説明

ターボチャージャ

【課題】潤滑油に含まれる異物を取り除いてクリーンなオイルをベアリングへ供給して音響及び振動特性の劣化を抑制し、ベアリングを含めターボチャージャ自体の寿命を延ばすことのできるターボチャージャを提供する。
【解決手段】エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して該エンジンに供給する空気を過給するターボチャージャにおいて、オイルフィルムダンパー21の外周面に形成されたオイル供給用環状溝37と連通して潤滑油OILに含まれる異物Eをベアリングハウジング4外へ排出する異物排出穴45をベアリングハウジング4に設けた。この異物排出穴45から異物Eを排出させたクリーンなオイルをベアリング18、19に供給して音響及び振動特性の劣化を抑制し、ベアリング18、19を含めターボチャージャ1自体の寿命を延ばす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して該エンジンに供給する空気を過給するターボチャージャに関し、特に、ベアリングに供給される潤滑油に含まれる異物を取り除く技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャの回転軸(タービン軸)を回転可能に支持するための手段としては、例えば軸受であるボールベアリングが使用されている。ターボチャージャでは、回転軸が毎分数万回転から数十万回転という高速で回転するため、ボールベアリングに潤滑油を供給している(特許文献1に記載)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−298284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ボールベアリングに供給される潤滑油には、純粋なオイル以外に異物が混入している場合がある。異物が混入した潤滑油がボールベアリングのボールと内外輪との接触部に入り込むと、接触部に傷が入り、音響及び振動特性が劣化し、軸受を含めターボチャージャ自体の寿命が短くなる。
【0005】
そこで、本発明は、潤滑油に含まれる異物を取り除いてクリーンなオイルをベアリングへ供給して音響及び振動特性の劣化を抑制し、ベアリングを含めターボチャージャ自体の寿命を延ばすことのできるターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のターボチャージャは、タービンハウジング内に設けられ、該タービンハウジング内に導入される排ガスにより回転するタービンインペラと、コンプレッサハウジング内に設けられ、前記タービンインペラに一体化された回転軸に連結されて該タービンインペラと共に回転して空気を圧縮するコンプレッサインペラと、前記タービンハウジングと前記コンプレッサハウジング間に設けられたベアリングハウジング内に設けられ、前記回転軸を回転自在に支持する一対のベアリングと、一対の前記ベアリングを両端部に収納保持し、前記ベアリングハウジングに形成されたオイル供給通路から供給される潤滑油を各ベアリングへ供給するオイル供給用環状溝及びオイル吐出用通路とを有したオイルフィルムダンパーと、を備え、前記ベアリングハウジングには、前記オイルフィルムダンパーの外周面に形成された前記オイル供給用環状溝と連通して潤滑油に含まれる異物をベアリングハウジング外へ排出する異物排出穴を設けたことを特徴している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オイルフィルムダンパーの外周面に形成されたオイル供給用環状溝と連通して潤滑油に含まれる異物をベアリングハウジング外へ排出する異物排出穴をベアリングハウジングに設けたので、この異物排出穴から異物がベアリングハウジング外へと排出され、ベアリングに供給される潤滑油に異物が含まれ難くなる。その結果、異物によりベアリングに傷が付くことが無くなり、音響及び振動特性の劣化を抑制でき、ベアリングを含めターボチャージャ自体の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本実施形態のターボチャージャの全体を示す断面図である。
【図2】図2は図1に示すターボチャージャの軸受機構部の拡大断面図である。
【図3】図3はベアリング及び間座をオイルフィルムダンパーに組み込んでユニット化した軸受機構部の断面図である。
【図4】図4の軸受機構部の分解状態を示す断面図である。
【図5】図5は回転軸が設けられる部位の腰部拡大断面図である。
【図6】図6は異物排出用穴をベアリングハウジングに2箇所設けた例を示す別実施形態の要部拡大断面図である。
【図7】図7は異物排出穴の排出口をタービンハウジング側に向けて形成した例を示す別実施形態の要部拡大断面図である。
【図8】図8は異物排出穴をベアリングハウジングに2箇所設け且つオイルフィルムダンパー下側にオイル吐出用通路を設けた例を示す別実施形態の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
[ターボチャージャの構成説明]
本実施形態のターボチャージャは、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して該エンジンに供給する空気を圧縮して過給する過給装置である。このターボチャージャの具体的構成は、以下の通りである。
【0011】
ターボチャージャ1は、図1に示すように、タービンハウジング2と、コンプレッサハウジング3と、これらタービンハウジング2とコンプレッサハウジング3間に設けられたベアリングハウジング4とを有し、それらハウジングを結合一体化して構成されている。
【0012】
タービンハウジング2には、このタービンハウジング2内に導入される排ガスにより回転するタービンインペラ5が設けられている。タービンインペラ5は、回転軸(タービン軸)6の一端に一体的に形成されたタービンハブ7と、このタービンハブ7の外周面に等間隔に設けられた複数枚のタービンブレード8とからなる。
【0013】
また、タービンハウジング2には、排気ガスGをハウジング内に取り入れるためのガス取入口(図示は省略してある)が設けられている。このガス取入口には、図示を省略するエンジンから排気される排気ガスGが導入される。また、タービンハウジング2には、タービンインペラ5の回転に利用した排気ガスGをハウジング外へ排出するためのガス排出口9が設けられている。このガス排出口9には、排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置が接続される。
【0014】
また、タービンハウジング2の内部には、タービンスクロール流路10がタービンインペラ5を囲むように設けられている。このタービンスクロール流路10は、ガス取入口とガス排出口9にそれぞれ連通されている。
【0015】
コンプレッサハウジング3には、回転軸6に連結されてタービンインペラ5と共に回転して空気を圧縮するコンプレッサインペラ10が設けられている。コンプレッサインペラ10は、回転軸6の他端に形成された締結手段であるネジ部11に、同じく締結手段であるナット12を締め付けることによって該回転軸6に固定されるコンプレッサハブ13と、このコンプレッサハブ13の外周面に等間隔に設けられた複数枚のコンプレッサブレード14とからなる。
【0016】
また、コンプレッサハウジング3には、空気Aをハウジング内に取り入れる空気取入口15が設けられている。また、コンプレッサハウジング3には、コンプレッサインペラ10で圧縮した空気Aを排出する空気排出口(図示は省略する)が設けられている。空気排出口から排出される圧縮空気は、例えばエンジンのシリンダへ供給される。
【0017】
また、コンプレッサハウジング3の内部には、コンプレッサインペラ10で圧縮した空気Aを昇圧させる環状のディフューザ流路16が設けられている。さらに、コンプレッサハウジング3の内部には、コンプレッサインペラ10を囲むようにしてコンプレッサスクロール流路17が設けられている。このコンプレッサスクロール流路17は、先のディフューザ流路16に接続されている。
【0018】
ベアリングハウジング4には、図2に示すように、回転軸6を回転自在に支持する一対のベアリング18、19とそれらベアリング18、19間距離を決定する間座20をオイルフィルムダンパー21に組み込んでユニット化したベアリングアッシーである軸受機構部(軸受ユニット)22が設けられている。図3には、軸受機構部22単体を示し、図4には分解した軸受機構部22を示している。
【0019】
ベアリング18、19は、図3及び図4に示すように、外輪23と内輪24とボール25とリテーナ26とから構成されたボールベアリングからなる。かかるベアリング18、19は、円筒形状をなすオイルフィルムダンパー21の両端内面に嵌合凹部として形成されたベアリング装着部27、28に圧入されて取り付けられている。
【0020】
外輪23は、オイルフィルムダンパー21の内面21aから中心に向かって突出する円環状突部29、30の開口側端面となる段差面31、32に接触するようになっている。この段差面31、32に外輪23が接触することで、前記オイルフィルムダンパー21に対する前記ベアリング18、19の装着位置が決まる。内輪24は、オイルフィルムダンパー21の内部に挿入される間座20の軸方向端面20a、20bにそれぞれ接するようになっている。
【0021】
間座20は、一対のベアリング18、19間距離を決定する機能をする。かかる間座20は、回転軸6のジャーナル部6Aを中心孔33に若干の隙間を持たせて挿入させて、該ジャーナル部6Aの周囲に装着される円筒体として形成されている。また、間座20の内面34には、その軸方向両端部を除いて該内面34よりも一段低い段差となる円環溝35が形成されている。この円環溝35は、ジャーナル部6Aに対して非接触となるようにされており、該ジャーナル部6Aの間座20への挿入作業を容易ならしめる機能をする。例えば、間座20は、S45等の鋼材から形成されている。
【0022】
なお、ここで定義する回転軸6のジャーナル部6Aは、タービンハウジング側のベアリング18とコンプレッサハウジング側のベアリング19と間座20との対応部位を指すものとする。タービンハウジング側及びコンプレッサハウジング側の両ベアリング18、19とそれらの間に設けられた間座20とが全体として、回転軸6の軸受として機能することから、両ベアリング18、19及び間座20との対応部位が、前記回転軸6のジャーナル部6Aとなる。
【0023】
オイルフィルムダンパー21は、内部中央に間座20を収納配置させると共にその内部両端にベアリング18、19を装着させる円筒体として形成されている。このオイルフィルムダンパー21には、ベアリングハウジング4の上部に形成されたオイル供給通路36から各ベアリング18、19へオイルを供給するためのオイル供給用環状溝37と、このオイル供給用環状溝37からベアリング18、19に向かってオイルを供給するためのオイル吐出用通路38が形成されている。
【0024】
オイル供給用環状溝37は、外周面21bから突出する2つの環状突起39、39の間に形成されている。このオイル供給用環状溝37は、それぞれのベアリング18、19にオイルを供給するためにタービンハウジング側とコンプレッサハウジング側に設けられている。以下、タービンハウジング側のオイル供給用環状溝37をタービンハウジング側オイル供給用環状溝37と称し、コンプレッサハウジング側のオイル供給用環状溝37をコンプレッサハウジング側オイル供給用環状溝37と称する。一方、オイル吐出用通路38は、入口をオイル供給用環状溝37に開口すると共に出口をベアリング18、19の外輪23と内輪24の間に向くように前記円環状突部29、30に形成されている。
【0025】
また、オイルフィルムダンパー21の底部には、ベアリング18、19に供給して余ったオイルをベアリングハウジング4に形成した排出孔50から外部へと排出するためのオイル排出孔40が形成されている。
【0026】
前記間座20は、ジャーナル部6Aに取り付けられる前の状態では、オイルフィルムダンパー21の両端にそれぞれ圧入された2つのベアリング18、19で挟まれるが、径方向で位置決めされていないため径方向へ位置ずれが生じる可能性がある。そこで、間座20の中心孔33に仮組棒41(図3では二点鎖線で示している)を挿入して、回転軸6へ装着させるまでの間における前記間座20の径方向への位置ずれを防止する。なお、仮組棒41は、回転軸6のジャーナル部6Aを間座20に挿入する時に取り外す。
【0027】
また、ベアリングハウジング4には、高速回転する回転軸6を支えるベアリング18、19から発せられる熱及びタービンハウジング2に導入される排気ガスの熱を吸熱して冷却するための冷却水路42が設けられている。冷却水路42は、円周方向に沿って形成されており、冷却水供給源から供給される冷却水を循環させている。かかる冷却水路42は、タービンインペラ5寄りの位置に形成されていると共に、コンプレッサインペラ10寄りの位置にも形成されている。図1及び図2では、コンプレッサインペラ10寄りの位置に形成される冷却水路42は図示を省略してある。
【0028】
そして特に前記ベアリングハウジング4には、オイルフィルムダンパー21の外周面に形成されたタービンハウジング側オイル供給用環状溝37と連通して潤滑油OILに含まれる異物Eをベアリングハウジング4外へ排出するための異物排出穴45が設けられている。かかる異物排出穴45は、潤滑油OILに含まれる異物Eを排出し易くするために、前記タービンハウジング側オイル供給用環状溝37の溝幅と略等しい開口を有する円形状をなす貫通穴として形成されている。前記異物排出穴45の開口断面積、開口形状は、前記環状突起39の外周囲(ダンパー部)に油膜が維持できる範囲で定めるのが望ましい。
【0029】
この異物排出穴45の排出口45Aは、ベアリングハウジング4の底部に開口するドレイン46(図1参照)に向けられている。そのため、異物排出穴45の排出口45Aから排出された異物E並びにベアリング18、19に供給された後の潤滑油OILは、そのままドレイン46からベアリングハウジング4外へ排出されることになる。なお、コンプレッサハウジング側オイル供給用環状溝37と対応する部位には、前記異物排出穴45を形成しておらず、タービンハウジング側のみに異物排出穴45を形成している。
【0030】
前記ベアリングハウジング4の上部に形成されたオイル供給通路36から潤滑油OILが供給されると、タービンハウジング側オイル供給用環状溝37とコンプレッサハウジング側オイル供給用環状溝37に潤滑油OILが流れ込む。そして、潤滑油OILは、それらの溝部に沿ってオイルフィルムダンパー21の周囲を回った後、オイル吐出用通路38に入り込み各ベアリング18、19へと供給される。この時、潤滑油OILに含まれる異物Eは、前記した異物排出穴45から排出される。異物排出穴45から排出された異物Eは、ベアリングハウジング4の底部に形成されたドレイン46から外部へ排出される。
【0031】
なお、オイル吐出用通路38からベアリング18、19に供給する潤滑油OILを確保するためのオイル供給用環状溝37内の油圧は、オイル供給用環状溝37と異物排出穴45の形状、オイル吐出用通路38の径、ベアリングハウジング4とオイルフィルムダンパー21との隙間などにより最適化される。
【0032】
前記したように一対のベアリング18、19と間座20をオイルフィルムダンパー21に組み付けてユニット化した軸受機構部22は、ベアリングハウジング4に組み付けられる。ベアリングハウジング4に組み付けられた軸受機構部22には、タービンインペラ5に一体化された回転軸6が組み付けられる。その後、回転軸6の先端に形成されたネジ部11にナット12を締結することにより、該回転軸6にコンプレッサインペラ10が組み付けられる。軸受機構部22に回転軸6を組み付けるには、回転軸6のジャーナル部6Aを一方のベアリング18の内輪24へ挿入した後、さらに間座20を通して他方のベアリング19の内輪24へと挿入させる。実際には、回転軸6を鉛直に起立させてタービンインペラ5を下に向けて固定した状態で、ベアリングハウジング4に組み込んだ軸受機構部22のベアリング18、19と間座20に前記回転軸6を挿入させる。この時、仮組棒41は、回転軸6に押し出されて外される。
【0033】
前記回転軸6に組み付けられた軸受機構部22の他方のベアリング19から突き出た部分には、図2で示す油切り部材43を介在させてコンプレッサインペラ10が取り付けられる。ベアリングハウジング4の一端側には、タービンインペラ5をその内部に収容するようしてタービンハウジング2が取り付けられる。また、ベアリングハウジング4の他端側には、コンプレッサインペラ10をその内部に収容するようにしてコンプレッサハウジング3が取り付けられる。
【0034】
以上のようにして組み立てられたターボチャージャ1では、前記ベアリング18、19及び間座20には、前記ナット12を前記回転軸6のネジ部11に締結することにより生じる締結力Fが作用する。前記締結力Fは、ナット12を締め付けることにより、コンプレッサインペラ10を介して油切り部材43に伝達されると共に、この油切り部材43と接触するコンプレッサインペラ側のベアリング19(直接的には内輪24)に伝達され、更に間座20を介してタービンインペラ側のベアリング18(直接的には内輪24)に伝達される。この回転軸6の軸方向に沿って加わる締結力Fにより、これらベアリング18、19及び間座20は、回転軸方向にがたつきなく位置決めされることになる。なお、間座20は、ジャーナル部6Aに挿入して取り付けられているため、回転軸6と共に回転するようになっている。
【0035】
[ターボチャージャの動作説明]
以上のようにして構成されたターボチャージャ1においては、ガス取入口からタービンハウジング2内に取り入れた排気ガスGがタービンスクロール流路10を経由してタービンインペラ5側へ供給されると、排ガスGのエネルギーによってタービンインペラ5が回転する。また、タービンインペラ5の回転軸6と連結されたコンプレッサインペラ10は、該タービンインペラ5が回転することによって回転駆動される。コンプレッサインペラ10が回転すると、空気取入口15から取り入れられた空気Aが圧縮され、ディフューザ流路16及びコンプレッサスクロール流路17を経由して空気排出口からエンジンのシリンダ内へ過給される。
【0036】
[実施形態の効果]
本実施形態のターボチャージャ1によれば、オイル供給用環状溝37に流れ込む潤滑油OILに含まれる異物Eは、ベアリングハウジング4に形成された異物排出穴45から排出されるため、異物Eの混入の無いクリーンな潤滑油OILをベアリング18、19に供給することができる。その結果、異物Eによりベアリング18、19に傷が付くことが無くなり、音響及び振動特性の劣化を抑制でき、ベアリング18、19を含めターボチャージャ1自体の寿命を延ばすことができる。
【0037】
また、本実施形態のターボチャージャ1によれば、高温の排ガスが供給排出されるタービンハウジング2近傍に設けられたベアリング18に供給される潤滑油OILに異物Eが混入していると、これよりも温度が低いコンプレッサハウジング3近傍に設けられたベアリング19に比べて、異物Eによってボール25と外輪23及び内輪24との接触部に傷が付き易くなる。しかしながら、本実施形態では、ベアリングハウジング4のタービンハウジング側に異物排出穴45を形成しているので、この異物排出穴45からタービンハウジング側のベアリング18に供給される潤滑油OILから異物Eを取り除くことができる。
【0038】
また、本実施形態のターボチャージャ1によれば、一対のベアリング18、19とそれらのベアリング18、19間距離を決定する間座20をオイルフィルムダンパー21に組み込んでユニット化した軸受機構部22としているので、ターボチャージャの組立作業を大幅に簡略化することができる。ユニット化しない場合は、タービンインペラ5に一体化された回転軸6に一方のベアリング18を取り付けた後、間座20を取り付け、更に他方のベアリング19を取り付け、最後に油切り部材43を介してコンプレッサインペラ10を取り付ける作業が必要となる。しかし、本実施形態によれば、回転軸6に軸受機構部22を組み付けた後、油切り部材43を介してコンプレッサインペラ10を取り付ける作業だけで組み付け作業を完了させることができる。
【0039】
また、本実施形態のターボチャージャ1によれば、軸受機構部22としてベアリング18、19、間座20をオイルフィルムダンパー21に予め組み込んでいるため、各部品毎ではなく軸受機構部22として搬送することができる等、それら部品の取り扱い性を大幅に向上させることができる。また、本実施形態では、ベアリング18、19及び間座20をオイルフィルムダンパー21に予め組み込んでいるので、回転軸6の回転に伴うこれらベアリング18、19及び間座20の振動を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態のターボチャージャ1によれば、ベアリング18、19をオイルフィルムダンパー21に形成したベアリング装着部27、28に圧入して予め取り付けた構造としているので、これまで行って来たオイルフィルムダンパー内面への硬化処理を無くすことができる。
【0041】
また、本実施形態のターボチャージャ1によれば、回転軸6のジャーナル部6Aを間座20に挿入して一体化させているので、これまで行って来た回転軸6の高周波焼き入れ処理を無くすることができる。前記ジャーナル部6Aの表面が間座20で覆われるため、剛性が高くなることから焼き入れをする必要が無くなる。
【0042】
「他の実施形態」
図6は異物排出用穴をベアリングハウジングに2箇所設けた例を示す別実施形態の要部拡大断面図である。この実施形態では、前記した図5に示す実施形態に対してコンプレッサハウジング側オイル供給用環状溝37にも連通する異物排出穴45を設けている。つまり、異物排出穴45を、タービンハウジング側オイル供給用環状溝37とコンプレッサハウジング側オイル供給用環状溝37にそれぞれ連通するようにベアリングハウジング4に設けている。なお、図6の実施形態では、オイル吐出用通路38をオイルフィルムダンパー21の上部だけなく下部にも形成している。
【0043】
図6に示す実施形態によれば、タービンハウジング側のベアリング18に供給される潤滑油OILに含まれる異物Eだけでなく、コンプレッサハウジング側のベアリング19に供給される潤滑油OILに含まれる異物Eも前記異物排出穴45からベアリングハウジング4外へ排出させることができる。また、図6に示す実施形態によれば、オイルフィルムダンパー21の上部と下部に各ベアリング18、19に潤滑油OILを供給するためのオイル吐出用通路38を設けているため、ベアリング18、19に供給される潤滑油OILの量が増え、より冷却効果を高めることができる。
【0044】
図7は異物排出穴の排出口をタービンハウジング側に向けて形成した例を示す別実施形態の要部拡大断面図である。この実施形態では、前記した図5に示す実施形態に対して異物排出穴45の排出口45Aをタービンハウジング2側に向けている。異物排出穴45の排出口45Aをタービンハウジング2側に向けると、ベアリング18に供給された潤滑油OILをタービンインペラ5の根元近傍部A(図1のA部位)に流れ落ちさせることができる。タービンハウジング2には高温の排気ガスが供給排出されることからタービンインペラ5の根元近傍部Aは温度が高くなるが、異物排出穴45から排出された潤滑油OILにより冷却されて該タービンインペラ5の根元近傍部Aの温度を下げることができる。
【0045】
図8は異物排出穴をベアリングハウジングに2箇所設け且つオイルフィルムダンパー下側にオイル吐出用通路を設けた例を示す別実施形態の要部拡大断面図である。図8に示す実施形態では、オイル吐出用通路38をオイルフィルムダンパー21の下部にのみ設け、タービンハウジング側オイル供給用環状溝37とコンプレッサハウジング側オイル供給用環状溝37にそれぞれ連通するように異物排出穴45、45を設けている。
【0046】
図8に示す実施形態では、オイルフィルムダンパー21の下部にオイル吐出用通路38を設けているので、オイル供給用環状溝37内に流れ込んだ潤滑油OILに含まれる異物Eが前記オイル吐出用通路38を通ってベアリング18、19へ供給され難くなる。
【0047】
以上、本発明を適用した具体的な実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではない。
【0048】
上述した実施形態では、回転軸6のジャーナル部6Aを間座20の中心孔33に対して若干の隙間を持たせて挿入させたが、前記ジャーナル部6Aを前記中心孔33に低荷重で圧入してもよい。この場合、前記間座20に円環溝35が形成されていることで、ジャーナル部6Aの前記間座20への圧入作業が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して該エンジンに供給する空気を過給するターボチャージャに利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…ターボチャージャ
2…タービンハウジング
3…コンプレッサハウジング
4…ベアリングハウジング
5…タービンインペラ
6…回転軸(タービン軸)
6A…ジャーナル部
7…タービンハブ
8…タービンブレード
10…コンプレッサインペラ
12…ナット
13…コンプレッサハブ
14…コンプレッサブレード
18、19…ベアリング
20…間座
21…オイルフィルムダンパー
22…軸受機構部
23…外輪
24…内輪
37…オイル供給用環状溝
38…オイル吐出用通路
45…異物排出穴
E…異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンハウジング内に設けられ、該タービンハウジング内に導入される排ガスにより回転するタービンインペラと、
コンプレッサハウジング内に設けられ、前記タービンインペラに一体化された回転軸に連結されて該タービンインペラと共に回転して空気を圧縮するコンプレッサインペラと、
前記タービンハウジングと前記コンプレッサハウジング間に設けられたベアリングハウジング内に設けられ、前記回転軸を回転自在に支持する一対のベアリングと、
一対の前記ベアリングを両端部に収納保持し、前記ベアリングハウジングに形成されたオイル供給通路から供給される潤滑油を各ベアリングへ供給するオイル供給用環状溝及びオイル吐出用通路とを有したオイルフィルムダンパーと、を備え、
前記ベアリングハウジングには、前記オイルフィルムダンパーの外周面に形成された前記オイル供給用環状溝と連通して潤滑油に含まれる異物をベアリングハウジング外へ排出する異物排出穴を設けた
ことを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
請求項1に記載のターボチャージャであって、
前記異物排出穴は、少なくとも前記タービンハウジング側に設けられた前記オイル供給用環状溝と連通して形成されている
ことを特徴とするターボチャージャ。
【請求項3】
請求項1に記載のターボチャージャであって、
前記異物排出穴は、前記タービンハウジング側と前記コンプレッサハウジング側にそれぞれ設けられた前記オイル供給用環状溝と連通して形成されている
ことを特徴とするターボチャージャ。
【請求項4】
請求項2に記載のターボチャージャであって、
前記異物排出穴の排出口を、前記タービンハウジング側に向けて形成した
ことを特徴とするターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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