説明

ターボチャージャ用試験装置

【課題】 試験条件を高精度に制御可能なターボチャージャ用試験装置を提案することを目的とする。
【解決手段】 ターボチャージャ2のタービン室25に下流端が接続され、タービン室25に加熱圧縮空気を供給する給気経路3と、前記タービン室25に上流端が接続され、タービン室からの排気を機外に排出する排気経路4と、前記給気経路3の中途部と前記排気経路4の中途部とに両端がそれぞれ接続されて、前記タービン室25を経由することなく前記給気経路3内の空気を排気経路4へと供給するバイパス経路5とを備えてなるターボチャージャ用試験装置1であって、前記バイパス経路5には、経路内の空気を吸引して下流端へと圧送するエジェクタ50が設けられており、前記給気経路3からバイパス経路5に供給される空気の流量を増大させる際に、該エジェクタ50が作動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ用試験装置に関し、より詳細には、ターボチャージャの動作特性や耐久性等を測定するための試験装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱圧縮空気や燃焼ガス等をタービン(タービンホイール)に供給し、ターボチャージャを試験的に高速で回転(10万〜20万rpm)させて、ターボチャージャを実際の自動車に組み付けた場合に則した状態で運転させることで、タービンロータの動作特性や耐久性等を試験するターボチャージャ用試験装置が公知である。
【0003】
このような従来のターボチャージャ用試験装置としては、例えば、特許文献1に開示された構成が公知である(特許文献1参照)。
通常、ターボチャージャは、両端にタービンとコンプレッサとが固定されたタービン軸が、軸方向中間部分が軸受によりハウジングに支承されて、タービンがタービン室に、コンプレッサがコンプレッサ室にそれぞれ配置されている。
従来のターボチャージャ用試験装置は、上述したような構成のターボチャージャのタービン室に下流端が接続され、タービン室に圧縮空気を供給する給気経路と、タービン室に上流端が接続され、タービン室からの排気を機外に排出する排気経路とが設けられている。そして、給気経路には、圧縮空気を加熱する加熱供給装置が設けられており、この加熱供給装置によって加熱された圧縮空気がタービン室へと供給されることで、タービンが回転駆動される。このようにして、ターボチャージャ用試験装置では、ターボチャージャを実際の運転条件に則してタービンを駆動させるように構成されている。
【0004】
特に、特許文献1に開示されるターボチャージャ用試験装置は、給気経路の中途部と排気経路の中途部とに両端がそれぞれ接続されて、給気経路内の圧縮空気を排気経路へと供給するバイパス経路が設けられており、このバイパス経路の途中に設けられた第一の調整弁と、給気経路の中間部であってバイパス経路の接続部とタービン室との間に設けられた第二の調整弁とが開閉制御されることによって、給気経路内を流通する空気の流量、すなわちタービン室に供給される空気の流量が制御される。
【特許文献1】特開2001−254629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、この種の試験装置においては、高精度の試験を行うことができる装置の開発が進められており、そのため各種検出器の精度向上にあわせて、試験条件もより高精度に制御される必要がある。
しかしながら、上述した特許文献1に開示されるターボチャージャ用試験装置のように、給気経路の中間部でバイパス経路の接続部とタービン室との間、すなわち、タービン室の直前に第二の調整弁が設けられると、給気経路内の空気の圧力、流速、及び温度が不均一となって、タービン室へ供給される空気に乱れが生じ、各種試験の結果の誤差やばらつきを生じさせる原因となっていた。
また、給気経路内の空気の圧力、流速、及び温度を均一にするために、上述した第二の調整弁を単に取り外すだけでは、タービン室に供給される空気の流量を制御する際の応答性が悪く、特に、タービン室に供給される給気の流量を低減させて、バイパス経路に供給される空気の流量を増加させる際の制御精度に劣っていた。
【0006】
そこで、本発明においては、ターボチャージャ用試験装置に関し、前記従来の課題を解決するもので、試験条件を高精度に制御可能なターボチャージャ用試験装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
すなわち、請求項1においては、ターボチャージャのタービン室に下流端が接続され、該タービン室に加熱圧縮空気を供給する給気経路と、前記タービン室に上流端が接続され、該タービン室からの排気を機外に排出する排気経路と、前記給気経路の中途部と前記排気経路の中途部とに両端がそれぞれ接続されて、前記タービン室を経由することなく前記給気経路内の空気を排気経路へと供給するバイパス経路とを備えてなるターボチャージャ用試験装置であって、前記バイパス経路には、経路内の空気を吸引して下流端へと圧送するエジェクタが設けられており、前記給気経路からバイパス経路に供給される空気の流量を増大させる際に、前記エジェクタが作動されるものである。
【0009】
請求項2においては、前記バイパス経路には、前記給気経路の接続部と前記エジェクタとの間部分に冷却装置が設けられるものである。
【0010】
請求項3においては、前記排気経路には、ターボチャージャのコンプレッサ室に上流端が接続され、前記排気経路に下流端が接続されて、該コンプレッサ室からの圧縮空気を前記タービン室からの排気に合流させて機外に排出する第二排気経路が設けられるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1に示す構成としたので、バイパス経路にエジェクタが設けられることによって、従来タービン室の上流側に設けられていた調整弁等が不要となるとともに、給気経路内の空気を強制的にバイパス経路に誘引させて、タービン室に供給される空気の流量を短時間で急激に低減でき、空気の流量制御の応答性を向上させて、試験条件を高精度に制御できる。
【0013】
請求項2に示す構成としたので、タービン室から送り込まれた高温の排気を、冷却装置によって冷却された空気によって冷却してから機外に排気することができ、従来のように排気経路に冷却装置等を設ける必要がなく、装置を小型化できる。
【0014】
請求項3に示す構成としたので、コンプレッサ室からの排気を利用して排気経路内の排気を冷却させるため、大容量のターボチャージャを被検体とした場合であっても、排気経路内の排気を十分に冷却して機外に排気することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るターボチャージャ用試験装置の全体的な構成を示した配管図、図2はエジェクタを模式的に表した断面図、図3はターボチャージャ用試験装置の作動制御パターンとタービン室に供給される空気の流量との関係を表した図である。
【0016】
図1に示すように、本実施例のターボチャージャ用試験装置1は、自動車エンジンに搭載されるターボチャージャ2の各種性能試験を行うための装置であって、ターボチャージャ2のタービン室25に下流端が接続され、このタービン室25に圧縮空気を供給する給気経路3と、タービン室25に上流端が接続され、タービン室25からの排気を機外に排出する排気経路4と、給気経路3の中途部に上流端が分枝接続されるとともに、排気経路4に下流端が接続されて、給気経路3内の空気を誘引して排気経路4へと供給するバイパス経路5とが設けられている。このような構成において、給気経路3の加熱圧縮空気がタービン室25へと供給されることで、ターボチャージャ2が駆動され、タービン室25からの排気が排気経路4から機外に排出される。
【0017】
ターボチャージャ2は、公知の構成のものが用いられ、具体的には、両端にタービン20とコンプレッサ21とがタービン軸22に固定されたタービンロータがハウジング24に内設され、タービン軸22の軸方向中間部分が軸受23を介して支承されている。ハウジング24内部では、タービン20がタービン室25に、コンプレッサ21がコンプレッサ室26にそれぞれ配置されている。
【0018】
なお、ターボチャージャ2は、自動車に載置された状態では、タービン室25に加熱圧縮空気が供給されると、タービン20が高速回転されるとともに、タービン軸22を介してコンプレッサ21が同期回転される。そして、このコンプレッサ21の回転に伴ってコンプレッサ室26に燃焼用空気が吸入されることで、エンジンの吸気系に燃焼用空気が強制供給される。
【0019】
給気経路3は、下流端がタービン室25に接続されており、経路内の空気がタービン室25内へと供給される。給気経路3の上流端は、圧縮空気供給装置としてのエアコンプレッサ30と接続されており、エアコンプレッサ30によって給気経路3に圧縮空気が送り込まれる。また、給気経路3の途中には加熱供給装置としての電熱ヒータ31が配置されており、電熱ヒータ31によって給気経路3内の圧縮空気が最高で800〜850℃まで加熱されて、タービン室25へと送り込まれる。このエアコンプレッサと電熱ヒータ31とで加熱圧縮空気供給装置が構成されている。
【0020】
給気経路3には、上述したエアコンプレッサ30及び電熱ヒータ31の他に、エアコンプレッサ30から電熱ヒータ31までの間部分に、図示せぬフィルタ、オイルミストセパレータ、減圧弁、及び流量計等が設けられる他、調整弁32が設けられており、それぞれ上流端側から順に直列に配置されている。調整弁32は、タービン室25に送り込まれる空気の流量を図示せぬ流量計にて計測しながら調整するように構成されている。なお、給気経路3に配置される各装置は、上述したものに特に限定されない。
【0021】
排気経路4は、上流端がタービン室25に接続されており、タービン室25内からの排気が機外へと排出される。排気経路4の中途部には、混合器40が設けられており、後述するように、混合器40によって、バイパス経路5の下流端より送り込まれた空気と、コンプレッサ室26に接続された第二排気経路6より送り込まれた空気とが混合される。
混合器40の下流位置には、送風機41が設けられており、送風機41によってタービン室25からの排気が冷却されながら機外に排出される。このように、排気経路4に送風機41を設けることによって、送風機41を適切な速度で運転させてタービン室25からの排気を吸引しながら排出することができ、タービン室25の背圧を低くして、ターボチャージャ2の運転を実際の自動車に組み付けた場合に則した状態で行うことができる。
【0022】
バイパス経路5は、上流端が給気経路3の中途部であって電熱ヒータ31とタービン室25との間部分に分岐接続され、下流端が排気経路4の中途部であってタービン室25と送風機41との間部分に分岐接続されており、給気経路3内の空気がタービン室25を経由することなく排気経路4へ供給される。
本実施例では、バイパス経路5の上流端は、給気経路3と接続部5aで接続されており、給気経路3において接続部5aとタービン室25との間部分には、調整弁等の他の装置は設けられていない。また、バイパス経路5の下流端は、排気経路4に設けられた前記混合器40に接続されており、バイパス経路5内の空気が混合器40に供給されて、タービン室25から送り込まれた排気と混合される。
【0023】
バイパス経路5の途中には、給気経路3内の空気をバイパス経路5内に誘引して、バイパス経路5の下流端側へと圧送するエジェクタ50が設けられている。エジェクタ50は、エアコンプレッサ53より送り込まれた圧縮空気が駆動流として供給されることで、バイパス経路5内の空気が吸引流としてバイパス経路5下流側へと圧送される。
図2に示すように、本実施例のエジェクタ50は、吸入口50aと、ノズル部50bと、ディフューザ50cと、及び吐出口50d等とで構成されている。吸入口50a及び吐出口50dは、バイパス経路5にそれぞれ接続され、ノズル部50bにはエアコンプレッサ53より圧縮空気が供給される。そして、ノズル部50bに供給された圧縮空気がディフューザ50cに向けて導入されることで、いわゆるエジェクタ効果によって吸入口50aが負圧となり、バイパス経路5内の空気が吸入口50aからエジェクタ50内部に吸引されて、吐出口50dからバイパス経路5の下流側へと圧送される。
このように、バイパス経路5にエジェクタ50が設けられることで、給気経路3内の空気を、接続部5aを介してバイパス経路5内へと強制的に誘引させることができる。
【0024】
なお、エジェクタ50の作動は、エジェクタ50に駆動流としての圧力空気を供給するエアコンプレッサ53の供給弁(図略)が開閉されることで切り換えられる。すなわち、エジェクタ50にエアコンプレッサ53からの圧縮空気が供給されている状態(以下、かかる状態をエジェクタ50が「ON」の状態とする)では、給気経路3内の空気をエジェクタ効果によって接続部5aからバイパス経路5へと誘引して、バイパス経路5の下流側へと圧送することができる。一方で、エジェクタ50にエアコンプレッサ53からの圧縮空気が供給されない状態(以下、かかる状態をエジェクタ50が「OFF」の状態とする)では、エジェクタ効果が発揮されない。
【0025】
また、バイパス経路5には、給気経路3との接続部5aとエジェクタ50との間部分に、冷却装置51及び調整弁52が下流端側に向けて順に直列に配置されている。
冷却装置51は、電熱ヒータ31によって加熱された加熱圧縮空気をバイパス経路5内で冷却させる(温度低下させる)ものである。冷却装置51が設けられることで、バイパス経路5の下流端に接続された混合器40に冷却された空気が送り込まれて、タービン室25から送り込まれた高温の排気が、かかる空気によって冷却されてから機外に排気される。また、調整弁52によって、エジェクタ50に送り込まれる空気の流量が調整される。
【0026】
図1に戻って、本実施例のターボチャージャ用試験装置1は、ターボチャージャ2のコンプレッサ室26に上流端が接続されるとともに、排気経路4に下流端が接続されて、コンプレッサ室26からの圧縮空気をタービン室25からの排気と合流させて機外に排出する第二排気経路6が設けられている。第二排気経路6の下流端は、上述した混合器40に接続されている。このように第二排気経路6が設けられることで、ターボチャージャ2の性能試験を実施する際に、高速回転されるタービン20に同期して回転されるコンプレッサ21によってコンプレッサ室26から排出される圧縮空気が混合器40に送り込まれて、タービン室25から送り込まれた高温の排気が、かかる空気によって冷却されてから機外に排気される。
【0027】
次に、ターボチャージャ用試験装置1の作動制御について、以下に詳述する。
本実施例のターボチャージャ用試験装置1では、給気経路3内の空気がバイパス経路5に誘引されてタービン室25に供給されない(若しくは供給されても僅かである)状態と、給気経路3内の空気がタービン室25にほとんど全て供給される状態とに切り換えられて、タービン室25への空気の流量が制御され、ターボチャージャ2の動作特性試験や耐久性試験などの各種の性能試験が実施される。
【0028】
以下、ターボチャージャ用試験装置1において、給気経路3内の空気がタービン室25に供給されない(若しくは供給されても僅かである)状態を待機状態S1といい、給気経路3内の空気がタービン室25に殆んど全て供給される状態を駆動状態S2という。すなわち、ターボチャージャ2においては、待機状態S1ではタービン20が静止された状態であり、駆動状態S2ではタービン20が高速回転されている状態である。
【0029】
ターボチャージャ用試験装置1において各種の性能試験が実施される際には、ターボチャージャ2が所定位置に配置され、次いで、給気経路3、排気経路4、及びバイパス経路5に配置された各装置が起動される。具体的には、給気経路3に設けられたエアコンプレッサ30及び電熱ヒータ31が起動されて、給気経路3内に加熱圧縮空気が供給され、排気経路4に設けられた送風機41が起動されて、排気経路4内の空気が機外に排気される。なお、エアコンプレッサ30や電熱ヒータ31等は、試験実施中は常時駆動されている。また、調整弁35が開閉操作されることによって、タービン室25に供給される空気流量が調整されるが、この調整弁35は試験実施中に操作されない。
【0030】
待機状態S1のターボチャージャ用試験装置1では、バイパス経路5に設けられた調整弁52が全開に切り換えられるとともに、エジェクタ50がONに切り換えられている。このように作動されることによって、給気経路3内の空気を、エジェクタ50によるエジェクタ効果によって接続部5aを介してバイパス経路5へと強制的に誘引させることができる。つまり、エジェクタ50は、給気経路3からバイパス経路5に供給される空気の流量を増大させる際に作動される。バイパス経路5に誘引された空気は、冷却装置51にて冷却された後に、エジェクタ50を介して下流側へと圧送され、混合器40にて排気経路4に合流されて機外に排気される。
【0031】
なお、本実施例では、待機状態S1にあるときには、給気経路3内の空気が全てバイパス経路5へと誘引されずに、タービン室25に最小流量F1の空気が供給されている(図3参照)。そして、タービン室25に供給された空気は、排気経路4へと送られて、混合器40にてバイパス経路5より供給された空気と混合されることによって冷却されてから機外に排気される。
【0032】
一方、駆動状態S2のターボチャージャ用試験装置1では、調整弁52が閉塞されるとともに、エジェクタ50がOFFに切り換えられている。このように作動されることによって、給気経路3内の空気は、バイパス経路5内に供給されることなく、ほとんど全てがタービン室25へと供給される。駆動状態S2では、タービン室25に最大流量F2の空気が供給されて、タービン20が高速回転されている(図3参照)。そして、タービン室25から排気経路4に排出された空気は、主にコンプレッサ室26から第二排気経路6に供給された空気と混合器40にて混合されることによって冷却されてから機外に排気される。
【0033】
実際に性能試験が実施される際には、ターボチャージャ用試験装置1は、上述した待機状態S1と駆動状態S2とが繰り返し切り換えられるように作動制御される。
図3に示したターボチャージャ用試験装置1の試験運転パターンとタービン室25に供給される空気の流量との関係を参照すると、まず、待機状態S1では、タービン室25には最小流量F1の空気が供給されている。やがて、ターボチャージャ用試験装置1が作動され、調整弁52が閉塞されるとともに、エジェクタ50がOFFに切り換えられて、タービン室25に供給される空気の流量が短時間に一気に増大され、所定時間t1の後に最大流量F2まで増大されて待機状態S1から駆動状態S2に切り換えられる。
【0034】
駆動状態S2では、所定時間t2の間タービン20が高速回転される。その後、再度ターボチャージャ用試験装置1が作動され、調整弁52が全開に切り換えられるとともに、エジェクタ50がONに切り換えられて、タービン室25に供給される空気の流量が短時間に一気に減少され、所定時間t3の後に最小流量F2まで減少されて駆動状態S2から待機状態S1に切り換えられる。
このようにして、待機状態S1と駆動状態S2とが繰り返し切り換えられる。
【0035】
以上のように、本実施例のターボチャージャ用試験装置1は、ターボチャージャ2のタービン室25に下流端が接続され、タービン室25に加熱圧縮空気を供給する給気経路3と、タービン室25に上流端が接続され、タービン室25からの排気を機外に排出する排気経路4と、給気経路3の中途部と排気経路4の中途部とに両端がそれぞれ接続されて、タービン室25を経由することなく給気経路3内の空気を排気経路4へと供給するバイパス経路5とを備えてなり、バイパス経路5には、経路内の空気を吸引して下流端へと圧送するエジェクタ50が設けられており、給気経路3からバイパス経路5に供給される空気の流量を増大させる際に、エジェクタ50が作動されるように構成されている。
【0036】
このような構成とすることで、ターボチャージャ用試験装置1は、給気経路3からバイパス経路5に供給される空気の流量を増大させる際に、エジェクタ50をONに切り換えてエジェクタ50を作動させて、給気経路3内の空気を強制的にバイパス経路5に誘引させることで、タービン室25に供給される空気の流量を短時間で急激に低減できるとともに、従来タービン室25の手前側に設けられていた調整弁等が不要となって、給気経路3内の空気の圧力、流速、及び温度を均一することができ、タービン室25に供給される空気の流量制御の応答性を向上させて、試験条件を高精度に制御できる。また、待機状態S1において、エジェクタ50によって給気経路3内の空気がバイパス経路5に誘引されるため、タービン室25に供給される空気の流量(最小流量F1)を低減して、小流量時の制御安定性を向上できる。
【0037】
また、ターボチャージャ用試験装置1は、バイパス経路5に給気経路3の接続部5aとエジェクタ50との間部分に冷却装置51を設けることで、バイパス経路5に供給された空気が冷却されて下流側に圧送され、排気経路5に合流されるため、タービン室25から送り込まれた高温の排気を、冷却装置51によって冷却された空気によって冷却してから機外に排気することができ、従来のように排気経路4に冷却装置等を設ける必要がなく、装置を小型化できる。
【0038】
さらに、ターボチャージャ用試験装置1は、排気経路5に上述した第二排気経路6を設けることで、コンプレッサ室26からの排気を利用して排気経路5内の排気を冷却させるため、大容量のターボチャージャ2を被検体とした場合であっても、排気経路5内の排気を十分に冷却して機外に排気することができる。また、上述した冷却装置51も小型化できるため、ひいては装置全体の小型化を図ることができる。
なお、本実施例では、第二排気経路6は、バイパス経路5と同様に混合器40にて排気経路4に接続される構成としたが、別途混合器等を設けて他の部分にて排気経路4と接続されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例に係るターボチャージャ用試験装置の全体的な構成を示した配管図。
【図2】エジェクタを模式的に表した断面図。
【図3】ターボチャージャ用試験装置の作動制御パターンとタービン室に供給される空気の流量との関係を表した図。
【符号の説明】
【0040】
1 ターボチャージャ用試験装置
2 ターボチャージャ
3 給気経路
4 排気経路
5 バイパス経路
6 第二排気経路
25 タービン室
30 エアコンプレッサ
31 電熱ヒータ
40 混合器
50 エジェクタ
51 冷却装置
52 調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャのタービン室に下流端が接続され、該タービン室に加熱圧縮空気を供給する給気経路と、
前記タービン室に上流端が接続され、該タービン室からの排気を機外に排出する排気経路と、
前記給気経路の中途部と前記排気経路の中途部とに両端がそれぞれ接続されて、前記タービン室を経由することなく前記給気経路内の空気を排気経路へと供給するバイパス経路とを備えてなるターボチャージャ用試験装置であって、
前記バイパス経路には、経路内の空気を吸引して下流端へと圧送するエジェクタが設けられており、
前記給気経路からバイパス経路に供給される空気の流量を増大させる際に、前記エジェクタが作動されることを特徴とするターボチャージャ用試験装置。
【請求項2】
前記バイパス経路には、前記給気経路との接続部と前記エジェクタとの間部分に冷却装置が設けられることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ用試験装置。
【請求項3】
前記排気経路には、ターボチャージャのコンプレッサ室に上流端が接続され、前記排気経路に下流端が接続されて、該コンプレッサ室からの圧縮空気を前記タービン室からの排気に合流させて機外に排出する第二排気経路が設けられることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載のターボチャージャ用試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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