説明

ターポリン

【課題】耐熱性や高温クリープ性を向上させることができ、柔らかな風合いも兼ね備えることのできるターポリンを提供することを目的とする。
【解決手段】撚合糸14で形成した繊維基布12と、該繊維基布12の少なくとも一方の面に被覆する被覆材13とで形成し、上記撚合糸14を、フィラメント糸15Lと、該フィラメント糸15Lより繊維長の短いステープル糸15Sとを混撚りしてターポリン11を構成する。さらに必要に応じて、上記被覆材13に、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を主成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フレキシブルコンテナをはじめとして、例えば、自動車用幌、テント、工事用被覆シートとして用いるのに好適なターポリンに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルコンテナは、そば粉、塩、米などの粉状体類や製品の工業原材料となるペレット状類などの内容物を収納するため、開口部を絞って内部の保温性、気密性、水密性を確保しつつ、内容物の輸送、保管などに供される。
【0003】
また、内部に収容された内容物を開口部から排出した後には、折り畳んで、再使用に供される。
【0004】
このため、フレキシブルコンテナに用いられるターポリンには、開口部を絞り易く、折り畳み易いように柔軟性が要求される。
【0005】
また、フレキシブルコンテナは、約50℃以上の高温の内容物を収容する機会も有するため、耐熱性が要求される。さらに、フレキシブルコンテナは、高温の内容物を収容してフォークリフトによって吊り下げたり載置することや、高温にさらされた状況下での収納、輸送作業に用いられる機会も多いため、特に高温下でのクリープ性(耐荷重特性)、すなわち、高温クリープ性が要求される。
【0006】
このようにターポリンは、柔軟性、耐熱性、高温クリープ性など様々な性能が要求されており、このような性能を満たすために、繊維基布に被覆する被覆材の成分や配合に様々な改良が加えられている。
【0007】
例えば、特許文献1において開示された「エチレン系重合体組成物及びそれを用いたターポリン」もその1つであり、被覆材に含有する樹脂成分やその配合に改良を加えることによって、性能特性の改善を図っている。
【0008】
その他にも、成分や配合に改良に加えた被覆材として例えば、軟質ビニル樹脂を含有した組成物で構成される被覆材が従来より用いられている。軟質塩化ビニル樹脂は、一般に、可塑剤を多く含有しているため、柔軟性に優れ扱い易いという特徴を有している。さらに、軟質塩化ビニル樹脂は、熱可塑性樹脂であるため、繊維基布に対するウェルダーによる溶着性(高周波ウェルダ溶着性)に優れているといった特徴も有している。
【0009】
しかし、軟質塩化ビニル樹脂は、可塑剤を含有しているが故に、可塑剤が内容物へ浸透したり付着したりするという難点を有する。
【0010】
このため、最近ではEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合)樹脂を主成分として含有したシートが用いられている。
【0011】
EVA樹脂は、無可塑樹脂であるとともに、無可塑樹脂の中でも、柔軟性、溶着性が良好であり、安価であるためである。
しかし、EVA樹脂で形成したシートには、下記の難点を有する。
(1)EVA樹脂の場合、耐熱クリープ温度が、約50℃までが限界であった。50℃以上にする場合、EVA樹脂中の酢酸ビニルの含有量を15重量パーセント以下にしなければならないが、15パーセント以下にした場合は、かなり風合いの硬いシートになり使用できない、又は、取り扱い難くなってしまう。
【0012】
仮に、柔軟性を無視してEVA樹脂中の酢酸ビニルの含有量を15重量パーセント以下にしたとしても、被覆材の配合だけでは耐熱クリープ温度は、60度までが限界であり60度以上にするのは困難であった。
(2)現在使用されているEVA樹脂で形成したシートは、軟質塩化ビニールを含有したシートと比較すると硬いシートであり、取り扱いが悪くなるといった難点を有する。
【0013】
このため、EVA樹脂中の酢酸ビニルの含有量を20重量%以上にする、或いは、スチレン系オレフィン樹脂を添加することで、柔軟にしている。
【0014】
しかし、このような手段により、シートを柔軟にすることができる一方で、耐熱クリープ温度が40度以下となり、耐熱クリープ性が低下しすぎて使用できなかった。
【0015】
上述した(1),(2)のとおり、被覆材の配合に変更を加えるだけでは、柔軟性、高温クリープ温度の両方に優れたバランスのよいターポリンを得ることは、限界があり、困難であった。
【特許文献1】特開2003−176387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、この発明は、高温クリープ性を向上させることのでき、さらに、柔らかな風合いも兼ね備えることのできるターポリンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、撚合糸で形成した繊維基布と、該繊維基布の少なくとも一方の面に被覆する被覆材とで形成したターポリンであって、上記撚合糸を、フィラメント糸と、該フィラメント糸より繊維長の短いステープル糸とを混撚りして構成したことを特徴とする。
【0018】
また、上記ステープル糸(短繊維糸)は、38〜102mm程度の繊維長さであることが好ましいが、この繊維長さに限定しない。
【0019】
上記撚合糸としては、フィラメント糸は、280〜1100dtexの範囲の太さのものが好ましく、ステープル糸は、5〜100番手の範囲の太さのものが好ましい。
【0020】
上記撚合糸は、繊維基布の縦糸、横糸として用いるいずれの場合においても、1インチあたり10〜30本の密度であることが好ましく、ステープル糸は、縦糸、横糸の少なくとも一方に含まれていればよい。
【0021】
上記構成により、上記撚合糸をフィラメント糸に多数のステープル糸が起毛状に絡まり合うよう構成できるため、ウェルダーによる溶着時に被覆材の溶融部分が複数のステープル糸の間に入り込んで、ステープル糸と絡み合うという、いわゆるアンカー効果が発生する。このアンカー効果により、フィラメント糸のみで形成した従来の繊維基布の場合と比較して、優れた溶着性を得ることができ、溶着部分から撚合糸が剥離することを確実に防止することができる。
【0022】
なお、繊維基布は、ステープル糸のみで構成した従来の繊維基布とも異なり、フィラメント糸により全体の形態を型崩れしないよう保ちつつ、フィラメント糸とステープル糸とが互いに絡まり合うことにより基布自体の強度を格段に向上させることができる。
従って、優れたクリープ性を有するターポリンを構成することができる。
【0023】
例えば、50〜60℃の高温時の使用によって被覆材を構成する樹脂が軟化しても、アンカー効果により、溶着部分から撚合糸が剥離する(抜ける)ことを確実に防止することができるため、優れた高温クリープ性を得ることができる。
【0024】
また、被覆材を繊維基布に対して溶着により被覆するに限らず、例えば、接着剤により接着して被覆する構成であっても、接着剤がステープル糸に絡み合うため、溶着する場合と同様にアンカー効果が発生し、優れた高温クリープ性を得ることができる。
【0025】
また、この発明の態様として、上記被覆材を、エチレンと酢酸ビニルとの共重体であるエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)で構成することができる。
【0026】
EVA樹脂は、無可塑樹脂の中でも、良好な柔軟性、溶着性を有するとともに、安価であるため、これらの特性を満たしたターポリンを得ることができる。
【0027】
さらに、EVA樹脂は、例えば、軟質塩化ビニルのように可塑剤が含有されていないため、内容物へ可塑剤が付着したり浸透することを回避することができるといった効果も得ることができる。
【0028】
この発明の態様として、上記酢酸ビニルを、上記エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂に対して15重量%以下の含有量で構成することができる。
【0029】
この構成により、良好な使用が担保できる範囲での柔軟性を確保しつつ、高温クリープ温度が約60℃以上という高温クリープ性に優れたターポリンを得ることができる。
なお、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂に含有する酢酸ビニルの含有量を15重量%以下にする手段としては、例えば、ポリエチレン樹脂を添加するといった手段を挙げることができるが、この手段に限定しない。
【0030】
この発明の態様として、上記被覆材に、スチレン系オレフィン樹脂を含有することができる。
【0031】
上記構成により、約50℃以上という優れた高温クリープ性を備えつつ、被覆材を軟質化することができるため、柔らかな風合いのターポリンを得ることができる。
【0032】
本発明のターポリンにより、例えば、テントや養生シートなどを構成することができるが、フレキシブルコンテナを構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、高温クリープ性を向上させることができ、さらに、柔らかな風合いも兼ね備えることのできるターポリンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態におけるターポリン11について、図1、及び、図2とともに説明する。
なお、図1は、被覆材13の一部を破断して模式的に示したターポリン11の正面図を示している。図2は、厚み方向の断面を一部拡大して模式的に示したターポリン11の拡大断面図を示している。
【0035】
ターポリン11は、上記繊維基布12の一方の面に樹脂組成物により構成した被覆材13をウェルダーによる溶着により被覆して全体を略0.8mmの厚みに形成している。上記繊維基布12は、図1,2に示すように、織物により形成し、その縦糸、及び、横糸には、撚合糸14を用いている。
上記撚合糸は、フィラメント糸15L(長繊維糸)と、該フィラメント糸15Lより繊維長の短いステープル糸15S(短繊維糸)とを混撚りして構成している。
【0036】
詳しくは、織物である繊維基布12は、縦糸として上記撚合糸14を、1インチ当たり19本の密度になるよう配するとともに、横糸として上記撚合糸14を、1インチ当たり20本の密度になるよう平織りにより形成している。
【0037】
フィラメント糸15Lは、830dtexの太さのポリエステルフィラメントを使用している。ステープル糸15Sは、30番手のポリエステルステープルを使用している。上記撚合糸14は、このようなフィラメント糸15Lとステープル糸15Sとを混撚りし、フィラメント糸15Lとステープル糸15Sとの重量比率がそれぞれ81重量部、19重量部となるよう構成している。
【0038】
被覆材13は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合樹脂(EVA樹脂)を主成分として構成している。
【0039】
続いて、上述した構成のターポリン11の性能を評価するために行った性能評価実験について説明する。
本実験では、表1に示すように、本発明のターポリン11として実施例1,2の2種類製作するとともに、比較対象として用いるターポリンを、比較例1から3の3種類製作した。
【0040】
【表1】

詳しくは、実施例1,2のターポリンには、上述した実施形態のターポリン11の繊維基布12を用いている。すなわち、繊維基布12を、フィラメント糸15Lとステープル糸15Sとを混撚りした撚合糸14を縦糸、及び、横糸として平織りすることにより構成している。
実施例1のターポリンの被覆材13は、EVA樹脂に低密度ポリエチレン(PE)を添加し、酢酸ビニルの含有率を20重量%から10重量%以下に低下させた耐熱配合で構成している。
実施例2のターポリンの被覆材13は、EVA樹脂にスチレン系オレフィン樹脂を添加した軟質配合で構成している。
【0041】
一方、比較例1から3のターポリン100は、いずれも図3(a),(b)に示すような従来の繊維基布101を用いて製作している。すなわち、繊維基布101を、フィラメント糸15Lのみの撚糸102を縦糸、及び、横糸として平織りすることにより構成している。
なお、図3(a)は、被覆材13の一部を破断して模式的に示した従来のターポリン100の正面図を示している。図3(b)は、厚み方向の断面を一部拡大して模式的に示した従来のターポリン100の拡大断面図を示している。
【0042】
比較例1のターポリンの被覆材13は、EVA樹脂に低密度ポリエチレン(PE)を添加し、酢酸ビニルの含有率を20重量%から10重量%以下に低下させた耐熱配合で構成している。
【0043】
比較例2のターポリンの被覆材13は、EVA樹脂にスチレン系オレフィン樹脂を添加した軟質配合で構成している。
【0044】
比較例3のターポリンの被覆材13は、EVA樹脂中の酢酸ビニルの含有率を通常どおりの20重量%のままである通常配合で構成している。すなわち、比較例3のターポリンの被覆材13には、低密度ポリエチレン(PE)やスチレン系オレフィン樹脂を添加していない。
【0045】
この実験では、実施例1のターポリンの比較例として比較例1,3のターポリンを用い、実施例2のターポリンの比較例として比較例2,3のターポリンを用いて、実施例1,2のターポリンの「高温クリープ性」、「柔軟性」、「溶着性」についての評価実験を行なった。
【0046】
「高温クリープ性」の評価実験は、ターポリンから所定サイズの短冊状で切り出した短冊状試験片を2枚重ね合わせ、その長さ方向の両端を一対のチャックで挟持して、所定の温度ごとに各チャックが互いに離間する方向に390N(約40Kg重)の荷重を24時間付与し続けることにより行なった。
【0047】
詳しくは、実施例1、及び、比較例1,2に係るターポリンは、50℃から75℃までの5℃刻みの各所定温度について6段階に分けてクリープ性の評価を行なった。
一方、実施例2、及び、比較例3に係るターポリンは、35℃から55℃までの5℃刻みの各所定温度について5段階に分けてクリープ性の評価を行なった。
【0048】
「柔軟性」の評価実験は、ターポリンの圧縮剛性を測定することにより評価を行なった。
【0049】
「溶着性」の評価実験は、ウェルダー機にて0.5〜0.7Aで5秒間加圧するウェルダー加工を行い、その加工後に、5秒の冷却時間を経て繊維基布12,101に対して被覆材13が界面剥離をするか否かを判定することにより行なった。
なお、上記ウェルダー機には、溶着設備として、型式:「YFN−7000型」、出力が7kwである「山本ビニター製高周波ウェルダー」を用いた。
【0050】
かくして得られた「高温クリープ性」の評価結果を表2(a),(b)、及び、表3(a),(b)に示すとともに、「高温クリープ性」、「柔軟性」、「溶着性」の評価結果を表3(a),(b)に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

表2(a),(b)、及び、表3(a),(b)の結果から明らかなように、実施例1,2のターポリンは、いずれも比較例1から3のターポリンと比較して格段に優れた高温クリープ性を示した。
【0053】
なお、表2(a),(b)には、短冊状試験片が破断せずに元の状態を保つことができた場合を、「合格」とし、破断したり、破断傷などの不具合が生じた場合を「不合格」として評価結果を表示している。
【0054】
さらに、表3中の「高温クリープ性」については、表2中で「合格」であった最高温度、すなわち、耐熱温度が65℃以上のものを「◎」、55℃〜65℃のものを「○」、45℃〜55℃のものを「△」、45℃以下のものを「×」として評価結果を表示している。
【0055】
詳しくは、表2(a)に示すように、比較例1,3のターポリンは、耐熱温度が60℃、50℃であった。これに対して、実施例1のターポリンは、耐熱温度が70℃であった。
【0056】
また、表2(b)に示すように、比較例2のターポリンは、軟質配合とすることにより、耐熱温度が35℃となり、通常配合である比較例3のターポリンの50℃という耐熱温度と比較すると大幅に下がった。
これは、比較例3のターポリンの被覆材13に、軟化材、柔軟剤としてスチレン系オレフィン樹脂を含有しているためであると考えられる。
【0057】
そして、実施例2のターポリンの被覆材13にも、スチレン系オレフィン樹脂を含有しているため、実施例2のターポリンの耐熱温度は、実施例1のターポリンと比較して下がった。
【0058】
しかし、実施例2のターポリンは、表2(b)に示すように、耐熱温度の下げ幅を比較例2のターポリンよりも格段に抑制でき、比較例3のターポリンの耐熱温度が35℃であるのに対し、50℃という充分、高温下での輸送に耐え得る優れた高温クリープ性を得ることができた。
【0059】
続いて「柔軟性」について、実施例2、比較例2のターポリンは、上述したように被覆材13に、スチレン系オレフィン樹脂を含有しているため、表3に示すとおり「◎」となり、優れた柔軟性を得ることができた。
【0060】
表3中、「柔軟性」については、圧縮剛性が75g以下のものを「◎」、75g〜100gのものを「○」、100g〜120gのものを「△」、120g以下のものを「×」として評価結果を表示している。
なお、本実験において、評価結果が「×」に該当するものはなかった。
【0061】
最後に、「溶着性」の評価結果について考察すると、実施例1,2、及び、比較例1〜3のターポリンは、いずれも「○」でった。
なお、表3中、「溶着性」については、界面剥離を全く確認できなかったものを「○」、一部剥離を確認したものを「△」、剥離したものを「×」として評価を行い、評価結果は、全て「○」であった。
【0062】
上述した実施例1,2のターポリンは、上記撚合糸14を、フィラメント糸15Lと、該フィラメント糸15Lより繊維長の短いステープル糸15Sとを混撚りして構成している。
【0063】
本実験の評価結果により、上記構成によれば、被覆材13の溶着面に複数の起毛状のステープル糸15Sが絡み合うというアンカー効果が発生するため、被覆材13と繊維基布12との一体性が格段に向上するとともに、フィラメント糸15Lにステープル糸15Sが絡み合うことによりフィラメント糸15Lの糸抜け(解れ)防止を図ることができることを上記性能評価実験により確認することができた。
【0064】
従って、実施例1,2のターポリンのように、フィラメント糸糸15Lのみで形成した繊維基布101を備えた従来のターポリン100と比較して格段に優れた高温クリープ性、及び、溶着性を得ることができることを確認することができた。
【0065】
さらに、実施例1のターポリンは、被覆材13の主成分であるEVA樹脂に含有する酢酸ビニルの含有量を10重量%として構成している。
【0066】
本実験の評価結果により、上記構成によれば、良好な使用を担保できる範囲での柔軟性を確保しつつ、高温クリープ温度が約70℃という高温クリープ性に優れたターポリンを得ることができることを確認することができた。
【0067】
さらにまた、実施例2のターポリンは、EVA樹脂を主成分とする被覆材13に、スチレン系オレフィン樹脂を含有して構成している。
【0068】
本実験の評価結果により、上記構成によれば、約50℃という優れた高温クリープ性を備えつつ、被覆材13を軟質化することができるため、柔らかな風合いのターポリンを得ることを確認することができた。
【0069】
さらに、表3(a),(b)に示すとおり、実施例1,2のターポリンは、いずれも溶着性について低下することがなく「○」であり、優れた溶着性を確保することが確認できた。
【0070】
従って、本発明によれば、被覆材の成分、配合の変更だけでは解決できなかった高温クリープ性の大幅な向上、並びに、優れた高温クリープ性、柔軟性、及び、溶着性の両立を実現することができ、ターポリンの使用用途を拡大させることができる。
【0071】
また、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、以下に示すように、多くの実施の形態を得ることができる。
【0072】
繊維基布に被覆材を被覆してターポリンを構成するとき、上記組成物から製造された被覆材を繊維基布の片面に被覆してもよいし、両面に被覆してもよい。繊維基布は、被覆材に対して溶着により一体に被覆してもよく、該繊維基布と被覆材との間に接着剤層を設けて接着により被覆してもよい。
【0073】
繊維基布は、ターポリンの補強層として機能する基布であれば、編布、不織布など特に限定しないが、寸法安定性、取り扱い性、物性等を考慮すると、織布であることが好ましい。織布としての織物組織は限定しないが、平織が取り扱い上、特に好ましい。
【0074】
さらに、繊維基布を織布で構成する場合、繊維基布は、その縦糸、横糸の双方、或いは、いずれか一方のみに、フィラメント糸とステープル糸とを混撚りしてなる撚合糸を用いて構成することができる。
【0075】
また、繊維基布の材質は、焼却時にハロゲン系ガスを発生せず、残存する灰分量が少なければ、例えば、木綿、麻などの天然繊維、合成繊維、半合成繊維のうちのいずれの繊維であってもよい。
【0076】
繊維基布を合成繊維で形成する場合、繊維基布は、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、または、これ等の混合繊維等の合成繊維から形成することが、取り扱い性に優れているという観点で好ましい。
【0077】
さらに、繊維基布は、必要な物性、例えば耐候性、引張強力、引裂強力等に優れている点も考慮すると、上述した混合繊維や複合繊維の中でも、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維で形成することが好ましい。
【0078】
また、ターポリンの製造法としては、一例としてフイルムを成形すると同時に繊維基布を積層するカレンダートッピング法やT−ダイラミネート法、あるいはカレンダー法、T−ダイ法、インフレーション法等によりフイルムを一度成形した後に熱圧着により繊維基布を積層する熱ラミネート法を挙げることができるが、その他の製造法であってもよい。
【0079】
さらにまた、ターポリンの厚さは、それが用いられる用途や規模によっても調節できるが、一般にターポリンの厚さは0.20mmから2.0mm程度としておくのが好ましい。
【0080】
ターポリンの厚さが0.20mmより薄いと機械的強度が小さいため、耐久性、及び、取り扱い性に優れるターポリンが得られ難くなるからである。
一方、ターポリンの厚さが2.0mmを越えると重くて柔軟性が損なわれるため取り扱い性が悪くなるからである。
【0081】
フレキシブルコンテナ用にターポリンを構成する場合は、その厚みは、機械的強度、耐久性、柔軟性といった観点から約0.70mm〜1.00mm程度であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施形態のターポリンの構成説明図。
【図2】本実施形態のターポリンの構成説明図。
【図3】従来のターポリンの構成説明図。
【符号の説明】
【0083】
11…ターポリン
12…繊維基布
13…被覆材
14…撚合糸
15L…フィラメント糸
15S…ステープル糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚合糸で形成した繊維基布と、該繊維基布の少なくとも一方の面に被覆する被覆材とで形成したターポリンであって、
上記撚合糸を、
フィラメント糸と、該フィラメント糸より繊維長の短いステープル糸とを混撚りして構成した
ターポリン。
【請求項2】
上記被覆材を、エチレンと酢酸ビニルとの共重体であるエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂で構成した
請求項1に記載のターポリン。
【請求項3】
上記酢酸ビニルを、上記エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂に対して15重量%以下の含有量で構成した
請求項2に記載のターポリン。
【請求項4】
上記被覆材に、スチレン系オレフィン樹脂を含有した
請求項2に記載のターポリン。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のターポリンで構成した
フレキシブルコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−262382(P2009−262382A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113348(P2008−113348)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000157474)丸山工業株式会社 (1)
【出願人】(000200666)泉株式会社 (24)
【Fターム(参考)】