3)
(全ての細胞における新規に誘導された変異体Ht凝集)
異なるQ反復改変体を発現する細胞は、HtQ103を発現する細胞においてわずかに劣るのみで、同じプラスミド損失の頻度(細胞を非選択培地および選択培地にプレートすることによって決定する)を示し、そして同様の速度で増殖した。最終的な密度は、典型的にはHtQ25、HtQ47またはHtQ72を発現する細胞で0.7−0.8、そしてHtQ103を発現する細胞で0.5−0.7であった。従って、長いポリQHtフラグメントは、酵母において過度に毒性ではなかった。しかし、タンパク質は構成的プロモーターから発現しているので、ポリQタンパク質の存在下で増殖する細胞成分のサブセットが形質転換の間に選択された可能性があった。もしそうなら、選択もまた、タンパク質の凝集状態に影響を与えたかもしれない。延長したグルタミンの融合が、タンパク質の遺伝性性質を反映したのか、または選択過程の結果であったのか決定するために、Ht−GFP構築物をガラクトース−誘導性プロモーターの調節下に移動した(表5)。形質転換体をグルコースプレートで選択し、構築物をきつく抑制したまま保った。誘導を開始するために、細胞をまずラフィノース培地で一晩増殖させ、グルコース抑制を除去し、次いで、ガラクトース培地に移してHt発現を誘導した。
【0178】
明るいGFP蛍光が4時間後に観察されたが、テストした3つの変異体、HtQ25、HtQ72、およびHtQ103の全てで、蛍光は拡散して分布していた。HtQ72およびHtQ103の持続発現で、9時間後にいくつかの細胞において融合が現れ始めた(2回分裂)。24時間後に、融合物はHt改変体を構成的に発現する培養物で見られるものと区別できず、そして全ての培養物は同様の密度に達した。従って、延長したグルタミン反復の融合は、培養中の全てではないにしてもほとんどの細胞において起こるが、それが起こるのに長時間の発現が必要である。
【0179】
(実施例4)
(変異体Htは、酵母において細胞質凝集体を形成する)
青色の蛍光を発するDNA結合色素であるDAPIによる細胞の同時染色は、Ht結合の焦点は核ではなく細胞質区画にあることを示した。これらの焦点がHt−GFP融合物の膜結合区画への隔離または高次のタンパク質複合体の形成を反映するか否かを決定するために、細胞壁を除去し、そして細胞を界面活性剤サルコシル(2%)の存在下で溶解した。沈降の後、上清およびペレット画分を、5%のSDSを含むサンプル緩衝液中で10分間沸騰させ、そしてイムノブロッティングによって分析した。
【0180】
HtQ25およびHtQ47は、上清画分でのみ検出された。HtQ72は上清およびペレット画分の間に分布し、実質的にすべてのHtQ103タンパク質はペレット画分に見出された。電気泳動の後HtQ103の主要な画分はゲルの上部に残ったことに注意されたい。あきらかに、GFP蛍光によって検出される結合は、より高次の複合体の形成によるものであった。HtQ103に関しては、これらの複合体は5%のSDS中での沸騰による可溶化に抵抗性を示し、そしてHtQ72に関してはより少ない程度でそうなった。
【0181】
(実施例5)
(凝集はプロテアソーム欠損細胞において変化しない)
Ht(Saudouら、1998)、ならびにSBMA(Stenoienら、1999)、SCA3(Chaiら、1999)、およびSCA1(Cummingsら、1998)のような疾患に関連する他のグルタミン反復タンパク質は、哺乳類細胞においてユビキチン化され、そしてプロテアソームの成分と結合するので、ユビキチン/プロテアソーム経路が凝集の形成の関与し得ることが示唆された。ユビキチン化Htタンパク質は、酵母細胞において検出されなかった。しかし、この経路によって変換されることが知られているタンパク質でさえ、ユビキチン結合体は検出が困難であり得る。この問題をより厳密に調査するために、遺伝的アプローチに着手した。それぞれユビキチン/プロテアソーム分解経路の異なる成分:1)uba1、ユビキチン活性化酵素(M.Hochstrasser)、2)doa3、20Sプロテアソームの触媒サブユニット(Chenら、1995)、および3)sen3、19Sプロテアソーム調節複合体のサブユニット(DeMariniら、1995)に損傷を含む3つの系統を採用した。これらの遺伝子はそれぞれ必須であるので、この経路をひどく損なう部分的機能損失変異体を使用した。それぞれの系統において、Ht変異体は野生型細胞と同じ様式の挙動を示した。結合焦点を含む細胞の数、またはそれら焦点の大きさもしくは細胞内分布に変化はなかった(表6)。
【0182】
(実施例6)
(分子シャペロンはHtの凝集に影響を与える)
シャペロンタンパク質は、異なる型の折り畳み中間体および経路外折り畳み産物と相互作用することによって、他のタンパク質の折り畳みを調節する、高度に保存された、しかし多様なグループのタンパク質である(Gething、1997)。それらは、異常なタンパク質の凝集に大きく影響する。シャペロンタンパク質レベルの変化がどのようにHtポリQ変異体の結合に影響を与えるか決定するために、様々なシャペロンタンパク質の欠失変異または過剰発現プラスミドを含む、同系シリーズの系統を作製し、それは野生型またはポリQ延長Htフラグメントを産生した。いくつかのシャペロン欠失は、それらが致死的であるために試験できなかったことに注意する。
【0183】
シャペロンタンパク質における試験した変化のほとんどは、GFP蛍光によって決定されるHt変異体の細胞内分布に顕著な影響はなく(表6)、そしてHtフラグメントが沈降後に上清とペレット画分との間で分割される様式に有意な影響はなかった。このカテゴリーは、主要な小さいHSP(酵母においてはHsp26)の発現を除去した変異体(Petkoら、1986)、2)Hsp90(酵母においてはHsc/p82)の発現を数倍に増加した変異体(Borkovichら、1989)またはHsp90の発現を10から15倍減少した変異体(Nathanら、1999)、3)必須の細胞質ゾルHsp70ファミリー(構成性メンバー、Ssa1およびSsa2(Parsellら、1994)、ならびにストレス誘導性メンバー、Ssa3およびSsa4)の様々なメンバーの発現を排除した変異体、および4)Ydj1(Hsp40ファミリーのメンバー)の発現を増加または除去した(Kimuraら、1995)変異体を含んた。Hsp35の欠失も調査した。この熱誘導性タンパク質は、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼファミリーのメンバーであり、そして熱誘導性であり、そして酵母において最も豊富なタンパク質の1つであるので、シャペロンであると仮定される(Boucherieら、1995)。哺乳類グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼは、Htとのグルタミン長依存性の関連を示す(Burkeら、1996)。
【0184】
3つのシャペロンの過剰発現は、有意な影響を有した。Hsp40ファミリーのメンバーであるSis1は、HtQ72およびHtQ103を有するほとんどの細胞において、実質的に全ての野生型細胞で観察される単一の結合焦点ではなく、2つの強い凝集焦点を生じた。Hsp70(Ssa1)を過剰発現する細胞において、HtQ72およびHtQ103の蛍光は、野生型細胞よりもずっと変動した。複数の蛍光焦点が多くの細胞で観察され、そして多くは拡散した蛍光のより高いバックグラウンドも含んでいた。この変動性は、プラスミドコピー数の違いを反映するようであり、それは通常Hsp70発現プラスミドで観察される(Stoneら、1990)。Hsp104の過剰発現はまた、Ht変異体HtQ72およびHtQ103で観察される蛍光焦点の数およびバックグラウンド蛍光を増加させた(表6)。それは、遠心後に上清画分に見出されるHtQ72およびHtQ103の相対的量も増加させた。奇妙なことに、HtQ72タンパク質は、これらの細胞において少なくとも部分的に凝集したようであるが、3つの実験のうち3つにおいて、タンパク質がほとんどペレット画分になかった。そのタンパク質は、よりゆるく固まっているか、またはサルコシル可溶性状態であり得る。
【0185】
試験した全てのシャペロン変化のうち、HSP104遺伝子の欠失が、最も劇的な影響を有していた。これらの系統において、Ht変異体フラグメントの全てが拡散した蛍光を示した。高および低コピーHt発現構築物の両方で同じ結果が得られた(表6)。さらに、沈降によって、全てのタンパク質は上清画分にのみ検出された。
【0186】
(実施例7)
(Hsp40は、Ht変異体の凝集を変化させる)
Sis1(クラスII酵母Hsp40タンパク質)は、ハンティングトンの凝集状態に影響を与えたこと、およびHsp40タンパク質、特にHDJ−1は、いくつかのモデル系におけるポリQ誘導毒性において重要な役割を果たしているようであることが、Sis1のより詳細な分析へ導いた。Sis1タンパク質の異なる領域を発現するように遺伝子操作した酵母系統を、上記の実施例で記載したハンティングトンGFP融合構築物で形質転換した。HtQ72およびHtQ103の凝集パターンは、変異Sis1タンパク質の産生によって著しく変化した。少数の大きな凝集の代わりに、多数のより小さい凝集が存在した。最も著しくは、1つのSis1構築物において、この凝集における変化は、生存能力の減少を伴った。このSis1−誘導毒性は、Hsp104の同時発現によって減少され得る。Hsp104はまた、ハンティングトン毒性の哺乳類細胞モデル、および単純なポリQ−GFP−融合を採用するC.elegansモデルにおける凝集の形成および細胞死の両方を減少させる。これらの印象的な観察は、酵母においてSis1の変化によって誘導されるハンティングトンの毒性は、そのヒトにおける毒性と直接関連すると考え得られることを示唆する。
【0187】
(実施例8)
(酵母においてハンティングトン毒性に影響を与える化合物)
短縮Sis1タンパク質およびHtQ103(毒性)を発現する系統を用いて、下記の実施例9および10で記載されるスポッティングアッセイを用いてスクリーニングを行なった。他の候補薬剤を用いたさらなるスクリーニングも企図される。これらのスクリーニングは、生きた細胞においてハンティングトンの凝集に影響を与えるが、それ自身は無毒性である薬剤の同定を可能にする。
【0188】
具体的には、HtQ25(コントロール、無毒性)、またはHtQ72(無毒性、しかし潜在的に毒性)、またはHtQ103(毒性)をバックグラウンドで発現する変異Sis1の酵母系統を、試験化合物ありまたはなしで、選択培地に連続希釈してスポットした。HtQ47も同様の実験において、試験化合物ありまたはなしで、選択培地に連続希釈してスポットする。コントロールプレートと比較して、試験プレートにおける増加した増殖速度は、毒性を減少させる可能性を有する化合物を同定し;減少した増殖は、毒性を増加し得る化合物を同定する。顕微鏡分析は、これらの薬剤がGFP−融合タンパク質による凝集形成にも影響を与えるかどうかを決定する。このスクリーニングを、GFPに融合していないハンティングトンのN−末端領域のみを発現する酵母系統でも行なう。
【0189】
スポッティングアッセイは、表3に列挙したいくつかを含む様々な化合物が、W303、hsp104、およびSis1変異体を含む酵母系統において毒性を誘導することを示す。
【0190】
酵母スクリーニングにおける1つの懸念は、いくつかの薬剤が、酵母細胞に入り得ないこと、取り込まれ得ないこと、迅速に代謝されること、または細胞からくみ出されることである。この可能性を排除するために、この問題を排除するために設計した酵母系統の変異体を採用する。膜流出ポンプに影響する(Cummingsら、1998)および薬剤の透過性を増加する(Chenら、1995)、3つの遺伝子(erg6、pdr1およびpdr3)における系統変異体を、最初の研究で使用する。これらの特定の系統を、癌研究において非常にうまく使用して、増殖調節剤を同定した(ウェブサイト:http://dtp.nci.nih.govを参照のこと)。
【0191】
(実施例9)
(誤った折り畳みによる疾患タンパク質を発現する酵母における毒性についての材料および方法)
(プラスミド構築)
野生型(WT)、A53T、およびA30P アルファシヌクレインcDNAは、Dr.Peter Lansburyから親切にも寄贈していただいた。WT、A53T、およびA30P配列を、標準的な分子生物学手順によって、p426GPD、p416GPD、p423GPD、およびp425GPDにサブクローニングした(Mumbergら、1995)。GFP、CFPまたはYFPとアルファシヌクレインのインフレーム融合物である、GFP、CFP、およびYFP融合物を、同じベクターにおいてアルファシヌクレインとインフレームでXFP(XはG、C、またはYを意味する)コード配列を挿入することによって構築した。XFP融合物も、GAL1−10プロモーターの調節下で、そしてCyc1ターミネーター領域と共に、pRS306およびpRS304にサブクローニングした。
【0192】
(酵母技術)
標準的な手順に従って、酵母系統を増殖および操作した(GuthrieおよびFink、Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology、Academic Pressを参照のこと)。
【0193】
(スポッティング実験)
酵母細胞を、対数または対数後期に達するまで選択培地中で、30℃または室温で一晩慣用的に増殖させた。細胞を、血球計を用いて計測し、そして1×10細胞/mlに希釈した。5連続希釈(5倍)を作成し、そして細胞をスクリーニングするために化学物質/薬剤を含む培地にスポットした。
【0194】
(実施例10)
(アルファシヌクレインは、酵母細胞質において蛍光焦点を形成する)
GFP融合物を用いて、細胞質全体に分散する蛍光焦点の形成が検出された。これらは、WTおよびA53T変異体で、A30Pよりも顕著に含まれた。この種類のアッセイを用いて、A30Pによるこれらの形成は排除され得ないが、この場合は、GFP蛍光パターンが異なって見えることから、異なる種類の凝集が予期される。
【0195】
(実施例11)
(アルファシヌクレインの毒性を増加させる条件)
スポッティング実験を用いて、異なるカテゴリーの化学物質が、アルファシヌクレイン過剰発現の毒性を悪化させ得る、またはハンティングトン発現の毒性を誘導し得る薬剤として同定された。表3の試験した化合物のうち、以下のものがWT アルファシヌクレインを過剰発現する酵母細胞の増殖に負の影響を有した:炭素源(アラビノース2%);窒素源(尿素1mg/ml);塩および金属(CaCl 0.5M、CoCl 750μM、CsCl 0.1M、CuSo 2.5mM、CuSo 5mM、Fe(SO 8.5mM、FeSO 20mM、FeCl 10mM、FeCl 15mM、FeCl 23mM、FeCl 50mM、MgCl 0.5M、MgSO 0.5M、RbCl 0.2M、SrCl 0.5M);ならびに一般的な阻害剤(6−アザウラシル30μg/ml、アウリントリカルボン酸100μM、ブレオマイシン 1μg/ml、ブレフェルジンA100μg/ml、カンプトテシン5μg/ml、クロラムブシル3mM、臭化エチジウム50μg/ml、ホルムアミド2%、GuHCl20、ヒドロキシ尿素5mg/ml、メナジオン20−50μM、パラコート1mM(メチルビオゲン(methyl viogen))、バナジン酸塩1mM、バナジン酸塩0.1mM、バナジン酸塩2mM、バナジン酸塩4mM、バナジン酸塩7mM+KCl)。
【0196】
予備的な研究において、いくつかの化合物が、アルファシヌクレイン過剰発現によって引き起こされる毒性を軽減する能力を示した。これらは、窒素源(セリン1mg/ml);一般的な阻害剤(カンプトテシン0.1μg/ml、DL−C−アリルグリシン0.025mg/ml、ハイグロマイシンB50μg/ml、L−エチオニン1μg/ml、パラモマイシン200μg/ml、硫酸プロタミン250μM);ビタミン(B12);プロテアソーム阻害剤(クロロキン4.2μM、クリオキノール5μM、(R)−(−)−3−ヒドロキシ酪酸、L−DOPA);アミロイド関連化合物(コンゴレッド5μM、クリサミンG1.0μM、デオキシコルチコステロン);ならびに抗酸化剤(グルタチオン)を含んでいた。
【0197】
(実施例12)
(FRETおよびFACSによるスクリーニング)
CFPおよびYFPに融合したアルファシヌクレインを、Gal1−10プロモーターの調節下で酵母ゲノムに組み込んだ(図4)。細胞をガラクトース中で増殖させて発現を誘導する。誘導により、細胞は融合タンパク質を産生し、それは凝集してCFPおよびYFPを近くに持ってくる。凝集物中のタンパク質はきつく固まっているので、CFPとYFPとの間の距離は、エネルギー転移(FRET)が起こるのに必要な100Åの臨界値より近い。この場合、CFPの発光によって放出されたエネルギーがYFPを励起し、それが今度はその特徴的な波長で発光する。従って、この現象を使用して、凝集が起こることを可能にしない状態にタンパク質を維持することによってこの相互作用を妨害し得る薬剤、遺伝子または他の因子を同定し得る。これらの因子を、FACS分析によって細胞を分取することによって分析する。これは、凝集経路における毒性中間体の調査を可能にし、そして従って凝集物または他の中間体が細胞死を引き起こすか否かに取り組むことを可能にする。
【0198】
(実施例13)
(RNAアプタマースクリーニング)
RNAアプタマーをスクリーニングして、アミロイド線維またはこの経路における他の中間体種を認識および結合する能力によって、神経変性疾患の治療薬として潜在的な適用を有するものを同定する。従って酵母系は、アルファシヌクレイン過剰発現の毒性を減少させる分子を直接探すことによって、およびタンパク質の凝集を引き起こす種間の相互作用を妨害する分子を探すことによって、このスクリーニングを行なうのに非常に敏感である。これはヒト疾患に関与するこのタンパク質および他のタンパク質の原線維発生/凝集に必要なエピトープに対する洞察を与え得るので、毒性を悪化させるまたは凝集を促進するいくつかの分子が見出されることもまた興味深い。
【0199】
本明細書中で開示および請求される全ての組成物および/または方法は、本開示を考慮すれば、過度の実験をすることなく作製および実施され得る。本発明の組成物および方法が好ましい実施態様に関して記載されているが、本発明の概念、意図および範囲から逸脱することなく、組成物および/または方法、ならびに本明細書中で記載された方法の工程または工程の系列において変形が適用され得ることが、当業者に明らかである。より具体的には、化学的および生理学的に関連する特定の薬剤が、本明細書中で記載した薬剤と置換され得るが、同じまたは同様の結果が達成されることが明らかである。当業者に明らかなそのような類似の置換および修飾は全て、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の意図、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【0200】
(参考文献)
以下の参考文献は、それらが本明細書中に記載される手順または他の詳細に対して補助となる例示的な手順または他の詳細を提供する程度まで、本明細書中に詳細に参考として援用される。
【0201】
【表7A】

【0202】
【表7B】

【0203】
【表7C】

【0204】
(配列表)
【0205】
【表8A】

【0206】
【表8B】

【0207】
【表8C】

【0208】
【表8D】

【0209】
【表8E】

【0210】
【表8F】

【0211】
【表8G】

【0212】
【表8H】

【0213】
【表8I】



【0214】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、そして本発明の特定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書中で提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合せて、1つ以上のこれらの図面を参照することによって、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】Sis1p欠失/短縮。
【図2】酵母におけるHtフラグメントの発現。本研究で使用されるHt−GFPフラグメントの図解表示。灰色のボックス、GFP;白色のボックス、25、47、72、または103グルタミンのストレッチ(黒色のボックス)を含むヒトHtタンパク質のN−末端領域のアミノ酸1−68。
【図3】GAL1−10プロモーターの制御下でGFPに融合したアルファシヌクレインの発現。WTおよびA53Tの発現は細胞に毒性である。アルファシヌクレイン単独で同様の表現型が観察された。これらのアッセイをスクリーニング方法において使用して、観察された毒性を軽減し得る薬剤を同定した。
【図4】CFPでタグ化したタンパク質とYFPでタグ化したタンパク質との間のFRETの破壊に基づくDNAライブラリースクリーニングの図解。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−259509(P2008−259509A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108214(P2008−108214)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【分割の表示】特願2002−564603(P2002−564603)の分割
【原出願日】平成14年2月15日(2002.2.15)
【出願人】(503294773)ユニバーシティ オブ シカゴ (11)
【Fターム(参考)】