ターボ過給器
ターボ機械装置。タービン(10)は、タービン翼車を保持するためのボア段差要素を有する保持器(20)、およびタービン(10)のトリム直径(DTRIM)より小さい調整直径(d)を示す孔とを備え、それによってタービン効率特性をカスタマイズすることができる。調整直径の孔を有するタービン保持器の様々な構成が開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にターボ機械、特にターボ過給器付き内燃機関に関し、詳細にはタービン効率特性を向上させるタービンハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の一般的な技術分野では、タービンが排気ガスからのエネルギーを利用して圧縮機を作動させる、ある種のターボ過給システムを提供することが周知である。その場合、圧縮機は、一般には機関に供給された空気圧を高めることによって機関性能を向上させるのに使用される。
【0003】
機関性能とほぼ同程度に重要なのは、より清浄な排気に対する必要性である。殆んどの内燃機関は、機関の排出物中の汚染物質水準を規制する法規の対象となる。内燃機関によって作動する発電機等の「固定汚染源」、ならびに自動車は、COやNOXなどある種の汚染物質からなる排出物を法的規制値より低く維持することが求められる。しかし、汚染防止は、理想的には機関性能の損失をできる限り少なくしながら達成されるものである。
【0004】
内燃機関の排出物を減らす1つの形態は、機関がターボ過給器付きであるかどうかにかかわらず、しかしそうである場合はたいがい、EGR(排気ガス再循環)によるものである。EGRは、機関排気の一部を機関の吸気マニホールドへ還流させるものである。排気ガスは、排気マニホールドから分岐され、送管や導管を通って吸気マニホールドに送られ、それによって排気ガスを燃焼サイクルに導入できるようになり、その結果、酸素含有量が低減され、それによって、過剰にNOXが形成される一因となる高い燃焼温度を低下させる。
【0005】
例えば、大型ディーゼル機関にEGRシステムを導入しても、目標とするタービン効率特性は従来のターボ機械性能と合致しない。本出願人のVNT(商標)ブランドの可変ノズルタービン・ターボ過給器EGRシステムを使用するとき、旧来のターボ機械タービン効率特性をそのまま受け入れると、(1)ある機関動作速度での、容認しがたいほどの高い燃料消費量、(2)容認しがたいほど高いターボ過給器回転数(すなわち、周知の生産材料および工程を使用して容認できる限度値を超えるターボ過給器回転数)、および(3)全ての目標機関動作点でEGRの運転が不能になることを含めて、いくつかの結果が生じる。
【0006】
さらに、大型ディーゼル機関にEGRシステムを使用する場合、ターボ過給器を機関に「適合させる」ことによって、ターボ過給器のタービン翼車の適合が異常になることになる。例えば、場合によっては、伝統的なまたは従来の翼車の輪郭が設計から除外される。この、タービン翼車の特異な加工により、タービン翼車がターボ過給器シャフトから分離した場合に、タービン翼車を保持することがより困難になる可能性がある。そのような場合には、タービン翼車は、現在のターボ過給器アセンブリ設計を使用した同様な状況よりもかなり高い速度とエネルギーでタービンハウジングガス出口から出て行くことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のことを背景にして、本発明は開発された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
翼車を保持し、かつターボ過給器効率を調整するようにタービンハウジングを変更し、それによって、上記に指摘した欠陥に対処する。本発明の利用可能性の範囲は、一部には、添付の図面と共に以下の詳細な説明に記述されており、一部には、以下のことを検討することで当分野の技術者に明らかになり、あるいは本発明を実施することによって学び取ることができる。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲に具体的に指摘する手段および組合せによって実現し達成することができる。
【0009】
明細書の一部に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は、本発明の2つの実施形態を示しており、以下の説明と共に本発明の諸原理を説明するのに役立つ。図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するためのものにすぎず、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、タービンに関し、必ずしもではないが特にターボ過給器付き機関に使用されるタービンに関する。本発明の装置は、それだけには限らないが、大型自動車の機関を含むディーゼル燃料動力装置で使用されるEGR(排気ガス再循環)システムと共に、有利に使用することができる。本発明に従ってタービン翼車の保持設計を変更することにより、タービン効率特性を専門的な必要を満たすように調整することができ、タービン翼車の保持力が促進される。従って、本発明は、EGRシステムをタービンと共に使用することに起因する、翼車保持およびタービン効率特性の問題を改善する。上記の諸問題は、本発明のタービンハウジングの変更形態によって対処される。本発明は、以下により詳しく記述し開示するように、こうした変更形態を含む。
【0011】
当分野で周知のように、タービンの仕事は、タービン効率、質量流量、タービン全体の圧力比、および入口温度に正比例する。シャフト回転数またはロータ回転数は、直接駆動される圧縮機に加えられる、タービンの仕事によって得られるものである。VNTのタービンのロータ回転数は、タービン翼車出口のところで出口構成の形状および寸法によってタービンの効率を調整することによって変更することができる。効率変化の効果を用いて、機関の空気システムの要求を満たすように圧縮機およびVNTの特性を適合させる。出口形状(feature)の寸法は、結果として生じるターボ機械回転制御に加えて機関性能パラメータ、すなわち燃料消費または場合によっては機関圧力比によって、制限されることがある。
【0012】
形状および寸法が定められた段差ボア(step−bore)をタービンハウジング内で画成することによって、タービン翼車出口でタービン効率挙動が改善するようにタービン効率特性を選択的に調整することができ、それによってVNTターボ過給器のEGRシステム性能が強化される。簡潔に述べると、段差ボアを設けると、タービン効率が低下し、その結果、タービン入口圧力が有利な程度に上昇する。この入口圧力が高いことにより機関の排気マニホールドから機関の吸気マニホールド内への排気ガスの流れが促される。本発明によれば、この有利なターボ過給器の挙動が、典型的なターボ機械のタービン効率特性の場合に得られるよりも低いターボ機械回転数で達成される。ターボ過給器回転数が比較的低いにもかかわらず、性能が損なわれない。従って、本発明の装置は、既存の生産材料から作製することが可能であり、VNTターボ過給器システムに関する周知の方法が適用できる。さらに、タービン効率が低いので、従来のタービンハウジング設計によって可能であるよりも多い量のEGRの流れを機関の吸気マニホールド内に送り戻す能力がもたらされる。
【0013】
図1に注目すると、本発明の装置の一実施形態が示されている。タービン10は、以下にさらに詳しく説明する以外はほぼ周知の技術に従って製造された、タービンハウジング12を特徴としている。タービンハウジング12は、一般に慣行に従ってタービンシャフト上で回転可能なタービン翼車(図1に示さない)を受ける、タービンボア14を実質的に取り囲み、画成する。可能な一実施形態では、ハウジング12の入口側に、タービンの組立中にタービン翼車をボア14中に配置できるようにするポート16を備えることができる。タービン翼車を取り付けた後、ポート16が、例えば、ターボ過給器中央ハウジングの回転組立体のボルト締めされた付属部品(図示せず)によって閉じられ固定される。
【0014】
引き続き図1を参照すると、タービンハウジング12が、周知の技術に従ってタービン翼車の最大歯先円直径に通常はほぼ一致するタービン歯先円直径DTIPを有しそれを規定することが留意される。タービンハウジングのトリム直径DTRIMも規定され、この直径DTRIMは、異なるタービンハウジングの型ごとに変わるが、一般的にタービン翼車の機能的直径に対応し、翼車の周囲とトリム直径DTRIMを規定するハウジングのトリム壁17の間には非常に狭い隙間が存在する。本発明のいくつかの実施形態では、タービン歯先円直径DTIPは、トリム直径DTRIMよりほんの僅かに大きくすることができる。
【0015】
ボア12内の「下流側」には、タービン拡散器、すなわちそこを通ってガスがタービン組立体から排気される導管であるエクスデューサ(exducer)18がある。直径DEXは、連結部のための適切な機械式継手を作り、排気システムに必要とされる寸法をもたらす際に重要である。とりわけ、本発明は、図1、4、5、6、および8に示すような全体的に円筒形のエクスデューサを使用するタービン、ならびに図3および7に示すようなフレア形に拡がる(flared)または円錐形のエクスデューサを有するタービンで実用性がある。
【0016】
タービン効率調整の実施は、とりわけ、ガスの流れをエクスデューサ18中を通過させることによって達成される。図1を参照すると、このことは、ボア14内に「段差」を設け、それによってエクスデューサ18の直径を軸方向長さのうちの短い部分で急に縮小させることによって達成される。例えば、図1の実施形態では、エクスデューサ18を通してボア14内に挿入可能な、別に製作された段差ボア・リング20が提供される。図2Aおよび2Bに示すように、段差ボア・リング20は、図1に示すようにボア14の軸周りで同心状にエクスデューサ18のスロート部内にぴたりと受けられるように、エクスデューサの直径DEXと実質的に等しい外径を有する剛性の環状体である。段差ボア20は、そこで、ねじ付きボルト21、または他の適切な締結手段によって定位置に固定し、あるいはタービンハウジングの鋳造物中に組み込むことができる。
【0017】
特に、段差ボア・リング20は、その中に、好ましくはリングの外周と同心で、選択された調整直径d(図2Aおよび2B)を有する孔22を画成する。調整直径dは、好ましくは、また、ほぼ常に、エクスデューサの外径DEXより小さく、かつタービンハウジングのトリム直径DTRIMより小さい。このようにボア14内で段差ボア・リング20によって画成される段差は、タービン翼車から出て行くガスの通常の滑らかな流れが、タービン翼車出口近くで、リング20の孔22を通る狭くなった通路によって妨害されるように形成される。調整直径dは、DTRIMの約80パーセントと100パーセントの間である。dとDTRIMの正確な比は、目標とする調整が得られるように選択され決定される。調整直径dとハウジングのトリム直径DTRIMの間の比は、タービン効率特性に影響を及ぼす。タービン段の性能調整は、DTRIMに対する、下流開口部の調整直径d(例えば図1における)の効果と関係している。
【0018】
孔22から生じる「段差ボア」は、VNTブランドのターボ過給器EGRシステムにとって望ましいものと同様な効率特性をもたらすようにタービン効率が適合できるように調整することができる。
【0019】
図9は、タービン圧力比およびタービン効率で表した、固定トリム直径に対する固定した構成のd直径の寸法の相対効果を示すグラフである。固定したd直径の寸法によってVNTタービン段のタービン効率を調節することが、特定の1組の機関状態を満たすようにターボ機械回転数を変更または適合できる手段である。開口部直径の効率の効果は、寸法および動作圧力比と共に変化する。様々な構成のd直径の形状の性能特性は、開口部の基本形状に基づいて可変である。
【0020】
図3を参照すると、本発明の好ましい実施形態が示されている。図3の実施形態は、段差ボア・リング24が、定位置でハウジング12と一体に鋳造されている点を除いて、図1の実施形態に多くの点で非常によく似ている。タービン翼車30が、タービンボア14に取り付けられて示されている。本発明のこの「固定した形状寸法」の実施形態では、ハウジング12と一体に鋳造されるリング24は、ボア中に段差25をもたらしている。従って、リング24は、鋳造ハウジングの恒久的な延長部であり、ハウジングの製作時にそれと一体に結合される。この鋳造形状は、ほぼ環状であるが、図に示すようにハウジングのボア14内に成型されている。鋳造されるリング24の円形の孔は、調整された直径dを規定する。エクスデューサ18は円筒形ではなく、エクスデューサの直径がタービン排気口に向かうにつれて増加し続ける円錐形の拡散器であることが図3に示されている。円錐形拡散器を追加すると、タービン性能の調整を細かく行う助けとなる。
【0021】
図3の実施形態では、ボア段差形状が、好ましくはハウジング12と一体に鋳造されるリング24によってもたらされる。あるいは、図1、2Aおよび2B、および4に示すように、保持リング24を別に製造し、次いでタービンのボア14内に挿入し固定することもできる。ボア段差25は、直径dを有するリング24の孔の縁部によって画成される。直径dは、適切なタービン効率が得られるように選択された、調整された直径であり、いずれにせよトリム直径DTRIMより小さい。タービンのガスは、当然ながらリング24の孔を通って流れるが、孔はタービン翼車30を通過させるには小さすぎる。
【0022】
図5は、図4に示す実施形態と同様の挿入可能な保持リング24が、どのように装置の適応性を提供することができるかを示す。挿入可能なリング24は、タービンのボア内に配置し、1つまたは複数の異なる軸方向の位置で固定することができる。図5は、軸方向前方位置で(例えば、径方向を向いてリングを通りハウジングに入るボルトを用いて)固定された保持リング24を示している。しかし、保持リング24は着脱式に挿入可能なので、その軸方向の位置もまた、選択的に調整可能である。図5に想像線で示すように、保持リングは軸方向前方位置から係脱し、任意の第2の後方位置に滑って移動し、そこで再度定位置に暫定的に固定することができる。この調整は、リング24をハウジングに結合する形態に応じて増分的にまたは無限に変更可能とすることができ、それによって、単一のタービン装置10の保持しかつ調整するための形状(feature)を特定の用途に合うようにカスタマイズすることができる。このようにリングの位置が調整可能なことにより、リングによって規定される、縮小された調整直径dの軸方向位置および効果を、最適タービン効率が得られるように調節し選択することができる。保持段差25の位置も、同様に(例えば、異なる軸方向長さのタービン翼車30を収容できるように)調整可能である。
【0023】
リングの軸方向移動は、周方向に配列された2つ以上の長手方向の案内部29、29’によって案内することができ、案内部29、29’は、タービンボア壁から突出する、ハウジング12の一体的な延長部とすることができる。案内29、29’はまた、リング24が装置の中心軸周りで径方向に移動するのを防止する。着脱式に挿入可能な保持リング24は、保守または交換のために取り外しまた再取り付けすることができる。
【0024】
本発明の別の実施形態を図6および6Aに示す。保持器および調整の利点が、ハウジング12と一体に鋳造される複数の特殊な外形の(profiled)突起部33、33’によってもたらされる。この特殊な外形の突起部は、1つの軸周りに可変的に回転させることができ、その結果、タービン効率を可変調整することもできる。径方向に配列された凸状の突出部33、33’は、径方向内側にボア14のスロート内へ延び、好ましくは、図6Aに示すように、ボアの円周部の周囲に等間隔に配置される。図に、特に図6Aに示すように、有効な調整直径dは、直径に沿って対向する突起の平均「高さ」によって近似的に規定される。突起部33、33’は、任意の様々な輪郭や形状を有することができる。1つの好ましい輪郭が、図6および6Aに示され、各突起部は、ある程度卵形または「涙滴様の」足型および翼型の軸方向輪郭を有する。任意の多様な形状や輪郭が本発明の機能に適しているが、図に示すような、円滑な空気力学的輪郭が好ましい。
【0025】
あるいは、突起部33、33’は、図示するよりも直線的あるいは翼のような形にすることもできる。図7および7Aは、等間隔に配置された複数の直線的な突起部33、33’(図7および7Aの実施形態では8個の突出部)を備える別の実施形態を示す。図示のように、突起部は、例えば低い軸方向輪郭を有することができ、各突起部33は、タービン軸に垂直な前「面」と、エクスデューサ18の内壁に後面が円滑に合体することができるようにする、鋭角で規定される後面とを備える、四辺形の軸方向断面を特徴とする。また、有効調整直径dは、突起部の近似的な平均径方向延長を用いて決定される。
【0026】
配列された複数の突起部33,33’を特徴とするどの実施形態でも、突起部の長手方向軸は、好ましくは互いに平行であるが、排気ガスがタービン翼車30から出て行くとき排気ガスの「非旋回化」を促進するように、タービン軸に対して傾斜させあるいは角度をつけることができる。突起部33、33’の個数も選択可能であり、例えば3個から8個の間の個数にすることができる(図6および7の実施形態では8個)。
【0027】
本発明の別の実施形態を図8および8Aに示す。本発明のこの実施形態では、円筒形ではなく円錐形のエクスデューサ内で、調整可能なボア段差を使用することが可能になる。この実施形態では、セグメント化されたリング27が、必要に応じて円錐形のエクスデューサ18の傾斜した環状面に対応して拡張または収縮するように、変更可能な直径を有する。リングセグメント31,31’は、少なくとも3個以上(図8および8Aに4個示す)の複数個、例えば8個または10個と、個数を変えることが可能である。
【0028】
従って、図8および8Aの実施形態は、ハウジング12内で軸方向位置に選択的に調整可能であるのに加えて、段差リング27の有効直径が調整可能であり、同様にリング27の孔によって規定される有効調整直径dが調整できる以外は、図5に示す実施形態と特徴および利点の一部が共通している。調整直径dを増加させるために、等間隔配置のセグメント31、31’を径方向外側に移動させ、その結果、隣り合うセグメントを分離する周方向の間隙寸法が増加する。同様に、リング27をエクスデューサの前方位置に移動させたとき、リング27の隣り合ったセグメント間の間隙を減らすことによって直径dが縮小される。
【0029】
図8Aに示すように、リングセグメント31,31’は、くさび型の長手方向側面を示し、従って、ボアの環状斜面35に沿って動く(ride)ことによって同時に軸方向および径方向に移動することができる。リングセグメントは、常に、セグメント化された環状部を画成し、1つまたは複数の軸方向の異なる位置で固定されるように配置される。図8は、(例えば、径方向を向いてリングを通りハウジングに入るボルトを用いて)軸方向前方位置で固定される、保持リング27のセグメントを示す。しかし、保持リング27は移動式に挿入可能なので、その軸方向位置もまた、選択的に調整可能である。図8に想像線で示すように、保持リング27は、軸方向前方位置から係脱し、任意の第2の後方位置に滑って移動し、そこで再度定位置に暫定的に固定することができる。リング27が配列されたエクスデューサ18の直径が変更されたため、リング27の調整直径dも同様に変更される。この調整により、単一のタービン装置10の、保持しかつ調整するための形状(feature)を特定の用途に合うようにカスタマイズすることができる。このようにリング位置が調整可能なことにより、リングによって規定される、縮小された調整直径dの軸方向位置、寸法および効果を、最適タービン効率が得られるように調整し選択することができる。保持段差25の位置も、同様に(例えば、異なる軸方向長さのタービン翼車30を収容できるように)調整可能である。
【0030】
図5の実施形態の場合と同様に、リング27の軸方向移動を周方向に配列された2つ以上の長手方向の案内部(図8に図示せず)によって案内することが可能であり、その案内部は、タービンボア壁から突出するハウジング12の一体的な延長部とすることができる。
【0031】
従って、本発明の装置は、全ての実施形態で、タービン翼車30がタービンハウジング12の後方に向かって不適切に移動しないように保持する働きをするステップボア25を提供する。カスタマイズされた突起部を持つあるいは持たない典型的には環状のリングであるこの保持器により、タービン効率特性が最適になるような、トリム直径TTRIMに対する調整直径dの関係が可能になる。
【0032】
タービンハウジング内に「段差ボア」を設計し形状および寸法を決めることによって、タービン翼車出口付近でタービン効率特性を変更しあるいは調整し、その結果、タービン効率挙動を本発明による可変ノズルタービン・ターボ過給器EGRシステムの性能にとってより好ましいものにすることができる。結局、ステップボア25によってタービン効率が低下し、その結果タービン入口圧力が上昇し、機関の排気マニホールドから機関の吸気マニホールドへの排気ガスの流れが促される。この挙動は、通常のターボ機械タービン効率特性によって実現可能になるよりも低いターボ過給器回転数で達成される。
【0033】
本発明を上記の好ましい実施形態を具体的に参照して詳しく説明してきたが、他の実施形態によって同じ結果を達成することもできる。本発明の変形形態および変更形態が当分野の技術者には自明になり、添付の特許請求の範囲にこうした変更形態およびそれと同等のものの全てを包含することが意図されている。上記に列挙した全ての引用文献、出願、特許、および刊行物の開示全体を参照により本明細書に合体する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるタービン装置の一実施形態の側(軸方向)断面図である。
【図2】図2Aは、図1に示す装置の保持リング要素の側(軸方向)断面図である。図2Bは、図2Aに示す保持リング要素の端面図である。
【図3】タービンハウジングと一体に鋳造された保持リングを示す、本発明による装置の別の実施形態の側断面図である。
【図4】着脱式に挿入可能な保持リングを示す、本発明による装置の別の実施形態の側断面図である。
【図5】ハウジング内で軸方向に移動可能であり、異なる複数の位置で固定可能な保持リングを示す、本発明の別の実施形態の側断面図である。
【図6】タービンハウジングと一体に鋳造され、径方向内側に延出する空気力学的な突起部を有する保持リングを示す、本発明の別の実施形態の側断面図である。
【図6A】図6に示す装置の、図6の線A−Aに沿った端(径方向)断面図である。
【図7】タービンハウジングと一体に鋳造され、径方向内側に延出する直線的な突起部を有する保持リングを示す、本発明の別の実施形態の側断面図である。
【図7A】図7に示す装置の、図7の線A−Aに沿った端(径方向)断面図である。
【図8】径方向の直径が調整可能であり、またタービンハウジング内で選択的に調整可能な軸方向位置を有する保持リングを示す、本発明の装置の別の実施形態の側断面図である。
【図8A】図8に示す装置の、図8の線A−Aに沿った端(径方向)断面図である。
【図9】タービン圧力比とタービン効率で表した、固定トリム直径に対する本発明による固定した構成の調整直径の寸法の相対的な効果を示したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にターボ機械、特にターボ過給器付き内燃機関に関し、詳細にはタービン効率特性を向上させるタービンハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の一般的な技術分野では、タービンが排気ガスからのエネルギーを利用して圧縮機を作動させる、ある種のターボ過給システムを提供することが周知である。その場合、圧縮機は、一般には機関に供給された空気圧を高めることによって機関性能を向上させるのに使用される。
【0003】
機関性能とほぼ同程度に重要なのは、より清浄な排気に対する必要性である。殆んどの内燃機関は、機関の排出物中の汚染物質水準を規制する法規の対象となる。内燃機関によって作動する発電機等の「固定汚染源」、ならびに自動車は、COやNOXなどある種の汚染物質からなる排出物を法的規制値より低く維持することが求められる。しかし、汚染防止は、理想的には機関性能の損失をできる限り少なくしながら達成されるものである。
【0004】
内燃機関の排出物を減らす1つの形態は、機関がターボ過給器付きであるかどうかにかかわらず、しかしそうである場合はたいがい、EGR(排気ガス再循環)によるものである。EGRは、機関排気の一部を機関の吸気マニホールドへ還流させるものである。排気ガスは、排気マニホールドから分岐され、送管や導管を通って吸気マニホールドに送られ、それによって排気ガスを燃焼サイクルに導入できるようになり、その結果、酸素含有量が低減され、それによって、過剰にNOXが形成される一因となる高い燃焼温度を低下させる。
【0005】
例えば、大型ディーゼル機関にEGRシステムを導入しても、目標とするタービン効率特性は従来のターボ機械性能と合致しない。本出願人のVNT(商標)ブランドの可変ノズルタービン・ターボ過給器EGRシステムを使用するとき、旧来のターボ機械タービン効率特性をそのまま受け入れると、(1)ある機関動作速度での、容認しがたいほどの高い燃料消費量、(2)容認しがたいほど高いターボ過給器回転数(すなわち、周知の生産材料および工程を使用して容認できる限度値を超えるターボ過給器回転数)、および(3)全ての目標機関動作点でEGRの運転が不能になることを含めて、いくつかの結果が生じる。
【0006】
さらに、大型ディーゼル機関にEGRシステムを使用する場合、ターボ過給器を機関に「適合させる」ことによって、ターボ過給器のタービン翼車の適合が異常になることになる。例えば、場合によっては、伝統的なまたは従来の翼車の輪郭が設計から除外される。この、タービン翼車の特異な加工により、タービン翼車がターボ過給器シャフトから分離した場合に、タービン翼車を保持することがより困難になる可能性がある。そのような場合には、タービン翼車は、現在のターボ過給器アセンブリ設計を使用した同様な状況よりもかなり高い速度とエネルギーでタービンハウジングガス出口から出て行くことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のことを背景にして、本発明は開発された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
翼車を保持し、かつターボ過給器効率を調整するようにタービンハウジングを変更し、それによって、上記に指摘した欠陥に対処する。本発明の利用可能性の範囲は、一部には、添付の図面と共に以下の詳細な説明に記述されており、一部には、以下のことを検討することで当分野の技術者に明らかになり、あるいは本発明を実施することによって学び取ることができる。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲に具体的に指摘する手段および組合せによって実現し達成することができる。
【0009】
明細書の一部に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は、本発明の2つの実施形態を示しており、以下の説明と共に本発明の諸原理を説明するのに役立つ。図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するためのものにすぎず、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、タービンに関し、必ずしもではないが特にターボ過給器付き機関に使用されるタービンに関する。本発明の装置は、それだけには限らないが、大型自動車の機関を含むディーゼル燃料動力装置で使用されるEGR(排気ガス再循環)システムと共に、有利に使用することができる。本発明に従ってタービン翼車の保持設計を変更することにより、タービン効率特性を専門的な必要を満たすように調整することができ、タービン翼車の保持力が促進される。従って、本発明は、EGRシステムをタービンと共に使用することに起因する、翼車保持およびタービン効率特性の問題を改善する。上記の諸問題は、本発明のタービンハウジングの変更形態によって対処される。本発明は、以下により詳しく記述し開示するように、こうした変更形態を含む。
【0011】
当分野で周知のように、タービンの仕事は、タービン効率、質量流量、タービン全体の圧力比、および入口温度に正比例する。シャフト回転数またはロータ回転数は、直接駆動される圧縮機に加えられる、タービンの仕事によって得られるものである。VNTのタービンのロータ回転数は、タービン翼車出口のところで出口構成の形状および寸法によってタービンの効率を調整することによって変更することができる。効率変化の効果を用いて、機関の空気システムの要求を満たすように圧縮機およびVNTの特性を適合させる。出口形状(feature)の寸法は、結果として生じるターボ機械回転制御に加えて機関性能パラメータ、すなわち燃料消費または場合によっては機関圧力比によって、制限されることがある。
【0012】
形状および寸法が定められた段差ボア(step−bore)をタービンハウジング内で画成することによって、タービン翼車出口でタービン効率挙動が改善するようにタービン効率特性を選択的に調整することができ、それによってVNTターボ過給器のEGRシステム性能が強化される。簡潔に述べると、段差ボアを設けると、タービン効率が低下し、その結果、タービン入口圧力が有利な程度に上昇する。この入口圧力が高いことにより機関の排気マニホールドから機関の吸気マニホールド内への排気ガスの流れが促される。本発明によれば、この有利なターボ過給器の挙動が、典型的なターボ機械のタービン効率特性の場合に得られるよりも低いターボ機械回転数で達成される。ターボ過給器回転数が比較的低いにもかかわらず、性能が損なわれない。従って、本発明の装置は、既存の生産材料から作製することが可能であり、VNTターボ過給器システムに関する周知の方法が適用できる。さらに、タービン効率が低いので、従来のタービンハウジング設計によって可能であるよりも多い量のEGRの流れを機関の吸気マニホールド内に送り戻す能力がもたらされる。
【0013】
図1に注目すると、本発明の装置の一実施形態が示されている。タービン10は、以下にさらに詳しく説明する以外はほぼ周知の技術に従って製造された、タービンハウジング12を特徴としている。タービンハウジング12は、一般に慣行に従ってタービンシャフト上で回転可能なタービン翼車(図1に示さない)を受ける、タービンボア14を実質的に取り囲み、画成する。可能な一実施形態では、ハウジング12の入口側に、タービンの組立中にタービン翼車をボア14中に配置できるようにするポート16を備えることができる。タービン翼車を取り付けた後、ポート16が、例えば、ターボ過給器中央ハウジングの回転組立体のボルト締めされた付属部品(図示せず)によって閉じられ固定される。
【0014】
引き続き図1を参照すると、タービンハウジング12が、周知の技術に従ってタービン翼車の最大歯先円直径に通常はほぼ一致するタービン歯先円直径DTIPを有しそれを規定することが留意される。タービンハウジングのトリム直径DTRIMも規定され、この直径DTRIMは、異なるタービンハウジングの型ごとに変わるが、一般的にタービン翼車の機能的直径に対応し、翼車の周囲とトリム直径DTRIMを規定するハウジングのトリム壁17の間には非常に狭い隙間が存在する。本発明のいくつかの実施形態では、タービン歯先円直径DTIPは、トリム直径DTRIMよりほんの僅かに大きくすることができる。
【0015】
ボア12内の「下流側」には、タービン拡散器、すなわちそこを通ってガスがタービン組立体から排気される導管であるエクスデューサ(exducer)18がある。直径DEXは、連結部のための適切な機械式継手を作り、排気システムに必要とされる寸法をもたらす際に重要である。とりわけ、本発明は、図1、4、5、6、および8に示すような全体的に円筒形のエクスデューサを使用するタービン、ならびに図3および7に示すようなフレア形に拡がる(flared)または円錐形のエクスデューサを有するタービンで実用性がある。
【0016】
タービン効率調整の実施は、とりわけ、ガスの流れをエクスデューサ18中を通過させることによって達成される。図1を参照すると、このことは、ボア14内に「段差」を設け、それによってエクスデューサ18の直径を軸方向長さのうちの短い部分で急に縮小させることによって達成される。例えば、図1の実施形態では、エクスデューサ18を通してボア14内に挿入可能な、別に製作された段差ボア・リング20が提供される。図2Aおよび2Bに示すように、段差ボア・リング20は、図1に示すようにボア14の軸周りで同心状にエクスデューサ18のスロート部内にぴたりと受けられるように、エクスデューサの直径DEXと実質的に等しい外径を有する剛性の環状体である。段差ボア20は、そこで、ねじ付きボルト21、または他の適切な締結手段によって定位置に固定し、あるいはタービンハウジングの鋳造物中に組み込むことができる。
【0017】
特に、段差ボア・リング20は、その中に、好ましくはリングの外周と同心で、選択された調整直径d(図2Aおよび2B)を有する孔22を画成する。調整直径dは、好ましくは、また、ほぼ常に、エクスデューサの外径DEXより小さく、かつタービンハウジングのトリム直径DTRIMより小さい。このようにボア14内で段差ボア・リング20によって画成される段差は、タービン翼車から出て行くガスの通常の滑らかな流れが、タービン翼車出口近くで、リング20の孔22を通る狭くなった通路によって妨害されるように形成される。調整直径dは、DTRIMの約80パーセントと100パーセントの間である。dとDTRIMの正確な比は、目標とする調整が得られるように選択され決定される。調整直径dとハウジングのトリム直径DTRIMの間の比は、タービン効率特性に影響を及ぼす。タービン段の性能調整は、DTRIMに対する、下流開口部の調整直径d(例えば図1における)の効果と関係している。
【0018】
孔22から生じる「段差ボア」は、VNTブランドのターボ過給器EGRシステムにとって望ましいものと同様な効率特性をもたらすようにタービン効率が適合できるように調整することができる。
【0019】
図9は、タービン圧力比およびタービン効率で表した、固定トリム直径に対する固定した構成のd直径の寸法の相対効果を示すグラフである。固定したd直径の寸法によってVNTタービン段のタービン効率を調節することが、特定の1組の機関状態を満たすようにターボ機械回転数を変更または適合できる手段である。開口部直径の効率の効果は、寸法および動作圧力比と共に変化する。様々な構成のd直径の形状の性能特性は、開口部の基本形状に基づいて可変である。
【0020】
図3を参照すると、本発明の好ましい実施形態が示されている。図3の実施形態は、段差ボア・リング24が、定位置でハウジング12と一体に鋳造されている点を除いて、図1の実施形態に多くの点で非常によく似ている。タービン翼車30が、タービンボア14に取り付けられて示されている。本発明のこの「固定した形状寸法」の実施形態では、ハウジング12と一体に鋳造されるリング24は、ボア中に段差25をもたらしている。従って、リング24は、鋳造ハウジングの恒久的な延長部であり、ハウジングの製作時にそれと一体に結合される。この鋳造形状は、ほぼ環状であるが、図に示すようにハウジングのボア14内に成型されている。鋳造されるリング24の円形の孔は、調整された直径dを規定する。エクスデューサ18は円筒形ではなく、エクスデューサの直径がタービン排気口に向かうにつれて増加し続ける円錐形の拡散器であることが図3に示されている。円錐形拡散器を追加すると、タービン性能の調整を細かく行う助けとなる。
【0021】
図3の実施形態では、ボア段差形状が、好ましくはハウジング12と一体に鋳造されるリング24によってもたらされる。あるいは、図1、2Aおよび2B、および4に示すように、保持リング24を別に製造し、次いでタービンのボア14内に挿入し固定することもできる。ボア段差25は、直径dを有するリング24の孔の縁部によって画成される。直径dは、適切なタービン効率が得られるように選択された、調整された直径であり、いずれにせよトリム直径DTRIMより小さい。タービンのガスは、当然ながらリング24の孔を通って流れるが、孔はタービン翼車30を通過させるには小さすぎる。
【0022】
図5は、図4に示す実施形態と同様の挿入可能な保持リング24が、どのように装置の適応性を提供することができるかを示す。挿入可能なリング24は、タービンのボア内に配置し、1つまたは複数の異なる軸方向の位置で固定することができる。図5は、軸方向前方位置で(例えば、径方向を向いてリングを通りハウジングに入るボルトを用いて)固定された保持リング24を示している。しかし、保持リング24は着脱式に挿入可能なので、その軸方向の位置もまた、選択的に調整可能である。図5に想像線で示すように、保持リングは軸方向前方位置から係脱し、任意の第2の後方位置に滑って移動し、そこで再度定位置に暫定的に固定することができる。この調整は、リング24をハウジングに結合する形態に応じて増分的にまたは無限に変更可能とすることができ、それによって、単一のタービン装置10の保持しかつ調整するための形状(feature)を特定の用途に合うようにカスタマイズすることができる。このようにリングの位置が調整可能なことにより、リングによって規定される、縮小された調整直径dの軸方向位置および効果を、最適タービン効率が得られるように調節し選択することができる。保持段差25の位置も、同様に(例えば、異なる軸方向長さのタービン翼車30を収容できるように)調整可能である。
【0023】
リングの軸方向移動は、周方向に配列された2つ以上の長手方向の案内部29、29’によって案内することができ、案内部29、29’は、タービンボア壁から突出する、ハウジング12の一体的な延長部とすることができる。案内29、29’はまた、リング24が装置の中心軸周りで径方向に移動するのを防止する。着脱式に挿入可能な保持リング24は、保守または交換のために取り外しまた再取り付けすることができる。
【0024】
本発明の別の実施形態を図6および6Aに示す。保持器および調整の利点が、ハウジング12と一体に鋳造される複数の特殊な外形の(profiled)突起部33、33’によってもたらされる。この特殊な外形の突起部は、1つの軸周りに可変的に回転させることができ、その結果、タービン効率を可変調整することもできる。径方向に配列された凸状の突出部33、33’は、径方向内側にボア14のスロート内へ延び、好ましくは、図6Aに示すように、ボアの円周部の周囲に等間隔に配置される。図に、特に図6Aに示すように、有効な調整直径dは、直径に沿って対向する突起の平均「高さ」によって近似的に規定される。突起部33、33’は、任意の様々な輪郭や形状を有することができる。1つの好ましい輪郭が、図6および6Aに示され、各突起部は、ある程度卵形または「涙滴様の」足型および翼型の軸方向輪郭を有する。任意の多様な形状や輪郭が本発明の機能に適しているが、図に示すような、円滑な空気力学的輪郭が好ましい。
【0025】
あるいは、突起部33、33’は、図示するよりも直線的あるいは翼のような形にすることもできる。図7および7Aは、等間隔に配置された複数の直線的な突起部33、33’(図7および7Aの実施形態では8個の突出部)を備える別の実施形態を示す。図示のように、突起部は、例えば低い軸方向輪郭を有することができ、各突起部33は、タービン軸に垂直な前「面」と、エクスデューサ18の内壁に後面が円滑に合体することができるようにする、鋭角で規定される後面とを備える、四辺形の軸方向断面を特徴とする。また、有効調整直径dは、突起部の近似的な平均径方向延長を用いて決定される。
【0026】
配列された複数の突起部33,33’を特徴とするどの実施形態でも、突起部の長手方向軸は、好ましくは互いに平行であるが、排気ガスがタービン翼車30から出て行くとき排気ガスの「非旋回化」を促進するように、タービン軸に対して傾斜させあるいは角度をつけることができる。突起部33、33’の個数も選択可能であり、例えば3個から8個の間の個数にすることができる(図6および7の実施形態では8個)。
【0027】
本発明の別の実施形態を図8および8Aに示す。本発明のこの実施形態では、円筒形ではなく円錐形のエクスデューサ内で、調整可能なボア段差を使用することが可能になる。この実施形態では、セグメント化されたリング27が、必要に応じて円錐形のエクスデューサ18の傾斜した環状面に対応して拡張または収縮するように、変更可能な直径を有する。リングセグメント31,31’は、少なくとも3個以上(図8および8Aに4個示す)の複数個、例えば8個または10個と、個数を変えることが可能である。
【0028】
従って、図8および8Aの実施形態は、ハウジング12内で軸方向位置に選択的に調整可能であるのに加えて、段差リング27の有効直径が調整可能であり、同様にリング27の孔によって規定される有効調整直径dが調整できる以外は、図5に示す実施形態と特徴および利点の一部が共通している。調整直径dを増加させるために、等間隔配置のセグメント31、31’を径方向外側に移動させ、その結果、隣り合うセグメントを分離する周方向の間隙寸法が増加する。同様に、リング27をエクスデューサの前方位置に移動させたとき、リング27の隣り合ったセグメント間の間隙を減らすことによって直径dが縮小される。
【0029】
図8Aに示すように、リングセグメント31,31’は、くさび型の長手方向側面を示し、従って、ボアの環状斜面35に沿って動く(ride)ことによって同時に軸方向および径方向に移動することができる。リングセグメントは、常に、セグメント化された環状部を画成し、1つまたは複数の軸方向の異なる位置で固定されるように配置される。図8は、(例えば、径方向を向いてリングを通りハウジングに入るボルトを用いて)軸方向前方位置で固定される、保持リング27のセグメントを示す。しかし、保持リング27は移動式に挿入可能なので、その軸方向位置もまた、選択的に調整可能である。図8に想像線で示すように、保持リング27は、軸方向前方位置から係脱し、任意の第2の後方位置に滑って移動し、そこで再度定位置に暫定的に固定することができる。リング27が配列されたエクスデューサ18の直径が変更されたため、リング27の調整直径dも同様に変更される。この調整により、単一のタービン装置10の、保持しかつ調整するための形状(feature)を特定の用途に合うようにカスタマイズすることができる。このようにリング位置が調整可能なことにより、リングによって規定される、縮小された調整直径dの軸方向位置、寸法および効果を、最適タービン効率が得られるように調整し選択することができる。保持段差25の位置も、同様に(例えば、異なる軸方向長さのタービン翼車30を収容できるように)調整可能である。
【0030】
図5の実施形態の場合と同様に、リング27の軸方向移動を周方向に配列された2つ以上の長手方向の案内部(図8に図示せず)によって案内することが可能であり、その案内部は、タービンボア壁から突出するハウジング12の一体的な延長部とすることができる。
【0031】
従って、本発明の装置は、全ての実施形態で、タービン翼車30がタービンハウジング12の後方に向かって不適切に移動しないように保持する働きをするステップボア25を提供する。カスタマイズされた突起部を持つあるいは持たない典型的には環状のリングであるこの保持器により、タービン効率特性が最適になるような、トリム直径TTRIMに対する調整直径dの関係が可能になる。
【0032】
タービンハウジング内に「段差ボア」を設計し形状および寸法を決めることによって、タービン翼車出口付近でタービン効率特性を変更しあるいは調整し、その結果、タービン効率挙動を本発明による可変ノズルタービン・ターボ過給器EGRシステムの性能にとってより好ましいものにすることができる。結局、ステップボア25によってタービン効率が低下し、その結果タービン入口圧力が上昇し、機関の排気マニホールドから機関の吸気マニホールドへの排気ガスの流れが促される。この挙動は、通常のターボ機械タービン効率特性によって実現可能になるよりも低いターボ過給器回転数で達成される。
【0033】
本発明を上記の好ましい実施形態を具体的に参照して詳しく説明してきたが、他の実施形態によって同じ結果を達成することもできる。本発明の変形形態および変更形態が当分野の技術者には自明になり、添付の特許請求の範囲にこうした変更形態およびそれと同等のものの全てを包含することが意図されている。上記に列挙した全ての引用文献、出願、特許、および刊行物の開示全体を参照により本明細書に合体する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるタービン装置の一実施形態の側(軸方向)断面図である。
【図2】図2Aは、図1に示す装置の保持リング要素の側(軸方向)断面図である。図2Bは、図2Aに示す保持リング要素の端面図である。
【図3】タービンハウジングと一体に鋳造された保持リングを示す、本発明による装置の別の実施形態の側断面図である。
【図4】着脱式に挿入可能な保持リングを示す、本発明による装置の別の実施形態の側断面図である。
【図5】ハウジング内で軸方向に移動可能であり、異なる複数の位置で固定可能な保持リングを示す、本発明の別の実施形態の側断面図である。
【図6】タービンハウジングと一体に鋳造され、径方向内側に延出する空気力学的な突起部を有する保持リングを示す、本発明の別の実施形態の側断面図である。
【図6A】図6に示す装置の、図6の線A−Aに沿った端(径方向)断面図である。
【図7】タービンハウジングと一体に鋳造され、径方向内側に延出する直線的な突起部を有する保持リングを示す、本発明の別の実施形態の側断面図である。
【図7A】図7に示す装置の、図7の線A−Aに沿った端(径方向)断面図である。
【図8】径方向の直径が調整可能であり、またタービンハウジング内で選択的に調整可能な軸方向位置を有する保持リングを示す、本発明の装置の別の実施形態の側断面図である。
【図8A】図8に示す装置の、図8の線A−Aに沿った端(径方向)断面図である。
【図9】タービン圧力比とタービン効率で表した、固定トリム直径に対する本発明による固定した構成の調整直径の寸法の相対的な効果を示したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向ボアおよび軸方向エクスデューサを部分的に取り囲み、前記ボアがトリム直径を有するタービンハウジングと、
前記ボア内に回転可能に取り付けられたタービン翼車と、
前記エクスデューサ内に前記タービン翼車に近接して配設された保持器とを備え、前記保持器がボア段差と調整直径を有する孔とを画成し、前記トリム直径が前記調整直径を超えるタービン装置。
【請求項2】
前記調整直径が、前記トリム直径の約80パーセントから約100パーセントである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記保持器が環状のリングを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記リングが前記ハウジングと一体に鋳造される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記リングが前記エクスデューサ内に着脱式に挿入可能である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記リングが、長手方向に選択的に配置可能であり、前記エクスデューサの軸線に沿って固定可能である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記リングが、前記エクスデューサの軸線に対して径方向に移動可能な複数のリングセグメントを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記リングがさらに、前記エクスデューサの軸線に対して径方向内側に延びる複数の突起部を備える、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記突起部が、互いに平行であり、タービン排気の非旋回化を促進するために前記エクスデューサの軸線に対して傾斜して配置される、請求項8に記載の装置。
【請求項1】
軸方向ボアおよび軸方向エクスデューサを部分的に取り囲み、前記ボアがトリム直径を有するタービンハウジングと、
前記ボア内に回転可能に取り付けられたタービン翼車と、
前記エクスデューサ内に前記タービン翼車に近接して配設された保持器とを備え、前記保持器がボア段差と調整直径を有する孔とを画成し、前記トリム直径が前記調整直径を超えるタービン装置。
【請求項2】
前記調整直径が、前記トリム直径の約80パーセントから約100パーセントである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記保持器が環状のリングを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記リングが前記ハウジングと一体に鋳造される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記リングが前記エクスデューサ内に着脱式に挿入可能である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記リングが、長手方向に選択的に配置可能であり、前記エクスデューサの軸線に沿って固定可能である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記リングが、前記エクスデューサの軸線に対して径方向に移動可能な複数のリングセグメントを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記リングがさらに、前記エクスデューサの軸線に対して径方向内側に延びる複数の突起部を備える、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記突起部が、互いに平行であり、タービン排気の非旋回化を促進するために前記エクスデューサの軸線に対して傾斜して配置される、請求項8に記載の装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−528955(P2007−528955A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543175(P2004−543175)
【出願日】平成14年12月19日(2002.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2002/040749
【国際公開番号】WO2004/033858
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年12月19日(2002.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2002/040749
【国際公開番号】WO2004/033858
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
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