説明

ターボ過給機速度の物理モデルを使用してターボ過給機を制御する方法

【課題】調整および調節が容易な、動的条件の下でターボ過給機を制御する代替方法を提供する。
【解決手段】機関吸気マニホールド内の流体圧力に対応する設定圧力が所望の速度値に変換される。次に、ターボ過給機速度を、タービンに流入し、タービンから流出する流体の圧力比に関連付ける物理的関係が定義される。タービンに流入し、タービンから流出する流体の所望の圧力比がこの物理的関係から演繹される。タービンに流入する流体流量の測定値と、タービン内の圧力の所望の比とから、タービンをマッピングすることによって、タービンアクチュエータ制御則が推定される。最後に、吸気マニホールド内の圧力が設定圧力に等しくなるように制御則がタービンアクチュエータに適用される。用途:特に内燃機関の制御

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御の分野に関し、特に、このような機関が備えるターボ過給機システムの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の新たに開発された技術ではますます高度な機関制御システムが使用されるようになっている。このような状況において、新しい流体システム構造には、ターボ過給機システム用の新しい制御方式を開発する必要がある。
【0003】
現在、線形コントローラによる静的マッピングに基づくターボ過給機システム用の制御方式が、このようなシステムの制御のために開発されている。しかし、このような方式は、以下のような欠点を有するため、不適切であるように思われる。
・アクチュエータおよび各構成部材の分散に伴う構造安定性の欠如
・多大な開発努力:一方では、すべての静的マップを手作業で記入する必要があり、他方では、レギュレータ利得を動作点に応じて変えなければならない。
・ターボ過給機システムと他の機関サブシステムとの相互作用が考慮されない(従って、このようなサブシステムの発展における変化は、ターボ過給機レギュレータの完全な再調整を必要とする)。
【0004】
従って、比例積分(PI)コントローラによる静的マッピングに基づく従来の方式は不適切である。モデルに基づく制御構成の導入は、この問題を解消し、従来の線形コントローラに代わる物を提供するうえで効率的で有望であるように思われる。これに関して、以下の文献にいくつかのモデルベースの手法が記載されている。
・Schwarzmann, D., Nitsche, R., Lunze, J. "Diesel Boost Pressure Control using Fl
atness−Based Internal Model Control". SA
E paper 2006−01−0855(非特許文献1)
・Stefanopoulo, A.G, Kolmanowsky, I., Freudenberg, J.S. "Control of Variable Geom
etry Turbocharged Diesel Engines for Reduced Emissions". IEEE transactions on co
ntrol systems technology, vol.8 No4 July 2000(非特許文献2)
これらの方式は、モデル、すなわち、実際に存在するか、または仮説によって各現象間またはターボ過給機システムの様々な部材間に存在するように思われる関係の、物理的表現、グラフィック表現、またはより一般的には数学的表現に基づく方式である。
【0005】
しかし、これらのモデルは、文献に記載され、制御則に使用されることを目的としているが、2つの重大な欠点を伴っており、一方では、複雑すぎるため調整上の問題が生じ、他方では、これらのモデルは動力学面を考慮していない。実際、これらの従来のターボ過給機調整方法は、静的動作点に対応するマッピングに基づく方法である。そのため、動力学的に、システムは一連の静的(準静的)状態を経ると仮定される。
【非特許文献1】Schwarzmann, D., Nitsche, R., Lunze, J. "Diesel Boost Pressure Control using Flatness−Based Internal Model Control". SAE paper 2006−01−0855
【非特許文献2】Stefanopoulo, A.G, Kolmanowsky, I., Freudenberg, J.S. "Control of Variable Geometry Turbocharged Diesel Engines for Reduced Emissions". IEEE transactions on control systems technology, vol.8 No4 July 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、調整および調節が容易な、動的条件の下でターボ過給機を制御する代替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による方法は、タービンを有し、内燃機関に備えられたターボ過給機を制御するのを可能にし、この場合、機関の吸気マニホールド内の流体圧力に対応する設定圧力PiCが決められる。この方法は以下の段階、すなわち、
・設定圧力PiCを所望の速度値Ndに変換すること、
・ターボ過給機の速度Nを、タービン出口における流体圧力の、タービン入口における流体圧力に対する比に関連付ける物理的関係を定義すること、
・この関係を所望の速度値Ndに適用することによって、タービン内の圧力の所望の比PRtCを算出すること、
・タービンに流入する流体の流量Wtの変化をタービン内の圧力比PRtの関数として表す、様々なアクチュエータ制御則についてのタービンのマップによって、タービンに流入する流体の流量の測定値Wtmおよびタービン内の所望の圧力比PRtCから、タービンアクチュエータ用の制御則UVGTCを推定すること、
・吸気マニホールド内の圧力Piが設定圧力PiCに等しくなるように制御則UVGTCをタービンアクチュエータに適用すること、
を含む。
【0008】
タービンアクチュエータは、ウェイストゲート型弁(固定容量ターボ過給機)またはタービンのタービン翼(可変容量ターボ過給機)に相当するものであってよい。
【0009】
ターボ過給機に備えられた圧縮機のマップを使用して設定圧力(PiC)を所望の速度値(Nd)に変換することができる。
【0010】
本発明によれば、物理的関係は、吸気マニホールドおよび排気マニホールドに質量平衡の原理を適用し、ターボ過給機速度を所定のダイナミックスに従うようにする制御が定義されるバックステッピング技術を適用することによって、タービン出力と圧縮機出力との平衡関係から定義することができる。このダイナミックスは指数関数的であってよく、次式のように表すことができる。
【0011】
【数1】

【0012】
ここで、μは実験によって定められた利得である。
【0013】
制御則は、タービンマップに近似させることによって推定することができる。タービンマップは、以下のような種類の数式によって近似されることができる。
【0014】
t=(a.G(UVGT)+b).Ψ(PRt
ここで、
a,b:求めるべき2つのパラメータ
VGT:アクチュエータ制御則
G(UVGT):UVGTの全単射多項関数、
【0015】
【数2】

【0016】
γ:比熱比である。
【0017】
2つのパラメータaおよびbは、オフライン最適化によって求められ、かつタービン圧力比PRtが所望の比PRtCに従うように積分器によって線形に修正されることができる。
【0018】
本発明による方法の他の特徴および利点は、添付の図を参照して非制限的な例として与えられる実施形態についての以下の説明を読むことによって明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、ターボ過給機を有する機関を図示している。ターボ過給機は、内燃機関に組み込むことのできる要素である。このようなシステムは、機関に取り込まれたガスの圧力を高めるようになっている。従って、ターボ過給機は、シリンダへの空気の充填を改善するのを可能にする。動作原理は、排気ガスに含まれる運動エネルギーの一部を再生することにある。
【0020】
機関から出る排気ガス流内に配置されたタービン(TU)は高速に駆動される。タービンは、機関の吸気マニホールド(CA)内に配置された圧縮機(CO)に軸(AR)によって連結されている。この圧縮機は、周辺空気を吸い込んで圧縮し、場合によっては冷却するために熱交換器(EC)を通過させてシリンダ(CY)に送る。従って、シリンダの充填が、シリンダに圧縮空気を送り込むことによって改善される。酸化剤/燃料の混合物の量と、それに従って機関出力とが増大する。
【0021】
タービンは可変容量タービンである。機関は、燃焼ガスの一部を再生させるEGR弁(EGRV)を有していてもよい。
【0022】
本発明によれば、ターボ過給機は、タービン容量を修正することにより吸気マニホールド内の圧力Piを調整することによって制御される。この圧力は、電子ハウジングにより記憶されているマップに従って制御されるレギュレータによって調整される。マップは、機関計算機に記憶されている1組のデータである。マップは、レギュレータと呼ばれる、計算機ソフトウェアを最適に制御するための計算機のための基準として働く。
【0023】
従って、吸気マニホールド内の最適な圧力は、機関動作条件および予想される性能に応じて求められる。この値は、設定値と呼ばれ、PiCによって示される。
【0024】
この制御プロセスの目標は、それゆえ、吸気マニホールド内の圧力Piが設定圧力PiCに等しくなるようにタービン容量を修正することである。
【0025】
タービンアクチュエータを制御する制御則を使用してタービンの容量が修正される。このアクチュエータは、その位置を変化させることによって、タービンに流入する流体の流量Wt、従って圧縮機から下流の流体の流量WCを修正する。このような制御則はUVGTによって示される。
【0026】
タービンのマップは製造業者から供給される。このマップは、図2に示されているように、様々な制御則UVGT1,UVGT2,UVGT3,...について、タービンに流入する流体の流量Wtの変化を、タービン内の圧力比PRtの関数として表す。
【0027】
タービン内の圧力比PRtは、タービンから下流側の圧力の、タービンから上流側の圧力に対する比に相当する。
【0028】
本発明による方法は、タービンのマップおよびターボ過給機のダイナミックスを表す物理モデルによって、タービンアクチュエータの制御則UVGTCを判定するのを可能にする。図3は、主として以下の4つの段階を有するモデルを示している。
1.ターボ過給機速度(N)の変化の物理モデル
2.設定圧力(PiC)の所望の速度(Nd)への変換
3.タービンアクチュエータの制御則UVGTCの定義
4.制御則UVGTCに応じたタービンの修正
図1に応じて、説明では以下の表記を使用する。
【0029】
【表1】

【0030】
なお、「下流側」は「出口側」を意味し、「上流側」は「入口側」を意味する。圧力および温度は空気を特徴付ける。以下の表記も使用する。
【0031】
【表2】

【0032】
なお、流体と呼ばれるものは、機関マニホールドおよびターボ過給機内を循環する任意の混合物である。流体はたとえば、以下の要素、空気,排気ガス,過圧ガス,...のうちの少なくとも1つを含む混合物であってよい。
1.ターボ過給機速度(N)の変化の物理モデル
本発明によれば、ターボ過給機のダイナミックスを表す物理モデルは、タービン内の圧力比PRtを少なくともターボ過給機速度の関数として表す物理モデルである。タービン内の圧力比を、
・ターボ過給機の速度、慣性、および出力
・タービンの流量およびタービンから上流側の温度の関数
として表す物理モデルを使用することができる。
【0033】
一実施形態によれば、使用されるモデルは以下の形式を有する。
【0034】
PRt=T0(J,Wt,Cpηtut)(T1(N)+T2(N)+T3(J,Pc)+T4(N)))
ここで、
・T1(N)は、ターボ過給機軸の所望の加速度に関する項であり、
・T2(N)は、圧縮機によってターボ過給機軸から得られる出力を表す法則に関する項であり、
・T3(J,Pc)は、所望のターボ過給機のダイナミックスに関する項であり、
・T4(N)は、モデリング誤差を補償するのを可能にする最適項であり、
・T0は、タービンに供給される動力とタービンの境界の所の膨張比との変換に相当する項である。
【0035】
以下の表記、すなわち、
y:速度の二乗(N2
d:所望の速度の二乗(Nd2
μ:実験によって定められる利得
を使用すると、以下の関係によってターボ過給機速度(N)の変化の物理モデルを定義することが可能になる。
【0036】
【数3】


【0037】
ここで、
【0038】
【数4】

【0039】
:ターボ過給機軸の加速度(AR)
−μ(y−yd
:所望の速度のダイナミックスを表す指数関数法則
【0040】
【数5】

【0041】
:準静的補償のための圧縮機出力を表す項
【0042】
【数6】

【0043】
:モデリング誤差を補償するのを可能にする積分項
【0044】
【数7】

【0045】
:タービン出力と、
【0046】
【数8】

【0047】
と、の比を表す項
である。
【0048】
以下に、このようなモデルを構成するのを可能にする方法について説明する。
物理モデルの構成
ターボ過給機のダイナミックスを物理的にモデル化するために、ターボ過給機速度(N)の変化がタービン(Pt)と圧縮機(Pc)との平衡から得られるものとする。
【0049】
【数9】

【0050】
摩擦損失は無視する。Jは、ターボ過給機の回転部分(圧縮機およびタービン軸およびホィール)の慣性のモーメントである。
【0051】
吸気マニホールドおよび排気マニホールドに質量平衡の原理を適用し、吸気マニホールドおよび排気マニホールドのダイナミックスをターボ過給機より高速のダイナミックスとみなすことによって、次式のように書くことができる。
【0052】
t=Wc+Wf (3)
fはシリンダへの燃料の注入による低い流量である。
【0053】
ターボ過給機速度(N)を圧力比および圧縮機流量(PRc)の関数として表すのを可能にする関係式が上式から演繹される。
【0054】
【数10】

【0055】
関数f5は、テストベンチにマップを描くことによって定めることができる。
【0056】
次に、バックステッピング技術を使用して、この数式から制御則が生成される。
【0057】
バックステッピングは、非線形システム用の制御装置を定義するのを可能にする技術である。バックステッピングは、システムの各段階を段階的に安定化させるリヤプノフ関数の反復合成に基づく再帰的技術である。従って、プロセスの各段階で、仮想制御が生成され、システムが、平衡状態になるように収束させられる。この技術は、適応コントローラを構成するのも可能にする。この技術は以下の文献に記載されている。
・Kristicacute M., Kanellakoupoulos I., Kokotovic P.V. "Nonlinear and adaptive co
ntrol design", Control System Technology
and Automation. Wiley, 1995
従って、ターボ過給機速度を所定のダイナミックスに従うようにする制御は、バックステッピング技術によって定義される。以下のように表される指数関数的なダイナミックスを選択することができる。
【0058】
【数11】

【0059】
ここで、
y:速度の二乗(N2
d:所望の速度の二乗(Nd2
μ:実験によって定められる利得
である。
【0060】
前述のダイナミックスにバックステッピング技術を適用すると、以下の数式が得られる。
【0061】
【数12】

【0062】
以下の表記を使用する。
【0063】
【数13】

【0064】
【数14】

【0065】
【数15】

【0066】
y=N2
上記に定義されたパラメータαtおよびβtは、測定された変数およびターボ過給機効率マップを使用して算出できることが分かる。タービンおよび圧縮機の効率はターボ過給機速度に応じてゆっくり変化するため、制御則では一定であるとみなすことができる。
【0067】
モデリング誤差を補償する積分項をモデルに付加することができる。すると、最終的な制御則が得られる。
【0068】
【数16】

【0069】
2.設定圧力(PiC)の所望の速度(Nd)への変換
制御過程の目標は、吸気マニホールド内の圧力Piが設定圧力PiCに等しくなるようにタービンの容量を修正することである。
【0070】
タービンのマップは製造業者から供給される。このマップは、様々な制御則UVGT1,UVGT2,UVGT3,...について、タービンに流入する流体の流量Wtの変化を、タービン内の圧力比PRtの関数として表す。
【0071】
本発明者らは、ターボ過給機速度(N)をタービン内の圧力比PRtに関連付ける物理モデルも有している。
【0072】
従って、吸気マニホールド内の設定圧力の、ターボ過給機速度の設定値への変換を実施する必要がある。それゆえ、設定圧力(PiC)は所望の速度(Nd)に変換される。
【0073】
この変換は、製造業者から供給される圧縮機マップ(CC)によって実現される。圧縮機マップは、速度を吸気マニホールド内の圧力の関数として求めるのを可能にする曲線である。
3.タービンアクチュエータ用の制御則UVGTCの定義
この段階の目標は、タービンアクチュエータを制御しかつターボ過給機を制御するのを可能にする実制御を作り出すことである。この制御はUVGTCによって示される。
【0074】
設定圧力PiCに応じて、所望の速度Ndが求められる。次に、物理モデルによってタービン内の所望の圧力比PRtCが算出される。
【0075】
タービンに入る流体の流量Wtmも測定される。
【0076】
タービンのマップは製造業者から供給される。このマップは、様々な制御則UVGT1,UVGT2,UVGT3,...について、タービンに流入する流体の流量Wtの変化を、タービン内の圧力比PRtの関数として表す。
【0077】
最後に、マップ、PRtCおよびWtmからタービンアクチュエータ用の制御則UVGTCが推定される。
【0078】
このことは、以下の数式によってタービンマップに近似させることによって行うことができる。
【0079】
t=(a.G(UVGT)+b).Ψ(PRt) (6)
ここで、
G(UVGT)はUVGTの全単射多項関数であり、
【0080】
【数17】


【0081】
である。
【0082】
従って、PRt=PRtCによってUVGTCを推定することが可能である。
【0083】
2つのパラメータaおよびbは、タービンの特性を使用してオフライン最適化によって求めることができる。この2つのパラメータは、ターボ過給機速度に依存するが、この依存は弱く、制御方式で考慮することができる。
【0084】
実際、パラメータbは、タービン圧力比は所望の比に従うように、積分器によって線形に修正されることができる。
【0085】
数式(6)および(7)によって、タービンを、制御UVGTに応じた断面を有するオリフィスとして表せることが分かる。流量を圧力比の関数として与える標準数式は、考えられる数式がタービンの特性をよりうまく表すように修正されている。
【0086】
図4は、2つのパラメータaおよびbを、修正されたターボ過給機速度(N)の関数として示している。
【0087】
図5は、タービンアクチュエータ(VGT)の位置による、製造業者(円印)から与えられるタービン流量と推定値(十字印)との比較を示している。優れた相関関係が観測されている。
4.制御則UVGTCによるタービン容量の修正
最後の段階は、タービンアクチュエータに制御則UVGTCを適用してタービンの容量を修正することから成っている。このアクチュエータは、位置が変化すると、吸気マニホールド内の圧力Piが設定圧力PiCに等しくなるようにタービンに流入する流体の流量を修正する。
【0088】
アクチュエータは、固定容量ターボ過給機の場合はウェイストゲート型弁であってよく、可変容量ターボ過給機の場合はタービンのタービン翼(VGTと呼ばれるアクチュエータ)であってよい。
結果
図6A〜6Bは本発明による制御結果を示している。実線の曲線は実測定値を表し、点線の曲線はこの方法による推定値を表している。図6Aは、吸気マニホールド内の圧力Piの変化を時間tの関数として示している。図6Bは、ターボ過給機速度(N)の変化を時間tの関数として示している。図6Cは、制御則UVGTCの変化を時間tの関数として示している。最後に、図6Dは、タービン内の圧力比(PRt)の変化を時間tの関数として示している。
【0089】
これらの結果は、提供される方法の性能を示しており、提供される制御則によって与えられるプレポジショニングは、必要な吸気圧の曲線から得られる所望の速度の曲線に急速に従うのを可能にするVGT制御に変換されて、所望の排気圧を動的に定義することを可能にすることを示している。
利点
この方法は、(動的条件の下で有効な)システムの動作点に応じて制御則のパラメータを変化させる必要無しに容易に調整可能な、線形の、それゆえ単純な制御則を使用するのを可能にする。従って、この方法は以下の様々な利点をもたらす。
・静的条件(プレポジショニング)と動的条件とについて、レギュレータの調整を容易にするのを可能にする。
・モデルにおける物理量や評価量を使用することによって、調整に必要な試験の数が少なくなる。
・検討されるシステムと機関の他のサブシステム(EGR、燃焼、または場合によっては他の外部条件)との相互作用がモデルにおいて考慮され、レギュレータの調整をこれらの他のサブシステムから独立させることが可能になる。
・従来のターボ過給機調整方法は、静的動作点に対応するマップに基づく方法である。そのため、動的条件の下では、システムは一連の静的(準静的)状態を経ると仮定される。この提供される制御則では、モデルは動的条件の下で有効であり、この仮説はもはや必要とされない。
・この制御則は、固定容量ターボ過給機(アクチュエータはウェイストゲート型弁から成る)や、可変容量タービンを有するターボ過給機(アクチュエータはタービンのタービン翼から成る)といった、いくつかのターボ過給機技術に一般化することができる。制御則は、物理数式を考慮することによって様々なシステム構成、たとえば二段ターボ過給機、HP−EGRまたはLP−EGRを有する機関、可変吸気機関に対して容易に適応するのを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】ターボ過給機を有する機関を示す図である。
【図2】タービンのマップを示す図である。
【図3】ターボ過給機を制御する方法を示す図である。
【図4】修正されたターボ過給機速度の関数としての2つのパラメータaおよびbを示す図である。
【図5】製造業者(円印)によって与えられるタービン流量と推定値(十字印)との比較を示す図である。
【図6A】本発明による制御方法の結果を示す図である。
【図6B】本発明による制御方法の結果を示す図である。
【図6C】本発明による制御方法の結果を示す図である。
【図6D】本発明による制御方法の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンを有し、内燃機関に備えられたターボ過給機を制御する方法であって、前記機関の吸気マニホールド内の流体圧力に対応する設定圧力PiCが決められるターボ過給機を制御する方法において、以下の段階、すなわち、
前記設定圧力PiCを所望の速度値Ndに変換することと、
前記ターボ過給機の速度Nを、タービン出口における流体圧力の、タービン入口における流体圧力に対する比に関連付ける物理的関係を定義することと、
前記関係を前記所望の速度値Ndに適用することによって、前記タービン内の所望の前記圧力の比PRtCを算出することと、
前記タービンに流入する流体の流量Wtの変化を前記タービン内の前記圧力比PRtの関数として表す、様々なアクチュエータ制御則についての前記タービンのマップによって、前記タービンに流入する流体の流量の測定値Wtmおよび前記タービン内の前記所望の圧力比PRtCから、前記タービンアクチュエータ用の制御則UVGTCを推定することと、
前記吸気マニホールド内の圧力Piが前記設定圧力PiCに等しくなるように前記制御則UVGTCをタービンアクチュエータに適用することと、を含むことを特徴とするターボ過給機を制御する方法。
【請求項2】
前記アクチュエータは、ウェイストゲート型弁である、請求項1に記載のターボ過給機を制御する方法。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記タービンのタービン翼に相当する、請求項1に記載のターボ過給機を制御する方法。
【請求項4】
前記設定圧力(PiC)は、前記ターボ過給機に備えられた圧縮機のマップを使用して所望の速度値(Nd)に変換される、請求項1から3のいずれか1項に記載のターボ過給機を制御する方法。
【請求項5】
前記物理的関係は、前記吸気マニホールドおよび排気マニホールドに質量平衡の原理を適用するとともに、前記ターボ過給機速度を所定のダイナミックスに従うようにする制御が定義されるバックステッピング技術を適用することによって、タービン出力と圧縮機出力との平衡関係から得られる、請求項1から4のいずれか1項に記載のターボ過給機を制御する方法。
【請求項6】
次式のように表される指数関数的ダイナミックスが選択され、
【数1】


ここで、μは実験によって定められた利得である、請求項5に記載のターボ過給機を制御する方法。
【請求項7】
前記制御則は、前記タービンマップに近似させることによって推定される、請求項1から6に記載のターボ過給機を制御する方法。
【請求項8】
前記タービンマップは、以下のような種類の数式によって近似され、
t=(a.G(UVGT)+b).Ψ(PRt
ここで、
a,b:求めるべき2つのパラメータ
VGT:アクチュエータ制御則
G(UVGT):UVGTの全単射多項関数、
【数2】


γ:比熱比
である、請求項7に記載のターボ過給機を制御する方法。
【請求項9】
前記2つのパラメータaおよびbは、オフライン最適化によって求められる、請求項8に記載のターボ過給機を制御する方法。
【請求項10】
前記2つのパラメータaおよびbは、前記タービン圧力比PRtが前記所望の比PRtCに従うように積分器によって線形に修正される、請求項9に記載のターボ過給機を制御する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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