説明

ターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造

【課題】軸受ハウジングのハウジング本体の内部にオイルジャケットと水ジャケットとを容易に形成することができコスト低減を図ることができるターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造を提供する。
【解決手段】ターボチャージャの回転軸31を回転可能に支持する軸受孔15を中心部に有する軸受ハウジング10にオイルジャケット20と水ジャケット21とがそれぞれ形成される。軸受ハウジング10の主体部をなすハウジング本体11の下半部領域にはオイルジャケット20が形成される。ハウジング本体11の上半部領域内には、下半部領域にはみ出すことなく水ジャケット21が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造において、冷却効率を高めるために、図8と図9に示すように、軸受ハウジング110の主体部をなすハウジング本体111の内部にオイルジャケット120と水ジャケット121とがそれぞれ形成された構造のものが知られている。
また、水ジャケット121のハウジング本体111のタービン側フランジ112が形成される端部寄り部分においては、軸受孔115の周囲を囲む環状空間121aに形成されている。
なお、軸受ハウジングの主体部をなすハウジング本体に冷却用のオイルジャケットと水ジャケットとがそれぞれ形成されたターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造において、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−284922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図8と図9に示す従来のターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造において、軸受ハウジング110を鋳造によって形成する際、軸受ハウジング110のハウジング本体111の内部にオイルジャケット120と水ジャケット121とを鋳造によって同時に形成するために、鋳造型(特に、オイルジャケット120と水ジャケット121とにそれぞれ対応する少なくとも二つの中子型)を複雑に形成しなければならずコスト高となっている。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、軸受ハウジングのハウジング本体の内部にオイルジャケットと水ジャケットとを容易に形成することができコスト低減を図ることができるターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造は、ターボチャージャの回転軸を回転可能に支持する軸受孔を中心部に有する軸受ハウジングにオイルジャケットと水ジャケットとがそれぞれ形成されたターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
前記軸受ハウジングの主体部をなすハウジング本体の下半部領域にはオイルジャケットが形成され、
前記ハウジング本体の上半部領域内には、前記下半部領域にはみ出すことなく水ジャケットが形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、オイルジャケットをハウジング本体の下半部領域に形成し、水ジャケットをハウジング本体の下半部領域にはみ出すことなく上半部領域内に形成することによって、オイルジャケットと水ジャケットとの形状を従来のものと比較して単純化することができる。
このため、軸受ハウジングを鋳造型によって製造する場合において、ハウジング本体の内部に対するオイルジャケットと水ジャケットとを鋳造によって同時に形成するためにの中子型の形状を単純化してコスト低減を図ることが可能となる。
【0008】
請求項2に係るターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造は、請求項1に記載のターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
水ジャケットは、ハウジング本体の上半部に開口する給水側の水通路と、排出側の水通路とが孔明け加工によってそれぞれ形成されると共に、前記給水側の水通路と排出側の水通路との相互の奥側部が連通されることによって構成されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、孔明け加工によってハウジング本体の上半部に開口する給水側の水通路と、排出側の水通路とを連通して形成することで水ジャケットを容易に構成することができる。このため、水ジャケットに対応する中子型が不要となり、コスト低減に効果が大きい。
【0010】
請求項3に係るターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造は、請求項2に記載のターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
給水側の水通路と、排出側の水通路とのそれぞれの開口部は、ハウジング本体の上半部の一側面に隣接して配設されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、ハウジング本体の上半部の一側面に給水側の水通路と、排出側の水通路とのそれぞれの開口部を隣接して配設することで、給水側の水通路に対する供給管と、排出側の水通路に対する排出管との接続が容易となる。
【0012】
請求項4に係るターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造は、請求項3に記載のターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
ハウジング本体の上半部の他側面には、給水側の水通路と排出側の水通路との相互の奥側部を連通する連通路が孔明け加工によって形成され、
前記ハウジング本体の上半部の他側面に開口する前記連通路の開口部は密閉栓によって塞がれていることを特徴とする。
【0013】
前記構成によると、孔明け加工によって形成される連通路によって給水側の水通路と排出側の水通路との相互の奥側部を連通することで、水ジャケットを良好に構成することができる。
【0014】
請求項5に係るターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造は、請求項4に記載のターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
回転軸において、本体ハウジングの両端付近にはOリングがそれぞれ配置され、
水ジャケットに対応するOリング側のオイルジャケットの一部にシール冷却部を形成することを特徴とする。
【0015】
前記構成によると、上半部領域から重力により落下する水ジャケットにより冷却されたオイルによって、排気の高温にさらされる水ジャケットに対応する側のOリングの下半部領域を有効に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施例1に係る軸受ハウジングの冷却構造が採用されたターボチャージャを示す縦断面図である。
【図2】同じく軸受ハウジングを示す斜視図である。
【図3】同じく軸受ハウジングの平面図である。
【図4】同じく軸受ハウジングの図3のIV矢視図である。
【図5】同じく軸受ハウジングの図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】同じく軸受ハウジングの図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】別例に係るターボチャージャを示す縦断面図である。
【図8】従来の軸受ハウジングを示す縦断面図である。
【図9】同じくオイルジャケットと水ジャケットとを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0018】
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、ターボチャージャは、タービンハウジング1と、コンプレッサハウジング2と、軸受ハウジング10と、タービンホイール18と、コンプレッサインペラ19と、回転軸31とを備えている。
【0019】
軸受ハウジング10は、中心部に軸受孔15が貫設されたハウジング本体11と、このハウジング本体11の一端側外周面に形成されたタービン側フランジ12と、ハウジング本体11の他端側外周面に形成されたコンプレッサ側フランジ13とを備えている。
ハウジング本体11の軸受孔15には、軸受部材30を介して回転軸31が回転可能に組み付けられる。
回転軸31の一端部にはタービンホイール18が装着され、同回転軸31の他端部にはコンプレッサインペラ19が装着されている。また、回転軸31において、本体ハウジング11の内部をタービンハウジング1及びコンプレッサハウジング2側からシールするため、Oリング14a、14bがハウジング本体11の両端付近にそれぞれ配置されている。
そして、軸受ハウジング10のタービン側フランジ12には、タービンホイール18に対応するタービンハウジング1がボルト等によって締結され、コンプレッサ側フランジ13にはコンプレッサインペラ19に対応するコンプレッサハウジング2がボルト等によって締結される。
【0020】
図5と図6に示すように、軸受ハウジング10のハウジング本体11の下半部領域にはオイルジャケット20が形成されている。
ハウジング本体11の上半部領域内には、下半部領域にはみ出すことなく水ジャケット21が形成されている。
また、水ジャケット21は、ハウジング本体11の上半部の一側面に開口する給水側の水通路22と、排水側の水通路23とが孔明け加工によってそれぞれ形成されると共に、給水側の水通路22と排水側の水通路23との相互の奥側部が連通されることによって構成されている。
【0021】
この実施例1において、ハウジング本体11の上半部の一側面には、上下方向に平坦な座面16が形成されている。そして、座面16の上下部に隣接して給水側の水通路22の開口部と、排水側の水通路23との開口部とが配置されている。
すなわち、この実施例1において、給水側の水通路22は、座面16の下部寄り部分から反対側面に向け、かつタービン側フランジ12が形成される側のハウジング本体11の一端部に接近するように斜め上方へドリルによって孔明け加工されることで形成されている。
また、排水側の水通路23は、座面16の上部寄り部分から反対側面に向け、かつタービン側フランジ12に接近するように水平方向へドリルによって孔明け加工されることで形成されている。
そして、ハウジング本体11の座面16には、接続フランジ26がボルト等によって取り付けられる。この接続フランジ26には、給水側の水通路22の開口部に連通する供給管27の端部と、排水側の水通路23の開口部に連通する排出管28の端部とが固着されている。
【0022】
また、この実施例1において、図3と図6に示すように、ハウジング本体11の上半部の他側面には、給水側の水通路22と排水側の水通路23との相互の奥側部を連通する連通路24が孔明け加工によって形成されている。
そして、ハウジング本体11の上半部の他側面に開口する連通路24の開口部は、鋼球等の密閉栓25が圧入されることによって密閉されている。
【0023】
この実施例1に係るターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造は上述したように構成される。
したがって、オイルジャケット20をハウジング本体11の下半部領域に形成し、水ジャケット21をハウジング本体11の下半部領域にはみ出すことなく上半部領域内に形成することによって、オイルジャケット20と水ジャケット21との形状を単純化することができる。
また、水ジャケット21は、孔明け加工によって形成される給水側の水通路22と排水側の水通路23と、これら両水通路22、23の奥側部を連通する連通路24によって容易に構成することができる。このため、水ジャケットに対応する中子型が不要となり、コスト低減に効果が大きい。
【0024】
また、ハウジング本体11の上半部の一側面に形成された座面16の上下部に隣接して給水側の水通路22の開口部と、排水側の水通路23との開口部とが配置されている。
このため、ハウジング本体11の座面16に、接続フランジ26をボルト等によって取り付けることによって、接続フランジ26の供給管27と排出管28とを、給水側の水通路22と、排水側の水通路23とにそれぞれ連通させて接続することができ、接続が容易となる。
【0025】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1においては、水ジャケット21が、孔明け加工によってそれぞれ形成される給水側の水通路22と、排水側の水通路23と、連通路24とを備えて構成される場合を例示したが、給水側の水通路と、排水側の水通路との相互の奥側部を連通させてもこの発明を実施することができる。
また、図7に示すように、ハウジング本体11の下半部領域に形成されたオイルジャケット20の一部をOリング14a側に膨出させたシール冷却部29を形成してもよい、このように形成することで、上半部領域から重力により落下する水ジャケット21により冷却されたオイルによって、排気の高温にさらされるタービンハウジング1側のOリング14aの下半部領域を有効に冷却することができる。
また、ハウジング本体11の下半部領域にオイルジャケット20を形成し、ハウジング本体11の下半部領域にはみ出すことなく上半部領域内に水ジャケット21を形成することによって、水ジャケット21の形状を単純化することができる。
このため、軸受ハウジング10を鋳造によって製造する際に、オイルジャケット20と水ジャケット21とをそれぞれ中子型によって形成する場合においても、従来のものと比較して中子型を単純化した分だけ鋳造が容易となり、コスト低減を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 軸受ハウジング
11 ハウジング本体
20 オイルジャケット
21 水ジャケット
22 給水側の水通路
23 排水側の水通路
24 連通路
25 密閉栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャの回転軸を回転可能に支持する軸受孔を中心部に有する軸受ハウジングにオイルジャケットと水ジャケットとがそれぞれ形成されたターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
前記軸受ハウジングの主体部をなすハウジング本体の下半部領域にはオイルジャケットが形成され、
前記ハウジング本体の上半部領域内には、前記下半部領域にはみ出すことなく水ジャケットが形成されていることを特徴とするターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載のターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
水ジャケットは、ハウジング本体の上半部に開口する給水側の水通路と、排出側の水通路とが孔明け加工によってそれぞれ形成されると共に、前記給水側の水通路と排出側の水通路との相互の奥側部が連通されることによって構成されていることを特徴とするターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造。
【請求項3】
請求項2に記載のターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
給水側の水通路と、排出側の水通路とのそれぞれの開口部は、ハウジング本体の上半部の一側面に隣接して配設されていることを特徴とするターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造。
【請求項4】
請求項3に記載のターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
ハウジング本体の上半部の他側面には、給水側の水通路と排出側の水通路との相互の奥側部を連通する連通路が孔明け加工によって形成され、
前記ハウジング本体の上半部の他側面に開口する前記連通路の開口部は密閉栓によって塞がれていることを特徴とするターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造。
【請求項5】
請求項4に記載のターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造であって、
前記回転軸において、前記本体ハウジングの両端付近にはOリングがそれぞれ配置され、
前記水ジャケットに対応する前記Oリング側の前記オイルジャケットの一部にシール冷却部を形成することを特徴とするターボチャージャの軸受ハウジングの冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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