説明

タービン車室の製造方法とそのタービン車室

【課題】大きな熱的負荷に対して適用でき、有利に製造できる熱タービン機械の内部車室を提供する。
【解決手段】熱タービン機械の車室は熱的に大きく負荷される内側層4と熱的に僅かしか負荷されない外側層5とから二層構造に形成され、その内側層4は外側層5よりも耐熱性の大きい材料を有しており、前記内側層4が9〜10重量%クロム鋼で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱タービン機械の車室並びにタービン機械における少なくとも二層構造の車室の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い熱効率を得るために多くの処置が可能である。その一つは熱流体機械特に蒸気タービンに流入する蒸気の入口温度を高めることにある。現時点において蒸気入口温度を700℃まであるいはそれ以上に高める努力が払われている。
【0003】
そのような高い蒸気入口温度は熱的負荷に耐える材料の適切な選択を必要とする。高い蒸気入口温度に対して現在の認識ではニッケル基合金が適している。もっともこの材料は通常の材料に比べて数倍高価である。
【0004】
例えば蒸気タービンのような熱流体機械においてロータおよび車室特に内部車室は熱的に大きく負荷される。蒸気タービンにおいて車室は一般に二重殻構造に形成されている。
内側ハウジングとも呼ばれる内部車室は熱応力が最も大きい蒸気膨張領域を有し、この内部車室はその外側面を外部車室内における例えば排気蒸気のような比較的低温の蒸気で洗流され冷却される。その外部車室は内部車室を包囲して配置されている。
【0005】
その内部車室は鋳造構造物として形成され、即ち、蒸気流れ領域だけが大きな熱的負荷に耐えれば済むにもかかわらず、全体がいわば鋳造で形成されている。通常、熱的負荷に耐える材料が選択され、内部車室全体に対して利用されている。もっともこれは、あまり高温とならず低い熱的負荷しか生じない部位に対しても大きな耐熱性の材料が採用されるために経済的に不利である。そのような部位に対しては、耐熱性の低い安価な材料を採用することができる。
【0006】
700℃の蒸気入口温度に適用されねばならない将来の蒸気タービンにおける内部車室は、ニッケル基合金ではかかる車室がその重量のために鋳造できないことが分かっているために、製造限度の点から製造上問題がある。
【0007】
かかる内部車室の他の問題は、例えば所定の運転時間経過後における大規模な点検の際に内部車室を開放した際に生ずる歪みにある。その歪みは意図した冷却作用のために壁厚にわたる大きな温度差のために生ずる。かかる歪みは特に内部車室の蒸気流入部位に認められる。その歪みによって熱応力が生ずる。
【0008】
特許文献1に、異なった材料で形成され互いに軸方向に溶接された複数の部分から成る車室が開示されている。
【0009】
特許文献2で、構成要素の熱的負荷の大きな部位にその耐熱性を高めるための補助材料を設けることが開示されている。
【0010】
有利に製造でき熱的負荷に耐えることができる内部車室が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1033478号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1586394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、大きな熱的負荷に対して適用でき、有利に製造できる内部車室を提供することにある。
【0013】
本発明のもう1つの課題は二層構造の車室の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
車室についての課題は、車室が少なくとも内側層と外側層とから成る少なくとも二層構造に形成され、その内側層が外側層より大きな耐熱性材料を有している熱タービン機械の車室によって解決される。
【0015】
製造方法についての課題は、− 内側層として形成された内部鋳造部品を鋳造する、− 外部鋳造品を鋳造し、その場合、内部鋳造部品が壁として利用され、外部鋳造部品が外側層として形成される、工程を含んでいる車室の製造方法によって解決される。
【0016】
本発明の有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、車室の部分部位だけを熱的負荷に耐える材料で形成する新たな方式が提案される。車室の残り部位は他の経済的に有利な材料で作られる。本発明に基づいて、車室は二層構造に形成され、その内側層は内層と呼ばれ、運転中に熱的に大きく負荷され、従って、外層と呼ばれる外側層より大きな耐熱性の材料で形成されねばならない。これによって、車室全体が耐熱性材料で形成される必要はなく、車室の一部だけを耐熱性材料で形成するだけで足りる。
【0018】
内側層はニッケル基合金で形成されていると有利である。特にニッケル基合金は熱的負荷に対して適している。この材料で未来の蒸気入口温度700℃の蒸気タービンが製造されることが特に考えられる。
【0019】
他の有利な実施態様において、内側層は625合金で形成されている。この材料は実験で実証され、製造上有利であり、また熱的負荷に耐えることが確認されている。
【0020】
外側層に対して10重量%クロム鋼が利用されると有利であり、このクロム鋼はニッケル基合金に比べて安価であるが、耐熱性は低い。
【0021】
外側層は特にGX12CrMoVNb9−1材料で形成されている。この材料はコスト的に有利であるので、外側層としての採用に適していることが確認されている。
【0022】
本発明に基づいていわば材料組合せ対として有利に、まず内側層に対して9〜10重量%クロム鋼特にGX12CrMoVNb9−1材料が選定され、外側層に対して例えばG17CrMoV5−10材料のような1〜2重量%クロム鋼が利用される。
【0023】
これによって、ニッケル基合金に比べて有利であり、それにもかかわらず、熱的に負荷される蒸気タービンにおける内部車室に適した材料組合せが得られる。
【0024】
本発明に基づいて、内側層は外側層に材料結合で結合されている。
【0025】
製造方法に向けられた解決策は本発明に基づいて、内部鋳造品および外部鋳造品が凝固中に熱処理されることにより一層発展される。その代わりに、内部鋳造品および外部鋳造品は凝固後でも熱処理することができる。引き続き熱処理が内部鋳造品および外部鋳造品の材料の、より低い焼戻し温度で一段工程において8〜12時間にわたって行われる。
【0026】
材料結合を向上するために有利に、内部鋳造品に鈎止め部、即ち、結合部のはめ合わせ部が設けられている。これによって、内部鋳造品を壁として利用する外部鋳造品は内部鋳造品に機械的により良好に結合される。
【0027】
本発明に基づいて、内部車室は上述した材料で製造され、その内側層は外側層に肉盛溶接される。その車室は有利に肉盛溶接後に熱処理される。
【0028】
以下図を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】タービン機械における車室の上側半部の斜視図。
【図2】図1の車室上側半部の縦断面図。
【図3】図2に示された車室の部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に熱流体機械の車室1の上側半部が示されている。その熱流体機械は例えば蒸気タービンである。車室1は例えば蒸気タービンの内部車室である。運転中においてロータ(図示せず)と内部車室との間を流れ方向2に蒸気が流れる。高圧蒸気タービンにおいて蒸気は600℃以上の温度および300バール以上の圧力となる。その蒸気は流れ方向2において徐々に冷え圧力が低下する。これは、内部車室の前方部位3に熱的に大きな負荷が生ずることを意味する。
【0031】
車室1はその熱的負荷に耐えるために少なくとも2つの層4、5から成っている。図1に示された実施例の車室1は内側層4とこの内側層4の周りに配置された外側層5とを有している。内側層4は外側層5よりも耐熱性の大きい材料で形成されている。
【0032】
内側層4はニッケル基合金で形成されている。外側層5は内側層4の周りに配置されている。車室1は本質的に回転中心軸線6の周りに配置され、その外側層5は回転中心軸線6に関して内側層4の周りに配置されている。
【0033】
異なった形態において、内側層4は625合金で形成されるか、10重量%クロム鋼で形成される。さらに異なった形態において、外側層5はGX12CrMoVNb9−1材料で形成することができる。これによって、特に熱的負荷に適した材料組合せ対が得られる。
【0034】
例えば幾分低い熱的負荷のような異なった熱的負荷に対しては、異なった材料組合せ対が推奨される。このために内側層4は9〜10重量%クロム鋼で形成され、外側層5は1〜2重量%クロム鋼で形成することができる。内側層4に対する材料としてGX12CrMoVNb9−1材料を、外側層5に対する材料としてG17CrMoV5−10材料を選定することができる。内側層4は外側層5に材料結合で結合される。
【0035】
車室1を製造する際、まず内側層4として形成される内部鋳造品が鋳造される。次の工程において外部鋳造品が鋳造され、その場合、内部鋳造品は壁として利用され、外部鋳造品は外側層5として形成される。
【0036】
鋳造後の凝固中に内部鋳造品および外部鋳造品が熱処理される。その熱処理は同じく凝固後に行うことができる。その熱処理は、内部鋳造品および外部鋳造品の材料の、より低い焼戻し温度に相当した焼戻し温度で一段工程において行われる。さらに8〜12時間にわたり上述の焼戻し温度で熱処理される。
【0037】
材料結合を向上するために、内部鋳造品に鈎止め部、即ち、結合部のはめ合わせ部を設けることができる。これにより、外部鋳造品を内側層4により良好に配置することができる。
【0038】
図2に図1の車室1が縦断面図で示されている。その場合、内側層4は前方部位3に限定して上述したように外側層5上に設けられている。前方部位3から離れた後方部位7において、そこの熱的負荷が低いときには車室1の二層構造を不要とすることができる。その車室1は多層構造に形成でき、個々に選択される材料は熱的負荷に合わされる。
【0039】
図3に図2における車室が部分断面斜視図で示されている。
【0040】
外側層5に切欠き効果によるクラック(亀裂)が生じないようにするために、接触部8において内側層4の厚さが変化されている。また内側層4の厚さは、局所的に異なる熱的負荷に対抗するために変化することができる。
【0041】
図1〜図3に示された車室が熱的負荷を低減するために追加的に断熱被覆を備えることは意に適っている。
【符号の説明】
【0042】
1 車室
4 内側層
5 外側層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱タービン機械の車室(1)であって、
車室(1)が少なくとも内側層(4)と外側層(5)とから少なくとも二層構造に形成され、その内側層(4)が外側層(5)よりも耐熱性の大きい材料を有しており、前記内側層(4)が9〜10重量%クロム鋼で形成されていることを特徴とする熱タービン機械の車室。
【請求項2】
内側層(4)がGX12CrMoVNb9−1材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車室。
【請求項3】
外側層(5)が内側層(4)の周りに配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車室。
【請求項4】
外側層(5)が回転軸線に関して内側層(4)の周りに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車室。
【請求項5】
外側層(5)が1〜2重量%クロム鋼で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車室。
【請求項6】
外側層(5)がG17CrMoV5−10材料で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の車室。
【請求項7】
内側層(4)が外側層(5)に材料結合で結合されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車室。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の少なくとも二層構造の車室(1)の製造方法であって、
a)内側層(4)として形成される内部鋳造部品を鋳造する、
b)外部鋳造品を鋳造し、その場合、内部鋳造部品が壁として利用され、外部鋳造部品が外側層(5)として形成される、工程を含んでいることを特徴とする車室(1)の製造方法。
【請求項9】
内部鋳造品および外部鋳造品が凝固中に熱処理されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
内部鋳造品および外部鋳造品が凝固後に熱処理されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
熱処理が内部鋳造品および外部鋳造品の材料の、より低い焼戻し温度で一段工程において8〜12時間にわたって行われることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
材料結合を向上するために内部鋳造品に鈎止め部が設けられていることを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車室(1)を製造するために利用されることを特徴とする請求項8ないし12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
内側層(4)が外側層(5)に肉盛溶接されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車室(1)を製造する方法。
【請求項15】
車室(1)が肉盛溶接後に熱処理されることを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140961(P2012−140961A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5323(P2012−5323)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2010−519422(P2010−519422)の分割
【原出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】