説明

ターボ機械およびシールへの流体供給方法

【課題】潤滑剤がシールを通って漏出するのを防止するターボ機械を提供する。
【解決手段】ターボファンエンジン10のハウジング12は、コンプレッサの抽気を受けるバッファ室33を画定する壁23およびドーム25を備える。潤滑側および空気側30を含むシール26,28は、タービンシャフト16とハウジング21との間に配設され、かつベアリング室20およびバッファ室33を分離する。バッファチューブ38は、入口36を介してバッファ室33の本体22に接続されるとともに、チューブ38の出口に配設されたベンチュリ管50などの流速制御装置46を含む。チューブ38は、コンプレッサ抽気源40から本体22に空気を供給し、かつ内部表面24に対して接線方向に流れを導入してバッファ室33内に旋回流を生じさる。これにより、均一な半径方向の圧力勾配が生じて、アイドル状態におけるシールを通る潤滑剤の漏出が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国空軍契約No.F33657−91−0007の遂行に当たってなされた。政府が本発明における一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、ターボ機械におけるシールを加圧するために用いられる流れ供給システムに関する。
【背景技術】
【0003】
航空機に使用されるターボファンエンジンのようなターボ機械には、バッファ室からベアリング室を分離するように、カーボンシールが組み込まれている。ベアリング室は、例えば、エンジンのハウジングに対して回転するタービンを支持するベアリングを含む。ベアリング室は、ベアリングを潤滑する潤滑剤を含む。バッファ室は、シールを通って漏出した加圧空気を含み、それにより、シールを通って潤滑剤がしみ出るのを防ぐ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボンシールは、シールを通って潤滑剤が漏出するのを防ぐために、シールに亘る所定の圧力差を必要とする。周知である1つの問題として、シールに亘る圧力差が不十分なため、不使用時のアイドル状態において潤滑剤がカーボンシールを通って漏出してしまうことがある。
【0005】
バッファ室は、実質的に円筒形の本体からなる。コンプレッサの抽気は、本体に対して接線をなす平面に対して垂直な方向に本体へと流入する。その結果、流れが本体に流入する箇所と反対の側において、本体内に滞留領域が形成されてしまう。これにより、本体の円筒形の壁部に沿った圧力分布が均等でなくなり、また、カーボンシールのうちの1つが円筒形の壁部に近接して配設されている場合には、シール上の均等でない圧力により、漏出が生じてしまうことがある。シールの位置に関わらず、アイドル状態でのバッファ室内の圧力は不十分である。
【0006】
シールを効果的にするためには、カーボンシールの近傍においてバッファ室内の圧力を高める必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、潤滑を受けるベアリング室を有するハウジングを含んだターボ機械を提供する。また、ハウジングは、空気、例えば、コンプレッサの抽気を受けるバッファ室を提供する。ハウジングに対して回転するタービンシャフトは、ハウジング内においてベアリング上に支持される。ベアリングは、ベアリング室内に配設される。タービンシャフトとハウジングとの間に、シールが配設されており、ベアリング室およびバッファ室を分離する。シールは、互いに対向する潤滑側および空気側を含み、これらは、ベアリング室およびバッファ室に露出している。バッファ室の本体には、バッファチューブが流体的に接続されている。バッファチューブは、本体の内部表面に対して実質的に接線方向に流れを導入して、バッファ室内に旋回流を生じさせる。
【0008】
バッファチューブは、本体に流入する流れの速度を制御するように、チューブの出口に配設されたベンチュリ管などの流速制御装置を含む。オリフィスプレートなどの流量制御装置が、流れを所望の流量に制御するように、ベンチュリ管の上流側に配設される。本体内における所望の流量および流速を有する旋回流により、均一な半径方向の圧力勾配が生じる。不使用時のアイドル状態においては、半径方向の圧力勾配により、シールに亘って所望の圧力差を生じさせるのに十分な大きさの圧力がバッファ室の周縁に生じる。この周縁での圧力が高まることにより、アイドル状態において潤滑剤がシールを通って漏れることが防止される。
【0009】
本発明の上記および他の特徴は、下記の明細書および以下に簡単に説明する図面により、最も良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1にターボファンエンジン10の一部を示す。エンジン10は、複数の部分を互いに固定して構成されるハウジング12を含む。図2に詳細に示すように、ハウジング12は、ハウジング12に対して回転するタービンシャフト16をベアリング21によって支持する。タービンシャフト16はハブ15を支持する。複数のタービンブレード18は、固定具17によってハブ15に固定される。
【0011】
ベアリング21は、ベアリング室20内に配設される。第1のシール26および第2のシール28により、潤滑剤がベアリング室20内に含有される。一例として、カーボンシールであるシールに亘る圧力差が不十分なため、油がベアリング室20から漏出してハウジング12内およびタービン流路19の底部に溜まることがある。
【0012】
図2および図3を参照すると、ハウジング12は、バッファ室33を部分的に画定する円筒形の壁部23およびドーム25を備える。バッファ室33は、第1および第2のシール26,28の空気側30に加圧空気を供給する。該シールは、所定の圧力差が得られると効果を発揮する。バッファ室33内の圧力が不十分であると、アイドル状態において第1および第2のシール26,28を通る漏出が生じる可能性がある。
【0013】
図2で模式的に示されるチューブ34は、入口36を介して本体22に接続されている。チューブ34は、第2のシール28の空気側30にあるチャンバに加圧空気を送る。バッファチューブ38は、コンプレッサの抽気源40から本体22に空気を供給する。もちろん、空気側30への空気の供給は、任意の適切な空気源を使用して任意の適切な方法で行なうことができる。図2で模式的に示されている排気口60は、ベアリング室20から圧力を開放するために使用される。
【0014】
図4に示すように、本発明では、バッファチューブ38の出口からの流れ54を、円筒形の壁部23の隣接する内部表面24へと実質的に接線方向の平面Tの方向に導入する。このように流れ54を導入することにより、渦流(旋回流)が生じて、圧力の均一化が促進されるが、これは、流れを円筒形の壁部23に対して垂直に導入した場合に生じてしまう滞留領域とは対照的である。図4には垂直平面Nも示す。バッファチューブ38からの空気の流速および流量は、流速制御装置46および流量制御装置48によって制御される。図示した例では、流速制御装置は、流れがバッファチューブ38から本体22へと流入する箇所に近接して配設されたスロート部56を有するベンチュリ管50である。また、流量制御装置48は、図示した例では、ベンチュリ管50の上流側に配設されたオリフィスプレート52である。オリフィスプレート52は、流れを制御するとともに、その結果、ベンチュリ管50から流出する流れ54の流速を制限する寸法を有するオリフィス58を含む。本体内の半径方向の位置の変化に対する本体内の圧力の変化の関係は、次式で表される。
【0015】
【数1】

【0016】
ここで、ρは空気の密度、wはベンチュリ管から流出する空気の流速、rは圧力が計算される半径方向の位置である。シール26における圧力は、空気がバッファ室に導入される流速、または空気が導入される半径位置を変更することにより所望の値に調節され得る。さらに、シール28における圧力は、供給空気がバッファ室内から抽出される半径位置を変更することにより調節され得る。
【0017】
本発明の好適な実施形態を説明したが、当業者であれば本発明の範囲内である種の変更を行なえることを認識するであろう。そのため、本発明の範囲と内容は請求項を検討することにより定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ターボファンエンジンの一部の部分的な断面図。
【図2】図1に示したターボファンエンジンの一部の拡大図。
【図3】図2に示したターボファンエンジン内のバッファ室の一部の拡大図。
【図4】バッファ室の本体内に流れを導入するチューブをエンジンの軸に平行な方向から見た模式図。
【符号の説明】
【0019】
10…ターボファンエンジン
12…ハウジング
15…ハブ
16…タービンシャフト
17…固定具
18…タービンブレード
19…タービン流路
20…ベアリング室
21…ベアリング
26…第1のシール
28…第2のシール
33…バッファ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に円筒形の内部表面を付与する壁部を備える本体と、
前記内部表面に対して実質的に接線方向に流れを導入して、前記本体内に旋回流を生じさせるチューブと、
を含むターボ機械。
【請求項2】
前記内部表面が、周縁を含み、
前記旋回流が、前記周縁に沿って実質的に均一な圧力を生じさせることを特徴とする請求項1に記載のターボ機械。
【請求項3】
シールが、互いに対向する空気側および油側を含み、
前記空気側が、前記周縁と流体的に連通していることを特徴とする請求項1に記載のターボ機械。
【請求項4】
前記本体から離れたチャンバが、前記空気側に配設され、
前記周縁に入口を有する第2のチューブが、前記本体を前記チャンバに流体的に接続することを特徴とする請求項3に記載のターボ機械。
【請求項5】
前記チューブが、所望の流速で前記流れを供給するように、前記壁部に近接して配設されたベンチュリ管を含むことを特徴とする請求項1に記載のターボ機械。
【請求項6】
前記チューブが、前記ベンチュリ管への前記流れを制限するように、前記ベンチュリ管の上流側に配設されたオリフィスプレートを含むことを特徴とする請求項5に記載のターボ機械。
【請求項7】
前記チューブが、前記内部表面に対して実質的に接線方向に流れを導入するとともに、前記内部表面に隣接する出口を含むことを特徴とする請求項1に記載のターボ機械。
【請求項8】
シールへ流体を供給する方法であって、
(a)本体における隣接する湾曲した表面に対して実質的に接線方向に流れを導入するステップと、
(b)前記本体をシールの一方の側に流体的に接続するステップと、
を含むシールへの流体供給方法。
【請求項9】
前記(a)のステップが、前記本体に供給される前記流体を加速するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載のシールへの流体供給方法。
【請求項10】
前記(a)のステップを行なった後、前記湾曲した表面に沿って実質的に均一な圧力をもたらすように、前記本体内において前記流体に旋回を生じさせるステップを含むことを特徴とする請求項8に記載のシールへの流体供給方法。
【請求項11】
前記(a)のステップを行なう前に、前記流体の流れを制御するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載のシールへの流体供給方法。
【請求項12】
前記(b)のステップを行なった後で、前記シールに亘る所望の圧力差を生じさせるステップを含むことを特徴とする請求項8に記載のシールへの流体供給方法。
【請求項13】
潤滑剤を受けるベアリング室および空気を受けるバッファ室を有するハウジングと、
前記ハウジング内において、前記ベアリング室内に配設されたベアリング上に支持された前記ハウジングに対して回転するタービンシャフトと、
ベアリング室およびバッファ室を分離するとともに、前記ベアリング室および前記バッファ室にそれぞれ露出する互いに対向した潤滑側および空気側を有するシールと、
前記バッファ室の本体に流体的に接続されたバッファチューブであって、前記本体の内部表面に対して実質的に接線方向の流れを導入して、前記内部表面に沿った流れに旋回を生じさせるバッファチューブと、
を備えるターボ機械。
【請求項14】
前記シールが、前記内部表面の近傍に配設されていることを特徴とする請求項13に記載のターボ機械。
【請求項15】
前記タービンと前記ハウジングとの間に第2のシールが配設され、
他のチューブが、前記本体と前記第2のシールの空気側とを流体的に接続することを特徴とする請求項13に記載のターボ機械。
【請求項16】
前記タービンが、前記ハウジングに対して回転するシャフトを含み、
前記シールが、前記シャフトおよび前記ハウジングを相互に接続することを特徴とする請求項13に記載のターボ機械。
【請求項17】
前記バッファチューブが、所望の流速で流れを導入するベンチュリ管を含むことを特徴とする請求項13に記載のターボ機械。
【請求項18】
前記バッファチューブが、前記流れを制御するとともに、前記ベンチュリ管への前記流れを制限するオリフィスプレートを含むことを特徴とする請求項17に記載のターボ機械。
【請求項19】
前記本体に前記流れを供給するように、コンプレッサの抽気源が前記バッファチューブに流体的に接続されていることを特徴とする請求項13に記載のターボ機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−14299(P2008−14299A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108850(P2007−108850)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】