タンパク質凝集を減少させるための方法
製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させる方法、および凝集特性が低いタンパク質製剤が提供される。本明細書中に記載されている方法および製剤は、タンパク質の生物活性を維持し、タンパク質製剤の貯蔵寿命を増大させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に援用される、「Methods for Reducing Protein Aggregation」という名称の、2006年3月20日に出願した米国仮出願第60/784130号の利益を主張するものである。
【0002】
その分野は、タンパク質の凝集を減少させる方法および凝集が低レベルであるタンパク質製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトゲノムプロジェクトの完了は、タンパク質単離および精製の改良法の開発と相まって、タンパク質製剤の大規模生産を実現した。実際、第I相臨床試験、またはそれを超える試験中の、100を超える組換えタンパク質があり、数十のものは食品医薬品局の承認を得ている。生物活性形態でのタンパク質またはペプチドの効率的で安全な送達を確実に行う製剤は、現在および将来のバイオテクノロジー製品の商業的成功の手掛かりである。
【0004】
不運なことに、タンパク質は、独特の物理的および化学的特性を有し、これらによって製剤化および開発が困難になる。タンパク質の物理的および化学的不安定性は、適したタンパク質製剤の開発に相当な難題をもたらす。タンパク質の最も一般的な物理的不安定性は、タンパク質凝集、およびその巨視的同等物である沈殿である。タンパク質が凝集する傾向は、タンパク質を可能な限り高い濃度で長期間にわたって合成、加工、および保存することが所望されるバイオテクノロジーおよび製薬産業における、特に困難な課題である。
【0005】
タンパク質凝集を駆動する機序は完全には理解されていないが、それでもなお、最終結果は望ましくない。医薬組成物中のポリペプチドによる凝集物形成は、そのポリペプチドの生物活性に有害に影響を及ぼして、医薬組成物の治療有効性の喪失を生じる場合がある。また、凝集状態のタンパク質は免疫原性である場合があり、in vivoで急性毒性効果も有する場合がある。さらに、凝集物形成は、注射器、管系、膜、またはポンプの妨害等、タンパク質製剤の投与の間に他の問題を引き起こす場合がある。したがって、当該分野には、タンパク質凝集を減少させる方法の、および低レベルの凝集を示すタンパク質製剤を開発する必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、低い凝集特性を示すタンパク質製剤、およびそのような製剤を作製する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本出願は、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することによって製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させるための方法に関する。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤化において製剤化された同じタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集のレベルと比較して、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させる。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、製剤が、タンパク質凝集を促進または容易にする条件に供された場合に、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤化において製剤化され、タンパク質凝集を促進する同じ条件に供された同じタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集のレベルと比較して、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させる。
【0008】
ある実施形態において、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、メチオニンが製剤に添加される。特定の実施形態において、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、メチオニンが製剤に添加される。ある実施形態において、タンパク質製剤がタンパク質凝集をもたらす条件に供される、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、タンパク質凝集を促進する条件に製剤が供された後、サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)によって測定すると、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0009】
いくつかの実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、メチオニンを欠く製剤と比較して、タンパク質製剤の貯蔵寿命を増大させる。他の実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、メチオニンを欠く製剤と比較して、タンパク質製剤の効力を維持する。ある実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度(例えば、約1mM〜約145mM)までメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、メチオニンを欠く製剤と比較して、タンパク質製剤の免疫原性を減少させる。
【0010】
その方法は、凝集するタンパク質に対する相同性に基づいて、または凝集する可能性を示唆する実験データに基づいて、凝集することが公知である、または凝集しそうであると考えられるタンパク質に、最も有用である。一実施形態において、製剤内のタンパク質は、保存の間に凝集する。いくつかの実施形態において、製剤内のタンパク質は、せん断力の結果として凝集する。他の実施形態において、製剤内のタンパク質は、高い温度の結果として凝集する。他の実施形態において、製剤内のタンパク質は、光への曝露の結果として凝集する。さらに他の実施形態において、製剤内のタンパク質は、製剤中のある種の糖、または界面活性物質の存在の結果として凝集する。そのような条件に供される、または供されそうである製剤へのメチオニンの添加は、凝集物形成の減少に有効であり、それによって、製剤内のタンパク質またはタンパク質(複数)の生物活性および効力を維持する。
【0011】
いくつかの実施形態において、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、メチオニンを製剤に添加する前に判定される。他の実施形態において、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、メチオニンを製剤に添加した後に判定される。さらなる実施形態において、製剤のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、メチオニンを製剤に添加する前後に判定される。製剤のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)、逆相−高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、UV吸光度、沈降速度測定、およびそれらの組合せを含む、当業者に公知の任意の方法によって判定することができる。特定の実施形態において、約1mM〜約145mMメチオニンを含む製剤中のパーセンテージ高分子量(%HMW)種は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤における%HMW種と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%減少する。他の特定の実施形態において、約1mM〜約145mMメチオニンを含む製剤は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する。製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、メチオニンありまたはなしのいずれかで、製剤が調製された後の任意のときに測定することができる。ある実施形態において、凝集は、タンパク質を製剤化した翌日、目的のタンパク質を製剤化してから1週間〜12週間後、または1カ月〜36カ月後に測定される。
【0012】
いくつかの実施形態において、製剤のタンパク質は、抗体、免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質、凝固因子、受容体、リガンド、酵素、転写因子、またはこれらのタンパク質のいずれかの生物活性断片である。特定の実施形態において、タンパク質は、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、PSGL−Ig融合タンパク質、活性化第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、またはこれらのタンパク質のいずれかの生物活性断片である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、製剤中約0.1mg/ml〜約250mg/mlの濃度で製剤化される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、製剤中約0.1mg/ml〜約200mg/mlの濃度で製剤化される。他の実施形態において、タンパク質は、製剤中約0.1mg/ml〜約100mg/mlの濃度で製剤化される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、製剤中約0.1mg/ml〜約10mg/mlの濃度で製剤化される。ある実施形態において、タンパク質は、液体または凍結乾燥粉末として製剤化される。
【0013】
ある実施形態において、タンパク質製剤は、界面活性物質を含む。特定の実施形態において、界面活性物質は、ポリソルベート−20またはポリソルベート−80である。ある他の実施形態において、タンパク質製剤は、界面活性物質を欠く。ある実施形態において、タンパク質製剤は、張性調節物質を含む。特定の実施形態において、張性調節物質は、塩化ナトリウム、マンニトール、またはソルビトールである。ある他の実施形態において、タンパク質製剤は、糖を含む。特定の実施形態において、糖は、ショ糖、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、またはキシリトールである。ある他の実施形態において、タンパク質製剤は、糖を欠く。いくつかの実施形態において、製剤のpHは、約5.0〜8.0の間である。いくつかの他の実施形態において、製剤のpHは、約5.8〜6.6の間である。
【0014】
他の実施形態において、タンパク質製剤は、製剤のタンパク質の凝集を減少させる1つまたは複数の作用物質をさらに含む。いくつかの実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、アミノ酸である。特定の実施形態において、アミノ酸は、アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、約1mM〜約300mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。いくつかの他の実施形態において、アミノ酸は、約5mM〜約150mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。他の実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、金属キレート剤の組合せである。特定の実施形態において、金属キレート剤は、DTPA、EGTA、およびDEFである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のDTPAまたはEGTAの濃度は、約1μM〜約5mMである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のDEFの濃度は、約1μM〜約10mMである。他の実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、フリーラジカルスカベンジャー、特に酸素ラジカルのスカベンジャーである。特定の実施形態において、フリーラジカルスカベンジャーは、マンニトールまたはヒスチジンである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のマンニトールの濃度は、約0.01%〜約25%である。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のヒスチジンの濃度は、約100μM〜約200mMである。他の実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、金属キレート剤およびフリーラジカルスカベンジャーの組合せである。ある他の実施形態において、凝集を減少させる作用物質はクエン酸塩である。ある実施形態において、タンパク質製剤中のクエン酸塩の濃度は、約0.5mM〜約25mMである。
【0015】
別の態様において、本出願は、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することによる、タンパク質がメチオニン残基を含まないか、または10、9、8、7、6、5、4、3、もしくは2個より少ないメチオニン残基を含む、タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法を提供する。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。他の実施形態において、タンパク質がメチオニン残基を含まないか、または10、9、8、7、6、5、4、3、もしくは2個より少ないメチオニン残基を含む、約0.5mM〜約145mMのメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0016】
別の態様において、本出願は、凝集がメチオニン酸化によって引き起こされない、タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法を提供する。方法は、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することを含む。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。他の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0017】
さらに別の実施形態において、界面活性物質とともに製剤化されたタンパク質の凝集を減少させるための方法が提供される。ある実施形態において、界面活性物質は、タンパク質を凝集させる。方法は、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することを含む。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。他の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを、界面活性物質とともに製剤化された製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0018】
さらなる態様において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、せん断力に供されたタンパク質の凝集を減少させる。方法は、製剤がせん断力に供される前、それと同時、またはその後に、メチオニンを添加することを含む。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集を減少させることを生じる。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで製剤に添加される。いくつかの実施形態において、せん断力は、撹拌、振とう、凍結解凍、輸送、注射器への引き込み、または精製手順によって引き起こされる。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを、せん断力に供された製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0019】
さらなる実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、光に曝露されたタンパク質の凝集を減少させる。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。いくつかの実施形態において、光は蛍光である。他の実施形態において、光は日光である。さらなる実施形態において、光はUV光である。方法は、製剤が光に曝露される前、それと同時、またはその後に、メチオニンを添加することを含む。ある実施形態において、メチオニンは、光への製剤の曝露の前およびそれと同時、またはその後に添加される。約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集を減少させることを生じる。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを、光に曝露された製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤生じる。
【0020】
別の態様において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、タンパク質製剤中のタンパク質の効力または生物活性の喪失を低下させる。この方法は、製剤中のタンパク質の凝集を減少させることを生じ、それによって、タンパク質の効力または機能的活性を維持する。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0021】
異なる態様において、本出願は、ペプチド/ペプチド(複数)、タンパク質/タンパク質(複数)、またはペプチド/ペプチド(複数)およびタンパク質/タンパク質(複数)、ならびに約0.5mM〜約50mMメチオニンを含む、タンパク質製剤を提供する。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。この態様のある実施形態において、製剤のタンパク質は、抗体、Ig融合タンパク質、凝固因子、受容体、リガンド、酵素、転写因子、またはこれらのタンパク質の生物活性断片である。特定の実施形態において、タンパク質は、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、PSGL−Ig融合タンパク質、活性化第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、またはこれらのタンパク質の生物活性断片である。他の実施形態において、タンパク質は、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、PSGL−Ig融合タンパク質、活性化第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、または第XIIIに対する、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%のアミノ酸配列相同性を有する。いくつかの実施形態において、製剤は、バッファーを含む。特定の実施形態において、バッファーは、ヒスチジンバッファー、クエン酸バッファー、コハク酸バッファー、またはTrisバッファーである。ある実施形態において、製剤は、約5.0〜約8.0のpHを有する。他の実施形態において、製剤は、約6.0〜約7.5のpHを有する。いくつかの実施形態において、製剤は、タンパク質の凝集を減少させることができる別の作用物質を含む。製剤は、糖、界面活性物質、増量剤、凍結保護物質、安定化剤、抗酸化剤、またはこれらの組合せをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、製剤のペプチド(複数可)/タンパク質(複数可)は、製剤中約0.1mg/mlおよび約300mg/mlの濃度である。他の実施形態において、製剤のペプチド(複数可)/タンパク質(複数可)は、製剤中約0.1mg/mlおよび約10mg/mlの濃度である。ある実施形態において、タンパク質は、液体、または凍結乾燥粉末として製剤化される。ある実施形態において、タンパク質製剤は、キットとして提供される。そのようなキットは、バッファー、賦形剤、およびタンパク質製剤の使用のための説明書を含んでもよい。
【0022】
別の態様において、本出願は、本明細書中に記載されているタンパク質製剤を用いた、治療、予防、および/または診断の方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
バイオテクノロジーにおける最近の進歩によって、診断および療法における使用のための、多種多様な生物活性タンパク質製剤が提供されている。しかしながら、そのようなタンパク質製剤の開発、生成、送達、安全性、および安定性は、相当な難題をもたらす。タンパク質製剤の1つの主な課題は、それらが、可溶性または不溶性凝集物の形成の結果として、それらの生物活性を失う場合があることである。凝集は劣化したタンパク質状態であり、したがって、それを最小限にすることによって、タンパク質製剤の、増大した貯蔵寿命、効力、または活性が生じる。
【0024】
本出願は、一般に、約0.5mM〜約145mMの間の終濃度までのアミノ酸メチオニンのタンパク質製剤への添加によって、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集が減少し、それによって、メチオニンなしで調製されたタンパク質製剤と比較して、製剤の貯蔵寿命が増大し、生物活性が維持されるという発見に関する。
【0025】
タンパク質凝集に影響を及ぼす要因
タンパク質は、多種多様な医薬、バイオテクノロジー、および調査の使用を有する。これらの使用のいずれかにおける種々の段階で、タンパク質は凝集する場合がある。「凝集する」によって、可溶性であり続けるか溶液から凝結する不溶性の凝集物を形成する、共有結合性または非共有結合性二量体またはオリゴマーの形成を生じるタンパク質分子の間の物理的相互作用が意味される。用語「タンパク質」は、本明細書中で使用される場合、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、および融合タンパク質を包含する。タンパク質は、組換えまたは合成方法によって生成されてもよい。
【0026】
多くの異なる要因が、タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を引き起こす場合がある。典型的な精製および保存手順は、タンパク質製剤を、タンパク質を凝集させる条件および成分に曝露する場合がある。例えば、タンパク質製剤中のタンパク質は、以下のもののいずれか1つまたは複数の結果として凝集する場合がある。保存、上昇した温度への曝露、製剤のpH、製剤のイオン強度、ならびにある種の界面活性物質(例えば、ポリソルベート−20およびポリソルベート−80)および乳化剤の存在。用語「保存の間に」は、本明細書中で使用される場合、一旦調製された製剤が、即座に使用されず、むしろその調製の後に、液体形態、凍結状態、またはその後の液体形態もしくは他の形態への復元のための乾燥形態のいずれかで、保存のために包装されることを意味する。「上昇した温度」によって、タンパク質が通常保存される温度よりも高い任意の温度が意味される。
【0027】
同様に、タンパク質は、凍結乾燥されたタンパク質塊を溶液中で復元すること、タンパク質試料をろ過精製すること、凍結解凍、振とう、またはタンパク質溶液を注射器によって移すこと等のせん断力に曝露された場合に、凝集する場合がある。凝集はまた、保存バイアル内の溶液中および液気界面のポリペプチド分子の相互作用の結果として、起こる場合がある。輸送の間の振とうに起因する界面の圧縮または拡張の間に、構造変化が、気液および固液界面に吸着したポリペプチド中で起こる場合がある。そのような振とうは、製剤のタンパク質を凝集させ、最終的には他の吸着したタンパク質とともに沈殿させる場合がある。
【0028】
また、光へのタンパク質製剤の曝露は、タンパク質を凝集させる場合がある。光への曝露は、凝集を容易にする反応種を生じる場合がある。いくつかの実施形態において、光は蛍光である。他の実施形態において、光は日光である。さらなる実施形態において、光はUV光である。
【0029】
さらに、タンパク質製剤の包装は、タンパク質凝集に影響を及ぼす場合がある。痕跡レベルの金属(ppmレベルの銅、鉄、コバルト、マンガン)は、容器包装から浸出して、アミド結合の加水分解を促進し、最終的にはタンパク質凝集を生じる場合がある。
【0030】
本出願は、上述の凝集機序の1つまたは複数を制御することによってタンパク質の凝集を減少させる、方法および組成物を提供する。これは、例えば、向上した製品安定性、ならびに製造プロセスおよび保存条件におけるより大きい柔軟性を生じることができる。
【0031】
タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させる方法
本出願は、一般に、アミノ酸メチオニンを製剤に添加することによって製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させることができるという発見に関する。凝集の減少は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤と比例する。凝集を減少させるために、メチオニンは、約0.5mM〜約145mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。本出願において使用される場合、「約」は、引用される値の±25%の範囲を有する数値を意味する。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約10mMの間の終濃度まで添加される。他の実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約15mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約2.5mM〜約10mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約2.5mM〜約15mMの間の終濃度まで添加される。他の実施形態において、メチオニンは、約5mM〜約15mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約5mM〜約25mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの他の実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約25mMの間の終濃度まで添加される。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで添加される。他の実施形態において、メチオニンは、約50mM〜約100mMの間の終濃度まで添加される。ある他の実施形態において、メチオニンは、約100mM〜約145mMの間の終濃度まで添加される。さらに他の実施形態において、メチオニンは、約100mM〜約140mMの間の終濃度まで添加される。さらに他の実施形態において、メチオニンは、約100mM〜約135mMの間の終濃度まで添加される。さらなる実施形態において、メチオニンは、約100mM〜約125mMの間の終濃度まで添加される。他の実施形態において、メチオニンは、約5mM〜約50mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約5mM〜約25mMの間の終濃度まで添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、約0.5mM、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM、約34mM、約35mM、約36mM、約37mM、約38mM、約39mM、約40mM、約41mM、約42mM、約43mM、約44mM、約45mM、約46mM、約47mM、約48mM、約49mM、または約50mMの終濃度まで、タンパク質製剤に添加される。
【0032】
何によって製剤のタンパク質が凝集させられるかにかかわらず、メチオニンの添加によって、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集が減少する。ある実施形態において、メチオニンの添加によって、保存、上昇した温度への曝露、光への曝露、せん断力への曝露、界面活性物質の存在、pHおよびイオン条件、ならびにそれらの任意の組合せによって引き起こされる、製剤中の凝集が減少する。
【0033】
上述の方法を用いて、液体または乾燥形態で製剤化されたタンパク質の凝集を低下させることができる。凝集の減少は、後の使用のためにそのままの形態で直接保存されていても、凍結状態で保存されて使用の前に解凍されても、または使用の前に液体形態もしくは他の形態への後の復元のために凍結乾燥、風乾、もしくは噴霧乾燥形態等の乾燥形態で調製されても、液体製剤中で観察される。
【0034】
製剤中のタンパク質凝集のレベルは、製剤へのメチオニンの添加の前、実質的にそれと同時、またはその後に測定してもよい。ある実施形態において、凝集のレベルは、製剤へのメチオニンの添加の約1日〜約12週間の間の後に少なくとも1回測定される。他の実施形態において、凝集のレベルは、製剤へのメチオニンの添加の約1カ月〜36カ月の間の後に少なくとも1回測定される。ある実施形態において、本明細書中に記載されている方法は、メチオニンを欠く製剤と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約90%の%HMW種の減少を生じる。特定の実施形態において、約1mM〜約145mMの間のメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%のHMW種を有する製剤を生じる。他の特定の実施形態において、約1mM〜約145mMの間のメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、または約0.5%のHMW種を有する製剤を生じる。他の実施形態において、約1mM〜約145mMの間のメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、約0.5%〜約5%の間のHMW種を有する製剤を生じる。
【0035】
タンパク質製剤は、製剤のタンパク質の凝集を減少させる1つまたは複数の作用物質をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、アミノ酸である。特定の実施形態において、アミノ酸は、アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、約0.5mM〜約200mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、約5mM〜約100mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。いくつかの他の実施形態において、アミノ酸は、約5mM〜約125mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。ある他の実施形態において、アミノ酸は、約0.5mM〜約50mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。さらに他の実施形態において、アミノ酸は、約0.5mM〜約25mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質はまた、金属キレート剤の組合せであってもよい。特定の実施形態において、金属キレート剤は、DTPA、EGTAおよびDEFである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のDTPAまたはEGTAの濃度は、約1μM〜約10mM、約1μM〜約5mM、約10μM〜約10mM、50μM〜約5mM、または約75μM〜約2.5mMである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のDEFの濃度は、約1μM〜約10mM、約1μM〜約5mM、約10μM〜約1mM、または約20μM〜約250μMである。製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質はまた、フリーラジカルスカベンジャー、特に酸素ラジカルのスカベンジャーであってもよい。特定の実施形態において、フリーラジカルスカベンジャーは、マンニトールまたはヒスチジンである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のマンニトールの濃度は、約0.01%〜約25%、約0.1%〜約25%、約0.5%〜約15%、または約1%〜約5%である。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のヒスチジンの濃度は、約10μM〜約200mM、約100μM〜約200mM、約500μM〜約100mM、または約15mM〜約35mMである。他の実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、金属キレート剤およびフリーラジカルスカベンジャーの組合せである。いくつかの実施形態において、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させる作用物質は、クエン酸塩である。ある実施形態において、タンパク質製剤中のクエン酸塩の濃度は、約0.5mM〜約50mM、約0.5mM〜約25mM、約1mM〜約35mM、約5mM〜約25mM、または約5mM〜約10mMである。
【0036】
タンパク質凝集のレベルを評価するための方法
多数の異なる分析方法を用いて、タンパク質製剤中の凝集物の存在およびレベルを検出することができる。これらのものとしては、限定されないが、天然のポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)、キャピラリーゲル電気泳動法(CGE)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、分析超遠心(AUC)、場流動分画(FFF)、光散乱検出、沈降速度、UV分光法、示差走査熱量測定法、比濁法、ネフェロメトリー、顕微鏡法、サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(ESI−MS)、およびタンデムRP−HPLC/ESI−MSが挙げられる。これらの方法は、単独で、または組み合わせてのいずれで使用してもよい。
【0037】
タンパク質製剤の一般的な課題は、時間、熱、またはせん断力での凝集物の不可逆的な蓄積である。典型的には、凝集物が沈殿するとき、それらは、検出するのが容易な大きな粒子を形成する。しかしながら、より小さい、非共有結合性可溶性凝集物は、しばしば、沈殿する大きな粒子の前駆体であり、検出および定量するのがより困難である。したがって、タンパク質製剤中のタンパク質凝集を検出および定量する方法は、評価される凝集物の種類に基づく必要がある。
【0038】
上述の方法の間で、タンパク質製剤中の可溶性で共有結合性の凝集物の存在および/または量を判定する、示唆される方法は、SEC/光散乱、SDS−PAGE、CGE、RP−HPLC/ESI−MS、FFFおよびAUCである。タンパク質製剤中の可溶性で非共有結合性の凝集物の存在および/または量を判定する、示唆される方法は、SEC、PAGE、SDS−PAGE、CGE、FFF、AUC、および動的光散乱である。タンパク質製剤中の不溶性で非共有結合性の凝集物の存在および/または量を判定する、示唆される方法は、UV分光法、比濁法、ネフェロメトリー、顕微鏡法、AUC、および動的光散乱である。
【0039】
タンパク質
抗体、免疫グロブリン融合タンパク質、凝固因子、受容体、リガンド、酵素、転写因子、またはそれらの生物活性断片を含む、凝集の影響を受けやすい任意のタンパク質は、本出願の方法および組成物によって保護することができる。タンパク質が得られる、または生成される、供給源または様式(例えば、適切な精製スキームによって細胞もしくは組織供給源から単離されるか、組換えDNA技術によって生成されるか、または標準的なペプチド合成技術を用いて化学的に合成されるか)は、本出願によって教示される方法に重要でない。したがって、キメラおよび/または融合タンパク質を含む、多種多様な、天然、合成、および/または組換えタンパク質は、本出願の方法および組成物によって、凝集から保護することができる。
【0040】
製剤化される目的のタンパク質としては、限定されないが、PSGL−Ig、GPIb−Ig、GPIIbIIIa−Ig、IL−13R−Ig、IL−21R−Ig、活性化第VII因子、第VIII因子、第VIIIC因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、組織因子、フォンウィルブランド因子、プロテインC等の抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、ミオスタチン/GDF−8、インターロイキン(IL)、例えばIL−1〜IL−15、ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ウリカーゼ、ビクニン、ビリルビン酸化酵素、サブチリシン、リポタンパク質、α−1アンチトリプシン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、カルシトニン、黄体ホルモン、グルカゴン、肺サーファクタント、ウロキナーゼまたは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)等のプラスミノーゲン活性化因子、ボンバジン、トロンビン、プラスミン、ミニプラスミン、マイクロプラスミン、腫瘍壊死因子−αおよび−β、エンケファリナーゼ、RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted)、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α)、ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン、ミュラー管抑制因子、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロリラキシン、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、デオキシリボヌクレアーゼ、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(PIGF)、ホルモンまたは増殖因子の受容体、インテグリン、プロテインAまたはD、リウマトイド因子、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5、もしくはNT−6)等の神経栄養因子、またはNGF−β等の神経成長因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、aFGFおよびbFGF等の線維芽細胞増殖因子、上皮増殖因子(EGF)、TGF−α、およびTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、またはTGF−β5を含むTGF−β等の、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、インスリン様増殖因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II)、des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質、CD2、CD3、CD4、CD8、CD9、CD19、CD20、CD22、CD28、CD34、およびCD45等のCDタンパク質、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、骨誘導因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、インターフェロン−α、−β、および−γ等のインターフェロン、コロニー刺激因子(CSF)、例えばM−CSF、GM−CSF、およびG−CSF、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、EGF受容体、HER2、HER3またはHER4受容体等の、HER受容体ファミリーのメンバー、LFA−1、VLA−4、ICAM−1、およびVCAM等の細胞接着分子、IgE、血液型抗原、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、崩壊促進因子(DAF)、HIV gag、env、pol、tat、またはrevタンパク質等のウイルス抗原、ホーミング受容体、アドレシン、イムノアドヘシン等のタンパク質、ならびに上記で一覧にしたポリペプチドのいずれかの生物活性断片または変異体が挙げられる。
【0041】
用語「生物活性断片」は、それが由来するタンパク質の機能の少なくとも1つを保持するタンパク質の断片を意味する。抗体の生物活性断片としては、抗体の抗原結合断片が挙げられ、受容体の生物活性断片としては、そのリガンドに依然として結合することができる受容体の断片が挙げられ、リガンドの生物活性断片としては、その受容体に依然として結合することができるリガンドの部分が挙げられ、酵素の生物活性断片としては、全長酵素によって触媒される反応を依然として触媒することができる酵素の部分が挙げられる。ある実施形態において、生物活性断片は、それが由来するタンパク質の機能の少なくとも約25%、50%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%を保持する。タンパク質の機能は、周知の方法(例えば、抗体抗原相互作用を試験すること、リガンド−受容体相互作用を試験すること、酵素活性を測定すること、転写活性を測定すること、またはDNA−タンパク質相互作用を測定すること)によってアッセイすることができる。
【0042】
ある実施形態において、製剤化されるタンパク質は、抗体である。抗体は、上述のタンパク質のいずれかに対して引き起こされ、結合してもよい。ある特定の実施形態において、抗体としては、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、抗ミオスタチン抗体(例えば、米国出願第60/752660号)、抗IL−11抗体、抗IL−12抗体(例えば、米国出願第60/752660号)、および抗IL−13抗体(例えば、米国出願第60/752660号)が挙げられる。他の特定の実施形態において、抗体としては、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、抗ミオスタチン抗体(例えば米国出願第60/752660号)、抗IL−11抗体、抗IL−12抗体(例えば、米国出願第60/752660号)、および抗IL−13抗体(例えば、米国出願第60/752660号)に対する、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列相同性を有する抗体が挙げられ、それらの、それぞれの抗原に結合する能力を保持している。2つのタンパク質の間のアミノ酸配列相同性は、標準的な方法に従って測定することができる(例えば、PearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444〜2448頁、1998年、George,D.G.ら、Macromolecular Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications中、127〜149頁、Alan R.Liss,Inc.1988年、FengおよびDoolittle、Journal of Molecular Evolution 25:351〜360頁、1987年、HigginsおよびSharp、CABIOS 5:151〜153頁、1989年、ならびにNCBI、NLM、メリーランド州ベテスダの種々のBLASTプログラム参照)。
【0043】
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ポリペプチド特異性を有する抗体組成物、二重特異性抗体、ダイアボディー、または他の、抗体および組換え抗体の精製された調製物を含む。抗体は、例えば任意のアイソタイプ(IgG、IgA、IgE、IgM等)の、全抗体、または、目的の抗原に結合する、その断片であってもよい。ある実施形態において、製剤化される抗体は、IgGアイソタイプを有する抗体である。
【0044】
組換え抗体としては、限定されないが、ヒトおよび非ヒト部分、単鎖抗体および多特異的抗体の両方を含む、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体が挙げられる。キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するもの等の、異なる部分が異なる動物種に由来する、分子である。単鎖抗体は、抗原結合部位を有し、単一のポリペプチドからなる。多特異的抗体は、異なる抗原に特異的に結合する少なくとも2つの抗原結合部位を有する、抗体分子である。抗体は、従来の技術を用いて断片化してもよく、断片を目的の抗原に対する結合についてスクリーニングしてもよい。好ましくは、抗体断片は、インタクトな抗体の抗原結合および/または可変領域を含む。したがって、用語、抗体断片は、ある種のタンパク質に選択的に結合することができる、抗体分子の、タンパク質分解的に切断された、または組換えによって調製された部分のセグメントを含む。そのようなタンパク質分解的および/または組換え断片の非限定的な例としては、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fd、Fv、dAb、単離されたCDR、ならびにペプチドリンカーによって連結されたVLおよび/またはVHドメインを含む単鎖抗体(scFv)が挙げられる。scFv’は、共有結合または非共有結合によって連結されて、2つ以上の結合部位を有する抗体を形成してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。用語「ヒト化モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合、同等なヒトモノクローナル抗体(ドナー)に見出されるアミノ酸残基の少なくとも1つまたは複数を含むよう改変されている、非ヒト供給源(レシピエント)由来のモノクローナル抗体である。ある実施形態において、ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する。「完全ヒト化モノクローナル抗体」は、同等なヒトモノクローナル抗体の抗原結合領域に見出されるアミノ酸残基の全てを含むよう改変されている、非ヒト供給源由来のモノクローナル抗体である。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体またはドナー抗体のいずれにも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体機能性をさらに改良および最適化するよう行われてもよい。ヒト化抗体はまた、所望により、ヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、製剤化されるタンパク質は、融合タンパク質である。一実施形態において、融合タンパク質は、免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質である。Ig融合タンパク質は、免疫グロブリンの定常領域に由来するIg部分に連結された非Ig部分を含むタンパク質である。特定の実施形態において、融合タンパク質は、IgG重鎖定常領域を含む。別の実施形態において、融合タンパク質は、ヒト免疫グロブリンCγ1のヒンジ、CH2およびCH3領域に対応するアミノ酸配列を含む。Ig融合タンパク質の非限定的な例としては、PSGL−Ig(米国特許第5827817号参照)、GPIb−Ig(国際公開第02/063003号参照)、GPIIbIIIa−Ig、IL−13R−Ig(米国特許第6268480号参照)、TNFR−Ig(国際公開第04/008100号参照)、IL−21R−Ig、CTLA4−IgおよびVCAM2D−IgGが挙げられる。融合タンパク質を生成する方法は当該分野で周知である(例えば、米国特許第5516964号、第5225538号、第5428130号、第5514582号、第5714147号、第6136310号、第6887471号、および第6482409号)。いくつかの実施形態において、製剤のタンパク質としては、PSGL−Ig(米国特許第5827817号参照)、GPIb−Ig(国際公開第02/063003号参照)、GPIIbIIIa−Ig、IL−13R−Ig(米国特許第6268480号参照)、TNFR−Ig(国際公開第04/008100号参照)、IL−21R−Ig、CTLA4−IgおよびVCAM2D−IgG、に対する、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列相同性を有し、それらが、それらのそれぞれのリガンドに結合する能力を保持している、融合タンパク質が挙げられる。
【0047】
製剤は、特定の疾患または障害の、治療、または診断の必要に応じて、1つより多いタンパク質を含んでもよい。さらなるタンパク質(複数可)は、それらは製剤中の他のタンパク質(複数可)に対する相補活性を有するので、選択され、製剤中の他のタンパク質(複数可)に有害に影響を及ぼさない。また、タンパク質製剤はまた、タンパク質製剤の最終的な有用性において有用な非タンパク質物質を含んでもよい。例えば、ショ糖を添加して、溶液中のタンパク質の安定性および可溶性を増強してもよく、ヒスチジンを添加して適切な緩衝能を提供してもよい。
【0048】
ある実施形態において、製剤化されるタンパク質は、本質的に純粋および/または本質的に均質である(すなわち、実質的に、混入するタンパク質等を含まない)。用語「本質的に純粋な」タンパク質は、少なくとも約90重量%のタンパク質画分、好ましくは少なくとも約95重量%のタンパク質画分を含む組成物を意味する。用語「本質的に均質な」タンパク質は、溶液中の種々の安定化剤および水の質量を除いて、少なくとも約99重量%のタンパク質画分を含む組成物を意味する。
【0049】
製剤化されるタンパク質はまた、細胞毒、治療剤、または放射性金属イオンとコンジュゲートしてもよい。一実施形態において、コンジュゲートされるタンパク質は、抗体またはその断片である。細胞毒または細胞毒性物質としては、細胞にとって有害な任意の作用物質が挙げられる。非限定的な例としては、カリチアマイシン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、およびそれらの類似体、またはホモログが挙げられる。治療剤としては、限定されないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、および5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシンおよびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン)、および有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。そのような部分をタンパク質にコンジュゲートさせる技術は、当該分野で周知である。
【0050】
製剤
製剤の組成は、限定されないが、タンパク質(複数可)(例えば、受容体、抗体、Ig融合タンパク質、酵素等)の性質、タンパク質の濃度、所望されるpH範囲、どのようにしてタンパク質製剤が保存されるか、タンパク質製剤が保存される期間、ならびにタンパク質製剤が患者に投与されるかどうか、およびどのようにして投与されるかを含む、いくつかの要因の考慮によって判定される。
【0051】
製剤中のタンパク質の濃度
製剤中のタンパク質の濃度は、タンパク質製剤の最終的な使用による。本明細書中に記載されている製剤中のタンパク質濃度は、一般に、約0.5mg/ml〜約300mg/mlの間、例えば約0.5mg/ml〜約25mg/mlの間、約5mg/ml〜約25mg/mlの間、約10mg/ml〜約100mg/mlの間、約25mg/ml〜約100mg/mlの間、約50mg/ml〜約100mg/mlの間、約75mg/ml〜約100mg/mlの間、約100mg/ml〜約200mg/mlの間、約125mg/ml〜約200mg/mlの間、約150mg/ml〜約200mg/mlの間、約200mg/ml〜約300mg/mlの間、および約250mg/ml〜約300mg/mlの間である。
【0052】
タンパク質製剤は、治療目的のために使用してもよい。したがって、製剤中のタンパク質の濃度は、患者が耐えられ、患者に治療上の価値がある投薬および容量でタンパク質を提供することに基づいて、判定される。タンパク質製剤が少容量の注射によって投与される場合、タンパク質濃度は、注射容量による(通常1.0〜1.2mL)。タンパク質ベースの療法は、通常、1週間あたり、1カ月あたり、または数カ月あたり、数mg/kgの投薬を必要とする。したがって、タンパク質が2〜3mg/患者の体重のkgで提供され、平均患者体重が75kgである場合、150〜225mgのタンパク質が1.0〜1.2mL注射容量で送達されることが必要になるか、または、容量を増大させて、より低いタンパク質濃度を提供する必要がある。
【0053】
バッファー
用語「バッファー」は、本明細書中で使用される場合、溶液pHを所望の範囲に維持する作用物質を含む。本明細書中に記載されているような製剤のpHは、一般に、pH約5.0〜約9.0の間、例えば、約pH5.5〜約6.5、約pH5.5〜約6.0、約pH6.0〜約6.5、pH5.5、pH6.0、またはpH6.5である。一般に、溶液をpH5.5〜6.5に維持することができるバッファーが使用される。本明細書中に記載されている製剤において使用することができるバッファーの非限定的な例としては、ヒスチジン、コハク酸塩、グルコン酸塩、tris(トロメタモール)、Bis−Tris、MOPS、ACES、BES、TES、HEPES、EPPS、エチレンジアミン、リン酸、マレイン酸、リン酸塩、クエン酸塩、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、およびカコジル酸塩が挙げられる。ヒスチジンは、皮下、筋肉内、または腹腔内注射によって投与される製剤において好ましいバッファーである。バッファーの濃度は、約5mM〜30mMの間である。一実施形態において、製剤のバッファーは、約5mM〜約20mMの濃度のヒスチジンである。
【0054】
賦形剤
タンパク質、メチオニン、およびバッファーに加えて、本明細書中に記載されている製剤はまた、他の物質を含んでもよい。これらの物質としては、限定されないが、凍結保護物質、溶解保護物質、界面活性物質、増量剤、抗酸化剤、および安定化剤が挙げられる。一実施形態において、本明細書中に記載されているタンパク質製剤は、凍結保護物質、溶解保護物質、界面活性物質、増量剤、抗酸化剤、安定化剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される賦形剤を含む。
【0055】
用語「凍結保護物質」は、本明細書中で使用される場合、タンパク質表面から選択的に排除されることによって、タンパク質に凍結誘導性ストレスに対する安定性を提供する作用物質を含む。凍結保護物質はまた、一次および二次乾燥ならびに長期間の生成物保存の間の保護を提供することができる。凍結保護物質の非限定的な例としては、ショ糖、グルコース、トレハロース、マンニトール、マンノース、およびラクトースなどの糖、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプンおよびポリエチレングリコール等のポリマー、ポリソルベート(例えば、PS−20またはPS−80)等の界面活性物質、グリシン、アルギニン、ロイシン、およびセリン等のアミノ酸が挙げられる。生物系において低毒性を示す凍結保護物質が、一般に使用される。凍結保護物質は、製剤中に含まれる場合、約1%〜約10%(重量/容量)の間の終濃度まで添加される。一実施形態において、凍結保護物質は、約0.5%〜約10%(重量/容量)の間の濃度のショ糖である。
【0056】
一実施形態において、溶解保護物質が、本明細書中に記載されている製剤に添加される。用語「溶解保護物質」は、本明細書中で使用される場合、無定形のガラス状マトリクスを提供すること、および水素結合によってタンパク質と結合して、乾燥プロセスの間に除去される水分子を置換することによって、凍結乾燥または脱水プロセス(一次および二次凍結乾燥サイクル)の間にタンパク質に安定性を提供する作用物質を含む。これは、タンパク質構造を維持すること、凍結乾燥サイクルの間にタンパク質分解を最小限にすること、および長期間の生成物安定性を向上させることを助ける。溶解保護物質の非限定的な例としては、ショ糖またはトレハロース等の糖、グルタミン酸1ナトリウム、非結晶性グリシンまたはヒスチジン等のアミノ酸、ベタイン等のメチルアミン、硫酸マグネシウム等のリオトロピック塩、三価以上の糖アルコール等のポリオール、例えばグリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プルロニック、ならびにそれらの組合せが挙げられる。製剤に添加される溶解保護物質の量は、一般に、タンパク質製剤が凍結乾燥された場合に、許容されない量の、タンパク質の分解/凝集をもたらさない、量である。溶解保護物質が糖(ショ糖またはトレハロース等)であり、タンパク質が抗体である場合、タンパク質製剤中の溶解保護物質濃度の非限定的な例は、約10mM〜約400mM、好ましくは約30mM〜約300mM、最も好ましくは約50mM〜約100mMである。
【0057】
ある実施形態において、界面活性物質が、製剤中に含まれてもよい。用語「界面活性物質」は、本明細書中で使用される場合、気液界面での吸着によって液体の表面張力を減少させる作用物質を含む。界面活性物質の例としては、限定されないが、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80またはポリソルベート20)等の非イオン性界面活性物質、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、Triton(商標)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル−スルホベタイン、ミリスチル−スルホベタイン、リノレイル−スルホベタイン、ステアリル−スルホベタイン、ラウリル−サルコシン、ミリスチル−サルコシン、リノレイル−サルコシン、ステアリル−サルコシン、リノレイル−ベタイン、ミリスチル−ベタイン、セチル−ベタイン、ラウロアミドプロピル−ベタイン、コカミドプロピル−ベタイン、リノールアミドプロピル−ベタイン、ミリスタミドプロピル−ベタイン、パルミドプロピル−ベタイン、イソステアラミドプロピル−ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル)、ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、またはイソステアラミドプロピル−ジメチルアミン、メチルココイルタウリンナトリウムまたはメチルオレイルタウレート二ナトリウム、およびMonaquat(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.、ニュージャージー州パターソン)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、ならびにエチレンおよびプロピレングリコールのコポリマー(例えば、プルロニック、PF68)が挙げられる。添加される界面活性物質の量は、例えばSEC−HPLCを用いてアッセイしてHMW種またはLMW種のパーセンテージを判定すると、復元されたタンパク質の凝集を許容され得るレベルに維持し、本明細書中に記載されているタンパク質製剤の凍結乾燥物の復元の後の微粒子の形成を最小限にするものである。例えば、界面活性物質は、約0.001〜約0.5%、例えば約0.05〜約0.3%の量で、製剤(液体、または凍結乾燥物の復元の前に)中に存在してもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、増量剤が製剤中に含まれる。用語「増量剤」は、本明細書中で使用される場合、医薬生成物と直接相互作用することなしに凍結乾燥生成物の構造を提供する作用物質を含む。薬学的に洗練された塊を提供することに加えて、増量剤はまた、崩壊温度を改変すること、凍結解凍保護を提供すること、および長期間の保存にわたるタンパク質安定性を増強することに関して、有用な質を与えることができる。増量剤の非限定的な例としては、マンニトール、グリシン、ラクトース、およびショ糖が挙げられる。増量剤は、結晶性(グリシン、マンニトール、または塩化ナトリウム等)または無定形(デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン等)であってもよく、一般に、0.5%〜10%の量で、タンパク質製剤中で使用される。
【0059】
Remington’s Pharmaceutical Sciences第16版、Osol,A.編(1980年)に記載されているもの等の、他の薬学的に許容され得る支持体、賦形剤、または安定化剤もまた、それらが製剤の所望の特徴に有害に影響を及ぼさなければ、本明細書中に記載されているタンパク質製剤中に含まれてもよい。本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容され得る支持体」は、医薬投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を意味する。薬学的に活性のある物質のためのそのような媒体および作用物質の使用は、当該分野で周知である。許容され得る支持体、賦形剤、または安定化剤は、採用される投薬量および濃度で受容者にとって無毒であり、さらなる緩衝剤、保存剤、共溶媒、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、EDTA等のキレート剤、金属錯体(例えば、Znタンパク質錯体)、ポリエステル等の生分解性ポリマー、ナトリウム、多価糖アルコール等の塩形成対イオン、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、オルニチン、ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、およびスレオニン等のアミノ酸、ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース、ミオイニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール等の、有機糖または糖アルコール、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウム等の硫黄含有還元剤、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリン等の低分子量タンパク質、ならびにポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーが挙げられる。
【0060】
保存方法
本明細書中に記載されているタンパク質製剤は、当業者に公知の任意の方法によって保存してもよい。非限定的な例としては、タンパク質製剤を、凍結、凍結乾燥、および噴霧乾燥することが挙げられる。
【0061】
いくつかの場合において、タンパク質製剤は、保存のために凍結される。したがって、凍結解凍サイクルを含むそのような条件下で、製剤が比較的安定であることが望ましい。製剤の適合性を判定する1つの方法は、試料製剤を、少なくとも2回、例えば3〜10回の凍結(例えば−20℃または−80℃)および解凍(例えば、室温での速い解凍または氷上での遅い解凍)のサイクルに供し、凍結解凍サイクルの後に蓄積する低分子量(LMW)種および/またはHMW種の量を判定し、それを凍結解凍手順の前に試料中に存在するLMW種またはHMW種の量と比較することである。LMWまたはHMW種の増大は、製剤の一部として保存されたタンパク質の安定性の低下を示す。サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)を用いて、LMWおよびHMW種の存在を判定することができる。
【0062】
いくつかの場合において、タンパク質製剤は、液体として保存してもよい。したがって、種々の温度を含むそのような条件下で、液体製剤が比較的安定であることが望ましい。製剤の安定性を判定する1つの方法は、試料製剤をいくつかの温度(2〜8、15、20、25、30、35、40、および50℃等)で保存し、経時的に蓄積するHMWおよび/またはLMW種の量をモニタリングすることである。経時的に蓄積するHMWおよび/またはLMW種の量が少ないほど、製剤の保存条件はよりよい。したがって、タンパク質の電荷プロフィールを、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX−HPLC)によってモニタリングしてもよい。
【0063】
あるいは、製剤は、凍結乾燥の後に保存してもよい。用語「凍結乾燥」は、本明細書中で使用される場合、乾燥される物質をまず凍結させ、その後に真空環境での昇華による氷または凍結した溶媒の除去が続くプロセスをいう。保存の際に凍結乾燥生成物の安定性を増強するように、賦形剤(例えば、溶解保護物質)が、凍結乾燥される製剤中に含まれてもよい。用語「復元された製剤」は、本明細書中で使用される場合、タンパク質が希釈液中で分散するように凍結乾燥タンパク質製剤を希釈液中に溶解させることによって調製された製剤をいう。用語「希釈液」は、本明細書中で使用される場合、薬学的に許容され得る物質(ヒトへの投与のために安全で無毒)であり、凍結乾燥の後に復元された製剤等の液体製剤の調製に有用である。希釈液の非限定的な例としては、滅菌水、注射のための静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、無菌生理食塩溶液、リンガー液、デキストロース溶液、または塩および/もしくはバッファーの水溶液が挙げられる。
【0064】
凍結乾燥の後に製剤のタンパク質成分の安定性について製剤を試験することは、製剤の適合性を判定するために有用である。方法は、試料製剤が凍結される代わりに凍結乾燥され、希釈液を用いて復元されること以外、凍結について上述されたものと同様であり、復元された製剤がLMW種および/またはHMW種の存在について試験される。凍結乾燥されていない対応する試料製剤と比較した、凍結乾燥試料中のLMWまたはHMW種の増大は、凍結乾燥試料における安定性の低下を示す。
【0065】
いくつかの場合において、製剤は、噴霧乾燥され、次いで保存される。噴霧乾燥のために、液体製剤は、乾燥ガス流の存在下でエアロゾル化される。製剤液滴からガス流に水が除去され、薬物製剤の乾燥粒子を生じる。(i)噴霧乾燥脱水の間にタンパク質を保護するため、(ii)噴霧乾燥の後の保存の間にタンパク質を保護するため、および/または(iii)エアロゾル化に適した溶液特性を与えるために、賦形剤が製剤中に含まれてもよい。方法は、試料製剤が凍結される代わりに噴霧乾燥され、希釈液で復元される以外、凍結について上述されたものと同様であり、復元された製剤が、LMW種および/またはHMW種の存在について試験される。凍結されていない対応する試料製剤と比較した、噴霧乾燥試料におけるLMWまたはHMW種の増大は、噴霧乾燥試料における安定性の低下を示す。
【0066】
治療の方法
本明細書中に記載されている製剤は、それを必要とする患者における疾患または障害の治療および/または予防における医薬組成物として有用である。用語「治療」は、治療的処置および予防(prophylactic)または防止(preventative)手段の両方をいう。治療は、疾患、疾患の症状、または疾患に対する素因に治癒(cure、heal)、改善、軽減、変化、治療、寛解、改良する、または影響を及ぼす目的で、疾患/障害、疾患/障害の症状、疾患/障害に対する素因を有する患者由来の体、単離された組織、または細胞への、タンパク質製剤の適用または投与を含む。「治療を必要とする」ものは、すでに障害を有するもの、ならびに障害が予防されるべきものを含む。用語「障害」は、本明細書中に記載されているタンパク質製剤での治療の利益を受ける任意の状態である。これは、哺乳動物を問題になっている障害にかかりやすくする病的状態を含む、慢性および急性障害または疾患を含む。本明細書中で治療される障害の非限定的な例としては、出血性障害、血栓症、白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、自己免疫障害、血液凝固障害、血友病、移植片拒絶、炎症性障害、心疾患、筋消耗障害、アレルギー、癌、筋ジストロフィー、筋肉減少症、悪液質、II型糖尿病、関節リウマチ、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、皮膚炎、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、好酸球増加症、線維症、および過剰な粘液産生が挙げられる。
【0067】
投与
本明細書中に記載されているタンパク質製剤は、適した様式、例えば皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内もしくは関節内経路による注射もしく輸液での、単回もしくは複数ボーラスまたは長期間にわたる輸液、局所投与、経粘膜、経皮直腸、吸入、または徐放もしくは持続放出手段による等の当業者に公知の方法を用いて、治療を必要とする被験体に投与することができる。タンパク質製剤が凍結乾燥されている場合、凍結乾燥された物質は、投与の前に、まず適切な液体中で復元される。凍結乾燥された物質は、例えば、注射のための静菌水(BWFI)、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または凍結乾燥の前にタンパク質があった同じ製剤中で、復元してもよい。
【0068】
非経口組成物は、投与の簡便性および投薬量の均一性のために、投薬単位形態で調製してもよい。「投薬単位形態」は、本明細書中で使用される場合、治療される被験体のための単位投薬として適した物理的に別々の単位をいい、各単位は、選択された薬学的支持体と関連して所望の治療効果を生じるよう計算された、予め決定された量の活性化合物を含む。
【0069】
定量吸入器等の吸入方法の場合、装置は、適切な量の製剤を送達するよう設計される。吸入による投与のために、化合物は、適した噴霧剤、例えば二酸化炭素等の気体を含む加圧された容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からの、エアロゾルスプレーの形態で送達される。あるいは、吸入される剤形は、ドライパウダー吸入器を用いて乾燥粉末として提供してもよい。
【0070】
タンパク質製剤はまた、例えばコアセルベーション技術または界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えばコロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)中またはマクロエマルション中で、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に封入してもよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences第18版に開示されている。
【0071】
本明細書中に記載されているタンパク質製剤の持続放出調製物もまた、調製してもよい。持続放出調製物の適した例としては、タンパク質製剤を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられる。持続放出マトリクスの例としては、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。本明細書中に記載されているタンパク質の持続放出製剤は、その生体適合性および広範な生分解性特性のために、ポリ乳酸−コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用いて開発することができる。PLGAの分解生成物である乳酸およびグリコール酸は、人体内で迅速に除去することができる。さらに、このポリマーの分解性は、その分子量および組成によって、数カ月〜数年に調節することができる。リポソーム組成物を用いて、本明細書中に記載されているタンパク質または抗体を製剤化することもできる。
【0072】
投薬
製剤の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%にとって致死の用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を判定するために、例えば細胞培養物または実験動物を用いて、当該分野で公知の薬学的手順によって判定することができる。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。
【0073】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトにおける使用のための様々な投薬量の製剤化において使用することができる。そのような製剤の投薬量は、一般に、毒性がほとんどないか、または毒性がないED50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、採用される剤形および利用される投与の経路によって、この範囲内で変化してもよい。本発明の方法において使用される任意の製剤について、治療有効用量は、最初に、細胞培養アッセイから評価される。用量を、動物モデルにおいて製剤化して、細胞培養物中で判定するとIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分が達成される試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成してもよい。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量を、より正確に判定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって、測定してもよい。
【0074】
製剤のタンパク質の適切な投薬量は、治療される疾患の型、疾患の重症度および経過、作用物質が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、以前の療法、患者の病歴および作用物質への応答、ならびに主治医の裁量による。製剤は、一般に、投薬量が約0.1mgタンパク質/体重のkg〜100mgタンパク質/体重のkgの間であるように送達される。
【0075】
製剤がin vivo投与のために使用されるために、それらは無菌でなければならない。製剤は、液体の製剤化または凍結乾燥および復元の前、または後に、無菌ろ過膜によるろ過によって無菌にしてもよい。本明細書中の治療組成物は、一般に、無菌の投与口を有する容器、例えば静脈内溶液バッグ、または皮下注射針によって穴を開けることができる栓を有するバイアルに入れる。
【0076】
製造品
別の実施形態において、本明細書中に記載されている製剤を含み、好ましくはその使用のための説明書を提供する、製造品が提供される。製造品は、製剤を含むのに適した容器を含む。適した容器としては、限定されないが、瓶、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、注射器(例えば、シングルまたはデュアルチャンバー注射器)、試験管、噴霧器、吸入器(例えば、定量吸入器またはドライパウダー吸入器)、またはデポーが挙げられる。容器は、ガラス、金属またはプラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン)等の種々の物質から形成してもよい。容器は製剤を保持し、容器上または容器と関連したラベルは、復元および/または使用のための使用法を示す。ラベルは、製剤が皮下投与に有用または意図されることをさらに示してもよい。製剤を保持している容器は、製剤の繰り返し投与(例えば、2〜6回の投与)を可能にするマルチユースバイアルであってもよい。製造品は、適した希釈液(例えば、WFI、0.9% NaCl、BWFI、リン酸緩衝生理食塩水)を含む第二の容器をさらに含んでもよい。製造品が、凍結乾燥された種類のタンパク質製剤を含む場合、希釈液を凍結乾燥製剤と混合することによって、一般に少なくとも20mg/mlの、復元された製剤中の最終タンパク質濃度が提供される。製造品は、他のバッファー、希釈液、フィルター、針、注射器、および使用のための説明書を有する添付文書を含む、商業的および使用者の観点から望ましい他の物質をさらに含んでもよい。
【0077】
本出願において参照された全ての雑誌記事、特許、特許出願、および他の刊行物は、それらの全体が、参照によって援用される。本出願の内容と参照によって援用されるもののいずれかとの間に何らかの不一致がある場合、本出願が適用されると理解されるべきである。
【0078】
本発明は、以下の実施例の参照によって、より完全に理解される。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0079】
実施例1
上昇した温度での保存に供された抗B7.2抗体製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実施例は、メチオニンがタンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させることができるかどうかを説明する。具体的には、下記の実験は、40℃での保存に供された抗B7.2抗体製剤中の抗B7.2抗体(IgG2、κ軽鎖、図9参照)の凝集に対するメチオニンの効果を試験することを対象とする。B7.2は、B細胞上で発現される共刺激リガンドであり、T細胞表面分子、CD28およびCTLA−4と相互作用することができる。
【0080】
種々のpHレベルで液体として製剤化された抗B7.2抗体の凝集に対する、メチオニンを添加することの効果を、12週間の期間にわたって調査し、この間、製剤は40℃で保存した。抗B7.2抗体を、10mMメチオニンおよび0.01%ポリソルベート−80の存在下および非存在下で、種々のpHレベルで、1mg/mlで製剤化した。最初、6週間後、および12週間後に、SEC−HPLCによってこれらの時点での製剤中の高分子量(%HMW)種のパーセンテージを測定することによって、凝集レベルを測定した。%HMWの増大は、凝集の指標である。
【0081】
各製剤の最初の%HMWレベルは、およそ同じ(約1〜2%、図1a参照)であった。しかしながら、40℃での6週間および12週間の保存の後、メチオニンを欠く製剤中、特にポリソルベート−80を含んでメチオニンを欠き、6.0〜6.6の範囲のpHレベルで調製された試料中で、%HMWは増大した(図1bおよび1c参照)。製剤中のメチオニンの存在によって、ポリソルベート−80のない試料中で、%HMWが最初のレベルの近くで維持された。メチオニンを含むがポリソルベート−80を欠く試料と比較して、ポリソルベート−80およびメチオニンの両方を含む試料中でタンパク質凝集の増大があったが、タンパク質凝集のレベルは、ポリソルベート−80を含むがメチオニンを欠く試料中よりも有意に低かった(図1bおよび1c参照)。
【0082】
要約すると、これらの実験から、メチオニンによって、ポリソルベート−80の存在下および非存在下の両方で、上昇した温度に供された製剤中の抗B7.2抗体の凝集が減少したことが示される。
【0083】
実施例2
上昇した温度に供された抗B7.1抗体製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実施例は、メチオニンがタンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させることができるかどうかをさらに説明する。下記の実験は、40℃での保存に供された抗B7.1抗体製剤中の抗B7.1抗体(IgG2、κ軽鎖、図8参照)の凝集に対するメチオニンの効果を試験することを対象とする。B7.1は、B細胞上で発現される共刺激リガンドであり、T細胞表面分子、CD28およびCTLA−4と相互作用することができる。
【0084】
種々のpHレベルで液体として製剤化された抗B7.1抗体の凝集に対する、メチオニンを添加することの効果を、12週間の期間にわたって調査し、この間、製剤は40℃で保存した。抗B7.1抗体を、10mMメチオニンおよび0.01%ポリソルベート−80の存在下および非存在下で、種々のpHレベルで、1mg/mlで製剤化した。最初、および12週間後に、SEC−HPLCによってこれらの時点での製剤中の高分子量(%HMW)種のパーセンテージを測定することによって、凝集レベルを測定した。
【0085】
各製剤の最初の%HMWレベルは、およそ同じ(約1%、図2a参照)であった。ポリソルベート−80の存在下でメチオニンを欠く、40℃で12週間の抗B7.1抗体製剤の保存は、クエン酸およびコハク酸バッファー中4.7〜6.3のpH範囲で%HMWの小さな増大を生じた(図2b参照)。%HMWの、より有意な増大は、ヒスチジンバッファー中6〜6.6のpH範囲で生じた(図2b参照)。タンパク質製剤へのメチオニンの添加によって、%HMWレベルが低下した。これは、ヒスチジンバッファーおよびポリソルベート−80中で製剤化された抗B7.1抗体の場合に最も明確に見られ、メチオニンによって、%HMWレベルが、40℃で12週間の後、最少の1.2%に維持された。
【0086】
要約すると、これらの実験から、メチオニンによって、ポリソルベート−80の存在下および非存在下の両方で、40℃で保存された製剤中の抗B7.1抗体の凝集が減少したことが示される。
【0087】
実施例3
長期間の保存に供された抗CD22抗体製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実験は、抗CD22抗体製剤中のタンパク質凝集に対する、メチオニンを添加することの効果を試験することを対象とする(図10参照)。CD22は、2−6−連結シアル酸残基を含むオリゴ糖に結合し、分化の後期の間にB細胞の表面で発現される、135kDのB細胞制限シアロ糖タンパク質である。これは、B細胞活性化において役割を果たし、接着分子として作用するようである。CD22および抗CD22は、白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、およびある種の自己免疫状態の治療において有用であると考えられている。
【0088】
25〜26mg/mlの抗CD22(IgG4、κ軽鎖)を、10mMコハク酸バッファー、pH6中で液体として製剤化した。これらの製剤はまた、10mMメチオニンおよび0.01%ポリソルベート−80の一方または両方のいずれかを含んでいた。得られた抗CD22製剤を、25℃および−80℃で、1カ月〜36カ月の間保存し、製剤中の%HMWレベルをSEC−HPLCによって評価した。
【0089】
−80℃で保存された全ての製剤の%HMWレベルは、およそ同じ(約0.5%)であった(図3a参照)。対照的に、25℃で長期の保存は、%HMWレベルの増大を生じた(図3b参照)。この増大は、メチオニンが製剤中に存在する場合、実質的に低下した。注目すべきことに、ポリソルベート−80およびメチオニンとともに製剤化された抗CD22製剤は、メチオニンを含むがポリソルベート−80を欠いて製剤化された試料とおよそ同じ%HMW種を生じた。
【0090】
これらのデータから、メチオニンによって、ポリソルベート−80の存在下または非存在下の両方で、長期間の保存における抗CD22抗体製剤のタンパク質凝集が低下することが示される。
【0091】
実施例4
高温での保存に供されたPSGL−Ig製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実施例は、メチオニンがタンパク質、特に融合タンパク質における凝集を防ぐことができるかどうかの別の説明を提供する。この実験は、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1−免疫グロブリン(PSGL−Ig)融合タンパク質製剤におけるタンパク質凝集に対する、メチオニンを添加することの効果を試験することを対象とした。PSGL−1は、全ての白血球上で構成的に発現される、2つの120kDaのポリペプチド鎖からなる240kDaのホモ二量体である。PSGL−1は、微柔毛の先端上で主に見出される。PSGL−1は、適切な糖で装飾された場合、内皮上でP−セレクチンに結合することができる。
【0092】
融合タンパク質P−セレクチン糖タンパク質リガンド−Ig(PSGL−Ig)の凝集に対するメチオニンの効果を、種々の温度で調査した。PSGL−Igを、10mMメチオニンの存在下および非存在下で、10mM Tris、150mM NaCl、0.005%ポリソルベート−80、pH7.5中で液体製剤として製剤化した。試料を、−80℃、25℃、および40℃で保存し、SEC−HPLCによって、4週間の期間にわたって%HMWについて評価した。
【0093】
全ての試料中の最初の%HMWレベルは同様であり、メチオニンの存在または非存在にかかわらず、−80℃で保存された試料中で変化しないままであった(図4参照)。25℃および40℃での保存は、経時的に増大した凝集を生じた。しかしながら、その凝集は、メチオニンとともに製剤化された試料中で減少した。
【0094】
実施例5
せん断力に供されたPSGL−Ig製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実施例は、メチオニンによって、せん断力に供されたタンパク質の凝集が減少することを説明する。
【0095】
PSGL−Ig融合タンパク質を、10mMメチオニンの存在下および非存在下で、10mM Tris、150mM NaCl、0.005%ポリソルベート−80、pH7.5中で液体として製剤化した。得られた製剤を、振とうせずにおくか、または250rpmで96時間の振とうに供した。
【0096】
メチオニンを含むか、または欠いている、振とうされていない試料は、非常に類似した%HMWレベル(0.6および0.7%)を有した(図5参照)。対照的に、メチオニンを欠く、振とうされた試料は、上昇した%HMWを含んでいた(4.2%および4.4%)。振とうに供された製剤へのメチオニンの添加によって、1.0および2.2%への%HMWレベルの低下が生じた。
【0097】
これらのデータから、メチオニンによって、せん断力に供されたタンパク質の凝集が減少することが示される。
【0098】
実施例6
暗所中で保存されたREFACTO(商標)タンパク質製剤のタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実験は、メチオニンがタンパク質における、具体的には組換えタンパク質における凝集を防ぐことができるかどうかのさらに別の実施例を提供する。さらに説明するために、第VIII因子欠損を矯正するために使用される組換え第VIII因子タンパク質であるREFACTO(商標)(図11参照)をこの実験において使用した。
【0099】
REFACTO(商標)の安定性に対するメチオニンの効果を、1カ月の安定性試験にわたって調査した。REFACTO(商標)を、20mMヒスチジンバッファー中約250IU/mlで、液体として製剤化した。これらの製剤のいくつかはまた、10mMメチオニンおよび10mMクエン酸塩を含んでいた。製剤の全ては、4mM塩化カルシウムおよび310mM塩化ナトリウム、および0.02% Tween−80を含んでいた。製剤のpHは6.5であった。試料を室温で暗所中に、およそ1カ月間保存した。上述のように対照試料を製剤化し、−80℃で保存した。凝集物形成をSEC−HPLCによって評価した。
【0100】
対照試料において、メチオニンおよびクエン酸塩の存在にかかわらず、%HMWレベルは同じのままであった(表1参照)。メチオニンおよびクエン酸塩のないヒスチジンバッファー製剤において、%HMWは、暗所中で1カ月間の保存の後に26〜27%であり、高レベルの凝集が示された。しかしながら、メチオニンおよびクエン酸塩を含むヒスチジンバッファー製剤において、凝集は、7〜8%のみの%HMWで、同じ期間にわたって減少した。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例7
蛍光下で保存されたREFACTO(商標)タンパク質製剤のタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この一連の実験において、蛍光に曝露されたREFACTO(商標)の断片化に対するメチオニンの効果を、1カ月の期間にわたって調査した。
【0103】
REFACTO(商標)を、20mMヒスチジンまたは20mMコハク酸塩バッファー中約250IU/mlで、液体として製剤化した。これらの製剤のいくつかはまた、10mMメチオニンおよび10mMクエン酸塩を含んでいた。製剤の全ては、4mM塩化カルシウムおよび310mM塩化ナトリウム、および0.02% Tween−80を含んでいた。製剤のpHは6.5であった。試料を、蛍光下、室温でおよそ1カ月間保存し、凝集物形成をSEC−HPLCによって評価した。対照試料を上述のように製剤化し、−80℃で保存した。
【0104】
対照試料において、メチオニンおよびクエン酸塩の存在にかかわらず、%HMWレベルは0%HMWで変化しないままであった(表2参照)。メチオニンおよびクエン酸塩のないUSPグレードヒスチジン緩衝製剤において、蛍光下で1カ月の保存の後、%HMWは21%であり、高レベルの凝集が示された。しかしながら、メチオニンおよびクエン酸塩を含むUSPグレードヒスチジン緩衝製剤において、凝集は、約2%のみの%HMWで、同じ期間にわたって減少した(表3参照)。
【0105】
同様に、メチオニンおよびクエン酸塩を欠くコハク酸塩緩衝製剤において、%HMWは25%であったが、メチオニンおよびクエン酸塩を含むコハク酸塩緩衝製剤は、9%HMWしか有さなかった(表3参照)。
【0106】
したがって、メチオニンおよびクエン酸塩によって、メチオニンおよびクエン酸塩なしで製剤化されたREFACTO(商標)と比較して、ヒスチジンまたはコハク酸バッファー中で製剤化され、蛍光下で保存されたREFACTO(商標)の凝集が低下した。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
実施例8
REFACTO(商標)の効力に対するメチオニンの効果
暗所中に維持されたか蛍光に曝露されたかのいずれかのREFACTO(商標)の効力に対するメチオニンの効果を、1カ月の期間にわたって調査した。REFACTO(商標)を、20mMヒスチジンまたは20mMコハク酸塩バッファー中約250IU/mlで、液体として製剤化した。これらの製剤のいくつかはまた、10mMメチオニンまたは10mMクエン酸塩を含んでいた。試料を蛍光または暗所状態に、室温で1カ月間曝露した。
【0110】
REFACTO(商標)は、蛍光に曝露されたいずれかの試料において、室温で1カ月間の保存の後、メチオニンおよびクエン酸塩なしで製剤化された緩衝溶液において、効力の大きな喪失を被った(図6参照)。メチオニンの存在下、暗所中で保存されたREFACTO(商標)は、効力に対する有害な影響を被らなかったが、メチオニンの存在下で、蛍光下で保存されたREFACTO(商標)は、効力のいくらかの喪失を被ったが、効力の完全な喪失を生じたメチオニンを欠いて保存された試料よりも高い効力を依然として保持していた。
【0111】
実施例9
酸化によってrhIL−11の多量体化が低下する
この実験は、IL−11多量体化に対するメチオニン添加の効果を試験することを対象とした。
【0112】
400個のバイアルに0.1mg/mlで組換えヒトIL−11(rhIL−11)薬物物質(5ml管系バイアルを充填する1.0ml)を手作業で充填し、rhIL−11のための標準的な凍結乾燥サイクルを用いて凍結乾燥した。200個のバイアルは、10mM NaPO4、300mMグリシン、pH7.0とともに製剤化されたrhIL−11を含み、残りは10mM NaPO4、300mMグリシン、10mMメチオニン、pH7.0とともに製剤化した。4つの異なる13mm栓を容器閉鎖として使用した。各型の栓を100個のバイアル上で使用した。栓をすすぎ、煮沸し、次いでオートクレーブした。次いで、栓の半分を100℃で16時間乾燥させた。バイアルを、4℃、40℃、および50℃で2週間および4週間の、短期間の促進された安定性に置いた。バイアルをT=0ならびに2週間および4週間に、Met58酸化および多量体形成についてアッセイした。RP−HPLC(低負荷)を用いてrhIL−11中のMet58の酸化度を判定したが、SEC−HPLCを用いてrhIL−11多量体の発生をモニタリングした。
【0113】
最初のプロットを構築して、酸化と多量体化との間の任意の直接相関について試験した(図7参照)。これらのデータから、酸化のレベルが高い場合、多量体レベルが低く、酸化のレベルが低い場合、多量体レベルが高いことが示された。
【0114】
これらのデータから、rhIL−11の酸化および多量体化が反対の環境下で生じるようであることが示される。パラメーターを最適化してrhIL−11の酸化を最小限にする場合、多量体化は増大する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1A】図1Aは、示されたpHレベルで10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下で製剤化された抗B7.2製剤中の高分子量(%HMW)種の最初のパーセンテージを示す棒グラフである。
【図1B】図1Bは、40℃での6週間の保存の後の、示されたpHレベルで10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下で製剤化された抗B7.2製剤中の%HMW種を示す棒グラフである。
【図1C】図1Cは、40℃での12週間の保存の後の、示されたpHレベルで10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下で製剤化された抗B7.2製剤中の%HMW種を示す棒グラフである。
【図2A】図2Aは、10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下でクエン酸、コハク酸、およびヒスチジンバッファー(種々のpH範囲にわたる)中で製剤化された抗B7.1抗体製剤中の最初の%HMW種を示す棒グラフである。
【図2B】図2Bは、40℃での12週間の保存の後の、示されたpHレベルで10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下でクエン酸、コハク酸、およびヒスチジンバッファー(種々のpH範囲にわたる)中で製剤化された抗B7.1抗体製剤中の%HMW種を示す棒グラフである。
【図3A】図3Aは、−80℃で1カ月〜36カ月の保存の後の、抗CD22抗体製剤中に存在する%HMW種を示す棒グラフである。
【図3B】図3Bは、25℃で1カ月〜36カ月の保存の後の、抗CD22抗体製剤中に存在する%HMW種を示す棒グラフである。
【図4】図4は、−80℃、25℃、および40℃で4週間までの保存の後の、メチオニンありまたはなしで製剤化されたPSGL−Igタンパク質製剤中に存在する%HMW種を示すグラフである。
【図5】図5は、メチオニンの存在下(S−1およびS−2)または非存在(C)でせん断力に供されたPSGL−Igタンパク質製剤中の%HMW種を示す棒グラフである。
【図6】図6は、1カ月の期間にわたって明および暗状態に曝露された後の、メチオニンありまたはなしでヒスチジンまたはコハク酸バッファー中で製剤化されたREFACTO(登録商標)の効力を示す棒グラフである。
【図7】図7は、rhIL−11酸化と多量体化との間の相関を示す略図である。
【図8】図8は、抗B7.1抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。予測される分子内ジスルフィド結合を、関与するシステイン残基の連結によって図解する。分子内ジスルフィド結合を形成すると予想されるシステインに下線を引き、連結性を示す。エフェクター機能を減少させるFc部分中の2つの変化した残基を囲む。N結合型糖鎖合成コンセンサス部位は太字のイタリック体である。
【図9】図9は、抗B7.2抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。予測される分子内ジスルフィド結合を、関与するシステイン残基の連結によって図解する。分子内ジスルフィド結合を形成すると予想されるシステインに下線を引き、連結性を示す。エフェクター機能を減少させるFc部分中の2つの変化した残基を囲む。N結合型糖鎖合成コンセンサス部位は太字のイタリック体である。
【図10】図10は、抗CD22抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を示す図である。下線を引かれた配列はシグナル配列であり、相補性決定領域は太字のイタリック体で示す。N結合型糖鎖合成の可能性のある部位に下線を引く。
【図11】図11は、REFACTO(登録商標)のアミノ酸配列を示す図である(Sandberg H.ら、Structural and Functional Characterization of B−Domain Deleted Recombinant Factor VIII、Seminars in Hematology、第38巻第2号、補足4、4〜12頁、2001年4月参照)。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に援用される、「Methods for Reducing Protein Aggregation」という名称の、2006年3月20日に出願した米国仮出願第60/784130号の利益を主張するものである。
【0002】
その分野は、タンパク質の凝集を減少させる方法および凝集が低レベルであるタンパク質製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトゲノムプロジェクトの完了は、タンパク質単離および精製の改良法の開発と相まって、タンパク質製剤の大規模生産を実現した。実際、第I相臨床試験、またはそれを超える試験中の、100を超える組換えタンパク質があり、数十のものは食品医薬品局の承認を得ている。生物活性形態でのタンパク質またはペプチドの効率的で安全な送達を確実に行う製剤は、現在および将来のバイオテクノロジー製品の商業的成功の手掛かりである。
【0004】
不運なことに、タンパク質は、独特の物理的および化学的特性を有し、これらによって製剤化および開発が困難になる。タンパク質の物理的および化学的不安定性は、適したタンパク質製剤の開発に相当な難題をもたらす。タンパク質の最も一般的な物理的不安定性は、タンパク質凝集、およびその巨視的同等物である沈殿である。タンパク質が凝集する傾向は、タンパク質を可能な限り高い濃度で長期間にわたって合成、加工、および保存することが所望されるバイオテクノロジーおよび製薬産業における、特に困難な課題である。
【0005】
タンパク質凝集を駆動する機序は完全には理解されていないが、それでもなお、最終結果は望ましくない。医薬組成物中のポリペプチドによる凝集物形成は、そのポリペプチドの生物活性に有害に影響を及ぼして、医薬組成物の治療有効性の喪失を生じる場合がある。また、凝集状態のタンパク質は免疫原性である場合があり、in vivoで急性毒性効果も有する場合がある。さらに、凝集物形成は、注射器、管系、膜、またはポンプの妨害等、タンパク質製剤の投与の間に他の問題を引き起こす場合がある。したがって、当該分野には、タンパク質凝集を減少させる方法の、および低レベルの凝集を示すタンパク質製剤を開発する必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、低い凝集特性を示すタンパク質製剤、およびそのような製剤を作製する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本出願は、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することによって製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させるための方法に関する。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤化において製剤化された同じタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集のレベルと比較して、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させる。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、製剤が、タンパク質凝集を促進または容易にする条件に供された場合に、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤化において製剤化され、タンパク質凝集を促進する同じ条件に供された同じタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集のレベルと比較して、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させる。
【0008】
ある実施形態において、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、メチオニンが製剤に添加される。特定の実施形態において、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、メチオニンが製剤に添加される。ある実施形態において、タンパク質製剤がタンパク質凝集をもたらす条件に供される、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、タンパク質凝集を促進する条件に製剤が供された後、サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)によって測定すると、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0009】
いくつかの実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、メチオニンを欠く製剤と比較して、タンパク質製剤の貯蔵寿命を増大させる。他の実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、メチオニンを欠く製剤と比較して、タンパク質製剤の効力を維持する。ある実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度(例えば、約1mM〜約145mM)までメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、メチオニンを欠く製剤と比較して、タンパク質製剤の免疫原性を減少させる。
【0010】
その方法は、凝集するタンパク質に対する相同性に基づいて、または凝集する可能性を示唆する実験データに基づいて、凝集することが公知である、または凝集しそうであると考えられるタンパク質に、最も有用である。一実施形態において、製剤内のタンパク質は、保存の間に凝集する。いくつかの実施形態において、製剤内のタンパク質は、せん断力の結果として凝集する。他の実施形態において、製剤内のタンパク質は、高い温度の結果として凝集する。他の実施形態において、製剤内のタンパク質は、光への曝露の結果として凝集する。さらに他の実施形態において、製剤内のタンパク質は、製剤中のある種の糖、または界面活性物質の存在の結果として凝集する。そのような条件に供される、または供されそうである製剤へのメチオニンの添加は、凝集物形成の減少に有効であり、それによって、製剤内のタンパク質またはタンパク質(複数)の生物活性および効力を維持する。
【0011】
いくつかの実施形態において、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、メチオニンを製剤に添加する前に判定される。他の実施形態において、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、メチオニンを製剤に添加した後に判定される。さらなる実施形態において、製剤のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、メチオニンを製剤に添加する前後に判定される。製剤のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)、逆相−高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、UV吸光度、沈降速度測定、およびそれらの組合せを含む、当業者に公知の任意の方法によって判定することができる。特定の実施形態において、約1mM〜約145mMメチオニンを含む製剤中のパーセンテージ高分子量(%HMW)種は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤における%HMW種と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%減少する。他の特定の実施形態において、約1mM〜約145mMメチオニンを含む製剤は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する。製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集は、メチオニンありまたはなしのいずれかで、製剤が調製された後の任意のときに測定することができる。ある実施形態において、凝集は、タンパク質を製剤化した翌日、目的のタンパク質を製剤化してから1週間〜12週間後、または1カ月〜36カ月後に測定される。
【0012】
いくつかの実施形態において、製剤のタンパク質は、抗体、免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質、凝固因子、受容体、リガンド、酵素、転写因子、またはこれらのタンパク質のいずれかの生物活性断片である。特定の実施形態において、タンパク質は、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、PSGL−Ig融合タンパク質、活性化第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、またはこれらのタンパク質のいずれかの生物活性断片である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、製剤中約0.1mg/ml〜約250mg/mlの濃度で製剤化される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、製剤中約0.1mg/ml〜約200mg/mlの濃度で製剤化される。他の実施形態において、タンパク質は、製剤中約0.1mg/ml〜約100mg/mlの濃度で製剤化される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、製剤中約0.1mg/ml〜約10mg/mlの濃度で製剤化される。ある実施形態において、タンパク質は、液体または凍結乾燥粉末として製剤化される。
【0013】
ある実施形態において、タンパク質製剤は、界面活性物質を含む。特定の実施形態において、界面活性物質は、ポリソルベート−20またはポリソルベート−80である。ある他の実施形態において、タンパク質製剤は、界面活性物質を欠く。ある実施形態において、タンパク質製剤は、張性調節物質を含む。特定の実施形態において、張性調節物質は、塩化ナトリウム、マンニトール、またはソルビトールである。ある他の実施形態において、タンパク質製剤は、糖を含む。特定の実施形態において、糖は、ショ糖、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、またはキシリトールである。ある他の実施形態において、タンパク質製剤は、糖を欠く。いくつかの実施形態において、製剤のpHは、約5.0〜8.0の間である。いくつかの他の実施形態において、製剤のpHは、約5.8〜6.6の間である。
【0014】
他の実施形態において、タンパク質製剤は、製剤のタンパク質の凝集を減少させる1つまたは複数の作用物質をさらに含む。いくつかの実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、アミノ酸である。特定の実施形態において、アミノ酸は、アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、約1mM〜約300mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。いくつかの他の実施形態において、アミノ酸は、約5mM〜約150mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。他の実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、金属キレート剤の組合せである。特定の実施形態において、金属キレート剤は、DTPA、EGTA、およびDEFである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のDTPAまたはEGTAの濃度は、約1μM〜約5mMである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のDEFの濃度は、約1μM〜約10mMである。他の実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、フリーラジカルスカベンジャー、特に酸素ラジカルのスカベンジャーである。特定の実施形態において、フリーラジカルスカベンジャーは、マンニトールまたはヒスチジンである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のマンニトールの濃度は、約0.01%〜約25%である。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のヒスチジンの濃度は、約100μM〜約200mMである。他の実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、金属キレート剤およびフリーラジカルスカベンジャーの組合せである。ある他の実施形態において、凝集を減少させる作用物質はクエン酸塩である。ある実施形態において、タンパク質製剤中のクエン酸塩の濃度は、約0.5mM〜約25mMである。
【0015】
別の態様において、本出願は、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することによる、タンパク質がメチオニン残基を含まないか、または10、9、8、7、6、5、4、3、もしくは2個より少ないメチオニン残基を含む、タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法を提供する。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。他の実施形態において、タンパク質がメチオニン残基を含まないか、または10、9、8、7、6、5、4、3、もしくは2個より少ないメチオニン残基を含む、約0.5mM〜約145mMのメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0016】
別の態様において、本出願は、凝集がメチオニン酸化によって引き起こされない、タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法を提供する。方法は、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することを含む。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。他の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0017】
さらに別の実施形態において、界面活性物質とともに製剤化されたタンパク質の凝集を減少させるための方法が提供される。ある実施形態において、界面活性物質は、タンパク質を凝集させる。方法は、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することを含む。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。他の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを、界面活性物質とともに製剤化された製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0018】
さらなる態様において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、せん断力に供されたタンパク質の凝集を減少させる。方法は、製剤がせん断力に供される前、それと同時、またはその後に、メチオニンを添加することを含む。方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集を減少させることを生じる。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで製剤に添加される。いくつかの実施形態において、せん断力は、撹拌、振とう、凍結解凍、輸送、注射器への引き込み、または精製手順によって引き起こされる。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを、せん断力に供された製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0019】
さらなる実施形態において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、光に曝露されたタンパク質の凝集を減少させる。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。いくつかの実施形態において、光は蛍光である。他の実施形態において、光は日光である。さらなる実施形態において、光はUV光である。方法は、製剤が光に曝露される前、それと同時、またはその後に、メチオニンを添加することを含む。ある実施形態において、メチオニンは、光への製剤の曝露の前およびそれと同時、またはその後に添加される。約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤中の同じタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集を減少させることを生じる。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを、光に曝露された製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤生じる。
【0020】
別の態様において、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加する方法は、タンパク質製剤中のタンパク質の効力または生物活性の喪失を低下させる。この方法は、製剤中のタンパク質の凝集を減少させることを生じ、それによって、タンパク質の効力または機能的活性を維持する。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。特定の実施形態において、約0.5mM〜約145mMのメチオニンを製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%の高分子量(HMW)種を有する製剤を生じる。
【0021】
異なる態様において、本出願は、ペプチド/ペプチド(複数)、タンパク質/タンパク質(複数)、またはペプチド/ペプチド(複数)およびタンパク質/タンパク質(複数)、ならびに約0.5mM〜約50mMメチオニンを含む、タンパク質製剤を提供する。特定の実施形態において、メチオニンは、0.5mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12.5mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、および45mMの終濃度まで、製剤に添加される。この態様のある実施形態において、製剤のタンパク質は、抗体、Ig融合タンパク質、凝固因子、受容体、リガンド、酵素、転写因子、またはこれらのタンパク質の生物活性断片である。特定の実施形態において、タンパク質は、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、PSGL−Ig融合タンパク質、活性化第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、またはこれらのタンパク質の生物活性断片である。他の実施形態において、タンパク質は、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、PSGL−Ig融合タンパク質、活性化第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、または第XIIIに対する、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%のアミノ酸配列相同性を有する。いくつかの実施形態において、製剤は、バッファーを含む。特定の実施形態において、バッファーは、ヒスチジンバッファー、クエン酸バッファー、コハク酸バッファー、またはTrisバッファーである。ある実施形態において、製剤は、約5.0〜約8.0のpHを有する。他の実施形態において、製剤は、約6.0〜約7.5のpHを有する。いくつかの実施形態において、製剤は、タンパク質の凝集を減少させることができる別の作用物質を含む。製剤は、糖、界面活性物質、増量剤、凍結保護物質、安定化剤、抗酸化剤、またはこれらの組合せをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、製剤のペプチド(複数可)/タンパク質(複数可)は、製剤中約0.1mg/mlおよび約300mg/mlの濃度である。他の実施形態において、製剤のペプチド(複数可)/タンパク質(複数可)は、製剤中約0.1mg/mlおよび約10mg/mlの濃度である。ある実施形態において、タンパク質は、液体、または凍結乾燥粉末として製剤化される。ある実施形態において、タンパク質製剤は、キットとして提供される。そのようなキットは、バッファー、賦形剤、およびタンパク質製剤の使用のための説明書を含んでもよい。
【0022】
別の態様において、本出願は、本明細書中に記載されているタンパク質製剤を用いた、治療、予防、および/または診断の方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
バイオテクノロジーにおける最近の進歩によって、診断および療法における使用のための、多種多様な生物活性タンパク質製剤が提供されている。しかしながら、そのようなタンパク質製剤の開発、生成、送達、安全性、および安定性は、相当な難題をもたらす。タンパク質製剤の1つの主な課題は、それらが、可溶性または不溶性凝集物の形成の結果として、それらの生物活性を失う場合があることである。凝集は劣化したタンパク質状態であり、したがって、それを最小限にすることによって、タンパク質製剤の、増大した貯蔵寿命、効力、または活性が生じる。
【0024】
本出願は、一般に、約0.5mM〜約145mMの間の終濃度までのアミノ酸メチオニンのタンパク質製剤への添加によって、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集が減少し、それによって、メチオニンなしで調製されたタンパク質製剤と比較して、製剤の貯蔵寿命が増大し、生物活性が維持されるという発見に関する。
【0025】
タンパク質凝集に影響を及ぼす要因
タンパク質は、多種多様な医薬、バイオテクノロジー、および調査の使用を有する。これらの使用のいずれかにおける種々の段階で、タンパク質は凝集する場合がある。「凝集する」によって、可溶性であり続けるか溶液から凝結する不溶性の凝集物を形成する、共有結合性または非共有結合性二量体またはオリゴマーの形成を生じるタンパク質分子の間の物理的相互作用が意味される。用語「タンパク質」は、本明細書中で使用される場合、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、および融合タンパク質を包含する。タンパク質は、組換えまたは合成方法によって生成されてもよい。
【0026】
多くの異なる要因が、タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を引き起こす場合がある。典型的な精製および保存手順は、タンパク質製剤を、タンパク質を凝集させる条件および成分に曝露する場合がある。例えば、タンパク質製剤中のタンパク質は、以下のもののいずれか1つまたは複数の結果として凝集する場合がある。保存、上昇した温度への曝露、製剤のpH、製剤のイオン強度、ならびにある種の界面活性物質(例えば、ポリソルベート−20およびポリソルベート−80)および乳化剤の存在。用語「保存の間に」は、本明細書中で使用される場合、一旦調製された製剤が、即座に使用されず、むしろその調製の後に、液体形態、凍結状態、またはその後の液体形態もしくは他の形態への復元のための乾燥形態のいずれかで、保存のために包装されることを意味する。「上昇した温度」によって、タンパク質が通常保存される温度よりも高い任意の温度が意味される。
【0027】
同様に、タンパク質は、凍結乾燥されたタンパク質塊を溶液中で復元すること、タンパク質試料をろ過精製すること、凍結解凍、振とう、またはタンパク質溶液を注射器によって移すこと等のせん断力に曝露された場合に、凝集する場合がある。凝集はまた、保存バイアル内の溶液中および液気界面のポリペプチド分子の相互作用の結果として、起こる場合がある。輸送の間の振とうに起因する界面の圧縮または拡張の間に、構造変化が、気液および固液界面に吸着したポリペプチド中で起こる場合がある。そのような振とうは、製剤のタンパク質を凝集させ、最終的には他の吸着したタンパク質とともに沈殿させる場合がある。
【0028】
また、光へのタンパク質製剤の曝露は、タンパク質を凝集させる場合がある。光への曝露は、凝集を容易にする反応種を生じる場合がある。いくつかの実施形態において、光は蛍光である。他の実施形態において、光は日光である。さらなる実施形態において、光はUV光である。
【0029】
さらに、タンパク質製剤の包装は、タンパク質凝集に影響を及ぼす場合がある。痕跡レベルの金属(ppmレベルの銅、鉄、コバルト、マンガン)は、容器包装から浸出して、アミド結合の加水分解を促進し、最終的にはタンパク質凝集を生じる場合がある。
【0030】
本出願は、上述の凝集機序の1つまたは複数を制御することによってタンパク質の凝集を減少させる、方法および組成物を提供する。これは、例えば、向上した製品安定性、ならびに製造プロセスおよび保存条件におけるより大きい柔軟性を生じることができる。
【0031】
タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させる方法
本出願は、一般に、アミノ酸メチオニンを製剤に添加することによって製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させることができるという発見に関する。凝集の減少は、メチオニンを欠くこと以外同一の製剤と比例する。凝集を減少させるために、メチオニンは、約0.5mM〜約145mMの間の終濃度まで、製剤に添加される。本出願において使用される場合、「約」は、引用される値の±25%の範囲を有する数値を意味する。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約10mMの間の終濃度まで添加される。他の実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約15mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約2.5mM〜約10mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約2.5mM〜約15mMの間の終濃度まで添加される。他の実施形態において、メチオニンは、約5mM〜約15mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約5mM〜約25mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの他の実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約25mMの間の終濃度まで添加される。ある実施形態において、メチオニンは、約0.5mM〜約50mMの間の終濃度まで添加される。他の実施形態において、メチオニンは、約50mM〜約100mMの間の終濃度まで添加される。ある他の実施形態において、メチオニンは、約100mM〜約145mMの間の終濃度まで添加される。さらに他の実施形態において、メチオニンは、約100mM〜約140mMの間の終濃度まで添加される。さらに他の実施形態において、メチオニンは、約100mM〜約135mMの間の終濃度まで添加される。さらなる実施形態において、メチオニンは、約100mM〜約125mMの間の終濃度まで添加される。他の実施形態において、メチオニンは、約5mM〜約50mMの間の終濃度まで添加される。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約5mM〜約25mMの間の終濃度まで添加される。特定の実施形態において、メチオニンは、約0.5mM、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM、約34mM、約35mM、約36mM、約37mM、約38mM、約39mM、約40mM、約41mM、約42mM、約43mM、約44mM、約45mM、約46mM、約47mM、約48mM、約49mM、または約50mMの終濃度まで、タンパク質製剤に添加される。
【0032】
何によって製剤のタンパク質が凝集させられるかにかかわらず、メチオニンの添加によって、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集が減少する。ある実施形態において、メチオニンの添加によって、保存、上昇した温度への曝露、光への曝露、せん断力への曝露、界面活性物質の存在、pHおよびイオン条件、ならびにそれらの任意の組合せによって引き起こされる、製剤中の凝集が減少する。
【0033】
上述の方法を用いて、液体または乾燥形態で製剤化されたタンパク質の凝集を低下させることができる。凝集の減少は、後の使用のためにそのままの形態で直接保存されていても、凍結状態で保存されて使用の前に解凍されても、または使用の前に液体形態もしくは他の形態への後の復元のために凍結乾燥、風乾、もしくは噴霧乾燥形態等の乾燥形態で調製されても、液体製剤中で観察される。
【0034】
製剤中のタンパク質凝集のレベルは、製剤へのメチオニンの添加の前、実質的にそれと同時、またはその後に測定してもよい。ある実施形態において、凝集のレベルは、製剤へのメチオニンの添加の約1日〜約12週間の間の後に少なくとも1回測定される。他の実施形態において、凝集のレベルは、製剤へのメチオニンの添加の約1カ月〜36カ月の間の後に少なくとも1回測定される。ある実施形態において、本明細書中に記載されている方法は、メチオニンを欠く製剤と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約90%の%HMW種の減少を生じる。特定の実施形態において、約1mM〜約145mMの間のメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、最大限でも約5%、最大限でも約4%、最大限でも約3%、最大限でも約2%、最大限でも約1%、または最大限でも約0.5%のHMW種を有する製剤を生じる。他の特定の実施形態において、約1mM〜約145mMの間のメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、または約0.5%のHMW種を有する製剤を生じる。他の実施形態において、約1mM〜約145mMの間のメチオニンをタンパク質製剤に添加する方法は、約0.5%〜約5%の間のHMW種を有する製剤を生じる。
【0035】
タンパク質製剤は、製剤のタンパク質の凝集を減少させる1つまたは複数の作用物質をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、アミノ酸である。特定の実施形態において、アミノ酸は、アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、約0.5mM〜約200mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、約5mM〜約100mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。いくつかの他の実施形態において、アミノ酸は、約5mM〜約125mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。ある他の実施形態において、アミノ酸は、約0.5mM〜約50mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。さらに他の実施形態において、アミノ酸は、約0.5mM〜約25mMの濃度まで、タンパク質製剤に添加される。製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質はまた、金属キレート剤の組合せであってもよい。特定の実施形態において、金属キレート剤は、DTPA、EGTAおよびDEFである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のDTPAまたはEGTAの濃度は、約1μM〜約10mM、約1μM〜約5mM、約10μM〜約10mM、50μM〜約5mM、または約75μM〜約2.5mMである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のDEFの濃度は、約1μM〜約10mM、約1μM〜約5mM、約10μM〜約1mM、または約20μM〜約250μMである。製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質はまた、フリーラジカルスカベンジャー、特に酸素ラジカルのスカベンジャーであってもよい。特定の実施形態において、フリーラジカルスカベンジャーは、マンニトールまたはヒスチジンである。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のマンニトールの濃度は、約0.01%〜約25%、約0.1%〜約25%、約0.5%〜約15%、または約1%〜約5%である。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のヒスチジンの濃度は、約10μM〜約200mM、約100μM〜約200mM、約500μM〜約100mM、または約15mM〜約35mMである。他の実施形態において、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質は、金属キレート剤およびフリーラジカルスカベンジャーの組合せである。いくつかの実施形態において、製剤中のタンパク質またはタンパク質(複数)の凝集を減少させる作用物質は、クエン酸塩である。ある実施形態において、タンパク質製剤中のクエン酸塩の濃度は、約0.5mM〜約50mM、約0.5mM〜約25mM、約1mM〜約35mM、約5mM〜約25mM、または約5mM〜約10mMである。
【0036】
タンパク質凝集のレベルを評価するための方法
多数の異なる分析方法を用いて、タンパク質製剤中の凝集物の存在およびレベルを検出することができる。これらのものとしては、限定されないが、天然のポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)、キャピラリーゲル電気泳動法(CGE)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、分析超遠心(AUC)、場流動分画(FFF)、光散乱検出、沈降速度、UV分光法、示差走査熱量測定法、比濁法、ネフェロメトリー、顕微鏡法、サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(ESI−MS)、およびタンデムRP−HPLC/ESI−MSが挙げられる。これらの方法は、単独で、または組み合わせてのいずれで使用してもよい。
【0037】
タンパク質製剤の一般的な課題は、時間、熱、またはせん断力での凝集物の不可逆的な蓄積である。典型的には、凝集物が沈殿するとき、それらは、検出するのが容易な大きな粒子を形成する。しかしながら、より小さい、非共有結合性可溶性凝集物は、しばしば、沈殿する大きな粒子の前駆体であり、検出および定量するのがより困難である。したがって、タンパク質製剤中のタンパク質凝集を検出および定量する方法は、評価される凝集物の種類に基づく必要がある。
【0038】
上述の方法の間で、タンパク質製剤中の可溶性で共有結合性の凝集物の存在および/または量を判定する、示唆される方法は、SEC/光散乱、SDS−PAGE、CGE、RP−HPLC/ESI−MS、FFFおよびAUCである。タンパク質製剤中の可溶性で非共有結合性の凝集物の存在および/または量を判定する、示唆される方法は、SEC、PAGE、SDS−PAGE、CGE、FFF、AUC、および動的光散乱である。タンパク質製剤中の不溶性で非共有結合性の凝集物の存在および/または量を判定する、示唆される方法は、UV分光法、比濁法、ネフェロメトリー、顕微鏡法、AUC、および動的光散乱である。
【0039】
タンパク質
抗体、免疫グロブリン融合タンパク質、凝固因子、受容体、リガンド、酵素、転写因子、またはそれらの生物活性断片を含む、凝集の影響を受けやすい任意のタンパク質は、本出願の方法および組成物によって保護することができる。タンパク質が得られる、または生成される、供給源または様式(例えば、適切な精製スキームによって細胞もしくは組織供給源から単離されるか、組換えDNA技術によって生成されるか、または標準的なペプチド合成技術を用いて化学的に合成されるか)は、本出願によって教示される方法に重要でない。したがって、キメラおよび/または融合タンパク質を含む、多種多様な、天然、合成、および/または組換えタンパク質は、本出願の方法および組成物によって、凝集から保護することができる。
【0040】
製剤化される目的のタンパク質としては、限定されないが、PSGL−Ig、GPIb−Ig、GPIIbIIIa−Ig、IL−13R−Ig、IL−21R−Ig、活性化第VII因子、第VIII因子、第VIIIC因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、組織因子、フォンウィルブランド因子、プロテインC等の抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、ミオスタチン/GDF−8、インターロイキン(IL)、例えばIL−1〜IL−15、ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ウリカーゼ、ビクニン、ビリルビン酸化酵素、サブチリシン、リポタンパク質、α−1アンチトリプシン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、カルシトニン、黄体ホルモン、グルカゴン、肺サーファクタント、ウロキナーゼまたは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)等のプラスミノーゲン活性化因子、ボンバジン、トロンビン、プラスミン、ミニプラスミン、マイクロプラスミン、腫瘍壊死因子−αおよび−β、エンケファリナーゼ、RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted)、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α)、ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン、ミュラー管抑制因子、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロリラキシン、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、デオキシリボヌクレアーゼ、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(PIGF)、ホルモンまたは増殖因子の受容体、インテグリン、プロテインAまたはD、リウマトイド因子、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5、もしくはNT−6)等の神経栄養因子、またはNGF−β等の神経成長因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、aFGFおよびbFGF等の線維芽細胞増殖因子、上皮増殖因子(EGF)、TGF−α、およびTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、またはTGF−β5を含むTGF−β等の、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、インスリン様増殖因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II)、des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質、CD2、CD3、CD4、CD8、CD9、CD19、CD20、CD22、CD28、CD34、およびCD45等のCDタンパク質、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、骨誘導因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、インターフェロン−α、−β、および−γ等のインターフェロン、コロニー刺激因子(CSF)、例えばM−CSF、GM−CSF、およびG−CSF、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、EGF受容体、HER2、HER3またはHER4受容体等の、HER受容体ファミリーのメンバー、LFA−1、VLA−4、ICAM−1、およびVCAM等の細胞接着分子、IgE、血液型抗原、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、崩壊促進因子(DAF)、HIV gag、env、pol、tat、またはrevタンパク質等のウイルス抗原、ホーミング受容体、アドレシン、イムノアドヘシン等のタンパク質、ならびに上記で一覧にしたポリペプチドのいずれかの生物活性断片または変異体が挙げられる。
【0041】
用語「生物活性断片」は、それが由来するタンパク質の機能の少なくとも1つを保持するタンパク質の断片を意味する。抗体の生物活性断片としては、抗体の抗原結合断片が挙げられ、受容体の生物活性断片としては、そのリガンドに依然として結合することができる受容体の断片が挙げられ、リガンドの生物活性断片としては、その受容体に依然として結合することができるリガンドの部分が挙げられ、酵素の生物活性断片としては、全長酵素によって触媒される反応を依然として触媒することができる酵素の部分が挙げられる。ある実施形態において、生物活性断片は、それが由来するタンパク質の機能の少なくとも約25%、50%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%を保持する。タンパク質の機能は、周知の方法(例えば、抗体抗原相互作用を試験すること、リガンド−受容体相互作用を試験すること、酵素活性を測定すること、転写活性を測定すること、またはDNA−タンパク質相互作用を測定すること)によってアッセイすることができる。
【0042】
ある実施形態において、製剤化されるタンパク質は、抗体である。抗体は、上述のタンパク質のいずれかに対して引き起こされ、結合してもよい。ある特定の実施形態において、抗体としては、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、抗ミオスタチン抗体(例えば、米国出願第60/752660号)、抗IL−11抗体、抗IL−12抗体(例えば、米国出願第60/752660号)、および抗IL−13抗体(例えば、米国出願第60/752660号)が挙げられる。他の特定の実施形態において、抗体としては、抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、抗ミオスタチン抗体(例えば米国出願第60/752660号)、抗IL−11抗体、抗IL−12抗体(例えば、米国出願第60/752660号)、および抗IL−13抗体(例えば、米国出願第60/752660号)に対する、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列相同性を有する抗体が挙げられ、それらの、それぞれの抗原に結合する能力を保持している。2つのタンパク質の間のアミノ酸配列相同性は、標準的な方法に従って測定することができる(例えば、PearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444〜2448頁、1998年、George,D.G.ら、Macromolecular Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications中、127〜149頁、Alan R.Liss,Inc.1988年、FengおよびDoolittle、Journal of Molecular Evolution 25:351〜360頁、1987年、HigginsおよびSharp、CABIOS 5:151〜153頁、1989年、ならびにNCBI、NLM、メリーランド州ベテスダの種々のBLASTプログラム参照)。
【0043】
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ポリペプチド特異性を有する抗体組成物、二重特異性抗体、ダイアボディー、または他の、抗体および組換え抗体の精製された調製物を含む。抗体は、例えば任意のアイソタイプ(IgG、IgA、IgE、IgM等)の、全抗体、または、目的の抗原に結合する、その断片であってもよい。ある実施形態において、製剤化される抗体は、IgGアイソタイプを有する抗体である。
【0044】
組換え抗体としては、限定されないが、ヒトおよび非ヒト部分、単鎖抗体および多特異的抗体の両方を含む、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体が挙げられる。キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するもの等の、異なる部分が異なる動物種に由来する、分子である。単鎖抗体は、抗原結合部位を有し、単一のポリペプチドからなる。多特異的抗体は、異なる抗原に特異的に結合する少なくとも2つの抗原結合部位を有する、抗体分子である。抗体は、従来の技術を用いて断片化してもよく、断片を目的の抗原に対する結合についてスクリーニングしてもよい。好ましくは、抗体断片は、インタクトな抗体の抗原結合および/または可変領域を含む。したがって、用語、抗体断片は、ある種のタンパク質に選択的に結合することができる、抗体分子の、タンパク質分解的に切断された、または組換えによって調製された部分のセグメントを含む。そのようなタンパク質分解的および/または組換え断片の非限定的な例としては、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fd、Fv、dAb、単離されたCDR、ならびにペプチドリンカーによって連結されたVLおよび/またはVHドメインを含む単鎖抗体(scFv)が挙げられる。scFv’は、共有結合または非共有結合によって連結されて、2つ以上の結合部位を有する抗体を形成してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。用語「ヒト化モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合、同等なヒトモノクローナル抗体(ドナー)に見出されるアミノ酸残基の少なくとも1つまたは複数を含むよう改変されている、非ヒト供給源(レシピエント)由来のモノクローナル抗体である。ある実施形態において、ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する。「完全ヒト化モノクローナル抗体」は、同等なヒトモノクローナル抗体の抗原結合領域に見出されるアミノ酸残基の全てを含むよう改変されている、非ヒト供給源由来のモノクローナル抗体である。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体またはドナー抗体のいずれにも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体機能性をさらに改良および最適化するよう行われてもよい。ヒト化抗体はまた、所望により、ヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、製剤化されるタンパク質は、融合タンパク質である。一実施形態において、融合タンパク質は、免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質である。Ig融合タンパク質は、免疫グロブリンの定常領域に由来するIg部分に連結された非Ig部分を含むタンパク質である。特定の実施形態において、融合タンパク質は、IgG重鎖定常領域を含む。別の実施形態において、融合タンパク質は、ヒト免疫グロブリンCγ1のヒンジ、CH2およびCH3領域に対応するアミノ酸配列を含む。Ig融合タンパク質の非限定的な例としては、PSGL−Ig(米国特許第5827817号参照)、GPIb−Ig(国際公開第02/063003号参照)、GPIIbIIIa−Ig、IL−13R−Ig(米国特許第6268480号参照)、TNFR−Ig(国際公開第04/008100号参照)、IL−21R−Ig、CTLA4−IgおよびVCAM2D−IgGが挙げられる。融合タンパク質を生成する方法は当該分野で周知である(例えば、米国特許第5516964号、第5225538号、第5428130号、第5514582号、第5714147号、第6136310号、第6887471号、および第6482409号)。いくつかの実施形態において、製剤のタンパク質としては、PSGL−Ig(米国特許第5827817号参照)、GPIb−Ig(国際公開第02/063003号参照)、GPIIbIIIa−Ig、IL−13R−Ig(米国特許第6268480号参照)、TNFR−Ig(国際公開第04/008100号参照)、IL−21R−Ig、CTLA4−IgおよびVCAM2D−IgG、に対する、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列相同性を有し、それらが、それらのそれぞれのリガンドに結合する能力を保持している、融合タンパク質が挙げられる。
【0047】
製剤は、特定の疾患または障害の、治療、または診断の必要に応じて、1つより多いタンパク質を含んでもよい。さらなるタンパク質(複数可)は、それらは製剤中の他のタンパク質(複数可)に対する相補活性を有するので、選択され、製剤中の他のタンパク質(複数可)に有害に影響を及ぼさない。また、タンパク質製剤はまた、タンパク質製剤の最終的な有用性において有用な非タンパク質物質を含んでもよい。例えば、ショ糖を添加して、溶液中のタンパク質の安定性および可溶性を増強してもよく、ヒスチジンを添加して適切な緩衝能を提供してもよい。
【0048】
ある実施形態において、製剤化されるタンパク質は、本質的に純粋および/または本質的に均質である(すなわち、実質的に、混入するタンパク質等を含まない)。用語「本質的に純粋な」タンパク質は、少なくとも約90重量%のタンパク質画分、好ましくは少なくとも約95重量%のタンパク質画分を含む組成物を意味する。用語「本質的に均質な」タンパク質は、溶液中の種々の安定化剤および水の質量を除いて、少なくとも約99重量%のタンパク質画分を含む組成物を意味する。
【0049】
製剤化されるタンパク質はまた、細胞毒、治療剤、または放射性金属イオンとコンジュゲートしてもよい。一実施形態において、コンジュゲートされるタンパク質は、抗体またはその断片である。細胞毒または細胞毒性物質としては、細胞にとって有害な任意の作用物質が挙げられる。非限定的な例としては、カリチアマイシン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、およびそれらの類似体、またはホモログが挙げられる。治療剤としては、限定されないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、および5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシンおよびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン)、および有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。そのような部分をタンパク質にコンジュゲートさせる技術は、当該分野で周知である。
【0050】
製剤
製剤の組成は、限定されないが、タンパク質(複数可)(例えば、受容体、抗体、Ig融合タンパク質、酵素等)の性質、タンパク質の濃度、所望されるpH範囲、どのようにしてタンパク質製剤が保存されるか、タンパク質製剤が保存される期間、ならびにタンパク質製剤が患者に投与されるかどうか、およびどのようにして投与されるかを含む、いくつかの要因の考慮によって判定される。
【0051】
製剤中のタンパク質の濃度
製剤中のタンパク質の濃度は、タンパク質製剤の最終的な使用による。本明細書中に記載されている製剤中のタンパク質濃度は、一般に、約0.5mg/ml〜約300mg/mlの間、例えば約0.5mg/ml〜約25mg/mlの間、約5mg/ml〜約25mg/mlの間、約10mg/ml〜約100mg/mlの間、約25mg/ml〜約100mg/mlの間、約50mg/ml〜約100mg/mlの間、約75mg/ml〜約100mg/mlの間、約100mg/ml〜約200mg/mlの間、約125mg/ml〜約200mg/mlの間、約150mg/ml〜約200mg/mlの間、約200mg/ml〜約300mg/mlの間、および約250mg/ml〜約300mg/mlの間である。
【0052】
タンパク質製剤は、治療目的のために使用してもよい。したがって、製剤中のタンパク質の濃度は、患者が耐えられ、患者に治療上の価値がある投薬および容量でタンパク質を提供することに基づいて、判定される。タンパク質製剤が少容量の注射によって投与される場合、タンパク質濃度は、注射容量による(通常1.0〜1.2mL)。タンパク質ベースの療法は、通常、1週間あたり、1カ月あたり、または数カ月あたり、数mg/kgの投薬を必要とする。したがって、タンパク質が2〜3mg/患者の体重のkgで提供され、平均患者体重が75kgである場合、150〜225mgのタンパク質が1.0〜1.2mL注射容量で送達されることが必要になるか、または、容量を増大させて、より低いタンパク質濃度を提供する必要がある。
【0053】
バッファー
用語「バッファー」は、本明細書中で使用される場合、溶液pHを所望の範囲に維持する作用物質を含む。本明細書中に記載されているような製剤のpHは、一般に、pH約5.0〜約9.0の間、例えば、約pH5.5〜約6.5、約pH5.5〜約6.0、約pH6.0〜約6.5、pH5.5、pH6.0、またはpH6.5である。一般に、溶液をpH5.5〜6.5に維持することができるバッファーが使用される。本明細書中に記載されている製剤において使用することができるバッファーの非限定的な例としては、ヒスチジン、コハク酸塩、グルコン酸塩、tris(トロメタモール)、Bis−Tris、MOPS、ACES、BES、TES、HEPES、EPPS、エチレンジアミン、リン酸、マレイン酸、リン酸塩、クエン酸塩、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、およびカコジル酸塩が挙げられる。ヒスチジンは、皮下、筋肉内、または腹腔内注射によって投与される製剤において好ましいバッファーである。バッファーの濃度は、約5mM〜30mMの間である。一実施形態において、製剤のバッファーは、約5mM〜約20mMの濃度のヒスチジンである。
【0054】
賦形剤
タンパク質、メチオニン、およびバッファーに加えて、本明細書中に記載されている製剤はまた、他の物質を含んでもよい。これらの物質としては、限定されないが、凍結保護物質、溶解保護物質、界面活性物質、増量剤、抗酸化剤、および安定化剤が挙げられる。一実施形態において、本明細書中に記載されているタンパク質製剤は、凍結保護物質、溶解保護物質、界面活性物質、増量剤、抗酸化剤、安定化剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される賦形剤を含む。
【0055】
用語「凍結保護物質」は、本明細書中で使用される場合、タンパク質表面から選択的に排除されることによって、タンパク質に凍結誘導性ストレスに対する安定性を提供する作用物質を含む。凍結保護物質はまた、一次および二次乾燥ならびに長期間の生成物保存の間の保護を提供することができる。凍結保護物質の非限定的な例としては、ショ糖、グルコース、トレハロース、マンニトール、マンノース、およびラクトースなどの糖、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプンおよびポリエチレングリコール等のポリマー、ポリソルベート(例えば、PS−20またはPS−80)等の界面活性物質、グリシン、アルギニン、ロイシン、およびセリン等のアミノ酸が挙げられる。生物系において低毒性を示す凍結保護物質が、一般に使用される。凍結保護物質は、製剤中に含まれる場合、約1%〜約10%(重量/容量)の間の終濃度まで添加される。一実施形態において、凍結保護物質は、約0.5%〜約10%(重量/容量)の間の濃度のショ糖である。
【0056】
一実施形態において、溶解保護物質が、本明細書中に記載されている製剤に添加される。用語「溶解保護物質」は、本明細書中で使用される場合、無定形のガラス状マトリクスを提供すること、および水素結合によってタンパク質と結合して、乾燥プロセスの間に除去される水分子を置換することによって、凍結乾燥または脱水プロセス(一次および二次凍結乾燥サイクル)の間にタンパク質に安定性を提供する作用物質を含む。これは、タンパク質構造を維持すること、凍結乾燥サイクルの間にタンパク質分解を最小限にすること、および長期間の生成物安定性を向上させることを助ける。溶解保護物質の非限定的な例としては、ショ糖またはトレハロース等の糖、グルタミン酸1ナトリウム、非結晶性グリシンまたはヒスチジン等のアミノ酸、ベタイン等のメチルアミン、硫酸マグネシウム等のリオトロピック塩、三価以上の糖アルコール等のポリオール、例えばグリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プルロニック、ならびにそれらの組合せが挙げられる。製剤に添加される溶解保護物質の量は、一般に、タンパク質製剤が凍結乾燥された場合に、許容されない量の、タンパク質の分解/凝集をもたらさない、量である。溶解保護物質が糖(ショ糖またはトレハロース等)であり、タンパク質が抗体である場合、タンパク質製剤中の溶解保護物質濃度の非限定的な例は、約10mM〜約400mM、好ましくは約30mM〜約300mM、最も好ましくは約50mM〜約100mMである。
【0057】
ある実施形態において、界面活性物質が、製剤中に含まれてもよい。用語「界面活性物質」は、本明細書中で使用される場合、気液界面での吸着によって液体の表面張力を減少させる作用物質を含む。界面活性物質の例としては、限定されないが、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80またはポリソルベート20)等の非イオン性界面活性物質、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、Triton(商標)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル−スルホベタイン、ミリスチル−スルホベタイン、リノレイル−スルホベタイン、ステアリル−スルホベタイン、ラウリル−サルコシン、ミリスチル−サルコシン、リノレイル−サルコシン、ステアリル−サルコシン、リノレイル−ベタイン、ミリスチル−ベタイン、セチル−ベタイン、ラウロアミドプロピル−ベタイン、コカミドプロピル−ベタイン、リノールアミドプロピル−ベタイン、ミリスタミドプロピル−ベタイン、パルミドプロピル−ベタイン、イソステアラミドプロピル−ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル)、ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、またはイソステアラミドプロピル−ジメチルアミン、メチルココイルタウリンナトリウムまたはメチルオレイルタウレート二ナトリウム、およびMonaquat(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.、ニュージャージー州パターソン)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、ならびにエチレンおよびプロピレングリコールのコポリマー(例えば、プルロニック、PF68)が挙げられる。添加される界面活性物質の量は、例えばSEC−HPLCを用いてアッセイしてHMW種またはLMW種のパーセンテージを判定すると、復元されたタンパク質の凝集を許容され得るレベルに維持し、本明細書中に記載されているタンパク質製剤の凍結乾燥物の復元の後の微粒子の形成を最小限にするものである。例えば、界面活性物質は、約0.001〜約0.5%、例えば約0.05〜約0.3%の量で、製剤(液体、または凍結乾燥物の復元の前に)中に存在してもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、増量剤が製剤中に含まれる。用語「増量剤」は、本明細書中で使用される場合、医薬生成物と直接相互作用することなしに凍結乾燥生成物の構造を提供する作用物質を含む。薬学的に洗練された塊を提供することに加えて、増量剤はまた、崩壊温度を改変すること、凍結解凍保護を提供すること、および長期間の保存にわたるタンパク質安定性を増強することに関して、有用な質を与えることができる。増量剤の非限定的な例としては、マンニトール、グリシン、ラクトース、およびショ糖が挙げられる。増量剤は、結晶性(グリシン、マンニトール、または塩化ナトリウム等)または無定形(デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン等)であってもよく、一般に、0.5%〜10%の量で、タンパク質製剤中で使用される。
【0059】
Remington’s Pharmaceutical Sciences第16版、Osol,A.編(1980年)に記載されているもの等の、他の薬学的に許容され得る支持体、賦形剤、または安定化剤もまた、それらが製剤の所望の特徴に有害に影響を及ぼさなければ、本明細書中に記載されているタンパク質製剤中に含まれてもよい。本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容され得る支持体」は、医薬投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を意味する。薬学的に活性のある物質のためのそのような媒体および作用物質の使用は、当該分野で周知である。許容され得る支持体、賦形剤、または安定化剤は、採用される投薬量および濃度で受容者にとって無毒であり、さらなる緩衝剤、保存剤、共溶媒、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、EDTA等のキレート剤、金属錯体(例えば、Znタンパク質錯体)、ポリエステル等の生分解性ポリマー、ナトリウム、多価糖アルコール等の塩形成対イオン、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、オルニチン、ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、およびスレオニン等のアミノ酸、ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース、ミオイニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール等の、有機糖または糖アルコール、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウム等の硫黄含有還元剤、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリン等の低分子量タンパク質、ならびにポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーが挙げられる。
【0060】
保存方法
本明細書中に記載されているタンパク質製剤は、当業者に公知の任意の方法によって保存してもよい。非限定的な例としては、タンパク質製剤を、凍結、凍結乾燥、および噴霧乾燥することが挙げられる。
【0061】
いくつかの場合において、タンパク質製剤は、保存のために凍結される。したがって、凍結解凍サイクルを含むそのような条件下で、製剤が比較的安定であることが望ましい。製剤の適合性を判定する1つの方法は、試料製剤を、少なくとも2回、例えば3〜10回の凍結(例えば−20℃または−80℃)および解凍(例えば、室温での速い解凍または氷上での遅い解凍)のサイクルに供し、凍結解凍サイクルの後に蓄積する低分子量(LMW)種および/またはHMW種の量を判定し、それを凍結解凍手順の前に試料中に存在するLMW種またはHMW種の量と比較することである。LMWまたはHMW種の増大は、製剤の一部として保存されたタンパク質の安定性の低下を示す。サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)を用いて、LMWおよびHMW種の存在を判定することができる。
【0062】
いくつかの場合において、タンパク質製剤は、液体として保存してもよい。したがって、種々の温度を含むそのような条件下で、液体製剤が比較的安定であることが望ましい。製剤の安定性を判定する1つの方法は、試料製剤をいくつかの温度(2〜8、15、20、25、30、35、40、および50℃等)で保存し、経時的に蓄積するHMWおよび/またはLMW種の量をモニタリングすることである。経時的に蓄積するHMWおよび/またはLMW種の量が少ないほど、製剤の保存条件はよりよい。したがって、タンパク質の電荷プロフィールを、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX−HPLC)によってモニタリングしてもよい。
【0063】
あるいは、製剤は、凍結乾燥の後に保存してもよい。用語「凍結乾燥」は、本明細書中で使用される場合、乾燥される物質をまず凍結させ、その後に真空環境での昇華による氷または凍結した溶媒の除去が続くプロセスをいう。保存の際に凍結乾燥生成物の安定性を増強するように、賦形剤(例えば、溶解保護物質)が、凍結乾燥される製剤中に含まれてもよい。用語「復元された製剤」は、本明細書中で使用される場合、タンパク質が希釈液中で分散するように凍結乾燥タンパク質製剤を希釈液中に溶解させることによって調製された製剤をいう。用語「希釈液」は、本明細書中で使用される場合、薬学的に許容され得る物質(ヒトへの投与のために安全で無毒)であり、凍結乾燥の後に復元された製剤等の液体製剤の調製に有用である。希釈液の非限定的な例としては、滅菌水、注射のための静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、無菌生理食塩溶液、リンガー液、デキストロース溶液、または塩および/もしくはバッファーの水溶液が挙げられる。
【0064】
凍結乾燥の後に製剤のタンパク質成分の安定性について製剤を試験することは、製剤の適合性を判定するために有用である。方法は、試料製剤が凍結される代わりに凍結乾燥され、希釈液を用いて復元されること以外、凍結について上述されたものと同様であり、復元された製剤がLMW種および/またはHMW種の存在について試験される。凍結乾燥されていない対応する試料製剤と比較した、凍結乾燥試料中のLMWまたはHMW種の増大は、凍結乾燥試料における安定性の低下を示す。
【0065】
いくつかの場合において、製剤は、噴霧乾燥され、次いで保存される。噴霧乾燥のために、液体製剤は、乾燥ガス流の存在下でエアロゾル化される。製剤液滴からガス流に水が除去され、薬物製剤の乾燥粒子を生じる。(i)噴霧乾燥脱水の間にタンパク質を保護するため、(ii)噴霧乾燥の後の保存の間にタンパク質を保護するため、および/または(iii)エアロゾル化に適した溶液特性を与えるために、賦形剤が製剤中に含まれてもよい。方法は、試料製剤が凍結される代わりに噴霧乾燥され、希釈液で復元される以外、凍結について上述されたものと同様であり、復元された製剤が、LMW種および/またはHMW種の存在について試験される。凍結されていない対応する試料製剤と比較した、噴霧乾燥試料におけるLMWまたはHMW種の増大は、噴霧乾燥試料における安定性の低下を示す。
【0066】
治療の方法
本明細書中に記載されている製剤は、それを必要とする患者における疾患または障害の治療および/または予防における医薬組成物として有用である。用語「治療」は、治療的処置および予防(prophylactic)または防止(preventative)手段の両方をいう。治療は、疾患、疾患の症状、または疾患に対する素因に治癒(cure、heal)、改善、軽減、変化、治療、寛解、改良する、または影響を及ぼす目的で、疾患/障害、疾患/障害の症状、疾患/障害に対する素因を有する患者由来の体、単離された組織、または細胞への、タンパク質製剤の適用または投与を含む。「治療を必要とする」ものは、すでに障害を有するもの、ならびに障害が予防されるべきものを含む。用語「障害」は、本明細書中に記載されているタンパク質製剤での治療の利益を受ける任意の状態である。これは、哺乳動物を問題になっている障害にかかりやすくする病的状態を含む、慢性および急性障害または疾患を含む。本明細書中で治療される障害の非限定的な例としては、出血性障害、血栓症、白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、自己免疫障害、血液凝固障害、血友病、移植片拒絶、炎症性障害、心疾患、筋消耗障害、アレルギー、癌、筋ジストロフィー、筋肉減少症、悪液質、II型糖尿病、関節リウマチ、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、皮膚炎、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、好酸球増加症、線維症、および過剰な粘液産生が挙げられる。
【0067】
投与
本明細書中に記載されているタンパク質製剤は、適した様式、例えば皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内もしくは関節内経路による注射もしく輸液での、単回もしくは複数ボーラスまたは長期間にわたる輸液、局所投与、経粘膜、経皮直腸、吸入、または徐放もしくは持続放出手段による等の当業者に公知の方法を用いて、治療を必要とする被験体に投与することができる。タンパク質製剤が凍結乾燥されている場合、凍結乾燥された物質は、投与の前に、まず適切な液体中で復元される。凍結乾燥された物質は、例えば、注射のための静菌水(BWFI)、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または凍結乾燥の前にタンパク質があった同じ製剤中で、復元してもよい。
【0068】
非経口組成物は、投与の簡便性および投薬量の均一性のために、投薬単位形態で調製してもよい。「投薬単位形態」は、本明細書中で使用される場合、治療される被験体のための単位投薬として適した物理的に別々の単位をいい、各単位は、選択された薬学的支持体と関連して所望の治療効果を生じるよう計算された、予め決定された量の活性化合物を含む。
【0069】
定量吸入器等の吸入方法の場合、装置は、適切な量の製剤を送達するよう設計される。吸入による投与のために、化合物は、適した噴霧剤、例えば二酸化炭素等の気体を含む加圧された容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からの、エアロゾルスプレーの形態で送達される。あるいは、吸入される剤形は、ドライパウダー吸入器を用いて乾燥粉末として提供してもよい。
【0070】
タンパク質製剤はまた、例えばコアセルベーション技術または界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えばコロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)中またはマクロエマルション中で、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に封入してもよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences第18版に開示されている。
【0071】
本明細書中に記載されているタンパク質製剤の持続放出調製物もまた、調製してもよい。持続放出調製物の適した例としては、タンパク質製剤を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられる。持続放出マトリクスの例としては、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。本明細書中に記載されているタンパク質の持続放出製剤は、その生体適合性および広範な生分解性特性のために、ポリ乳酸−コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用いて開発することができる。PLGAの分解生成物である乳酸およびグリコール酸は、人体内で迅速に除去することができる。さらに、このポリマーの分解性は、その分子量および組成によって、数カ月〜数年に調節することができる。リポソーム組成物を用いて、本明細書中に記載されているタンパク質または抗体を製剤化することもできる。
【0072】
投薬
製剤の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%にとって致死の用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を判定するために、例えば細胞培養物または実験動物を用いて、当該分野で公知の薬学的手順によって判定することができる。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。
【0073】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトにおける使用のための様々な投薬量の製剤化において使用することができる。そのような製剤の投薬量は、一般に、毒性がほとんどないか、または毒性がないED50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、採用される剤形および利用される投与の経路によって、この範囲内で変化してもよい。本発明の方法において使用される任意の製剤について、治療有効用量は、最初に、細胞培養アッセイから評価される。用量を、動物モデルにおいて製剤化して、細胞培養物中で判定するとIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分が達成される試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成してもよい。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量を、より正確に判定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって、測定してもよい。
【0074】
製剤のタンパク質の適切な投薬量は、治療される疾患の型、疾患の重症度および経過、作用物質が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、以前の療法、患者の病歴および作用物質への応答、ならびに主治医の裁量による。製剤は、一般に、投薬量が約0.1mgタンパク質/体重のkg〜100mgタンパク質/体重のkgの間であるように送達される。
【0075】
製剤がin vivo投与のために使用されるために、それらは無菌でなければならない。製剤は、液体の製剤化または凍結乾燥および復元の前、または後に、無菌ろ過膜によるろ過によって無菌にしてもよい。本明細書中の治療組成物は、一般に、無菌の投与口を有する容器、例えば静脈内溶液バッグ、または皮下注射針によって穴を開けることができる栓を有するバイアルに入れる。
【0076】
製造品
別の実施形態において、本明細書中に記載されている製剤を含み、好ましくはその使用のための説明書を提供する、製造品が提供される。製造品は、製剤を含むのに適した容器を含む。適した容器としては、限定されないが、瓶、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、注射器(例えば、シングルまたはデュアルチャンバー注射器)、試験管、噴霧器、吸入器(例えば、定量吸入器またはドライパウダー吸入器)、またはデポーが挙げられる。容器は、ガラス、金属またはプラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン)等の種々の物質から形成してもよい。容器は製剤を保持し、容器上または容器と関連したラベルは、復元および/または使用のための使用法を示す。ラベルは、製剤が皮下投与に有用または意図されることをさらに示してもよい。製剤を保持している容器は、製剤の繰り返し投与(例えば、2〜6回の投与)を可能にするマルチユースバイアルであってもよい。製造品は、適した希釈液(例えば、WFI、0.9% NaCl、BWFI、リン酸緩衝生理食塩水)を含む第二の容器をさらに含んでもよい。製造品が、凍結乾燥された種類のタンパク質製剤を含む場合、希釈液を凍結乾燥製剤と混合することによって、一般に少なくとも20mg/mlの、復元された製剤中の最終タンパク質濃度が提供される。製造品は、他のバッファー、希釈液、フィルター、針、注射器、および使用のための説明書を有する添付文書を含む、商業的および使用者の観点から望ましい他の物質をさらに含んでもよい。
【0077】
本出願において参照された全ての雑誌記事、特許、特許出願、および他の刊行物は、それらの全体が、参照によって援用される。本出願の内容と参照によって援用されるもののいずれかとの間に何らかの不一致がある場合、本出願が適用されると理解されるべきである。
【0078】
本発明は、以下の実施例の参照によって、より完全に理解される。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0079】
実施例1
上昇した温度での保存に供された抗B7.2抗体製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実施例は、メチオニンがタンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させることができるかどうかを説明する。具体的には、下記の実験は、40℃での保存に供された抗B7.2抗体製剤中の抗B7.2抗体(IgG2、κ軽鎖、図9参照)の凝集に対するメチオニンの効果を試験することを対象とする。B7.2は、B細胞上で発現される共刺激リガンドであり、T細胞表面分子、CD28およびCTLA−4と相互作用することができる。
【0080】
種々のpHレベルで液体として製剤化された抗B7.2抗体の凝集に対する、メチオニンを添加することの効果を、12週間の期間にわたって調査し、この間、製剤は40℃で保存した。抗B7.2抗体を、10mMメチオニンおよび0.01%ポリソルベート−80の存在下および非存在下で、種々のpHレベルで、1mg/mlで製剤化した。最初、6週間後、および12週間後に、SEC−HPLCによってこれらの時点での製剤中の高分子量(%HMW)種のパーセンテージを測定することによって、凝集レベルを測定した。%HMWの増大は、凝集の指標である。
【0081】
各製剤の最初の%HMWレベルは、およそ同じ(約1〜2%、図1a参照)であった。しかしながら、40℃での6週間および12週間の保存の後、メチオニンを欠く製剤中、特にポリソルベート−80を含んでメチオニンを欠き、6.0〜6.6の範囲のpHレベルで調製された試料中で、%HMWは増大した(図1bおよび1c参照)。製剤中のメチオニンの存在によって、ポリソルベート−80のない試料中で、%HMWが最初のレベルの近くで維持された。メチオニンを含むがポリソルベート−80を欠く試料と比較して、ポリソルベート−80およびメチオニンの両方を含む試料中でタンパク質凝集の増大があったが、タンパク質凝集のレベルは、ポリソルベート−80を含むがメチオニンを欠く試料中よりも有意に低かった(図1bおよび1c参照)。
【0082】
要約すると、これらの実験から、メチオニンによって、ポリソルベート−80の存在下および非存在下の両方で、上昇した温度に供された製剤中の抗B7.2抗体の凝集が減少したことが示される。
【0083】
実施例2
上昇した温度に供された抗B7.1抗体製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実施例は、メチオニンがタンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させることができるかどうかをさらに説明する。下記の実験は、40℃での保存に供された抗B7.1抗体製剤中の抗B7.1抗体(IgG2、κ軽鎖、図8参照)の凝集に対するメチオニンの効果を試験することを対象とする。B7.1は、B細胞上で発現される共刺激リガンドであり、T細胞表面分子、CD28およびCTLA−4と相互作用することができる。
【0084】
種々のpHレベルで液体として製剤化された抗B7.1抗体の凝集に対する、メチオニンを添加することの効果を、12週間の期間にわたって調査し、この間、製剤は40℃で保存した。抗B7.1抗体を、10mMメチオニンおよび0.01%ポリソルベート−80の存在下および非存在下で、種々のpHレベルで、1mg/mlで製剤化した。最初、および12週間後に、SEC−HPLCによってこれらの時点での製剤中の高分子量(%HMW)種のパーセンテージを測定することによって、凝集レベルを測定した。
【0085】
各製剤の最初の%HMWレベルは、およそ同じ(約1%、図2a参照)であった。ポリソルベート−80の存在下でメチオニンを欠く、40℃で12週間の抗B7.1抗体製剤の保存は、クエン酸およびコハク酸バッファー中4.7〜6.3のpH範囲で%HMWの小さな増大を生じた(図2b参照)。%HMWの、より有意な増大は、ヒスチジンバッファー中6〜6.6のpH範囲で生じた(図2b参照)。タンパク質製剤へのメチオニンの添加によって、%HMWレベルが低下した。これは、ヒスチジンバッファーおよびポリソルベート−80中で製剤化された抗B7.1抗体の場合に最も明確に見られ、メチオニンによって、%HMWレベルが、40℃で12週間の後、最少の1.2%に維持された。
【0086】
要約すると、これらの実験から、メチオニンによって、ポリソルベート−80の存在下および非存在下の両方で、40℃で保存された製剤中の抗B7.1抗体の凝集が減少したことが示される。
【0087】
実施例3
長期間の保存に供された抗CD22抗体製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実験は、抗CD22抗体製剤中のタンパク質凝集に対する、メチオニンを添加することの効果を試験することを対象とする(図10参照)。CD22は、2−6−連結シアル酸残基を含むオリゴ糖に結合し、分化の後期の間にB細胞の表面で発現される、135kDのB細胞制限シアロ糖タンパク質である。これは、B細胞活性化において役割を果たし、接着分子として作用するようである。CD22および抗CD22は、白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、およびある種の自己免疫状態の治療において有用であると考えられている。
【0088】
25〜26mg/mlの抗CD22(IgG4、κ軽鎖)を、10mMコハク酸バッファー、pH6中で液体として製剤化した。これらの製剤はまた、10mMメチオニンおよび0.01%ポリソルベート−80の一方または両方のいずれかを含んでいた。得られた抗CD22製剤を、25℃および−80℃で、1カ月〜36カ月の間保存し、製剤中の%HMWレベルをSEC−HPLCによって評価した。
【0089】
−80℃で保存された全ての製剤の%HMWレベルは、およそ同じ(約0.5%)であった(図3a参照)。対照的に、25℃で長期の保存は、%HMWレベルの増大を生じた(図3b参照)。この増大は、メチオニンが製剤中に存在する場合、実質的に低下した。注目すべきことに、ポリソルベート−80およびメチオニンとともに製剤化された抗CD22製剤は、メチオニンを含むがポリソルベート−80を欠いて製剤化された試料とおよそ同じ%HMW種を生じた。
【0090】
これらのデータから、メチオニンによって、ポリソルベート−80の存在下または非存在下の両方で、長期間の保存における抗CD22抗体製剤のタンパク質凝集が低下することが示される。
【0091】
実施例4
高温での保存に供されたPSGL−Ig製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実施例は、メチオニンがタンパク質、特に融合タンパク質における凝集を防ぐことができるかどうかの別の説明を提供する。この実験は、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1−免疫グロブリン(PSGL−Ig)融合タンパク質製剤におけるタンパク質凝集に対する、メチオニンを添加することの効果を試験することを対象とした。PSGL−1は、全ての白血球上で構成的に発現される、2つの120kDaのポリペプチド鎖からなる240kDaのホモ二量体である。PSGL−1は、微柔毛の先端上で主に見出される。PSGL−1は、適切な糖で装飾された場合、内皮上でP−セレクチンに結合することができる。
【0092】
融合タンパク質P−セレクチン糖タンパク質リガンド−Ig(PSGL−Ig)の凝集に対するメチオニンの効果を、種々の温度で調査した。PSGL−Igを、10mMメチオニンの存在下および非存在下で、10mM Tris、150mM NaCl、0.005%ポリソルベート−80、pH7.5中で液体製剤として製剤化した。試料を、−80℃、25℃、および40℃で保存し、SEC−HPLCによって、4週間の期間にわたって%HMWについて評価した。
【0093】
全ての試料中の最初の%HMWレベルは同様であり、メチオニンの存在または非存在にかかわらず、−80℃で保存された試料中で変化しないままであった(図4参照)。25℃および40℃での保存は、経時的に増大した凝集を生じた。しかしながら、その凝集は、メチオニンとともに製剤化された試料中で減少した。
【0094】
実施例5
せん断力に供されたPSGL−Ig製剤におけるタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実施例は、メチオニンによって、せん断力に供されたタンパク質の凝集が減少することを説明する。
【0095】
PSGL−Ig融合タンパク質を、10mMメチオニンの存在下および非存在下で、10mM Tris、150mM NaCl、0.005%ポリソルベート−80、pH7.5中で液体として製剤化した。得られた製剤を、振とうせずにおくか、または250rpmで96時間の振とうに供した。
【0096】
メチオニンを含むか、または欠いている、振とうされていない試料は、非常に類似した%HMWレベル(0.6および0.7%)を有した(図5参照)。対照的に、メチオニンを欠く、振とうされた試料は、上昇した%HMWを含んでいた(4.2%および4.4%)。振とうに供された製剤へのメチオニンの添加によって、1.0および2.2%への%HMWレベルの低下が生じた。
【0097】
これらのデータから、メチオニンによって、せん断力に供されたタンパク質の凝集が減少することが示される。
【0098】
実施例6
暗所中で保存されたREFACTO(商標)タンパク質製剤のタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この実験は、メチオニンがタンパク質における、具体的には組換えタンパク質における凝集を防ぐことができるかどうかのさらに別の実施例を提供する。さらに説明するために、第VIII因子欠損を矯正するために使用される組換え第VIII因子タンパク質であるREFACTO(商標)(図11参照)をこの実験において使用した。
【0099】
REFACTO(商標)の安定性に対するメチオニンの効果を、1カ月の安定性試験にわたって調査した。REFACTO(商標)を、20mMヒスチジンバッファー中約250IU/mlで、液体として製剤化した。これらの製剤のいくつかはまた、10mMメチオニンおよび10mMクエン酸塩を含んでいた。製剤の全ては、4mM塩化カルシウムおよび310mM塩化ナトリウム、および0.02% Tween−80を含んでいた。製剤のpHは6.5であった。試料を室温で暗所中に、およそ1カ月間保存した。上述のように対照試料を製剤化し、−80℃で保存した。凝集物形成をSEC−HPLCによって評価した。
【0100】
対照試料において、メチオニンおよびクエン酸塩の存在にかかわらず、%HMWレベルは同じのままであった(表1参照)。メチオニンおよびクエン酸塩のないヒスチジンバッファー製剤において、%HMWは、暗所中で1カ月間の保存の後に26〜27%であり、高レベルの凝集が示された。しかしながら、メチオニンおよびクエン酸塩を含むヒスチジンバッファー製剤において、凝集は、7〜8%のみの%HMWで、同じ期間にわたって減少した。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例7
蛍光下で保存されたREFACTO(商標)タンパク質製剤のタンパク質凝集に対するメチオニンの効果
この一連の実験において、蛍光に曝露されたREFACTO(商標)の断片化に対するメチオニンの効果を、1カ月の期間にわたって調査した。
【0103】
REFACTO(商標)を、20mMヒスチジンまたは20mMコハク酸塩バッファー中約250IU/mlで、液体として製剤化した。これらの製剤のいくつかはまた、10mMメチオニンおよび10mMクエン酸塩を含んでいた。製剤の全ては、4mM塩化カルシウムおよび310mM塩化ナトリウム、および0.02% Tween−80を含んでいた。製剤のpHは6.5であった。試料を、蛍光下、室温でおよそ1カ月間保存し、凝集物形成をSEC−HPLCによって評価した。対照試料を上述のように製剤化し、−80℃で保存した。
【0104】
対照試料において、メチオニンおよびクエン酸塩の存在にかかわらず、%HMWレベルは0%HMWで変化しないままであった(表2参照)。メチオニンおよびクエン酸塩のないUSPグレードヒスチジン緩衝製剤において、蛍光下で1カ月の保存の後、%HMWは21%であり、高レベルの凝集が示された。しかしながら、メチオニンおよびクエン酸塩を含むUSPグレードヒスチジン緩衝製剤において、凝集は、約2%のみの%HMWで、同じ期間にわたって減少した(表3参照)。
【0105】
同様に、メチオニンおよびクエン酸塩を欠くコハク酸塩緩衝製剤において、%HMWは25%であったが、メチオニンおよびクエン酸塩を含むコハク酸塩緩衝製剤は、9%HMWしか有さなかった(表3参照)。
【0106】
したがって、メチオニンおよびクエン酸塩によって、メチオニンおよびクエン酸塩なしで製剤化されたREFACTO(商標)と比較して、ヒスチジンまたはコハク酸バッファー中で製剤化され、蛍光下で保存されたREFACTO(商標)の凝集が低下した。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
実施例8
REFACTO(商標)の効力に対するメチオニンの効果
暗所中に維持されたか蛍光に曝露されたかのいずれかのREFACTO(商標)の効力に対するメチオニンの効果を、1カ月の期間にわたって調査した。REFACTO(商標)を、20mMヒスチジンまたは20mMコハク酸塩バッファー中約250IU/mlで、液体として製剤化した。これらの製剤のいくつかはまた、10mMメチオニンまたは10mMクエン酸塩を含んでいた。試料を蛍光または暗所状態に、室温で1カ月間曝露した。
【0110】
REFACTO(商標)は、蛍光に曝露されたいずれかの試料において、室温で1カ月間の保存の後、メチオニンおよびクエン酸塩なしで製剤化された緩衝溶液において、効力の大きな喪失を被った(図6参照)。メチオニンの存在下、暗所中で保存されたREFACTO(商標)は、効力に対する有害な影響を被らなかったが、メチオニンの存在下で、蛍光下で保存されたREFACTO(商標)は、効力のいくらかの喪失を被ったが、効力の完全な喪失を生じたメチオニンを欠いて保存された試料よりも高い効力を依然として保持していた。
【0111】
実施例9
酸化によってrhIL−11の多量体化が低下する
この実験は、IL−11多量体化に対するメチオニン添加の効果を試験することを対象とした。
【0112】
400個のバイアルに0.1mg/mlで組換えヒトIL−11(rhIL−11)薬物物質(5ml管系バイアルを充填する1.0ml)を手作業で充填し、rhIL−11のための標準的な凍結乾燥サイクルを用いて凍結乾燥した。200個のバイアルは、10mM NaPO4、300mMグリシン、pH7.0とともに製剤化されたrhIL−11を含み、残りは10mM NaPO4、300mMグリシン、10mMメチオニン、pH7.0とともに製剤化した。4つの異なる13mm栓を容器閉鎖として使用した。各型の栓を100個のバイアル上で使用した。栓をすすぎ、煮沸し、次いでオートクレーブした。次いで、栓の半分を100℃で16時間乾燥させた。バイアルを、4℃、40℃、および50℃で2週間および4週間の、短期間の促進された安定性に置いた。バイアルをT=0ならびに2週間および4週間に、Met58酸化および多量体形成についてアッセイした。RP−HPLC(低負荷)を用いてrhIL−11中のMet58の酸化度を判定したが、SEC−HPLCを用いてrhIL−11多量体の発生をモニタリングした。
【0113】
最初のプロットを構築して、酸化と多量体化との間の任意の直接相関について試験した(図7参照)。これらのデータから、酸化のレベルが高い場合、多量体レベルが低く、酸化のレベルが低い場合、多量体レベルが高いことが示された。
【0114】
これらのデータから、rhIL−11の酸化および多量体化が反対の環境下で生じるようであることが示される。パラメーターを最適化してrhIL−11の酸化を最小限にする場合、多量体化は増大する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1A】図1Aは、示されたpHレベルで10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下で製剤化された抗B7.2製剤中の高分子量(%HMW)種の最初のパーセンテージを示す棒グラフである。
【図1B】図1Bは、40℃での6週間の保存の後の、示されたpHレベルで10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下で製剤化された抗B7.2製剤中の%HMW種を示す棒グラフである。
【図1C】図1Cは、40℃での12週間の保存の後の、示されたpHレベルで10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下で製剤化された抗B7.2製剤中の%HMW種を示す棒グラフである。
【図2A】図2Aは、10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下でクエン酸、コハク酸、およびヒスチジンバッファー(種々のpH範囲にわたる)中で製剤化された抗B7.1抗体製剤中の最初の%HMW種を示す棒グラフである。
【図2B】図2Bは、40℃での12週間の保存の後の、示されたpHレベルで10mMメチオニン(Met)および0.01%ポリソルベート−80(PS)の存在下および非存在下でクエン酸、コハク酸、およびヒスチジンバッファー(種々のpH範囲にわたる)中で製剤化された抗B7.1抗体製剤中の%HMW種を示す棒グラフである。
【図3A】図3Aは、−80℃で1カ月〜36カ月の保存の後の、抗CD22抗体製剤中に存在する%HMW種を示す棒グラフである。
【図3B】図3Bは、25℃で1カ月〜36カ月の保存の後の、抗CD22抗体製剤中に存在する%HMW種を示す棒グラフである。
【図4】図4は、−80℃、25℃、および40℃で4週間までの保存の後の、メチオニンありまたはなしで製剤化されたPSGL−Igタンパク質製剤中に存在する%HMW種を示すグラフである。
【図5】図5は、メチオニンの存在下(S−1およびS−2)または非存在(C)でせん断力に供されたPSGL−Igタンパク質製剤中の%HMW種を示す棒グラフである。
【図6】図6は、1カ月の期間にわたって明および暗状態に曝露された後の、メチオニンありまたはなしでヒスチジンまたはコハク酸バッファー中で製剤化されたREFACTO(登録商標)の効力を示す棒グラフである。
【図7】図7は、rhIL−11酸化と多量体化との間の相関を示す略図である。
【図8】図8は、抗B7.1抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。予測される分子内ジスルフィド結合を、関与するシステイン残基の連結によって図解する。分子内ジスルフィド結合を形成すると予想されるシステインに下線を引き、連結性を示す。エフェクター機能を減少させるFc部分中の2つの変化した残基を囲む。N結合型糖鎖合成コンセンサス部位は太字のイタリック体である。
【図9】図9は、抗B7.2抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。予測される分子内ジスルフィド結合を、関与するシステイン残基の連結によって図解する。分子内ジスルフィド結合を形成すると予想されるシステインに下線を引き、連結性を示す。エフェクター機能を減少させるFc部分中の2つの変化した残基を囲む。N結合型糖鎖合成コンセンサス部位は太字のイタリック体である。
【図10】図10は、抗CD22抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を示す図である。下線を引かれた配列はシグナル配列であり、相補性決定領域は太字のイタリック体で示す。N結合型糖鎖合成の可能性のある部位に下線を引く。
【図11】図11は、REFACTO(登録商標)のアミノ酸配列を示す図である(Sandberg H.ら、Structural and Functional Characterization of B−Domain Deleted Recombinant Factor VIII、Seminars in Hematology、第38巻第2号、補足4、4〜12頁、2001年4月参照)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法であって、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することを含み、メチオニンを欠く製剤中のタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する方法。
【請求項2】
タンパク質製剤が液体製剤または凍結乾燥粉末である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
タンパク質が、約0.1mg/ml〜約300mg/mlの濃度である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
タンパク質製剤が界面活性物質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
タンパク質製剤が、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グリシン、およびグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
タンパク質製剤が張性調節物質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
タンパク質製剤が糖を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
タンパク質製剤が、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
タンパク質凝集がメチオニン酸化の結果でない、請求項1記載の方法。
【請求項10】
製剤のタンパク質の凝集が、メチオニンを製剤に添加する前および/または添加した後に評価される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
凝集が、SEC−HPLC、AUC、光散乱、およびUV吸光度によって評価される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
凝集が%HMW種によって評価され、メチオニンを欠く製剤中の%HMW種と比較して%HMW種が約30%減少する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
製剤のタンパク質の凝集が、タンパク質製剤にメチオニンを添加してから1週間〜12週間後、またはタンパク質製剤にメチオニンを添加してから1カ月〜36カ月後に評価される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
製剤のタンパク質の凝集が、メチオニンとともにタンパク質製剤を製剤化した後タンパク質製剤を4℃〜50℃の温度で約1週間〜約12週間保存した後に評価される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
製剤のタンパク質の凝集が、メチオニンとともにタンパク質製剤を製剤化した後タンパク質製剤を4℃〜30℃の温度で約1カ月〜約36カ月間保存した後に評価される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
製剤のタンパク質の凝集が、せん断力、保存、高い温度での保存、光への曝露、pH、界面活性物質の存在、およびそれらの組合せの結果である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
約1mM〜25mMの終濃度までメチオニンが製剤に添加される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
製剤が約5.0〜7.0のpHを有する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
タンパク質製剤が、クエン酸、コハク酸、ヒスチジン、Tris、およびそれらの組合せからなる群から選択されるバッファーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
製剤の貯蔵寿命を増大させるか、または製剤の効力を維持する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
タンパク質がメチオニン残基を欠くか、または5個未満のメチオニン残基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
せん断力に供されたタンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法であって、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することを含み、メチオニンを欠く製剤中のタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する方法。
【請求項23】
せん断力が、振とう、注射器への引き込みおよび精製手順、ならびにそれらの組合せの結果である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
室温で1日を超える製剤の保存後のタンパク質製剤中のタンパク質の効力または生物活性の喪失を減少させる方法であって、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加し、それによって、メチオニンを欠く製剤中のタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の効力または生物活性の喪失を減少させることを含む方法。
【請求項25】
タンパク質製剤が蛍光下で保存される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
タンパク質製剤が暗所中で約1カ月間保存される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法であって、
(i)約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することと、
(ii)SEC−HPLCによって製剤のタンパク質の%HMWレベルを判定することと
を含み、メチオニンを欠く製剤中のタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する方法。
【請求項28】
SEC−HPLCによって判定すると約5%未満のHMW種を有するタンパク質製剤を生じる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、PSGL−Igおよび第VIII因子、またはそれらの生物活性断片の1つ、ならびに約0.5mM〜50mMメチオニンを含むタンパク質製剤。
【請求項30】
1〜150mMの、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸をさらに含む、請求項29記載の製剤。
【請求項1】
タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法であって、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することを含み、メチオニンを欠く製剤中のタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する方法。
【請求項2】
タンパク質製剤が液体製剤または凍結乾燥粉末である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
タンパク質が、約0.1mg/ml〜約300mg/mlの濃度である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
タンパク質製剤が界面活性物質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
タンパク質製剤が、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グリシン、およびグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
タンパク質製剤が張性調節物質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
タンパク質製剤が糖を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
タンパク質製剤が、製剤のタンパク質の凝集を減少させる作用物質をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
タンパク質凝集がメチオニン酸化の結果でない、請求項1記載の方法。
【請求項10】
製剤のタンパク質の凝集が、メチオニンを製剤に添加する前および/または添加した後に評価される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
凝集が、SEC−HPLC、AUC、光散乱、およびUV吸光度によって評価される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
凝集が%HMW種によって評価され、メチオニンを欠く製剤中の%HMW種と比較して%HMW種が約30%減少する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
製剤のタンパク質の凝集が、タンパク質製剤にメチオニンを添加してから1週間〜12週間後、またはタンパク質製剤にメチオニンを添加してから1カ月〜36カ月後に評価される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
製剤のタンパク質の凝集が、メチオニンとともにタンパク質製剤を製剤化した後タンパク質製剤を4℃〜50℃の温度で約1週間〜約12週間保存した後に評価される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
製剤のタンパク質の凝集が、メチオニンとともにタンパク質製剤を製剤化した後タンパク質製剤を4℃〜30℃の温度で約1カ月〜約36カ月間保存した後に評価される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
製剤のタンパク質の凝集が、せん断力、保存、高い温度での保存、光への曝露、pH、界面活性物質の存在、およびそれらの組合せの結果である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
約1mM〜25mMの終濃度までメチオニンが製剤に添加される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
製剤が約5.0〜7.0のpHを有する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
タンパク質製剤が、クエン酸、コハク酸、ヒスチジン、Tris、およびそれらの組合せからなる群から選択されるバッファーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
製剤の貯蔵寿命を増大させるか、または製剤の効力を維持する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
タンパク質がメチオニン残基を欠くか、または5個未満のメチオニン残基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
せん断力に供されたタンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法であって、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することを含み、メチオニンを欠く製剤中のタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する方法。
【請求項23】
せん断力が、振とう、注射器への引き込みおよび精製手順、ならびにそれらの組合せの結果である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
室温で1日を超える製剤の保存後のタンパク質製剤中のタンパク質の効力または生物活性の喪失を減少させる方法であって、約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加し、それによって、メチオニンを欠く製剤中のタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の効力または生物活性の喪失を減少させることを含む方法。
【請求項25】
タンパク質製剤が蛍光下で保存される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
タンパク質製剤が暗所中で約1カ月間保存される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
タンパク質製剤中のタンパク質の凝集を減少させるための方法であって、
(i)約0.5mM〜約145mMの濃度までメチオニンを製剤に添加することと、
(ii)SEC−HPLCによって製剤のタンパク質の%HMWレベルを判定することと
を含み、メチオニンを欠く製剤中のタンパク質と比較して、製剤中のタンパク質の凝集が減少する方法。
【請求項28】
SEC−HPLCによって判定すると約5%未満のHMW種を有するタンパク質製剤を生じる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
抗B7.1抗体、抗B7.2抗体、抗CD22抗体、PSGL−Igおよび第VIII因子、またはそれらの生物活性断片の1つ、ならびに約0.5mM〜50mMメチオニンを含むタンパク質製剤。
【請求項30】
1〜150mMの、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸をさらに含む、請求項29記載の製剤。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2009−530380(P2009−530380A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501487(P2009−501487)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/006787
【国際公開番号】WO2007/109221
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/006787
【国際公開番号】WO2007/109221
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
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