タンパク質を特性決定するための方法、デバイス、およびシステム
分離バッファーが内部に配置された第1のキャピラリーチャンネルを提供するポリペプチドを特性決定する方法であって、前記分離バッファーが非架橋ポリマー溶液、バッファー剤(aten)、洗剤、および新油性色素を含んで成る。分離バッファーは、検出時、バッファー中の洗剤濃度が臨界ミセル濃度を超えないように提供される。ポリペプチドはキャピラリーチャンネルの一端へ導入される。電場がキャピラリーチャンネルの長さにわたって加えられ、これが異なる速度でポリマー溶液を通じて異なるサイズのポリペプチドを輸送する。次いで、ポリペプチドはキャピラリーチャンネルの長さに沿った点を通過すると検出される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生体化合物の特性決定は、生命、生命を維持する過程、およびその過程に影響を及ぼす事象や要素を理解しようとする努力の固有の必然性である。通常、生命過程の理解、およびその制御の取組みでは、最初に生命の基本的な構築物、すなわち生命のない始原の軟泥にすぎないものから生体を分化する高分子化合物および複合体が焦点となる。生命過程の理解および制御において特に興味深いのは、核酸およびそれらがコード化するタンパク質である。
【0002】
タンパク質の場合、多くの特性決定法が大部分は数十年間依然として変化していない。例えば、現在のタンパク質特性決定法は通常、少なくとも部分的に、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはSDS−PAGEに依存し、それらの相対分子量によってタンパク質を特性決定する。これらの方法では架橋ポリアクリルアミドのスラブまたはシートが使用される。分離され、特性決定されるタンパク質は洗剤バッファー(SDS)と混合され、通常、ウェルにおけるスラブの一端で配置される。電場がスラブ上に加えられ、ゲルを通じてタンパク質を含有する高電荷洗剤ミセルを取出す。より大きいタンパク質は、より小さいタンパク質よりもゆっくりスラブゲルを通じて移動し、それによってより大きいミセルから析出する。分離後、ゲルは、ゲル中の異なるタンパク質に結合する染色液、通常「クマシーブルー」または銀錯化剤と接触される。クマシーブルー染色ゲルの場合、スラブゲルを染色し、過剰の染色液を除去しなければならない。これらの工程は結果として、サイズで分離されるスラブゲル中の異なるタンパク質のラダーもたらす。銀染色法は同様に時間がかかり、かつ一般に質的であるが、非量的に染色されたゲルをもたらす。これらの工程の改良は、より迅速に流れるより小さなゲルを産生し、これは「使用準備済み(ready−to−use)」で購入されるゲルであり、染色工程を交替させる。しかし、基本的なSDS−PAGE工程は、タンパク質特性決定の方法として大部分は変化していない。
【0003】
タンパク質特性決定に対して他の領域でなされた進歩を加える多くの試みが行われている。例えば、核酸の分析において有効であることを証明したキャピラリー電気泳動法が、タンパク質の特性決定において試みられている。これらの方法は、タンパク質の分離において有能であることを証明したが、利用可能な標識化学における差異のほか、タンパク質と核酸との間の基礎構造および化学的差異は、タンパク質特性決定におけるCE法の広範囲な使用に対する実質的な障壁を引き起こした。具体的には、キャピラリーを通じて移動する分離タンパク質の検出は通常、比較的複雑な化学を使用する、タンパク質のすべてへの標識基の共有結合を必要とした。さらに、サイズベースの分離を確実にするタンパク質分離におけるSDSの存在は、キャピラリーシステム内の標識および分離における障害をさらに引き起こす。
【0004】
処理量、感度および低スペース、時間および試薬要件を増強した、タンパク質およびポリペプチドを特性決定するための方法、デバイス、システム、およびキットを提供することが望ましいであろう。本発明は、これらおよびさまざまな他の必要を満たす。
【特許文献1】米国特許第5,616,502号
【特許文献2】米国特許第5,264,101号
【特許文献3】米国特許第5,552,028号
【特許文献4】米国特許第5,567,292号
【特許文献5】米国特許第5,948,227号
【非特許文献1】ヘレニウス(Helenius)ら、Methods in Enzymol.56(63):734−749(1979年)
【非特許文献2】ルイ(Rui)ら、Anal.Biochem.152:250−255(1986年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様においては、本発明は、流体第1試料材料で分析操作を実行する方法を提供する。この方法は通常、少なくとも第1のチャンネルが配置された本体を有するマイクロ流体デバイスを提供する。第1のチャンネルは、第1および第2のチャンネルセグメントを含んで成り、ここで第1のチャンネルセグメントは、第1の操作の実行と適合性である第1の流体環境を含んで成る。第1の試料材料は、第1のチャンネルセグメントを通じて流れ、第1の操作を実行する。次いで、これは第1のチャンネルセグメントから第2のチャンネルセグメントへ流される。第1の希釈剤は第2のチャンネルセグメントへ流され、それによって希釈剤は第2のチャンネルセグメント内で第2の流体環境を産生し、第2の環境は第1の環境よりも第2の操作とより適合性である。
【0006】
関連態様において、本発明は、試料材料で分析操作を実行するためのデバイスを提供する。このデバイスは一般に、本体の内部に第1のチャンネルセグメントが配置された本体構造を含んで成り、第1のチャンネルセグメントは第1の環境を含有する。このデバイスは、本体に配置され、かつ第1のチャンネルセグメントに流体接続された第2のチャンネルセグメントをも含む。少なくとも1つの第1の希釈剤供給源も第2のチャンネルセグメントに流体連結されて提供される。このデバイスは通常、第1の希釈剤を第2のチャンネルセグメントへ送達し、第2のチャンネルセグメント内に第2の環境を提供するための第1の希釈剤供給源に操作可能な状態で連結された流量制御器をも含む。
【0007】
他の態様において、本発明は、分離バッファーが内部に配置された第1のキャピラリーチャンネルを提供するステップを含んで成る、ポリペプチドを特性決定する方法を提供する。分離バッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素を含んで成る。ポリペプチドは、キャピラリーチャンネルの一端へ導入される。電場がキャピラリーチャンネルの長さにわたって加えられ、これが異なるサイズのポリペプチドを異なる速度でポリマーマトリクスを通じて輸送する。次いで、ポリペプチドは、キャピラリーチャンネルの長さに沿った点を通過すると検出される。
【0008】
本発明の他の態様は、ポリペプチドを分離するためのデバイスである。このデバイスは、内部に分離バッファーを含有する少なくとも第1のキャピラリーチャンネルを有する本体構造で構成されている。分離バッファーは、ポリペプチドまたは複数のポリペプチドに結合することが可能なポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素で構成されている。本体構造に配置されたポートが、ポリペプチドを第1のキャピラリーチャンネルへ導入するための第1のキャピラリーチャンネルと流体連通している。
【0009】
本発明の別の態様は、ポリペプチドの特性決定において使用するためのキットである。このキットは、上述のデバイスの要素を含んで成るマイクロ流体デバイスで構成されている。分離バッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、および親油性色素で構成されている。各パッケージは本体構造、分離バッファー、および親油性色素を含有する。
【0010】
本発明の他の態様は、ポリペプチドを特性決定するためのシステムである。このシステムは、分離バッファーが配置された少なくとも第1のキャピラリーチャンネルを有する本体構造を含む。分離バッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素で構成されている。電力供給源が、キャピラリーチャンネルの長さにわたって電場を加えるために第1のキャピラリーチャンネルの反対端に操作可能な状態で連結されている。検出器が第1の点でキャピラリーチャンネルと感覚伝達されており、それが第1の点を通過するとポリペプチドを検出する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
I.方法、デバイス、および試薬
A.全般
本発明は、ポリペプチド、タンパク質、およびそれの断片(集合的に本明細書では「ポリペプチド」と呼ぶ)の特性決定において使用するための方法、デバイス、システム、およびキットを提供する。本発明の方法、デバイス、システム、およびキットは、「キャピラリー電気泳動」という語も一般に呼ばれるキャピラリーチャンネル内に含まれるポリマー分離マトリクスを通じてポリペプチドの電気泳動移動によるそれらの分子量によってポリペプチドを特性決定することにおいて特に有用である。
【0012】
前述の通り、キャピラリー電気泳動法を使用するタンパク質およびポリペプチドを分離する試みが行われている。キャピラリー電気泳動では閉鎖システム、例えば、キャピラリーが使用されるため、タンパク質の標識は通常分離前に行われている。これは一般に分離される混合物におけるタンパク質のすべてへの標識基の共有結合の形を取る。分離されると、各タンパク質上の標識が次いで検出されうる。共有標識法はしばしば錯体化学を含み、少なくとも、タンパク質を分離する前に追加のステップを必要とする。また、標識は一般に、タンパク質の分子量の決定に悪影響を及ぼしうる比較的大きな構造である。一部では非共有の結合性色素を使用することが試みられているが、かかる試みは一般に許容範囲未満の結果を提供した。
【0013】
しかし、本発明の少なくとも第1の態様によれば、迅速、再現性であり、かつ分離を実行する前に錯体試料の調製ステップを必要としないキャピラリー電気泳動法によってタンパク質を特定決定および/または分離するための方法が提供される。具体的には、本発明の方法は、分離バッファーが配置された第1のキャピラリーチャンネルを提供し、ここで分離バッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素を含む。本発明の好ましい態様によれば、洗剤およびバッファー剤は臨界ミセル濃度(「CMC」)以下の濃度で分離バッファー内に存在する。洗剤およびバッファー濃度をCMC以下の濃度で維持することによって、洗剤ミセルに結合する色素など有害な作用が最小限にされうる。操作の特定の理論に拘束されないが、前述のシステムにおけるキャピラリーシステム内の洗剤ミセルに結合する色素は、結果として実質的な背景シグナルをもたらし、かつ分離中のシグナル不規則性、例えば、シグナルベースラインにおけるこぶやくぼみをもたらしたと考えられる。他方、本発明の方法は、システムのさまざまな成分を注意深く制御し、これらの有害作用を回避または少なくとも最小限にする。特に好ましい態様においては、バッファーおよび洗剤は、少なくとも操作の分離成分が検出される点でCMC以下で提供され、それによって高い背景シグナルを示すミセルに結合する色素を回避する。これはCMC、例えば、バッファーおよび洗剤濃度未満のレベルで維持および/または実行される全体的システムの結果であり、または試料、バッファー、洗剤流体、例えば、希釈剤のインサイチュ処理、試薬添加、または他の溶液変更の結果でありうるが、これはシステムの検出部における分離バッファーをCMC未満のレベルに削減する。
【0014】
実際には、分析および/または特性決定されるタンパク質またはポリペプチド試料は通常、前処理され、タンパク質を変性させ、かつ洗剤によってタンパク質の十分なコーティングを提供するほか、試料中のコートタンパク質の十分な標識を提供する。
【0015】
次いで、特性決定されるタンパク質またはポリペプチド(または分離されるポリペプチドの混合物)は、キャピラリーチャンネルへ、通常、チャンネルセグメントの一端で導入される。キャピラリーチャンネルの長さにわたって電場を加えることによって、異なるサイズのポリペプチドは異なる速度でポリマー溶液を通じて移動する。それと結び付いた実質的な電荷を有する洗剤でコーティングされているポリペプチドは、キャピラリーチャンネルを通じて一方向へ移動する。しかし、異なる分子量のポリペプチドは異なる速度でポリマー溶液を通じて移動し、析出される。チャンネルにおける分離バッファー通じて移動しながら、ポリペプチドは、分離バッファー内に存在する親油性色素を捕捉すると同時に、場合により試料、例えば、試料前処理中、希釈剤または同様のものとともに含まれた関連色素をもたらす。
【0016】
分離との関連で、互いに分離されると、この時点でそれらと結び付いた関連親油性色素のレベルを有するポリペプチドは、その色素に基づき、それらが導入された点の下流のキャピラリーチャンネルにおける点で検出されうる。
【0017】
B.試料前処理
上述の通り、それらの特性決定前に、試料を含有するタンパク質またはポリペプチドは通常、バッファーを含有する適切な洗剤で前処理される。特に好ましい態様では、ポリペプチド試料混合物は、その分離前にタンパク質の変性を確実にするために、分離バッファーと同じバッファー剤、および分離バッファー中で使用される同じ洗剤を含んで成るバッファー中で前処理される。タンパク質の変性は分離中の直鎖分子を確実にし、タンパク質の分離プロファイルは、天然タンパク質が球形、線形、糸状、または他の何らかの構造を有するかどうかに関係なく、その分子量とより密接に関係している。前処理は通常、試料のタンパク質濃度(w/v)よりも大きく、かつ好ましくは試料中のタンパク質濃度(w/v)の約1.4倍大きい濃度で洗剤の存在下に行われる。
【0018】
洗剤結合色素の干渉効果を回避するために、ランニングバッファー中の洗剤の濃度未満またはほぼ同等、ランニングバッファーの洗剤濃度の約0.05倍〜約3倍である洗剤濃度で試料前処理を実行することがしばしば望ましい。
【0019】
好ましい態様において、前処理バッファー中のSDSの濃度は、ランニングバッファー中で使用される濃度未満である。したがって、試料前処理は通常、約0.05%〜2%、好ましくは、約0.05%〜約1%、かつより好ましくは、約0.5%未満の洗剤濃度の存在下に行われる。次いで、試料材料がロード試料中で、例えば、約1:2〜約1:20の希釈で希釈された場合は、これにより約0.0025%〜約1%洗剤、好ましくは、約0.0025%〜0.5%、さらに、より好ましくは、約0.5%未満のロード試料中の洗剤レベルが生じる。
【0020】
これらのレベルは、分離バッファーの5〜20倍以上でありうる洗剤濃度中で試料が前処理される従来のSDS−PAGE分離と対照的である。具体的には、標準的なSDS−PAGE法のための試料前処理は一般に、洗剤、例えば、SDS、50mMバッファー中2%以上の濃度(例えば、米国特許第5,616,502号明細書を参照)を有するローディングバッファー中で行われると同時に、ランニングバッファーは0.1%のみの洗剤を含有する。しかし、本明細書に記載されたキャピラリーシステムで使用されるとランニングバッファーと比べローディングバッファーにおけるこれら比較的高い洗剤レベルの使用により、望ましい範囲の分子量を有するポリペプチドと共溶出する傾向があるはるかに大きな干渉洗剤フロントが生じる。例えば、図6は、一連の分子量標準のクロマトグラムを示す(以下の実施例の部を参照)。図示された例において、ピークは、タンパク質分析における重要な分子量範囲である60〜70kDの範囲の分子量を有するタンパク質またはポリペプチドの溶出時間に対応する約43秒で溶出した洗剤フロントと結び付いた。
【0021】
試料前処置ステップにおける洗剤の濃度を削減することによって、いかなる干渉ピークも削減される。これは、試料前処理が高レベル、例えば、2%以上の洗剤を必要とした当技術分野における従来の考え方をよそに有効であることが判明した。さらに、本明細書に記載されたパラメータに従って試料前処理および分離バッファーのイオン強度および洗剤濃度を制御することにより、洗剤フロントの溶出プロファイルをわずかに制御することが可能であり、特性決定されるポリペプチド前後にその溶出を引き起こす。
【0022】
同様に好ましい態様において、前処理で使用される洗剤は分離バッファーで使用される同じ洗剤、例えば、SDSである。一般に、前処理条件は、全体的分離の条件、例えば、分離されるタンパク質の性質、試料が配置されている培地、例えば、以下の分離バッファーについて記載されているように、バッファー、および塩濃度などによって変化しうる。具体的には、SDSおよび塩濃度は、例えば、所定の分離ために最適化するために本明細書に記載されたパラメータ内で変化しうる。
【0023】
C.分離バッファー
本発明によれば、分離バッファーは本明細書に記載された方法の実施において使用され、このバッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素を含んで成る。架橋および/またはゲルポリマーを含むさまざまなポリマーマトリクスを使用することができる。しかし好ましい態様においては、非架橋ポリマーがポリマーマトリクスとして使用される。本明細書に記載された方法における使用に適している非架橋ポリマー溶液は、キャピラリー電気泳動による核酸の分離における使用のために以前に記載されている、例えば、その各々が本明細書で参照することにより援用される、米国特許第5,264,101号明細書、同第5,552,028号明細書、同第5,567,292号明細書、および同第5,948,227号明細書を参照。かかる非架橋または「直鎖」ポリマーは、架橋またはゲル化ポリマーよりも使いやすさの利点を提供する。具体的には、かかるポリマー溶液は、それらの液体性質のため、より容易にキャピラリーチャンネルへ導入され、使用される状態にあるが、ゲル化ポリマーは通常、架橋反応を起こすと同時にポリマーがキャピラリー内にあることを必要とする。
【0024】
一般に、最も一般的に利用される非架橋ポリマー溶液はポリアクリルアミドポリマーを含んで成り、これは好ましくは、自然に正電荷または負電荷されうるポリジメチルアクリルアミドポリマー溶液である。特に好ましい態様においては、負電荷ポリジメチルアクリルアミドポリマー、例えば、ポリジメチルアクリルアミド−co−アクリル酸が使用される(例えば、米国特許第5,948,227号明細書を参照)。意外にも、ポリアクリルアミドポリマー溶液の使用により、キャピラリーシステムで分離されるタンパク質/ポリペプチドのいかなる不鮮明化も生じることはない。操作の特定の理論に拘束されないが、ポリマー溶液は、本明細書におけるシステムにおいて二重機能を有すると考えられる。第1の機能は、より小さい種に対してそれを通じて移動するより大きな種の移動性を付与するマトリクスを提供することである。これらのポリマー溶液の第2の機能は、キャピラリーチャンネル内の材料の電気浸透流を削減または除去することである。ポリマー溶液はこれをキャピラリー表面に吸着させることによって行い、それによって電気浸透流を特性決定するシース流を遮断すると考えられる。
【0025】
通常、非架橋ポリマーは、約0.01%〜約30%(w/v)の濃度で分離バッファー内に存在する。もちろん、異なるポリマー濃度は、実行される分離の種類、例えば、特性決定されるポリペプチドの性質および/またはサイズ、分離が実行されるキャピラリーチャンネルのサイズなどによって使用されうる。好ましい態様においては、大部分のポリペプチドの分離のために、ポリマーは、約0.01%〜約20%、かつより好ましくは、約0.01%〜約10%の濃度で分離バッファーに存在する。
【0026】
ポリマー溶液内のポリマーの平均分子量は、そのためにポリマー溶液が望ましい用途によってわずかに変化しうる。例えば、高い分解能を必要とする用途では高分子量のポリマー溶液が利用されるが、厳しくない用途では低分子量の溶液が利用されうる。通常、本発明により使用されるポリマー溶液は、約1kD〜約6,000kD、好ましくは、約1kD〜約1000kD、かつより好ましくは、約100kD〜約1000kDの範囲の平均分子量を有する。
【0027】
上述の荷電率および分子量に加えて、本発明により使用されるポリマーはそれらの粘度によっても特性決定される。具体的には、本明細書に記載されたシステムのポリマー成分は通常、キャピラリーチャンネル内で使用される溶液粘度を、約2〜約1000センチポイズ、好ましくは、約2〜約200センチポイズ、かつより好ましくは、約5〜約100センシポイズの範囲で有する。
【0028】
非架橋ポリマー溶液の取込みに加えて、本発明の実施において使用される分離バッファーは、バッファー剤、洗剤、および親油性色素をも含んで成る。
【0029】
前述の通り、ポリペプチドは通常、その物理化学特性、特にそれらの荷電対質量比が、それらのアミノ酸組成物によって相当に変化する。かかるものとして、異なるポリペプチドは一般に加電場下に異なる電気泳動移動性を有する。かかるものとして、タンパク質および他のポリペプチドの電気泳動分離では通常、タンパク質/ポリペプチドのすべてが電場下に同じ方向に移動することを確実にするために、ランニングバッファー内で洗剤が利用される。例えば、標準的なタンパク質分離において、例えば、SDS−PAGE、洗剤(ドデシル硫酸ナトリウムまたはSDS)が試料バッファー中に含まれる。試料中のタンパク質/ポリペプチドは、実質的な負電荷を有するさまざまなタンパク質/ポリペプチドを提供する洗剤によってコーティングされる。次いで、負電荷タンパク質/ポリペプチドは電流下に陰極へ移動する。しかし、ふるいマトリクスの存在下、より大きなタンパク質はより小さなタンパク質よりゆっくり移動し、それによってそれらの分離を可能にする。
【0030】
本発明の一部の態様によれば、分離バッファーの洗剤、バッファー剤、および色素成分の各々が、それらの間の有害な相互作用を最小限にする濃度で選択され、提供されるが、この相互作用はタンパク質またはポリペプチドの分離および特性決定に干渉し、例えば、分離効率、シグナル感度、異常シグナルの生成、または同様のものを削減しうる。具体的には、バッファー剤および洗剤は通常、ポリペプチドの分離効率を最適化するが、背景シグナル、およびベースラインシグナルの不規則性を最小限にする濃度で提供される。前述の通り、洗剤ミセルに結合する色素はキャピラリー分離中の背景シグナルの実質的なレベルを生成すると同時に、さまざまなベースライン不規則性、例えば、こぶやくぼみを生じる。
【0031】
したがって、第1の態様においては、ポリペプチドの分離および/または特性決定は、バッファー溶液内で洗剤が過剰な独立したミセルを形成し始め、それに色素が結合しうる点未満である濃度でバッファー剤および洗剤を提供することによって達成される。通常、ミセルが形成し始める濃度は臨界ミセル濃度(「CMC」)と呼ばれる。再び述べると、CMCは入手可能な最も高いモノマー洗剤濃度であり、したがって、潜在的に入手可能な最も高い洗剤である。ヘレニウス(Helenius)ら、Methods in Enzymol.56(63):734−749(1979年)。
【0032】
洗剤溶液のCMCは、無極部分(または炭化水素尾部)のサイズの増大とともに、かつより少ない程度に、極性群のサイズおよび極性の減少とともに減少する。ヘレニウス(Helenius)ら、上記を参照。したがって、洗剤溶液がそのCMCを上回るか下回るかは、洗剤の濃度だけではなく、CMCに対する効果を有しうる溶液の他の成分、すなわちバッファー剤の濃度、および全体的溶液のイオン強度によっても測定される。したがって、本発明の方法、システム、およびデバイスにおいて、分離バッファーには洗剤濃度およびバッファー剤の濃度が提供されており、分離バッファーがCMC以下で維持されるようになっている。
【0033】
バッファーがそのCMC未満であるかどうか測定するために多くの方法を使用することができる。例えば、ルイ(Rui)ら、Anal.Biochem.152:250−255(1986年)は、洗剤溶液のCMCを測定する蛍光N−フェニル−l−ナフチルアミン色素の使用を記載している。本明細書に記載された分離バッファーとの関連で、洗剤は通常、分離バッファーのCMC以下である濃度で提供される。特に好ましい態様において、洗剤濃度はバッファーのCMCまたはそのすぐ下である。洗剤の最適濃度の測定は、実験的に測定されうる。具体的には、本明細書に記載された親油性色素を使用することにより、洗剤濃度の関数として溶液の蛍光を測定することによって洗剤溶液中の相対ミセル濃度を測定することができる。例えば、図3は、SDS濃度の関数として親油性蛍光色素(Syto61、モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes Inc.))10μMを含有するSDS溶液の蛍光強度のプロットを示す。臨界ミセル濃度は、点Aで示された蛍光強度の急増によって示されている。したがって、本発明によれば、洗剤濃度がCMC以下であることが示されている場合、洗剤濃度は図示されているようにプロットの急な部分上またはそれ未満のいずれかである濃度であり、特に、点Bで示されたカーブ上の点を下回り、かつ好ましくは、点Aで示された領域内またはそれを下回ると理解される。
【0034】
上述の通り、洗剤のCMCは洗剤によって異なり、かつ洗剤が配置されているバッファーのイオン強度によって異なる。標準的な分離操作およびバッファーにおいて、分離バッファー中の洗剤濃度は、約0.01%(w/v)を上回るが、約0.5%未満である濃度で提供されると同時に、バッファー剤は通常、バッファーがCMC以下で維持されるという条件で、約10mM〜約500mMの濃度で提供される。
【0035】
分離バッファーに組込まれた洗剤は、電気泳動分離における使用について記載されている多くの洗剤のいずれかから選択されうる。通常、イオン洗剤が使用されうる。オクタデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、およびデシル硫酸ナトリウムなど硫酸アルキルおよびスルホン酸アルキル洗剤が一般に好ましい。特に好ましい態様において、洗剤はSDSを含んで成る。SDSの実施形態において、洗剤濃度は一般に上述の濃度で維持される。したがって、好ましい態様において、分離バッファー中のSDS濃度は通常、0.01%よりも大きく、材料中のタンパク質の十分なコーティングを確実にするが、約0.5%よりも小さく、過剰なミセル形成を阻止する。好ましい態様において、洗剤濃度は約0.02%〜約0.15%であり、かつ好ましくは、約0.03%〜0.1%である。
【0036】
好ましい洗剤濃度を利用するバッファーにおいて、バッファー剤は通常、多くの異なるバッファー剤のいずれかから選択される。例えば、SDS−PAGE用途と併せて一般に使用されているバッファー、例えば、トリス、トリス−グリシン、HEPES、CAPS、MES、トリシン、これらの組合せなども本発明において特に有用である。しかし、特に好ましい態様において、きわめて低いイオン強度を有するバッファー剤が選択される。かかるバッファーの使用は、CMCを超えることなく洗剤の濃度を増加させることを可能にする。この種の好ましいバッファーとしては、アミノ酸様ヒスチジンおよびトリシンなど両性イオンバッファーが挙げられるが、これらは関連pHで比較的高い緩衝能力を有するが、それらの両性イオン性によりきわめて低いイオン強度を有する。システム内で比較的低い移動性を有する比較的大きなイオンを含んで成るバッファー剤も、例えば、対イオンとしてトリスを使用する、シグナルベースラインの不均衡をならすそれらの明らかな能力のために好ましい。
【0037】
上記の濃度で、好ましい洗剤溶液、例えば、SDS、オクタデシル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウムなどの場合、バッファー剤は通常、約10mM〜約200mMの濃度、かつ好ましくは、約10mM〜約100mMの濃度で提供される。特に好ましい態様においては、トリス−トリシンがバッファー剤として約20mM〜約100mMの濃度で使用される。
【0038】
前述の議論を参照して、最も好ましい分離バッファーは、約0.03%〜約0.1%の濃度でSDS、およびトリス−トリシンをバッファー剤として、約20mM〜約100mMの濃度で含んで成り、各々は、全体的システム/方法の正常な作業条件下に作業すると、バッファーがCMC以下であるように提供されていることが確認されうる。
【0039】
前述の成分に加えて、分離バッファーは通常、関連色素、または特性決定/分離されるタンパク質およびポリペプチドと関連する他の検出可能な標識基をも含んで成る。これは、それらが分離バッファーを通じて移動するとタンパク質および/またはポリペプチドの検出を可能にする。本明細書で使用される「関連色素」は、目的とするクラスの分子、例えば、タンパク質またはペプチド、優先的に所定の混合物における他の分子に対して関連する検出可能な標識化合物または部分を指す。タンパク質またはポリペプチド特性決定の場合、親油性色素は特にタンパク質またはポリペプチド関連色素として有用である。
【0040】
本発明において使用するための特に好ましい親油性色素の例としては、蛍光色素、例えば、本明細書で参照することにより援用される米国特許第5,616,502号明細書に記載されているものなどメロシアニン色素が挙げられる。特に好ましい色素としては、モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes,Inc.)(Eugeneオレゴン州(OR))からSypro Red(商標)、Sypro Orange(商標)、およびSyto 61(商標)色素として一般に市販されているものが挙げられる。かかる色素は一般に、例えば、洗浄により、過剰な色素を洗い流し、かつゲル中のSDSの有害な作用を削減する染色スラブゲルにおける使用に意図されている。しかし、意外にも、本発明者によって、これらの色素がSDSキャピラリーゲル電気泳動(SDS−CGE)において特に有用であり、驚くべき感度を示し、かつ、バッファーが本明細書に記載されているように調製されると、洗剤からの「不鮮明化」または緩衝をほとんど、もしくはまったく示さないことが見出されている。
【0041】
さらに、かつ分離バッファーとの色素との適合性よりもさらに意外なことは、キャピラリーチャンネル内での親油性色素の分離バッファーへの取込みが、アッセイの感度を削減しうる過剰な背景シグナルを引き起こさないことである。具体的には、分離バッファー内に色素を提供することによって、バッファー中にある色素から比較的高い背景シグナルを観察することが期待される。したがって、色素を試料溶液内に含めるが、チャンネル内の分離バッファー内には含めないことが必要とされることを期待するであろう。しかし、この後者の方法は結果として、分離中のきわめて低いシグナルレベルをもたらす。キャピラリーチャンネル内の分離バッファーに色素を含めることによって、シグナルは高く維持されるが、背景は意外にも低く維持される。本発明において使用される親油性色素は一般に、約0.1μM〜1mM、より好ましくは、約1μM〜約20μMの濃度で分離バッファー内に存在する。
【0042】
D.分離後処理
試料が、利用される色素システムのために最適化され、例えば、特定の洗剤のCMC未満に維持されるバッファーおよび洗剤濃度下に前処理および分離される上述の方法とは対照的に、一部の態様において、試料成分が存在するバッファー/洗剤条件はそれらの成分の分離後およびそれらの成分の検出中もしくは検出直前に変化し、それと同時に洗剤ミセルの有害な作用は削減または除去される。具体的には、試料成分、例えば、ポリペプチドは、最適化された分離バッファーおよび洗剤の条件、またはCMC以上または以下でありうる濃度下に分離される。試料成分が分離されると、これらの条件は変化し、検出点でのバッファーおよび/または洗剤濃度が検出ステップのために最適化され、例えば、そのレベルをCMC未満のレベルに削減するようになっている。具体的には、しばしば、洗剤レベルおよび/またはバッファー濃度がCMC未満に調節されると、ミセルは分散し、ミセルに結合する色素の有害な作用は削減または除去される。
【0043】
通常、ポリペプチド分離の場合、環境の変更は、それらが検出器を通過する前に、分離バッファーを含有する試料がCMC以下であるように、1つもしくはそれ以上の希釈剤を分離試料成分へ添加することによって行われる。これは場合により、洗剤とバッファーの比を変更し、CMCを洗剤の作動濃度以上に上昇させ、かつ/または洗剤レベルを希釈し、それがCMC未満となるように変更することによって行われる。したがって、希釈剤はバッファー剤の濃度を増加させ、維持し、または削減しうると同時に、通常、洗剤のレベルを削減し、または洗剤濃度を維持すると同時に、バッファー剤の濃度を削減しうる。いずれかの場合、所望の目標は、検出の点および時間で洗剤ミセルを削減することである。同様に、洗剤ミセル、例えば、共洗剤を有効に破壊する材料が添加されうる。
【0044】
分離後処理が使用される場合、分離バッファー組成物は広範囲のバッファーおよび洗剤濃度に及びうる。例えば、分離バッファーは通常、バッファー剤を、例えば上述のように、約10〜約200mMの濃度、および約0.01〜約1.0%の洗剤濃度、および通常CMCを上回る、例えば、約0.05%を上回り、かつ好ましくは、約0.1%を上回る濃度で含む。他方、親油性色素の検出は、好ましくは、色素に結合し、かつ過剰な背景シグナルに寄与する過剰な洗剤ミセルの非存在下に行われる。したがって、分離バッファーの希釈が通常行われ、洗剤濃度を洗剤のCMC未満のレベル、例えば、約0.1%未満に削減する。したがって、希釈ステップは、好ましくは、分離バッファーを検出前に約1:2から約1:30に希釈する。これにより検出される試料成分も希釈されるが、希釈の結果としての背景の実質的な削減は試料材料のきわめて低いレベルで容易な検出を可能にする。
【0045】
本発明の本態様によれば、マイクロ流体デバイスは特にこれらの方法の実施に十分に適している。具体的には、集積流体チャンネルネットワークの包含は、希釈剤および他の試薬の材料の流動流への即時の添加を可能にする。具体的には、希釈チャンネルは、分離試料成分とともに検出域へ希釈剤を送達するために、検出域のすぐ上流に提供される。次いで、試料成分は干渉洗剤ミセルの非存在下に検出される。この分離後処理を実施するためのマイクロ流体デバイスの特に好ましいチャンネル配置の例が図7に示されており、以下の詳しく記載されている。本明細書で使用される「上流」および「下流」という語は、記載されているシステムの正常な動作中、目的とする材料、例えば、流体、試料成分等の流れの方向との関連で考えられる場合に記載された要素の相対的な位置を指す。通常、上流という語句は特定のチャンネルに接続された試料またはバッファー槽に向いた方向を指し、下流は特定のチャンネルに接続された廃槽の方向を指す。
【0046】
E.キャピラリーチャンネルおよびデバイス
1.全般
本発明は、上述したタンパク質特性決定法の実行において使用するためのデバイスおよびシステムを提供する。本発明のデバイスは通常、分離バッファーが配置される分離域を含む支持基板を含む。分離/特性決定される試料が分離域の一端で配置され、電場が分離域にわたって加えられ、試料内にタンパク質/ポリペプチドの電気泳動分離を引き起こす。次いで、分離タンパク質/ポリペプチドは、分離域に隣接し、かつこれと感覚伝達して配置された検出システムによって別々に検出される。
【0047】
2.従来のキャピラリーシステム
少なくとも第1の態様において、本発明の方法は従来のキャピラリーベースの分離システムに適用可能である。したがって、これらの態様において、支持基板は通常、キャピラリーチューブ、例えば、溶融石英、ガラス、またはそれを通じて配置されたキャピラリーチャンネルを含む、ポリマーキャピラリーチューブを含んで成る。チューブにおけるキャピラリーチャンネルの少なくとも一部は、キャピラリーの分離域を含んで成る。分離バッファーは、例えば、圧力ポンピング、キャピラリーアクション、または同様のものによってキャピラリーチャンネルへ配置され、分離/特性決定される試料はキャピラリーチャンネルの一端へ注入される。次いで、キャピラリーチューブの一端が、一方の端で槽と接触した陰極を有する陰極槽、および他方の端で槽と接触した陽極を有する陽極槽と接触した流体へ配置され、電場がキャピラリーチューブを通じて加えられ、キャピラリーチューブおよび含有分離バッファーを通じて試料材料を電気泳動させる。タンパク質およびポリペプチドが分離バッファーを通じて移動すると、それらは親油性色素と結び付き、これは次いで検出システムによってキャピラリーチャンネルの陰極端に向かって検出される。
【0048】
例えば、上述した分離後処理ステップの場合、バッファー溶液が通常、追加の流路またはキャピラリーを主要分離キャピラリーに接続することによって分離後試料成分の流路へ導入され、分離キャピラリーを出る分離成分が追加のバッファーまたは希釈剤と混合される。検出チャンバーまたはキャピラリーもこの接合部で接続され、材料のすべてが検出される検出域へ流れるようになっている。
【0049】
3.マイクロ流体デバイス
特に好ましい態様において、本発明の方法は、単一の集積固体基板内に配置された微小キャピラリーチャンネルのネットワークを提供するマイクロ流体デバイスで実行される。具体的には、支持基板は通常、1つもしくはそれ以上の微小チャンネルのネットワークが配置された集積本体構造を含んで成る。分離バッファーは少なくとも分離チャンネル内に配置される。好ましい態様において、マイクロ流体チャンネルネットワークは、少なくとも1つの第1の試料注入チャンネルによって交差される少なくとも1つの第1の分離チャンネルを含んで成る。これら2つのチャンネルの交差は、「注入交差」と呼ばれるものを形成する。作動中、試料材料は注入チャンネルを通じて、かつ分離チャンネルにわたって注入される。次いで、交差内の材料の一部は分離チャンネルへ注入されると同時に、それは分離バッファーを通じて分離される。検出器は分離チャンネルに隣接して配置され、分離タンパク質を検出する。
【0050】
特に好ましい態様において、本発明により使用されるマイクロ流体デバイスは、試料注入チャンネルと流体連通した複数の試料ウェルを含んで成り、そしてそれが分離チャンネルと流体連通する。これが単一の集積マイクロ流体デバイス内の多数の異なる材料の分析を可能にする。本発明により使用するための特に好ましいマイクロ流体デバイスの例が、すべての目的のために本明細書で参照することによりその全体が援用される、公有の1998年10月2日出願の米国特許出願第09/165,704号明細書に示され、記載されている。かかるマイクロ流体デバイスの例が図1に示されている。図示されているように、デバイス100は、その内部、例えば、チャンネル104−138内に配置された複数の相互接続したチャンネルを含む平面の本体構造102を含んで成る。多くの槽140−170は本体構造202に配置されており、さまざまなチャンネル104−138と流体連通している。分析される試料およびバッファーは、デバイスのチャンネルへの導入のためにこれらの槽へ配置される。
【0051】
作動中、分離/特性決定において使用される分離バッファーは最初に1つの槽、例えば、槽166へ配置され、デバイスのチャンネルのすべてへ運ばせ、それによってこれらのチャンネルを分離バッファーで充填する。分離/特性決定される試料は別々に槽140−162へ配置される。次いで、分離バッファーは、槽164、168、および170へ配置され、槽166にはすでに存在する。適切な電流の適用により、第1の試料材料は、その槽、例えば、140からチャンネル104のための主要注入交差172へ、かつこれを通じて、チャンネル120および116によって輸送または電気泳動される。これは一般に電流を槽140と168との間に加えることによって達成される。低レベルのピンチング(pinching)電流は通常、例えば、低レベルの電流を槽166および170から槽168の方向へ供給することによって、交差点で試料材料の拡散を阻止するために交差点で加えられる(例えば、国際公開第96/04547号パンフレットを参照)。短時間後、電流は切り替わり、交差点における材料が、例えば、電流を槽170と166との間に加えることによって、主要分析チャンネル104の下で電気泳動されるようになっている。通常、わずかな電流が注入後に加えられ、チャンネル116および134の材料を交差点から引き戻し、分離チャンネルへの漏出を回避する。第1の試料は主要チャンネル104の下で電気泳動されるが、分析される次のサンプルはその槽、例えば、槽142からプレロード槽164へ向かってプレロード交差点174を通じて電気泳動することによってプレロードされる。これは、きわめて短い輸送時間で試料材料をそのプレロード位置から注入交差点172へ移動させることを可能にする。第1の試料分析が完了すると、第2の試料材料が注入交差点172上で電気泳動され、前述同様、主要分析チャンネルの下に注入される。この過程はデバイスへロードされた試料の各々について繰返される。
【0052】
検出域176は通常、そこでシグナルがチャンネルから検出されうる点を提供するために、主要分析チャンネル104に沿って提供される。通常、本明細書に記載されたデバイスは、透明な材料で製造されている。かかるものとして、光学検出分析のための検出窓は、分析チャンネル104の長さに沿って実質的にすべての点に位置しうる。分離試料が検出窓を通過すると、ポリペプチド断片と結び付く親油性色素が検出される。次いで、各ポリペプチド断片が分離チャンネルを通じて移動するのに必要な時間の量は、例えば、その分子量の尺度として、特定のポリペプチドの特性決定を可能にする。具体的には、未知のポリペプチドの保持時間は既知の分子量標準の保持時間と比較され、未知の概算の分子量は、それによって測定され、例えば、標準から補間または補外されうる。
【0053】
前述の通り、本明細書に記載された分離後処理は、マイクロ流体チャンネルシステムの使用によって特に利点がある。具体的には、主要分離チャンネルへの希釈剤の供給源の結合は、適切な位置、例えば、分離が起こった後は収まるが、検出域または窓の前には収まらない点でそのチャンネルに接続されるチャンネルを提供する単純な事柄である。これを達成するためのマイクロ流体チャンネルネットワークの例が図7に示されている。図示されているように、マイクロ流体デバイス700は、その内部に配置されたチャンネルネットワークを含む本体702を含む。通常、図7に示されているデバイスは、図1に関連して上述された同じ方法で製造される。チャンネルネットワークは、複数の異なる試料材料槽706−722および728とそれぞれ、試料チャンネル706a−722aおよび728aによって流体連通している主要チャンネル704を含む。プレロード/廃槽チャンネル/槽724/724aおよび726/726aが図示されている。主要チャンネル704は、バッファー槽736および廃槽732と接続されており、かつ検出域738を含む。図示されているように、2つの希釈チャンネル730aおよび734aが、主要チャンネル704の反対側で、検出域からすぐ上流(材料の動作流の方向)であり、そのチャンネルの機能、例えば、分離が起こる主要チャンネル704の主要部分の下流ではない点で主要チャンネル704と連通して提供されている。希釈チャンネル730aおよび734aも、希釈剤供給源、例えば、槽730および734とそれぞれ連連しており、これらの供給源から主要チャンネル704への希釈剤の送達を可能にする。
【0054】
例えば、ポリペプチド混合物を含有する試料を特性決定したいと思う場合のポリペプチド分離における作動中、デバイス700のチャンネルは分離バッファーで充填される。分離後処理の場合、このバッファーは、過剰なミセル形成に対する懸念が概してないため、上記の制限を固守する必要ない。通常、これらの場合、洗剤の濃度は前処理法におけるほど重要ではない。具体的には、分離バッファーは、例えば、約0.1%〜約2.0%の高い濃度の洗剤を有しうる。通常、洗剤濃度は0.1%を超える。チャンネルネットワークの充填は通常、1つのウェル、例えば、廃槽732へ分離バッファーを挿入することによって実行される。次いで、分離バッファーは、それが他の槽706−730および734−736の各々に達するまでチャンネルネットワークの全体を通じて移動する。場合により、わずかな圧力が廃槽732にかけられ、チャンネルネットワークの充填を促進する。追加量のバッファー、例えば、分離バッファーがバッファー槽736およびロード/廃槽724および726へ配置される。希釈材料が希釈槽730および734へ配置される。
【0055】
試料材料は、1つもしくはそれ以上の試料槽706−722、728へ配置される。場合により、多くの異なる試料材料が異なる槽へ配置される。次いで、デバイスは制御器/検出器装置、例えば、すべての目的のために本明細書で参照することによりその全体が援用される、米国特許第5,976,336号明細書に記載されている制御電気動力学方法によって、デバイスのチャンネルを通じて試料材料の移動を方向づける、例えば、アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)の2100バイオアナライザへ配置される。例えば、槽706ヘ配置される試料が、チャンネル704を交差させるまで試料チャンネル706aに沿って移動し、チャンネル726aによってロード廃槽726の方向へ流れる。次いで、試料ローディングチャンネル706aと主要チャンネル704の交差点で試料材料の一部は、分離チャンネル704へ注入され、それを通じて移動する。加電場下、分離バッファーを通じて移動する試料のこの部分は、チャンネル704に沿って移動するとその構成要素へ分離する。それが移動すると、試料成分、および場合によっては、洗剤ミセルは、分離バッファー中に存在する親油性色素を捕捉する。洗剤を低濃度で含有し、またはまったく含有しない希釈バッファー剤が、チャンネル730aおよび734aによってチャンネル704へ連続的に導入される。この希釈剤は分離バッファーを洗剤のCMC未満の点に希釈し、結果として過剰な洗剤ミセルの除去をもたらす。次いで、親油性色素を有する希釈試料構成物質は検出窓738で検出される。場合によっては、流体希釈はチャンネルを通じた流体の実際の導入により達成される。しかし、好ましい態様において、サイドチャンネル730aおよび734aは通常、チャンネルネットワーク全体を通じて存在する同じ分離マトリクスを含有する。かかるものとして、希釈は、分離チャンネルへ電気泳動的に導入されるバッファー溶液からイオン種の電気泳動導入によって実行され、分離チャンネルにおける種を有効に希釈する。別の態様において、サイドチャンネル730aおよび734aは、マトリクスを含まずに提供され、例えば、それらは圧力ベースまたは電気浸透流を支持し、かつ大量の流体が主要チャンネル704へ導入され、分離試料成分を希釈する。上述の通り、希釈がチャンネルに添加される速度は、特定の条件下に洗剤の約CMC未満のレベルに検出点でのチャンネルにおける洗剤濃度を削減するように選択される。通常、これは洗剤の約1:2〜約1:30希釈を含んで成る。したがって、分離バッファーが、例えば、30mMトリス−トリシンバッファー中2%SDSを含む場合、洗剤レベルを約0.1%未満、かつ好ましくは、約0.05%SDSに希釈することが一般に望ましい。したがって、希釈は約2〜3倍ないし約4倍である。もちろん、前述の通り、特定の洗剤のCMCは、バッファーの性質および濃度によって変化しうる。
【0056】
主にポリペプチド分離バッファーをそのバッファーにおける洗剤のCMC未満である点に希釈することに関して述べられているが、本明細書に記載された分離後処理法がより広範囲に適用可能であることが理解されるであろう。具体的には、かかる方法は、一連の分析法ステップの連続的操作が、直接先行ステップまたは操作から異なる環境を必要とし、その環境はその後の操作のために、試薬、バッファー、または希釈剤の添加によって十分に変更されうるさまざまな分析操作において使用されうる。上述した方法は、ポリペプチドの分離のために最適化される環境が最適化された検出環境と最適に適合性ではありえない例を示す。したがって、本発明の本態様の最も広い理解によれば、「希釈剤という語は、添加される要素、例えば、それが導入される環境を変更する流体、バッファー剤等を指す。この意味での環境の変更は、環境の物理的特性、例えば、洗剤ミセルの存在の変更、溶液の粘度の削減を含むが、化学的環境の変更、例えば、バッファーを滴定して溶液のpHの変更をもたらし、例えば、pH感受性色素または他の標識種の操作可能な環境をもたらし、溶液の塩濃度を変更し、疎水性/親水性の変化に影響を及ぼし、または溶液内のイオン相互作用に影響を及ぼすことをも含む。
【0057】
同様に、標識種は、かかる標識種が以前の操作に影響を及ぼしうる初期操作後に添加されうる。かかる標識の一例が、例えば、特異的タンパク質に対する標識抗体の添加を含み、それによってシステムがチップベースのウェスタンブロット法システムとして機能することを可能にする。具体的には、タンパク質分離後、標識抗体が検出直前に分離タンパク質に添加され、認識エピトープを有するタンパク質と優先的に結び付ける。次いで、タンパク質はそのサイズ、その選択抗体によって認識される能力に基づき検出される。
【0058】
F.全体的システム
本発明のデバイス試薬は通常、マイクロ流体デバイス内で実行され、かつ本明細書に記載された試薬を利用する操作および分析を制御し、監視する全体的分析システムと併せて使用される。具体的には、全体的システムは通常、マイクロ流体デバイスまたはキャピラリーシステムに加えて、マイクロ流体デバイスまたはキャピラリー要素に操作可能な状態で連結された電気制御器、およびデバイスの分離域またはチャンネルの感覚伝達内に配置された検出器を含む。
【0059】
本発明によるシステムの例が図2に示されている。図示されているように、システム200はマイクロ流体デバイス100を含み、これはその内部に配置されたチャンネルネットワークを含んで成り、ここでチャンネルネットワークは複数の槽または試料/試薬ウェルを結合する。電気制御器202が、マイクロ流体デバイス100の槽における流体と接触される複数の電極204−234によりマイクロ流体デバイス100に操作可能な状態で連結されている。電気制御器202はデバイスの分離チャンネルの長さにわたって適切な電場を加え、試料材料の電気泳動、および本発明のタンパク質およびポリペプチドの結果として起こる分離を推進する。例えば、図示されているように、交差チャンネルネットワークを含むマイクロ流体デバイスの場合、電気制御器は、さまざまなチャンネルを通じて異なる材料を移動させ、かつそれらの材料を他のチャンネルへ注入するための電流もかける。デバイスのチャンネルを通じて選択可能な電流レベルを提供し、材料の移動を制御する電気制御器が、本発明における使用に特に好ましい。かかる「電流制御器」の例は、本明細書で参照することにより援用される、米国特許第5,800,690号明細書に詳しく記載されている。
【0060】
全体的システム200は、マイクロ流体デバイス100におけるチャンネルネットワークの分離チャンネル部と感覚伝達で配置されている検出器204をも含む。本明細書で使用される「感覚伝達で」という語句は、マイクロ流体デバイス内のチャンネルから特定のシグナルを受取るように位置している検出器を指す。例えば、光学シグナル、例えば、色素体、蛍光、または化学発光シグナルを生成する操作を実行するために使用されるマイクロ流体デバイスの場合、検出器はデバイスの半透明部に隣接して位置し、検出器内の光学要素がマイクロ流体デバイスの適切な部分からこれらの光学シグナルを受取るようになっている。他方、電気化学検出器は通常、感覚伝達であるために、電気化学センサ、例えば、そのチャンネル内で生成され、または別の方法で存在する電気化学シグナルを感知できるために、デバイスの適切なチャンネル内に配置された電極を含む。同様に、温度を感知するための検出器が、温度またはそこの相対変化を感知するために、デバイスのチャンネルと熱連通する。好ましい態様において、光学検出器本発明のシステムにおいて使用され、より好ましくは、蛍光シグナルの検出のために構成されている光学検出器である。かかるものとして、これら検出器は通常、分離チャンネルで活性化光を方向づけるための光供給源および光学トレインのほか、分離チャンネルから放出される蛍光の量を収集、伝達、および定量するための光学トレインおよび光学センサを含む。一般に、単一の光学トレインは、それらを区別する2種類のエネルギーの波長の差に依存する、活性化光と蛍光発光の伝達に利用される。一般に、本発明の光学検出器へ組込まれた光学センサは、光電子増倍管(PMT)光ダイオードなど、当技術分野で周知であるこれらから選択される。特に好ましい態様において、アギレント(Agilent)2100バイオアナライザが制御器/検出器システムとして使用される(アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)。本明細書に記載されたシステムは通常、取扱説明書または前もってプログラムされた操作パラメータに従って電気制御器の操作を指示するための電気制御器に操作可能な状態で連結されやプロセッサまたはコンピュータ206をも含む。コンピュータも通常、検出器がマイクロ流体デバイスから受取るデータを受取り、かつ分析するための検出器に操作可能な状態で連結されている。したがって、コンピュータは通常、電場を加えて潜在的に複数の試料の各々を分離チャンネルへ注入する電気制御器の操作を指示するための適切なプログラミングを含む。通常、コンピュータはまた、検出器からのデータを受取り、検出器によって受取られたシグナルを記録すために検出器に操作可能な状態で連結されている。プロセッサまたはコンピュータ206は、さまざまな異なる種類のプロセッサでありうる。通常、コンピュータ/プロセッサはIBM PCまたはPC互換性コンピュータであり、例えば、インテル(Intel)またはアドバンスド・マイクロデバイス(Advanced Microdevices)のマイクロプロセッサ、例えば、Pentium(商標)またはK6(商標)、またはMacIntosh(商標)、Imac(商標)もしくは互換性コンピュータを組込んでいる。
【0061】
本発明のポリペプチド特性決定法の場合、コンピュータまたはプロセッサは通常、シグナルデータを検出器から受取り、かつ検出器を通過する分離タンパク質に対応するシグナルピークを確認するようにプログラムされている。通常、1つもしくはそれ以上の内部標準タンパク質が、試料材料とともに動かされうる。かかる場合、コンピュータは通常、例えば、最初または最後のいずれかに全体的分離におけるその位置によって、標準を確認し、かつ標準からの補外または補間によって試料中の未知のポリペプチドの分子量を測定するようにプログラムされている。本発明による使用に特に有用なコンピュータソフトウェアプログラムは、分離法で使用するために、1997年12月30日に出願され、本明細書で参照することにより援用される、仮特許出願第60/068,980号明細書に記載されている。アジレント(Agilent)2100バイオアナライザで実行される実施形態の場合、コンピュータは通常、核酸分析用にこれらシステムを実行するために提供されたものと同様のソフトウェアプログラミングを含む。
【0062】
G.キット
本発明は、記載された方法の実行において使用するためのキットをも提供する。一般に、かかるキットは、本明細書に記載されたキャピラリーまたはマイクロ流体デバイスを含む。キットは通常、分離バッファーのさまざまな成分、例えば、非架橋ポリマーふるいマトリクス、洗剤、バッファー剤、および親油性色素をも含む。これらの成分は、前処理されるかあるいはされないあらかじめ形成されたバッファー成分の別個の量としてキットに存在し、または試薬のすべての単一の組合せまで、かつこれを含む結合されたあらかじめ形成された試薬の量として提供され、それによって使用者は簡単に分離バッファーを直接、マイクロ流体デバイスへ配置することができる。バッファー成分に加えて、本発明によるキットは場合により、分子量標準など他の有用な試薬のほか、デバイスおよびシステムとともに使用するための手段、例えば、バッファー、試料、または他の試薬をマイクロ流体デバイスのチャンネルへの導入を補助する器具をも含む。
【0063】
キット形態において、試薬、デバイス、およびそれの使用を詳述する説明書が通常、単一の包装単位、例えば、箱または袋で提供され、いっしょに販売されている。キットとしての試薬およびデバイスの提供は、使用準備済みの高価でないシステムを使用者に提供し、ここで試薬はより使いやすい量で提供され、すべて所望の用途、例えば、高分子量対低分子量タンパク質の分離のために最適に形成されている。
【0064】
H.自動タンパク質分析
図1および7の前述したマイクロ流体デバイスにおいて、特性決定されるタンパク質試料はマイクロ流体デバイス上の槽へ配置される必要がある。本発明の範囲は、マイクロ流体デバイス外の供給源からタンパク質試料を得ることが可能であるマイクロ流体デバイスをも包含する。これはサンプリング分注器またはキャピラリーをデバイス内のチャンネルネットワークからマルチウェルプレートにおけるウェルなど外部試料供給源へ延長することによって達成されうる。外部供給源における試料は、圧力または動電力によって、キャピラリー、または「シッパー(sipper)」ヘ吸込まれうる。マルチウェルプレートは、さまざまな市販の流体処理装置と適合性である、96、384、または1536ウェルフォーマットなど標準フォーマットの形で提供される。
【0065】
図9は、シッパー903、チャンネルネットワーク905、および複数の槽906を含んで成るマイクロ流体デバイス902を含んで成るシステム900を概略的に示す。シッパー903はデバイス902に取付けられており、キャピラリー(図示せず)内のチャンネルがチャンネルネットワーク905と流体連通するようになっている。外部試料供給源の機能を果たす複数のウェルを含んで成るマルチウェルプレート908は、キャピラリー要素903によって利用しやすいように提供されている。このマルチウェルプレート908は、ウェルに配置されたタンパク質試料を有する標準フォーマットプレートでありうる。多くの実施形態において、標準を含有する第2のマルチウェルプレート913を使用することが望ましい場合もある。例えば、マルチウェルプレート913におけるウェルは、既知のサイズのポリペプチドを含んで成るタンパク質ラダーを含有しうる。通常、デバイス902およびマルチウェルプレート908、913の1つもしくはすべては、これらの成分の1つもしくすべてをその他に対して移動させるx−y−z移動ステージ909に連結されている。通常、x−y−z移動ステージ909は、例えば、ロボット位置決めシステム(図示せず)によって自動制御されている。かかるロボットx−y−z移動システムは市販されている。
【0066】
制御器917、コンピュータ918、および検出器919など図9におけるシステムの他の成分は、図2に示されているシステム成分に類似している。制御器917は、マイクロ流体デバイス902内の流体の移動を制御する。図9の実施形態において、制御器はマイクロ流体デバイス902上の槽へ圧力ルーメン923を通じて陰圧をかける。陰圧をかけることにより流体がマルチウェルプレート908における試料供給源の1つから903を通じてチャンネルネットワーク905へ取込まれる。さまざまな実施形態において、制御器は、他の陽圧もしくは陰圧、または電場、または圧力および電場の組合せの適用を指図し、チャンネルネットワーク905を通じた流体の移動を達成する。本発明によるシステムは、制御機917および検出器919と連動するプロセッサまたはコンピュータ918を含む。図9の実施形態におけるコンピュータは、x−y−z移動ステージをも指図する。また最後に、検出器919もチャンネルネットワーク905の1つもしくはそれ以上のチャンネルの感覚伝達内に提供されている。検出器919からのデータが、収集され、保存され、かつ/またはコンピュータまたはプロセッサ918によって分析される。
【0067】
図10は、図9の実施形態において使用されうるマイクロ流体デバイス902の例を示す。外部供給源からのタンパク質試料の導入によって必要とされる追加の方法ステップを除き、図10のマイクロ流体デバイスにおいて実施されるタンパク質分析は図7におけるマイクロ流体デバイスにおいて実施される分析とほぼ同一である。キャピラリーを通じて外部供給源から取出されたタンパク質試料は交差点940でマイクロ流体デバイス902のチャンネルネットワークに入る。図10の実施形態においては、外部供給源からの流体が槽915にかけられた削減(すなわち大気圧以下)圧力をかけることによってシッパーヘ取込まれる。槽910は大気に対して開放したままにされ、槽915にかけられた減圧が槽910からチャンネル912への流れをも誘発するようになっている。槽910における流体は、それがシッパー/チャンネル交差点940でマイクロ流体デバイスに入ると試料と混合する。槽910における流体910は水などの希釈剤含んで成り、試料の濃度が加減されうる。槽910における流体は、ポリペプチド標準(すなわち、マーカー)などの成分、または塩もしくはバッファー剤などの試薬をも含有しうる。次いで、槽910からの試料および流体の混合物は交差点942およびチャンネル914と916を通じて廃槽915に向かって流れる。チャンネル914を通じて流れる混合物の少なくとも一部は、槽925と920との間に電場をかけることによって注入交差点944を通じて流れるように再方向付けられうる。電場の規模および方向は、混合物を交差点944を通じてチャンネル921へ槽920に向けて方向づける界面道電流を生じるように構成されている。
【0068】
分析における次のステップは、交差点944を通じて流れる槽910からの試料と流体の混合を分離チャンネル904へ注入することであり、ここで試料におけるポリペプチドはサイズによって分離される。本発明のさまざまな実施形態では異なる注入方法が使用されうる。例えば、図1および7の実施形態に関して前述されているように、ピンチング電流を注入交差点944でかけることができ、タンパク質試料を含有する混合物が試料注入が起こる前に分離チャンネル904へ拡散することがないようになっている。流れをピンチングし、ピンチングされた流れを注入する方法は、先に引用した国際公開第96/04547号パンフレットに開示されている。ピンチングされた流れを図10のマイクロ流体デバイスにおいていかに使用されるかを説明するために、図11Aは図10におけるマイクロ流体デバイス902の交差点944の拡大図を示す。チャンネル914からチャンネル921へ交差点944を通じて流れる混合物(陰影部)を含有する試料は、分離チャンネル904の両側から交差点904に入る流れ(矢印によって表示)をピンチングすることによって制約されている。ピンチング流の両方は分離バッファーを含んで成りうる。混合物を分離チャンネル904へ注入するために、電場が分離チャンネル904にわたってかけられ、注入交差点944における混合物が分離チャンネル904へ廃槽965に向けて流れるようになっている。注入中、電圧を槽920および925にかけることができ、これはチャンネル914および921における材料を注入交差点944から引離し、分離チャンネル904へのそのチャンネルにおける流体の漏出を阻止する。混合物が分離チャンネル904における分離バッファーを通じて移動すると、混合物内の試料のポリペプチドは電気泳動的に分離される。
【0069】
ピンチングされた注入スキームを使用する実施形態は、試料中のタンパク質の濃度が比較的高い場合に限り使用されうる。電気泳動分離かけられた試料中のタンパク質の量を増加させることによって分析の感度を増加しうる別の注入スキームがある。試料中のタンパク質の量は、混合物を含有する大量の試料を分離チャンネル904へ注入することによって増加されうる。図11Bは、かかる注入スキームが図10のマイクロ流体デバイス902においていかに使用されうるかを示す。タンパク質試料を含有する混合物はチャンネル914からチャンネル921へ交差点944を通じて流れるが、分離チャンネルの長さにわたる電場は、注入交差点944を通過する混合物の一部が注入が起こる前に分離チャンネル904において蓄積するように調節される。この蓄積は、分離チャンネル904へ拡散および/または流れる混合物に由来しうる。多くの実施形態において、交差点944上を流れる混合物の一部は、分離チャンネル904の長さにわたって電圧がかけられない場合に分離チャンネル904に蓄積する。言い換えれば、一部の実施形態において混合物を含有する試料は、槽960および965における電極が混合物を含有する試料がチャンネル914からチャンネル921へ交差点944上を流れる間に浮かせられる場合は、注入前に分離チャンネル904に蓄積する。しかし、多くの実施形態において、槽960および965における電極にかけられる電圧を調節し、試料が注入前に分離チャンネル904へ流れるようになることが望ましい場合がある。例えば、図11Bの実施形態において、電圧が槽960および965にかけられ、混合物を含有する試料の分離チャンネル904への流れをもたらす。分離チャンネル904への流れの方向は矢印によって示されているが、陰影は混合物がいかにして分離チャンネル904において分布しうるかを概略的に示す。当業者によって認識されるように、分離チャンネルに蓄積する混合物を含有する試料の量は、分離チャンネルへの流れの規模および持続時間を変化させることによって制御されうる。混合物を含有する所望量の試料が分離チャンネル904において蓄積すると、電場が分離チャンネル904にわたってかけられ、分離チャンネル904における混合物が廃槽965へ向けて流れる。ピンチングされた注入を使用する実施形態におけるのと同様に、チャンネル914および921における材料は、注入中および注入後に注入交差点944から引離されうる。
【0070】
前述の実施形態におけるように、分離チャンネル904へ注入された混合物を含有する試料中のポリペプチドは電気泳動的に分離される。分離は、バッファー槽960および廃槽965に浸漬した電極上に電圧をかけることによって分離チャンネル904にわたって電場を引き起こすことによって実行される。バッファー槽960は、前述の実施形態におけるように、通常、ポリマー、バッファー剤、洗剤、および親油性色素を含んで成る分離バッファーを含有する。電場は、それらが分離チャンネル904におけるポリマーにより電気泳動すると、試料からのポリペプチドサイズによって分離させる。図10におけるデバイス902は、前述の分離後処理方法を行うように構成されている。言い換えれば、図7の実施形態のように、図10の実施形態は、分離バッファーが検出領域970に達する前にCMC未満の試料成分を含有する分離バッファーを希釈するように構成されている。希釈は希釈剤を希釈槽930および934から希釈チャンネル930aおよび934aを通じて分離チャンネル904へ流すことによって起こる。希釈剤は通常、分離バッファーのポリマーおよびバッファー成分を含んで成る。さまざまな電気泳動的に分離されたポリペプチドによって生成される蛍光ピークは、前述の方法によって検出領域970で検出される。
【0071】
外部供給源から試料を得る能力は、図10におけるデバイスなどマイクロ流体デバイスに、自動工程の一環として大量のタンパク質試料を分析する能力を与える。シッパーを有するマイクロ流体デバイスがマルチプレートから試料を自動的に得ることを可能にする市販のシステムが利用可能である。本システム、AMS90SE電気泳動システムは、キャリパー・ライフ・サイエンス社(Caliper Life Sciences,Inc)(Mountain View California)によって製造、販売されている。しかし、マイクロ流体デバイスが多数のタンパク質試料を処理するために使用されると、チップの性能はいくつかの試料を処理した後に分解もしくはドリフトしうる。例えば、同じタンパク質試料の2つの分析における蛍光ピーク(例えば、図8Dにおけるピークと同様)の溶出時間および/または領域は、12以上の他の試料がその2つの分析間に同じデバイスで分析された場合は異なる場合がある。溶出時間におけるかかる変化は、ポリペプチドを同定する分析の能力を阻害するが、ピーク領域の変化はタンパク質濃度の量的測定値を提供する分析の能力を阻害する。多数の試料を処理する際に生じる他の問題は、試料の前処理条件の均一性である。言い換えれば、マイクロ流体デバイスで実行されたタンパク質分析が十分に堅牢であり、マイクロ流体デバイスがさまざまな異なる塩、バッファー、および洗剤濃度でタンパク質試料を処理できるようになっていることが望ましい。
【0072】
図7の実施形態と併せて使用される同じ試薬を図9および10の実施形態における多数のタンパク質試料の処理のために使用することができる。具体的には、分離バッファーは、濃度10mM〜200mMのバッファー剤、濃度0.01%〜1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの洗剤、および0.1μM〜1mMの色素濃度を含んで成りうる。洗剤濃度をSDSでは約0.1%であるCMC未満にするために、分離バッファーは約1:2〜1:30の範囲で希釈される。しかし、試薬組成物のこれらの範囲内で、多数の試料の処理に十分に適したより安定し、かつ堅牢であるタンパク質分析を提供する部分的な範囲がある。例えば、本発明によるタンパク質分析の安定性は、分離バッファー中の洗剤濃度が0.05%〜0.4%、好ましくは、0.1%〜0.3%、かつ最も好ましくは、0.15%〜0.25%である場合は改善されうる。改善された方法の希釈比は、1:2〜1:10、好ましくは、1:3〜1:8の範囲、かつより好ましくは、1:4〜1:7の範囲である。
【0073】
タンパク質分析の堅牢性、すなわち、さまざまな塩および洗剤濃度の試料の量的測定値を提供する分析の能力は、分離チャンネルへ注射される混合物を含有する試料中の塩濃度を増加させることによって改善されうる。本発明の前述の実施形態において、試料は通常、前処理中のトリス−トリシンなどバッファー剤の使用により非ゼロ塩濃度を有した。その実施形態において、分離チャンネル(例えば、図7の704)へ注入される混合物を含有する試料中のバッファー濃度は通常、分離バッファーに対するバッファー濃度の前述の範囲内である。多くのバッファーに対する有効なイオン濃度はバッファー濃度未満でありうる。例えば、120mMトリシンおよび40mMトリスから調製されたトリス−トリシンバッファーを含んで成るバッファー溶液は、5mMを超す有効なイオン濃度を有するであろう。そのレベルを上回る混合物を有する試料のイオン濃度を増加することによりタンパク質分析の安定性が改善される。しかし、混合物を含有する試料中のイオン濃度を増加させることにより、分析の感度が減少する傾向もある。言い換えれば、イオン濃度を増加させることにより、低濃度の試料成分を検出する困難さを増加させる傾向がある。したがって、イオン濃度が増加される上限がある。例えば、混合物を含有する試料のイオン濃度は、10mM〜1M、好ましくは、50mM〜500mM、かつより好ましくは、100mM〜500mMに増加されうる。イオン濃度は、NaCl、トリスCl、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの塩を前処理中の試料に添加することによって、または分離チャンネルへ注入される前に試料に1つもしくはそれ以上の塩を含有する溶液を混合することによって、その範囲に至らせることができる。図10の実施形態において、混合物を含有する試料中の塩濃度は、前処理中の試料に塩を添加することによって、または交差点940でマイクロ流体デバイス902に入る試料と混合する槽910における溶液に塩を添加することによって増加されうる。一部の実施形態においては、PBSなどの多成分塩を使用することが好ましい場合がある。例えば、多数の試料の処理用に最適化された前述の部分的な範囲の試薬濃度における試薬濃度でタンパク質分析において、分析の堅牢性は、0.01倍〜10倍、好ましくは、0.05倍〜5倍、かつより好ましくは、0.05倍〜2倍の濃度範囲で試料にPBSを添加することによりさらに改善されうる。かかるタンパク質分析は、0M−1Mの塩濃度、および1%〜2%の洗剤濃度と、標準のSDS−PAGE分析の感度と同等もしくはそれ以上の感度で、タンパク質試料と適応させることができる。
【0074】
混合物を含有する分離バッファーおよび試料の調製の変更は、本発明によるタンパク質分析の安定性および堅牢性を改善しうるが、較正標準の適切な使用がさらに分析を改善しうる。本発明の実施形態における較正標準を使用する1つの簡単な方法は、未知のサイズのポリペプチドから成るタンパク質試料を分析する前に既知の分子量の複数のポリペプチドを含んで成るタンパク質ラダーを含んで成るタンパク質試料を分析することである。未知のサイズのポリペプチドの分子量は、ラダーにおける分子量標準の溶出時間とそのポリペプチドの溶出時間を比較することによって推定されるであろう。通常、この比較を分子量標準タンパク質ラダーに対する分子量と溶出時間との実験数学的相関を導き出し、次いでその相関を使用して溶出時間での分子量ベースの推定値を計算することが有利である。
【0075】
しかし、唯一の標準タンパク質ラダーの使用は、多数の試料の測定の経過にわたって起こりうるプロセスにおけるドリフトを補償することはない。言い換えれば、方法の結果をプロセスドリフトを補償するように定期的に再較正することが有利であろう。定期的再較正は、タンパク質試料の一連の分析内で既知の分子量のポリペプチドを含んで成る単一のタンパク質ラダーの反復分析を散在させることを含んで成りうる。例えば、図9のシステムにおいて、定期的な再較正は、マルチウェルプレート913の8つのウェルに同一の標準タンパク質ラダーを配置し、マルチウェルプレート908における8つの12試料列の各々の前および/または後の標準ラダーを測定することによって達成されうる。同じ標準ラダーがその列の12試料の前後で測定されると、ラダーにおけるポリペプチドの溶出時間の変化はプロセスドリフトを示す。数式を使用してこのプロセスドリフトを補正することができる。1つの実施形態において、相関はその試料の前後に測定された2つの標準ラダーの溶出時間/分子量相関を導き出すことによってタンパク質試料の分析に適用されうる。2つの標準ラダーの溶出時間プロファイルを比較することによってプロセスドリフトの数式を導き出すことができる。例えば、各標準ラダーの溶出時間/分子量相関の加重平均を使用して特定のタンパク質試料に使用される溶出時間/分子量相関を判定するために使用されうる。例えば、図9の実施形態において、12試料を含有する標準ラダーが各列の前後に測定された場合は、第2のラダー分析が第1のラダーの分析後に実行された第13の分析となるであろう。したがって、マルチウェルプレートの第1の試料に適用される相関は第1および第2のラダー相関の加重平均でありうるが、ここで第1のラダー相関は12/13の係数によって加重されるのに対して、第2のラダー相関は1/13の係数によって加重される。この列の第2の試料の分析において、重み係数は、第1および第2のラダーについてそれぞれ、11/13および2/13でありうる。この例示的な加重スキームは本質的に線形であり、2つの標準ラダー測定値のみに基づくが、線形または非線形関数を使用し、2つもしくはそれ以上の標準タンパク質ラダーの分析からの溶出時間/分子量データをいかに使用して、それらのラダー間で分析されるタンパク質試料の溶出時間/分子量相関を導き出しうるかを判定することができる。
【0076】
各タンパク質試料に1つもしくはそれ以上のマーカーを配置することによって、プロセスドリフトの別の補償を得ることができる。既知の分子量のポリペプチドであるこれらのマーカーは、既知の分子量の基準ピークを提供する。実際問題として、マーカーの分子量は、マーカーが識別されうるとともに、マーカーによって生成されるピークがいかなる試料ピークとも重複することがないように、試料におけるポリペプチドの分子量の範囲外であることが必要である。しばしば、試料中の潜在的な目的とするポリペプチドのすべてよりも高い分子量を有するマーカーを見出すことは困難である。したがって、目的とするポリペプチドのすべてよりも低い分子量の唯一のマーカーを使用することがしばしば望ましい。一部の実施形態において、非結合色素によって生成される蛍光ピークは単一の低マーカーとなりうる。例えば、アレクサ蛍光(Alexa Fluor)色素(モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes Inc.)、Eugene(オレゴン州(OR))によって生成されるピークは、大部分の分析の目的とする分子範囲未満の分子量に対応する時間で溶出する。アレクサ蛍光マーカーが分析される一連のタンパク質試料における各試料に添加される場合は、アレクサ蛍光ピークは、試料成分の溶出時間が比較されうる標準を提供しうる。一部の実施形態においては、分離チャンネルへ注入される混合物を含有するアレクサ蛍光色素試料の濃度は、0.1μM〜10μM、好ましくは、0.1μM〜5μM、かつより好ましくは、0.1μM〜10μMである。
【0077】
図12A〜12Cは、低マーカーの使用と組合せた標準タンパク質ラダーを使用する定期的再較正の使用により、いかにしてプロセスドリフトが補正されうるかを示す。図12Aは、14のタンパク質試料の分析による生データを示す。バンドの各列は分析によるポリペプチドピークを表すが、ここでピーク溶出時間は底から頂点まで増加する。分析の順序は左から右である。言い換えれば、第1の分析からのデータは最も左の列にあるが、第14および最後の分析からのデータは最も右の列にある。第1および第14の分析は、ボックス内に配置されているそれらのデータによって示される同一のタンパク質ラダーで実行された。標準ラダー間で分析された12の試料は、ラダーにおけるポリペプチドのさまざまな部分集合を含んで成る。すべての分析からのデータにおいて、最も底の(すなわち、第1の溶出)ピークは各試料内に配置されたアレクサマーカーに対応する。図12Aは、14の測定にわたって、ピークドリフトの溶出時間を示す。図12Bは、低マーカー溶出時間を使用し、図12Aにおけるデータを補正する効果を示す。図12Bにおける第2〜第14のランについて、各ピークの溶出時間には、第1のランにおけるアレクサピークの溶出時間に対するそのランにおけるアレクサピークの溶出時間の比を掛けた。この比を掛けることによって生じる補正溶出時間は、第1のランにおけるアレクサピークと同じ溶出時間を有する第2〜第14のランの各々におけるアレクサピークをもたらす。したがって、図12Bにおける各ランに底ピークは同じ補正溶出時間を有する。他のポリペプチドのピークが依然として溶出時間の関数と思われるプロセスドリフトの成分を反映する。このドリフトを補正するために、溶出時間の関数としてのプロセスドリフトの線形関数が、図12Bにおける2つのラダー測定値(第1および第14の分析)における対応するピークの溶出時間を比較することによって生成された。図12Bの結果に対するこの線形関数の適用により、図12Cにおける二重に補正されたデータが生じた。したがって、標準ラダーによる定期的な再較正と結合された各ランにおける単一マーカーの使用は、プロセスドリフトの効果を軽減するために使用されうる。
【0078】
標準およびマーカーは、タンパク質濃度の量的推計の精度を増加させるためにも使用されうる。本発明による分析において、特定の分子量のポリペプチドに対応する蛍光ピークの領域はしばしばそのポリペプチドの濃度に相関されうる。同一濃度のアレクサ蛍光色素がマイクロ流体デバイスで行われる一連のタンパク質分析へ導入されると、アレクサ蛍光ピーク領域の変化はタンパク質分析におけるプロセスドリフトを示す。ドリフトを補償するために、各分析におけるピーク領域は標準化され、各分析におけるアレクサ蛍光ピークは実質的に同じでありうる。この標準化手順は、一連のタンパク質分析によって生成される量的結果の一貫性を改善することが可能である。他の実施形態において、既知の分子量および既知の濃度のポリペプチドを含んで成るタンパク質ラダーによって生成されるピーク領域を使用し、プロセスドリフトをモニタリングすることができる。異なる分子量のポリペプチドのピーク領域を検査することによって、分子量または溶出時間の関数であるピーク領域におけるいかなる変化も補償することができる。溶出時間に対するプロセスドリフトの効果を補正するために使用されるものと類似の数学的方法を使用し、ピーク領域に対するプロセスドリフトの効果を補正することもできる。
【0079】
本発明は、本発明の範囲を限定することなく本発明の特定の態様を明らかにする以下の実施例を参照してさらに説明される。
【実施例】
【0080】
すべての実験を図1に示されている単一の分離チャンネルおよびチャンネル配置を有する12試料マイクロ流体デバイスにおいて実行した。制御および検出を単一分離チャンネルに沿って配置された単一点レーザー蛍光検出器を有する、多チャンネル、12電極電気制御/検出器を使用して実行した。
【0081】
実施例1: サブCMC分離バッファーを使用する分離
分離チャンネルから受取った蛍光データをコンピュータ(インテル・ペンティアム(Intel Pentium)(登録商標)マイクロプロセッサによるPC)によって記録した。データは、カリパー・テクノロジー社(Caliper Technologies Corp.)独自仕様のソフトウェアによって生成された蛍光vs.時間の線形プロット、およびエミュレートされたゲルフォーマットで表示された。
【0082】
トリス−トリシンバッファー0.5M溶液を0.5M濃度で脱イオン化水中にトリシンを溶解し、1MトリスでpHを7.5に調節することによって調製した。次いで、結果として生じるバッファーを0.22μm注射器フィルタを通じてろ過した。ふるいまたは分離バッファーを0.9%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、および10μMSyto60色素(モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes Inc.)、Eugene(オレゴン州(OR))を有する12.5mMトリス−トリシンバッファー中3%ポリジメチルアクリルアミド−co−アクリル酸調製した。次いで、分離バッファーをコスター・スピン(Costar Spin)−X(商標)0.22μmセルロースアセテート遠心フィルタを通じてろ過した。
【0083】
デバイスの槽へ配置する前に試料を変性バッファーで調製した。変性バッファーは、250mMトリス−トリシンバッファー中0.75%SDS(w/v)および1%2−メルカプトエタノール(v/v)(BME)であった。試料を0.5mlマイクロフュージ管中で変性バッファーと1:1(例えば、試料20μlおよびバッファー20μl)で混合し、100℃に10分間加熱した。次いで、加熱試料を遠心分離し、ボルテックスした。試料をマイクロ流体デバイスのウェルへローディングする前に、脱イオン化水で1:10、例えば、試料/バッファー1μlおよび水9μlで希釈した。したがって、調製試料は0.0375%SDSの洗剤濃度を有した。
【0084】
マイクロ流体デバイスを調製するために、分離バッファー7.5μlをきれいな乾燥したデバイスのウェル166へピペットで取り、注射器で加圧して分離バッファーをデバイスのチャンネルのすべてへ押し進めた。次いで、分離バッファー7.5μlをウェル164、168、および170の各々へピペットで取った。次いで、希釈試料0.5μlをウェル140−162の各々に別々にピペットで取った。図4に示されている実施例において、既知の分子量の標準を使用した。標準は、オボアルブミン(45kD)、ウシ炭酸脱水酵素(29kD)、ダイズトリプシン阻害剤(21.5kD)、およびα−ラクトアルブミン(14.4kD)を含んだ。
【0085】
図1に関して、ウェル142および146はバッファーのみを含み、ブランクとして使用された。4つのタンパク質標準の各々の100μg/mlを含有する標準タンパク質溶液をウェル150および154の各々へ配置したが、500μg/mlで同じ4つのタンパク質の溶液をウェル158および162へ配置した。1000μg/mlでちょうど炭酸脱水酵素標準を含有する溶液をウェル140および144へ配置した。100μg/mlで炭酸脱水酵素およびトリプシン阻害剤を含有する溶液をウェル148および152へ配置したが、同じタンパク質であるが、500μg/mlで含有する溶液をウェル156および160へ配置した。
【0086】
各試料を別々に主要分離チャンネル104へ注入し、分離成分を注入からの保持時間の関数として検出した。各ランのクロマトグラムを標準クマシー染色SDS−PAGEゲルを溶出することを意図した暗帯の形で表示した。エミュレートされたゲルの各レーンは、別々の試料のクロマトグラムを示し、暗帯が背景にわたる蛍光の増加を示す。具体的には、オボアルブミン(45kD)、ウシ炭酸脱水酵素(29kD)、ダイズトリプシン阻害剤(21.5kD)、およびα−ラクトアルブミン(14.4kD)の混合物を調製した。2つの異なる濃度の4つのタンパク質の混合物を100μg/ml(レーンA2、ウェル154)および500μg/ml(レーンA3、ウェル162)でランした。これら標準の各々の別々の混合物も調製し、以下の通りランした。すなわち
レーンB1(ウェル144):炭酸脱水酵素(1mg/ml)
レーンB2(ウェル152):トリプシン阻害剤および炭酸脱水酵素(両方とも100/μg/ml)
レーンB3(ウェル160):レーンA2と同じ(両方とも500μg/ml)
レーンC2(ウェル142):レーンA2と同じ
レーンC3(ウェル150):レーンA3と同じ
レーンD1−D3(ウェル140−156):B1−B3と同じ
図5は、上述と同じようにランした一連の標準の分子量対移動時間の対数のプロットを示す。図示されているように、記載された分離法は、正確な、例えば線形データをもたらし、これは図示されているプロットに従い、一連の標準と未知のタンパク質の移動時間を相関させることによって、分子量が不明のタンパク質の特性決定を可能にする。図4および5からわかるように、タンパク質および他のポリペプチドを特性決定するためにきわめて再現性の正確かつ迅速な方法が提供される。
【0087】
Cy−5色素マーカーも含む同じ一連の標準もランし、洗剤色素フロントの共溶出を示した。このランからのクロマトグラムが図6に示されている。図示されているように、洗剤−色素ピーク(星印で表示)は65kDの範囲で分子量を有するタンパク質と実質的に同じ時間で溶出する。試料前処理バッファーにおける洗剤濃度が当技術分野で既述されたレベル、例えば、2%である場合には、指示ピークははるかに大きく、かつそのピークは実質的にこの分子量範囲におけるタンパク質の同定および定量を妨げる。
【0088】
実施例2:分離後/検出前希釈を使用するポリペプチドの分離および検出
図7に示されているマイクロ流体デバイスを上述したように分離バッファーで充填した。分離チャンネル704は希釈チャンネル720aおよび722aによって、注入点から12cm下流、および検出点732の0.1cm上流の点で交差される。分離バッファーは、30mMトリス−トリシンバッファー、および0.13%SDS中4.2%非架橋ポリジメチルアクリルアミド/co−アクリル酸を含んでいた。ポリマーまたはSDSを有さない30mMトリス−トリシンを含む希釈バッファーを槽720および722ヘ配置した。バッファー剤を分離チャンネルへ電気動力学的に、例えば、電気泳動的に流した。
【0089】
ポリペプチド標準溶液(バイオ・ラッド社(Bio−Rad,Inc.)の10−205kDタンパク質標準)を試料槽、例えば槽706へ配置し、ロードし、先に本明細書で援用された米国特許第5,976,336号明細書に記載された同じ方法を使用して分離チャンネルへ注入した。
【0090】
図8A−8Dは、分離後処理なし、および分離後希釈とともに実行される標準分離のための2100バイオアナライザ(Bioanalyzer)(アジレント・テクノロジー社(Agilent Technologies,Inc.))における検出点732で検出された蛍光対時間のプロットを示す。具体的には、図8AおよびBは、ブランクラン(試料中にポリペプチドなし)および分離後希釈機能性を有さないマイクロ流体デバイスにおけるタンパク質試料ランを示す。このデバイスは、図1に示されているデバイスチャンネル配置と機能的に同様であった。図示されているように、ブランクランおよびポリペプチドランからのデータには、実質的な背景、および大きな洗剤色素フロントの後、ベースラインディボット、および以下の色素こぶを含む他のベースライン問題が含まれた。これら同じベースライン偏差は試料分離ランにおいて見られたが、これは分離データの認定および定量における実質的な障害をもたらす。図8Cおよび8Dは、検出点の上流ではなく、分離の大半の下流の分離チャンネルへトリス−トリシンバッファーが導入された分離後希釈ステップを使用する同じブランクランおよびポリペプチド試料分析を示す。図示されているように、分離後希釈ステップは、非希釈試料にわたって検出試料成分に対する全体的な背景蛍光を実質的に削減すると同時に、例えば、図8Aおよび8Bに示されているように、ミセル色素結合と関係があるベースラインのこぶおよびくぼみをも削減する。
【0091】
他に特に言及されていない限り、本明細書に規定されたすべての濃度値は、その成分を変化し、または混合物もしくは溶液に混合されると1つもしくはそれ以上の異なる種へその成分を転換するその成分のいかなる変換、解離、反応とも無関係に、混合物もしくは溶液にその成分が添加された場合の所定成分の濃度を指す。
【0092】
すべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照することにより援用されることが示されているのと同じ程度に本明細書で参照することにより援用される。本発明は明解さと理解のための説明図および実施例によって詳しく記載されているが、一部の変更および修正が添付の特許請求の範囲内で実施されうることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明と併せて使用するためのマイクロ流体デバイスを示す図である。
【図2】本発明によるポリペプチドの特性決定において使用するための全体的なシステムを示す図である。
【図3】所定バッファー中の洗剤の臨界ミセル濃度を測定するための蛍光強度対洗剤濃度のプロットを示す図である。
【図4】本発明の方法を使用するマイクロ流体デバイスにおいて実行されるタンパク質分離のクロマトグラムを示す図である。クロマトグラムはエミュレートされたゲルとして表示されており、12の別々の分離を示し、各々がエミュレートされたゲルの別々のレーンとして表示されている。
【図5】図4に示されているように分離された標準タンパク質の分子量の対数対移動時間のプロットを示す図である。
【図6】洗剤−色素フロントピークを示す分子量標準のクロマトグラムを示す図である。
【図7】本明細書に記載された方法による分離後処理を実行するためのマイクロ流体デバイスを示す概略図である。
【図8A】分離後希釈の効果を示す分離データのプロットを示す図である。
【図8B】分離後希釈の効果を示す分離データのプロットを示す図である。
【図8C】分離後希釈の効果を示す分離データのプロットを示す図である。
【図8D】分離後希釈の効果を示す分離データのプロットを示す図である。
【図9】本発明によるポリペプチドを特性決定するためのシステムを示す概略図である。
【図10】本明細書に記載された方法による分離後処理を実行するための外部キャピラリーに接続されたマイクロ流体デバイスを示す概略図である。
【図11】AおよびBは本発明によるタンパク質分析を実行するためのマイクロ流体デバイスの交差内のフローパターンを示す概略図である。
【図12】A〜Cはそれぞれ、タンパク質ラダーの遂次解析で生じたデータ、第1の方法を使用して補正された同じデータ、および第2の方法を使用して補正された同じデータを示す概略図である。
【背景技術】
【0001】
生体化合物の特性決定は、生命、生命を維持する過程、およびその過程に影響を及ぼす事象や要素を理解しようとする努力の固有の必然性である。通常、生命過程の理解、およびその制御の取組みでは、最初に生命の基本的な構築物、すなわち生命のない始原の軟泥にすぎないものから生体を分化する高分子化合物および複合体が焦点となる。生命過程の理解および制御において特に興味深いのは、核酸およびそれらがコード化するタンパク質である。
【0002】
タンパク質の場合、多くの特性決定法が大部分は数十年間依然として変化していない。例えば、現在のタンパク質特性決定法は通常、少なくとも部分的に、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはSDS−PAGEに依存し、それらの相対分子量によってタンパク質を特性決定する。これらの方法では架橋ポリアクリルアミドのスラブまたはシートが使用される。分離され、特性決定されるタンパク質は洗剤バッファー(SDS)と混合され、通常、ウェルにおけるスラブの一端で配置される。電場がスラブ上に加えられ、ゲルを通じてタンパク質を含有する高電荷洗剤ミセルを取出す。より大きいタンパク質は、より小さいタンパク質よりもゆっくりスラブゲルを通じて移動し、それによってより大きいミセルから析出する。分離後、ゲルは、ゲル中の異なるタンパク質に結合する染色液、通常「クマシーブルー」または銀錯化剤と接触される。クマシーブルー染色ゲルの場合、スラブゲルを染色し、過剰の染色液を除去しなければならない。これらの工程は結果として、サイズで分離されるスラブゲル中の異なるタンパク質のラダーもたらす。銀染色法は同様に時間がかかり、かつ一般に質的であるが、非量的に染色されたゲルをもたらす。これらの工程の改良は、より迅速に流れるより小さなゲルを産生し、これは「使用準備済み(ready−to−use)」で購入されるゲルであり、染色工程を交替させる。しかし、基本的なSDS−PAGE工程は、タンパク質特性決定の方法として大部分は変化していない。
【0003】
タンパク質特性決定に対して他の領域でなされた進歩を加える多くの試みが行われている。例えば、核酸の分析において有効であることを証明したキャピラリー電気泳動法が、タンパク質の特性決定において試みられている。これらの方法は、タンパク質の分離において有能であることを証明したが、利用可能な標識化学における差異のほか、タンパク質と核酸との間の基礎構造および化学的差異は、タンパク質特性決定におけるCE法の広範囲な使用に対する実質的な障壁を引き起こした。具体的には、キャピラリーを通じて移動する分離タンパク質の検出は通常、比較的複雑な化学を使用する、タンパク質のすべてへの標識基の共有結合を必要とした。さらに、サイズベースの分離を確実にするタンパク質分離におけるSDSの存在は、キャピラリーシステム内の標識および分離における障害をさらに引き起こす。
【0004】
処理量、感度および低スペース、時間および試薬要件を増強した、タンパク質およびポリペプチドを特性決定するための方法、デバイス、システム、およびキットを提供することが望ましいであろう。本発明は、これらおよびさまざまな他の必要を満たす。
【特許文献1】米国特許第5,616,502号
【特許文献2】米国特許第5,264,101号
【特許文献3】米国特許第5,552,028号
【特許文献4】米国特許第5,567,292号
【特許文献5】米国特許第5,948,227号
【非特許文献1】ヘレニウス(Helenius)ら、Methods in Enzymol.56(63):734−749(1979年)
【非特許文献2】ルイ(Rui)ら、Anal.Biochem.152:250−255(1986年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様においては、本発明は、流体第1試料材料で分析操作を実行する方法を提供する。この方法は通常、少なくとも第1のチャンネルが配置された本体を有するマイクロ流体デバイスを提供する。第1のチャンネルは、第1および第2のチャンネルセグメントを含んで成り、ここで第1のチャンネルセグメントは、第1の操作の実行と適合性である第1の流体環境を含んで成る。第1の試料材料は、第1のチャンネルセグメントを通じて流れ、第1の操作を実行する。次いで、これは第1のチャンネルセグメントから第2のチャンネルセグメントへ流される。第1の希釈剤は第2のチャンネルセグメントへ流され、それによって希釈剤は第2のチャンネルセグメント内で第2の流体環境を産生し、第2の環境は第1の環境よりも第2の操作とより適合性である。
【0006】
関連態様において、本発明は、試料材料で分析操作を実行するためのデバイスを提供する。このデバイスは一般に、本体の内部に第1のチャンネルセグメントが配置された本体構造を含んで成り、第1のチャンネルセグメントは第1の環境を含有する。このデバイスは、本体に配置され、かつ第1のチャンネルセグメントに流体接続された第2のチャンネルセグメントをも含む。少なくとも1つの第1の希釈剤供給源も第2のチャンネルセグメントに流体連結されて提供される。このデバイスは通常、第1の希釈剤を第2のチャンネルセグメントへ送達し、第2のチャンネルセグメント内に第2の環境を提供するための第1の希釈剤供給源に操作可能な状態で連結された流量制御器をも含む。
【0007】
他の態様において、本発明は、分離バッファーが内部に配置された第1のキャピラリーチャンネルを提供するステップを含んで成る、ポリペプチドを特性決定する方法を提供する。分離バッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素を含んで成る。ポリペプチドは、キャピラリーチャンネルの一端へ導入される。電場がキャピラリーチャンネルの長さにわたって加えられ、これが異なるサイズのポリペプチドを異なる速度でポリマーマトリクスを通じて輸送する。次いで、ポリペプチドは、キャピラリーチャンネルの長さに沿った点を通過すると検出される。
【0008】
本発明の他の態様は、ポリペプチドを分離するためのデバイスである。このデバイスは、内部に分離バッファーを含有する少なくとも第1のキャピラリーチャンネルを有する本体構造で構成されている。分離バッファーは、ポリペプチドまたは複数のポリペプチドに結合することが可能なポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素で構成されている。本体構造に配置されたポートが、ポリペプチドを第1のキャピラリーチャンネルへ導入するための第1のキャピラリーチャンネルと流体連通している。
【0009】
本発明の別の態様は、ポリペプチドの特性決定において使用するためのキットである。このキットは、上述のデバイスの要素を含んで成るマイクロ流体デバイスで構成されている。分離バッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、および親油性色素で構成されている。各パッケージは本体構造、分離バッファー、および親油性色素を含有する。
【0010】
本発明の他の態様は、ポリペプチドを特性決定するためのシステムである。このシステムは、分離バッファーが配置された少なくとも第1のキャピラリーチャンネルを有する本体構造を含む。分離バッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素で構成されている。電力供給源が、キャピラリーチャンネルの長さにわたって電場を加えるために第1のキャピラリーチャンネルの反対端に操作可能な状態で連結されている。検出器が第1の点でキャピラリーチャンネルと感覚伝達されており、それが第1の点を通過するとポリペプチドを検出する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
I.方法、デバイス、および試薬
A.全般
本発明は、ポリペプチド、タンパク質、およびそれの断片(集合的に本明細書では「ポリペプチド」と呼ぶ)の特性決定において使用するための方法、デバイス、システム、およびキットを提供する。本発明の方法、デバイス、システム、およびキットは、「キャピラリー電気泳動」という語も一般に呼ばれるキャピラリーチャンネル内に含まれるポリマー分離マトリクスを通じてポリペプチドの電気泳動移動によるそれらの分子量によってポリペプチドを特性決定することにおいて特に有用である。
【0012】
前述の通り、キャピラリー電気泳動法を使用するタンパク質およびポリペプチドを分離する試みが行われている。キャピラリー電気泳動では閉鎖システム、例えば、キャピラリーが使用されるため、タンパク質の標識は通常分離前に行われている。これは一般に分離される混合物におけるタンパク質のすべてへの標識基の共有結合の形を取る。分離されると、各タンパク質上の標識が次いで検出されうる。共有標識法はしばしば錯体化学を含み、少なくとも、タンパク質を分離する前に追加のステップを必要とする。また、標識は一般に、タンパク質の分子量の決定に悪影響を及ぼしうる比較的大きな構造である。一部では非共有の結合性色素を使用することが試みられているが、かかる試みは一般に許容範囲未満の結果を提供した。
【0013】
しかし、本発明の少なくとも第1の態様によれば、迅速、再現性であり、かつ分離を実行する前に錯体試料の調製ステップを必要としないキャピラリー電気泳動法によってタンパク質を特定決定および/または分離するための方法が提供される。具体的には、本発明の方法は、分離バッファーが配置された第1のキャピラリーチャンネルを提供し、ここで分離バッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素を含む。本発明の好ましい態様によれば、洗剤およびバッファー剤は臨界ミセル濃度(「CMC」)以下の濃度で分離バッファー内に存在する。洗剤およびバッファー濃度をCMC以下の濃度で維持することによって、洗剤ミセルに結合する色素など有害な作用が最小限にされうる。操作の特定の理論に拘束されないが、前述のシステムにおけるキャピラリーシステム内の洗剤ミセルに結合する色素は、結果として実質的な背景シグナルをもたらし、かつ分離中のシグナル不規則性、例えば、シグナルベースラインにおけるこぶやくぼみをもたらしたと考えられる。他方、本発明の方法は、システムのさまざまな成分を注意深く制御し、これらの有害作用を回避または少なくとも最小限にする。特に好ましい態様においては、バッファーおよび洗剤は、少なくとも操作の分離成分が検出される点でCMC以下で提供され、それによって高い背景シグナルを示すミセルに結合する色素を回避する。これはCMC、例えば、バッファーおよび洗剤濃度未満のレベルで維持および/または実行される全体的システムの結果であり、または試料、バッファー、洗剤流体、例えば、希釈剤のインサイチュ処理、試薬添加、または他の溶液変更の結果でありうるが、これはシステムの検出部における分離バッファーをCMC未満のレベルに削減する。
【0014】
実際には、分析および/または特性決定されるタンパク質またはポリペプチド試料は通常、前処理され、タンパク質を変性させ、かつ洗剤によってタンパク質の十分なコーティングを提供するほか、試料中のコートタンパク質の十分な標識を提供する。
【0015】
次いで、特性決定されるタンパク質またはポリペプチド(または分離されるポリペプチドの混合物)は、キャピラリーチャンネルへ、通常、チャンネルセグメントの一端で導入される。キャピラリーチャンネルの長さにわたって電場を加えることによって、異なるサイズのポリペプチドは異なる速度でポリマー溶液を通じて移動する。それと結び付いた実質的な電荷を有する洗剤でコーティングされているポリペプチドは、キャピラリーチャンネルを通じて一方向へ移動する。しかし、異なる分子量のポリペプチドは異なる速度でポリマー溶液を通じて移動し、析出される。チャンネルにおける分離バッファー通じて移動しながら、ポリペプチドは、分離バッファー内に存在する親油性色素を捕捉すると同時に、場合により試料、例えば、試料前処理中、希釈剤または同様のものとともに含まれた関連色素をもたらす。
【0016】
分離との関連で、互いに分離されると、この時点でそれらと結び付いた関連親油性色素のレベルを有するポリペプチドは、その色素に基づき、それらが導入された点の下流のキャピラリーチャンネルにおける点で検出されうる。
【0017】
B.試料前処理
上述の通り、それらの特性決定前に、試料を含有するタンパク質またはポリペプチドは通常、バッファーを含有する適切な洗剤で前処理される。特に好ましい態様では、ポリペプチド試料混合物は、その分離前にタンパク質の変性を確実にするために、分離バッファーと同じバッファー剤、および分離バッファー中で使用される同じ洗剤を含んで成るバッファー中で前処理される。タンパク質の変性は分離中の直鎖分子を確実にし、タンパク質の分離プロファイルは、天然タンパク質が球形、線形、糸状、または他の何らかの構造を有するかどうかに関係なく、その分子量とより密接に関係している。前処理は通常、試料のタンパク質濃度(w/v)よりも大きく、かつ好ましくは試料中のタンパク質濃度(w/v)の約1.4倍大きい濃度で洗剤の存在下に行われる。
【0018】
洗剤結合色素の干渉効果を回避するために、ランニングバッファー中の洗剤の濃度未満またはほぼ同等、ランニングバッファーの洗剤濃度の約0.05倍〜約3倍である洗剤濃度で試料前処理を実行することがしばしば望ましい。
【0019】
好ましい態様において、前処理バッファー中のSDSの濃度は、ランニングバッファー中で使用される濃度未満である。したがって、試料前処理は通常、約0.05%〜2%、好ましくは、約0.05%〜約1%、かつより好ましくは、約0.5%未満の洗剤濃度の存在下に行われる。次いで、試料材料がロード試料中で、例えば、約1:2〜約1:20の希釈で希釈された場合は、これにより約0.0025%〜約1%洗剤、好ましくは、約0.0025%〜0.5%、さらに、より好ましくは、約0.5%未満のロード試料中の洗剤レベルが生じる。
【0020】
これらのレベルは、分離バッファーの5〜20倍以上でありうる洗剤濃度中で試料が前処理される従来のSDS−PAGE分離と対照的である。具体的には、標準的なSDS−PAGE法のための試料前処理は一般に、洗剤、例えば、SDS、50mMバッファー中2%以上の濃度(例えば、米国特許第5,616,502号明細書を参照)を有するローディングバッファー中で行われると同時に、ランニングバッファーは0.1%のみの洗剤を含有する。しかし、本明細書に記載されたキャピラリーシステムで使用されるとランニングバッファーと比べローディングバッファーにおけるこれら比較的高い洗剤レベルの使用により、望ましい範囲の分子量を有するポリペプチドと共溶出する傾向があるはるかに大きな干渉洗剤フロントが生じる。例えば、図6は、一連の分子量標準のクロマトグラムを示す(以下の実施例の部を参照)。図示された例において、ピークは、タンパク質分析における重要な分子量範囲である60〜70kDの範囲の分子量を有するタンパク質またはポリペプチドの溶出時間に対応する約43秒で溶出した洗剤フロントと結び付いた。
【0021】
試料前処置ステップにおける洗剤の濃度を削減することによって、いかなる干渉ピークも削減される。これは、試料前処理が高レベル、例えば、2%以上の洗剤を必要とした当技術分野における従来の考え方をよそに有効であることが判明した。さらに、本明細書に記載されたパラメータに従って試料前処理および分離バッファーのイオン強度および洗剤濃度を制御することにより、洗剤フロントの溶出プロファイルをわずかに制御することが可能であり、特性決定されるポリペプチド前後にその溶出を引き起こす。
【0022】
同様に好ましい態様において、前処理で使用される洗剤は分離バッファーで使用される同じ洗剤、例えば、SDSである。一般に、前処理条件は、全体的分離の条件、例えば、分離されるタンパク質の性質、試料が配置されている培地、例えば、以下の分離バッファーについて記載されているように、バッファー、および塩濃度などによって変化しうる。具体的には、SDSおよび塩濃度は、例えば、所定の分離ために最適化するために本明細書に記載されたパラメータ内で変化しうる。
【0023】
C.分離バッファー
本発明によれば、分離バッファーは本明細書に記載された方法の実施において使用され、このバッファーはポリマーマトリクス、バッファー剤、洗剤、および親油性色素を含んで成る。架橋および/またはゲルポリマーを含むさまざまなポリマーマトリクスを使用することができる。しかし好ましい態様においては、非架橋ポリマーがポリマーマトリクスとして使用される。本明細書に記載された方法における使用に適している非架橋ポリマー溶液は、キャピラリー電気泳動による核酸の分離における使用のために以前に記載されている、例えば、その各々が本明細書で参照することにより援用される、米国特許第5,264,101号明細書、同第5,552,028号明細書、同第5,567,292号明細書、および同第5,948,227号明細書を参照。かかる非架橋または「直鎖」ポリマーは、架橋またはゲル化ポリマーよりも使いやすさの利点を提供する。具体的には、かかるポリマー溶液は、それらの液体性質のため、より容易にキャピラリーチャンネルへ導入され、使用される状態にあるが、ゲル化ポリマーは通常、架橋反応を起こすと同時にポリマーがキャピラリー内にあることを必要とする。
【0024】
一般に、最も一般的に利用される非架橋ポリマー溶液はポリアクリルアミドポリマーを含んで成り、これは好ましくは、自然に正電荷または負電荷されうるポリジメチルアクリルアミドポリマー溶液である。特に好ましい態様においては、負電荷ポリジメチルアクリルアミドポリマー、例えば、ポリジメチルアクリルアミド−co−アクリル酸が使用される(例えば、米国特許第5,948,227号明細書を参照)。意外にも、ポリアクリルアミドポリマー溶液の使用により、キャピラリーシステムで分離されるタンパク質/ポリペプチドのいかなる不鮮明化も生じることはない。操作の特定の理論に拘束されないが、ポリマー溶液は、本明細書におけるシステムにおいて二重機能を有すると考えられる。第1の機能は、より小さい種に対してそれを通じて移動するより大きな種の移動性を付与するマトリクスを提供することである。これらのポリマー溶液の第2の機能は、キャピラリーチャンネル内の材料の電気浸透流を削減または除去することである。ポリマー溶液はこれをキャピラリー表面に吸着させることによって行い、それによって電気浸透流を特性決定するシース流を遮断すると考えられる。
【0025】
通常、非架橋ポリマーは、約0.01%〜約30%(w/v)の濃度で分離バッファー内に存在する。もちろん、異なるポリマー濃度は、実行される分離の種類、例えば、特性決定されるポリペプチドの性質および/またはサイズ、分離が実行されるキャピラリーチャンネルのサイズなどによって使用されうる。好ましい態様においては、大部分のポリペプチドの分離のために、ポリマーは、約0.01%〜約20%、かつより好ましくは、約0.01%〜約10%の濃度で分離バッファーに存在する。
【0026】
ポリマー溶液内のポリマーの平均分子量は、そのためにポリマー溶液が望ましい用途によってわずかに変化しうる。例えば、高い分解能を必要とする用途では高分子量のポリマー溶液が利用されるが、厳しくない用途では低分子量の溶液が利用されうる。通常、本発明により使用されるポリマー溶液は、約1kD〜約6,000kD、好ましくは、約1kD〜約1000kD、かつより好ましくは、約100kD〜約1000kDの範囲の平均分子量を有する。
【0027】
上述の荷電率および分子量に加えて、本発明により使用されるポリマーはそれらの粘度によっても特性決定される。具体的には、本明細書に記載されたシステムのポリマー成分は通常、キャピラリーチャンネル内で使用される溶液粘度を、約2〜約1000センチポイズ、好ましくは、約2〜約200センチポイズ、かつより好ましくは、約5〜約100センシポイズの範囲で有する。
【0028】
非架橋ポリマー溶液の取込みに加えて、本発明の実施において使用される分離バッファーは、バッファー剤、洗剤、および親油性色素をも含んで成る。
【0029】
前述の通り、ポリペプチドは通常、その物理化学特性、特にそれらの荷電対質量比が、それらのアミノ酸組成物によって相当に変化する。かかるものとして、異なるポリペプチドは一般に加電場下に異なる電気泳動移動性を有する。かかるものとして、タンパク質および他のポリペプチドの電気泳動分離では通常、タンパク質/ポリペプチドのすべてが電場下に同じ方向に移動することを確実にするために、ランニングバッファー内で洗剤が利用される。例えば、標準的なタンパク質分離において、例えば、SDS−PAGE、洗剤(ドデシル硫酸ナトリウムまたはSDS)が試料バッファー中に含まれる。試料中のタンパク質/ポリペプチドは、実質的な負電荷を有するさまざまなタンパク質/ポリペプチドを提供する洗剤によってコーティングされる。次いで、負電荷タンパク質/ポリペプチドは電流下に陰極へ移動する。しかし、ふるいマトリクスの存在下、より大きなタンパク質はより小さなタンパク質よりゆっくり移動し、それによってそれらの分離を可能にする。
【0030】
本発明の一部の態様によれば、分離バッファーの洗剤、バッファー剤、および色素成分の各々が、それらの間の有害な相互作用を最小限にする濃度で選択され、提供されるが、この相互作用はタンパク質またはポリペプチドの分離および特性決定に干渉し、例えば、分離効率、シグナル感度、異常シグナルの生成、または同様のものを削減しうる。具体的には、バッファー剤および洗剤は通常、ポリペプチドの分離効率を最適化するが、背景シグナル、およびベースラインシグナルの不規則性を最小限にする濃度で提供される。前述の通り、洗剤ミセルに結合する色素はキャピラリー分離中の背景シグナルの実質的なレベルを生成すると同時に、さまざまなベースライン不規則性、例えば、こぶやくぼみを生じる。
【0031】
したがって、第1の態様においては、ポリペプチドの分離および/または特性決定は、バッファー溶液内で洗剤が過剰な独立したミセルを形成し始め、それに色素が結合しうる点未満である濃度でバッファー剤および洗剤を提供することによって達成される。通常、ミセルが形成し始める濃度は臨界ミセル濃度(「CMC」)と呼ばれる。再び述べると、CMCは入手可能な最も高いモノマー洗剤濃度であり、したがって、潜在的に入手可能な最も高い洗剤である。ヘレニウス(Helenius)ら、Methods in Enzymol.56(63):734−749(1979年)。
【0032】
洗剤溶液のCMCは、無極部分(または炭化水素尾部)のサイズの増大とともに、かつより少ない程度に、極性群のサイズおよび極性の減少とともに減少する。ヘレニウス(Helenius)ら、上記を参照。したがって、洗剤溶液がそのCMCを上回るか下回るかは、洗剤の濃度だけではなく、CMCに対する効果を有しうる溶液の他の成分、すなわちバッファー剤の濃度、および全体的溶液のイオン強度によっても測定される。したがって、本発明の方法、システム、およびデバイスにおいて、分離バッファーには洗剤濃度およびバッファー剤の濃度が提供されており、分離バッファーがCMC以下で維持されるようになっている。
【0033】
バッファーがそのCMC未満であるかどうか測定するために多くの方法を使用することができる。例えば、ルイ(Rui)ら、Anal.Biochem.152:250−255(1986年)は、洗剤溶液のCMCを測定する蛍光N−フェニル−l−ナフチルアミン色素の使用を記載している。本明細書に記載された分離バッファーとの関連で、洗剤は通常、分離バッファーのCMC以下である濃度で提供される。特に好ましい態様において、洗剤濃度はバッファーのCMCまたはそのすぐ下である。洗剤の最適濃度の測定は、実験的に測定されうる。具体的には、本明細書に記載された親油性色素を使用することにより、洗剤濃度の関数として溶液の蛍光を測定することによって洗剤溶液中の相対ミセル濃度を測定することができる。例えば、図3は、SDS濃度の関数として親油性蛍光色素(Syto61、モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes Inc.))10μMを含有するSDS溶液の蛍光強度のプロットを示す。臨界ミセル濃度は、点Aで示された蛍光強度の急増によって示されている。したがって、本発明によれば、洗剤濃度がCMC以下であることが示されている場合、洗剤濃度は図示されているようにプロットの急な部分上またはそれ未満のいずれかである濃度であり、特に、点Bで示されたカーブ上の点を下回り、かつ好ましくは、点Aで示された領域内またはそれを下回ると理解される。
【0034】
上述の通り、洗剤のCMCは洗剤によって異なり、かつ洗剤が配置されているバッファーのイオン強度によって異なる。標準的な分離操作およびバッファーにおいて、分離バッファー中の洗剤濃度は、約0.01%(w/v)を上回るが、約0.5%未満である濃度で提供されると同時に、バッファー剤は通常、バッファーがCMC以下で維持されるという条件で、約10mM〜約500mMの濃度で提供される。
【0035】
分離バッファーに組込まれた洗剤は、電気泳動分離における使用について記載されている多くの洗剤のいずれかから選択されうる。通常、イオン洗剤が使用されうる。オクタデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、およびデシル硫酸ナトリウムなど硫酸アルキルおよびスルホン酸アルキル洗剤が一般に好ましい。特に好ましい態様において、洗剤はSDSを含んで成る。SDSの実施形態において、洗剤濃度は一般に上述の濃度で維持される。したがって、好ましい態様において、分離バッファー中のSDS濃度は通常、0.01%よりも大きく、材料中のタンパク質の十分なコーティングを確実にするが、約0.5%よりも小さく、過剰なミセル形成を阻止する。好ましい態様において、洗剤濃度は約0.02%〜約0.15%であり、かつ好ましくは、約0.03%〜0.1%である。
【0036】
好ましい洗剤濃度を利用するバッファーにおいて、バッファー剤は通常、多くの異なるバッファー剤のいずれかから選択される。例えば、SDS−PAGE用途と併せて一般に使用されているバッファー、例えば、トリス、トリス−グリシン、HEPES、CAPS、MES、トリシン、これらの組合せなども本発明において特に有用である。しかし、特に好ましい態様において、きわめて低いイオン強度を有するバッファー剤が選択される。かかるバッファーの使用は、CMCを超えることなく洗剤の濃度を増加させることを可能にする。この種の好ましいバッファーとしては、アミノ酸様ヒスチジンおよびトリシンなど両性イオンバッファーが挙げられるが、これらは関連pHで比較的高い緩衝能力を有するが、それらの両性イオン性によりきわめて低いイオン強度を有する。システム内で比較的低い移動性を有する比較的大きなイオンを含んで成るバッファー剤も、例えば、対イオンとしてトリスを使用する、シグナルベースラインの不均衡をならすそれらの明らかな能力のために好ましい。
【0037】
上記の濃度で、好ましい洗剤溶液、例えば、SDS、オクタデシル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウムなどの場合、バッファー剤は通常、約10mM〜約200mMの濃度、かつ好ましくは、約10mM〜約100mMの濃度で提供される。特に好ましい態様においては、トリス−トリシンがバッファー剤として約20mM〜約100mMの濃度で使用される。
【0038】
前述の議論を参照して、最も好ましい分離バッファーは、約0.03%〜約0.1%の濃度でSDS、およびトリス−トリシンをバッファー剤として、約20mM〜約100mMの濃度で含んで成り、各々は、全体的システム/方法の正常な作業条件下に作業すると、バッファーがCMC以下であるように提供されていることが確認されうる。
【0039】
前述の成分に加えて、分離バッファーは通常、関連色素、または特性決定/分離されるタンパク質およびポリペプチドと関連する他の検出可能な標識基をも含んで成る。これは、それらが分離バッファーを通じて移動するとタンパク質および/またはポリペプチドの検出を可能にする。本明細書で使用される「関連色素」は、目的とするクラスの分子、例えば、タンパク質またはペプチド、優先的に所定の混合物における他の分子に対して関連する検出可能な標識化合物または部分を指す。タンパク質またはポリペプチド特性決定の場合、親油性色素は特にタンパク質またはポリペプチド関連色素として有用である。
【0040】
本発明において使用するための特に好ましい親油性色素の例としては、蛍光色素、例えば、本明細書で参照することにより援用される米国特許第5,616,502号明細書に記載されているものなどメロシアニン色素が挙げられる。特に好ましい色素としては、モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes,Inc.)(Eugeneオレゴン州(OR))からSypro Red(商標)、Sypro Orange(商標)、およびSyto 61(商標)色素として一般に市販されているものが挙げられる。かかる色素は一般に、例えば、洗浄により、過剰な色素を洗い流し、かつゲル中のSDSの有害な作用を削減する染色スラブゲルにおける使用に意図されている。しかし、意外にも、本発明者によって、これらの色素がSDSキャピラリーゲル電気泳動(SDS−CGE)において特に有用であり、驚くべき感度を示し、かつ、バッファーが本明細書に記載されているように調製されると、洗剤からの「不鮮明化」または緩衝をほとんど、もしくはまったく示さないことが見出されている。
【0041】
さらに、かつ分離バッファーとの色素との適合性よりもさらに意外なことは、キャピラリーチャンネル内での親油性色素の分離バッファーへの取込みが、アッセイの感度を削減しうる過剰な背景シグナルを引き起こさないことである。具体的には、分離バッファー内に色素を提供することによって、バッファー中にある色素から比較的高い背景シグナルを観察することが期待される。したがって、色素を試料溶液内に含めるが、チャンネル内の分離バッファー内には含めないことが必要とされることを期待するであろう。しかし、この後者の方法は結果として、分離中のきわめて低いシグナルレベルをもたらす。キャピラリーチャンネル内の分離バッファーに色素を含めることによって、シグナルは高く維持されるが、背景は意外にも低く維持される。本発明において使用される親油性色素は一般に、約0.1μM〜1mM、より好ましくは、約1μM〜約20μMの濃度で分離バッファー内に存在する。
【0042】
D.分離後処理
試料が、利用される色素システムのために最適化され、例えば、特定の洗剤のCMC未満に維持されるバッファーおよび洗剤濃度下に前処理および分離される上述の方法とは対照的に、一部の態様において、試料成分が存在するバッファー/洗剤条件はそれらの成分の分離後およびそれらの成分の検出中もしくは検出直前に変化し、それと同時に洗剤ミセルの有害な作用は削減または除去される。具体的には、試料成分、例えば、ポリペプチドは、最適化された分離バッファーおよび洗剤の条件、またはCMC以上または以下でありうる濃度下に分離される。試料成分が分離されると、これらの条件は変化し、検出点でのバッファーおよび/または洗剤濃度が検出ステップのために最適化され、例えば、そのレベルをCMC未満のレベルに削減するようになっている。具体的には、しばしば、洗剤レベルおよび/またはバッファー濃度がCMC未満に調節されると、ミセルは分散し、ミセルに結合する色素の有害な作用は削減または除去される。
【0043】
通常、ポリペプチド分離の場合、環境の変更は、それらが検出器を通過する前に、分離バッファーを含有する試料がCMC以下であるように、1つもしくはそれ以上の希釈剤を分離試料成分へ添加することによって行われる。これは場合により、洗剤とバッファーの比を変更し、CMCを洗剤の作動濃度以上に上昇させ、かつ/または洗剤レベルを希釈し、それがCMC未満となるように変更することによって行われる。したがって、希釈剤はバッファー剤の濃度を増加させ、維持し、または削減しうると同時に、通常、洗剤のレベルを削減し、または洗剤濃度を維持すると同時に、バッファー剤の濃度を削減しうる。いずれかの場合、所望の目標は、検出の点および時間で洗剤ミセルを削減することである。同様に、洗剤ミセル、例えば、共洗剤を有効に破壊する材料が添加されうる。
【0044】
分離後処理が使用される場合、分離バッファー組成物は広範囲のバッファーおよび洗剤濃度に及びうる。例えば、分離バッファーは通常、バッファー剤を、例えば上述のように、約10〜約200mMの濃度、および約0.01〜約1.0%の洗剤濃度、および通常CMCを上回る、例えば、約0.05%を上回り、かつ好ましくは、約0.1%を上回る濃度で含む。他方、親油性色素の検出は、好ましくは、色素に結合し、かつ過剰な背景シグナルに寄与する過剰な洗剤ミセルの非存在下に行われる。したがって、分離バッファーの希釈が通常行われ、洗剤濃度を洗剤のCMC未満のレベル、例えば、約0.1%未満に削減する。したがって、希釈ステップは、好ましくは、分離バッファーを検出前に約1:2から約1:30に希釈する。これにより検出される試料成分も希釈されるが、希釈の結果としての背景の実質的な削減は試料材料のきわめて低いレベルで容易な検出を可能にする。
【0045】
本発明の本態様によれば、マイクロ流体デバイスは特にこれらの方法の実施に十分に適している。具体的には、集積流体チャンネルネットワークの包含は、希釈剤および他の試薬の材料の流動流への即時の添加を可能にする。具体的には、希釈チャンネルは、分離試料成分とともに検出域へ希釈剤を送達するために、検出域のすぐ上流に提供される。次いで、試料成分は干渉洗剤ミセルの非存在下に検出される。この分離後処理を実施するためのマイクロ流体デバイスの特に好ましいチャンネル配置の例が図7に示されており、以下の詳しく記載されている。本明細書で使用される「上流」および「下流」という語は、記載されているシステムの正常な動作中、目的とする材料、例えば、流体、試料成分等の流れの方向との関連で考えられる場合に記載された要素の相対的な位置を指す。通常、上流という語句は特定のチャンネルに接続された試料またはバッファー槽に向いた方向を指し、下流は特定のチャンネルに接続された廃槽の方向を指す。
【0046】
E.キャピラリーチャンネルおよびデバイス
1.全般
本発明は、上述したタンパク質特性決定法の実行において使用するためのデバイスおよびシステムを提供する。本発明のデバイスは通常、分離バッファーが配置される分離域を含む支持基板を含む。分離/特性決定される試料が分離域の一端で配置され、電場が分離域にわたって加えられ、試料内にタンパク質/ポリペプチドの電気泳動分離を引き起こす。次いで、分離タンパク質/ポリペプチドは、分離域に隣接し、かつこれと感覚伝達して配置された検出システムによって別々に検出される。
【0047】
2.従来のキャピラリーシステム
少なくとも第1の態様において、本発明の方法は従来のキャピラリーベースの分離システムに適用可能である。したがって、これらの態様において、支持基板は通常、キャピラリーチューブ、例えば、溶融石英、ガラス、またはそれを通じて配置されたキャピラリーチャンネルを含む、ポリマーキャピラリーチューブを含んで成る。チューブにおけるキャピラリーチャンネルの少なくとも一部は、キャピラリーの分離域を含んで成る。分離バッファーは、例えば、圧力ポンピング、キャピラリーアクション、または同様のものによってキャピラリーチャンネルへ配置され、分離/特性決定される試料はキャピラリーチャンネルの一端へ注入される。次いで、キャピラリーチューブの一端が、一方の端で槽と接触した陰極を有する陰極槽、および他方の端で槽と接触した陽極を有する陽極槽と接触した流体へ配置され、電場がキャピラリーチューブを通じて加えられ、キャピラリーチューブおよび含有分離バッファーを通じて試料材料を電気泳動させる。タンパク質およびポリペプチドが分離バッファーを通じて移動すると、それらは親油性色素と結び付き、これは次いで検出システムによってキャピラリーチャンネルの陰極端に向かって検出される。
【0048】
例えば、上述した分離後処理ステップの場合、バッファー溶液が通常、追加の流路またはキャピラリーを主要分離キャピラリーに接続することによって分離後試料成分の流路へ導入され、分離キャピラリーを出る分離成分が追加のバッファーまたは希釈剤と混合される。検出チャンバーまたはキャピラリーもこの接合部で接続され、材料のすべてが検出される検出域へ流れるようになっている。
【0049】
3.マイクロ流体デバイス
特に好ましい態様において、本発明の方法は、単一の集積固体基板内に配置された微小キャピラリーチャンネルのネットワークを提供するマイクロ流体デバイスで実行される。具体的には、支持基板は通常、1つもしくはそれ以上の微小チャンネルのネットワークが配置された集積本体構造を含んで成る。分離バッファーは少なくとも分離チャンネル内に配置される。好ましい態様において、マイクロ流体チャンネルネットワークは、少なくとも1つの第1の試料注入チャンネルによって交差される少なくとも1つの第1の分離チャンネルを含んで成る。これら2つのチャンネルの交差は、「注入交差」と呼ばれるものを形成する。作動中、試料材料は注入チャンネルを通じて、かつ分離チャンネルにわたって注入される。次いで、交差内の材料の一部は分離チャンネルへ注入されると同時に、それは分離バッファーを通じて分離される。検出器は分離チャンネルに隣接して配置され、分離タンパク質を検出する。
【0050】
特に好ましい態様において、本発明により使用されるマイクロ流体デバイスは、試料注入チャンネルと流体連通した複数の試料ウェルを含んで成り、そしてそれが分離チャンネルと流体連通する。これが単一の集積マイクロ流体デバイス内の多数の異なる材料の分析を可能にする。本発明により使用するための特に好ましいマイクロ流体デバイスの例が、すべての目的のために本明細書で参照することによりその全体が援用される、公有の1998年10月2日出願の米国特許出願第09/165,704号明細書に示され、記載されている。かかるマイクロ流体デバイスの例が図1に示されている。図示されているように、デバイス100は、その内部、例えば、チャンネル104−138内に配置された複数の相互接続したチャンネルを含む平面の本体構造102を含んで成る。多くの槽140−170は本体構造202に配置されており、さまざまなチャンネル104−138と流体連通している。分析される試料およびバッファーは、デバイスのチャンネルへの導入のためにこれらの槽へ配置される。
【0051】
作動中、分離/特性決定において使用される分離バッファーは最初に1つの槽、例えば、槽166へ配置され、デバイスのチャンネルのすべてへ運ばせ、それによってこれらのチャンネルを分離バッファーで充填する。分離/特性決定される試料は別々に槽140−162へ配置される。次いで、分離バッファーは、槽164、168、および170へ配置され、槽166にはすでに存在する。適切な電流の適用により、第1の試料材料は、その槽、例えば、140からチャンネル104のための主要注入交差172へ、かつこれを通じて、チャンネル120および116によって輸送または電気泳動される。これは一般に電流を槽140と168との間に加えることによって達成される。低レベルのピンチング(pinching)電流は通常、例えば、低レベルの電流を槽166および170から槽168の方向へ供給することによって、交差点で試料材料の拡散を阻止するために交差点で加えられる(例えば、国際公開第96/04547号パンフレットを参照)。短時間後、電流は切り替わり、交差点における材料が、例えば、電流を槽170と166との間に加えることによって、主要分析チャンネル104の下で電気泳動されるようになっている。通常、わずかな電流が注入後に加えられ、チャンネル116および134の材料を交差点から引き戻し、分離チャンネルへの漏出を回避する。第1の試料は主要チャンネル104の下で電気泳動されるが、分析される次のサンプルはその槽、例えば、槽142からプレロード槽164へ向かってプレロード交差点174を通じて電気泳動することによってプレロードされる。これは、きわめて短い輸送時間で試料材料をそのプレロード位置から注入交差点172へ移動させることを可能にする。第1の試料分析が完了すると、第2の試料材料が注入交差点172上で電気泳動され、前述同様、主要分析チャンネルの下に注入される。この過程はデバイスへロードされた試料の各々について繰返される。
【0052】
検出域176は通常、そこでシグナルがチャンネルから検出されうる点を提供するために、主要分析チャンネル104に沿って提供される。通常、本明細書に記載されたデバイスは、透明な材料で製造されている。かかるものとして、光学検出分析のための検出窓は、分析チャンネル104の長さに沿って実質的にすべての点に位置しうる。分離試料が検出窓を通過すると、ポリペプチド断片と結び付く親油性色素が検出される。次いで、各ポリペプチド断片が分離チャンネルを通じて移動するのに必要な時間の量は、例えば、その分子量の尺度として、特定のポリペプチドの特性決定を可能にする。具体的には、未知のポリペプチドの保持時間は既知の分子量標準の保持時間と比較され、未知の概算の分子量は、それによって測定され、例えば、標準から補間または補外されうる。
【0053】
前述の通り、本明細書に記載された分離後処理は、マイクロ流体チャンネルシステムの使用によって特に利点がある。具体的には、主要分離チャンネルへの希釈剤の供給源の結合は、適切な位置、例えば、分離が起こった後は収まるが、検出域または窓の前には収まらない点でそのチャンネルに接続されるチャンネルを提供する単純な事柄である。これを達成するためのマイクロ流体チャンネルネットワークの例が図7に示されている。図示されているように、マイクロ流体デバイス700は、その内部に配置されたチャンネルネットワークを含む本体702を含む。通常、図7に示されているデバイスは、図1に関連して上述された同じ方法で製造される。チャンネルネットワークは、複数の異なる試料材料槽706−722および728とそれぞれ、試料チャンネル706a−722aおよび728aによって流体連通している主要チャンネル704を含む。プレロード/廃槽チャンネル/槽724/724aおよび726/726aが図示されている。主要チャンネル704は、バッファー槽736および廃槽732と接続されており、かつ検出域738を含む。図示されているように、2つの希釈チャンネル730aおよび734aが、主要チャンネル704の反対側で、検出域からすぐ上流(材料の動作流の方向)であり、そのチャンネルの機能、例えば、分離が起こる主要チャンネル704の主要部分の下流ではない点で主要チャンネル704と連通して提供されている。希釈チャンネル730aおよび734aも、希釈剤供給源、例えば、槽730および734とそれぞれ連連しており、これらの供給源から主要チャンネル704への希釈剤の送達を可能にする。
【0054】
例えば、ポリペプチド混合物を含有する試料を特性決定したいと思う場合のポリペプチド分離における作動中、デバイス700のチャンネルは分離バッファーで充填される。分離後処理の場合、このバッファーは、過剰なミセル形成に対する懸念が概してないため、上記の制限を固守する必要ない。通常、これらの場合、洗剤の濃度は前処理法におけるほど重要ではない。具体的には、分離バッファーは、例えば、約0.1%〜約2.0%の高い濃度の洗剤を有しうる。通常、洗剤濃度は0.1%を超える。チャンネルネットワークの充填は通常、1つのウェル、例えば、廃槽732へ分離バッファーを挿入することによって実行される。次いで、分離バッファーは、それが他の槽706−730および734−736の各々に達するまでチャンネルネットワークの全体を通じて移動する。場合により、わずかな圧力が廃槽732にかけられ、チャンネルネットワークの充填を促進する。追加量のバッファー、例えば、分離バッファーがバッファー槽736およびロード/廃槽724および726へ配置される。希釈材料が希釈槽730および734へ配置される。
【0055】
試料材料は、1つもしくはそれ以上の試料槽706−722、728へ配置される。場合により、多くの異なる試料材料が異なる槽へ配置される。次いで、デバイスは制御器/検出器装置、例えば、すべての目的のために本明細書で参照することによりその全体が援用される、米国特許第5,976,336号明細書に記載されている制御電気動力学方法によって、デバイスのチャンネルを通じて試料材料の移動を方向づける、例えば、アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)の2100バイオアナライザへ配置される。例えば、槽706ヘ配置される試料が、チャンネル704を交差させるまで試料チャンネル706aに沿って移動し、チャンネル726aによってロード廃槽726の方向へ流れる。次いで、試料ローディングチャンネル706aと主要チャンネル704の交差点で試料材料の一部は、分離チャンネル704へ注入され、それを通じて移動する。加電場下、分離バッファーを通じて移動する試料のこの部分は、チャンネル704に沿って移動するとその構成要素へ分離する。それが移動すると、試料成分、および場合によっては、洗剤ミセルは、分離バッファー中に存在する親油性色素を捕捉する。洗剤を低濃度で含有し、またはまったく含有しない希釈バッファー剤が、チャンネル730aおよび734aによってチャンネル704へ連続的に導入される。この希釈剤は分離バッファーを洗剤のCMC未満の点に希釈し、結果として過剰な洗剤ミセルの除去をもたらす。次いで、親油性色素を有する希釈試料構成物質は検出窓738で検出される。場合によっては、流体希釈はチャンネルを通じた流体の実際の導入により達成される。しかし、好ましい態様において、サイドチャンネル730aおよび734aは通常、チャンネルネットワーク全体を通じて存在する同じ分離マトリクスを含有する。かかるものとして、希釈は、分離チャンネルへ電気泳動的に導入されるバッファー溶液からイオン種の電気泳動導入によって実行され、分離チャンネルにおける種を有効に希釈する。別の態様において、サイドチャンネル730aおよび734aは、マトリクスを含まずに提供され、例えば、それらは圧力ベースまたは電気浸透流を支持し、かつ大量の流体が主要チャンネル704へ導入され、分離試料成分を希釈する。上述の通り、希釈がチャンネルに添加される速度は、特定の条件下に洗剤の約CMC未満のレベルに検出点でのチャンネルにおける洗剤濃度を削減するように選択される。通常、これは洗剤の約1:2〜約1:30希釈を含んで成る。したがって、分離バッファーが、例えば、30mMトリス−トリシンバッファー中2%SDSを含む場合、洗剤レベルを約0.1%未満、かつ好ましくは、約0.05%SDSに希釈することが一般に望ましい。したがって、希釈は約2〜3倍ないし約4倍である。もちろん、前述の通り、特定の洗剤のCMCは、バッファーの性質および濃度によって変化しうる。
【0056】
主にポリペプチド分離バッファーをそのバッファーにおける洗剤のCMC未満である点に希釈することに関して述べられているが、本明細書に記載された分離後処理法がより広範囲に適用可能であることが理解されるであろう。具体的には、かかる方法は、一連の分析法ステップの連続的操作が、直接先行ステップまたは操作から異なる環境を必要とし、その環境はその後の操作のために、試薬、バッファー、または希釈剤の添加によって十分に変更されうるさまざまな分析操作において使用されうる。上述した方法は、ポリペプチドの分離のために最適化される環境が最適化された検出環境と最適に適合性ではありえない例を示す。したがって、本発明の本態様の最も広い理解によれば、「希釈剤という語は、添加される要素、例えば、それが導入される環境を変更する流体、バッファー剤等を指す。この意味での環境の変更は、環境の物理的特性、例えば、洗剤ミセルの存在の変更、溶液の粘度の削減を含むが、化学的環境の変更、例えば、バッファーを滴定して溶液のpHの変更をもたらし、例えば、pH感受性色素または他の標識種の操作可能な環境をもたらし、溶液の塩濃度を変更し、疎水性/親水性の変化に影響を及ぼし、または溶液内のイオン相互作用に影響を及ぼすことをも含む。
【0057】
同様に、標識種は、かかる標識種が以前の操作に影響を及ぼしうる初期操作後に添加されうる。かかる標識の一例が、例えば、特異的タンパク質に対する標識抗体の添加を含み、それによってシステムがチップベースのウェスタンブロット法システムとして機能することを可能にする。具体的には、タンパク質分離後、標識抗体が検出直前に分離タンパク質に添加され、認識エピトープを有するタンパク質と優先的に結び付ける。次いで、タンパク質はそのサイズ、その選択抗体によって認識される能力に基づき検出される。
【0058】
F.全体的システム
本発明のデバイス試薬は通常、マイクロ流体デバイス内で実行され、かつ本明細書に記載された試薬を利用する操作および分析を制御し、監視する全体的分析システムと併せて使用される。具体的には、全体的システムは通常、マイクロ流体デバイスまたはキャピラリーシステムに加えて、マイクロ流体デバイスまたはキャピラリー要素に操作可能な状態で連結された電気制御器、およびデバイスの分離域またはチャンネルの感覚伝達内に配置された検出器を含む。
【0059】
本発明によるシステムの例が図2に示されている。図示されているように、システム200はマイクロ流体デバイス100を含み、これはその内部に配置されたチャンネルネットワークを含んで成り、ここでチャンネルネットワークは複数の槽または試料/試薬ウェルを結合する。電気制御器202が、マイクロ流体デバイス100の槽における流体と接触される複数の電極204−234によりマイクロ流体デバイス100に操作可能な状態で連結されている。電気制御器202はデバイスの分離チャンネルの長さにわたって適切な電場を加え、試料材料の電気泳動、および本発明のタンパク質およびポリペプチドの結果として起こる分離を推進する。例えば、図示されているように、交差チャンネルネットワークを含むマイクロ流体デバイスの場合、電気制御器は、さまざまなチャンネルを通じて異なる材料を移動させ、かつそれらの材料を他のチャンネルへ注入するための電流もかける。デバイスのチャンネルを通じて選択可能な電流レベルを提供し、材料の移動を制御する電気制御器が、本発明における使用に特に好ましい。かかる「電流制御器」の例は、本明細書で参照することにより援用される、米国特許第5,800,690号明細書に詳しく記載されている。
【0060】
全体的システム200は、マイクロ流体デバイス100におけるチャンネルネットワークの分離チャンネル部と感覚伝達で配置されている検出器204をも含む。本明細書で使用される「感覚伝達で」という語句は、マイクロ流体デバイス内のチャンネルから特定のシグナルを受取るように位置している検出器を指す。例えば、光学シグナル、例えば、色素体、蛍光、または化学発光シグナルを生成する操作を実行するために使用されるマイクロ流体デバイスの場合、検出器はデバイスの半透明部に隣接して位置し、検出器内の光学要素がマイクロ流体デバイスの適切な部分からこれらの光学シグナルを受取るようになっている。他方、電気化学検出器は通常、感覚伝達であるために、電気化学センサ、例えば、そのチャンネル内で生成され、または別の方法で存在する電気化学シグナルを感知できるために、デバイスの適切なチャンネル内に配置された電極を含む。同様に、温度を感知するための検出器が、温度またはそこの相対変化を感知するために、デバイスのチャンネルと熱連通する。好ましい態様において、光学検出器本発明のシステムにおいて使用され、より好ましくは、蛍光シグナルの検出のために構成されている光学検出器である。かかるものとして、これら検出器は通常、分離チャンネルで活性化光を方向づけるための光供給源および光学トレインのほか、分離チャンネルから放出される蛍光の量を収集、伝達、および定量するための光学トレインおよび光学センサを含む。一般に、単一の光学トレインは、それらを区別する2種類のエネルギーの波長の差に依存する、活性化光と蛍光発光の伝達に利用される。一般に、本発明の光学検出器へ組込まれた光学センサは、光電子増倍管(PMT)光ダイオードなど、当技術分野で周知であるこれらから選択される。特に好ましい態様において、アギレント(Agilent)2100バイオアナライザが制御器/検出器システムとして使用される(アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)。本明細書に記載されたシステムは通常、取扱説明書または前もってプログラムされた操作パラメータに従って電気制御器の操作を指示するための電気制御器に操作可能な状態で連結されやプロセッサまたはコンピュータ206をも含む。コンピュータも通常、検出器がマイクロ流体デバイスから受取るデータを受取り、かつ分析するための検出器に操作可能な状態で連結されている。したがって、コンピュータは通常、電場を加えて潜在的に複数の試料の各々を分離チャンネルへ注入する電気制御器の操作を指示するための適切なプログラミングを含む。通常、コンピュータはまた、検出器からのデータを受取り、検出器によって受取られたシグナルを記録すために検出器に操作可能な状態で連結されている。プロセッサまたはコンピュータ206は、さまざまな異なる種類のプロセッサでありうる。通常、コンピュータ/プロセッサはIBM PCまたはPC互換性コンピュータであり、例えば、インテル(Intel)またはアドバンスド・マイクロデバイス(Advanced Microdevices)のマイクロプロセッサ、例えば、Pentium(商標)またはK6(商標)、またはMacIntosh(商標)、Imac(商標)もしくは互換性コンピュータを組込んでいる。
【0061】
本発明のポリペプチド特性決定法の場合、コンピュータまたはプロセッサは通常、シグナルデータを検出器から受取り、かつ検出器を通過する分離タンパク質に対応するシグナルピークを確認するようにプログラムされている。通常、1つもしくはそれ以上の内部標準タンパク質が、試料材料とともに動かされうる。かかる場合、コンピュータは通常、例えば、最初または最後のいずれかに全体的分離におけるその位置によって、標準を確認し、かつ標準からの補外または補間によって試料中の未知のポリペプチドの分子量を測定するようにプログラムされている。本発明による使用に特に有用なコンピュータソフトウェアプログラムは、分離法で使用するために、1997年12月30日に出願され、本明細書で参照することにより援用される、仮特許出願第60/068,980号明細書に記載されている。アジレント(Agilent)2100バイオアナライザで実行される実施形態の場合、コンピュータは通常、核酸分析用にこれらシステムを実行するために提供されたものと同様のソフトウェアプログラミングを含む。
【0062】
G.キット
本発明は、記載された方法の実行において使用するためのキットをも提供する。一般に、かかるキットは、本明細書に記載されたキャピラリーまたはマイクロ流体デバイスを含む。キットは通常、分離バッファーのさまざまな成分、例えば、非架橋ポリマーふるいマトリクス、洗剤、バッファー剤、および親油性色素をも含む。これらの成分は、前処理されるかあるいはされないあらかじめ形成されたバッファー成分の別個の量としてキットに存在し、または試薬のすべての単一の組合せまで、かつこれを含む結合されたあらかじめ形成された試薬の量として提供され、それによって使用者は簡単に分離バッファーを直接、マイクロ流体デバイスへ配置することができる。バッファー成分に加えて、本発明によるキットは場合により、分子量標準など他の有用な試薬のほか、デバイスおよびシステムとともに使用するための手段、例えば、バッファー、試料、または他の試薬をマイクロ流体デバイスのチャンネルへの導入を補助する器具をも含む。
【0063】
キット形態において、試薬、デバイス、およびそれの使用を詳述する説明書が通常、単一の包装単位、例えば、箱または袋で提供され、いっしょに販売されている。キットとしての試薬およびデバイスの提供は、使用準備済みの高価でないシステムを使用者に提供し、ここで試薬はより使いやすい量で提供され、すべて所望の用途、例えば、高分子量対低分子量タンパク質の分離のために最適に形成されている。
【0064】
H.自動タンパク質分析
図1および7の前述したマイクロ流体デバイスにおいて、特性決定されるタンパク質試料はマイクロ流体デバイス上の槽へ配置される必要がある。本発明の範囲は、マイクロ流体デバイス外の供給源からタンパク質試料を得ることが可能であるマイクロ流体デバイスをも包含する。これはサンプリング分注器またはキャピラリーをデバイス内のチャンネルネットワークからマルチウェルプレートにおけるウェルなど外部試料供給源へ延長することによって達成されうる。外部供給源における試料は、圧力または動電力によって、キャピラリー、または「シッパー(sipper)」ヘ吸込まれうる。マルチウェルプレートは、さまざまな市販の流体処理装置と適合性である、96、384、または1536ウェルフォーマットなど標準フォーマットの形で提供される。
【0065】
図9は、シッパー903、チャンネルネットワーク905、および複数の槽906を含んで成るマイクロ流体デバイス902を含んで成るシステム900を概略的に示す。シッパー903はデバイス902に取付けられており、キャピラリー(図示せず)内のチャンネルがチャンネルネットワーク905と流体連通するようになっている。外部試料供給源の機能を果たす複数のウェルを含んで成るマルチウェルプレート908は、キャピラリー要素903によって利用しやすいように提供されている。このマルチウェルプレート908は、ウェルに配置されたタンパク質試料を有する標準フォーマットプレートでありうる。多くの実施形態において、標準を含有する第2のマルチウェルプレート913を使用することが望ましい場合もある。例えば、マルチウェルプレート913におけるウェルは、既知のサイズのポリペプチドを含んで成るタンパク質ラダーを含有しうる。通常、デバイス902およびマルチウェルプレート908、913の1つもしくはすべては、これらの成分の1つもしくすべてをその他に対して移動させるx−y−z移動ステージ909に連結されている。通常、x−y−z移動ステージ909は、例えば、ロボット位置決めシステム(図示せず)によって自動制御されている。かかるロボットx−y−z移動システムは市販されている。
【0066】
制御器917、コンピュータ918、および検出器919など図9におけるシステムの他の成分は、図2に示されているシステム成分に類似している。制御器917は、マイクロ流体デバイス902内の流体の移動を制御する。図9の実施形態において、制御器はマイクロ流体デバイス902上の槽へ圧力ルーメン923を通じて陰圧をかける。陰圧をかけることにより流体がマルチウェルプレート908における試料供給源の1つから903を通じてチャンネルネットワーク905へ取込まれる。さまざまな実施形態において、制御器は、他の陽圧もしくは陰圧、または電場、または圧力および電場の組合せの適用を指図し、チャンネルネットワーク905を通じた流体の移動を達成する。本発明によるシステムは、制御機917および検出器919と連動するプロセッサまたはコンピュータ918を含む。図9の実施形態におけるコンピュータは、x−y−z移動ステージをも指図する。また最後に、検出器919もチャンネルネットワーク905の1つもしくはそれ以上のチャンネルの感覚伝達内に提供されている。検出器919からのデータが、収集され、保存され、かつ/またはコンピュータまたはプロセッサ918によって分析される。
【0067】
図10は、図9の実施形態において使用されうるマイクロ流体デバイス902の例を示す。外部供給源からのタンパク質試料の導入によって必要とされる追加の方法ステップを除き、図10のマイクロ流体デバイスにおいて実施されるタンパク質分析は図7におけるマイクロ流体デバイスにおいて実施される分析とほぼ同一である。キャピラリーを通じて外部供給源から取出されたタンパク質試料は交差点940でマイクロ流体デバイス902のチャンネルネットワークに入る。図10の実施形態においては、外部供給源からの流体が槽915にかけられた削減(すなわち大気圧以下)圧力をかけることによってシッパーヘ取込まれる。槽910は大気に対して開放したままにされ、槽915にかけられた減圧が槽910からチャンネル912への流れをも誘発するようになっている。槽910における流体は、それがシッパー/チャンネル交差点940でマイクロ流体デバイスに入ると試料と混合する。槽910における流体910は水などの希釈剤含んで成り、試料の濃度が加減されうる。槽910における流体は、ポリペプチド標準(すなわち、マーカー)などの成分、または塩もしくはバッファー剤などの試薬をも含有しうる。次いで、槽910からの試料および流体の混合物は交差点942およびチャンネル914と916を通じて廃槽915に向かって流れる。チャンネル914を通じて流れる混合物の少なくとも一部は、槽925と920との間に電場をかけることによって注入交差点944を通じて流れるように再方向付けられうる。電場の規模および方向は、混合物を交差点944を通じてチャンネル921へ槽920に向けて方向づける界面道電流を生じるように構成されている。
【0068】
分析における次のステップは、交差点944を通じて流れる槽910からの試料と流体の混合を分離チャンネル904へ注入することであり、ここで試料におけるポリペプチドはサイズによって分離される。本発明のさまざまな実施形態では異なる注入方法が使用されうる。例えば、図1および7の実施形態に関して前述されているように、ピンチング電流を注入交差点944でかけることができ、タンパク質試料を含有する混合物が試料注入が起こる前に分離チャンネル904へ拡散することがないようになっている。流れをピンチングし、ピンチングされた流れを注入する方法は、先に引用した国際公開第96/04547号パンフレットに開示されている。ピンチングされた流れを図10のマイクロ流体デバイスにおいていかに使用されるかを説明するために、図11Aは図10におけるマイクロ流体デバイス902の交差点944の拡大図を示す。チャンネル914からチャンネル921へ交差点944を通じて流れる混合物(陰影部)を含有する試料は、分離チャンネル904の両側から交差点904に入る流れ(矢印によって表示)をピンチングすることによって制約されている。ピンチング流の両方は分離バッファーを含んで成りうる。混合物を分離チャンネル904へ注入するために、電場が分離チャンネル904にわたってかけられ、注入交差点944における混合物が分離チャンネル904へ廃槽965に向けて流れるようになっている。注入中、電圧を槽920および925にかけることができ、これはチャンネル914および921における材料を注入交差点944から引離し、分離チャンネル904へのそのチャンネルにおける流体の漏出を阻止する。混合物が分離チャンネル904における分離バッファーを通じて移動すると、混合物内の試料のポリペプチドは電気泳動的に分離される。
【0069】
ピンチングされた注入スキームを使用する実施形態は、試料中のタンパク質の濃度が比較的高い場合に限り使用されうる。電気泳動分離かけられた試料中のタンパク質の量を増加させることによって分析の感度を増加しうる別の注入スキームがある。試料中のタンパク質の量は、混合物を含有する大量の試料を分離チャンネル904へ注入することによって増加されうる。図11Bは、かかる注入スキームが図10のマイクロ流体デバイス902においていかに使用されうるかを示す。タンパク質試料を含有する混合物はチャンネル914からチャンネル921へ交差点944を通じて流れるが、分離チャンネルの長さにわたる電場は、注入交差点944を通過する混合物の一部が注入が起こる前に分離チャンネル904において蓄積するように調節される。この蓄積は、分離チャンネル904へ拡散および/または流れる混合物に由来しうる。多くの実施形態において、交差点944上を流れる混合物の一部は、分離チャンネル904の長さにわたって電圧がかけられない場合に分離チャンネル904に蓄積する。言い換えれば、一部の実施形態において混合物を含有する試料は、槽960および965における電極が混合物を含有する試料がチャンネル914からチャンネル921へ交差点944上を流れる間に浮かせられる場合は、注入前に分離チャンネル904に蓄積する。しかし、多くの実施形態において、槽960および965における電極にかけられる電圧を調節し、試料が注入前に分離チャンネル904へ流れるようになることが望ましい場合がある。例えば、図11Bの実施形態において、電圧が槽960および965にかけられ、混合物を含有する試料の分離チャンネル904への流れをもたらす。分離チャンネル904への流れの方向は矢印によって示されているが、陰影は混合物がいかにして分離チャンネル904において分布しうるかを概略的に示す。当業者によって認識されるように、分離チャンネルに蓄積する混合物を含有する試料の量は、分離チャンネルへの流れの規模および持続時間を変化させることによって制御されうる。混合物を含有する所望量の試料が分離チャンネル904において蓄積すると、電場が分離チャンネル904にわたってかけられ、分離チャンネル904における混合物が廃槽965へ向けて流れる。ピンチングされた注入を使用する実施形態におけるのと同様に、チャンネル914および921における材料は、注入中および注入後に注入交差点944から引離されうる。
【0070】
前述の実施形態におけるように、分離チャンネル904へ注入された混合物を含有する試料中のポリペプチドは電気泳動的に分離される。分離は、バッファー槽960および廃槽965に浸漬した電極上に電圧をかけることによって分離チャンネル904にわたって電場を引き起こすことによって実行される。バッファー槽960は、前述の実施形態におけるように、通常、ポリマー、バッファー剤、洗剤、および親油性色素を含んで成る分離バッファーを含有する。電場は、それらが分離チャンネル904におけるポリマーにより電気泳動すると、試料からのポリペプチドサイズによって分離させる。図10におけるデバイス902は、前述の分離後処理方法を行うように構成されている。言い換えれば、図7の実施形態のように、図10の実施形態は、分離バッファーが検出領域970に達する前にCMC未満の試料成分を含有する分離バッファーを希釈するように構成されている。希釈は希釈剤を希釈槽930および934から希釈チャンネル930aおよび934aを通じて分離チャンネル904へ流すことによって起こる。希釈剤は通常、分離バッファーのポリマーおよびバッファー成分を含んで成る。さまざまな電気泳動的に分離されたポリペプチドによって生成される蛍光ピークは、前述の方法によって検出領域970で検出される。
【0071】
外部供給源から試料を得る能力は、図10におけるデバイスなどマイクロ流体デバイスに、自動工程の一環として大量のタンパク質試料を分析する能力を与える。シッパーを有するマイクロ流体デバイスがマルチプレートから試料を自動的に得ることを可能にする市販のシステムが利用可能である。本システム、AMS90SE電気泳動システムは、キャリパー・ライフ・サイエンス社(Caliper Life Sciences,Inc)(Mountain View California)によって製造、販売されている。しかし、マイクロ流体デバイスが多数のタンパク質試料を処理するために使用されると、チップの性能はいくつかの試料を処理した後に分解もしくはドリフトしうる。例えば、同じタンパク質試料の2つの分析における蛍光ピーク(例えば、図8Dにおけるピークと同様)の溶出時間および/または領域は、12以上の他の試料がその2つの分析間に同じデバイスで分析された場合は異なる場合がある。溶出時間におけるかかる変化は、ポリペプチドを同定する分析の能力を阻害するが、ピーク領域の変化はタンパク質濃度の量的測定値を提供する分析の能力を阻害する。多数の試料を処理する際に生じる他の問題は、試料の前処理条件の均一性である。言い換えれば、マイクロ流体デバイスで実行されたタンパク質分析が十分に堅牢であり、マイクロ流体デバイスがさまざまな異なる塩、バッファー、および洗剤濃度でタンパク質試料を処理できるようになっていることが望ましい。
【0072】
図7の実施形態と併せて使用される同じ試薬を図9および10の実施形態における多数のタンパク質試料の処理のために使用することができる。具体的には、分離バッファーは、濃度10mM〜200mMのバッファー剤、濃度0.01%〜1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの洗剤、および0.1μM〜1mMの色素濃度を含んで成りうる。洗剤濃度をSDSでは約0.1%であるCMC未満にするために、分離バッファーは約1:2〜1:30の範囲で希釈される。しかし、試薬組成物のこれらの範囲内で、多数の試料の処理に十分に適したより安定し、かつ堅牢であるタンパク質分析を提供する部分的な範囲がある。例えば、本発明によるタンパク質分析の安定性は、分離バッファー中の洗剤濃度が0.05%〜0.4%、好ましくは、0.1%〜0.3%、かつ最も好ましくは、0.15%〜0.25%である場合は改善されうる。改善された方法の希釈比は、1:2〜1:10、好ましくは、1:3〜1:8の範囲、かつより好ましくは、1:4〜1:7の範囲である。
【0073】
タンパク質分析の堅牢性、すなわち、さまざまな塩および洗剤濃度の試料の量的測定値を提供する分析の能力は、分離チャンネルへ注射される混合物を含有する試料中の塩濃度を増加させることによって改善されうる。本発明の前述の実施形態において、試料は通常、前処理中のトリス−トリシンなどバッファー剤の使用により非ゼロ塩濃度を有した。その実施形態において、分離チャンネル(例えば、図7の704)へ注入される混合物を含有する試料中のバッファー濃度は通常、分離バッファーに対するバッファー濃度の前述の範囲内である。多くのバッファーに対する有効なイオン濃度はバッファー濃度未満でありうる。例えば、120mMトリシンおよび40mMトリスから調製されたトリス−トリシンバッファーを含んで成るバッファー溶液は、5mMを超す有効なイオン濃度を有するであろう。そのレベルを上回る混合物を有する試料のイオン濃度を増加することによりタンパク質分析の安定性が改善される。しかし、混合物を含有する試料中のイオン濃度を増加させることにより、分析の感度が減少する傾向もある。言い換えれば、イオン濃度を増加させることにより、低濃度の試料成分を検出する困難さを増加させる傾向がある。したがって、イオン濃度が増加される上限がある。例えば、混合物を含有する試料のイオン濃度は、10mM〜1M、好ましくは、50mM〜500mM、かつより好ましくは、100mM〜500mMに増加されうる。イオン濃度は、NaCl、トリスCl、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの塩を前処理中の試料に添加することによって、または分離チャンネルへ注入される前に試料に1つもしくはそれ以上の塩を含有する溶液を混合することによって、その範囲に至らせることができる。図10の実施形態において、混合物を含有する試料中の塩濃度は、前処理中の試料に塩を添加することによって、または交差点940でマイクロ流体デバイス902に入る試料と混合する槽910における溶液に塩を添加することによって増加されうる。一部の実施形態においては、PBSなどの多成分塩を使用することが好ましい場合がある。例えば、多数の試料の処理用に最適化された前述の部分的な範囲の試薬濃度における試薬濃度でタンパク質分析において、分析の堅牢性は、0.01倍〜10倍、好ましくは、0.05倍〜5倍、かつより好ましくは、0.05倍〜2倍の濃度範囲で試料にPBSを添加することによりさらに改善されうる。かかるタンパク質分析は、0M−1Mの塩濃度、および1%〜2%の洗剤濃度と、標準のSDS−PAGE分析の感度と同等もしくはそれ以上の感度で、タンパク質試料と適応させることができる。
【0074】
混合物を含有する分離バッファーおよび試料の調製の変更は、本発明によるタンパク質分析の安定性および堅牢性を改善しうるが、較正標準の適切な使用がさらに分析を改善しうる。本発明の実施形態における較正標準を使用する1つの簡単な方法は、未知のサイズのポリペプチドから成るタンパク質試料を分析する前に既知の分子量の複数のポリペプチドを含んで成るタンパク質ラダーを含んで成るタンパク質試料を分析することである。未知のサイズのポリペプチドの分子量は、ラダーにおける分子量標準の溶出時間とそのポリペプチドの溶出時間を比較することによって推定されるであろう。通常、この比較を分子量標準タンパク質ラダーに対する分子量と溶出時間との実験数学的相関を導き出し、次いでその相関を使用して溶出時間での分子量ベースの推定値を計算することが有利である。
【0075】
しかし、唯一の標準タンパク質ラダーの使用は、多数の試料の測定の経過にわたって起こりうるプロセスにおけるドリフトを補償することはない。言い換えれば、方法の結果をプロセスドリフトを補償するように定期的に再較正することが有利であろう。定期的再較正は、タンパク質試料の一連の分析内で既知の分子量のポリペプチドを含んで成る単一のタンパク質ラダーの反復分析を散在させることを含んで成りうる。例えば、図9のシステムにおいて、定期的な再較正は、マルチウェルプレート913の8つのウェルに同一の標準タンパク質ラダーを配置し、マルチウェルプレート908における8つの12試料列の各々の前および/または後の標準ラダーを測定することによって達成されうる。同じ標準ラダーがその列の12試料の前後で測定されると、ラダーにおけるポリペプチドの溶出時間の変化はプロセスドリフトを示す。数式を使用してこのプロセスドリフトを補正することができる。1つの実施形態において、相関はその試料の前後に測定された2つの標準ラダーの溶出時間/分子量相関を導き出すことによってタンパク質試料の分析に適用されうる。2つの標準ラダーの溶出時間プロファイルを比較することによってプロセスドリフトの数式を導き出すことができる。例えば、各標準ラダーの溶出時間/分子量相関の加重平均を使用して特定のタンパク質試料に使用される溶出時間/分子量相関を判定するために使用されうる。例えば、図9の実施形態において、12試料を含有する標準ラダーが各列の前後に測定された場合は、第2のラダー分析が第1のラダーの分析後に実行された第13の分析となるであろう。したがって、マルチウェルプレートの第1の試料に適用される相関は第1および第2のラダー相関の加重平均でありうるが、ここで第1のラダー相関は12/13の係数によって加重されるのに対して、第2のラダー相関は1/13の係数によって加重される。この列の第2の試料の分析において、重み係数は、第1および第2のラダーについてそれぞれ、11/13および2/13でありうる。この例示的な加重スキームは本質的に線形であり、2つの標準ラダー測定値のみに基づくが、線形または非線形関数を使用し、2つもしくはそれ以上の標準タンパク質ラダーの分析からの溶出時間/分子量データをいかに使用して、それらのラダー間で分析されるタンパク質試料の溶出時間/分子量相関を導き出しうるかを判定することができる。
【0076】
各タンパク質試料に1つもしくはそれ以上のマーカーを配置することによって、プロセスドリフトの別の補償を得ることができる。既知の分子量のポリペプチドであるこれらのマーカーは、既知の分子量の基準ピークを提供する。実際問題として、マーカーの分子量は、マーカーが識別されうるとともに、マーカーによって生成されるピークがいかなる試料ピークとも重複することがないように、試料におけるポリペプチドの分子量の範囲外であることが必要である。しばしば、試料中の潜在的な目的とするポリペプチドのすべてよりも高い分子量を有するマーカーを見出すことは困難である。したがって、目的とするポリペプチドのすべてよりも低い分子量の唯一のマーカーを使用することがしばしば望ましい。一部の実施形態において、非結合色素によって生成される蛍光ピークは単一の低マーカーとなりうる。例えば、アレクサ蛍光(Alexa Fluor)色素(モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes Inc.)、Eugene(オレゴン州(OR))によって生成されるピークは、大部分の分析の目的とする分子範囲未満の分子量に対応する時間で溶出する。アレクサ蛍光マーカーが分析される一連のタンパク質試料における各試料に添加される場合は、アレクサ蛍光ピークは、試料成分の溶出時間が比較されうる標準を提供しうる。一部の実施形態においては、分離チャンネルへ注入される混合物を含有するアレクサ蛍光色素試料の濃度は、0.1μM〜10μM、好ましくは、0.1μM〜5μM、かつより好ましくは、0.1μM〜10μMである。
【0077】
図12A〜12Cは、低マーカーの使用と組合せた標準タンパク質ラダーを使用する定期的再較正の使用により、いかにしてプロセスドリフトが補正されうるかを示す。図12Aは、14のタンパク質試料の分析による生データを示す。バンドの各列は分析によるポリペプチドピークを表すが、ここでピーク溶出時間は底から頂点まで増加する。分析の順序は左から右である。言い換えれば、第1の分析からのデータは最も左の列にあるが、第14および最後の分析からのデータは最も右の列にある。第1および第14の分析は、ボックス内に配置されているそれらのデータによって示される同一のタンパク質ラダーで実行された。標準ラダー間で分析された12の試料は、ラダーにおけるポリペプチドのさまざまな部分集合を含んで成る。すべての分析からのデータにおいて、最も底の(すなわち、第1の溶出)ピークは各試料内に配置されたアレクサマーカーに対応する。図12Aは、14の測定にわたって、ピークドリフトの溶出時間を示す。図12Bは、低マーカー溶出時間を使用し、図12Aにおけるデータを補正する効果を示す。図12Bにおける第2〜第14のランについて、各ピークの溶出時間には、第1のランにおけるアレクサピークの溶出時間に対するそのランにおけるアレクサピークの溶出時間の比を掛けた。この比を掛けることによって生じる補正溶出時間は、第1のランにおけるアレクサピークと同じ溶出時間を有する第2〜第14のランの各々におけるアレクサピークをもたらす。したがって、図12Bにおける各ランに底ピークは同じ補正溶出時間を有する。他のポリペプチドのピークが依然として溶出時間の関数と思われるプロセスドリフトの成分を反映する。このドリフトを補正するために、溶出時間の関数としてのプロセスドリフトの線形関数が、図12Bにおける2つのラダー測定値(第1および第14の分析)における対応するピークの溶出時間を比較することによって生成された。図12Bの結果に対するこの線形関数の適用により、図12Cにおける二重に補正されたデータが生じた。したがって、標準ラダーによる定期的な再較正と結合された各ランにおける単一マーカーの使用は、プロセスドリフトの効果を軽減するために使用されうる。
【0078】
標準およびマーカーは、タンパク質濃度の量的推計の精度を増加させるためにも使用されうる。本発明による分析において、特定の分子量のポリペプチドに対応する蛍光ピークの領域はしばしばそのポリペプチドの濃度に相関されうる。同一濃度のアレクサ蛍光色素がマイクロ流体デバイスで行われる一連のタンパク質分析へ導入されると、アレクサ蛍光ピーク領域の変化はタンパク質分析におけるプロセスドリフトを示す。ドリフトを補償するために、各分析におけるピーク領域は標準化され、各分析におけるアレクサ蛍光ピークは実質的に同じでありうる。この標準化手順は、一連のタンパク質分析によって生成される量的結果の一貫性を改善することが可能である。他の実施形態において、既知の分子量および既知の濃度のポリペプチドを含んで成るタンパク質ラダーによって生成されるピーク領域を使用し、プロセスドリフトをモニタリングすることができる。異なる分子量のポリペプチドのピーク領域を検査することによって、分子量または溶出時間の関数であるピーク領域におけるいかなる変化も補償することができる。溶出時間に対するプロセスドリフトの効果を補正するために使用されるものと類似の数学的方法を使用し、ピーク領域に対するプロセスドリフトの効果を補正することもできる。
【0079】
本発明は、本発明の範囲を限定することなく本発明の特定の態様を明らかにする以下の実施例を参照してさらに説明される。
【実施例】
【0080】
すべての実験を図1に示されている単一の分離チャンネルおよびチャンネル配置を有する12試料マイクロ流体デバイスにおいて実行した。制御および検出を単一分離チャンネルに沿って配置された単一点レーザー蛍光検出器を有する、多チャンネル、12電極電気制御/検出器を使用して実行した。
【0081】
実施例1: サブCMC分離バッファーを使用する分離
分離チャンネルから受取った蛍光データをコンピュータ(インテル・ペンティアム(Intel Pentium)(登録商標)マイクロプロセッサによるPC)によって記録した。データは、カリパー・テクノロジー社(Caliper Technologies Corp.)独自仕様のソフトウェアによって生成された蛍光vs.時間の線形プロット、およびエミュレートされたゲルフォーマットで表示された。
【0082】
トリス−トリシンバッファー0.5M溶液を0.5M濃度で脱イオン化水中にトリシンを溶解し、1MトリスでpHを7.5に調節することによって調製した。次いで、結果として生じるバッファーを0.22μm注射器フィルタを通じてろ過した。ふるいまたは分離バッファーを0.9%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、および10μMSyto60色素(モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes Inc.)、Eugene(オレゴン州(OR))を有する12.5mMトリス−トリシンバッファー中3%ポリジメチルアクリルアミド−co−アクリル酸調製した。次いで、分離バッファーをコスター・スピン(Costar Spin)−X(商標)0.22μmセルロースアセテート遠心フィルタを通じてろ過した。
【0083】
デバイスの槽へ配置する前に試料を変性バッファーで調製した。変性バッファーは、250mMトリス−トリシンバッファー中0.75%SDS(w/v)および1%2−メルカプトエタノール(v/v)(BME)であった。試料を0.5mlマイクロフュージ管中で変性バッファーと1:1(例えば、試料20μlおよびバッファー20μl)で混合し、100℃に10分間加熱した。次いで、加熱試料を遠心分離し、ボルテックスした。試料をマイクロ流体デバイスのウェルへローディングする前に、脱イオン化水で1:10、例えば、試料/バッファー1μlおよび水9μlで希釈した。したがって、調製試料は0.0375%SDSの洗剤濃度を有した。
【0084】
マイクロ流体デバイスを調製するために、分離バッファー7.5μlをきれいな乾燥したデバイスのウェル166へピペットで取り、注射器で加圧して分離バッファーをデバイスのチャンネルのすべてへ押し進めた。次いで、分離バッファー7.5μlをウェル164、168、および170の各々へピペットで取った。次いで、希釈試料0.5μlをウェル140−162の各々に別々にピペットで取った。図4に示されている実施例において、既知の分子量の標準を使用した。標準は、オボアルブミン(45kD)、ウシ炭酸脱水酵素(29kD)、ダイズトリプシン阻害剤(21.5kD)、およびα−ラクトアルブミン(14.4kD)を含んだ。
【0085】
図1に関して、ウェル142および146はバッファーのみを含み、ブランクとして使用された。4つのタンパク質標準の各々の100μg/mlを含有する標準タンパク質溶液をウェル150および154の各々へ配置したが、500μg/mlで同じ4つのタンパク質の溶液をウェル158および162へ配置した。1000μg/mlでちょうど炭酸脱水酵素標準を含有する溶液をウェル140および144へ配置した。100μg/mlで炭酸脱水酵素およびトリプシン阻害剤を含有する溶液をウェル148および152へ配置したが、同じタンパク質であるが、500μg/mlで含有する溶液をウェル156および160へ配置した。
【0086】
各試料を別々に主要分離チャンネル104へ注入し、分離成分を注入からの保持時間の関数として検出した。各ランのクロマトグラムを標準クマシー染色SDS−PAGEゲルを溶出することを意図した暗帯の形で表示した。エミュレートされたゲルの各レーンは、別々の試料のクロマトグラムを示し、暗帯が背景にわたる蛍光の増加を示す。具体的には、オボアルブミン(45kD)、ウシ炭酸脱水酵素(29kD)、ダイズトリプシン阻害剤(21.5kD)、およびα−ラクトアルブミン(14.4kD)の混合物を調製した。2つの異なる濃度の4つのタンパク質の混合物を100μg/ml(レーンA2、ウェル154)および500μg/ml(レーンA3、ウェル162)でランした。これら標準の各々の別々の混合物も調製し、以下の通りランした。すなわち
レーンB1(ウェル144):炭酸脱水酵素(1mg/ml)
レーンB2(ウェル152):トリプシン阻害剤および炭酸脱水酵素(両方とも100/μg/ml)
レーンB3(ウェル160):レーンA2と同じ(両方とも500μg/ml)
レーンC2(ウェル142):レーンA2と同じ
レーンC3(ウェル150):レーンA3と同じ
レーンD1−D3(ウェル140−156):B1−B3と同じ
図5は、上述と同じようにランした一連の標準の分子量対移動時間の対数のプロットを示す。図示されているように、記載された分離法は、正確な、例えば線形データをもたらし、これは図示されているプロットに従い、一連の標準と未知のタンパク質の移動時間を相関させることによって、分子量が不明のタンパク質の特性決定を可能にする。図4および5からわかるように、タンパク質および他のポリペプチドを特性決定するためにきわめて再現性の正確かつ迅速な方法が提供される。
【0087】
Cy−5色素マーカーも含む同じ一連の標準もランし、洗剤色素フロントの共溶出を示した。このランからのクロマトグラムが図6に示されている。図示されているように、洗剤−色素ピーク(星印で表示)は65kDの範囲で分子量を有するタンパク質と実質的に同じ時間で溶出する。試料前処理バッファーにおける洗剤濃度が当技術分野で既述されたレベル、例えば、2%である場合には、指示ピークははるかに大きく、かつそのピークは実質的にこの分子量範囲におけるタンパク質の同定および定量を妨げる。
【0088】
実施例2:分離後/検出前希釈を使用するポリペプチドの分離および検出
図7に示されているマイクロ流体デバイスを上述したように分離バッファーで充填した。分離チャンネル704は希釈チャンネル720aおよび722aによって、注入点から12cm下流、および検出点732の0.1cm上流の点で交差される。分離バッファーは、30mMトリス−トリシンバッファー、および0.13%SDS中4.2%非架橋ポリジメチルアクリルアミド/co−アクリル酸を含んでいた。ポリマーまたはSDSを有さない30mMトリス−トリシンを含む希釈バッファーを槽720および722ヘ配置した。バッファー剤を分離チャンネルへ電気動力学的に、例えば、電気泳動的に流した。
【0089】
ポリペプチド標準溶液(バイオ・ラッド社(Bio−Rad,Inc.)の10−205kDタンパク質標準)を試料槽、例えば槽706へ配置し、ロードし、先に本明細書で援用された米国特許第5,976,336号明細書に記載された同じ方法を使用して分離チャンネルへ注入した。
【0090】
図8A−8Dは、分離後処理なし、および分離後希釈とともに実行される標準分離のための2100バイオアナライザ(Bioanalyzer)(アジレント・テクノロジー社(Agilent Technologies,Inc.))における検出点732で検出された蛍光対時間のプロットを示す。具体的には、図8AおよびBは、ブランクラン(試料中にポリペプチドなし)および分離後希釈機能性を有さないマイクロ流体デバイスにおけるタンパク質試料ランを示す。このデバイスは、図1に示されているデバイスチャンネル配置と機能的に同様であった。図示されているように、ブランクランおよびポリペプチドランからのデータには、実質的な背景、および大きな洗剤色素フロントの後、ベースラインディボット、および以下の色素こぶを含む他のベースライン問題が含まれた。これら同じベースライン偏差は試料分離ランにおいて見られたが、これは分離データの認定および定量における実質的な障害をもたらす。図8Cおよび8Dは、検出点の上流ではなく、分離の大半の下流の分離チャンネルへトリス−トリシンバッファーが導入された分離後希釈ステップを使用する同じブランクランおよびポリペプチド試料分析を示す。図示されているように、分離後希釈ステップは、非希釈試料にわたって検出試料成分に対する全体的な背景蛍光を実質的に削減すると同時に、例えば、図8Aおよび8Bに示されているように、ミセル色素結合と関係があるベースラインのこぶおよびくぼみをも削減する。
【0091】
他に特に言及されていない限り、本明細書に規定されたすべての濃度値は、その成分を変化し、または混合物もしくは溶液に混合されると1つもしくはそれ以上の異なる種へその成分を転換するその成分のいかなる変換、解離、反応とも無関係に、混合物もしくは溶液にその成分が添加された場合の所定成分の濃度を指す。
【0092】
すべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照することにより援用されることが示されているのと同じ程度に本明細書で参照することにより援用される。本発明は明解さと理解のための説明図および実施例によって詳しく記載されているが、一部の変更および修正が添付の特許請求の範囲内で実施されうることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明と併せて使用するためのマイクロ流体デバイスを示す図である。
【図2】本発明によるポリペプチドの特性決定において使用するための全体的なシステムを示す図である。
【図3】所定バッファー中の洗剤の臨界ミセル濃度を測定するための蛍光強度対洗剤濃度のプロットを示す図である。
【図4】本発明の方法を使用するマイクロ流体デバイスにおいて実行されるタンパク質分離のクロマトグラムを示す図である。クロマトグラムはエミュレートされたゲルとして表示されており、12の別々の分離を示し、各々がエミュレートされたゲルの別々のレーンとして表示されている。
【図5】図4に示されているように分離された標準タンパク質の分子量の対数対移動時間のプロットを示す図である。
【図6】洗剤−色素フロントピークを示す分子量標準のクロマトグラムを示す図である。
【図7】本明細書に記載された方法による分離後処理を実行するためのマイクロ流体デバイスを示す概略図である。
【図8A】分離後希釈の効果を示す分離データのプロットを示す図である。
【図8B】分離後希釈の効果を示す分離データのプロットを示す図である。
【図8C】分離後希釈の効果を示す分離データのプロットを示す図である。
【図8D】分離後希釈の効果を示す分離データのプロットを示す図である。
【図9】本発明によるポリペプチドを特性決定するためのシステムを示す概略図である。
【図10】本明細書に記載された方法による分離後処理を実行するための外部キャピラリーに接続されたマイクロ流体デバイスを示す概略図である。
【図11】AおよびBは本発明によるタンパク質分析を実行するためのマイクロ流体デバイスの交差内のフローパターンを示す概略図である。
【図12】A〜Cはそれぞれ、タンパク質ラダーの遂次解析で生じたデータ、第1の方法を使用して補正された同じデータ、および第2の方法を使用して補正された同じデータを示す概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つもしくはそれ以上のポリペプチドを分離する方法であって、
少なくとも第1のチャンネルが配置された本体を有するマイクロ流体デバイスを提供し、前記第1のチャンネルが第1および第2のチャンネルセグメントを含んで成り、前記第1のチャンネルセグメントが前記2つもしくはそれ以上のポリペプチドの分離と適合性である濃度で洗剤が配置された分離バッファーを含んで成るステップと、
前記第1の試料材料を前記第1のチャンネルセグメントを通じて流し、前記2つもしくはそれ以上のポリペプチドを分離するステップと、
前記第1の試料材料を前記第1のチャンネルセグメントから前記第2のチャンネルセグメントへ流すステップと、
第1の希釈剤を前記第2のチャンネルセグメントへ導入し、前記希釈剤が前記分離バッファー中の洗剤濃度を、前記第2のチャンネルセグメントの長さに沿った検出領域で前記2つもしくはそれ以上のポリペプチドの検出と適合性である濃度に希釈するステップと
を含んで成る方法。
【請求項2】
前記分離操作が電気泳動ポリペプチド分離を含んで成り、かつ前記第1のチャンネルセグメントにおける洗剤濃度が洗剤の臨界ミセル濃度(CMC)以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のチャンネルセグメントにおける前記洗剤濃度が約0.1%〜1%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出が前記第1の操作において分離されたポリペプチドと関係した親油性色素の検出を含んで成り、かつ前記第2のチャンネルセグメント中の前記洗剤濃度が前記洗剤のCMC未満である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のチャンネルセグメント前記洗剤濃度が約0.15%〜0.25%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記洗剤濃度が約0.05%〜0.4%である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記洗剤濃度が約0.1%〜0.3%である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記希釈剤が、約1:2〜1:30の範囲で前記分離バッファーを希釈する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分離バッファーが、ポリマーマトリクス、バッファー剤、第1の洗剤、および親油性色素を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分離マトリクスが非架橋ポリマー溶液を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記非架橋ポリマー溶液が直鎖ジメチルアクリルアミドポリマー溶液を含んで成る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
直鎖ポリアクリルアミドポリマーが約0.1〜約20%(w/v)の濃度で前記分離バッファー中に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の洗剤がスルホン酸アルキル洗剤を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の洗剤がオクタデシル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の洗剤がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の洗剤が、約0.01%〜1%の濃度で前記第1のチャンネルセグメントにおける前記分離バッファー中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記バッファー剤がトリス−トリシンを含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記バッファー剤が、約10mM〜約200mMの濃度で前記第1のチャンネルセグメントにおける前記分離バッファー中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記親油性色素が親油性蛍光色素である、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記親油性色素が、約0.1μM〜約1mMの濃度で前記第1のチャンネルセグメントにおける前記分離バッファー中に存在する請求項89に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記希釈剤が、約1:2〜1:10の範囲で前記分離バッファーを希釈する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記希釈剤が、約1:3〜1:8の範囲で前記分離バッファーを希釈する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記希釈剤が、約1:4〜1:7の範囲で前記分離バッファーを希釈する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ポリペプチドを分離するためのデバイスであって、
少なくとも第1の分離チャンネルが配置された本体構造と、
前記第1の分離チャンネルに配置された分離バッファーと
を含み、前記分離バッファーが、
非架橋ポリマー溶液と、
約10mM〜200mMの濃度を有するバッファー剤と、
約0.01%〜1%(w/v)の濃度を有する第1の洗剤と、
前記ポリペプチドもしくは複数のポリペプチドに結合することが可能な親油性色素であり、約0.μM〜1mMの濃度を有する親油性色素と
を含んで成る、デバイス。
【請求項25】
前記分離バッファーにおける前記洗剤濃度が約0.05%〜0.4%である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記洗剤濃度が約0.1%〜0.3%である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項27】
前記洗剤濃度が約0.15%〜0.25%である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項28】
前記分離バッファーにおける前記第1の洗剤の濃度の、約0.05倍〜3倍である濃度を有する前記分離チャンネルに流体連結された第2の洗剤の供給源をさらに含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【請求項29】
前記分離バッファーにおける前記第1の洗剤の濃度未満である濃度を有する前記分離チャンネルに流体連結された第2の洗剤の供給源をさらに含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【請求項30】
前記第2の洗剤が、約0.0025%〜0.01%(w/v)である濃度を有する、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記第2の洗剤が約0.0025%〜0.5%(w/v)である濃度を有する、請求項29に記載のデバイス。
【請求項32】
前記本体構造が、前記分離チャンネルに流体連結されている第1のキャピラリーチャンネルが配置されたキャピラリー要素を含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【請求項33】
前記分離チャンネルに流体連結されたイオン溶液の供給源をさらに含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【請求項34】
前記イオン溶液の供給源が、NaCl、トリスCl、およびPBSを含んで成る群から選択される塩を含んで成る、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記イオン溶液の前記イオン濃度が約100mM〜500mMである、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
前記イオン溶液が、前記分離チャンネルに流体連結されている前記本体構造の槽に配置されている、請求項34に記載のデバイス。
【請求項37】
前記分離チャンネルに流体連結された少なくとも1つの標準タンパク質ラダーの供給源をさらに含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【請求項1】
2つもしくはそれ以上のポリペプチドを分離する方法であって、
少なくとも第1のチャンネルが配置された本体を有するマイクロ流体デバイスを提供し、前記第1のチャンネルが第1および第2のチャンネルセグメントを含んで成り、前記第1のチャンネルセグメントが前記2つもしくはそれ以上のポリペプチドの分離と適合性である濃度で洗剤が配置された分離バッファーを含んで成るステップと、
前記第1の試料材料を前記第1のチャンネルセグメントを通じて流し、前記2つもしくはそれ以上のポリペプチドを分離するステップと、
前記第1の試料材料を前記第1のチャンネルセグメントから前記第2のチャンネルセグメントへ流すステップと、
第1の希釈剤を前記第2のチャンネルセグメントへ導入し、前記希釈剤が前記分離バッファー中の洗剤濃度を、前記第2のチャンネルセグメントの長さに沿った検出領域で前記2つもしくはそれ以上のポリペプチドの検出と適合性である濃度に希釈するステップと
を含んで成る方法。
【請求項2】
前記分離操作が電気泳動ポリペプチド分離を含んで成り、かつ前記第1のチャンネルセグメントにおける洗剤濃度が洗剤の臨界ミセル濃度(CMC)以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のチャンネルセグメントにおける前記洗剤濃度が約0.1%〜1%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出が前記第1の操作において分離されたポリペプチドと関係した親油性色素の検出を含んで成り、かつ前記第2のチャンネルセグメント中の前記洗剤濃度が前記洗剤のCMC未満である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のチャンネルセグメント前記洗剤濃度が約0.15%〜0.25%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記洗剤濃度が約0.05%〜0.4%である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記洗剤濃度が約0.1%〜0.3%である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記希釈剤が、約1:2〜1:30の範囲で前記分離バッファーを希釈する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分離バッファーが、ポリマーマトリクス、バッファー剤、第1の洗剤、および親油性色素を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分離マトリクスが非架橋ポリマー溶液を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記非架橋ポリマー溶液が直鎖ジメチルアクリルアミドポリマー溶液を含んで成る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
直鎖ポリアクリルアミドポリマーが約0.1〜約20%(w/v)の濃度で前記分離バッファー中に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の洗剤がスルホン酸アルキル洗剤を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の洗剤がオクタデシル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の洗剤がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の洗剤が、約0.01%〜1%の濃度で前記第1のチャンネルセグメントにおける前記分離バッファー中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記バッファー剤がトリス−トリシンを含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記バッファー剤が、約10mM〜約200mMの濃度で前記第1のチャンネルセグメントにおける前記分離バッファー中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記親油性色素が親油性蛍光色素である、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記親油性色素が、約0.1μM〜約1mMの濃度で前記第1のチャンネルセグメントにおける前記分離バッファー中に存在する請求項89に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記希釈剤が、約1:2〜1:10の範囲で前記分離バッファーを希釈する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記希釈剤が、約1:3〜1:8の範囲で前記分離バッファーを希釈する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のチャンネルセグメントにおける前記希釈剤が、約1:4〜1:7の範囲で前記分離バッファーを希釈する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ポリペプチドを分離するためのデバイスであって、
少なくとも第1の分離チャンネルが配置された本体構造と、
前記第1の分離チャンネルに配置された分離バッファーと
を含み、前記分離バッファーが、
非架橋ポリマー溶液と、
約10mM〜200mMの濃度を有するバッファー剤と、
約0.01%〜1%(w/v)の濃度を有する第1の洗剤と、
前記ポリペプチドもしくは複数のポリペプチドに結合することが可能な親油性色素であり、約0.μM〜1mMの濃度を有する親油性色素と
を含んで成る、デバイス。
【請求項25】
前記分離バッファーにおける前記洗剤濃度が約0.05%〜0.4%である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記洗剤濃度が約0.1%〜0.3%である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項27】
前記洗剤濃度が約0.15%〜0.25%である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項28】
前記分離バッファーにおける前記第1の洗剤の濃度の、約0.05倍〜3倍である濃度を有する前記分離チャンネルに流体連結された第2の洗剤の供給源をさらに含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【請求項29】
前記分離バッファーにおける前記第1の洗剤の濃度未満である濃度を有する前記分離チャンネルに流体連結された第2の洗剤の供給源をさらに含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【請求項30】
前記第2の洗剤が、約0.0025%〜0.01%(w/v)である濃度を有する、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記第2の洗剤が約0.0025%〜0.5%(w/v)である濃度を有する、請求項29に記載のデバイス。
【請求項32】
前記本体構造が、前記分離チャンネルに流体連結されている第1のキャピラリーチャンネルが配置されたキャピラリー要素を含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【請求項33】
前記分離チャンネルに流体連結されたイオン溶液の供給源をさらに含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【請求項34】
前記イオン溶液の供給源が、NaCl、トリスCl、およびPBSを含んで成る群から選択される塩を含んで成る、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記イオン溶液の前記イオン濃度が約100mM〜500mMである、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
前記イオン溶液が、前記分離チャンネルに流体連結されている前記本体構造の槽に配置されている、請求項34に記載のデバイス。
【請求項37】
前記分離チャンネルに流体連結された少なくとも1つの標準タンパク質ラダーの供給源をさらに含んで成る、請求項24に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−520710(P2007−520710A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551506(P2006−551506)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/002746
【国際公開番号】WO2005/075967
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506076709)カリパー・ライフ・サイエンシズ・インク. (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/002746
【国際公開番号】WO2005/075967
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506076709)カリパー・ライフ・サイエンシズ・インク. (11)
【Fターム(参考)】
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