タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を有する環状ペプチド化合物
【課題】本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性が強い、新規物質を提供することを目的とする。
【解決手段】2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物が、タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性が強い物質であることを見出した。
【解決手段】2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物が、タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性が強い物質であることを見出した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤又は抗がん剤として有用な、新規な環状ペプチド化合物に関する。本発明において、環状ペプチドとは、アミノ酸残基がペプチド結合によって環状に連結した化合物を示す。
【背景技術】
【0002】
生体内でリン酸化されるタンパク質のアミノ酸残基には、チロシン残基、セリン残基、又はトレオニン残基等が知られている。
【0003】
タンパク質チロシンキナーゼは、これらの残基の内のチロシン残基を特異的にリン酸化する酵素であり、細胞増殖、細胞分化、又は癌化を制御しているシグナル伝達経路に含まれており、該経路において重要な役割を果たしている。
【0004】
具体的な役割の例として、細胞外シグナルにより活性化したタンパク質チロシンキナーゼは、基質タンパク質のチロシン残基をリン酸化することにより該基質タンパク質の活性を調節することを通じて、細胞の増殖を制御することが知られている。
【0005】
一方、タンパク質チロシンキナーゼをコードする遺伝子の多くは、がん遺伝子として知られており、種々の癌細胞においてタンパク質チロシンキナーゼ活性が亢進していることが知られている。
【0006】
これらの事実より、タンパク質チロシンキナーゼを阻害する物質は抗がん剤として有用であるとして、各種タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の開発が進められている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平09−510993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤としては、種々のものが開発されているが、阻害活性の点では不十分なものが多い。
【0009】
従って、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性が強い、新規物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物が、タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性が高い物質であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の構成を有するものである。
【0012】
項1. 2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物。
【0013】
項2. アミノ酸Aが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、L‐メチオニン、L‐セリン、L‐システイン、L‐グリジン、L‐スレオニン、L‐リジン、又はL‐チロシンである、請求項1に記載の環状ペプチド化合物。
【0014】
項3. アミノ酸Aが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、又はL‐メチオニンである、請求項1に記載の環状ペプチド化合物。
【0015】
項4. さらに、2個以上の同種のアミノ酸Bを有し、アミノ酸Bはアミノ酸Aとは異なるアミノ酸である、請求項1〜3のいずれかに記載の環状ペプチド化合物。
【0016】
項5. アミノ酸Bが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、L‐メチオニン、L‐セリン、L‐システイン、L‐グリジン、L‐スレオニン、L‐リジン、又はL‐チロシンである、請求項4に記載の環状ペプチド化合物。
【0017】
項6. アミノ酸Bが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、又はL‐メチオニンである、請求項4に記載の環状ペプチド化合物。
【0018】
項7. 下記(a)及び/又は(b)の特徴を有する、項1〜6のいずれかに記載の環状ペプチド化合物:
(a)アミノ酸配列が左右対称配列である、及び/又は
(b)前記アミノ酸A及び前記アミノ酸Bが交互に配置した、4アミノ酸残基からなる部分を有する。
【0019】
項8. 配列番号1〜23のいずれかで表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された、項1又は2に記載の環状ペプチド化合物。
配列番号1:Pro-Trp-Gly-Trp
配列番号2:Val-Val-Gly-Tyr-Cys
配列番号3:Phe-Phe-Phe-Gly
配列番号4:His-Ala-Trp-Ala-His
配列番号5:Pro-Asp-Pro-Asp-Pro
配列番号6:Gly-Met-Pro-Met-Pro
配列番号7:Ala-Ala-Gly-Cys-Tyr
配列番号8:Pro-Ser-Pro-Ser-Pro
配列番号9:Cys-Pro-Cys-Pro-Asp
配列番号10:Glu-Cys-Pro-Cys-Pro
配列番号11:Phe-Phe-Phe-Phe
配列番号12:Arg-Cys-Pro-Cys-Pro
配列番号13:Thr-Gly-Ala-Gly-Thr
配列番号14:Val-Pro-Phe-Phe
配列番号15:Ala-Ala-Gly-Phe-Trp
配列番号16:Pro-Gly-Pro-Gly-Pro
配列番号17:Pro-Met-Pro-Met-Glu
配列番号18:Pro-Thr-Pro-Thr-Pro
配列番号19:Ser-His-Gly-His-Ser
配列番号20:Cys-Pro-Gly-Pro-Cys
配列番号21:Pro-Lys-Pro-Lys-Pro
配列番号22:Tyr-Ala-Val-Ala-Tyr
配列番号23:Pro-His-Pro-His-Pro
(各配列中、左側がアミノ末端で、右側がカルボキシル末端である。)
項9. 配列番号1、3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、22、又は23で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された、項8に記載の環状ペプチド化合物。
【0020】
項10. 項1〜9のいずれかに記載の環状ペプチド化合物を有効成分とする、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤。
【0021】
項11. 項1〜9のいずれかに記載の環状ペプチド化合物を有効成分とする、医薬品。
【0022】
項12. 抗がん剤である、項11に記載の医薬品。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、新規な環状ペプチド化合物を提供することができる。本発明の環状ペプチド化合物は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性が高く、且つ抗がん剤として使用した時に副作用が起きにくいため、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、医薬品、又は抗がん剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の環状ペプチド化合物が有する特徴の一つである、アミノ酸配列が左右対称配列であるという特徴について説明した図である。
【図2】製造例1に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図3】製造例2に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図4】製造例3に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図5】製造例3に係る環状ペプチドを、NMRによって確認した結果である。
【図6】製造例4に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図7】製造例5に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図8】製造例6に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図9】製造例7に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図10】製造例8に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図11】製造例9に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図12】製造例10に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図13】製造例11に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図14】製造例12に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図15】製造例13に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図16】製造例14に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図17】製造例15に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図18】製造例16に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図19】製造例17に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図20】製造例18に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図21】製造例19に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図22】製造例20に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図23】製造例21に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図24】製造例22に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図25】製造例23に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図26】製造例1〜23に係る環状ペプチドの、理論分子量、及び測定分子量を示した図である。
【図27】式(1)〜(23)(製造例1〜23)に係る環状ペプチドそれぞれについての、IC50の値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の環状ペプチド化合物
本発明の環状ペプチド化合物は、2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物である。
【0026】
アミノ酸Aはとしては、生体のタンパク質を構成するα‐アミノ酸に限定されず、β‐アミノ酸、γ‐アミノ酸なども使用することができるが、好ましくはα‐アミノ酸である。
【0027】
D‐型、L‐型が存在するアミノ酸については、どちらの型のアミノ酸も使用することができるが、好ましくはL‐アミノ酸である。
【0028】
アミノ酸Aは、特に限定されるものではないが、より強いチロシンキナーゼ阻害活性を得ることができるという観点から、好ましくは、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、プロリン、アスパラギン酸、メチオニン、セリン、システイン、グリジン、スレオニン、リジン、又はチロシンであり、より好ましくは、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、プロリン、アスパラギン酸、又はメチオニンである。これらのアミノ酸は、いずれもL‐アミノ酸が好ましい。
【0029】
アミノ酸Aの個数は、2以上であれば特に限定されるものではないが、2〜4の整数、特に2又は3である。
【0030】
本発明の環状ペプチド化合物は、更に、2個以上の同種の任意のアミノ酸Bを有することが好ましい。アミノ酸Bは、前記アミノ酸Aとは異なるアミノ酸である。
【0031】
アミノ酸Bは、特に限定されるものではないが、より強いチロシンキナーゼ阻害活性を得ることができるという観点から、好ましくは、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、プロリン、アスパラギン酸、メチオニン、セリン、システイン、グリジン、スレオニン、リジン、又はチロシンであり、より好ましくは、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、プロリン、アスパラギン酸、又はメチオニンである。これらのアミノ酸は、いずれもL‐アミノ酸が好ましい。
【0032】
アミノ酸Bの個数は、2以上であれば特に限定されるものではないが、2〜4の整数、特に2又は3である。
【0033】
本発明の環状ペプチドにアミノ酸A及びアミノ酸Bを含む場合、アミノ酸Aとアミノ酸Bとの組み合わせは、特に限定されるものではないが、好ましくは、アラニンとヒスチジンとの組み合わせ、プロリンとアスパラギン酸との組み合わせ、メチオニンとプロリンとの組み合わせ、プロリンとセリンとの組み合わせ、システインとプロリンとの組み合わせ、グリジンとスレオニンとの組み合わせ、プロリンとグリジンとの組み合わせ、プロリンとメチオニンとの組み合わせ、プロリンとスレオニンとの組み合わせ、セリンとヒスチジンとの組み合わせ、プロリンとリジンとの組み合わせ、チロシンとアラニンとの組み合わせ、又はプロリンとヒスチジンとの組み合わせであり、より好ましくは、アラニンとヒスチジンとの組み合わせ、プロリンとアスパラギン酸との組み合わせ、メチオニンとプロリンとの組み合わせ、プロリンとセリンとの組み合わせ、又はシステインとプロリンとの組み合わせである。これらの組み合わせにおいて、組み合わせ中の2つのアミノ酸のどちらがアミノ酸A、又はアミノ酸Bでもよい。これらのアミノ酸は、いずれもL‐アミノ酸が好ましい。
【0034】
また、本発明の環状ペプチド化合物は、(a)アミノ酸配列が左右対称配列である、及び/又は(b)前記アミノ酸A及び前記アミノ酸Bが交互に配置した、4アミノ酸残基からなる部分を有することが好ましい。
【0035】
アミノ酸配列が左右対称である(特徴(a))とは、各アミノ酸残基間の距離が均等になるように各アミノ酸残基が配置された環状ペプチド配列において、特定の1アミノ酸残基及び環状ペプチド配列の中心点を通る分割線を引く場合に、該分割線に対して左右対称であるような分割線を引くことができることを示す。すなわち、アミノ酸残基数が4つの場合は、上記分割線が環状ペプチド配列中の2つのアミノ酸残基上を通過することになり、残りの2つのアミノ酸残基が同一であることを示す(図1)。また、アミノ酸残基数が5つの場合は、上記分割線が環状ペプチド配列中の1つのアミノ酸残基上を通過することになり、該分割線の左右に存在する2組のアミノ酸残基対それぞれが、同一のアミノ酸残基の対であることを示す(図1)。
【0036】
前記アミノ酸A及び前記アミノ酸Bが交互に配置した4アミノ酸残基からなる部分を有する(特徴(b))とは、環状ペプチド中に、アミノ酸A−アミノ酸B−アミノ酸A−アミノ酸B、又はアミノ酸B−アミノ酸A−アミノ酸B−アミノ酸Aからなる部分を有していることを示す。このような部分としては、好ましくは、アミノ酸一文字表記で、PDPD、DPDP、MPMP、PSPS、SPSP、CPCP、PGPG、GPGP、PMPM、PTPT、TPTP、PKPK、KPKP、PHPH、又はHPHPからなる部分が挙げられ、より好ましくは、PDPD、DPDP、MPMP、PSPS、SPSP、又はCPCPからなる部分が挙げられる。これらのアミノ酸は、いずれもL‐アミノ酸が好ましい。
【0037】
具体的な本発明の環状ペプチド化合物としては、より強いタンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を有するという観点から、好ましくは、配列番号1〜23のいずれかで表されるアミノ酸配列、より好ましくは、配列番号1〜13のいずれかで表されるアミノ酸配列、特に好ましくは、配列番号1〜4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された環状ペプチドが挙げられる。配列番号1〜23は、上記具体的な本発明の環状ペプチド中の特定のペプチド結合を切断し、N末端アミノ酸をアミノ酸番号1として、鎖状ペプチドとして表したものである。
【0038】
また、本発明において、環状ペプチド化合物には、本発明の環状ペプチド化合物が有するタンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を失わない範囲で、環状ペプチドの誘導体及び薬理学的に許容される塩も含まれる。誘導体としては、グリコシル化、アミド化、ホスホリル化、カルボキシル化、リン酸化、ホルミル化、アシル化等されたものを例示することができる。また、薬理学的に許容される塩としては、フッ化水素酸塩、塩酸塩などのハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの無機酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、などを例示することができる。
【0039】
本発明の環状ペプチド化合物は、公知の方法、例えば固相合成法で鎖状ペプチドを合成した後、該鎖状ペプチドを樹脂に固定したまま環化反応を行う方法や、固相合成法により鎖状ペプチドを合成した後、該鎖状ペプチドを切り離し、溶液中で環化反応を行う方法で製造することができる。このような製造方法としては、例えば、文献1(Bioorganic & MedicinalChemistryLetter, 2005, 15, 4717 - 4721)に示される製造方法が挙げられる。
【0040】
本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、医薬品又は抗がん剤
本発明の環状ペプチド化合物は、後述の実施例に示されるようにタンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を有するため、チロシンキナーゼ阻害剤として使用することができる。
【0041】
また、タンパク質チロシンキナーゼをコードする遺伝子の多くは、がん遺伝子として知られており、種々の癌細胞でタンパク質チロシンキナーゼ活性が亢進していることが知られている。そして、タンパク質チロシンキナーゼの活性を阻害する作用は、抗がん作用につながることが知られている。
【0042】
従って、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤として有用な本発明の環状ペプチド化合物は、医薬品、又は抗がん剤としても用いることができる。
【0043】
本発明の環状ペプチド化合物をタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、医薬品又は抗がん剤として用いる場合の一例について説明する。
【0044】
本発明の環状ペプチド化合物は、適当な溶媒に溶解した状態、または粉末状に乾燥した状態で使用することができる。
【0045】
また、本発明の環状ペプチド化合物は、薬学的に許容される各種担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤等が含まれる)と配合し、製剤され得る。製剤は慣用の添加剤を含んでいてもよい。
【0046】
製剤形態は、特に限定されず、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与剤、注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤等の非経口投与剤等などの各種製剤形態を挙げることができる。
【0047】
製剤中の本発明のポリペプチドの含有量は、投与経路、患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、ポリペプチドの1日投与量が通常10〜1000mg程度、より好ましくは100〜500mg程度になる量とすればよい。1日1回投与する場合は、1製剤中にこの量が含まれていればよく、1日3回投与する場合は、1製剤中にこの3分の1量が含まれていればよい。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
1.環状ペプチドの合成
基本的には、本製造工程は、まず、樹脂を用いて固相法でアミノ酸残基4(テトラペプチド)ないし5(ペンタペプチド)の鎖状ペプチドを合成する。その後、その鎖状ペプチドを樹脂から切り離し、溶液中で、鎖状ペプチドの両端(ヘッドandテール、N末端とC末端)をペプチド結合し、閉環するものである。この方法により、配列番号1〜23に係る環状ペプチドを製造した(製造例1〜23)(配列番号と、製造例番号は対応する。製造例1は、配列番号1に係る環状ペプチドを製造したものである。)。
【0050】
製造例3
下記工程に従って、配列番号3に係る環状ペプチドを合成した。
【0051】
アミノ酸配列Phe-Phe-Phe-Gly (配列番号3)をもとに、その製造工程の例を示す。
【0052】
1)Fmoc-Gly-OHアミノ酸(1 eq)を1 mlのDMF(N,N-dimethylformamideの略、以下同じ)に溶かし、DIPCI (N,N’diisopropylcarbodiimideの略、以下同じ)/DMF (DIPCI 1mmol/ml)を1.4 ml, HOBT(1-hydroxybenzotriazoleの略、以下同じ)/DMF(HOBT 1mmol/ml)を 1.4 mlをそれぞれ加え、Fmoc-Gly-OHアミノ酸を活性化させる。
【0053】
2)2-chlorotrityl chloridepolystyrene (2−クロロトリチルクロライドポリスチレン)樹脂(1.2 mmol/g loading)をDMF (1.5ml)に加えて20分間振とうし、膨潤させてから、吸引ろ過し、この操作を3回繰り返す。
【0054】
3)活性化したFmoc-Gly-OHアミノ酸を2−クロロトリチルクロライドポリスチレン樹脂に導入し、1.5時間振とうした後吸引ろ過し、この操作を3回繰り返す。
【0055】
4)上記3)に1.5 mlの20% piperidine/DMFを加え、5分間振とうしてから吸引ろ過し、更に3 mlの20% piperidine/DMFを加え、20分間振とうろ過し、Fmoc基を除去する。この操作の後、液が中性になるまで、DMF (1.5ml)での洗浄を繰り返えす。ここで、第一級アミノ基の検出のための定性カイザーテストによってモニターし、陽性であることを確認する。
【0056】
5)2番目のアミノ酸残基を上記4)に縮合させるため、まず、Fmoc-Phe-OHアミノ酸(1 eq)を1 mlのDMFに溶かし、DIPCI/DMF 1.4 ml, HOBT/DMF 1.4 mlをそれぞれ加え、活性化する。
【0057】
6)活性化したFmoc-Gly-OHアミノ酸を2−クロロトリチルクロライドポリスチレン樹脂に導入し、1.5時間振とうした後吸引ろ過し、この操作を3回繰り返す。
【0058】
7)上記6)に1.5 mlの20% piperidine/DMFを加え、5分間振とうしてから吸引ろ過し、更に3 mlの20% piperidino/DMFを加え、20分間振とうろ過し、Fmoc基を除去する。更に、液が中性になるまで、DMF (1.5ml)での洗浄を繰り返えす。ここで、第一級アミノ基の検出のための定性カイザーテストによってモニターし、陽性であることを確認する。
【0059】
8)3番目、4番目のアミノ酸残基であるFmoc-Phe-OHアミノ酸を縮合させるため、上記5),6),7)の操作を繰り返す。
【0060】
9)上記で得られたトリペプチドを50 mlマイヤーフラスコに入れ、8 ml TFA(trifluoroacetic acidの略、以下同じ)を加えてから、マグネチックスターラーを用いて、3時間攪拌して樹脂からトリペプチドを切り離し、全保護基の除去を一挙に行う。
【0061】
10)9)で得られた鎖状トリペプチドを閉環して、環状ペプチドとするため、DIPCI/DMF (DIPCI 1mmol/ml)を1.4 ml, HOBT/DMF(HOBT 1mmol/ml)を 1.4 mlをそれぞれ加える。
【0062】
製造例1、2、及び4〜23
上記製造例3の製造方法に準じて、配列番号1、2、及び4〜23に係る環状ペプチドを合成した(製造例1、2、及び4〜23)。
【0063】
製造例1〜23に係る環状ペプチドの確認
合成した製造例1〜23に係る環状ペプチドを、MS spectrometry又はNMRによって確認した(図2〜25:図の番号は、製造例番号に対応する)。製造例1〜2、及び4〜23に係る環状ペプチドついてはMS spectrometryで確認し(図2〜3、及び6〜25)、製造例3に係る環状ペプチドについては、MS spectrometry (図4)及びNMRで確認した(図5)。製造例1〜23に係る環状ペプチドの理論分子量及び測定分子量を図26に示す。
【0064】
2.環状ペプチドのチロシンキナーゼ阻害活性の測定
製造例1〜23に係る環状ペプチドのチロシンキナーゼ阻害活性は、TAKARA Universal Tyrosine Assay Kit(Takara-bio Co.)を用いて測定した。
【0065】
該キットによる測定の概要は、プレートに固相化された合成ペプチド(Poly(Glu-Tyr)(4:1,20〜50kDa))をKinase標準品(培養細胞由来のKinase粗抽出物)でリン酸化反応させる系に、製造例1〜23に係る環状ペプチドを共存させ、上記合成ペプチドのリン酸化の程度を測定することにより、製造例1〜23に係る環状ペプチドの阻害活性を測定するというものである。以下詳細に説明する。
【0066】
リン酸化反応は、最終容量40μlのチロシンキナーゼ標準品中で、37℃で行った。検量線作成用のチロシンキナーゼ標準品の濃度としては、チロシンキナーゼp60c-Src換算で、600、500、341、200、100×10-7units/μlのものを用いた。阻害活性測定用のキナーゼ標準品は、500×10-7units/μlのものを用いた。リン酸化反応は、40nM ATPを10μl加えることにより開始し、該反応は37℃で30分間行った。反応終了後、反応液をデカンテーションで除去し、Tween-PBSで4回洗浄した。ブロッキング用緩衝液を100μl加えて、37℃で30分間静置した。Tween-PBSで洗浄後、抗リン酸化抗体を50μl加えて、37℃で30分間静置した。反応液をデカンテーションで除去し、残りの液をTween-PBS で4回リンスすることにより除去した。HRP発色基質液を100μl加えて、37℃で15分間静置した。1N 硫酸を100μl加えることにより反応を停止させた。マイクロプレートリーダーにより、450nmの吸光度を測定した。
【0067】
リン酸化反応液中に製造例1〜23に係る環状ペプチドをそれぞれ加えた場合の吸光度と検量線を基に、製造例1〜23に係る環状ペプチドそれぞれについて、リン酸化阻害率を求めた。そして、該リン酸化阻害率及び阻害時の環状ペプチドの濃度を基に、製造例1〜23に係る環状ペプチドそれぞれについて、IC50を求めた。結果を図27に示す。
【0068】
本実験結果より、製造例1〜23に係る環状ペプチドは、いずれも強いタンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を示すことが認められた。
【0069】
3.In silicoドッキング実験
阻害活性の認められた配列番号1〜23に係る環状ペプチド(製造例1〜23)のうち、配列番号3に係る環状ペプチドについて、タンパク質チロシンキナーゼに対する結合エネルギー及び阻害強度を、コンピューター上で測定した。
【0070】
具体的には、配列番号3に係る環状ペプチドを分子可視化してin silico合成し、タンパク質チロシンキナーゼ(Protein DataBank(http://www.rcsb.org/pdb/home/)のコード:1skj)に対する結合エネルギー及び阻害強度を、薬物・受容体間ドッキングソフト(AtuoDock4.2)を用いて測定した。
【0071】
その結果、結合エネルギーは- 7.54 kcal/molであり、阻害強度は1.25 μMであった。この結果より、配列番号3に係る環状ペプチドは阻害強度が強く、タンパク質チロシンキナーゼ阻害薬として有効であることが明らかとなった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤又は抗がん剤として有用な、新規な環状ペプチド化合物に関する。本発明において、環状ペプチドとは、アミノ酸残基がペプチド結合によって環状に連結した化合物を示す。
【背景技術】
【0002】
生体内でリン酸化されるタンパク質のアミノ酸残基には、チロシン残基、セリン残基、又はトレオニン残基等が知られている。
【0003】
タンパク質チロシンキナーゼは、これらの残基の内のチロシン残基を特異的にリン酸化する酵素であり、細胞増殖、細胞分化、又は癌化を制御しているシグナル伝達経路に含まれており、該経路において重要な役割を果たしている。
【0004】
具体的な役割の例として、細胞外シグナルにより活性化したタンパク質チロシンキナーゼは、基質タンパク質のチロシン残基をリン酸化することにより該基質タンパク質の活性を調節することを通じて、細胞の増殖を制御することが知られている。
【0005】
一方、タンパク質チロシンキナーゼをコードする遺伝子の多くは、がん遺伝子として知られており、種々の癌細胞においてタンパク質チロシンキナーゼ活性が亢進していることが知られている。
【0006】
これらの事実より、タンパク質チロシンキナーゼを阻害する物質は抗がん剤として有用であるとして、各種タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の開発が進められている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平09−510993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤としては、種々のものが開発されているが、阻害活性の点では不十分なものが多い。
【0009】
従って、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性が強い、新規物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物が、タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性が高い物質であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の構成を有するものである。
【0012】
項1. 2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物。
【0013】
項2. アミノ酸Aが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、L‐メチオニン、L‐セリン、L‐システイン、L‐グリジン、L‐スレオニン、L‐リジン、又はL‐チロシンである、請求項1に記載の環状ペプチド化合物。
【0014】
項3. アミノ酸Aが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、又はL‐メチオニンである、請求項1に記載の環状ペプチド化合物。
【0015】
項4. さらに、2個以上の同種のアミノ酸Bを有し、アミノ酸Bはアミノ酸Aとは異なるアミノ酸である、請求項1〜3のいずれかに記載の環状ペプチド化合物。
【0016】
項5. アミノ酸Bが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、L‐メチオニン、L‐セリン、L‐システイン、L‐グリジン、L‐スレオニン、L‐リジン、又はL‐チロシンである、請求項4に記載の環状ペプチド化合物。
【0017】
項6. アミノ酸Bが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、又はL‐メチオニンである、請求項4に記載の環状ペプチド化合物。
【0018】
項7. 下記(a)及び/又は(b)の特徴を有する、項1〜6のいずれかに記載の環状ペプチド化合物:
(a)アミノ酸配列が左右対称配列である、及び/又は
(b)前記アミノ酸A及び前記アミノ酸Bが交互に配置した、4アミノ酸残基からなる部分を有する。
【0019】
項8. 配列番号1〜23のいずれかで表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された、項1又は2に記載の環状ペプチド化合物。
配列番号1:Pro-Trp-Gly-Trp
配列番号2:Val-Val-Gly-Tyr-Cys
配列番号3:Phe-Phe-Phe-Gly
配列番号4:His-Ala-Trp-Ala-His
配列番号5:Pro-Asp-Pro-Asp-Pro
配列番号6:Gly-Met-Pro-Met-Pro
配列番号7:Ala-Ala-Gly-Cys-Tyr
配列番号8:Pro-Ser-Pro-Ser-Pro
配列番号9:Cys-Pro-Cys-Pro-Asp
配列番号10:Glu-Cys-Pro-Cys-Pro
配列番号11:Phe-Phe-Phe-Phe
配列番号12:Arg-Cys-Pro-Cys-Pro
配列番号13:Thr-Gly-Ala-Gly-Thr
配列番号14:Val-Pro-Phe-Phe
配列番号15:Ala-Ala-Gly-Phe-Trp
配列番号16:Pro-Gly-Pro-Gly-Pro
配列番号17:Pro-Met-Pro-Met-Glu
配列番号18:Pro-Thr-Pro-Thr-Pro
配列番号19:Ser-His-Gly-His-Ser
配列番号20:Cys-Pro-Gly-Pro-Cys
配列番号21:Pro-Lys-Pro-Lys-Pro
配列番号22:Tyr-Ala-Val-Ala-Tyr
配列番号23:Pro-His-Pro-His-Pro
(各配列中、左側がアミノ末端で、右側がカルボキシル末端である。)
項9. 配列番号1、3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、22、又は23で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された、項8に記載の環状ペプチド化合物。
【0020】
項10. 項1〜9のいずれかに記載の環状ペプチド化合物を有効成分とする、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤。
【0021】
項11. 項1〜9のいずれかに記載の環状ペプチド化合物を有効成分とする、医薬品。
【0022】
項12. 抗がん剤である、項11に記載の医薬品。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、新規な環状ペプチド化合物を提供することができる。本発明の環状ペプチド化合物は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性が高く、且つ抗がん剤として使用した時に副作用が起きにくいため、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、医薬品、又は抗がん剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の環状ペプチド化合物が有する特徴の一つである、アミノ酸配列が左右対称配列であるという特徴について説明した図である。
【図2】製造例1に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図3】製造例2に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図4】製造例3に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図5】製造例3に係る環状ペプチドを、NMRによって確認した結果である。
【図6】製造例4に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図7】製造例5に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図8】製造例6に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図9】製造例7に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図10】製造例8に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図11】製造例9に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図12】製造例10に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図13】製造例11に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図14】製造例12に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図15】製造例13に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図16】製造例14に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図17】製造例15に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図18】製造例16に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図19】製造例17に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図20】製造例18に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図21】製造例19に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図22】製造例20に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図23】製造例21に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図24】製造例22に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図25】製造例23に係る環状ペプチドを、MS spectrometryによって確認した結果である。
【図26】製造例1〜23に係る環状ペプチドの、理論分子量、及び測定分子量を示した図である。
【図27】式(1)〜(23)(製造例1〜23)に係る環状ペプチドそれぞれについての、IC50の値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の環状ペプチド化合物
本発明の環状ペプチド化合物は、2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物である。
【0026】
アミノ酸Aはとしては、生体のタンパク質を構成するα‐アミノ酸に限定されず、β‐アミノ酸、γ‐アミノ酸なども使用することができるが、好ましくはα‐アミノ酸である。
【0027】
D‐型、L‐型が存在するアミノ酸については、どちらの型のアミノ酸も使用することができるが、好ましくはL‐アミノ酸である。
【0028】
アミノ酸Aは、特に限定されるものではないが、より強いチロシンキナーゼ阻害活性を得ることができるという観点から、好ましくは、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、プロリン、アスパラギン酸、メチオニン、セリン、システイン、グリジン、スレオニン、リジン、又はチロシンであり、より好ましくは、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、プロリン、アスパラギン酸、又はメチオニンである。これらのアミノ酸は、いずれもL‐アミノ酸が好ましい。
【0029】
アミノ酸Aの個数は、2以上であれば特に限定されるものではないが、2〜4の整数、特に2又は3である。
【0030】
本発明の環状ペプチド化合物は、更に、2個以上の同種の任意のアミノ酸Bを有することが好ましい。アミノ酸Bは、前記アミノ酸Aとは異なるアミノ酸である。
【0031】
アミノ酸Bは、特に限定されるものではないが、より強いチロシンキナーゼ阻害活性を得ることができるという観点から、好ましくは、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、プロリン、アスパラギン酸、メチオニン、セリン、システイン、グリジン、スレオニン、リジン、又はチロシンであり、より好ましくは、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、プロリン、アスパラギン酸、又はメチオニンである。これらのアミノ酸は、いずれもL‐アミノ酸が好ましい。
【0032】
アミノ酸Bの個数は、2以上であれば特に限定されるものではないが、2〜4の整数、特に2又は3である。
【0033】
本発明の環状ペプチドにアミノ酸A及びアミノ酸Bを含む場合、アミノ酸Aとアミノ酸Bとの組み合わせは、特に限定されるものではないが、好ましくは、アラニンとヒスチジンとの組み合わせ、プロリンとアスパラギン酸との組み合わせ、メチオニンとプロリンとの組み合わせ、プロリンとセリンとの組み合わせ、システインとプロリンとの組み合わせ、グリジンとスレオニンとの組み合わせ、プロリンとグリジンとの組み合わせ、プロリンとメチオニンとの組み合わせ、プロリンとスレオニンとの組み合わせ、セリンとヒスチジンとの組み合わせ、プロリンとリジンとの組み合わせ、チロシンとアラニンとの組み合わせ、又はプロリンとヒスチジンとの組み合わせであり、より好ましくは、アラニンとヒスチジンとの組み合わせ、プロリンとアスパラギン酸との組み合わせ、メチオニンとプロリンとの組み合わせ、プロリンとセリンとの組み合わせ、又はシステインとプロリンとの組み合わせである。これらの組み合わせにおいて、組み合わせ中の2つのアミノ酸のどちらがアミノ酸A、又はアミノ酸Bでもよい。これらのアミノ酸は、いずれもL‐アミノ酸が好ましい。
【0034】
また、本発明の環状ペプチド化合物は、(a)アミノ酸配列が左右対称配列である、及び/又は(b)前記アミノ酸A及び前記アミノ酸Bが交互に配置した、4アミノ酸残基からなる部分を有することが好ましい。
【0035】
アミノ酸配列が左右対称である(特徴(a))とは、各アミノ酸残基間の距離が均等になるように各アミノ酸残基が配置された環状ペプチド配列において、特定の1アミノ酸残基及び環状ペプチド配列の中心点を通る分割線を引く場合に、該分割線に対して左右対称であるような分割線を引くことができることを示す。すなわち、アミノ酸残基数が4つの場合は、上記分割線が環状ペプチド配列中の2つのアミノ酸残基上を通過することになり、残りの2つのアミノ酸残基が同一であることを示す(図1)。また、アミノ酸残基数が5つの場合は、上記分割線が環状ペプチド配列中の1つのアミノ酸残基上を通過することになり、該分割線の左右に存在する2組のアミノ酸残基対それぞれが、同一のアミノ酸残基の対であることを示す(図1)。
【0036】
前記アミノ酸A及び前記アミノ酸Bが交互に配置した4アミノ酸残基からなる部分を有する(特徴(b))とは、環状ペプチド中に、アミノ酸A−アミノ酸B−アミノ酸A−アミノ酸B、又はアミノ酸B−アミノ酸A−アミノ酸B−アミノ酸Aからなる部分を有していることを示す。このような部分としては、好ましくは、アミノ酸一文字表記で、PDPD、DPDP、MPMP、PSPS、SPSP、CPCP、PGPG、GPGP、PMPM、PTPT、TPTP、PKPK、KPKP、PHPH、又はHPHPからなる部分が挙げられ、より好ましくは、PDPD、DPDP、MPMP、PSPS、SPSP、又はCPCPからなる部分が挙げられる。これらのアミノ酸は、いずれもL‐アミノ酸が好ましい。
【0037】
具体的な本発明の環状ペプチド化合物としては、より強いタンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を有するという観点から、好ましくは、配列番号1〜23のいずれかで表されるアミノ酸配列、より好ましくは、配列番号1〜13のいずれかで表されるアミノ酸配列、特に好ましくは、配列番号1〜4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された環状ペプチドが挙げられる。配列番号1〜23は、上記具体的な本発明の環状ペプチド中の特定のペプチド結合を切断し、N末端アミノ酸をアミノ酸番号1として、鎖状ペプチドとして表したものである。
【0038】
また、本発明において、環状ペプチド化合物には、本発明の環状ペプチド化合物が有するタンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を失わない範囲で、環状ペプチドの誘導体及び薬理学的に許容される塩も含まれる。誘導体としては、グリコシル化、アミド化、ホスホリル化、カルボキシル化、リン酸化、ホルミル化、アシル化等されたものを例示することができる。また、薬理学的に許容される塩としては、フッ化水素酸塩、塩酸塩などのハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの無機酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、などを例示することができる。
【0039】
本発明の環状ペプチド化合物は、公知の方法、例えば固相合成法で鎖状ペプチドを合成した後、該鎖状ペプチドを樹脂に固定したまま環化反応を行う方法や、固相合成法により鎖状ペプチドを合成した後、該鎖状ペプチドを切り離し、溶液中で環化反応を行う方法で製造することができる。このような製造方法としては、例えば、文献1(Bioorganic & MedicinalChemistryLetter, 2005, 15, 4717 - 4721)に示される製造方法が挙げられる。
【0040】
本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、医薬品又は抗がん剤
本発明の環状ペプチド化合物は、後述の実施例に示されるようにタンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を有するため、チロシンキナーゼ阻害剤として使用することができる。
【0041】
また、タンパク質チロシンキナーゼをコードする遺伝子の多くは、がん遺伝子として知られており、種々の癌細胞でタンパク質チロシンキナーゼ活性が亢進していることが知られている。そして、タンパク質チロシンキナーゼの活性を阻害する作用は、抗がん作用につながることが知られている。
【0042】
従って、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤として有用な本発明の環状ペプチド化合物は、医薬品、又は抗がん剤としても用いることができる。
【0043】
本発明の環状ペプチド化合物をタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、医薬品又は抗がん剤として用いる場合の一例について説明する。
【0044】
本発明の環状ペプチド化合物は、適当な溶媒に溶解した状態、または粉末状に乾燥した状態で使用することができる。
【0045】
また、本発明の環状ペプチド化合物は、薬学的に許容される各種担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤等が含まれる)と配合し、製剤され得る。製剤は慣用の添加剤を含んでいてもよい。
【0046】
製剤形態は、特に限定されず、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与剤、注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤等の非経口投与剤等などの各種製剤形態を挙げることができる。
【0047】
製剤中の本発明のポリペプチドの含有量は、投与経路、患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、ポリペプチドの1日投与量が通常10〜1000mg程度、より好ましくは100〜500mg程度になる量とすればよい。1日1回投与する場合は、1製剤中にこの量が含まれていればよく、1日3回投与する場合は、1製剤中にこの3分の1量が含まれていればよい。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
1.環状ペプチドの合成
基本的には、本製造工程は、まず、樹脂を用いて固相法でアミノ酸残基4(テトラペプチド)ないし5(ペンタペプチド)の鎖状ペプチドを合成する。その後、その鎖状ペプチドを樹脂から切り離し、溶液中で、鎖状ペプチドの両端(ヘッドandテール、N末端とC末端)をペプチド結合し、閉環するものである。この方法により、配列番号1〜23に係る環状ペプチドを製造した(製造例1〜23)(配列番号と、製造例番号は対応する。製造例1は、配列番号1に係る環状ペプチドを製造したものである。)。
【0050】
製造例3
下記工程に従って、配列番号3に係る環状ペプチドを合成した。
【0051】
アミノ酸配列Phe-Phe-Phe-Gly (配列番号3)をもとに、その製造工程の例を示す。
【0052】
1)Fmoc-Gly-OHアミノ酸(1 eq)を1 mlのDMF(N,N-dimethylformamideの略、以下同じ)に溶かし、DIPCI (N,N’diisopropylcarbodiimideの略、以下同じ)/DMF (DIPCI 1mmol/ml)を1.4 ml, HOBT(1-hydroxybenzotriazoleの略、以下同じ)/DMF(HOBT 1mmol/ml)を 1.4 mlをそれぞれ加え、Fmoc-Gly-OHアミノ酸を活性化させる。
【0053】
2)2-chlorotrityl chloridepolystyrene (2−クロロトリチルクロライドポリスチレン)樹脂(1.2 mmol/g loading)をDMF (1.5ml)に加えて20分間振とうし、膨潤させてから、吸引ろ過し、この操作を3回繰り返す。
【0054】
3)活性化したFmoc-Gly-OHアミノ酸を2−クロロトリチルクロライドポリスチレン樹脂に導入し、1.5時間振とうした後吸引ろ過し、この操作を3回繰り返す。
【0055】
4)上記3)に1.5 mlの20% piperidine/DMFを加え、5分間振とうしてから吸引ろ過し、更に3 mlの20% piperidine/DMFを加え、20分間振とうろ過し、Fmoc基を除去する。この操作の後、液が中性になるまで、DMF (1.5ml)での洗浄を繰り返えす。ここで、第一級アミノ基の検出のための定性カイザーテストによってモニターし、陽性であることを確認する。
【0056】
5)2番目のアミノ酸残基を上記4)に縮合させるため、まず、Fmoc-Phe-OHアミノ酸(1 eq)を1 mlのDMFに溶かし、DIPCI/DMF 1.4 ml, HOBT/DMF 1.4 mlをそれぞれ加え、活性化する。
【0057】
6)活性化したFmoc-Gly-OHアミノ酸を2−クロロトリチルクロライドポリスチレン樹脂に導入し、1.5時間振とうした後吸引ろ過し、この操作を3回繰り返す。
【0058】
7)上記6)に1.5 mlの20% piperidine/DMFを加え、5分間振とうしてから吸引ろ過し、更に3 mlの20% piperidino/DMFを加え、20分間振とうろ過し、Fmoc基を除去する。更に、液が中性になるまで、DMF (1.5ml)での洗浄を繰り返えす。ここで、第一級アミノ基の検出のための定性カイザーテストによってモニターし、陽性であることを確認する。
【0059】
8)3番目、4番目のアミノ酸残基であるFmoc-Phe-OHアミノ酸を縮合させるため、上記5),6),7)の操作を繰り返す。
【0060】
9)上記で得られたトリペプチドを50 mlマイヤーフラスコに入れ、8 ml TFA(trifluoroacetic acidの略、以下同じ)を加えてから、マグネチックスターラーを用いて、3時間攪拌して樹脂からトリペプチドを切り離し、全保護基の除去を一挙に行う。
【0061】
10)9)で得られた鎖状トリペプチドを閉環して、環状ペプチドとするため、DIPCI/DMF (DIPCI 1mmol/ml)を1.4 ml, HOBT/DMF(HOBT 1mmol/ml)を 1.4 mlをそれぞれ加える。
【0062】
製造例1、2、及び4〜23
上記製造例3の製造方法に準じて、配列番号1、2、及び4〜23に係る環状ペプチドを合成した(製造例1、2、及び4〜23)。
【0063】
製造例1〜23に係る環状ペプチドの確認
合成した製造例1〜23に係る環状ペプチドを、MS spectrometry又はNMRによって確認した(図2〜25:図の番号は、製造例番号に対応する)。製造例1〜2、及び4〜23に係る環状ペプチドついてはMS spectrometryで確認し(図2〜3、及び6〜25)、製造例3に係る環状ペプチドについては、MS spectrometry (図4)及びNMRで確認した(図5)。製造例1〜23に係る環状ペプチドの理論分子量及び測定分子量を図26に示す。
【0064】
2.環状ペプチドのチロシンキナーゼ阻害活性の測定
製造例1〜23に係る環状ペプチドのチロシンキナーゼ阻害活性は、TAKARA Universal Tyrosine Assay Kit(Takara-bio Co.)を用いて測定した。
【0065】
該キットによる測定の概要は、プレートに固相化された合成ペプチド(Poly(Glu-Tyr)(4:1,20〜50kDa))をKinase標準品(培養細胞由来のKinase粗抽出物)でリン酸化反応させる系に、製造例1〜23に係る環状ペプチドを共存させ、上記合成ペプチドのリン酸化の程度を測定することにより、製造例1〜23に係る環状ペプチドの阻害活性を測定するというものである。以下詳細に説明する。
【0066】
リン酸化反応は、最終容量40μlのチロシンキナーゼ標準品中で、37℃で行った。検量線作成用のチロシンキナーゼ標準品の濃度としては、チロシンキナーゼp60c-Src換算で、600、500、341、200、100×10-7units/μlのものを用いた。阻害活性測定用のキナーゼ標準品は、500×10-7units/μlのものを用いた。リン酸化反応は、40nM ATPを10μl加えることにより開始し、該反応は37℃で30分間行った。反応終了後、反応液をデカンテーションで除去し、Tween-PBSで4回洗浄した。ブロッキング用緩衝液を100μl加えて、37℃で30分間静置した。Tween-PBSで洗浄後、抗リン酸化抗体を50μl加えて、37℃で30分間静置した。反応液をデカンテーションで除去し、残りの液をTween-PBS で4回リンスすることにより除去した。HRP発色基質液を100μl加えて、37℃で15分間静置した。1N 硫酸を100μl加えることにより反応を停止させた。マイクロプレートリーダーにより、450nmの吸光度を測定した。
【0067】
リン酸化反応液中に製造例1〜23に係る環状ペプチドをそれぞれ加えた場合の吸光度と検量線を基に、製造例1〜23に係る環状ペプチドそれぞれについて、リン酸化阻害率を求めた。そして、該リン酸化阻害率及び阻害時の環状ペプチドの濃度を基に、製造例1〜23に係る環状ペプチドそれぞれについて、IC50を求めた。結果を図27に示す。
【0068】
本実験結果より、製造例1〜23に係る環状ペプチドは、いずれも強いタンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を示すことが認められた。
【0069】
3.In silicoドッキング実験
阻害活性の認められた配列番号1〜23に係る環状ペプチド(製造例1〜23)のうち、配列番号3に係る環状ペプチドについて、タンパク質チロシンキナーゼに対する結合エネルギー及び阻害強度を、コンピューター上で測定した。
【0070】
具体的には、配列番号3に係る環状ペプチドを分子可視化してin silico合成し、タンパク質チロシンキナーゼ(Protein DataBank(http://www.rcsb.org/pdb/home/)のコード:1skj)に対する結合エネルギー及び阻害強度を、薬物・受容体間ドッキングソフト(AtuoDock4.2)を用いて測定した。
【0071】
その結果、結合エネルギーは- 7.54 kcal/molであり、阻害強度は1.25 μMであった。この結果より、配列番号3に係る環状ペプチドは阻害強度が強く、タンパク質チロシンキナーゼ阻害薬として有効であることが明らかとなった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物。
【請求項2】
アミノ酸Aが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、L‐メチオニン、L‐セリン、L‐システイン、L‐グリジン、L‐スレオニン、L‐リジン、又はL‐チロシンである、請求項1に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項3】
アミノ酸Aが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、又はL‐メチオニンである、請求項1に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項4】
さらに、2個以上の同種のアミノ酸Bを有し、アミノ酸Bはアミノ酸Aとは異なるアミノ酸である、請求項1〜3のいずれかに記載の環状ペプチド化合物。
【請求項5】
アミノ酸Bが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、L‐メチオニン、L‐セリン、L‐システイン、L‐グリジン、L‐スレオニン、L‐リジン、又はL‐チロシンである、請求項4に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項6】
アミノ酸Bが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、又はL‐メチオニンである、請求項4に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項7】
下記(a)及び/又は(b)の特徴を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の環状ペプチド化合物:
(a)アミノ酸配列が左右対称配列である、及び/又は
(b)前記アミノ酸A及び前記アミノ酸Bが交互に配置した、4アミノ酸残基からなる部分を有する。
【請求項8】
配列番号1〜23のいずれかで表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された、請求項1又は2に記載の環状ペプチド化合物。
配列番号1:Pro-Trp-Gly-Trp
配列番号2:Val-Val-Gly-Tyr-Cys
配列番号3:Phe-Phe-Phe-Gly
配列番号4:His-Ala-Trp-Ala-His
配列番号5:Pro-Asp-Pro-Asp-Pro
配列番号6:Gly-Met-Pro-Met-Pro
配列番号7:Ala-Ala-Gly-Cys-Tyr
配列番号8:Pro-Ser-Pro-Ser-Pro
配列番号9:Cys-Pro-Cys-Pro-Asp
配列番号10:Glu-Cys-Pro-Cys-Pro
配列番号11:Phe-Phe-Phe-Phe
配列番号12:Arg-Cys-Pro-Cys-Pro
配列番号13:Thr-Gly-Ala-Gly-Thr
配列番号14:Val-Pro-Phe-Phe
配列番号15:Ala-Ala-Gly-Phe-Trp
配列番号16:Pro-Gly-Pro-Gly-Pro
配列番号17:Pro-Met-Pro-Met-Glu
配列番号18:Pro-Thr-Pro-Thr-Pro
配列番号19:Ser-His-Gly-His-Ser
配列番号20:Cys-Pro-Gly-Pro-Cys
配列番号21:Pro-Lys-Pro-Lys-Pro
配列番号22:Tyr-Ala-Val-Ala-Tyr
配列番号23:Pro-His-Pro-His-Pro
(各配列中、左側がアミノ末端で、右側がカルボキシル末端である。)
【請求項9】
配列番号1、3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、22、又は23で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された、請求項8に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の環状ペプチド化合物を有効成分とする、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の環状ペプチド化合物を有効成分とする、医薬品。
【請求項12】
抗がん剤である、請求項11に記載の医薬品。
【請求項1】
2個以上の同種のアミノ酸Aを有する、4又は5のアミノ酸残基からなる環状ペプチド化合物。
【請求項2】
アミノ酸Aが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、L‐メチオニン、L‐セリン、L‐システイン、L‐グリジン、L‐スレオニン、L‐リジン、又はL‐チロシンである、請求項1に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項3】
アミノ酸Aが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、又はL‐メチオニンである、請求項1に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項4】
さらに、2個以上の同種のアミノ酸Bを有し、アミノ酸Bはアミノ酸Aとは異なるアミノ酸である、請求項1〜3のいずれかに記載の環状ペプチド化合物。
【請求項5】
アミノ酸Bが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、L‐メチオニン、L‐セリン、L‐システイン、L‐グリジン、L‐スレオニン、L‐リジン、又はL‐チロシンである、請求項4に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項6】
アミノ酸Bが、L‐トリプトファン、L‐バリン、L‐フェニルアラニン、L‐アラニン、L‐ヒスチジン、L‐プロリン、L‐アスパラギン酸、又はL‐メチオニンである、請求項4に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項7】
下記(a)及び/又は(b)の特徴を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の環状ペプチド化合物:
(a)アミノ酸配列が左右対称配列である、及び/又は
(b)前記アミノ酸A及び前記アミノ酸Bが交互に配置した、4アミノ酸残基からなる部分を有する。
【請求項8】
配列番号1〜23のいずれかで表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された、請求項1又は2に記載の環状ペプチド化合物。
配列番号1:Pro-Trp-Gly-Trp
配列番号2:Val-Val-Gly-Tyr-Cys
配列番号3:Phe-Phe-Phe-Gly
配列番号4:His-Ala-Trp-Ala-His
配列番号5:Pro-Asp-Pro-Asp-Pro
配列番号6:Gly-Met-Pro-Met-Pro
配列番号7:Ala-Ala-Gly-Cys-Tyr
配列番号8:Pro-Ser-Pro-Ser-Pro
配列番号9:Cys-Pro-Cys-Pro-Asp
配列番号10:Glu-Cys-Pro-Cys-Pro
配列番号11:Phe-Phe-Phe-Phe
配列番号12:Arg-Cys-Pro-Cys-Pro
配列番号13:Thr-Gly-Ala-Gly-Thr
配列番号14:Val-Pro-Phe-Phe
配列番号15:Ala-Ala-Gly-Phe-Trp
配列番号16:Pro-Gly-Pro-Gly-Pro
配列番号17:Pro-Met-Pro-Met-Glu
配列番号18:Pro-Thr-Pro-Thr-Pro
配列番号19:Ser-His-Gly-His-Ser
配列番号20:Cys-Pro-Gly-Pro-Cys
配列番号21:Pro-Lys-Pro-Lys-Pro
配列番号22:Tyr-Ala-Val-Ala-Tyr
配列番号23:Pro-His-Pro-His-Pro
(各配列中、左側がアミノ末端で、右側がカルボキシル末端である。)
【請求項9】
配列番号1、3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、22、又は23で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された、請求項8に記載の環状ペプチド化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の環状ペプチド化合物を有効成分とする、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の環状ペプチド化合物を有効成分とする、医薬品。
【請求項12】
抗がん剤である、請求項11に記載の医薬品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−180315(P2012−180315A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45028(P2011−45028)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(507307374)学校法人神戸学院 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(507307374)学校法人神戸学院 (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]