説明

ターンバックル及び該ターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造

【課題】
【技術分野】ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、ワイヤロープをターンバックルから摺動させて繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐとともに、落石防護ネットや落石防護柵等の許容荷重の増加を図って安全性を高める。
【解決手段】ワイヤロープ5の端部を固定するためのターンバックル1であって、胴部2と、該胴部2の両端部に同一直線上で相対的に軸移動可能に螺合された一対の固定金具3,4とからなり、一方の固定金具3を、ワイヤロープ5の外周面に固定可能な楔部材6と、楔部材6を離脱不能に収納する中空テーパ部7aを有する係合部材7と、ワイヤロープ5を挿通可能な中空筒状部8aを有するとともに胴部2に螺合するための螺子状周部8dを有する金具本体8と、係合部材7と金具本体8を連結する継手部材9とから形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石防護ネットや落石防護柵等において、ワイヤロープの端部を固定するためのターンバックル及び該ターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造に関し、特には、ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、ワイヤロープをターンバックルから摺動させて繰り出すことにより、ワイヤロープの破断やワイヤロープの支柱の変形を防ぐとともに、落石防護ネットや落石防護柵等の許容荷重の増加を図って安全性を高めるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から傾斜面の表層土砂が雨等の自然現象によって流出したり、落石や雪崩等によって傾斜面が崩壊することを防止するため、種々の斜面安定工法が採用されている。特に道路や駐車場、各種建築物等に近接して落石や土砂崩れ、或いは雪崩の恐れがある場所には落石防護ネットや落石防護柵等を取付け、落石や土砂崩れ、或いは雪崩を受け止めて防護する手段が一般に用いられている。これらの落石防護ネットや落石防護柵では、落石等の衝撃に対して弾性域内で働く複数のワイヤロープと適度な剛性、靱性を有する支柱の変形によりエネルギーを吸収している。
【0003】
従来、ワイヤロープの端部を支柱等に固定する索端金具としては、例えば、ワイヤロープの端末部のよりを緩めてストランドの間に楔塊を介挿することにより、ワイヤロープを開口部に抜絡不能にブラケットに固定し、このブラケットを支柱に固定したボルト軸に螺合する手段が一般的に行われている。
【0004】
また、基端部に締結ダブルナットを螺合したボルト軸の先端を環状部又はフック部に形成してなり、支柱に固定したボルト軸の環状部又はフック部にワイヤロープの端部に付設した巻付グリップを掛けるようにした索端金具も提供されている(特許文献1)。そして、ワイヤロープの端部の処理手段として、円錐状管の大径外側にネジ部を螺設し、前記円錐状管の内側に合致するワイヤーロープを係合できる凹溝部を対向させて縦設したクサビと、前記円錐状管のネジ部に螺合できる縁つきナットとからなる手段も提供されている(特許文献2)。更に、ワイヤロープの端部に付設した巻付グリップを掛け通すヘッド部を支柱に固定したボルト軸に挟持ナットを介して連結する索端金具も提供されている(特許文献3)。
【0005】
また、落石防護ネットとしては、覆い式とポケット式とに大別される。例えば、覆い式の落石防護ネットは、広い面積の金網に多数の縦ロープと複数の横ロープを相互間隔をおいて組み込み、各縦ロープと横ロープの端部を斜面にアンカーして、このロープ付き金網を斜面になじむように敷設することによって、浮石等を支持して跳石や落石を防止する構造である。ポケット式の落石防護ネットは、沢状部の両側に3メートル〜4メートルの間隔毎に多数のポケット形成用の支柱を上下方向傾動可能に建て込み、各支柱の上部にそれぞれ縦ロープを連結して垂下し、両端がアンカーにより支持された複数の横ロープを斜面に一定の上下間隔で配置して、この縦横ロープに金網を張設して防護網とし、吊りロープで緩衝して支持された支柱で防護網の上部を支柱の高さに吊持して、各支柱によりロープ付き金網をカーテン状に垂設し、ロープ付き金網の全幅に開口されたポケット部を形成し、落石等を収納することにより落石エネルギーを緩衝して吸収する構造になっている。
【0006】
上記に関して特許文献4には、金網に多数の縦・横補強ロープとともに左・右縦ロープと上端部横ロープ及び複数の下半部横ロープを組み込み補強して、沢状部等の両側斜面に設けたアンカーに左右の支柱をヒンジ連結して沢状部等の上下方向の傾動を可能に建て込み、両側斜面にアンカーした吊ロープ及びサイドロープの端部を各支柱の上部に連結して支保し、左・右縦ロープの上端部を各支柱の上部に連結するとともに、両側斜面に両端部をアンカーした上端部横ロープを各支柱の上部でスライド可能に支持し、各下半部横ロープの各両端部を両側斜面にアンカーして、金網の上半部分を落石エネルギーを緩衝して吸収するポケット部に構成し、金網の下半部分を沢状部等の地上に敷設して落石等を受け止める敷設部に構成して構築するようにした落石防護ネットの工法が記載されている。
【0007】
また、発明者は先に、ポケットの機能を維持するとともに1スパンの広い支柱間隔で沢状部上に落石防護ネットを構築するために、特許文献5に示すように、上部間に固定された上部掛け横ロープと吊りロープにより斜面に支持固定された左右一対の支柱と、一端が上部掛け横ロープに固定された縦主ロープと、左右両端部がアンカーにより斜面に支持固定された横主ロープと、縦主ロープ及び横主ロープ上に敷設された金網と、左右両端部が斜面に支持固定された荷重支持用横ロープと、中間部が縦主ロープに交叉して固定された荷重支持用横主ロープとを備え、該荷重支持用横ロープから垂下したハンガーロープを用いて荷重支持用横主ロープを吊支固定した落石防護ネット構造を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3029289号
【特許文献2】特開平9−31877号
【特許文献3】実用新案登録第3044565号
【特許文献4】特許第2916633号
【特許文献5】特許第3874769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の索端金具はいずれもワイヤロープ端部を支柱に固定する構成であるため、落石発生時や車両の衝突時には、落石や衝突の荷重が直接ワイヤロープに作用することとなり、ワイヤロープの許容荷重以上の荷重が作用した場合にはワイヤロープの破断、索端金具や支柱の変形などが発生することとなり、落石防護柵やガードケーブルとしての使命を果たすことができない。即ち、従来の索端金具はワイヤロープに、ワイヤロープ自体の許容荷重以上の荷重が作用すると、このエネルギーを吸収することができず、ワイヤロープが破断してしまうこととなる。
【0010】
更に、従来から用いられているポケット式の落石防護ネットは、落石等の恐れがある沢状部の両側にポケット形成用の支柱を3メートル〜4メートルという短い間隔で建て込んでいるため、落石等が支柱に衝突して衝撃力により該支柱が損傷または転倒してしまい、落石等が道路上へ落下してしまうことがあるという課題がある。特に支柱の機械的強度が不足している場合には、落石等の衝撃力によって支柱の基礎部が崩壊することがあり、支柱の倒壊によってカーテン状に垂設したロープ付き金網も崩壊するため、落石等を収納するポケットの機能は完全に失われてしまうことになる。
【0011】
前記特許文献4に記載された落石防護ネットの工法は、斜面に両端部をアンカーした上端部横ロープを各支柱の上部でスライド可能に支持しているため、大きな落石等の衝撃力を上端部横ロープで支えることができず、金網及び縦・横補強ロープや左・右縦ロープの崩壊とともに落石防護ネット自体の機械的強度が不足して落石等が道路上へ落下してしまうという問題がある。
【0012】
また、前記特許文献5に記載された落石防護ネット構造によれば、沢状部の両側に広い間隙で支柱を建て込むことによって落石等が支柱に衝突することを極力防止して衝撃力により該支柱が損傷または転倒することをなくし、ポケットの機能を維持するとともに1スパンの広い支柱間隔で沢状部上に落石防護ネットを構築することが可能である。しかしながら、想定された荷重以上の落石等があった場合には、各部材に過度の荷重が掛かって損傷することがある。このような想定外の荷重に耐えるためには過度に設計荷重を増加させなければならず、材料コストや構築費用が必要以上に増加してしまう。
【0013】
また、落石等が発生した場合には、その荷重を受ける各ロープは降伏してしまうため、再使用することができず、交換しなければならない。更に、金網とワイヤロープによる吸収できる荷重には自ずと限界がある。そのため、従来の落石防護ネット構造では、より高いレベルでの安全性の実現と、材料コストや構築費用の合理性の確保という両者を高いレベルで維持することは困難であった。
【0014】
近時は平成21年7月に富士山富士宮口の駐車場で起きた落石による死亡事故を受けて、落石防護柵やガードケーブルの安全性の向上が強く求められている。特に予期しない大きな落石や衝突があった場合においても、これらのエネルギーを吸収することができ、少なくとも落石や衝突車両が落石防護柵やガードケーブルを突き破ることを防止して停止させることによる安全性の確保が特に求められている。
【0015】
一方において、落石防護ネットや落石防護柵の安全性を高めるために、落石防護ネットや落石防護柵におけるワイヤロープの許容荷重の設計値をむやみに大きくし、許容荷重の大きいワイヤロープを使用することは現実性に欠け、又経済効率上からも実施が困難である。
【0016】
そこで、本発明は上記した従来の課題を解決するとともに、ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合においても、ワイヤロープをターンバックルから摺動させて繰り出すことによって、その荷重を吸収し、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐとともに、ワイヤロープ自体の許容荷重の制約を超えて落石防護ネットや落石防護柵等の許容荷重の増加を図って、より高い安全性を実現することのできるターンバックル及び該ターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明はその目的を達成するために、ワイヤロープの端部を固定するためのターンバックルであって、胴部と、該胴部の両端部に同一直線上で相対的に軸移動可能に螺合された一対の固定金具とからなり、一方の固定金具を、ワイヤロープの外周面に固定可能な楔部材と、楔部材を離脱不能に収納する中空テーパ部を有する係合部材と、ワイヤロープを挿通可能な中空筒状部を有するとともに胴部に螺合するための螺子状周部を有する金具本体と、係合部材と金具本体を連結する継手部材とから形成したターンバックルを基本として提供する。
【0018】
また、ワイヤロープの外周面に固定した楔部材を離脱不能に係合部材の中空テーパ部に収納し、係合部材から延長させたワイヤロープの端部を金具本体の中空筒状部に挿入するとともに、係合部材と金具本体を継手部材を介して連結し、金具本体の螺子状周部を胴部に螺合する構成、楔部材は複数に分割可能であるとともに、ワイヤロープに固定した際に、外周面がテーパ状に形成されている構成、係合部材は一端部に、継手部材に係合するため径大の係合鍔部を形成している構成を提供する。
【0019】
更に、金具本体は、一端部に継手部材と係合するための雄螺子を外周面に刻設してなる径大の螺子状鍔部を形成している構成、継手部材の一端部の開口部に、係合部材の係合鍔部と係止する環状鍔部を形成してなる構成、継手部材は内周面に、金具本体の螺子状鍔部と螺合する雌螺子を刻設してなる構成を提供する。
【0020】
より具体的には、ワイヤロープの外周面に固定した楔部材を離脱不能に係合部材の中空テーパ部に収納し、係合部材から延長させたワイヤロープの端部を金具本体の中空筒状部に挿入するとともに、係合部材の一端部に形成された径大の係合鍔部と、金具本体の一端部に形成され、外周面に雄螺子を刻設した径大の螺子状鍔部を対面させて、一端部の開口部に係合部材の係合鍔部を係止する環状鍔部を形成してなる継手部材の内周面に刻設した雌螺子を金具本体の螺子状鍔部の雄螺子と螺合するとともに、継手部材の環状鍔部と係合部材の係合鍔部を相互に係合させることにより、金具本体と係合部材を一体に連結し、金具本体の他端部に形成された螺子状周部を胴部に螺合するターンバックルを提供する。
【0021】
そして、ワイヤロープが所定値以上の荷重によって、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、所定長さ摺動するように固定する構成、胴部の中央部に窓孔を開設するとともに、両端部に一対の固定金具が相対的に軸移動可能に螺合できる一対の螺子孔を形成した構成を提供する。
【0022】
また、上記したターンバックルを使用し、落石防護柵又はガードケーブルにおけるワイヤロープの端部を固定するターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造を提供する。そして、ワイヤロープが所定値以上の荷重によって、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、所定長さ摺動する構成、ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、ワイヤロープが摺動することによってターンバックルからワイヤロープを繰り出すことにより、ワイヤロープの破断を防ぐ構成を提供する。
【0023】
また、ワイヤロープとして、所定間隔で斜面に立設された左右一対の支柱と、該支柱の上部間に固定された上部掛け横ロープと、一端が支柱の上部に固定されるとともに他端部が上方の斜面にアンカーを用いて支持固定された吊りロープと、一端が支柱の上部又は上部掛け横ロープに所定間隔で固定された複数の縦主ロープと、左右両端部がアンカーにより斜面に支持固定されて縦主ロープと交差して配置された複数の横主ロープと、縦主ロープ及び横主ロープ上に敷設された金網と、左右両端部がアンカーにより斜面に支持固定された荷重支持用横ロープと、両端部がアンカーにより斜面に支持固定され、中間部が縦主ロープに交叉して固定された荷重支持用横主ロープとを備え、該荷重支持用横ロープからカーテン状に垂下したハンガーロープを用いて荷重支持用横主ロープを吊支固定した落石防護ネット構造における前記吊りロープ,横主ロープ,荷重支持用横ロープ又は荷重支持用横主ロープから選択された一種又は複数のロープの端部を一方の固定金具に固定する構成、ターンバックルの他方の固定金具を吊りロープ,横主ロープ,荷重支持用横ロープ又は荷重支持用横主ロープから選択された一種又は複数のロープのアンカーに固定する構成を提供する。
【発明の効果】
【0024】
上記構成の本発明によれば、落石防護ネットや落石防護柵を支持するワイヤロープをエネルギー吸収機構を装備した本発明にかかるターンバックルの一方の固定金具に固定し、他方の固定金具をアンカーに固定する。落石等によって落石防護ネットや落石防護柵のワイヤロープに荷重が掛かった場合は、荷重が楔部材によるワイヤロープの固定力より小さければ、ワイヤロープは楔部材によって係合部材内の内周面に固定された状態を保ち、落石等を落石防護ネットや落石防護柵の内方に支えることができる。一方、楔部材の固定力を超える所定値以上の荷重が作用した場合には、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、ワイヤロープが楔部材,係合部材及び金具本体内を所定長さ摺動してターンバックルのエネルギー吸収機構を装備した一方の固定金具から繰り出される。このとき、ワイヤロープの端部は一方の固定金具の金具本体の中に延長されているため、所定長さ摺動して一方の固定金具から繰り出されるだけの余裕を有している。このようにワイヤロープをターンバックルの一方の固定金具から繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐことができ、落石等を落石防護柵から飛び出すことなく、保持することができる。従って、従来の端部を支柱に固定して使用するワイヤロープと同じ許容荷重のワイヤロープを使用しても、落石防護ネットや落石防護柵の許容荷重を向上させることができ、経済的な負担を生じることなく、その安全性を高めることができる。
【0025】
また、例えば本発明にかかるターンバックルを落石防護ネットのワイヤロープの固定に使用すれば、落石等があった場合には、その荷重を金網とロープによって支持して吸収するとともに、荷重が金網やロープの支持力を超える場合は、エネルギー吸収機構によってロープが摺動して繰り出すことにより、そのエネルギーを吸収することができるので、ロープや金網が破壊されることがない。よって、想定外の荷重が発生する落石等があったとしても、安全に防護することができる。このようにエネルギー吸収機構によって、想定外の荷重を吸収することができるため、より高いレベルでの安全性を実現できるとともに、現場状況に応じて材料コストや構築費用を合理的な範囲に留めることができる。
【0026】
具体的には、落石等の恐れがある沢状部の両側にポケット形成用の支柱を12〜30メートルという長大な間隔で建て込んでも、荷重支持用横ロープから垂下したハンガーロープを用いて荷重支持用横主ロープを吊支固定したことにより、落石防護ネット自体の機械的強度を高めてカーテン状に垂設した縦主ロープ及び横主ロープの崩壊現象が発生しない。しかも支柱間の間隔が長いことによって落石等が支柱に衝突する惧れは極めて低くなり、それに伴い衝撃によって支柱が損傷または転倒することを防止して落石等が道路上へ落下するという問題を解消することができる。よって、沢状部における落石エネルギーを落石防護ネットにより効果的に緩衝して吸収するとともに落石等を受け止めて支持する優れた強度と耐力を有し、沢状部の両側に広い間隙で支柱を建て込むことによって落石等が支柱に衝突することを極力防止し、衝撃力により該支柱が損傷または転倒することをなくして防護性能及び信頼性を著しく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明にかかるターンバックルの全体平面図。
【図2】図1の中央横断面図。
【図3】ターンバックルの胴部の中央横断面図。
【図4】ターンバックルの一方の固定金具の中央横断面図。
【図5】図4の要部拡大図。
【図6】楔部材の中央横断面図。
【図7】ターンバックルの金具本体の組付説明図。
【図8】ターンバックルの金具本体の斜視図。
【図9】ターンバックルの全体斜視図。
【図10】ターンバックルの使用状態を示す斜視図。
【図11】ターンバックルの作用説明図。
【図12】本発明を適用した落石防護ネット構造を示す斜視概要図。
【図13】図12の正面図。
【図14】落石防護ネットにおける各ロープの配設状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下図面に基づいて本発明にかかるターンバックル及び該ターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造の実施形態を説明する。図1は本発明にかかるターンバックルの全体平面図、図2は図1の中央横断面図、図9はその全体斜視図である。図において、1はターンバックルであり、落石防護ネットや落石防護柵において、ワイヤロープ5の端部をアンカー等に固定するための金具である。このターンバックル1は、胴部2と、該胴部2の両端部に同一直線上で相対的に軸移動可能に螺合された一対の固定金具3,4とから構成されており、ワイヤロープ5を連結する一方の固定金具3に、ワイヤロープ5に一定以上の張力が加わった際にワイヤロープ5を摺動させて繰り出すエネルギー吸収機構を装備していることに特徴を有する。なお、本発明におけるワイヤロープ5には、PC鋼線その他のワイヤロープとして使用可能な索状体全般を含むものである。
【0029】
図3は胴部2の中央横断面図であり、胴部2は中央部に窓孔2aを開設するとともに、両端部に一対の固定金具3,4が相対的に軸移動可能に螺合できる一対の螺子孔2b,2dを形成している。即ち、螺子孔2b,2dには、それぞれ内周壁に左右異なる方向の雌螺子2c,2eが刻設されており、螺子孔2bには一方の固定金具3の螺子状周部8dに刻設した雄螺子8eが雌螺子2cに脱着可能に螺合する。また、螺子孔2dには他方の固定金具4の螺子状周部4bに刻設した雄螺子4cが雌螺子2eに脱着可能に螺合する。よって、固定金具3,4は対面した状態で胴部2に螺合し、胴部2を回動させることにより、近接又は離反する方向に相対的に軸移動する。
【0030】
図4はエネルギー吸収機構を装備した一方の固定金具3の中央横断面図、図5はその要部拡大図である。この一方の固定金具3は、ワイヤロープ5の外周面に固定可能な楔部材6と、楔部材6を離脱不能に収納する中空テーパ部7aを有する係合部材7と、ワイヤロープ5を挿通可能な中空筒状部8aを有する金具本体8と、係合部材7と金具本体8を連結する継手部材9から構成されている。
【0031】
図6は楔部材6の中央横断面図であり、楔部材6は中空部6aを有し、一端部に大径の開口部6bと他端部に小径の開口部6cが開口されており、外周面6dがテーパ状に形成されている。そして大径の開口部6bから小径の開口部6cに向けて、又小径の開口部6cから大径の開口部6bに向けて相互に1又は複数のスリット6eが穿設されている。この楔部材6は一体として又は複数に分割されて構成されており、ワイヤロープ5の端部近傍の所定位置において、中空部6aにワイヤロープ5を挿通した状態で圧縮することにより、ワイヤロープ5の外周面に所定圧力で固定される。前記したスリット6eはワイヤロープ5への圧着を容易とするためのものである。なお、楔部材6の形状に限定はなく、係合部材7の中空テーパ部7a内において、ワイヤロープ5を固定できる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0032】
係合部材7は、両端部に開口部を有する中空テーパ部7aを有しており、この中空テーパ部7aは楔部材6のテーパ状の外周面6dとほぼ整合する傾斜面を有している。また、中空テーパ部7aの径小側の開口部端面には環状停止部7bが形成されている。そのため、楔部材6を外周面に固定したワイヤロープ5を係合部材7の中空テーパ部7aに挿通して楔部材6を中空テーパ部7aに収納することにより、或いはワイヤロープ5を中空テーパ部7aに挿通した後に楔部材6をワイヤロープ5に固定して中空テーパ部7aに収納することにより、楔部材6の小径の開口部6cが環状停止部7bに係止された状態で、楔部材6は中空テーパ部7aの径小方向(矢印X方向)に離脱不能に係合部材7に収納される。よって、ワイヤロープ5は係合部材7に固定されることとなる。また、中空テーパ部7aの径小方向(矢印X方向)と反対方向の係合部材7の一端部には、継手部材9に係合するための径大の係合鍔部7cが形成されている。
【0033】
このとき、肝要なことは係合部材7の中空テーパ部7a内における楔部材6による楔部材6の許容荷重(固定力)がワイヤロープ5自体の許容荷重より小さくなるように設計しておく。即ち、楔部材6の許容荷重(固定力)<ワイヤロープ5の許容荷重の状態としておくことである。これにより、落石等によって所定値以上の荷重がワイヤロープ5に作用すると、ワイヤロープ5の許容荷重以上の荷重が掛かる前に、楔部材6の許容荷重(固定力)以上の荷重が掛かることとなり、その場合にはワイヤロープ5は楔部材6による固定に抗して摺動し、楔部材6から繰り出されることとなって、切断されたり、所定値以上の荷重が支柱等に直接作用して、支柱等が変形したり、倒壊することを防ぐことができる。例えば楔部材6の許容荷重(固定力)を50kj程度の運動エネルギーに設定しておく。そうすると、ワイヤロープ5に50kj以上の運動エネルギーの荷重が掛かると、ワイヤロープ5は楔部材6による固定に抗して摺動を始める。なお、楔部材6の許容荷重(固定力)は目的やワイヤロープ5自体の許容荷重に応じて自由に設定すればよい。また、ワイヤロープ5に掛かる荷重が楔部材6による固定力より小さければ、ワイヤロープ5は楔部材6から繰り出されることなく、荷重の原因となった落石等を支えることができる。
【0034】
金具本体8は、所定長さを有する棒状体であって、両端部に開口部を有し、ワイヤロープ5を摺動自在に挿通可能な中空筒状部8aを有している。そして、金具本体8は、一端部に継手部材9と係合するための雄螺子8cを外周面に刻設してなる径大の螺子状鍔部8bを形成するとともに、他端部を外周面に雄螺子8eを刻設した螺子状周部8dとしている。この螺子状周部8dを胴部2の螺子孔2bに螺合する。なお、螺子状鍔部8bは係合部材7の係合鍔部7cと略同径である。この金具本体8の中空筒状部8aにワイヤロープ5の端部を挿入して延長し、胴部2の窓孔2aから垂下させておくことによって、ワイヤロープ5は所定長さ摺動して一方の固定金具3から繰り出されるだけの余裕を有している。
【0035】
継手部材9は、両端部が開口された中空部9aを有する筒状体であって、内周面に金具本体8の螺子状鍔部8bと螺合する雌螺子9bを刻設しているとともに、一端部の開口部に係合部材7の係合鍔部7cを係止する環状鍔部9cを形成している。
【0036】
他方の固定金具4は、所定長さを有する棒状体であって、一端部に所定の地面に固定したアンカー部材10(図10参照)に連結可能な二股部4aを有している。なお、一端部の形状は二股部4aに限ることなく、ターンバックル1を所定の部材に固定できる構造であればどのような構造でもよい。そして、固定金具4の他端部は胴部2の他方の螺子孔2dと螺合するための雄螺子4cを外周面に刻設した螺子状周部4bとして形成されている。
【0037】
次に上記構成のターンバックル1の使用方法を説明する。先ず、落石防護ネットや落石防護柵等において、落石防護ネットや落石防護柵を固定するためのワイヤロープ5の端部を係合部材7の中空テーパ部7aに係合鍔部7cがワイヤロープ5の端部側に位置するように挿通する。次にワイヤロープ5の外周面に楔部材6を圧着して固定した後、係合部材7の中空テーパ部7aに楔部材6のテーパ状の外周面6dを圧接させることによって、楔部材6を矢印X方向(係合鍔部7cとは反対方向)に離脱不能にした状態で係合部材7に収納する。このとき、係合部材7を予め継手部材9の中空部9aに挿通し、係合鍔部7cを継手部材9の環状鍔部9cに係止しておく。或いは楔部材6を外周面に固定したワイヤロープ5を係合部材7の中空テーパ部7aに挿通し、楔部材6を中空テーパ部7aに収納するようにしてもよい。要すれば、各部材が図5に示す位置関係にあればよい。
【0038】
この状態で、係合部材7から延長させたワイヤロープ5の端部を金具本体8の中空筒状部8aに挿入するとともに、金具本体8の螺子状鍔部8bを係合部材7の係合鍔部7cと対面させて、継手部材9の雌螺子9bと金具本体8の螺子状鍔部8bの雄螺子8cを螺合させることによって、係合部材7と金具本体8を一体に連結することができる。
【0039】
そして、図10に示すように、落石防護ネットや落石防護柵のワイヤロープ5を固定するためのアンカー部材10の一対の隔壁10a,10b間に他方の固定金具4を挿通し、ボルト11で連結し、ボルト11の先端部にナット12を螺合して固定することにより、ターンバックル1とアンカー部材10を一体に固定する。
【0040】
次に、上記した本発明にかかるターンバックル1を使用した落石防護ネットにおけるワイヤロープの固定構造を以下に説明する。図12は落石防護ネット構造を示す斜視概要図、図13は同正面図であり、図中の15は例えば道路等に近接して落石の恐れがある沢状部、16は沢状部15の両側に位置する斜面であり、この斜面16に左右一対の支柱17が上下方向に傾動可能に立設されている。18は支柱17の上部間に固定された上部掛け横ロープ、19は支柱サイドロープであり、各支柱サイドロープ19はアンカー部材10により斜面16に支持固定されている。
【0041】
左右一対の支柱17は落石防護ネットに落石を受け入れる開口されたポケット部を形成するのに必須の構成要素であり、本実施形態では従来の防護ネットと比較して支柱17間の間隔は広く取って建て込まれている。例えば本実施例では支柱17間の間隔は沢状部15を挟んで12〜30メートル程度の距離であり、支柱17間の間隔を広く取ることによって1スパンで沢状部15上に落石防護ネットを構築することができる。よって、支柱17を多数立設する必要はなく、一対の支柱のみで必要な落石防護ネットを構築することが可能となる。
【0042】
20は支柱17の吊りロープであり、この吊りロープ20の一端は支柱17の上部に固定され、他端部は夫々上方の斜面16にアンカー部材10を用いて支持固定されている。21は縦主ロープ、22は横主ロープであり、縦主ロープ21の一端は支柱17の上部又は上部掛け横ロープ18に固定され、両端部に位置する縦主ロープ21の他端部はアンカー部材10により下方の斜面16に支持固定されている。両端部に位置する縦主ロープ21以外の縦主ロープ21の下端部は下方の斜面16に支持固定されておらず、フリーとなっており、最下方の横主ロープ22に連結されている。
【0043】
横主ロープ22の左右両端部は夫々アンカー部材10により斜面16に支持固定されている。更に図13に示すように縦主ロープ21間には補強のために縦補助ロープ21aを配設してもよい。なお、縦補助ロープ21aとしては縦主ロープ21よりも耐荷重の小さいロープを使用できる。そして、これらの横主ロープ22と縦主ロープ21上に金網23が適宜の手段で固定されて敷設されている。
【0044】
吊りロープ20と横主ロープ22には落石等により大きな荷重が掛かるので、両ロープは強度が大きくて柔軟なケーブルを用いて構成される。縦主ロープ21間の長さ間隔は3メートル、縦主ロープ21と縦補助ロープ21a間の長さ間隔は1.5メートルとし、横主ロープ22間の長さは5メートル程度にするのが適当である。また、落石等が集中しやすい個所の金網23の線径を変えて強度を高めたり、落石等が金網23の網目からこぼれるのを防止するため、部分的に金網23の目合を小さくすることも可能である。
【0045】
24は荷重支持用横ロープであり、この荷重支持用横ロープ24の左右両端部はアンカー部材10により斜面16に支持固定され、中途部が支柱17の上部に固定された状態に支持されている。25は荷重支持用横主ロープであり、この荷重支持用横主ロープ25の左右両端部はアンカー部材10により斜面16に支持固定され、中間部の縦主ロープ21との交差点の全部又は一部が縦主ロープ21に交叉して固定されている。そして荷重支持用横ロープ24と荷重支持用横主ロープ25とが該荷重支持用横ロープ24からカーテン状に垂下したハンガーロープ26を用いて固定されている。
【0046】
図14は各ロープの配設状態を明示する側面図であり、この荷重支持用横ロープ24を支柱17の上部に固定するとともに、荷重支持用横ロープ24から垂下したハンガーロープ26で荷重支持用横主ロープ25を固定して吊支することにより、強度を高めている。即ち、荷重支持用横主ロープ25を荷重支持用横ロープ24からカーテン状に垂下したハンガーロープ26を使用して吊り橋の要領で吊支したことが特徴となっており、横主ロープ22に掛かる荷重を支柱17に固定された上部掛け横ロープ18と荷重支持用横ロープ24で受け止めてポケット部を形成する横主ロープ22の垂れ込みを防止するとともに、沢状部15を挟む支柱17間の間隙を広く取ることが可能となる。更に荷重支持用横主ロープ25自体がハンガーロープ26を介して荷重支持用横ロープ24に吊支されていることで金網23の開口部が容易に開放することを防止できるという作用が得られる。
【0047】
上記した落石防護ネット構造は出願人の提供した特許文献5に示す落石防護ネット構造と共通であり、本発明では、この落石防護ネット構造において、図12,図13,図14に示すように、吊りロープ20,横主ロープ22,荷重支持用横ロープ24又は荷重支持用横主ロープ25から選択された一種又は複数のワイヤロープ5をエネルギー吸収機構を装備したターンバックル1を介してアンカー部材10に固定している。
【0048】
上記使用状態において、落石等によって落石防護ネットを構成する吊りロープ20,横主ロープ22,荷重支持用横ロープ24又は荷重支持用横主ロープ25から選択された一種又は複数のワイヤロープ5、或いは落石防護柵を構成するワイヤロープ5に荷重が掛かった場合は、荷重が楔部材6の固定力より小さい荷重であれば、ワイヤロープ5は楔部材6によって係合部材7内の内周面に固定された状態を保ち、落石等を落石防護ネットや落石防護柵の内方に支えることができる。一方、楔部材6の固定力の許容荷重を超える所定値以上の荷重が作用した場合には、即ち、図11のターンバックル1の作用説明図に示すように、予期しない大規模な落石S等の発生によって、荷重がワイヤロープ5の支持力を超える場合は、ワイヤロープ5が切断される前に、ワイヤロープ5は楔部材6による係合部材7の内周面への固定に抗して、ワイヤロープ5が楔部材6,係合部材7及び金具本体8内を矢印X方向に所定長さ摺動してターンバックル1の一方の固定金具3から繰り出される。このとき、ワイヤロープ5の端部は金具本体8の中空筒状部8aの中に延長されているため、所定長さ摺動してターンバックル1から繰り出されるだけの余裕を有している。このようにワイヤロープ5をターンバッククル1から繰り出すことにより、ワイヤロープ5の破断や支柱17の変形を防ぐことができる。
【0049】
例えば、図11に示す例において、50kNの張力が横主ロープ22に作用し、横主ロープ22が1m摺動してターンバックル1から繰り出されたとすれば、50kN×1m=50kjのエネルギーをターンバックル1が吸収したこととなる。よって、ターンバックル1にエネルギー吸収機構を装備することによって、横主ロープ22等の各ワイヤロープ5やアンカー部材10には、ターンバックル1から横主ロープ22等の各ワイヤロープ5が摺動を始めるスリップ張力以上の荷重が作用することがないため、不測の事態を想定して過度に設計荷重を高める必要がなく、安全性を確保した上で、材料コストや構築費用を合理的に削減することができる。しかも、過度の荷重はターンバックル1によって吸収されるため、金網23や横主ロープ22等の各ワイヤロープ5には、想定以上の荷重が作用することがなく安全性が向上する。そのため、従来の落石防護ネット構造に比較して、より高いレベルでの安全性の実現と、材料コストや構築費用の合理性の確保という両者を高いレベルで維持することが可能となった。
【0050】
即ち、従来の金網23と横主ロープ22等の各ワイヤロープ5だけでは、吸収可能なエネルギーに限界がある。これに対して、本発明のターンバックル1は、横主ロープ22等の各ワイヤロープ5の締付力,繰り出し長さを自由に選択できるため、落石エネルギーに応じた最適な設計が行える。
【0051】
更に、従来は一定荷重以上の落石が発生した場合には、横主ロープ22等の各ワイヤロープ5が降伏するため、その都度、メンテナンスとして各ロープの交換が必要であった。本発明によれば、ターンバックル1の作用によって、各ワイヤロープ5が摺動を始めるスリップ張力以上の荷重が作用することがないため、各ワイヤロープ5が降伏することがなく、メンテナンスはターンバックル1を再設置するだけで、横主ロープ22等の各ワイヤロープ5の交換は不要である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上記載した本発明によれば、落石防護ネットや落石防護柵等において、ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、ワイヤロープをターンバックルから摺動させて繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐとともに、落石防護ネットや落石防護柵等の許容荷重の増加を図って安全性を高めることができる。より具体的には、落石防護ネットのワイヤロープの固定に適用した場合には、沢状部における落石エネルギーを効果的に緩衝して吸収するとともに落石等を受け止めて支持する優れた強度と耐力を有し、広い間隙で支柱を建て込むことによって落石等が支柱に衝突することがないため衝撃力により支柱が損傷または転倒することがなく、防護性能及び信頼性を著しく高めることができる。従って沢状部のみならず、岩盤等の安定地盤が表土層で覆われて表土層の表面が傾斜している斜面における表土層の一部または全部が流出するのを未然に防止するための斜面安定工法にも利用することができる。
【0053】
更に、落石等によって、ワイヤロープの固定力を超える所定値以上の荷重が作用した場合には、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、ワイヤロープが係合部材から所定長さ摺動して繰り出される。このようにワイヤロープを繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐことができ、落石等を落石防護ネットや落石防護柵等から飛び出すことなく、保持することができる。よって、従来のワイヤロープと同じ許容荷重のワイヤロープを使用しても、落石防護ネットや落石防護柵等の許容荷重を増加させることができ、経済的な負担を生じることなく、その安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…ターンバックル
2…胴部
2a…窓孔
2b…(一方の)螺子孔
2c,2e…雌螺子
2d…(他方の)螺子孔
3…(一方の)固定金具
4…(他方の)固定金具
4a…二股部
4b…螺子状周部
4c…雄螺子
5…ワイヤロープ
6…楔部材
6a…中空部
6b…(大径の)開口部
6c…(小径の)開口部
6d…外周面
6e…スリット
7…係合部材
7a…中空テーパ部
7b…環状停止部
7c…係合鍔部
8…金具本体
8a…中空筒状部
8b…螺子状鍔部
8c,8e…雄螺子
8d…螺子状周部
9…継手部材
9a…中空部
9b…雌螺子
9c…環状鍔部
10…アンカー部材
10a,10b…隔壁
11…ボルト
12…ナット
15…沢状部
16…斜面
17…支柱
18…上部掛け横ロープ
19…支柱サイドロープ
20…吊りロープ
21…縦主ロープ
21a…縦補助ロープ
22…横主ロープ
23…金網
24…荷重支持用横ロープ
25…荷重支持用横主ロープ
26…ハンガーロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープの端部を固定するためのターンバックルであって、胴部と、該胴部の両端部に同一直線上で相対的に軸移動可能に螺合された一対の固定金具とからなり、
一方の固定金具を、ワイヤロープの外周面に固定可能な楔部材と、楔部材を離脱不能に収納する中空テーパ部を有する係合部材と、ワイヤロープを挿通可能な中空筒状部を有するとともに胴部に螺合するための螺子状周部を有する金具本体と、係合部材と金具本体を連結する継手部材とから形成したことを特徴とするターンバックル。
【請求項2】
ワイヤロープの外周面に固定した楔部材を離脱不能に係合部材の中空テーパ部に収納し、係合部材から延長させたワイヤロープの端部を金具本体の中空筒状部に挿入するとともに、係合部材と金具本体を継手部材を介して連結し、金具本体の螺子状周部を胴部に螺合する請求項1記載のターンバックル。
【請求項3】
楔部材は複数に分割可能であるとともに、ワイヤロープに固定した際に、外周面がテーパ状に形成されている請求項1又は2記載のターンバックル。
【請求項4】
係合部材は一端部に、継手部材に係合するため径大の係合鍔部を形成している請求項1,2又は3記載のターンバックル。
【請求項5】
金具本体は、一端部に継手部材と係合するための雄螺子を外周面に刻設してなる径大の螺子状鍔部を形成している請求項1,2,3又は4記載のターンバックル。
【請求項6】
継手部材の一端部の開口部に、係合部材の係合鍔部と係止する環状鍔部を形成してなる請求項1,2,3,4又は5記載のターンバックル。
【請求項7】
継手部材は内周面に、金具本体の螺子状鍔部と螺合する雌螺子を刻設してなる請求項1,2,3,4,5又は6記載のターンバックル。
【請求項8】
ワイヤロープの外周面に固定した楔部材を離脱不能に係合部材の中空テーパ部に収納し、係合部材から延長させたワイヤロープの端部を金具本体の中空筒状部に挿入するとともに、係合部材の一端部に形成された径大の係合鍔部と、金具本体の一端部に形成され、外周面に雄螺子を刻設した径大の螺子状鍔部を対面させて、一端部の開口部に係合部材の係合鍔部を係止する環状鍔部を形成してなる継手部材の内周面に刻設した雌螺子を金具本体の螺子状鍔部の雄螺子と螺合するとともに、継手部材の環状鍔部と係合部材の係合鍔部を相互に係合させることにより、金具本体と係合部材を一体に連結し、金具本体の他端部に形成された螺子状周部を胴部に螺合する請求項1記載のターンバックル。
【請求項9】
ワイヤロープが所定値以上の荷重によって、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、所定長さ摺動するように固定する請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載のターンバックル。
【請求項10】
胴部の中央部に窓孔を開設するとともに、両端部に一対の固定金具が相対的に軸移動可能に螺合できる一対の螺子孔を形成した請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載のターンバックル。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のターンバックルを使用し、落石防護柵又はガードケーブルにおけるワイヤロープの端部を固定することを特徴とするターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造。
【請求項12】
ワイヤロープが所定値以上の荷重によって、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、所定長さ摺動する請求項11記載のターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造。
【請求項13】
ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、ワイヤロープが摺動することによってターンバックルからワイヤロープを繰り出すことにより、ワイヤロープの破断を防ぐ請求項11記載のターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造。
【請求項14】
ワイヤロープとして、所定間隔で斜面に立設された左右一対の支柱と、該支柱の上部間に固定された上部掛け横ロープと、一端が支柱の上部に固定されるとともに他端部が上方の斜面にアンカーを用いて支持固定された吊りロープと、一端が支柱の上部又は上部掛け横ロープに所定間隔で固定された複数の縦主ロープと、左右両端部がアンカーにより斜面に支持固定されて縦主ロープと交差して配置された複数の横主ロープと、縦主ロープ及び横主ロープ上に敷設された金網と、左右両端部がアンカーにより斜面に支持固定された荷重支持用横ロープと、両端部がアンカーにより斜面に支持固定され、中間部が縦主ロープに交叉して固定された荷重支持用横主ロープとを備え、該荷重支持用横ロープからカーテン状に垂下したハンガーロープを用いて荷重支持用横主ロープを吊支固定した落石防護ネット構造における前記吊りロープ,横主ロープ,荷重支持用横ロープ又は荷重支持用横主ロープから選択された一種又は複数のロープの端部を一方の固定金具に固定する請求項11,12又は13記載のターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造。
【請求項15】
ターンバックルの他方の固定金具を吊りロープ,横主ロープ,荷重支持用横ロープ又は荷重支持用横主ロープから選択された一種又は複数のロープのアンカーに固定する請求項14記載のターンバックルを使用したワイヤロープの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−177296(P2012−177296A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127673(P2012−127673)
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【分割の表示】特願2010−33969(P2010−33969)の分割
【原出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(501490863)
【Fターム(参考)】