説明

タービン温度測定器および温度測定器

【課題】 応答速度を確保し、かつ振動を抑制するタービン温度測定器を提供することを目的とする。
【解決手段】 シース型熱電対を金属製保護管に挿入し、シース型熱電対の先端部を金属製保護管の先端から突出させたタービン内蒸気の温度を測定するタービン温度測定器において、シース型熱電対のシース表面の金属製保護管先端相当位置から先端方向に5mmのうちいずれかの位置を起点とし、後方50mmから100mmの長さ方向のうちのいずれかの位置を終点とする範囲の全周にクロムカーバイトを0.07〜0.2mmの厚さで溶射によりコーティングし、かつ、シースの外径を先端部軸方向10〜20mmの範囲で直径4〜8mmの細い外径に形成し、先端部以外は直径10〜20mmの外径に形成したタービン温度測定器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン内ガス流体の温度を測定するタービン温度測定器および温度測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2に、タービン内のガス流体の温度を測定する従来の代表的なタービン温度測定器を示す。
【0003】
1はシース型熱電対2を保護するための金属製保護管である。シース型熱電対2は熱電対芯線を酸化マグネシウム(MgO)等の無機絶縁材を介在させてSUS316等の金属シースに収容する。リング3はシース型熱電対2に溶接により固定され、シース型熱電対2を金属製保護管1に固定し、かつタービン内とタービン外側雰囲気を遮断する。この温度測定器をタービン壁に設置するためのアダプター4は、金属製保護管1と溶接される。ネジ5はリング3をアダプター4に押し付ける。端子箱6はシース型熱電対2の末端に取付けられた熱電対芯線を外部のケーブルと接続する。
【0004】
本温度測定器は、リング3のアダプター4の外側に刻設した雄ネジをタービン壁に刻設した雌ネジに螺着する。アダプター4より下方がタービン内部に挿入されて高流速ガスの温度を測定する。挿入長はおよそ1mである。
【0005】
シース型熱電対2のシース熱電対と金属製保護管1とはリング3により固定されている。リング3より先の部分は測定時の温度差及び材質の違いによる熱膨張の差を吸収するために、シース型熱電対2と金属製保護管1は固定されていない。
【特許文献1】特開平08−075562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の温度測定器には、以下の問題点があった。
【0007】
金属製保護管1は厚肉の金属で作り、また径を太くすることによって測定対象である高流速ガスによる振動を微小に抑えることができるが、シース型熱電対2については振動を抑えるために強度部品であるシース金属を厚肉にして径を大きくすると、熱容量が増して測定対象であるガスの温度変化に対する測定の応答速度が遅くなるため、応答速度を確保し、かつ振動を抑制することは困難であった。
【0008】
シース型熱電対2に振動が生じると、前記の構造上、リング3を支点として振動するため、金属製保護管1先端部とシース型熱電対2との接触により、シース型熱電対2外表面のシースが磨耗して終には破損し、ガスがシース内に侵入して絶縁が破壊され、センサーとしての機能を失う。このため、測定器としての寿命は短いものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、応答速度を確保し、かつ振動によるシースの磨耗を抑制すべく、シース型熱電対を金属製保護管に挿入し、シース型熱電対の先端部を金属製保護管の先端から突出させたタービン内蒸気の温度を測定するタービン温度測定器において、シース型熱電対のシース表面の金属製保護管先端相当位置から先端方向に5mmの範囲のうちのいずれかの位置を起点とし、後方50mmから100mmの長さ方向のうちのいずれかの位置を終点とする範囲の全周にクロムカーバイトを0.07〜0.2mmの厚さで溶射によりコーティングし、かつ、シースの外径を先端部軸方向10〜20mmの範囲で直径4〜8mmの細い外径に形成し、先端部以外は直径10〜20mmの外径に形成したタービン温度測定器とした。
【0010】
また、本発明は、応答速度を確保し、かつ振動によるシースの磨耗を抑制するものであって、具体的には、シース型熱電対のシース表面の金属製保護管先端相当位置から先端方向に5mmの範囲のうちのいずれかの位置を起点とし、後方70mmの長さ方向位置を終点とする範囲の全周にクロムカーバイトを0.07〜0.2mmの厚さで溶射によりコーティングし、かつ、シースの外径を先端部軸方向16mmの範囲で直径6mmの細い外径に形成し、先端部以外は15mmの外径に形成したタービン温度測定器とした。
【0011】
さらに、本発明は、応答速度を確保し、かつ振動によるシースの磨耗を抑制するものであって、シース型熱電対の表面にクロムカーバイトに代えてカーバイト系合金または耐磨耗性セラミックを溶射または蒸着によりコーティングしたものである。
【0012】
さらにその上に、本発明は、応答速度を確保し、かつ振動によるシースの磨耗を抑制するものであって、シース型熱電対の表面にクロムカーバイト、カーバイト系合金または耐磨耗性セラミックを溶接または蒸着によりコーティングした高流速の液体又は気体を測定対象とする温度測定器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上述のように、シース型熱電対を金属製保護管に挿入し、シース型熱電対の先端部を金属製保護管の先端から突出させたタービン内蒸気の温度を測定するタービン温度測定器において、シース型熱電対のシース表面の金属製保護管先端相当位置から先端方向に5mmの範囲のうちのいずれかの位置を起点とし、後方50mmから100mmの長さ方向のうちのいずれかの位置を終点とする範囲の全周にクロムカーバイトを0.07〜0.2mmの厚さで溶射によりコーティングし、かつ、シースの外径を先端部軸方向10〜20mmの範囲で直径4〜8mmの細い外径に形成し、先端部以外は直径10〜20mmの外径に形成したタービン温度測定器であるので、応答速度を確保し、かつ振動によるシースの磨耗を抑制できる。
【0014】
また、本発明は、シース型熱電対のシース表面の金属製保護管先端相当位置から先端方向に5mmの範囲のうちのいずれかの位置を起点とし、後方70mmの長さ方向位置を終点とする範囲の全周にクロムカーバイトを0.07〜0.2mmの厚さで溶射によりコーティングし、かつ、シースの外径を先端部軸方向16mmの範囲で直径6mmの細い外径に形成し、先端部以外は15mmの外径に形成したタービン温度測定器であるので、応答速度を確保し、かつ振動によるシースの磨耗を抑制できる。
【0015】
さらに、本発明は、シース型熱電対の表面にクロムカーバイトに代えてカーバイト系合金または耐磨耗性セラミックを溶射または蒸着によりコーティングしたタービン温度測定器であるので、応答速度を確保し、かつ振動によるシースの磨耗を抑制できる。
【0016】
さらにその上に、本発明は、シース型熱電対の表面にクロムカーバイト、カーバイト系合金または耐磨耗性セラミックを溶接または蒸着によりコーティングした高流速の液体又は気体を測定対象とする温度測定器としたので、応答速度を確保し、かつ振動によるシースの磨耗を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明によるシース型熱電対を図1に示す。図1は図2のシース型熱電対2の先端部を取り出して描いたもので、全体構成は図2と同じである。
【0018】
本発明のタービン温度測定器は、タービン内蒸気の温度を測定するものである。
【0019】
図1に示すように、本発明ではシース型熱電対2のシース表面に、クロムカーバイトを0.07〜0.2mmの厚さを目安として溶射によりコーティングしている。コーティング範囲はシース型熱電対2のシース先端部の前記振動による金属製保護管1との接触部に少し余裕をとった範囲、すなわち、金属製保護管1先端に相当する位置から先端方向に5mmの範囲のうちのいずれかの位置を起点とし、後方70mmの軸方向範囲のシース表面全周である。符号7に示す範囲にクロムカーバイトをコーティングする。
【0020】
図1において、Aで示す箇所が金属製保護管1の先端位置であり、コーティングの軸方向の範囲は、aが0〜5mm、bが70mmの範囲である。
【0021】
また、シース外径はφ15mmであるが、先端部から軸方向16mmはφ6mmの細い外径としている。
【0022】
シース型熱電対2に、硬度の高いクロムカーバイトを上記のようにコーティングすることにより、シース径を細くして高流速ガスによる振動が生じたとしても、金属製保護管1との接触による磨耗を少なくすることができ、応答速度を犠牲にすることなく、長寿命のタービン温度測定器が得られる。
【0023】
図2に示す形状の温度測定器において、上記コーティングを施したシース型熱電対2を用いたものと、同一寸法、形状のコーティング無しのシース型熱電対2を用いたものとを、高流速ガス中で約半年間使用し、磨耗量を比較した結果、シースの磨耗深さは後者が2倍以上あり、コーティングがシース延命に効果があることを確かめた。
【0024】
さらに、シース型熱電対2の温度測定点である先端部のみシース径を細くすることにより、先端部の熱容量を小さくして応答速度を確保でき、同時に先端部以外は太いシース径とすることにより、振動強度を抑えてコーティングを施したシースの磨耗をより少なくして、測定器の寿命を延ばす効果が得られる。
【0025】
例えば、シース先端部外径をφ6mm、先端部以外をφ15mmとすることにより、シース外径φ6mmのシース型熱電対と同等の応答速度が得られ、かつ、振動に関しては、外径がφ15mmのシース型熱電対と同等の振動に抑えることができる。
【0026】
シース熱電対先端部のシース径は、径を細くするほど応答速度は速くなるが、細くし過ぎるとガス流れによる変形、破断が生じる。また、細径部の軸方向長さも、応答速度の確保には一定以上の長さが必要であるが、長くし過ぎるとやはり同様の問題が生じる。シース先端の細径部は外径φ4〜8mm、長さ10〜20mmとすることにより、タービン温度測定器に必要な応答速度、即ち時定数として数秒以内を満足し、かつタービン内のガス流れにより破損することはない。
【0027】
先端部以外の径については、太くすることにより振動は抑えられるが、過大に太くすることはタービン温度測定器の大型化を招き、ガス流れへ悪影響を与える。また、タービン温度測定器の製作上、経済的にも得策でない。
【0028】
これらの観点から、先端部以外のシース外径は、φ10〜20mmが妥当である。
【0029】
金属製保護管のシース型熱電対を挿入する穴の径は、シース型熱電対との熱膨張差を考慮して、シース外径より約0.5mm大きく、この金属製保護管のタービン内への挿入長は前述のとおり約1mである。
【0030】
この金属製保護管と上記形状のシース型熱電対の振動による接触と、接触によるシースの磨耗は主として金属製保護管先端から約50mmの範囲で生じる。したがって、シース表面に施すコーティングの範囲は、少なくとも保護管先端に相当する位置から先端方向に5mmの範囲のうちのいずれかの位置を起点とし、後方50mmまでの軸方向範囲とする必要があり、製作誤差、シース径の違い、製作誤差等による磨耗範囲の変化を考慮に入れても、後方100mmまでの軸方向範囲とすることで十分である。図1でいうとaを0〜5mmとし、bを50〜100mmとする軸方向範囲にコーティングすればよい。
【0031】
上記では、シース型熱電対のシースの表面にクロムカーバイトを溶射によりコーティングしたものについて述べたが、これに代えてカーバイト系合金または耐磨耗性セラミックを溶射または蒸着によりコーティングしたものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のタービン温度測定器は、タービン内の高流速ガス温度測定だけでなく、他の高流速の液体又は気体の温度測定に対しても応答速度を犠牲にすることなく、振動による短寿命を大幅に抑制した長寿命の温度計測器として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のタービン温度測定器の要部の正面図である。
【図2】従来のタービン温度測定器の正面図である。
【符号の説明】
【0034】
2…シース型熱電対
1…金属製保護管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シース型熱電対を金属製保護管に挿入し、シース型熱電対の先端部を金属製保護管の先端から突出させたタービン内蒸気の温度を測定するタービン温度測定器において、シース型熱電対のシース表面の金属製保護管先端相当位置から先端方向に5mmの範囲のうちのいずれかの位置を起点とし、後方50mmから100mmの長さ方向のうちのいずれかの位置を終点とする範囲の全周にクロムカーバイトを0.07〜0.2mmの厚さで溶射によりコーティングし、かつ、シースの外径を先端部軸方向10〜20mmの範囲で直径4〜8mmの細い外径に形成し、先端部以外は直径10〜20mmの外径に形成したタービン温度測定器。
【請求項2】
シース型熱電対のシース表面の金属製保護管先端相当位置から先端方向に5mmの範囲のうちのいずれかの位置を起点とし、後方70mmの長さ方向位置を終点とする範囲の全周にクロムカーバイトを0.07〜0.2mmの厚さで溶射によりコーティングし、かつ、シースの外径を先端部軸方向16mmの範囲で直径6mmの細い外径に形成し、先端部以外は15mmの外径に形成した請求項1記載のタービン温度測定器。
【請求項3】
クロムカーバイトに代えてカーバイト系合金または耐磨耗性セラミックを溶射または蒸着によりコーティングした請求項1または請求項2に記載のタービン温度測定器。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3の構成からなる高流速の液体または気体を測定対象とする温度測定器。

【図1】
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【図2】
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