説明

タンパク質分解によってタンパク質の配座を推定する方法

本発明は、タンパク質の構造的な特性について多型又は突然変異の効果を決定するための方法に関し、この方法は、タンパク質の構造的な特性及びタンパク質分解の間のその切断を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質をコード化する核酸分子における多型又は突然変異の有意性を決定する新しい方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1980年代後半の遺伝子配列解明技術の到来と1990年のヒトゲノムプロジェクトの設立から、ヒトゲノムのそれぞれの遺伝子の配列、又は性質について、膨大な量の情報がわかってきている。さらに、ヒトゲノムプロジェクトが発達したとき、遺伝子を配列するために使用される方法がかなり発展し、これは、遺伝子内の変異の検出につながってきている。典型的な遺伝子が長さ30キロベースであるかもしれなく、また、変異は平均して1100ベースごとに起こるとすると、いずれの変異体が臨床的又は技術的な有意性をもつかを決定するために、ものすごい量の仕事が引き受けられる必要がある。しかしながら、ある一人が、ヒトゲノムプロジェクトで利用可能な知識を開発し、そして、例えば人間の状態、特に人間の病気、同じことに影響を及ぼすかもしれない要素をわかる状態にあって、そして、新しい療法を導くならば、これは前もって必要なステップである。
【0003】
通常、正常又は野生型の遺伝子の配列を得てきたヒトゲノムの分野の研究員は、遺伝子の変異体を抱くと考えられる個体から核酸分子を配列することで遺伝子での有意性の変化を探すことに着手する。そのような個体は特定の遺伝子の機能不全に関連されると考えられる特異的疾患の兆候を示す人々である。一度、遺伝子の変異体が配列され、野生型と比較されると、次に、変異体の遺伝子によってコード化されたタンパク質の細胞生物学を調査することを別の研究で引き受ける。これらの研究の結果は、次に、身体症状の観点で相関性を推測するために調査される。
【0004】
したがって、遺伝子の変異体の性質を解明すること、及びそれを機能と続いて身体症状に関連付けることは、特に所定の遺伝子が3.6%の多型である場合があると考えるときには、長くて退屈なプロセスであるということになる。したがって、どんな変異体をさらに調査するかを単に特定することが本来難しいステップであるかもしれないことは明らかである。これは、人間の遺伝子の分野だけでなく、他の動物と植物の種の研究の点でも事実である。
【0005】
この点を考慮して、私たちは、遺伝子の変異体の適当な有意性をすぐに効率的に決定するための新しい試験法を開発した。
【0006】
私たちの新しい方法はタンパク質の基本構造に基づいている。
【0007】
タンパク質の基本的な構造ユニットはアミノ酸である。アミノ酸は、アミノ基、カルボキシル基、水素元素、従来側鎖として知られている炭素原子に結合したR基からなる。22個のアミノ酸があり、それらのどんな数及び組合せはペプチド結合を経て、ペプチドとして知られるアミノ酸の配列又は鎖を形成するために結合することができる。したがって、ペプチド鎖の長さにある結合の配列は骨格として知られている。また、ペプチド鎖の中及び間の連鎖は例えば次の場合に存在する。先の例では、リジンのアミノ基がグルタミン酸のガンマカルボキシル基とペプチド結合を形成することができる場合であり、後の例では、結合がまたアミノ酸の側鎖の間に、ジスルフィド結合の形成の結果として、別々のペプチド結合の間でクロスリンクを形成しながら、存在するかもしれない場合である。したがって、隣接するペプチド結合は結合してダイマー又はトリマーなどのような2次構造を形成することができる。そして、2次構造は隣接するアミノ酸の相関性の性質のために保持されて3次元の3次構造を形成することができる。この3次構造は、タンパク質の活性型を示す。そして、この3次構造は、他の分子がタンパク質を活性化するためにフィットし、又はタンパク質がそこへ反応することを許容する部位又はポケットを含むかもしれない。
【0008】
コントロールされた方法でのタンパク質の消化又は破壊は、栄養の消化のプロセスの間、絶えず発生する。プロテアーゼとして知られる酵素のクラスは、この機能を実行する。これらは、特定の結合を、これらの結合が存在する部位でタンパク質を裂くために、基本的に攻撃する。異なるタンパク質は、様々な酵素に異なる感受性を、それらの1次構造に応じて持つことになる。
【0009】
この全ての情報が知られているが、遺伝学に関して、特に、機能的な有意性、又は臨床的な有意性でさえ知られていない多くの遺伝子の変異体をスクリーニングすることに関して、だれも以前にそれを利用することを考えたことがない。したがって、どれが臨床的又は技術的な有意性のある変異体であるかを決定するために存在する多数の遺伝子の変異体に取り組むために、この情報を基礎として使用することをだれも考えたことがない。
【0010】
しかしながら、もしあるならばさらなる調査を必要とするかを決めるために、私たちは、変異体をいくつでも、必要ならば同時に、スクリーニングすることができる新しい試験方法を開発するために、この情報を使用した。
【0011】
私たちの方法は迅速で、効率的で安価に行われる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の説明)
したがって、本発明によれば、核酸分子における所定の核酸の多型又は突然変異の有意性を、前記核酸分子によってコード化されたタンパク質の構造特性で決定する方法であって、(a)前記核酸分子によってコード化された前記タンパク質を少なくとも一つのプロテアーゼにさらし、(b)タンパク質分解的切断が起こるか否か、又はどの程度まで起こるかについて決定し、選択的に、(c)このタンパク質分解的切断を同じプロテアーゼにさらした野生型タンパク質のものと比較することを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0013】
本発明の別の構成によれば、少なくとも一つの遺伝子の複数の変異体の有意性を決定するスクリーニング方法であって、(a)前記複数の変異体のそれぞれによってコード化されたタンパク質のサンプルを得て、(b)それぞれのタンパク質を少なくとも一つのプロテアーゼにさらし、(c)タンパク質分解的切断が起こるか否か、又はどの程度まで起こるかについて決定し、(d)タンパク質分解的切断を同じプロテアーゼにさらした野生型タンパク質のものと比較することを含むことを特徴とする方法がある。
【0014】
本発明のより好適な実施の形態では、上述のスクリーニング方法が用いられる場合に、複数のタンパク質の変異体が複数のプロテアーゼにさらされ、対応するタンパク質分解的切断が決定される。最も理想的に、スクリーニング方法は、異なる遺伝子に関連する複数の変異体を調査することを伴う。したがって、単一のバッチでは、多数の遺伝子に関連する複数の変異体は、少なくとも一つのプロテアーゼについて調査され、理想的には、複数のプロテアーゼについて調査され、そして、タンパク質分解的切断の決定はそれぞれの変異体の消化についてそれぞれのプロテアーゼによってなされる。
【0015】
この方法を用いれば、複数のプロテアーゼが用いられるところで、切断又は消化のプロフィールがそれぞれの変異体について与えられ、このパラメータは理想的に野生型のタンパク質の消化プロフィールと比較され、そして、前記遺伝子の一以上の変異体の機能的な有意性を決定するために使用されることができることが、当業者にとってあきらかになるだろう。
【0016】
本発明のより好適な実施の形態では、前記核酸分子又は遺伝子の変異体によってコード化された前記タンパク質は、複数のプロテアーゼ、理想的には異なる結合を攻撃する異なるプロテアーゼにさらされる。本発明の方法での使用に適しているプロテアーゼは、トリプシン、キモトプシン、プロテアーゼK、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、コラゲナーゼ、エラスターゼ、カリクレイン、メタロエンドペプチダーゼ、パパイン、ペプシン、実際にいかなる他の知られているプロテアーゼを含む。
【0017】
とりわけ、切断が野生型によって示されたものと異なっている場合、変異体、又は実際には変異体の組合せが有意であると決断をするだろう。これは、変異体が、タンパク質の3次構造の、又は構造的な形態への変更の結果として、タンパク質を消化により傷つきやすくするか、又は消化への抵抗を与えるだろうからである。
【0018】
本発明のさらに他のより好適な実施の形態では、複数の遺伝子の変異体によってコード化された複数のタンパク質が並行してテストされ、したがって、本発明の方法は、複数のインキュベートの容器がテストされるべき関連する複数のタンパク質で満たされるスクリーニング方法として実行されるだろうし、そして、前記タンパク質は選択されたプロテアーゼ又はプロテアーゼのグループ、又はその逆に同時に又は引き続いてさらされるだろう。
【0019】
より望ましくはさらに、本発明の方法は、関連する酵素の活性を支持する状態で、前記プロテアーゼとともにテストされるために、タンパク質をインキュベートすることを含む。例えば、これは、テストタンパク質を酵素に、酵素が最適の機能である温度、37℃のような温度で、酵素がその活性を実行するのに十分な時間、例えば15分から1.5時間の間で、さらすことを含む。
【0020】
より望ましくはさらに、適当な長さの時間の後に、インキュベート期間が、例えばインキュベート容器に酵素阻害剤を添加することで終了する。最終的に、タンパク質分解的切断は、例えば、ゲル(クーマシーブルー又は銀染色)に着色すること、又はウェスタンブロット法が後に続くSDS−PAGE分析のような、あらゆる従来のタンパク質試験技術を使用することで評価される。そして、任意に、付随した研究は、タンパク質の変異体の機能を決定するために引き受けられるかもしれない。
【0021】
本発明のさらに他のより好適な実施の形態では、タンパク質分解的切断の程度を決定するためになされた技術は、それぞれのテストタンパク質だけでなく、理想的には関連する酵素にさらされる野生型タンパク質、同様に理想的には野生型のサンプル、関連する酵素にさらされていないテストタンパク質を試験することを含む。このように、プラスとマイナスのコントロールは、テストタンパク質が野生型タンパク質に対して示すタンパク質分解的切断の量、及び試験方法の状態の結果として得られるタンパク質分解の背景強度を決めることを目的とした試験方法に含まれる。
【0022】
本発明は、タンパク質分解的切断を評価するために選択される特定の試験方法に限定されないことであり、むしろ本発明は主に、遺伝子の変異体の適当な機能的な有意性を評価するためにタンパク質分解的切断の技術の使用にあることが理解されることになる。
【0023】
タンパク質の3次構造に関する上述した情報から判断すると、ペプチド鎖のアミノ酸の性質はタンパク質の折り畳み、そして異なる酵素への感受性を決定することになる。順番に、ペプチド鎖のアミノ酸の性質は、配列をコード化する核酸によって決定され、そして、この配列の変異はアミノ酸レベルの変異、とても特異なタンパク質の折り畳み、このようにして変異するタンパク質分解的切断への感受性につながる。
【0024】
試験方法が実行のために迅速であって効率的であるなら、任意の遺伝子、又は一以上の遺伝子のために、遺伝子の変異体によってそれぞれコード化されたタンパク質の全体の範囲は、どの変異体がアミノ酸の3次構造の変化を起こすのか、そしてその結果どれがタンパク質の機能に最も影響しそうであるかを決定するために、同時に試験されることができる。
【実施例】
【0025】
本発明の実施の形態は、成長ホルモンの遺伝子(GH1)の変異体と以下の例を参照して、実施例としてのみ説明される。
【0026】
図1では、トリプシン、キモトリプシン、又はプロテナーゼKにさらされた成長ホルモン遺伝子のたくさんの変異体の消化プロフィールを示す。
【0027】
(実験の対象)
タンパク質分解の研究用の突然変異が特定された実験の対象は、オリジナルのHuman Mutation紙、Millar他に記述されたものである。
【0028】
2つの異なった患者グループが研究された。1番目は、以下で概要されたCardiff(「Cardiff評価基準」)で適用された特定の選択評価基準にあったコーカサス系の低身長の41人の親族でない子供(1から15歳)からなる。家系、臨床的な及び成長論理的な変異しやすさ、及び以前に行われた実験室調査について詳細が取られた(表1)。出生時の体重、GH処理前の身長、GH処理前のボディ・マス・インデックス(体格指数)、GH分泌テストの直前の身長増加率、父及び母の身長、親の測定値から得られる成人身長の目安のために標準偏差値(SDS)が計算された(表1)。骨年齢遅れの程度とGH分泌テストの結果はまた記録された。DNA分析用の血液サンプルは発端患者と適切な近親者から取られた。
【0029】
2番目のグループは、GH1遺伝子除去がサザンブロット法によって除かれた低身長及び特発性の成長ホルモン単独欠損症(IGHD)の11人の親族でない患者から構成された。これらの個体のうち8人は、2人以上の一等親血縁者にIGHD(家族性のIGHD)をもった家族から出て、一方で、3個体はIGHDの散発性の病気を表した。家族性のIGHDの病気(家族37)の一つだけで、低身長が常染色体の優性遺伝様式として分離されるようにみえた。DNA分析用の血液サンプルは、それぞれの家族で、対応できる親類から得た。
【0030】
コントロールしたDNAサンプルは、身長で選別されていないコーカサス系の154人の男性のイギリス人の軍隊の新人から取られたリンパ球から入手された。身長データは、これらの個体のうち124人に利用可能であり(平均:1.76±0.07m)、身長の分布は正常であることがわかった(シャピロ・ウィルク統計値 W=0.984、p=0.16)。これらの研究のための倫理的な承認は、複数の地方の倫理委員会(MREC)から得た。
【0031】
(患者の選択評価基準)
この研究に含まれるための主要な評価基準は、子供を調査する臨床医が、十分な関心を、子供の成長パターンに関して、GH分泌テストを保証するために、持つべきであるということであった。選ばれた子供は、今後は「カーディフ評価基準」と呼ばれた以下の評価基準を遵守した臨床の表現型を示した。
(a) テストのタイプ、テスト結果に関わらず、又は、実際に子供がテストするために出席したか否かに関係なく、GH分泌テストを保証してきたくらい十分な臨床的な事項。
(b) 観測された成長不全を明らかにしそうな認識可能な病理学がないこと。
(c) 低身長:個体の親の身長に基づいて、個体の見積もった目安の成人身長の下限値の下で、予期された身長の軌道として定義される(TannerとWhitehouse 1976)。
(d) 年齢用の第一四分位数で、又はその下での身長増加率(骨年齢のために訂正しない)。そして、
(e) Tanner−Whitehouseスケール(TW2方法;Tanner他、1983)によって生活年齢を比べる場合、思春期前の骨年齢遅れの証拠。この遅れは、年齢が5歳以下の子供の場合を除いて、少なくとも2年のものであるべきである。
【0032】
(材料と方法)
「GH1特定断片のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅」
ゲノムDNAは、患者のリンパ球から、標準的な方法で抽出された。3.2kbGH1特有断片のPCR増幅は、記載(2)のように行われた。
【0033】
「GH1遺伝子特有PCR断片のクローニングと配列」
GH1遺伝子特有(3.2kb)PCR断片は、記載(2)のように、BigDye v3.0(Applied Biosystems社、フォスター市、カリフォルニア)で直接的に配列され、ABI 3100 DNAシーケンサー(Applied Biosystems社)で分析された。逆方向に配列するために使用される付加的なプライマーは、GHBFR (5’ TGGGTGCCCTCTGGCC 3’; -262 to -278), GHSEQ1R (5’ AGATTGGCCAAATACTGG 3’; +215 to +198), GHSEQ2R (5’ GGAATAGACTCTGAGAAAC 3’; +785 to +767), GHSEQ3R (5’ TCCCTTTCTCATTCATTC 3’; +1281 to +1264), GHSEQ4R (5’ CCCGAATAGACCCCGC 3’; +1745 to +1730)であった(+1での転写開始部位に関連して符号付けされる。GenBank Accession No.J03071)。配列変異体を含むサンプルは、pGEM−T(Promega社、マディソン、ウィスコン州)の中にクローン化され、続いて、固体あたり最低4つのクローンを配列した。
【0034】
「GH変異体の生物学の活性のインビトロ発現及び試験方法」
カルボキシ末端にHis tagを組み込んでいるクローン化された野生型GH1 cDNAは、以前の記載(3)のように特定部位の突然変異誘発を用いて、GH変異体を発生させるように変更された。
【0035】
そして、このベクターは、ELISA(DRG Diagnostics、マールブルク、ドイツ)によって定量された培養上清の中で、以前の記載(3)のHigh Five昆虫細胞(Invittrogen社)、及びヒトGHの中に、トランスフェクションされた。GH変異体と昆虫細胞発現野生型GHのELISAの交差反応は、希釈分析によって、分析参照準備(MRC 1st IRP 80/505参照準備に対して較正する)のものと等しくなるように、確認された。
【0036】
「GH変異体のタンパク質分解消化」
トリプシン、キモトリプシン、又はプロテアーゼK(全てSigma社、プール、イギリス)は、野生型のGH又は変異体(60nM)のどちらかを発現している昆虫細胞から取り入れた最終的な濃度が0.1μg/mlから100μlの培地に加えられ、次に37℃で1時間、インキュベートされた。以前の野生型GHに関する用量依存的な研究は、0.1μg/mlは、GH分解が3つの酵素全てによって検出可能である最も低い濃度であると示していた。1時間処理期間の後、10μlのトリプシン−キモトリプシン阻害剤(500μg/ml)がトリプシンとキモトリプシン消化物を停止するために添加され、1μlPMSF(0.1M)がプロテアーゼK消化物を停止するために添加された。次に、それぞれの反応は、さらに15分で37℃でインキュベートされた。サンプルは、SDS−PAGEによって12%ゲルで、ミニゲル装置(Bio−Rad Laboratories社、ヘラクレス、カリフォルニア州)を用いて分析された。1時間で37℃でインキュベートされた消化されない野生型GHと変異体との同等な量がまたゲルで続けられた。ゲルは、以前の記載(6)のようにPVDF膜上に電気的に吸い取られ、マウスモノクローナル抗ヒトGH抗体(Lab Vision社、フレモント、カリフォルニア州)で調べられ、1:500に希釈され、抗マウスlgGセイヨウワサビペルオキシダーゼHRP(HRP)複合体(1:5000、Amersham Biosciences社)を用いて検出され、高められた化学ルミネセンス(ECL Plus、Amersham Biosciences社)によって可視化された。フィルムは、Alpha Imager1200デジタルイメージングシステム(Alpha Innotec社、サンリアンドロ、カリフォルニア州)と、消化されないGHの比率として酵素消化に続いて残っているGHの量として発現された結果とを使用することによって分析された。この実験は、3回繰り返されて、両側t検定によって統計的に調査された。
【0037】
「分子モデリング」
変異体は、適切な変異アミノ酸残基の検査によって、ヒトGHのX線結晶構造で、構造的に分析された(PDB:3HHR)[8]。野生型及び突然変異のGHの構造は、静電気の相互作用、水素結合、疎水性の相互作用、表面露出に関して比較された。分子影像法は、ICM分子モデリングソフトウェアパッケージ(Molsoft LLC社、ダンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて行われた。
【0038】
(結果)
「タンパク質分解の研究」
図1は、酵素分析の結果を示す。この酵素分析は、たくさんのGH変異体について、これらの変異体があるとしたらいずれがタンパク質の構造的な特性を変更し、その活性を妨げやすいか決めるために、行われる。12個の変異体が調査され、図の左手側に見られる野生型(WT)について、これらの変異体の大部分がタンパク質の感受性からタンパク質分解の消化に影響を与えることを見ることができる。変異体のThr27lleとGln91Leuは、タンパク質分解に対して特に弱かった。そして、いずれの場合でも、タンパク質分解は、酵素キモトリプシンを使用することで最も効率的に進行した。図2を参照して、変異体のThr27lleは、らせん1及びらせん2とらせん3との間のループの周りの内部のパッキングに影響すると予測されるのを示す。これには、図1で示されたデータに反映された重要な構造的な意味が明らかにある。同様に、Gln91Leuの場合では、置換は疎水性を増加させ、そして、溶解度と折り畳みに影響を与えるかもしれない。これは、タンパク質の構造と、その結果としてタンパク質分解の感受性のための意味を持つ。
【0039】
対照的に、Arg16CysとLys41Argは、異なったタンパク質分解の特性を示している間、野生型と比べて、前の変異体ほど影響を受けない。しかしながら、Arg16Cysでは、予測された構造の変化は、タンパク質の形状への悪影響よりむしろ分子間の架橋に関係する。これは、タンパク質分解の特性がなぜそれほど影響されないかを説明するはずである。Lys41Argの場合では、変異体は、イオンの相互作用を保存すると思われるが、立体障害につながるかもしれない。さらに、ここで、タンパク質の形状は保存されやすいという推論の結果である。
【0040】
対照的に、他の変異体は、例えば、酵素キモトリプシンによってタンパク質分解に両方とも最も抵抗力があるVAL110lle及びThr175Alaなど、タンパク質分解への限界的な感受性のみを示した。
【0041】
この研究の結果は、GHの変異体が、選択されたプロテアーゼに対応して、タンパク質分解の標示に関して特徴付けることができることを示し、そして、この情報は、さらなる分析のために臨床的で技術的に重要な変異体を選択することに向かって第一歩を表す。
【0042】
【表1】

【0043】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1はGH変異体の酵素分析を示す図である。
【図2】図2はミスセンス突然変異にかかわるアミノ酸残基の位置と置換の予測された結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子における所定の核酸の多型又は突然変異の有意性を、前記核酸分子によってコード化されたタンパク質の構造特性で決定する方法であって、
(a)前記核酸分子によってコード化された前記タンパク質を少なくとも一つのプロテアーゼにさらし、
(b)タンパク質分解的切断が起こるか否か、又はどの程度まで起こるかについて決定し、選択的に、
(c)このタンパク質分解的切断を同じプロテアーゼにさらした野生型タンパク質のものと比較することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも一つの遺伝子の複数の変異体の有意性を決定するスクリーニング方法であって、
(a)前記複数の変異体のそれぞれによってコード化されたタンパク質のサンプルを得て、
(b)それぞれのタンパク質を少なくとも一つのプロテアーゼにさらし、
(c)タンパク質分解的切断が起こるか否か、又はどの程度まで起こるかについて決定し、
(d)タンパク質分解的切断を同じプロテアーゼにさらした野生型タンパク質のものと比較することを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記タンパク質は複数のプロテアーゼにさらされることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3において、前記プロテアーゼなどのうち少なくともいくつかは前記タンパク質内の異なる部位を攻撃することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項において、前記プロテアーゼは次のうちいずれか一以上からなることを特徴とする方法:トリプシン、キモトリプシン、プロテアーゼK、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、コラゲナーゼ、エラスターゼ、カリクレイン、メタロエンドペプチダーゼ、パパイン、ペプシン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項において、複数のタンパク質は前記プロテアーゼにさらされることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項において、前記タンパク質は前記プロテアーゼに、又はその逆で、同時にさらされることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項において、前記タンパク質は前記異なるプロテアーゼに同時又は引き続いてさらされることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項において、前記タンパク質は前記プロテアーゼに前記プロテアーゼの活性を支持した状態でさらされることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項において、前記タンパク質の消化は少なくとも一つのプロテアーゼ阻害剤を反応に加えることによって終結することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項において、タンパク質分解的切断は慣用のタンパク質試験方法を使って決定されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11おいて、前記試験方法はSDS−PAGE分析を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12において、前記分析の後に染色又はブロッティングが続くことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項において、付随した研究はタンパク質の変異体の機能性を決定するために引き受けられることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項において、
(a)部分は野生型タンパク質を前記少なくとも一つのプロテアーゼにさらにさらすことを含み、
(b)部分は前記野生型タンパク質のタンパク質分解的切断が起こるか否か、及びどの程度まで起こるかについて決定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項において、野生型タンパク質、及び選択的に変異体のタンパク質は、前記プロテアーゼがないときに、タンパク質分解の状態にかけられ、次にタンパク質分解的切断の範囲が決定されることを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子における所定の核酸の多型又は突然変異の有意性を、前記核酸分子によってコード化されたタンパク質の構造特性で決定する方法であって、
(a)前記核酸分子によってコード化された前記タンパク質を複数のプロテアーゼにさらし、
(b)タンパク質分解的切断が起こるか否か、又はどの程度まで起こるかについて決定し、選択的に、
(c)このタンパク質分解的切断を同じプロテアーゼにさらした野生型タンパク質のものと比較することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも一つの遺伝子の複数の変異体の有意性を決定するスクリーニング方法であって、
(a)前記複数の変異体のそれぞれによってコード化されたタンパク質のサンプルを得て、
(b)それぞれのタンパク質を少なくとも一つのプロテアーゼにさらし、
(c)タンパク質分解的切断が起こるか否か、又はどの程度まで起こるかについて決定し、
(d)タンパク質分解的切断を同じプロテアーゼにさらした野生型タンパク質のものと比較することを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項において、前記タンパク質は複数のプロテアーゼにさらされることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3において、前記プロテアーゼうち少なくともいくつかは前記タンパク質内の異なる部位を攻撃することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項において、前記プロテアーゼは次のうちいずれか一以上からなることを特徴とする方法:トリプシン、キモトリプシン、プロテアーゼK、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、コラゲナーゼ、エラスターゼ、カリクレイン、メタロエンドペプチダーゼ、パパイン、ペプシン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項において、複数のタンパク質は前記プロテアーゼにさらされることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項において、前記タンパク質は前記プロテアーゼに、又はその逆で、同時にさらされることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項において、前記タンパク質は前記異なるプロテアーゼに同時又は引き続いてさらされることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項において、前記タンパク質は前記プロテアーゼに前記プロテアーゼの活性を支持した状態でさらされることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項において、前記タンパク質の消化は少なくとも一つのプロテアーゼ阻害剤を反応に加えることによって終結することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項において、タンパク質分解的切断は慣用のタンパク質試験方法を使って決定されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11おいて、前記試験方法はSDS−PAGE分析を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12において、前記分析の後に染色又はブロッティングが続くことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項において、付随した研究はタンパク質の変異体の機能性を決定するために引き受けられることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項において、
(a)部分は野生型タンパク質を前記少なくとも一つのプロテアーゼにさらにさらすことを含み、
(b)部分は前記野生型タンパク質のタンパク質分解的切断が起こるか否か、及びどの程度まで起こるかについて決定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項において、野生型タンパク質、及び選択的に変異体のタンパク質は、前記プロテアーゼがないときに、タンパク質分解の状態にかけられ、次にタンパク質分解的切断の範囲が決定されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−505289(P2006−505289A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506663(P2005−506663)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004740
【国際公開番号】WO2004/044230
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(504043462)ユニバーシティ カレッジ カーディフ コンサルタンツ リミテッド (12)
【Fターム(参考)】