説明

タンパク質材料と非酸化性脂肪酸体を含む組成物

本発明は植物油、および/または魚油と非β酸化性脂肪酸類縁体を含む化合物との組合せから調製された組成物に関するとともに、インスリン耐性、肥満、糖尿病、脂肪肝、高コレステロール血症、異常脂質血症、動脈硬化、冠状動脈性心臓病、血栓症、狭窄、二次狭窄、心筋梗塞、卒中、高血圧、内皮機能不全、凝血促進状態、多膿疱性卵胞症候群、代謝症候群、癌、炎症および増殖性皮膚疾患の予防および/または治療用の医薬または栄養組成物を調製するための上記組成物の使用に関する。本発明はまた植物油および/または魚油と非ベータ酸化性脂肪酸類縁体を含む化合物の組合せから調製された動物用飼料、動物の体組成を改善するために前記飼料で飼養すること、および前記動物から製造された製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非β酸化性脂肪酸体を含む化合物と植物油または魚油の組合せを使用すると驚くべき相乗効果を示した。本発明は非β酸化性脂肪酸体を含む化合物とタンパク質材料との組合せから調製された組成物に関する。前記組成物は、インスリン耐性、肥満、糖尿病、脂肪肝、高コレステロール血症、異常脂質血症、動脈硬化、冠状動脈性心臓病、血栓症、狭窄、二次狭窄、心筋梗塞、卒中、高血圧、内皮機能不全、凝血促進状態、多膿疱性卵胞症候群、代謝症候群、癌、炎症および増殖性皮膚疾患の予防および/または治療用の医薬または栄養組成物を調製するため使用することができる。上記組成物は動物の飼育用の動物用飼料に対する添加物としても用いられ、一般的にはその体組成、具体的にはその脂肪酸組成に影響を与えることができる。
【背景技術】
【0002】
先の出願において、本発明者は本発明の非β酸化性脂肪酸類縁体を肥満(特許文献1)、糖尿病(特許文献2)、原発性狭窄および続発性狭窄(特許文献3)、癌(特許文献4)、増殖性皮膚疾患(特許文献5)、並びに炎症および自己免疫疾患(特許文献6)の治療および予防における有効な応用を記載している。
【0003】
【特許文献1】ノルウェー国特許出願第2000 5461号明細書
【特許文献2】ノルウェー国特許出願第2000 5462号明細書
【特許文献3】ノルウェー国特許出願第2000 5463号明細書
【特許文献4】ノルウェー国特許出願第2002 5930号明細書
【特許文献5】ノルウェー国特許出願第2003 1080号明細書
【特許文献6】ノルウェー国特許出願第2003 2054号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、本発明者は、いまや非β酸化性脂肪酸体を含む化合物を植物油または魚油と組み合わせて使用すると相乗的な有益な生物学的作用効果があることを示した。本発明者は、非ベータ酸化性脂肪酸体と植物油または魚油を組合せると血漿コレステロール、トリグリセリドおよびリン脂質の濃度が低下することおよび脂肪酸アシルCoAオキシダーゼ活性を向上させることを示した。さらに、本発明者は非ベータ酸化性脂肪酸体と植物油または魚油を動物用飼料に直接添加し得る方法を記載している。この飼料は消化可能であり、動物の脂肪酸組成に驚くべき効果を示した。これらの予想外の知見に基づいて、非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物と植物油および/または魚油を組合せると、脂肪酸類縁体単独の場合と比べて、非ベータ酸化性脂肪酸体が有効であるすべての疾患に対して予防および/または治療効果が向上することが期待される。
【0005】
脂質はタンパク質よりも安価なエネルギー源であり、農家は動物が飼料中の脂質から(脂質酸化の向上により)できるだけ多くのエネルギーを取得し、タンパク質からはエネルギーの取得ができるだけ少なくなることを望んでいる。動物は、また、飼料が高い比率の脂肪を含有している場合、より急速に成長しやすく、これは一般に望ましい特長である。本発明はここでは養漁業および魚、特に大西洋サケを参照して例示される。
【0006】
このようにしてより多くのタンパク質を筋肉の成長に使用することができる。先に示したように、3−チア脂肪酸テトラデシルチオ酢酸(TTA)のような非ベータ酸化性脂肪酸類縁体は哺乳類における肝臓および筋肉のミトコンドリアおよびペルオキシソームの脂肪酸酸化を増加させることができ[ベリエ他 1989b、アールスランド他、1989年、アシーデュ他 1993年、スクレーデ他、1993年、アシーデュ他、1995年(Berge et al.、1989b,Arsland et al,1989,Asiedu et al.,1993,Skrede et al.,1993,Asiedu et al.)]、ラットにおいて体脂肪を低下させる[シュピーゲルマン 1998年、マゼン 他、2002年(Spiegelman 1998,Madsen et al.,2002)]。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、調製品であって、
1)植物油および/または魚油と、
2)非ベータ酸化性脂肪酸体であって、
(a)一般式R″−COO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、R′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含み、かつR″は水素原子または1〜4個の炭素原子を含むアルキル基である)、および/または
(b)一般式(I)
【化1】

(式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基、nは0〜11の整数、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(c)一般式(II)
【化2】

(式中、A1、A2およびA3は独立に選択され、酸素原子、イオウ原子またはN−R4基であって、R4は水素原子または1〜5の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
式中、式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または1〜23個の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基、
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(a)〜(c)の化合物の塩、プロドラッグまたは複合体
により表される非ベータ酸化性脂肪酸体を含む1種以上の化合物と
の組合せを含む調製品の使用に関する。
【0008】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、R1、R2またはR3の少なくとも1つはアルキルである。
【0009】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、R1、R2またはR3の少なくとも1つはアルケンである。
【0010】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、R1、R2またはR3の少なくとも1つはアルキンである。
【0011】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、R1、R2またはR3の少なくとも1つはテトラデシルチオ酢酸である。
【0012】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、R1、R2またはR3の少なくとも1つはテトラデシルセレノ酢酸である。
【0013】
本発明の化合物の好適な実施形態は非ベータ酸化性脂肪酸である。
【0014】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、Xはイオウ原子またはセレン原子である。
【0015】
本発明の化合物の好適な実施形態は、テトラデシルチオ酢酸(TTA)、テトラデシルセレノ酢酸および3−チア−15−ヘプタデシンである。
【0016】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、nは0または1である。
【0017】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、前記化合物はリン脂質であり、前記リン脂質はホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロールを含む群から選択される。
【0018】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、前記化合物はトリアシルグリセロールである。
【0019】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、前記化合物はジアシルグリセロールである。
【0020】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、前記化合物はモノアシルグリセロールである。
【0021】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、前記化合物はホスファチジルコリン(PC)誘導体である1,2−ジテトラデシルチオアセトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンである。
【0022】
本発明の化合物の好適な一実施形態において、前記化合物はホスファチジルエタノールアミン(PE)誘導体である1,2−ジテトラデシルチオアセトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンである。
【0023】
本発明の化合物の好適な実施形態はモノ−、ジ−またはトリ−アシルグリセリドである。
【0024】
本発明の化合物の好適な実施形態は、テトラデシルチオ酢酸(TTA)を含むトリアシルグリセリドである。
【0025】
式(II)の化合物の好適な一実施形態において、A1およびA3はいずれも酸素原子を表し、一方A2はイオウ原子またはN−R4基を表し、R4は水素原子または1〜5個の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基を表す。
【0026】
本発明の化合物は天然化合物の類縁体であり、そのようなものとして、天然の調査脂肪酸をβ酸化および場合によってはω酸化する酵素を含む、天然化合物を加工する同じ系により認識される。前記類縁体は天然の対応物とはこの方法では完全には酸化できないという点で異なっている。
【0027】
本発明の化合物は、式CO−(CH22n+1−X−R′により表される非ベータ酸化性脂肪酸類縁体であってもよい。しかしながら、前記化合物は、一般式(I)または(II)により表されるような前記非ベータ酸化性脂肪酸類縁体の1種以上から誘導される、より複雑な構造体であってもよい。これらの化合物は天然のモノ−、ジ−およびトリアシルグリセロール、あるいはホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、およびジホスファチジルグリセロールを含むリン脂質の類縁体である。前記化合物は式(II)に示すように、グリセロール骨格中に置換を含んでいてもよい。1つ以上の酸素の前記置換は1つ以上の酸素をイオウまたは窒素含有基で置き替えることにより達成される。これにより庁内に取り込まれる前に加水分解されることを阻止し、これら化合物の生体利用効率(バイオアベイラビリティ)を向上させることができる。
【0028】
1種以上の前記非ベータ酸化性脂肪酸体から誘導される上述の複合構造体が効果を有するのは、それらに含まれる脂肪酸類縁体が完全にはβ酸化し得ないためである。前記複合構造体は完全構造体として、そして脂肪酸類縁体を含む天然に生じる分解生成物として効果を有する可能性がある。これら化合物は完全にはβ酸化し得ないので、蓄積し、これにより天然の脂肪酸のβ酸化の増加が誘発される。本発明の化合物の効果の多くはこのβ酸化の増加によるものである。
【0029】
β酸化の際に、脂肪酸は酵素により酸化され(脂肪酸のカルボキシル末端から数えて)2位および3位の炭素の間で開裂し、その結果、酸化部位のいずれかの側における2個の炭素原子が酢酸として除去される。この工程は、今や2個の炭素原子分短くなった脂肪酸について繰り返され、脂肪酸が完全に酸化されるまでさらに繰り返される。β酸化脂肪酸の大多数が生体内で異化される通常の方法である。本発明の化合物によるβ酸化の阻止は本発明の式においてX位に非酸化性基を挿入することにより達成される。β酸化の機作は周知であるので、XはS、O、SO、SO2、CH2またはSeであると定義される。当業者は進歩性を要さずにこれらの化合物がすべて同様にβ酸化を阻止することを推測するであろう。
【0030】
さらに、前記化合物は1つより多い遮断を含んでいてもよく、すなわち、Xに加えてR′が、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択される1つ以上のヘテロ基を任意的に含んでいてもよい。一例として、2または3個のイオウ原子をXとして挿入して脂肪酸の分解に変化を誘発し、変調された効果を得ることができる。イオウ原子を複数挿入すると極性と安定性が若干変調されることになる。薬理学的観点からは、一般には、単一化合物のみよりも一連の化合物を提供して耐性の問題を回避または弱めることができる方が望ましい。
【0031】
Xが何であるかに加えて、その位置も問題になる。脂肪酸のカルボキシル末端からのXの距離はXと脂肪酸のカルボキシル末端との間にCH2基が幾つあるかによって定義され、これは(CH22n+1によって定義される。ここに、nは0〜11の整数である。このように、奇数個のCH2基が存在する。すなわち、カルボキシル基に対するXの位置は、Xが最終的にβ酸化を阻止する様な位置である。nの範囲は望ましい生物学的効果を有する脂肪酸類縁体の全ての変形物が含まれるように選択される。理論ではβ酸化は無限に長い分子について機能することが可能であるので、nは無限であり得るが、実際上はそうではない。正常にβ酸化を受ける脂肪酸は通常14〜24個の炭素原子の長さであり、この長さは従って酵素的β酸化を受けるのにもっとも理想的である。nおよびR′の範囲は脂肪酸類縁体がこの範囲にわたるように与えられる。(同様に、式(I)および(II)の選択肢ii)はRが1〜25個の炭素基を有するように定義し、式(II)の選択肢i)はアルキル基が1〜23個の炭素原子を含むように定義して、天然化合物に類似するようにしている。)脂肪酸骨格中の炭素原子の総数は好ましくは8〜30であり、もっとも好ましくは12〜26である。このサイズの範囲も本発明の脂肪酸類縁体が細胞膜を通って取り込まれ輸送されるのに望ましい。
【0032】
カルボキシル末端から遠ざかるβ酸化阻害物Xの位置が奇数番目である脂肪酸類縁体はすべてβ酸化を遮断するけれども、それらの生物学的効果の程度は同じではないことがある。これは種々の化合物の生物学的分解時間が相違するためである。本発明者は実験を行ってカルボキシル末端からXが遠ざかる効果を示した。これらの実験において、脂肪酸類縁体の肝臓におけるミトコンドリアβ酸化の活性(nmol/分/mg/タンパク質で表す)をカルボキシル末端に対して3、5および7位のイオウを用いて測定した。これらの活性は3位のイオウについては0.81、5位のイオウについては0.61、7位のイオウについては0.58、および非β酸化遮断対照であるパルミチン酸については0.47であった。期待されるように、これから分かることは、β酸化が実際に種々の遮断位置を有する脂肪酸類縁体によって遮断され、そしてその効果は遮断位置がカルボキシル末端から遠ざかるほど弱くなることであるが、その理由は、β酸化が遮断物に到達するのにより時間がかかるため脂肪酸類縁体のより多くのものがそれまでに分解されるからである。しかしながら、3位から5位移動すると減少が大きいが、5位から7位に移動すると減少が小さいので、この減少は鎖の外へ移動すると減少し続け、そして実際に(対照と比較して)まったく効果が見られなくなるのは非常に遠ざかってからであると推定するのが合理的である。
【0033】
したがって、本発明の化合物として一般式(I)および(II)により表される脂肪酸類縁体および他の化合物(前記脂肪酸類縁体を1種以上含む)であって、本発明の化合物がすべて実際にβ酸化を遮断するように、類縁体のカルボキシル末端から種々の距離においてβ酸化を遮断するものを含めることは、たとえその効果が変わることがあるとしても、合理的である。この変化は結局煩雑な条件下で、すなわち、異なる組織において、煩雑な薬用量で、脂肪酸類縁体を変えることにより、相違するので、以下に説明するようにそれほど簡単には分析されない。従って、式中に、生物学的に関連のある脂肪酸類縁体のカルボキシル末端からのβ酸化遮断物のすべての距離を含めることは合理的である。
【0034】
X位に遮断部を持つと記載されている脂肪酸類縁体はβ酸化を受けることができないけれども、これらは依然としてω酸化を受けることがある。これはごくまれであり遅い生物学的プロセス出あり、脂肪酸をカルボキシル末端からではなく、ここではR′という名称のメチル/疎水性先頭基を酸化する。この経路において、脂肪酸のω位の炭素原子がチトクロームP450酵素群の一員によりヒドロキシル化される。このヒドロキシル化脂肪酸は次いでアルコールデヒドロゲナーゼによりアルデヒドに転換され、引き続きこのアルデヒドはアルデヒドデヒドロゲナーゼによりカルボキシル基に転換される。その結果、この経路の最終生成物は2個のカルボキシル基をもつ脂肪酸であり、このものはさらにω末端からω酸化により分解することができる。
【0035】
ω酸化はX位に遮断部を有すると記載されている脂肪酸類縁体の分解の主要経路であると考えられている。従って、脂肪酸類縁体のメチル末端に三重結合を導入することによりR′を変えてω酸化を遮断して実験を行った。この結果、脂肪酸類縁体3−チア−15−ヘプタデシンが生じた。このものは試験すると期待された結果を示した。すなわち、イン・ビボで分解時間が実質的に増加した。このことは脂肪酸類縁体を医薬製剤に使用するために非常に重要である。それはベータ酸化性脂肪酸体の効果をそれらの分解をさらに遅らせることにより増強することができるからである。
【0036】
さらに、β酸化と同様に、ω酸化がどのようにして生じるかについての知識に基づいて、正確に同じようにω酸化を遮断する他の脂肪酸類縁体を発見することは日常的な作業である。例えば二重結合は三重結合と同じ効果を有するであろう。従って、ここでR′と呼ぶ分子のメチル/疎水性先頭基の定義中に含められる。そしてこれは飽和でも不飽和でもよい。分岐も同様に酸化を遮断するので、R′は直鎖または分岐鎖であると定義される。
【0037】
R′に置換基を挿入することによりω酸化を遮断するために、前記R′は1つ以上の位置において、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基で置換されていてもよい。R′はまたフッ素、塩素、ヒドロキシ、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4アルキルチオ、C2〜C5アシロキシ、またはC1〜C4アルキルを含む群から選択される1つ以上で置換されていてもよい。
【0038】
従って、本発明の化合物はβ酸化し得ない、天然脂肪酸に類似の脂肪酸または前記脂肪酸類縁体を含む天然脂質のいずれかである。イン・ビボでは、これら脂肪酸類縁体はリン脂質内に取り込まれる強い選好を示す。ある場合には、性質を模倣して脂肪酸類縁体を天然脂質、例えばモノ−、ジ−およびトリグリセリド並びにリン脂質中に導入することは確かに有利である。これにより(脂肪酸をより大きな脂質構造中に導入された脂肪酸と比較した場合の)化合物の吸収が変化し、生体利用性および安定性が向上することがある。
【0039】
一例として、β酸化してトリアシルグリセロールにし得ない脂肪酸を含めることにより複合体を形成することができよう。そのような化合物は式(I)および(II)に含まれる。そのようなトリアシルグリセロールが例えば動物用飼料製品に入れて経口摂取されると、おそらく任意のトリアシルグリセロールと同様に小腸からカイロミクロン中に、および肝臓から血中リポタンパク質中において脂肪組織に貯蔵されるために、または筋肉心臓または肝臓によりトリアシルグリセロールがグリセロールと3つの遊離脂肪酸に加水分解されて使用されるために輸送される。遊離脂肪酸はこの時点では本発明の化合物の親化合物であり、もはや複合体ではない。
【0040】
さらに別の可能な本発明の脂肪酸誘導体は、限定されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルグリセロールを含む。
【0041】
本発明の化合物に対して複合体を形成するのに容易に使用することができるイン・ビボで見出される脂肪酸の他のエステル化は脂肪酸に対応するアルコールまたはポリアルコールを形成することが考えられる。例えば、対応するアミノアルコールを形成することによりセラミドまたはスフィンゴミエリンのようなスフィンゴリピド誘導体を形成することができる。グリセロリン脂質複合体のように、そのような複合体は非常に水に溶けにくく、親水性が弱い。本発明のこれらの種類の疎水性複合体は生体膜をより容易に通過するものと考えられる。
【0042】
本発明の極性複合体の他の可能性としては、限定されないが、リゾリン脂質、ホスファチジン酸、アルコキシ化合物が挙げられる。
【0043】
本発明の非ベータ酸化性脂肪酸体を含む種々の化合物同士の間には大きな構造的相違が存在し得るけれども、全ての化合物の生物学的機能は非常に似通っていることが期待される。その理由は、それらがすべて同様にβ酸化を遮断するからである。脂肪酸類縁体がβ酸化(および場合によってω酸化)し得ないことにより上記類縁体はミトコンドリア中に蓄積し、それによりイン・ビボの天然脂肪酸のβ酸化を誘発し、そのことにより本発明の脂肪酸類縁体を含む化合物の多くの生物学的作用効果が発揮される[ベリエ アールケイ他(2002年)カレント・オピニオン・イン・リピドロジー第13巻第3号:295−304頁(Berge et al.(2002)Curr Opin Lipidol 13(3):295−304)]
【0044】
脂肪酸のβ酸化経路は脂肪の代謝の主要経路である。最初のかつ律速反応は肝臓のペルオキシソームにおいてアシルCoAオキシダーゼにより行われる。アシルCoAオキシダーゼはアシルCoAチオエステルの相当するトランス−2−エノイルCoAへの脱水素を食材する。式(I)の脂肪酸類縁体、テトラデシルチオ酢酸(TTA)は従前本発明者がこれを用いてこれら脂肪酸の種々の生物学的作用効果を試験している。本発明ではアシルCoAオキシダーゼに対する作用効果が試験され、植物油および魚油の効果も単独または併用について試験された。TTA単独は陰性対照と比べてこの酵素活性が増加した。植物油および魚油単独は陰性対照と比べてアシルCoAオキシダーゼ活性の増加がごくわずかであった。ヒマワリ油は一緒に投与したときにTTAの活性を増加しなかった。これは、油と一緒のTTAのアシルCoAオキシダーゼ活性は油を添加しないと同じであると期待されるということである。魚油とオリーブ油はTTAによるアシルCoAオキシダーゼ活性の増加をやや増強した。TTA無添加の大豆油はアシルCoAオキシダーゼ活性に無視し得る効果しかなかったが、TTAと組み合わせるとTTA単独の効果と比べて60%増加を示す。アシルCoAオキシダーゼ活性剤としてのTTAの大豆油によるこの増強は全く予想外である。
【0045】
本発明では、非ベータ酸化性脂肪酸体の血漿リン脂質レベルへの効果も試験し、並びに種々の植物油および魚油の効果を単独またはTTAと併用して試験した。ヒマワリ油および魚油はリン脂質レベルを低下させ、TTAのそうする能力をTTAまたは油単独のリン脂質低下能力を越えて増強した。大豆油およびオリーブ油は実際にリン脂質レベルを増加したが、意外にも、これらの油はTTAのリン脂質を低下する能力を実質的に増強した。大豆油の効果は特に注目に値する。それ自体でリン脂質レベルを対照に比べて10%増加したが、TTAと一緒に与えると、TTA単独と比べてリン脂質レベルをさらに40%低下させた。
【0046】
本発明では、コレステロールレベルへの非ベータ酸化性脂肪酸体の効果も試験し、並びに種々の植物油および魚油の効果を単独またはTTAとの併用について試験した。TTAは植物油または魚油単独のいずれよりもコレステロールレベルを低下した。TTA無添加のヒマワリ油または魚油は若干コレステロールレベルを低下したが、TTA添加ではコレステロールレベルはTTA単独のコレステロールレベルを越えて低下した。オリーブ油と大豆油は実際にそれだけでコレステロールレベルを低下したが、全く意外にも、TTAにこれらの油に添加するとTTAのコレステロール低下能力が改善された。このTTA増強効果は大豆油が最大であった。大豆油はTTA単独と比べて60%コレステロールレベルを低下した。
【0047】
TTAはミトコンドリアの数を増加し、ミトコンドリアにおける通常の飽和および不飽和脂肪酸のケトン体へのβ酸化を促進することにより血漿トリアシルグリセロールを減少させることが分かっている[フロイランド エル他(1997年)ジャーナル・オブ・リピド・リサーチ第38巻第1851〜1858頁(Froyland L et al.(1997)J Lipid Res38:1851−1858)]。本発明では、この効果は植物油および魚油の添加によりさらに予想外に増強されることが見出された。オリーブ油、ヒマワリ油および魚油はすべてそれ自体でトリアシルグリセロールレベルを低下させるが、ヒマワリ油および魚油はTTA単独よりもさらに低下させ、TTAのコレステロール低下降下をいずれかの油またはTTA自体に見られる低下効果を越えて増強した。大豆油はもっともめざましい結果を示した。それ自体で大豆油は実査言いコレステロールレベルを対照に比べて15%増加したが、意外にも、材図油はTTAのコレステロール低下効果を130%増強した。
【0048】
本発明では、大西洋サケに非ベータ酸化性脂肪酸類縁体、油および通常の飼料成分並びに任意に発酵大豆タンパク質材料を含む飼料で飼養する効果を試験した。実施例2.1において、魚用飼料は通常の飼料ペレットをTTAを含む魚油でコーティングしたものから構成した。次いで、この飼料を実施例2.2で大西洋サケ用の給餌として用いたところ、TTAの存在がこのようにして製造されたものについて、TTAを含まない同等の飼料を給餌された魚と比べて有利な効果があった(実施例2.3および2.4)。
【0049】
使用した通常の飼料ペレットは大部分が魚肉(フィッシュミール)からなり、若干の小麦とビタミンおよびミネラル添加物とを含む。ペレットのコーティングに使用した油は海洋起源であり、カペリン(カラフトシシャモ)からのものであり、種々の量のTTAを混入させてある。表1は飼料の処方と化学的組成を記載している。タンパク質(魚肉)または炭水化物(小麦)の起源はそれ自体はそれほど重要ではなく、重要な部分は、これが通常の飼料で、これは試験種(この実施例では大西洋サケ)に適している通常の飼料であり、TTAを添加すると有利な効果を示すことである。
【0050】
タンパク質源はそれ自体は重要ではないが、同時係属出願(ノルウェー特許出願第20043093号明細書)に示したように、タンパク質と一緒に投与されたTTAはTTA単独と比べて追加の有利な効果を有する。飼料用に選択された脂肪の出所はより重要であろう。それは、ここではTTAは油、特に海洋起源のものと予想外の相乗効果を示すことが示されているからである。従って、この通常飼料が脂肪および油の含量が多く炭水化物の含量が少ないことによりおそらくTTAを単独で投与または炭水化物の多い飼料とともに投与した場合よりもTTAの遊離な効果が増加したものと考えられる。
【0051】
実施例2.4では、特定のタンパク質材料、発酵大豆タンパク質材料の効果を確認した。発酵大豆タンパク質材料は大豆の発酵により生じたものである。発酵大豆タンパク質材料は修飾または非修飾大豆タンパク質およびイソフラボン並びに他の大豆構成成分を含む。本発明の好適な実施形態では発酵大豆タンパク質材料であるゲンダキシン(Gendaxin(登録商標))を使用している。
【0052】
表2は飼料の脂肪酸組成を記載している。飼料の脂肪酸組成にはわずかな違いしかなく(すべてほぼ100%の魚油を含む)、n−3脂肪酸(FA)の百分率はほとんど等しい。TTAを補充した飼料は、しかしながら、大西洋サケの鰓、心臓および肝臓のリン脂質(PL)、トリアシルグリセロール(TAG)および遊離脂肪酸(FFA)のn−3脂肪酸組成の百分率を実質的に変化させなかった。8週間の間TTAを投与すると飽和FAの百分率がほとんどすべての脂質画分において減少した。n−3FA、特にDHAの百分率は、実施例2.3で分かるように、鰓および心臓において増加した。
【0053】
TTA含有飼料で飼養された大西洋サケは対照飼料で飼養された魚よりも成長速度が遅かった。TTAを補充した飼料で飼養した魚における体脂質レベルは対照飼料で飼養された魚における体脂質レベルよりも顕著に低かった。
【0054】
本発明の飼料で飼養されることは魚自体にとって健康上有利である。老いた魚は動脈硬化を経験し、人間とまったく同様に健康上の問題を生じ、脂質の低下はこの問題について有利な効果を持つであろう。
【0055】
一般に、本発明により得られるような赤身肉は消費用に飼育される大方の動物種において有利であると考えられる。従って、総脂質レベルを低下する効果自体有利である。加えて、脂肪酸組成の特定の変化は特に肯定的である。飽和脂肪酸の消費が少ない方が健康的であることが広く認識されており、n−3の消費の増加は、心臓疾患の機会を減少させることから抗炎症作用およびより体重の軽い乳幼児まで、多くの健康上の利点と関連している。
【0056】
本発明の飼料で飼養された動物から得られる他の動物製品も有利な効果を有する。一例としては、このようにして得られた魚は市販の飼料で飼養された魚からの油と比べると有利な栄養組成を有している。他の製品、例えば魚の皮も全体組成が改善されることを見れば有利な効果を有していることが考えられる。
【0057】
血中脂肪酸レベルは普通脂肪組織内の脂質分解とエステル化の相対速度および筋肉への脂肪酸の取り込みにより決定される。筋肉では、脂肪酸はグルコースの取り込みと酸化を阻害する。従って、血液および筋肉における脂肪酸およびトリアシルグリセロールのレベルの増加は肥満とインスリン耐性並びにグルコース代謝能力の低下と相関関係がある[オレフスキー ジェイ・エム(2000年)ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション第106巻第467〜472頁;ゲール−ミロ エム他(2000年)ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー第275巻第16638〜16,642頁(Olefsky JM(2000)J Clin Invest 106:467−472;Guerre−Millo M et al.(2000)J Biol Chem 275:16638−16642)]。従って、非ベータ酸化性脂肪酸体と植物油および/または魚油による脂肪酸酸化の促進および血漿脂肪酸濃度の減少により、インスリン耐性およびそれにより引き起こされた疾患を予防および治療することができる[シュルマン ジー・アイ(2000年)ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション第106巻第2号第171〜176頁(Shulman GI(2000)J Clin Invest 106(2):171−176)]。TTAは高脂肪飼料により誘発されたインスリン耐性および脂肪過多症を完全に予防し、脂肪過多症、高脂血症およびインスリン感受性を肥満ラットにおいて減少させることが見出されている[マゼン エム他(2002年)ジャーナル・オブ・リピド・リサーチ第43巻第5号第742〜50頁(Madsen M et al.(2002)J Lipid Res43(5):742−50)]。TTAと植物油および/または魚油の双方、および任意に油をも用いて本発明者により発見された予想外の相乗的結果の故に、それらの結果が示された通りである理由についていかなる特定の理論にも拘束されず、本発明者は、現在この組合せがこれらの症状の治療により効果的であることを期待している。本発明者は、また、血圧上昇、脂質およびコレステロールレベルの増加、内皮機能不全症、凝血促進状態、多膿疱性卵胞症候群および代謝症候群を含む関連する疾患または障害の治療においてTTAが魚油および植物油、および任意に油によって増強されることも期待している。
【0058】
ペルオキシソーム−賦活受容体(PPAR)群は細胞増殖、分化および脂質恒常性(ホメオスタシス)のような細胞機能の多面的な調節因子(レギュレータ)である[イェ ジェイ・エム他(2001年)糖尿病第50巻第411〜417頁(Ye JM et al.(2001)50:411−417)]。PPAR群は3つの亜類型(サブタイプ):PPARα、PPARβおよびPPARγから成る。TTAはPPARαの潜在的リガンドであり[フォーマン ビー・エム、チェン ジェイ、エバンス アール・エム(1997年)プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス第94巻第4312〜4317頁;ゴットリヒャー エム他(1993年)バイオケミカル・ファーマコロジ第46巻第2177〜2184頁;ベリエ アール・ケイ他(1999年)バイオケミカル・ジャーナル第343巻第1号第191〜197頁(Forman BM,Chen J,Evans RM(1997)Proc Natl Acad Sci94:4311−4317;Gottlicher M et al.(1993)Biochem Pharmacol 46:2177−2184;Berge RK et al.(1999)Biochem J 343(1):191−197)]、PPARβおよびPPARγも活性化する[ラスプ イー他(1999年)ジャーナル・オブ・リピド・リサーチ第40巻第2099〜2110頁(Raspe E et al.(1999)J Lipid Res 40:2099−2110)]。PPARα賦活因子としてTTAは脂肪酸の細胞への取り込みを増加することにより脂肪酸の異化を促進する。TTAで血漿トリグリセリドレベルを低下させると肝臓の細胞代謝がミトコンドリアにおけるPPARα制御脂肪酸異化に向かってシフトする[グラフ エイチ・ジェイ他(2003年)ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリ第278巻第33号第30525〜33頁(Grav HJ et al.(2003)J Biol Chem 278(33):30525−33)]。TTAの血漿トリアシルグリセロールに対する効果は直接PPARα活性化により、このことはPPARαノックアウトマウスにおいてこの効果がなくなることにより実証されているけれども、魚油は血漿トリアシルグリセロールをノックアウトマウスにおいてさえも低下させる[ダロングビル ジェイ他(2001年)ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリ第276巻第4634〜第4639頁(Dallongville J et al.(2001)J Biol Chem 276:4634−4639)]。
【0059】
魚油に見出されるような食餌用n−3多不飽和脂肪酸を補充すると肝臓のペルオキシソームのアシルCoAオキシダーゼ活性、従って肝臓および程度は少ないが筋肉におけるにおける脂肪酸酸化を促進する[ユクロペック ジェイ他(2003年)リピド第38巻第10号第1023〜9頁(Ukropec J et al.(2003年)Lipids 38(10):1023−9)]。魚油に富む食餌は肝臓ミトコンドリアおよびペルオキシソームの脂肪酸酸化酵素の活性およびmRNAレベルを増加することが示された[ホング ディー・ディー他(2003年)ビオキミカ・ビオヒュジカ・アクタ:モレキュラー・セル・バイオロジー・リピッヅ第1635巻第1号第29〜36頁(Hong DD et al.(2003)Biochim Biophys Acta:Mol Cell Biol Lipids 1635(1):29−36)]。魚油はラットの肝臓中のペルオキシソームのアシルCoAオキシダーゼの存在量の増加を誘発するが筋肉では増加を誘発しないことから、著者は、これはn−3脂肪酸が、PPARαリガンドの役目を果たすことにより、(筋肉内ではなく)肝臓のペルオキシソーム増殖を含む、脂肪誘発インスリン耐性に対して保護するためであるという仮定を立てている[ネシェン エス他(2002年)アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒュジオロジ・エンドクリノロジ・アンド・メタボリシス第282巻第E395〜E401頁(Neschen S et al.(2002)Am J Physiol Endocrinol Metab 282:E395−E401)]。
【0060】
上記パラグラフから分かるように、正確にTTAおよび魚油の脂肪代謝に対する影響の仕方の生化学的詳細はくわしくは知られていない。ましてや、植物油が、本発明において説明されているように[ルスタン エイ・シー、クリスチヤンセン イー・エヌ、ドレボン シー・エイ(1992年)バイオケミカル・ジャーナル第283巻第2号第333〜339頁(Rustan AC,Christiansen EN, Drevon CA(1992) Biochem Journal 283(2):333−339)]どのように脂肪代謝に積極的影響を与えるかについても知られていない。これらの効果は同じ経路を経由しているかも知れないし、経由していないかも知れないし、TTAと油の双方が例えばPPARαリガンドとして作用しているかも知れないし、PPARαとは独立に作用しているかもしれない。それらが同じ経路を経由して作用しているならば、TTAが油によって増強されるとは期待されない。その理由は、TTAは強いPPARα活性化因子でありTTAがPPARα活性化を完全に飽和させることが期待されるからである。それ故、それらを組み合わせた場合、TTAの効果プラス植物油または魚油の相加的効果を得ることさえも予想外である。タンパク質がβ酸化その他の脂肪代謝の局面にどのように影響するかはさらに知られていない。相加的効果を越える相乗的効果を得ることは、本発明のすべての試験において特にTTAと大豆油について見られるように、TTAと魚油またはヒマワリ油でより低いがトリアシルグリセロールレベルの低下に、そしてオリーブ油およびヒマワリ油でコレステロールレベルを低下するのに相乗効果がみられることは、非常に驚くべきことである。β酸化性脂肪酸類縁体は多くの効果を有し、本発明者はどのようにしてそれらがすべてもたらされるのか知らないが、本発明の予想外の結果に基づいて、本発明者は植物油および魚油により増強されるものと考えるが、いかなる特定の理論にも拘束されるものではない。
【0061】
PPARリガンドは種々の癌細胞系統の増殖に影響を与える。TTAは特に多くの癌細胞系統の増殖を低下させることが見出されている[ベリエ ケイ他(2001年)カルシノジェネシス第22巻第1747〜1755頁;アブディ−デズフリ エフ他(1997年)乳ガンの研究および治療第45巻第229〜239頁;トロンシュタッド ケイ・ジエイ他(2001年)バイオケミカル・ファーマコロジ第61巻第639〜649頁;トロンシュタッド ケイ・ジエイ他(2001年)脂質第36巻第305〜313頁(Berge K et al.(2001) Carcinogenesis 22:1747−1755;Abdi−Dezfuli F et al.(1997)Breast Cancer Res Treat 45:229−239;Tronstad KJ et al.(2001) Biochem Pharmacol 61:639−649;Tronstad KJ et al.(2001) Lipids 36:305−313)]。この低下はトリアシルグリセロールレベルの低下と関係しており[トロンシュタッド ケイ・ジエイ他(2001年)バイオケミカル・ファーマコロジ第61巻第639〜649頁(Tronstad KJ et al.(2001) Biochem Pharmacol 61:639−649)]、PPAR依存および独立経路の双方により媒介される[ベリエ ケイ他(2001年)カルシノジェネシス第22巻第1747〜1755頁(Berge K et al.(2001) Carcinogenesis 22:1747−1755)]。油がTTAのトリアシルグリセロールレベル低下能力を改善し、PPARリガンドであるので、油はTTAの抗増殖効果も改善しこれによりTTAの癌予防および治療能力が改善されることは大いにあり得る。TTAは原発性および続発性腫瘍、腫瘍の成長、原発性腫瘍の結合組織への侵襲、および二次的腫瘍の形成(ノルウェー特許出願第2002 5930号明細書)の阻害を含む癌の予防および/または治療に用いることができる。
【0062】
一般に、PPAR作動薬および多不飽和脂肪酸は炎症反応を調節する。TTAは炎症性サイトカインであるインタロイキン−2の放出を低下させ、末端単核細胞のPHA促進増殖を抑制することにより炎症反応を調節する[オークラスト ピー他(2003年)ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション第33巻第5号第426〜33頁(Aukrust P et al.(2003) Eur J Invest 33(5):426−33)]。TTAによるサイトカインの調節はPPAR媒介、または変更されたプロスタグランジンレベルにより、または脂質媒介シグナル変換の調節により行うことができ、後者の脂質媒介シグナル変換も、植物油および魚油において見出されているものと同様に、多不飽和脂肪酸に対する作用の機作として提案されているものである。本発明者が本発明の予想外の結果を見出したので、本発明者は植物油および/または魚油を非β酸化性脂肪酸体と組み合わせると脂肪酸類縁体の炎症障害に対する効果が増強されることが期待される。この炎症疾患としては免疫媒介障害、例えばリューマチ性関節炎、全身性血管炎、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、皮膚筋炎、多発性筋炎、種々の自己免疫内分泌障害(例えば甲状腺炎および副腎炎)、種々の免疫媒介神経障害 (例えば、多発性硬化症および重症筋無力症)、種々の心臓血管障害(例えば、心筋炎、うっ血性心不全、動脈硬化症、安定および不安定狭心症、並びにウェゲナー肉芽腫症)、炎症性腸疾患、クローン疾患、非特異的結腸炎、膵炎、腎炎、肝臓の胆汁うっ帯/線維症、並びに器官移植後の急性および慢性同種移植拒絶反応、並びに乾癬、アトピー性皮膚炎、非特異的皮膚炎、原発性刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、表層魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖症、前悪性太陽誘発角化症、および脂漏症のような増殖性皮膚疾患、並びに例えばアルツハイマー症または低下した/改善性認知機能のような炎症成分を有する疾患が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本明細書において使用された定義
動物
この文脈では、「動物」という用語は人間および農場(農業)動物のような哺乳類、特に家禽類、牛、羊、山羊、ブタ等の哺乳類のような経済的に重要な動物、特に人間が消費するのに適した製品、例えば肉、卵およびミルクを生成する動物を含む。さらに、この用語は魚貝類、例えばサケ、タラ、テラピア、二枚貝、カキ、イセエビ、カニを含むものである。この用語はまたイヌやネコのような家畜も含む。
【0064】
動物用飼料
動物用飼料という用語は(上に定義したように)動物用の食物をいう。動物用飼料は、通常、企図された受け手の動物の姓名維持に必要な適切な量の脂肪、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよびミネラルを含んでなり、味、テクスチュア、色、匂、安定性、保存寿命等を改善するための追加成分、または動物の健康のために添加される抗生物質その他の成分を含んでいてもよい。動物用飼料は、好ましくは、しかし限定されるものではないが、乾燥材料であり、もっとも好ましくはペレット材料である。動物用飼料という用語は、また、栄養成分、獣医学的成分および/または動物が消費するための機能性食物製品を含むことが意図されている。
【0065】
食肉
食肉という用語は上に定義された任意の動物の肉をいう。従って、哺乳類、鳥類、魚類および貝類からの肉を含むタンパク質はすべて食肉という。「食肉製品」という用語は上に定義された食肉から製造された任意の製品をいう。
【0066】
植物油および/または魚油
これらは植物または海洋起源のすべての油を含み、限定されるものではないが、脂肪または固形油または精油もしくは揮発油、並びにそれらの任意の組合せが挙げられる。必ずしも液状である必要はない。ヒマワリ油が本発明で使用されているが、これは、実際には、花自体ではなくヒマワリの種子からの油である。
【0067】
魚油
この用語は海洋起源のすべての油を含む。
【0068】
栄養組成物
この用語は、限定されるものではないが、人間または動物が消費するための栄養補助食品(サプリメント)、機能性食品、薬草サプリメント等を始めとする任意の体内に摂取可能な材料を含むものである。この用語は、また、人間が消費したり動物を飼養したりするための食物製品であって、本発明の組成物が主成分ではなく添加物となっているものを含む。この用語は特に動物用飼料であって任意の飼料に本発明の組成物を補充してその生物学的効果を達成するようにしたものに関する。
【0069】
治療
本発明の医薬用途に関連して、「治療」という用語は疾患の重篤度を低減することをいう。
【0070】
予防
「予防」という用語は所与の疾患の予防、すなわち本発明の化合物が前記症状の開始に先立って投与されることをいう。これは、所与の疾患の危険もしくは開始を予防するために本発明の化合物を予防剤としてまたは栄養組成物の成分として使用することができることを意味する。
【0071】
栄養組成物
この用語は、限定されるものではないが、人間または動物が消費するための栄養補助食品(サプリメント)、機能性食品、薬草サプリメント等を始めとする任意の体内に摂取可能な材料を含むものである。この用語は、また、人間が消費したり動物を飼養したりするための食物製品であって、本発明の組成物が主成分ではなく添加物となっているものを含む。この用語は特に動物用飼料であって任意の飼料に本発明の組成物を補充してその生物学的効果を達成するようにしたものに関する。
【0072】
本発明の化合物の投与
医薬として本発明の化合物を直接動物に非経口的に、鼻腔内に、経口的に、または皮膚を通る吸収等を含む任意の適切な技術により投与することができる。それらは局所的にまたは全身的に投与することができる。各剤の特定の投与経路は、例えば受容者の人間または動物の医療歴によって決まる。
【0073】
非経口投与の例としては、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、および腹腔内投与が挙げられる。
【0074】
一般的な提案として、非経口的に投与された非ベータ酸化性脂肪酸体のそれぞれの薬用量当りの製薬有効量は、人間については、好ましくは患者の体重の約1mg/kg/日〜200mg/kg/日であるが、上述のように、これは大幅に治療の裁量にかかっている。5〜50mg/kg/日の薬用量がもっとも好ましい。1〜300mg/kg/日の薬用量油が好ましく、10〜150mg/kg/日の薬用量がもっとも好ましい。
【0075】
連続的に与えられる場合は、本発明の化合物はそれぞれ典型的には1日当り1〜4回の注射により、または例えばミニポンプを用いた連続的皮下注入により投与される。点滴バッグ溶液を用いることもできる。適切な薬用量を選択する上で重要な因子は全体重の減少または脂肪の赤身に対する比率により、あるいは対照測定または肥満の予防もしくは肥満関連症状の予防のための他の基準であって医師により適切であるとされているものにより測定された結果である。
【0076】
非経口投与については、一実施形態において、本発明の化合物は一般に所望の純度においてそれぞれを単一薬用量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で製薬的に許容し得る担体、すなわちその使用薬用量および濃度で受容者に非毒性であり処方の他の成分と適合性のあるものと混合することにより処方される。
【0077】
一般に、処方は本発明の化合物をそれぞれ均一にあるいは緊密に液状担体または微粉砕された固形担体あるいはその双方と接触させることにより調製される。次いで、要すれば、生成物を所望の剤型に成形する。好ましくは、担体は非経口担体であり、さらに好ましくは受容者の血液と等張である溶液である。そのような担体ベヒクルの例としては水、食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられる。固形油およびオレイン酸エチルのような非水ベヒクル並びにリポソームもここでは有用である。
【0078】
担体は好適には小量の添加物、例えば等張性および化学的安定性を向上させる物質を含んでいてもよい。そのような材料は使用薬用量および濃度において受容者にとって非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはそれらの塩のような緩衝剤;アスコルビン酸のような酸化防止剤;免疫グロブリン;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニンのようなアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノースまたはデキストリンのような単糖類、二糖類その他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン:および/またはポリソルベート、ポロキサマーやPEGのような非イオン性界面活性剤を含む。
【0079】
経口製薬組成物としては、例えば水、ゼラチン、ガム、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、タルク、油、ポリアルケングリコール、石油ゼリー等のような担体材料を使用することができる。そのような製薬製剤は単一薬用量形態であってもよく、さらに他の治療的に有益な物質または従来の製薬アジュバント、例えば保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤等を含んでいてもよい。製薬製剤は従来の液状形態、例えば錠剤、カプセル剤、糖衣錠、アンプル等であってもよく、従来の剤型、例えば乾燥アンプル、座薬等であってもよい。
【0080】
加えて、本発明の化合物、すなわち、β酸化性脂肪酸類縁体を含む化合物と植物油および/または魚油を上に定義した栄養製剤注に使用することができる。この場合、非ベータ酸化性脂肪酸類縁体の薬用量は記載された薬剤と同様またはそれ以下であり、植物油および/または魚油の量は好ましくは食品および飼料材料の調製に適した量である。栄養組成物、特に動物飼料の一部として、植物油および/または魚油は飼料の実質的な部分を占めていてもよく、従って、栄養価を有するとともに非ベータ酸化性脂肪酸類縁体を増強する。油は栄養組成物中で脂肪のすべてとなるまで含んでいてもよい。動物用飼料では、非ベータ酸化性脂肪酸類縁体は人間が消費する製品中の量の10倍となるまで、すなわち動物の体重の2g/kg/日以下含んでいてもよい。動物用飼料組成物は発酵大豆タンパク質材料も含んでいてもよい。発酵大豆タンパク質材料は食品製品中の機能性タンパク質として特に動物用飼料およびペット用食品中の天然の血漿の代替物として使用するときに特に有効である。動物用飼料は、また、追加の成分、例えば脂肪、糖、塩、調味料、ミネラル糖を含んでいてもよい。次いで、製品は外観およびテクスチュアが天然の肉塊似た塊に形成される。本発明の製品はさらに必要な栄養物を含むように容易に処方され、動物により容易に消化され、動物にとって口当たりがよいという利点を有する。
【0081】
実験の部
本発明の非ベータ酸化性脂肪酸体の調製は本出願人の先願であるノルウェー特許出願第20005461号、同第20005462号、同第20005463号、および同第200024114号明細書に開示されている。これらの文献はまたTTAの毒性研究を記載している。モノ−、ジ−およびトリグリセリドおよび本発明の窒素含有脂質の調製は米国特許出願出し10/484,350号に詳細に開示されている。セリン、エタノールアミン、コリン、グリセロール、およびイノシトールを含む本発明のリン脂質の調製は本出願人の先願であるノルウェー特許出願第20045562号明細書に詳細に開示されている。
【0082】
実施例1 本発明の組成物のラットにおける生物学的効果
1.1 実験設定
化学薬品
化学薬品は通常の販売元から取得し、試薬等級のものであった。魚油はホルダフォル(Hordafor)から得た。一方、植物油はミルズ社(Mills)から得た。カルボキシメチルセルロース(CMC)を対照(陰性)として用いた。
【0083】
実験用動物
体重250〜358gの雄ウィスター・ラットをアンラブ社(AnLab Ltd.)(チェコ共和国プラハ)から運び、金網籠で22±1℃の温度で調光した(午前7時から午後7時まで点灯)部屋に置いた。食餌と水の摂取は何ら制限しなかった。3匹のラットをそれぞれの籠に入れた。体重と食餌摂取の増加を毎日監視した。
【0084】
実験用飼料
ラットは標準ChowST1飼料(ベラス社(Velaz)製、チェコ共和国プラハ)で飼養した。
【0085】
処置
雄ウィスター・ラットを実験の開始前に新しい環境に馴化させた。次いで、10日間毎日強制飼養することにより処置した。CMCを担体および陰性対照として用いた。各処置群のラットの数は4匹であった。TTA処置群は150mg/kg体重/日をCMCまたは油に溶解して与えた。油(ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油または魚油)処置群は3mL(約2.5g)/kg体重/日を与えた。CMCを担体および陰性対照として用いた。最後に処置した翌日にラットを犠牲にした。
【0086】
犠牲および組織検索
ラットをヒプノルム(Hypnorm(商標))(クエン酸フェンタニル 0.315mg/mlおよびfルアニソン(fluanisone)10mg/ml、ジャンセン・アニマル・ヘルス(Janssen Animal Health))とドルミクム(Dormicum(登録商標))[ミダゾラム(midazolam)5mg/ml、ホフマン−ラ・ロシュ(Hoffmann−La Roche)]の1:1混合物を皮下注射して麻酔した。ヘパリン洗浄注射器を用いて血液を心臓から直接抜き出した。肝臓を直ちに除去し、重量測定し、2つの部分に分け、それぞれを直ちに氷冷するか、液体窒素中で凍結した。血漿および組織を分析まで−80℃で貯蔵した。手順はノルウェー国立存命動物の生物学的実験審議会により求められたものである。
【0087】
肝臓亜細胞画分の調製
ラットの肝臓を氷冷スクロース溶液(10mmol/L HEPES緩衝液pH7.4および1mmol/L EDTA中0.25mol/Lスクロース)中でポッター−エルベイェム(Potter−Elvehjem)ホモジナイザーを用いて個々にホモジナイズした。肝臓の亜細胞分画を先に述べたようにして行った[ベリエ アール・ケイ(1984)ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリ 第141巻第637−44ページ(Berge RK et al.(1984) Eur J Biochem 141:637−44)]。この手順を0〜4℃で行い、画分を−80℃で貯蔵した。タンパク質をバイオラッド(BioRad)社のタンパク質検定キットでウシ血清アルブミンを標準として用いて検定した。
【0088】
1.2 本発明の組成物のラットにおける生物学的効果
脂肪酸アシルCoAオキシダーゼ用酵素検定
脂肪酸アシルCoAオキシダーゼ活性をペルオキシソーム肝臓画分中で先にのべたように検定した[スモール ジー・エム、バーデット ケイ、コンノック エム・ジェイ(1985年) バイオケミカル・ジャーナル 第227巻第205〜10頁(Small GM,Burdett K,Connock MJ(1985) Biochem J 227:205−10)]。結果を総タンパク質当りの脂肪酸アシルCoAオキシダーゼ活性として示し、図1に示すデータをTTAの活性に対して正規化した。
【0089】
脂質分析
血漿および肝臓脂質をテクニコン・アクソン(Technicon Axon)システム(マイルズ社(Miles)製、ニューヨーク州タリタウン(Tarrytown))でバイエル社(Bayer)製トリグリセリドキット、総コレステロール(バイエル社製、ニューヨーク州Tarrytown)、およびビオメリエ社(bioMerieux)製リン脂質を含有するコリン用のPAP150キットを用いて酵素的に測定した。結果を総タンパク質当りで示し、図2〜4に示すデータを陽性対照(TTAまたは油を添加しない、すなわち「正常」レベル)の活性に対して正規化した。結果を総タンパク質当りで示し、図2〜4に示すデータを陽性対照(TTAまたは油を添加しない、すなわち「正常」レベル)の活性に対して正規化した。
【0090】
実施例2
本発明の組成物の大西洋サケにおける生物学的効果
2.1 魚用飼料の調製を含む実験設定
実験用の魚肉系飼料はEWOSにより提供されたものであり、消化性決定用の不活性マーカーとして0.01%Y23(3mmペレット)を含むものであった。表13種類の飼料の処方と化学的組成を示す。これら3種類の飼料はすべて1つの飼料ミックスから製造した。共通の飼料ペレットを異なる油および混合物でコーティングすることにより異なる飼料を得た。これら飼料は魚油(カペリン油)(対照)、0.5%TTA補充魚油(0.5%TTA)、または1.5%TTAを補充した魚油(1.5%TTA)のいずれかを含んでいた。
【0091】
【表1】

【0092】
飼料の脂肪酸組成は飼養した魚油(カペリン油)のものを明かに反映していた(表2)。カペリン油は比較的高レベルの単不飽和脂肪酸(FAs)を含有し、長鎖n−3脂肪酸(FAs)、20:5 n−3(EPA)、および22:6 n−3(DHA)に富んでもいた。しかしながら、この飼料は顕著な量の魚肉を含有し、その魚肉はn−3脂肪酸(FAs)を含有しているので、飼料中のこれらの脂肪酸のレベル添加油中のものよりも高い。
【0093】
上記飼料に加えて、同じ飼料に0.5%ゲンダキシン(Gendaxin)および0%または0.9%TTA(飼料の全乾燥重量に基づく)を添加したものを調製した。
【0094】
【表2】

【0095】
2.2:TTAを含む飼料で大西洋サケを飼養
魚、施設および実験設計
ノルウェー国スンダルセーラ(Sunndalsoera)のアクバフォルスク(AKVAFORSK)研究ステーションにおいて試行を行った。平均当初体重が約86gの大西洋サケ(Salmon salar)を15シリンダ−円錐タンク(直径0.85m)にタンク当り40尾入れた。これらのタンクに定温12℃の海水を供給した。魚をこの温度に馴化し、市販飼料で2週間飼養してから試行を開始した。成長試行は一期間8週間であった。
【0096】
飼料は表2に記載した通りであり、魚油(カペリン油)(対照)、魚油に0.5%TTAを補充したもの(0.5%TTA)、または魚油に1.5%TTAを補充したもの(1.5%TTA)のいずれかを含む。これら3しゅの飼料を3つぞろいのタンクに無作為に割り当てた。飼料は電気駆動ディスク−フィーダー[アクバプロデュクテル社(Akvaprodukter AS)製、スンダルセーラ(Sunndalsoera)]により分布させた。タンクは廃飼料が廃水から金網箱内に収集されるように設計されている。廃飼料を収集し、これにより消費された飼料の重量を計算することができるようにした。
【0097】
ゲンダキシン(Gendaxin)含有飼料を別の実験において使用したが、その設計は上述と同じであった。
【0098】
最初および最後のサンプリング
最初のサンプリングの前に魚を2日間絶食させた。各タンクから6尾を実験の最初と最後にMS−222中で麻酔し、平均体重および平均体長を決定した。これら6尾を頭部打って撲殺し、腹を切開した。肝臓、心臓、鰓および腎臓のサンプルを直ちに液体窒素中で凍結し、−80℃で貯蔵した。次いで、これらのサンプルを脂肪酸組成の分析に用いた。さらに、タンク当り5尾を麻酔し、殺した。これらの魚は全身の組成を決定するのに用いた。
【0099】
最後のサンプリングの前には魚を絶食させなかった。各タンクから5尾を解体し、オーストレング(Austreng)[アクアカルチャー(1978年)第13巻第265〜272頁(Aquaculture,1978 13:265−272)]により記載された手順に従って糞便サンプルを収集した。各タンクからの糞便サンプルをプールした。これらのサンプルを分析まで−20℃で貯蔵した。
【0100】
第2鰓弓を麻酔した魚から除去し、氷冷SEI緩衝液(スクロース 150mM、EDTA 10mM、イミダゾール 50mM、pH7.3)中で洗浄し、直ちに液体窒素中で凍結した。鰓組織を−80℃で貯蔵した。肝臓は氷冷スクロース培地中でホモジナイズした。
【0101】
成長
魚の平均体重は試行の間、a1飼料群において最初の値86gから最後の値約250gへほぼ3倍になった。TTAの飼料中の量が増加するとSGRは対照群のSGR1.8から0.5%TTA群のSGR1.7へ、そして1.5%TTA群のSGR1.5へ減少した(表3)。飼料群の間に条件因子の有意の差はなかった(表3)。
【0102】
【表3】

【0103】
飼料摂取および栄養消化率
この試行においては消化率にわずかな差しか存在しなかった(表4)。すべての飼料群において脂肪酸(FAs)の消化率は高く、対照飼料および0.5%TTAで使用された魚についてはすべての脂肪酸(FAs)の和については96%より多く、1.5%TTA飼料で飼養された魚については90%より多い。飽和脂肪酸(FAs)の消化率は、一般に、他の脂肪酸(FAs)についての消化率よりも低かった。
【0104】
【表4】

【0105】
2.3 TTAの生物学的効果
化学薬品
酢酸、クロロホルム、石油エーテル、およびメタノールはすべてメルク社(Merck)(ドイツ国ダルムシュタット)から得た。ベンゼンはラズバーン・ケミカルス社(Rathburn Chemicals Ltd.)(スコットランド、ウォーカーバーン)から得、2′,7′−ジクロロフルオレセインはシグマ・ケミカルス社(Sigma Chemical Co.(米国ミヅーリ州セントルイス)から得た。メタノール性HCLおよび2,2−ジメトキシプロパンはスペルコ社(Supelco Inc.)(米国ペンシルバニア州ベルフォンテ)から購入した。ガラス焼成シリカゲルK6プレートはワットマン・インタナショナル社(Whatman International Ltd.)(英国、メイドストーン)から得た。
【0106】
化学分析
実験の最初と最後にサンプリングした魚を乾燥物、脂肪、タンパク質、灰分およびエネルギー含量について分析した。すべての飼料と糞便サンプルを乾燥物(105℃で重量が一定になるまで乾燥することにより)、脂肪(ノルウェー規格9402、1994年に記載されているような酢酸エチル抽出により)、タンパク質(シェルテック・オートアナライザー(Kjeltec Autoanalyzer)−N*6.25により)、澱粉、灰分(550℃に加熱し一定重量になるまで)、エネルギーおよび酸化イットリウム(サンプルを湿式灰化した後ICP−AESを用いて)について分析した。飼料、糞便および全魚サンプルのエネルギー含量をパー(Parr)1271爆発熱量計を用いて断熱熱量測定法により決定した。
【0107】
脂質抽出および脂肪酸分析
全脂質をホモジナイズした鰓、肝臓および心臓からフォルク(Folch)[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリ(1957年)第226巻第497〜509頁(J Biol Chem 1957 226:497−509)]により記載された方法を用いて抽出した。鰓からのクロロホルム−エタノール相を窒素下で乾燥しヘキサンに溶解した。リン脂質(PL)、トリアシルグリセロール(TAG)および遊離脂肪酸(FFA)を薄層クロマトグラフィー(TLC)により石油エーテル、ジエチルエーテル、および酢酸(113:20:2容量比)の混合物を移動相として用いて分離した。脂質をTLCプレートにメタノール中0.2%(w/v)2′,7′−ジクロロフルオレセインを噴霧することにより視覚化し、既知の標準とUV光下で比較することによりそれらを同定した。
【0108】
PL、FFAおよびTAGに相当するスポットを掻き取ってガラス管に入れ、次いでメイソンおよびウォラー(Mason and Waller)[アナリティカル・ケミストリ(1964年)第36巻第583頁(Anal Chem 1964 36:583)]の方法により2,2−ジメトキシプロパン、メタノール性HCLおよびベンゼンを用い室温で一夜トランス−メチル化した。メチルエステルを非極性溶融毛細管カラム上でガスクロマトグラフィーにより基本的にレシェー(Roesjoe)[フィッシュ・ヒュジオロジカル・バイオケミストリ(1994年)第13巻第119〜132頁(Fish Physiol Biochem 1994 13:119−132)]により記載されている通りに分離した。脂肪酸(FAs)のメチルエステルをガスクロマトグラフ[プログラマブル スリット付き/スリット無し注入器を備えたパーキン−エルマー オート・システムGC(Perkin−Elmer Auto system GC)]中でCPワックス52カラム(長さ25m、内径0.25mm、膜厚0.2μm)、炎イオン化検知器および1022データ・システムを用いて分離した。キャリア・ガスはHeであり、注入器と検知器の温度は280℃であった。オーブン温度を50℃〜180℃に10℃/分の速度で上げ、次いで240℃に0.7℃/分の速度で上げた。各脂肪酸の相対的存在量をその脂肪酸に相当するピーク下の面積を測定することにより決定した。
【0109】
計算
見掛け消化率係数(ADC)をオーストレング(Austreng)[アクアカルチャー(1978年)第13巻第265−272頁(Aquaculture,1978 13:265−272)]により記載されているように計算した。条件因子(CF)、肝臓体指数(HSI)、特異成長因子(SGR)および熱単位成長係数(TGC)を体重および体長の個々の記録に基づいて下記のように計算した。
【数1】

【0110】
統計的分析
すべてのデータは一元配置分散分析(ANOVA)にかけ、差をダンカン(Duncan)多重範囲検定により階層化した。有意レベルを5%に設定した。
【0111】
体および肝臓組成
1.5%TTA飼料で飼養した魚は体脂質レベル(9.6%)が対照飼料で飼養した魚(10.6%)よりも低かった(表5)。対照飼料で飼養した魚とTTA飼料で飼養した魚の間には統計的に有意の差は見られなかった(表6)。肝臓体指数は1.5%TTA飼料で飼養した魚(1.2%)では対照飼料で飼養した魚(1.1%)よりも有意に高かった(表6)。
【0112】
【表5】

【0113】
【表6】

【0114】
肝臓、鰓および心臓の脂肪酸組成
肝臓、鰓および心臓のPL、TAGおよびFFAの脂肪酸組成を表7、8および9に示す。1.5%TTA飼料で飼養した大西洋サケの鰓(0.8%)および心臓(0.7%)のPL画分に導入した。TTAはまた鰓のTGおよびFFA画分に導入した(表7)。TTAの痕跡量およびそのΔ9デサチュラーセ(不飽和化酵素)生成物を肝臓脂質に導入したが、一方、心臓および鰓からの脂質にはΔ9デサチュラーセ(不飽和化酵素)生成物は回収されなかった。
【0115】
肝臓、鰓および心臓中のn−3脂肪酸(FAs)の百分率は魚に与えられた飼料によっても決まる。EPA+DHAの百分率は鰓と心臓のすべての脂質画分において1.5%TTA飼料で飼養された魚の方が対照魚におけるよりも有意に高かった。一方、肝臓では、TTAはDHAの百分率の増加は中程度に過ぎず、EPAの百分率はやや低下した。パルミチン酸(16:0)と全飽和脂肪酸(FAs)の和は、鰓、心臓および肝臓のPL画分において、1.5%TTA飼料で飼養した魚の方が対照飼料で飼養した魚よりも有意に低かった(表7、8、9)。単不飽和脂肪酸(FA)の和は1.5%TTAで飼養した魚では対照飼料で飼養した魚におけるよりも鰓のTGおよびFFA画分が有意に低かった(表8)。これとは対照的に、肝臓のPLおよびTAG画分における単不飽和脂肪酸(FAs)の和の百分率はTTAの用量を多くして飼養した魚ほど高かった(表9)。
【0116】
【表7】

【0117】
【表8】

【0118】
【表9】

【0119】
2.4 発酵大豆タンパク質材料を含む本発明の組成物の生物学的効果
化学薬品
ゲンダキシン(Gendaxin(登録商標))をノルウェー国ベルゲンのアクシメド社から得た。ゲンダキシン(Gendaxin(登録商標))の1カプセルは35mgのイソフラボン、就中ゲニステイン(Genistein)10mgおよびダイゼイン(Daidzein)15mgを含む。
【0120】
脂質分析
血漿脂質をテクニコン・アクソン(Technicon Axon)システム(マイルズ社(Miles)製、ニューヨーク州タリタウン(Tarrytown))でバイエル社(Bayer)製トリグリセリドキット、総コレステロール(バイエル社製、ニューヨーク州Tarrytown)、およびビオメリエ社(bioMerieux)製リン脂質を含有するコリン用のPAP150キットを用いて酵素的に測定した。結果をmmol/lで示し、下記表10に示す。
【0121】
【表10】

【0122】
上述のデータからゲンダキシンを魚の飼料に添加するとサケの血漿の脂肪酸組成に陽性効果がある。コレステロール、トリグリセリドおよびリン脂質レベルは0.25%ゲンダキシンを魚の飼料に添加すると対照に比べてすべて低下した。さらに、ゲンダキシンとTTAを添加すると追加的に血漿の脂肪酸が向上した。
【0123】
酵素検定
脂肪酸アシルCoAオキシダーゼ活性をペルオキシソーム肝臓画分中で先に記載したように測定した[スモール ジー・エム、バーデット ケイ、コンノック エム・ジェイ(1985年) バイオケミカル・ジャーナル 第227巻第205〜10頁(Small GM,Burdett K,Connock MJ(1985) Biochem J 227:205−10)]。結果を全タンパク質当りの脂肪酸アシルCoAオキシダーゼ活性として表し、下記表11に示した。
【0124】
【表11】

【0125】
上記データからゲンダキシンとTTAを魚用飼料に添加するとβ酸化が大幅に増加するのでβ酸化に陽性効果があることが明らかである。
【0126】
実施例3
実施例1に示した実験設定に合わせて、本発明者は雄ウィスター・ラット(表12)に下記飼養条件で飼養試験を行った。
脂肪 30%
タンパク質 20%
繊維 5%
スクロース 10%
AIN93Gミネラル・ミックス 3.5%
AIN−93ビタミン・ミックス 1.0%
残部: 澱粉
【0127】
脂肪組成はラード30%、またはラードの2.5〜5%を魚油で交換したものか、あるいはラードの0.15%をTTAで交換したものである。タンパク質材料はミルクタンパク質(カゼイン)20%、またはその半分を魚タンパク質もしくは「ビオプロテイン」で交換したものである。
【0128】
【表12】

【0129】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】TTAによる脂肪酸アシルCoA活性の増加が大豆油、オリーブ油および魚油により増強されることを示す図である。
【図2】TTAのリン脂質低下効果がヒマワリ油、大豆油および魚油により増強されることを示す図である。
【図3】TTAのコレステロール低下効果が入るオリーブ油、大豆油および魚油により増強されることを説明する図である。
【図4】TTAのトリアシルグリセロール低下効果がオリーブ油、ヒマワリ油、大豆油および魚油により増強されることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調製品であって、下記1)および2)の組合せ:
1)植物油および/または魚油と、
2)非ベータ酸化性脂肪酸体であって、
(a)一般式R″−COO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、R′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含み、かつR″は水素原子または1〜4個の炭素原子を含むアルキル基である)、および/または
(b)一般式(I)
【化1】

(式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基、nは0〜11の整数、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(c)一般式(II)
【化2】

(式中、A1、A2およびA3は独立に選択され、酸素原子、イオウ原子またはN−R4基であって、R4は水素原子または1〜5の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
式中、式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または1〜23個の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基、
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(a)〜(c)の化合物の塩、プロドラッグまたは複合体
により表される非ベータ酸化性脂肪酸体を含む1種以上の化合物と
の組合せを含む調製品の、インスリン耐性、肥満、糖尿病、脂肪肝、高コレステロール血症、異常脂質血症、動脈硬化、冠状動脈性心臓病、血栓症、狭窄、二次狭窄、心筋梗塞、卒中、高血圧、内皮機能不全、凝血促進状態、多膿疱性卵胞症候群、代謝症候群、癌、炎症および増殖性皮膚疾患の予防および/または治療用の医薬または栄養組成物を調製するための使用。
【請求項2】
前記癌の予防および/または治療は、原発性および続発性腫瘍、腫瘍の成長、原発性腫瘍の結合組織への侵襲、および二次的腫瘍の形成の阻害を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記炎症疾患は、免疫媒介障害、例えばリューマチ性関節炎、全身性血管炎、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、皮膚筋炎、多発性筋炎、種々の自己免疫内分泌障害(例えば甲状腺炎および副腎炎)、種々の免疫媒介神経障害 (例えば、多発性硬化症および重症筋無力症)、種々の心臓血管障害(例えば、心筋炎、うっ血性心不全、動脈硬化症、安定および不安定狭心症、並びにウェゲナー肉芽腫症)、炎症性腸疾患、クローン疾患、非特異的結腸炎、膵炎、腎炎、肝臓の胆汁うっ帯/線維症、並びに器官移植後の急性および慢性同種移植拒絶反応、並びに乾癬アトピー性皮膚炎、非特異的皮膚炎、原発性刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、表層魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖症、前悪性太陽誘発角化症、および脂漏症のような増殖性皮膚疾患、並びに例えばアルツハイマー症または低下した/改善性認知機能のような炎症成分を有する疾患を含む群から選ばれる、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記増殖性皮膚疾患は、乾癬、アトピー性皮膚炎、非特異的皮膚炎、原発性刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、表層魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖症、前悪性太陽誘発角化症、および脂漏症を含む群から選ばれる、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
動物用飼料であって、通常の飼料成分と、下記1)および2)の組合せ:
1)植物油および/または魚油と、
2)非ベータ酸化性脂肪酸体であって、
(a)一般式R″−COO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、R′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含み、かつR″は水素原子または1〜4個の炭素原子を含むアルキル基である)、および/または
(b)一般式(I)
【化3】

(式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基、nは0〜11の整数、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(c)一般式(II)
【化4】

(式中、A1、A2およびA3は独立に選択され、酸素原子、イオウ原子またはN−R4基であって、R4は水素原子または1〜5の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
式中、式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または1〜23個の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基、
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(a)〜(c)の化合物の塩、プロドラッグまたは複合体
により表される非ベータ酸化性脂肪酸体を含む1種以上の化合物と
の組合せを含む動物用飼料の、動物の総体脂質組成を改善するための使用。
【請求項6】
前記全体脂質組成の改善は前記総脂質レベルを低下させることを含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記総脂質レベルの改善は前記総体飽和脂肪酸レベルを低下させることを含む、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記総脂質組成の改善は、総体n−3脂肪酸レベルを増加させることを含む、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
前記植物油または魚油は、多不飽和脂肪酸を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記植物油は、ヒマワリ油、大豆油およびオリーブ油を含む群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物または動物用飼料は、動物に投与または飼養される給餌される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記動物は、人間である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記前記動物は、家禽、ウシ、ヒツジ、ヤギ、またはブタ哺乳動物のような農業用動物である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記動物は、イヌやネコのような、家畜またはペットである、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記動物は、サケ、タラ、テラピア、二枚貝、カキ、イセエビ、またはカニのような、魚または貝である、請求項11に記載の使用。
【請求項16】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、人間による消費については約1〜200mg/kg、好ましくは5〜50mg/kg、動物による消費については約1〜2000mg/kg、好ましくは5〜500mg/kgの日用量を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記前記組成物は、油は、人間による消費については約1〜300mg/kg、好ましくは10〜150mg/kg、動物による消費については1mg/kgから毎日の全脂肪消費量までの日用量を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物はリン脂質であり、前記リン脂質はホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、および/またはジホスファチジルグリセロールを含む群から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項19】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、非ベータ酸化性脂肪酸である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、テトラデシルチオ酢酸(TTA)、テトラデシルセレノ酢酸および/または3−チア−15−ヘプタデシンであるである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
Xはイオウ原子またはセレン原子である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物はリン脂質であり、前記リン脂質はホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、および/またはジホスファチジルグリセロールを含む群から選択される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、ホスファチジルコリン誘導体である1,2−ジテトラデシルチオアセトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、ホスファチジルエタノールアミン誘導体である1,2−ジテトラデシルチオアセトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、モノ−、ジ−またはトリ−アシルグリセリドである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、テトラデシルチオ酢酸(TTA)を含むトリアシルグリセリドである、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
組成物であって、下記1)および2)の組合せ:
1)植物油および/または魚油、および
2)非ベータ酸化性脂肪酸体であって、
(a)一般式R″−COO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、R′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含み、かつR″は水素原子または1〜4個の炭素原子を含むアルキル基である)、および/または
(b)一般式(I)
【化5】

(式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基、nは0〜11の整数、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(c)一般式(II)
【化6】

(式中、A1、A2およびA3は独立に選択され、酸素原子、イオウ原子またはN−R4基であって、R4は水素原子または1〜5の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
式中、式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または1〜23個の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基、
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(a)〜(c)の化合物の塩、プロドラッグまたは複合体
により表される非ベータ酸化性脂肪酸体を含む1種以上の化合物と
の組合せを含むことを特長とする組成物。
【請求項28】
前記植物油または魚油は多不飽和脂肪酸を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記植物油はヒマワリ油、大豆油およびオリーブ油を含む群からから選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物は、さらに通常の飼料成分を含む動物用飼料である、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記動物用飼料は魚用飼料である、請求項31に記載の組成物。
【請求項32】
前記魚用飼料はサケ用飼料である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記通常の飼料成分は、魚肉および/または魚油を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項34】
さらに発酵大豆タンパク質材料を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項35】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、非ベータ酸化性脂肪酸である、請求項27に記載の組成物。
【請求項36】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、テトラデシルチオ酢酸(TTA)を含むトリアシルグリセリドである、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
Xはイオウ原子またはセレン原子である、請求項27に記載の組成物。
【請求項38】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物はリン脂質であり、前記リン脂質はホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、および/またはジホスファチジルグリセロールを含む群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項39】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、ホスファチジルコリン誘導体である1,2−ジテトラデシルチオアセトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンである、請求項27に記載の組成物。
【請求項40】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、ホスファチジルエタノールアミン誘導体である1,2−ジテトラデシルチオアセトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンである、請求項27に記載の組成物。
【請求項41】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、モノ−、ジ−またはトリ−アシルグリセリドである、請求項27に記載の組成物。
【請求項42】
前記非ベータ酸化性脂肪酸体を含む化合物は、テトラデシルチオ酢酸(TTA)を含むトリアシルグリセリドである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
改善された脂肪酸組成を有する動物系製品の製造方法であって、前記方法は当該動物から前記製品を製造すべき動物を通常の飼料成分と、下記1)および2)の組合せ:
1)植物油および/または魚油、および
2)非ベータ酸化性脂肪酸体であって、
(a)一般式R″−COO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、R′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含み、かつR″は水素原子または1〜4個の炭素原子を含むアルキル基である)、および/または
(b)一般式(I)
【化7】

(式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基、nは0〜11の整数、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(c)一般式(II)
【化8】

(式中、A1、A2およびA3は独立に選択され、酸素原子、イオウ原子またはN−R4基であって、R4は水素原子または1〜5の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
式中、式中、R1、R2、およびR3は、
i)水素原子、または1〜23個の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基、
ii)式CO−Rを有する基であって、Rは飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、前記Rの主鎖が1〜25個の炭素原子を含むもの、または
iii)式CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xはイオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基またはSO2基であり、nは0〜11の整数であり、およびR′は飽和もしくは不飽和の、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキル基であり、ここに前記R′の主鎖は13〜23個の炭素原子を含み、かつ任意に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、酸素原子、CH2基、SO基およびSO2基を含む群から選択された1種以上のヘテロ基を含む、
iv)−PO3CH2CHNH3COOH(セリン)、PO3CH2CH2NH3(エタノールアミン)、PO3CH2CH2N(CH33(コリン)、PO3CH2CHOHCH2OH(グリセロール)およびPO3(CHOH)6(イノシトール)を含む群から選択された任意のもの、を表し、
ここに、R1、R2、またはR3はi)、ii)、iii)またはiv)から独立に選択されるが、R1、R2、またはR3の少なくとも1つはiii)により定義される)、および/または
(a)〜(c)の化合物の塩、プロドラッグまたは複合体
により表される非ベータ酸化性脂肪酸体を含む1種以上の化合物
とを含む動物用飼料で飼養することを含む方法。
【請求項44】
前記動物用飼料は、さらに発酵大豆タンパク質材料を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記動物系製品は、食肉製品である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記動物系製品は、油系製品である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項47】
前記動物系製品は、皮膚系製品である、請求項43または44に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−506773(P2008−506773A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522457(P2007−522457)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国際出願番号】PCT/NO2005/000271
【国際公開番号】WO2006/009464
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507020543)
【Fターム(参考)】