説明

ダイシング用粘着シート、及び、ダイシング用粘着シートを用いた半導体装置の製造方法

【課題】半導体ウエハをレーザースクライビングする際に、吸着ステージが傷つくことを防止することが可能なダイシング用粘着シートを提供すること。
【解決手段】 基材と、基材上に設けられた粘着剤層とを有するダイシング用粘着シートであって、粘着剤層には、樹脂固形分100重量部に対して、0.02〜5重量部の紫外線吸収剤が含有されており、ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率が、30〜80%であるダイシング用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシング用粘着シートに関する。特に、レーザースクライビング工程を有する半導体装置の製造方法において使用されるダイシング用粘着シートに関する。また本発明は、前記ダイシング用粘着シートを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザーダイシングシートを半導体ウエハに貼り付けた後、前記半導体ウエハにレーザー光を照射し、該半導体ウエハを個片化する半導体チップの製造方法(いわゆる、レーザーダイシング)が存在する(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1に記載の半導体チップの製造方法では、半導体ウエハにレーザーダイシングシートを貼り付け、レーザーダイシングシートを吸着ステージで吸着させた状態で、半導体ウエハを加工している。また、特許文献2に記載の半導体チップの製造方法では、レーザーダイシングシートの貼着面側から半導体ウエハにレーザー光を照射している。
【0003】
また、従来、半導体チップに形成される回路パターンの微細化に伴って、回路同士の距離が近くなるために、近接する回路間の電気容量が増大している。そして、これに比例して回路を伝わる信号が遅くなるという現象(信号遅延)が発生している。そこで、誘電率の低い、いわゆる、low-k材料(低誘電材料)を用いて回路上に低誘電材料層を形成し、回路間容量を下げることが提案されている。
【0004】
上記低誘電材料層としては、例えば、SiO膜(比誘電率k=4.2)、SiOF膜(k=3.5〜3.7)、SiOC膜(k=2.5〜2.8)等が挙げられる。このような、低誘電材料層は、例えば、半導体ウエハ上にプラズマCVD法により形成される。
【0005】
しかしながら、上記のような低誘電材料層は非常に脆く、ダイシング工程でクラックが発生し、半導体素子の動作異常を引き起こすおそれがある。そこで、近年、レーザーを用いて、先に低誘電材料層を除去したのち(レーザースクライビング)、ブレード等でダイシングする手法がとられている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−56329号公報
【特許文献2】特開2010−73897号公報
【特許文献3】特開2010−093273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の半導体チップの製造方法では、レーザーダイシングシートを吸着ステージで吸着させた状態で、半導体ウエハを加工するため、特に、半導体ウエハのエッジ部分を加工する際には、レーザー光により、吸着ステージを傷つけてしまう場合があるといった問題があった。また、特許文献2に記載の半導体チップの製造方法では、レーザー光がレーザーダイシングシートを高透過率で透過しているため、特に、半導体ウエハが貼り付けられていない部分の背後には、高強度のレーザー光が到達することになるといった問題があった。また、特許文献3に開示されたようなレーザースクライビング工程においても、特許文献1等に開示されたレーザーダイシングと同様、特に、半導体ウエハのエッジ部分を加工する際には、レーザー光により、吸着ステージを傷つけてしまう場合があるといった問題があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体ウエハをレーザースクライビングする際に、吸着ステージが傷つくことを防止することが可能なダイシング用粘着シート、及び、該ダイシング用粘着シートを用いた半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者等は、上記従来の問題点を解決すべく検討した結果、ダイシング用粘着シートを構成する粘着剤層に、所定量の紫外線吸収剤を含有させ、ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率を一定範囲内とすれば、レーザー光により吸着ステージが傷つくことを防止することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明に係るダイシング用粘着シートは、基材と、前記基材上に設けられた粘着剤層とを有するダイシング用粘着シートであって、前記粘着剤層には、樹脂固形分100重量部に対して、0.02〜5重量部の紫外線吸収剤が含有されており、前記ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率が、30〜80%であることを特徴とする。
【0011】
前記構成によれば、粘着剤層には、樹脂固形分100重量部に対して、0.02〜5重量部の紫外線吸収剤が含有されており、ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率が、30〜80%である。粘着剤層への紫外線吸収剤の含有量が、樹脂固形分100重量部に対して、0.02重量部以上であり、ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率が、80%以下であるため、半導体ウェハ上に形成された低誘電材料層をレーザー光の光吸収アブレーションにより切断する際、レーザー光を粘着剤層により吸収し、吸着ステージへの到達量を少なくすることができる。その結果、吸着ステージが傷つくことを防止することができる。また、粘着剤層への紫外線吸収剤の含有量が、樹脂固形分100重量部に対して、5重量部以下であり、ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率が、30%以上であるため、レーザー吸収の際、テープの溶融を防止することができる。
【0012】
前記構成において、前記基材の波長355nmにおける光線透過率は70〜100%であることが好ましい。前記基材の波長355nmにおける光線透過率が70〜100%であると、基材でのレーザー光の吸収は比較的少なく、基材へのダメージが少ない。その結果、ダイシングやエキスパンドの際に、ダイシング用粘着シートが裂けることを防止することができる。
【0013】
前記構成において、前記基材は、複層であることが好ましい。前記基材が複層であると、層間での光散乱、及び/又は、層間での光の屈折により、レーザー強度を弱めることができる。
【0014】
前記構成において、前記基材の比熱は、が1.0〜3.0J/gKであることが好ましい。前記基材の比熱が1.0〜3.0J/gKであると、レーザー吸収による発熱を抑制することができる。なお、前記基材が複層である場合、基材の比熱が1.0〜3.0J/gKである、とは、前記基材を構成する各層の比熱がすべて1.0〜3.0J/gKの範囲内にあることを意味する。
【0015】
前記構成において、前記基材の融点は、90℃以上であることが好ましい。前記基材の融点が、90℃以上であると、レーザー加工時の熱により溶融するのを防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、表面に低誘電材料層が形成されている半導体ウエハの裏面に、前記のダイシング用粘着シートを貼り合わせる工程と、前記半導体ウエハに表面側から紫外線レーザー光を照射して低誘電材料層を切断するレーザースクライビング工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
前記構成の半導体装置の製造方法では、粘着剤層には、樹脂固形分100重量部に対して、0.02〜5重量部の紫外線吸収剤が含有されており、ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率が、30〜80%であるダイシング用粘着シートを使用する。粘着剤層への紫外線吸収剤の含有量が、樹脂固形分100重量部に対して、0.02重量部以上であり、ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率が、80%以下であるため、半導体ウェハ上に形成された低誘電材料層をレーザー光の光吸収アブレーションにより切断する際、レーザー光を粘着剤層により吸収し、吸着ステージへの到達量を少なくすることができる。その結果、吸着ステージが傷つくことを防止することができる。また、粘着剤層への樹脂固形分100重量部に対して、5重量部以下であり、ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率が、30%以上であるため、レーザー吸収の際、テープの溶融を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レーザー光により吸着ステージが傷つくことを防止することが可能なダイシング用粘着シート、及び、該ダイシング用粘着シートを用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のダイシング用粘着シートの一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のダイシング用粘着シートを用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明のダイシング用粘着シートを用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、図1を参照しながら説明するが、本発明はこの例に限定されない。図1は、本発明のダイシング用粘着シートの一例を示す断面模式図である。なお、本明細書において、図には、説明に不要な部分は省略し、また、説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0021】
(ダイシング用粘着シート)
図1で示されるように、ダイシング用粘着シート3は、基材31と、基材31上に設けられた粘着剤層32とを有する。ダイシング用粘着シート3は、基材31と、粘着剤層32とが積層された構成を有していればよく、他の層を有していてもよい。基材(支持基材)は粘着剤層等の支持母体として用いることができる。
【0022】
基材31は、波長355nmにおける光線透過率が、70〜100%であることが好ましく、80〜95%であることがより好ましい。基材31の波長355nmにおける光線透過率が70〜100%であると、基材31でのレーザー光の吸収は比較的少なく、基材へのダメージが少ない。その結果、ダイシングやエキスパンドの際に、ダイシング用粘着シート3が裂けることを防止することができる。基材31の波長355nmにおける光線透過率は、実施例記載の方法によって測定することができる。
【0023】
基材31の比熱は、1.0〜3.0J/gKであることが好ましく、2.0〜3.0J/gKであることがより好ましい。基材31の比熱が1.0〜3.0J/gKであると、
レーザー吸収による発熱を抑制することができる。
【0024】
基材31の融点は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、基材31の融点は、高いほどよいが、例えば、300℃以下とすることができる。前記基材の融点が、90℃以上であると、レーザー加工時の熱により溶融するのを防止することができる。
【0025】
基材31の形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリイミド;(メタ)アクリル系ポリマー;ポリウレタン系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂;ポリエチレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール系樹脂;シリコン系ゴム;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、及びエチレン酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのうち、芳香族炭化水素基を含有しない樹脂を用いることが好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーやポリオレフィン系樹脂を用いることがより好ましい。
【0026】
基材31は単層であってもよく、複層であってもよい。基材31が複層である場合、層間での光散乱、及び/又は、層間での光の屈折により、レーザー強度を弱めることができる。また、基材31は、膜状やメッシュ状など種々の形状を取り得る。特に、基材31は、前記樹脂の繊維状体、不織布、織布、ポーラス多孔体などの空隙率の大きい基材であることが好適である。
【0027】
基材31の厚さ(複層の場合は総厚)は、特に制限されず強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択できるが、80〜250μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましく、140〜160μmであることがさらに好ましい。基材31の厚さを80μm以上とすることによりレーザーによる溶融を抑制することができる。また、基材31の厚さを250μm以下とすることによりピックアップ性を確保することができる。
【0028】
なお、基材31には、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(着色剤、充填材、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤など)が含まれていてもよい。
【0029】
粘着剤層32には、樹脂固形分100重量部に対して、0.02〜5重量部の紫外線吸収剤が含有されている。紫外線吸収剤の前記含有量は、0.1〜1.5重量部であることが好ましく、0.2〜1.0重量部であることがより好ましい。紫外線吸収剤の含有量が、樹脂固形分100重量部に対して、0.05重量部以上であるため、被加工物(例えば、半導体ウェハ)上に形成された低誘電材料層41(図2(a)参照)をレーザー光の光吸収アブレーションにより切断する際、レーザー光を粘着剤層32により吸収し、吸着ステージへの到達量を少なくすることができる。その結果、吸着ステージが傷つくことを防止することができる。
【0030】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等があるが、本発明においてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および/またはヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0031】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸と3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C7〜C9の側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾロリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートとの混合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]等が挙げられる。
【0032】
また、ヒドロキシフェニルトリアジン型紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルとの反応生成物、2,4−ビス[2−ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0033】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0034】
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert―ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(TINIVIN 120)等が挙げられる。
【0035】
商業的に入手可能なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVINPS」、ベンゼンプロパン酸と3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C〜Cの側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN384−2」、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートとの混合物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN109」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN900」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN928」、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物としてチバ・ジャパン社製のTINUVIN1130」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN P」、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製のTINUVIN326」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノールとしてチバ・ジャパン社製のTINUVIN328」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製のTINUVIN329」、2−2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]としてチバ・ジャパン社製のTINUVIN360」、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN213」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN571」、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールとして住友化学社製の「Sumisorb 250」、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]としてADEKA製の「ADKSTAB LA31」等が挙げられる。
【0036】
また、商業的に入手可能なヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN400」、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルとの反応性生物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN405」、2,4−ビス[2−ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンとしてチバ・ジャパン社製の「TINUBIN 460」、2-(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN1577」、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 479」等が挙げられる。
【0037】
商業的に入手可能なベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert―ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートとしてチバ・ジャパン社製の「TINIVIN 120」等が挙げられる。
【0038】
本発明においては、前記紫外線吸収剤を単独で、あるいは、2種類以上を併用して用いることができる。
【0039】
粘着剤層32の形成材料としては、(メタ)アクリル系ポリマーやゴム系ポリマーなどを含む粘着剤を用いることができる。
【0040】
(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、及びドデシル基などの炭素数30以下、好ましくは炭素数3〜18の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記以外のモノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸などの酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、及びスルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマーなどが挙げられる。これらモノマー成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
また、(メタ)アクリル系ポリマーの架橋処理等を目的に多官能モノマーなども必要に応じて共重合モノマー成分として用いることができる。
【0043】
多官能モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら多官能モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
多官能モノマーの使用量は、粘着特性等の観点より全モノマー成分の30重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは20重量%以下である。
【0045】
(メタ)アクリル系ポリマーの調製は、例えば1種又は2種以上のモノマー成分を含む混合物を溶液重合方式、乳化重合方式、塊状重合方式、又は懸濁重合方式等の適宜な方式を適用して行うことができる。
【0046】
重合開始剤としては、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物系が挙げられる。単独で用いるのが望ましいが、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することもできる。還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、鉄、銅、コバルト塩などのイオン化の塩、トリエタノールアミン等のアミン類、アルドース、ケトース等の還元糖などを挙げることができる。また、アゾ化合物も好ましい重合開始剤であり、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオアミジン酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド等を使用することができる。また、上記重合開始剤を2種以上併用して使用することも可能である。
【0047】
反応温度は通常50〜85℃程度、反応時間は1〜8時間程度とされる。また、前記製造法のなかでも溶液重合法が好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等の極性溶剤が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度とされる。
【0048】
前記粘着剤には、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーの数平均分子量を高めるため、架橋剤を適宜に加えることもできる。該架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマーなどがあげられる。該架橋剤を使用する場合、その使用量は引き剥がし粘着力が下がり過ぎないことを考慮し、一般的には、上記ベースポリマー100重量部に対して、0.01〜5重量部程度配合するのが好ましい。また粘着剤層を形成する粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、着色剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0049】
被加工物からの剥離性をさらに向上させるため、粘着剤は、紫外線、電子線等の放射線により硬化する放射線硬化型粘着剤としてもよい。なお、粘着剤として放射線硬化型粘着剤を用いる場合には、レーザー加工後に粘着剤層に放射線が照射されるため、前記基材は十分な放射線透過性を有するものが好ましい。
【0050】
放射線硬化型粘着剤としては、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前述の(メタ)アクリル系ポリマーに放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
【0051】
配合する放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及び1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、特に制限されるものではないが、粘着性を考慮すると、粘着剤を構成する (メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、5〜500重量部程度であることが好ましく、さらに好ましくは70〜150重量部程度である。
【0053】
また、放射線硬化型粘着剤としては、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いることもできる。このようなベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。この場合においては、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を特に加えなくてもよく、その使用は任意である。
【0054】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線線等により硬化させる場合には、光重合開始剤を含有させる。該光重合開始剤としては、例えば、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、及びアシルホスフォナートなどが挙げられる。
【0055】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成する (メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部程度であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜5重量部程度である。
【0056】
粘着剤層32は、例えば、粘着剤(感圧接着剤)と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して、シート状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。具体的には、例えば、粘着剤および必要に応じて溶媒やその他の添加剤を含む混合物を、基材31上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記混合物を塗布して粘着剤層32を形成し、これを基材31上に転写(移着)する方法などにより、粘着剤層32を形成することができる。
【0057】
粘着剤層32の厚さは特に制限されず、例えば、3μm〜50μm、好ましくは5μm〜30μm、さらに好ましくは7μm〜20μm、である。粘着剤層32の厚さが前記範囲内であると、適度な粘着力を発揮することができる。なお、粘着剤層32は単層、複層の何れであってもよい。
【0058】
ダイシング用粘着シート3の厚さとしては、例えば、80μm〜300μmの範囲から選択することができ、好ましくは100μm〜200μm、さらに好ましくは150μm〜170μmである。
【0059】
(ダイシング用粘着シートの製造方法)
本実施の形態に係るダイシング用粘着シートの製造方法について、図1に示すダイシング用粘着シート一体型半導体裏面用フィルム1を例にして説明する。先ず、基材31は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0060】
次に、基材31上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて(必要に応じて加熱架橋させて)粘着剤層32を形成する。塗布方式としては、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。なお、粘着剤層組成物を直接基材31に塗布して、基材31上に粘着剤層32を形成してもよく、また、粘着剤組成物を表面に剥離処理を行った剥離紙等に塗布して粘着剤層32を形成させた後、該粘着剤層32を基材31に転写させてもよい。これにより、基材31上に粘着剤層32を形成されたダイシング用粘着シート3が作製される。
【0061】
ここで、低誘電材料層が形成されている半導体ウエハについて説明する。半導体ウエハ4の表面(回路面)には、低誘電材料層41が形成されている(図2参照)。
【0062】
半導体ウエハ4としては、公知乃至慣用の半導体ウエハであれば特に制限されず、各種素材の半導体ウエハから適宜選択して用いることができる。本発明では、半導体ウエハとして、シリコンウエハを好適に用いることができる。半導体ウエハ4の厚さとしては、例えば、10〜800μm、なかでも、20〜200μmのものを用いることができる。
【0063】
低誘電材料層41としては、誘電率の低い、いわゆる、low-k材料を用いて形成することができ、例えば、SiO膜(比誘電率k=4.2)、SiOF膜(k=3.5〜3.7)、SiOC膜(k=2.5〜2.8)等が挙げられる。低誘電材料層41は、半導体ウエハ2上にプラズマCVD法等により形成される。
【0064】
(半導体装置の製造方法)
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について、図2、図3を参照しながら以下に説明する。図2、図3は、前記ダイシング用粘着シート3を用いた場合の半導体装置の製造方法を示す断面模式図である。
【0065】
前記半導体装置の製造方法は、前記ダイシング用粘着シート3を用いて半導体装置を製造することができる。具体的には、表面に低誘電材料層41が形成されている半導体ウエハ4の裏面に、ダイシング用粘着シート3を貼り合わせる工程と、半導体ウエハ4に表面側から紫外線レーザー光を照射して低誘電材料層41を切断するレーザースクライビング工程とを含む。
【0066】
[マウント工程]
先ず、図2(a)で示されるように、ダイシング用粘着シート3上に任意に設けられたセパレータを適宜に剥離し、粘着剤層32上に低誘電材料層41付の半導体ウエハ4を貼着して、これを接着保持させ固定する(マウント工程)。ダイシング用粘着シート3は、半導体ウエハ4の裏面に貼着される。半導体ウエハ4の裏面とは、回路面とは反対側の面(非回路面、非電極形成面などとも称される)を意味する。貼着方法は特に限定されないが、圧着による方法が好ましい。圧着は、通常、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行われる。
【0067】
[レーザースクライビング工程]
次に、図2(b)で示されるように、レーザー光を用いて低誘電材料層41の切断を行う。低誘電材料層41の切断は、半導体ウェハ4を、ダイシング用粘着シート3に貼り付けた状態で吸着ステージ8に吸着させて行われる。このとき、樹脂固形分100重量部に対して、0.05〜2重量部の紫外線吸収剤が含有されている粘着剤層31を有しており、且つ、波長355nmにおける光線透過率が、30〜80%であるダイシング用粘着シート3を使用するため、レーザー光を粘着剤層32により吸収し、吸着ステージへの到達量を少なくすることができる。その結果、吸着ステージが傷つくことを防止することができる。
【0068】
低誘電材料層41の切断に使用されるレーザー9としては、熱加工プロセスを経由しない非熱的加工である紫外光吸収によるアブレーション加工が可能なレーザーを用いる。
その理由としては、(1)光(分解)反応であるため、カーボン残渣などが発生しにくいこと、(2)金属・ガラス・有機材料・セラミックなど、多くの被着体で加工が可能であること、(3)局所的な熱反応であるため、赤外吸収による熱加工よりも、加工面がシャープになること等が挙げられる。
【0069】
具体的には、400nm以下に発振波長を持つレーザー、例えば、発振波長248nmのKrFエキシマレーザー、308nmのXeCIエキシマレーザー、YAGレーザーの第三高調波(355nm)や第四高調波(266nm)、又は400nm以上の波長を持つレーザーの場合には、多光子吸収過程を経由した紫外線領域の光吸収が可能で、かつ多光子吸収アブレーションにより20μm以下の幅の切断加工などが可能である波長750〜800nm付近のチタンサファイヤレーザー等でパルス幅が1e-9秒(0.000000001秒)以下のレーザーなどが挙げられる。特に、レーザー光を20μm以下の細い幅に集光でき、355nmの紫外線を放射するレーザーを用いることが好ましい。
【0070】
本レーザースクライビング工程におけるレーザー光照射条件としては、例えば、波長355nm、平均出力0.1〜10W、繰り返し周波数1〜50kHzのYAGレーザーの第三高調波(355nm)を対物レンズ(fθレンズ)により10〜100μm径に集光し、ガルバノスキャナーによりレーザー光を1〜100mm/秒の速度でスキャンすることとすることができる。
【0071】
[ダイシング工程]
次に、図3(a)で示されるように、半導体ウエハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化(小片化)し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば、半導体ウエハ4の回路面側からダイシングブレードを用いて行われる。また、本工程では、例えば、ダイシング用粘着シート3まで切込みを行うフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。半導体ウエハ4は、ダイシング用粘着シート3により優れた密着性で接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハ4の破損も抑制できる。
【0072】
なお、ダイシング用粘着シート3のエキスパンドを行う場合、該エキスパンドは従来公知のエキスパンド装置を用いて行うことができる。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介してダイシング用粘着シート3を下方へ押し下げることが可能なドーナッツ状の外リングと、外リングよりも径が小さくダイシング用粘着シート3を支持する内リングとを有している。このエキスパンド工程により、後述のピックアップ工程において、隣り合う半導体チップ同士が接触して破損するのを防ぐことが出来る。
【実施例】
【0073】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0074】
(基材の比熱の測定)
下記実施例、比較例で用いる基材の比熱は、以下のようにして測定した。
〔比熱測定〕
熱分析システム(セイコーインスツルメンツ社製、DSC EXSTAR6000)を用いて基材の比熱を測定した。昇温速度10℃/minで測定し、空容器、サンプル、及びリファレンス(水)の3つのDSC曲線を求めた。そして、下記式により比熱を求めた。
Cps=(Ys/Yr)×(Mr/Ms)×Cpr
Cps:サンプルの比熱
Cpr:リファレンスの比熱(水:4.2J/(g・K))
Ys:サンプルと空容器のDSC曲線差
Yr:リファレンスと空容器のDSC曲線差
Ms:サンプルの質量
Mr:リファレンスの質量
【0075】
(基材の融点の測定)
下記実施例、比較例で用いる基材の融点は、TAインスツルメンツ社製のDSCQ2000を用い、5℃/分の昇温条件にて測定した。
【0076】
(実施例1)
<基材>
厚さ100μmのPP(ポリプロピレン)からなるフィルム(東レ社製、商品名:トレファンBO2500)を準備した。この基材の比熱は、1.31J/gKであり、融点は、140℃であった。
【0077】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(A)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本実施例1に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μmであった。なお、アクリル系粘着剤溶液(A)は以下の方法で調整した。
【0078】
<アクリル系粘着剤溶液(A)>
アクリル酸ブチル100重量部とアクリル酸5重量部を共重合して得られた重量平均分子量90万の共重合体(固型分20%)100重量部、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)2重量部、エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」、三菱ガス化学社製)1重量部、及び、紫外線吸収剤(BASF社製、TINUVIN326)0.25重量部をトルエンに加え、均一に溶解混合してアクリル系粘着剤溶液(A)を調製した。
【0079】
(実施例2)
<基材>
厚さ100μmのPMP(ポリメチルペンテン)からなるフィルム(三井石油化学工業(株)製、商品名:オピュランX−88)を準備した。この基材の比熱は、1.34J/gKであり、融点は、223℃であった。
【0080】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(A)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本実施例2に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μmであった。
【0081】
(実施例3)
<基材>
厚さ15μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルム、厚さ60μmのPP(ポリプロピレン)からなるフィルム、及び、厚さ15μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルムをこの順で積層させたフィルム(総厚90μm)を準備した。具体的には、低密度ポリエチレン(PE)(宇部興産株式会社製 F522N)を内層(A)と外層(A)となるように2台の押出し機を用いて溶融し、さらにもう1台の押出し機を用いて、非晶質ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレン(PP)との組成物(宇部興産株式会社製CAP355)を中間層(B)となるように溶融し、250℃の1つのTダイ内で(A)/(B)/(A)の順になるように融着積層してTダイから押出し、70℃の温湯を内部に通した、エアーナイフ付きの引き取りロール(ロール表面は6sの梨地状)を用いてドロー比2.5で引き取り、内層(A)と外層(A)とが共に15μm、中間層(B)が60μm、合計90μmのフィルムを得た。
上記PE(ポリエチレン)からなるフィルムの融点は、100℃であり、PP(ポリプロピレン)からなるフィルムの融点は、140℃であった。また、上記積層フィルムの比熱は、1.69J/gKであった。
【0082】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(B)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本実施例3に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μmであった。なお、アクリル系粘着剤溶液(B)は以下の方法で調整した。
【0083】
<アクリル系粘着剤溶液(B)>
紫外線吸収剤の添加量を0.85重量部に変更した以外は、アクリル系粘着剤溶液(A)と同様の方法により、アクリル系粘着剤溶液(B)を調製した。
【0084】
(実施例4)
<基材>
厚さ30μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルム、厚さ90μmのPP(ポリプロピレン)からなるフィルム、及び、厚さ30μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルムをこの順で積層させたフィルム(総厚150μm)を準備した。上記PE(ポリエチレン)からなるフィルムの融点は、100℃であり、PP(ポリプロピレン)からなるフィルムの融点は、140℃であった。また、上記積層フィルムの比熱は、1.69J/gKであった。
【0085】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(C)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本実施例4に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μmであった。なお、アクリル系粘着剤溶液(C)は以下の方法で調整した。
【0086】
<アクリル系粘着剤溶液(C)>
紫外線吸収剤の添加量を0.6重量部に変更した以外は、アクリル系粘着剤溶液(A)と同様の方法により、アクリル系粘着剤溶液(C)を調製した。
【0087】
(実施例5)
<基材>
厚さ30μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルム、厚さ90μmのPP(ポリプロピレン)からなるフィルム、及び、厚さ30μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルムをこの順で積層させたフィルム(日東電工(株)社製、総厚150μm)を準備した。上記PE(ポリエチレン)からなるフィルムの融点は、100℃であり、PP(ポリプロピレン)からなるフィルムの融点は、140℃であった。また、上記積層フィルムの比熱は、1.69J/gKであった。
【0088】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(A)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本実施例5に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着層の厚さは10μmであった。
【0089】
(比較例1)
<基材>
厚さ145μmのPVC(ポリ塩化ビニル)からなるフィルムを常法のカレンダー圧延により作成した。この基材の比熱は、1.5J/gKであり、融点は、170℃であった。
【0090】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(C)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本比較例1に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μmであった。
【0091】
(比較例2)
<基材>
厚さ100μmのPVC(ポリ塩化ビニル)からなるフィルム(アキレス社製、商品名:NHAA)を準備した。この基材の比熱は、1.5J/gKであり、融点は、170℃であった。
【0092】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(D)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本比較例2に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μmであった。なお、アクリル系粘着剤溶液(D)は以下の方法で調整した。
【0093】
<アクリル系粘着剤溶液(D)>
紫外線吸収剤を添加しない以外は、アクリル系粘着剤溶液(A)と同様にしてアクリル系粘着剤溶液(D)を調製した。
【0094】
(比較例3)
<基材>
厚さ30μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルム、厚さ90μmのPP(ポリプロピレン)からなるフィルム、及び、厚さ30μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルムをこの順で積層させたフィルム(総厚150μm)を準備した。上記PE(ポリエチレン)からなるフィルムの融点は、100℃であり、PP(ポリプロピレン)からなるフィルムの融点は、140℃であった。また、上記積層フィルムの比熱は、1.69J/gKであった。
【0095】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(D)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本比較例3に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μmであった。
【0096】
(比較例4)
<基材>
厚さ30μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルム、厚さ90μmのPP(ポリプロピレン)からなるフィルム、及び、厚さ30μmのPE(ポリエチレン)からなるフィルムをこの順で積層させたフィルム(総厚150μm)を準備した。上記PE(ポリエチレン)からなるフィルムの融点は、100℃であり、PP(ポリプロピレン)からなるフィルムの融点は、140℃であった。また、上記積層フィルムの比熱は、1.69J/gKであった。
【0097】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(E)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本比較例4に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μmであった。なお、アクリル系粘着剤溶液(E)は以下の方法で調整した。
【0098】
<アクリル系粘着剤溶液(E)>
紫外線吸収剤の添加量を0.96量部に変更した以外は、アクリル系粘着剤溶液(A)と同様の方法により、アクリル系粘着剤溶液(E)を調製した。
【0099】
(比較例5)
<基材>
厚さ100μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)からなるフィルム(帝人デュポン社製、商品名:テオネックスQ83)を準備した。この基材の比熱は、0.87J/gKであり、融点は、255℃であった。
【0100】
<ダイシング用粘着シート>
上記基材上にアクリル系粘着剤溶液(D)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、本比較例5に係るダイシング用粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μmであった。
【0101】
(基材、及び、ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率の測定)
実施例、及び、比較例に用いた基材について、波長355nmにおける光線透過率の測定を行った。また、実施例、及び、比較例に係るダイシング用粘着シートについて、波長355nmにおける光線透過率の測定を行った。測定には、UV−VIS分光光度計、SHIMAZU社製、UV−2550を用いた。
結果を表1に示す。
【0102】
(基材の裂け、及び、加工テーブルのダメージの評価)
基材の裂け、及び、加工テーブルのダメージの評価は、以下のようにして行なった。
まず、シリコンウエハ上に、ダイシング用粘着シートをセットした。次に、波長355nm、平均出力0.75W、繰り返し周波数5kHzのYAGレーザーの第三高調波(355nm)を対物レンズ(fθレンズ)により30μm径に集光し、ガルバノスキャナーによりレーザー光を15mm/秒の速度で3回スキャンした。なお、焦点は、粘着剤層から500μm上方とした。次に、ダイシング用粘着シートの基材に破けがあるか否かを目視、及び、光学顕微鏡にて確認した。結果を表1に示す。次に、ダイシング用粘着シートをシリコンウエハから取り除き、シリコンウエハにレーザー痕があるか否かを目視により確認した。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【符号の説明】
【0104】
3 ダイシング用粘着シート
31 基材
32 粘着剤層
4 半導体ウエハ
41 低誘電材料層
5 半導体チップ
8 吸着ステージ
9 レーザー光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられた粘着剤層とを有するダイシング用粘着シートであって、
前記粘着剤層には、樹脂固形分100重量部に対して、0.02〜5重量部の紫外線吸収剤が含有されており、
前記ダイシング用粘着シートの波長355nmにおける光線透過率が、30〜80%であることを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項2】
前記基材の波長355nmにおける光線透過率が、70〜100%であることを特徴とする請求項1に記載のダイシング用粘着シート。
【請求項3】
前記基材は、複層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイシング用粘着シート。
【請求項4】
前記基材の比熱は、1.0〜3.0J/gKであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のダイシング用粘着シート。
【請求項5】
前記基材の融点は、90℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載のダイシング用粘着シート。
【請求項6】
表面に低誘電材料層が形成されている半導体ウエハの裏面に、請求項1〜5のいずれか1に記載のダイシング用粘着シートを貼り合わせる工程と、
前記半導体ウエハに表面側から紫外線レーザー光を照射して低誘電材料層を切断するレーザースクライビング工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−21105(P2013−21105A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152769(P2011−152769)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】