説明

タンパク質又はポリペプチドである安定化剤不含インターフェロンベータの鼻腔内製剤

【課題】
【解決手段】
インターフェロン−βの鼻腔内送達のために、タンパク質又はポリペプチドである安定化剤のない組成物及び方法を提供し、薬物動態及び薬力学の改善をもたらす。本発明の一定の態様において、インターフェロン−βが、同じ鼻腔内部位に単独で、又は以前に開示された報告に従って製剤化されたものを投与する対照と比較して、インターフェロン−βを、1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と共に鼻腔内粘膜に送達することにより、インターフェロン−βの吸収及び/又は生物学的利用能が実質的に増加し、及び/又は対象の組織中のインターフェロン−βの最大濃度に達する時間が実質的に減少する。本発明の方法及び組成物によるインターフェロン−βの鼻腔内送達の増強により、哺乳動物の対象における種々の疾患及び病態を治療するために、これら薬剤の有効な製薬使用が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
注射による薬物投与の主たる不利益は、多くの場合、薬物を投与するために熟練職員が必要であることである。自己投与薬物に関して、多くの患者は、規則的な基準に基づいて自身で注射することを嫌うか、又は注射することができない。注射はまた、感染リスクの増加を伴う。ベータインターフェロンなどの幾つかの薬物は、創傷の壊死組織切除術を必要とする場所の皮下に、又は筋肉内であっても注射された場合、組織壊死を引き起こし得る。薬物注射の他の不利益としては、個人間の送達結果のばらつき、並びに薬物作用の強度及び持続時間が予測できないことが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
治療化合物の粘膜投与は、例えば、簡便性及び送達のスピードの点で、並びにコンプライアンス問題及び注射による送達に伴う副作用を減少又は排除することから、注射及び他の投与様式よりも一定の利点を提供し得る。しかしながら、インターフェロンベータの粘膜送達は、粘膜バリヤー機能及び他の因子により限定される。これらの理由のため、粘膜薬物投与は、典型的には注射による投与よりも大量の薬物を必要とする。大型分子の薬物、ペプチド類及びタンパク質などの他の療法化合物は、粘膜送達に対して治療抵抗性であることが多い。
【0003】
粘膜送達に関して興味のある治療化合物の一群は、強力な坑ウィルス機能を示すインターフェロン−β、IFN−βである。IFN−βもまた、種々の免疫調節作用を媒介する。
【0004】
多発性硬化症(MS)の再発性形態の治療に関してインターフェロンβが報告されている。MSは、中枢神経系の慢性的で不能疾患であることが多い。それは、ミエリンの自己免疫破壊により引き起こされる。ミエリンは、中枢神経系の神経線維を包囲し、保護し、脳への、及び脳からの神経インパルスの流れを促進する脂肪組織である。ミエリンの喪失は、神経インパルスの伝達を破壊し、MSの症状を生じさせる。症状は、四肢における軽度のしびれ、又は重度の麻痺又は視力喪失であり得る。
【0005】
また、IFN−β単独又はIFN−αと併用したIFN−βが、活性又は慢性B型肝炎の治療に関して報告されている。IFN−βは、尖圭コンジローマ(パピローマウィルス感染により引き起こされる性器又は性病性いぼ)、喉頭及び皮膚のパピローマウィルスいぼ(通常のいぼ)の治療又は予防のために使用できる。IFN−βの坑ウィルス活性はまた、重度の小児ウィルス性脳炎の治療に有用であることが報告されている。
【0006】
米国において多発性硬化症(MS)の治療のために承認されたIFN−βの3つの形態は、IFN−β−1a(Avonex(登録商標)、Biogen社及びRebif(登録商標):Serono社)及びIFN−β−1b(Betaseron(登録商標)、Berlex Laboratories)である。IFN−β−1aは、幾つかの点でIFN−β−1bとは異なる。IFN−β−1aは、哺乳動物の細胞培養(チャイニーズハムスターの卵巣細胞)で生成するが、IFN−β−1bは、細菌細胞(大腸菌)で産生される。IFN−β−1aのアミノ酸配列は、天然のインターフェロンと同一である。IFN−β−1bのアミノ酸配列では、165−アミノ酸インターフェロンタンパク質の17位のシステインがセリンに代わっている。
【特許文献1】米国特許第4,179,337号
【特許文献2】米国特許第4,511,069号
【特許文献3】米国特許第4,778,810号
【特許文献4】米国特許第5,203,840号
【特許文献5】米国特許第5,860,567号
【特許文献6】米国特許第5,893,484号
【特許文献7】米国特許第6,227,415号
【特許文献8】米国特許第6,364,166号
【非特許文献1】Wakabayashiら、J.Neurooncol、49:57−62頁、2000年
【非特許文献2】米国薬局方国定処方集、1857−1859頁、1990年
【非特許文献3】Hilgersら、Pharm.Res.7:902−910頁、1990年
【非特許文献4】Wilsonら、J.Controlled Release11:25−40頁、1990年
【非特許文献5】Artursson. L、Pharm.Sci.79:476−482頁、1990年
【非特許文献6】Cogburnら、Pharm.Res.8:210−216頁、1991年
【非特許文献7】Padeら、Pharmaceutical Research 14:1210−1215頁、1997年
【非特許文献8】Laursenら、Eur.J.Endocrinology、135:309−315頁、1996年
【非特許文献9】Barry、Pharmacology of the Skin、1巻、121−137頁、Shrootら編集、Karger、バーゼル、1987年
【非特許文献10】Barry、J.controlled Release6:85−97頁、1987年
【非特許文献11】Breslowら、J.Am.Chem.Soc.120:3536−3537頁
【非特許文献12】Maleticら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:1490−1492頁
【非特許文献13】Leungら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:5050−5053頁
【非特許文献14】Breslowら、J.Am.Chem.Soc.118:11678−11681頁、1996年
【非特許文献15】Breslowら、PNAS USA94:11156−11158頁、1997年
【非特許文献16】Breslowら、Tetrahedron Lett.2887−2890頁、1998年
【非特許文献17】Zutshiら、Curr.Opin.Chem.Biol.2:62−66頁、1998年
【非特許文献18】Daughertyら、J.Am.Chem.Soc.121:4325−4333頁、1999年
【非特許文献19】Zutshiら、J.Am.Chem.Soc.119:4841−4845頁、1997年
【非特許文献20】Ghoshら、Chem.Biol.5:439−445頁、1997年
【非特許文献21】Hamuroら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.36:2680−2683頁、1997年
【非特許文献22】Albergら、Science262:248−250頁、1993年
【非特許文献23】Tautonら、J.Am.Chem.Soc.118:10412−10422頁、1996年
【非特許文献24】Parkら、J.Am.Chem.Soc.121:8−13頁、1999年
【非特許文献25】Prasannaら、Biochemistry37:6883−6893頁、1998年
【非特許文献26】Tileyら、J.Am.Chem.Soc.119:7589−7590頁、1996年
【非特許文献27】Judiceら、PNAS USA94:13426−13430頁、1997年
【非特許文献28】Fanら、J.Am.Chem.Soc.120:8893−8894頁、1998年
【非特許文献29】Gamboniら、Biochemistry37:12189−12194頁、1998年
【非特許文献30】Biochemistry、WH Freeman and Company、ニューヨーク州ニューヨーク
【非特許文献31】Yomota、Pharm.Tech.Japan10:557−564頁、1994年
【非特許文献32】Muranishi、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.7:1−33頁、1990年
【非特許文献33】Muranishi、Pharm.Res.2:108−118頁、1985年
【非特許文献34】Nucciら、Advanced Drug Deliver Reviews6:133−155頁、1991年
【非特許文献35】Luら、Int.J.Peptide Protein Res.43:127−138頁、1994年
【非特許文献36】Michaelら、J.Pharmacy Pharmacol.43:1−5頁、1991年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鼻腔内インターフェロンベータ以前の製剤は、ヒト血清アルブミン又はウシ血清アルブミンなどのタンパク質又はポリペプチド類である安定化剤を含んでいた。しかしながら、このようなタンパク質は、製剤に更なる費用を付加し、肝炎などのウィルス性原因物質又はウシ海綿状脳疾患などのプリオン原因物質による混入の危険性を伴う。したがって、ヒト又はウシ血清アルブミンなどのタンパク質又はポリペプチド類である安定化剤が無いインターフェロンベータの安定な鼻腔内製剤を製造する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タンパク質又はポリペプチド類である安定化剤が無いインターフェロン−βの鼻腔内送達のために新規で有効な方法及び組成物を提供することにより前述の必要性を満たし、更なる目的及び利点を満足し、薬物動態結果及び薬力学結果の改善がもたらされる。本発明の一定の態様において、インターフェロン−βが、同じ鼻腔内部位に単独で、又は以前に開示された報告に従って製剤化されたものを投与する対照と比較して、インターフェロン−βを、1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と共に鼻腔内粘膜に送達すると、インターフェロン−βの吸収及び/又は生物学的利用能が実質的に増加し、及び/又は対象の組織中のインターフェロン−βの最高濃度に達する時間が実質的に減少する。本発明の方法及び組成物によるインターフェロン−βの鼻腔内送達を増強することにより、哺乳動物対象における種々の疾患及び病態を治療するためのこれら薬剤の有効な製薬使用が可能となる。
【0009】
本明細書に提供された方法及び組成物により、薬物作用の新規な標的部位に到達し、鼻粘膜バリヤーを通過するインターフェロン−βの送達増強が提供されて、治療的有効率又は送達濃度の増強がもたらさせる。一定の態様において、1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤の使用により、標的の細胞外又は細胞コンパートメント、例えば、全身循環、選択された細胞集団、組織又は臓器に対するインターフェロン−βの有効な送達を促進する。この文脈において送達増強に関する例示的標的は、標的の生理的コンパートメント、組織、臓器及び体液(例えば、血清内、中枢神経系(CNS)又は大脳脊髄液(CSF))又は肝臓、骨、筋肉、軟骨、下垂体、視床下部、腎臓、肺、心臓、精巣、皮膚、又は末梢神経系の選択された組織又は細胞である。
【0010】
本発明の送達増強法及び組成物により、哺乳動物対象における種々の疾患及び病態の予防又は治療のためにインターフェロン−βの治療的に有効な粘膜送達が提供される。例えば、インターフェロン−βを鼻粘膜上皮、気管支粘膜上皮又は肺粘膜上皮、口腔、胃、腸管又は直腸粘膜上皮、或いは膣粘膜上皮に接触されることにより、インターフェロン−βを種々の粘膜経路を経由して投与できる。典型的には、該方法及び組成物は、鼻腔内送達用に向けられるか、又は製剤化される(例えば、鼻粘膜送達又は鼻腔内粘膜送達)。
【0011】
本発明の一態様において、本明細書に記載されるインターフェロン−βの治療的有効量及び1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤を含む鼻腔内投与に好適な製薬製剤が提供され、哺乳動物対象における自己免疫疾患、ウィルス感染、又は癌、例えば固形癌に関連する疾患の発生又は進行を予防するために、又は哺乳動物対象における自己免疫疾患、ウィルス感染、又は癌の1つ又はそれ以上の臨床上認識された症状を軽減するために、該製剤は、本発明の鼻粘膜送達法において有効である。
【0012】
本発明の別の態様において、本明細書に記載されるインターフェロン−βの治療的有効量及び1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤を含む鼻腔内投与に好適な製薬製剤が提供され、多発性硬化症、尖圭コンジローマ(パピローマウィルス感染により引き起こされた性器又は性病性いぼ)、喉頭及び皮膚のパピローマウィルスいぼ(通常のいぼ)、慢性B型肝炎、又は重症の小児ウィルス性脳炎の症状を軽減するか、又は発生を予防するか、或いは発生率又は重症度を低下させるために、該製剤は、本発明の鼻粘膜送達法において有効である。本発明のより詳細な態様において、インターフェロン−βの鼻腔内送達用の方法及び組成物は、IFN−βの治療的有効量と一緒に製薬組成物に組合わされた、又はIFN−βの治療的有効量と協調的鼻粘膜送達プロトコルで投与される1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤を組み込んでいる。これらの方法及び組成物により、インターフェロン−βの継続的放出を維持するためにしばしば拍動性送達様式でインターフェロン−βの経鼻粘膜送達増強が提供され、疾患の治療のために血清中、中枢神経系(CNS)中、脳脊髄液(CSF)中、或いは別の選択された生理的コンパートメント又は標的組織若しくは臓器中のインターフェロン−βのより一定(標準化された)又は治療レベルの上昇がもたらされる。インターフェロン−βの治療レベルの標準化及び上昇は、例えば、生物学的利用能(例えば、インターフェロン−βの鼻腔内有効量に関する最大濃度(Cmax)又は濃度対時間曲線下面積(AUC)により測定される)の増加及び/又は送達率(例えば、時間対最大濃度(tmax)、Cmax、及び又はAUC)の増加により判定される。血清中、中枢神経系(CNS)中、脳脊髄液(CSF)中のインターフェロン−βの治療レベルの標準化及び高い上昇は、選択された投与時間内、例えば、8時間、12時間、又は24時間の投与時間内に対象への反復鼻腔内投与によりある程度達成できる。
【0013】
インターフェロン−βのより一定の又は標準化治療レベルを維持するために、本発明の製薬製剤は、例えば、24時間以内に1回、2回又はそれ以上、24時間以内に4回又はそれ以上、24時間以内に6回又はそれ以上、又は24時間以内に8回又はそれ以上、対象の鼻粘膜に反復して投与されることが多い。本発明の方法又は組成物は、拍動性送達を改善することにより、例えば、血清中のインターフェロン−βの標準化及び/又は上昇した治療レベルを維持する。単独投与のインターフェロン−βの送達、又は以前に記載された送達法、例えば、以前に記載された粘膜送達法、筋肉内送達法、皮下送達法、静脈内送達法、及び/又は非経口送達法を用いる有効性と比較して、本発明の方法又は組成物は、少なくとも2倍から5倍の増加、より典型的には5倍から10倍の増加、一般に10倍から25倍、50倍の増加(例えば、送達のための血清中、中枢神経系中、脳脊髄液中、或いは別の選択された生理的コンパートメント又は標的組織若しくは臓器中のtmaxmax、及び/又はAUCにより測定される)により、選択された標的組織若しくはコンパートメントに対するインターフェロン−βの経鼻粘膜送達を増強する。
【0014】
本発明の方法及び組成物によるインターフェロン−βの鼻粘膜送達により、継続投与法により達成される投薬に近い有効な送達及び生物学的利用能がもたらされることが多くなる。他の態様において、本発明により、全身投薬量の使用をより少なくすることが可能になり、インターフェロン−β関連副作用の発生率を有意に減少させる鼻粘膜送達の増強が提供される。病院設定以外のインターフェロン−βの継続注入は、別の方法では非実用的であるので、本明細書に提供されたインターフェロン−βの粘膜送達によって、例えば、患者ごとの用量ばらつきの改善から生じた利点により、インターフェロン−βの持続的送達を可能にする予想外の利点が生じる。
【0015】
本発明のより詳細な態様において、本発明の方法及び組成物により、インターフェロン−βの血清、リンパ系、CNS、及び/又はCSFへの送達の改善及び/又は持続性が提供される。例示的一実施形態において、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤の鼻腔内有効量を、例えば、自己免疫疾患を治療するために対象の鼻粘膜表面と接触させることによって、インターフェロン−βの中枢神経系(CNS)又は脳脊髄液(CSF)への粘膜送達増強がもたらされる。一定の実施形態において、本発明の方法及び組成物により、インターフェロン−βのCNSへの送達の改善及び持続性が提供され、従来のインターフェロン−β療法が、成績不良又は不適格な副作用を生じる場合を含めて、多発性硬化症の1つ又はそれ以上の症状を有効に治療する。
【0016】
例示的実施形態において、単独投与のインターフェロン−β又は以前に記載された薬物送達法による送達率と比較して、本発明の方法及び組成物により送達される、血清中、中枢神経系中、脳脊髄液中、及び/或いは別の選択された生理的コンパートメント又は標的組織若しくは臓器中のインターフェロン−βの最大濃度(tmax)までの時間における2倍から5倍の減少、より典型的には5倍から10倍の減少、一般に10倍から25倍、50倍から100倍までの減少がもたらされる。
【0017】
更なる例示的実施形態において、単独投与のインターフェロン−β又は以前に記載された投与法による送達率と比較して、本発明の方法及び組成物により送達される、血清中、中枢神経系中、脳脊髄液中、及び/或いは別の選択された生理的コンパートメント又は標的組織若しくは臓器中のインターフェロン−βの濃度対時間曲線下面積、AUCにおける2倍から5倍の増加、より典型的には5倍から10倍の減少、一般に10倍から25倍、50倍から100倍までの増加がもたらされる。
【0018】
更なる例示的実施形態において、単独投与のインターフェロン−β又は以前に記載された投与法による送達率と比較して、本発明の方法及び組成物により送達される、血清中、中枢神経系中、脳脊髄液中、及び/或いは別の選択された生理的コンパートメント又は標的組織若しくは臓器中のインターフェロン−βの最大濃度Cmaxにおける2倍から5倍の増加、より典型的には5倍から10倍の増加、一般に10倍から25倍、50倍から100倍までの増加がもたらされる。
【0019】
本発明の方法及び組成物は、インターフェロン−βの投薬計画を改善するために役立つことが多く、それによって対象における標準化及び/又は上昇したインターフェロン−βの治療レベルが維持される。一定の実施形態において、本発明は、インターフェロン−βの鼻腔内送達用の組成物及び方法を提供し、インターフェロン−βは、より一貫した幾つかの場合においては、治療レベルの上昇を維持するために、反復され、典型的には拍動性送達により標準化され、持続される。例示的実施形態において、血清中のインターフェロン−βの最大濃度までの時間(tmax)は、約0.1時間から4.0時間まで、或いは約0.4時間から1.5時間まで、他の実施形態においては約0.7時間から1.5時間まで、又は約1.0時間から1.3時間である。このように、投与間が約0.1時間から2.0時間までの範囲のスケジュールで本発明の製剤による反復鼻腔内投薬により、インターフェロン−βの標準化され、持続された治療レベルが維持されて、過剰の曝露や副作用の危険性を最少にしながら臨床的利益を最大化するであろう。
【0020】
代替の実施形態において、本発明は、1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と共に製剤化された1回投薬量のインターフェロン−βの粘膜投与を、非粘膜経路、例えば、筋肉内投与により送達される別の投薬量のインターフェロン−βと組合わせることにより、インターフェロン−βについて標準化された、及び/又は上昇し、改善された治療レベルの送達増強が達成される。例示的一実施形態において、本明細書の組成物及び方法によるインターフェロン−βの鼻腔内送達により、鼻腔内投与後、凡そ0.1時間と3時間との間の時間で対象の血清中インターフェロン−βの標準化された、及び/又は上昇した高治療レベルがもたらされる。非粘膜経路によるインターフェロン−βの協調的投与(粘膜投与前、同時投与、又は投与後)により、凡そ2時間から24時間の間、より多くの場合約4時間から16時間の間、一定の実施形態においては約6時間から8時間の間の有効な時間、対象の血清中のインターフェロン−βのより一定の上昇した治療レベルを提供する。過剰曝露の危険性を最少にしながら臨床的利益を改善するこれらの協調的投与法により、治療医師の目的を促進する。
【0021】
本発明の他の態様において、本明細書に記載されたインターフェロン−βの鼻腔内投与のための方法及び製剤により、対象の血清又は選択された組織又は細胞へのインターフェロン−βの有意に増強された送達率又は送達レベル(例えば、tmaxの減少、AUCの増加、及び/又はCmaxの増加)がもたらされる。これには、単独投与のインターフェロン−β又は以前に記載された技法による送達率及び送達レベルと比較して、血清中、又は選択された組織又は細胞(例えば、血清、CNS、又はCSF)への増強された送達率又は送達レベルを含む。このように本発明の一定の態様において、前述の方法及び組成物が哺乳動物対象に投与されて、哺乳動物対象内の生理的コンパートメント、体液、組織又は細胞へのインターフェロン−βの送達増強がもたらされる。
【0022】
本発明のより詳細な態様内で、本明細書の方法及び製剤により達成されたインターフェロン−βの生物学的利用能(例えば、血清、CNS、CSF又は別の選択された生理的コンパートメント又は標的組織中のインターフェロン−βのピーク血漿レベル(Cmax)により測定される)は、例えば、血漿又はCSFの1リットル当り約5μg、典型的には血漿又はCSFの1リットル当り約10μg、血漿又はCSFの1リットル当り約20μg、血漿又はCSFの1リットル当り約30μg、血漿又はCSFの1リットル当り約40μg、血漿又はCSFの1リットル当り約50μg、又は血漿又はCSFの1リットル当り約60μg以上である。
【0023】
本発明の他の詳細な態様内において、本発明の方法及び組成物による投与後のインターフェロン−βの生物学的利用能は、インターフェロン−βの「薬物動態マーカー類」を測定することにより決定される。例えば、インターフェロン−β、血清β−2ミクログロブリン又は血清ネオプテリンに関する当業界で許容された薬物動態マーカー類が、投与後に測定でき、例えば、血清、CNS、CSF又は別に選択された生理的コンパートメント又は標的組織中のマーカー類のピーク血漿レベル(Cmax)により測定される。これら及び他のこのようなマーカーデータは、直接インビボで検出できないインターフェロン−β化合物の薬物動態とかなり相関するものとして当業界に認められている。一定の態様において、インターフェロン−βのマーカー類により測定されたインターフェロン−βの生物学的利用能の増強は、例えば、凡そ1.7mg/mlの血漿又はCSF、又は2.0mg/mlの血漿又はCSF、又は4.0mg/ml以上の血漿又はCSFの血清β−2ミクログロブリンに関するCmaxの相関により立証される。凡そ8nmol/lの血漿又はCSF、凡そ10nmol/lの血漿又はCSF、凡そ20nmol/lの血漿又はCSF、凡そ30nmol/lの血漿又はCSF、又は凡そ40nmol/l以上の血漿又はCSFの血清ネオプテリンに関するCmax
【0024】
更なる詳細な態様内において、前記対象に等しい濃度又は用量のインターフェロン−βの筋肉内注射によるインターフェロン−β単独の鼻腔内送達、及び/又は以前に記載された方法及び製剤を用いるインターフェロン−βの粘膜送達後の血漿又はCNS組織又は体液中のネオプテリン又はβ2−ミクログロブリンのピーク濃度と比較して、本明細書に開示された製薬組成物により、前記対象への粘膜投与後、血漿又はCNS組織又は体液中の薬理学的マーカー類、ネオプテリン又はβ2−ミクログロブリンの、典型的には25%又はそれ以上、又は75%又はそれ以上、又は150%又はそれ以上であるピーク濃度(Cmax)がもたらされる。
【0025】
本発明の他の詳細な態様内において、インターフェロン−βの生物学的利用能は、血清、CNS、CSF又は別に選択された生理的コンパートメント又は標的組織中のマーカー類に関する濃度曲線下面積(AUC)を判定するために、インターフェロン−βの薬物動態マーカー類、例えば、血清β2−ミクログロブリン又は血清ネオプテリンを測定することにより決定される。本文脈においてインターフェロン−βのマーカー類により決定されたインターフェロン−βの生物学的利用能は、例えば、血漿又はCSFの凡そ200μIU・時間/mLの血清β−2ミクログロブリンに関してはAUC0〜96時間、血漿又はCSFの凡そ500μIU・時間/mLまでのβ−2ミクログロブリンに関してはAUC0〜96時間、血漿又はCSFの凡そ200ng・時間/mLの血清ネオプテリンに関するAUC0〜96時間、血漿又はCSFの凡そ500ng・時間/mLまでの血清ネオプテリンに関してはAUC0〜96時間である。
【0026】
更なる詳細な態様内において、前記対象への等しい濃度又は用量のインターフェロン−βの筋肉内注射によるインターフェロン−β単独の鼻腔内送達、及び/又は以前に記載された方法及び製剤を用いるインターフェロン−βの粘膜送達後の血漿又はCNS組織又は体液中のネオプテリン又はβ2−ミクログロブリンのAUC0〜96時間と比較して、本明細書に開示された製薬組成物により、前記対象への粘膜投与後、対象の血漿又はCNS組織又は体液中の薬理学的マーカー類、ネオプテリン又はβ2−ミクログロブリンに関して、典型的には25%又はそれ以上、又は75%又はそれ以上、又は150%又はそれ以上である濃度曲線下面積(AUC0〜96時間)がもたらされる。
【0027】
本発明のより更なる詳細な態様内において、本明細書の方法及び製剤により達成されたインターフェロン−βの薬物動態マーカー類、例えば、血清β2−ミクログロブリン又は血清ネオプテリンの生物学的利用能は、血清、CNS、CSF又は別に選択された生理的コンパートメント又は標的組織中の最大濃度(tmax)までの時間により測定される。血清β2−ミクログロブリンに関するtmaxは、例えば、約45時間又はそれ以下と約48時間から60時間までとの間である。他の実施形態において、これらの値は、本明細書に記載された方法及び製剤によるインターフェロン−βの鼻腔内投与後、35時間又はそれ以下、又は25時間又はそれ以下であり得る。血清ネオプテリンに関するtmaxは、本明細書に記載された方法及び製剤によるインターフェロン−βの鼻腔内投与後、例えば、約40時間又はそれ以下、典型的には30時間又はそれ以下、又は典型的には25時間又はそれ以下となる。
【0028】
更なる詳細な態様内において、本明細書に開示された製薬組成物を前記対象に粘膜投与後、対象の血漿又はCNS組又は体液中の薬理学的マーカー類、ネオプテリン、又はβ2−ミクログロブリンに関して、最大血漿濃度(tmax)までの時間は、典型的には約25時間から45時間の間、又は約25時間から35時間の間となる。
【0029】
例示的実施形態において、本明細書に記載された1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤により製剤化された1種又はそれ以上のインターフェロン−βの投与により、血清、CNS、又はCSFに有効な送達がもたらされ、哺乳動物対象における選択された疾患又は病態(例えば、多発性硬化症、又はその症状)が軽減される。より詳細な態様において、本発明によるインターフェロン−βを鼻腔内投与するための方法及び製剤は、単独投与のインターフェロン−β又は以前に記載された技術による送達率及び送達濃度と比較して、血清又は選択された組織或いは細胞(例えば、肝臓)への送達率又は送達濃度を有意に増加させる(例えば、tmaxの減少又はCmaxの増加)。
【0030】
例示的態様内において、インターフェロン−βの送達率及び送達濃度の増加により、対象における多発性硬化症又はウィルス性疾患のより有効な治療が提供される。例えば、本発明の鼻腔内投与方法及び製剤を用いることにより、インターフェロン−βの有効濃度は、投与後、通常約45分以内、30分以内、20分以内、更に15分以内又はそれ以下で血清、CNS、CSF、又は末梢神経系に送達でき、最少の副作用で対象における治療効果の増強(例えば、MS症状の減少、又はウィルス量の減少)がもたらされる。本発明の方法及び組成物により、一般に最少となるか、又は避けられる副作用としては、反復投与の薬物送達の粘膜部位に対する進行性損傷及び出血が挙げられるが、これらは、他にインターフェロン−βの粘膜吸収不良をもたらすと思われる。本発明により減少又は回避される更なる副作用としては、インフルエンザ様症状の頭痛、発熱、倦怠感、体温変化感覚筋肉痛、関節痛、並びに壊死、吐き気、及び肝酵素異常などの重症の送達部位反応が挙げられる。
【0031】
本発明の方法によるインターフェロン−β送達の薬物動態の増強(例えば、可能な投薬頻度の増加、送達率、標準化された持続的送達の増加、及びレベルの上昇)により、例えば、対象における自己免疫疾患、ウィルス性感染、又は癌を、容認できない副作用無しで治療するための改善された治療有効性が提供される。したがって、例えば、本明細書に開示された1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と組合されたインターフェロン−βの鼻腔内治療的有効量を含む鼻粘膜送達用に製剤化された製薬製剤は、哺乳動物の対象における多発性硬化症を治療するために提供される。これらの製剤は、驚くべきことにインターフェロン−βの粘膜吸収を増強して、対象の標的部位又は組織において約45分又はそれ以下、30分又はそれ以下、20分又はそれ以下、又は15分以内の短さで又はそれ以下で薬物の治療的有効濃度(例えば、対象における急性MS、又は再発寛解型MSを治療するための)を生じさせる。
【0032】
本発明の他の詳細な実施形態内において、前述の方法及び製剤を、哺乳動物対象に投与すると、粘膜投与のインターフェロン−βの生物学的利用能を増強させ、又は血漿中濃度を増強させ、本発明の方法及び組成物による対象への粘膜(例えば、鼻腔内)投与後、血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)の累積(例えば、「1週当り」)(例えば、単回用量のAUCに週当たりの投与回数を掛けて表される)は、哺乳動物対象に筋肉内注射後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)と比較して、約10%又はそれ以上である。例示的実施形態において、本明細書に記載された1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と共に製剤化された1種又はそれ以上のインターフェロン−βの鼻腔内投与後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)は、哺乳動物対象への筋肉内注射後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)と比較して、少なくとも約25%、40%、又はそれ以上である。なお更なる例示的実施形態において、対象への本発明の方法及び組成物による鼻腔内投与後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)は、哺乳動物対象への筋肉内注射後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)と比較して、少なくとも約60%、80%、100%又はそれ以上で150%又はそれ以上である。これら送達率及び送達レベルの増強は、関連する臨床対照の対象と比較して、哺乳動物対象において適応される疾患及び病態の予防及び治療のための本発明の方法及び製剤の増大した治療有効性と相関する。
【0033】
本発明の他の詳細な実施形態内において、前述の方法及び製剤を、哺乳動物対象に投与すると、粘膜投与のインターフェロン−βの血漿中又はCSFレベルが増強し、本明細書の方法及び組成物によるインターフェロン−βの粘膜(例えば、鼻腔内)投与後は、インターフェロン−βに関して最大血漿中又はCSF中濃度までの時間(tmax)が凡そ0.1時間から4.0時間の間となる。例示的実施形態において、本発明の方法及び組成物により対象に粘膜(例えば、鼻腔内)投与後の血症中のインターフェロン−βの最大血漿中又はCSF中濃度までの時間(tmax)は、凡そ0.7時間から1.5時間の間、又は凡そ1.0時間から1.3時間の間である。例示的実施形態において、本明細書に記載された1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と共に製剤化された1種又はそれ以上のインターフェロン−βの投与後、インターフェロン−β薬物動態マーカー、血清中β−2ミクログロブリン又は血清中ネオプテリンの最大血漿中又はCSF中濃度までの時間(tmax)は、凡そ25時間から45時間の間、又は凡そ25時間から30時間までの間である。これら送達率及び送達レベルの増強は、関連する臨床対照の対象と比較して、哺乳動物対象において適応される疾患及び病態の予防及び治療のための本発明の方法及び製剤の増大した治療有効性と相関する。
【0034】
本発明の他の詳細な実施形態内において、前述の方法及び製剤を、哺乳動物対象に投与すると、粘膜投与のインターフェロン−βの血漿中又はCSFレベルが増強し、それによって、対象への粘膜(例えば、鼻腔内)投与後の前記製剤は、前記対象の血症中又はCSF中の前記インターフェロン−βの最大血漿中濃度までの時間(tmax)は、筋肉内注射によるインターフェロン−βの等しい濃度又は用量投与後の対象の血症中又はCSF中のインターフェロン−βの最大血漿中濃度と比較して75%、50%、20%、又は10%又はそれ以下の短さとなる。これら送達率及び送達レベルの増強は、関連する臨床対照の対象と比較して、哺乳動物対象において適応される疾患及び病態の予防及び治療のための本発明の方法及び製剤の増大した治療有効性と相関する。
【0035】
本発明の他の詳細な実施形態内において、前述の方法及び製剤を、哺乳動物対象に投与すると、粘膜投与のインターフェロン−βの血漿中又はCSFレベルが増強し、それによって、本発明の方法及び組成物による対象への粘膜(例えば、鼻腔内)投与後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度(Cmax)は、哺乳動物対象への筋肉内注射後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度と比較して約25%又はそれ以上である。例示的実施形態において、本明細書に記載された1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と共に製剤化されたインターフェロン−βの鼻腔内投与後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度(Cmax)は、哺乳動物対象への筋肉内注射後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度と比較して約40%又はそれ以上である。なお更なる例示的実施形態において、対象への本発明の方法及び組成物による鼻腔内投与後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度(Cmax)は、哺乳動物対象への筋肉内注射後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度と比較して約80%又はそれ以上、約100%又はそれ以上で150%又はそれ以上である。これら送達率及び送達レベルの増強は、哺乳動物対象において適応される疾患及び病態の予防及び治療のための本発明の方法及び製剤の改善された治療有効性と相関する。
【0036】
本発明の他の詳細な実施形態内において、前述の方法及び製剤を、哺乳動物対象に投与すると、CNS、脳脊髄液(CSF)又は末梢神経系へのインターフェロン−β送達を増強し、それによって、鼻腔内送達(例えば、鼻粘膜送達)によるCNS、CSF又は末梢神経系の標的部位におけるピークインターフェロン−β濃度は、対象への製剤投与後の血漿中関連ピークインターフェロン−βの少なくとも5%である。例示的実施形態において、本明細書に記載された1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と共に製剤化された1種又はそれ以上のインターフェロン−βの投与により、対象への製剤投与後の血漿中ピークインターフェロン−β濃度に対して約10%又はそれ以上のCNS、CSF又は末梢神経系におけるピークインターフェロン−β濃度が生じる。他の例示的実施形態において、CNS、CSF又は末梢神経系におけるピークインターフェロン−β濃度は、血漿中ピークインターフェロン−β濃度に対して約15%又はそれ以上である。なお更なる例示的実施形態において、CNS、CSF又は末梢神経系におけるピークインターフェロン−β濃度は、血漿中ピークインターフェロン−β濃度に対して約20%又はそれ以上、30%又はそれ以上、35%又はそれ以上、又は40%又はそれ以上である。これら送達率及び送達レベルの増強は、選択されたインターフェロン−βの治療レベルのCNS、CSF又は末梢神経系送達により予防又は治療を受けることができる哺乳動物対象における疾患及び病態の予防及び治療のための本発明の鼻粘膜送達法及び製剤の有効性と直接相関する。
【0037】
本発明の他の詳細な実施形態内において、前述の方法及び製剤を、哺乳動物対象に投与し、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤並びに1種又はそれ以上の徐放性増強剤の鼻腔内有効量を含む製剤を投与することによってインターフェロン−βの血漿中レベル、CNS、CFS又は他の組織レベルが増強する。徐放性増強剤は、例えば、ポリマー送達媒介物を含むことができる。例示的実施形態において、徐放性増強剤は、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と共に共製剤化されるか、又は協調的に誘導されるポリエチレングリコール(PEG)を含むことができる。PEGは、インターフェロン−βに共有結合できる。本発明の徐放性増強法及び製剤は、投与部位におけるインターフェロン−βの滞留時間(RT)を増加させ、哺乳動物対象における血漿、CNS、CFS又は他の組織中の長時間にわたりインターフェロン−βの基本的レベルを維持することになる。
【0038】
本発明の他の詳細な実施形態内において、前述の方法及び製剤を哺乳動物対象に投与すると、インターフェロン−βの血漿中レベル、CNS、CFS又は他の組織レベルを増強し、長時間にわたってインターフェロン−βの基本的レベルが維持される。例示的方法及び製剤は、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤の鼻腔内有効量を含む製薬製剤を、インターフェロン−βを含む第二の製薬製剤の筋肉内投与と併用して対象の粘膜面に投与することを含む。インターフェロン−βの基本的レベルの維持は、疾患、例えば、多発性硬化症、パピローマウィルス感染、及び慢性B型肝炎の治療及び予防に特に有用である。
【0039】
本発明の前述の粘膜薬物送達製剤並びに調製法及び送達法は、哺乳動物対象に対してインターフェロン−βの粘膜送達の改善を提供する。これらの組成物及び方法は、1種又はそれ以上のインターフェロン−βと、1種又はそれ以上の粘膜(例えば、鼻腔内)送達増強剤とを組合わせた製剤又は協調的投与を含むことができる。これらの製剤及び方法を達成するために粘膜送達増強剤の中でも、以下のものから選択される:(a)凝集阻害剤;(b)電荷改変剤;(c)pH制御剤;(d)分解酵素阻害剤;(e)粘液溶解薬又は粘液透明化剤;(f)繊毛形成静止剤;(g)膜透過増強剤(例えば、(i)界面活性剤、(ii)胆汁酸塩、(ii)リン脂質又は脂肪酸添加剤、混合ミセル、リポソーム、又は担体、(iii)アルコール、(iv)エナミン、(v)NOドナー化合物、(vi)長鎖両親媒性分子、(vii)小型疎水性透過エンハンサー;(viii)サリチル酸ナトリウム又は誘導体、(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル、(x)シクロデキストリン又はベータ−シクロデキストリン誘導体、(xi)中鎖脂肪酸、(xii)キレート剤、(xiii)アミノ酸又はその塩、(xiv)N−アセチルアミノ酸又はその塩、(xv)選択された膜成分に分解する酵素、(ix)脂肪酸合成阻害剤、(x)コレステロール合成阻害剤;又は(xi)(i)〜(x)の膜透過増強剤の任意の組合わせ);(h)一酸化窒素(NO)刺激剤、キトサン、及びキトサン誘導体などの上皮接合生理機能の調節剤;(i)血管拡張剤;(j)選択的移送増強剤;及び(k)安定化送達媒介物、担体、支持体又はインターフェロン−βが、鼻粘膜送達増強のための活性化剤を安定化させるために有効に組合わされるか、会合するか、含有するか、カプセル化するか又は結合する複合体形成種。
【0040】
本発明の種々の実施形態において、インターフェロン−βは、上記(a)〜(k)に列挙された1種、2種、3種、4種又はそれ以上の粘膜(例えば、鼻腔内)送達増強剤と組合わされる。これらの粘膜送達増強剤は、混合、単独又はインターフェロン−βと共にあり得、又は他に製薬的に許容できる製剤又は送達媒介物と共に組合わすことができる。インターフェロン−βと本明細書の教示による1種又はそれ以上の粘膜送達増強剤(場合によっては、上記(a)〜(k)から選択された2種以上の粘膜送達増強剤の任意の組合わせ)との製剤により、哺乳動物対象の粘膜(例えば、鼻粘膜)表面へのその送達後にインターフェロン−βの生物学的利用能の増加が提供される。
【0041】
本発明の関連態様において、種々の協調的投与法により、インターフェロン−βの粘膜送達の増強が提供される。これらの方法は、上記(a)〜(k)の1種又はそれ以上の粘膜送達増強剤を有する協調的投与プロトコルにおいて少なくとも1種のインターフェロン−βの粘膜有効量を哺乳動物対象に投与する単回ステップ又は複数回ステップを含む。
【0042】
本発明による協調的投与法を実施するために、上記(a)〜(k)に列挙された1種、2種、又はそれ以上の粘膜送達増強剤の任意の組合わせを混合するか、又は他に同時粘膜(例えば、鼻腔内)投与のために組合わせることができる。或いは、上記(a)〜(k)に列挙された1種、2種、又はそれ以上の粘膜送達増強剤の任意の組合わせを、インターフェロン−βの粘膜投与とは別個の予め決められた時間配列(例えば、1種又はそれ以上の送達増強剤を前もって投与することにより)、インターフェロン−βとして同じか又は異なる送達経路(例えば、インターフェロン−βとして同じか又は異なる粘膜表面に)により、又は非粘膜(例えば、筋肉内、皮下、又は静脈内経路)によっても、集合的に又は個々に粘膜投与できる。本明細書の教示による任意の1種、2種、又はそれ以上の粘膜送達増強剤とインターフェロン−βとの協調的投与により、哺乳動物対象の粘膜表面へのその送達後にインターフェロン−βの生物学的利用能の増加が提供される。
【0043】
本発明の更なる関連態様において、種々の「複数処理加工」法又は「共処理加工」法により、鼻粘膜送達の増強のためのインターフェロン−β製剤の調製が提供される。これらの方法は、1つ又はそれ以上の処理加工又は製剤化ステップを含むことができ、1種又はそれ以上のインターフェロン−βは、上記(a)〜(k)の1種、2種、又はそれ以上(任意の組合せを含む)の粘膜送達増強剤と連続的、又は同時に、接触し、反応し、製剤化される。
【0044】
本発明による複数処理加工法又は共処理加工法を実施するために、一連の処理加工又は製剤化ステップ、又は同時製剤化法のいずれかにおいて、インターフェロン−βは、上記(a)〜(k)に列挙された1種、2種、又はそれ以上の粘膜送達増強剤の任意の組合わせに曝露され、反応し、又は組合せ製剤化される。これらの製剤化により、1つ又はそれ以上の構造的又は機能的態様においてインターフェロン−β(又は他の製剤成分)が修飾されるか、又は他に組合せ製剤において、各々が少なくともある程度、上記(a)〜(k)に列挙された特定の粘膜送達増強剤の接触、修飾作用、又は存在に起因する1つ又はそれ以上(複数、独立を含む)の態様において活性剤の粘膜送達が増強される。
【0045】
本発明の一定の詳細な態様において、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の粘膜送達増強剤(製薬製剤に一緒に組合わされたか、又は協調的鼻粘膜送達プロトコルにおいて投与された)の粘膜有効量を含む方法及び組成物により、拍動送達様式におけるインターフェロン−βの経鼻粘膜送達が提供され、血清中インターフェロン−βのより一貫した又は標準化された、及び/又は上昇したレベルが維持される。本文脈において、本発明の拍動送達法及び組成物は、他の粘膜又は非粘膜送達法に基づく対照と比較して生物学的利用能(例えば、インターフェロン−βの最大濃度Cmax又は濃度曲線下面積(AUC)により測定される)を増大させ、及び/又は粘膜送達率(最大濃度までの時間(tmax)、Cmax及び/又はAUCにより測定される)を増加させる。例えば、本発明は、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の粘膜送達増強剤を含む拍動送達法及び製剤を提供し、哺乳動物対象に粘膜(例えば、鼻腔内に)投与される製剤により、哺乳類動物対象に筋肉内注射後の血漿中インターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)と比較して、約10%又はそれ以上である血漿中インターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)となる。
【0046】
本発明の製剤は、対象の鼻粘膜表面に投与されることが多い。一定の実施形態において、インターフェロン−βは、ヒトインターフェロン−β−1a(Avonex(登録商標)、Biogen社)、ヒトインターフェロン−β−1b(Betaseron(登録商標)、Berlex Laboratories)、又は製薬的に許容できるその塩又は誘導体である。本発明の製薬組成物内の粘膜有効用量は、例えば、約10μgと600μgとの間のヒトインターフェロン−βを含む。一定の実施形態において、インターフェロン−βを含む製薬組成物の有効用量は、例えば、30μg、60μg、90μg、120μg、200μg、250μg、300μg、又は400μgである。一定の実施形態において、本発明の製薬組成物内の有効用量は、例えば、約30μgから100μgの間のインターフェロン−βである。本発明の製薬組成物は、反復投薬措置、例えば、1日1回以上、週3回、又は毎週投与できる。一定の実施形態において、本発明の製薬組成物は、1日2回、1日4回、又は1日6回投与される。関連実施形態において、反復投薬措置を経て投与されるインターフェロン−β及び1種又はそれ以上の送達増強剤を含む粘膜(例えば、鼻腔内)用製剤は、インターフェロン−βの同一量又は同等量の1回以上の筋肉内注射後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)と比較して、反復投与後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βが約25%又はそれ以上である濃度曲線下面積(AUC)となる。他の実施形態において、反復投薬措置を経て投与される本発明の粘膜用製剤は、インターフェロン−βの同一量又は同等量の1回以上の筋肉内注射後、血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)と比較して、反復投与後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関し、約25%又はそれ以上である濃度曲線下面積(AUC)となる。他の実施形態において、反復投薬措置により投与される本発明の粘膜用製剤は、インターフェロン−βの同一量又は同等量の1回以上の筋肉内注射後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関する濃度曲線下面積(AUC)と比較して、反復投与後の血漿中又はCSF中のインターフェロン−βに関し、約40%、80%、100%、150%又はそれ以上である濃度曲線下面積(AUC)となる。
【0047】
本発明の一定の詳細な態様において、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の送達増強剤を含む安定な製薬製剤が提供され、哺乳動物対象に鼻腔内投与される製剤は、哺乳動物対象においてインターフェロン−βに関し、最大血漿濃度までの時間(tmax)が凡そ0.4時間から2.0時間の間となる。該製剤は、対象の鼻粘膜表面に投与されることが多い。
【0048】
本発明の一定の実施形態において、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の送達増強剤の鼻腔内製剤は、哺乳動物対象においてインターフェロン−βに関し、最大血漿濃度までの時間(tmax)が凡そ0.4時間から1.5時間の間となる。或いは、本発明の鼻腔内製剤は、哺乳動物対象においてインターフェロン−βに関する最大血漿濃度までの時間(tmax)が凡そ0.7時間から1.5時間の間、又は凡そ1.0時間から1.3時間の間となる。
【0049】
本発明の一定の詳細な態様において、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤を含む安定な製薬製剤が提供され、哺乳動物対象に鼻腔内投与される製剤は、哺乳動物対象への筋肉内投与後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度と比較して、本発明の方法及び組成物による対象への鼻腔内投与後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度(Cmax)は約25%又はそれ以上となる。関連方法内において、該製剤は、対象の鼻粘膜表面に投与される。
【0050】
本発明の他の詳細な実施形態において、インターフェロン−β及び1種又はそれ以上の送達増強剤の鼻腔内製剤により、哺乳動物対象への同等用量のインターフェロン−βの筋肉内注射後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度と比較して、対象への鼻腔内投与後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度(Cmax)は約40%又はそれ以上となる。或いは、本発明の鼻腔内製剤により、哺乳動物対象への同等用量のインターフェロン−βの筋肉内注射後の血漿中インターフェロン−βのピーク濃度と比較して、血漿中インターフェロン−βのピーク濃度(Cmax)は約80%、100%又は150%又はそれ以上となる。
【0051】
鼻粘膜表面内又はそれを通過するインターフェロン−βの送達を増強する鼻腔内送達増強剤が使用される。受動的に吸収される薬剤に関して、薬物輸送に対する傍細胞及び経細胞経路の相関的貢献は、pK、分配係数、薬物の分子半径及び電荷、薬物が送達される管腔環境のpH、及び吸収面の面積に依存する。本発明の鼻腔内送達増強剤は、pH調節剤であり得る。本発明の製薬製剤のpHは、薬物輸送に対する傍細胞及び経細胞経路によるインターフェロン−βの吸収に影響を及ぼす因子である。一実施形態において本発明の製薬製剤は、約pH3.0から8.0の間に調整されたpHである。更なる実施形態において本発明の製薬製剤は、約pH3.5から7.5の間に調整されたpHである。更なる実施形態において本発明の製薬製剤は、約pH4.0から5.0の間に調整されたpHである。更なる実施形態において本発明の製薬製剤は、約pH4.0から4.5の間に調整されたpHである。
【0052】
上記に記載されたように、本発明によって、種々の疾患及び病態の治療又は予防のために哺乳動物対象に、インターフェロン−β(IFN−β)の粘膜送達に関し、方法及び組成物の改善が提供される。本発明の方法による治療及び予防のための適切な哺乳動物対象の例としては、限定はしないが、ヒト及び非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、及びヤギなどの家畜種、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット及びウサギなどの研究用及び家庭用の種が挙げられる。
【0053】
本発明をより良く理解するために、以下の定義が提供される:
【0054】
インターフェロン−β:本明細書に用いられる「インターフェロン−β」又は「IFN−β」とは、天然、合成、又は組換えのいずれにせよ、任意の出所源から天然配列又は変異形態におけるインターフェロン−βを称す。天然のIFN−βは、20kDaの糖タンパク質(糖部分が凡そ20パーセント)であり、166のアミノ酸長を有する。インビトロでの生物活性にとってグリコシル化は必要ない。該タンパク質は、生物活性にとって必要とされるジスルフィド結合Cys31/141を含有する。IFN−βをコードするヒト遺伝子は、777bpの長さ及びIFN−α遺伝子クラスターの近傍における染色体9q22上に位置している。IFN−β遺伝子は、イントロンを含有しない。単一の遺伝子が、ヒトIFN−βをコードする。ウシIFN−βをコードする少なくとも3つの異なる遺伝子が見出されている。IFN−βは、線維芽細胞インターフェロン、1型インターフェロン、pH2−安定インターフェロン、及びR1−GI因子としても知られている。
【0055】
IFN−βとしては、例えば、天然又はヒト天然配列との組換えIFN−βであるヒトインターフェロン−β(hIFN−β)が挙げられる。組換えインターフェロン−β(rIFN−β)とは、任意のIFN−β又は組換えDNA技法の手段により生産された変異体を称する。ヒトIFN−βの2つのサブタイプ、IFN−β−1a(Avonex(登録商標)、Biogen社)及びインターフェロン−β−1b(Betaseron(登録商標)、Chiron社)は、多発性硬化症、及び他の疾患の治療及び予防用に承認されている。
【0056】
更なる開示により、IFN−βの有効な治療使用を規定する特定の構造及び機能特性に向けられる詳細な方法及び手段が教示され、更にまた、本発明内で有用である、多様で、更に多数のIFN−β試剤並びにIFN−βの機能的変異体及び類縁体(限定はしないが、IFN−βの天然又は組換え変異体、IFN−βの化学的若しくは生合成的に修飾された誘導体又は変異体並びにIFN−βのポリペプチド及び小型分子薬物の模倣体など)が開示される。
【0057】
IFN−βは、主として線維芽細胞及び幾つかの上皮細胞タイプにより産生される。IFN−βの合成は、ウィルス、二重鎖RNA、及び微生物など、インターフェロンの通常のインデューサーにより誘導できる。それはまた、腫瘍壊死因子(TNF)及びIL1などの幾つかのサイトカインにより誘導される。IFN−αとは対照的に、IFN−βは、厳密に種特異的である。他の種から誘導されたIFN−βは、ヒト細胞において不活性である。
【0058】
本発明の粘膜送達製剤及び方法内において、多発性硬化症患者へのインターフェロンβの連続投与は、低用量の使用を可能にし、その後の有意な薬物関連副作用を低下させる。病院設定以外の連続注入は実行不可能であるので、本発明のIFN−β送達用の粘膜製剤によって、患者ごとの用量ばらつきの改善など、利益の増大した連続投与の見積もりができる。
【0059】
B型肝炎の治療と予防:上記に記載されたように、本発明により、哺乳動物対象におけるB型肝炎を予防し、治療するためにIFN−βの粘膜送達用に改善された、有用な方法及び組成物が提供される。IFN−β単独又はIFN−αとの併用は、慢性の活性なB型肝炎の治療に有用である。
【0060】
小児ウィルス性脳炎の治療と予防:上記に記載されたように、本発明により、哺乳動物対象における重症の小児ウィルス性脳炎を予防し、治療するためにIFN−βの粘膜送達用に改善された、有用な方法及び組成物が提供される。インターフェロンβとアシクロビルとの併用治療は、アシクロビル単独の治療よりも有効である。
【0061】
尖圭コンジローマの治療と予防:上記に記載されたように、本発明により、哺乳動物対象におけるパピローマウィルス感染を予防し、治療するためにIFN−βの粘膜送達用に改善された、有用な方法及び組成物が提供される。IFN−βは、尖圭コンジローマ(パピローマウィルス感染により引き起こされる性器又は性病性いぼ)、喉頭及び皮膚のパピローマウィルスいぼ(通常のいぼ)の治療のために用いられる。それはまた、大型コンジローマの外科的除去後の予防的使用に好適である。
【0062】
悪性腫瘍の治療と予防:本発明の粘膜送達用製剤及び方法内において、IFN−βは、その特異的薬物動態のため局所腫瘍療法に特に有用な親油性分子である。頭頚部扁平上皮癌、乳癌及び子宮頚部癌、また悪性黒色腫は、IFN−βによる治療に良好に応答する。IFN−βは、転移の可能性の高い悪性黒色腫のアジュバント療法に有用である。応答率は、IFN−βと坑腫瘍薬又は他のサイトカイン類との併用により改善される。
【0063】
悪性神経膠腫の治療と予防:本発明の粘膜送達用製剤及び方法内において、IFN−β、MCNU(ラニムスチン)、及び放射線療法との併用療法は、未処置の悪性神経膠腫に対して中等度の副作用で、患者の全身状態に大きな影響を及ぼさない顕著な効果を有した。(非特許文献1)。
【0064】
送達の方法及び組成物:哺乳動物対象に対するインターフェロン−βの粘膜投与のための方法及び組成物の改善により、インターフェロン−βの投薬スケジュールが最適化される。本発明により、1種又はそれ以上の粘膜送達増強剤と共に製剤化されたインターフェロン−βの粘膜送達を提供され、インターフェロン−βの薬量放出は、粘膜投与後、凡そ0.1時間から2.0時間;0.4時間から1.5時間;0.7時間から1.5時間;又は1.0時間から1.3時間の範囲のインターフェロン−βの有効な送達時間、実質的に標準化され、及び/又は持続される。達成されるインターフェロン−βの徐放性は、本発明の方法及び組成物を利用した外因性インターフェロン−βの反復投与により促進できる。
【0065】
徐放性組成物及び方法:哺乳動物対象へのインターフェロン−βの粘膜投与用組成物及び方法の改善により、インターフェロン−βの投薬スケジュールが最適化される。本発明により、1種又はそれ以上の粘膜送達増強剤及び任意の徐放性増強剤又は試剤と併用してインターフェロン−βを含む製剤の粘膜(例えば、経鼻)送達の改善が提供される。本発明の粘膜送達増強剤は、送達の有効な増加、例えば、最大血漿中濃度(Cmax)を増加させて、粘膜投与されたインターフェロン−βの治療活性を増強させる。血漿中及びCNS中のインターフェロン−βの治療活性に影響を及ぼす第二の因子は、滞留時間(RT)である。鼻腔内送達増強剤と組合わせた徐放性増強剤により、インターフェロン−βのCmaxを増加させ、滞留時間(RT)を増加する。徐放性増強製剤を生じさせる本発明のポリマー送達媒介物、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、及び他の試剤並びに方法は、本明細書に開示されている。本発明は、哺乳類動物対象におけるインターフェロン−β欠損に関連する症状の治療のために、インターフェロン−β送達法及び剤形の改善を提供する。
【0066】
インターフェロン−βの基本レベルの維持:哺乳動物対象へのインターフェロン−βの粘膜投与用組成物及び方法の改善により、インターフェロン−βの投薬スケジュールが最適化される。本発明は、インターフェロン−βの皮下投与及び筋肉内投与と組合わせて、インターフェロン−β及び鼻腔内送達増強剤を含む製剤の鼻粘膜送達の改善を提供する。本発明の製剤及び方法によって、多くの場合、ネオプテリン及びベータ−2ミクログロブリン又は2,5−オリゴアデニレートシンテターゼなどの生物学的マーカーが、全ての時間で治療レベルに維持されるように、単回用量投与後又は2〜6回の連続投与の複数投薬措置により治療された後、例えば、2時間から24時間、4〜16時間、また8〜12時間を通して、インターフェロン−βの相対的に一貫した基本レベルが維持される。インターフェロン−βの基本レベルの維持は、許容できない副作用のない、疾患、例えば、多発性硬化症の治療及び予防にとって特に有用である。
【0067】
インターフェロン−βは、線維芽細胞及びマクロファージなどの種々の細胞タイプにより産生する。インターフェロン−βは、ヒトの細胞表面上の特定の受容体に結合することによりその生物学的作用を発揮する。この結合により、遺伝子産物及びマーカー類、例えば、2’,5’オリゴアデニレートシンセターゼ(2’,5’−OAS)、ネオプテリン、及びβ−ミクログロブリンの発現に至る細胞内事象の複雑なカスケードが開始する。これらのマーカー類は、ヒトにおけるインターフェロン−β−1aの生物活性をモニターするために使用されている。生物学的応答の誘導は、インターフェロン−βの血清中活性レベルとあらまし相関する。これらの生物学的マーカーは、インターフェロン−βの筋肉内又は皮下投与48時間後にあらましピークとなり、4日間上昇したままである。筋肉内投与後、インターフェロン−βの血清レベルは、投薬後約3時間から15時間にピークとなる。消失半減期は、10時間近辺である。
【0068】
インターフェロン−βの有効性は、これらの生物学的マーカーの増加に関連する。Avonex(登録商標)の臨床試験に選択された用量は、6MIU(30μg)のβ−ミクログロブリンにおける増加レベルに基づいた。推奨されたAvonex(登録商標)の用量は、30μgの週1回の筋肉内注射である。
【0069】
例えば、週1回筋肉内投与された30μg用量でのインターフェロン−βが、典型的に有効な開始用量となるであろう。典型的に4日超の生物学的マーカーを維持するために1日当り60μgから120μgにおける用量で本発明のインターフェロン−β及び鼻腔内送達増強剤を含む製剤の改善された鼻粘膜送達がなされると考えられる。
【0070】
本発明の粘膜送達用製剤及び方法内において、インターフェロン−βは、粘膜送達のために好適な担体又は媒体と組合わせるか、又は協調的に投与されることが多い。本明細書に用いられる用語「担体」とは、製薬的に許容できる固体又は液体充填剤、希釈剤又はカプセル化材料を意味する。水含有液体担体は、酸性化剤、アルカリ性化剤、抗菌保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート剤、複合化剤、溶解剤、保湿剤、溶剤、懸濁剤及び/又は粘性増加剤、等張剤、湿潤剤又は他の生体適合材料などの製薬的に許容できる添加物を含有できる。上記カテゴリにより列挙された成分表は、非特許文献2に見ることができる。製薬的に許容できる担体として役立つことができる材料の幾つかの例は、乳糖、グルコース及びショ糖などの糖類;トウモロコシ澱粉及びジャガイモ澱粉などの澱粉;ナトリウムカルボキシセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;トラガント末;麦芽;タルク;カカオ脂及び座剤用ワックス類などの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油などの油類;プロピレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール類;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;無発熱物質水;等張性生理食塩水;リンゲル液、エチルアルコール、及びリン酸緩衝液、並びに製薬組成物に用いられる他の非毒性の適合性物質である。湿潤剤、乳化剤及びナトリウムラウリルサルフェート及びステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤もまた、配合者の要望に従って組成物に存在し得る。製薬的に許容できる抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、塩酸システイン、重亜硫酸ナトリウム、異性重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。単一剤形を製造するために担体材料と組合せできる有効成分量は、投与の特定の様式に依って変わる。
【0071】
本発明の粘膜製剤は、一般に無菌で、微粒子が無く製薬使用に対して安定である。本明細書に用いられる用語の「微粒子が無い」とは、非経口の小容量溶液に関するUSP明細書の要件に合致する製剤を意味する。用語「安定な」とは、適切な政府規制組織体により記載された適正医薬品製造基準の原則に従って確立されている識別性、力価、品質、及び純度に関する全ての化学的物理的規格を満たす製剤を意味する。
【0072】
本発明の粘膜送達用組成物及び方法内において、粘膜表面内への、又はこれを通過するインターフェロン−βの送達を増強する種々の送達増強剤が使用される。この点において、粘膜上皮を通過するインターフェロン−βの送達は、「経細胞的」又は「傍細胞的」に生じ得る。これらの経路が、インターフェロン−βの全フラックス及び生物学的利用能に寄与する程度は、粘膜環境、活性剤の物理化学的性質、粘膜上皮の性質に依る。傍細胞輸送は、受動拡散のみを含むが、一方、経細胞輸送は、受動、促進又は能動過程により生じ得る。一般に、親水性、受動的輸送、極性溶質は、傍細胞経路を介して拡散するが、より親油性の溶質は経細胞経路を用いる。種々の受動的及び能動的吸収された溶質に関する吸収及び生物学的利用能(例えば、透過係数又は生理学的アッセイにより反映される)は、本発明内の任意に選択されたインターフェロン−βに関して傍細胞及び経細胞双方の送達成分によって容易に評価できる。これらの値は、インビトロでの上皮細胞培養透過性アッセイなどの周知の方法に従って判定及び区別できる(例えば、非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7を参照)。
【0073】
受動的吸収薬物に関して、薬物輸送に対する傍細胞及び経細胞経路の相関的寄与は、pK、分配係数、薬物の分子半径及び電荷、薬物が送達される管腔環境のpH、吸収面の面積に依存する。傍細胞経路は、鼻粘膜上皮の接近可能な表面積のうちの相対的に小さな部分となる。一般的に、細胞膜は、傍細胞空間によって占められる面積よりも1000倍大きい粘膜表面積を占めていることが報告されている。このように、高分子の透過に対して接近可能な面積がより小さいこと、並びにサイズ及び電荷に基づく区別により、傍細胞経路は、薬物輸送にとって、経細胞送達よりも一般に有利性の少ない経路であり得ることが示唆されると思われる。驚くべきことに、本発明の方法及び組成物により、傍細胞経路を経て粘膜上皮内への、及びそれを通過する生物療法剤の輸送の有意な増強が提供される。したがって、本発明の方法及び組成物により、傍細胞及び経細胞双方の経路が、単一方法又は組合せのいずれかで首尾よく標的にされる。
【0074】
本明細書に用いられる「粘膜送達増強剤」は、インターフェロン−β又は他の生物学的活性化合物の放出又は溶解性(例えば、製剤送達媒体からの)、拡散率、透過能力及びタイミング、取込み、滞留時間、安定性、有効半減期、ピーク又は維持濃度レベル、クリアランス及び他の望ましい粘膜送達特性(例えば、血流又は中枢神経系などの送達部位で、又は選択された標的活性部位で測定される)を増強する試剤を含む。したがって、粘膜送達の増強は、種々の機構のいずれかにより、例えば、インターフェロン−βの拡散、輸送、持続性又は安定性の増加、膜流動性の増加、生物学的利用能又は細胞内透過又は傍細胞透過を調節するカルシウムイオン及び他のイオン作用の調整、粘膜成分(例えば、脂質)の可溶化、粘膜組織中の非タンパク質及びタンパク質のスルフヒドリルレベルの変更、粘膜表面を通過する水フラックスの増加、上皮接合生理機能の調整、粘膜上皮上にある粘液粘度の減少、粘膜毛様体のクリアランス率の減少、及び他の機構によって生じ得る。
【0075】
本明細書に用いられる「インターフェロン−βの粘膜有効量」は、種々の送達経路又は輸送経路を含み得る対象における薬物活性に関する標的部位へのインターフェロン−βの有効な粘膜送達を考慮している。例えば、投与された活性剤は、粘膜の細胞間間隙を通路として隣接血管壁に達することができ、一方、別の経路では薬剤は、受動的又は能動的に粘膜細胞内に取込まれて細胞内で作用するか、或いは細胞から排出されるか、輸送されて全身循環などの第二の標的部位に到達し得る。本発明の方法及び組成物は、1つ又はそれ以上のこのような代りの経路に沿って活性剤の移行を促進できるか、又は粘膜組織又は近位血管組織に対して直接作用して活性剤の吸収又は透過を促進できる。本文脈において吸収又は透過の促進は、これらの機構に限定されない。
【0076】
本明細書に用いられる「血漿中インターフェロン−βのピーク濃度(Cmax)」、「血漿中インターフェロン−βの濃度対時間曲線下面積(AUC)」、「血漿中インターフェロン−βの最大血漿濃度対時間(tmax)」は、当業者に公知の薬物動態パラメータである(非特許文献8)。「濃度対時間曲線」では、鼻腔内、皮下、又は他の非経口投与経路のいずれかにより対象へのインターフェロン−βの適用量の投与後、対象の血清中インターフェロン−βの濃度対時間が測定される。「Cmax」は、対象へのインターフェロン−βの単回投与後の対象の血清中インターフェロン−βの最大濃度である。tmaxは、対象へのインターフェロン−βの単回用量投与後の対象の血清中インターフェロン−βの最大濃度に到達する時間である。
【0077】
本明細書に用いられる「血漿中インターフェロン−βの濃度対時間曲線下面積(AUC)」は、線形台形則に従い、残りの面積を追加して算出される。2つの投薬量間での23%の減少又は30%の増加は、90%の確率(II型誤差β=10%)で検出されると考えられる。「送達率」又は「吸収率」は、最大濃度(Cmax)に到達する時間(tmax)の比較により算出される。Cmax及びtmaxは双方とも、ノンパラメトリック法を用いて解析される。皮下、静脈内及び鼻腔内投与のインターフェロン−βの薬物動態の比較は、分散分析(ANOVA)により実施された。対比較に関して、有意性を評価するためにボンフェロニ−ホームズ逐次法が用いられた。3種の経鼻用量間の用量応答関係は、回帰分析により推定された。P<0.05を有意とみなした。結果は、平均値+/−SEMとして示した(非特許文献8)。
【0078】
本明細書に用いられる「薬物動態マーカー類」としては、1種又はそれ以上のインターフェロン−β化合物、又は本明細書に開示された他のインターフェロン−β類の粘膜送達のモデル化薬物動態に有用なインビトロ又はインビボシステムにおいて検出可能な任意の許容された生物学的マーカーが挙げられ、本明細書の方法及び製剤によるインターフェロン−β化合物の投与後、所望の標的部位で検出されたマーカー類のレベルは、標的部位に送達されたインターフェロン−β化合物レベルのかなり相関した推定値を提供する。本文脈における多数の技術的に許容されたマーカー類の中で、インターフェロン−β化合物又は他のインターフェロンベータ類の投与により標的部位に誘導される物質がある。例えば、本発明による1種又はそれ以上のインターフェロン−β化合物の有効量の鼻粘膜送達は、限定はしないが、ネオプテリン及びβ−ミクログロブリンなどの薬物動態マーカー類の産生により測定可能な対象における免疫学的応答を刺激する。
【0079】
吸収促進の機構は、本発明の種々の鼻腔内送達増強剤により変わり得るが、本文脈における有用な試薬は、粘膜組織に実質的に有害な影響を及ぼさず、特定のインターフェロン−β又は他の活性な送達増強剤の物理化学的特性に従って選択される。本文脈において、粘膜組織の浸透又は透過を増加させる送達増強剤は、粘膜の保護的透過バリヤーの何らかの変化をもたらすことが多い。本発明内の価値あるこのような送達増強剤に関して、粘膜の透過における任意の有意な変化は、望ましい薬物送達時間に適切な時間枠内で可逆的であることが一般に望ましい。更に、長期使用による実質的な累積毒性、又は粘膜のバリヤー特性において誘導される永続的で有害な変化があってはならない。
【0080】
本発明の一定の態様内において、本発明のインターフェロン−βとの協調的投与又は組合せ製剤のための吸収促進剤は、限定はしないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、エタノール、プロピレングリコール、及び2−ピロリドン類などの小型親水性分子から選択される。或いは、長鎖両親媒性分子、例えば、デアシルメチルスルホキシド、アゾン、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、及び胆汁酸塩類は、インターフェロン−βの粘膜透過を増強させるために使用できる。更なる態様において、界面活性剤(例えば、ポリソルベート類)は、補助化合物、加工処理剤、又は製剤添加物として使用されて、インターフェロン−βの鼻腔内送達を増強させる。これらの透過増強剤は、鼻粘膜を裏張りしている上皮細胞の脂質二層を含む分子の極性頭部基又は親水性尾部領域のいずれかにおいて典型的に相互作用する(非特許文献9、非特許文献10)。これらの部位での相互作用は、脂質分子のパッキングを破壊し、二層の流動性を増加させ、粘膜バリヤーを通過するインターフェロン−βの輸送を促進する作用を有し得る。また、極性頭部基を有するこれらの透過エンハンサーの相互作用によって、隣接二層の親水性領域が更に水に溶かされ、離れて移動することによって、インターフェロン−β輸送のための傍細胞経路を開く原因となるか、又はそれを可能にし得る。これらの作用に加えて、一定のエンハンサーは、鼻粘膜の水性領域のバルク性に対して直接作用を有し得る。DMSO、プロピレングリコール、及びエタノールなどの試剤は、送達環境に十分高濃度で存在する場合(例えば、治療製剤中の前投与又は取込みにより)、粘膜の水相に入って、その可溶化性を変えることができ、それによって媒体から粘膜内へのインターフェロン−βの分配を増強させる。
【0081】
本発明の協調的投与並びに加工処理法及び組合せ製剤内で有用である追加の粘膜送達増強剤としては、限定はしないが、混合ミセル;エナミン類;一酸化窒素ドナー(例えば、カルボキシ−PITO又はドクロフェナクナトリウムなどのNOスキャベンジャーと共投与されることが好ましいS−ニトロソ−N−アセチル−DL−ペニシラミン、NOR1、NOR4);サリチル酸ナトリウム;アセト酢酸のグリセロールエステル類(例えば、グリセロール−1,3−ジアセトアセテート又は1,2−イソプロピリデングリセリン−3−アセトアセテート);及び粘膜送達のために生理的に適合する他の放出拡散剤或いは上皮内又は経上皮透過促進剤、が挙げられる。他の吸収促進剤は、インターフェロン−βの粘膜送達、安定性、活性又は経上皮透過を増強させる種々の担体、基剤及び賦形剤から選択される。これらの中では、とりわけ、シクロデキストリン類及びβ−シクロデキストリン誘導体(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン及びヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル−β−シクロデキストリン))が挙げられる。1種又はそれ以上の有効成分と任意に結合し、更に油脂性基剤で任意に製剤化されたこれらの化合物は、本発明の粘膜用製剤における生物学的利用能を増強する。粘膜送達用に適応させた更なる吸収増強剤としては、モノ−及びジグリセリド類(例えば、カプリン酸ナトリウム−ヤシ油の抽出物、Capmul)、及びトリグリセリド(例えば、アミロデキストリン、Estaram 299、Miglyol 810)などの中鎖脂肪酸類が挙げられる。
【0082】
本発明の粘膜治療用及び予防用組成物は、粘膜バリヤーを通過してインターフェロン−βの吸収、拡散、又は透過を促進する任意の好適な透過促進剤により補足できる。この透過プロモーターは、製薬的に許容できる任意のプロモーターであり得る。このように、本発明のより詳細な態様において、サリチル酸ナトリウム及びサリチル酸誘導体(サリチル酸アセチル、サリチル酸コリン、サリチル酸アミドなど);アミノ酸類及びそれらの塩類(例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどのモノアミノカルボン酸類;リジンなどの塩基性アミノ酸類−それらのアルカリ金属塩類又はアルカリ土類金属塩類を含めて);及びN−アセチルアミノ酸類(N−アセチルアラニン、N−アセチルフェニルアラニン、N−アセチルセリン、N−アセチルグリシン、N−アセチルリジン、N−アセチルグルタミン酸、N−アセチルプロリン、N−アセチルヒドロキプロリンなど)並びにそれらの塩類(アルカリ金属塩類及びアルカリ土類金属塩類)から選択される1種又はそれ以上の透過促進剤を取込む組成物が提供される。また、一般に乳化剤(例えば、オレイルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類など)として使用される物質、カプロン酸、乳酸、リンゴ酸及びクエン酸並びにそれらのアルカリ金属塩類、ピロリドンカルボン酸類、アルキルピロリドンカルボン酸エステル類、N−アルキルピロリドン類、プロリンアシルエステル類などが本発明の方法及び組成物内の透過促進剤として提供される。
【0083】
本発明の種々の態様内において、投与と選択された標的部位との間の粘膜バリヤーを通過して、本発明内のインターフェロン−β及び他の治療剤の送達を可能にする改善された鼻粘膜送達用製剤及び方法が提供される。一定の製剤は、選択された標的細胞、組織又は臓器、又は更に特定の疾患状態に特異的に適応する。他の態様において、該製剤及び方法により、規定された細胞内又は細胞間経路に沿って特異的に経路化されたインターフェロン−βの効率的で選択的な細胞内又は経細胞輸送が提供される。インターフェロン−βは、典型的に担体又は他の送達媒体中での有効な濃度レベルで効率的に充填され、例えば、薬物作用のために鼻粘膜において、及び/又は遠隔標的部位(例えば、血流又は規定された組織、臓器、又は細胞外コンパートメント)の細胞内コンパートメント及び膜への通過中、安定化形態で送達され、維持される。インターフェロン−βは、送達媒体中で提供されるか、又は他に修飾でき(例えば、プロドラッグの形態で)、インターフェロン−βの放出又は活性化は、生理的刺激(例えば、pH変化、リソゾーム酵素など)により開始される。インターフェロン−βは、その標的活性部位に達するまで薬理的に不活性であることが多い。たいていの場合、インターフェロン−β及び他の製剤成分は、生理的条件下で迅速に分解され、排泄される能力に関して一般に選択される。同時に製剤は、有効な保存のため、剤形において化学的物理的に安定である。
【0084】
本発明内で、タンパク質安定性を増強させるために水含量を有効に調節する種々の添加物、希釈剤、基剤及び送達媒体が提供される。この意味で抗凝集剤として有効なこれらの試薬及び担体材料としては、例えば、安定性を有意に増加させ、それに混合されるか、又はそれに結合されるペプチド及びタンパク質の固相凝集を減少させるポリエチレングリコール、デキストラン、ジエチルアミノエチルデキストラン、及びカルボキシメチルセルロースなどの種々の官能基のポリマー類が挙げられる。幾つかの場合において、タンパク質の活性又は物理的安定性は、ペプチド又はタンパク質薬物の水溶液への種々の添加物によっても増強できる。例えば、ポリオール類(糖類など)、アミノ酸類、及び種々の塩類などの添加物を使用できる。
【0085】
一定の添加物、特に糖類及び他のポリオール類はまた、乾燥、例えば、凍結乾燥タンパク質に対して有意な物理的安定性を付与する。またこれらの添加物は、本発明内に用いて、凍結乾燥時のみならず乾燥状態の保存中にもタンパク質を凝集に対して保護できる。例えば、ショ糖及びFicoll 70(ショ糖単位を有するポリマー)は、種々の条件下での固相インキュベーション中、ペプチド又はタンパク質凝集に対して有意な保護を示す。これらの添加物はまた、ポリマーマトリックス内に埋め込まれた固相タンパク質の安定性を増強することができる。
【0086】
なお更なる添加物、例えば、ショ糖は、本発明の徐放性製剤に生じ得る高温における湿性雰囲気下での固形状態の凝集に対してタンパク質を安定化する。これらの添加物を、本発明内のポリマー溶融加工処理及び組成物内に組み込むことができる。例えば、上記の種々の安定化添加物を含有する溶液を簡単な凍結乾燥又はスプレー乾燥によりポリペプチド微粒子を調製できる。それによって長期にわたる非凝集のペプチド類及びタンパク質の徐放性を得ることができる。
【0087】
種々の更なる調製用成分及び方法、並びに特定の製剤用添加物が本明細書に提供され、ペプチド又はタンパク質が、実質的に純粋な非凝集形態で安定化される、凝集傾向性のあるペプチド及びタンパク質の粘膜送達用製剤が得られる。これらの方法及び製剤内の使用のために成分及び添加物の範囲が考慮されている。例示的なこれらの抗凝集剤は、ポリペプチド類の疎水性側鎖を選択的に結合するシクロデキストリン(CD)類の結合二量体である(例えば、非特許文献11;非特許文献12を参照)。これらのCD二量体は、有意に凝集を阻止する方式でタンパク質の疎水性パッチに結合することが分かっている(非特許文献13)。この阻止は、関与するCD二量体及びタンパク質双方に関して選択的である。タンパク質凝集のこのような選択的阻止により、本発明の鼻腔内送達法及び組成物内での更なる利点を提供する。本文脈における使用のための更なる試剤としては、ペプチド類及びタンパク質の凝集を特異的にブロックするリンカーにより調節される変動性幾何学的配置を有するCD三量体及び四量体が挙げられる(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16)。
【0088】
本発明内に組み込むための更なる抗凝集剤及び方法は、タンパク質−タンパク質相互作用を選択的にブロックするペプチド類及びペプチド模倣体の使用を含む。一態様において、CD多量体に関して報告されている疎水性側鎖の特異的結合が、タンパク質凝集を同様にブロックするペプチド及びペプチド模倣体の使用によりタンパク質に拡張される。広範囲の好適な方法及び抗凝集剤は、本発明の組成物及び方法内への組み込みのために利用できる(非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28;非特許文献29)。本明細書に開示されたペプチド及びタンパク質工学における他の技法により、本発明の粘膜送達法及び製剤におけるタンパク質凝集及び不安定性の程度は更に減少する。本文脈においてペプチド又はタンパク質の修飾に有用な方法例の一つは、PEG化である。ポリペプチド薬物の安定性と凝集問題は、ポリペプチドとPEGなどの水溶性ポリマー類との共有結合により有意に改善できる。
【0089】
本発明内に使用される酵素阻害剤は、有効性と毒性の程度が変わる広範囲の非タンパク質阻害剤から選択される(例えば、非特許文献30を参照)。更に詳細には下記のとおり、それらが遭遇する際の毒性作用を減少させるか、又は除去するために、マトリックス又は他の送達媒体に対するこれら補助剤の固定化又は化学的に修飾された類縁体の開発によって容易に実施できる。本発明内に使用されるこの広範囲な群の候補酵素阻害剤の中でも、セリンプロテアーゼ類(例えば、トリプシン及びキモトリプシン)の強力な不可逆的阻害剤である、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP)などの有機リン阻害剤及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)阻害剤がある。これらの化合物によるアセチルコリンエステラーゼの更なる阻害により、無制御送達設定においてはそれらの毒性が高まる(非特許文献30)。別の候補阻害剤、フッ化4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニル(AEBSF)は、DFP及びPMSFと同等の阻害活性を有するが、著しく毒性が低い。塩酸フッ化(4−アミノフェニル)−メタンスルホニル(APMSF)は、別の強力なトリプシン阻害剤であるが、無制御設定において毒性である。これらの阻害剤とは対照的に、4−(4−イソプロピルピペラジノカルボニル)フェニル1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトエートメタンスルホネート(FK−448)は、キモトリプシンの強力で特異的な阻害剤である低毒性物質である。更に候補阻害剤のこの非タンパク質群の中で、低毒性リスクを示す例示的ものは、メシル酸カモスタット(N,N’−ジメチルカルバモイルメチル−p−(p’−グアニジノ−ベンゾイルオキシ)フェニルアセテートメタン−スルホネート)である。
【0090】
本発明の方法及び組成物内に使用される、更に別のタイプの酵素阻害剤は、特定の治療化合物の酵素分解を妨害するアミノ酸及び修飾アミノ酸である。本文脈における使用のために、アミノ酸及び修飾アミノ酸は、実質的に非毒性であり、低コストで製造できる。しかしながら、低分子サイズ及び良好な溶解性のために、それらは、容易に希釈され、粘膜環境において吸収される。それにもかかわらず、適切な条件下で、アミノ酸類は、プロテアーゼ酵素の可逆的で競合的な阻害剤として作用できる。一定の修飾アミノ酸類は、はるかに強力な阻害活性を示すことができる。本文脈における所望の修飾アミノ酸は、「遷移状態」の阻害剤として公知である。これらの化合物の強力な阻害活性は、その遷移状態の幾何学的配置における基質との構造的類似性に基づいているが、それらは一般に、酵素の活性部位に関して基質自体よりもはるかに高い親和性を有するように選択される。遷移状態の阻害剤は、可逆的で競合的な阻害剤である。このタイプの阻害剤の例は、ボロ−ロイシン、ボロ−バリン及びボロ−アラニンなどのαーアミノボロン酸誘導体である。これらの誘導体におけるホウ素原子は、アミノペプチダーゼ類による加水分解時のペプチド類の遷移状態に似ていると考えられている四面体ボロネートイオンを形成できる。これらのアミノ酸誘導体は、アミノペプチダーゼ類の効力のある可逆的阻害剤であり、ボロ−ロイシンは、酵素阻害においてベスタチンよりも100倍以上有効であり、プロマイシンよりも1000倍以上有効であると報告されている。強力なプロテアーゼ阻害活性が報告されている別の修飾アミノ酸は、アミノペプチダーゼNの酵素活性を阻害するN−アセチルシステインである。この補助剤はまた、本発明の方法及び組成物内で使用できる粘液溶解性を示し、粘液拡散バリヤーの作用を減少させる。
【0091】
プロテアーゼ阻害に好適な試剤は、EDTA及びDTPAの複合試剤であり、協調的投与された、又は組合せ製剤化された補助剤は、好適な濃度において選択されたプロテアーゼを十分に阻害し、それによって本発明によるインターフェロンベータ類の鼻腔内送達を増強させる。更にこのクラスの阻害剤の例示的ものは、EGTA、1.10−フェナントリン及びヒドロキシキノリンである。更に、二価カチオンをキレート化する性向のため、これら及び他の複合剤は、直接的吸収促進剤として本発明内において有用である。本明細書のいずれかの箇所でより詳細に記載されているように、本発明の協調的投与、多加工処理及び/又は組合せ製剤化法及び組成物内における酵素阻害剤としての種々のポリマー類、特に粘膜付着性ポリマー類の使用も考慮されている。例えば、ポリ(アクリル酸)及びポリカルボフィルなどのポリ(アクリレート)誘導体は、トリプシン、キモトリプシンなどの種々のプロテアーゼの活性に影響を及ぼし得る。これらのポリマー類の阻害作用もまた、Ca及びZnなどの二価カチオンの錯化に基づくと思われる。更に、これらのポリマー類は、上記の更なる酵素阻害剤に対する結合パートナー又は担体として寄与できることが考慮されている。例えば、亜鉛依存プロテアーゼの酵素活性に対して強力な阻害活性を示すキトサン−EDTA結合体が開発されており、本発明内において有用である。本文脈において他の酵素阻害剤の共役結合後のポリマー類の粘膜付着性が、実質的に損なわれるは考えられず、また本発明内のインターフェロンベータ類に関する送達媒体としてのこのようなポリマー類の一般的有用性が低下するとも考えられない。反対に、粘膜付着機構により得られる送達媒体と粘膜表面との間の距離の減少は、活性剤の全身前代謝を最少にしつつ、共有結合した酵素阻害剤は、薬物送達部位における濃縮を保ち、望ましくない阻害剤希釈作用及びそれによって引き起こされる毒性並びに他の副作用を最少にする。この様式で、希釈作用が排除されることから協調的に投与された酵素阻害剤の有効量を減少できる。
【0092】
毛様体静止剤と方法
粘膜毛様体の排除作用による一定の粘膜組織(例えば、鼻粘膜組織)の自己清浄能力は、保護的機能(例えば、ダスト、アレルゲン及び細菌を除去すること)として必要であることから、この機能が、粘膜投薬により実質的に害されてはならないことが一般に考慮されている。気道内の粘膜毛様体の輸送は、感染に対して特に重要な防御機構である。この機能を達成させるために、鼻及び気道通過における毛様体のビーティングにより、粘膜に沿って粘液層が移動し、吸入された粒子及び微生物が除去される。
【0093】
種々の報告は、粘膜毛様体の排除作用が、粘膜投与された薬物により、並びに透過エンハンサー及び保存剤を含む広範囲の製剤添加物により害される可能性があることを示している。例えば、2%又はそれ以上の濃度でのエタノールは、インビトロでのビーティング頻度を減少させることが示されている。これは、高濃度で毛様が静止するカルシウムイオンのフラックスを間接的に増強する膜透過性の増加によるか、又は毛様体静止応答に関与する制御タンパク質の毛様体軸糸又は作動に対する直接作用により、ある程度媒介され得る。例示的保存剤(メチル−p−ヒドロキシベンゾエート(0.02%及び0.15%)、プロピル−p−ヒドロキシベンゾエート(0.02%)、及びクロロブタノール(0.5%))は、カエル口蓋モデルにおいて毛様体活性を可逆的に阻害する。他の通常の添加物(EDTA(0.1%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)、クロルヘキシジン(0.01%)、フェニルイナーキュリックニトレート(0.002%)、及びフェニル水銀ボレート(0.002%)は、不可逆的に粘膜毛様体輸送を阻害することが報告されている。更に、STDHF、ラウレス−9、デオキシコレート、デオキシコール酸、タウロコール酸、及びグリココール酸を含む幾つかの透過エンハンサーは、モデル系において毛様体活性を阻害することが報告されている。
【0094】
毛様体静止因子に起因すると考えられる粘膜毛様体排除作用に対する副作用の可能性があるとはいえ、毛様体静止剤はなお、粘膜(例えば、鼻腔内)投与されたインターフェロン−βペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び本明細書に開示された他のインターフェロンベータ類の滞留時間を増加させるために本発明の方法及び組成物内で使用される。特に、本発明の方法及び粗製物内においてこれらの試剤の送達は、一定の態様において粘膜細胞の毛様体活性を可逆的に阻害するために機能する1種又はそれ以上の毛様体静止剤の協調的投与又は組合せ製剤により有意に増強され、粘膜投与された活性剤の滞留時間における一過性の可逆的増加を提供する。本発明のこれらの態様内における使用に関して、それらの活性において特異的又は間接的な前述の毛様体静止因子は全て、インターフェロン−βペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び本明細書に開示された他のインターフェロンベータ類の送達を、許容できない副作用なしで増強させるために粘膜投与部位における一過性(例えば、可逆的)の粘膜毛様体排除作用の減少又は停止を生じさせるように、適切な量(送達の濃度、時間及び様式に依る)において毛様体静止剤として首尾よく使用するための候補物である。
【0095】
界面活性剤と方法
本発明のより詳細な態様内において、1種又はそれ以上の膜透過増強剤は、インターフェロン−βペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び本明細書に開示された他のインターフェロンベータ類の粘膜送達を増強させるために、本発明の粘膜送達法又は製剤内で使用できる。本文脈における膜透過増強剤は:(i)界面活性剤、(ii)胆汁酸塩、(ii)リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、又は担体、(iii)アルコール、(iv)エナミン、(v)NOドナー化合物、(vi)長鎖両親媒性分子、(vii)小型疎水性透過エンハンサー;(viii)サリチル酸ナトリウム又は誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル、(x)シクロデキストリン又はベータ−シクロデキストリン誘導体、(xi)中鎖脂肪酸、(xii)キレート剤、(xiii)アミノ酸又はその塩、(xiv)N−アセチルアミノ酸又はその塩、(xv)脂肪酸合成阻害剤、又は(xvi)コレステロール合成阻害剤;又は(xi)(i)〜(xvi)に列挙された膜透過増強剤の任意の組合わせ、から選択できる。
【0096】
一定の界面活性剤は、本発明の粘膜送達用製剤及び方法内に粘膜吸収増強剤として容易に組み込まれる。インターフェロン−βペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び本明細書に開示された他のインターフェロンベータ類と協調的投与又は組合せ製剤化できるこれらの試剤は、広範囲集団の公知の界面活性剤から選択できる。界面活性剤は、一般に以下の3つのクラスのうちに入る:(1)非イオン性ポリオキシエチレンエーテル類;(2)ナトリウムグリココレート(SGC)及びデオキシコレート(DOC)などの胆汁酸塩類;及び(3)ナトリウムタウロジヒドロフシデート(STDHF)などのフシジン酸誘導体。
【0097】
本発明の一定の実施形態において、上記のインターフェロンベータ及び透過化剤は、1種又はそれ以上の粘膜送達増強剤と併用して投与される。本発明のより詳細な実施形態において、上記の製薬組成物は、鼻腔内投与用に製剤化される。例示的実施形態において、該製剤は、鼻腔内スプレー又は粉末として提供される。鼻腔内投与を増強させるために、これらの製剤は、インターフェロンベータ及び透過化剤を:
(a)凝集阻害剤;
(b)電荷改変剤;
(c)pH調節剤;
(d)分解性酵素阻害剤;
(e)粘液溶解剤又は粘液清浄化剤;
(f)毛様体静止剤;
(g)(i)界面活性剤、(ii)胆汁酸塩、(ii)リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、又は担体、(iii)アルコール、(iv)エナミン、(v)NOドナー化合物、(vi)長鎖両親媒性分子、(vii)小型疎水性透過エンハンサー;(viii)サリチル酸ナトリウム又は誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル、(x)シクロデキストリン又はベータ−シクロデキストリン誘導体、(xi)中鎖脂肪酸、(xii)キレート剤、(xiii)アミノ酸又はその塩、(xiv)N−アセチルアミノ酸又はその塩、(xv)脂肪酸合成阻害剤、又は(xvi)コレステロール合成阻害剤;又は(xvii)(i)〜(xvii)に列挙された膜透過増強剤の任意の組合わせ、から選択される膜透過増強剤;
(h)上皮接合部生理機能の第二の調節剤;
(i)血管拡張剤;
(j)選択的輸送増強剤;及び
(k)インターフェロンベータが、有効に組合わされ、会合し、含有され、カプセル化され又は結合して鼻腔内送達増強のために活性剤の安定化をもたらす安定化送達媒体、担体、支持体又は複合形成種から選択される1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤と組合わすことができ、前記1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤が、(a)〜(k)に列挙された前記鼻腔内送達増強剤のいずれか1つ又は2つ以上の組合せを含むことができ、前記インターフェロンベータと1種又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤との製剤により、哺乳動物対象の鼻粘膜表面に送達されたインターフェロンベータの生物学的利用能増大が提供される。本発明の代りの実施形態において、タンパク質又はポリペプチドである安定化剤の無い透過化剤及びインターフェロンベータを含む製薬組成物は、粘膜投与後に有効であり、対象に対して等しい濃度又は用量の活性剤の筋肉内投与後の血漿中又は脳脊髄液(CNS)中インターフェロンベータの濃度曲線下面積(AUC)と比較して、対象の血漿中又はCNS中インターフェロンベータのAUCが25%又はそれ以上となる。一定の実施形態において、対象に対して等しい濃度又は用量の活性剤の筋肉内投与後の血漿中又は脳脊髄液(CNS)中インターフェロンベータの濃度曲線下面積(AUC)と比較して、前記組成物により、対象の血漿中又はCNS中インターフェロンベータのAUCが約50%又はそれ以上となる。
【0098】
本発明の更なる実施形態において、透過化剤及びインターフェロンベータを含む製薬組成物は、粘膜投与後に有効であって、対象の血漿中又は脳脊髄液(CNS)中の前記インターフェロンベータの最大血漿中濃度までの時間(tmax)を約0.1時間から1.0時間の間にすることにより生物学的利用能を増大させる。一定の実施形態おいて、該組成物は、対象の血漿中又は脳脊髄液(CNS)中の前記インターフェロンベータの最大血漿中濃度までの時間(tmax)を約0.2時間から0.5時間の間にする。
【0099】
本発明の他の実施形態において、透過化剤及びインターフェロンベータを含む製薬組成物は、粘膜投与後に有効であって、例えば、対象の血漿中のインターフェロンベータのピーク濃度と比較して対象のCNS組織又は体液中のインターフェロンベータのピーク濃度(例えば、CNS及び血漿中濃度は、粘膜投与後、同じ対象において同時に測定される)を10%又はそれ以上にすることにより、CNS中の活性剤の生物学的利用能を増大させる。一定の実施形態において、本発明の組成物は、対象の血漿中の活性剤のピーク濃度と比較して、対象のCNS組織又は体液中のインターフェロンベータのピーク濃度を20%、40%又はそれ以上となる。
【0100】
生体接着剤の送達媒体及び方法
本発明の一定の態様において、本明細書における組合せ製剤及び/又は協調的投与法は、補助化合物又は担体として非毒性生体接着剤有効量を組み込んで、1種又はそれ以上のインターフェロンベータの粘膜送達を増強させる。
【0101】
本発明の同調的投与、及び/又は組合せ製剤化法並びに組成物内において特に有用な生体接着剤は、キトサン並びにその類縁体及び誘導体である。キトサンは、低毒性及び良好な生体適合性の好ましい性質のため、製薬及び医用適用に広範囲に用いられる非毒性で生体適合性かつ生分解性ポリマーである(非特許文献31)。それは、アリカリによるN−脱アセチル化によりキチンから調製された天然ポリアミノ糖類である。更に、キトサンは、動物モデル及びヒト志願者において鼻粘膜を経る小型の極性分子及びペプチド並びにタンパク質薬物の吸収を促進することが報告されている。
【0102】
本発明の方法及び組成物内で用いられるように、キトサンは、粘膜適用部位においてインターフェロン−βペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び本明細書に開示された他のインターフェロンベータ類の保持を増加させる。これは、表面からキトサンを物理的に除去した後でも上皮透過性に影響を及ぼし得る正電荷の特性によりある程度媒介されると考えられる。本明細書に提供された他の生体接着剤ゲルとしてのキトサンの使用は、有効な送達量又は用量を生じさせつつ投与されるインターフェロンベータの適用回数及び量を減少させることができる。この投与様式はまた、患者のコンプライアンス及び受容性を改善できる。キトサン及び他の生体接着剤ゲルの閉鎖及び潤滑化により、鼻粘膜の炎症性、アレルギー性及び潰瘍性状態の不快感が軽減されることが予想される。
【0103】
更に本明細書に提供されているように、本発明の方法及び組成物は、新規なキトサン誘導体又はキトサンの化学修飾体を任意に含む。本発明内に使用されるこのような新規な誘導体の1つは、β−[1→4]−2−グアニジノ−2−デオキシ−D−グルコースポリマー(ポリ−GuD)として表される。
【0104】
リポソーム類及びミセル送達媒体
本発明の協調的投与法及び組合せ製剤は、有効な脂質又は脂肪酸ベースの担体、加工処理剤、又は送達媒体を任意に組み込んで、インターフェロン−βペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び他のインターフェロンベータ類に関して改善された製剤が提供される。例えば、種々の製剤及び方法により、リポソーム、混合ミセル担体、又は乳濁剤と混合又はカプセル化されるか、又は協調的に投与されるペプチド又はタンパク質などのこれらの活性剤の1種以上を含む粘膜送達が提供され、粘膜送達の際のインターフェロンベータ類の化学物理的安定性が増強し、半減期が増加(例えば、タンパク質分解、化学的改変及び/又は変性を減少させることにより)する。
【0105】
本発明内に使用される更なる送達媒体としては、長鎖及び中鎖脂肪酸並びに脂肪酸との混合ミセル界面活性剤が挙げられる(例えば、非特許文献32を参照)。エステル類の形態での天然脂質の大部分は、粘膜表面を通過するそれら自体の輸送に関して重要な意味を有する。結合した極性基を有する遊離脂肪酸類及びそれらのモノグリセリド類は、混合ミセルの形態で透過エンハンサー類として腸管バリヤーに対して作用することが立証されている。遊離脂肪酸類(12個から20個までの炭素原子で変わる鎖長を有するカルボン酸類)及びそれらの極性誘導体のバリヤー改変機能のこの発見は、粘膜吸収エンハンサーとしてのこれらの試剤の適用についての広範囲の研究に刺激を与えている。
【0106】
本発明の方法内での使用に関して、長鎖脂肪酸類、特に融合性(fusogenic)脂質(オレイン酸、リノール酸、リノール酸、モノオレインなどの不飽和脂肪酸類及びモノグリセリド類)は、有用な担体を提供してインターフェロン−βペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び本明細書に開示された他のインターフェロンベータ類の粘膜送達を増強させる。中鎖脂肪酸類(C6からC12まで)及びモノグリセリド類はまた、腸管薬物吸収における増強活性を有することが示されており、本発明の粘膜送達用製剤及び方法内の使用に適合できる。更に、中鎖及び長鎖脂肪酸類のナトリウム塩は、本発明内のインターフェロンベータ類の粘膜送達のための有効な送達媒体及び吸収増強剤である。このように、脂肪酸類は、非毒性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチル化水素添加ひまし油、ナトリウムタウロコレートなどのナトリウム塩の可溶化形態で、又はそれらの添加により使用できる。天然不飽和長鎖脂肪酸類(オレイン酸又はリノール酸)及び胆汁酸塩類によるモノグリセリド類の混合ミセルは、腸管粘膜に対して基本的に無害な吸収増強能力を示すことが示されている(例えば、非特許文献33;及び非特許文献32を参照)。本発明内に有用である他の脂肪酸及び混合ミセル製剤としては、限定はしないが、グリココレート及びタウロコレートなどの胆汁酸塩類と任意に組合わされたNaカプリレート(C8)、Naカプレート(C10)、Naラウレート(C12)又はNaオレエート(C18)が挙げられる。
【0107】
良好な界面活性剤は、L−α−ホスファチジルコリンジデカノイル(DDPC)、ポリソルベート20(ツイーン20)、ポリソルベート80(ツイーン80)、ポリエチレングリコール(PEG)、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ラノリンアルコール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン及びソルビタンモノオレエートからなる群より選択される。
【0108】
可溶化剤を使用できるが、好ましいものは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン及びキトサンからなる群より選択される。
【0109】
本発明に使用できるキレート剤の例としては、デフェリプローン、デフェロキサミン、ジチオカルブナトリウム、ペニシラミン、ペンテト酸カルシウム三ナトリウム、ペンテト酸、スクシマー、トリエンチン、及びEDTA(エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸ナトリウム及びエデト酸三ナトリウムを含む)
が挙げられる。
【0110】
PEG化
本発明内に提供された更なる方法及び組成物には、ポリマー物質、例えば、デキストラン類、ポリビニルピロリドン類、グリコペプチド類、ポリエチレングリコール及びポリアミノ酸類を含む。生じた結合ペプチド類及びタンパク質は、粘膜投与に関して生物活性及び溶解性を保持する。代りの実施形態において、インターフェロン−βペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び他の生物活性ペプチド類並びにタンパク質は、ポリアルキリレンオキシドポリマー類、特にポリエチレングリコール(PEG)に結合する(特許文献1)。文献における多数の報告が、タンパク質分解に対する耐性の増加、血漿中半減期の増加、溶解性の増加及び抗原性及び免疫原性の減少をしばしば示すpeg化ペプチド類及びタンパク質の利益可能性を記載している(非特許文献34;非特許文献35)。
【0111】
製剤及び投与
本発明の粘膜送達用製剤は、典型的に組合わされて1種又はそれ以上の製薬的に許容できる担体及び任意に他の治療成分と投与されるインターフェロンベータ(例えば、1種又はそれ以上のインターフェロン−βペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び本明細書に開示された他のインターフェロンベータ類)を含む。該担体は、製剤の他の成分に適合し、対象における許容できない有害作用を誘発しないという意味で「製薬的に許容でき」なければならない。このような担体は、本明細書の上記に記載されているか、他に薬理学の当業者に周知である。望ましくは、製剤は、投与されるインターフェロンベータが不適合であると知られている酵素又は酸化剤などの物質を含んではならない。該製剤は、製薬業界に周知の任意の方法により調製できる。
【0112】
本発明による組成物は、鼻内スプレーとして水溶液で投与されることが多く、当業者に公知の種々の方法によるスプレー形態で投薬できる。例としては、Ing.Erich Pfeiffer GmbH、Radolfzell、ドイツ国により製造されたアクチュエータが挙げられる。特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;特許文献7;及び特許文献8を参照されたい。更なるエアゾール送達形態としては、例えば、圧縮空気−、ジェット−、超音波−、及び圧電ネブライザが挙げられ、それらは、製薬溶剤、例えば、水、エタノール、又はそれらの混液に溶解又は懸濁されたインターフェロンベータを送達する。
【0113】
本発明の鼻内及び肺用スプレー溶液は、典型的に非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート−80)、1種又はそれ以上の緩衝剤などの界面活性剤により任意に製剤化された薬物又は投与される薬物を含む。本発明の幾つかの実施形態において、鼻内スプレー溶液は、更に噴射剤を含む。鼻内スプレー溶液のpHは、pH6.8と7.2との間の任意pHであるが、所望の場合、pHは、非イオン化状態で充填された高分子種(例えば、治療用タンパク質又はペプチド)の送達を最適化するために調整される。使用される製薬用溶媒は、僅かに酸性の水性緩衝液(pH4〜6)であり得る。これらの組成物内における使用に好適な緩衝剤は、上記のものであるか、他に当業界に公知のものである。保存剤、界面活性剤、分散剤、又はガスなどの他の成分は、化学的安定性を増強するか、又は維持するために添加される。好適な保存剤としては、限定はしないが、フェノール、メチルパラベン、パラベン、m−クレゾール、チオメルサール、塩化ベンジルアルコニウムなどが挙げられる。好適な界面活性剤としては、限定はしないが、オレイン酸、ソルビタントリオレエート、ポリソルベート類、レシチン、ホスホチジルコリン類、及び種々の長鎖ジグリセリド類並びにリン脂質類が挙げられる。好適な分散剤としては、限定はしないが、エチレンジアミン四酢酸などが挙げられる。好適なガスとしては、限定はしないが、窒素、ヘリウム、クロロフルオロ炭素(CFC)類、ヒドロフルオロ炭素(HFC)類、二酸化炭素、空気などが挙げられる。
【0114】
本発明内の粘膜送達用組成物を製剤化するために、インターフェロンベータは、種々の製薬的に許容できる添加物並びに活性剤を分散させるための基剤又は担体と組合わせることができる。望ましい添加物としては、限定はしないが、アルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸などのpH調節剤が挙げられる。更に、局所麻酔剤(例えば、ベンジルアルコール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール)、吸着阻害剤(例えば、ツイーン80)、溶解増強剤(例えば、シクロデキストリン類及びそれらの誘導体)、安定化剤、及び還元剤(例えば、グルタチオン)を含むことができる。粘膜送達用組成物が液体である場合、均一に溶かされた0.9%(w/v)生理食塩液の等張性を基準にして測定される製剤の等張性は、投与部位において実質的な不可逆的な組織損傷が鼻粘膜に誘導されない値へと典型的に調整される。一般に、溶液の等張性は、約1/3から3、より典型的には1/2から2、最も多くは3/4から1.7に調整される。
【0115】
インターフェロンベータは、活性剤及び任意の所望の添加物を分散させる能力を有する親水性化合物を含むことができる基剤又は媒体に分散できる。該基剤は、限定はしないが、ポリカルボン酸類又はそれらの塩類、カルボン酸無水物(例えば、マレイン酸無水物)と他のモノマー類(例えば、メチル(メタ)クリレート、アクリル酸など)とのコポリマー類、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの親水性ビニルポリマー類、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、キトサン、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒアルロン酸、及びそれらの非毒性金属塩などの天然ポリマー類など、広範囲の好適な担体から選択できる。生分解性ポリマーは、基剤又は担体として、例えば、ポリ酢酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマー、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸−グリコール酸)コポリマー及びそれらの混合物から選択されることが多い。或いは又は更に、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類などの合成脂肪酸エステル類が担体として使用できる。親水性ポリマー類及び他の担体は、単独で又は組合わせて使用でき、部分的結晶化、イオン結合、架橋などにより担体に構造的統合性の増大を付与できる。該担体は、鼻粘膜への直接適用のために、流体又は粘稠液、ゲル、ペースト、粉末、ミクロスフェア及びフィルムなど種々の形態で提供できる。本文脈における選択された担体の使用により、インターフェロンベータの吸収促進をもたらすことができる。
【0116】
該インターフェロンベータは、種々の方法に従って基剤又は担体と組合わせることができ、担体の分散、崩壊、又は水チャネルの会合製剤により活性剤を放出させることができる。幾つかの環境において、該活性剤は、好適なポリマー、例えば、イソブチル2−シアノアクリレート(例えば、非特許文献36を参照)から調製されたミクロカプセル(ミクロスフェア)又はナノカプセル(ナノスフェア)に分散され、また、長時間にわたる持続送達及び生物活性をもたらす、鼻粘膜に適用された生体適合性分散媒体に分散される
【0117】
更に本発明内の薬剤の粘膜送達を増強させるために、活性剤を含む製剤はまた、基剤又は賦形剤として親水性低分子量化合物を含有できる。このような親水性低分子量化合物により、生理活性ペプチド又はタンパク質などの水溶性活性剤が、活性剤を吸収する体表面に基剤を通して拡散できる通過媒体が提供される。該親水性低分子量化合物は、粘膜又は投与環境から水分を任意に吸収し、水溶性活性ペプチドを溶解する。例示的親水性低分子量化合物としては、ショ糖、マンニトール、乳糖、L−アラビノース、D−エリトロース、D−リボース、D−キシロース、D−マンノース、D−ガラクトース、ラクツロース、セロビオース、ゲンチビオース、グリセリン及びポリエチレングリコールなどのオリゴ糖類、二糖類及び単糖類が挙げられる。本発明内の担体として有用な親水性低分子量化合物の他の例としては、N−メチルピロリジン、及びアルコール類(例えば、オリゴビニルアルコール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)が挙げられる。これらの親水性低分子量化合物は、単独で又は別のものと、或いは鼻腔内製剤の他の活性又は不活性成分と組合わせて使用できる。
【0118】
或いは、本発明の組成物は、pH調節剤及び緩衝剤、等張性調整剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなど、凡そ生理的条件に必要とされる製薬的に許容できる担体物質として含有できる。固体組成物には、例えば、製薬グレードのマンニトール、乳糖、澱粉、ステリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなど、従来の非毒性の製薬的に許容できる担体が使用できる。
【0119】
インターフェロンベータを投与するための治療用組成物はまた、高濃度の有効成分に好適な溶液、ミクロ乳濁液、又は他の秩序構造として製剤化できる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及び好適なそれらの混液を含有する溶媒又は分散媒体であり得る。溶液に関して適切な流体は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散性製剤の場合は所望の粒径維持により、及び界面活性剤の使用により維持できる。多くの場合、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリオール類、又は塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物に含むことが望ましいであろう。吸収を遅延させる試剤、例えば、モノステアリン酸塩類及びゼラチンを組成物に含ませることにより、インターフェロンベータの吸収延長をもたらすことができる。
【0120】
本発明のより詳細な態様において、対象への送達後、その有効な半減期を延長させるために、特に生理的環境内(例えば、鼻粘膜表面で、血流中、或いは結合組織コンパートメント又は体液で満たされた体腔内で)の活性状態における代謝持続性を延長させるために、インターフェロンベータを安定化させる。
【0121】
投薬量
予防及び治療目的のために、本明細書に開示されたインターフェロンベータ類は、長時間にわたって連続投与(例えば、連続経皮送達、粘膜送達、又は静脈内送達)による単独ボーラス送達、又は反復投与プロトコル(例えば、1時間ごと、1日ごと、1週ごとの反復投与プロトコル)で対象に投与できる。本文脈において、インターフェロンベータ類の治療的に有効な投薬量は、持続的な予防措置又は治療措置内で反復用量を含むことができ、これにより、上記の標的疾患又は病態と関連する1つ又はそれ以上の症状又は検出可能な病態を緩和する臨床的に有意な結果が生じる。本文脈における有効投薬量の決定は、典型的には動物モデル試験、次いでヒト臨床試験に基づいており、対象における標的疾患症状又は病態の発生又は重症度を有意に減少させる有効投薬量及び投与プロトコルを決定することにより導かれる。これに関して好適なモデルとしては、例えば、マウス、ラット、ブタ、ネコ、非ヒト霊長類、当業界に公知の許容される他の動物モデル対象が挙げられる。或いは、有効な投薬量は、インビトロモデル(例えば、免疫学的アッセイ及び組織病理学的アッセイ)を用いて決定できる。このようなモデルを用いて、インターフェロンベータ類の治療的有効量(例えば、所望の応答を誘発する上で有効な鼻腔内量、有効な経皮量、有効な静脈内量、又は有効な筋肉内量)を投与するための適切な濃度及び用量を決定するのに必要となるのは、典型的に通常の算出及び調整のみである。代りの実施形態において、インターフェロンベータ類の「有効量」又は「有効用量」は、治療目的又は診断目的のいずれかに関して、上記の疾患又は病態と相関する1つ又はそれ以上の選択された生物活性のみを阻害できるか、又は増強できる。
【0122】
インターフェロンベータ類の実際の投薬量はもちろん、疾患の徴候及び対象の具体的状態(例えば、対象の年齢、サイズ、適応度、症状の程度、感受性因子など)、投与時間と経路、同時投与される他の薬物又は治療、並びに対象における所望の活性又は生物学的応答を誘発するためのインターフェロンベータ類の特定の薬理学などの因子によって変わり得る。投与計画は、最適の予防又は治療応答を提供するために調整できる。治療的有効量はまた、インターフェロンベータの臨床観点で治療的有益効果が、毒性又は有害な副作用よりも勝る量である。本発明の方法及び製剤内のインターフェロンベータの治療的有効量に関する非限定範囲は、0.01μg/kg〜10mg/kg、より典型的には約0.05mg/kgから5mg/kgの間、一定の実施形態において約0.2mg/kgから2mg/kgの間である。この範囲内の投薬量は、例えば、1日当り複数回投与、毎日又は毎週の投与などの単回又は複数回投与により達成できる。投与ごとに、平均的なヒト対象に対して少なくとも1マイクログラムのインターフェロンベータ(例えば、1種又はそれ以上のインターフェロンベータペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び他のインターフェロンベータ類)、より典型的には10μgから5.0mgの間、一定の実施形態において約100μgから1.0mg又は2.0mgの間で投与することが望ましい。具体的な各々の対象に関して、特定の投与計画を、個々の必要性及び透過化ペプチド類と他のインターフェロンベータ類の投与実施者又は投与監督者の専門的判定により経時的に評価し、調整すべきであることを更に注意すべきである。
【0123】
標的部位における所望の濃度を維持するためのインターフェロンベータ類の投薬量は、担当臨床医によって変わり得る。例えば、血流中又はCNS中のインターフェロンベータの選択された局所濃度は、対象の状態及び予測又は測定応答に依って1リットル当り約1〜50ナノモル、時には1リットル当り約1.0ナノモル、1リットル当り約10、15又は25ナノモルであり得る。送達様式、例えば、静脈内送達又は皮下送達に対する経表皮、直腸、経口、又は鼻腔内送達に基づいてより高濃度又は低濃度を選択できる。投薬量はまた、投薬製剤、例えば、散剤に対する経鼻スプレー、注射微粒子又は経表皮送達製剤に対する持続性放出経口製剤などの放出率に基づいて調整すべきである。同じ血清中濃度を達成するために、例えば、5ナノモルの放出率(標準的条件下で)を有する徐放性粒子は、10ナノモルの放出率を有する粒子の投薬量の約2倍投与されることになろう。
【0124】
本発明内の使用のために選択されたインターフェロンベータに関する特定の投薬量に関する更なる指針は、広範にわたる文献に見ることができる。これは、本明細書に開示された多くの治療用ペプチド剤及びタンパク質剤に当てはまる。
【0125】
キット
本発明はまた、上記の製薬組成物、有効成分、及び/又は哺乳動物対象における疾患及び他の病態の予防及び治療の使用に前記のものを投与する手段を含有するキット、パッケージ及び複数容器ユニットを含む。手短に言うと、これらのキットには、粘膜投与用製薬製剤中に製剤化された1種又はそれ以上のインターフェロンベータペプチド類、タンパク質、類縁体並びに模倣体、及び本明細書に開示された他のインターフェロンベータ類を含有する容器又は製剤を含む。インターフェロンベータ類は、任意にバルク小出し容器又は単位剤形或いは多単位剤形に含まれる。任意の小出し手段は、例えば、肺又は 鼻腔内スプレーアプリケータにより提供できる。パッケージング材料は、それにパッケージされた製剤が具体的な疾患又は病態を治療又は予防するために、粘膜に、例えば、鼻腔内に使用できることを示すラベル又は取扱い説明書を任意に含む。
【0126】
インターフェロンベータのエアゾール経鼻投与
インターフェロンベータ結合ペプチド類が、経鼻スプレー又はエアゾールを用いて鼻腔内に投与できることを、我々は発見した。多くのタンパク質及びペプチド類が、スプレー又はエアゾールを発生するアクチュエータにより生じた機械力のため、せん断され又は変性されることを示していたため、これは驚くべきことである。この領域において、以下の定義が有用である。
【0127】
1.エアゾール−圧力下でパッケージされ、適切なバルブシステム起動の際に放出される治療的有効成分を含有する製品。
2.計量エアゾール−各起動の際に均一量のスプレーの送達を可能にする計量用量バルブからなる加圧投薬。
3.粉末エアゾール−圧力下でパッケージされ、適切なバルブシステムの起動の際に放出される粉末形態における治療的有効成分を含有する製品。
4.スプレーエアゾール−湿性スプレーとして製品を噴射するのに必要な力を提供するために噴射剤として加圧ガスを利用するエアゾール製品;これは一般に、水性溶媒中の薬剤溶液に適用できる。
5.スプレー−空気又は蒸気噴射により微細に分割された液体。経鼻スプレー医薬品は、溶液中に溶解又は懸濁させた治療的有効成分又は非加圧ディスペンサー中の賦形剤の混合物を含有する。
6.計量スプレー−各起動時に特定量のスプレーの小出しを可能にするバルブからなる非加圧剤形。
7.懸濁スプレー−液体媒体中、液滴単位の形態で又は微細に分割された固体として分散させた固体粒子を含有する液体製剤。
【0128】
薬物送達装置(「DDD」)として計量経鼻スプレーにより放出されるエアゾールスプレーの流体動的特性。スプレー特性化は、新規及び既存の経鼻スプレーポンプに関する研究と開発、品質保証と安定性試験法の食品医薬品局(「FDA」)承認に必要な行政提出物の不可欠な部分である。
【0129】
スプレーの幾何学的形状の完全な特性化は、経鼻スプレーポンプの総合的性能の最良の指標であることが分かっている。特に、装置を抜け出るスプレーの開き角(プルームの幾何学的形状);スプレーの断面楕円率、均一性及び粒子/液滴分布(スプレーパターン);及び発生スプレーの時間的進展は、経鼻スプレーポンプの特徴化において最も例示的性能量であることが分かっている。品質保証及び安定性試験中、プルームの幾何学的形状及びスプレーパターン測定は、経鼻スプレーポンプに関する承認データ評価基準との一致及び適合性を立証するための重要な識別子である。
【0130】
定義
プルームの高さ−アクチュエータチップから、プルーム角度が線流破壊のため非線形となる点までの測定。デジタル画像の視覚試験に基づき、またスプレーパターンの最も遠い測定点に一致する幅に関して測定点を確立するために、この試験には30mmの高さが規定される。
【0131】
長軸−基本単位(mm)におけるCOMwを交差する取付けスプレーパターン内に描くことができる最大弦。
【0132】
短軸−基本単位(mm)におけるCOMwを交差する取付けスプレーパターン内に描くことができる最小弦。
【0133】
楕円率比−長軸対短軸比。
【0134】
10−サンプルの全液体量の10%が、より小さな直径(μm)の液滴からなる液滴の直径。
【0135】
50−サンプルの全液体量の50%が、より小さな直径(μm)の液滴からなる液滴の直径、質量平均直径としても知られている。
【0136】
90−サンプルの全液体量の90%が、より小さな直径(μm)の液滴からなる液滴の直径。
【0137】
スパン−分布幅の測定値。値が小さいほど、分布が狭くなる。スパンは
90−D10
50
として算出される。
【0138】
%RSD−パーセント相対標準偏差、シリーズの平均値により割って、100を掛けた標準偏差、%CVとしても知られている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0139】
以下の実施例は、例示目的として提供されるものであって限定されるものではない。
実施例1
タンパク質又はポリペプチドである安定化剤の無い鼻腔内ベータインターフェロン−β(IFN−β)の調製
【0140】
鼻腔内インターフェロンベータ−1aの4つの製剤を調製し、下記に掲げた各々の製剤においてインターフェロンベータの透過パーセンテージを測定するために透過アッセイにおいて試験した。
【0141】
配合1は、50μg/mLのインターフェロンベータ−1a濃度、pH4.8及び250の算出浸透圧を有するインターフェロンベータ−1a(AVONEX(登録商標)、Biogen、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)の水溶液から構成された。
【0142】
配合2は、50μg/mLのインターフェロンベータ−1a濃度、4.5mg/mLのメチル−ベータシクロデキストリン、1mg/mLのEDTA、1mg/mLのDDPC、pH4.8及び300の算出浸透圧を有するインターフェロンベータ−1a(AVONEX(登録商標)、Biogen、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)の水溶液から構成された。
【0143】
配合3は、50μg/mLのインターフェロンベータ−1a濃度、15mg/mLのヒト血清アルブミン、pH4.8及び250の算出浸透圧を有するインターフェロンベータ−1a(AVONEX(登録商標)、Biogen、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)の水溶液から構成された。
【0144】
配合4は、50μg/mLのインターフェロンベータ−1a濃度、4.5mg/mLのメチル−ベータシクロデキストリン、1mg/mLのEDTA、1mg/mLのDDPC、15mg/mLのヒト血清アルブミン、pH4.8及び300の算出浸透圧を有するインターフェロンベータ−1a(AVONEX(登録商標)、Biogen、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)の水溶液から構成された。
【0145】
本発明の粘膜送達増強剤又は組合せ製剤の協調的投与と関連させた活性剤の透過増強を評価するための試験材料としてのインターフェロンベータ類の濃度を決定する方法は、一般に上記のとおりであり、また、公知の方法及び各々特定のアッセイに使用されるELISAキットの具体的な製造元の取扱い説明書に従う。インターフェロンベータの透過動態は、インターフェロンベータを頂端上皮細胞表面と接触させた後(頂端細胞表面の粘膜送達増強剤への曝露と同時であっても、又はその後であってもよい)、複数の時点(例えば、15分、30分、60分及び120分)で測定することにより一般に判定される。
【0146】
EpiAirway(登録商標)組織膜は、フェノールレッド及び無ヒドロコーチゾン培地(MatTek社、Ashland、マサチューセッツ州)中で培養する。該組織膜を48時間37℃で培養し組織を平衡化させる。各組織膜を、0.9mLの無血清培地を含有する6ウェルプレートの個々のプレートに入れる。100μLの製剤(試験サンプル又は対照)を、膜の頂端表面に塗布する。各試験サンプルの三通り又は四通りのサンプル(インターフェロンベータ、インターフェロン−βと組合わせた粘膜増強剤)及び対照(インターフェロンベータ、インターフェロン−β、単独)を、各アッセイにおいて評価する。各時点(例えば、15分、30分、60分及び120分)で、該組織膜を新鮮な培地を含有する新しいウェルに移す。基礎をなす0.9mLの培地サンプルを、各時点で収穫し、ELISA及びラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイにおける使用のために4℃で保存する。
【0147】
ELISAキットは、典型的には2段階のサンドイッチELISAであり:試験される試剤の免疫反応体は、96ウェルのマイクロプレート上で固定された抗体により最初に「捕捉」され、ウェルからの未結合物質を洗浄後、「検出用」抗体を結合免疫反応試剤と反応させる。この検出用抗体を、酵素(最も多くの場合、西洋ワサビペルオキシダーゼ)に結合し、次いで免疫複合体においてプレートに結合した酵素量は、その活性を色素産生剤とアッセイすることにより測定する。透過動態試験の各時点で採取された培地上澄液のサンプルに加えて、動態試験の開始時にユニットの頂端表面に塗布された製剤(すなわち、題材の生物活性試験試剤)の適切に希釈されたサンプルもまた、製造元より提供された標品と共にELISAプレート中でアッセイする。各培地上澄液サンプルを、ELISA(四通りのユニットを透過動態測定における各製剤に使用し、4つの時点全てにわたって採取された全部で16の培地上澄液サンプルの生成が想起される)により二重反復試験用ウェル中で一般にアッセイする。
【0148】
A.培地上澄液サンプル又はユニットの頂端表面に塗布された物質の希釈サンプル中の試験活性剤の明らかな濃度が、ELISAの完了後、標品の濃度範囲外にあることは珍しいことではない。実験サンプルに存在する物質の濃度は、標品の濃度を超えて外挿法によっては判定されず;サンプルを適切に再希釈して、反復ELISAにおける標品間での内挿法により、より正確に判定できる試験材料の濃度にする。
【0149】
B.生物活性試験試剤、例えば、インターフェロン−βに関するELISAは、そのデザインがユニークであり、推奨されるプロトコルである。大部分のキットとは異なり、ELISAは、検出用抗体(この抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合される)として2種のモノクローナル抗体、1つは捕捉用、他は、生物活性試験試剤、例えば、インターフェロン−βに関する非重なりの決定因子に特異的なものを使用する。アッセイの上限下にあるIFN−βの濃度が実験サンプルに存在する限り、該アッセイプロトコルは、製造元の取扱い説明書に従って使用でき、同時に存在する双方の抗体と共に、ELISAプレート上でサンプルをインキュベーションすることが可能になる。サンプル中のIFN−βレベルがこの上限よりも有意に高い場合、免疫反応IFN−βのレベルは、インキュベーション混合物における抗体量を超えることがあり得、結合した検出用抗体を有さないIFN−βはプレート上で捕捉されるが、結合した検出用抗体を有するIFN−βは捕捉され得ない。これによって、サンプル中のIFN−βレベルの重大な過小評価に至る(このようなサンプル中のIFN−βレベルは、有意にアッセイの上限下になる)。この可能性を除去するために、アッセイプロトコルが修正されている:
【0150】
B.1.希釈されたサンプルを、最初に固定された捕捉抗体を含有するELISAプレート上、検出用抗体の不在下で1時間インキュベートする。1時間インキュベートした後、未結合物質が無いようウェルを洗浄する。
【0151】
B.2.該検出用抗体は、プレート上で1時間インキュベートし、捕捉された全ての抗原との免疫複合体を形成させる。検出用抗体の濃度は、捕捉用抗体により結合させたIFN−βの最大濃度で反応させる上で十分な濃度である。次いでこのプレートを再度洗浄して未結合検出用抗体を除去する。
【0152】
B.3.ペルオキシダーゼ基質をプレートに添加し、15分間インキュベートして発色させる。
【0153】
B.4.「停止」溶液をプレートに加え、VMaxマイクロプレート分光光度計において450nm並びに490nmでの吸光度を読み取る。490nmでの着色物の吸光度は、450nmにおけるものよりもかなり弱いが、それにもかかわらず各波長での吸光度は、産物濃度と比例している。2つの読取りは、吸光度がVMax装置の作業範囲にわたり(我々は、0から2.5ODまでの範囲をルーチンに限定しているが、該装置は、0から3.0ODまでの範囲にわたり正確であると報告されている)結合IFN−β量に直線的に関連していることを保証している。サンプル中のIFN−β量は、ELISAに含まれる異なる標品に対して得られるOD値間の内挿により決定される。標品に関して得られた範囲外のOD読取りを有するサンプルは再希釈し、ELISAを反復して操作する。
【0154】
結果
下記は、1時間の時点での細胞バリヤーを透過するインターフェロンベータ量を検出する2つの異なるELISAアッセイを用いた各製剤に関するインターフェロンベータの透過パーセントである。
【0155】
Fujirebio社のELISAキットの結果
平均透過%
配合1 0.0033088
配合2 0.531863
配合3 0.0034314
配合4 0.379902
【0156】
PBL Biomedical Lab
平均透過%
配合1 0.01612485
配合2 0.5267601
配合3 0.007607575
配合4 0.1359906
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1A】嵌入前の経鼻スプレー装置10を示す図であり、経鼻スプレーボトル10は、経鼻用インターフェロンベータ結合ペプチド製剤が入っているボトル12、及びアクチュエータ14からなる。
【図1B】嵌入後の経鼻スプレー装置10を示す図であり、経鼻スプレーボトル10は、経鼻用インターフェロンベータ結合ペプチド製剤が入っているボトル12、及びアクチュエータ14からなり、起動させるか、又は嵌入させると、インターフェロンベータ結合ペプチドはボトル12からアクチュエータ14を通ってスプレープルーム16が押し出される。スプレーパターンは、プルームの予め決められた高さ18上のスプレープルーム16の断面を撮影することにより判定され、スプレープルームはまた、アクチュエータ14を離れる際に放出角度20を有する。
【図2】スプレープルーム16のスプレーパターンを示す図であり、スプレーパターン22は、楕円形であり、長軸24と短軸26を有する。
【符号の説明】
【0158】
10 経鼻スプレー装置
12 ボトル
14 アクチュエータ
16 スプレープルーム
18 プルームの予め決められた高さ
20 放出角度
22 スプレーパターン
24 長軸
26 短軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロン−β及び可溶化剤からなる鼻腔内インターフェロン−β製剤であって、前記製剤がタンパク質又はポリペプチドである安定化剤が無いことを特徴とする、鼻腔内インターフェロン−β製剤。
【請求項2】
請求項1に記載の製剤において、前記可溶化剤が、シクロデキストリン、α−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストラン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストラン、メチル−β−シクロデキストリン及びキトサンからなる群より選択されることを特徴とする、製剤。
【請求項3】
請求項2に記載の製剤において、前記可溶化剤が、メチル−β−シクロデキストランであることを特徴とする、製剤。
【請求項4】
請求項1に記載の製剤が、更に界面活性剤からなることを特徴とする、製剤。
【請求項5】
請求項4に記載の製剤において、前記界面活性剤が、L−α−ホスファチジルコリンジデカノイル(DDPC)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール(PEG)、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ラノリンアルコール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン及びソルビタンモノオレエートからなる群より選択されることを特徴とする、製剤。
【請求項6】
請求項5に記載の製剤において、前記界面活性剤が、DDPCであることを特徴とする、製剤。
【請求項7】
請求項1に記載の製剤が、更にキレート剤からなることを特徴とする、製剤。
【請求項8】
請求項6に記載の製剤において、前記キレート剤が、デフェリプローン、デフェロキサミン、ジチオカルブナトリウム、ペニシラミン、ペンテテートカルシウムトリナトリウム、ペンテト酸、スクシマー、トリエンチン、及びEDTAからなる群より選択されることを特徴とする、製剤。
【請求項9】
請求項6に記載の製剤において、前記キレート剤が、EDTAであることを特徴とする、製剤。
【請求項10】
請求項3に記載の製剤が、更に水からなることを特徴とする、製剤。
【請求項11】
請求項10に記載の製剤において、前記製剤が、3から約7のpHを有することを特徴とする、製剤。
【請求項12】
請求項11に記載の製剤において、前記pHが、4から約5であることを特徴とする、製剤。
【請求項13】
請求項3に記載の製剤において、更に1種又はそれ以上の徐放性増強剤を含むことを特徴とする、製剤。
【請求項14】
請求項13に記載の製剤において、前記徐放性増強剤が、ポリエチレングリコール(PEG)であることを特徴とする、製剤。
【請求項15】
請求項3に記載の製剤において、前記インターフェロン−βが、約30μgから250μgの間の有効投与量単位で製剤化されることを特徴とする、製剤。
【請求項16】
請求項3に記載の製剤において、1種又はそれ以上のステロイド又はコルチコステロイド化合物を更に含み、前記製剤が、粘膜投与後に有効であり、炎症、鼻過敏、鼻炎、又はアレルギーの1つ又はそれ以上の症状を軽減させることを特徴とする、製剤。
【請求項17】
請求項3に記載の製剤において、1種又はそれ以上のステロイド又はコルチコステロイド化合物を更に含み、前記組成物が、粘膜投与後に有効であり、自己免疫疾患又はウィルス感染の1つ又はそれ以上の症状を軽減させることを特徴とする、製剤。
【請求項18】
請求項3に記載の製剤において、上皮細胞層を通過する透過性が、ヒト血清アルブミンを含む単純な水性製剤よりも4倍から7倍増強されることを特徴とする、製剤。
【請求項19】
鼻腔内投与用水性インターフェロン−β−製剤が、インターフェロンベータ、DDPC、EDTA及びメチル−β−シクロデキストリン、約4から約5の間のpHからなる製剤であって、前記製剤が、タンパク質又はポリペプチドである安定化剤が無いことを特徴とする、製剤。
【請求項20】
インターフェロンベータ及び可溶化剤からなる鼻腔内インターフェロン−β製剤であって、前記製剤は、タンパク質又はポリペプチドである安定化剤が無く、患者の鼻への投与後、約0.1時間から約1.0時間の間のTmaxで患者の血漿中にインターフェロン−β化合物を提供することを特徴とする、製剤。
【請求項21】
請求項20に記載の製剤において、前記患者の血漿中の前記ヒトインターフェロン−β化合物のピーク濃度と比較して、前記患者への粘膜投与後の前記製剤が、10%又はそれ以上である前記患者の前記CNS組織又は体液中の前記ヒトインターフェロン−β化合物ピーク濃度を生じることを特徴とする、製剤。
【請求項22】
有効量のインターフェロン−β及び可溶化剤を含む薬剤の経粘膜投与を含み、患者の自己免疫疾患又はウィルス疾患を治療するための薬剤の製造におけるインターフェロン−βの使用であって、前記薬剤がタンパク質又はポリペプチドである安定化剤が無いことを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項23】
請求項22に記載のインターフェロン−βの使用において、前記投与が、鼻腔内送達によることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項24】
請求項23に記載のインターフェロン−βの使用において、前記薬剤が、前記患者による反復自己投与のための複数投与量単位キット又は容器で提供されることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項25】
請求項24に記載のインターフェロン−βの使用において、延長された投与期間の間、インターフェロン−βの治療に有効なベースラインレベルを維持するために、前記患者に対する前記薬剤の、毎日又は週1回のスケジュールの複数回投与を含む鼻腔内に有効な投与計画により、反復して投与されることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項26】
請求項25に記載のインターフェロン−βの使用において、8時間から24時間の延長された投与期間の間、インターフェロン−βの治療に有効なベースラインレベルを維持するために、前記薬剤が、1日2回から6回の間で、前記患者により自己投与されることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項27】
請求項22に記載のインターフェロン−βの使用において、インターフェロン−βの等しい濃度又は用量の前記患者への筋肉内注射後の血漿中又はCNS中のインターフェロン−βのピーク濃度と比較して、前記投与が、粘膜投与後の前記患者の血漿、又は中枢神経系(CMS)組織、或いは体液中の前記インターフェロン−βの25%又はそれ以上のCmaxを生じることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項28】
請求項27に記載のインターフェロン−βの使用において、インターフェロン−βの等しい濃度又は用量の前記患者への筋肉内注射と比較して、前記粘膜投与が、血漿又は中枢神経系(CMS)組織或いは体液中の前記インターフェロン−βの25%又はそれ以上の濃度曲線下面積(AUC)を生じることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項29】
請求項27に記載のインターフェロン−βの使用において、粘膜投与が、約0.1時間から約1.0時間以内で患者の血漿又はCNS中の前記インターフェロン−βのTmaxを生じることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項30】
請求項27に記載のインターフェロン−βの使用において、患者の血漿中の前記ヒトインターフェロン−βのピーク濃度と比較して、前記投与が、患者のCNS中の前記ヒトインターフェロン−βの10%又はそれ以上のピーク濃度を生じることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項31】
請求項22に記載のインターフェロン−βの使用において、前記薬剤が、複数の粘膜送達増強剤を更に含むことを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項32】
請求項31に記載のインターフェロン−βの使用において、前記薬剤が、徐放性増強剤を更に含むことを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項33】
請求項32に記載のインターフェロン−βの使用において、前記徐放性増強剤が、ポリエチレングリコール(PEG)であることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項34】
請求項22に記載のインターフェロン−βの使用において、前記インターフェロン−βが、約30μgから250μgの間の有効な投与量単位で製剤化されることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項35】
請求項22に記載のインターフェロン−βの使用において、前記患者における慢性B型肝炎、尖圭コンジローマ、喉頭又は皮膚のパピローマウィルスのいぼ、又は小児ウィルス性脳炎の1つ又はそれ以上の症状を軽減させるために有効であることを特徴とする、インターフェロン−βの使用。
【請求項36】
容器中のインターフェロン−βの水性製剤、及び前記容器に結合し、容器中の溶液に流動的に接続した液滴生成アクチュエータを含む経鼻用薬物送達用の製薬キットであって、前記製剤には、タンパク質又はポリペプチドである安定化剤が実質的に無く、前記アクチュエータがかみ合わされる場合、前記アクチュエータは、前記アクチュエータのチップを通して製剤のスプレーを生じ、アクチュエータチップから3.0cmの高さで測定された場合、前記溶液のスプレーは、約1.0から約1.4のスプレーパターン楕円率を有することを特徴とする、製薬キット。
【請求項37】
請求項36に記載のキットにおいて、前記スプレーが、前記製剤の液滴からなり、前記液滴の5%未満が、10μm未満のサイズであることを特徴とする、キット。
【請求項38】
請求項36に記載のキットにおいて、前記スプレーは、長軸及び短軸がそれぞれ25mm及び40mmであるパターンからなることを特徴とする、キット。
【請求項39】
請求項36に記載のキットにおいて、前記スプレーは前記製剤の液滴からなり、前記液滴の50%未満が、26.9μm又はそれ以下のサイズであることを特徴とする、キット。
【請求項40】
請求項36に記載のキットにおいて、前記スプレーは前記製剤の液滴からなり、前記液滴の90%が、55.3μm又はそれ以下のサイズであることを特徴とする、キット。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−501720(P2008−501720A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515683(P2007−515683)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/019908
【国際公開番号】WO2005/120551
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506049851)ナステック ファーマスーティカル カンパニー インク. (6)
【Fターム(参考)】