説明

ダイバシティ受信装置

【課題】2つのADC/OFDM系統を備える方式に比べて、部品点数を削減してコストダウンを図ることができ、しかも応答速度の高速化と受信品質の改善を図ること。
【解決手段】複数のアンテナから出力される各パスの高周波信号に対して重付けする第1及び第2のAGC増幅器31a、31bと、これら重付けした複数の高周波信号を合成する合成部32と、合成した合成信号をデジタル信号に変換して復調するADC/復調回路41とを備えるダイバシティ受信装置において、各高周波信号のそれぞれについて希望波の信号成分とノイズ成分とを検出し、高周波信号の希望波の信号成分とノイズ成分とで表わされる品質値に基づいて、該品質値が高い方の高周波信号の重付けを増大すると共に品質値が低い方の高周波信号の重付けを減少するように、第1及び第2のAGC増幅器31a、31b間で重付けに差を付与する重み演算回路35とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナで電波を受信して信号合成するダイバシティ受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受信感度を向上させるために複数本のアンテナを用いて多方面から電波を受信して合成するダイバシティ受信装置がある。例えば、車載用途の地上デジタル放送用4ダイバシティ対応のテレビジョンチューナが市場に提供されている。
【0003】
図2は従来のダイバシティ受信装置の概略的な構成図であり、2ダイバシティ対応のテレビジョンチューナ構成を示している。同図に示すダイバシティ受信装置は、2つの受信系統に対応して2つのテレビジョンチューナ10a、10bが並列に設けられている。各テレビジョンチューナ10a、10bの出力段にはSAWフィルタ11a、11b、AGC増幅器12a、12bを経由して復調回路20が接続されている。復調回路20は、OFDM方式の復調回路を集積回路で構成したものが例示されている。復調回路20は、2つの受信系統に対応してADC/OFDMが2系統構成されている。各系統のADC/復調部21a、21bは、IF信号をデジタル信号に変換し、OFDMシンボルのタイミング検出を行い、送信信号の変調方式に対応した方式(QAM)で信号復調する。それぞれの系統において信号レベル(絶対値)に応じて、ゲインコントロール回路22a、22bがAGC増幅器12a、12bのゲインを制御する。
【0004】
また、ADC/復調部21a、21bから出力される信号は、それぞれFFT回路23a、23bに入力されて高速フーリエ変換され、サブキャリアが一括して復調される。伝送路推定部24a、24bではCP(Continual Pilot)とSP(Scattered Pilot)信号を使いサブキャリア毎に伝送路で歪んだ位相及び振幅を推定する。重付け演算部25では、伝送路推定部24a、24bで推定した伝送路毎の位相及び振幅に所定アルゴリズムに従って重付け因子を算出する。等化部26a、26bは、サブキャリア毎に位相及び振幅の等化処理を行う。そして、等化部26a、26bで等化処理した異なる系統の信号を更に重付け演算部25で算出された重み付け因子を掛け、合成部27で合成する。合成した受信信号はエラー訂正部28を経てトランスポートストリーム(TS)として出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−101245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したダイバシティ受信装置は、2つの受信系統に対応してADC/OFDMが2系統で構成されているので、部品点数が増大してコストアップになる問題がある。また、従来のダイバシティ受信装置は、ノイズの大小によらずに信号レベル(ノイズ成分を含んだ絶対値)に応じてIF信号を増幅してAD変換し、その後にデータ領域において伝送路推定結果に基づいて重み演算し、重付けしてからデータ合成するので、応答速度が遅くなると共に受信品質も十分ではなかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、2つのADC/OFDM系統を備える方式に比べて部品点数を削減してコストダウンを図ることができ、しかも応答速度の高速化と受信品質の改善を図ることのできるダイバシティ受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイバシティ受信装置は、複数のアンテナから出力される高周波信号に対して重付けする第1及び第2の重付け手段と、前記第1及び第2の重付け手段で重付けした複数の高周波信号を合成する合成手段と、前記合成手段で合成した合成信号をデジタル信号に変換して復調する復調手段と、前記各高周波信号のそれぞれについて希望波の信号成分とノイズ成分とを検出する検出手段と、前記高周波信号の希望波の信号成分とノイズ成分とで表わされる品質値に基づいて、該品質値が高い方の高周波信号の重付けを増大すると共に品質値が低い方の高周波信号の重付けを減少するように、前記第1の重付け手段と前記第2の重付け手段との間で重付けに差を付与する差分重付け制御手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、アナログの受信信号をデジタル信号に変換して復調する復調手段の前段で、高周波信号に重付けして合成しているので、2つの受信系統に対してADC/OFDM系統は1系統で対応することができ、2つのADC/OFDM系統を備える方式に比べて部品点数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0010】
また、各パスの品質値をリアルタイムで検出して制御量を演算し、重付け及び合成を行うので、デジタル領域でプロセッサの能力に依存した処理速度に規制される従来方式に比べて処理の高速化を図ることができる。
【0011】
また、高周波信号の希望波の信号成分とノイズ成分とで表わされる品質値に基づいて、該品質値が高い方の高周波信号の重付けを増大すると共に品質値が低い方の高周波信号の重付けを減少するように重付け手段間で重付けに差が付与されるので、ノイズ成分も増幅してから復号IC内で重付けする従来方式に比べて受信品質の改善を図ることができる。
【0012】
また本発明は、上記ダイバシティ受信装置において、前記復調手段に入力する合成信号の信号レベルが所望値となるように前記第1及び第2の重付け手段に対する重付け量を制御する重付け制御手段を備え、前記差分重付け制御手段は、前記重付け制御手段から出力される重付け量を基準にして前記第1重付け手段と前記第2の重付け手段との間で重付けに差を付与することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、復調手段に入力する合成信号の信号レベルが所望値となるように前記第1及び第2の重付け手段に対する重付け量を制御し、この重付け量を基準として品質値が高い方の高周波信号の重付けを増大すると共に品質値が低い方の高周波信号の重付けを減少するので、アナログ領域で重付け及び合成を行っていても、復調手段に入力する合成信号の信号レベルを所望値に制御することができ、安定性を実現できる。
【0014】
上記ダイバシティ受信装置において、前記差分重付け制御手段は、前記高周波信号毎に希望波の信号成分とノイズ成分とで表わされる品質値を演算する第1の手段と、前記品質値の大小関係に基づいて前記第1の重付け手段と前記第2の重付け手段とに与える重付け量に差を付与するための制御量を演算する第2の手段と、前記重付け制御手段から出力される重付けと前記第2の手段から出力される制御量との和を出力する加算部と、前記重付け制御手段から出力される重付け量と前記第2の手段から出力される制御量との差を出力する減算部と、を具備した構成とすることができる。
【0015】
また、上記ダイバシティ受信装置において、前記第1及び第2の重付け手段の入力段に、複数の高周波信号のそれぞれの位相を同期させる位相制御手段を備えることが望ましい。
これにより、重付けされた複数の高周波信号の合成が容易になると共に信号品質を向上させることができる。
【0016】
また、上記ダイバシティ受信装置において、前記検出手段は、前記第1及び第2の重付け手段より前段で前記各高周波信号を取り込むことが望ましい。
【0017】
また、上記ダイバシティ受信装置において、前記高周波信号はテレビジョンチューナから出力されるテレビジョン信号の中間周波信号であり、前記第1及び第2の重付け手段はチューナ内蔵のAGC増幅器であることとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のダイバシティ受信装置によれば、2つのADC/OFDM系統を備える方式に比べて、部品点数を削減してコストダウンを図ることができ、しかも応答速度の高速化と受信品質の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係るダイバシティ受信装置の構成図
【図2】従来のダイバシティ受信装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
車載用地上デジタル放送用受信機におけるダイバシティ受信装置の実施の形態を説明するが、本発明は車載用地上デジタル放送用受信機に限定されるものではない。
【0021】
図1は本発明の一実施の形態に係るダイバシティ受信装置の構成図である。
同図に示すように、本実施の形態に係るダイバシティ受信装置は、2つの受信系統(第1のパス、第2のパス)に対応して2つのテレビジョンチューナ10a、10bが並列に設けられている。チューナ10a、10bは受信チャンネルのRF信号をIF信号に周波数変換して出力する。チューナ10a、10bの出力段にはIF帯域を通過帯域とするSAWフィルタ11a、11bが接続されている。SAWフィルタ11a、11bの出力段に位相同期回路13が接続されている。位相同期回路13は、第1のパスと第2のパスの信号位相を同期(揃える)させるための回路である。本実施の形態はIF帯域において第1のパスと第2のパスの信号を合成するため、事前に位相同期回路13で位相同期させている。位相同期回路13の出力段には、高周波領域(本例ではIF帯)で各パスの重付け及び信号合成する重付け/合成ブロック30が接続され、重付け/合成ブロック30の後段にADC/OFDM系統が1系統だけ備えられている。
【0022】
位相同期回路13の第1のパスの出力端子に第1の重付け手段となる第1のAGC増幅器31aが接続され、位相同期回路13の第2のパスの出力端子に第2の重付け手段となる第2のAGC増幅器31bが接続されている。第1及び第2のAGC増幅器31a、31bは、各パスの信号レベル絶対値によってゲインコントロールされるのではなく、各パスの品質値に応じてゲインコントロールされる。そして、第1及び第2のAGC増幅器31a、31bでゲインコントロールされた信号を合成部32で合成する。このように、本実施の形態は、ADC/OFDM系統においてデータ領域でダイバシティ合成するのではなく、高周波領域においてダイバシティ合成している。
【0023】
本実施の形態のダイバシティ受信装置は、第1のパスのIF信号から希望波の信号成分を抽出する信号抽出フィルタ33aと、第1のパスのIF信号に含まれるノイズ成分に相当する信号成分を抽出するノイズ抽出フィルタ34aとを備える。信号抽出フィルタ33aは、希望波の信号レベルが最も大きいと予測されるIF帯域の中心周波数の信号成分を抽出するフィルタ特性に設定されることが望ましい。ノイズ抽出フィルタ34aは、IF帯域の中心周波数から十分に離れた位置で希望波の影響が小さくなった周辺周波数の信号成分を抽出するフィルタ特性に設定されることが望ましい。ノイズ成分は広範囲に拡散して重畳しており、IF帯域の中心周波数近傍のノイズレベルとその中心周波数から十分に離れた位置のノイズレベルとは比例関係があると予測される。そこで、希望波が最も大きい中心周波数から十分に離れた位置で、ノイズ信号だけを精度よく検出することとした。
【0024】
また、第2のパスのIF信号から当該IF帯域の信号成分を抽出する信号抽出フィルタ33bと、第2のパスのIF信号に含まれるノイズ成分に相当する信号成分を抽出するノイズ抽出フィルタ34bとを備える。信号抽出フィルタ33b及びノイズ抽出フィルタ34bの周波数特性は、第1のパスに設けた信号抽出フィルタ33a及びノイズ抽出フィルタ34aの周波数特性と同じである。信号抽出フィルタ33a、33b及びノイズ抽出フィルタ34a、34bで検出手段を構成する。
【0025】
信号抽出フィルタ33a及びノイズ抽出フィルタ34a、信号抽出フィルタ33b及びノイズ抽出フィルタ34bの検出信号は重み演算回路35へ入力される。重み演算回路35は、第1のパスにおける希望波検出値(Sa)とノイズ成分検出値(Na)とから第1のパスの品質値となるSa/Na値を求める。第2のパスについても、第2のパスにおける希望波検出値(Sb)とノイズ成分検出値(Nb)とから第2のパスの品質値となるSb/Nb値を求める。Sa/Na値及びSb/Nb値に基づいて第1のパス及び第2のパスに対する重みとなる制御量Wを決定する。具体的には、第1のパスのSa/Na値が第2のパスのSb/Nb値よりも高い数値であれば、第1のパスのIF信号のゲインが大きく、相対的に第2のパスのIF信号に対するゲインが小さくなるような重みとなる制御量Wを決定する。逆に第1のパスのSa/Na値が第2のパスのSb/Nb値よりも低い数値であれば、第1のパスのIF信号のゲインが小さく、相対的に第2のパスのIF信号に対するゲインが大きくなるような重みとなる制御量Wを決定する。このとき、Sa/Na値とSb/Nb値の相対的な大きさに応じて制御量Wの大きさも変化させることが望ましい。また、Sa/Na値とSb/Nb値とが同一(完全一致だけでなく所定の範囲を持っていても良い)の場合、制御量Wは0とする。
【0026】
重み演算回路35で演算した第2のパスに対する制御量Wは加算器36へ与えられ、加算器36でゲインコントロール回路46から与えられるゲイン制御量と加算されて、第2のパスのAGC増幅器31bへ出力される。一方、重み演算回路35で演算した第1のパスに対する制御量Wは減算器37へ与えられ、減算器37でゲインコントロール回路46から与えられるゲイン制御量を制御量Wで減算して、第1のパスのAGC増幅器31aへ出力される。すなわち、AGC増幅器31a、31bに対して、制御量Wによって差を付けたゲイン制御量に変換して出力している。
【0027】
合成部32で合成した受信信号は、上記した通り1系統のADC/復調部41へ入力される。ADC/復調部41は、合成部32から出力される合成IF信号をデジタル信号に変換し、合成IF信号の信号レベルをゲインコントロール回路46へ出力する。ゲインコントロール回路46は、ADCのダイナミックレンジに対応した信号レベルに制御するゲイン制御量を計算する。従来方式(図2)では、第1のパスと第2のパスとで別々にゲイン制御量を計算しているが、本実施の形態では2つのパスの合成信号を扱うので、ADC/復調部41の入力レベルを決める1つのゲイン制御量が決められる。ゲインコントロール回路46は、合成部32から与えられるゲイン制御量を加算器36及び減算器37へ出力する。
【0028】
またADC/復調部41は、合成信号からOFDMシンボルのタイミング検出を行い、送信信号の変調方式に対応した方式(QAM)で信号復調する。復調信号は、FFT回路42に入力されて高速フーリエ変換され、サブキャリアが一括して復調される。さらに、伝送路推定部43ではサブキャリア毎に伝送路で歪んだ位相及び振幅を推定し、等化部44でサブキャリア毎の位相及び振幅を用いてチャネル等化処理を行う。そして、等化部44で等化処理した受信信号はエラー訂正部45を経てトランスポートストリーム(TS)として出力される。
【0029】
以上のように構成されたダイバシティ受信装置における動作について説明する。
第1のパス及び第2のパスに設けられたテレビジョンチューナ10a、10bから出力された2つのIF信号はSAWフィルタ11a、11bで希望波信号以外が除去され、位相同期回路13に入力して第1のパスと第2のパスのIF信号の位相同期がとられる。位相同期した第1のパスのIF信号は第1のAGC増幅器31aに入力され、第2パスのIF信号は第2のAGC増幅器31bに入力される。第1及び第2のAGC増幅器31a、31bは与えられるゲイン制御量にしたがってIF信号を増幅して合成部32へ出力する。合成部32では第1及び第2のパスのゲイン制御されたIF信号を合成してADC/復調回路41へ出力する。ゲインコントロール回路46では、ADC/復調回路41へ入力する合成信号のピーク値が所望値になるようにゲイン制御量を計算して加算器36、減算器37へ与える。
【0030】
一方、位相同期した第1のパスのIF信号は、第1のAGC増幅器31aに前段で分岐されて信号抽出フィルタ33aとノイズ抽出フィルタ34aに入力する。信号抽出フィルタ33aは第1のパスのIF信号から希望波の信号成分Saを抽出し、ノイズ抽出フィルタ34aは第1のパスのIF信号から希望波から離れた位置からノイズ成分Naを抽出し、希望波の信号成分Sa及びノイズ成分Naが重み演算回路35へ入力される。一方、位相同期した第2のパスのIF信号は、第2のAGC増幅器31bに入力されると共に、第2のAGC増幅器31bに前段で分岐されて信号抽出フィルタ33bとノイズ抽出フィルタ34bに入力する。信号抽出フィルタ33b及びノイズ抽出フィルタ34bで抽出された第2のパスの希望波の信号成分Sb及びノイズ成分Nbが重み演算回路35へ入力される。
【0031】
重み演算回路35では、第1のパスのIF信号における希望波の信号成分Saとノイズ成分Naとで表わされる品質値(Sa/Na)を計算する。また、第2のパスのIF信号における希望波の信号成分Sbとノイズ成分Nbとで表わされる品質値(Sb/Nb)を計算する。第1のパスの品質値(Sa/Na)と第2のパスの品質値(Sb/Nb)との差が同等とみなせる所定範囲内であれば、加算器36及び減算器37へ出力する制御量Wは0又は実質的にパス間での差を与えない固定値とする。
【0032】
これにより、第1のパスと第2のパスの品質値が同等の場合は、重み演算回路35が制御量Wを最小値に設定するので、第1のAGC増幅器31a及び第2のAGC増幅器31bはゲインコントロール回路46から与えられるゲイン制御量を修正することなく当該ゲイン制御量によりゲイン制御される。第1のパスと第2のパスの品質値が同等であれば、ADC/復調回路41の入力レベルがピーク値となるように制御したゲイン制御量で重付けすることで最もノイズ成分を抑制し、かつ信号成分を増大させるダイバシティ合成が可能となる。
【0033】
また重み演算回路35は、第1のパスの品質値(Sa/Na)の方が第2のパスの品質値(Sb/Nb)よりも高い場合、第1のAGC増幅器31a(第1のパス)の重付け(ゲイン)が、第2のAGC増幅器31b(第2のパス)の重付け(ゲイン)よりも大きくなるような制御量Wを演算して加算器36及び減算器37へ出力する。逆に、第1のパスの品質値(Sa/Na)の方が第2のパスの品質値(Sb/Nb)よりも低い場合、第1のAGC増幅器31a(第1のパス)の重付け(ゲイン)が、第2のAGC増幅器31b(第2のパス)の重付け(ゲイン)よりも小さくなるような制御量Wを演算して加算器36及び減算器37へ出力する。たとえば、第1のパスの品質値(Sa/Na)の方が第2のパスの品質値(Sb/Nb)よりも高い場合には、小さい制御量Wを出力する。第1のAGC増幅器31a(第1のパス)は、減算器37でゲイン制御量から制御量Wを減算した値が修正後のゲイン制御量(重付け)となるので、制御量Wが小さいほどゲイン制御量が大きくなり、第1のパスの重み付けが大きくなる。これに対して第2のAGC増幅器31b(第2のパス)は、加算器36でゲイン制御量に制御量Wを加算した値が修正後のゲイン制御量(重付け)となるので、制御量Wが小さいほどゲイン制御量が小さくなり、第2のパスの重み付けが小さくなる。この結果、品質値の高い側のパスの重付けが大きくなり、相対的に品質値の低い側のパスの重付けが小さくなり、かかる重み付け制御がなされた第1及び第2のAGC増幅器31a、31bの出力信号が合成される。
【0034】
しかも本実施の形態では、第1のパスの品質値(Sa/Na)と第2のパスの品質値(Sb/Nb)との差に応じて、品質値の高い側のパスの重付けがより大きくなり、品質値の低い側のパスの重付けがより小さくなるように制御量Wを演算する。これにより、ノイズ成分が大きく信号成分が小さいパスのIF信号は第1又は第2のAGC増幅器31a、31bでの増幅率が抑制され、ノイズ成分が小さく信号成分が大きいパスのIF信号は第1又は第2のAGC増幅器31a、31bでの増幅率がより大きくなる。よって、ダイバシティ合成する信号のノイズ成分を抑圧して希望波成分を増大でき、従来方式に比べて受信品質を改善することができる。
【0035】
また、本実施の形態では、ゲインコントロール回路46の出力するゲイン制御量を基準にして、重み演算回路35の出力する制御量Wでパス間の重み付けに差を付与する。ゲインコントロール回路46は合成部32の入力レベルを一定値(ピーク値)に安定させるように機能するので、ADC/復調回路41の入力信号レベルを最適値に維持することができる。
【0036】
以上のように本実施の形態によれば、テレビジョンチューナ10a、10bの出力信号である第1及び第2のパスのIF信号を高周波信号のまま重み付けし合成してからADC/復調回路41へ入力するので、従来方式のようにデジタル変換後に重み付け処理する場合に比べて各パスの信号に対する重み付け処理を高速化することができる。しかも、ADC/OFDM系統を1系統にする削減することができ、2つのADC/OFDM系統を備える方式に比べて、部品点数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0037】
なお、本発明はIF領域においてダイバシティ合成する場合に限定されるものではなく、RF領域においてダイバシティ合成する場合にも適用可能である。
【0038】
尚、上記説明は、ダイバシティシステムが2系統構成である例として説明してきたが、4系統、多系統構成にも有効である。また、ノイズ抽出FilterはSAW Filterの後であることを例に上げられていたが、ノイズを抽出しやすくため、SAW Filterの前に設置しても可能である。
【符号の説明】
【0039】
10a、10b テレビジョンチューナ
11a、11b SAWフィルタ
13 位相同期回路
31a 第1のAGC増幅器
31b 第2のAGC増幅器
32 合成部
33a、33b 信号抽出フィルタ
34a、34b ノイズ抽出フィルタ
35 重み演算回路
36 加算器
37 減算器
41 ADC/復調部
42 FFT回路
43 伝送路推定部
44 等化部
45 エラー訂正部
46 ゲインコントロール回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナから出力される高周波信号に対して重付けする第1及び第2の重付け手段と、
前記第1及び第2の重付け手段で重付けした複数の高周波信号を合成する合成手段と、
前記合成手段で合成した合成信号をデジタル信号に変換して復調する復調手段と、
前記各高周波信号のそれぞれについて希望波の信号成分とノイズ成分とを検出する検出手段と、
前記高周波信号の希望波の信号成分とノイズ成分とで表わされる品質値に基づいて、該品質値が高い方の高周波信号の重付けを増大すると共に品質値が低い方の高周波信号の重付けを減少するように、前記第1重付け手段と前記第2の重付け手段との間で重付けに差を付与する差分重付け制御手段と、
を具備することを特徴とするダイバシティ受信装置。
【請求項2】
前記復調手段に入力する合成信号の信号レベルが所望値となるように前記第1及び第2の重付け手段に対する重付け量を制御する重付け制御手段を備え、
前記差分重付け制御手段は、前記重付け制御手段から出力される重付け量を基準にして前記第1の重付け手段と前記第2の重付け手段との間で重付けに差を付与することを特徴とする請求項1記載のダイバシティ受信装置。
【請求項3】
前記差分重付け制御手段は、前記高周波信号毎に希望波の信号成分とノイズ成分とで表わされる品質値を演算する第1の手段と、前記品質値の大小関係に基づいて前記第1の重付け手段と前記第2の重付け手段とに与える重付け量に差を付与するための制御量を演算する第2の手段と、前記重付け制御手段から出力される重付けと前記第2の手段から出力される制御量との和を出力する加算部と、前記重付け制御手段から出力される重付け量と前記第2の手段から出力される制御量との差を出力する減算部と、を具備したことを特徴とする請求項2記載のダイバシティ受信装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の重付け手段の入力段に、複数の高周波信号のそれぞれの位相を同期させる位相制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のダイバシティ受信装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記第1及び第2の重付け手段より前段で前記各高周波信号を取り込むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のダイバシティ受信装置。
【請求項6】
前記高周波信号はテレビジョンチューナから出力されるテレビジョン信号の中間周波信号であり、前記第1及び第2の重付け手段はAGC増幅器であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のダイバシティ受信装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−213163(P2010−213163A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59270(P2009−59270)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】