説明

ダイセット用案内保持装置

【課題】ダイセットの対向する複数の金型プレートを確実に接続、支持、および案内し、ロッドおよびブッシングに対する適切な潤滑作用を確保し、汚染物質の侵入によるブッシングの汚染と磨耗を確実に防止することができる案内保持装置を提供する。
【解決手段】ダイセット用案内保持装置は、取付フランジ部、スリーブ部、およびこれらを貫通して延在された穴部を有するハウジングと、前記穴部内に収容されて前記スリーブ部内に配置されたブッシングと、前記ブッシング内にスライド可能に収容されて前記ハウジングに対して軸方向に往復運動するように構成されたロッドと、を有しており、第1の金型プレートとこの第1の金型プレートに対向しかつ離隔して配置された第2の金型プレートを有するダイセットにおいて、互いに対して接離自在に相対的な往復運動をするこれらの金型プレートを案内および保持するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工用金型(ダイ)に係り、特に、複数のダイ(またはその他の工具)を備えたダイセットにおける各ダイの往復運動を案内(すなわちガイド)するための案内保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタンピング金型、打抜き金型、穿孔金型、絞り金型あるいは剪断金型といった、シートメタル成形プロセスにおいて用いられる金属加工用ダイは、関連する加工プロセスにおいて一般に互いに接離自在に移動するように構成されている。多くの利用分野において共通するが、ダイセットの上側金型半部(ダイハーフ)は上側金型プレートに取り付けられ、下側金型半部は下側金型プレートに取り付けられている。このダイセットには、スプール、ロッドまたはこれに類似する構成部が設けられており、それにより、上側金型半部および下側金型半部は、互いに対向するように重ね合わせられた金型プレートどうしの接離自在な相対的往復運動を調整および案内する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,730,757号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、対向する複数のプレートまたは金属加工プロセスにおける複数の金型に対するより一層確実な接続、支持、および案内のための機構を備え、ロッドおよびブッシングに対する適切な潤滑作用を確保し、ロッドおよびブッシングを収容した穴内への汚染物質の侵入によるブッシングの汚染とそれにより生じる磨耗をより一層確実に防止し、(d)もって構造堅固であり、耐久性に優れ、製品寿命期間が長く、しかも簡易な設計で製造することができるダイセット用案内保持装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置は、ロッドと、ハウジング内にスライド可能に収容された1以上のブッシングとを備えている。前記ハウジングは、取付フランジ部、スリーブ部、およびそれらを貫通して設けられた穴部を備えている。前記取付フランジ部は、第1の金型プレートに接続されるように構成され、前記スリーブ部は、第1の金型プレートに設けられた孔に収容されるように構成されている。また、前記ロッドは、金属加工プロセスの間に前記第1の金型プレートと向かい合う第2の金型プレートに接続されるように構成されている。また、前記ブッシングは、前記穴部内に配置され、該穴部内における前記ロッドの往復運動のためのベアリングをなしつつ、前記複数の金型プレートの往復運動を案内する。
【0006】
ブッシングに汚染物質が侵入するのを防止するために、上記ダイセット用案内保持装置は、軸方向にブッシングを挟むように設けられ、前記ハウジングに担持され、前記ロッドをスライド可能に収容するように構成された、第1のワイパーシールおよび第2のワイパーシールを備えてもよい。前記ハウジングに対して軸方向片側におけるロッドの軸方向移動を制限するために、ロッドは、スリーブ部の自由端と係合可能な、一方の端部に隣接したストップを有してもよく、および/または、スリーブ部の自由端に隣接して可撓なダンパーを有してもよい。ダンパーは、スリーブ部の自由端に隣接したワイパーシールの一部またはそれと一体的に構成された部分であってもよい。ダイセット用案内保持装置をダイセット内にまたは直接金型半部分内に取り付ける前にロッドがハウジングから意図せずして脱落してしまうような程度に他の方向において軸方向に移動することがないように、ロッドは、他の端部に沿って溝部を有してもよく、この溝部は、確実にハウジングの他端部に隣接したワイパーシールと係合するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置は、上述した構成を有することにより、(a)対向する複数のプレートまたは金属加工プロセスにおける複数の金型に対する適切な接続、支持、および案内を提供し、(b)ブッシングとロッドとに対する適切な潤滑を確保し、(c)ロッドおよびブッシングを収容した穴内への汚染物質の侵入によるブッシングの汚染とそれにより生じる磨耗をより一層確実に防止し、(d)構造堅固で、耐久性に優れ、製品寿命期間が長く、しかも簡易な設計および経済的な製造・組立が可能な案内保持機構を提供する、といった効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置とそのダイセットの支承部プレートおよびパッドプレートを示した斜視図である。
【図2】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置の斜視図である。
【図3】図1に示すダイセット用案内保持装置の分解図である。
【図4】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置の断面図である。
【図5】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置のハウジングの断面図である。
【図6】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置のハウジングの斜視図である。
【図7】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置の第1のワイパーシールの拡大図である。
【図8】ダイセット用案内保持装置のロッドにおける溝部と係合する図1に示す本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置の第2のワイパーシールの例を示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置を、図1〜図8を参照しながら説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係るダイセット用案内保持装置10(以下、「案内保持機構」とも表記する)は、スタンピング加工、引抜き加工、押抜き加工、穿孔加工、打抜き加工、または剪断加工といった金属加工プロセスにおいて用いられる複数の金型(またはその他の工具)の往復運動または前後運動を調整および案内するための機構である。
【0011】
案内保持機構10は、型抜き装置、レールまたはパッドの、ダイセットの基部または支承部などの第1の金型プレート12に対する相対的な往復運動の調整および案内を提供する。典型的には、互いに対向する一対の金型半部(ダイハーフ)は、取り外し可能に上側プレートおよび下側プレートにそれぞれ取り付けられている。使用状態においては、金型半部が取り付けられたダイセットは、典型的には上側金型半部を下側金型半部に対して接離自在に相互運動させるプレス機の複数の取付盤(プラテン)の間に収容されている。また、図示した実施形態においては、案内保持機構10は、第1のワイパーシール20と第2のワイパーシール22とに挟まれた状態でハウジング16内に配置された1以上のブッシングの内側にスライド可能に収容されたロッド18を備えている。
【0012】
図1に示すように、第1の金型プレート12には、第1の金型プレート12に接続された各案内保持機構10のための貫通孔24が複数設けられ、ハウジング16を第1の金型プレート12に接続するためのねじ切りされたアパーチャ26および図示しないロケータアパーチャが設けられている。第2の金型プレート14には、ロッド18を第2の金型プレート14に接続するための皿穴アパーチャ28およびロケータアパーチャ30が設けられている。
【0013】
ハウジング16は、一体的に構成された単一部材であるのが好ましいが、溶接された複数部分や相互接続された複数部分で構成されてもよい。また、ハウジング16は、炭素鋼(AISI1020)などのスチールで構成されているのが好ましいが、他の金属や複合材料といった適切な材料を用いて適宜構成されてもよい。
【0014】
図1、図2および図5に示すように、ハウジング16は、取付フランジ部32と、スリーブ部34と、穴部36とを備えている。取付フランジ部32は、スリーブ部34に対してその径方向に拡大されておりかつ穴部36の軸に対して径方向に突出した形状とされている。取付フランジ部32は、ハウジング16を第1の金型プレート12に接続するために用いられる部分であり、取付表面または肩表面38が設けられている。取付表面38は、ハウジング16が第1の金型プレート12に接続されると、第1の金型プレート12の外表面40に対向するとともに該外表面40に当接して着座するように構成されている。
【0015】
また、取付フランジ部32には、ねじ切りされていない皿頭アパーチャ42が該取付フランジ部32を貫通して設けられている。この皿頭アパーチャ42は、第1の金型プレート12の前記ねじ切りされたアパーチャ26に対して取付フランジ部32を同軸的に調整するために設けられた部分である。そして、押さえねじなどの締結部材が、ねじ切りされたアパーチャ26と皿頭アパーチャ42とにねじ込まれることで、取付フランジ部32が第1の金型プレート12に接続される。
【0016】
また、取付フランジ部32には、ロケータアパーチャ44が該取付フランジ部32を貫通して設けられている。このロケータアパーチャ44には、第1の金型プレート12に設けられたアパーチャに固定されたロケータピンが収容されることができる。
【0017】
また、取付フランジ部32には、ねじ切りされたアパーチャ46が設けられている。このねじ切りされたアパーチャ46は、ハウジング16を第1の金型プレート12から取り外す際にねじジャッキなどの工具を収容するために取付フランジ部32に設けられた部分である。
【0018】
図1に示すように、前記スリーブ部34は、取付フランジ部32から突出または延在して設けられており、第1の金型プレート12の貫通孔24内に部分的にまたは完全に挿入され、さらに該貫通孔24を貫通してその外部へ延在されてもよい。スリーブ部34が貫通孔24内に密接に収容される場合には、スリーブ部34を設けることで、スリーブ部が設けられていないハウジングその他貫通孔24に収容される構造部分と比較して、第1の金型プレート12に対してハウジング16をより安定的かつ確実に接続または取り付けることができる。
【0019】
また、スリーブ部34によって、ハウジング16とロッド18との間のブッシングのより大きな軸方向最大係合長が設けられているため、ロッド18の往復運動において、より大きな横方向または径方向の支持構造とより改善されたロッド18の軸方向案内構造とを提供することができる。また、このより大きな軸方向係合長によって、より大きなブッシング表面積と、穴部36内におけるロッド18に対する潤滑機能が提供される。なお、スリーブ部34は、好ましくは筒状の外表面48を有している。
【0020】
一実施形態において、取付フランジ部32およびスリーブ部34は、ハウジング16を第1の金型12に接続するとともにロッド187の移動を支持および案内するために最適化された軸方向長さ(全長)LI、L2(図5参照)をそれぞれ有している。一例として、スリーブ部34の軸方向長さL2は取付フランジ部32の軸方向長さL1の約2倍(2x)である。他の例として、軸方向長さL2は軸方向長さL1の約3倍である。そして、さらなる他の例においては、軸方向長さL2は軸方向長さL1の4倍ないし8倍であってもよい(例えば、L2が2.0インチであればL1は0.5インチとなる。勿論、他の寸法であってもよい)。軸方向長さL1、L2の正確な数値は、特に、使用中にハウジング16に伝わる軸方向および横方向予想荷重値と、ロッド18の軸方向長さおよび寸法とによって決まる。場合によっては、かかる関係を満たすことで、金型プレート12、14およびこれらの金型プレートに取り付けられた金型(またはその他の工具)をより一層確実に接続、支持および案内することができる。
【0021】
図1、図2および図5に示すように、穴部36は、取付フランジ部32とスリーブ部34とを貫通して延在しているとともにロッド18を収容するように構成されている。穴部36は、スリーブ部34の自由端側において第1の開放端50が設けられかつ取付フランジ部32の端面側において第2の開放端52が設けられた略筒状に構成されている。また、穴部36の内表面54には、組み立てられた状態において第1のワイパーシール20を着座させるための第1の溝部56が前記第1の開放端50に沿って設けられかつ、組立時において第2のワイパーシール22を着座させるための、第2の溝部58が前記第2の開放端52に沿って設けられている。
【0022】
また、穴部36には、ブッシングを保持するための第3の溝部60、第4の溝部62および第5の溝部64が、前記第1の溝部56と前記第2の溝部58とに挟まれる形で、該穴部36の軸方向に互いに離隔して設けられている。
【0023】
ロッド18は、アパーチャなどの相対的に重要性の低い構造部分を除いてその大半が中実の筒状単体である。好ましくは、ロッド18は、ハイグレードスチール42CrMo4などのスチールで構成されている。勿論、他の金属または複合材料などのその他の適切な材料で適宜構成されてもよい。また、ロッド18は、相対的に厳格な許容誤差および高品質表面仕上りにて研磨され、好ましくは、硬化および耐食性のため窒化表面処理を施されている。
【0024】
図2、図3、図7および図8に示すように、ロッド18は、外表面66と、第1の端部68と、第2の端部70とを有している。また、前記第1の端部68に隣接して、好ましくはリング形状とされたストップリング72が、中間部管状ワイヤ74との嵌合を介してロッド18に固定されており、この中間部管状ワイヤ74は、ロッドの外表面66に設けられた第1のロッド溝部76と、ストップリング72における相補的な溝部77とに収容されている。ストップリング72は、溶接、スナップリングリテーナなどの他の方法によってロッドに固定することができる。ストップリング72は、ロッド18の本体の円筒形状に対して径方向突出を提供し、好ましくは、ロッドの第1の端部68と実質的に同一平面に位置している。他の例としては、ストップリング72は、ロッドと一体に設けられたフランジや、別体構成された複数の円弧状セグメントで構成されたセグメント状の筒状突出部といった他の構造を有してもよく、ロッドの第1の端部68から軸方向に離隔されてもよい。また、ロッド18をハウジング16内に確実に保持するため、第2のワイパーシール22と協働する第2のロッド溝部79が、ロッド18の第2の端部70に沿って、ロッド18の外表面66にその周方向に連続して設けられている。
【0025】
ロッド18の第2の自由端80には、ねじ切りされた非貫通アパーチャ82が設けられている。このねじ切りされた非貫通アパーチャ82は、押さえねじ84などのねじ込み締結部材を収容するようにロッド18内にその軸方向に延在されて、かかる締結によりロッド18が上側の金型プレートすなわち第2の金型プレート14に取り付けられる。
【0026】
また、ロッド18には、その回転軸と同軸な筒状表面を有するロケータ86が設けられている。ロケータ86は、ロッド18の端面80から突出し設けられており、上側プレートすなわち第2の金型プレート14に設けられたロケータアパーチャ30内に密接に嵌合して回転可能に収容されるロケータをなしている。また、ロケータ86の自由端には、非円形ソケット87が設けられており、六角レンチなどの相補的な工具またはドライバを収容するように構成されている。これにより、ロッド18を回転させてその端部においてねじ切りされたアパーチャ82を、ロッドをプレートに取り付けるための押さえねじ84を取り付けるために前記第2の金型プレートに設けられた皿穴アパーチャ28と同軸かつ一列となるように配置することができるようになっている。なお、他の実施形態としては、ロッド18を第2の金型プレート14に接続するために他の構造および態様によってもよい。例えば、単一の押さえねじおよびワッシャを、ロッドの自由端におけるロッドの回転軸と同軸な単一のねじ切りされたアパーチャ内に取り付けるなどしてもよい。
【0027】
第1のワイパーシール20は、汚染物質が第1の端部50を介して穴部36に侵入するのを防止するとともに、好ましくはロッド18のストップリング72との接触により生じる衝撃を緩和するように構成されている。図3、図4および図7に示すように、第1のワイパーシール20はロッド18と終始係合した状態で、ロッド18が穴部36内をスライドする際にロッド18から汚染物質を除去する。好ましくは、また、第1のワイパーシール20は、ストップリング72とハウジング16のスリーブ部34との間の直接的な金属対金属の接触を実質的に防止する(これに代えて、金属対金属の接触が構造上生じるのであればそのような金属間接触に先立ってエラストマ対金属の接触を提供する)。また、第1のワイパーシール20とストップリング72との直接的な係合および当接を介してダンパを提供することで、ストップリング72がスリーブ部34の端部から遠ざかる反対方向に移動するのを許容しつつロッド18のさらなる移動が制限される。
【0028】
第1のワイパーシール20は、好ましくは米国ミシガン州ミッドランド所在のDow Chemical Company社製のポリウレタン90aで構成されているが、その他のポリウレタンまたは、Shore A Durometerスケールで約70ないし100、好ましくは85ないし95の範囲のデュロメータ値を有する、耐久性を有しかつ適度に可撓に構成されたポリマーで構成されてもよい。
【0029】
図7および図8に示すように、第1のワイパーシール20は、基部88と、バンパー部90と、ワイパー部92とで構成されて、ロッド18の周方向に連続的に設けられた管状リング構造をなしている。組立られた状態において、第1のワイパーシール20の基部88は、ハウジング16の第1の溝部56に収容され、バンパー部90は、ストップリング72との直接的な係合のためにスリーブ部34の自由端34を越えてその軸方向に突出している。ワイパー部92は、周方向に連続的にロッド18の筒状の外表面66と係合して、それにより汚染物質を拭い取るとともに汚染物質が穴部36に侵入するのを防止する。実施形態によっては、バンパーは、程よく可撓なポリウレタンで構成された別体リングまたは適切なワイパーシールとは別体構成された他のエラストマであってもよい。第1のワイパーシール20は、スリーブ部34の自由端に対して軸方向内側または外側に配置されてもよく、あるいは、第1のワイパーシールを設けなくてもよい。
【0030】
第2のワイパーシール22は、汚染物質が第2の端部52を介して穴部36に侵入するのを防ぎ、第2のロッド溝部79と協働してロッド18をハウジング16内において開放可能に保持する。図3、図4および図8に示すように、組み立てられた状態において、第2のワイパーシール22は、ロッド18に押し付けられて、ロッドがそれを通ってスライドする間にロッドから汚染物質を除去する。第2のワイパーシール22はまた、第2のロッド溝部79との直接的な係合によって、ケーシング内およびケーシングを貫通してのロッド18のさらなる移動を制限する確動的なチェックとして機能する、他方、第2の溝部が取付フランジ部32から離れて移動する反対方向において移動を許容する。例えば、ロッド18が第2の金型14に接続されていない搬送、組付けおよび分解中は、ロッドは、第2の自由端80が取付フランジ部32へ向かって移動する方向において穴部36を通って意図せずスライドしてしまうことがある。そのスライド運動を継続するのを終えて、第2のロッド溝部79が第2のワイパーシール22に係合されると、ロッド18は、ハウジング16内に開放可能に保持されて、さらなるスライド運動が防止される。
【0031】
第2のワイパーシール22は、好ましくは、Dow Chemical Company社製ポリウレタン90aで構成されており、その他のポリウレタンまたは、Shore A Durometerスケールで約70ないし100、好ましくは85ないし95の範囲のデュロメータを有するその他の耐久性かつ適度に可撓に構成されたポリマーで構成されてもよい。
【0032】
第1のワイパーシール20は、汚染物質が第1の端部50を介して穴部36に侵入するのを防ぎ、好ましくはロッド18のストップリング72との接触により生じる衝撃を緩和させる。図3、図4および図7に示すように、組み立てられた状態において、第1のワイパーシール20は、ロッド18と連続的に係合し、ロッドがそれを通ってスライドする間にロッドから汚染物質を除去する。好ましくは、また、第1のワイパーシール20は、ストップリング72とハウジング16のスリーブ34との間の直接的な金属対金属の接触を実質的に防止する(これに代えて、仮に存在するとすれば金属対金属の接触に先立ってエラストマ対金属の接触を提供する)とともに、ストップリング72との直接的な係合および当接を通して、ダンパーを提供してロッド18のさらなる移動を制限して、その間に、ストップリング72がスリーブ部34の端部から遠ざかる反対方向における移動を許容する。
【0033】
図3、図4および図8に示すように、第2のワイパーシール22は、基部94と、先端部98を有するワイパー部96とを有する周方向に連続的な管状リング構造を有しており、この基部94は組み立てられた状態において、穴部36内の第2の溝部58に収容され、そして、先端部98を有するワイパー部96は、組み立てられた状態において、周方向に連続的に直接的にロッド18と係合してその外表面66から汚染物質を拭い去る。
【0034】
図8に示すように、断面でみると、ワイパー部96は、先端部98に向かって内側へ先細りするテーパ状に構成されており、穴部36およびロッド18の軸に対して鋭角な先端角度で穴部36から遠ざかる方向に傾斜している。ロッド18がハウジング16内に十分に移動した場合には、第2のワイパーシール22のフレキシブルな先端部98は、図8に示すように第2のロッド溝部79内に進入して互いに一致した状態になることでロッド18を確実に保持し、かつ、ロッド18がハウジング16から意図せずに離脱してしまうことを防止する。
【0035】
第2のワイパーシール22の先端部98の損傷を確実に回避するとともにハウジング16へのロッド18の挿入およびハウジング16からのロッド18の取り外しが容易となるように、第2のロッド溝部79は、丸みを帯びたエッジ100を有する略半円形の断面を有しているのが好ましい。丸みを帯びたエッジ100を設けることで、隣接する筒状の外表面66から第2のロッド溝部79内外へとスムーズに移行することができる。他の実施形態においては、本発明の案内保持機構10は、第2のロッド溝部79を設けなくてもよく、および/または、第2のワイパーシール22は、取付フランジ部32の端面に対して内側または外側に配置されてもよく、あるいは、第2のワイパーシール22を全く設けなくてもよい。
【0036】
汚染物質が穴部36に入り込むと、潤滑作用を低下させ、ロッドの外表面66に損傷を与え、穴部36内に配置されたブッシングの磨耗を増大させ、究極的にはダイセット用案内保持装置10の性能自体を悪化させてその寿命期間を大幅に短縮してしまう可能性がある。そこで、案内保持機構10の第1のワイパーシール20および第2のワイパーシール22は、すべての汚染物質でなくても少なくとも汚染物質の大半が穴部36に侵入するのを防止するとともに穴部36における潤滑油を保持して、ブッシングに対する恒常的な潤滑作用を提供する。これにより、案内保持機構10の性能の向上と耐用年数の延長とがもたらされると考えられる。
【0037】
図4に示すように、ロッド18の往復直線運動を容易にするとともにハウジング16内におけるロッド18の横方向移動を制限するために、1以上のブッシングが穴部36内に配置されている。ブッシングの具体的な個数は、一般的に案内保持機構10の設計に依存して決まるが、より具体的には、穴部36がその軸方向に延在する度合、ロッド18がその軸方向に延在する度合、個々のブッシングが軸方向に延在する度合、および、案内保持機構10の使用中に案内保持機構10に作用する軸方向および横方向負荷などに依存して決まってくる。図3、図4および図6に示すように、第1のブッシング104、第2のブッシング106および第3のブッシング108が穴部36内において、ハウジング16とロッド18との間に径方向に介在するように配置されている。これらのブッシングは隣接するブッシングから軸方向に離隔して配置され、スペース110またはスペース112がブッシング間に設けられており、ロッド18の低摩擦動作を容易にするとともにロッドとブッシングとの間の磨耗を極小化するために、スペース110またはスペース112は潤滑油で充填されている。
【0038】
図6に示すように、第1のブッシング104、第2のブッシング106および第3のブッシング108は、リブ114がその外表面上に設けられた分割管状構造を有しており、案内保持機構10に組み込まれた状態では、穴部36内における各ブッシングの位置が確立および維持されるように、穴部36の第3の溝部60、第4の溝部62および第5の溝部64内にそれぞれ収容されている。第1のブッシング104、第2のブッシング106および第3のブッシング108は、それぞれ、内側ベアリング面116を有しており、好ましくは潤滑作用をより一層容易にするために周方向に互いに離隔して配置された軸方向溝部または凹部118を有している。第1のブッシング104、第2のブッシング106および第3のブッシング108は、保守作業や交換作業のために穴部36から完全に取り外すことができる。これらの取り外し可能な分割型のブッシングである第1のブッシング104、第2のブッシング106および第3のブッシング108は、充填材を有しかつ繊維強化型とされた複合プラスチックまたは高分子材料で構成されているのが好ましいが、黄銅、青銅または潤滑油で含浸された焼結粉末金属などで構成されてもよい。
【0039】
代替案として、第1のブッシング104、第2のブッシング106および第3のブッシング108のいずれかまたはすべてを、金属、好ましくはスチールなどの金属で構成した、スリーブ34と同質的かつ一体的な構成部分として構成してもよいが、これは、一体的に設けたブッシングに対して熱処理、窒化処理などを施し、あるいは、少なくともその内側ベアリング面116に対してチタン皮膜を施すなどしてブッシングを硬化させるためである。必要に応じて、潤滑作用をより一層向上させるため、周方向に互いに離隔して配置された複数の溝部118を一体的に構成したベアリングに設けてもよい。
【0040】
また、図示しない他の実施形態においては、ダイセット用案内保持装置10は、前述した実施形態に係る構成とは異なる構成を有してもよい。例えば、ハウジング16を図1および図2に示す状態に対して180度反転させた構成としたうえでロッド18をハウジング16の取付フランジ部32側の端部から挿入してもよい。換言すれば、かかる反転構成を有するダイセット用案内保持装置10においては、取付フランジ部32は、ロッド18のストップリング72に隣接しかつ対向して位置付けられるであろうし、スリーブ部34の自由端は、ねじ切りされた非貫通アパーチャ82が内部に設けられた状態でロッド18の反対端部80に隣接して配置されるであろう。
【0041】
また、ダンパー機能および解放可能なロッド保持機能を提供するため、第1のワイパーシール20の位置と第2のワイパーシール22の位置とを互いに反対に構成してもよい。かかる構成を有するダイセット用案内保持装置10は、図1に図示した例におけるのとは反対の方向から、取付フランジ部32がプレート12の反対面に押し付けられた状態で、第1の金型プレート12の貫通孔24に取り付けられる。
【0042】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 ダイセット用案内保持装置(案内保持機構)
12 第1の金型プレート
14 第2の金型プレート
16 ハウジング
18 ロッド
20 第1のワイパーシール
22 第2のワイパーシール
32 取付フランジ部
34 スリーブ部
36 穴部
50 第1の開放端
52 第2の開放端
56 第1の溝部
58 第2の溝部
60 第3の溝部、
62 第4の溝部
64 第5の溝部
72 ストップリング
74 中間部管状ワイヤ
76 第1のロッド溝部
79 第2のロッド溝部
88 基部
90 バンパー部
92 ワイパー部
94 基部
98 先端部
96 ワイパー部
104 第1のブッシング
106 第2のブッシング
108 第3のブッシング
110 スペース
112 スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)取付フランジ部、前記取付フランジ部に接続されたスリーブ部、および、前記取付フランジ部と前記スリーブ部とを貫通して延在された穴部、が設けられたハウジングと、(b)前記穴部内に収容されて前記スリーブ部内に配設された少なくとも1つのブッシングと、(c)前記ブッシングに収容された状態で前記ハウジングに対して軸方向に往復運動するように構成されたロッドとを有する、互いに対向しかつ離隔して配置された第1の金型プレートおよび第2の金型プレートを有するダイセットのための案内保持装置であって、
(イ)前記取付フランジ部が、前記スリーブ部を前記第1の金型プレートに設けられた孔に収容させた状態で、前記第1の金型プレートに取り付けられ、かつ、
(ロ)前記ロッドが、前記第2の金型プレートに取り付けられている
ことを特徴とする案内保持装置。
【請求項2】
前記ハウジングの前記取付フランジ部と前記スリーブ部とが一体に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の案内保持装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのブッシングとして、第1のブッシングと、前記第1のブッシングから前記軸方向に離隔して設けられた第2のブッシングとが設けられ、かつ、前記第1のブッシングと前記第2のブッシングとの間には、潤滑油が収容された第1のスペースが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の案内保持装置。
【請求項4】
前記第2のブッシングに対して前記軸方向に離隔して設けられた第3のブッシングが設けられ、かつ、前記第2のブッシングと前記第3のブッシングとの間には、潤滑油が収容された第2のスペースが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の案内保持装置。
【請求項5】
前記スリーブ部と係合して前記ハウジングに対する前記ロッドの軸方向の移動を該軸方向の片側において制限するように構成された、前記ロッドに担持されたストップと、
前記穴部の端部に沿って配設された、前記ロッドと接触することにより前記穴部への汚染物質の侵入を防止するように構成されたワイパーシールと、
を有していることを特徴とする請求項1に記載の案内保持装置。
【請求項6】
前記ストップが、前記ロッドに対して径方向外側に延在されかつ該ロッドの端部に隣接して配設され、かつ、
前記ワイパーシールと前記穴部の前記端部とが、前記取付フランジ部に対して遠位側の前記スリーブ部の端部に沿って配設されている
ことを特徴とする請求項5に記載の案内保持装置。
【請求項7】
前記ロッドには、該ロッドを前記第2の金型プレートに取り付ける接続部分に沿って溝部が設けられ、
前記穴部の端部には、前記ロッドに接触することにより前記穴部への汚染物質の侵入を防止するように構成されたワイパーシールが該端部に沿って設けられ、かつ、
前記ワイパーシールが、前記溝部に収容された状態で前記ロッドを前記ハウジング内に保持するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の案内保持装置。
【請求項8】
前記ワイパーシールと前記穴部の前記端部とが、前記ハウジングの前記取付フランジ部に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の案内保持装置。
【請求項9】
前記スリーブ部の軸方向全長が、前記取付フランジ部の軸方向全長の少なくとも2倍とされていることを特徴とする請求項1に記載の案内保持装置。
【請求項10】
前記スリーブ部が前記穴部と同軸とされ、かつ、前記少なくとも1つのブッシングが、前記スリーブ部の内側筒状表面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の案内保持装置。
【請求項11】
前記スリーブ部が熱処理金属で構成され、かつ、前記少なくとも1つのブッシングを構成が設けられた前記内側筒状表面が硬化されていることを特徴とする請求項10に記載の案内保持装置。
【請求項12】
前記スリーブ部が金属で構成され、かつ、前記少なくとも1つのブッシングが設けられた前記内側筒状表面にはチタン被膜が施されていることを特徴とする請求項10に記載の案内保持装置。
【請求項13】
前記穴部の一方の端部に沿って設けられかつ前記ハウジングによって担持されているとともに、前記ロッドの周方向に連続的に該ロッドに接触することにより前記穴部への汚染物質の侵入を防止するように構成された、ワイパーシールと、
前記ハウジングに対する前記ロッドの軸方向の移動を該軸方向の片側において制限するように、前記ロッドの一方の端部に沿って該ロッドに設けられかつ前記ワイパーシールと係合するように構成された、溝部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の案内保持装置。
【請求項14】
(a)前記穴部の一方の端部に沿って設けられかつ前記ハウジングにより担持されているとともに、前記ロッドの周方向に連続的に該ロッドに接触することにより前記穴部への汚染物質の侵入を防止するように構成された、第1のワイパーシールと、(b)前記穴部の他方の端部に沿って設けられかつ前記ハウジングにより担持されているとともに、前記ロッドの周方向に連続的に該ロッドに接触することにより前記穴部への汚染物質の侵入を防止するように構成された、第2のワイパーシールと、(c)前記ハウジングに対する前記ロッドの前記軸方向の移動を該軸方向の一方の側において制限するために、前記ロッドの一方の端部に隣接して設けられ、該ロッドによって担持されかつ前記ハウジングと係合するように構成された、ストップと、(d)前記ハウジングに対する前記ロッドの軸方向の移動を前記一方の側と反対の他方の側において制限するために、前記ロッドの他方の端部に沿って該ロッドに設けられかつ前記第2のワイパーシールと係合するように構成された、溝部と、が設けられ、かつ、
前記少なくとも1つのブッシングが、前記第1のワイパーシールと前記第2のワイパーシールとの間に収容されている
ことを特徴とする請求項1に記載の案内保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−161516(P2011−161516A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21491(P2011−21491)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(509277992)ダドコ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】